JP7035683B2 - R-t-b系焼結磁石 - Google Patents

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Description

本発明は、R-T-B系焼結磁石に関する。
特許文献1に示されるように、R-T-B系焼結磁石は、優れた磁気特性を有することが知られている。現在では、さらなる磁気特性の向上が望まれている。
R-T-B系焼結磁石の磁気特性、特に保磁力を向上させる方法には、原料合金を作製する段階でRとして重希土類元素を含ませる方法(一合金法)が知られている。また、重希土類元素を含まない主相系合金と重希土類元素を含む粒界相系合金とを粉砕後に混合して焼結する方法(二合金法)がある。さらに、特許文献2に記載されているように、R-T-B系焼結磁石を作製した後に、表面に重希土類元素を付着させて加熱することにより、粒界を通じて重希土類元素を拡散させる方法(粒界拡散法)がある。
上記の一合金法は主相粒子中に重希土類元素が存在するため、最大エネルギー積が低下してしまう場合がある。二合金法では主相粒子中の重希土類元素を低減でき、最大エネルギー積の低下を抑制することができる。粒界拡散法では、主相粒子のうち粒界にごく近い領域のみ重希土類元素の濃度を高くでき、主相粒子内部の重希土類元素の濃度を低減できる。すなわち、一般的なコアシェル構造の主相粒子を得ることができる。一般的なコアシェル構造とは、コア部の重希土類元素の濃度がコア部を被覆するシェル部の重希土類元素の濃度よりも低い構造のことである。これにより、二合金法と比べて保磁力を高くし、最大エネルギー積の低下を抑制できる。さらに、高価な重希土類元素の使用量を抑制できる。
また、特許文献3には、従来のR-T-B系焼結磁石よりも保磁力を向上させるために、コア部の重希土類元素の濃度がシェル部の重希土類元素の濃度よりも高い主相粒子を含む技術が記載されている。
特開昭59-46008号公報 国際公開第2006/043348号 特開2016-154219号公報
しかし、現在では、さらなる保磁力の向上およびコストの低減が求められている。
本発明は、磁気特性を向上させ、かつ、低コストであるR-T-B系焼結磁石を得ることを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係るR-T-B系焼結磁石は、
14B結晶からなる主相粒子を含むR-T-B系焼結磁石であって、
Rは1種以上の希土類元素、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素、Bはホウ素であり、
前記R-T-B系焼結磁石が磁石表層部と前記磁石表層部より内側にある磁石中央部とを有し、
磁極面を持つ磁石表層部における前記主相粒子の結晶配向度が磁石中央部における前記主相粒子の結晶配向度より低いことを特徴とする。
本発明に係るR-T-B系焼結磁石は、上記の特徴を有することにより、磁気特性を向上させ、かつ、低コストであるR-T-B系焼結磁石を得ることができる。
本発明に係るR-T-B系焼結磁石は、前記Rは重希土類元素RHを必須とする1種以上の希土類元素であり、
前記磁石表層部に含まれる前記主相粒子の一部が逆コアシェル主相粒子であり、
前記逆コアシェル主相粒子は、コア部およびシェル部を有し、
前記コア部における全RH濃度(at%)をCRC
前記シェル部における全RH濃度(at%)をCRSとした場合に、
RC/CRS>1.0であってもよい。
本発明に係るR-T-B系焼結磁石は、前記コア部に低RH結晶相を含み、
前記低RH結晶相は、前記R14B結晶からなり、前記RHの濃度が前記主相粒子全体における前記RHの濃度に対して相対的に低い相であってもよい。
本発明に係るR-T-B系焼結磁石は、前記コア部に、さらに非磁性Rリッチ相を含んでもよい。
本発明の一実施形態に係るR-T-B系焼結磁石の磁極面を持つ磁石表層部付近における磁極面に垂直な断面の概略図である。 本発明の一実施形態に係る不均一な逆コアシェル主相粒子の概略図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
<R-T-B系焼結磁石>
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石1は、R14B結晶からなる主相粒子を含む。Rは1種以上の希土類元素、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素、Bはホウ素である。Rとして重希土類元素RHを含むことが好ましい。さらに、Zrを含んでもよい。なお、Rとして含まれる希土類元素とは、長周期型周期表の第3族に属するScとYとランタノイド元素とのことをいう。また、重希土類元素RHとは、Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luのことをいう。
Rの含有量には特に制限はないが、25質量%以上35質量%以下であってもよく、好ましくは28質量%以上33質量%以下である。Rの含有量が25質量%以上であると、R-T-B系焼結磁石1の主相粒子となるR14B結晶の生成が十分に行われやすく、軟磁性を持つα-Feなどの析出を抑制し、磁気特性の低下を抑制しやすくなる Rの含有量が35質量%以下であると、R-T-B系焼結磁石1の残留磁束密度Brが向上する傾向にある。
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石におけるBの含有量は、0.5質量%以上1.5質量%以下であってもよく、好ましくは0.8質量%以上1.2質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以上1.0質量%以下である。Bの含有量が0.5質量%以上であることにより保磁力HcJが向上する傾向にある。また、Bの含有量が1.5質量%以下であることにより、残留磁束密度Brが向上する傾向にある。
Tは、Fe単独であってもよく、Feの一部がCoで置換されていてもよい。本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石におけるFeの含有量は、R-T-B系焼結磁石において不可避的不純物,O,CおよびNを除いた場合の実質的な残部である。Coの含有量は0質量%以上4質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上1.5質量%以下とすることが更に好ましい。Fe又はFeおよびCo以外の遷移金属元素としては、特に限定はないが、例えば、Ti,V,Cr,Mn,Ni,Cu,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wなどが挙げられる。また、Tとして含まれる遷移金属元素の一部を、例えば、Al,Ga,Si,Bi,Snなどの元素に置換してもよい。
R-T-B系焼結磁石1がAlおよびCuから選択される1種または2種を含有する場合、Al、Cuから選択される1種または2種の含有量は、それぞれ0.02質量%以上0.60質量%以下とすることが好ましい。AlおよびCuから選択される1種または2種を、それぞれ0.02質量%以上0.60質量%以下、含有することにより、R-T-B系焼結磁石1の保磁力および耐湿性が向上し、温度特性が改善される傾向にある。Alの含有量は0.03質量%以上0.40質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.25質量%以下がより好ましい。また、Cuの含有量は0質量%超0.30質量%以下が好ましく、0質量%超0.20質量%以下がより好ましく、0.03質量%以上0.15質量%以下が更に好ましい。
