JP2023048855A - 硬質焼結体、硬質焼結体の製造方法、切削工具、耐摩耗工具および高温用部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温環境下においても機械的特性および耐酸化性が優れている硬質焼結体を提供する。【解決手段】硬質焼結体は、Moと、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVの7種類の元素のうち3種類以上の元素とから構成される多元系合金からなる結合相と、TiC、Mo2C、NbC、TiCNおよびこれらの固溶体の中から選ばれた少なくとも一種からなる硬質相と、不可避不純物とからなり、多元系合金の含有量は、硬質焼結体を100体積%としたときに15~30体積%である。【選択図】図1
Description
本発明は、切削工具、耐摩耗工具および高温用部材等に用いる原材料として最適な硬質焼結体の技術に関する。
WC-Co超硬合金は、硬質粒子である炭化タングステン(WC)粒子を金属コバルト(Co)で焼き固めた代表的な硬質焼結体であり、切削工具や金型など耐摩耗性や耐欠損性が求められる製品に広く用いられている。
WC-Co超硬合金は、耐摩耗性に関係する硬さと耐欠損性に関係する強度との双方を高レベルで両立する点が特長である。一方で、WC-Co超硬合金は、600℃以上の高温環境下で使用されると、急激に硬さや強度が低下(すなわち機械的特性が低下)することに加えて、急激に酸化が進むという問題が存在する。
600℃以上の高温環境下においてWC-Co超硬合金に機械的特性の低下および酸化が発生するのは、WC-Co超硬合金に含まれているCoの機械的特性の低下や酸化に起因する。このため、切削工具などにおいてはWC-Co超硬合金の表面に炭窒化チタン(TiCN)やアルミナなどのセラミックスを被覆したコーティングなどを行って、機械的特性の低下および酸化を抑制している。しかし、WC-Co超硬合金の表面におけるコーティングが摩耗により失われると、WC-Co超硬合金自体についても急速に摩耗が進展してしまうという問題がある。したがって、高温環境下であっても機械的特性を維持しつつ、耐酸化性にも優れた硬質材料(すなわち耐熱性に優れた硬質材料)が求められている。
600℃以上の高温環境下における機械的特性や耐酸化性に優れた硬質材料として、WC粒子に金属間化合物FeAlを複合化させたWC-FeAl超硬合金が報告されている(例えば特許文献1)。FeAl金属間化合物は、600℃付近の高温環境下における耐熱性が優れており、これをWCと複合化させることで600℃付近の温度での機械的特性の急激な低下を抑えることができる。しかし、800℃以上ではWCが酸化および膨張し、機械的特性が急激に低下する。したがって、WC-FeAl超硬合金は、800℃以上での使用には向いていない。
一方で、WC-Co超硬合金およびWC-FeAl超硬合金の他にも炭化チタン(TiC)や炭窒化チタン(TiCN)など硬質粒子を金属ニッケル(Ni)と複合化させたTiC(N)-Ni系サーメットが代表的な硬質材料として知られている。TiC(N)-Ni系サーメットは、WC-Co超硬合金と比較して室温での機械的特性は劣るものの、600℃以上の高温において良好な機械的特性を維持でき、耐酸化性にも優れている。しかし、TiC(N)-Ni系サーメットについても、900℃以上の温度域では機械的特性の低下や酸化が顕著になり使用に適さない。
微細なAl2O3をFeAlの酸化により生じさせ均一に分散させることで、高温環境下における硬さや耐酸化性を更に向上させたWC-FeAl超硬合金やTiC(N)-FeAl系サーメットが報告されている(例えば特許文献2)。
しかし、WC-FeAl超硬合金やTiC(N)-FeAl系サーメットでは、高温環境下における強度を向上させることは依然として困難であり、900℃以上の温度域での使用に適さない。基本的には、強度、硬さおよび耐酸化性の何れかの限界点を示す耐熱温度は、結合相の性質に支配される。したがって、900℃以上の温度域で使用可能である硬質焼結体を作製するためには、耐熱性を示す結合相が必要である。以上の事情を考慮して、本発明では、高温環境下(例えば900℃以上)においても機械的特性および耐酸化性が優れた硬質焼結体とその製造法とを提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明に係る硬質焼結体は、Moと、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVの7種類の元素のうち3種類以上の元素とから構成される多元系合金からなる結合相と、TiC、Mo2C、NbC、TiCNおよびこれらの固溶体の中から選ばれた少なくとも一種からなる硬質相と、不可避不純物とからなり、多元系合金の含有量は、硬質焼結体を100体積%としたときに15~30体積%である。
本発明に係る硬質焼結体の製造方法は、多元系合金を形成するための金属粉末と、硬質相を形成するためのセラミックス粉末とを混合することで混合粉末を得る混合工程と、混合粉末または当該混合粉末の成形体を焼結することで硬質焼結体を得る焼結工程とを含む。
