JP2019203149A - 硬質材料およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】BやNを内部まで均質に固溶させたFeAl合金またはNiAl合金の結合相を有することで、室温における硬度や靭性(強度)などの機械的特性に優れた耐熱性硬質材料と、その製造方法を提供する。【解決手段】(1)4族、5族、6族の金属炭化物のうち少なくとも1種を含む硬質相と、(2)アルミニウムの割合が20原子%以上50原子%以下である鉄アルミニウム合金、および、アルミニウムの割合が20原子%以上50原子%以下であるニッケルアルミニウム合金のうち少なくとも1種を含む結合相を複合した硬質材料であって、前記結合相にホウ素および窒素が固溶していることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、金属炭化物の硬質相と、アルミニウム合金の結合相を複合した硬質材料およびその製造方法に関する。
WC-Co超硬合金は硬質粒子である炭化タングステン(WC)粒子と金属コバルト(Co)で焼き固めた硬質材料である。WC-Co超硬合金は硬さと靭性のバランスに優れた材料であるため、切削工具や金型材料など精密加工分野において非常に広く用いられている。
しかし、超硬合金の結合相として用いられているCoは600℃以上の高温において酸化が促進しやすい面を持っている。この酸化の影響により、超硬合金は600℃以上の高温における強度の低下や耐酸化性に課題を抱えている。本課題を克服したすなわち600℃以上の高温における強度の維持や高温耐酸化性を有した硬質材料を作製するためには、高温強度や高温耐酸化性に優れた結合相の材質を選択し、WCなどの硬質粒子と複合化させることが有力な案である。
高温強度や高温耐酸化性に優れる結合相の材質の候補としてAlを含む合金や金属間化合物が挙げられる。例えば、特許文献1には鉄アルミニウム(FeAl)合金を結合相としてWCと複合化させることにより、高温耐酸化性に優れた超硬合金が得られたと記載されている。
FeAl合金は600℃付近の高温において優れた降伏強度を示すため、この温度域においてFeAl合金を結合相に用いた硬質材料(以下FeAl合金硬質材料と記載)は、硬度や強度・靭性などの機械的特性に優れた特徴を有する。また、ニッケルアルミニウム(NiAl)合金もFeAl合金と同様600℃付近の高温において優れた強度を示すため、この温度域においてNiAl合金を結合相に用いた硬質材料(以下NiAl合金硬質材料と記載)も、硬度や強度・靭性などの機械的特性に優れた特徴を有する。以上のことからFeAl合金硬質材料およびNiAl合金硬質材料はWC-Co超硬合金よりも600℃付近の高温特性に優れた硬質材料として期待できる。
しかし、FeAl合金硬質材料やNiAl合金硬質材料の室温における機械的特性は、WC-Co超硬合金に比べ、同じ結合相の体積率で比較すると硬度では若干上回るが、強度や靭性が低いという問題がある。室温における強度や靭性などの機械的特性は高温における機械的特性にも影響を与えるため、室温強度や靭性の向上がFeAl合金焼結体やNiAl合金硬質材料の重要な課題となる。
FeAl合金硬質材料やNiAl合金硬質材料の室温における強度や靭性を上げるには、硬質相に対する結合相の割合を増やす手法が簡便であるが、本手法は代償として硬さが低下してしまう。このため硬さを低下させず、強度や靭性を向上させる手法が望ましい。
硬さを低下させず、強度や靭性を向上させる手法として、添加物の利用が挙げられる。添加物の候補の1つとしてホウ素(B)が挙げられる。実際、特許文献2により、材料中にBを分散させることで強度や靭性を向上させたCoフリーの超硬合金(FeAl合金焼結体)が報告されている。
特許文献2によるとB粉末をWCなどの原料粉末に添加することにより、室温強度の向上に成功している。しかし、室温強度の向上を実現するB粉末の添加量は微量であるため、Bの均一分散が難しいという課題があった。
B以外の添加物の候補として、窒素(N)が挙げられる。N添加による影響は、WC-Co超硬合金と同じ代表的硬質材料である炭化チタン(TiC)系サーメットにおいて効果が認められている。例えば非特許文献2には、TiCに窒化チタンTiNを添加し、硬質相をTiCからNを含む炭窒化チタン(TiCN)に変更することにより、固溶体Ti(C,N)を形成させることでサーメットの靱性の向上や粒成長抑制による硬さの向上が確認されたことが報告されている。
