JP2019189550A - 1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法 - Google Patents
1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2019189550A JP2019189550A JP2018083499A JP2018083499A JP2019189550A JP 2019189550 A JP2019189550 A JP 2019189550A JP 2018083499 A JP2018083499 A JP 2018083499A JP 2018083499 A JP2018083499 A JP 2018083499A JP 2019189550 A JP2019189550 A JP 2019189550A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- dichloro
- reaction
- trifluoropropene
- alkyl group
- producing
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
- 0 Cc(cc1[*-])cc(*)c1O Chemical compound Cc(cc1[*-])cc(*)c1O 0.000 description 1
- QWVGKYWNOKOFNN-UHFFFAOYSA-N Cc(cccc1)c1O Chemical compound Cc(cccc1)c1O QWVGKYWNOKOFNN-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
- NXXYKOUNUYWIHA-UHFFFAOYSA-N Cc1cccc(C)c1O Chemical compound Cc1cccc(C)c1O NXXYKOUNUYWIHA-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
Landscapes
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
- Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
Abstract
【課題】安全性が高く、高収率でかつ高選択的に1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】長鎖アルキル基を有するフェノール化合物の存在下、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパンと塩基を反応させる1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法に関する。
1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CF3−CCl=CHCl、HCFO−1223xd。以下、1223xdと記す。EZ混合物として扱う。)は地球温暖化係数が小さな洗浄剤であり、精密部品や光学部品などの洗浄、ドライクリーニング、冷媒等に用いられる化合物である。
1223xdを製造する方法のひとつとして、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(233ab)をアルカリ性水溶液の存在下で脱塩化水素する方法が提案(特許文献1)されている。その際、触媒として第4級アンモニウム塩を相間移動触媒として使用する。一般に相間移動触媒の存在下、アルカリ性水溶液中で脱塩化水素反応を行い、アルケン、アルキン類を製造する方法は多くの事例(例えば、非特許文献1)があり、特許文献1ではその反応を1223xdの製造に適応したものである。
E.V.Dehmlow and S.S.Dehmlow,Phase Transfer Catalysis,Verlag Chemie(1980),p.149〜154
特許文献1によると、実施例7〜9において相間移動触媒としてテトラ−n−ブチルアンモニウムクロリドを用い20質量%のKOH水溶液中で40〜80℃で脱塩化水素し、1223xdのEZ混合物を93〜96%収率で得たと記載している。本発明者らは数度にわたって、この発明を追試したところ1223xdの収率は50%しか得られず(後述の参考例6参照)、触媒量を増加したり、反応時間を延ばして転化率を上げようとすると1223xdがさらに脱塩化水素した1−クロロ−3,3,3―トリフルオロプロピン(アルキン化合物、以下、CTFPと略す)が多く副生する結果に至った。
上記状況を鑑み、本発明は、安全性が高く、高収率でかつ高選択的に1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造する製造方法を提供することを課題とする。
しかも、地球温暖化係数が高い原料の1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(233ab)を反応で可能な限り変換し、地球環境に残らないようにすることで、環境負荷を低減することを課題とする。
しかも、地球温暖化係数が高い原料の1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(233ab)を反応で可能な限り変換し、地球環境に残らないようにすることで、環境負荷を低減することを課題とする。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。
特に、上記脱塩化水素反応により1223xdを収率よく得るための触媒の検討、反応方法の検討を行った。
この結果、触媒として長鎖アルキル基を持ったフェノール化合物が有効であり、さらには反応蒸留により1223xdを除去しながら行う方法を採用することで目的物の収率と選択率を向上できることを見出した。
本発明は、この方法を詳細に検討することで完成させたものである。
特に、上記脱塩化水素反応により1223xdを収率よく得るための触媒の検討、反応方法の検討を行った。
この結果、触媒として長鎖アルキル基を持ったフェノール化合物が有効であり、さらには反応蒸留により1223xdを除去しながら行う方法を採用することで目的物の収率と選択率を向上できることを見出した。
