JP2019196289A - 単結晶の製造方法及び単結晶引き上げ装置 - Google Patents

単結晶の製造方法及び単結晶引き上げ装置 Download PDF

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Abstract

【課題】低酸素濃度でかつ面内分布のよい単結晶を得るための方法の提供。【解決手段】水平磁場印加チョクラルスキー法を用いた単結晶3の製造方法であって、回転可能に坩堝6が配置された引き上げ炉1の周囲に設けられた水平磁場を発生させるコイル4のコイル軸12を含む水平面11と、坩堝6の回転中心軸9との交点における磁力線7方向をX軸としたとき、X軸と坩堝内周との交点のいずれか1つを始点(θ=0°)として、回転中心軸9周りに85°<θ<95°および265°<θ<275°の範囲を除く坩堝内周上の領域の任意の点で、磁束密度成分を坩堝内壁に垂直な成分と平行な成分に分解したときの垂直な成分の磁束密度を、120G以上、かつ、中心磁束密度の25%以上として、単結晶を製造する単結晶の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば半導体材料として使用されるシリコン単結晶等の結晶成長方法に関し、より詳細には、水平磁場印加チョクラルスキー法(Horizontal Magnetic field application Czochralski method:HMCZ法ともいう)による単結晶の製造方法及び単結晶引き上げ装置に関する。
近年、パワーデバイス向けなどに低酸素濃度の結晶(以下、「低酸素結晶」と称する)の需要が高まっている。シリコン単結晶の主な製法であるチョクラルスキー法は、ルツボ中のシリコン原料を溶融して融液を形成し、そこに種結晶を接触させ、回転させながら引き上げることで単結晶を得る製法である。そして、直径300mm(12インチ)以上の大口径の結晶製造は、融液に磁場を印加して対流を抑制する磁場印加CZ法(以下、「MCZ法」と称する)が主流となっている。シリコン融液のような導電性を持つ流体は、磁場を印加することで対流を抑制することが可能である。対流抑制機構については後に詳しく述べるが、従来技術による磁石の配置方法では、十分に対流が抑制されない領域があることが明らかになっている。
特に、直径300mm以上の大口径の結晶製造では、面内分布のよい低酸素結晶を得ることは困難である。その理由は、面内分布を均一化させるために融液対流が活性な条件にすると、同時に酸素濃度が上昇してしまうためである。石英坩堝からは酸素が溶出し、その付近の融液の酸素濃度を増加させる。一方、融液表面では融液中酸素がSiOとして蒸発することで酸素濃度を低下する。そのため、対流が抑制された条件では、酸素濃度の高い領域が主に坩堝底近傍に偏在するが、対流が活性化した条件では、酸素濃度の高い領域の融液が対流輸送され、結晶の高酸素化につながるのである。逆に低酸素濃度にするために融液対流を抑制すると、酸素濃度の面内分布が不均一になったり、軸方向に成長縞が強く出たりする場合がある。
ところで、低酸素結晶を得るための技術としては、すでにいくつかの報告がある。例えば、特許文献1には、結晶回転速度と坩堝回転速度を規定して低酸素結晶を得る方法が開示されている。しかしながら特許文献1は直径200mm(8インチ)の結晶を対象としており、直径300mm以上の大口径の結晶製造には適用できない。また、特許文献1には、酸素濃度の面内分布についての言及がない。
特許文献2には、IGBT向け低酸素結晶の製法が開示されている。特許文献2には、抵抗率の面内分布のばらつきが小さいと記載されているものの、面内ばらつきを低くしつつGrown−in欠陥がフリーな条件で引き上げるには水素ドープや中性子照射が必要であり、これらの手法を用いない結晶製造は困難である。また、酸素濃度については面内で4×1017atoms/cmであればIGBT特性に影響がないとされているものの、酸素濃度の面内均一性についての言及がない。