R-T-B系焼結磁石1は、さらにZrを含むことができる。Zrの含有量は、0質量%超0.25質量%以下であってもよい。Zrを上記の範囲内で含有することにより、焼結磁石の製造過程、主に焼結工程において、主相粒子の異常成長を抑制することができる。そのため、得られる焼結体(R-T-B系焼結磁石1)の組織が均一且つ微細となり、得られる焼結体の磁気特性が向上する傾向にある。上記の効果をより良好に得るために、Zrの含有量は、0.03質量%以上0.25質量%以下であってもよい。
また、R-T-B系焼結磁石1におけるCの含有量は、0.05質量%以上0.30質量%以下が好ましい。Cの含有量を0.05質量%以上とすることで、保磁力が向上する傾向にある。Cの含有量を0.30質量%以下とすることで、角形比(Hk/Hcj)が十分に高くなる傾向にある。Hkとは、磁気ヒステリシスループ(4πI-Hカーブ)の第2象限における磁化が残留磁束密度(Br)の90%となるときの磁界強度のことである。角形比は、外部磁界の作用や温度上昇による減磁のし易さを表すパラメータである。角形比が小さい場合には、外部磁界の作用や温度上昇による減磁が大きくなる。また、着磁に要する磁界強度が増大する。保磁力および角形比をより良好に得るためには、Cの含有量を0.10質量%以上0.25質量%以下とすることが好ましい。
また、R-T-B系焼結磁石1におけるOの含有量は、0.03質量%以上0.40質量%以下が好ましい。Oの含有量を0.03質量%以上とすることで、耐食性が向上する傾向にある。0.40質量%以下とすることで、焼結時に液相が十分に形成されやすくなり、保磁力が向上する傾向にある。耐食性および保磁力をより良好にするために、Oの含有量は、0.05質量%以上0.30質量%以下としてもよく、0.05質量%以上0.25質量%以下としてもよい。
また、R-T-B系焼結磁石1におけるNの含有量は、0質量%以上0.15質量%以下であることが好ましい。Nの含有量が0.15質量%以下であることにより、保磁力が十分に向上する傾向にある。
R-T-B系焼結磁石1は、Mn,Ca,Ni,Cl,S,F等の不可避的不純物を、0.001質量%以上0.5質量%以下程度含んでいてもよい。
R-T-B系焼結磁石中の酸素量、炭素量、窒素量の測定方法は、従来から一般的に知られている方法を用いることができる。酸素量は、例えば、不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法により測定され、炭素量は、例えば、酸素気流中燃焼-赤外線吸収法により測定され、窒素量は、例えば、不活性ガス融解-熱伝導度法により測定される。
14B結晶からなる主相粒子の粒径には特に制限はないが、通常は、1μm以上10μm以下である。
Rの種類には特に制限はないが、好ましくはNd,Prを含む。さらに、重希土類元素RHの種類にも特に制限はないが、好ましくはDyおよびTbのいずれか一方または両方を含む。
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石1は、図1に示すように、磁石表層部1aにおける主相粒子11(低結晶配向主相粒子11a)の結晶配向の向き(図1の矢印の向き)が磁石中央部1bにおける主相粒子11(高結晶配向主相粒子11b)とは異なり固定化されていない。すなわち、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石1は磁石表層部1aにおける前記主相粒子11の結晶配向度が磁石中央部1bにおける前記主相粒子11の結晶配向度より低い。
ここで、結晶配向度が低くなるほど保磁力が高くなり、磁化が低くなると考えられる。原因は下記の通りであると考えられる。
まず、R-T-B系焼結磁石の磁化方向を0°とし、これに対するR14B結晶からなる主相粒子11のc軸方向の角度をθ(°)とする。また、主相粒子11の飽和磁化をJsとする。外部からの磁界が0°の方向からかかる場合に、主相粒子11の磁場方向の飽和磁化の成分はJs×cosθとなる。ここで、結晶配向度が低くなるほどθが大きくなりJs×cosθは小さくなると考えられる。したがって、当該主相粒子11が磁化反転しても、当該主相粒子11の隣の主相粒子11の磁化反転におよぼす影響が小さくなる。すなわち、結晶配向度が低くなることにより、保磁力が高くなり、磁化(残留磁束密度)が低くなると考えられる。
ここで、R-T-B系焼結磁石全体の保磁力は、当該R-T-B系焼結磁石の磁石表面に近い部分の保磁力に大きく影響されることを本発明者らは見出した。一方、R-T-B系焼結磁石全体の磁化(残留磁束密度)は磁石表面に近い部分の磁化(残留磁束密度)のみに大きく影響されないことを本発明者らは見出した。さらに、R-T-B系焼結磁石全体の保磁力は、当該R-T-B系焼結磁石に存在する表面のうち、磁化容易軸に対して垂直な磁石表面(磁極面)に近い部分の保磁力に大きく影響されることを本発明者らは見出した。なお、磁極面とは、磁石が発生させている主な磁力線が通過する磁石表面のことを指す。
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石1は、磁極面を持つ磁石表層部1aにおける主相粒子11の結晶配向度が低くなることにより、磁石表層部1aにおける保磁力が高くなる。そして、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石1は、磁石表層部1aにおける主相粒子11(低結晶配向主相粒子11a)の結晶配向度が磁石中央部1bにおける主相粒子11(高結晶配向主相粒子11b)の結晶配向度よりも低いことにより、高い磁気特性を得ることができる。なお、本実施形態では、磁石表層部とは、磁石表面から磁石内部に向かって5μm以上150μm以下の領域を指す。磁石中央部とは、磁石表層部より内側にある部分を指す。なお、成形時に磁界を印加した方向に対して垂直な面は本技術分野ではC面と呼ばれることもある。また、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石1ではC面と磁極面とが一致しているが、必ずしもC面と磁極面とが一致していなくてもよい。
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石1は、磁石表層部1aに含まれる主相粒子11の一部が逆コアシェル主相粒子であってもよい。逆コアシェル主相粒子はコア部およびシェル部を有する。また、シェル部はコア部を被覆している。コア部とシェル部は前記R14B結晶からなるが、組成が互いに異なる。具体的には、RH濃度がコア部とシェル部とで異なる。なお、各主相粒子11がコアシェル構造を有している粒子であるか否かは、SEMを用いて倍率1000倍以上10000倍以下で観察することにより確認できる。
具体的には、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石1を切断して得られる断面を鏡面研磨してからSEMで反射電子像を撮影する。反射電子像にて生じる組成コントラストから各主相粒子がコアシェル主相粒子であるか逆コアシェル主相粒子であるかを判別できる。一般的に、組成コントラストは観察対象の平均原子番号が大きくなるほど明るく(白く)なる。また、重希土類元素RHはその他のR-T-B系焼結磁石1に含まれる元素と比較して原子番号が大きい。したがって、重希土類元素RHの濃度が相対的に高い領域は重希土類元素RHの濃度が相対的に低い領域と比較して平均原子番号が大きくなる。そして、反射電子像にて主相粒子内部でRH濃度が高い領域はRH濃度が低い領域と比較して明るく(白く)なる。以上より、主相粒子内部で明るい部分の位置によって各主相粒子がコアシェル主相粒子であるか逆コアシェル主相粒子であるかを判別できる。