FeAl合金硬質材料やNiAl合金硬質材料へのNの添加は、焼結中に窒素ガスに晒す手法が考えられる。しかし、本手法はFeAl合金硬質材料内部まで均一にNを拡散させることはできず、効果が焼結体表面のみに限定される。このため、硬化した表面層を維持するため、焼結体の加工は大きく制限される。したがって本手法は、切削チップなどの単純形状の部品については適用できるが、ドリルやエンドミル工具などの精密な加工を必要とする複雑形状の部品には適用が困難である。製品形状の制約をなくすためには、焼結体内部までNを均質に拡散させることが必要であった。
特開平07-003357号公報 特開2012-77352号公報
D.E. Almanら,Wear of iron-aluminide intermetallic-based alloys and composites by hard particles,Wear 2001年 251巻 p.875-884 勝村裕次ら,最近のTiN系サーメットの特性,精密機械 1980年 46巻 p.553-559
本発明は上述のような問題に鑑みてなされたものであり、BとNを内部まで均質に拡散させることにより室温での硬度や靱性に優れた耐熱性硬質材料と、その製造方法を提供することを課題とするものである。
上記課題を達成するために、本発明の硬質材料は、(1)4族、5族、6族の金属炭化物のうち少なくとも1種を含む硬質相と、(2)アルミニウム(Al)の割合が20原子%以上50原子%以下である鉄アルミニウム合金、および、アルミニウム(Al)の割合が20原子%以上50原子%以下であるニッケルアルミニウム合金のうち少なくとも1種を含む結合相を複合した硬質材料であって、前記結合相にホウ素(B)および窒素(N)が固溶していることを特徴とする。
この硬質材料において、ホウ素(B)および窒素(N)が六方晶窒化ホウ素(h-BN)に由来することが好ましい。
本発明の硬質材料の製造方法は、前記硬質材料を製造する方法であって、六方晶窒化ホウ素粉末(h-BN)を原料粉末に添加し、混合および/または粉砕して混合粉末を得る工程と、前記混合粉末を焼結する工程を含むことを特徴としている。
本発明によれば、BやNを内部まで均質に固溶させたFeAl合金またはNiAl合金の結合相を有することで、室温における硬度や靭性(強度)などの機械的特性に優れた耐熱性硬質材料を得ることができる。
耐酸化試験後のサンプルの外観を示す写真である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の硬質材料は、結合相にホウ素(B)および窒素(N)が固溶していることを特徴とし、BおよびNは、好ましくは六方晶窒化ホウ素(h-BN)に由来する。すなわち、Alを含む合金で金属炭化物を結合した複合材料において、h-BNを添加し、焼結時のh-BNとFeAl合金またはNiAl合金の反応を利用して製造される。h-BNは、固体潤滑剤として知られ、粉末中に均一分散させるのが容易である、さらに1100℃以上の高温でFeAl合金またはNiAl合金と反応を起こす。この反応により、h-BNが微量な添加量であっても焼結後にはB、Nを硬質材料中に均質分散させることができる。Bは主にFeAl合金またはNiAl合金中に均質に固溶する。本発明の重要な点は、h-BNとFeAl合金またはNiAl合金の反応によりBとN成分を硬質材料中に均質に分散させることである。B源としてB粉末、N源は金属粉末に含まれるNを用いることも考えられるが、B粉末は添加量が微小であるため硬質材料中への均質拡散が難しい。また金属粉末に含まれるNは、焼結初期の段階で大部分が脱離し、不確定な量のみ硬質材料中に残存するためN源として用いるには制御が困難である。これに対しh-BNは、硬質材料が緻密化する温度より50℃から200℃低い温度でFeAl合金またはNiAl合金と反応を起こすことで、目的の量のB成分とN成分を硬質材料中に均質に分散させることができ、かつN成分をほとんど脱離させることがない。h-BNは、熱的に安定な化合物として知られており、鋳鉄の溶湯用部材として用いられている。このためh-BNを添加しても、硬質材料中にh-BN単体として残存することが想定されるため、特性向上に繋がらないと考えられたが、比較的低温でFeAl合金またはNiAl合金と反応するという知見が得られ、本発明を完成するに至った。