本発明に係る硬質焼結体は、特に、切削工具、耐摩耗工具または高温用部材の材料として好適に使用される。
本発明の好適な態様に係る硬質焼結体は、高温環境下(例えば900℃以上)においても機械的特性および耐酸化性が優れている。
<硬質焼結体>
本発明に係る硬質焼結体は、結合相と硬質相と不可避不純物とからなる硬質な焼結材料である。ここで硬質焼結体とは、室温におけるビッカース硬さが1100kgf/mm2以上の焼結体と定義する。
本発明に係る硬質焼結体は、結合相と硬質相と不可避不純物とからなる硬質な焼結材料である。ここで硬質焼結体とは、室温におけるビッカース硬さが1100kgf/mm2以上の焼結体と定義する。
(1)結合相
結合相は、Moと、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVの7種類の元素のうち3種類以上の元素とから構成される多元系合金からなる。すなわち、結合相は、4種以上の元素で構成される。Moは、結合相において必須である。Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVは、Mo以外の結合相を構成する元素の候補である。
結合相は、Moと、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVの7種類の元素のうち3種類以上の元素とから構成される多元系合金からなる。すなわち、結合相は、4種以上の元素で構成される。Moは、結合相において必須である。Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVは、Mo以外の結合相を構成する元素の候補である。
結合相の含有量(体積率)は、硬質焼結体の全体を100体積%としたときに、15~30体積%であり、好適には18~25体積%であり、さらに好適には19~21体積%である。結合相の体積率が15体積%を下回ると、結合相が不足することで、硬質焼結体の室温および高温での強度が上がらなくなる。一方で、結合相の体積率が30体積%を上回ると、合金の塑性変形を抑制する硬質相の体積率が低下する結果、硬質焼結体の硬度が低下し、強度も上がりにくくなる。
本発明に係る硬質焼結体は、巨視的には均質である。したがって、結合相の体積率は、硬質焼結体から任意に切り出した平面における結合相の面積率とほぼ一致する。このため、本発明の硬質焼結体の結合相の体積率は、電子顕微鏡などにより1000μm2の以上の面積を撮影した微構造写真から画像解析ソフトやインターセプト法を用いて、結合相の面積率を求めることで得られる。
なお、結合相の含有量は、重量換算では、硬質焼結体の全体を100wt%としたときに、例えば22~42wt%であり、好適には25~35wt%であり、さらに好適には27~32wt%である。ここで、結合相の含有量(重量換算)は、結合相の原料として添加した成分の総和(すなわち理論値)を意図する。以下の説明についても、含有量(重量換算)は理論値を意図する。
多元系合金(結合相)に使用されるMoは、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVの7種類の元素と固溶体を形成しやすい元素であり、かつ、当該7種類の元素より高融点である。すなわち、Moは、高温でも高い降伏値(降伏強度)を維持することが可能である。したがって、高温環境下(例えば900℃以上)においても高い強度を実現する本発明の硬質焼結体では、Moを必須の元素としている。
Mo以外の多元系合金を構成する元素は、高温環境下においても機械的特性および耐酸化性を向上させる観点から、上記の7種類の元素のうち3種類以上であり、好ましくは4種類以上である。さらに、結合相は、高温環境下における硬さと強度とを向上させる観点から、多元系合金を構成する各元素が互いに固溶体を形成した状態(各元素が互いに分離や化合物を形成せずに溶けあった状態)であることが好ましい。
Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVのうち何れの元素を3種以上選択した場合でも、混合エンタルピーの絶対値が低く、金属間化合物を形成したり、互いに分離したりすることがなく、固溶体を形成しやすい。すなわち、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVの各元素は、互換性がある。したがって、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVのうち何れの元素を3種以上選択した場合でも、作製した硬質焼結体の機械的特性への影響は十分に小さく、類似の微構造を持つ硬質焼結体の作製が可能である。
また、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVの中でもCo、Cr、Fe、NiおよびMnの5種の元素から3種以上を結合相(多元系金属)として使用する構成が好ましい。以上の構成によれば、高温環境下においても室温環境下と略同等の強度を維持することが可能になるという利点がある。
