JP2019208012A - R−t−b系永久磁石およびその製造方法 - Google Patents

R−t−b系永久磁石およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 磁気特性(残留磁束密度Brおよび保磁力Hcj)を向上させ、さらに温度特性を向上させたR−T−B系永久磁石を得る。【解決手段】 R2T14B結晶からなる主相粒子を含むR−T−B系永久磁石である。Rは1種以上の希土類元素、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の鉄族元素、Bはホウ素である。R−T−B系永久磁石はさらにCを含む。R−T−B系永久磁石は表層部および中心部を含み、表層部におけるC濃度が中心部におけるC濃度よりも低い。【選択図】 図1

Description

本発明は、R−T−B系永久磁石およびその製造方法に関する。
R−T−B系永久磁石は、優れた磁気特性を有することが知られている。そして、さらに磁気特性を向上させたR−T−B系永久磁石の開発が行われている。
R−T−B系永久磁石の磁気特性、特に保磁力を向上させる方法には、特許文献1に記載されているように、R−T−B系永久磁石を作製した後に、表面に重希土類元素を付着させて加熱することにより、粒界を通じて重希土類元素を拡散させる方法(粒界拡散法)がある。
特許文献2には、プレス無し磁石製造方法により製造されるNdFeB系永久磁石であり、炭素の含有量が低いことにより磁気特性が向上したNdFeB系永久磁石が記載されている。
特許文献3には、Gaを含みつつ酸素量を低下させることで、異常粒成長を抑制した希土類永久磁石が記載されている。
特許文献4には、耐蝕性に優れた希土類永久磁石が記載されており、成形時に磁場配向性を改善するために磁石微粉と混練される潤滑剤などを低減することで炭素量を低減した希土類永久磁石が記載されている。
また、潤滑剤の添加方法としては、特許文献5に記載されているように微粉砕の前に添加する方法や、特許文献6に記載されているように金型の壁面に潤滑剤を塗布する方法が知られている。
国際公開第2006/043348号 特許第6271425号公報 特開第2006−228992号公報 特開平4−330702号公報 特開平7−240330号公報 特許第3193912号公報
しかし、現在では、多くの用途で磁性部品の一層の小型化、軽量化、高効率化が求められている。そのため、R−T−B系焼結磁石などのR−T−B系永久磁石においてさらなる磁気特性の向上が求められている。
本発明は、磁気特性(残留磁束密度Brおよび保磁力Hcj)を向上させ、さらに温度特性を向上させたR−T−B系永久磁石を得ることを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るR−T−B系永久磁石は、
14B結晶からなる主相粒子を含むR−T−B系永久磁石であって、
Rは1種以上の希土類元素、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の鉄族元素、Bはホウ素であり、
前記R−T−B系永久磁石はさらにCを含み、
前記R−T−B系永久磁石は表層部および中心部を含み、
前記表層部におけるC濃度が前記中心部におけるC濃度よりも低いことを特徴とする。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、上記の特徴を有することにより、磁気特性、特にBrおよびHcjを向上させ、さらに温度特性を向上させたR−T−B系永久磁石となる。
さらにM元素を含んでもよく、
MはZr,Ti,Ta,Nb,VおよびCrから選択される1種以上であり、
前記表層部におけるM濃度が前記中心部におけるM濃度よりも高いことが好ましい。
B濃度が0.92質量%以下である場合には、C濃度が0.12質量%以下であることが好ましく、
ロッドゲーリング法により測定される結晶配向度が60%以上であることが好ましい。
B濃度が0.92質量%超である場合には、C濃度が0.070質量%以下であることが好ましく、
ロッドゲーリング法により測定される結晶配向度が62%以上であることが好ましい。
本発明の第2の観点に係るR−T−B系永久磁石は、
14B結晶からなる主相粒子を含むR−T−B系永久磁石であって、
Rは重希土類元素を必須とする1種以上の希土類元素、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の鉄族元素、Bはホウ素であり、
前記主相粒子の少なくとも一部は、コア部と、前記コア部を被覆するシェル部と、を有するコアシェル主相粒子であり、
前記シェル部における重希土類元素の平均含有割合をCs(原子%)として、
Cs≧1.10を満たすことを特徴とする。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、上記の特徴を有することにより、磁気特性、特にBrおよびHcjを向上させたR−T−B系永久磁石となる。
前記シェル部の平均厚みが5nm以上30nm以下であってもよい。
前記コア部における重希土類元素の平均含有割合をCc(原子%)として、
Cs−Cc≧1.10を満たしてもよい。
前記主相粒子における炭素の平均含有割合が0.25原子%以下であってもよい。
前記主相粒子における炭素の平均含有割合を[C](原子%)、前記主相粒子におけるホウ素の平均含有割合を[B](原子%)として、
[C]/[B]≦0.040を満たしてもよい。
本発明の特に第2の観点に係るR14B結晶からなる主相粒子を含むR−T−B系永久磁石の製造方法は、
Rは重希土類元素を必須とする1種以上の希土類元素、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の鉄族元素、Bはホウ素であり、
原料合金を焼結して焼結体を形成する工程と、前記焼結体に金属を付着させる工程と、前記金属が付着した前記焼結体を不活性雰囲気下で熱処理する工程と、を備え、
前記金属から金属炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーが、Rとして主に含まれる希土類元素から当該希土類元素の炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーよりも低いことを特徴とする。
中心部の位置を説明するための模式図である。 中心部の位置を説明するための断面模式図である。 中心部の位置を説明するための断面模式図である。 中心部の位置を説明するための断面模式図である。 中心部の位置を説明するための模式図である。 中心部の位置を説明するための断面模式図である。 中心部の位置を説明するための断面模式図である。
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき説明する。
(第1実施形態)
<R−T−B系永久磁石>
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、R14B結晶からなる主相粒子を含む。Rは1種以上の希土類元素、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の鉄族元素、Bはホウ素である。なお、Rとして含まれる希土類元素とは、長周期型周期表の第3族に属するScとYとランタノイド元素とのことをいう。また、希土類元素Rは重希土類元素RHと軽希土類元素RLとに分類される。RHとは、Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luのことをいう。RLとは、RH以外の希土類元素のことをいう。鉄族元素とは、Fe,Co,Niのことをいう。
Rの含有量には特に制限はないが、25質量%以上35質量%以下であってもよい。Rの含有量が25質量%以上であると、R−T−B系永久磁石の主相粒子となるR14B結晶の生成が十分に行われやすく、軟磁性を持つα−Feなどの析出を抑制し、磁気特性の低下を抑制しやすくなる Rの含有量が35質量%以下であると、R−T−B系永久磁石のBrが向上する傾向にある。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石におけるBの含有量(B濃度)は、0.5質量%以上1.5質量%以下であってもよい。Bの含有量が0.5質量%以上であることによりHcjが向上する傾向にある。また、Bの含有量が1.5質量%以下であることにより、Brが向上する傾向にある。
