JP5079940B2 - 炭化タングステン系超硬基複合材料焼結体 - Google Patents
炭化タングステン系超硬基複合材料焼結体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化タングステン系(以下、「WC系」という。)超硬基複合材料焼結体に関し、更に詳しくは、耐酸化性、耐食性、耐衝撃性、耐欠損性、特には耐摩耗性に優れたWC系超硬基複合材料焼結体に関する。本発明の超硬基複合材料焼結体は、高速切削、高送り切削、重切削等に用いる切削工具や、熱間圧延ロール、ガイドロール、線引きロール、ダイス、パンチ等の熱間、温間、冷間における塑性加工及び延性加工に用いる治工具や、軸受け、ベアリングボール、すべり軸受け、すべりガイド等の高い耐摩耗性を必要とされる部材に用いる材料として好適に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
WC系超硬複合材料焼結体は、靭性、機械的強度に優れており、従来より、切削工具等の用途に用いられている。一方、WC系超硬複合材料焼結体は、上記のように靭性、機械的強度に優れる反面、耐酸化性、化学的安定性、高温特性、耐摩耗性の面で十分な特性が得難いという問題がある。そのため、これらの特性が要求される部材、例えば、温度特性が重要な温間・熱間鋳造用工具や、高い耐摩耗性を必要とする軸受け、ベアリングボール、すべり軸受け、すべりガイド等の部材等としての利用上問題がある。
【0003】
かかる問題を解決するため、従来より一般に、超硬合金の表面にアルミナ等からなる硬質層を被覆形成することが行われている。例えば、特開昭63−516942号公報には、WCからなる硬質相と、Ni、Coからなる結合金属相とを主体とする焼結体の表面に、CVD、PVD等を用いてアルミナ等の硬質相を被覆形成した超硬工具が記載されている。また、特開平2−221373号公報には、WCと鉄族金属結合相からなる超硬合金に予め遊離炭素を含有させ、特定の熱処理を施して遊離炭素を消失させた後にアルミナ等を被覆する方法が記載されている。
【0004】
しかし、硬質相を焼結体の表面に被覆する方法では、製造コストが増加することに加え、被覆硬質相が摩耗・剥離した場合に再研磨による再生が利かないといった問題がある。
【0005】
そのため、製造コストや再研磨による再生を加味した上でWC系超硬複合材料焼結体の特性を改善するため、高温安定なアルミナ等を硬質粒子として添加・分散させる方法が従来より行われている。例えば、特開昭61−235533公報や特開昭62−146237号公報には、WCからなる硬質相と、鉄族等からなる結合金属相とを主体とする焼結体に、アルミナ等の硬質分散粒子や硬質ウィスカーを均一微細に分散した高耐熱性超硬合金が記載されている。また、特表平4−502347号公報には、WC等からなる硬質相と、鉄族等からなる結合金属相とを主体とする焼結体に、アルミナ等の単結晶補強材料を分散させる方法が記載されている。その他、特開平9−316589号公報には、アルミナにナノサイズの微細なCo粉末とWCを添加したAl2O3−WC−Co系複合材料が記載されている。
【0006】
しかし、アルミナ等の硬質粒子は金属との濡れが非常に悪いため、ただ単に超硬合金に分散させて焼成しただけでは十分緻密化せず、強度・硬度等の機械的特性も超硬合金と比較して著しく低下するという問題がある。また、少量しか添加できず、しかも、微細、微小粉末等の特殊形態の高価な粉末材料が必要になることから、超硬合金焼結体の耐摩耗性を効果的に向上させることが困難であるという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、耐酸化性、耐食性、耐衝撃性、耐欠損性、特には耐摩耗性に優れたWC系超硬基複合材料焼結体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、WC系超硬複合材料焼結体の各種成分と特性との関係について検討した結果、WCを主体とする硬質相と鉄族金属結合相とからなる超硬合金焼結体中に、セラミックス硬質分散粒子を分散させ、密度及び気孔率を所定範囲とすることにより、従来の超硬複合材料よりも軽量であると共に、耐摩耗性、耐酸化性、耐食性、耐欠損性に優れた超硬基複合材料焼結体が得られることを見出して先に出願をしている(特願2000−27831号)。