本発明の硬質材料において、結合相の鉄とニッケルの合計量を100重量%とした時、Bの含有量は0.03重量%以上0.6重量%以下が好ましく、0.1重量%以上0.3重量%以下がより好ましい。
本発明の硬質材料において、結合相の鉄とニッケルの合計量を100重量%とした時、Nの含有量は0.1重量%以上1.0重量%以下が好ましく、0.4重量%以上0.8重量%以下がより好ましい。
本発明の硬質材料の結合相は、鉄アルミニウム(FeAl)合金およびニッケルアルミニウム(NiAl)合金のうち少なくとも1種を含む。FeAl合金は、Alの割合が20原子%以上50原子%以下である。NiAl合金は、Alの割合が20原子%以上50原子%以下である。結合相として用いるFeAl合金およびNiAl合金の組成は、Alが20原子%以上50原子%以下で残りはFeまたはNiで構成される。この合金組成を持つ結合相を有することにより、室温から600℃付近までの破壊靭性や強度および耐酸化性に優れる硬質材料が得られる。特に、結合相を構成するアルミニウム合金が、FeAl系金属間化合物、NiAl系金属間化合物のうち少なくとも1種であることが好ましい。固溶体を含まないFeAl系金属化合物、すなわちB2型のFeAl金属間化合物、D03型のFe3Al金属間化合物や、固溶体を含まないNiAl系金属間化合物、すなわちB2型のNiAl金属間化合物、L12型のNi3Al金属間化合物で構成される場合は、耐酸化性と破壊靱性や強度とのバランスが良い硬質材料を作製することができる。合金中のAlの割合が20原子%より少ないと硬質材料の耐酸化性が低下する。一方、Alの割合が50原子%より大きいと結合相の破壊靭性や強度が低下し、硬質材料が脆性的になり、強度や靭性が低下する。
本発明の硬質材料において、硬質相は、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ハフニウム(HfC)などの4族の金属炭化物、炭化ニオブ(NbC)などの5族の金属炭化物、炭化モリブデン(Mo2C)、炭化タングステン(WC)などの6族の金属炭化物のうち少なくとも1種を含む。本発明の特性上、いずれの炭化物を硬質相に用いても問題なく、本発明の有意差を生み出すBやNの含有量に影響を与えることはない。ただし、加圧焼結を用いる方法以外の焼結法、例えば液相焼結を利用した真空下での焼結法においては、硬質相は、結合相であるFeAl合金またはNiAl合金との濡れ性に優れたWCを、硬質相全体の体積を100体積%とした時、50体積%以上含むことが好ましい。加圧焼結を用いる場合は、WCの他に軽量で、FeAl合金またはNiAl合金との濡れ性が比較的良好なTiCを硬質相として用いることが好ましい。硬質相の体積は、走査型電子顕微鏡などから得られる画像を用いれば、化合物のモル質量の大きさにより濃淡が現れるため、硬質材料の種類が容易に識別でき、体積分率を求められる。濃淡による識別が困難な場合、エネルギー分散型X線分光法を併用することで対象元素を確認し、硬質材料の種類の特定が可能である。
本発明の硬質材料は、混合粉末を得る工程と、得られた混合粉末を焼結する焼結工程を経て製造することができる。混合粉末を得る工程では、h-BNを原料粉末に添加し、混合および/または粉砕する。具体的には、Alを含む合金粉末と炭化物硬質粉末などの原料粉末に加えh-BN粉末を添加し、混合および/または粉砕して混合粉末を調製する。h-BN中のBは焼結工程でFeAl合金またはNiAl合金と反応し、固溶する。FeとNiの合計量を100重量%とした時のBの含有率は、波長分散型のX線分光器により検出、評価できる。一方、h-BN中のN成分の一部は蒸発するが、残りはFeAl合金またはNiAl合金中に固溶する。FeとNiの合計量を100重量%とした時のNの含有率は、不活性ガス融解-熱伝導度法を用いた窒素分析装置などを用いて測定できる。