Tは、Fe単独であってもよく、Feの一部がCoで置換されていてもよい。本実施形態に係るR−T−B系永久磁石におけるFeの含有量は、R−T−B系永久磁石において不可避的不純物,OおよびNを除いた場合の実質的な残部であってもよい。Coの含有量は0質量%以上4質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、R,TおよびB以外の金属元素として、Ga,Cu,Alおよび/またはZrを含んでもよい。各元素の含有量は任意である。
また、R−T−B系永久磁石は、その他の元素としてMn,Ca,Cl,S,F等の不可避的不純物を、0.001質量%以上1.0質量%以下程度含んでいてもよい。
14B結晶からなる主相粒子の粒径は任意である。通常は、1μm以上10μm以下である。
Rの種類には特に制限はないが、好ましくは少なくともRLを含む。RLの種類には特に制限はないが、好ましくは少なくともNdまたはPrを含む。さらに好ましくはNdを含む。RHを含む場合において、RHの種類には特に制限はない。好ましくはRHとして少なくともDyまたはTbを含む。さらに好ましくはTbを含む。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、さらにCを含む。そして、R−T−B系永久磁石は表層部および中心部を含み、表層部におけるC濃度が中心部におけるC濃度よりも低い。さらに言えば、永久磁石全体を100質量%として、表層部におけるC濃度が中心部におけるC濃度よりも0.001質量%以上、低い。0.005質量%以上、低いことが好ましく、0.010質量%以上、低いことが好ましい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、C濃度が上記の分布を有するため、高い配向度および低いC濃度を同時に実現しやすくなる。その結果、高いBrおよび高いHcjを同時に有し、さらに温度特性も向上したR−T−B系永久磁石となる。
特に高いBrを維持したままHcjが向上するのは、2つの主相粒子の間に存在する二粒子粒界が厚くなるためであると考えられる。また、温度特性が向上するのは、R−T−B化合物と、R−T−B化合物のBの一部がCに置換された化合物と、を比較した場合に、R−T−B化合物の方が、キュリー温度が高いためである。
以下、永久磁石の表層部と永久磁石の中心部の定義について、図面を用いて説明する。
本実施形態では、永久磁石の表層部とは、永久磁石の表面から内部に向かって500μm以内の部分である。
本実施形態では、永久磁石の中心部とは、永久磁石の中央に位置する部分である。永久磁石が多面体形状や円柱形状の場合は典型的には重心部である。具体的には、当該永久磁石と相似形であり、重心の位置が同一であり、体積が10%程度、例えば5%以上15%以下である部分のことである。
以下、永久磁石の形状が特殊な形状を有する場合について説明する。
永久磁石が図1に示すように瓦形状の永久磁石1である場合には、永久磁石1の中心部11は、永久磁石1と相似形であり、中心1Cの位置が同一であり、体積が10%程度である部分のことである。中心1Cは、幅方向(X軸方向)、長さ方向(y軸方向)、厚さ方向(Z軸方向)の全てで中心である点を指す。具体的には、永久磁石1をYZ平面で切断した断面を示す図1A、ZX平面で切断した断面を示す図1B、XY平面で切断した断面を示す図1Cにおいて、中心1Cであるとできる点を指す。
永久磁石が図2に示すように円筒形状の永久磁石2である場合には、永久磁石2の中心部12は、永久磁石2と重心の位置が同一である。さらに、中心部12の厚みが永久磁石2の厚み(b)の1/3であり、中心部12の長さが永久磁石2の長さ(d)の1/3である部分のことである。中心部の位置をさらに明確に示すために、永久磁石2をYZ平面で切断した断面である図2A、XY平面で切断した断面である図2Bを示す。
なお、永久磁石の中心部は永久磁石の形状に応じて適宜設定すればよい。また、永久磁石の中心部における重心もしくは中心の位置は、永久磁石における重心もしくは中心の位置と厳密に一致させる必要はない。中心部が表層部から500μm以上離れていればよい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、B濃度が0.92質量%以下である場合には、C濃度は0.12質量%以下であることが好ましく、ロッドゲーリング法により測定される結晶配向度が60%以上であることが好ましい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、B濃度が0.92質量%超である場合には、C濃度は0.070質量%以下であることが好ましく、ロッドゲーリング法により測定される結晶配向度が62%以上であることが好ましい。
B濃度により好ましいC濃度および結晶配向度が異なるのは、上述したR−T−B化合物のBの一部がCに置換された化合物の存在しやすさがB濃度により異なるためである。
さらに、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、M元素を含んでいてもよい。MはZr,Ti,Ta,Nb,VおよびCrから選択される1種以上であり、表層部におけるM濃度が中心部におけるM濃度よりも高いことが好ましい。さらに言えば、永久磁石全体を100質量%として、表層部におけるM濃度が中心部におけるM濃度よりも0.001質量%以上、高い。また、0.005質量%以上、高いことが好ましい。
以下、本実施形態におけるロッドゲーリング法による結晶配向度の測定方法について説明する。
永久磁石の結晶配向度を測定するには、まず、永久磁石の磁極面を鏡面研磨する。その後、鏡面研磨した面に対してX線回折測定を行う。そして、X線回折測定によって得られた回折ピークを基に配向度を算出する。ロットゲーリング法では、(00l)反射の成分のX線回折強度I(00l)と(hk0)反射の成分のX線回折強度I(hk0)に基づいて、以下に示す式により結晶配向度fcを算出することができる。
なお、ロットゲーリング法により結晶配向度を算出する場合、回折ピークのうち配向方向の反射の成分、すなわち(00l)反射の成分のみが以下に示す式の分子側に積算される。また、回折ピークのうち配向方向から少しでも外れる方向の反射の成分については、全て(hk0)反射の成分とみなされ、以下に示す式の分母側に積算される。したがって、実際の結晶配向度に比べて算出される結晶配向度はかなり小さな値となる。実際に即した結晶配向度を算出するためには、回折ピークに対してベクトル補正を行うことが好ましい。しかし、本実施形態ではベクトル補正を行わない。
Figure 2019208012
<R−T−B系永久磁石の製造方法>
次に、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の製造方法を説明する。以下、R−T−B系永久磁石の製造方法の一例として、粉末冶金法で作製されるR−T−B系永久磁石の製造方法を説明する。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の製造方法は、原料粉末を成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、前記焼結体を焼結温度よりも低い温度で一定時間保持する時効処理工程と、焼結体の炭素含有割合を低下させる脱炭素工程と、を有する。
以下、R−T−B系永久磁石の製造方法について詳しく説明していくが、特記しない事項については、公知の方法を用いればよい。
[原料粉末の準備工程]
原料粉末は、公知の方法により作製することができる。本実施形態では、主にR14B相からなる一種類の原料合金を用いる一合金法でR−T−B系永久磁石を製造するが、二種類の原料合金を用いる二合金法により製造してもよい。