ここで、MCZ法の対流抑制機構について述べる。融液中に熱対流などによる垂直方向の流れが発生したとすると、フレミングの右手の法則により磁場と対流の双方に直交する水平方向に電場が発生する。この電場により誘導電流が流れると、フレミングの左手の法則によりローレンツ力が生じる。この力の向きが最初に発生した流れの逆向きとなり、対流が抑制される。ただし水平磁場を印加するMCZ法の場合、石英坩堝壁面と磁力線が平行となる領域では、石英が絶縁体であるために誘導電流が流れず、対流抑制が生じない。上で述べた、対流活性な条件では酸素濃度が上昇してしまうという問題は、主にこの対流抑制が生じない領域を経路として高酸素濃度の融液が結晶側に流入することで起きる。
この対策として、例えば特許文献3に記載の技術では、坩堝の回転中心における磁力線方向をX軸、それに垂直な方向をY軸としたときに、各軸上の磁束密度分布の形状と坩堝壁における相対強度を規定している。このようにすることで、熱対流をより効果的に抑制でき、結果として酸素濃度が低減された結晶を得ることができる。このような磁束密度分布を実現する手段として、2対のコイルの、それぞれのコイル軸間の中心角度を規定した引き上げ装置が開示されている。
特開2009−018984号公報 国際公開2009/025340号 特開2017−057127号公報
近年、低酸素結晶の品質は、従来より高いレベルが求められている。特に抵抗率や酸素濃度の面内分布に関しては、チップ間の品質ばらつきをなくすためにも均一化することが望ましい。また、例えばウェーハ外周側の酸素濃度が低い場合、熱処理中にスリップ転位が発生してしまう場合があり、ウェーハの歩留に悪影響を及ぼす。窒素ドープ等の不純物ドープを行えば強度を上げることが可能であるが、窒素は欠陥やドナーの形成にも影響を与えるため、不純物ドープによらない対策として面内の酸素濃度を均一化することは重要である。一方、酸素濃度そのものも、低温熱処理で発生するサーマルドナーの影響をなくすために5×1017atoms/cm(ASTM’79)以下であることが望ましい。
本発明者らが研究した結果、特許文献3に記載の技術で確かに低酸素結晶が得られるが、上記酸素濃度面内分布も考慮すると、一部条件では品質が不十分であることが明らかとなった。具体的には、特許文献3に記載の技術でα=90°となる場合である。この条件は従来の磁石に比べれば確かに酸素濃度低減効果があるものの、α≧100°の条件に比べれば酸素濃度が高い傾向があり、不純物の面内分布を向上するために結晶回転速度を高めると酸素濃度が上昇し、5×1017atoms/cm以下の低酸素濃度と良好な面内分布が両立しないという問題があることが分かった。
本発明は、低酸素濃度でかつ面内分布のよい単結晶を得るための方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、水平磁場印加チョクラルスキー法を用いた単結晶の製造方法であって、回転可能に坩堝が配置された引き上げ炉の周囲に設けられた水平磁場を発生させるコイルのコイル軸を含む水平面と、前記坩堝の回転中心軸との交点における磁力線方向をX軸としたとき、前記X軸と坩堝内周との交点のいずれか1つを始点(θ=0°)として、前記回転中心軸周りに85°<θ<95°および265°<θ<275°の範囲を除く坩堝内周上の領域の任意の点で、磁束密度成分を坩堝内壁に垂直な成分と平行な成分に分解したときの前記垂直な成分の磁束密度を、120G以上、かつ、中心磁束密度の25%以上として、前記単結晶を製造することを特徴とする単結晶の製造方法を提供する。
このような単結晶の製造方法によれば、低酸素濃度でかつ面内分布のよい単結晶を得ることができる。
このとき、前記コイルを、それぞれのコイル軸が同じ水平面内に含まれるように2対設けるとともに、前記コイル軸間の前記X軸を挟む中心角度αを100°以上120°以下とすることができる。
このような単結晶の製造方法によれば、コイルを2対設けた単結晶引き上げ装置を用いて、前記垂直な成分の磁束密度を、120G以上、かつ、中心磁束密度の25%以上とすることができる。
