JP2018065228A - TiCN基サーメット製切削工具 - Google Patents

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Tomonori Yasumi
智紀 安見
高橋 慧
Kei Takahashi
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Abstract

【課題】耐熱亀裂性、耐異常損傷性にすぐれ、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮するTiCN基サーメット製切削工具を提供する。【解決手段】TiCN基サーメット焼結体からなる切削工具において、該焼結体は結合相と第1硬質相と第2硬質相が存在する焼結体組織を有し、前記第1硬質相は有芯構造を有し、芯部はTiと、Zrと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物を主体とし、周辺部は、Tiと、Zrと、Wと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物からなり、0.2μm2以上のサイズの前記第1硬質相の分布密度は20個/100μm2以上であり、前記第1硬質相の芯部にW富裕相が存在する第1硬質相の個数割合は、5%以下であり、前記第2硬質相は、Tiと、Zrと、Wと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物からなり、前記焼結体の有孔度は、超硬工具協会規格CIS006C−2007で定めるA04以下、B00である。【選択図】 図2

Description

この発明は、炭素鋼や合金鋼等の切削加工において、耐熱亀裂性を向上させ、チッピング、欠損等の異常損傷の発生を抑制し、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮するTiCN基サーメット製切削工具に関するものである。
従来、切削工具としては、WC基超硬合金製切削工具、TiCN基サーメット製切削工具、cBN製切削工具等が知られている。
このうち、TiCN基サーメット製切削工具は、鋼に対する親和性が低く、仕上げ面粗さに優れることから、鋼の仕上げ加工用工具として使用されているが、その工具特性、例えば、耐塑性変形性、耐衝撃性、耐欠損性、耐熱亀裂性、耐溶着性、耐摩耗性等、をさらに向上させるべく、いくつかの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
「結合相形成成分として、
W:2〜15重量%(以下、単に「%」で示す)、
CoおよびNiのうちの1種または2種:5〜25%、
を含有し、硬質相形成成分として、
窒化チタン:10〜40%、
炭化タンタル:3〜30%、
炭化タングステン:5〜25%、
炭化ニオブ:1〜25%、
炭化ジルコニウム:0.1〜5%、
を含有し、残りが同じく硬質相形成成分としての炭化チタンと不可避不純物からなる組成を有するサーメットおよびこのサーメットからなる切削工具」
が提案されている。
そして、上記TiC基サーメットは、耐塑性変形性および耐衝撃性にすぐれ。かつ高硬度を有することから、このサーメットで構成した切削工具は、各種の切削加工、例えば、高速切削加工、高送りおよび高切り込みの重切削加工、あるいは、大きな負荷と熱衝撃が作用するフライス切削等の断続切削加工、において、すぐれた耐欠損性と耐摩耗性を発揮するとされている。
また、特許文献2には、
「周期律表4,5,6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物及びこれらの固溶体からなる群から選択される1種以上の化合物からなる硬質相を70質量%以上97質量%以下、残部が鉄族金属を主成分とする結合相及び不可避的不純物からなるサーメットを基材とする被覆サーメット工具において、
前記硬質相は、組成や形態の異なる4種の硬質相(第1硬質相、第2硬質相、第3硬質相、第4硬質相)を含有し、
サーメットの任意断面の走査型電子顕微鏡(SEM)による組織写真において、前記硬質相の総面積に対して、60%以上90%以下の硬質相は、粒径が1μm超3μm以下の粗粒からなり、残部の硬質相は、粒径が1.0μm以下の微粒からなり、
前記粗粒は、前記第1硬質相と前記第2硬質相の少なくとも一方、前記第3硬質相、及び前記第4硬質相で構成し、
前記微粒は、前記第1硬質相及び前記第2硬質相から構成すること」が提案されている。
ここで、第1硬質相:炭窒化チタンの単相のみからなる、又は炭窒化チタンの周囲の一部がチタンと、周期律表4,5,6族金属(但し、チタンを除く)から選択された1種以上の金属との複合炭窒化物固溶体で覆われている単相構造の硬質相、
第2硬質相:芯部と、この芯部の周囲の全体を覆う周辺部とを具える有芯構造の硬質相であり、前記芯部が炭窒化チタンから構成され、前記周辺部が、チタンと、周期律表4,5,6族金属(但し、チタンを除く)から選択された1種以上の金属との複合炭窒化物固溶体から構成されている硬質相、