まず、本実施形態に係る原料合金の組成に対応する原料金属を準備し、当該原料金属から本実施形態に対応する原料合金を作製する。原料合金の作製方法に特に制限はない。例えば、ストリップキャスト法にて原料合金を作製することができる。
原料合金を作製した後に、作製した原料合金を粉砕する(粉砕工程)。粉砕工程は、2段階で実施してもよく、1段階で実施してもよい。粉砕の方法には特に限定はない。例えば、各種粉砕機を用いる方法で実施される。例えば、粉砕工程を粗粉砕工程および微粉砕工程の2段階で実施し、粗粉砕工程は例えば水素粉砕処理を行うことが可能である。具体的には、原料合金に対して室温で水素を吸蔵させた後に、Arガス雰囲気下で400℃以上650℃以下、0.5時間以上2時間以下で脱水素を行うことが可能である。また、微粉砕工程は、粗粉砕後の粉末に対して、例えば粉砕助剤としてオレイン酸アミド、ステアリン酸亜鉛などの潤滑剤を添加したのちに、例えばジェットミル、湿式アトライター等を用いて行うことができる。得られる微粉砕粉末(原料粉末)の粒径には特に制限はない。例えば、粒径(D50)が1μm以上10μm以下の微粉砕粉末(原料粉末)となるように微粉砕を行うことができる。なお、水素吸蔵粉砕から後述する焼結工程までは、常に酸素濃度200ppm未満の低酸素雰囲気とした。
なお、原料粉末中の炭素含有割合を低減するために原料合金に含まれる炭素量や粉砕助剤として用いられる潤滑剤の添加量を低減してもよい。しかし、原料粉末中の炭素含有割合は低減しなくてもよい。理由は後述する。
[成形工程]
成形工程では、粉砕工程により得られた微粉砕粉末(原料粉末)を所定の形状に成形する。成形方法には特に限定はないが、本実施形態では、微粉砕粉末(原料粉末)を金型内に充填し、磁場中で加圧する。
成形時の加圧は、30MPa以上300MPa以下で行うことが好ましい。印加する磁場は、950kA/m以上1600kA/m以下であることが好ましい。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。微粉砕粉末(原料粉末)を成形して得られる成形体の形状は特に限定されるものではなく、例えば直方体、平板状、柱状等、所望とするR−T−B系永久磁石の形状に応じて任意の形状とすることができる。
[焼結工程]
焼結工程は、成形体を真空または不活性ガス雰囲気中で焼結し、焼結体を得る工程である。焼結温度は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、成形体に対して、例えば、真空中または不活性ガスの存在下、1000℃以上1200℃以下、1時間以上10時間以下で加熱する処理を行うことにより焼結する。これにより、高密度の焼結体(永久磁石)が得られる。
[時効処理工程]
時効処理工程は、焼結工程後の焼結体(永久磁石)に対して、焼結温度よりも低い温度で真空または不活性ガス雰囲気中で加熱することにより行う。時効処理の温度および時間には特に制限はないが、例えば450℃以上900℃以下で0.2時間以上3時間以下、行うことができる。なお、この時効処理工程は省略してもよい。
また、時効処理工程は1段階で行ってもよく、2段階で行ってもよい。2段階で行う場合には、例えば1段階目を700℃以上900℃以下で0.2時間以上3時間以下とし、2段階目を450℃以上700℃以下で0.2時間以上3時間以下としてもよい。また、1段階目と2段階目とを連続して行ってもよく、1段階目の後に一度室温近傍まで冷却してから再加熱して2段階目を行ってもよい。
[脱炭素工程]
本実施形態では、上記の工程の後に、得られた焼結体の炭素含有割合を低下させる脱炭素工程を行う。焼結工程後に脱炭素工程を行い焼結体の炭素含有割合を低下させることで、脱炭素後の永久磁石が所定のC濃度分布を有する。その結果、結晶配向度を低下させずにBrおよびHcjを向上させることができる。また、焼結体の脱炭素工程を行う場合には、R−T−B化合物のBの一部がCに置換された化合物において、Cの一部が脱炭素により除去される。その結果、生じた欠陥にはBが再び入る場合もあれば、そのまま欠陥として残る場合もある。Bが再び入る場合には、当然、温度特性が向上する。また、欠陥がそのまま残る場合であっても、R−T−B化合物のBの一部がCに置換された化合物と比較すれば温度特性が向上する。
脱炭素の方法は任意であるが、例えば、下記の方法が挙げられる。まず、上記の工程にて得られた焼結体に金属を付着させる。以下、焼結体に付着させる金属のことを付着金属と呼ぶ場合がある。付着金属の種類は、金属から金属炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーが、焼結体に主に含まれる希土類元素(例えばNd)から当該希土類元素の炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーよりも低くなるように選択する。また、付着金属は純金属であることが好ましく、1種類の純金属を用いてもよく2種類以上の純金属を用いてもよい。付着金属を付着させる面には特に制限はないが、磁極面のみに金属を付着させることが好ましい。ここで、上記のM元素は、金属から金属炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーが、焼結体に主に含まれる希土類元素(例えばNd)から当該希土類元素の炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーよりも低くなる元素を具体的に列挙したものである。したがって、脱炭素工程により、表層部のM濃度が中心部のM濃度よりも高くなる。なお、焼結体に主に含まれる希土類元素とは、焼結体に最も多く含まれる希土類元素を指す。さらに、脱炭素の効果を十分に得るためには、付着金属の付着量を0.06質量%以上とすることが好ましい。
金属を付着させる方法は任意である。例えば、金属を含むスラリーを塗布することで付着させることができる。また、金属の箔や板を接触させる方法や蒸着、スパッタリング、電着、スプレー塗布、刷毛塗り、ジェットディスペンサ、ノズル、スクリーン印刷、スキージ印刷、シート工法等を用いる方法もある。
スラリーを塗布する場合、金属は粒子状であることが好ましい。また、平均粒径は100nm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上30μm以下であることがより好ましい。
スラリーに用いる溶媒としては、金属を溶解させずに均一に分散させ得るものが好ましい。例えば、アルコール、アルデヒド、ケトン等が挙げられ、なかでもエタノールが好ましい。
スラリー中の金属の含有量には特に制限はない。例えば、50重量%以上90重量%以下であってもよい。スラリーには、必要に応じて金属以外の成分をさらに含有させてもよい。例えば、金属粒子の凝集を防ぐための分散剤等が挙げられる。
そして、熱処理を行う。金属から金属炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーが低い金属をR−T−B系永久磁石表面に付着させた状態で熱処理を行うことで、R−T−B系永久磁石内部の炭素が磁石表面に移動して付着させた金属と反応し炭化物となる。一方、金属は磁石内部にほとんど侵入せず磁石表面に留まる。この結果、R−T−B系永久磁石における炭素の含有割合を低減することができる。この際に、永久磁石の表層部に含まれる炭素の方が永久磁石の中心部に含まれる炭素よりも吸い出されやすい。その結果、所定のC濃度の分布が生じる。
脱炭素工程における熱処理の条件には特に制限はないが、600℃以上1000℃以下で1時間以上50時間以下、真空または不活性ガス雰囲気中で熱処理を行うことが好ましい。金属の付着量が多く、熱処理温度が高く、熱処理時間が長いほど脱炭素が進行する。さらに、脱炭素工程における熱処理の後に、時効処理工程を行うことができる。
脱炭素工程後に、少なくとも金属を付着させた面を研磨して残渣を除去する。なお、残渣を分析すると付着させた金属および炭素の含有割合が高い。すなわち、付着させた金属のほとんどは磁石内部へ侵入せず、炭素が磁石表面に移動して付着させた金属と反応し炭化物となることが分かる。ただし、付着させた金属の一部が主に表層部まで侵入するため、付着させた金属の濃度は表層部の方が中心部よりも高くなりやすい。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。以下、特に記載のない事項については、第1実施形態と同様である。