本発明は、この方法を詳細に検討することで完成させたものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>長鎖アルキル基を有するフェノール化合物の存在下、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパンと塩基を反応させる1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
<2>前記長鎖アルキル基を有するフェノール化合物が、下記式(1)で表される化合物である<1>に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
<1>長鎖アルキル基を有するフェノール化合物の存在下、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパンと塩基を反応させる1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
<2>前記長鎖アルキル基を有するフェノール化合物が、下記式(1)で表される化合物である<1>に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
式中、nは1または2を表し、Rは炭素数6〜12の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。
Xは炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子を表し、pは0〜3の整数を表す。
<3>前記式(1)のRの炭素数が、8または9であって、nが1であり、かつpが0である<2>に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
<4>前記式(1)で表される化合物が、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールである<2>または<3>に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
<5>前記式(1)で表される化合物が、4−ノニルフェノールである<2>または<3>に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
<6>前記長鎖アルキル基を有するフェノール化合物と第4級アンモニウム塩の共存下、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパンと塩基を反応させる<1>〜<5>のいずれか1項に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
<7>1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを留去しながら反応を行う<1>〜<6>のいずれか1項に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
Xは炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子を表し、pは0〜3の整数を表す。
<3>前記式(1)のRの炭素数が、8または9であって、nが1であり、かつpが0である<2>に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
<4>前記式(1)で表される化合物が、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールである<2>または<3>に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
<5>前記式(1)で表される化合物が、4−ノニルフェノールである<2>または<3>に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
<6>前記長鎖アルキル基を有するフェノール化合物と第4級アンモニウム塩の共存下、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパンと塩基を反応させる<1>〜<5>のいずれか1項に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
<7>1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを留去しながら反応を行う<1>〜<6>のいずれか1項に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
本発明により、安全性が高く、高収率でかつ高選択的な1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法を提供することが可能となった。
高収率の意味するところは、経済性に加えて、地球温暖化係数の高い原料である1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(233ab)を反応で可能な限り変換して環境中に残らないようにできることである。また、高選択的とは目的化合物で脱塩化水素反応を停止し1223xdがさらに脱塩化水素して生じる沸点の低いCTFPを極度に減少させることにより、経済性が高まることに加え、環境へのフッ素化合物の飛散を減少することが可能となった。
高収率の意味するところは、経済性に加えて、地球温暖化係数の高い原料である1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(233ab)を反応で可能な限り変換して環境中に残らないようにできることである。また、高選択的とは目的化合物で脱塩化水素反応を停止し1223xdがさらに脱塩化水素して生じる沸点の低いCTFPを極度に減少させることにより、経済性が高まることに加え、環境へのフッ素化合物の飛散を減少することが可能となった。
以下、本発明についてその好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明および本明細書で述べる反応を反応式で示すと、以下のようになる。
