以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
又、各図における上下、左右、前後を示す矢印は、実施形態における各構成の位置関係の理解を容易にする為に、三次元空間の直交座標系(例えば、X軸、Y軸、Z軸)に対応する基準として例示したものである。
具体的には、各図における上下、左右、前後を示す矢印は、車両のシートに座った乗員の視点を基準として示している。そして、各図における紙面手前側、奥側についてもこの状態を基準として決定される。例えば、図1における紙面手前側、奥側は左右方向に対応している。
本実施形態に係る車室用空調システムASは、ハイブリッド自動車に適用されており、図1に示すように、車室Cの内部に配置されたシートを空調対象空間とするシート空調装置1と、主として車室Cの全体空調を行う室内空調装置60と、を有している。
又、車室Cには、乗員Pが着席する為の複数のシートが配置されている。複数のシートは、それぞれ、座面部及び背もたれ部を有しており、乗員Pが座面部の上方かつ背もたれ部の前方に着席するように構成されている。当該複数のシートは、車室床面Fに配置されたシートレール(図示せず)を介して、予め定められた範囲を前後方向にスライド移動可能に配置されている。
そして、当該複数のシートには、前席シートSAと後席シートSBが含まれている。前席シートSAは、車室Cの前方側に配置されたシートであり、例えば、運転席や助手席に相当する。そして、後席シートSBは、車室Cの後方側に配置されたシートであり、前席シートSAの後方に位置している。
本実施形態に係る車室用空調システムASにおいて、シート空調装置1は、図1に示すように、後席シートSBに対して配置されており、後席シートSBに対して定められた空調対象空間に、温度調整された空気を供給する。この場合の空調対象空間は、後席シートSBの座面部の上方で、且つ、背もたれ部の前方を意味し、後席シートSBに座った乗員Pが存在する範囲を示す。即ち、シート空調装置1は、個別空調装置に相当する。
そして、当該シート空調装置1は、筐体10の内部に配置された冷凍サイクル装置20等で温度調整された空気を、後席シートSBに配置されたシート用ダクトDを介して、空調対象空間に供給する。これにより、当該シート空調装置1は、後席シートSBに座った乗員Pの快適性を向上させることができる。
尚、シート空調装置1の筐体10は、図示しない取付部材によって、後席シートSBの座面部に対して取り付けられている。従って、当該シート空調装置1は、後席シートSBのスライド移動に伴って、前後方向に移動可能に配置されている。
本実施形態に係る車室用空調システムASにおいて、室内空調装置60は、前席側空調ユニット61と、後席側空調ユニット72を有しており、ハイブリッド車両の車室Cを全体的に空調する。当該室内空調装置60は、車室側冷凍サイクル82を有しており、当該車室側冷凍サイクル82にて温度調整された空調風Aを、車室Cの内部に供給する。
図1に示すように、シート空調装置1と、室内空調装置60の後席側空調ユニット72の間に供給ダクト90が配置されている。供給ダクト90は、室内空調装置60の後席側空調ユニット72から吹き出される空調風Aが流れる空気流路である。
当該車室用空調システムASは、室内空調装置60にて冷凍サイクル装置20の熱負荷を低減するように温度調整された空調風Aを供給ダクト90で案内することで、シート空調装置1の空調動作に関する熱負荷を低減して供給するように構成されている。室内空調装置60は、熱負荷低減部として機能する。車室用空調システムASの具体的構成について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、車室用空調システムASを構成するシート空調装置1の具体的構成について、図2〜図10を参照しつつ詳細に説明する。図2〜図4に示すように、当該シート空調装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置20と、第1送風機30と、第2送風機31と、温風用切替部35と、冷風用切替部40とを、筐体10の内部に収容して構成されている。
従って、当該シート空調装置1は、第1送風機30や第2送風機31の作動による送風空気を冷凍サイクル装置20によって温度調整することができる。そして、シート空調装置1は、後席シートSBに配置されたシート用ダクトDを介して、後席シートSBに座った乗員Pに、温度調整された空気(例えば、温風WA、冷風CA)を供給することができる。
先ず、筐体10の具体的な構成について、図2〜図4を参照しつつ説明する。尚、図3は、図2の状態から上部カバー11を取り外した状態を示しており、図4は、図3の状態から第1送風機30及び第2送風機31を取り外した状態を示している。
当該シート空調装置1において、筐体10は、後席シートSBの座面部と車室床面Fとの間に配置可能な直方体状に形成されており、図2に示すように、上部カバー11と、本体ケース15により構成されている。
上部カバー11は、筐体10の上面を構成しており、上方が開放された箱状を為す本体ケース15の開口部を閉塞するように取り付けられる。当該上部カバー11には、温風用通気口12と、冷風用通気口13と、供給口14と、排気口16が形成されている。
温風用通気口12は、上部カバー11の右側部分に開口されている。当該温風用通気口12は、後述する第1送風機30等の作動に伴い、筐体10の外部の空気(即ち、車室Cの空気)を筐体10の内部に吸い込む為の通気口である。
ここで、温風用通気口12の周辺には、供給ダクト90の端部が配置されている。従って、室内空調装置60の空調風Aが、供給ダクト90を介して、温風用通気口12に供給される。この点については後に詳述する。温風用通気口12は吸気口として機能する。
図2〜図10に示すように、筐体10の内部において、温風用通気口12の下方となる位置には、冷凍サイクル装置20の凝縮器22が配置されている。従って、温風用通気口12から吸い込まれた空気は、凝縮器22を通過する際に高圧冷媒と熱交換して加熱され、温風WAとして供給される。
冷風用通気口13は、上部カバー11の左側部分に開口されており、温風用通気口12と対称となるように配置されている。当該冷風用通気口13は、温風用通気口12と同様に、第1送風機30等の作動に伴い、筐体10の外部の空気を内部に吸い込むための通気口である。
そして、冷風用通気口13の周辺には、供給ダクト90の端部が配置されている。従って、室内空調装置60の空調風Aが、供給ダクト90を介して、冷風用通気口13に供給される。この点については後に詳述する。冷風用通気口13は、温風用通気口12と共に吸気口として機能する。
筐体10の内部にて冷風用通気口13の下方となる位置には、冷凍サイクル装置20の蒸発器24が配置されている。従って、冷風用通気口13から吸い込まれた空気は、蒸発器24を通過する際に冷却され、冷風CAとして供給される。
そして、上部カバー11における後側中央部には、供給口14が開口されている。供給口14は、当該シート空調装置1にて冷凍サイクル装置20で温度調整された空気(例えば、温風WA、冷風CA)を空調対象空間へ供給する為の通気口である。
当該供給口14には、シート用ダクトDの一端部が接続されている。当該シート用ダクトDは、後席シートSBの座面部や背もたれ部の両側に沿って配置され、後席シートSBにおける乗員Pが着席する空間へ温風WAや冷風CAを導くように構成されている。
又、上部カバー11における前側中央部には、排気口16が開口されている。当該排気口16は、筐体10の内部において、冷凍サイクル装置20にて温度調整された空気のうちの一部が排気として送出される開口部である。従って、排気口16から吹き出された空気は、空調対象空間の外部へ送風される。
本体ケース15は、筐体10の主要部を構成しており、上方が開放された箱状に形成されている。図3〜図10に示すように、本体ケース15の内部には、冷凍サイクル装置20や第1送風機30等の構成機器が配置される。
図6、図7等に示すように、本体ケース15の内部には、温風側通風路17と冷風側通風路18が形成される。温風側通風路17は、凝縮器22にて加熱された温風WAが流通する通風路であり、冷風側通風路18は、蒸発器24にて冷却された冷風CAが流通する通風路である。温風側通風路17、冷風側通風路18は、何れも本体ケース15の筐体底面15Aと、構成機器との間によって構成される。
尚、図1に示すように、当該筐体10は、後席シートSBにおける座面部の下面から間隔をあけて配置されている。この為、筐体10の上面に配置された12、冷風用通気口13及び供給口14に対して、供給ダクト90やシート用ダクトDの端部を配置することができる。
次に、シート空調装置1における冷凍サイクル装置20の構成について、図面を参照しつつ説明する。上述したように、冷凍サイクル装置20は、筐体10の内部に収容されており、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成している。
そして、冷凍サイクル装置20は、圧縮機21と、凝縮器22と、減圧部23と、蒸発器24と、アキュムレータ25とを有している。当該冷凍サイクル装置20は、圧縮機21の作動によって冷媒を循環させることで、後席シートSBの空調対象空間へ送風される空気を冷却或いは加熱する機能を果たす。従って、冷凍サイクル装置20は、凝縮器22における温熱と蒸発器24における冷熱を同時期に並行して発生させる為、冷温熱発生部に相当する。
ここで、冷凍サイクル装置20は、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(例えば、R1234yf)や自然冷媒(例えば、R744)等を採用してもよい。更に、冷媒には圧縮機21を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
圧縮機21は、冷凍サイクル装置20において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機21は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて駆動する電動圧縮機として構成されており、図3、図4等に示すように、本体ケース15の内部における後方側に配置されている。尚、圧縮機21の圧縮機構としては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。
圧縮機21を構成する電動モータは、後述する空調制御装置100から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御される。そして、当該空調制御装置100が電動モータの回転数を制御することによって、圧縮機21の冷媒吐出能力が変更される。
圧縮機21にて圧縮された高圧冷媒が吐出される吐出配管には、凝縮器22の流入口側が接続されている。凝縮器22は、複数のチューブ及びフィンを積層して平板状に構成された熱交換部22Aを有しており、熱交換部22Aを通過する空気と、各チューブを流れる高圧冷媒とを熱交換させる。
図3〜図5に示すように、凝縮器22は、本体ケース15の右側に配置されており、温風用通気口12の下方に位置している。従って、温風用通気口12から吸い込まれた空気は、凝縮器22の熱交換部22Aを通過する。
即ち、凝縮器22は、圧縮機21から吐出された高温高圧の吐出冷媒と、温風用通気口12から吸い込まれた空気とを熱交換させて、空気を加熱して温風WAにすることができる。即ち、当該凝縮器22は、加熱用熱交換器として作動し、放熱器として機能する。
そして、凝縮器22の熱交換部22Aは、複数のチューブ及びフィンが伸びる方向を長手方向とする平板状に形成されている。図3〜図10に示すように、当該凝縮器22は、熱交換部22Aの長手方向がシート空調装置1の前後方向に沿うように配置されている。