<R−T−B系永久磁石>
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石においては、Rは重希土類元素RHを必須とする1種以上の希土類元素である。好ましくは軽希土類元素RLおよび重希土類元素RHを含む。軽希土類元素RLの種類には特に制限はないが、好ましくは少なくともNdまたはPrを含む。さらに好ましくはNdを含む。重希土類元素RHの種類にも特に制限はないが、好ましくは少なくともDyまたはTbを含む。さらに好ましくはTbを含む。
また、R−T−B系永久磁石におけるCの濃度分布、Mの濃度分布、B濃度、C濃度、および、結晶配向度については、第1実施形態と同様である。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、主相粒子の少なくとも一部が、コア部と、前記コア部を被覆するシェル部と、を有するコアシェル主相粒子である。好ましくは全主相粒子に対するコアシェル主相粒子の割合が60%以上である。なお、主相粒子がコアシェル主相粒子であることを確認する方法は任意である。例えば、R−T−B系永久磁石の任意の断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)、三次元アトムプローブ(3DAP)により評価を行うことが可能である。走査型電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いる場合、倍率2500倍以上1000000倍以下で観察し、コントラストの違いによりコア部とシェル部とを区別することができる。また、三次元アトムプローブ(3DAP)を用いる場合、原子の三次元分布像からコア部とシェル部とを区別することができる。なお、コアシェル主相粒子はコア部の表面全てをシェル部が覆う必要はなく、コア部の表面の60%以上をシェル部が覆っていればよい。
以下に記載するコアシェル主相粒子の各パラメータの測定は、R−T−B系永久磁石の向かい合う二面の間の距離が3mm以上である場合には、いずれか一方の面からの距離が1.5mmである箇所を含むコアシェル主相粒子について行う。R−T−B系永久磁石の向かい合う二面の間の距離が3mm未満である場合には、当該向かい合う二面からの距離が等しい箇所を含むコアシェル主相粒子について測定する。
個々のコアシェル主相粒子における重希土類元素RHの含有割合は、三次元アトムプローブ顕微鏡(Three Dimensional Atom Probe;3DAP)により三次元アトムプローブ測定を行うことで測定することができる。シェル部における重希土類元素RHの含有割合は、シェル部を線分析した場合において重希土類元素RHの含有割合が最も高い点における重希土類元素RHの含有割合である。コア部における重希土類元素RHの含有割合は、コア部を線分析した場合において重希土類元素RHの含有割合を平均して算出する。
そして、シェル部における重希土類元素RHの平均含有割合Cs(原子%)は、少なくとも10個のコアシェル主相粒子において測定したシェル部における重希土類元素RHの含有割合の平均である。コア部における重希土類元素RHの平均含有割合Cc(原子%)は、少なくとも10個のコアシェル主相粒子において測定したコア部における重希土類元素RHの含有割合の平均である。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石に含まれるコアシェル主相粒子は、従来のコアシェル主相粒子と比較して、シェル部における重希土類元素RHの含有割合が高い。具体的には、Cs≧1.10を満たす。また、Cs≧1.80を満たすことが好ましい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、Csが高いことにより、磁気特性を向上させることができる。
また、Cs−Cc≧1.10を満たしていてもよく、Cs−Cc≧1.80を満たしてもよい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石では、従来のコアシェル主相粒子と比較して、シェル部の厚みが薄いことが、特にBrを高くする上で好ましい。具体的には、シェル部の平均厚みが5nm以上30nm以下であることが好ましい。また、5nm以上15nm以下であることがさらに好ましい。
シェル部の厚みは、コアシェル主相粒子を三次元アトムプローブ顕微鏡(3DAP)により三次元アトムプローブ測定を行うことで測定できる。そして、シェル部の平均厚みは、コアシェル主相粒子少なくとも10個に対してそれぞれのシェル部の厚みを測定し、平均することで算出することができる。
以上より、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石に含まれるコアシェル主相粒子は、従来のR−T−B系永久磁石に含まれるコアシェル主相粒子と比較してシェル部における重希土類元素RHの濃度が高く、シェル部の厚みが小さい。その結果、従来のR−T−B系永久磁石と比較して、Brを良好に維持しながら、さらに高いHcjを実現することができる。
さらに、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石では、主相粒子における炭素の平均含有割合を[C](原子%)として、[C]≦0.25を満たすことが好ましく、[C]≦0.15を満たすことがさらに好ましい。
さらに、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石では、主相粒子におけるホウ素の平均含有割合を[B](原子%)として、[C]/[B]≦0.040を満たすことが好ましく、[C]/[B]≦0.030を満たすことがさらに好ましい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石では、主相粒子における炭素の平均含有割合を低減してもBrが良好に維持される。また、[C]および/または[C]/[B]を低減することで、上記の好ましいCsおよびシェル部の平均厚みが得やすくなる。一般的に、主相粒子内に含まれる炭素は、主にR14B結晶におけるBの一部を置換して含まれている。ここで、当該置換量が少ないほどキュリー温度が高くなる傾向にある。したがって、主相粒子内に含まれる炭素が少ないほど温度特性が向上する傾向にある。
主相粒子における[C]および[B]は少なくとも10個の主相粒子について三次元アトムプローブ(3DAP)により三次元アトムプローブ測定を行うことで測定できる。
<R−T−B系永久磁石の製造方法>
次に、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の製造方法を説明する。
以下、粉末冶金法で作製され、重希土類元素が粒界拡散されたR−T−B系永久磁石の製造方法を説明する。なお、原料粉末の準備工程、成形工程、焼結工程、および、時効処理工程は第1実施形態と同様である。
[脱炭素工程]
本実施形態では、上記の工程の後に、得られた焼結体の炭素含有割合を低下させる脱炭素工程を行う。脱炭素工程を行い、主相粒子の結晶配向度を低下させずに焼結体の炭素含有割合を低下させることで、後述する拡散処理工程においてコアシェル主相粒子を生成する際に、シェル部における重希土類元素の含有割合を増加させやすくなり、かつ、シェル部の厚みを低減しやすくなる。脱炭素の方法は第1実施形態と同様である。ただし、付着金属の付着量が多くなりすぎると後述する拡散処理工程の効果が小さくなる場合があり、Hcjが低下する場合がある。具体的には、拡散処理工程を行う場合には、付着金属の付着量を1.0質量%程度以下とすることが好ましい。
脱炭素工程後に、金属を付着させた面を研磨して残渣を除去する。残渣を除去せずに後述する拡散処理工程を行うことは困難であるためである。なお、残渣を分析すると付着させた金属および炭素の含有割合が高い。すなわち、付着させた金属は磁石内部へほとんど侵入せず、炭素が希土類永久磁石の表面に移動して付着させた金属と反応し炭化物となることが分かる。