原料の233abを相間移動触媒の存在下、アルカリ水溶液で処理すると脱塩化水素し1223xdのEZ混合物となる。しかしながら、同一反応条件下において、さらに脱塩化水素してCTFPとなることがある。一般的に脱塩化水素反応の触媒として第4級アンモニウム塩を用いると、233abの反応転化率が上がるとともにCTFPへの反応が起きる。特許文献1に記載されているように代表的な第4級アンモニウム塩は、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(代表的には、商品名アリコート336で市販されており、C8がメインだがC10も一部混入している)などである。
本発明は触媒として第4級アンモニウム塩ではなく、長鎖アルキル基を有するフェノール化合物を使用する。なお、本発明では、長鎖アルキル基を有するフェノール化合物とは、炭素数6以上のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノール化合物であり、このアルキル基の炭素数は6〜12が好ましい。
本発明に用いられる長鎖アルキル基を有するフェノール化合物の作用は第4級アンモニウム塩の作用とは異なる、極めて優れた触媒作用を担う。
その理由は、まだ定かではないが、以下のように推定される。
第4級アンモニウム塩のハロゲン交換で生じる第4級アンモニウムヒドロオキシド(例えば、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロオキシド)が脱塩化水素の塩基として働くのに対し、フェノールはフェノラートとなりプロトンを引き抜く。水酸基(OH−)の共役酸である水のpKaは15.7であるのに対し、フェノールのpKaは10.0である。すなわち、水酸基の方が、105倍塩基性が強い。このため、第2段階目の脱塩化水素反応が起こり、CTFPが生成する。フェノール化合物はカリウムまたはナトリウム塩になって233abの脱塩化水素反応を引き起こすが、生じた1223xdの脱塩化水素反応には塩基性が弱すぎるので、1223xdで脱塩化水素反応を止められる。
この際、フェノール化合物を、特に、炭素数6以上のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノール化合物とすることにより、相間移動触媒的に作用しているものと考えられる。
その理由は、まだ定かではないが、以下のように推定される。
第4級アンモニウム塩のハロゲン交換で生じる第4級アンモニウムヒドロオキシド(例えば、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロオキシド)が脱塩化水素の塩基として働くのに対し、フェノールはフェノラートとなりプロトンを引き抜く。水酸基(OH−)の共役酸である水のpKaは15.7であるのに対し、フェノールのpKaは10.0である。すなわち、水酸基の方が、105倍塩基性が強い。このため、第2段階目の脱塩化水素反応が起こり、CTFPが生成する。フェノール化合物はカリウムまたはナトリウム塩になって233abの脱塩化水素反応を引き起こすが、生じた1223xdの脱塩化水素反応には塩基性が弱すぎるので、1223xdで脱塩化水素反応を止められる。
この際、フェノール化合物を、特に、炭素数6以上のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノール化合物とすることにより、相間移動触媒的に作用しているものと考えられる。
本発明者らは後述の実施例1〜4で示すように原料の233abの残存率を5%以下まで反応を進めてもCTFPの生成率は2%以下であった。
一方、後述の参考例1で示すように代表的な第4級アンモニウム塩としてメチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(アリコート336)を使用し、塩基としてKOHより弱いNaOHを用い、濃度も20質量%として反応を行った場合でも反応は非常に速く、2時間で終了し233abの残存が2.3%となった。しかしながらCTFPが8.2%も生成した。
一方、後述の参考例1で示すように代表的な第4級アンモニウム塩としてメチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(アリコート336)を使用し、塩基としてKOHより弱いNaOHを用い、濃度も20質量%として反応を行った場合でも反応は非常に速く、2時間で終了し233abの残存が2.3%となった。しかしながらCTFPが8.2%も生成した。
本発明で用いられるアルキル基を有するフェノール化合物は、炭素数が6以上12以下の直鎖もしくは分岐アルキル基を有するフェノール化合物が好ましい。
本発明において上記の好ましいフェノール化合物は、下記式(1)で表すことができる。
本発明において上記の好ましいフェノール化合物は、下記式(1)で表すことができる。
式中、nは1または2を表し、Rは炭素数6〜12の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。
Xは炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子を表し、pは0〜3の整数を表す。
Xは炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子を表し、pは0〜3の整数を表す。
触媒として用いられるフェノール化合物の使用量は233abに対し0.5モル%〜5モル%の範囲で選ばれるのが好ましい。量が多すぎるとゲル状になることがあり経済性からも量は少ない方が好ましい。0.5モル%未満では反応が非常に遅くなる。
また、本発明では、上記の長鎖アルキル基を有するフェノール化合物に触媒量の第4級アンモニウム塩を添加してもよい。この場合の第4級アンモニウム塩の使用量は、上記のフェノール化合物に対して0.05〜0.5当量が好ましく、0.1〜0.2当量がより好ましい。0.5当量を超えると、CTFPの生成量が増加するので好ましくない。
第4級アンモニウム塩としては、第4級アンモニウムクロリド、第4級アンモニウムブロミドが好ましく、トリブチルメチルアンモニウムクロリド(商品名アリコート175)、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(商品名アリコート336)、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムブロミドが挙げられる。
塩基は、KOHもしくはNaOHが好ましい。