焼結工程では、前記混合粉末を焼結する。本発明の硬質材料は、100Pa以下の真空において、原料を混合した混合粉末を型に充填して10MPa以上200MPa以下の加圧下において1150℃以上1300℃以下の温度で焼結するか、または、前記混合粉末の成形体を1350℃以上1600℃以下の温度で無加圧焼結することによって製造することができる。具体的には、前者では混合粉末を型に充填し、100Pa以下の真空下で通電パルス焼結やホットプレスなどの加圧焼結を用いて焼結する。後者では、混合粉末を金型に充填し加圧成形した後、100Pa以下の真空において焼結(以下真空焼結と記載)する。通電パルス焼結の場合は、放射温度計を型に合わせ、表示された温度を焼結温度と見なした場合、1150℃以上1300℃以下の範囲で緻密化が可能である。一般に加圧焼結を用いた方が、真空焼結より緻密な合金焼結体を製造することができる。ただし、硬質相中にWCが体積率として25%以上含まれていない硬質材料の場合は、通常の真空焼結での緻密化は困難である。また、真空焼結、加圧焼結いずれにおいても、降温過程で、アルゴンなどの不活性ガスなどを入れて冷却するなどの処理を行っても構わない。
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)h-BN添加して作製したWC-FeAl、WC-NiAl、TiC-FeAl硬質材料のN量の変化
原料粉末として、WC粉末(平均粒径2.0μm 日本新金属(株)製)、TiC粉末(平均粒径1.7μm 日本新金属(株)製)、Fe粉末(粒径3-5μm (株)高純度科学研究所製)、Al粉末(平均粒径10μmまたは粒径3-5μm (株)高純度科学研究所製)、h-BN粉末(平均粒径2μm,AP-20S,MARUKA製)を用意した。まず原料粉末に含まれるN量を不活性ガス融解-熱伝導度法を用いた分析装置(TC-436, Leco株式会社製)により測定した。その結果を表1に示す。原料粉末でNが有意量検出さされたのは、Fe粉末とh-BN粉末の2種類で、他の粉末は検出範囲外であった。
原料粉末に含まれるN量を明らかにした後、所定量のWC粉末、TiC粉末、Fe粉末、Al粉末、Ni粉末を420mlのステンレスポットに入れ、直径9.3mmの超硬ボール900g、アセトン100mlを添加し、湿式によるボールミル混合を72時間行った。その後、エバポレータを用いてスラリーを乾燥し混合粉末を得た。この混合粉末にAl粉末を添加し、擂潰器による乾式混合を行った。得られた混合粉末と所定量のh-BN粉末を、乳鉢を用いて乾式混合し、混合後粉末を黒鉛型に入れ、通電パルス焼結装置にて焼結を行った。加圧は40MPa、最高温度(焼結温度)は収縮量を見極めサンプルごとに1150℃から1260℃の範囲で変えた。一般的傾向として、h-BN添加割合の増加や合金結合相のAlの割合が増えるに従い、焼結温度は低下する。今回作製した硬質材料の結合相であるFeAl合金またはNiAl合金の組成は、表2に示すようにFe0.33Al0.67、Fe0.5Al0.5、Fe0.7Al0.3、Ni0.7Al0.3の4組成とし、略称をそれぞれF3A7、Fe5A5、F7A3、N7A3とする。
焼結した硬質材料に含まれるN量を調べるため、得られた焼結体を平面研削した後、一部を切り出した上で砕き、破片を不活性ガス融解-熱伝導度法を用いた分析装置(TC-436, Leco株式会社製)によりN含有量を測定した。窒素量測定に用いた部分以外のサンプルは研磨により表面を鏡面に仕上げた。このサンプルの見かけ密度をアルキメデス法により測定した後、鏡面にダイヤモンド圧子を打ち込み、JIS Z2244に基づいたビッカース硬さ測定、IF法による破壊靱性の測定を行った。破壊靭性値KICはShettyらが提案した以下の式(1)より求めた。
(数1)
IC=1.39×(H・P/C)0.5 (1)
ここで、Hはビッカース硬さ(GPa)、Pは押込み加重(N)、及びCは平均亀裂長さ(μm)を示している。表3〜表5に、各硬質材料における硬質粒子の種類、結合相の組成、結合相の体積率、B含有率、合金結合相におけるAlの割合、硬質材料における結合相の体積割合、硬質材料中のB含有率、結合相のFeまたはNi成分に対するBの割合、硬質材料中のN含有率(測定値/理論値)、結合相のFeまたはNi成分に対するNの割合、焼結した各サンプルの見かけ密度、相対密度、ビッカース硬さ、破壊靭性値を示す。なお、相対密度は、見かけ密度を理論密度で除して得られる値を示しているが、理論密度を求める際に、硬質相と結合相が反応しないという仮定や、結合相の組成に基づく合金結合相の理論的算出過程を含んでいる。このため、相対密度は、サンプルの緻密度を評価するのに有用な指標ではあるが、若干の誤差を含んでおり、サンプルによっては相対密度が100%を超えることもあり得ることを明記しておく。