更に、図6、図7に示すように、凝縮器22は、熱交換部22Aが筐体底面15Aから予め定められた距離だけ上方に位置するように配置される。凝縮器22の下方に形成される空間は、熱交換部22Aを通過した温風WAが流通する空間であり、温風側通風路17の一部として機能する。
そして、凝縮器22の流出口側には、減圧部23が接続されている。減圧部23は、いわゆる固定絞りによって構成されており、凝縮器22から流出した冷媒を減圧させる。図5に示すように、減圧部23は、本体ケース15の内部における前側に配置されている。
尚、当該シート空調装置1では、減圧部23として固定絞りを用いているが、この態様に限定されるものではない。凝縮器22から流出した冷媒を減圧可能であれば、減圧部として、種々の構成を採用することができる。例えば、キャピラリーチューブを減圧部23として採用しても良いし、制御部の制御信号により絞り開度を制御可能な膨張弁を、減圧部23に用いても良い。
減圧部23の流出口側には、蒸発器24の流入口側が接続されている。当該蒸発器24は、複数のチューブ及びフィンを積層して平板状に構成された熱交換部24Aを有しており、熱交換部24Aを通過する空気から吸熱して、各チューブを流れる低圧冷媒を蒸発させる。
図3〜図5に示すように、蒸発器24は、本体ケース15の左側に配置されており、冷風用通気口13の下方に位置している。従って、当該シート空調装置1では、蒸発器24は、筐体10の内部において、凝縮器22に対して左右方向に間隔をあけて配置されている。
そして、冷風用通気口13から吸い込まれた空気は、蒸発器24の熱交換部24Aを通過する。即ち、蒸発器24は、冷風用通気口13から吸い込まれた空気と、減圧部23にて減圧された低圧冷媒とを熱交換させて、空気を冷却して冷風CAにすることができる。即ち、蒸発器24は、冷却用熱交換器として作動し、吸熱器として機能する。
そして、蒸発器24の熱交換部24Aは、複数のチューブ及びフィンが伸びる方向を長手方向とする平板状に形成されている。図3〜図7に示すように、当該蒸発器24は、熱交換部24Aの長手方向がシート空調装置1の前後方向に沿うように配置されている。
図6、図7に示すように、蒸発器24は、熱交換部24Aが筐体底面15Aから予め定められた距離だけ上方に位置するように配置される。蒸発器24の下方に形成される空間は、熱交換部24Aを通過した冷風CAが流通する空間であり、冷風側通風路18の一部として機能する。
そして、蒸発器24の流出口側には、アキュムレータ25が接続されており、本体ケース15における左側後方に配置されている。当該アキュムレータ25は、蒸発器24から流出した冷媒の気液を分離して、冷凍サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える。
当該アキュムレータ25における気相冷媒出口には、圧縮機21の吸入配管が接続されている。従って、圧縮機21には、アキュムレータ25で分離された気相冷媒が吸入配管を介して吸入される。
図3に示すように、筐体10の内部には、第1送風機30と第2送風機31が配置されている。第1送風機30は、複数枚の羽根を有する羽根車と、当該羽根車を回転させる電動モータとを有して構成された送風機である。
当該第1送風機30は、凝縮器22と蒸発器24の間における後方側に位置しており、供給口14の下方に位置している。従って、第1送風機30は、羽根車を回転させることによって、供給口14及びシート用ダクトDを介して、後席シートSBの空調対象空間に対して送風することができる。即ち、第1送風機30は送風機の一例である。
そして、第2送風機31は、第1送風機30と同様に、羽根車及び電動モータを有する送風機である。図3に示すように、当該第2送風機31は、凝縮器22と蒸発器24の間において、第1送風機30の前側に隣接するように配置されている。
当該第2送風機31は、排気口16の下方に位置している。従って、当該第2送風機31は、羽根車を回転させることによって、排気口16を介して、空調対象空間の外部へ送風することができる。即ち、第2送風機31は送風機の一例である。
図4等に示すように、第1送風機30及び第2送風機31の下方には、ファン支持部55が配置されている。ファン支持部55は、凝縮器22と蒸発器24の間に配置されており、第1取付開口56と、第2取付開口57とを有している。図4〜図7に示すように、ファン支持部55は、筐体10における筐体底面15Aから予め定められた高さに位置するように配置されており、凝縮器22と蒸発器24の間の空間を上下に区画している。
第1取付開口56は、第1送風機30が取り付けられる開口部であり、ファン支持部55における後方側に配置されている。一方、第2取付開口57は、第2送風機31が取り付けられる開口部であり、ファン支持部55における前方側にて、第1取付開口56に隣接するように配置されている。
従って、第1送風機30は、第1取付開口56を介して、ファン支持部55の下方の空気を吸い込み、供給口14へ供給できる。第2送風機は、第2取付開口57を介して、ファン支持部55の下方の空気を吸い込み、排気口16へ送風できる。
そして、当該シート空調装置1における温風用切替部35及び冷風用切替部40の構成について、図面を参照しつつ説明する。
尚、図6は、図5におけるVI−VI断面を示しており、第1送風機30による空気(冷風CA)の流れの一例を示している。そして、図7は、図5におけるVII−VII断面を示しており、第2送風機31による空気(温風WA)の流れの一例を示している。
図4に示すように、当該シート空調装置1は、凝縮器22と蒸発器24の間にて、第1送風機30及び第2送風機31の下方に、温風用切替部35と、冷風用切替部40とを有している。温風用切替部35は、凝縮器22により加熱された温風WAの送風先を切り替える為の機構である。冷風用切替部40は、蒸発器24により冷却された冷風CAの送風先を切り替える為の機構である。
温風用切替部35及び冷風用切替部40は、ファン支持部55の下方に配置されたフレーム部材45、供給用スライドドア46、排気用スライドドア47、駆動モータ50等を有して構成されている。
つまり、温風用切替部35及び冷風用切替部40は、筐体10の内部において、左右両側に配置された凝縮器22と蒸発器24の間に配置されている。そして、温風用切替部35は、凝縮器22と蒸発器24の間における右側(即ち、凝縮器22に近い側)に位置しており、冷風用切替部40は、凝縮器22と蒸発器24の間における左側(即ち、蒸発器24に近い側)に配置されている。
図6、図7に示すように、フレーム部材45は、凝縮器22と蒸発器24の間にて、ファン支持部55の下方に配置されており、前後方向に沿って伸びている。当該フレーム部材45は、前後方向に垂直な断面に関して、下方に向かって膨らんだ円弧状に形成されている。
円弧状に膨らんだフレーム部材45の下端部には、区画部45Aが形成されている。区画部45Aは、フレーム部材45の下端部と筐体底面15Aの内面との間を閉塞する壁状に形成されており、前後方向に沿って伸びている。即ち、フレーム部材45の下方の空間は、区画部45Aによって左右に区画される。
当該フレーム部材45の下方であって、区画部45Aの右側にあたる空間は、凝縮器22の下方の空間と連通し、温風側通風路17の一部を構成する。同様に、フレーム部材45の下方であって、区画部45Aの左側にあたる空間は、蒸発器24の下方の空間と連通し、冷風側通風路18の一部を構成する。
そして、フレーム部材45の前後方向中央部には、ファン支持部55とフレーム部材45の間の空間を前後に区画する区画リブが形成されている。当該区画リブの後方側の空間は、第1取付開口56に連通しており、供給口14から供給される空気が流入する供給用空間56Aとして機能する。そして、当該区画リブの前方側の空間は、第2取付開口57に連通しており、排気口16から送風される空気が流入する排気用空間57Aとして機能する。
温風用切替部35を構成する温風供給用開口36及び温風排気用開口37は、フレーム部材45における区画部45Aの右側において、前後方向に隣接するように配置されている。温風供給用開口36は、フレーム部材45における右側後方に開口形成されており、供給用空間56Aと温風側通風路17を連通している。そして、温風排気用開口37は、フレーム部材45における右側前方に開口形成されており、排気用空間57Aと温風側通風路17を連通している。
図6、図7に示すように、フレーム部材45は、左右方向中央部に向かうに伴って下方に膨らんだ円弧状に形成されており、温風供給用開口36及び温風排気用開口37は、当該フレーム部材45の右側部分に開口されている。
従って、温風供給用開口36及び温風排気用開口37の開口縁は、凝縮器22が配置されている筐体10の右側から離れる程、下方に向かう円弧を描くように形成される。これにより、当該温風供給用開口36及び温風排気用開口37の開口面積は、温風側通風路17を左右方向(即ち、水平)に横断するように温風供給用開口36等を形成した場合の開口面積よりも大きくなる。
又、図5〜図7に示すように、凝縮器22は、熱交換部22Aの長手方向が前後方向に沿うように配置されている。そして、温風用切替部35において、温風供給用開口36と温風排気用開口37は、前後方向に並んで配置されている。
この結果、当該シート空調装置1は、凝縮器22の熱交換部22Aを通過した空気に関し、温風供給用開口36に流入する風量と、温風排気用開口37に流入する風量の何れについても、十分に確保することができる。
そして、冷風用切替部40を構成する冷風供給用開口41及び冷風排気用開口42は、フレーム部材45における区画部45Aの左側において、前後方向に隣接するように配置されている。
冷風供給用開口41は、フレーム部材45における左側後方に開口形成されており、供給用空間56Aと冷風側通風路18とを連通している。図6に示すように、当該冷風供給用開口41は、フレーム部材45において、温風供給用開口36と左右方向に隣接している。
そして、冷風排気用開口42は、フレーム部材45における左側前方に開口形成されており、排気用空間57Aと冷風側通風路18とを連通している。図7に示すように、当該冷風排気用開口42は、フレーム部材45において、温風排気用開口37と左右方向に隣接している。
上述したように、フレーム部材45は、左右方向中央部に向かうに伴って下方に膨らんだ円弧状に形成されており、冷風供給用開口41及び冷風排気用開口42は、当該フレーム部材45の左側部分に開口されている。
従って、冷風供給用開口41及び冷風排気用開口42の開口縁は、蒸発器24が配置されている筐体10の左側から離れる程、下方に向かう円弧を描くように形成される。これにより、当該冷風供給用開口41及び冷風排気用開口42の開口面積は、冷風側通風路18を左右方向(即ち、水平)に横断するように冷風供給用開口41等を形成した場合の開口面積よりも大きくなる。
そして、図5〜図7に示すように、蒸発器24は、熱交換部24Aの長手方向が前後方向に沿うように配置されている。そして、冷風用切替部40において、冷風供給用開口41と冷風排気用開口42は、前後方向に並んで配置されている。
この結果、当該シート空調装置1は、蒸発器24の熱交換部24Aを通過した空気に関し、冷風供給用開口41に流入する風量と、冷風排気用開口42に流入する風量の何れについても、十分に確保することができる。
フレーム部材45の後方側には、供給用スライドドア46が移動可能に取り付けられている。当該供給用スライドドア46は、フレーム部材45の円弧に沿って湾曲した板状に形成されており、温風供給用開口36又は冷風供給用開口41を閉塞可能なサイズに構成されている。