[拡散処理工程]
本実施形態では、さらに重希土類元素を拡散させる拡散処理工程を有する。拡散処理は、重希土類元素を含む化合物等を焼結体の表面に付着させた後、熱処理を行うことにより、実施することができる。重希土類元素を含む化合物の種類は任意である。例えば、重希土類元素の水素化物が挙げられる。重希土類元素を含む化合物を付着させる方法は任意である。例えば重希土類元素を含むスラリーを塗布することで付着させることができる。スラリーの塗布量とスラリーに含まれる重希土類元素の濃度とを制御することで、シェル部の厚みおよびシェル部における重希土類元素の含有割合を制御することができる。なお、コア部の重希土類元素の含有割合は粒界拡散工程の前後で実質的に変化しない。
なお、前記重希土類元素を付着させる方法には特に制限は無い。例えば、蒸着、スパッタリング、電着、スプレー塗布、刷毛塗り、ジェットディスペンサ、ノズル、スクリーン印刷、スキージ印刷、シート工法等を用いる方法がある。
スラリーを塗布する場合、重希土類化合物は粒子状であることが好ましい。また、平均粒径は100nm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上30μm以下であることがより好ましい。
スラリーに用いる溶媒としては、重希土類化合物を溶解させずに均一に分散させ得るものが好ましい。例えば、アルコール、アルデヒド、ケトン等が挙げられ、なかでもエタノールが好ましい。
スラリー中の重希土類化合物の含有量には特に制限はない。例えば、50重量%以上90重量%以下であってもよい。スラリーには、必要に応じて重希土類化合物以外の成分をさらに含有させてもよい。例えば、重希土類化合物粒子の凝集を防ぐための分散剤等が挙げられる。
上記の拡散処理工程を焼結体に対して行うことにより、焼結体全体の粒界に重希土類元素RHが拡散することになる。そして、主相粒子において重希土類元素の含有割合が高いシェル部が形成され、コアシェル主相粒子となる。
拡散処理工程における熱処理の条件には特に制限はないが、真空または不活性ガス雰囲気中で650℃以上1000℃以下で1時間以上24時間以下、行うことが好ましい。さらに、拡散処理工程における熱処理の後に、時効処理工程を行うことが出来る。
脱炭素工程を行うことで粒界拡散工程後のコアシェル主相粒子のシェル部の厚みを低減しやすくなる理由は、脱炭素により主相粒子の溶解度が低下するためである。また、シェル部の厚みが低減することで、シェル部における重希土類元素の含有割合は向上しやすくなる。
また、脱炭素工程を行う場合には、脱炭素工程を行わない従来の場合と比較して主相粒子の体積比率が向上しやすくなる。これは、脱炭素工程により粒界に含まれる希土類元素の炭化物を含む相が減少するためである。希土類元素の炭化物が減少するほど粒界の体積比率が減少し、主相粒子の体積比率が向上する。主相粒子の体積比率が向上した結果、Brが上昇する。
さらに、脱炭素工程により粒界に含まれる希土類元素の炭化物を含む相が減少した結果、重希土類元素が希土類元素の炭化物に集積することが抑制される。その結果、重希土類元素が効率的に主相粒子と反応してシェル部を形成する。そして、粒界拡散による磁気特性(特にHcj)の向上効果がより大きくなる。
さらに、上記の脱炭素工程を行う場合には、原料合金中の炭素量を低減させる場合と比較してBrを好適に維持しやすい。原料合金の段階で炭素量を低減させる場合には、成形工程において配向度が低下しやすく、最終的に得られる磁石のBrが低下しやすくなるためである。
また、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の製造方法において、脱炭素工程および粒界拡散工程は同時に行ってもよい。
脱炭素工程および粒界拡散工程を同時に行う場合には、上記の脱炭素工程で付着させた金属、および、上記の粒界拡散工程で付着させた重希土類元素を含む化合物等を同時に付着させて熱処理を行う。そして、熱処理後に付着させた面を研磨して残渣を除去する。
以上、本発明のR−T−B系永久磁石の好適な実施形態について説明したが、本発明のR−T−B系永久磁石は上記の実施形態に制限されるものではない。本発明のR−T−B系永久磁石は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形、種々の組み合わせが可能である。
さらに、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石を切断、分割して得られる磁石を用いることができる。
具体的には、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、モータ、コンプレッサー、磁気センサー、スピーカ等の用途に好適に用いられる。
また、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、単独で用いてもよく、2個以上のR−T−B系永久磁石を必要に応じて結合させて用いてもよい。結合方法に特に制限はない。例えば、機械的に結合させる方法や樹脂モールドで結合させる方法がある。
2個以上のR−T−B系永久磁石を結合させることで、大きなR−T−B系永久磁石を容易に製造することができる。2個以上のR−T−B系永久磁石を結合させた磁石は、特に大きなR−T−B系永久磁石が求められる用途、例えば、IPMモータ、風力発電機、大型モータ等に好ましく用いられる。
次に、本発明を具体的な実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
(実験例1)
原料金属として、Nd、Pr、電解鉄、低炭素フェロボロン合金を準備した。さらに、Ga、Al、Cu、Co、Zrを、純金属またはFeとの合金の形で準備した。
前記原料金属に対し、ストリップキャスト法により、最終的に得られる永久磁石の組成が、
Nd: 31.0質量%、
B: 0.97質量%、
Co: 0.50質量%、
Cu: 0.10質量%、
Al: 0.20質量%、
Fe: 残部(不可避的不純物等を除く)、及び、
不可避的不純物等:1質量%以下、
となるように焼結体用合金(原料合金)を作製した。また、前記原料合金の合金厚みは0.2mm〜0.6mmとした。
次いで、前記原料合金に対して室温で1時間、水素ガスをフローさせて水素を吸蔵させた。次いで雰囲気をArガスに切り替え、450℃で1時間、脱水素処理を行い、原料合金を水素粉砕した。さらに、冷却後にふるいを用いて400μm以下の粒度の粉末とした。
次いで、水素粉砕後の原料合金の粉末に対し、粉砕助剤として質量比で表1に示す量の潤滑剤を添加し、混合した。潤滑剤としてはオレイン酸アミドを用いた。
次いで、衝突板式のジェットミル装置を用いて窒素気流中で微粉砕し、それぞれ平均粒径が4μm程度の微粉(原料粉末)を得た。なお、前記平均粒径は、レーザ回折式の粒度分布計で測定した平均粒径D50である。
なお、不可避的不純物等として、H,Si,Ca,La,Ce,Cr等が検出される場合がある。Siは主にフェロボロン原料および合金溶解時のるつぼから混入する。Ca,La,Ceは希土類の原料から混入する。また、Crは電解鉄から混入する可能性がある。
得られた微粉を磁界中で成形して成形体を作製した。このときの印加磁場は1200kA/mの静磁界である。また、成形時の加圧力は120MPaとした。なお、磁界印加方向と加圧方向とを直交させるようにした。この時点での成形体の密度を測定したところ、全ての成形体の密度が4.10Mg/m以上4.25Mg/m以下の範囲内であった。
次に、前記成形体を焼結し、永久磁石を得た。焼結条件は、1060℃で4時間保持とした。焼結雰囲気は真空中とした。このとき焼結密度は7.50Mg/m以上7.55Mg/m以下の範囲にあった。その後、Ar雰囲気、大気圧中で、第一時効温度T1=900℃で1時間の第一時効処理を行い、さらに、第二時効温度T2=500℃で1時間の第二時効処理を行った。そして、上記の工程により得られた永久磁石を、幅15mm、長さ15mm、配向方向の厚み4mmの直方体となるように加工した。そして、得られた永久磁石に対し、以下に示す脱炭素処理を行った。なお、比較例101、102では脱炭素処理を行わなかった。