ここで、逆コアシェル主相粒子は、前記R14B結晶からなる主相粒子であって、コア部における全RH濃度(at%)をCRC、シェル部における全RH濃度(at%)をCRSとした場合に、CRC/CRS>1.0である主相粒子である。
すなわち、逆コアシェル主相粒子は、一般的に知られているコアシェル主相粒子とは逆に、シェル部における全RH濃度よりもコア部における全RH濃度の方が高い主相粒子である。
RCおよびCRSの測定箇所には、特に制限はない。例えば、以下の通りとすることができる。
まず、濃度を測定する逆コアシェル主相粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、長さが最大となる直径を特定する。次に、当該直径と粒界との二つの交点を特定する。そして、当該二つの交点の中点を中心とする20nm×20nmの領域における全RH濃度を測定し、コア部における全RH濃度CRCとすることができる。
次に、当該二つの交点のうち一つの交点を選択する。そして、当該交点から前記長さが最大となる直径に沿って20nm、逆コアシェル主相粒子側に侵入した点を中心とする20nm×20nmの領域における全RH濃度を測定し、シェル部における全RH濃度CRSとすることができる。
また、逆コアシェル主相粒子のコア部における全R濃度に対する全RH濃度には特に制限はないが、概ね原子比で30%以上80%以下程度である。逆コアシェル主相粒子のシェル部における全R濃度に対する全RH濃度には特に制限はないが、概ね原子比で10%以上30%以下程度である。
なお、逆コアシェル主相粒子はコア部の表面全てをシェル部が覆っているが、コア部の表面全てをシェル部が覆う必要はなく、コア部の表面の60%以上を覆っていればよい。コア部およびシェル部の区別はSEMにより行うことができる。
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石1は、逆コアシェル主相粒子を含むことにより、重希土類元素RHの使用量を低減しても高い残留磁束密度および保磁力を有する永久磁石となる。逆コアシェル主相粒子を含むことにより上記の効果が得られるメカニズムは、以下に示すメカニズムであると考えられる。
逆コアシェル主相粒子は、シェル部と比較してより多くのRHを含むことにより、コア部において異方性磁界が高くなる。そのため、逆コアシェル主相粒子のコア部とシェル部との界面において、異方性磁界が変化すると考えられる。上記の逆コアシェル主相粒子内での異方性磁界の変化により、ピニング力が増加すると考えられる。したがって、逆コアシェル主相粒子を含むR-T-B系焼結磁石1は保磁力が向上すると考えられる。
また、本実施形態におけるR-T-B系焼結磁石1では、全主相粒子に対する逆コアシェル主相粒子の存在比率は、磁石中央部1bよりも磁石表層部1aの方が高いことが好ましい。
逆コアシェル主相粒子はコア部により多くの重希土類元素RHを含有する。そのため、逆コアシェル主相粒子自体は残留磁束密度および飽和磁化が低い。逆コアシェル主相粒子は飽和磁化が低いため、ある逆コアシェル主相粒子が磁化反転しても、当該逆コアシェル主相粒子に隣接する主相粒子の磁化反転に及ぼす影響が小さい。すなわち、主に逆コアシェル主相粒子がR-T-B系焼結磁石1の磁石表層部1aに存在していることにより、磁石表面から発生する逆磁区の伝達が抑制される。したがって、逆コアシェル主相粒子が磁石表層部1aにより多く存在していることにより、R-T-B系焼結磁石1は保磁力がさらに向上する。
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石1に含まれる逆コアシェル主相粒子において、CRC/CRS>1.5であることが好ましく、CRC/CRS>3.0であることがより好ましい。逆コアシェル主相粒子において、シェル部に対してコア部に重希土類元素RHがより多く存在するほど上記の効果が大きくなり、保磁力がさらに向上するため好ましい。
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は、図2に示すように、コア部110aおよびシェル部110bを有し、かつ、内部に低RH結晶相210を含む不均一な逆コアシェル主相粒子110を含んでもよい。図2に示すように、低RH結晶相210は一つの不均一な逆コアシェル主相粒子110中に複数存在していてもよい。また、一つの低RH結晶相210の大きさには特に制限はないが、不均一な逆コアシェル主相粒子110に対して、断面積比で5%以上30%以下であることが好ましい。
なお、主相粒子の内部に低RH結晶相210を含むことは、SEMおよびTEMを用いて確認することができる。
低RH結晶相210とは、当該低RH結晶相210の周囲に存在する主相に比べて、重希土類元素RHの濃度が低いR14B結晶相のことである。さらに具体的には、低RH結晶相210における全RH濃度(at%)/全RL濃度(at%)をL1、低RH結晶相の周囲に存在する主相における全RH濃度(at%)/全RL濃度(at%)をN1とする場合において、N1-L1≧0.5となるR14B結晶相のことである。
なお、低RH結晶相210の存在はSEM、SEM-EDS、TEMおよびTEM-EDSにより確認できる。具体的には、主相粒子の内部に何らかの異相が存在することがSEMにより目視にて確認でき、当該異相がR14B結晶相であることはTEMにより確認でき、当該異相のN1-L1はTEM-EDSにより特定できる。
さらに、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石1は、主相粒子11に占める不均一な逆コアシェル主相粒子110の含有比率が、磁石中央部1bよりも磁石表層部1aの方が多いことが好ましい。
具体的には、磁石表層部1aにおける低RH結晶相210を含む主相粒子の存在割合をr(%)、磁石中央部1bにおける前記低RH結晶相を含む主相粒子の存在割合をr(%)とする場合に、r-r≧20%であることが好ましい。
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は、不均一な逆コアシェル主相粒子110を、特に磁石表層部1aに多数有することにより、残留磁束密度および保磁力が向上する。
不均一な逆コアシェル主相粒子110は、低RH結晶相210を有することにより、当該不均一な逆コアシェル主相粒子110内において、異方性磁界の変化が急激に生じると考えられる。この急激な異方性磁界の変化により、ピニング力が増加する。その結果、保磁力が向上すると考えられる。さらに、このような不均一な逆コアシェル主相粒子110が磁石表層部1aに多数存在することにより、磁石表面から発生する逆磁区の伝達が抑制される。したがって、少ない重希土類元素RHの使用量でR-T-B系焼結磁石1の保磁力を向上させることができる。さらに、重希土類元素RHの使用量が低減可能であるため、残留磁束密度を向上させることもできる。また、複数の低RH結晶相210が一つの不均一な逆コアシェル主相粒子110内に存在することにより、どの方向からの磁壁の移動も抑制することができるようになる。さらに、低RH結晶相210が、周囲の主相と同様にR14B系結晶相であることにより、結晶の整合がとれる。このため、歪の発生が抑制され、保磁力向上効果が大きくなる。
好ましくは、低RH結晶相210が重希土類元素RHを実質的に含有しない。「実質的に含有しない」とは、低RH結晶相210におけるRH/Rの原子数比が0.03以下であることを指す。
低RH結晶相210が重希土類RHを実質的に含有しない場合には、上記の低RH結晶相210を含む効果がさらに大きくなる。
また、図2に示すように、不均一な逆コアシェル主相粒子110は、その内部に、さらに非磁性Rリッチ相230を含むことが好ましい。また、複数の非磁性Rリッチ相230が一つの不均一な逆コアシェル主相粒子110内に存在していてもよい。また、一つの非磁性Rリッチ相230の大きさには特に制限はないが、不均一な逆コアシェル主相粒子110に対して、断面積比で、5%以上15%以下であることが好ましい。