この時、直胴部を形成する直胴形成工程における結晶回転速度を、6〜15rpmとすることができる。
このような単結晶の製造方法によれば、Oi≦5×1017atoms/cm(ASTM’79)かつROG≦15%である単結晶を製造することができる。
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、加熱ヒーター及び溶融した単結晶材料が収容される回転可能な坩堝が配置された引き上げ炉と、前記引き上げ炉の周囲に設けられた水平磁場を発生させるコイルを有する磁場発生装置とを備え、前記コイルへの通電により前記溶融した単結晶材料に水平磁場を印加して、前記溶融した単結晶材料の前記坩堝内での対流を抑制する単結晶引き上げ装置であって、前記コイルを、それぞれのコイル軸が同じ水平面内に含まれるように2対設けるとともに、前記水平面と、前記坩堝の回転中心軸との交点における磁力線方向をX軸としたとき、前記コイル軸間の前記X軸を挟む中心角度αを100°以上120°以下とし、前記磁場発生装置は、前記X軸と坩堝内周との交点のいずれか1つを始点(θ=0°)として、前記回転中心軸周りに85°<θ<95°および265°<θ<275°の範囲を除く坩堝内周上の領域の任意の点で、磁束密度成分を坩堝内壁に垂直な成分と平行な成分に分解したときの前記垂直な成分の磁束密度を、120G以上、かつ、中心磁束密度の25%以上となるように、磁場分布を発生させるものであることを特徴とする単結晶引き上げ装置を提供する。
このような単結晶引き上げ装置によれば、低酸素濃度でかつ面内分布のよい単結晶を製造することができるものとなる。
以上のように、本発明の方法及び装置によれば、単結晶中の酸素濃度を低減できるとともに、酸素濃度の面内分布が良好な単結晶を得ることが可能となる。
本発明の単結晶引き上げ装置の一例を示す図である。 B⊥を説明する図を示す。 α=90°、100°、120°におけるB⊥分布(中心磁束密度:1000G)を示す。
以下、本発明を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
上述のように、低酸素濃度でかつ面内分布のよい単結晶を得るための方法及び装置が求められていた。本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、
水平磁場印加チョクラルスキー法を用いた単結晶の製造方法であって、
回転可能に坩堝が配置された引き上げ炉の周囲に設けられた水平磁場を発生させるコイルのコイル軸を含む水平面と、前記坩堝の回転中心軸との交点における磁力線方向をX軸としたとき、前記X軸と坩堝内周との交点のいずれか1つを始点(θ=0°)として、前記回転中心軸周りに85°<θ<95°および265°<θ<275°の範囲を除く坩堝内周上の領域の任意の点で、磁束密度成分を坩堝内壁に垂直な成分と平行な成分に分解したときの前記垂直な成分の磁束密度を、120G以上、かつ、中心磁束密度の25%以上として、前記単結晶を製造することを特徴とする単結晶の製造方法により、低酸素濃度でかつ面内分布のよい単結晶を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
また、加熱ヒーター及び溶融した単結晶材料が収容される回転可能な坩堝が配置された引き上げ炉と、前記引き上げ炉の周囲に設けられた水平磁場を発生させるコイルを有する磁場発生装置とを備え、前記コイルへの通電により前記溶融した単結晶材料に水平磁場を印加して、前記溶融した単結晶材料の前記坩堝内での対流を抑制する単結晶引き上げ装置であって、
前記コイルを、それぞれのコイル軸が同じ水平面内に含まれるように2対設けるとともに、前記水平面と、前記坩堝の回転中心軸との交点における磁力線方向をX軸としたとき、前記コイル軸間の前記X軸を挟む中心角度αを100°以上120°以下とし、