脱炭素処理は、まず、付着金属からなる金属粒子(D50=20μm)をエタノールに分散させたスラリーを永久磁石へ塗布した。付着金属の種類を表1に示す。各実施例で用いた付着金属は、金属から金属炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーが、NdからNd炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーよりも低い。塗布面は、永久磁石のうち15mm×15mmの2面とした。永久磁石の質量に対する金属の付着量が表1に示す割合となるように塗布し、付着金属を付着させた。そして、前記スラリーを塗布後に大気圧でArをフローしながら900℃で12時間の熱処理を実施することで脱炭素処理を行った。さらに、Ar雰囲気、大気圧中で、500℃で1時間の時効処理を行った。そして、6面全てを100μm研磨した。
上記の工程により得られた各実施例及び比較例の永久磁石の組成を蛍光X線分析で測定した。B濃度はICPで測定した。その結果、原料合金の組成と実質的に同一であり、上記の組成となっていることを確認した。
各実施例および比較例の永久磁石について、各部位ごとにC濃度および付着金属濃度を測定した。C濃度は酸素気流中燃焼−赤外線吸収法により測定した。付着金属濃度はICP発光分析により測定した。結果を表1に示す。なお、表1でN.Dと記載されている部分は、各元素の濃度が検出限界以下、すなわち0.001質量%未満である。
表層部のC濃度および付着金属濃度については、磁極面である15mm×15mmの面について、表面から内部に向かって500μm以内の領域を各永久磁石から切り出した。そして、スタンプミルで平均粒子径1mm程度の大きさに粉砕し、無作為に測定用試料を5回抽出し、それぞれの測定用試料のC濃度および付着金属濃度を測定し、平均した。
中心部のC濃度および付着金属濃度については、各永久磁石と同一の重心を有し、10%の体積を有する相似形である領域を各永久磁石から切り出した。そして、スタンプミルで平均粒子径1mm程度の大きさに粉砕し、無作為に測定用試料を5回抽出し、それぞれの測定用試料のC濃度および付着金属濃度を測定し、平均した。
磁石全体のC濃度については、各永久磁石全体をスタンプミルで平均粒子径1mm程度の大きさに粉砕し、無作為に測定用試料を5回抽出し、それぞれの測定用試料のC濃度を平均した。なお、磁石全体のC濃度については、0.12質量%以下を良好とし、0.070質量%以下をさらに良好とした。
各実施例および比較例について、ロッドゲーリング法で結晶配向度を測定した。各実施例および比較例の永久磁石について、磁極面を鏡面研磨した。その後、鏡面研磨した面のX線回折測定を行い、得られた回折ピークを基にロットゲーリング法により結晶配向度を算出した。ベクトル補正は実施しなかった。結果を表1に示す。結晶配向度は60%以上を良好とし、62%以上をさらに良好とした。
また、各実施例および比較例の永久磁石について、室温(23℃)で、BrおよびHcjについて測定した。なお、BrおよびHcjはBHトレーサーで測定した。結果を表1に示す。
さらに、各実施例および比較例について、150℃でのHcjを測定し、Hcjの温度係数(%/℃)を測定した。具体的には、150℃でのHcjをHcj(150)、室温でのHcjをHcj(23)として、100×((Hcj(150)−Hcj(23))/(150−23))/Hcj(23)で温度係数(%/℃)を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2019208012
表1より、粉砕助剤として潤滑剤を0.10質量%添加し、脱炭素処理を行った実施例101〜105はいずれも表層部のC濃度が中心部のC濃度よりも低くなった。
これに対し、粉砕助剤として潤滑剤を0.10質量%添加したが脱炭素処理を行わなかった比較例101、および、脱炭素処理を行ったが付着金属の付着量が実施例101〜105よりも小さかった比較例103では、表層部のC濃度が中心部のC濃度よりも高くなった。その結果、各実施例と比較して良好なHcjが得られなかった。さらに、温度係数の絶対値も各実施例と比べて大きく、温度特性も良好ではなかった。なお、脱炭素処理を行った比較例103は脱炭素処理を行わなかった点以外は同条件で実施した比較例101と比較してHcjおよび温度特性が向上した。
また、潤滑剤の添加量を減少させた比較例102では、結晶配向度が低下した。その結果、比較例102では、各実施例と比較してBrおよびHcjが低くなった。
(実験例2)
実施例106は実施例103について、脱炭素前の永久磁石の組成においてFeの一部をZrに置換した点以外は同条件で実施した実施例である。なお、上記の置換における置換量は永久磁石全体を100質量%として0.10質量%である。結果を表2に示す。
Figure 2019208012
表2より、脱炭素前の永久磁石において付着金属と同一の元素を含んでいても、表層部のC濃度が中心部のC濃度よりも低くなり、実施例103と同等な磁気特性および温度特性が得られた。なお、表層部のC濃度、中心部のC濃度および磁石全体のC濃度はいずれも実施例103の方が実施例106よりも小さくなった。実施例106は脱炭素前からZrを含んでいたため、Cの一部がZrと結合して永久磁石表面に吸い出されにくい状態になっていたためであると考えられる。
(実験例3)
実験例3では、付着金属の種類を実施例103から変化させた点以外は、実施例103と同様に実施した。結果を表3に示す。なお、実施例126はTiをTiHの形で付着させたものである。すなわち、チタンの水素化物として付着させたものである。実施例127はZrからなる金属粒子およびTiからなる金属粒子を混合して得られる混合粒子を付着させたものである。実施例128はZrおよびTiからなる合金粒子を付着させたものである。結果を表3に示す。
Figure 2019208012
付着金属の種類を変化させても、金属から金属炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーが、NdからNd炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーよりも低い金属を用いた実施例121〜128では表層部のC濃度が中央部のC濃度よりも低くなった。
これに対し、比較例121および122では表層部のC濃度が中央部のC濃度よりも低くならなかった。その結果、実施例121〜128と比較して良好なHcjおよび温度特性が得られなかった。比較例121および122で付着金属として用いられたMoおよびWに関しては、金属から金属炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーが、NdからNd炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーよりも高い。その結果、脱炭素が十分に行われなかったと考えられる。
(実験例4)
最終的に得られる永久磁石の組成が、
Nd: 31.5質量%、
B: 0.87質量%、
Co: 1.00質量%、
Cu: 0.20質量%、
Al: 0.20質量%、
Ga: 0.30質量%、
Zr: 0.18質量%、
Fe: 残部(不可避的不純物等を除く)、及び、
不可避的不純物等:1質量%以下、
となるように焼結体用合金(原料合金)を作製した点以外は実験例1と同様に実施した。付着金属がZrである場合の結果を表4に示す。また、付着金属の種類を変化させた場合の結果を表5に示す。
Figure 2019208012
Figure 2019208012
表4および表5より、粉砕助剤として潤滑剤を0.10質量%添加し、脱炭素処理を行った実施例131〜142はいずれも表層部のC濃度が中心部のC濃度よりも低くなった。
これに対し、粉砕助剤として潤滑剤を0.10質量%添加したが脱炭素処理を行わなかった比較例131では、表層部のC濃度が中心部のC濃度よりも高くなり、各実施例と比較して良好なHcjが得られなかった。さらに、温度係数の絶対値も各実施例と比べて大きく、温度特性も良好ではなかった。