第3硬質相:芯部と、この芯部の周囲の全体を覆う周辺部とを具える有芯構造の硬質相であり、前記芯部及び前記周辺部は、同一の元素から構成されており、少なくともチタン及びタングステンを含む複合炭窒化物固溶体から構成され、前記芯部のタングステン濃度が前記周辺部のタングステン濃度よりも大きい硬質相、
第4硬質相:チタンと、タングステンもしくはタングステンと周期律表4,5,6族金属(但し、チタンとタングステンを除く)から選択された1種以上の金属との複合炭窒化物固溶体からなる単相構造の硬質相、
である。
そして、この被覆サーメット工具によれば、耐欠損性にすぐれるとともに、被削材の加工面の光沢性品位にすぐれた切削加工が可能であるとされている。
さらに、特許文献3には、
「硬質相及び結合相からなる組織を有し、 焼結体組成として、Tiと、Nb及び/又はTaと、Wとに関し、前記Tiを炭窒化物換算した値と、前記Nb及び/又はTaを炭化物換算した値と、前記Wを炭化物換算した値との合計で、前記組織全体に対して、70〜95重量%含むとともに(そのうち、前記Wは炭化物換算した値で、組織全体に対して、15〜35重量%)、
Co及び/又はNiを含むサーメット製インサートであって、
前記硬質相として、下記(1)〜(3)のうち、1種又は2種以上を備え(ただし、下記(2)単独は除く)、
(1)芯部が炭窒化チタン相、周辺部が(Ti,W,Ta/Nb)CN相を含む有芯構造の第1硬質相、
(2)芯部および周辺部の両方が(Ti,W,Ta/Nb)CN相を含む有芯構造の第2硬質相、
(3)炭窒化チタン相からなる単相構造の第3硬質相、
更に、前記炭窒化チタン相内に、周囲よりもWを多く含むW富裕相が偏在することを特徴とするサーメット製インサートおよびこのインサートを備えた切削工具」が提案されている。
さらに、前記インサートの表面及び断面のうち少なくとも一方の組織において、前記炭窒化チタン相内に、前記W富裕相が線状及び網目状のうち少なくとも1種の状態で偏在すること、また、前記炭窒化チタン相内に、前記W富裕相が層状、円柱状、及び角柱状のうち少なくとも1種の状態で偏在するサーメット製インサートが提案されている。
そして、このサーメット製インサートを備えた切削工具によれば、特に、炭窒化チタン相内に、周囲よりもWを多く含むW富裕相が偏在する(特許文献3の図8〜10において、線状及び網目状の白線あるいは層状の白いスポットとして観察される)ことによって、すぐれた耐欠損性と耐摩耗性が発揮されるとされている。
特開昭64−39343号公報 特許第4690475号公報 特許第4659682号公報
近年、切削加工の技術分野における省力化、省エネ化、高速化、高効率化、低コスト化の要請は強く、切削装置の高性能化には目ざましいものがあるが、その反面、切削工具にとっての使用条件は益々過酷なものとなってきており、TiCN基サーメット自体の性能向上が求められるとともに、TiCN基サーメット切削工具の使用寿命の一段の延命化が望まれている。
TiCN基サーメットは、一般的に、WC基超硬合金に比して、硬さ、靭性が不十分であるため、TiCN基サーメット切削工具の、長寿命化を図るためには、耐チッピング性、耐欠損性および耐摩耗性をさらに向上させることが必要とされる。
前記特許文献1〜3に示される切削工具は、前記した特性を改善することを目的として提案されたものであるが、近年、図1(a)に示されるような複雑な形状を有する切削工具が使用されつつある。
このような複雑形状の切削工具をTiCN基サーメットで作製した場合には、WC基超硬合金に比して、TiCN基サーメットの成形性、焼結性が十分でないため、焼結体中にクラックが発生しやすく(図1(b)参照)、さらに、作製したTiCN基サーメット切削工具の耐チッピング性、耐欠損性が十分でないため工具寿命が短いという問題があった。
そこで、成形性、焼結性にすぐれるとともに、切削加工時にチッピング、欠損等の異常損傷を発生することなく、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮するTiCN基サーメット切削工具が望まれている。
本発明者は、上述の観点から、成形性、焼結性にすぐれ、かつ、チッピング、欠損等の発生を抑制し、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮するTiCN基サーメット製切削工具を提供すべく鋭意研究を行ったところ、次のような知見を得た。
本発明者は、まず、TiCN基サーメット製切削工具におけるチッピング、欠損等の発生原因について研究を行ったところ、前記特許文献2に記載される「第3硬質相におけるタングステン濃度の高い芯部とタングステン濃度の低い周辺部」、あるいは、前記特許文献3に記載されている「炭窒化チタン相内に存在するW富裕相」が、耐チッピング性低下、耐欠損性低下の一つの要因であることを見出した。
即ち、特許文献2、3に記載されるような焼結体組織において、TiCN基サーメット中に分散する硬質相内にW成分が偏在(不均質に存在)した場合には、該硬質相の熱伝導性が低下し、また、該硬質相の熱膨張係数が不均一となるため、硬質相に熱亀裂が生じやすくなり、そして、切削加工時に作用する負荷によって、この熱亀裂からクラックが進展・伝播して、チッピング発生あるいは欠損発生に至ることを見出したのである。
