JP2001181776A - 超硬合金焼結体及びその製造方法 - Google Patents

超硬合金焼結体及びその製造方法

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JP2001181776A
JP2001181776A JP36337699A JP36337699A JP2001181776A JP 2001181776 A JP2001181776 A JP 2001181776A JP 36337699 A JP36337699 A JP 36337699A JP 36337699 A JP36337699 A JP 36337699A JP 2001181776 A JP2001181776 A JP 2001181776A
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carbide sintered
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Kazuhiro Urashima
和浩 浦島
Takamichi Ogawa
貴道 小川
Kenji Murakami
健二 村上
Satoshi Iio
聡 飯尾
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Niterra Co Ltd
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NGK Spark Plug Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 WCからなるWC系硬質相と、鉄族金属結合
相とを主体とする焼結体にアルミナ等のセラミックス硬
質分散粒子を分散させた超硬合金焼結体において、強
度、破壊靭性、耐摩耗性に優れる超硬合金焼結体を得る
こと。 【構成】 WC系硬質相と、鉄族金属結合相とからなる
焼結体中に、セラミックス硬質分散粒子を分散させた超
硬合金焼結体において、該セラミックス硬質分散粒子の
主たる形状を略樹枝状に成長させる。該セラミックス硬
質分散粒子には、副たる形状として略粒状、略針状及び
略棒状のうちから選ばれる少なくとも1種が混在してい
てもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐衝撃性、耐欠損性、
耐塑性変形抵抗、耐酸化性、化学安定性、特には、機械
的強度、破壊靭性値、耐摩耗性に優れる超硬合金焼結体
に関する。更に詳しくは、高速切削、高送り切削、重切
削等に用いる切削工具や、熱間圧延ロール、ガイドロー
ル、線引きロール、ダイス、パンチ等の熱間、温間、冷
間における塑性加工及び延性加工に用いる治工具や、軸
受け、ベアリングボール、すべり軸受け、すべりガイド
等の高い機械的強度、破壊靭性値、耐摩耗性を必要とさ
れる部材に用いる材料として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】WC(タングステンカーバイト)を主体
とする超硬複合材料は、靭性、機械的強度に優れる一
方、耐酸化性、化学的安定性、耐摩耗性の面で十分な特
性が得難い問題がある。そのため、一般にWC系超硬複
合材料の表面には、アルミナ等からなる硬質相を被覆形
成することが行われている。
【0003】例えば、特開昭63−216942号公報
には、WCからなる硬質相と、Ni、Coからなる結合
金属相とを主体とする焼結体の表面に、CVD、PVD
等を用いてアルミナ等の硬質相を被覆形成した超硬工具
が開示されている。また、特開平2−221373号公
報には、WCと鉄族金属結合相からなる超硬合金に予め
遊離炭素を含有させ、係る超硬合金に特定の熱処理を施
して遊離炭素を消失させた後アルミナ等を被覆する方法
が開示されている。
【0004】しかし、硬質相を焼結体の表面に被覆する
方法では、製造コストの増加、被覆硬質相が摩耗・剥離
した場合に再研磨による再生が利かない、といった問題
がある。
【0005】製造コストや再研磨による再生を加味すれ
ば、アルミナ等を硬質粒子として添加・分散させる方が
合理的である。例えば、特開昭61−235533号公
報や特開昭62−146237号公報には、WCからな
る硬質相と、鉄族等からなる結合金属相とを主体とする
焼結体にアルミナ等の硬質粒子或いは硬質ウイスカを均