前記磁場発生装置は、前記X軸と坩堝内周との交点のいずれか1つを始点(θ=0°)として、前記回転中心軸周りに85°<θ<95°および265°<θ<275°の範囲を除く坩堝内周上の領域の任意の点で、磁束密度成分を坩堝内壁に垂直な成分と平行な成分に分解したときの前記垂直な成分の磁束密度を、120G以上、かつ、中心磁束密度の25%以上となるように、磁場分布を発生させるものであることを特徴とする単結晶引き上げ装置により、低酸素濃度でかつ面内分布のよい単結晶を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
図1に記載の単結晶引き上げ装置は、加熱ヒーター8と、溶融した単結晶材料(以下、「融液」と称する)5が収容される石英坩堝6が配置され、坩堝の回転中心軸9を有する引き上げ炉1と、引き上げ炉1の周囲に設けられ超電導コイル4を有する磁場発生装置30とを備えており、超電導コイル4への通電により融液5に水平磁場を印加して、融液の坩堝内での対流を抑制しながら、単結晶を引き上げ方向に引き上げる構成になっている。
前述の磁場による対流抑制機構の通り、融液5の熱対流を抑制する力は、磁力線が坩堝壁と平行となる領域では働かない。このことから、磁束密度成分を坩堝内壁に垂直な成分の磁束密度(以下、「B⊥」と称する)と平行な成分の磁束密度(以下、「B‖」と称する)の2つに分解したとき、対流抑制に影響するのはB⊥のみであることを発明者らは見出した。そして調査の結果、このB⊥を指標とし、石英坩堝6の内壁の特定の領域に含まれる計算点においてB⊥を一定値以上とする磁場分布にて結晶を製造することにより、より高品質な低酸素結晶を得ることが明らかとなった。
前記B⊥を規定する前記特定の領域とは、回転可能に坩堝が配置された引き上げ炉の周囲に設けられた水平磁場を発生させるコイルのコイル軸を含む水平面と、前記坩堝の回転中心軸との交点における磁力線方向をX軸としたとき、前記X軸と坩堝内周との交点のいずれか1つを始点(θ=0°)として、前記回転中心軸周りに85°<θ<95°および265°<θ<275°の範囲を除く坩堝内周上の領域である。たとえば、計算点を、前記始点(0°)から中心角5°刻みで内周上に打った点のうち、90°と270°の2点を除いた70点とすることができる。前記水平面上で前記X軸と直交する直線をY軸としたとき、Y軸と坩堝内周の交点におけるB⊥は多くのコイル配置において実質的に0となる。これについてはコイル配置上避けられないことなので、これらの点を含む一部の領域はB⊥の指標に含めないこととする。
ここで、図2を用いて、B⊥の説明を行う。図2(a)は引き上げ炉内の石英坩堝6と融液5を、引き上げ炉1の周囲に設けられ超電導コイル4のコイル軸12を含む水平面で切断した断面図である。前記超伝導コイル4のコイル軸を含む水平面内において、前記石英坩堝6の回転中心軸9との交点における磁力線方向をX軸とし、前記水平面内における前記X軸に直交する方向をY軸としたとき、磁場発生装置30により融液5に水平磁場が印加されており、X−Y座標系の各座標には磁束密度Bが存在する。前記水平面において、X軸とのなす角度がθである直線を回転中心軸9から引き、その直線と石英坩堝内壁との交点を考える。この交点における磁束密度Bを、石英坩堝6の内壁に垂直な成分B⊥と平行な成分B‖に分解することで、B⊥が得られる。B⊥の求め方は、実際に磁場発生装置30で磁場を発生させ、ガウスメーター等を用いて実測してもよいし、解析ソフトを使って計算により求めてもよい。
ただし磁束密度成分を求めるにあたっては、実測する場合でも解析ソフトを使う場合でも、X軸、Y軸にそれぞれ平行な成分B、Bとして求める場合が多いので、そこからB⊥、B‖に変換する必要がある。図2(b)に、磁束密度ベクトルBおよびB、B、B⊥、B‖を示す。BとB⊥のなす角度はθである。また、BとBのなす角度をβとする。
Bの大きさ|B|は以下のように表される。
|B|=√(B +B ) ・・・・・式(1)
図2(b)よりB‖とBのなす角度は
