JP2020150262A - R−t−b系焼結磁石 - Google Patents

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大介 山道
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Abstract

【課題】重希土類RHの使用量を低減し、Brの低下を抑制しつつ高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を提供する。【解決手段】R−T−B系焼結磁石は、軽希土類元素RLを主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有し、重希土類元素RHを含有するR−T−B系焼結磁石であって、R−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μmの位置におけるR2Fe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(α)が1.0μm以下のRH拡散層((RL1−xRHx)2Fe14B(0.1≦x≦0.75))を有し、R−T−B系焼結磁石の表面から深さ300μmの位置におけるR2Fe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(β)が0.6μm以下のRH拡散層を有し、かつ、次式(1)を満たしている。0.05≦α−β≦0.6・・・式(1)【選択図】なし

Description

本開示は、R−T−B系焼結磁石に関する。
Fe14B型化合物を主相とするR−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFe又はFeとCo)は、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られており、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)、電気自動車用(EV、HV、PHVなど)モータ、産業機器用モータなどの各種モータや家電製品等に使用されている。
R−T−B系焼結磁石は、主としてRFe14B型化合物からなる主相と、この主相の粒界部分に位置する粒界相とから構成されている。主相であるRFe14B型化合物は高い飽和磁化と異方性磁界を持つ強磁性材料であり、R−T−B系焼結磁石の特性の根幹をなしている。
R−T−B系焼結磁石は、高温で固有保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」という)が低下するため、不可逆熱減磁が起こる。不可逆熱減磁を回避するため、モータ用等に使用する場合、高温下でも高いHcJを維持することが要求されている。
R−T−B系焼結磁石は、RFe14B型化合物相中のRの一部を重希土類元素RH(Dy、Tb等)で置換すると、HcJが向上することが知られている。高温で高いHcJを得るためには、R−T−B系焼結磁石中に重希土類元素RHを多く添加することが有効である。しかし、R−T−B系焼結磁石において、Rとして軽希土類元素RL(Nd、Pr)を重希土類元素RHで置換すると、HcJが向上する一方、残留磁束密度B(以下、単に「B」という)が低下してしまうという問題がある。また、重希土類元素RHは希少資源である。これらの理由により重希土類元素RHの使用量を削減することが求められている。
そこで、近年、より少ない重希土類元素RHによってR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させるために、R−T−B系焼結磁石表面にTb、Dy等の重希土類元素RHを供給し、その重希土類元素RHを磁石内部に拡散させることが提案されている。これにより、主相外殻部(粒界近傍)に重希土類元素RHを多く分布させることができる。主相外殻部(粒界近傍)に重希土類元素RHのシェル層(RH濃化層)を分布させることによりBの低下を抑制することができ、さらに、R−T−B系焼結磁石のHcJ発生機構は核生成型(ニュークリエーション型)であるため、主相外殻部(粒界近傍)に重希土類元素RHのシェル層を分布させることにより結晶粒全体の結晶磁気異方性が高められ、逆磁区の核生成が妨げられ、その結果、HcJが向上する。
特許文献1には、DyおよびTb等を含有する粉末を焼結体表面に存在させた状態で焼結温度よりも低い温度で加熱することで、前記粉末からDyおよびTb等を焼結体に拡散させる方法が記載されている。
特許文献2および特許文献3には、焼結磁石(特許文献3は焼結体)とDy等を含有する蒸発材料(特許文献3はバルク体)とを網を介して離間して配置し、焼結磁石と蒸発材料とを所定温度に加熱することにより、蒸発材料からDy等を焼結磁石に拡散させる方法が記載されている。
特許文献4には、複数個のR−T−B系焼結磁石体とDy等を含有する複数個のRH拡散源とを相対的に移動可能かつ近接又は接触可能に処理室内に挿入し、前記R−T−B系焼結磁石体と前記RH拡散源とを前記処理室内にて連続的に又は断続的に移動させながら加熱することによって、前記RH拡散源からDy等をR−T−B系焼結磁石体に拡散させる方法が記載されている。
特開2008−147634号公報 特開2008−171995号公報 国際公開第2007/102391号 国際公開第2011/007758号