一微細分散させる方法が開示されている。係る超硬合金
は、例えば温間・熱間鋳造用工具等に持ちいることがで
きると記載されている。
【0006】また、特表平4−02347号公報には、
WC等からなる硬質相と、鉄族等からなる結合金属相と
を主体とする焼結体にアルミナ等の単結晶補強材料等を
分散させる方法が開示されている。また、特許第286
3829号公報には、アルミナにコバルト粉末とWCを
添加したAl23−WC−Co系複合材料が開示されて
いる。また、特開昭63−89543号公報には、鉄族
等の金属基材に所定の体積率でアルミナ、WC等のセラ
ミックスを含有させた耐エロージョン性複合材料が開示
されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のアルミ
ナ等の硬質粒子等は結合金属相との濡れ性が良くないた
め、HP法(ホットプレス法)を用いなければ焼結体の
緻密化が困難であるといった問題がある。量産性を加味
すれば、常圧焼成法又はガス圧焼成法によって焼結体の
緻密化が可能であることが好ましい。
【0008】本発明は、WCからなる硬質相と、鉄族等
からなる結合金属相とを主体とする焼結体にアルミナ等
のセラミックス硬質分散粒子を分散させた超硬合金焼結
体において、機械的強度、破壊靭性値、耐摩耗性に優れ
る超硬合金焼結体を提供することを目的とする。更に詳
しくは、高速切削、高送り切削、重切削等に用いる切削
工具や、熱間圧延ロール、ガイドロール、線引きロー
ル、ダイス、パンチ等の熱間、温間、冷間における塑性
加工及び延性加工に用いる治工具や、軸受け、ベアリン
グボール、すべり軸受け、すべりガイド等の高い機械的
強度や高い摺動特性を必要とされる部材に用いる材料と
して好適な、機械的強度、破壊靭性値、耐摩耗性に優れ
る超硬合金焼結体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、以下
の(a)の要件を満たす超硬合金焼結体を要旨とする。
本発明によれば、高い機械的強度、破壊靭性値、耐摩耗
性とを兼備した超硬合金焼結体が得られる。
【0010】(a).セラミックス硬質分散粒子の形状
が略樹枝状であること。 本発明の超硬合金焼結体は、含まれるセラミックス硬質
分散粒子の主たる形状を略樹枝状に成長させることが重
要である。この理由は、機械的応力が負荷されてクラッ
クが発生した場合においても、略樹枝状に成長したセラ
ミックス硬質分散粒子によってクラックの進展が抑制さ
れるため、破損しにくくなるからである。また、セラミ
ックス硬質分散粒子の略樹枝状部が鉄族金属結合相への
アンカーの役割をも果たすため、セラミックス硬質分散
粒子の耐欠損性を向上する効果も得られる。
【0011】ここにいう「略樹枝状」とは、セラミック
ス硬質分散粒子が枝状に連結することにより、一方向の
みならず、二以上の方向に枝別れして成長した構造をい
う(図1を参照。)。このセラミックス硬質分散粒子
は、放射状に成長するよりはむしろ長径を有するように
成長させるのがよい。略樹枝状が連続的につながっても
良い。超硬合金焼結体の機械的強度、破壊靭性値、耐摩
耗性をバランスよく効果的に向上できるからである。
【0012】セラミックス硬質分散粒子が略樹枝状か否
かの確認は、超硬合金焼結体のラップ断面(いわゆる鏡
面研磨面)の組織観察するのがよい。例えば、倍率20
00倍のSEM像を撮影した写真を用いて確認するのが
簡便でよい。略樹枝状のセラミックス硬質分散粒子の長
径を求める必要がある場合は、一のセラミックス硬質分
散粒子の最も離れた2点間を直線で結び、その長さ(図
1のdi、di+1を参照。)を採るのがよい。
【0013】超硬合金焼結体全体としての長径を求める
必要がある場合は、上記のSEM像の写真1枚あたりか
ら任意に10のセラミックス硬質分散粒子を抽出し、そ
の平均値を採る。一つの試料については、少なくとも3
個所以上の場所について同様の作業を行い、その総合平
均値を超硬合金焼結体全体の長径として採る。
【0014】セラミックス硬質分散粒子としては、Al
23、ZrO2、SiO2、Y23、SiC、Si34
TiN、ZrC、VC、TiC、ZrN、VN、WB、
MoB、TiB2、ZrB2、TaC、Cr32等を用い
ることができる。特には酸化物セラミックスを用いるの
が耐摩耗性の向上と製造コストの低減を図る上でよい。