本発明の硬質材料のN含有率の理論値は、h-BN粉由来のNとFe粉由来のNの2つの和から算出している。表4の結果から、Feを結合相に含む実験例においてN含有率の測定値は、理論値より低いことがわかった。Feを含む結合相の体積率が35%の実験例(比較例1と実施例1から実施例4)においては、測定値が理論値の5分の1以下になった。これは、Fe粉末由来のNがサンプル内部に残存すると仮定して理論値を求めたが、実際には添加したNのほとんどはサンプル中に残存せず焼結中に脱離したためと考えられる。一般にFe粉末に含まれるNは、共有結合性が弱く、加熱中に脱離しやすいと考えられる。一方、h-BN由来のNは共有結合性が強く、加熱により容易に脱離しないと考えられる。実際、N成分を含まないN7A3を結合相とした比較例11と実施例21から実施例23においては、測定値と理論値はほぼ一致する。以上のことから、Fe金属粉に含まれるNの大部分は焼結中に脱離し、h-BN由来のNはFeAl合金に固溶すると考えられる。
(2)h-BNを添加したWC-FeAl硬質材料の機械的特性における結合相の組成、結合相の体積率の割合の影響
表3〜表5の結果から、FeAl合金結合相の組成がF7A3、F5A5の場合(比較例1から実施例17を参照)、B量やN量によるビッカース硬さや破壊靭性の変化が明瞭に見られ、B量やN量に最適値が存在した。ビッカース硬さまたは破壊靭性が最大となるh-BN添加量の最適値は、Feを100重量%とした時のB成分の重量に換算して少なくとも0.03重量%以上0.6重量%以下の範囲で、Feを100重量%とした時のN成分の重量に換算して、少なくとも0.1重量%以上1重量%以下の範囲に存在することがわかった。したがって、同範囲内を満たすようなh-BNの添加は、h-BN無添加の系に比べて特性を向上させることは明らかといえる。
一方、FeAl合金結合相の組成がF3A7の場合、B量やN量の増加によるビッカース硬さの向上の効果はほとんど見られず、破壊靭性には明確な傾向が見られなかった(比較例5から比較例10を参照)。このことから、BやN成分の分散がWC-FeAl硬質材料の特性向上に寄与するかは、FeAl合金結合相の組成により異なることがわかった。Alの割合が50原子%より大きくなると、金属間化合物FeAl2を形成する可能性があり、これがh-BN添加の効果を阻害している可能性がある。このことから本発明においてFeAl合金の結合相中のAlの割合は50原子%以下である。
今回の実験例における結合相の体積率は15%、25%、35%のいずれかであるが、どの体積率においてもB量やN量の変化によるビッカース硬さや破壊靭性の変化が明瞭に見られ、B量やN量に最適値が存在した。すなわち、結合相の体積率の変化は、硬質相であるWCの体積率の変化を意味するが、WCの割合が変わることで、h-BN添加によるWC-FeAl硬質材料の機械的特性へ向上の効果が失われることはなかった。このことからh-BN は硬質相であるWCとは基本的に反応しないことが示唆された。
(3)h-BNを添加した硬質材料の硬質粒子の違いによる機械的特性への影響
硬質相をWCからTiCに変えたTiC-FeAl硬質材料とした場合も、表3〜表5の結果からB量やN量の変化によるビッカース硬さや破壊靭性の変化が明瞭に見られ、B量やN量に最適値が存在した(比較例10と実施例18から実施例20を参照)。TiCはh-BNと焼結過程で反応する可能性があるが、機械的特性向上をもたらすB量やN量の最適値は、Alを除く合金成分の重量すなわちこの場合Feの重量を基準値に取る限り、大きな変動はないことから、焼結中でのTiCとh-BNの反応は起こらないもしくはわずかであり、h-BNとFeAl合金との反応が優先していることが示唆された。
(4)h-BNを添加した硬質材料の結合相の違いによる機械的特性への影響
表3〜表5の結果から、結合相をFeAl合金からNiAl合金(N7A3)に変えたWC-NiAl硬質材料とした場合も、基本的にB量やN量によるビッカース硬さや破壊靭性の変化が明瞭に見られB量やN量に最適値が存在した(比較例11と実施例21から実施例23を参照)。機械的特性が最大となるB量やN量の最適値は、Feの場合と同様、Niの重量を基準値とした場合、大きな変動は見られなかった。このことから、h-BNとNiAlも反応を起こし、FeAl合金の結合相の場合と同様のメカニズムで特性が向上したことが示唆された。
(5)h-BN添加したWC-FeAl硬質材料の高温耐酸化性評価