さらに、結合相は、特に、Moに加えて、上記の7種類の元素のうち4種類以上の元素を使用し、かつ、固溶体を形成した状態である多元系合金(いわゆる高エントロピー合金)からなることが好ましい。高エントロピー合金は、熱力学的なエントロピーの和が高く、異種の元素を溶質原子として混合することで強化するメカニズム(固溶強化)の効果を最大限引き出すことが可能である。したがって、高温環境下における硬さと強度をさらに向上させる観点からは、結合相に高エントロピー合金を使用する構成が好適である。
高エントロピー合金を結合相とする場合には、上記の7種の元素のうち、硬質相(特に炭化物系を使用した硬質相)との濡れ性が優れるCo、FeおよびNiと、耐酸化性の向上に寄与するCrとを使用することが好適である。Co、Fe、NiおよびCrを高エントロピー合金として使用することで、高温環境下での強度と耐酸化性とをさらに向上させることが可能である。
Co、Fe、NiおよびCrにMnを加えたCoCrFeMnNi合金(通称Cantor合金)は、特に低温側の延性と強度とに優れた高エントロピー合金である。Cantor合金は、800℃以上の温度での強度は室温より低下するものの、室温での強度は他の合金系より高い。したがって、Cantor合金は、硬質相や結合相に耐熱性を付与させて800℃以上の温度での強度低下を極力抑制することで使用が可能となる。
結合相である多元系合金を構成する各元素の含有量は、当該多元系合金の全量を100at%としたときに、例えば5.0~85.0at%であり、好適には10.0~35.0at%である。多元系合金を構成する各元素(1元素)の含有量が5.0at%を下回ると、当該元素を添加した効果がほとんど表れない。一方で、多元系合金を構成する各元素の含有量が85.0at%を上回ると、少なくとも残り3種類の元素のうち少なくとも1種類の元素の含有量が5.0at%を下回ることになり、当該元素の添加の効果がほとんど見られなくなる。
以上の説明から理解される通り、結合相である多元系合金を構成する4種類以上の元素のうちの1種類の元素の含有量は、例えば、12.5~85.0at%が好ましく、その他の3種以上の元素の含有量は、5.0~25.0at%が好ましい。
なお、結合相である多元系合金を構成する各元素の含有量は、重量換算では、多元系合金全体を100wt%としたときに、例えば2.8~91.0wt%であり、好適には10.4~31.3wt%である。
(2)硬質相
本発明に係る硬質焼結体の硬質相は、TiC、Mo2C、NbC、TiCNおよびこれらの固溶体(TiC、Mo2C、NbCおよびTiCNのうちの1種以上の固溶体)の中から選ばれた少なくとも一種からなる。TiC、Mo2C、NbC、TiCNおよびこれらの固溶体は、結合相との濡れ性が優れているため、緻密な焼結体が作製可能となり、室温での高強度を可能とする。
本発明に係る硬質焼結体の硬質相は、TiC、Mo2C、NbC、TiCNおよびこれらの固溶体(TiC、Mo2C、NbCおよびTiCNのうちの1種以上の固溶体)の中から選ばれた少なくとも一種からなる。TiC、Mo2C、NbC、TiCNおよびこれらの固溶体は、結合相との濡れ性が優れているため、緻密な焼結体が作製可能となり、室温での高強度を可能とする。
硬質相の体積率(含有量)は、硬質焼結体の全体を100体積%としたときに、例えば70~85体積%であり、好適には75~82体積%であり、さらに好適には79~81体積%である。硬質相の体積率が85体積%を上回ると、結合相が不足することで、硬質焼結体の室温および高温での強度が上がらなくなる。一方で、硬質相の体積率が70体積%を下回ると、合金の塑性変形を抑制する硬質相が不足することで、硬質焼結体の硬度が低下し、強度も上がりにくくなる。
なお、硬質相の含有量は、重量換算では、硬質焼結体の全体を100wt%としたときに、例えば58~78wt%であり、好適には65~75wt%であり、さらに好適には68~73wt%である。
TiCを硬質相に使用する場合には、TiCの含有量は、硬質相の全体を100wt%ときに、例えば5~100wt%であり、好適には80~100wt%であり、さらに好適には90~100wt%である。TiCの含有量を上記の範囲内にすることで、結合相との濡れ性に優れた高強度硬質焼結材料の作製が可能である。
Mo2Cを硬質相に使用する場合には、Mo2Cの含有量は、硬質相の全体を100wt%ときに、例えば1~50wt%であり、好適には5~20wt%である。Mo2Cの含有量を上記の範囲内にすることで、硬質焼結材料の高温での強度向上が可能である。
NbCを硬質相に使用する場合には、NbCの含有量は、硬質相の全体を100wt%ときに、例えば1~20wt%であり、好適には3~15wt%である。NbCの含有量を上記の範囲内にすることで、硬質焼結材料の高温での強度向上が可能である。
TiCNを硬質相に使用する場合には、TiCNの含有量は、硬質相の全体を100wt%ときに、例えば5~100wt%であり、好適には80~100wt%であり、さらに好適には90~100wt%ある。TiCNの含有量を上記の範囲内にすることで、硬質焼結材料の高温での強度向上が可能である。