更には、Al23を用いるのがよい。耐摩耗性に優れる
超硬合金焼結体を安価に提供することができる。
【0015】金属結合相を構成する成分は鉄族金属から
選ばれる。特には、Co、Ni、Feのうちから選ばれ
る少なくとも1種を用いるのがよい。WC系硬質相とセ
ラミックス硬質分散粒子を良好に結着した超硬合金焼結
体が得られるからである。
【0016】超硬合金焼結体に含まれるWCの長径は5
μm以下がよい。WCの平均粒径をかかる範囲に規定す
ることで、加工性と機械的特性に優れた超硬合金焼結体
が得られる。超硬合金焼結体に含まれるWCの長径の求
め方は、主たる形状のセラミックス硬質分散粒子の長径
の求め方に準ずる(一のWCの最も離れた2点間を直線
で結び、その長さを採る。)。その他の説明は、請求項
1の発明のセラミックス硬質分散粒子の説明と同様のた
め、ここでは省略する。
【0017】WCの長径を5μm以下に規定した理由
は、WCの長径が5μmを越えると、WCの周辺が破壊
起源となって焼結体の強度が低下するからである。ま
た、摺動の際に被加工物への攻撃が大きくなり、被加工
物の表面を大きく傷付けることになるからである。
【0018】本発明の超硬合金焼結体の気孔率は5%以
下がよい。気孔率を5%以下に規定した理由は、気孔率
が5%を越えると比摩耗量が大幅に低下して、実用に耐
えなくなるからである。気孔率の好ましい範囲は3%以
下である。特には2%以下、更に好ましくは1%以下で
ある。気孔率をかかる範囲に規定することによって、耐
摩耗性が相乗効果により向上できるため、優れた耐摩耗
性と機械的特性とを兼備した超硬合金焼結体が得られ
る。
【0019】請求項2の発明は、以下の(b)の要件を
満たす超硬合金焼結体を要旨とする。本発明によれば、
請求項1の発明と同様に、高い機械的強度、破壊靭性
値、耐摩耗性とを兼備した超硬合金焼結体が得られる。
【0020】(b).セラミックス硬質分散粒子の主た
る形状が略樹枝状であり、かつ、副たる形状として略粒
状、略針状及び略棒状のうちから選ばれる少なくとも1
種が混在していること。 本発明の超硬合金焼結体は、含まれるセラミックス硬質
分散粒子の主たる形状を略樹枝状に成長させるととも
に、副たる形状として略粒状、略針状及び略棒状のうち
から選ばれる少なくとも1種が混在することが重要であ
る。この理由は、形状の異なる硬質分散粒子を含むこと
で、略樹枝状セラミックス硬質分散粒子間の空隙を、略
粒状、略針状または略棒状セラミックス硬質分散粒子に
より補うことが可能となり、より緻密で高強度な超硬合
金焼結体が得られるからである。
【0021】セラミックス硬質分散粒子の副たる形状と
しては、略粒状が特によい。この理由としては、略粒状
は略樹枝状セラミックス硬質分散粒子間の空隙を埋める
のに形状的に最も適しており、より緻密で高靱性かつ高
強度な超硬合金焼結体が得られるからである。
【0022】副たる形状のセラミックス硬質分散粒子の
長径としては、0.05〜50μmが好ましい。長径が
0.05μm以下では、セラミックス硬質分散粒子の超
硬合金焼結体への食い込み量が少ないため容易に脱離し
てしまい、耐摩耗性を上げることができないからであ
る。また、長径が50μmを越えると、セラミックス硬
質分散粒子の超硬合金焼結体への分散状態が不均一にな
り、やはり耐摩耗性を上げることができない。
【0023】副たる形状のセラミックス硬質分散粒子の
長径の求め方は、主たる形状のセラミックス硬質分散粒
子の長径の求め方に準ずる(一のセラミックス硬質分散
粒子の最も離れた2点間を直線で結び、その長さを採
る。)。その他の説明は、請求項1の発明と同様のた
め、ここでは省略する。
【0024】請求項3の発明は、以下の(c)を満たす
ことを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の超硬合
金焼結体を要旨とする。本発明によれば、より高い機械
的強度、破壊靭性値、耐摩耗性とを兼備した超硬合金焼
結体が得られる。
【0025】(c).略樹枝状のセラミックス硬質分散
粒子の長径が5μm以上であること。 主たる形状たる略樹枝状のセラミックス硬質分散粒子の
長径の下限値としては、5μm以上がよい。5μm以下
では、セラミックス硬質分散粒子の超硬合金焼結体への
食い込み量が少ないため脱離しやすくなり、耐摩耗性を
上げることができないからである。略樹枝状が連続的に
つながっても良い。