【0009】
引き続き本発明者等は、WC系超硬複合材料焼結体の各種成分と特性との関係について検討した結果、WCを主体とする硬質相と鉄族金属結合相とからなる超硬合金焼結体中にセラミックス硬質分散粒子を分散させ、更にWを除く4a乃至6a族元素のうち1種又は2種以上を分散含有させることにより、更に焼結性が改善され、耐摩耗性、耐酸化性、耐食性、耐欠損性に優れたWC系超硬基複合材料焼結体が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明のWC系超硬基複合材料焼結体は、焼結体中、炭化タングステン(WC)を主体とする硬質相が10〜76体積%、鉄族金属のうち1種又は2種以上の合金からなる金属結合相8〜20体積%、セラミックス硬質分散粒子を4〜70体積%、及びWを除く4a乃至6a族元素の1種又は2種以上を炭化物換算で0.1〜3.0体積%分散含有する。
そして、セラミック硬質分散粒子がアルミナ硬質分散粒子であり、金属結合相の結合金属としてのNiが2〜17体積%含有されている。
【0011】
本発明のWC系超硬基複合材料焼結体における上記「炭化タングステン(WC)を主体とする硬質相」(以下、「WC系硬質相」という。)の含有量は、WC系超硬基複合材料焼結体100体積%に対し10〜76体積%、好ましくは20〜70体積%、更に好ましくは30〜65体積%である。上記WC系硬質相の含有量が10体積%未満では、焼結体の靭性が著しく低下し、必要な耐欠損性、耐衝撃性が得られないので好ましくない。また、上記WC系硬質相の含有量が76体積%を超えると、残部の鉄族金属のうち1種又は2種以上の合金からなる金属結合相やアルミナ等のセラミックス硬質分散粒子が少なくなるため、焼結性が低下し、その結果、焼結体の耐摩耗性、耐酸化性、耐食性が不足するので好ましくない。尚、本明細書中で使用される体積%の値の求め方としては、SEM写真から、全体面積に対する粒子の面積割合より求める方法があるが、原料粉末の調合添加量から体積%を算出して体積%として代用することもできる。これは、WC系硬質相は焼結時に殆ど揮発することがないので、調合組成と焼成後の組成のズレが極めて少ないからである。
【0012】
本発明の金属結合相を構成する成分である上記「鉄族金属のうち1種又は2種以上の合金からなる金属結合相」(以下、「鉄族金属結合相」という。)としては、鉄族金属から選ばれるものであり、例えば、Co、Ni、Fe等が挙げられるが、本発明では、金属結合相の結合金属としてのNiが2〜17体積%含有されている。Niを用いると、焼結性の点から好ましい。本発明の上記鉄族金属結合相の含有量としては、WC系超硬基複合材料焼結体100体積%に対して、好ましくは5〜17体積%、更に好ましくは8〜15体積%である。上記鉄族金属結合相の含有量が3体積%未満では、焼結性と靭性が低下し、焼結体として必要な耐欠損性が得られないので好ましくない。一方、20体積%を超えると、焼結体の硬度が低下し、必要な耐摩耗性が得られないので好ましくない。
【0013】