触媒として長鎖アルキル基を有するフェノール化合物を単独で使用する場合、反応はKOHもしくはNaOH水溶液の存在下で行うことが好ましく、KOH水溶液の存在下で行うことがより好ましい。
触媒として長鎖アルキル基を有するフェノール化合物と第4級アンモニウム塩を共存下に使用する場合には、KOHもしくはNaOH水溶液の存在下で行うことが好ましく、経済性の観点からNaOH水溶液の存在下で行うことがより好ましい。
KOHもしくはNaOHの濃度は20〜25質量%が適切であり、この濃度を超えて高くなると固体が析出して撹拌に支障が生じる。逆に濃度が薄いと反応に時間がかかり、加えて反応の容積効率が下がるので経済的でない。KOHもしくはNaOHのモル比は、原料の233abに対して1.0〜1.3で十分である。
なお、反応溶媒は、水が好ましく、上記KOHもしくはNaOH水溶液を混合、好ましくは滴下することで、この水溶液中で反応するのが好ましい。
触媒として長鎖アルキル基を有するフェノール化合物を単独で使用する場合、反応はKOHもしくはNaOH水溶液の存在下で行うことが好ましく、KOH水溶液の存在下で行うことがより好ましい。
触媒として長鎖アルキル基を有するフェノール化合物と第4級アンモニウム塩を共存下に使用する場合には、KOHもしくはNaOH水溶液の存在下で行うことが好ましく、経済性の観点からNaOH水溶液の存在下で行うことがより好ましい。
KOHもしくはNaOHの濃度は20〜25質量%が適切であり、この濃度を超えて高くなると固体が析出して撹拌に支障が生じる。逆に濃度が薄いと反応に時間がかかり、加えて反応の容積効率が下がるので経済的でない。KOHもしくはNaOHのモル比は、原料の233abに対して1.0〜1.3で十分である。
なお、反応溶媒は、水が好ましく、上記KOHもしくはNaOH水溶液を混合、好ましくは滴下することで、この水溶液中で反応するのが好ましい。
反応は、原料の233abと長鎖アルキル基を有するフェノール化合物を室温で混合し、この混合物を一定温度に加熱して、アルカリ水溶液を添加、好ましくは滴下しで行うのが好ましい。
反応温度は、50〜100℃が好ましく、70〜90℃がより好ましく、75〜95℃がさら好ましい。
反応時間は、特に限定されるものではないが、2〜8時間が好ましく、2〜6時間がより好ましく、3〜5時間がさら好ましい。
反応温度は、50〜100℃が好ましく、70〜90℃がより好ましく、75〜95℃がさら好ましい。
反応時間は、特に限定されるものではないが、2〜8時間が好ましく、2〜6時間がより好ましく、3〜5時間がさら好ましい。
本発明では、反応は生成物の1223xdを留出(所謂、反応蒸留)しながら行うことが望ましい。1223xdは沸点が58℃であるため、塔頂のガス温度を50〜60℃になるように保ちながら反応を行うことが望ましい。
本発明の方法により得られた1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223xd)は地球温暖化係数が小さいことから、洗浄剤、特に精密部品や光学部品などの洗浄、ドライクリーニング、冷媒等に用いるのに好適である。
以下に、本発明を、実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
実施例1
充填物(ヘリパックNo.1)を充填したガラス管を有する四口フラスコに1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(233ab)(100.7g、0.5mol)とこれに対して5mol%の4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(5.2g、0.025mol)を加え撹拌しながら75℃に昇温した。そこに25質量%の水酸化カリウム水溶液123.4g(0.55mol)を1時間かけて滴下し、その後還流を維持するよう徐々に昇温させ、95℃をオイルバスの最高温度としてキープした。反応中は塔頂のガス温度が50〜60℃を保つように還流比をとりながら反応生成物を留去させ、フラスコ内の有機層が消失した時点で反応を終了した。滴下開始から反応終了までに要した時間は4時間であった。留出した液は75.8gであり、この液をガスクロマトグラフィーにて分析すると、95.7%の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223xd)、2.4%の233ab、および1.4%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピン(CTFP)が含まれていた。1223xdの収率(原料の233abに対する収率、以下単に収率と称す)は88%であった。
充填物(ヘリパックNo.1)を充填したガラス管を有する四口フラスコに1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(233ab)(100.7g、0.5mol)とこれに対して5mol%の4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(5.2g、0.025mol)を加え撹拌しながら75℃に昇温した。そこに25質量%の水酸化カリウム水溶液123.4g(0.55mol)を1時間かけて滴下し、その後還流を維持するよう徐々に昇温させ、95℃をオイルバスの最高温度としてキープした。反応中は塔頂のガス温度が50〜60℃を保つように還流比をとりながら反応生成物を留去させ、フラスコ内の有機層が消失した時点で反応を終了した。滴下開始から反応終了までに要した時間は4時間であった。留出した液は75.8gであり、この液をガスクロマトグラフィーにて分析すると、95.7%の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223xd)、2.4%の233ab、および1.4%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピン(CTFP)が含まれていた。1223xdの収率(原料の233abに対する収率、以下単に収率と称す)は88%であった。
1223xdはEZ混合物であり、その比率はZ:Eが80:20であり、化合物の同定はガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)のスペクトルによって行った。