【0026】請求項4の発明は、超硬合金焼結体100
体積%に対する、前記WC系硬質相、前記鉄族金属結合
相及び前記セラミックス硬質分散粒子の好ましい体積%
を規定したものである。
【0027】超硬合金焼結体100体積%に対するセラ
ミックス硬質分散粒子の好ましい範囲は20〜70体積
%である。かかる範囲内に規定した理由は、20体積%
未満では略樹枝状への成長が困難になり、機械的特性の
向上が図れず、一方、70体積%を越えると逆に耐摩耗
性が低下するとともに、略樹枝状への成長もが困難にな
るからである。
【0028】上記の範囲内であれば、超硬合金焼結体の
機械的特性を効果的に向上できる。特に好ましくは30
〜50体積%である。超硬合金焼結体の焼結性を低下さ
せることなく耐摩耗性を効果的に向上できる。
【0029】ここで、体積%(いわゆる体積率)の値の
求め方としては、前記SEM写真から、全体面積に対す
るセラミックス硬質分散粒子の面積割合から求める方法
がよい。この際、セラミックス硬質分散粒子の色がポア
(いわゆる気孔)の色と類似していてSEM写真から判
別できないときは、原料粉末の調合添加量から体積%を
算出して、体積%として代用することもできる。これ
は、WC系硬質相は焼結時に殆ど揮発することが無いの
で、調合組成と焼成後の組成のズレが極めて少ないから
である。
【0030】超硬合金焼結体100体積%に対する鉄族
金属結合相の好ましい範囲は3〜20体積%である。か
かる範囲内であれば、WC系硬質相とセラミックス硬質
分散粒子を良好に結着した超硬合金焼結体が得られる。
特に好ましくは5〜17体積%である。耐摩耗性に優れ
る超硬合金焼結体を提供することができる。
【0031】以上の残部がWC系硬質相の範囲となる。
軽量化と耐摩耗性とを両立した良好な超硬合金焼結体を
提供することができる。
【0032】請求項5の発明は、好ましいセラミックス
硬質分散粒子の材質を具体的に規定したものであり、A
23、ZrO2、SiO2、Y23、SiC、Si
34、TiN、ZrC、VC、TiC、ZrN、VN、
WB、MoB、TiB2、ZrB2、TaC、Cr32
うちから選ばれる少なくとも1種であることを要旨とす
る。
【0033】特には酸化物セラミックスを用いるのが耐
摩耗性の向上と製造コストの低減を図る上でよい。更に
は、Al23を用いるのがよい。耐摩耗性に優れる超硬
合金焼結体を安価に提供することができる。
【0034】請求項6の発明は、以下の(d)〜(g)
を満たすことを特徴とする超硬合金焼結体の製造方法を
要旨とする。本発明によれば、セラミックス硬質分散粒
子の主たる形状を効果的に略樹枝状に形成した超硬合金
焼結体が容易に得られる。
【0035】(d).セラミックス硬質分散粒子となる
原料粉末として、平均粒径が1μm以下の原料粉末を用
いること。 平均粒径の細かい原料粉末を用いることで、セラミック
ス硬質分散粒子の主たる形状を略樹枝状に形成しやすく
できる。例えば、アンモニウム・ドーソナイト熱分解法
を用いて製造した微粉末を用いるのがよい。セラミック
ス硬質分散粒子の主たる形状をより効果的に略樹枝状に
形成しやすくできる。
【0036】ここで用いるセラミックス硬質分散粒子と
なる原料粉末は、金属結合相成分又は融点が1500℃
以上の高融点金属成分で表面を実質的に被覆したものを
用いるのがよい。セラミックス硬質分散粒子の表面をあ
らかじめ金属結合相成分又は融点が1500℃以上の高
融点金属成分で実質的に被覆しておくことで、セラミッ
クス硬質分散粒子の焼成時の濡れ性を向上できるため、
超硬合金焼結体の緻密化を促進するとともに、耐摩耗性
を効果的に向上できる。
【0037】ここにいう「実質的に被覆」とは、必ずし
も完全な被覆状態を指すものではない。焼成時のセラミ
ックス硬質分散粒子の濡れ性が確保できる範囲の被覆状
態で足りる。セラミックス硬質分散粒子の被覆状態を示
すパラメータとして、得られた超硬合金焼結体の気孔率
を用いることができる。超硬合金焼結体の気孔率が10
%を越えないような被覆状態を確保することが重要であ
る。好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、特
には1%以下である。
【0038】金属結合相成分又は融点が1500℃以上
の高融点金属成分により被覆したセラミックス硬質分散
粒子の原料粉末は、炭素還元法、水素還元法、スパッタ
法のうちから選ばれるいずれかの方法を用いて作製する