そこで、熱亀裂の発生を抑制し、耐異常損傷性を向上させるためには、TiCN基サーメットの組織を、硬質相内にW成分が偏在しない均質なTiCN硬質相を有する組織とすることが有効であると考え、このような組織を得るための具体的な製造手段についてさらに検討を進め、次のような知見を得たのである。
一般的に、TiCN基サーメットは、硬質相形成用のTiMCN粉末(ここで、「TiMCN粉末」とは、Ti成分とM成分の炭窒化物粉末を意味し、M成分は、例えば、Zr、Ta、Nbである。)と、結合相形成用のCo粉末あるいはNi粉末の少なくともいずれかと、さらに、WC粉末のようなその他の硬質相形成用粉末を所定組成になるように配合して原料粉末を作製し、これらの原料粉末を粉砕・混合した後、これをプレス成形し、次いで成形体を焼結することにより製造されている。
そして、前記TiMCN粉末の出発原料として、通常はスポンジTiが使用されるが、スポンジTiからTiMCN粉末を製造する工程には、粉砕工程が含まれており、得られた硬質相形成用のTiMCN粉末の内部には、粉砕により転位が導入される。
また、前記原料粉末の粉砕・混合に際しては、通常、超硬合金製ボールを使用したボールミルやアトライター混合が行われるが、この工程でも、粉砕エネルギーの大きい硬質の超硬合金製ボールの使用によって、硬質相形成用のTiMCN粉末には転位が導入される。
このように、多くの転位が導入された硬質相形成用TiMCN粉末を使用してTiCN基サーメットを作製した場合には、TiMCN粉末に存在する転位に焼結工程でWが侵入し、TiMCN硬質相内にW富裕相の偏在が生じ、その結果、不均質となったTiMCN硬質相の熱伝導性が低下するとともに、TiMCN硬質相内の熱膨張係数の不均一性によって熱亀裂が発生しやすくなる。
そこで、本発明者は、W富裕相がその内部に偏在するTiMCN硬質相を生成させないようにするための手段、あるいは、生成したとしてもその生成量を低減するための手段について検討を進めたところ、TiCN基サーメットの製造に際し、TiMCN粉末の出発原料として、スポンジTiではなくTiO(酸化チタン)を使用し、また、原料粉末の粉砕・混合工程においては、粉砕エネルギーの小さいサーメット製ボールあるいはチタニア製ボールを用いて粉砕・混合を行った場合には、得られたTiCN基サーメットにおいては、W富裕相がその内部に偏在するTiMCN硬質相の生成量を大幅に低減し得ることを見出した。
そして、上記の方法で作製されたTiCN基サーメットは、成形性、焼結性にすぐれるとともに耐熱亀裂性にすぐれることを見出した。
したがって、上記の製造工程にしたがって作製したTiCN基サーメットからなる切削工具は、複雑形状のTiCN基サーメットを作製してもクラックを発生することはなく、また、例えば、炭素鋼や合金鋼等の切削加工において、熱亀裂発生を原因とするチッピング、欠損等の異常損傷を発生することなく、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を発揮するのである。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「TiCN基サーメット焼結体からなるTiCN基サーメット製切削工具において、
(a)前記TiCN基サーメット焼結体は、質量%で、ZrC:0.5〜2.0%、WC:15〜25%、TaCおよびNbCのうちの1種または2種の合計:5〜15%、CoおよびNiのうちの1種または2種の合計:12〜25%、残部は、不可避不純物とTiCNからなる平均成分組成(但し、Zr、W、TaおよびNbについては、いずれも炭化物として換算した組成値を示す)を有し、
(b)前記TiCN基サーメット焼結体の断面を、走査型電子顕微鏡で観察した場合、結合相と第1硬質相と第2硬質相が存在する焼結体組織を有し、
(c)前記結合相は、CoおよびNiのうちの1種または2種を主体とし、
(d)前記第1硬質相は、芯部と該芯部を覆う周辺部の有芯構造からなり、
(e)前記第1硬質相の芯部は、Tiと、Zrと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物を主体とし、また、前記第1硬質相の周辺部は、Tiと、Zrと、Wと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物からなり、
(f)前記第1硬質相のうち、前記芯部にW富裕相が偏在する第1硬質相の個数割合は、第1硬質相の全個数の5%以下であり、また、0.2μm以上のサイズを有する前記第1硬質相の分布密度は20個/100μm以上であり、
(g)前記第2硬質相は、Tiと、Zrと、Wと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物からなり、
(h)前記TiCN基サーメット焼結体の有孔度は、超硬工具協会規格CIS006C−2007で定められるA04以下、B00であることを特徴とするTiCN基サーメット製切削工具。」
に特徴を有するものである。
この発明のTiCN基サーメット製切削工具は、前記の平均成分組成、焼結体組織および有孔度を有するTiCN基サーメット焼結体から構成されるが、平均成分組成、焼結体組織および有孔度を前記のとおり定めた理由を以下に説明する。