本発明の上記「セラミックス硬質分散粒子」としては、酸化物系硬質分散粒子(Al2O3、ZrO2、TiO2、SiO2、Y2O3等)、炭化物系硬質分散粒子(ZrC、SiC、VC、TiC等)、窒化物系硬質分散粒子(Si3N4、TiN、ZrN、VN等)及びホウ素系硬質分散粒子(WB、MoB、TiB2、ZrB2等)等を用いることができるが、本発明ではアルミナ硬質分散粒子を用いる。耐摩耗性の向上と製造コストの低減を図る観点から、アルミナ(Al2O3)硬質分散粒子が好ましい。尚、上記「セラミックス硬質分散粒子」は1種でもよいが、2種以上併用してもよい。また、上記「セラミックス硬質分散粒子」の含有量は、WC系超硬基複合材料焼結体100体積%に対し4〜70体積%、好ましくは10〜60体積%、更に好ましくは35〜55体積%である。上記「セラミックス硬質分散粒子」の含有量が4体積%未満では、セラミックス硬質分散粒子の量が少なすぎる結果、セラミックスの化学的安定性に起因する耐酸化性、耐食性、耐摩耗性において所望の性能が得られないので好ましくない。一方、70体積%を超えると、焼結性、靭性が低下する結果、耐欠損性、耐衝撃性において所望の性能が得られないので好ましくない。
【0014】
上記「セラミックス硬質分散粒子」は、WC系超硬基複合材料焼結体中に存在していれば、その存在状態には特に限定はないが、WC系超硬基複合材料焼結体中に均質に存在するのが好ましい。ここで「均質」とは、WC系超硬基複合材料焼結体の内外においてセラミックス硬質分散粒子の分散状態が実質的に同じであることをいう。より具体的には、WC系超硬基複合材料焼結体の断面積10000μm2あたりに存在するセラミックス硬質分散粒子の個数を数えた場合、WC系超硬基複合材料焼結体の内外での個数の比が0.1〜10の範囲である場合をいう。
【0015】
また、上記「セラミックス硬質分散粒子」の平均粒径についても特に限定はないが、好ましくは0.05〜50μmである。かかる範囲とすることにより、セラミックス硬質分散粒子のWC系超硬基複合材料焼結体への食い込み量が十分となると共に、分散状態も均一となる結果、焼結体の耐摩耗性を向上させることができるので好ましい。ここで、上記「セラミックス硬質分散粒子」の平均粒径は、WC系超硬基複合材料焼結体の断面(いわゆる鏡面研磨面)の5000倍のSEM写真から、30μm四方の範囲に観察される硬質分散粒子の最も短い部分(いわゆる短径)の長さを測定し、これらの測定値を平均した値として求める。
【0016】
本発明のWC系超硬基複合材料焼結体では、上記各成分に加え、更に「Wを除く4a乃至6a族元素」を分散含有している。上記「Wを除く4a乃至6a族元素」を含有することにより、上記金属結合相に固溶し合金化し、WC系超硬基複合材料焼結体中の上記鉄族金属結合相の耐摩耗性、耐酸化性、耐食性、強度や硬度等を向上させると共に、セラミックス硬質分散粒子との濡れ性を改善するものと考えられる。また、本発明のWC系超硬基複合材料焼結体において、上記「Wを除く4a乃至6a族元素」の少なくとも一部を上記セラミックス硬質分散粒子内に分散させることにより、粒内残留応力が生じて高靭化がなされると共に、セラミックス硬質分散粒子の粒成長を抑制して組織が微細化するため高強度となる結果、焼結体の耐欠損性及び耐衝撃性を向上させることができるので好ましい。
【0017】
本発明の上記「Wを除く4a乃至6a族元素」としては、例えば、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr等が挙げられ、このうちの1種又は2種以上を用いることができる。この中で、特に、Zr及びHfはセラミックスを還元することが可能なため、セラミックス硬質分散粒子表面をメタル化し、鉄族金属結合相との濡れを著しく改善することができるので好ましい。本発明の上記「Wを除く4a乃至6a族元素」を焼結体中に含有させるために用いられる出発原料については特に限定はないが、好ましくは、炭化物、窒化物、炭窒化物、2種以上の複合炭化物、複合窒化物、複合炭窒化物、純金属、2種以上の合金、2種以上の金属間化合物、Alとの金属間化合物、鉄族金属との金属間化合物、酸化物が挙げられる。この中で、特に炭化物は、焼結性を向上させて高硬度の焼結体とすることができるので好ましい。