しかし、特許文献1に記載の方法によれば、焼結体表面に蓄積された重希土類元素RHが一気に焼結体内部に拡散するため、焼結体の表層領域において主相の中央部分に近いところまでも重希土類元素RHが拡散する。これによりBの低下を招く。また、焼結体の表層領域において多くの重希土類元素RHが消費されるため、磁石体の表層領域からさらに奥の領域(磁石の中央部分)にまで十分な重希土類元素RHを拡散させることが困難となる。
また、特許文献2〜4に記載の方法によれば、重希土類元素RHが表面に衝突したあと焼結磁石内部に速やかに拡散する。しかし、重希土類元素RHの供給が磁石表面に逐次行われるため、焼結磁石の表層領域からさらに奥の領域(磁石の中央部分)にまで十分な重希土類元素RHを拡散しようとすると、焼結磁石の表層領域の主相において比較的厚い重希土類元素RHのシェル層が形成されてしまう場合がある。
このように、特許文献1〜4に記載のR−T−B系焼結磁石では、焼結磁石の表層領域において、重希土類元素RHが主相外殻部(粒界近傍)のみならず主相内部にまで拡散したり、比較的厚い重希土類元素RHのシェル層が形成される場合があるため、必ずしも十分にBの低下を抑制しつつ、HcJを向上させているとは言い難い。
本開示の様々な実施形態は、重希土類RHの使用量を低減し、Bの低下を抑制しつつ高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を提供する。
本開示のR−T−B系焼結磁石は、例示的な実施形態において、軽希土類元素RL(RLはNd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するRFe14B型化合物結晶粒を主相として有し、重希土類元素RH(RHはTb、DyおよびHoからなる群から選択された少なくとも1種)を含有するR−T−B系焼結磁石であって、前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(α)が1.0μm以下のRH拡散層((RL1−xRHFe14B(0.1≦x≦0.75))を有し、前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ300μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(β)が0.6μm以下のRH拡散層を有し、かつ、下記式(1)を満たしている。
0.05≦α−β≦0.6 式(1)
ある実施形態において、前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(α)が0.8μm以下のRH拡散層((RL1−xRHFe14B(0.1≦x≦0.75)を有する。
ある実施形態において、前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ300μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(β)が0.5μm以下のRH拡散層((RL1−xRHFe14B(0.1≦x≦0.75)を有する。
ある実施形態において、さらに、下記式(2)を満足する。
0.1≦α−β≦0.4 式(2)
本開示により、重希土類RHの使用量を低減し、Bの低下を抑制しつつ高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を提供することができる。
R−T−B系焼結磁石(No.1−1)の表面から深さ20μmの位置における、RFe14B型化合物結晶粒の外殻部のRH拡散層を電界放出型走査電子顕微鏡により観察した写真である。 R−T−B系焼結磁石(No.1−2)の表面から深さ20μmの位置における、RFe14B型化合物結晶粒の外殻部のRH拡散層を電界放出型走査電子顕微鏡により観察した写真である。 特許文献3に記載の拡散方法に好適に用いられる処理容器の構成と、処理容器内における拡散源とR−T−B系焼結磁石素材との配置関係の一例を模式的に示す断面図である。 R−T−B系焼結磁石(No.2−1)の表面から深さ20μmの位置における、RFe14B型化合物結晶粒の外殻部のRH拡散層を電界放出型走査電子顕微鏡により観察した写真である。
本開示のR−T−B系焼結磁石は、軽希土類元素RLを主たる希土類元素Rとして含有するRFe14B型化合物結晶粒を主相として有し、重希土類元素RHを含有するR−T−B系焼結磁石であり、焼結磁石の表面領域(R−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μmの位置)におけるRFe14B型化合物結晶粒の外殻部に平均厚さ(α)が1.0μm以下(好ましくは0.8μm以下)の薄いRH拡散層((RL1−xRHFe14B(0.1≦x≦0.75))を有し、さらに、焼結磁石の表面領域からさらに奥の領域(R−T−B系焼結磁石の表面から深さ300μmの位置)におけるRFe14B型化合物結晶粒の外殻部に平均厚さ(β)が0.6μm以下(好ましくは0.5μm以下)であり、前記αよりも平均厚さがさらに薄いRH拡散層を有する。そして、磁石の表面領域の方が、奥の領域よりもRH拡散層の平均厚さが厚いものの、その差が非常に少ない特定の範囲とする(0.05≦α−β≦0.6 式(1))。このようなRH拡散層をもつR−T−B系焼結磁石は、焼結磁石の表層領域において多くの重希土類元素RHが消費されることなく、焼結磁石の表層領域からさらに奥の領域にまで十分な重希土類元素RHが拡散する。これにより、重希土類RHの使用量を低減し、Bの低下を抑制しつつ高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができる。