のがよい。被覆成分としては、金属結合相成分以外に
も、融点が1500℃以上の高融点金属成分を用いるこ
とができる。特には金属結合相との濡れ性が良好なもの
が好ましい。例えば、Ta、Cr、Mo、Zr等が濡れ
性の面で特に好ましい。
【0039】ここにいう「炭素還元法」とは、セラミッ
クス硬質分散粒子に金属結合相となる金属又は融点が1
500℃以上の高融点金属を含む溶液を添加、乾燥した
後、還元のために炭素を添加して不活性雰囲気中又は真
空中で熱処理して、金属成分をセラミックス硬質分散粒
子の表面に析出させる方法をいう。上記溶液としては、
Ni、Fe、Co、Ta、Cr、Mo等の硝酸塩等の金
属塩のアルコール溶液等を用いることができる。
【0040】ここにいう「水素還元法」とは、セラミッ
クス硬質分散粒子に金属結合相又は融点が1500℃以
上の高融点金属となる金属を含む溶液を添加、乾燥した
後、水素雰囲気下で加熱、還元処理を行い、金属成分を
セラミックス硬質分散粒子の表面に析出させる方法をい
う。
【0041】ここにいう「スパッタ法」とは、公知のス
パッタ装置を用いて硬質分散粒子の表面に金属成分をコ
ートする方法をいう。
【0042】被覆層の安定性及び再現性、工程の安全性
及び簡便性、被覆層へのCの添加のし易さ等を考慮し
て、「炭素還元法」を用いることが最も好ましい。
【0043】(e).焼成により超硬合金焼結体となる
成形体を、略真空下において1300℃以下で処理して
第1焼結体を得る略真空下焼成工程を含むこと。 焼成工程の初期段階においては、成形体を略真空下にお
いて1300℃以下で処理(略真空下焼成工程)するの
がよい。好ましくは1200℃以下、より好ましくは1
100℃以下である。かかる略真空下焼成工程を用いる
ことによって、第1焼結体中の気孔を効果的に低減して
緻密化を促進することができる。本工程の処理温度を1
300℃以下に規定した理由は、1300℃を越えると
本焼成時に緻密化が進みにくくなるからである。
【0044】(f).第1焼結体を、不活性ガス(窒素
ガスを除く。)導入下にて1000℃以上で処理して、
第2焼結体を得るガス導入下焼成工程を含むこと。 前記の略真空下焼成工程を経て緻密化がある程度進んだ
第1焼結体をより緻密化した第2焼結体を得るには、不
活性ガス(窒素ガスを除く。)を導入するガス導入下焼
成工程が必要である。不活性ガス導入温度としては、1
000℃以上がよい。好ましくは1100℃以上、より
好ましくは1200℃以上である。1000℃以下で不
活性ガスを導入すると、残留気孔が発生して機械的強度
が向上できないからである。
【0045】ここで用いる不活性ガスとしては、Ar、
He、Ne、Krがよい。特には、Arを用いるのがよ
い。第2焼結体の緻密化を効果的に促進することができ
るからである。不活性ガスの導入圧力としては、670
Pa(5Torr)以上がよい。670Pa(5Tor
r)以下では、焼結体の表面状態が粗くなって機械的強
度が低下するからである。また、焼結体に反り等の変形
を生じ易くなるため好ましくない。
【0046】略真空下焼成工程とガス導入下焼成工程と
は同一の焼成炉内で切り替えを行って連続的に行うのが
よいが、必要に応じて別々の焼成炉を用いて行ってもよ
い。不活性ガスの導入の時期は焼結体の組成によって適
宜調整するが、特にはセラミックス硬質分散粒子の主た
る形状を略樹枝状に成長させる過程に導入するのがよ
い。セラミックス硬質分散粒子をより効果的に略樹枝状
に成長させることができるからである。
【0047】(g).第2焼結体を、常圧下及び/又は
加圧下にて1300〜1800℃の温度範囲で保持し
て、超硬合金焼結体を得る保持焼成工程を含むこと。 保持焼成工程の保持温度の下限値を1300℃以上に規
定した理由は、1300℃未満ではセラミックス硬質分
散粒子の主たる形状を樹枝状に成長させることが困難に
なるからである。セラミックス硬質分散粒子を効果的に
略樹枝状にできないため、機械的特性を高めることが困
難になる。好ましくは1400℃以上、より好ましくは
1500℃以上である。
【0048】一方、保持焼成工程の保持温度の上限値を
1800℃以下に規定した理由は、1800℃を越える
と、金属結合層の金属成分が析出してくるため、焼結体
組織の均一性が低下していくからである。好ましくは1
700℃以下、より好ましくは1600℃以下である。