なお、TiC、Mo2C、NbCおよびTiCNの固溶体を硬質相として使用する場合についても、TiC、Mo2C、NbCおよびTiCNの含有量は、上記の範囲である。
さらに、硬質相は、産業的な汎用性と硬質粒子の靭性との観点から、TiCと、TiCおよびMo2Cの固溶体とからなる構成が好ましい。
なお、本発明において、代表的な炭化物であるWCは、800℃以上の高温大気中では酸化することにより急激に体積膨張を起こし、硬質焼結体との形状を保てなくなるため、硬質相として適さない。
(3)不可避不純物
本発明に係る硬質焼結体には、不可避不純物が含まれる。不可避不純物は、作製工程中での結合相と硬質相との反応や不可避に入り込む元素などの影響に起因して含有される微量の不純物である。不可避不純物としては、例えば、硬質相の成分であるTi、Mo、Nb、C(炭素)およびN(窒素)や、作製プロセス上不可避に混入するO(酸素)である。これらの元素の正確な量は、特定の多元系合金への溶解度により決定される。不可避不純物の含有量は、例えば、硬質焼結体全体のうち2wt%以下が好ましい。
本発明に係る硬質焼結体には、不可避不純物が含まれる。不可避不純物は、作製工程中での結合相と硬質相との反応や不可避に入り込む元素などの影響に起因して含有される微量の不純物である。不可避不純物としては、例えば、硬質相の成分であるTi、Mo、Nb、C(炭素)およびN(窒素)や、作製プロセス上不可避に混入するO(酸素)である。これらの元素の正確な量は、特定の多元系合金への溶解度により決定される。不可避不純物の含有量は、例えば、硬質焼結体全体のうち2wt%以下が好ましい。
本発明に係る硬質焼結体は、高温環境下において良好な機械的特性および耐酸化性が要求される切削工具、耐摩耗工具や高温用部材等の原材料として利用できる。特に、高温にさらされる難削材の加工や高温鍛造などの切削工具や耐摩耗工具および摩擦撹拌接合(FSW)のツール材として好適に利用できる。なお、高温用部材とは、例えば700℃以上の高温に曝される部材であり、プラントなどに使用される高温ノズル部材等が該当する。
<硬質焼結体の製造方法>
以下、本発明に係る硬質焼結体の製造方法について説明する。
以下、本発明に係る硬質焼結体の製造方法について説明する。
本発明の一例に係る硬質焼結体の製造方法は、混合工程と乾燥工程と成形工程と焼結工程とを含む。ただし、本発明において、乾燥工程と成形工程とは省略される場合もある。
(1)混合工程
混合工程は、硬質焼結体の原料粉末を混合する工程である。具体的には、混合工程では、多元系合金(すなわち結合相)を形成するための金属粉末と、硬質相を形成するためのセラミックス粉末とを混合することで混合粉末を得る。混合工程は、例えば、金属粉末のみを混合させる第1工程と、第1工程後の金属粉末とセラミック粉末とを混合させる第2工程とを含む。
混合工程は、硬質焼結体の原料粉末を混合する工程である。具体的には、混合工程では、多元系合金(すなわち結合相)を形成するための金属粉末と、硬質相を形成するためのセラミックス粉末とを混合することで混合粉末を得る。混合工程は、例えば、金属粉末のみを混合させる第1工程と、第1工程後の金属粉末とセラミック粉末とを混合させる第2工程とを含む。
多元系合金を形成するための金属粉末としては、Moと、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVの7種類の元素のうち3種以上の元素を含む粉末(合金粉末も含む)が使用される。金属粉末の粒径、C、N,Oなどの不純物元素の含有量、粉末を得るための手法は問わない。なお、融点が他の金属より高いMoは、後述する焼結工程において拡散が遅く合金化しにくいため、混合工程(第1工程)において部分的に合金化させることが望ましい。
金属粉末の含有量は、原料粉末全体を100wt%としたときに、例えば22.0~42.0wt%であり、好適には25.0~35.0wt%であり、さらに好適には27.0~32.0wt%である。また、金属粉末に含まれる各元素の含有量は、金属粉末全体を100wt%としたときに、例えば2.8~91.0wt%であり、好適には10.4~31.3wt%である。
多元系合金の硬質相を形成するためのセラミック粉末としては、TiC、TiN、TiCN、Mo2CおよびNbCのうち少なくとも一つが使用される。セラミック粉末の粒径、Oなどの不純物元素の含有量、粉末を得るための手法は問わない。
セラミック粉末の含有量は、原料粉末全体を100%としたときに、例えば58~78wt%であり、好適には65~75wt%であり、さらに好適には68~73wt%である。
TiCをセラミック粉末として使用する場合には、TiCの含有量は、セラミック粉末全体を100wt%ときに、例えば5~100wt%であり、好適には80~100wt%であり、さらに好適には90~100wt%である。
Mo2Cをセラミック粉末として使用する場合には、Mo2Cの含有量は、セラミック粉末全体を100wt%ときに、例えば1~50wt%であり、好適には5~20wt%である。
NbCをセラミック粉末として使用する場合には、NbCの含有量は、セラミック粉末全体を100wt%ときに、例えば1~20wt%であり、好適には3~15wt%である。
