JP4659682B2 - サーメット製インサート及び切削工具 - Google Patents
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Description
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高い耐摩耗性を維持できるとともに、高い耐欠損性を実現できるサーメット製インサート及び切削工具を提供することにある。
硬質相及び結合相からなる組織を有し、
焼結体組成として、Tiと、Nb及び/又はTaと、Wとに関し、前記Tiを炭窒化物換算した値と、前記Nb及び/又はTaを炭化物換算した値と、前記Wを炭化物換算した値との合計で、前記組織全体に対して、70〜95重量%含むとともに(そのうち、前記Wは炭化物換算した値で、組織全体に対して、15〜35重量%)、
Co及び/又はNiを含むサーメット製インサートであって、
前記硬質相として、下記(1)〜(3)のうち、1種又は2種以上を備え(ただし、下記(2)単独は除く)、
(1)芯部が炭窒化チタン相、周辺部が(Ti,W,Ta/Nb)CN相を含む有芯構造の第1硬質相、
(2)芯部および周辺部の両方が(Ti,W,Ta/Nb)CN相を含む有芯構造の第2硬質相、
(3)炭窒化チタン相からなる単相構造の第3硬質相、
更に、前記炭窒化チタン相内に、周囲よりもWを多く含むW富裕相が偏在することを特徴とする。
本発明にて、硬質相を形成するTiとNb及び/又はTaとWとの各換算値の合計を70〜95重量%としたのは、下記の理由による。尚、TiはTiCN換算し、Nb及び/又はTaは(Nb/Ta)C換算し、WはWC換算した値である。
更に、Coは、焼結性を向上させ、結合相を形成して、インサートの強度を向上させる。Niは、焼結時に結合相を形成して、結合相の耐熱性を向上させ、もって、インサートの耐摩耗性を高めることができる。
特に本発明では、図2に(硬質相の断面のTEMによる組織観察の結果を)模式的に示す様に、前記(1)や(3)の硬質相の炭窒化チタン相内にW富裕層が偏在している。ここで偏在とは、炭窒化チタン相内にWが均一に分散しているのではなく、特定の部位にWが偏って存在してW富裕相を形成することを意味する。
・請求項2の発明は、前記サーメット製インサートの表面及び断面のうち少なくとも一方の組織において、前記炭窒化チタン相内に、前記W富裕相が線状及び網目状のうち少なくとも1種の状態で偏在することを特徴とする。
前記図3に示す様に、(1)第1硬質相及び(3)第3硬質相の炭窒化チタン相には、W富裕相が、線状や網目状で偏在している。尚、TEM写真ではW富裕層が例えば白色の線等で示される。
・請求項3の発明は、前記炭窒化チタン相内に、前記W富裕相が層状、円柱状、及び角柱状のうち少なくとも1種の状態で偏在することを特徴とする。
この層状、円柱状、角柱状に偏在する状態としては、例えば平面や湾曲面で構成されたものが挙げられるが、それらの面に穴が空いていてもよい。また、これらのW富裕層は、複数の層や円柱や角柱が互いに入り込んだ状態で、例えば鱗状や多数の泡形状のものが集合した状態などで存在してもよい。
Moを含有させることにより、硬質相や結合相の濡れ性が良くなるため、焼結性を改善することができる。
本発明では、結合相にWを40〜60重量%含んでいるので、結合相の高温硬さが向上し、よって、例えば高温発生を伴う高速切削加工において、優れた耐摩耗性を発揮できる。
本発明の切削工具は、上述したサーメット製インサートをホルダに備えたものであるので、耐摩耗性及び耐欠損性に優れている。
例えば、インサートとして、「炭化タングステン:20〜30質量%、炭化タンタル及び/又は炭化ニオブ:5〜10質量%、Co:5〜10質量%、Ni:5〜10質量%、炭窒化チタン:残部(ただし、50〜60質量%含有)、からなる配合組成を有する圧粉体の焼結体」を採用できる。
その上、前記結合相として、「結合相に占める割合で、Co:18〜33質量%、Ni:20〜35質量%、Ti、Ta及び/又はNb:5質量%以下、W:残部(ただし、W:40〜60質量%)を含有する構成」を採用できる。
図5に示す様に、本実施例のインサート1は、ISO規格:SNGN120408の形状の焼結体からなる切削チップである。
また、インサート1の焼結体組成として、Tiと、Nb及び/又はTaと、Wとに関し、Tiを炭窒化物換算した値と、Nb及び/又はTaを炭化物換算した値と、Wを炭化物換算した値との合計で、インサート全体に対して、70〜95重量%含んでいる。このうち、Wは炭化物換算した値で、インサート全体に対して、15〜35重量%含んでいる。尚、硬質相としては、後述するように、炭窒化チタンと、Ti及びWとTa及び/又はNbとの複合炭窒化物とを含んでいる。
(1)芯部が炭窒化チタン相、周辺部が(Ti,W,Ta/Nb)CN相を含む有芯構造の第1硬質相、
(2)芯部および周辺部の両方が(Ti,W,Ta/Nb)CN相を含む有芯構造の第2硬質相、
(3)炭窒化チタン相からなる単相構造の第3硬質相、
特に、本実施例では、前記図2に示す様に、炭窒化チタン相内に、周囲よりもWを多く含むW富裕相が偏在する。詳しくは、炭窒化チタン相の断面の観察(TEMによる組織観察)では、線状及び網目状の状態で偏在している。