【0018】
本発明の上記「Wを除く4a乃至6a族元素」の含有量は、超硬基複合材料100体積%に対して炭化物換算で0.1体積%以上、好ましくは0.3体積%以上、更に好ましくは0.5〜2.5体積%である。上記Wを除く4a乃至6a族元素の含有量が0.1体積%未満では、上記金属結合相への固溶量が不足する結果、焼結体の強度と硬度の向上を図ることができないので好ましくない。一方、上記Wを除く4a乃至6a族元素の含有量を2.5体積%以下とすることにより、焼結性が低下を防止して、優れた耐欠損性、耐衝撃性を発揮することができるので好ましい。
【0019】
本発明の超硬基複合材料焼結体中において、焼結体中に金属間化合物が存在するものとすることができる。かかる金属間化合物が存在することにより、本来、金属と濡れの悪いアルミナ等のセラミックス硬質分散粒子と、焼結体中の鉄族金属結合相との濡れ性を改善し、より緻密な焼結体を得ることができる。その結果、極めて優れた高温強度及び高温硬さを有すると共に、更に耐熱衝撃性、耐熱疲労性、耐酸化性及び耐食性に優れた超硬基複合材料焼結体とすることができるので好ましい。上記「金属間化合物」を焼結体中に存在させる方法としては特に限定はなく、例えば、金属間化合物を原料として添加する他、焼成中に金属間化合物を反応析出する方法が挙げられる。このうち、焼成中に金属間化合物を反応析出する方法によれば、超硬基複合材料焼結体中の上記金属結合相と上記セラミックス硬質分散粒子との結合力をより高めることができるので好ましい。
【0020】
上記「金属間化合物」の例として、好ましくは鉄族金属とAlとの金属間化合物、4a乃至6a族元素とAlとの金属間化合物、4a乃至6a族元素と鉄族金属との金属間化合物が挙げられ、特にNi3Al、Ni3(Al,Ti)、NiAl、TiAl、Ti3Al、CoAlは、焼結体の高温特性の改善及び本発明の超硬基複合材料焼結体中の上記セラミックス硬質分散粒子との結合力向上という点から好ましい。本発明の超硬基複合材料焼結体中に含まれている上記金属間化合物は1種でもよいが、異なる記金属間化合物を2種以上含むものとすることもできる。
【0021】
本発明の超硬基複合材料焼結体は、焼結性に優れていることから、緻密で気孔が少ない焼結体とすることができる。具体的には、本発明の超硬基複合材料焼結体において、有孔度をASTM(American Society for Testing and Materials)規格でA02以下のレベルにすることができる。有孔度をA02以下のレベルとすることにより、更に緻密で気孔が少ない焼結体とすることができ、優れた強度と硬度を維持することができるので好ましい。
【0022】
本発明のWC系超硬基複合材料焼結体は、上記構成を備えることにより、耐酸化性、耐食性、耐衝撃性、耐欠損性、特には耐摩耗性を向上させることができる。具体的には、強度をJIS R1601に準拠した3点曲げ試験において1300MPa以上(好ましくは1400MPa以上、更に好ましくは1500MPa以上、最も好ましくは1600MPa以上)とすることができる。また、破壊靭性をJIS R1607に準拠した方法において、10.0MPa・m0.5以上(好ましくは11.0MPa・m0.5以上、更に好ましくは11.5MPa・m0.5以上、最も好ましくは12.0MPa・m0.5以上)とすることができる。更に、硬度をJIS R1610に準拠した方法において1500Hv以上(好ましくは1600Hv以上、更に好ましくは1650Hv以上)とすることができる。また、比摩耗量を実施例の▲9▼に記載した方法で5.0×10-16m2/N以下(好ましくは4.5×10-16m2/N以下、更に好ましくは4.0×10-16m2/N以下)とすることができる。更に、実施例に記載の方法による酸化増量を900g/m2以下(好ましくは800g/m2以下、更に好ましくは700g/m2以下、最も好ましくは600g/m2以下)とすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。