【0049】保持焼成工程は、常圧下で行うのが製造コ
ストを低減する上で好ましい。常圧下で緻密化が困難な
場合は、常圧下から開始して途中から加圧下に切り替え
る併用式を採るのが効果的である。それでも緻密化に支
障がある場合は、加圧下で行うのがよい。
【0050】加圧の工程は、ガス圧焼成法やHIP法
(ホットアイソスタチックプレス法)を用いることがで
きる。これらの方法は、HP法(ホットプレス法)とは
異なり、製品の形状が一軸加圧に適さない複雑形状でも
容易に緻密化できる利点がある。
【0051】
【実施例】(1)超硬合金焼結体の作製 原料粉末としては、平均粒径1.5μmのWC粉末、平
均粒径1.5μmのCo粉末、平均粒径2.8μmのNi
粉末、平均粒径0.6μmのAl23粉末(アンモニウ
ム・ドーソナイト熱分解法により製造)を用いる。
【0052】Al23粉末の一部のものは、炭素還元法
を用いてNi、Coの各成分で被覆処理する(表1を参
照。)。具体的には、Al23粉末100gに対して、
Ni、Fe、Coの硝酸塩30gをエタノール120m
lに溶解したものを添加し、24時間混合後乾燥し、乾
燥粉末とする。この乾燥粉末に還元用の炭素粉末を5g
添加し、不活性ガス雰囲気又は真空下にて熱処理し、金
属成分をAl23粉末上に還元析出させる。この方法で
処理したAl23粉末をX線回折にて確認すると、金属
成分が析出していることがわかる。
【0053】得られた各種原料粉末を表1に示す組成に
て配合する。尚、Al23の体積%は、最終的に得られ
た超硬合金焼結体の切断面の5000倍のSEM写真か
らAl23の面積割合を求め、その値を3次元の体積%
とする。配合粉末をボールミル又は遊星ボールミルを用
いて湿式混合する。溶媒を抜気、乾燥して得られた混合
粉末を200MPa(20kg/mm2)の圧力にてプ
レス成形する。成形体を表2に示す所定の条件で焼成し
て、目的とする超硬合金焼結体を得る。
【0054】得られた焼結体の切断面を鏡面研磨して、
Al23の樹枝状層の有無の確認及びAl23の長径の
測定を行う。結果を表3に示す。
【0055】(2)超硬合金焼結体の気孔率の測定 得られた超硬合金焼結体の気孔率は、断面(研磨面)の
400倍の光学顕微鏡写真を用いて、気孔の占有面積を
全面積で除した値より求める。この際、ポアは黒い点と
して確認される。その黒い部分の面積を求める。セラミ
ックス硬質粒子とポアが同じ色で区別ができないとき
は、カーボンなどの蒸着を施す事によって区別できる。
結果を表3に示す。
【0056】(3)超硬合金焼結体の強度の測定 得られた超硬合金焼結体の強度を、JIS R 160
1に準拠した3点曲げ試験により求める。結果を表3に
示す。
【0057】(4)超硬合金焼結体の破壊靭性の測定 得られた超硬合金焼結体の破壊靭性を、JIS R 1
610に準拠した方法で測定する。結果を表3に示す。
【0058】(5)超硬合金焼結体の比摩耗量の測定 得られた超硬合金焼結体の比摩耗量を、リングオンプレ
ート法で測定する。炭素鋼製のリング(外径φ20m
m,内径15mm)を超硬合金焼結体製のプレート(3
0mm角,厚み5mm)上に500〜2000N(50
〜200kgf)の荷重を負荷した状態で300〜60
0ppmの回転数にて回転させながら、水を潤滑剤とし
て2〜5時間摺動する。その後プレートの摩耗量を重量
変化から求め、その値を摺動距離と荷重で除して比摩耗
量(単位:×10−162/N)を得る。結果を表3に
示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】表3の結果より、本発明によれば、低気孔
率、高強度、高破壊靭性、かつ、比摩耗量の少ない耐摩
耗性に優れた超硬合金焼結体が得られることがわかる。
特には、HIP法を併用した実施例である試料番号1
0、試料番号13、試料番号14及び試料番号16で
は、全ての特性において良好な特性を有する超硬合金焼
結体が得られることが分かる。
【0063】略樹枝状の硬質分散粒子の長径が5〜15
μmの場合は、特に、強度、破壊靭性、比摩耗量の全て
にわたって良好な結果が得られている。長径の大きさ
は、特には強度に影響を及ぼすことがわかる。
【0064】一方、セラミックス硬質分散粒子が略樹枝
状でない比較例である試料番号1及び試料番号21で
は、本発明のような優れた機械的特性が得られていない
ことがわかる。
【0065】
【発明の効果】本発明によれば、WC系硬質相と、鉄族