1223xd(Z):m/z = 168(M++4,相対強度1.3%),166(M++2,8.3%),164(M+,13.2%),145(M+−19,5.8%),131(19.3%),129(64.1%),85(23.9%),75(48.0%),69(ベースピーク)
1223xd(E):m/z = 168(M++4,相対強度1.1%),166(M++2,6.0%),164(M+,11.5%),145(M+−19,3.3%),131(12.9%),129(46.5%),85(17.4%),75(40.0%),69(ベースピーク)
CTFP:m/z = 130(M++2,38.8%),128(M+,ベースピーク),111(29.9%),109(89.3%),93(89.2%),74(24.9%),69(24.1%)
実施例2
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの代わりに4−ノニルフェノール(分岐鎖異性体混合物、東京化成工業株式会社製、5.5g、5mol%)を使用した以外は実施例1と同様の手順で行い、73.1gの留出液を得た。留出した液には1233xdが98.0%、233abが0.2%、およびCTFPが1.5%含まれていた。1223xdの収率は87%であった。
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの代わりに4−ノニルフェノール(分岐鎖異性体混合物、東京化成工業株式会社製、5.5g、5mol%)を使用した以外は実施例1と同様の手順で行い、73.1gの留出液を得た。留出した液には1233xdが98.0%、233abが0.2%、およびCTFPが1.5%含まれていた。1223xdの収率は87%であった。
実施例3
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを1mol%(1.0g)使用した以外は実施例1と同様の手順で行い、80.4gの留出液を得た。留出した液には1233xdが90.6%、233abが5.3%、およびCTFPが1.3%含まれていた。1223xdの収率は88%であった。
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを1mol%(1.0g)使用した以外は実施例1と同様の手順で行い、80.4gの留出液を得た。留出した液には1233xdが90.6%、233abが5.3%、およびCTFPが1.3%含まれていた。1223xdの収率は88%であった。
実施例4
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを0.5mol%(0.5g)使用した以外は実施例1と同様の手順で行い、78.9gの留出液を得た。滴下開始から反応終了までに要した時間は5時間であった。留出した液には1233xdが91.8%、233abが3.8%、およびCTFPが1.6%含まれていた。1223xdの収率は88%であった。
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを0.5mol%(0.5g)使用した以外は実施例1と同様の手順で行い、78.9gの留出液を得た。滴下開始から反応終了までに要した時間は5時間であった。留出した液には1233xdが91.8%、233abが3.8%、およびCTFPが1.6%含まれていた。1223xdの収率は88%であった。
実施例5
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを0.5mol%(0.5g)とメチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(アリコート336)を0.1mol%(0.11g)を触媒として使用し、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(233ab)(100.7g、0.5mol)と25質量%の水酸化ナトリウム水溶液 88g(0.55mol)を実施例1と同じように反応した。反応時間は5時間で留出量は74.4gであった。これを分析すると1223xdが96.3%、233abが2.0%、CTFPが1.4%含まれていた。1223xdの収率は87%であった。
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを0.5mol%(0.5g)とメチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(アリコート336)を0.1mol%(0.11g)を触媒として使用し、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(233ab)(100.7g、0.5mol)と25質量%の水酸化ナトリウム水溶液 88g(0.55mol)を実施例1と同じように反応した。反応時間は5時間で留出量は74.4gであった。これを分析すると1223xdが96.3%、233abが2.0%、CTFPが1.4%含まれていた。1223xdの収率は87%であった。
参考例1
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの代わりにメチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(アリコート336)(5.5g)、25質量%の水酸化カリウムの代わりに20質量%の水酸化ナトリウム水溶液(130.0g,5.5mol)を使用した以外は実施例1と同様の手順で行い、69.3gの留出液を得た。滴下開始から反応終了までに要した時間は2時間であった。留出した液には1233xdが89.2%、233abが2.3%、およびCTFPが8.2%含まれていた。1223xdの収率は75%であった。
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの代わりにメチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(アリコート336)(5.5g)、25質量%の水酸化カリウムの代わりに20質量%の水酸化ナトリウム水溶液(130.0g,5.5mol)を使用した以外は実施例1と同様の手順で行い、69.3gの留出液を得た。滴下開始から反応終了までに要した時間は2時間であった。留出した液には1233xdが89.2%、233abが2.3%、およびCTFPが8.2%含まれていた。1223xdの収率は75%であった。