<実験例1>
(1)WC系超硬基複合材料焼結体の調製
原料としてWC、TiC、ZrC、HfC、VC、NbC、Cr3C2、Mo2C、Ni、Co及びFe(平均粒子径0.5〜3μm)と、Al2O3(平均粒子径0.2μm)を用い、これを以下の表1に示した組成で配合して原料粉末混合物を調製した。そして、該原料粉末混合物を、アトライターを用いて湿式で粉砕した後、溶媒を脱気、乾燥し、所定の形状にプレス成形した。得られたプレス成形体を炉内に入れ、70Paのアルゴンガスを導入した状態で1500℃まで昇温した後、更にアルゴンガスを導入して130KPaで90分間保持して、目的とするWC系超硬基複合材料焼結体No.1〜23を得た。尚、No.7は参考例である。
【0024】
【表1】
【0025】
(2)性能評価
上記WC系超硬基複合材料焼結体No.1〜23について、以下の方法により性能評価を行った。その結果を以下の表2に示す。尚、表2において、試料No.の前に「*」を付したものは、本発明の範囲外の比較例である。また、No.7は参考例である。
<1>焼結体密度(g/cm3)
アルキメデス法を用いて測定した。
<2>理論密度比(%)
上記<1>で得られた焼結体密度の値を組成の混合則で算出される理論密度の値で除し、この値を百分率で表示することにより求めた。
<3>有孔度
焼結体の研磨面の200倍の光学顕微鏡写真を用いて、ASTM B276−79に照らして評価した。
<4>焼結体中のNi3Al相の同定
焼結体中のNi3Al相の有無を、Cu−Kα線源によるX線回折法によって得られたピークを同定して評価した。
<5>焼結体中のアルミナ粒内の観察
焼結体中のアルミナ粒内をSTEM(走査式透過型電子顕微鏡)によって観察し、EDS(エネルギー分散形X線分光器)測定により,アルミナ粒内の4a乃至6a族元素の有無を確認した。
<6>強度(MPa)
JIS R 1601に準拠した3点曲げ試験により求めた。
<7>破壊靭性(MPa・m0.5)
JIS R 1607に準拠した方法で測定した。
<8>硬度(Hv)
JIS R 1610に準拠した方法で測定した。
<9>比摩耗量(×10−16m2/N)
リングオンプレート法で測定した。即ち、上記No.1〜23の各超硬基複合材料焼結体を用いてプレート(30mm角、厚み5mm)を作製し、その上に炭素鋼製のリング(外径φ20mm、内径15mm)を500〜2000Nの荷重を負荷した状態で300〜600rpmの回転数にて回転させながら、水を潤滑剤として2〜5時間摺動する。その後、プレートの摩耗量を重量変化から求め、その値を摺動距離と荷重で除して求めた。
【0026】
【表2】
【0027】
<実験例2>
上記実験例1と同じ原料を用い、これを以下の表3に示した組成で配合して原料粉末混合物を調製した。そして、上記実験例1と同じ製造方法によって、目的とするWC系超硬基複合材料焼結体No.24〜27を得た。そして、得られたWC系超硬基複合材料焼結体No.24〜27について、以下に示す方法により、WC系超硬基複合材料焼結体の大気中高温における酸化増量(g/m2)を測定した。即ち、上記WC系超硬基複合材料焼結体No.24〜27の小片(2.5×2.5mm角、厚み1.2mm)を白金製の容器に入れ、大気中において室温から1000℃まで10℃毎分で昇温し、小片の重量を熱天秤で測定する。そして、1000℃までの総重量変化を試料の比表面積で除することにより酸化増量を求めた。この方法において、基準物質にはα−アルミナを使用した。この結果を以下の表3に示す。尚、表3において、試料No.の前に「*」を付したものは、本発明の範囲外の比較例である。