金属結合相とを主体とする焼結体にアルミナ等のセラミ
ックス硬質分散粒子を分散させた超硬合金焼結体におい
て、該セラミックス硬質分散粒子を略樹脂状に成長させ
ることで、強度、破壊靭性、耐摩耗性に極めて優れた超
硬合金焼結体が得られる。かかる超硬合金焼結体は、高
速切削、高送り切削、重切削等に用いる切削工具や、熱
間圧延ロール、ガイドロール、線引きロール、ダイス、
パンチ等の熱間、温間、冷間における塑性加工及び延性
加工に用いる治工具や、軸受け、ベアリングボール、す
べり軸受け、すべりガイド等の高い耐摩耗性を必要とさ
れる部材に用いる材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】略樹枝状のセラミックス硬質分散粒子の長径の
求め方を示す説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯尾 聡 愛知県名古屋市瑞穂区高辻町14番18号 日 本特殊陶業株式会社内 Fターム(参考) 4K018 AB01 AB02 AB03 AB04 AC01 AD06 BA11 BB01 BB04 DA31 DA32 KA14

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 WC(タングステンカーバイド)を主体
    とするWC系硬質相と、鉄族金属結合相とからなる焼結
    体中に、セラミックス硬質分散粒子を分散させた超硬合
    金焼結体であって、以下の(a)を満たすことを特徴と
    する超硬合金焼結体。 (a).前記セラミックス硬質分散粒子の主たる形状が
    略樹枝状である。
  2. 【請求項2】 WC(タングステンカーバイド)を主体
    とするWC系硬質相と、鉄族金属結合相とからなる焼結
    体中に、セラミックス硬質分散粒子を分散させた超硬合
    金焼結体であって、以下の(b)を満たすことを特徴と
    する超硬合金焼結体。 (b).前記セラミックス硬質分散粒子の主たる形状が
    略樹枝状であり、かつ、副たる形状として略粒状、略針
    状及び略棒状のうちから選ばれる少なくとも1種が混在
    している。
  3. 【請求項3】 以下の(c)を満たすことを特徴とする
    請求項1又は請求項2に記載の超硬合金焼結体。 (c).前記略樹枝状のセラミックス硬質分散粒子の長
    径が5μm以上である。
  4. 【請求項4】 前記超硬合金焼結体100体積%に対し
    て、前記鉄族金属結合相を3〜20体積%、前記セラミ
    ックス硬質分散粒子を20〜70体積%含有(残部が前
    記WCを主体とするWC系硬質相)することを特徴とす
    る請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の超硬合金焼
    結体。
  5. 【請求項5】 前記セラミックス硬質分散粒子が、Al
    23、ZrO2、SiO2、Y23、SiC、Si34
    TiN、ZrC、VC、TiC、ZrN、VN、WB、
    MoB、TiB2、ZrB2、TaC、Cr32のうちか
    ら選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求
    項1乃至請求項4のいずれかに記載の超硬合金焼結体。
  6. 【請求項6】 以下の(d)〜(g)を満たすことを特
    徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかの超硬合金焼
    結体の製造方法。 (d).前記セラミックス硬質分散粒子となる原料粉末
    として、平均粒径が1μm以下の原料粉末を用いる。 (e).焼成により超硬合金焼結体となる成形体を、略
    真空下において1300℃以下で処理して第1焼結体を
    得る略真空下焼成工程を含む。 (f).該第1焼結体を、不活性ガス(窒素ガスを除
    く。)導入下にて1000℃以上で処理して、第2焼結
    体を得るガス導入下焼成工程を含む。 (g).該第2焼結体を、常圧下及び/又は加圧下にて
    1300〜1800℃の温度範囲で保持して、超硬合金
    焼結体を得る保持焼成工程を含む。
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