JP2019187345A - 飲食品の風味改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】各種飲食品の風味を増強できる新規な風味改善剤を提供すること。【解決手段】種々の飲食品やその飲食品に添加する香料組成物に添加することで風味を改善できる3−メチルブタン−1,3−ジチオールを有効成分とする風味改善剤を提供する。さらに、当該風味改善剤を含有する香料組成物、および当該風味改善剤または香料組成物を含有することで風味が改善された飲食品、当該風味改善剤または香料組成物を飲食品に配合することを含む飲食品の風味改善方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は飲食品の風味改善剤に関し、更に詳しくは、3−メチルブタン−1,3−ジチオールを有効成分とする飲食品の風味改善剤に関する。
近年、飲食品の風味に対する消費者の要求は多様化しており、様々な風味において、天然感の要求や、呈味、コク、ボリューム感などを含む満足感向上への要求が存在する。しかし、このような要求に対して、健康志向への配慮やコストの問題から、飲食品原料の使用量の増加は困難な場合がある。そこで、風味や天然感をバランスよく増強し、コクや満足感を付与できる香料化合物または組成物が求められてきた。
香料化合物のなかには、単に匂いを付与または増強させるのみならず、あたかも味覚にも作用するかのごとく、飲食品のコク、味の厚み、ボリューム感などが増強した、原料をふんだんに使用した、などと感じさせるものがある。そのような香料化合物は、飲食品に対する天然志向や健康志向が強い昨今において、嗜好性や製造コストの観点から非常に有用な化合物であると言え、そのような香料化合物の開発が待たれている。
例えば、乳風味のコクなどを増強可能な化合物(特許文献1参照)など、特定の風味のコクなどを増強させる化合物が知られている。
また、本発明の風味改善剤の有効成分が属するチオール類においても、いくつかの化合物が飲食品原料から同定されている。例えば、1,2−エタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオールなどのアルカンジチオール類が調理肉様の香気を賦与するのに有用であると記載する文献があり(特許文献2参照)、また、加熱調理牛肉の揮発成分として1,1−エタンジチオール(非特許文献1参照)が同定され、アサツキからは1−ペンタンチオール(非特許文献2参照)が同定されている。
しかしながら、上記の化合物や従来法では、香気や香味の質および強度の点で単調である、コク感などを増強して全体的に満足感を増強する点で十分とはいえない、使用できる香味が限られている、などの少なくとも1つの理由から、多様化している飲食品の風味を改善する要望に十分対応できておらず、新たな風味改善剤の開発が期待されていた。
本発明の風味改善剤の有効成分である3−メチルブタン−1,3−ジチオールは、多様なチオール類またはチオアセテート類の生物変換による製造方法に関する文献において、列挙された化合物のひとつとして、チオアセテートの分解で得られると記載されている(特許文献3参照)が、具体的な香気特性については一切知られていない。
特開2017−018025号公報 特開昭50−12277号公報 国際公開01/77359号公報
J.Agric.Food Chem.1991年,Vol.39,p.336−343 J.Food Sci.1983年,Vol.48,p.1858−1859
本発明の課題は、飲食品の風味を改善できる新規な風味改善剤およびそれを含有する香料組成物を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、意外なことに、これまでその香気特性について全く知られていなかった3−メチルブタン−1,3−ジチオールを、飲食品またはそれに配合する香料組成物に有効量配合することで、従来にない良好な風味が得られることを見出した。
かくして、本発明は以下のものを提供する。
[1] 式(1)で表される3−メチルブタン−1,3−ジチオールを有効成分とする、飲食品の風味改善剤。
Figure 2019187345
[2] [1]に記載の風味改善剤を含有する、香料組成物。
[3] 式(1)で表される化合物の濃度が1ppt〜1000ppmである、[2]に記載の香料組成物。
[4] 前記風味改善剤または香料組成物が、式(1)で表される化合物として0.001ppt〜100ppb配合されてなる、風味の改善された飲食品。
[5] 前記風味改善剤または香料組成物を、式(1)で表される化合物として0.001ppt〜100ppbの濃度で飲食品に配合することを含む、飲食品の風味改善方法。
これまで、3−メチルブタン−1,3−ジチオール(本明細書では、これを本発明の化合物と称することがある)について、その香気特性もその配合効果についても何も確認されていなかったところ、この化合物が飲食品の風味を顕著に改善するという、全く予想し得なかった驚くべき効果が本発明者らによって見出された。従って、本発明によって、飲食品の風味が改善できる、新規な風味改善剤を提供することができる。本発明の風味改善剤は、香料組成物、飲食品などの消費財やその他物品の風味を改善して嗜好性を高め得る香料組成物の調合素材として有用である。
本発明の実施の態様について更に詳しく説明する。
(本発明の風味改善剤)
本発明の風味改善剤は、下記式(1)によって表される化合物、すなわち3−メチルブタン−1,3−ジチオールを有効成分とすることを特徴とする。
Figure 2019187345
本発明の風味改善剤は、それを配合した結果、多様な風味の飲食品において、その風味を顕著に改善するものである。これによって、本発明の風味改善剤を含有する飲食品、又は本発明の風味改善剤を含有する香料組成物を含有する飲食品を飲食した際、香りおよび/または味が増強された、ボディ感が増強された、まろやかさが増強された、満足感が増強された、ボリューム感が増強された、味の厚みが増強された、呈味(例えば旨味)が増強された、風味の余韻がより長く持続するようになった、飲食品素材の香りおよび/または味が濃くなった、まろやかさが増強された、天然感が増強された、風味全体のバランスが改善された、などの1つ以上の効果によって、香料組成物や飲食品の風味を改善することができる。なお、風味とは、香りと味との総合的な感覚を意味する。