【0028】
【表3】
【0029】
(3)実験例の効果
表2に示すように、本発明の範囲内であるNo.1〜6、8〜14の各WC系超硬基複合材料焼結体では、理論密度比が97.1〜99.9%で有孔度のレベルもA02以下であることから、緻密で焼結性に優れていることが判る。また、強度が1340〜2120MPa、破壊靭性が10.1〜15.2MPa・m0.5、硬度が1520〜1990Hvと高く、比摩耗量が1.6〜4.5×10−16m2/Nと低いことから、高強度、高硬度でありながら十分な靭性を兼ね備え、しかも優れた耐摩耗性を示すことが判る。また、金属間化合物が存在するNo.1〜6、8〜9と、存在しないNo.10〜14とを対比すると、No.10〜14では、平均で強度が1422MPa、硬度が1610Hv、比摩耗量が3.9×10−16m2/Nであるのに対し、No.1〜9では、平均で強度が1672MPa、硬度が1749Hvと高く、比摩耗量が3.1×10−16m2/Nと低いことから、金属間化合物が存在することにより、更に高強度、高硬度で耐摩耗性に優れたWC系超硬基複合材料焼結体とすることができることが判る。
【0030】
これに対し、No.15のWC系超硬基複合材料焼結体では、WC含有量が80体積%と多いことから、鉄族金属含有量が少なくなる結果、理論密度比が93.2%と低く焼結性に劣り、しかも、有孔度がA04であることから、残留気孔のため強度が1210MPa、硬度が1380Hvと低く、強度及び硬度に劣ることが判る。更に、アルミナ硬質分散粒子も少なくなる結果、比摩耗量が6.1×10-16m2/Nと高く、耐摩耗性が低下していることが判る。一方、No.16のWC系超硬基複合材料焼結体では、WC含有量が7.5体積%と少ないことから、耐摩耗性及び硬度がNo.15より若干改善されている反面、強度が1220MPaと低く、しかも、破壊靭性が8.9MPa・m0.5と低いことから、焼結体の靭性が低下してしまうことが判る。
【0031】
また、No.17のWC系超硬基複合材料焼結体では、アルミナ硬質分散粒子が3体積%と少ないため、強度、靭性及び硬度に優れる反面、比摩耗量が8.2×10-16m2/Nと高く、耐摩耗性が著しく低いことが判る。一方、No.18及びNo.21のWC系超硬基複合材料焼結体では、アルミナ硬質分散粒子が80体積%と多いため、理論密度比が92.2%及び94.2%と低く焼結性に劣り、強度が1220MPa及び1310MPa、硬度が1320Hv及び1500Hvと低く、強度と硬度にも劣っている。しかも、比摩耗量が6.6及び9.0×10-16m2/Nと高く、耐摩耗性にも劣ることが判る。更に、No.21のWC系超硬基複合材料焼結体では、TiCが5.0体積%と多いため、焼結性が低下し、また低靭性となることが判る。
【0032】
更に、No.19のWC系超硬基複合材料焼結体では、鉄族金属結合相が1.5体積%と少ないことから、理論密度比が93.8%と低く焼結性に劣り、しかも、強度は1100MPa、破壊靭性が7.7MPa・m0.5と低く、強度及び靭性に劣るものであることが判る。一方、No.20WC系超硬基複合材料焼結体では、鉄族金属結合相が28体積%と多いことから、理論密度比が99.8%と高く、破壊靭性は16.7MPa・m0.5と改善されている反面、硬度が1210Hv、比摩耗量が7.9×10-16m2/Nと高く、硬度及び耐摩耗性に劣るものであることが判る。
【0033】