また、潤滑剤の添加量を減少させた比較例132では、結晶配向度が低下した。さらに、実験例4のようにR14Bの化学量論比よりもBの含有割合が小さい場合において、さらに潤滑剤の添加量を減少させると、焼結時にR17相などの軟磁性相が生成しやすい。その結果、比較例132では実施例131〜142と比較してBrおよびHcjが低く、温度特性も悪化した。実施例131〜142では、焼結後に脱炭素を行うことで、炭素量を低減しつつR17相などの軟磁性相の生成を抑制しやすくなったためであると考える。
(実験例5)
最終的に得られる永久磁石の組成が、
Nd: 31.0質量%、
B: 1.04質量%、
Co: 0.50質量%、
Cu: 0.10質量%、
Al: 0.20質量%、
Fe: 残部(不可避的不純物等を除く)、及び、
不可避的不純物等:1質量%以下、
となるように焼結体用合金(原料合金)を作製した点以外は実験例1と同様に実施した。結果を表6に示す。
Figure 2019208012
表6より、粉砕助剤として潤滑剤を0.10質量%添加し、脱炭素処理を行った実施例151は表層部のC濃度が中心部のC濃度よりも低くなった。これに対し、脱炭素処理を行わなかった比較例151は実施例151と比較してHcjが小さくなり、温度特性も悪化した。
(実験例6)
最終的に得られる永久磁石の組成が、
Nd: 24.5質量%、
Pr: 6.5質量%、
B: 0.97質量%、
Co: 0.50質量%、
Cu: 0.10質量%、
Al: 0.20質量%、
Fe: 残部(不可避的不純物等を除く)、及び、
不可避的不純物等:1質量%以下、
となるように焼結体用合金(原料合金)を作製した点以外は実験例1と同様に実施した。結果を表7に示す。
Figure 2019208012
表7より、粉砕助剤として潤滑剤を0.10質量%添加し、脱炭素処理を行った実施例161は表層部のC濃度が中心部のC濃度よりも低くなった。これに対し、脱炭素処理を行わなかった比較例161は実施例161と比較してHcjが小さくなり、温度特性も悪化した。なお、実施例161は実施例103のNdの一部をPrに置換した実施例である。実施例161は実施例103と比較して室温でのHcjがやや高くなるが、温度特性がやや悪化する結果となった。
(実験例7)
最終的に得られる永久磁石の組成が、
Nd: 29.1質量%、
Dy: 1.6質量%、
B: 1.00質量%、
Co: 0.50質量%、
Cu: 0.07質量%、
Al: 0.22質量%、
Fe: 残部(不可避的不純物等を除く)、及び、
不可避的不純物等:1質量%以下、
となるように焼結体用合金(原料合金)を作製した点以外は実験例1と同様に実施した。結果を表8に示す。
Figure 2019208012
表8より、粉砕助剤として潤滑剤を0.10質量%添加し、脱炭素処理を行った実施例171は表層部のC濃度が中心部のC濃度よりも低くなった。これに対し、脱炭素処理を行わなかった比較例171は実施例171と比較してHcjが小さくなり、温度特性も悪化した。
(実験例8)
最終的に得られる永久磁石の組成が、
Nd: 29.7質量%、
Tb: 1.0質量%、
B: 1.00質量%、
Co: 0.50質量%、
Cu: 0.07質量%、
Al: 0.20質量%、
Fe: 残部(不可避的不純物等を除く)、及び、
不可避的不純物等:1質量%以下、
となるように焼結体用合金(原料合金)を作製した点以外は実験例1と同様に実施した。結果を表9に示す。
Figure 2019208012
表9より、粉砕助剤として潤滑剤を0.10質量%添加し、脱炭素処理を行った実施例181は表層部のC濃度が中心部のC濃度よりも低くなった。これに対し、脱炭素処理を行わなかった比較例181は実施例181と比較してHcjが小さくなり、温度特性も悪化した。
(実験例9)
(永久磁石作製工程)
原料金属として、Nd、Pr、電解鉄、低炭素フェロボロン合金を準備した。さらに、Ga、Al、Cu、Co、Zrを、純金属またはFeとの合金の形で準備した。
前記原料金属に対し、ストリップキャスト法により、後述する粒界拡散前の永久磁石の組成が、
Nd: 23.4質量%、
Pr: 6.5質量%、
B: 0.96質量%、
Ga: 0.15質量%、
Cu: 0.20質量%、
Al: 0.15質量%、
Zr: 0.15質量%、
Fe: 残部(不可避的不純物等を除く)、及び、
不可避的不純物等:1質量%以下、
となるように焼結体用合金(原料合金)を作製した。また、前記原料合金の合金厚みは0.2mm〜0.6mmとした。
次いで、前記原料合金に対して室温で1時間、水素ガスをフローさせて水素を吸蔵させた。次いで雰囲気をArガスに切り替え、450℃で1時間、脱水素処理を行い、原料合金を水素粉砕した。さらに、冷却後にふるいを用いて400μm以下の粒度の粉末とした。
次いで、水素粉砕後の原料合金の粉末に対し、質量比で0.1%の潤滑剤(オレイン酸アミド)を粉砕助剤として添加し、混合した。
次いで、衝突板式のジェットミル装置を用いて窒素気流中で微粉砕し、それぞれ平均粒径が4μm程度の微粉(原料粉末)を得た。なお、前記平均粒径は、レーザ回折式の粒度分布計で測定した平均粒径D50である。
なお、不可避的不純物等として、H,Si,Ca,La,Ce,Cr等が検出される場合がある。Siは主にフェロボロン原料および合金溶解時のるつぼから混入する。Ca,La,Ceは希土類の原料から混入する。また、Crは電解鉄から混入する可能性がある。
得られた微粉を磁界中で成形して成形体を作製した。このときの印加磁場は1200kA/mの静磁界である。また、成形時の加圧力は120MPaとした。なお、磁界印加方向と加圧方向とを直交させるようにした。この時点での成形体の密度を測定したところ、全ての成形体の密度が4.10Mg/m以上4.25Mg/m以下の範囲内であった。
次に、前記成形体を焼結し、永久磁石を得た。焼結条件は、1060℃で4時間保持とした。焼結雰囲気は真空中とした。このとき焼結密度は7.50Mg/m以上7.55Mg/m以下の範囲にあった。その後、Ar雰囲気、大気圧中で、第一時効温度T1=900℃で1時間の第一時効処理を行い、さらに、第二時効温度T2=500℃で1時間の第二時効処理を行った。
得られた拡散前永久磁石の組成は蛍光X線分析で評価した。Bの含有量はICPで評価した。その結果、原料合金の組成と実質的に同一であることを確認した。そして、得られた拡散前永久磁石に対し、以下に示す各実施例1〜5および比較例1〜4の処理を行った。
(比較例1)
上記の工程により得られた拡散前永久磁石を、幅15mm、長さ15mm、配向方向の厚み4mmの直方体となるように加工した。その後、拡散前永久磁石のうち15mm×15mmの2面に対し、TbH粒子(D50=5μm)をエタノールに分散させたスラリーを、永久磁石の重量に対するTbの重量が合計0.5重量%となるように塗布することでTbを付着させた。前記スラリーを塗布後に大気圧でArをフローしながら950℃で12時間の熱処理を実施し、Tbを粒界拡散させた。さらに、Ar雰囲気、大気圧中で、500℃で1時間の時効処理を行った。
得られた永久磁石について、磁石表面から1.5mm内側の少なくとも10個の主相粒子について、3DAPを用いて原子の三次元分布像の取得を行った。そして、各主相粒子がコアシェル構造を有することについて3DAPを用いて確認した。次に、3DAPを用いて各主相粒子のシェル部の厚みを測定し、平均することでシェル部の平均厚みを算出した。
また、各主相粒子におけるシェル部の重希土類元素(Tb)含有割合を測定し、平均することでCsを算出した。さらに、各主相粒子におけるコア部の重希土類元素(Tb)含有割合を測定し、平均することでCcを算出した。ただし、実験例9〜11の実施例および比較例では、Ccは0.01原子%未満であり、無視できるほど小さかった。すなわち、実験例9〜11の実施例および比較例では、CsとCs−Ccとは実質的に等しい。
さらに、実験例1と同様にして得られた永久磁石の各部位ごとにC濃度および付着金属濃度を測定した。
さらに、コアシェル構造を有する主相粒子に含まれる炭素含有割合[C]およびホウ素含有割合[B]を三次元アトムプローブ(3DAP)を用いて測定した。