本開示のR−T−B系焼結磁石は、例えば、軽希土類元素RL(RLはNd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有するR−T−B系焼結磁石素材(TはFe又はFeとCo)を用意する工程と、重希土類元素RH(RHはTb、DyおよびHoからなる群から選択された少なくとも1種)を含む合金または化合物の粉末から形成した拡散源粉末を用意する工程と、前記R−T−B系焼結磁石素材の表面の少なくとも一部に、前記拡散源粉末の少なくとも一部を接触させる工程と、前記拡散源粉末が接触した状態のR−T−B系焼結磁石素材を、800℃以上前記R−T−B系焼結磁石素材の焼結温度以下の温度で30時間以上加熱する熱処理をして、前記拡散源粉末に含まれる重希土類元素RHを前記R−T−B系焼結磁石素材の表面から内部に拡散する拡散工程とを行うことにより得ることができる。
通常、拡散工程における加熱時間は、加熱時間を長くしていくと(例えば5時間から10時間)、磁石の表層領域において主相内部への重希土類元素RHの拡散が進んでいく。よって、従来、加熱時間を長くすればするほど、磁石の表層領域において主相内部へ重希土類元素RHが拡散され、これによりBの低下を招き、さらに表層領域において多くの重希土類元素RHが消費されることで磁石の中央部分にまで十分な重希土類元素RHを拡散させることが困難となりHcJの向上が妨げられると考えられてきた。しかし、検討の結果、全く意外なことに、加熱時間を30時間以上行うと、主相内部に重希土類元素RHが拡散されず、重希土類元素RHを主相外殻部(粒界近傍)に拡散させることができることが分かった。また、磁石の表層領域からさらに奥の領域にまで重希土類元素RHを拡散させることができることが分かった。
前記拡散工程における加熱時間は、必ずしも30時間以上とする必要はなく、拡散前のR−T−B系焼結磁石素材や拡散源の組成、拡散温度との兼ね合いによって決まる。上述した本開示のR−T−B系焼結磁石となるように、適宜、R−T−B系焼結磁石素材や拡散源の組成、拡散温度及び拡散時間を調整すればよい。
(R−T−B系焼結磁石)
本開示のR−T−B系焼結磁石は、
軽希土類元素RL(RLはNd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するRFe14B型化合物結晶粒を主相として有し、重希土類元素RH(RHはTb、DyおよびHoからなる群から選択された少なくとも1種)を含有するR−T−B系焼結磁石であって、
前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(α)が1.0μm以下のRH拡散層((RL1−xRHFe14B(0.1≦x≦0.75))を有し、
前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ300μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(β)が0.6μm以下のRH拡散層を有し、かつ、
下記式(1)を満たしている。
0.05≦α−β≦0.6 式(1)
本開示におけるRH拡散層とは、(RL1−xRHFe14B(0.1≦x≦0.75)の組成を有し、RFe14B型化合物結晶粒の中央部よりもRH濃度が高い層をいう。RH拡散層の組成およびRFe14B型化合物結晶粒の中央部のRH濃度は、例えば以下のようにして確認する。まず、R−T−B系焼結磁石の磁石断面におけるRFe14B型化合物結晶粒を電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察する。観察する箇所は、前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μm及び300μmにおける任意の磁石断面である。次にRFe14B型化合物結晶粒を電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて組成分析する。これにより、RH拡散層の組成およびRFe14B型化合物結晶粒の中央部のRH濃度を確認することができる。
前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒の外殻部におけるRH拡散層の平均厚さ(α)が1.0μmを超えると、RHの表面領域において多くの重希土類元素RHが消費され、焼結磁石の表面領域からさらに奥の領域にまで十分な重希土類元素RHを拡散させることが困難となり、重希土類RHの使用量を低減し、Bの低下を抑制しつつ高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることが出来ない。好ましくは、前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(α)が0.1μm以上1.0μm以下のRH拡散層を有し、さらに好ましくは、外殻部に平均厚さ(α)は0.1μm以上0.8μm以下である。これにより重希土類RHの使用量を低減し、Bの低下を抑制しつつ更に高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができる。