そして、当該供給用スライドドア46は、温風供給用開口36を閉塞する位置と、冷風供給用開口41を閉塞する位置との間を、フレーム部材45の円弧に沿ってスライド可能に取り付けられている。
従って、当該シート空調装置1は、供給用スライドドア46を移動させることで、温風供給用開口36を介して供給用空間56Aに流入する温風WAの風量と、冷風供給用開口41を介して供給用空間56Aに流入する冷風CAの風量を調整することができる。即ち、供給用スライドドア46は、供給口14から供給される空気において、温風WA及び冷風CAが占める割合を調整することができる。
一方、フレーム部材45の前方側には、排気用スライドドア47が移動可能に取り付けられている。当該排気用スライドドア47は、フレーム部材45の円弧に沿って湾曲した板状に形成されており、温風排気用開口37又は冷風排気用開口42を閉塞可能なサイズに構成されている。
そして、当該供給用スライドドア46は、温風排気用開口37を閉塞する位置と、冷風排気用開口42を閉塞する位置との間を、フレーム部材45の円弧に沿ってスライド可能に取り付けられている。
従って、当該シート空調装置1は、排気用スライドドア47を移動させることで、温風排気用開口37を介して排気用空間57Aに流入する温風WAの風量と、冷風排気用開口42を介して排気用空間57Aに流入する冷風CAの風量を調整することができる。即ち、排気用スライドドア47は、排気口16から送風される空気において、温風WA及び冷風CAが占める割合を調整することができる。
図5等に示すように、筐体10の内部には、駆動モータ50が配置されている。当該駆動モータ50は、いわゆるサーボモータによって構成されており、供給用スライドドア46及び排気用スライドドア47をスライド移動させる為の駆動源として機能する。当該駆動モータ50の作動は、空調制御装置100からの制御信号に基づいて行われる。
駆動モータ50の駆動軸には、供給用シャフト48が接続されている。当該供給用シャフト48は、駆動モータ50から前方側に向かって伸びており、2つのギヤ部48Aを有している。又、当該供給用シャフト48は、供給用スライドドア46の上方を前後方向に横断するように配置されている。
そして、供給用スライドドア46の上面には、2つの歯部46Aが左右方向に延びるように配置されている。当該供給用スライドドア46の歯部46Aは、それぞれ、供給用シャフト48のギヤ部48Aにおける歯と噛み合うように形成されている。
従って、駆動モータ50で生じた動力は、ギヤ部48Aと歯部46Aを介して、供給用スライドドア46に伝達される。即ち、当該シート空調装置1は、空調制御装置100にて駆動モータ50の作動を制御することで、供給用スライドドア46を左右方向の任意の位置にスライド移動させることができる。
一方、供給用シャフト48の前方側には、排気用シャフト49が回転可能に支持されている。当該排気用シャフト49は、供給用シャフト48と平行になるように前方側に向かって伸びており、2つのギヤ部49Aを有している。
図5に示すように、供給用シャフト48の前方側の端部には、伝達ギヤ部48Bが配置されており、排気用シャフト49の後方側の端部に配置された従動ギヤ部49Bと噛み合うように構成されている。従って、駆動モータ50で生じた動力は、供給用シャフト48の回転に伴い、排気用シャフト49に伝達される。
そして、排気用スライドドア47の上面には、2つの歯部47Aが左右方向に延びるように配置されている。当該排気用スライドドア47の歯部47Aは、それぞれ、排気用シャフト49のギヤ部49Aと噛み合うように形成されている。
従って、駆動モータ50で生じた動力が、供給用シャフト48を介して伝達され、排気用シャフト49を回転させる。これにより、排気用スライドドア47は、温風排気用開口37と冷風排気用開口42の間をスライド移動する。即ち、当該シート空調装置1は、空調制御装置100にて駆動モータ50の作動を制御することで、排気用スライドドア47を左右方向の任意の位置にスライド移動させることができる。
又、当該シート空調装置1によれば、供給用シャフト48及び排気用シャフト49を介して、駆動モータ50の動力を供給用スライドドア46と排気用スライドドア47に伝達させることで、供給用スライドドア46のスライド移動と、排気用スライドドア47のスライド移動を連動させることができる。
図5〜図10に示すように、冷風排気用開口42における開口面積が増大するように、排気用スライドドア47が移動すると、供給用スライドドア46は、温風供給用開口36における開口面積が増大するように移動する。
この場合には、排気用空間57Aに流入する空気における冷風CAの風量割合が増大すると、供給用空間56Aに流入する空気における温風WAの風量割合が増大する。当該シート空調装置1は、空調対象空間に対して、暖房モードよりも低温で、冷房モードよりも高温な状態に混合した空気を供給することができ、暖房よりのエアミックスモードを実現することができる。
又、温風排気用開口37における開口面積が増大するように、排気用スライドドア47が移動すると、供給用スライドドア46は、冷風供給用開口41における開口面積が増大するように移動する。
この場合には、排気用空間57Aに流入する空気における温風WAの風量割合が増大すると、供給用空間56Aに流入する空気における冷風CAの風量割合が増大する。当該シート空調装置1は、空調対象空間に対して、暖房モードよりも低温で、冷房モードよりも高温な状態に混合した空気を供給することができ、冷房よりのエアミックスモードを実現することができる。
このように構成された本実施形態に係るシート空調装置1によれば、冷凍サイクル装置20の凝縮器22で加熱された温風WAや蒸発器24で冷却された冷風CAを用いて、後席シートSBの空調対象空間に対して、適切に温度調整された空気を供給することができる。
そして、当該シート空調装置1によれば、温風用切替部35や冷風用切替部40の作動を制御することで、空調対象空間に対して冷風CAを供給する冷房モード、空調対象空間に対して温風WAを供給する暖房モード、冷風CA及び温風WAを混合して温度調整した空気を空調対象空間に供給するエアミックスモードを実現することができる。
続いて、冷房モードにおけるシート空調装置1の作動について、図5〜図7を参照しつつ説明する。冷房モードに際して、空調制御装置100は、供給用スライドドア46で温風供給用開口36を閉塞すると共に、排気用スライドドア47で冷風排気用開口42を閉塞した状態に、温風用切替部35及び冷風用切替部40を制御する。
この状態で第1送風機30を作動させると、図6に示すように、空気は冷風用通気口13→蒸発器24→冷風側通風路18→冷風供給用開口41→供給用空間56A→第1送風機30→供給口14の順に流れる。これにより、蒸発器24の冷熱で冷却された冷風CAが供給口14から後席シートSBの空調対象空間に供給される。
尚、冷房モードにおいては、温風供給用開口36は供給用スライドドア46によって閉塞されている。従って、この場合、第1送風機30により、温風用通気口12→凝縮器22→温風側通風路17→温風供給用開口36という空気の流れが生じることはない。
当該シート空調装置1の冷房モードにおいて、冷風CAは、第1送風機30により送風される空気を、蒸発器24における低圧冷媒との熱交換で冷却して生成される。即ち、冷凍サイクル装置20の蒸発器24における冷媒の吸熱量は、第1送風機30による送風量の影響を大きく受けることになる。換言すると、当該シート空調装置1は、冷房モードにおいて、第1送風機30の送風量を調整することで、蒸発器24における冷媒の吸熱量を調整することができる。
又、冷房モードで第2送風機31を作動させると、図7に示すように、空気は温風用通気口12→凝縮器22→温風側通風路17→温風排気用開口37→排気用空間57A→第2送風機31→排気口16の順に流れる。これにより、凝縮器22の温熱で加熱された温風WAは、排気口16から空調対象空間の外部へ送風される。
尚、冷房モードにおいて、冷風排気用開口42は、排気用スライドドア47によって閉塞されている。従って、この場合、第2送風機31により、冷風用通気口13→蒸発器24→冷風側通風路18→冷風排気用開口42という空気の流れが生じることはない。
当該シート空調装置1の冷房モードにおいて、温風WAは、第2送風機31により送風される空気を、凝縮器22における高圧冷媒の熱で加熱して生成される。即ち、冷凍サイクル装置20の凝縮器22における冷媒の放熱量は、第2送風機31による送風量の影響を大きく受ける。換言すると、当該シート空調装置1は、冷房モードにおいて、第2送風機31の送風量を調整することで、凝縮器22における冷媒の放熱量を調整することができる。
このように、当該シート空調装置1は、蒸発器24にて冷却された冷風CAを、第1送風機30により供給口14から後席シートSBの空調対象空間に供給すると共に、凝縮器22で加熱された温風WAを、第2送風機31により排気口16から排気することができる。即ち、当該シート空調装置1は、後席シートSBの空調対象空間に冷風CAを供給する冷房モードを実現することができる。
そして、当該シート空調装置1によれば、冷房モードにおいて、第1送風機30の送風量を調整することで、蒸発器24における冷媒の吸熱量を調整することができ、第2送風機31の送風量を調整することで、凝縮器22における冷媒の放熱量を調整することができる。
これにより、当該シート空調装置1は、冷房モードに際して、凝縮器22における冷媒の放熱量と、蒸発器24における冷媒の吸熱量を適切に調整することができ、冷凍サイクル装置20をバランスさせやすく、安定して作動させることができる。
尚、冷房モードにおける第1送風機30は、空調対象空間に空調風を供給する為の供給用送風機であると同時に、冷風CAを送風する為の冷風用送風機として機能する。即ち、第1送風機30は、凝縮器22及び蒸発器24の少なくとも一方として、蒸発器24を介して空気を吸い込んでいる。
そして、この場合における第2送風機31は、空調対象空間の外部へ送風する為の排気用送風機であると同時に、温風WAを送風する為の温風用送風機として機能している。つまり、第2送風機31は、凝縮器22及び蒸発器24の少なくとも他方として、凝縮器22を介して空気を吸い込んでいる。
次に、暖房モードにおけるシート空調装置1の作動について、図8〜図10を参照しつつ説明する。暖房モードにおいて、空調制御装置100は、供給用スライドドア46で冷風供給用開口41を閉塞すると共に、排気用スライドドア47で温風排気用開口37を閉塞した状態に、温風用切替部35及び冷風用切替部40を制御する。
図9に示すように、暖房モードで第1送風機30を作動させると、空気は温風用通気口12→凝縮器22→温風側通風路17→温風供給用開口36→供給用空間56A→第1送風機30→供給口14の順で流れる。これにより、凝縮器22の温熱で加熱された温風WAが供給口14から後席シートSBの空調対象空間に供給される。
尚、暖房モードにおいては、冷風供給用開口41は、供給用スライドドア46によって閉塞されている。この為、第1送風機30により、冷風用通気口13→蒸発器24→冷風側通風路18→冷風供給用開口41という空気の流れが生じることはない。
従って、当該シート空調装置1の暖房モードにおいて、温風WAは、第1送風機30により送風される空気を、凝縮器22における高圧冷媒の熱で加熱して生成される。即ち、冷凍サイクル装置20の凝縮器22における冷媒の放熱量は、第1送風機30による送風量の影響を大きく受けることになる。換言すると、当該シート空調装置1は、暖房モードにおいて、第1送風機30の送風量を調整することで、凝縮器22における冷媒の放熱量を調整することができる。
又、暖房モードで第2送風機31を作動させると、図10に示すように、空気は冷風用通気口13→蒸発器24→冷風側通風路18→冷風排気用開口42→排気用空間57A→第2送風機31→排気口16の順に流れる。これにより、蒸発器24の冷熱で冷却された冷風CAが排気口16から空調対象空間の外部へ送風される。