また、No.23のWC系超硬基複合材料焼結体では、4a乃至6a族元素を含んでいないため、理論密度比が94.3%と低く焼結性に劣り、しかも、強度は1220MPa、硬度は1580Hvと低く、比摩耗量が4.5×10-16m2/Nと高いことから、強度、硬度及び耐摩耗性に劣るものであることが判る。また、No.22は、WC系超硬基複合材料焼結体では、4a乃至6a族元素であるZrを含んでいるが、その量が0.05体積%と少ないため、No.23と同様に、理論密度比が89.9%と低く焼結性に劣り、しかも、強度は1280MPa、硬度は1320Hvと低く、比摩耗量が6.6×10-16m2/Nと高いことから、強度、硬度及び耐摩耗性に劣るものであることが判る。
【0034】
表3より、本発明の範囲に含まれるNo.24及び25のWC系超硬基複合材料焼結体では、いずれも1000℃という高温での酸化増量が600g/m2以下と少なく、優れた耐酸化性を示していることが判る。これに対し、No.26のWC系超硬基複合材料焼結体ではNiが2体積%と鉄族金属結合相が少ないため、800℃を超す高温になると急速に酸化するWCを十分に被覆する事ができず、1000℃における酸化増量が952.5g/m2と大きく、耐酸化性に劣ることが判る。また、No.27のWC系超硬基複合材料焼結体は、Al2O3を含まないため、焼結体中の酸素の拡散が速く、酸化が急速に進む上、しかもCr3C2の量が少ないため、十分な酸化抵抗を示さないことから、1000℃における酸化増量が1148.0g/m2と大きく、耐酸化性に劣ることが判る。
【0035】
尚、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて種々変更した実施例とすることができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の超硬基複合材料焼結体は、WCを主体とする硬質相と、鉄族金属結合相とからなる超硬合金焼結体中に、化学的に安定で高温特性にも優れたセラミックス硬質分散粒子が分散し、更にWを除く4a乃至6a族元素のうち1種又は2種以上を含有させることにより、強度、硬度が向上し、耐摩耗性、耐酸化性、耐食性、耐欠損性に優れた超硬基複合材料焼結体とすることができる。本発明の超硬基複合材料焼結体は、上記特性を有することから、耐摩耗性、耐酸化性、耐食性、耐欠損性が要求される各種工具(高速切削、高送り切削、重切削等に用いる切削工具や、熱間圧延ロール、ガイドロール、線引きロール、ダイス、パンチ等の熱間、温間、冷間における塑性加工及び延性加工に用いる治工具等)、耐摩耗性部材(軸受け、ベアリングボール、すべり軸受け、すべりガイド等)等に好適に用いることができる。
Claims (5)
- 焼結体中、
炭化タングステン(WC)を主体とする硬質相が10〜76体積%、
鉄族金属のうち1種又は2種以上の合金からなる金属結合相8〜20体積%、
セラミックス硬質分散粒子を4〜70体積%、
及びWを除く4a乃至6a族元素の1種又は2種以上を炭化物換算で0.1〜3.0体積%分散含有する炭化タングステン系超硬基複合材料焼結体であって、
上記セラミック硬質分散粒子がアルミナ硬質分散粒子であり、
上記金属結合相の結合金属としてのNiが2〜17体積%含有されている炭化タングステン系超硬基複合材料焼結体。 - 上記4a乃至6a族元素の少なくとも一部が上記セラミックス硬質分散粒子内に分散している請求項1記載の炭化タングステン系超硬基複合材料焼結体。
- 焼結体中に焼成により反応析出した金属間化合物が存在する請求項1又は2記載の炭化タングステン系超硬基複合材料焼結体。
- 上記金属間化合物は、Ni3Al、Ni3(Al,Ti)及びNiAlの1種又は2種以上である請求項3記載の炭化タングステン系超硬基複合材料焼結体。
- 焼結体の有孔度がASTM規格でA02以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の炭化タングステン系超硬基複合材料焼結体。
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