前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ300μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒の外殻部におけるRH拡散層の平均厚さ(β)が0.6μmを超えると、Bが低下する可能性がある。好ましくは、前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ300μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(β)が0.05μm以上0.6μm以下のRH拡散層を有し、さらに好ましくは、RH拡散層の平均厚さ(β)は0.05μm以上0.5μm以下である。これにより重希土類RHの使用量を低減し、Bの低下を抑制しつつ更に高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができる。前記深さ300μmの位置と前記深さ20μmの位置は、R−T−B系焼結磁石の表面から深さ方向においてほぼ延長線上にある位置である。また、R−T−B系焼結磁石の表面から深さ300μmの位置とR−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μmの位置は、いずれもR−T−B系焼結磁石の同じ表面からの距離を測定した位置である。
外殻部における平均厚さ(α)び(β)は、以下ようにして求める。
まず、R−T−B系焼結磁石の磁石断面におけるRFe14B型化合物結晶粒を例えば、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察する。観察する箇所は、前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μm及び300μmにおける任意の磁石断面であり、観察視野は、RFe14B型化合物結晶粒が5個〜20個程度観察可能な広さである。次にRFe14B型化合物結晶粒を例えば、EPMAを用いて組成分析することによりRH拡散層を確認する。次に、視野の中からR−T−B系焼結磁石のRFe14B型化合物結晶粒全体における平均粒子径の値程度(例えば平均粒子径が4μmであれば4μm前後)のRFe14B型化合物結晶粒を抽出する。これは、RFe14B型化合物結晶粒の微粉を測定しないことを意味している。そのため、厳密に選定する必要はなく、例えば平均粒子径が4μmであれば、3〜6μm程度を抽出すればよい。なお、平均粒子径は画像処理により個々の粒子の円相当径の複数個の平均値として求められる。例えばEBSD(電子線後方散乱回折)を用いて測定することにより求めることができる。そして、抽出したRFe14B型化合物結晶粒の中でRH拡散層の厚さが最大(比較的厚い)と思われる箇所におけるRH拡散層の厚さを例えば、画像処理ソフトウエア―「ImageJ」を用いて測定する。このようにして複数の視野で15点(RFe14B型化合物結晶粒を15個)測定し、その平均値を平均厚さ(α)及び(β)とする。
R−T−B系焼結磁石は下記式(1)を満たしている。
0.05≦α−β≦0.6 式(1)
式(1)を満たすということは、重希土類元素RHが磁石表面から内部に拡散されていることを示している。また、式(1)を満たすことにより、焼結磁石の表層領域において多くの重希土類元素RHが消費されることなく、焼結磁石の表層領域からさらに奥の領域にまで十分な重希土類元素RHが拡散する。
R−T−B系焼結磁石は、例えば以下の組成を有する。
希土類元素R:27.5〜35.0質量%(RHをR−T−B系焼結磁石全体の10質量%以下含む)、
B(B(ボロン)の一部はC(カーボン)で置換されていてもよい):0.80〜1.20質量%、
Ga:0〜0.8質量%、
添加元素M(Al、Cu、Zr、Nbからなる群から選択された少なくとも1種):0〜2質量%、
T((TはFe又はFeとCo)及び不可避不純物:残部。
本開示のR−T−B系焼結磁石は、切削加工や研磨加工が施されていてもよい。また、本開示のR−T−B系焼結磁石は、例えば、軽希土類元素RL(RLはNd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有するR−T−B系焼結磁石素材(TはFe又はFeとCo)を用意する工程と、重希土類元素RH(RHはTb、DyおよびHoからなる群から選択された少なくとも1種)を含む合金または化合物の粉末から形成した拡散源粉末を用意する工程と、前記R−T−B系焼結磁石素材の表面の少なくとも一部に、前記拡散源粉末の少なくとも一部を接触させる工程と、前記拡散源粉末が接触した状態のR−T−B系焼結磁石素材を、800℃以上前記R−T−B系焼結磁石素材の焼結温度以下の温度で30時間以上加熱する熱処理をして、前記拡散源粉末に含まれる重希土類元素RHを前記R−T−B系焼結磁石素材の表面から内部に拡散する拡散工程とを行うことにより得ることができる。