90°−θ+β ・・・・・式(2)
であるから、
B⊥=|B|sin(90°−θ+β) ・・・・・式(3)
となる。ここで、
β=arctan(B/B) ・・・・・式(4)
が成り立つので、式(1)、式(4)を式(3)に代入して、
B⊥=√(B +B )×sin(90°−θ+arctan(B/B))
・・・・・式(5)
が得られる。なお、本発明においてB⊥の符号は無関係であるため、B⊥の絶対値を指標として用いればよい。
本発明の磁場発生装置30は、石英坩堝6の内壁の特定の領域においてB⊥が120G以上、かつ、コイル軸12を含む水平面11と石英坩堝6の回転中心軸9との交点における磁束密度(以下、「中心磁束密度」または「B_ctr」と称する)の25%以上であるように磁場分布を発生させるものである。
単結晶引き上げ装置の磁場発生装置30が、上記のような磁束密度分布を発生させるものであれば、電磁力による対流抑制力が不十分だったX軸と垂直な断面内においても、融液の流速を低減できるとともに、融液5のX軸と平行な断面における流速と、融液5のX軸と垂直な断面における流速とをバランスさせることができる。このようにX軸と垂直な断面内においても、融液5の流速を低減することによって、坩堝壁から溶出した酸素が単結晶に到達するまでの時間が長くなり、融液5の自由表面からの酸素蒸発量が増加することで、単結晶に取り込まれる酸素濃度を大幅に低減させることができる。また、融液5のX軸に平行な断面における流速と、融液5のX軸に垂直な断面における流速とをバランスさせることによって、育成する単結晶中の成長縞を抑制することも可能である。
上記のような磁場分布を発生させる磁場発生装置30は、例えば、磁場発生装置30を上から見た図である図1(b)に示すように、それぞれ対向配置された超電導コイル4の対をそれぞれのコイル軸が、同じ水平面11(図1(a))内に含まれるように2対(すなわち、4(a)、4(c)の対、及び、4(b)、4(d)の対)設けるとともに、コイル軸間のX軸を挟む中心角度αを100°以上120°以下とするコイル配置を有する構成とすることができる。
図3に、中心角度αを90°、100°、120°とした場合のB⊥を、θに対してプロットしたグラフを示す。B⊥は解析ソフトの解析結果から算出した。計算点は、前記超伝導コイルのコイル軸を含む水平面内において坩堝中心軸を通る磁力線方向をX軸としたときに、X軸と石英坩堝内周上の1つの交点を始点(0°)として中心角5°刻みで内周上に打った点のうち、90°と270°の2点を除いた70点とした。また、各条件の中心磁束密度B_ctrは1000Gとした。図3から明らかなように、中心角度αが90°の場合は、θが85°および95°のときのB⊥の値がB_ctrの25%よりも小さくなるのに対し、αが100°から120°の範囲ではB_ctrの25%よりも大きくなっており、上記の磁束密度分布を満たすことが分かる。なお、中心角度αを120°よりも大きくしても上記の磁束密度分布を得ることは可能だが、コイル径によっては隣接する超電導コイル同士が干渉する恐れがある。120°以下であれば確実に超電導コイルを配置することができる。
もちろん、コイルは上記磁束密度分布を発生するものであれば、2対である場合には限定されず、1対であっても、あるいは3対以上であってもよい。
本発明の中心磁束密度は、超伝導コイルの配置にもよるが、300G以上が好ましい。それよりも中心磁束密度が低い場合、融液全体の対流を十分に抑制することができずに、安定した結晶引き上げが不可能となる。
一方、中心磁束密度の上限は特に限定されないが、例えば5000G以下、より好ましくは3000G以下とすることができる。
なお、本発明の技術を特許文献3に記載の技術と比較すると、本発明では坩堝内壁のほぼ全周で磁束密度を規定しているため、酸素濃度の低減、あるいは酸素濃度面内分布の均一化、あるいはそれらの両立がより確実に行えるようになっている。