非磁性Rリッチ相230とは、具体的には、Rの含有量が70原子%以上100原子%以下であるRリッチ相のことである。また、非磁性Rリッチ相230はR14B系結晶相ではない。
また、主相粒子に非磁性Rリッチ相230が存在することはSEM、SEM-EDS、TEMおよびTEM-EDSにて確認することができる。具体的には、主相粒子の内部に何らかの異相が存在することがSEM画像により目視にて確認でき、当該異相におけるRの含有量はTEM-EDSにより特定できる。
不均一な逆コアシェル主相粒子110内部に非磁性Rリッチ相230を含むことにより、大きな異方性磁界のギャップを粒子内部で複数個所生じさせることができる。そのため、どの方向からの磁壁の運動の伝達も抑制することができ、R-T-B系焼結磁石の保磁力を向上させることができる。
また、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石1が低RH結晶相210および非磁性Rリッチ相230を含む不均一な逆コアシェル主相粒子110を含む場合には、磁石中央部1bよりも磁石表層部1aにより多くの不均一な逆コアシェル主相粒子110を含むことが好ましい。具体的には、磁石表層部1aにおける低RH結晶相210および非磁性Rリッチ相230を含む主相粒子の存在割合をrsh(%)、磁石中央部における低RH結晶相210および非磁性Rリッチ相230を含む主相粒子の存在割合をrch(%)とする場合に、rsh-rch≧20%であることが好ましい。
さらに、図2に示すように、不均一な逆コアシェル主相粒子110においては、コア部110aに低RH結晶相210および非磁性Rリッチ相230を含むことが好ましい。コア部110aに低RH結晶相210および非磁性Rリッチ相230を含む場合に、より保磁力向上の効果が大きくなる。
<R-T-B系焼結磁石の製造方法>
次に、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石の製造方法を説明する。
なお、以下では、粉末冶金法で作製され、重希土類元素が粒界拡散されたR-T-B系焼結磁石を例に説明するが、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石の製造方法は、特に限定されるものではなく、他の方法も用いることができる。
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石の製造方法には、原料粉末を成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、前記焼結体を焼結温度よりも低い温度で一定時間保持する時効工程とを有する。
以下、R-T-B系焼結磁石の製造方法について詳しく説明していくが、特記しない事項については、公知の方法を用いればよい。
[原料粉末の準備工程]
原料粉末は、公知の方法により作製することができる。本実施形態では、主にR14B相からなる一種類の原料合金を用いる一合金法でR-T-B系焼結磁石を製造するが、二種類の原料合金を用いる二合金法により製造してもよい。ここで、原料合金の組成は、最終的に得るR-T-B系焼結磁石の組成となるように制御する。
まず、本実施形態に係る原料合金の組成に対応する原料金属を準備し、当該原料金属から本実施形態に対応する原料合金を作製する。原料合金の作製方法に特に制限はない。例えば、ストリップキャスト法にて原料合金を作製することができる。
原料合金を作製した後に、作製した原料合金を粉砕する(粉砕工程)。粉砕工程は、2段階で実施してもよく、1段階で実施してもよい。粉砕の方法には特に限定はない。例えば、各種粉砕機を用いる方法で実施される。例えば、粉砕工程を粗粉砕工程および微粉砕工程の2段階で実施し、粗粉砕工程は例えば水素粉砕処理を行うことが可能である。具体的には、原料合金に対して室温で水素を吸蔵させた後に、Arガス雰囲気下で400℃以上650℃以下、0.5時間以上2時間以下で脱水素を行うことが可能である。また、微粉砕工程は、粗粉砕後の粉末に対して、例えばオレイン酸アミド、ステアリン酸亜鉛などを添加したのちに、例えばジェットミル、湿式アトライター等を用いて行うことができる。得られる微粉砕粉末(原料粉末)の粒径には特に制限はない。例えば、粒径(D50)が1μm以上10μm以下の微粉砕粉末(原料粉末)となるように微粉砕を行うことができる。
[成形工程]
成形工程では、粉砕工程により得られた微粉砕粉末(原料粉末)を所定の形状に成形する。成形方法には特に限定はないが、本実施形態では、微粉砕粉末(原料粉末)を金型内に充填し、磁場中で加圧する。
成形時の加圧は、30MPa以上300MPa以下で行うことが好ましい。印加する磁場は、950kA/m以上1600kA/m以下であることが好ましい。微粉砕粉末(原料粉末)を成形して得られる成形体の形状は特に限定されるものではなく、例えば直方体、平板状、柱状等、所望とするR-T-B系焼結磁石の形状に応じて任意の形状とすることができる。
[焼結工程]
焼結工程は、成形体を真空または不活性ガス雰囲気中で焼結し、焼結体を得る工程である。焼結温度は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、成形体に対して、例えば、真空中または不活性ガスの存在下、1000℃以上1200℃以下、1時間以上10時間以下で加熱する処理を行うことにより焼結する。これにより、高密度の焼結体(焼結磁石)が得られる。
[時効処理工程]
時効処理工程は、焼結工程後の焼結体(焼結磁石)に対して、焼結温度よりも低い温度で加熱することにより行う。時効処理の温度および時間には特に制限はないが、例えば450℃以上900℃以下で0.2時間以上3時間以下、行うことができる。なお、この時効処理工程は省略してもよい。
また、時効処理工程は1段階で行ってもよく、2段階で行ってもよい。2段階で行う場合には、例えば1段階目を700℃以上900℃以下で0.2時間以上3時間以下とし、2段階目を450℃以上700℃以下で0.2時間以上3時間以下としてもよい。また、1段階目と2段階目とを連続して行ってもよく、1段階目の後に一度室温近傍まで冷却してから再加熱して2段階目を行ってもよい。
[結晶配向度低下工程]
本実施形態における主相粒子の結晶配向度を低下させる方法には特に制限がない。例えば、以下に示す分解工程、粒界拡散工程および再結合工程を経ることで結晶配向度を低下させることができる。
[分解工程]
分解工程とは、主に磁石表層部に存在するR14B結晶からなる主相粒子を分解し、微細化する工程である。分解工程の条件は、主に磁石表層部に存在するR14B結晶からなる主相粒子を分解させ、微細化させることができれば特に制限はない。
例えばHガス、COガスまたはNガスを含む不活性雰囲気中、600℃以上900℃以下程度で5分間以上60分間以下程度、加熱することで、主に磁石表層部に存在する主相粒子にH、COまたはNを吸蔵させて不均化させて微細化させることになる。
ガス、COガスまたはNガスの濃度、加熱温度および/または加熱時間を制御することで、主相粒子が微細化する領域の厚さを制御し、最終的に得られる低結晶配向度層の厚さを制御することができる。
また、酸化性ガスを含む酸化性雰囲気、300℃以上500℃以下程度で20分間以上60分間以下程度、加熱することでも、磁石表層部に存在する主相粒子を不均化させ、微細化させることができる。
[拡散処理工程]