なお、本開示において、拡散工程前および拡散工程中のR−T−B系焼結磁石を「R−T−B系焼結磁石素材」と称し、拡散工程後のR−T−B系焼結磁石を単に「R−T−B系焼結磁石」と称する。
(R−T−B系焼結磁石素材を用意する工程)
軽希土類元素RL(RLはNd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有するR−T−B系焼結磁石素材(TはFe又はFeとCo)を用意する。
R−T−B系焼結磁石素材は公知のものが使用できる。例えば、以下の組成を有する。
希土類元素R:27.5〜35.0質量%、
B(B(ボロン)の一部はC(カーボン)で置換されていてもよい):0.80〜1.20質量%、
Ga:0〜0.8質量%、
添加元素M(Al、Cu、Zr、Nbからなる群から選択された少なくとも1種):0〜2質量%、
T((TはFe又はFeとCo)及び不可避不純物:残部。
希土類元素Rは主として軽希土類元素RLを含有するが、重希土類元素RH(RHはTb、DyおよびHoからなる群から選択された少なくとも1種)を含有していてもよい。
上記組成のR−T−B系焼結磁石素材は、公知の任意の製造方法によって製造される。R−T−B系焼結磁石素材は焼結上がりでもよいし、切削加工や研磨加工が施されていてもよい。
また、R−T−B系焼結磁石素材は、その厚さ方向の寸法が1mm以上5mm以下であることが好ましい。厚さ方向とは、例えば、磁石が矩形状で、4mm×4mm×2mmの場合は、2mmが厚さ方向となる。また、寸法が同じ場合、例えば、2mm×2mm×2mmの場合は、2mmが厚さ方向となる。厚さ方向の寸法が1mm未満になると強度不足によるひびや割れが発生する可能性があり、5mmを超えると、R−T−B系焼結磁石素材の中央部分にまで十分な重希土類元素RHを拡散させることが困難になる可能性がある。また、必ずしも厚さ方向が磁化方向である必要はなく、厚さ方向と異なる方向が磁化方向であってもよい。
(拡散源粉末を用意する工程)
重希土類元素RH(RHはTb、DyおよびHoからなる群から選択された少なくとも1種)を含む合金または化合物の粉末から形成した拡散源粉末を用意する。
拡散源粉末は、例えばRHM合金粉末(MはNd、Pr、Ce、Cu、Ga、Fe、Co、Ni、およびAlからなる群から選択された少なくとも1種)である。
RHM合金粉末の作製方法は、特に限定されない。ロール急冷法によって合金薄帯を作製し、この合金薄帯を粉砕する方法で作製してもよいし、遠心アトマイズ法、回転電極法、ガスアトマイズ法、プラズマアトマイズ法などの公知のアトマイズ法で作製してもよい。鋳造法で作製したインゴットを粉砕してもよい。RHM合金粉末の典型例は、DyFe合金粉末、DyAl合金粉末、DyCu合金粉末、TbFe合金粉末、TbAl合金粉末、TbCu合金粉末、DyFeCu合金粉末、TbCuAl合金粉末、TbNdPrCu合金粉末、TbNdCePrCu合金粉末、TbNdGa合金粉末、TbNdPrGaCu合金粉末などである。また、RHM合金粉末は、好ましくはCuを含む。Cuを含むことにより、R−T−B系焼結磁石素材の表層領域からさらに奥の領域(磁石の中央部分)にまで十分な重希土類元素RHを拡散させることができる。RHM合金粉末の粒度は、例えば500μm以下であり、小さいものは10μm程度である。
重希土類元素RHの化合物は、RHフッ化物、RH酸フッ化物、RH酸化物から選ばれる1種以上であり、これらを総称してRH化合物と称する。RH酸フッ化物は、RHフッ化物の製造工程における中間物質としてRHフッ化物に含まれるものであってもよい。入手可能な多くのRH化合物の粉末の粒度は、凝集した2次粒子の大きさにおいて、20μm以下、典型的には10μm以下、小さいものは1次粒子で数μm程度である。
(R−T−B系焼結磁石素材の表面の少なくとも一部に、拡散源粉末の少なくとも一部を接触させる工程)
前記R−T−B系焼結磁石素材の表面の少なくとも一部に、前記拡散源粉末の少なくとも一部を接触させる。R−T−B系焼結磁石素材の表面に拡散源粉末を接触させる方法は特に問わない。R−T−B系焼結磁石素材の表面の少なくとも一部に、拡散源粉末の少なくとも一部を付着させることができればどのような方法でも良い。例えば、スプレー法、浸漬法、ディスペンサーによる塗布などがあげられる。また、R−T−B系焼結磁石素材の表面に粘着剤を塗布し、粘着剤が付着したR−T−B系焼結磁石素材の表面に拡散源粉末を散布する方法により付着させてもよい。例えば、流動させた拡散源粉末の中に粘着剤が塗布されたR−T−B系焼結磁石素材を浸漬させる方法いわゆる流動浸漬法(fulidized bed coating process)を用いてもよい。以下、流動浸漬法を応用する例について説明する。
流動浸漬法は、従来、粉体塗装の分野で広く行われている方法であり、流動させた熱可塑性の粉体塗料の中に加熱した被塗物を浸漬し被塗物表面の熱によって塗料を融着させる方法である。この例では流動浸漬法を磁石に応用するために、熱可塑性の粉体塗料の代わりに上述の拡散源粉末を用い、加熱した塗布物の代わりに粘着剤が塗布されたR−T−B系焼結磁石素材を用いる。拡散源粉末を流動させる方法はどのような方法でも良い。例えば、1つの具体例として、下部に多孔質の隔壁を設けた容器を用いる方法を説明する。この例では、容器内に拡散源粉末を入れ、隔壁の下部から大気又は不活性ガスなどの気体に圧力をかけて容器内に注入し、その圧力又は気流で隔壁上方の拡散源粉末を浮かせて流動させることができる。