また、上述したインサートは、例えば図6に示す様に、例えば鋼製の柱状のホルダ3の先端に、固定治具5によって固定される。そして、このホルダ3にインサート1が固定された切削工具7を用いて、鋼等の切削が行われる。
・本実施例では、まず、TiCNの予備粉砕を行った。
具体的には、下記表1に示す様に、予備粉砕によって得られたTiC0.5N0.5粉末及びTiC0.3N0.7粉末、平均粒径1〜2μmのWC粉末、平均粒径1〜2μmのTa粉末、平均粒径2〜3μmのMo2C粉末、平均粒径1〜2μmのNbC粉末、平均粒径2〜3μmのCo粉末、平均粒径2〜3μmのNi粉末を用意し、これらの原料粉末を、下記表1に示される配合組成に配合し、A〜Gの7種類の混合粉末を調整した。
・次に、この乾燥した粉末を、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形した。
(a) 室温から1200℃までを、10Pa以下の真空雰囲気(V)中にて、10℃/分の速度で昇温し、
(b) 1200℃の温度に昇温した時点で、35kPaのAr雰囲気に2分間保持の短時間Ar雰囲気保持と、10Pa以下の真空雰囲気に15分間保持の短時間真空雰囲気保持とを、各3回を交互に繰り返し施す雰囲気交互変化処理を施し、
(c) 上記雰囲気交互変化処理後、1350℃までの昇温を10Pa以下の真空雰囲気中にて、2℃/分の速度で昇温し、
(d) 1350℃から所定の焼結温度(1500℃)までの2℃/分の速度での昇温、並びに前記焼結温度に60分間保持を1.3kPaの窒素雰囲気で行い、
(e) 上記焼結温度からの炉冷を90kPa以下のAr雰囲気中で行った。
すなわち、下記表3に示す様に、前記7種の混合粉末に対応した試料No.1〜7のインサートを、それぞれ製造した。
ここでは、下記表2に示す様に、耐欠損試験と耐摩耗試験を行った。
各試料のインサートを、工具鋼製バイト(ホルダ)の先端部に、固定治具にてネジ止めして、切削工具とした。
そして、衝撃回数700回での累積欠損率(700回で欠損が発生するインサートの個数の割合)を調べた。その結果を下記表3に記す。
各試料のインサートを、工具鋼製バイト(ホルダ)の先端部に、固定治具にてネジ止めして、切削工具とした。
そして、4min加工後の逃げ面摩耗量(VB摩耗量)を測定した。その結果を下記表3に記す。
各試料のインサートを用いて、TEM観察を行った。具体的には、試料を200μm以下の厚さとし、TEM(走査透過電子顕微鏡)を用いて、TEM写真を撮影し、その観察を行った。
EDS(エネルギー分散法)によって、組成A〜Gの本発明の各試料No.1〜7のイン
サートに含まれている成分(元素)の定量を行った。そして、その成分の化合物換算を行った。その結果を、下記表4に示す。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
3…ホルダ
5…固定治具
7…切削工具
Claims (6)
- 硬質相及び結合相からなる組織を有し、
焼結体組成として、Tiと、Nb及び/又はTaと、Wとに関し、前記Tiを炭窒化物換算した値と、前記Nb及び/又はTaを炭化物換算した値と、前記Wを炭化物換算した値との合計で、前記組織全体に対して、70〜95重量%含むとともに(そのうち、前記Wは炭化物換算した値で、組織全体に対して、15〜35重量%)、
Co及び/又はNiを含むサーメット製インサートであって、
前記硬質相として、下記(1)〜(3)のうち、1種又は2種以上を備え(ただし、下記(2)単独は除く)、
(1)芯部が炭窒化チタン相、周辺部がTi及びWと、Ta及び/又はNbとの複合炭窒化物[以下、(Ti,W,Ta/Nb)CNで示す]相を含む有芯構造の第1硬質相、
(2)芯部および周辺部の両方が(Ti,W,Ta/Nb)CN相を含む有芯構造の第2硬質相、
(3)炭窒化チタン相からなる単相構造の第3硬質相、
更に、前記炭窒化チタン相内に、周囲よりもWを多く含むW富裕相が偏在することを特徴とするサーメット製インサート。 - 前記サーメット製インサートの表面及び断面のうち少なくとも一方の組織において、前記炭窒化チタン相内に、前記W富裕相が線状及び網目状のうち少なくとも1種の状態で偏在することを特徴とする前記請求項1に記載のサーメット製インサート。
- 前記炭窒化チタン相内に、前記W富裕相が層状、円柱状、及び角柱状のうち少なくとも1種の状態で偏在することを特徴とする前記請求項1又は2に記載のサーメット製インサート。
- 更に、前記硬質相及び/又は結合相に、Moを含むことを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載のサーメット製インサート。
- 更に、前記結合相に、Wを前記結合相全体に対して40〜60重量%含むことを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載のサーメット製インサート。
- ホルダに、前記請求項1〜5のいずれかに記載のサーメット製インサートを備えたことを特徴とする切削工具。
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