本発明の風味改善剤の形態は特に限定されず、有効成分である3−メチルブタン−1,3−ジチオールを水溶性または油溶性の溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤、その他固体製剤(固形脂など)などであってよい。
(3−メチルブタン−1,3−ジチオールの製造方法)
本発明の香味改善剤の有効成分である3−メチルブタン−1,3−ジチオールは、任意の方法で入手してよい。例えば、以下の反応経路に従った製造方法による化学的合成によって入手することができる。以下の反応経路に記載する試薬や各種条件(温度、時間など)は、所望の反応が進行する限り適宜変更してよい。
Figure 2019187345
まず、式(2)のアルデヒド(3−メチル−2−ブテナール)に、求核付加反応によってアルキルチオ基を導入し、その後還元反応によってチオール基を導入する部分である水酸基を生成させる。
反応経路1の式中、Rは任意のアルキル基を示すが、好ましくは不活性な基(いわゆる保護基)であり、例えば、ベンジル基が例示できる。また、求核剤は、反応が進行する限り任意の化合物を使用できるが、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)などが例示でき、トリエチルアミンが好ましい。反応温度は特に限定されず、例えば25℃(室温程度)またはそれ以下でよいが、低温ほど反応時間が長くなるため、室温程度が好ましい。
続く還元反応で使用する還元剤も特に限定されないが、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウムなどが例示できる。還元反応における溶媒は、反応基質と反応を起こさない限り任意であるが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが例示できる。
Figure 2019187345
次いで、式(3)の化合物の水酸基に保護基を導入して、式(4)のメシラートを得る。式中、保護基としてメシル基を導入しているが、トシル基等その他の保護基でもよい。この反応は、反応基質と反応しない任意の有機溶媒中で行ってよいが、例えば、ジエチルエーテルなどのエーテル系の溶媒や、ジクロロメタンなどが例示できる。反応温度は特に限定されないが、通常、0℃〜25℃(室温程度)の間で行われる。
Figure 2019187345
次いで、式(4)のメシラートにおけるメシラート部分をアルキルチオ化して、式(5)のアルキルジチオール化合物を得る。式中、R’は反応経路1におけるR同様任意のアルキル基であって、好ましくは不活性基、例えばベンジル基である。アルキルチオ化のための強塩基は特に限定されないが、水素化ナトリウムや水素化カリウムが例示できる。この反応で使用できる有機溶媒は、反応基質と反応しない限り任意であるが、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが例示できる。反応温度は、通常0〜20℃程度で行われる。
Figure 2019187345
次いで、反応経路4として、反応経路3で得られた式(5)のアルキルジチオール化合物を還元して、目的の化合物である、式(1)の3−メチルブタン−1,3−ジチオールを得る。
還元反応は特に限定されないが、Birch反応が好適に使用できる。Birch反応の場合、ナトリウムやリチウムなどのアルカリ金属を、液体アンモニアなどの低温の溶媒中で式(5)の化合物と反応させて、アルキルチオ基をチオール基に還元することができる。
得られた3−メチルブタン−1,3−ジチオールは、適宜、減圧蒸留やカラムクロマトグラフィーによる精製などを行ってもよい。
以上の反応経路においては、反応の進行をガスクロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィーなどでモニタリングしながら反応時間を決定してもよい。また、反応終了後は、目的の反応生成物を有機溶剤で抽出後、乾燥させ、溶媒を除去して精製物を得てもよい。抽出に用いる有機溶剤は特に限定されないが、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ヘキサンなどが例示できる。得られた有機溶剤は、適宜洗浄(例えば、チオ硫酸ナトリウム水、水、炭酸ナトリウム水など)してもよい。乾燥方法も特に限定されないが、乾燥は無水硫酸マグネシウムなどの無水和物やシリカゲルなどを用いて乾燥を行ってよい。溶媒の除去は、一般的にはロータリーエヴァポレーターなどによる溶媒留去によって行うことができる。
(本発明の香料組成物)
本発明の香料化合物は、式(1)で表される3−メチルブタン−1,3−ジチオールを所定量含むものであって、飲食品に配合することができる。本発明の香料組成物の種類は特に限定されず、水溶性香料組成物、油溶性香料組成物、乳化香料組成物、粉末香料組成物が例示できる。
本発明の香料組成物は、飲食品に配合して、少なくともその飲食品の風味を改善する目的で使用できるものである。なお、例えば、本発明の香料組成物が柑橘様香気を呈する場合、飲食品に当該香料組成物を添加することで、風味改善および柑橘様の香りの付与がなされるものであってもよい。