容器の内部で流動する拡散源粉末に粘着剤が塗布されたR−T−B系焼結磁石素材を浸漬させる(あるいは配置する又は通過させる)ことで拡散源粉末をR−T−B系焼結磁石素材に付着させる。粘着剤が塗布されたR−T−B系焼結磁石素材を浸漬する時間は、例えば0.5〜5.0秒程度である。流動浸漬法を用いることで、容器内に拡散源粉末が流動(撹拌)されるため、比較的大きい粉末粒子が偏って磁石表面に付着したり、逆に比較的小さい粉末粒子が隔たって磁石表面に付着したりすることが抑制される。そのため、より均一にR−T−B系焼結磁石素材に拡散源粉末を付着させることができる。
(拡散工程)
拡散源粉末が接触した状態のR−T−B系焼結磁石素材を、800℃以上R−T−B系焼結磁石素材の焼結温度以下の温度で熱処理する。好ましくは、30時間以上加熱する熱処理をして、前記拡散源粉末に含まれる重希土類元素RHを前記R−T−B系焼結磁石素材の表面から内部に拡散させる。加熱温度が800℃以下であると、重希土類元素RHを含む液相量が少なすぎてR−T−B系焼結磁石の内部への拡散が不十分となり高いHcJを得ることが出来ない可能性があり、焼結温度を超えると異常粒成長が発生し、B及びHcJが大きく低下する可能性がある。加熱温度は、好ましくは850℃以上950℃以下である。より高いHcJを得ることができる。また、熱処理は、公知の熱処理装置を用いて行うことができる。
上述したように、拡散工程における加熱時間は、必ずしも30時間以上する必要はなく、拡散前のR−T−B系焼結磁石素材や拡散源の組成、拡散温度との兼ね合いによって決まる。上述した本開示のR−T−B系焼結磁石となるように、適宜、R−T−B系焼結磁石素材や拡散源の組成、拡散温度及び拡散時間を調整すればよい。
本開示の拡散工程における加熱時間は、R−T−B系焼結磁石素材の温度が設定温度になった時(例えば設定温度が920℃の場合は920℃になった時)を開始点とし、設定温度よりも20℃を超えて低くなった時(例えば設定温度が920℃の場合は900℃未満になった時)を終了点とする。熱処理を2回以上に分けて行う場合は、合計時間が30時間以上になればよい。また、R−T−B系焼結磁石素材の温度は、例えば、磁石素材に熱電対をとりつけることにより測定することができる。加熱時間は、好ましくは30時間以上45時間以下であり、より好ましくは35時間以上40時間以下である。
拡散工程を行った後のR−T−B系焼結磁石は、磁気特性を向上させることを目的とした第二の熱処理を行ってもよい。第二の熱処理における温度、時間などの条件は、焼結磁石の熱処理条件として公知の条件(例えば、500℃で3時間)を採用することができる。また、最終的な磁石寸法の調整を研削などの機械加工等により行ってもよい。この場合、第二の熱処理の前に行っても、後に行ってもよい。
本開示を実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示はそれらに限定されるものではない。
実験例1
(R−T−B系焼結磁石素材を用意する工程)
R−T−B系焼結磁石素材がおよそ表1の符号1−Aの組成となるよう各元素を秤量しストリップキャスト法により鋳造し、厚さ0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金を水素粉砕した後、550℃まで真空中で加熱後冷却する脱水素処理を施し粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100質量%に対して0.04質量%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。なお、粒径D50は、気流分散法によるレーザー回折法で得られた体積中心値(体積基準メジアン径)である。
前記微粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を微粉砕粉100質量%に対して0.05質量%添加、混合した後磁界中で成形し成形体を得た。なお、成形装置には、磁界印加方向と加圧方向とが直交するいわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
得られた成形体を4時間焼結(焼結による緻密化が十分起こる温度を選定)し、R−T−B系焼結磁石素材(No.1−A)を複数個用意した。得られたR−T−B系焼結磁石素材の密度は7.5Mg/m以上であった。得られたR−T−B系焼結磁石素材の成分の結果を表1に示す。なお、表1における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。なお、焼結体の酸素量をガス融解−赤外線吸収法で測定した結果、0.1質量%前後であることを確認した。また、No.1−AのR−T−B系焼結磁石素材を切断、切削加工し、4.4mm×10.4m」m×11.4mmの直方体(10.4mm×11.4mmの面が配向方向と垂直な面、4.4mm方向が厚さ方向であり、配向方向)とした。
(拡散源粉末を用意する工程)
表2のNo.1−aに示す組成の合金粉末をアトマイズ法により作成することにより、拡散源粉末を用意した。得られた拡散源粉末の粒度は106μm以下であった。
(R−T−B系焼結磁石素材の表面の少なくとも一部に、拡散源粉末の少なくとも一部を接触させる工程)