TiCNをセラミック粉末として使用する場合には、TiCNの含有量は、セラミック粉末全体を100wt%ときに、例えば5~100wt%であり、好適には80~100wt%であり、さらに好適には90~100wt%ある。
第1工程および第2工程の双方において、原料粉末は、例えば、転動型ボールミル、遊星型ボールミルまたはアトライターなどの粉砕機により混合される。乾式、湿式は問わない。なお、混合工程が第1工程と第2工程とを含むことは必須ではない。ただし、添加した金属粉末から多元系合金を部分的に合成するためには、多元系合金を形成するための金属粉末を先に加え、例えばメカニカルアロイングによる合金化を行った後、硬質相を形成するためのセラミック粉末を加えて混合・粉砕すること(すなわち混合工程が第1工程と第2工程とを含むこと)が好ましい。ただし、多元系合金が十分に形成されていない段階で、セラミック粉末を添加し、混合・粉砕するなど、各原料の入れるタイミングを変えても構わない。
なお、混合工程において湿式による混合・粉砕過程を採用する場合は、有機溶媒を添加して混合、粉砕することができる。有機溶媒は、例えば、エタノールやアセトンなどの水溶性有機溶媒、または、ヘキサンなどの非水性有機溶媒を選択できる。有機溶媒の添加量は、原料粉末を含む総体積の8倍から20倍が望ましい。一方、混合工程において乾式による混合・粉砕過程を採用する場合は、粉末の酸化を防ぐため、真空またはアルゴンなどの不活性雰囲気中で混合・粉砕を行っても構わない。
(2)乾燥工程
混合工程において、湿式による混合・粉砕過程を採用した場合には、混合粉末を乾燥する乾燥工程が必要となる。乾燥工程では、混合工程において得られた混合粉末から有機溶媒を除去する。有機溶媒を混合粉末から除去するための手段は、自然乾燥、真空中もしくは乾燥不活性ガス中での乾燥、エバポレーターを用いて強制的に有機溶媒を除去する乾燥などがあり、乾燥方法や条件により混合粉末に含まれる酸素含有量が変化し、混合粉末の酸素含有量は硬質焼結体の硬さや強度などの機械的特性に影響を与える。具体的な乾燥方法や条件については、得られる硬質焼結体の機械的特性を鑑みて適宜に選択される。なお、乾燥工程は、混合工程において乾式による混合・粉砕過程を採用した場合には、不要である。
(3)成形工程
成形工程は、混合粉末から成形体を作製する工程である。具体的には、成形工程では、混合粉末を金型に充填し、一軸プレスなどにより成形体を作製する。成形の際には、混合粉末にパラフィンなどの有機バインダーを加えて成形しても構わない。有機バインダーの量は、混合粉末の総体積に対し15~25%が望ましい。ただし、成形工程は、後述する焼結工程において、ホットプレスや通電加圧焼結のように、混合粉末を焼結金型に充填した状態で加圧しながら焼結する場合には、不要である。
成形工程は、混合粉末から成形体を作製する工程である。具体的には、成形工程では、混合粉末を金型に充填し、一軸プレスなどにより成形体を作製する。成形の際には、混合粉末にパラフィンなどの有機バインダーを加えて成形しても構わない。有機バインダーの量は、混合粉末の総体積に対し15~25%が望ましい。ただし、成形工程は、後述する焼結工程において、ホットプレスや通電加圧焼結のように、混合粉末を焼結金型に充填した状態で加圧しながら焼結する場合には、不要である。
(4)焼結工程
焼結工程は、混合粉末または成形工程後の成形体を焼結することで硬質焼結体を得る工程である。焼結工程では、真空または不活性雰囲気において混合粉末(または成形体)を焼結する。焼結工程により、多元系合金が合成され、硬質焼結体の結合相となる。なお、焼結工程において、結合相が完全に(すなわち結合相の100体積%が)合金化される必要はなく、少なくとも結合相の50体積%以上が合金化されればよい。ただし、高温環境下における機械的特性および耐酸化性を向上させる観点からは、結合相の100体積%近くが合金化していることが望ましい。
焼結工程は、混合粉末または成形工程後の成形体を焼結することで硬質焼結体を得る工程である。焼結工程では、真空または不活性雰囲気において混合粉末(または成形体)を焼結する。焼結工程により、多元系合金が合成され、硬質焼結体の結合相となる。なお、焼結工程において、結合相が完全に(すなわち結合相の100体積%が)合金化される必要はなく、少なくとも結合相の50体積%以上が合金化されればよい。ただし、高温環境下における機械的特性および耐酸化性を向上させる観点からは、結合相の100体積%近くが合金化していることが望ましい。
焼結温度は、緻密化が十分達成できる温度で行う必要がある。真空または不活性雰囲気での通常の焼結の場合は、成形体の収縮を直接確認することができないので当業者の経験により焼結温度を設定する必要があるが、少なくとも結合相を構成する合金が焼結過程で液相を形成する温度より高い温度(例えば1100℃~1350℃)で焼結する必要がある。
一方で、ホットプレスや通電加圧焼結の場合、装置に取り付けられた変位計の変化が見られなくなる温度を確認し、この温度を焼結温度(例えば1100℃~1350℃)とすることができる。