本実施形態では、分解工程に続いて、さらに希土類元素を拡散させる拡散処理工程を有する。拡散処理は、希土類元素を含む化合物(以下、単に希土類化合物と呼ぶ場合がある)等を、前記分解工程を行った焼結体の表面に付着させた後、熱処理を行うことにより、実施することができる。希土類元素を含む化合物を付着させる方法には特に制限はなく、たとえば希土類元素を含むスラリーを塗布することで付着させることができる。拡散させる希土類元素の種類は任意であるが、重希土類元素が好ましい。重希土類元素を拡散させる場合には、スラリーの塗布量とスラリーに含まれる重希土類元素の濃度を制御することで、上記のCRC/CRSを制御することができる。
ただし、前記希土類元素を付着させる方法は特に制限は無い。例えば、蒸着、スパッタリング、電着、スプレー塗布、刷毛塗り、ジェットディスペンサ、ノズル、スクリーン印刷、スキージ印刷、シート工法等を用いる方法がある。
スラリーを塗布する場合、希土類化合物は粒子状であることが好ましい。また、平均粒径は100nm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。
スラリーに用いる溶媒としては、希土類化合物を溶解させずに均一に分散させ得るものが好ましい。例えば、アルコール、アルデヒド、ケトン等が挙げられ、なかでもエタノールが好ましい。
スラリー中の希土類化合物の含有量には特に制限はない。例えば、50重量%以上90重量%以下であってもよい。スラリーには、必要に応じて希土類化合物以外の成分をさらに含有させてもよい。例えば、希土類化合物粒子の凝集を防ぐための分散剤等が挙げられる。
上記の拡散処理工程を、前記分解工程を行った焼結体に対して行うことにより、焼結体全体の粒界に加えて、主に磁石表層部に存在する微細化した粒子内部においても、希土類元素が拡散することになる。
拡散処理工程の条件には特に制限はないが、650℃以上1000℃以下で1時間以上24時間以下、行うことが好ましい。上記の範囲内の温度および時間とすることで、微細化した粒子に取り込まれる希土類元素の割合を多くしやすくなる。また、拡散処理工程の際に、上記のHガス、COガス、Nガスまたは酸化性ガスに含まれる各成分が放出される。
[再結合工程]
拡散処理工程後に再結合工程を経ることにより、微細化していた粒子が再結合し、R14B結晶が生成される。しかし、再結合しても結晶配向度が分解前の値に戻らず、結晶配向度が低下することになる。再結合工程は、例えば、50℃/分以上500℃/分以下の速度で急冷を行うことにより行われる。冷却速度には特に制限はないが、冷却速度が速すぎると非晶質を多く含んだ微結晶になる傾向にあり、冷却速度が遅すぎると逆コアシェル主相粒子110のコア部110aとシェル部110bとの界面が不明瞭になる傾向にある。
以上より、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石の製造方法としては、少なくとも、磁石表層部の主相粒子を分解して微細化する分解工程、微細化した粒子に希土類元素を拡散させる粒界拡散工程、および微細化した粒子を再結合させる再結合工程がこの順で行われることが重要である。これにより、R-T-B系焼結磁石の磁石表層部において結晶配向度を低下させることができる。上記の分解工程、粒界拡散工程、および再結合工程の方法および条件はあくまでも例示である。分解工程は磁石表層部の主相粒子を分解して微細化する工程であればよい。粒界拡散工程は微細化した粒子に希土類元素を拡散させることができればよい。再結合工程は微細化した粒子を再結合させることができればよい。なお、上記の分解工程、粒界拡散工程および再結合工程を経ることで逆コアシェル粒子を磁石表層部に生成させることもできる。
[再時効処理工程]
再時効処理工程は、再結合工程後の焼結磁石に対して、拡散処理工程の最高温度よりも低い温度で加熱することにより行う。再時効処理の温度および時間には特に制限はないが、例えば450℃以上800℃以下で0.2時間以上3時間以下、行うことができる。
以上の工程により得られたR-T-B系焼結磁石は、めっきや樹脂被膜や酸化処理、化成処理などの表面処理を施してもよい。これにより、耐食性をさらに向上させることができる。
さらに、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石を切断、分割して得られる磁石を用いることができる。
具体的には、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は、モータ、コンプレッサー、磁気センサー、スピーカ等の用途に好適に用いられる。
また、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は、単独で用いてもよく、2個以上のR-T-B系焼結磁石を必要に応じて結合させて用いてもよい。結合方法に特に制限はない。例えば、機械的に結合させる方法や樹脂モールドで結合させる方法がある。
2個以上のR-T-B系焼結磁石を結合させることで、大きなR-T-B系焼結磁石を容易に製造することができる。2個以上のR-T-B系焼結磁石を結合させた磁石は、特に大きなR-T-B系焼結磁石が求められる用途、例えば、IPMモータ、風力発電機、大型モータ等に好ましく用いられる。
次に、本発明を具体的な実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
(焼結磁石作製工程)
原料金属として、Nd、電解鉄、低炭素フェロボロン合金を準備した。さらに、Al,Cu,Co,Zrを、純金属またはFeとの合金の形で準備した。
前記原料金属に対し、ストリップキャスト法により、焼結磁石の組成が後述する表1の合金Aに示す組成となるように焼結体用合金(原料合金)を作製した。表1に示した各元素の含有量(重量%)はNd,B,Al,Cu,Co,ZrおよびFeの合計含有量を100重量%としたときの値である。また、前記原料合金の合金厚みは0.2mm以上0.6mm以下とした。
次いで、前記原料合金に対して室温で1時間、水素ガスをフローさせて水素を吸蔵させた。次いで雰囲気をArガスに切り替え、450℃で1時間、脱水素処理を行い、原料合金を水素粉砕した。さらに、冷却後にふるいを用いて400μm以下の粒度の粉末とした。
次いで、水素粉砕後の原料合金の粉末に対し、重量比で0.1%のオレイン酸アミドを粉砕助剤として添加し、混合した。
次いで、衝突板式のジェットミル装置を用いて窒素気流中で微粉砕し、それぞれ平均粒径が4μm程度の微粉(原料粉末)を得た。なお、前記平均粒径は、レーザ回折式の粒度分布計で測定した平均粒径D50である。
なお、表1に記載していない元素では、H,Si,Ca,La,Ce,Cr等が検出される場合がある。Siは主にフェロボロン原料および合金溶解時のるつぼから混入する。Ca,La,Ceは希土類の原料から混入する。また、Crは電解鉄から混入する可能性がある。
得られた微粉を磁界中で成形して成形体を作製した。このときの印加磁場は1200kA/mの静磁界である。また、成形時の加圧力は120MPaとした。なお、磁界印加方向と加圧方向とを直交させるようにした。この時点での成形体の密度を測定したところ、全ての成形体の密度が4.10Mg/m以上4.25Mg/m以下の範囲内であった。
次に、前記成形体を焼結し、焼結磁石を得た。焼結条件は、1060℃で4時間保持とした。焼結雰囲気は真空中とした。このとき焼結密度は7.50Mg/m以上7.55Mg/m以下の範囲にあった。その後、Ar雰囲気、大気圧中で、第一時効温度T1=900℃で1時間の第一時効処理を行い、さらに、第二時効温度T2=500℃で1時間の第二時効処理を行った。
得られた焼結磁石の組成は蛍光X線分析で評価した。Bの含有量はICPで評価した。各試料における焼結磁石の組成が表2の通りであることを確認した。そして、得られた焼結磁石に対し、以下に示す各実施例1~14および比較例1~4の処理を行った。
(実施例1)