次に、表1のNo.1−AのR−T−B系焼結磁石素材表面全面に粘着剤を塗布した。塗布方法は、R−T−B系焼結磁石素材をホットプレート上で60℃に加熱後、スプレー法でR−T−B系焼結磁石素材に粘着剤を塗布した。粘着剤としてPVP(ポリビニルピロリドン)を用いた。
次に、粘着剤を塗布したR−T−B系焼結磁石素材(No.1−A)に対して、表2のNo.1−aの拡散源粉末を付着させた。付着方法は、容器に拡散源粉末を広げ、容器内で拡散源粉末を粘着剤を塗布したR−T−B系焼結磁石素材全面にまぶすように付着させた。
(拡散工程)
管状流気炉を用いて、200Paに制御した減圧アルゴン中で、拡散源粉末(No.1−a)が接触した状態のR−T−B系焼結磁石素材を、920℃で36時間加熱する熱処理(拡散処理)を行った。更に拡散処理後のR−T−B系焼結磁石に対し、490℃で6時間加熱する第二の熱処理を行いR−T−B系焼結磁石(No.1−1)を得た。また、拡散処理における加熱時間を36時間から10時間に変更する以外はNo.1−1のR−T−B系焼結磁石と同様にしてR−T−B系焼結磁石(No.1−2)を作製した。得られたR−T−B系焼結磁石(No.1−1及びNo.1−2)に機械加工を行い4.0mm×10.0mm×11.0mmの直方体(10.0mm×11.0mmの面が配向方向と垂直な面、4.0mm方向が厚さ方向であり、配向方向)を作成した。加工後のR−T−B系焼結磁石の磁気特性をB−Hトレーサによって測定した。各試料のB及びHcJを測定した。結果を表3に示す。
表3に示すように、加熱時間を36時間行うことにより、Bの低下を抑制しつつ、高いHcJが得られている。
No.1−1及び1−2について、RFe14B型化合物結晶粒の外殻部におけるRH拡散層の平均厚さ(α)及び(β)を以下のようにして測定した。なお、R−T−B系焼結磁石(No.1−1及びNo.1−2)は、機械加工を行い4.0mm×10.0m」m×11.0mmの直方体(10.0mm×11.0mmの面が配向方向と垂直な面、4.0mm方向が厚さ方向であり、配向方向)である。
まず、R−T−B系焼結磁石(No.1−1)の表面(10.0mm×11.0mmの表面)から深さ20μmの任意の断面におけるRFe14B型化合物結晶粒を電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM))により観察した。観察結果を図1に示す。EPMAによる組成分析をすることによりRH拡散層を確認した所、図1中の薄いグレーの層(例えば1〜4の白線で示した層)であることを確認した。次に、図1の視野において、R−T−B系焼結磁石のRFe14B型化合物結晶粒全体における平均粒子径の値程度(EBSDで測定した所、No.1−1の平均粒子径は5μmであったため、5μm程度)のRFe14B型化合物結晶粒を抽出した。そして抽出したRFe14B型化合物結晶粒の中でRH拡散層の厚さが最大(比較的大きい)と思われる箇所を画像処理ソフトウエア―「ImageJ」を用いて測定した。具体的には図1の1〜4の白線で示した厚さを測定した。同様の方法で複数の視野を用いて15点(RFe14B型化合物結晶粒を15個)測定し、その平均値を求めることで平均厚さ(α)を求めた。No.1−1における平均厚さ(β)、No.1−2における平均厚さ(α)及び(β)も同様な方法で測定した。なお。No.1−1における平均厚さ(α)と(β)はそれぞれ同じ磁石表面から測定した位置であり、No.1−2における平均厚さ(α)及び(β)も同様である。測定結果を表4に示す。
表4に示すように、本発明例であるNo.1−1は平均厚さ(α)及び(β)が本開示の範囲内であり、さらに式(1)を満たしている。これに対し、比較例であるNo.1−2は平均厚さ(α)が1.0μmを超えており、さらに式(1)を満たしていない。
図2にNo.1−2におけるR−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μmの位置におけるRFe14B型化合物結晶粒の外殻部のRH拡散層を電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM))により観察した結果を示す。図1と図2の比較からNo.1−2(図2)は、RFe14B型化合物結晶粒の中央部分に近いところまでも重希土類元素RHが拡散していることが分かる。
実験例2
比較例として特許文献3に記載の方法で拡散処理を行った。まず、実験例1と同様な方法でR−T−B系焼結磁石素材(No.1−A)を作成した。次に、拡散源として、厚さ10mm×幅25mm×長さ25mmのDyメタルを準備した。更に、保持部材として厚さ3mm×幅35mm×長さ35mm、4メッシュの平板形状のMo製網を準備した。図3は、特許文献3に記載の拡散方法に好適に用いられる処理容器の構成と、処理容器6内における拡散源4とR−T−B系焼結磁石素材2との配置関係の一例を模式的に示す断面図である。図3に示すように、保持部材8を介して、準備したR−T−B系焼結磁石素材2と拡散源4を配置した。処理容器6内を、920℃で4時間加熱する熱処理(拡散処理)を行った。更に拡散処理後のR−T−B系焼結磁石に対し、490℃で6時間加熱する第二の熱処理を行いR−T−B系焼結磁石(No.2−1)を得た。
No.2−1について、RFe14B型化合物結晶粒におけるRH拡散層の平均厚さα及びβを実験例1と同様な方法で測定した。結果を表5に示す。