本発明の香料組成物中の3−メチルブタン−1,3−ジチオールの濃度は、香料組成物の配合対象に応じて任意に決定できる。当該濃度の例として、香料組成物の全体質量に対して、1ppt〜1000ppm、好ましくは10ppt〜100ppm(本明細書において、「〜」はすべて、下限値および上限値を含む範囲を意味する)の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppmのいずれかとし、上限値を、1000ppm、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。また、好ましい濃度範囲の例として、100ppb〜1000ppm、100ppb〜100ppm、1ppm〜100ppm、および1ppm〜1000ppmの各範囲から、香料組成物の香気特性に応じて選択することができるが、これらに限定されない。なお、香料組成物の処方や香調にも依存するが、香料組成物中の3−メチルブタン−1,3−ジチオールの濃度が1ppt未満の場合は、人によっては当該香料組成物の配合による風味改善効果が低いと感じる場合があり、1000ppmを超える場合は、人によっては3−メチルブタン−1,3−ジチオール由来の香りが強く配合対象の香料組成物の香気および/または風味特性に好ましくない変質を与えると感じる場合がある。
また、本発明の香料化合物は、3−メチルブタン−1,3−ジチオールに加えて、さらに他の任意の化合物または成分を含有し得る。
そのような化合物または成分の例として、各種類の香料化合物または香料組成物、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、野菜エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、溶剤などを例示することができる。例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料、平成12年1月14日発行」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)、および「合成香料 化学と商品知識」(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)に記載されている天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。
合成香料化合物の例として、炭化水素化合物としては、α−ピネン、β−ピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5−ウンデカトリエンなどが挙げられる。
アルコール化合物としては、ブタノール、ペンタノール、3−オクタノール、ヘキサノールなどの直鎖・飽和アルカノール、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、プレノール、2,6−ノナジエノールなどの直鎖・不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、デカナール、ヒドロキシシトロネラールなどの直鎖・飽和アルデヒド、(E)−2−ヘキセナール、2,4−オクタジエナールなどの直鎖・不飽和アルデヒド、シトロネラール、シトラール、ミルテナール、ペリルアルデヒドなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、p−トリルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
ケトン化合物としては、2−ヘプタノン、2−ウンデカノン、1−オクテン−3−オン、アセトインなどの直鎖・飽和および不飽和ケトン、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、シクロテン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノンなどの直鎖および環状ジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α−イオノン、β−イオノン、β−ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
フランまたはエーテル化合物としては、フルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピラン、エストラゴール、オイゲノール、1,8−シネオールなどが挙げられる。
エステル化合物としては、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸イソアミル、2−メチル酪酸エチル、3−メチル酪酸エチル、イソ酪酸2−メチルブチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、カプロン酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、ノナン酸エチルなどの脂肪族エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリル、酢酸テルペニルなどのテルペンアルコールエステル、酢酸ベンジル、サリチル酸メチル、ケイ皮酸メチル、プロピオン酸シンナミル、安息香酸エチル、イソ吉草酸シンナミル、3−メチル−2−フェニルグリシド酸エチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
ラクトン化合物としては、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトンなどの飽和ラクトン、7−デセン−4−オリド、2−デセン−5−オリドなどの不飽和ラクトンが挙げられる。
酸化合物としては、酢酸、酪酸、オクタン酸、イソバレル酸、カプロン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸が挙げられる。
含窒素化合物としては、インドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチル、トリメチルピラジンなどが挙げられる。
含硫化合物としては、メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネート、3−メチル−2−ブテン−1−チオール、3−メチル−2−ブタンチオール、3−メチル−1−ブタンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、およびフルフリルメルカプタンなどが挙げられる。