尚、暖房モードにおいて、温風排気用開口37は、排気用スライドドア47によって閉塞されている。この為、第2送風機31により、温風用通気口12→凝縮器22→温風側通風路17→温風排気用開口37という空気の流れが生じることはない。
従って、当該シート空調装置1の暖房モードにおいて、冷風CAは、第2送風機31により送風される空気を、蒸発器24における低圧冷媒で吸熱して生成される。即ち、冷凍サイクル装置20の蒸発器24における冷媒の吸熱量は、第2送風機31による送風量の影響を大きく受ける。換言すると、当該シート空調装置1は、暖房モードにおいて、第2送風機31の送風量を調整することで、蒸発器24における冷媒の吸熱量を調整することができる。
このように、当該シート空調装置1は、凝縮器22にて加熱された温風WAを、第1送風機30により供給口14から空調対象空間に供給すると共に、蒸発器24で冷却された冷風CAを、第2送風機31により排気口16から送風することができる。即ち、当該シート空調装置1は、空調対象空間であるシートに温風WAを供給する暖房モードを実現することができる。
そして、当該シート空調装置1によれば、暖房モードにおいて、第1送風機30の送風量を調整することで、凝縮器22における冷媒の放熱量を調整することができ、第2送風機31の送風量を調整することで、蒸発器24における冷媒の吸熱量を調整することができる。
これにより、当該シート空調装置1は、暖房モードに際して、凝縮器22における冷媒の放熱量と、蒸発器24における冷媒の吸熱量を適切に調整することができ、冷凍サイクル装置20をバランスさせやすく、安定して作動させることができる。
尚、暖房モードにおける第1送風機30は、空調対象空間に空調風を供給する為の供給用送風機であると同時に、温風WAを送風する為の温風用送風機として機能する。即ち、第1送風機30は、凝縮器22及び蒸発器24の少なくとも一方として、凝縮器22を介して空気を吸い込んでいる。
そして、この場合における第2送風機31は、空調対象空間の外部へ送風する為の排気用送風機であると同時に、冷風CAを送風する為の冷風用送風機として機能している。つまり、第2送風機31は、凝縮器22及び蒸発器24の少なくとも他方として、蒸発器24を介して空気を吸い込んでいる。
次に、車室用空調システムASを構成する室内空調装置60の具体的構成について、図11を参照しつつ説明する。上述したように、当該室内空調装置60は、ハイブリッド車両の車室Cを全体にわたって空調する為の空調装置であり、前席側空調ユニット61と、後席側空調ユニット72とを有している。室内空調装置60は熱負荷低減部に相当する。
前席側空調ユニット61は、車室Cの前方側における計器盤の内部に配置された前席側ケーシング62を有している。当該前席側ケーシング62は、前席側空調ユニット61において、車室Cの前方側から空調風Aを供給する為の空気通路を形成しており、前席側第1室内熱交換器63、前席側ヒータコア64、前席側第2室内熱交換器65等を内部に収容している。
前席側第1室内熱交換器63は、車室側冷凍サイクル82を循環する低圧冷媒と、車室Cの内部へ送風される送風空気とを熱交換させる為の熱交換器である。そして、前席側ヒータコア64は、高温熱媒体の熱により送風空気を加熱する為の放熱器である。前席側第2室内熱交換器65は、車室側冷凍サイクル82を循環する高圧冷媒と、車室Cの内部へ送風される送風空気とを熱交換させる為の熱交換器である。
尚、前席側ヒータコア64における高温熱媒体としては、ハイブリッド車両のエンジン等の構成機器で発生した排熱を回収した冷却水や、冷凍サイクルにおける高圧冷媒等を用いることができる。
図11に示すように、前席側ケーシング62の内部における空気流れ上流側から、前席側第1室内熱交換器63、前席側ヒータコア64及び前席側第2室内熱交換器65の順に並んでいる。
又、前席側ヒータコア64の空気流れ上流側には、前席側エアミックスドア66が回動可能に配置されている。当該前席側エアミックスドア66は、前席側ヒータコア64及び前席側第2室内熱交換器65を通過して加熱され、車室Cの内部へ流れる温風量と、前席側ヒータコア64及び前席側第2室内熱交換器65を迂回して車室Cの内側へ流れる冷風量とを調節する機能を果たす。
従って、前席側空調ユニット61から車室Cの内部に吹き出される空調風Aの温度は、前席側エアミックスドア66の開度(即ち、温風量と冷風量との風量割合)を調節することで制御される。
そして、前席側ケーシング62には、前席側送風機67と、内外気切替箱68が配置されている。内外気切替箱68は、前席側ケーシング62の内部の空気通路に対して、車室Cの内部の空気(内気)と、車室Cの外部の空気(外気)とを切替導入する内外気切替部である。
当該内外気切替箱68は、車室Cの内部と連通する内気導入口69と、車室Cの外部と連通する外気導入口70と、切替ドア71を有している。切替ドア71は、内外気切替箱68の内部において回転自在に配置されており、図示しないサーボモータによって駆動される。
内外気切替箱68は、切替ドア71を駆動して、内気導入口69より内気IA(車室内空気)を導入する内気モード、外気導入口70より外気OA(車室外空気)を導入する外気モード等に切り替えることができる。つまり、内外気切替箱68は、前席側ケーシング62を通過して車室Cへ供給される空気に関して、内気量と外気量を調整することができる。
そして、内外気切替箱68に対する空気流れ下流側には、前席側送風機67が配置されている。前席側送風機67は、遠心多翼ファンを電動モータにより駆動し、車室Cの内部に向かって空気を送風する。前席側送風機67は、空調制御装置100による電動モータの駆動制御を行うことで、前席側空調ユニット61から車室C内への送風量を調整することができる。
そして、図1に示すように、後席側空調ユニット72は、車室Cの最後部(例えば、トランクルームやラゲッジスペース等)に配置された後席側ケーシング73を有している。当該後席側ケーシング73は、後席側空調ユニット72において、車室Cの後方側から空調風Aを供給する為の空気通路を形成しており、後席側室内熱交換器74、後席側ヒータコア75等を内部に収容している。
後席側室内熱交換器74は、車室側冷凍サイクル82を循環する冷媒と、後席側空調ユニット72から車室Cの内部へ供給される空気とを熱交換させる熱交換器である。後席側ヒータコア75は、後席側ケーシング73における空気流れ下流側に配置されており、室内空調装置60における高温熱媒体の熱を、後席側空調ユニット72から車室Cの内部へ供給される空気に放熱させる放熱器である。
尚、後席側ヒータコア75における高温熱媒体としては、前席側ヒータコア64と同様に、ハイブリッド車両のエンジン等の構成機器で発生した排熱を回収した冷却水や、冷凍サイクルにおける高圧冷媒等を用いることができる。当該高温熱媒体は、前席側ヒータコア64における高温熱媒体と同じであっても良いし、前席側ヒータコア64とは異なる高温熱媒体であってもよい。
そして、後席側ケーシング73の内部においては、後席側エアミックスドア76が後席側ヒータコア75に対する空気流れ上流側に回動可能に配置されている。後席側エアミックスドア76は、後席側ヒータコア75を通過して加熱され車室Cへ流れる温風量と、後席側ヒータコア75を迂回して車室Cへ流れる冷風量とを調節する機能を果たす。
後席側空調ユニット72には、後席側送風機77と、後席側吸込口78が配置されている。後席側送風機77は、後席側ケーシング73の内部に配置されており、遠心多翼ファンを電動モータにより駆動して空気を送風する。後席側送風機77は、空調制御装置100による電動モータの駆動制御を行うことで、後席側空調ユニット72から車室C内への送風量を調整できる。
後席側ケーシング73において、後席側送風機77に対する空気流れ上流側には、後席側吸込口78が配置されている。当該後席側吸込口78は、後席側ケーシング73の内部と車室Cの内部とを連通している。従って、後席側空調ユニット72は、後席側送風機77の作動に伴って、後席側吸込口78から後席側ケーシング73の外部の空気を吸い込むことができる。
そして、後席側ケーシング73の内部における空気流れ下流側には、第1吹出口79、第2吹出口80、及び風量調整ドア81が配置されている。第1吹出口79及び第2吹出口80は、後席側ケーシング73の内部と、車室Cの内部とを連通しており、後席側空調ユニット72から車室Cの内部へ空調風Aが供給される開口部である。
第1吹出口79と第2吹出口80は、後席側ケーシング73における異なる位置に配置されている。例えば、第1吹出口79は、後席側ケーシング73の前面側に配置されており、第2吹出口80は、後席側ケーシング73の上面側に配置されている。
図1に示すように、本実施形態に係る車室用空調システムASにおいて、供給ダクト90の端部が第1吹出口79に接続されている。従って、後席側空調ユニット72は、後席側送風機77を作動に伴って、車室側冷凍サイクル82で温度調整された空調風Aを、第1吹出口79及び供給ダクト90を介して、シート空調装置1へ供給することができる。
そして、風量調整ドア81は、第1吹出口79及び第2吹出口80に対する空気流れ上流側に回動可能に配置されており、第1吹出口79又は第2吹出口80を閉塞することができる。当該風量調整ドア81は、図示しないサーボモータによって駆動され、第1吹出口79の開口面積と、第2吹出口80の開口面積を調整することができる。
即ち、風量調整ドア81は、後席側空調ユニット72から吹き出される空調風Aの風量に関して、第1吹出口79側における風量と、第2吹出口80側からの風量を調節することができ、第1吹出口79、第2吹出口80の何れか一方から吹き出すように切り替えることができる。
当該車室用空調システムASにおいて、室内空調装置60に係る後席側空調ユニット72は、シート空調装置1の空調動作における冷凍サイクル装置20の熱負荷を低減する運転モードと、車室Cの内部を全体的に空調する運転モードと、シート空調装置1の空調動作における熱負荷の低減と全体空調の両者を並行して実行する運転モードを切り替えて実現することができる。
次に、室内空調装置60で温度調整を行う為の車室側冷凍サイクル82の具体的構成について、図11を参照しつつ説明する。
車室側冷凍サイクル82は、いわゆる蒸気圧縮式の冷凍サイクルであり、室内空調装置60を構成する前席側空調ユニット61及び後席側空調ユニット72にわたって配置されている。車室側冷凍サイクル82は温度調整部に相当する。
図11に示すように、当該車室側冷凍サイクル82は、上述した前席側第1室内熱交換器63、前席側第2室内熱交換器65、後席側室内熱交換器74に加えて、圧縮機83、室外熱交換器84、第1減圧部85A〜第3減圧部85C、気液分離器86、内部熱交換器87、四方弁88、第1電磁弁88A〜第3電磁弁88Cを有している。
尚、車室側冷凍サイクル82を循環する冷媒として、冷凍サイクル装置20と同様に、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(例えば、R1234yf)や自然冷媒(例えば、R744)等を採用してもよい。更に、冷媒には圧縮機83を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
圧縮機83は、車室側冷凍サイクル82を循環する冷媒を吸入し圧縮して吐出する。当該車室側冷凍サイクル82においては、圧縮機83の作動によって冷媒がサイクルを循環する。室外熱交換器84は室外空気と、車室側冷凍サイクル82を循環する冷媒とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器84は、車室側冷凍サイクル82における冷媒回路を切り替えることで、放熱器又は吸熱器として機能する。