なお、以下では、TiCN基サーメット製切削工具を、単に「サーメット工具」と記し、また、TiCN基サーメット焼結体を、単に「サーメット焼結体」と記す場合がある。
TiCN基サーメット焼結体の平均成分組成を定めた理由は、次のとおりである。
ZrC:
Zrは、Tiと同様に炭化物、炭窒化物を形成し、あるいは、TiとZrとTaとNbとWの複合炭窒化物を形成する硬質相形成成分であり、サーメット工具の耐摩耗性を向上させるが、ZrCの含有量(Zrを炭化物換算した含有量)が0.5質量%未満ではその効果が少なく、一方、その含有量が2.0質量%を超えると、焼結性を阻害し、残留巣を生じ強度の低下を招くこととなるため、ZrCの平均組成は0.5〜2.0質量%とする。
なお、サーメット焼結体の成分であるW、Ta、Nbについては、Zrの場合と同様、いずれも炭化物換算したものについての成分組成限定理由を説明する。
WC:
サーメット焼結体中のWC含有量が15質量%未満では、主として、結合相中に溶解するW含有割合が不足して、所望の高温硬さを保持することができず、一方、WC含有量が25質量%を越えると、結合相中のW成分の含有割合が高くなりすぎて、結合相自体の高温強度が急激に低下し、これが原因で欠損、チッピングが発生しやすくなることから、サーメット工具におけるWCの平均組成は15〜25質量%とする。
TaCおよびNbCのうちの1種または2種:
WCと同じくTaCおよびNbCも、焼結時に結合相形成成分であるCoおよびNi成分中に溶解し、冷却時に析出して硬質相を形成し、該硬質相の高温強度を向上させる作用を有するが、TaCおよびNbCの1種または2種の合計が5質量%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方、その含有割合が15質量%を越えると硬質相中の含有割合が高くなり過ぎ、これが硬さ低下の原因となることから、TaCおよびNbCの1種または2種の合計含有量を5〜15質量%とする。
CoおよびNiのうちの1種または2種:
CoおよびNiの1種または2種が結合相の主体を構成し、サーメット工具に所望の強度と靭性を具備させるが、その合計含有量が12質量%未満では焼結性を確保することができず、一方、その合計含有量が25質量%を超えると摩耗が急激に進行するようになることから、CoおよびNiの1種または2種の合計含有量は12〜25質量%とする。
なお、前記結合相中には、実際にはW、Ta、Nb、Zr、Tiが固溶しているが、結合相の総質量に対して80%以上をCoおよびNiの1種または2種から構成される為、結合相の主体をCoおよびNiの1種または2種が構成すると記載した。
TiCN:
本発明のサーメット工具は、製造原料から、あるいは、製造工程で不可避的に混入する不純物を除いて、上述した成分(ZrC、WC、TaCおよびNbCのうちの1種または2種、CoおよびNiのうちの1種または2種)の残部を実質的にTiCNが構成する。
TiCNは、焼結時に生成する第1硬質相および第2硬質相の主要構成成分であり、サーメット工具の硬さを向上させ、もって耐摩耗性向上に寄与する作用があるが、その含有割合が40質量%未満では、所望の硬さを確保することができず、一方、その含有割合が60質量%を越えると、サーメット工具の強度が急激に低下し、切削時に欠損、チッピングが発生し易くなることから、その含有割合を40〜60質量%とすることが望ましい。
次に、本発明のサーメット焼結体の焼結体組織について説明する。
図2に示すように、本発明のサーメット焼結体の断面を、走査型電子顕微鏡で観察すると、結合相と第1硬質相と第2硬質相が存在する焼結体組織が形成されていることがわかる。
上記焼結体組織のうち、前記結合相は、CoおよびNiのうちの1種または2種から実質的になるが、微量のZr、W、Ta、Nbが一部固溶している。
前記第1硬質相は、芯部と該芯部を覆う周辺部の有芯構造からなり、第1硬質相の芯部は、Tiと、Zrと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物を主体とし、また、第1硬質相の周辺部は、Tiと、Zrと、Wと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物からなる。
なお、前記第1硬質相の芯部を「Tiと、Zrと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物を主体とし」と表現したのは、第1硬質相のうち、その芯部にW富裕相が偏在している場合があるため、「・・を主体とし」と表現した。
そして、前記第1硬質相の芯部にW富裕相が偏在する第1硬質相の個数割合は、第1硬質相の全個数の5%以下である。
また、前記第2硬質相は、Tiと、Zrと、Wと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物からなる硬質相であって、第1硬質相のように芯部と周辺部からなる有芯構造の相として形成されていても良く、また、ほぼ均質な非有芯構造の相として構成されていても良い。