以上の工程により作製された硬質焼結体は、室温だけでなく、例えば900℃以上における高温環境下においても機械的特性および耐酸化性が優れている(すなわち耐熱性に優れている)。
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1-5および比較例1-11は、以下の通り作製した。
まず、表1の配合で多元系合金の原料粉末(金属粉末)を鋼製のポットに入れ、クロム鋼ボール(直径約9.5mm)を粉砕メディアとして、遊星ミル装置により部分的に合金化を行った。合金化は、ヘキサンを用いた湿式雰囲気で実施した。表1に合金化の条件(合金化時間,回転速度)を示す。なお、表1に示す合金化時間が0の場合は、金属粉末のみで合金化した時間が0時間であり、金属粉末とセラミック粉末とを一緒に混合を行ったことを意味し、混合工程で多元系合金が形成されなかったことを意味するのではない。
表1の原料粉末の詳細は、下記の通りである。
Co粉末(平均粒径10μm(株)高純度科学研究所製)
Cr粉末(平均粒径10μm(株)高純度科学研究所製)
Fe粉末(粒径53μm以下(株)高純度科学研究所製)
Ni粉末(粒径3~5μm(株)高純度科学研究所製)
Mn粉末(粒径53μm以下(株)高純度科学研究所製)
Mo粉末(粒径3~5μm(株)高純度科学研究所製)
Co粉末(平均粒径10μm(株)高純度科学研究所製)
Cr粉末(平均粒径10μm(株)高純度科学研究所製)
Fe粉末(粒径53μm以下(株)高純度科学研究所製)
Ni粉末(粒径3~5μm(株)高純度科学研究所製)
Mn粉末(粒径53μm以下(株)高純度科学研究所製)
Mo粉末(粒径3~5μm(株)高純度科学研究所製)
次に、部分的に合金化させた金属粉末に加え、表2の配合で硬質相の原料粉末(セラミック粉末)をポットに入れ、遊星ミル装置により混合、粉砕を行うことで混合粉末を得た。金属粉末とセラミック粉末との混合、粉砕はアルゴン雰囲気での乾式で実施した。表2に混合、粉砕の条件(回転速度,混合時間)を示す。
表2の原料粉末の詳細は、下記の通りである。
TiC(平均粒径1.80μm日本新金属(株)製)
TiCN(平均粒径1.35μm日本新金属(株)製)
Mo2C(平均粒径1.75μm日本新金属(株)製)
TiC(平均粒径1.80μm日本新金属(株)製)
TiCN(平均粒径1.35μm日本新金属(株)製)
Mo2C(平均粒径1.75μm日本新金属(株)製)
そして、得られた混合粉末を内径23mmの黒鉛型に入れ、通電加圧焼結装置にて焼結を行った。混合粉末は、理論密度から計算して厚さが4.8mmになるように充填した。加圧は40MPa、最高温度(焼結温度)は収縮量を見極めサンプルごとに1180℃から1250℃の範囲で変えた。表3に各混合粉末の焼結条件について示す。なお、実施例1-5の結合相は、高エントロピー合金である。
表2の「硬質粒子(硬質相)の体積率」および「結合相の体積率」は、実際に測定した実測値ではなく理論値である。「硬質粒子(硬質相)の体積率」は、使用した複数のセラミック粉末の各々について、当該セラミック粉末の重量(表2の「原料粉末(硬質相用)の割合(wt%)」)を密度(既知)で除算することで体積を求めた後に、硬質焼結体全体を100体積%としたきの各セラミック粉末の体積率の合計値から算出した。「結合相の体積率」は、使用した金属粉末の合計量(表1の「原料粉末(結合相用)の割合(wt%)」)を密度(既知:各金属粉末の原子量と密度とに応じて算出)で除算することで体積を求めた後に、硬質焼結体全体を100体積%としたきの金属粉末全体の体積率から算出した。
なお、上述した結合相の体積率(実測値)の特定方法(硬質焼結体から切り出した平面における結合相の面積率に応じて体積率を特定する方法)は、理論値とも略一致する。したがって、本発明において結合相の体積率は、実測値で求めても理論値で求めてもよい。
なお、比較例12は、94wt%WC-6wt%Co(超硬合金K1種相当、市販品)である。
また、比較例13は、TiCN-Ni系サーメットであり、表1の配合のNi粉末と、表2の配合のTiCNおよびMo2Cとを、ステンレスポットに入れ、超硬合金製ボール(直径約5mm)を粉砕メディア、アセトンを湿式溶媒として転動ボールミル装置により回転数0.47m/sで48時間混合を行って得た。得られた混合粉末は一軸圧成形した後、成形体を真空下(10-2Pa以下)、最高温度1350℃で1時間保持することで焼結を行った。
実施例1-5および比較例1-13について以下の通り評価を行った。まず、得られた硬質焼結体から放電加工機による切断と平面研削により、幅4mmで厚さ2mmの試験片(室温測定用)と、幅3mmで厚さ15mmの試験片(高温測定用)とを作製した。
<1>理論密度
理論密度は、添加した原料粉末の理論密度から計算し、原料粉末が焼結過程で化学変化を起こさないという仮定で求めた。
<2>見かけ密度
見かけ密度は、室温測定用の試験片の見かけ密度をアルキメデス法により測定した。
理論密度は、添加した原料粉末の理論密度から計算し、原料粉末が焼結過程で化学変化を起こさないという仮定で求めた。