図11に示すように、前席側第1室内熱交換器63、前席側第2室内熱交換器65、後席側室内熱交換器74は、内部熱交換器87と四方弁88の間において、相互に並列に接続されている。
そして、第1減圧部85A〜第3減圧部85Cは、車室側冷凍サイクル82における高圧冷媒を等エンタルピ的に減圧膨張させるものであり、例えば、膨張弁によって構成される。第1減圧部85Aは、前席側第1室内熱交換器63に接続された冷媒配管に配置されており、当該冷媒配管を流れる冷媒を減圧させる為の減圧部である。
そして、第2減圧部85Bは、後席側室内熱交換器74に接続された冷媒配管に配置されており、当該冷媒配管を流れる冷媒を減圧させる為の減圧部である。第3減圧部85Cは、前席側第2室内熱交換器65に接続された冷媒配管に配置されており、当該冷媒配管を流れる冷媒を減圧させる為の減圧部である。
気液分離器86は、当該気液分離器86を通過する冷媒を、気相冷媒と液相冷媒に分離して、サイクルの余剰冷媒を液相冷媒として貯える。気液分離器86は、圧縮機83の吸入配管側に配置されている為、圧縮機83に対して気相冷媒を確実に供給することができる。
そして、内部熱交換器87は、圧縮機83に吸入される低圧冷媒と、車室側冷凍サイクル82を流れる高圧冷媒とを熱交換させる。内部熱交換器87は、その内部における熱交換によって、第1減圧部85A、第2減圧部85Bに流入する冷媒のエンタルピを低下させることができる。
四方弁88は、車室側冷凍サイクル82における冷媒回路を切り替える為の回路切替部を構成する。当該四方弁88は、4つの冷媒流出入口を有しており、それぞれ冷媒配管が接続されている。
具体的には、四方弁88の冷媒流出入口には、圧縮機83の吐出配管、室外熱交換器84に接続された冷媒配管、気液分離器86に接続された冷媒配管、前席側第1室内熱交換器63等に並列接続された冷媒配管が接続されている。
四方弁88は、4本の冷媒配管の接続態様を切り替えることで、車室側冷凍サイクル82の冷媒回路を切り替え、室内空調装置60における冷房、暖房等の空調モードを切り替えることができる。具体的には、四方弁88は、圧縮機83から吐出した冷媒を室外熱交換器84側に流す場合と前席側第2室内熱交換器65及び後席側室内熱交換器74側に流す場合とを切り替えることができる。
図11に示すように、第1減圧部85Aの流出入口には、第1電磁弁88Aが接続されている。第1電磁弁88Aは、第1減圧部85Aが配置された冷媒通路を開閉する開閉弁である。又、第2減圧部85Bの流出入口には、第2電磁弁88Bが接続されている。当該第2電磁弁88Bは、第2減圧部85Bが配置された冷媒通路を開閉する。
そして、第3減圧部85Cの流出入口側には、第3電磁弁88Cが接続されている。第3電磁弁88Cは、第3減圧部85Cが配置された冷媒通路を開閉する。当該車室側冷凍サイクル82においては、第1電磁弁88A〜第3減圧部85Cの開閉制御を行うことで、冷媒回路を切り替えることができる。つまり、第1電磁弁88A〜第3電磁弁88Cは、四方弁88と同様に回路切替部を構成する。
続いて、当該室内空調装置60における冷房モード時の作動について説明する。この場合、空調制御装置100によって、第1電磁弁88A、第2電磁弁88Bが開状態に制御され、第3電磁弁88Cが閉状態に制御される。又、四方弁88についても圧縮機83からの吐出冷媒が室外熱交換器84に流入するように制御される。
これにより、室内空調装置60が冷房モードである場合には、車室側冷凍サイクル82における冷媒は、圧縮機83→四方弁88→室外熱交換器84→内部熱交換器87の順に流れ、第1減圧部85A側の冷媒流路と、第2減圧部85B側の冷媒流路に分岐する。
第1減圧部85A側の冷媒流路では、冷媒は、第1減圧部85A→第1電磁弁88A→前席側第1室内熱交換器63の順に流れる。又、第2減圧部85B側の冷媒流路では、冷媒は、第2減圧部85B→第2電磁弁88B→後席側室内熱交換器74の順に流れる。
前席側第1室内熱交換器63から流出した冷媒は、後席側室内熱交換器74から流出した冷媒と合流する。合流した冷媒は、四方弁88→気液分離器86→内部熱交換器87の順に流れ、再び圧縮機83に吸入される。
この冷房モードによれば、車室側冷凍サイクル82にて、第1減圧部85Aで減圧された低圧冷媒の冷熱で、前席側ケーシング62を流れる空気を冷却することができる。従って、前席側空調ユニット61は、車室側冷凍サイクル82にて冷却された空調風Aを、車室Cの内部に供給することができる。
そして、当該車室側冷凍サイクル82では、第2減圧部85Bで減圧された低圧冷媒の冷熱で、後席側ケーシング73を流れる空気を冷却することができる。従って、後席側空調ユニット72は、車室側冷凍サイクル82にて冷却された空調風Aを、車室Cの内部に供給することができる。
又、冷房モードにおける車室側冷凍サイクル82では、室外熱交換器84は、放熱器として機能しており、車室側冷凍サイクル82の高圧冷媒の温熱を、車室Cの外部の室外空気に放熱している。
尚、この冷媒回路の状態で、前席側ヒータコア64、後席側ヒータコア75に対する高温熱媒体の流入を許容することで、前席側空調ユニット61の除湿暖房モードと、後席側空調ユニット72の除湿暖房モードを夫々個別に実現することができる。
前席側空調ユニット61の除湿暖房モードでは、前席側ヒータコア64に対して高温熱媒体を供給することで、前席側第1室内熱交換器63で冷却された空気を、前席側ヒータコア64の温熱で温めることができ、除湿暖房された空調風Aを供給することができる。この時、前席側エアミックスドア66の作動を制御することで、除湿暖房された空調風Aの温度を所望の温度に調整することができる。
そして、後席側空調ユニット72の除湿暖房モードにおいて、後席側ヒータコア75に対して高温熱媒体を供給することで、後席側室内熱交換器74で冷却された空気を、後席側ヒータコア75の温熱で温めることができ、除湿暖房された空調風Aを供給することができる。この場合において、後席側エアミックスドア76の作動を制御することで、除湿暖房された空調風Aの温度を所望の温度に調整することができる。
次に、当該室内空調装置60における暖房モード時の作動について説明する。暖房モードの場合、空調制御装置100によって、第2電磁弁88B、第3電磁弁88Cが開状態に制御され、第1電磁弁88Aが閉状態に制御される。又、四方弁88についても圧縮機83からの吐出冷媒が前席側第2室内熱交換器65及び後席側室内熱交換器74に流入するように制御される。
これにより、室内空調装置60が冷房モードである場合には、車室側冷凍サイクル82における冷媒は、圧縮機83→四方弁88の順に流れ、後席側室内熱交換器74側の冷媒流路と、前席側第2室内熱交換器65側の冷媒流路に分岐する。
後席側室内熱交換器74側の冷媒流路では、冷媒は、後席側室内熱交換器74→第2電磁弁88B→第2減圧部85Bの順に流れる。又、前席側第2室内熱交換器65側の冷媒流路では、冷媒は、前席側第2室内熱交換器65→第3電磁弁88C→第3減圧部85Cの順に流れる。
そして、第2減圧部85Bから流出した冷媒は、第3減圧部85Cから流出した冷媒と合流する。合流した冷媒は、内部熱交換器87→室外熱交換器84→四方弁88→気液分離器86→内部熱交換器87の順に流れ、再び圧縮機83に吸入される。
この暖房モードによれば、車室側冷凍サイクル82にて、圧縮機83から流出した高圧冷媒の温熱が前席側第2室内熱交換器65で放熱されるので、前席側ケーシング62を流れる空気を加熱することができる。従って、前席側空調ユニット61は、車室側冷凍サイクル82にて加熱された空調風Aを、車室Cの内部に供給することができる。
そして、当該車室側冷凍サイクル82では、圧縮機83から流出した高圧冷媒の温熱が後席側室内熱交換器74で放熱されるので、後席側ケーシング73を流れる空気を加熱することができる。従って、後席側空調ユニット72は、車室側冷凍サイクル82にて加熱された空調風Aを、車室Cの内部に供給することができる。
ここで、暖房モードにおける車室側冷凍サイクル82では、室外熱交換器84は、吸熱器として機能しており、室外空気の熱を車室側冷凍サイクル82の低圧冷媒に吸熱している。
次に、本実施形態に係る車室用空調システムASの供給ダクト90について、詳細に説明する。図1に示すように、当該シート空調装置1と、室内空調装置60の後席側空調ユニット72の間に、供給ダクト90が配置されている。
本実施形態における供給ダクト90の一端部は、シート空調装置1の第1吹出口79に対して接続されている。従って、室内空調装置60の後席側空調ユニット72にて温度調整された空調風Aは、第1吹出口79から供給ダクト90の内部に流入する。
そして、当該供給ダクト90の流路上には、供給風量調整部91が配置されている。供給風量調整部91は、一つの流入口と二つの流出口を有しており、一つの流入口には、供給ダクト90を介して第1吹出口79が接続されている。
供給風量調整部91の流出口の一方には、温風用通気口12側に伸びる供給ダクト90が接続されており、供給風量調整部91における流出口の他方には、冷風用通気口13側に伸びる供給ダクト90が接続されている。
上述したように、供給風量調整部91は、第1吹出口79からの空調風Aについて、温風用通気口12に供給される空調風Aの風量と、冷風用通気口13に供給される空調風Aの風量のバランスを調整することができる。
そして、当該供給ダクト90の他端部の一方は、シート空調装置1の温風用通気口12に対して取り付けられており、供給ダクト90の他端部の他方は、シート空調装置1の冷風用通気口13に対して取り付けられている。
従って、供給ダクト90を流れた空調風Aは、温風用通気口12、冷風用通気口13からシート空調装置1の筐体10の内部へ導かれる。つまり、供給ダクト90は供給流路部として機能する。
ここで、当該供給ダクト90の他端部は、温風用通気口12、冷風用通気口13の周辺に配置されており、温風用通気口12、冷風用通気口13との間に間隔を設けた状態で固定されている。この為、温風用通気口12、冷風用通気口13は、供給ダクト90からの空調風Aだけでなく、車室C内の空気を吸い込むことができる。
尚、供給ダクト90の他端部は、シート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13に対して空調風Aを流入させることができれば、温風用通気口12、冷風用通気口13に対する取付方法を適宜変更することができる。例えば、供給ダクト90の他端部を、温風用通気口12、冷風用通気口13に対して、それぞれ直接接続して固定しても良い。
又、当該供給ダクト90は、その長さが伸縮可能に構成されており、例えば、蛇腹状に構成されたフレキシブルダクト(いわゆる、蛇腹ダクト)である。従って、車室C内にて後席シートSBが前後方向にスライド移動した場合であっても、供給ダクト90が伸縮することになる。
この結果、第1吹出口79に対する供給ダクト90の一端部の位置や、温風用通気口12、冷風用通気口13に対する供給ダクト90の他端部の位置を維持することができ、第1吹出口79から温風用通気口12、冷風用通気口13へ空調風Aを安定して導くことができる。
当該車室用空調システムASによれば、後席側空調ユニット72の第1吹出口79からの空調風Aを、供給ダクト90を介してシート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13に導くことができるので、シート空調装置1の空調運転に関する熱負荷を低減することが可能となる。
続いて、車室用空調システムASの制御系について、図12を参照しつつ説明する。図12に示すように、車室用空調システムASは、当該車室用空調システムASの各構成機器を制御する為の空調制御装置100を有している。