上記の工程により得られた焼結磁石を、幅20mm、長さ20mm、配向方向の厚み5mmの直方体となるように加工した後、水素が5体積%、Arが95体積%である雰囲気ガス中、750℃で10分間保持し、主に磁石表層部に存在する主相粒子を不均化し微細化した。焼結磁石の磁極面(C面)は20mm×20mmの面である。
次いで、焼結磁石の全面に対し、TbH粒子(平均粒径D50=5μm)をエタノールに分散させたスラリーを、焼結磁石の重量に対するTbの重量が0.5重量%となるように塗布することでTbを付着させた。前記スラリーを塗布後に大気圧でArをフローしながら770℃で5時間の熱処理を実施し、続いて950℃で5時間の熱処理を施し、Tbを粒界拡散させた。そして、微細化した主相粒子の内部にまでTbを拡散させた。
前記熱処理後に冷却速度200℃/分で急冷し、微細化した粒子を再結合化させた。
その後、Ar雰囲気、大気圧中で、500℃で1時間の再時効処理を行った。
前記再時効処理後の焼結磁石について、BHトレーサーで磁気特性(残留磁束密度Br、保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcj)の評価を行った。
(実施例2)
上記の工程により得られた焼結磁石をCOが8体積%、Arが92体積%である雰囲気ガス中、700℃で10分間保持し、主に磁石表層部に存在する主相粒子を不均化し微細化した。
次いで、焼結磁石の全面に対し、TbH粒子(平均粒径D50=5μm)をエタノールに分散させたスラリーを、焼結磁石の重量に対するTbの重量比が0.5重量%となるように塗布することでTbを付着させた。前記スラリーを塗布後に大気圧でArをフローしながら770℃で5時間の熱処理を実施し、続いて950℃で5時間の熱処理を施した。そして、微細化した粒子の内部にまでTbを拡散させた。
前記熱処理後に冷却速度200℃/分で急冷し、微細化した粒子を再結合させた。
その後、Ar雰囲気、大気圧中で、500℃で1時間の再時効処理を行った
前記再時効処理後の焼結磁石について、BHトレーサーで磁気特性(残留磁束密度Br、保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcj)の評価を行った。
(実施例3)
上記の工程により得られた焼結磁石をNが8体積%、Arが92体積%である雰囲気ガス中、650℃で30分間保持し、主に磁石表層部に存在する主相粒子を不均化し微細化した。
次いで、焼結磁石の全面に対し、TbH粒子(平均粒径D50=5μm)をエタノールに分散させたスラリーを、焼結磁石の重量に対するTbの重量比が0.5重量%となるように塗布することでTbを付着させた。前記スラリーを塗布後に大気圧でArをフローしながら770℃で5時間の熱処理を実施し、続いて950℃で5時間の熱処理を施した。そして、微細化した粒子の内部にまでTbを拡散させた。
前記熱処理後に冷却速度200℃/分で急冷し、微細化した粒子を再結合させた。
その後、Ar雰囲気、大気圧中で、500℃で1時間の再時効処理を行った。
前記再時効処理後の焼結磁石について、BHトレーサーで磁気特性(残留磁束密度Br、保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcj)の評価を行った。
(実施例4)
上記の工程により得られた焼結磁石を水蒸気分圧200hPaに調整されたガスを含む酸化性雰囲気中、400℃で30分間保持し、主に磁石表層部に存在する主相粒子を不均化し微細化した。
次いで、焼結磁石の全面に対し、TbH粒子(平均粒径D50=5μm)をエタノールに分散させたスラリーを、焼結磁石の重量に対するTbの重量比が0.5重量%となるように塗布することでTbを付着させた。前記スラリーを塗布後に大気圧でArをフローしながら770℃で5時間の熱処理を実施し、続いて950℃で5時間の熱処理を施した。そして、微細化した粒子の内部にまでTbを拡散させた。
前記熱処理後に冷却速度200℃/分で急冷し、微細化した粒子を再結合させた。
その後、Ar雰囲気、大気圧中で、500℃で1時間の再時効処理を行った。
前記再時効処理後の焼結磁石について、BHトレーサーで磁気特性(残留磁束密度Br、保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcj)の評価を行った。
(実施例5)
TbH粒子(平均粒径D50=5μm)を、TbH粒子(平均粒径D50=5μm)およびNdH粒子(平均粒径D50=5μm)をTb:Nd=80:20(原子数比)となるように混合させた粒子に置き換える点以外は実施例1と同様に実施した。なお、焼結磁石の重量に対するTbの重量が0.5重量%となるようにTbおよびNdを付着させた。
(実施例6)
TbH粒子(平均粒径D50=5μm)を、TbH粒子(平均粒径D50=5μm)およびNdH粒子(平均粒径D50=5μm)をTb:Nd=70:30(原子数比)となるように混合させた粒子に置き換える点以外は実施例1と同様に実施した。なお、焼結磁石の重量に対するTbの重量が0.5重量%となるようにTbおよびNdを付着させた。
(実施例7)
水素が5体積%、Arが95体積%である雰囲気ガス中での保持時間を20分間にした点以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例8)
水素が5体積%、Arが95体積%である雰囲気ガス中での保持時間を30分間にした点以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例9)
熱処理後の冷却速度を50℃/分にした点以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例10)
熱処理後の冷却速度を500℃/分にした点以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例11)
上記の工程により得られた焼結磁石をHガス雰囲気中、750℃で10分間保持し、主に磁石表層部に存在する主相粒子を不均化し微細化した。
次いで、焼結磁石の全面に対し、TbH粒子(平均粒径D50=5μm)をエタノールに分散させたスラリーを、焼結磁石の重量に対するTbの重量が0.5重量%となるように塗布することでTbを付着させた。前記スラリーを塗布後に大気圧でArをフローしながら770℃で5時間の熱処理を実施し、続いて820℃で5時間の熱処理を施した。そして、微細化した粒子の内部にまでTbを拡散させた。
前記熱処理後に冷却速度200℃/分で急冷し、微細化した粒子を再結合させた。
その後、Ar雰囲気、大気圧中で、500℃で1時間の再時効処理を行った。
前記再時効処理後の焼結磁石について、BHトレーサーで磁気特性(残留磁束密度Br、保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcj)の評価を行った。
(実施例12)
TbH粒子(平均粒径D50=5μm)を、NdH粒子(平均粒径D50=5μm)に置き換えた点以外は実施例1と同様にして実施した。なお、焼結磁石の重量に対する塗布するNdの重量が0.5重量%となるようにNdを付着させた。
(実施例13)
焼結磁石の両磁極面(C面)のみに、TbH粒子(平均粒径D50=5μm)をエタノールに分散させたスラリーを塗布することでTbを付着させた点以外は実施例1と同様に実施した。なお、焼結磁石の重量に対するTbの重量が0.5重量%となるようにTbを付着させた。
(実施例14)
TbH粒子(平均粒径D50=5μm)を、TbH粒子(平均粒径D50=5μm)およびNdH粒子(平均粒径D50=5μm)をTb:Nd=50:50(原子数比)となるように混合させた粒子に置き換える点以外は実施例1と同様に実施した。なお、焼結磁石の重量に対するTbの重量が0.5重量%となるようにTbおよびNdを付着させた。
(比較例1)