また、本発明のサーメット焼結体の断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、例えば、100μmの観察領域に存在する前記第1硬質相の個数をカウントし、また、サイズを測定した場合、0.2μm以上のサイズの前記第1硬質相は20個以上存在し、また、前記第1硬質相のうち、芯部にW富裕相が存在する第1硬質相の個数割合は、第1硬質相の全個数の5%以下である。
上記0.2μm以上のサイズの第1硬質相の密度と、芯部にW富裕相が存在する第1硬質相の個数割合は、サーメット焼結体の作製に際して、焼結体組織の第1硬質相を構成するTiMCN粉末(「TiMCN粉末」におけるM成分は、Zrと、TaおよびNbのうちの1種または2種である。以下も同じ。)の粉砕の度合いに特に関連するものであり、適切な製法によってサーメット焼結体が作製された場合に、本発明で規定するサーメット焼結体組織を得ることができる。
つまり、サーメット製造時の原料粉末の粉砕・混合において、WC超硬合金ボールを使用して原料粉末の粉砕・混合を行った場合には、粉砕の度合いが高くなり、TiMCN粉末は過粉砕状態となるため、TiMCN粉末の微粒化が促進され、かつ、TiMCN粉末に過度の転位が導入される。
そして、このようなTiMCN粉末をサーメット焼結体の原料粉末とした場合には、成形性、焼結性が低下するとともに、作製されたサーメット工具は、切削加工時に負荷が作用した場合、第1硬質相であるTiMCN粒子内のW富裕相が形成されている部分(転位)からの熱亀裂が発生しやすくなる。
そこで、このような熱亀裂発生を避けるためには、0.2μm以上のサイズの第1硬質相の密度を20個/100μm以上とすることが必要である。
なお、前述のとおり、TiMCN粉末が過粉砕状態となったような場合には、原料粉末の混合時にTiMCNの転位部分にWが侵入しやすくなるため、第1硬質相の芯部にW富裕相が形成され、これが熱亀裂発生の起点となりやすい。
したがって、TiMCN粉末が過粉砕状態とならないようして、その芯部にW富裕相が存在する第1硬質相の個数割合は、第1硬質相の全個数の5%以下とする。
ここで、第1硬質相の芯部にW富裕相が形成された組織は、走査型電子顕微鏡(10000倍)で観察した場合に、第1硬質相中の芯部に形成された「白い線」(図3の第1硬質相中にみられる「白い線」参照。なお、図3は、従来のサーメット焼結体において形成されている焼結体組織の一例を示す走査型電子顕微鏡像である。)として識別されるので、観察領域における第1硬質相の全個数とW富裕相がその芯部に偏在している第1硬質相の個数とをカウントすることによって、W富裕相その芯部に偏在している第1硬質相の個数割合を求めることができる。
TiCN基サーメット焼結体の製造:
本発明のサーメット焼結体の製造上の特徴の一つは、TiMCN粉末について、スポンジTiを出発原料としたTiMCN粉末は使用せず、TiOを出発原料として作製したTiMCN粉末のみを使用する点であり、また、もう一つの特徴は、原料粉末の粉砕・混合に際し、超硬合金製ボールを使用せず、サーメット製ボールあるいはチタニア製ボールを使用して粉砕・混合を行うという点である。
本発明のサーメット焼結体は、例えば、以下の工程で、製造することができる。
(イ)まず、TiOを出発原料として、粉砕工程を行うことなく、平均粒径0.5〜2.0μmのTiMCN粉末を作製する。
ここで、「TiMCN」の「M」は、Zrと、TaおよびNbのうちの1種または2種の成分を意味する。
なお、TiOを出発原料としたTiMCN粉末の製造は、本願出願前から既に知られている(例えば、特公平2−1762号公報、特公平2−33647号公報等参照)方法で行えば良く、その製造法自体は特に限定されるものではない。
(ロ)ついで、前記(イ)で作製したTiMCN粉末と、ZrC粉末、WC粉末、Ta粉末、Nb粉末、Co粉末、Ni粉末を所定の配合組成になるようにアトライターに装入し、サーメット製ボールあるいはチタニア製ボールを混合メディアとして、かつ、アジテータの回転速度を低速にして、粉砕力を小さくした状態で粉砕・混合し、原料粉末を作製する。
なお、サーメット製ボールあるいはチタニア製ボールは、WC基超硬合金ボールに比して粉砕力が弱いため、アトライター中では主として混合が行われる。
(ハ)ついで、前記原料粉末を、50〜80MPaの圧力でプレス成形し、所定形状の圧粉成形体を作製する。
なお、前記原料粉末は成形性にすぐれるため、複雑形状の圧粉成形体を作製した場合であっても、成形体中にクラック等が発生することはない。
(ニ)ついで、前記圧粉成形体を、
(a)室温から1350までの昇温を、10Pa以下の真空雰囲気中、2℃/min.の速度で昇温し、
(b)上記温度から1550℃の範囲内の所定の焼結温度までを67Paの窒素雰囲気中、2℃/min.の速度で昇温し、
(c)前記焼結温度にて133〜300Paの窒素雰囲気中、所定の時間保持を行い、
(d)1300℃の温度まで、67Paのアルゴン雰囲気中、3℃/min.の速度で冷却する。
なお、混合メディアとしてチタニア製ボールを使用した場合には、混合時にTiOが混入することによって焼結体の有孔度が悪化する場合があるので、焼結雰囲気を水素雰囲気として、混合時に混入したTiOを還元することによって、目標とする有孔度(A04以下、B00)を得ることが必要である。