当該空調制御装置100は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、空調制御装置100は、そのROMに記憶された制御プログラムに基づいて各種演算処理を行い、各構成機器の作動を制御する。
空調制御装置100の出力側には、車室用空調システムASにおける制御対象機器として、シート空調装置1と、室内空調装置60が接続されている。具体的に説明すると、空調制御装置100の出力側には、シート空調装置1の構成機器として、圧縮機21と、第1送風機30と、第2送風機31と、駆動モータ50とが接続されている。
従って、当該空調制御装置100は、シート空調装置1の空調動作を制御することができ、圧縮機21による冷媒吐出性能(例えば、冷媒圧力)や、第1送風機30の送風性能(例えば、送風量)、第2送風機31の送風性能を状況に応じて調整することができる。
又、空調制御装置100は、シート空調装置1における駆動モータ50の作動を制御することで、温風用切替部35、冷風用切替部40における冷風CA、温風WAの風量バランスを調整することができる。即ち、当該空調制御装置100は、シート空調装置1における運転モードを、冷房モード、暖房モード、エアミックスモードの何れかに変更することができる。
図12に示すように、当該空調制御装置100の出力側には、室内空調装置60の構成機器として、前席側エアミックスドア66、前席側送風機67、切替ドア71、後席側エアミックスドア76、後席側送風機77、風量調整ドア81、圧縮機83、四方弁88、第1電磁弁88A、第2電磁弁88B、第3電磁弁88C、供給風量調整部91が接続されている。
従って、当該空調制御装置100は、室内空調装置60における空調動作を制御することができる。具体的には、空調制御装置100は、前席側空調ユニット61における空調動作や、後席側空調ユニット72における空調動作を実現することができる。
尚、供給風量調整部91は、サーボモータにて作動する調整用ドア部材を流路上に有している。従って、空調制御装置100は、供給風量調整部91の作動を制御することで、シート空調装置1の温風用通気口12側へ供給される空調風Aの風量と、冷風用通気口13側へ供給される空調風Aの風量のバランスを調整することができる。
そして、当該供給風量調整部91は、温風用通気口12側又は冷風用通気口13側の何れか一方への流れを遮断することで、温風用通気口12側又は冷風用通気口13側の何れか他方に対して、供給ダクト90を介して空調風Aを供給する状態を実現することが可能である。
そして、当該空調制御装置100の入力側には、操作パネル101と、複数種類の空調センサが接続されている。操作パネル101は、車室用空調システムASの作動を制御する為に、乗員Pによる種々の操作に用いられる。例えば、操作パネル101を用いて、シート空調装置1の空調モードや、前席側空調ユニット61、後席側空調ユニット72の空調モードを指示する操作等が行われる。
空調制御装置100に接続された空調センサは、冷媒圧力センサ102と、内気温度センサ103と、内気湿度センサ104と、外気温度センサ105と、外気湿度センサ106と、吸込温度センサ107とを有している。
冷媒圧力センサ102は、車室側冷凍サイクル82における高圧冷媒の圧力を検出する為の検出部である。内気温度センサ103は、車室Cの内部における内気の温度を検出する為の検出部である。そして、内気湿度センサ104は、車室Cの内気の湿度を検出する為の検出部である。
外気温度センサ105は、車室Cの外部における外気の温度を検出する為の検出部である。又、外気湿度センサ106は、車室Cの外部における外気の湿度を検出する為の検出部である。
吸込温度センサ107は、シート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13から吸い込まれる空調風Aの温度を検出する検出部である。本実施形態において、吸込温度センサ107は、シート空調装置1における温風用通気口12及び冷風用通気口13の開口縁に配置されている。
尚、空調制御装置100は、その出力側に接続された各種制御機器を制御する制御部(換言すると、制御装置)が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御機器の作動を制御する構成(ハードウェア及びソフトウェア)が、それぞれの制御機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、空調制御装置100のうち、シート空調装置1の作動を制御する構成がシート空調制御部100Aを構成している。そして、空調制御装置100のうち、室内空調装置60の前席側空調ユニット61の作動を制御する構成が前席側空調制御部100Bを構成している。
空調制御装置100のうち、室内空調装置60の後席側空調ユニット72の作動を制御する構成が後席側空調制御部100Cを構成している。空調制御装置100のうち、吸込温度センサ107の検出結果を用いて吸込負荷を特定する構成が吸込負荷特定部100Dを構成している。吸込負荷は、シート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13から吸い込まれる空調風Aを対象とした場合における冷凍サイクル装置20の空調熱負荷を意味する。
又、空調制御装置100のうち、シート空調装置1の空調動作の初期段階において、吸込負荷と、車室C内の空気に関する熱負荷とを用いて予め定められた負荷条件を満たすか否かを判定する構成が条件判定部100Eを構成している。車室C内の空気に関する熱負荷とは、車室C内の空気を対象とした場合における冷凍サイクル装置20の空調熱負荷を意味する。
そして、空調制御装置100のうち、シート空調装置1の作動によって、車室C内の空気を循環させる循環運転を実行させる構成が循環運転制御部100Fを構成する。この循環運転の詳細については後述する。
図12に示すように構成することで、車室用空調システムASは、シート空調装置1によって後席シートSBの空調対象空間に対する個別の空調を実現すると同時に、室内空調装置60による車室C全体を対象とした空調を実現することができる。
次に、上述のように構成された車室用空調システムASの制御内容について、図13を参照しつつ説明する。
図13に示すフローチャートは、シート空調装置1の空調運転に関して、効率よく、迅速に空調対象空間の快適性を向上させる為の制御内容を示しており、制御プログラムとして空調制御装置100によって実行される。
ここで、図1に示すように、当該シート空調装置1の筐体10は、後席シートSBの座面部と車室床面Fの間に配置されている。この為、シート空調装置1の空調運転の際に、車室C内の空気としては、座面部と車室床面Fの間の空気が筐体10内に吸い込まれる。シートの座面部と車室床面Fの間は、車室C内において空気が滞留しやすい部分であり、車室C内の平均的な温度と異なっている場合がある。
そうすると、後席シートSBの座面部と車室床面Fの間の空気が、シート空調装置1の空調運転に適しておらず、シート空調装置1にて所望の快適温度に調整できない場合がある。
例えば、シート空調装置1の空調初期段階であるクールダウン作動時において、後席シートSBの座面部と車室床面Fの間の空気の温度がシート空調装置1の作動温度範囲以上である場合には、シート空調装置1にて、クールダウン時の快適温度を作ることができないことが想定される。
又、空調初期段階であるウォームアップ作動時において、後席シートSBの座面部と車室床面Fの間の空気の温度がシート空調装置1の作動温度範囲以下である場合には、シート空調装置1にて、ウォームアップ時に係る快適温度を作ることができないことが想定される。
即ち、当該車室用空調システムASにおいては、空調初期段階において、後席シートSBの座面部と車室床面Fの間の空気の温度が条件を満たすようになるまでは、乗員Pの快適性を充分に高めることができない状態が想定される。
換言すると、車室用空調システムASでは、空調初期段階において、乗員Pの快適性を向上させる為には、或る程度の時間を要する場合があり、乗員Pの要望に十分に応えられていない側面があった。
図13に示す制御内容は、これらの点を改善する為に実行される制御プログラムであって、空調制御装置100のROMに格納されている。CPUによって読み出される。当該制御プログラムは、車室用空調システムASの電源投入に伴って実行される。この開始時点において、室内空調装置60の空調運転が行われていても良いし、停止した状態であっても良い。
図13に示すように、ステップS1では、先ず、車室用空調システムASにおける空調運転が開始されたか否かが判定される。ステップS1の判定処理は、例えば、操作パネル101からの操作信号に基づいて実行される。車室用空調システムASにおける空調運転が開始されている場合は、ステップS2に移行し、そうでない場合は処理を待機する。
ステップS2においては、車室用空調システムASにおける空調運転に関し、運転モードが冷房モードであるか否かが判定される。冷房モードである場合には処理はステップS3に移行し、そうでない場合はステップS6に移行する。
尚、このステップS2の判定処理は、例えば、操作パネル101にて設定された運転モードの情報を参照して判断しても良いし、シート用ダクトDにおける吹出温度、車室C内の温度、車室C外の温度を用いて判断することができる。
ステップS3では、シート空調装置1の吸込負荷が冷房設定値よりも大きいか否かが判定される。ここで、当該吸込負荷は、温風用通気口12、冷風用通気口13から吸い込まれる空気のエンタルピを指標としており、吸込温度センサ107の検出結果を用いて算出される。
尚、吸込温度センサ107から吸込負荷を算出する際の空調制御装置100は、吸込負荷特定部100Dとして機能している。吸込負荷として、吸込空気のエンタルピを算出していたが、吸込負荷を示す指標として、吸込空気の温度を用いてもよい。
そして、冷房設定値とは、温風用通気口12、冷風用通気口13から吸い込まれる吸込負荷に関して、シート空調装置1から空調対象空間へ冷風CAを供給可能な閾値を示している。冷房設定値は、シート空調装置1の作動温度範囲における上限値に相当する吸込負荷を示す。
吸込負荷が冷房設定値よりも大きい場合、ステップS4に移行する。そうでない場合には、処理をステップS5に移行する。このステップS3の判定処理を行う際の空調制御装置100は、条件判定部100Eとして機能している。
そして、ステップS3からステップS4に移行する場合には、例えば、車室用空調システムASがクールダウン制御を行っている場合が含まれる。この場合、室内空調装置60から低温状態の空調風Aが車室C内に吹き出されることはない為、車室Cの温度は高い状態にある。特に、シート空調装置1の筐体10の配置されているシートの下部は、空気の流れが滞りやすい為、冷凍サイクル装置20の空調動作に関し熱負荷の高い状態となる。
ステップS4に移行すると、シート空調装置1の作動を制御して、循環運転を実行させる。具体的には、空調制御装置100は、シート空調装置1の作動を制御して、後席シートSBと車室床面Fの間を介して、車室C内の空気を循環させる循環運転を実行する。このステップS4を実行する際の空調制御装置100は、循環運転制御部100Fとして機能する。
具体的には、空調制御装置100は、シート空調装置1の冷凍サイクル装置20を停止させた状態で、第2送風機31を作動させる。これにより、シート空調装置1では、後席シートSBと車室床面Fの間の空気が、温風用通気口12、冷風用通気口13を介して、筐体10内部に吸い込まれ、排気口16から車室C内に排出される。
車室用空調システムASで循環運転を実行すると、後席シートSBの座面部と車室床面Fの間の空気が車室C内の空気と撹拌されることになり、吸込空気の温度を車室C内の空気における平均的な温度に調整することができる。即ち、循環運転によって、吸込負荷を車室C内の空気における平均的な熱負荷まで低下させることができる。