なお、本手法によって製造される単結晶の結晶欠陥については、引き上げ速度等の製造条件を調整することにより、目的に応じてCOP欠陥および転位クラスターの排除されたGrown−in欠陥フリー領域や、COP欠陥の存在するV−rich領域で製造することができる。
次に、図1を参照しながら、本発明の単結晶引き上げ方法の実施態様の一例を説明する。本発明の単結晶引き上げ方法は、上記で説明した図1の単結晶引き上げ装置を用いて、半導体単結晶を引き上げるものである。
具体的には、以下のようにして半導体単結晶を引き上げる。まず、単結晶引き上げ装置10において、石英坩堝6内に半導体材料を入れて加熱ヒーター8により加熱し、半導体材料を溶融させる(図1(a)参照)。次に、超電導コイル4への通電により、融液5に磁場発生装置30によって発生させた水平磁場を印加して、融液5の石英坩堝6内での対流を抑制する(図1(a)参照)。このとき、磁場発生装置30によって、石英坩堝6の内壁の特定の領域、すなわち、回転可能に坩堝6が配置された引き上げ炉1の周囲に設けられた水平磁場を発生させるコイル4のコイル軸12を含む水平面11と、前記坩堝の回転中心軸9との交点における磁力線7の方向をX軸としたとき、前記X軸と坩堝内周との交点のいずれか1つを始点(θ=0°)として、前記回転中心軸周りに85°<θ<95°および265°<θ<275°の範囲を除く坩堝内周上の領域に含まれる計算点おいて、B⊥が120G以上かつB_ctrの25%以上であるように、磁束密度分布を発生させる(図1(a)参照)。上記のような磁場分布を発生させる磁場発生装置30として、例えば、図1(b)に示すように、それぞれ対向配置された超電導コイルの対をそれぞれのコイル軸12が同じ水平面内に含まれるように2対設けるとともに、コイル軸間のX軸を挟む中心角度αを100°以上120°以下とするコイル配置を有する磁場発生装置30を用いることができる。この場合、B⊥の上限値は特に限定されないが、装置の都合上、一般にB_ctrの250%以下となる。
次に、融液5中に種結晶2を、例えば石英坩堝6の中央部上方から下降挿入し、引き上げ機構(不図示)により種結晶2を回転させながら、所定の速度で引き上げ方向に引上げていく(図1(a)参照)。これにより、固体・液体境界層に結晶が成長し、半導体単結晶3が生成される。このとき、直胴工程における結晶回転速度は6〜15rpmとする。また、坩堝回転速度が高速だと石英坩堝の溶解速度が増加して融液中に酸素が供給されやすくなるため、石英坩堝6の回転速度は0.01〜0.5rpmの範囲とすることが好ましい。このような単結晶引き上げ方法であれば、結晶に取り込まれる酸素の濃度が大幅に低減されるとともに、酸素濃度の面内分布が良好な半導体単結晶を製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
(実施例1)
図1(a)に示す単結晶引き上げ装置において、磁場発生装置30として、コイル軸間の中心角度αを120°とした磁場発生装置を用いる構成とした。このような単結晶引き上げ装置を用いて、以下に示す条件で、半導体単結晶の引き上げを行った。
使用坩堝 :直径800mm
単結晶材料のチャージ量:400kg
育成する単結晶 :直径306mm
中心磁束密度 :300、1000、1500G
単結晶回転速度 :11rpm
坩堝回転速度 :0.03rpm
このようにして育成した半導体単結晶において、酸素濃度を調べた。その結果を表1に示す。表1に示すように、中心磁束密度が300G以上のときに、B⊥が120G以上かつB⊥が中心磁束密度の25%以上となり、低酸素濃度かつ酸素濃度の面内分布が良好な半導体単結晶が得られた。なお、表中のOi(格子間酸素濃度)とROG(酸素濃度の面内分布)は、固化率10〜65%間の平均値である。
Figure 2019196289
(実施例2)
コイル軸間の中心角度αを100°とした以外は、実施例1と同様な構成の単結晶引き上げ装置とした。中心磁束密度を500、1000、1500Gとした以外は、実施例1と同一条件とした。