本発明の硬質材料と市販のWC-Co(K10種)の耐酸化性試験を行った。実施例6と実施例14の組成のサンプルを準備し、直径14mm、厚さ約3mmの円板状に切り出し、大気中600℃24時間保持後の各サンプルの酸化による重量増分を測定した。図1に耐酸化試験後のサンプルの外観を示し、表6に各硬質材料の単位表面積当たりの酸化による重量増分の結果を示す。
図1から市販のWC-Co(K10種)は耐酸化性試験後のサンプルの表面が割れ、飛散しているのが分かる。これは、サンプル表面だけでなく内部まで酸素が拡散し、酸化による体積膨張が起きたことを意味する。このことからWC-Coは600℃で長時間の使用は困難であるといえる。一方、実施例6、実施例14とも大気中600℃、24時間保持後において、鉄の酸化に起因する茶色の着色が見られるが、形状は保たれている。これはFeAlから酸化アルミニウムのような表面保護膜が形成されることで、サンプル内部までの酸素の拡散を抑制しているためと考えられる。その結果として、表6に示すように実施例6、実施例14とも酸化による重量増加はWC-Coよりも少なく、酸化が抑制されていることがわかる。以上の結果から、本発明の硬質材料は600℃周辺の温度域においてWC-Coより耐熱性に優れた硬質材料だといえる。
本発明の耐熱性合金焼結体は、WC-Co超硬合金にと比較して耐熱性に優れており、さらに窒素を内部まで均一分散させたFeAl合金またはNiAl合金の結合相を有することで、材料内部にわたり室温および600℃付近の高温における硬度、靭性などの機械的特性に優れた焼結体であることから600℃以上の高温環境下に晒される切削工具や金型などの材料として好適に利用することができる。また、WC-Co超硬合金と類似の作製プロセスを用いても高特性の耐熱性合金焼結体が作製できるため、WC-Co代替材料としての普及が期待できる。

Claims (9)

  1. (1)4族、5族、6族の金属炭化物のうち少なくとも1種を含む硬質相と、
    (2)アルミニウムの割合が20原子%以上50原子%以下である鉄アルミニウム合金、および、アルミニウムの割合が20原子%以上50原子%以下であるニッケルアルミニウム合金のうち少なくとも1種を含む結合相を複合した硬質材料であって、
    前記結合相にホウ素および窒素が固溶していることを特徴とする硬質材料。
  2. ホウ素および窒素が六方晶窒化ホウ素に由来することを特徴とする請求項1に記載の硬質材料。
  3. 前記結合相の鉄とニッケルの合計量を100重量%とした時、ホウ素の含有量が、0.03重量%以上0.6重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の硬質材料。
  4. 前記結合相の鉄とニッケルの合計量を100重量%とした時、ホウ素の含有量が、0.1重量%以上1.0重量%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の硬質材料。
  5. 結合相を構成するアルミニウム合金が、FeAl系金属間化合物、NiAl系金属間化合物のうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の硬質材料。
  6. 前記硬質相は、硬質相全体の体積を100体積%とした時、50体積%以上の炭化タングステンを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の硬質材料。
  7. 前記硬質相は、硬質相全体の体積を100体積%とした時、50体積%以上の炭化チタンを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の硬質材料。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の硬質材料を製造する方法であって、六方晶窒化ホウ素粉末を原料粉末に添加し、混合および/または粉砕して混合粉末を得る工程と、
    前記混合粉末を焼結する工程を含む、硬質材料の製造方法。
  9. 前記混合粉末を焼結する際に、100Pa以下の真空において、原料を混合した混合粉末を型に充填して10MPa以上200MPa以下の加圧下において1150℃以上1300℃以下の温度で焼結するか、または、前記混合粉末の成形体を1350℃以上1600℃以下の温度で無加圧焼結することを特徴とする請求項7に記載の硬質材料の製造方法。
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