ステップS4において、循環運転は、例えば、吸込負荷が冷房設定値以下になるまで実行される。循環運転を終了すると、当該制御プログラムを終了する。その後、当該制御プログラムは、空調制御装置100によって周期的に実行される。
当該車室用空調システムASによれば、シート空調装置1の冷房運転を開始する前に、循環運転を実行することで、シート空調装置1の吸込負荷を、車室C内の平均程度まで低下させておくことができる。
従って、当該車室用空調システムASは、循環運転を実行しない場合に比較して、早い段階で、シート空調装置1による冷風CAを空調対象空間へ供給することができ、後席シートSBに座った乗員Pの快適性を向上させることができる。
そして、ステップS5においては、吸込負荷が冷房設定値以下である為、車室用空調システムASの冷房運転を実行する。具体的には、空調制御装置100は、シート空調装置1及び室内空調装置60を冷房モードで作動させる。
この時、室内空調装置60の後席側空調ユニット72では、少なくとも第1吹出口79から低温状態の空調風Aが吹き出されるように風量調整ドア81の作動が制御される。この結果、低温状態の空調風Aが、供給ダクト90を介して、シート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13へ供給される為、冷房時における冷凍サイクル装置20の熱負荷を低減することができる。
ここで、冷凍サイクル装置20における冷媒の状態に対して、ステップS5における空調風Aの供給が及ぼす影響について、図14、図15を参照しつつ説明する。図14は、冷房モード時におけるシート空調装置1の冷凍サイクル装置20に係るモリエル線図である。
図14にて、車室C内の空気を吸い込んで冷房運転した場合の高圧側冷媒圧力をPHで示し、この場合における低圧側冷媒圧力をPLで示している。そして、低温状態の空調風Aを吸い込んで冷房運転した場合の高圧側冷媒圧力をPHaで示しており、低圧側冷媒圧力をPLaで示している。
上述したように、温風用通気口12、冷風用通気口13に供給される空調風Aは、室内空調装置60の車室側冷凍サイクル82にて冷却された低温状態の空気である。この為、シート空調装置1の冷風用通気口13に供給されると、低温状態の空調風Aは、蒸発器24の内部を流通する低圧冷媒によって吸熱され、さらに低温に冷却される。
図14にモリエル線図で示すように、冷凍サイクル装置20の低圧側冷媒圧力は、冷風用通気口13に対して低温状態の空調風Aを供給することで、PLからPLaに低下することになる。
当該車室用空調システムASによれば、冷房モードにおいて、低温状態の空調風Aを冷風用通気口13から蒸発器24に供給することで、室内空調装置60で予め冷却された空調風Aを、蒸発器24で更に冷却することができる。即ち、当該車室用空調システムASは、シート空調装置1から空調対象空間へ供給される冷風CAの吹出温度を低下させることができる。
そして、室内空調装置60からシート空調装置1の温風用通気口12に供給されると、低温状態の空調風Aは、凝縮器22の内部を流通する高圧冷媒と熱交換する。冷凍サイクル装置20の高圧側冷媒圧力は、温風用通気口12に対して低温状態の空調風Aを供給することで、PHからPHaに低下することになる。
図14にモリエル線図で示すように、当該車室用空調システムASは、温風用通気口12に対して空調風Aを供給することで、冷房モードにおける冷凍サイクル装置20のCOPを向上させることができる。
又、冷房モードのシート空調装置1では、冷凍サイクル装置20の高圧側冷媒圧力が予め定められた圧力上限値ULよりも低い状態でなければ、冷房運転ができないように構成されている。
この点、当該車室用空調システムASによれば、低温状態の空調風Aを温風用通気口12に供給してサイクルの高圧側冷媒圧力を下げることができる為、高圧側冷媒圧力が圧力上限値ULよりも低下する時間を早めることができる。
図15にてグラフで示すように、高圧側冷媒圧力が圧力上限値ULに低下するまでの時間に関して、低温状態の空調風Aを温風用通気口12に供給した場合の時間taは、車室C内の空気を吸い込んだ場合の時間tよりも短くなる。
即ち、当該車室用空調システムASによれば、低温の空調風Aを温風用通気口12に供給することで、シート空調装置1における冷房運転の開始時期を早めることができ、より早い段階で、後席シートSBの空調対象空間における乗員Pの快適性を高めることができる。
その後、ステップS5における車室用空調システムASの冷房運転を終了すると、空調制御装置100は当該制御プログラムを終了する。空調制御装置100は、当該制御プログラムを周期的に実行する。
図13に示すように、ステップS2にて冷房モードでないと判定されると、ステップS6に移行する。当該ステップS6では、車室用空調システムASにおける空調運転に関して、運転モードが暖房モードであるか否かが判定される。尚、この判定処理は、ステップS2と同様の基準を用いて判定される。
暖房モードである場合には処理はステップS7に移行し、そうでない場合は、当該制御プログラムを終了する。そうでない場合に関しては、例えば、エアミックスモードを包含させても良い。
ステップS7においては、シート空調装置1の吸込負荷が暖房設定値よりも小さいか否かが判定される。ここで、当該吸込負荷は、ステップS3の場合と同様に、吸込温度センサ107の検出結果を用いて算出された吸込空気のエンタルピである。
そして、暖房設定値とは、温風用通気口12、冷風用通気口13から吸い込まれる吸込負荷に関して、シート空調装置1から空調対象空間へ温風WAを供給可能な閾値を示している。暖房設定値は、シート空調装置1の作動温度範囲における下限値に相当する吸込負荷を示す。
吸込負荷が暖房設定値よりも小さい場合、ステップS8に移行する。そうでない場合には、処理をステップS9に移行する。このステップS7の判定処理を行う際の空調制御装置100は、条件判定部100Eとして機能している。
そして、ステップS7からステップS8に移行する場合には、例えば、車室用空調システムASがウォームアップ制御を行っている場合が含まれる。この場合、室内空調装置60から高温状態の空調風Aが車室C内に吹き出されることはない為、車室Cの温度は低い状態にある。特に、シート空調装置1の筐体10の配置されているシートの下部は、空気の流れが滞りやすい為、冷凍サイクル装置20に対する熱負荷が低い状態となる。
ステップS8では、シート空調装置1の作動を制御して、循環運転を実行させる。具体的には、空調制御装置100は、ステップS4と同様に、シート空調装置1の作動を制御して、後席シートSBと車室床面Fの間を介して、車室C内の空気を循環させる循環運転を実行する。このステップS8を実行する際の空調制御装置100は、循環運転制御部100Fとして機能する。
具体的には、空調制御装置100は、シート空調装置1の冷凍サイクル装置20を停止させた状態で、第2送風機31を作動させる。これにより、シート空調装置1では、後席シートSBと車室床面Fの間の空気が、温風用通気口12、冷風用通気口13を介して、筐体10内部に吸い込まれ、排気口16から車室C内に排出される。
車室用空調システムASで循環運転を実行すると、後席シートSBの座面部と車室床面Fの間の空気が車室C内の空気と撹拌されることになり、吸込温度を車室C内の空気における平均的な温度に近づけることができる。即ち、循環運転によって、吸込負荷を車室C内の空気における平均的な熱負荷に近づけることができる。
ステップS8において、循環運転は、例えば、吸込負荷が暖房設定値以上になるまで実行される。循環運転を終了すると、当該制御プログラムを終了する。その後、当該制御プログラムは、空調制御装置100によって周期的に実行される。
当該車室用空調システムASによれば、シート空調装置1の暖房運転を開始する前に、循環運転を実行することで、シート空調装置1の吸込負荷を、車室C内の平均程度まで高めておくことができる。
従って、当該車室用空調システムASは、循環運転を実行しない場合に比較して、早い段階で、シート空調装置1による温風WAを空調対象空間へ供給することができ、後席シートSBに座った乗員Pの快適性を向上させることができる。
そして、ステップS9においては、吸込負荷が暖房設定値以上である為、車室用空調システムASの暖房運転を実行する。具体的には、空調制御装置100は、シート空調装置1及び室内空調装置60を暖房モードで作動させる。
この時、室内空調装置60の後席側空調ユニット72では、少なくとも第1吹出口79から高温状態の空調風Aが吹き出されるように風量調整ドア81の作動が制御される。この結果、高温状態の空調風Aが、供給ダクト90を介して、シート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13へ供給される為、暖房時における冷凍サイクル装置20の熱負荷を低減することができる。
ここで、冷凍サイクル装置20における冷媒の状態に対して、ステップS9における空調風Aの供給が及ぼす影響について、図16を参照しつつ説明する。図16は、暖房モード時におけるシート空調装置1の冷凍サイクル装置20に係るモリエル線図である。
図16では、車室C内の空気を吸い込んで暖房運転した場合の高圧側冷媒圧力をPHで示し、この場合における低圧側冷媒圧力をPLで示している。そして、高温状態の空調風Aを吸い込んで暖房運転した場合の高圧側冷媒圧力をPHaで示しており、低圧側冷媒圧力をPLaで示している。
上述したように、温風用通気口12、冷風用通気口13に供給される空調風Aは、室内空調装置60の車室側冷凍サイクル82にて加熱された高温状態の空気である。この為、高温状態の空調風Aを温風用通気口12に導入すると、凝縮器22は、高温状態の空調風Aに対して凝縮器22内の高圧冷媒の熱を放熱して、空調風Aを更に加熱する。
即ち、当該車室用空調システムASは、暖房モード時に、高温状態の空調風Aを温風用通気口12に供給することで、シート空調装置1から空調対象空間へ供給される温風WAの吹出温度を高めることができる。
一方、シート空調装置1の冷風用通気口13に供給されると、高温状態の空調風Aは、蒸発器24を流れる低圧冷媒と熱交換する。この結果、図16にモリエル線図で示すように、冷凍サイクル装置20の低圧側冷媒圧力は、冷風用通気口13に対して低温状態の空調風Aを供給することで、PLからPLaに上昇することになる。
即ち、当該車室用空調システムASによれば、暖房モードにて高温状態の空調風Aを冷風用通気口13に導入することで、暖房モードにおける冷凍サイクル装置20のCOPを向上させることができる。
又、暖房時にサイクルの低圧側冷媒圧力が上昇することは、圧縮機21における吸入冷媒密度が上がることを意味する。即ち、シート空調装置1の暖房モードにおいて、冷凍サイクル装置20を循環する冷媒流量が増大する為、車室用空調システムASは、シート空調装置1の暖房性能を向上させることができる。
この為、空調風Aを導入しない場合には、シート空調装置1の吹出温度が低すぎて、暖房モードで作動させることができない状況であっても、高温状態の空調風Aを導入することで、シート空調装置1の暖房運転を実行することが可能となる。
即ち、当該車室用空調システムASによれば、シート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13に高温状態の空調風Aを導入することで、車室C内の空気を導入する場合に比べて、早い段階で暖房運転を開始することができ、乗員Pの快適性を向上させることができる。
その後、ステップS9における車室用空調システムASの暖房運転を終了すると、空調制御装置100は当該制御プログラムを終了する。空調制御装置100は、当該制御プログラムを周期的に実行する。