(ホ)その後、上記温度から室温まで冷却する、
上記(イ)〜(ホ)の工程によって、成形性、焼結性にすぐれた本発明のサーメット焼結体を作製することができる。
また、この後、所定形状に機械加工することによって、耐熱亀裂性にすぐれた本発明のサーメット工具を作製することができる。
本発明のサーメット工具の平均成分組成、焼結体組織および製造方法は前記のとおりであるが、本発明のサーメット焼結体は、成形性、焼結性にすぐれ、焼結体の緻密度を高めることができるため、サーメット工具の強度、靱性、耐熱亀裂性をさらに向上させることができる。
本発明のサーメット焼結体の緻密度は、焼結体の組織欠陥である残留巣のサイズに関する超硬工具協会規格CIS006C−2007で表現すれば、A04以下、B00である。
ここで、A型は、残留巣の大きさが10μm未満、B型は、10μm以上25μm未満の残留巣を意味するが、本発明では、A型の残留巣についてはA04以下とし、また、粗大な残留巣であるB型の残留巣はB00とすることによって、サーメット焼結体に粗大な残留巣を形成させることなく、サーメット工具の強度、靱性、耐熱亀裂性を高めることができる。
この発明のサーメット工具は、その成分組成、焼結体組織及び有孔度を適正範囲に定め、特に、サーメット焼結体の組織を、結合相、有芯構造の第1硬質相および第2硬質相で構成し、かつ、有芯構造の第1硬質相は、芯部を、Tiと、Zrと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物を主体とし構成し、また、該芯部を覆う周辺部は、Tiと、Zrと、Wと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物として構成し、さらに、前記芯部にW富裕相が存在する第1硬質相の個数割合を5%以下と定め、かつ、0.2μm以上のサイズの第1硬質相の分布密度を20個/100μm以上とすることによって、例えば、炭素鋼や合金鋼等の切削加工において、熱亀裂発生を原因とするチッピング、欠損等の異常損傷を発生することなく、長期の使用にわたって、すぐれた切削性能を発揮するのである。
(a)は、複雑形状の切削工具の一例についての斜視図を示し、(b)は、(a)の縦断面模式図を示す。 本発明のサーメット焼結体の断面についての、走査型電子顕微鏡像の一例を示す。 従来のサーメット焼結体の断面についての、走査型電子顕微鏡像の一例を示す。
つぎに、この発明の実施例として、フライス加工について具体的に説明する。
なお、この発明の切削工具は、実施例で説明するフライス加工に制限されるものではなく、ターニング加工、ドリル加工用の切削工具としても当然に適用し得るものである。
[実施例1]
TiMCN粉末の出発原料としてTiOを使用し、また、アトライター中での混合メディアとしてサーメット製ボールを用い、以下の(A)〜(E)の工程で、本発明のサーメット切削工具を作製した。
(A)サーメット焼結体を作製するための粉末として、それぞれ平均粒径2.0μmのTiMCN粉末(MはZrと、NbおよびTaの1種または2種からなる)、平均粒径1.5μmのTiCN粉末、平均粒径2.0μmのZrC粉末、平均粒径6.0μmのWC粉末、平均粒径1.0μmのTaC粉末、平均粒径1.0μmのNbC粉末、平均粒径0.9μmのCo粉末、平均粒径0.8μmのNi粉末を用意し、これらの各粉末を、表1に示す所定の配合組成になるように配合し、原料粉末A〜C、D〜Fを作製した。
ここで、上記TiMCN粉末は、TiOを出発原料として作製したTiMCN粉末であり、その製造法は次のとおりである。
TiOとZrOおよびTaまたはNbと所定量のグラファイトを湿式混合し、乾燥させたのち、窒素およびアルゴンの混合ガス中にて1700〜2000℃の温度にて熱処理を行い、室温まで冷却後、解砕・篩分を行うことにより、TiMCN粉末を作製する。
(B)次いで、前記の原料粉末A〜Cについては、これをアトライター中に充填し、同時に、アトライター中に混合メディアとしてのサーメット製ボールを投入し、表2に示す条件、即ち、アジテータの回転速度を20〜30rpmにして16〜20時間湿式混合し、混合粉末1〜6を作製した。
なお、アトライター中への原料粉末の充填量(kg)に対するサーメット製ボールの投入量(kg)の比率(=(サーメット製ボールの投入量)/(原料粉末の充填量))は、表2に示すように、5.0〜7.0である。
(C)次いで、上記で作製した混合粉末1〜6を乾燥した後、表2に示す50〜80MPaの圧力でプレス成形し、圧粉成形体1〜6を作製した。
(D)次いで、この圧粉成形体1〜6を、表2に示す条件で焼結した後、室温まで冷却することにより、表2に示すサーメット焼結体1〜6を作製した。
(E)次いで、上記のサーメット焼結体1〜6から、研削加工にて、図1に示すインサート形状SNMU140812ANER−Mをもった表3に示す本発明のTiCN基サーメット工具1〜6(「本発明工具1〜6」という)をそれぞれ製造した。
[実施例2]
TiMCN粉末の出発原料としてTiOを使用し、また、アトライター中での混合メディアとしてチタニア製ボールを用いて、以下の工程で本発明のサーメット切削工具を作製した。