実施例1〜5と比較すると、1223xdの収率は、実施例1〜5の87〜88%より低く、しかもCTFPの生成においては、8.2%であって、実施例1〜5の1.3〜1.6%より、約5〜6倍も高い。
参考例2〜5
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの代わりに、下記の各種フェノール化合物を0.5モル%使用した以外は実施例1と同様の手順で行った。
得られた結果を下記表1に示す。
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの代わりに、下記の各種フェノール化合物を0.5モル%使用した以外は実施例1と同様の手順で行った。
得られた結果を下記表1に示す。
上記表1から明らかなように、フェノール化合物でもアルキル基の短いものは有効な触媒とならないことがわかる。
参考例6
特許文献1に記載の実施例7の追試を行ったが、結果を再現できなかった。
233ab(50.0g,0.25mol)と、これに対し1.0mol%のテトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド(0.7g)を加え、20質量%の水酸化カリウム水溶液(76.6g,0.27mol)を加え40℃まで撹拌しながら昇温した。その後、反応温度を40℃に保ちながら20時間撹拌を継続したが233abの転化率が小さく、ここで反応を終了とした。有機層をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、1233xdが47.4%、233abが50.1%、およびCTFPが0.4%含まれていた。
特許文献1に記載の実施例7の追試を行ったが、結果を再現できなかった。
233ab(50.0g,0.25mol)と、これに対し1.0mol%のテトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド(0.7g)を加え、20質量%の水酸化カリウム水溶液(76.6g,0.27mol)を加え40℃まで撹拌しながら昇温した。その後、反応温度を40℃に保ちながら20時間撹拌を継続したが233abの転化率が小さく、ここで反応を終了とした。有機層をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、1233xdが47.4%、233abが50.1%、およびCTFPが0.4%含まれていた。
比較例1
実施例3で使用した4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの代わりにテトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド(1.4g、1mol%)を使用した以外は実施例1と同様の手順で行い、71.1gの留出液を得た。滴下開始から反応終了までに要した時間は2時間であった。留出した液には1233xdが87.6%、233abが1.8%、およびCTFPが10.3%含まれていた。1223xdの収率は76%であった。
実施例3で使用した4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの代わりにテトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド(1.4g、1mol%)を使用した以外は実施例1と同様の手順で行い、71.1gの留出液を得た。滴下開始から反応終了までに要した時間は2時間であった。留出した液には1233xdが87.6%、233abが1.8%、およびCTFPが10.3%含まれていた。1223xdの収率は76%であった。
比較例2
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを使用せずに実施例5と同じように反応した。すなわち、使用した触媒はメチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(アリコート336)0.1mol%だけである。5時間後の留出量は46.6gである、その組成は1223xdが92.8%、233abが0.4%、CTFPが6.7%含まれていた。多くの未反応原料がフラスコ内に残っているにも関わらず、留出物にはCTFPが6.7%も含まれており反応が目的物で止まらない結果となった。1223xdの収率は52%であった。
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを使用せずに実施例5と同じように反応した。すなわち、使用した触媒はメチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(アリコート336)0.1mol%だけである。5時間後の留出量は46.6gである、その組成は1223xdが92.8%、233abが0.4%、CTFPが6.7%含まれていた。多くの未反応原料がフラスコ内に残っているにも関わらず、留出物にはCTFPが6.7%も含まれており反応が目的物で止まらない結果となった。1223xdの収率は52%であった。
Claims (7)
- 長鎖アルキル基を有するフェノール化合物の存在下、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパンと塩基を反応させる1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
- 前記式(1)のRの炭素数が、8または9であって、nが1であり、かつpが0である請求項2に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
- 前記式(1)で表される化合物が、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールである請求項2または3に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
- 前記式(1)で表される化合物が、4−ノニルフェノールである請求項2または3に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