以上説明したように、本実施形態に係る車室用空調システムASによれば、シート空調装置1の第1送風機30、第2送風機31で温風用通気口12、冷風用通気口13から筐体10の内部に吸い込まれた空気を、冷凍サイクル装置20にて温度調整して空調対象空間に供給することができ、シート空調装置1を用いて空調対象空間の快適性を向上させることができる。
そして、当該車室用空調システムASによれば、室内空調装置60の車室側冷凍サイクル82によって、シート空調装置1の熱負荷を低減させるように温度調整された空調風Aを、供給ダクト90を介してシート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13に導くことができるので、シート空調装置1による快適性の向上を、効率よく実現することができる。
又、当該車室用空調システムASによれば、暖房や冷房を含む空調動作の初期段階において、室内空調装置60を経た空調風Aを温風用通気口12、冷風用通気口13に導くことができ、シート空調装置1の熱負荷を低減させるように温度調整された空調風Aを用いて、冷凍サイクル装置20による温度調整が行われるので、より早期に、空調対象空間における快適性を向上させることができる。
そして、当該シート空調装置1の冷凍サイクル装置20は、圧縮機21と、凝縮器22と、減圧部23と、蒸発器24を有している。そして、当該車室用空調システムASは、室内空調装置60にてシート空調装置1の熱負荷を低減させるように温度調整された空調風Aを、供給ダクト90を介して、シート空調装置1における凝縮器22及び蒸発器24の何れか一方に供給する。
これにより、当該車室用空調システムASは、適切に温度調整された空調風Aを利用することで、冷凍サイクル装置20による温度調整を効果的に行うことができ、後席シートSBの空調対象空間の快適性を、効率よく向上させることができる。
当該車室用空調システムASは、ステップS5の冷房モードにて、シート空調装置1から空調対象空間へ冷風CAを供給する際には、車室側冷凍サイクル82にて冷却された低温状態の空調風Aを、供給ダクト90を介して、シート空調装置1の温風用通気口12に供給する。
これにより、シート空調装置1の凝縮器22に対して、低温状態の空調風Aが供給されることになる為、図14、図15に示すように、冷凍サイクル装置20における高圧側冷媒圧力を、空調風Aの冷熱で低下させることができる。
即ち、当該車室用空調システムASによれば、冷房モードにおいて、低温状態の空調風Aを温風用通気口12に供給することで、冷房時における冷凍サイクル装置20のCOPを向上させ、シート空調装置1の冷房運転の開始時期を早めることができる。
そして、当該車室用空調システムASは、ステップS9の暖房モードにて、シート空調装置1から空調対象空間へ温風WAを供給する際には、車室側冷凍サイクル82にて加熱された高温状態の空調風Aを、供給ダクト90を介して、シート空調装置1の冷風用通気口13に供給する。
これにより、シート空調装置1の蒸発器24に対し、高温状態の空調風Aが供給されることになる為、図16に示すように、冷凍サイクル装置20における低圧側冷媒圧力を、空調風Aの温熱で上昇させることができる。
即ち、当該車室用空調システムASによれば、暖房モードにおいて、高温状態の空調風Aを冷風用通気口13に供給することで、暖房時における冷凍サイクル装置20のCOPを向上させ、シート空調装置1の暖房運転の開始時期を早めることができる。
又、図13に示すように、ステップS3、ステップS7にて、シート空調装置1における吸込負荷が所定の条件を満たすと判定された場合、車室用空調システムASは、ステップS4、ステップS8にて、シート空調装置1を用いた循環運転を実行する。
当該車室用空調システムASによれば、シート空調装置1を用いた循環運転を実行することにより、シート空調装置1の周辺における空気の滞留を抑制して、車室C内を循環する空気の流れを作り出すことができる。
この結果、当該車室用空調システムASは、シート空調装置1の周囲における空気に関する冷凍サイクル装置20の空調熱負荷を、車室Cの内部の空気における平均的な状態に調整することができ、シート空調装置1による快適性の向上を、早い段階で実現させることができる。
又、当該車室用空調システムASによれば、シート空調装置1は、後席シートSBに定められた空調対象空間に対する空調動作を行うように構成されている為、後席シートSBに座った乗員Pの快適性を確実に向上させることができる。
そして、シート空調装置1の筐体10は、後席シートSB等のシートの座面部と車室床面Fの間に配置されている為、筐体10の周辺は、車室C内でも空気の滞留が生じやすい位置となる。当該車室用空調システムASによれば、シート空調装置1がこのように配置されている場合であっても、シート空調装置1による快適性を向上させることができる。
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良い。又、上述した実施形態を、例えば、以下のように種々変形することも可能である。
(1)上述した実施形態では、シートを空調対象空間とするシート空調装置を個別空調装置の一例として説明していたが、この態様に限定されるものではない。車室Cの内部における一部分である空調対象空間を集中的に空調する装置であれば、本発明を適用することができる。
(2)又、上述した実施形態においては、熱負荷低減部として機能する室内空調装置60からの空調風Aを、供給ダクト90を用いてシート空調装置1に導くように構成していたが、この態様に限定されるものではない。
例えば、図17に示すように、供給ダクト90に代えて、供給ガイド部材92及び吸込補助部93を設けても良い。この場合、供給ガイド部材92は、後席側空調ユニット72の第1吹出口79を囲む筒状に形成されており、シート空調装置1の温風用通気口12及び冷風用通気口13側に向かって伸びるように構成されていることが望ましい。
そして、吸込補助部93は、シート空調装置1の温風用通気口12及び冷風用通気口13の開口縁において、供給ガイド部材92から吹き出された空調風Aを各通気口にそれぞれ導くように構成されていることが望ましい。図17に示す構成であっても、本実施形態に係る車室用空調システムASと同様の効果を期待することができる。
(3)そして、上述した実施形態においては、供給ダクト90は、車室床面Fの上方にて、シート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13と、室内空調装置60の第1吹出口79とを接続していたが、当該供給ダクト90の経路は、この態様に限定されるものではない。
例えば、図18に示すように、供給ダクト90の一部に、床下流路部90Aを設けた構成とすることも可能である。当該床下流路部90Aは、ハイブリッド車両の外装を構成する車体Bと、車室C側の内装の一つである車室床面Fの間に配置されている。
当該車室用空調システムASによれば、供給ダクト90の一部に床下流路部90Aを配置することで、車室C内における供給ダクト90の占有スペースを小さくして、車室C内における乗員Pの居住空間を確保することができる。又、床下流路部90Aとして、車体Bや車室床面Fを部分的に利用することも可能となるので、構成部品の増大を抑制することができる。
(4)又、上述した実施形態においては、室内空調装置60を熱負荷低減部として用いていたが、この態様に限定されるものではない。シート空調装置1の空調運転に際し、吸込空気に対する冷凍サイクル装置20の空調熱負荷を低減することができる装置であれば、種々の装置を採用することができる。
例えば、図19に示すように、室内空調装置60の後席側空調ユニット72に代えて、ヒーター110を用いても良い。この場合のヒーター110は、シート空調装置1側に向かって送風する送風ファンと、送風ファンにて送風された空気を加熱する加熱部を有していることが望ましい。
この構成によれば、シート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13に対し高温状態の空気を供給することができるので、暖房モードにおいて、シート空調装置1の暖房性能を向上させることができる。
又、図20に示すように、熱負荷低減部として、シート(例えば、後席シートSB)の座面部や背もたれ部の表面に配置されたシートヒーター111を利用することも可能である。
この場合のシートにおいて、座面部及び背もたれ部は、クッション等の緩衝材を有しており、或る程度の通気性を備えている。そして、当該シートヒーター111は、高い熱伝導率を有する材料によって薄板状に構成されており、電力供給を受けることによって発熱する。
又、この場合における供給ダクト90の一端部は、シートの座面部又は背もたれ部に対して接続されており、供給ダクト90の他端部は、シート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13に対して取り付けられている。
従って、図20の構成によれば、シートヒーター111により温められた空気を、通気性を有する背もたれ部及び座面部から吸い込んで、供給ダクト90を介して、シート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13へ導くことができる。
この結果、図20に示す構成によれば、シート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13に対し高温状態の空気を供給することができるので、暖房モードにおいて、シート空調装置1の暖房性能を向上させることができる。
(5)そして、上述した実施形態においては、供給ダクト90の経路を短くすることができる為、後席シートSBに対してシート空調装置1を取り付けると共に、後席側空調ユニット72の第1吹出口79に供給ダクト90を接続する構成を採用していたが、この態様に限定されるものではない。
即ち、図21に示すように、前席シートSAに取り付けられたシート空調装置1と、室内空調装置60の前席側空調ユニット61にて、車室用空調システムASを構成することも可能である。
この場合における供給ダクト90の一端部は、前席側空調ユニット61の複数の吹出口における少なくとも一つに接続され、他端部は、シート空調装置1の温風用通気口12、冷風用通気口13に対して取り付けられる。
このように構成することで、供給ダクト90の経路をできるだけ短くしつつ、前席側空調ユニット61から空調風Aを供給して、前席シートSAにおける空調対象空間の快適性を効率よく向上させることができる。
又、後席シートSBに係るシート空調装置1と、前席側空調ユニット61とを供給ダクト90で接続しても良いし、前席シートSAのシート空調装置1と、後席側空調ユニット72とを供給ダクト90で接続しても良い。この場合、供給ダクト90の一部に床下流路部90Aを有する構成とすれば、供給ダクト90の経路が長くとも、車室Cにおける居住スペースを確保することができる。
(6)又、上述した実施形態においては、シート空調装置1の筐体10を、シート(例えば、後席シートSB)の座面部に対して取り付け、当該シートのスライド移動に伴い、車室C内を前後に移動する構成であったが、この態様に限定されるものではない。
例えば、シート空調装置1の筐体10を車室床面Fに対して固定しても良い。この場合には、当該筐体10の供給口14とシート用ダクトDを接続するダクトとして、或る程度の柔軟性と伸縮性を有するダクトを用いることが望ましく、例えば、フレキシブルダクトを用いることができる。
(7)そして、上述した実施形態においては、シート空調装置1にて、冷凍サイクル装置20を用いて、冷熱及び温熱を並行して発生させていたが、この構成に限定されるものではない。例えば、冷凍サイクル装置20に替えて、ペルチェ素子を用いて冷熱及び温熱を並行して発生させる構成を採用することも可能である。