まず、前記実施例1の前記工程(A)で作製した原料粉末D〜Fをアトライター中に充填し、同時に、アトライター中に混合メディアとしてのチタニア製ボールを投入し、表4に示す条件、即ち、アジテータの回転速度を20〜30rpmにして24〜30時間湿式混合し、混合粉末11〜16を作製した。
なお、アトライター中への原料粉末の充填量(kg)に対するチタニア製ボールの投入量(kg)の比率(=(チタニア製ボールの投入量)/(原料粉末の充填量))は、表4に示すように、2.5〜4.0である。
次いで、上記で作製した混合粉末11〜16を乾燥した後、表4に示す40〜70MPaの圧力でプレス成形し、圧粉成形体11〜16を作製した。
次いで、この圧粉成形体11〜16を、表4に示す条件で焼結した後、室温まで冷却することにより、表4に示すサーメット焼結体11〜16を作製した。
なお、水素雰囲気中で焼結を行うのは、既に述べたように、チタニア製ボールによるコンタミによって焼結体の有孔度が低下するのを防止するためであり、焼結時にチタニアを還元することによって所定の有孔度を確保するためである。
次いで、上記のサーメット焼結体11〜16から、研削加工にて、実施例1と同様な複雑なインサート形状SNMU140812ANER−Mを有する表5に示す本発明のTiCN基サーメット工具11〜16(「本発明工具11〜16」という)をそれぞれ製造した。
前記実施例1および実施例2で作製した本発明工具1〜6および11〜16を構成するサーメット焼結体1〜6および11〜16について、平均成分組成、焼結体組織および有孔度を求めた。
それぞれの観察・測定法は次のとおりである。
≪平均組成≫
サーメットの断面を、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM))で観察し、100mmの領域にて含有元素量を測定し、TiCN、WC、ZrC、NbC、TaC、Co、Niとして換算し算出した。
≪焼結体組織≫
第1硬質相:
走査型電子顕微鏡(SEM))で観察した像の上で最も暗い色の粒子が芯部にあり、その周辺部に明るい灰褐色の層を持つ粒子が第1硬質相(図2参照)であり、前記第1硬質相の芯部は、Tiと、Zrと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物を主体とし、また、前記第1硬質相の周辺部は、Tiと、Zrと、Wと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物からなることは、オージェ電子分光装置(AES)を用いて、前記SEMにて観察した箇所の元素マッピングを行うと確認できる。
第1硬質相芯部へのW富裕層の有無も、10000以上の倍率での前記SEMにて白線として観察できる。前記白線部へのW含有については、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した。
W富裕層を含む第1硬質相芯部の割合については、前記SEMにて10000倍の視野にて100μmの領域にて0.2μm以上の大きさの第1硬質相芯部の粒子を数え、また、第1硬質相芯部内の白線の有無を調べた。
第2硬質相:
走査型電子顕微鏡(SEM))で観察した像の上で明るい灰褐色の層を持ち、暗い芯部を持たない粒子(図2参照)である。オージェ電子分光装置(AES)を用いて、前記SEMにて観察した箇所の元素マッピングを行うと、粒子全体がTiと、Zrと、Wと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物からなることが確認できる。
有孔度:
鏡面研磨したサーメット断面を、光学顕微鏡で100倍にて観察し、超硬工具協会規格CIS006C−2007に基づいて、分類および等級から、有孔度を調べた。
表3、表5に、上記で求めた平均成分組成、焼結体組織および有孔度を示す。
なお、本発明工具1〜6、11〜16を構成するサーメット焼結体1〜6および11〜16について、焼結性、成形性の良否を判定するために、焼結体中にクラックが存在するか否かを外観および断面を光学顕微鏡で確認した。
表3、表5に、その結果も示す。





[比較例]
また、比較の目的で、以下の工程で比較例のサーメット切削工具を作製した。
まず、TiOあるいはスポンジTiから平均粒径2.0μmのTiMCN粉末(MはZrと、NbおよびTaの1種または2種からなる)、平均粒径1.5μmのTiCN粉末、平均粒径2.0μmのZrC粉末、平均粒径6.0μmのWC粉末、平均粒径1.0μmのTaC粉末、平均粒径1.0μmのNbC粉末、平均粒径0.9μmのCo粉末、平均粒径0.8μmのNi粉末を用意し、所定の配合組成になるように配合し、表6に示す原料粉末a〜fを作製した。
なお、TiO出発原料としたTiMCN粉末の製法は、実施例1と同様であるが、スポンジTiを出発原料としたTiMCN粉末の製法は、次のとおりである。
スポンジTiを粉砕し、所定の粒径に篩分したのち、ZrCとTaCまたはNbCと所定量のグラファイトを湿式混合し、乾燥させたのち、窒素およびアルゴンの混合ガス中にて1700〜2000℃の温度にて熱処理を行い、室温まで冷却後、解砕・篩分を行うことにより、TiMCN粉末を作製したものである。