<2>見かけ密度
見かけ密度は、室温測定用の試験片の見かけ密度をアルキメデス法により測定した。
<3>相対密度
相対密度は、見かけ密度を理論密度で除算して算出した。
相対密度は、見かけ密度を理論密度で除算して算出した。
<4>曲げ強度(室温)
室温において室温測定用の試験片について3点曲げ試験を実施した。3点曲げ試験は、室温下で、スパン10mm、変位速度0.5mm/minの条件で行った。得られた強度から室温曲げ応力σ(MPa)を以下の式(1)から計算した。式(1)において、Fは破壊荷重(N)、Lはスパン長さ(mm)、Bは試験片幅(mm)、Hは試験片厚さ(mm)である。
室温において室温測定用の試験片について3点曲げ試験を実施した。3点曲げ試験は、室温下で、スパン10mm、変位速度0.5mm/minの条件で行った。得られた強度から室温曲げ応力σ(MPa)を以下の式(1)から計算した。式(1)において、Fは破壊荷重(N)、Lはスパン長さ(mm)、Bは試験片幅(mm)、Hは試験片厚さ(mm)である。
<5>ビッカース硬さ(室温),破壊靭性値
曲げ試験後における室温測定用の試験片の一部を研磨し、表面を鏡面に仕上げた上、鏡面にダイヤモンド圧子を打ち込み、JIS Z2244に基づいたビッカース硬さの測定と、IF法による破壊靱性の測定とを行った。破壊靭性値(KIC)は、Shettyらが提案した以下の式(2)より求めた。式(2)において、Hvはビッカース硬さ(GPa)、Pは押込み加重(N)、及びCは平均亀裂長さ(μm)である。
曲げ試験後における室温測定用の試験片の一部を研磨し、表面を鏡面に仕上げた上、鏡面にダイヤモンド圧子を打ち込み、JIS Z2244に基づいたビッカース硬さの測定と、IF法による破壊靱性の測定とを行った。破壊靭性値(KIC)は、Shettyらが提案した以下の式(2)より求めた。式(2)において、Hvはビッカース硬さ(GPa)、Pは押込み加重(N)、及びCは平均亀裂長さ(μm)である。
<6>曲げ強度(900℃)
高温測定用の試験片をシリコニット電気炉により大気中900℃に加熱し、30分保持(一部の試験片に関しては4時間保持)した後、曲げ試験を実施した。3点曲げ試験は、スパン13mm、変位速度0.5mm/minの条件で行った。得られた強度から室温曲げ応力σ(MPa)を前述した式(1)から計算した。
高温測定用の試験片をシリコニット電気炉により大気中900℃に加熱し、30分保持(一部の試験片に関しては4時間保持)した後、曲げ試験を実施した。3点曲げ試験は、スパン13mm、変位速度0.5mm/minの条件で行った。得られた強度から室温曲げ応力σ(MPa)を前述した式(1)から計算した。
表4には、上記の<1>~<6>の評価について示されている。なお、相対密度、ビッカース硬さ、曲げ強度(室温)および破壊靭性値について、5個の試験片の平均値より求めた値が示されている。
表4に示される通り、実施例1-5では、室温環境下だけでなく、900℃の環境下においても曲げ強度が800MPa以上になることが確認できた。さらに、実施例1-5では、ビッカース硬さやおよび破壊靭性値についても良好な値を示した。
それに対して、結合相にMoを含まない比較例1-8では、室温および900℃のうち少なくとも一方の環境下において曲げ強度が800MPa未満である。CoやNiよりも融点が高く結合相の降伏値の向上に寄与すると考えられるMoは、硬質焼結体の高温の曲げ強度(900℃)の向上に寄与すると考えられる。したがって、Moを含まない比較例1-8では、曲げ強度(900℃)が低下するか、または、曲げ強度の低下を補償しようとするため製造条件を変えることで、曲げ強度(室温)を犠牲にしてしまう。その結果、高特性の硬質焼結体の作製が困難となる。
比較例9,10は、結合相(多元系合金)の含有量(体積率)が硬質焼結体全体のうち30体積%を上回る。比較例9,10は、実施例1-5と比較して、ビッカース硬さおよび900℃での曲げ強度(比較例10では室温での曲げ強度も)のいずれも低い傾向(800MPa未満)を示した。これは、結合相の塑性変形を抑制する硬質粒子が不足することで硬度が低下し、強度も上がりにくくなるためと考えられる。
比較例11は、結合相の割合が硬質焼結体の体積を100%としたときに10体積%である。比較例11では、900℃での曲げ強度が低い傾向(800MPa未満)を示した。これは、結合相の不足により、とりわけ高温での強度が上がらなくなったと考えられる。
比較例12においては、曲げ強度(室温)の値が2600MPaと非常に高い。しかし、曲げ強度(900℃)においては、試験片が酸化膨張を起こしてしまい測定不能であった。試験片が原形をとどめないほど変化をすることから、強度もほとんどない(少なくとも300MPa以下)であることが推定される。
比較例13では、曲げ強度(室温)の値が1783MPaと非常に高い。しかし、曲げ強度(900℃)においては、945MPaと比較的高い強度を維持しているものの室温に比べ大幅に低減した。これは、900℃において結合相であるNiの降伏値が低く、硬質焼結体の強度を低下させてしまったものと考えられる。