- 前記長鎖アルキル基を有するフェノール化合物と第4級アンモニウム塩の共存下、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパンと塩基を反応させる請求項1〜5のいずれか1項に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
- 1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを留去しながら反応を行う請求項1〜6のいずれか1項に記載の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018083499A JP2019189550A (ja) | 2018-04-24 | 2018-04-24 | 1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018083499A JP2019189550A (ja) | 2018-04-24 | 2018-04-24 | 1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019189550A true JP2019189550A (ja) | 2019-10-31 |
Family
ID=68389256
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018083499A Pending JP2019189550A (ja) | 2018-04-24 | 2018-04-24 | 1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2019189550A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112194557A (zh) * | 2020-06-09 | 2021-01-08 | 浙江省化工研究院有限公司 | 1,1-二氯-3,3,3-三氟丙烯和1,2-二氯-3,3,3-三氟丙烯的制备工艺 |
-
2018
- 2018-04-24 JP JP2018083499A patent/JP2019189550A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112194557A (zh) * | 2020-06-09 | 2021-01-08 | 浙江省化工研究院有限公司 | 1,1-二氯-3,3,3-三氟丙烯和1,2-二氯-3,3,3-三氟丙烯的制备工艺 |
CN112194557B (zh) * | 2020-06-09 | 2022-05-24 | 浙江省化工研究院有限公司 | 1,1-二氯-3,3,3-三氟丙烯和1,2-二氯-3,3,3-三氟丙烯的制备工艺 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6132042B2 (ja) | 1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法 | |
JP5143011B2 (ja) | フッ素化有機化合物の製造方法 | |
JP5946410B2 (ja) | 2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法 | |
JP5713016B2 (ja) | 1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法 | |
US8404907B2 (en) | Process for cis-1-chloro-3,3,3-trifluoropropene | |
JP5484820B2 (ja) | 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法 | |
JPWO2017018412A1 (ja) | 1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法 | |
JP5682381B2 (ja) | 含ハロゲノフッ素化シクロアルカン、及び含水素フッ素化シクロアルカンの製造方法 | |
KR20140124748A (ko) | 비스(1,1-디클로로-3,3,3-트리플루오로프로필)에테르 및 그 제조방법 | |
JP2010529111A (ja) | 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法 | |
JP2011509268A (ja) | パーフルオロブタジエンの合成方法 | |
JP2019189550A (ja) | 1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法 | |
JP5713015B2 (ja) | 1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンの製造方法 | |
CN102101820B (zh) | 异构化方法 | |
JP7024727B2 (ja) | 1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法 | |
JP2014024821A (ja) | (z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの精製方法 | |
RU2476417C1 (ru) | Способ получения 2,3,3,3-тетрафторпропилена и 1,3,3,3-тетрафторпропилена | |
JP5610917B2 (ja) | クロロプロパンの製造方法 | |
JP2012171884A (ja) | 含水素フルオロジエン化合物の製造方法 | |
KR100994270B1 (ko) | 함불소에테르 화합물의 제조방법 | |
KR20130110146A (ko) | 단쇄 퍼플루오로알킬 요오다이드의 제조 | |
AU4170800A (en) | Method of producing fluorinated compounds | |
JP3403777B2 (ja) | ハイドロフルオロカーボンの製造方法 | |
JP3403776B2 (ja) | ハイドロフルオロカーボンの製造方法 | |
CN116903435A (zh) | 氢氟烯烃类化合物、氢氟烯烃类化合物的制备方法及其应用 |