得られた永久磁石について、BHトレーサーで室温(23℃)での磁気特性(BrおよびHcj)の評価を行った。本実験例では、保磁力は1800kA/m以上を良好とした。残留磁束密度は1450mT以上を良好とした。さらに、実験例1と同様に150℃でのHcjを測定し、Hcjの温度係数(%/℃)を測定した。なお、Hcjの温度係数の絶対値が0.500以下である場合に温度特性が良好であるとした。
(比較例2〜3、実施例1〜5)
比較例2〜3および実施例1〜5では、比較例1と同様に、上記の工程により得られた拡散前永久磁石を、幅15mm、長さ15mm、配向方向の厚み4mmの直方体となるように加工した。そして、比較例1とは異なり、TbH粒子(D50=5μm)をエタノールに分散させたスラリーを塗布する前に、脱炭素処理を行った。
本実験例では、脱炭素処理は、以下の方法により行った。まず、金属Zr粒子(D50=20μm)をエタノールに分散させたスラリーを拡散前永久磁石へ塗布した。塗布面は、拡散前永久磁石のうち15mm×15mmの2面とした。拡散前永久磁石の重量に対するZrの付着量が下表に示す割合となるように塗布し、Zrを付着させた。そして、前記スラリーを塗布後に大気圧でArをフローしながら900℃で12時間の熱処理を実施することで脱炭素処理を行った。
脱炭素処理後にスラリーを塗布した面を50μm研磨した。その後は比較例1と同様にして粒界拡散を行い、永久磁石を作製した。結果を下表10に示す。
Figure 2019208012
表10より、シェル部のTb含有割合Csが1.10原子%以上である実施例1〜5は、シェル部のTb含有割合Csが1.10原子%未満である比較例1〜3と比較してHcjおよびBrが優れていた。さらに、実施例1〜5は温度特性も良好であった。また、実施例1〜5はシェル部の平均厚みが5〜30nmの範囲内であり、[C]≦0.25(原子%)および[C]/[B]≦0.040を満たしていた。
(実験例10)
実験例10では、実施例3の付着金属をZrからその他の金属に変更した実施例および比較例を記載した。なお、各実施例で用いた付着金属は、金属から金属炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーが、NdからNd炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーよりも低い。これに対し、比較例11で用いたFeに関しては、FeからFe炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーが、NdからNd炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーよりも高い。
Figure 2019208012
表11より、脱炭素処理に用いる付着金属の種類を変更しても、金属から金属炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーが、NdからNd炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーよりも低い場合には、Cs≧1.10(原子%)を満たし、保磁力および残留磁束密度が優れていた。さらに、実施例11〜15は温度特性が良好であった。これに対し、脱炭素処理にFeを用いた比較例11は脱炭素が行われず、実施例と比較して、シェル部のTb含有割合Csが低下し、シェル部の厚みが上昇した。
(実験例11)
実験例11では、比較例1のスラリーの組成を変更した点以外は比較例1と同様に希土類永久磁石を作製した。具体的には、スラリーに含まれる金属を、TbH粉末と、Zr粉末および/またはTi粉末と、の混合組成とした。結果を表12に示す。
Figure 2019208012
表12より、スラリーに含まれる金属を、TbH粉末と、Zr粉末および/またはTi粉末と、の混合組成とした各実施例では、シェル部のTb含有割合Csが1.10at%以上となり、良好な磁気特性を示した。スラリーに含まれる金属を、TbH粉末と、Zr粉末および/またはTi粉末と、の混合組成としたことにより、粒界拡散と脱炭素処理とが同時に進行したためであると考えられる。
なお、実験例9〜11の各実施例および比較例について、結晶配向度を測定した。結晶配向度は全て66%であった。
1・・・(瓦形状の)永久磁石
2・・・(円筒形状の)永久磁石
11・・・(瓦形状の)永久磁石の中心部
12・・・(円筒形状の)永久磁石の中心部

Claims (10)

  1. 14B結晶からなる主相粒子を含むR−T−B系永久磁石であって、
    Rは1種以上の希土類元素、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の鉄族元素、Bはホウ素であり、
    前記R−T−B系永久磁石はさらにCを含み、
    前記R−T−B系永久磁石は表層部および中心部を含み、
    前記表層部におけるC濃度が前記中心部におけるC濃度よりも低いことを特徴とするR−T−B系永久磁石。
  2. 前記R−T−B系永久磁石は、さらにM元素を含み、
    MはZr,Ti,Ta,Nb,VおよびCrから選択される1種以上であり、
    前記表層部におけるM濃度が前記中心部におけるM濃度よりも高い請求項1に記載のR−T−B系永久磁石。
  3. 前記R−T−B系永久磁石全体において、
    B濃度が0.92質量%以下、C濃度が0.12質量%以下であり、
    ロッドゲーリング法により測定される結晶配向度が60%以上である請求項1または2に記載のR−T−B系永久磁石。
  4. 前記R−T−B系永久磁石全体において、
    B濃度が0.92質量%超、C濃度が0.070質量%以下であり、
    ロッドゲーリング法により測定される結晶配向度が62%以上である請求項1または2に記載のR−T−B系永久磁石。
  5. 14B結晶からなる主相粒子を含むR−T−B系永久磁石であって、
    Rは重希土類元素を必須とする1種以上の希土類元素、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の鉄族元素、Bはホウ素であり、
    前記主相粒子の少なくとも一部は、コア部と、前記コア部を被覆するシェル部と、を有するコアシェル主相粒子であり、
    前記シェル部における重希土類元素の平均含有割合をCs(原子%)として、
    Cs≧1.10を満たすことを特徴とするR−T−B系永久磁石。
  6. 前記シェル部の平均厚みが5nm以上30nm以下である請求項5に記載のR−T−B系永久磁石。
  7. 前記コア部における重希土類元素の平均含有割合をCc(原子%)として、
    Cs−Cc≧1.10を満たす請求項5または6に記載のR−T−B系永久磁石。
  8. 前記主相粒子における炭素の平均含有割合が0.25原子%以下である請求項5〜7のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
  9. 前記主相粒子における炭素の平均含有割合を[C](原子%)、前記主相粒子におけるホウ素の平均含有割合を[B](原子%)として、
    [C]/[B]≦0.040を満たす請求項5〜8のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
  10. 14B結晶からなる主相粒子を含むR−T−B系永久磁石の製造方法であって、
    Rは重希土類元素を必須とする1種以上の希土類元素、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の鉄族元素、Bはホウ素であり、
    原料合金を焼結して焼結体を形成する工程と、前記焼結体に金属を付着させる工程と、前記金属が付着した前記焼結体を不活性雰囲気下で熱処理する工程と、を備え、
    前記金属から金属炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーが、Rとして主に含まれる希土類元素から当該希土類元素の炭化物を生成するための標準生成ギブスエネルギーよりも低いことを特徴とするR−T−B系永久磁石の製造方法。
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