ついで、前記原料粉末a〜fをアトライター中に充填し、同時に、アトライター中に、混合メディアとしてのWC基超硬合金ボール、サーメット製ボールあるいはチタニア製ボールのいずれかを投入し、表7に示す条件、即ち、アジテータの回転速度を20〜30rpmにして16〜30時間湿式混合することにより、表7に示す混合粉末21〜26を作製した。
なお、アトライター中への原料粉末の充填量(kg)に対する混合メディアの投入量(kg)の比率(=(混合メディアの投入量)/(原料粉末の充填量))は、表7に示すように、
4〜14である。
ついで、上記混合粉末21〜26を乾燥した後、表7に示す70〜130MPaの圧力でプレス成形し、圧粉成形体21〜26を作製し、これを、表7に示す条件で焼結した後、室温まで冷却することにより、表7に示すサーメット焼結体21〜26を作製した。
次いで、上記のサーメット焼結体21〜26から、実施例1、2と同様なインサート形状SNMU140812ANER−Mを有する表8に示す比較例のTiCN基サーメット工具21〜26(「比較例工具21〜26」という)をそれぞれ製造した。
前記で作製した比較例工具21〜26を構成するサーメット焼結体について、実施例1、実施例2の場合と同様に、平均成分組成、焼結体組織および有孔度を求め、さらに、焼結体中にクラックが存在するか否かについて、外観および断面を光学顕微鏡で確認した。
表8に、その結果を示す。



つぎに、本発明工具1〜6、11〜16および比較例工具21〜26をいずれもカッタ径125mmの工具鋼製カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、以下に示す、合金鋼の高速断続切削の一種である乾式正面フライス、センターカット切削加工試験を実施した。
切削試験: 乾式正面フライス、センターカット切削加工、
カッタ径: 125 mm、
被削材: JIS・SCM440幅100mm、長さ400mmのブロック材、
回転速度: 509 min−1
切削速度: 200 m/min、
切り込み:ae 98mm、ap 2.0mm、
送り速度(1刃当り): 0.20 mm/tooth、
なお、上記切削加工試験においては、破断(寿命)に至るまでの切削時間を求めた。
その結果を表9に示す。

表9に示されるように、本発明工具1〜6、11〜16は、熱亀裂を発生することもなくチッピング、欠損等の耐異常損傷性にすぐれ、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を発揮する。
これに対して、比較例工具21〜26は、成形性、焼結性が十分でないサーメット焼結体で構成されているばかりか、硬質相の芯部に形成されているW富裕相の存在によって、切削加工時に熱亀裂を発生するため、チッピング、欠損等の異常損傷によって工具寿命が短命となることが明らかである。
この発明のTiCN基サーメット製切削工具は、成形性、焼結性、耐熱亀裂性にすぐれ、長期の使用にわたって、すぐれた切削性能を発揮することから、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。



Claims (1)

  1. TiCN基サーメット焼結体からなるTiCN基サーメット製切削工具において、
    (a)前記TiCN基サーメット焼結体は、質量%で、ZrC:0.5〜2.0%、WC:15〜25%、TaCおよびNbCのうちの1種または2種の合計:5〜15%、CoおよびNiのうちの1種または2種の合計:12〜25%、残部は、不可避不純物とTiCNからなる平均成分組成(但し、Zr、W、TaおよびNbについては、いずれも炭化物として換算した組成値を示す)を有し、
    (b)前記TiCN基サーメット焼結体の断面を、走査型電子顕微鏡で観察した場合、結合相と第1硬質相と第2硬質相が存在する焼結体組織を有し、
    (c)前記結合相は、CoおよびNiのうちの1種または2種を主体とし、
    (d)前記第1硬質相は、芯部と該芯部を覆う周辺部の有芯構造からなり、
    (e)前記第1硬質相の芯部は、Tiと、Zrと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物を主体とし、また、前記第1硬質相の周辺部は、Tiと、Zrと、Wと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物からなり、
    (f)前記第1硬質相のうち、前記芯部にW富裕相が偏在する第1硬質相の個数割合は、第1硬質相の全個数の5%以下であり、また、0.2μm以上のサイズを有する前記第1硬質相の分布密度は20個/100μm以上であり、
    (g)前記第2硬質相は、Tiと、Zrと、Wと、TaおよびNbのうちの1種または2種との複合炭窒化物からなり、
    (h)前記TiCN基サーメット焼結体の有孔度は、超硬工具協会規格CIS006C−2007で定められるA04以下、B00であることを特徴とするTiCN基サーメット製切削工具。



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