上記の焼結磁石作製工程により得られた焼結磁石全面に対し、TbH粒子(平均粒径D50=5μm)をエタノールに分散させたスラリーを、焼結磁石の重量に対するTbの重量が0.5重量%となるように塗布することでTbを付着させた。
前記スラリーを塗布後に大気圧でArをフローしながら770℃で5時間の熱処理を実施し、続いて950℃で5時間の熱処理を施し、Tbを粒界拡散させた。そして、前記熱処理後に冷却速度200℃/分で急冷した。
その後、Ar雰囲気、大気圧中で、500℃で1時間の再時効処理を行った。
前記再時効後の焼結磁石について、BHトレーサーで磁気特性(残留磁束密度Br、保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcj)の評価を行った。
(比較例2)
焼結磁石作製工程において、表1に示す組成となるように焼結体用合金(原料合金)BおよびCを作製した。表1に示す原料合金Bおよび原料合金Cを水素粉砕した後に、重量比で9:1となるように混合した。その後、実施例1と同様に微粉砕、成形、焼結および時効処理を行い、表2に示す組成を有する焼結磁石を得た。なお、当該焼結磁石の組成は、上記拡散処理後の実施例1~4,7~11,13および比較例1,4の焼結磁石の組成と同一になることを確認した。
前記時効処理後の焼結磁石について、BHトレーサーで磁気特性(残留磁束密度Br、保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcj)の評価を行った。
(比較例3)
焼結磁石の表層部に存在する主相粒子を不均化させず微細化させない点以外は実施例12と同様に実施した。
(比較例4)
焼結磁石の両磁極面(C面)を除く4面に、TbH粒子(平均粒径D50=5μm)をエタノールに分散させたスラリーを塗布することでTbを付着させた点以外は実施例1と同様に実施した。なお、焼結磁石の重量に対するTbの重量が0.5重量%となるようにTbを付着させた。
表3には、実施例1~11および14、比較例1,2の各R-T-B系焼結磁石の表層部に存在する主相粒子を分解する分解処理を行ったか、粒界拡散処理を行ったか、そして、粒界拡散後に急冷を行ったかのそれぞれについて記載した。各処理を行った場合には○、各処理を行わなかった場合には×を付けた。さらに、各実施例および比較例について、焼結磁石の両磁極面(C面)にRHを付着させたか、および、焼結磁石の両磁極面(C面)を除く4面にRHを付着させたかについても記載した。各面にRHを付着させた場合には○、各面にRHを付着させなかった場合には×を付けた。
さらに、実施例1~11および14、比較例1,2のR-T-B系焼結磁石について、BHトレーサーで磁気特性(残留磁束密度Br保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcj)の評価を行った結果を表3に示す。なお、残留磁束密度Brは1380mT以上を良好とし、1400mT以上をさらに良好とした。保磁力Hcjは1790kA/m以上を良好とし、1830kA/m以上をさらに良好とした。角形比Hk/Hcjは0.95以上である場合を良好とした。
また、各実施例および比較例のR-T-B系焼結磁石について、結晶配向度を以下の方法で測定した。
まず、各実施例および比較例のR-T-B系焼結磁石の磁極面を鏡面研磨した。その後、鏡面研磨した面のX線回折測定を行い、得られた回折ピークを基にロットゲーリング法により配向度を算出した。ロットゲーリング法では、(00l)反射の成分のX線回折強度I(00l)と(hk0)反射の成分のX線回折強度I(hk0)に基づいて、下記数1に示す式により結晶配向度fcを算出することができる。
Figure 0007035683000001
なお、ロットゲーリング法により配向度を算出する場合、回折ピークのうち、配向方向、すなわち(00l)反射の成分のみが分子側に積算される。回折ピークのうち、配向方向から少しでも外れる成分については、配向方向から垂直方向、すなわち(hk0)反射の成分と判断される。すなわち、前記数1に示す式において、分子側からは除外され、分母側に積算される。したがって、実際の配向度に比べて算出される配向度はかなり小さな値となる。実際に即した配向度を算出するためには、回折ピークに対してベクトル補正を行うことが好ましいが、本実施例ではベクトル補正を実施しない。
上記の方法により、磁極面の結晶配向度を算出した。さらに、低結晶配向度層の厚みを以下の方法で測定した。
磁極面から10μmずつ研磨し、10μmごとに鏡面研磨した面のX線回折測定を行い、ロットゲーリング法により結晶配向度を算出した。磁石中央部の結晶配向度に対し、2%以上、結晶配向度が低下している部分の厚さを低結晶配向度層の厚さとした。なお、磁石中央部の結晶配向度とは、10μmごとに算出した結晶配向度の中で、最も結晶配向度が高くなる場合における結晶配向度を指す。また、磁石中央部の結晶配向度に対して2%以上、磁極面の結晶配向度が低下しない場合には、低結晶配向度層が存在しないものとした。
さらに、磁極面を持つ磁石表層部のうち、磁極面から磁石内部に向かって20μmの部分における逆コアシェル主相粒子の存在割合を測定した。磁石表層部における逆コアシェル主相粒子の存在割合の測定は、磁極面を持つ磁石表層部のうち、磁極面から磁石内部に向かって20μmの部分にある主相粒子からランダムに選んだ10個の主相粒子についてSEMおよびTEM-EDSを用いて行った。また、磁石中央部における逆コアシェル主相粒子の存在割合を測定した。磁石中央部における逆コアシェル主相粒子の存在割合の測定は、磁石中央部にある主相粒子の中からランダムに選んだ10個の主相粒子についてSEMおよびTEM-EDSを用いて行った。結果を表4に示す。
さらに、磁極面を持つ磁石表層部に存在する逆コアシェル主相粒子について、コア部における全RHの濃度CRCおよびシェル部におけるにおける全RHの濃度CRSをTEM-EDSを用いて測定した。そして、各逆コアシェル主相粒子におけるCRC/CRS>1.5である粒子の割合およびCRC/CRS>3.0である粒子の割合をTEM-EDSを用いて算出した。結果を表4に示す。
実施例1~11および14における逆コアシェル主相粒子において、コア部における全RH濃度およびシェル部における全RH濃度の測定箇所は以下の通りとする。
まず、濃度を測定する逆コアシェル主相粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、長さが最大となる直径を特定する。次に、当該直径と粒界との二つの交点を特定する。そして、当該二つの交点の中点を中心とする20nm×20nmの領域における全RH濃度を測定し、コア部における全RH濃度CRCとする。
次に、当該二つの交点のうち一つの交点を選択する。そして、当該交点から前記長さが最大となる直径に沿って20nm、逆コアシェル主相粒子側に侵入した点を中心とする20nm×20nmの領域における全RH濃度を測定し、シェル部における全RH濃度CRSとする。
また、実施例1~11および14、比較例1,2の磁極面を持つ磁石表層部における低RH結晶相を含む粒子の存在割合r(%)、および、磁石中央部における低RH結晶相を含む粒子の存在割合r(%)をSEM、SEM-EDS、TEMおよびTEM-EDSを用いて測定した。具体的には、磁極面を持つ磁石表層部および磁石中央部のそれぞれについて、主相粒子を10個選択し、10個のうちいくつの粒子が低RH結晶相を含むかを測定した。結果を表4に示す。
さらに、実施例1~11および14、比較例1,2について、磁極面を持つ磁石表層部における低RH結晶相および非磁性Rリッチ相を含む粒子の存在割合(rsh)(%)、および、磁石中央部における低RH結晶相および非磁性Rリッチ相を含む粒子の存在割合(rch)(%)をSEM-EDS、TEMおよびTEM-EDSを用いて測定した。結果を表4に示す。