表5に示すように、比較例であるNo.2−1は平均厚さ(α)が1.0μmを超えており、さらに式(1)を満たしていない。
図4にNo.2−1におけるR−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μmの位置におけるRFe14B型化合物結晶粒の外殻部のRH拡散層を電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM))により観察した結果を示す。図1と図4の比較からNo.2−1(図4)は、RFe14B型化合物結晶粒の中央部分に近いところまでも重希土類元素RHが拡散していることが分かる。
実験例3
実験例1と同様な方法でR−T−B系焼結磁石素材(No.1−A)を作成した。次に、表6のNo.2−aに示す組成の合金粉末をアトマイズ法により作成することにより、拡散源粉末を用意した。得られた拡散源粉末の粒度は106μm以下であった。
次に、実施例1と同様な方法でNo.1−AのR−T−B系焼結磁石素材表面に粘着剤を塗布した。次に、粘着剤を塗布したR−T−B系焼結磁石素材(No.1−A)に対して、表6のNo.2−aの拡散源粉末を実施例1と同様な方法で付着させた。そして、管状流気炉を用いて、200Paに制御した減圧アルゴン中で、拡散源粉末(No.2−a)が接触した状態のR−T−B系焼結磁石素材を、930℃で36時間加熱する熱処理(拡散処理)を行った。更に拡散処理後のR−T−B系焼結磁石に対し、490℃で6時間加熱する第二の熱処理を行いR−T−B系焼結磁石(No.3−1)を得た。また、拡散処理における加熱時間を36時間から10時間に変更する以外はNo.3−1のR−T−B系焼結磁石と同様にしてR−T−B系焼結磁石(No.3−2)を作製した。得られたR−T−B系焼結磁石(No.3−1及びNo.3−2)に機械加工を行い4.0mm×10.0mm×11.0mmの直方体(10.0mm×11.0mmの面が配向方向と垂直な面、4.0mm方向が厚さ方向であり、配向方向)を作成した。加工後のR−T−B系焼結磁石の磁気特性をB−Hトレーサによって測定した。各試料のB及びHcJを測定した。結果を表7に示す。
表7に示すように、加熱時間を36時間行うことにより、Bの低下を抑制しつつ、高いHcJが得られている。
No.3−1及び3−2について、RFe14B型化合物結晶粒の外殻部におけるRH拡散層の平均厚さ(α)及び(β)を実施例1と同様な方法で測定した。測定結果を表8に示す
表8に示すように、本発明例であるNo.3−1は平均厚さ(α)及び(β)が本開示の範囲内であり、さらに式(1)を満たしている。これに対し、比較例であるNo.3−2は平均厚さ(α)が1.0μmを超えており、さらに式(1)を満たしていない。
本開示により得られたR−T−B系焼結磁石は、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)や、電気自動車用(EV、HV、PHVなど)モータ、産業機器用モータなどの各種モータや家電製品等などに好適に利用することができる。

Claims (4)

  1. 軽希土類元素RL(RLはNd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するRFe14B型化合物結晶粒を主相として有し、重希土類元素RH(RHはTb、DyおよびHoからなる群から選択された少なくとも1種)を含有するR−T−B系焼結磁石であって、
    前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(α)が1.0μm以下のRH拡散層((RL1−xRHFe14B(0.1≦x≦0.75))を有し、
    前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ300μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(β)が0.6μm以下のRH拡散層を有し、かつ、
    下記式(1)を満たしているR−T−B系焼結磁石。
    0.05≦α−β≦0.6 式(1)
  2. 前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ20μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(α)が0.8μm以下のRH拡散層((RL1−xRHFe14B(0.1≦x≦0.75)を有する、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石。
  3. 前記R−T−B系焼結磁石の表面から深さ300μmの位置における前記RFe14B型化合物結晶粒は、外殻部に平均厚さ(β)が0.5μm以下のRH拡散層((RL1−xRHFe14B(0.1≦x≦0.75)を有する、請求項1又は2に記載のR−T−B系焼結磁石。
  4. さらに、下記式(2)を満足する、請求項1〜3のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石。
    0.1≦α−β≦0.4 式(2)
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