実施例1と同様に、半導体単結晶の酸素濃度を調べた。その結果を表2に示す。表2に示すように、中心磁束密度500G以上のときに、B⊥が120G以上かつB⊥が中心磁束密度の25%以上となり、低酸素濃度かつ酸素濃度の面内分布が良好な半導体単結晶が得られた。
Figure 2019196289
(比較例1)
コイル軸間の中心角度αを90°とした以外は、実施例1と同様な構成の単結晶引き上げ装置とした。中心磁束密度を500および1000Gとした以外は、実施例1と同一条件とした。
実施例1、2と同様に、半導体単結晶の酸素濃度を調べた。その結果を表3に示す。表3に示すように、低酸素濃度かつ酸素濃度の面内分布が良好な半導体単結晶は得られなかった。
Figure 2019196289
(比較例2)
図1(a)に示す単結晶引き上げ装置に対して、単結晶引き上げ装置の磁場発生装置30として2つのコイル、すなわち1対のコイルだけを有する磁場発生装置30を用いる構成とした。中心磁束密度を2000および4000Gとした以外は、実施例1と同一条件とした。
実施例1、2と同様に、半導体単結晶の酸素濃度を調べた。その結果を表4に示す。表4に示すように、低酸素濃度かつ酸素濃度の面内分布が良好な半導体単結晶は得られなかった。
Figure 2019196289
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…引き上げ炉、2…種結晶、3…単結晶、4…コイル、5…融液、6…石英坩堝、7…磁力線、8…ヒーター、9…坩堝の回転中心軸、10…単結晶引き上げ装置、11…水平面、12…コイル軸、30…磁場発生装置。

Claims (4)

  1. 水平磁場印加チョクラルスキー法を用いた単結晶の製造方法であって、
    回転可能に坩堝が配置された引き上げ炉の周囲に設けられた水平磁場を発生させるコイルのコイル軸を含む水平面と、前記坩堝の回転中心軸との交点における磁力線方向をX軸としたとき、前記X軸と坩堝内周との交点のいずれか1つを始点(θ=0°)として、前記回転中心軸周りに85°<θ<95°および265°<θ<275°の範囲を除く坩堝内周上の領域の任意の点で、磁束密度成分を坩堝内壁に垂直な成分と平行な成分に分解したときの前記垂直な成分の磁束密度を、120G以上、かつ、中心磁束密度の25%以上として、前記単結晶を製造することを特徴とする単結晶の製造方法。
  2. 前記コイルを、それぞれのコイル軸が同じ水平面内に含まれるように2対設けるとともに、前記コイル軸間の前記X軸を挟む中心角度αを100°以上120°以下とすることを特徴とする請求項1に記載の単結晶の製造方法。
  3. 直胴部を形成する直胴形成工程における結晶回転速度を、6〜15rpmとすることを特徴とする請求項1または2に記載の単結晶の製造方法。
  4. 加熱ヒーター及び溶融した単結晶材料が収容される回転可能な坩堝が配置された引き上げ炉と、前記引き上げ炉の周囲に設けられた水平磁場を発生させるコイルを有する磁場発生装置とを備え、前記コイルへの通電により前記溶融した単結晶材料に水平磁場を印加して、前記溶融した単結晶材料の前記坩堝内での対流を抑制する単結晶引き上げ装置であって、
    前記コイルを、それぞれのコイル軸が同じ水平面内に含まれるように2対設けるとともに、前記水平面と、前記坩堝の回転中心軸との交点における磁力線方向をX軸としたとき、前記コイル軸間の前記X軸を挟む中心角度αを100°以上120°以下とし、
    前記磁場発生装置は、前記X軸と坩堝内周との交点のいずれか1つを始点(θ=0°)として、前記回転中心軸周りに85°<θ<95°および265°<θ<275°の範囲を除く坩堝内周上の領域の任意の点で、磁束密度成分を坩堝内壁に垂直な成分と平行な成分に分解したときの前記垂直な成分の磁束密度を、120G以上、かつ、中心磁束密度の25%以上となるように、磁場分布を発生させるものであることを特徴とする単結晶引き上げ装置。
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