それに対して、実施例1-5では、Moに加えて、Co、Cr、Fe、Ni、Mnの5種類の元素から3種以上の元素を結合相に使用したことで、900℃における曲げ強度が室温における曲げ強度と同等の水準に維持されることも確認できた。これは、結合相として、耐熱性のある元素で構成された高エントロピー合金を用いたことに起因すると考えられる。
<7>耐酸化性
実施例1において使用した混合粉末と、比較例13について使用した混合粉末とからそれぞれ作製した焼結体について耐酸化性の評価を行った。
実施例1において使用した混合粉末と、比較例13について使用した混合粉末とからそれぞれ作製した焼結体について耐酸化性の評価を行った。
混合粉末を内径15mmの黒鉛型に入れ、通電加圧焼結装置にて焼結を行った。混合粉末は、理論密度から計算して厚さが3mmになるように充填した。加圧は40MPa、最高温度(焼結温度)は、実施例1については1210℃であり、比較例13については1240℃である。保持時間は、実施例1および比較例13の双方とも3分とした。
得られた硬質焼結体は平面研削により約2.5mmの厚さにし、6μmのダイヤモンドスラリーによる研磨により鏡面仕上げを行った。硬質焼結体を大気中900℃に加熱した炉の中に投入し、4時間保持した後、自然冷却を行うことによる耐酸化性を評価した。図1に、実施例1および比較例13について耐酸化試験後の硬質焼結体の外観写真を示す。
耐酸化試験前においては、実施例1および比較例13の双方とも銀色の金属光沢をしていた。しかし、耐酸化試験後においては、図1から把握される通り、比較例13の表面が酸化により膜が形成し剥がれ落ちているのが確認できる。これは、比較例13の耐酸化性が不十分であることを意味している。つまり、比較例13は、曲げ強度(900℃)が比較的高水準を維持していたものの、長時間の使用には耐えられないことを意味する。
それに対して、実施例1では、青黒い色への変化はあるものの膜の剥離などの現象は見られない。したがって、曲げ強度(900℃)も長時間にわたり同じ水準を維持することが期待できる。以上のことから、本発明に係る硬質焼結体は、室温環境下だけでなく900℃以上の高温環境下でも硬さや強度などの機械的特性および耐酸化性が優れていることが確認できた。
本発明の硬質焼結体は、これまで超硬合金やサーメットなどが使われてきた高温下での硬さ、強度が要求される切削工具、耐摩耗工具および高温用部材等の原材料として利用できる。具体的には、高温にさらされる難削材の加工や高温鍛造などの切削工具用材料や耐摩耗工具用材料、および摩擦撹拌接合(FSW)のツール材として好適に利用できる。
Claims (11)
- Moと、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、MnおよびVの7種類の元素のうち3種類以上の元素とから構成される多元系合金からなる結合相と、
TiC、Mo2C、NbC、TiCNおよびこれらの固溶体の中から選ばれた少なくとも一種からなる硬質相と、
不可避不純物とからなり、
前記多元系合金の含有量は、硬質焼結体を100体積%としたときに15~30体積%である
硬質焼結体。 - 前記多元系合金を構成する各元素の含有量は、当該多元系合金の全量を100at%としたときに5~85at%である
請求項1の硬質焼結体。 - 前記多元系合金を構成する各元素の含有量は、当該多元系合金の全量を100at%としたときに10~35at%である
請求項2の硬質焼結体。 - 前記多元系合金は、Moと、前記7種類の元素のうち4種類以上の元素から構成される
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の硬質焼結体。 - 前記多元系合金を構成する各元素が互いに固溶体を形成した状態である
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の硬質焼結体。 - 前記多元系合金は、Moと、Co、Cr、Fe、NiおよびMnの5種類の元素のうち3種類以上の元素とからなる
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の硬質焼結体。 - 前記硬質相は、TiCと、TiCおよびMo2Cの固溶体とからなる
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の硬質焼結体。 - 請求項1から請求項7の何れか1項に記載の硬質焼結体を製造する方法であって、
前記多元系合金を形成するための金属粉末と、前記硬質相を形成するためのセラミックス粉末とを混合することで混合粉末を得る混合工程と、
前記混合粉末または当該混合粉末の成形体を焼結することで硬質焼結体を得る焼結工程と
を含む硬質焼結体の製造方法。 - 請求項1から請求項7の何れか1項に記載の硬質焼結体を原材料とする
切削工具。 - 請求項1から請求項7の何れか1項に記載の硬質焼結体を原材料とする
耐摩耗工具。 - 請求項1から請求項7の何れか1項に記載の硬質焼結体を原材料とする
高温用部材。
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