Figure 0007035683000002
Figure 0007035683000003
Figure 0007035683000004
Figure 0007035683000005
表1~表4より、焼結後に磁石表層部の主相粒子を分解し微細化する工程、粒界拡散により微細化した粒子にRHを取り込ませる工程、および、急冷によりRHを取り込んだ粒子を再結合する工程を経た実施例1~11,14のR-T-B系焼結磁石は磁極面(C面)を持つ磁石表層部の主相粒子の結晶配向度が磁石中央部の主相粒子の結晶配向度より低くなった。そして、残留磁束密度Br、保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcjが好ましい結果となった。
さらに、低結晶配向度層の厚みが10μm以上70μm以下である実施例1~7,9~11,14は残留磁束密度Brがさらに好ましい結果となった。さらに、逆コアシェル主相粒子が存在し、かつ、逆コアシェル主相粒子のうちCRC/CRS>1.5である逆コアシェル主相粒子の割合が90%以上である実施例1~5,7および8は保磁力Hcjがさらに好ましい結果となった。
さらに、r-r≧20%である実施例1~11,14は好ましい残留磁束密度Brおよび保磁力Hcjが得られた。また、rsh-rch≧60%である実施例1~5,7はさらに好ましい残留磁束密度Brおよび保磁力Hcjが得られた。
これに対し、焼結後に磁石表層部の主相粒子を分解し微細化する工程、粒界拡散により微細化した粒子にRHを取り込ませる工程、および、急冷によりRHが取り込まれた粒子を再結合する工程を経なかった比較例では、磁石表層部の結晶配向度が低下しなかった。その結果、残留磁束密度Br、保磁力Hcjおよび/または角形比Hk/Hcjが実施例1~11,14より劣る結果となった。
比較例1では焼結後に磁石表層部の主相粒子を分解し微細化とする工程を行わなかったため、粒界拡散および急冷を経ても主相粒子にRHが取り込まれず、結晶配向度が低下しなかった。比較例2では、2合金法により焼結磁石を作製した結果、磁石表層部の主相粒子の結晶配向度と磁石中央部の主相粒子の結晶配向度とが同等になった。その結果、残留磁束密度Br、保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcjが実施例1~11,14より劣る結果となった。
また、実施例12と比較例3とを比較した結果を表5に、実施例13と比較例4とを比較した結果を表6に示す。
表5には、実施例12および比較例3についてR-T-B系焼結磁石の表層部に存在する主相粒子を分解する分解処理を行ったか、粒界拡散処理を行ったか、そして、粒界拡散後に急冷を行ったかのそれぞれについて記載した。各処理を行った場合には○、各処理を行わなかった場合には×を付けた。さらに、BHトレーサーで磁気特性(残留磁束密度Br保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcj)の評価を行った結果を表5に示す。なお、RHを粒界拡散させていない実施例12および比較例3の比較においては、保磁力は1250kA/m以上を良好とした。
表6には、実施例13および比較例4についてR-T-B系焼結磁石の表層部に存在する主相粒子を分解する分解処理を行ったか、粒界拡散処理を行ったか、そして、粒界拡散後に急冷を行ったかのそれぞれについて記載した。各処理を行った場合には○、各処理を行わなかった場合には×を付けた。さらに、各実施例および比較例について、焼結磁石の両磁極面(C面)にRHを付着させたか、および、焼結磁石の両磁極面(C面)を除く4面にRHを付着させたかについても記載した。各面にRHを付着させた場合には○、各面にRHを付着させなかった場合には×を付けた。さらに、BHトレーサーで磁気特性(残留磁束密度Br保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcj)の評価を行った結果を表6に示す。
Figure 0007035683000006
Figure 0007035683000007
表5より、焼結後に磁石表層部の主相粒子を分解し微細化する工程、粒界拡散により微細化した粒子にNdを取り込ませる工程、および、急冷によりNdが取り込まれた粒子を再結合する工程を行った実施例12は、焼結後に磁石表層部の主相粒子を分解し微細化する工程を行わなかった比較例3と比較して保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcjが向上した。さらに、実施例12は磁石表面における結晶配向度が低下したのに対し、比較例3は磁石表面における結晶配向度が低下しなかった。すなわち、重希土類元素を粒界拡散させなくても、焼結後に磁石表層部の主相粒子を分解し微細化する工程、粒界拡散により微細化した粒子にNdを取り込ませる工程、および、急冷によりNdが取り込まれた粒子を再結合する工程を行うことで、磁石表面における結晶配向度を低下させ、保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcjを向上させることができる。
表6より、両磁極面のみにTbを付着させた実施例13は、両磁極面以外の4面のみにTbを付着させた比較例4と比較して保磁力Hcjが大きく向上した。すなわち、磁極面(C面)にRHを取り込ませて磁極面を持つ磁石表層部における主相粒子の結晶配向度を低下させることで、保磁力Hcjを向上させることができることが分かる。なお、実施例1よりも実施例13の方が保磁力の向上がみられたのは、実施例13の方が実施例1よりも磁極面におけるTb付着量が多く、磁極面を持つ磁石表層部における主相粒子の結晶配向度の低下の度合いが大きかったためであると考えられる。
1…R-T-B系焼結磁石
1a…(磁極面を持つ)磁石表層部
1b…磁石中央部
11…主相粒子
11a…低結晶配向主相粒子
11b…高結晶配向主相粒子
12…粒界
110…不均一な逆コアシェル主相粒子
110a…コア部
110b…シェル部
210…低RH結晶相
230…非磁性Rリッチ相

Claims (4)

  1. 14B結晶からなる主相粒子を含むR-T-B系焼結磁石であって、
    Rは1種以上の希土類元素、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素、Bはホウ素であり、
    前記R-T-B系焼結磁石が磁石表層部と前記磁石表層部より内側にある磁石中央部とを有し、
    磁極面を持つ磁石表層部における前記主相粒子の結晶配向度が磁石中央部における前記主相粒子の結晶配向度より低く、
    前記磁石中央部の結晶配向度に対し、2%以上、結晶配向度が低下している層である低結晶配向度層を有することを特徴とするR-T-B系焼結磁石。
  2. 前記Rは重希土類元素RHを必須とする1種以上の希土類元素であり、
    前記磁石表層部に含まれる前記主相粒子の一部が逆コアシェル主相粒子であり、
    前記逆コアシェル主相粒子は、コア部およびシェル部を有し、
    前記コア部における全RH濃度(at%)をCRC
    前記シェル部における全RH濃度(at%)をCRSとした場合に、
    RC/CRS>1.0である請求項1に記載のR-T-B系焼結磁石。
  3. 前記コア部に低RH結晶相を含み、
    前記低RH結晶相は、前記R14B結晶からなり、前記RHの濃度が前記主相粒子全体における前記RHの濃度に対して相対的に低い相である請求項2に記載のR-T-B系焼結磁石。
  4. 前記コア部に、さらに非磁性Rリッチ相を含む請求項3に記載のR-T-B系焼結磁石。
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