天然精油としては、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ヒヤシンス、ライラック、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
各種動植物エキスとしては、ハーブまたはスパイスの抽出物、コーヒー、緑茶、紅茶、またはウーロン茶の抽出物や、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼおよび/またはプロテアーゼなどの各種酵素分解物などが挙げられる。
本発明の香料組成物は、本発明の化合物を公知の方法によって適切な溶媒や分散媒に配合して調製することができる。
本発明の香料組成物の形態としては、3−メチルブタン−1,3−ジチオールやその他成分を水溶性または油溶性の溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤、その他固体製剤(固形脂など)などが好ましい。
水溶性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2−プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。油溶性溶媒としては、植物性油脂、動物性油脂、精製油脂類(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの加工油脂や、トリアセチン、トリプロピオニンなどの短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる)、各種精油、トリエチルシトレートなどを例示することができる。
また、乳化製剤とするためには、3−メチルブタン−1,3−ジチオールを水溶性溶媒および乳化剤と共に乳化して得ることができる。3−メチルブタン−1,3−ジチオールの乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種類の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びおよびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインキラヤサポニン、カゼインナトリウムなどの乳化剤を使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、3−メチルブタン−1,3−ジチオール1質量部に対し、約0.01〜約100質量部、好ましくは約0.1〜約50質量部の範囲内が適当である。また、乳化を安定させるため、かかる水溶性溶媒液は水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種類または2種類以上の混合物を配合することができる。
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、アラビアガム、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜配合することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
本発明の香料組成物はさらに、必要に応じて、香料組成物において通常使用されている成分を含有していてもよい。例えば、水、エタノール等の溶剤や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライド等の香料保留剤を含有することができる。
(本発明の風味改善剤または香料組成物の飲食品への使用)
本発明の風味改善剤および香料組成物は、各種飲食品またはそれに用いる香料組成物に配合して使用することができる。
本発明の風味改善剤または香料組成物は、単独で香料組成物または飲食品に配合してもよいし、1種または2種以上の水溶性香料、乳化香料組成物、任意の香料化合物、天然精油(例えば、前掲の「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品香料」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」、および「合成香料 化学と商品知識」に記載される香料化合物)、から選択される1種以上と併せて配合してもよい。
本発明の風味改善剤または香料組成物を配合可能な飲食品は特に限定されないが、例として、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰などの各種フルーツ風味;ミルク、ヨーグルト、バターなどの乳風味;バニラ風味;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティーなどの各種茶風味;コーヒー風味;カカオ風味;ココア風味;スペアミント、ペパーミントなどの各種ミント風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ワサビなどの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウィスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの各種酒類風味;ニンジン、トマト、キュウリなどの野菜風味;;などの風味の1以上を有する飲料が挙げられる。
より具体的な飲食品例としては、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストなどのペースト類、などの菓子類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類;糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、および、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;
缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類(コーンスープ、トマトスープ、コンソメスープなど)、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、めんつゆ(昆布だしまたは鰹だしなど)、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素(昆布だしまたは鰹だしなど)、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、これらの調味料類が添加された動物性または植物性だし風味飲食品;チーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品;野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類;持ち帰り弁当の具や惣菜類;リンゴ、ぶどう、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果物の果汁や果汁飲料や果汁入り清涼飲料、果物の果肉飲料や果粒入り果実飲料;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜や、これら野菜類を含む野菜系飲料、野菜スープなどの野菜含有飲食品;コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、ワイン、ビール、ノンアルコールビール等の嗜好飲料品;生薬やハーブを含む飲料;コーラ飲料、果汁飲料、乳飲料、ビールテイスト飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、各種酒類(ビール風味、梅酒風味、チューハイ風味など)風味のアルコールテースト飲料などのノンアルコール嗜好飲料類;チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、いわゆる「第三のビール」などのその他醸造酒(発泡性)またはリキュール(発泡性)などのアルコール飲料類;などを挙げることができる。
本発明において、各種飲食品中の3−メチルブタン−1,3−ジチオールの濃度は、飲食品の風味や所望の効果の程度などに応じて任意に決定できる。例えば、当該濃度の例として、飲食品の全体質量に対して、0.001ppt〜100ppbの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を、0.001ppt、0.01ppt、0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppbのいずれか、上限値を、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、1ppt、0.1ppt、0.01pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい濃度の例として、飲食品の全体質量に対して、本発明の化合物の濃度として0.1ppt〜10ppb、0.1ppt〜100ppb、1ppt〜10ppb、1ppt〜100ppb、10ppt〜10ppb、10ppt〜100ppb、100ppt〜10ppb、および100ppt〜100ppbの各範囲から、飲食品の風味特性に応じて選択することができるが、これらに限定されない。なお、飲食品の種類や風味にも依存するが、飲食品中の本発明の化合物の濃度が0.001ppt未満の場合は、飲食した人によっては風味改善効果が低いと感じる場合があり、100ppbを超える場合は、飲食した人によっては配合対象の飲食品の風味に好ましくない変質を与えると感じる場合がある。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例に記載する濃度は、特に断りのない限り質量濃度を意味する。
[実施例1]3−メチルブタン−1,3−ジチオールの合成
以下の方法によって、3−メチルブタン−1,3−ジチオールを合成した。
Figure 2019187345
フラスコに式(2)の3−メチル−2−ブテナール(別名セネシオアルデヒド)(クラレ社製、16.8g、200.0mmol)、トリエチルアミン(1.0g、10.0mmol)を仕込み、氷水冷下撹拌した。系内へ、ベンジルメルカプタン(BnSH、24.8g、200.0mmol)を滴下した。滴下終了後、室温下24時間撹拌した後、メタノール(20.0g)を添加し、系内にNaBH(1.9g、30.1mmol)を添加した。添加終了後、室温下2時間撹拌し、水およびジエチルエーテルを加えて、有機層を分離後、当該有機層に対し飽和食塩水洗浄、乾燥、濃縮を順次行い、濃縮物を得た。得られた濃縮物を蒸留に供し、式(3)のアルコール化合物を収率85.1%、純度98.4%で得た。
次いで、フラスコに式(3)のアルコール化合物(21.1g、100.0mmol)、トリエチルアミン(15.3g、151.0mmol)、ジエチルエーテル(250mL)を仕込み、氷水冷下撹拌した。系内にメタンスルホニルクロリド(MsCl、13.8g、120.0mmol)とジエチルエーテル(50mL)との混合溶液を滴下した。滴下終了後、同温下5時間撹拌した。反応液を水、飽和食塩水にて順次洗浄後、エバポレーターによる濃縮を行い、式(4)のメシラート化合物の粗精製物を得た。
次いで、フラスコにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(220.0g)、水素化ナトリウム(60%、5.2g、128.7mmol)を仕込み、氷水冷下撹拌した。系内にベンジルメルカプタン(14.7g、118.0mmol)を滴下し、同温下30分撹拌した。その後、前工程で得られた式(4)のメシラート化合物の粗精製物(30.9g、107.3mmolと仮定)とDMF(20g)との混合溶液を滴下し、同温下1時間撹拌した。水を加えてヘキサンで抽出し、有機層を再度水洗浄した後、エバポレーターによる濃縮を行い、式(5)のビスベンジルチオエーテルの粗精製物を得た。
フラスコに液体アンモニアを仕込み、−60℃にて金属ナトリウム6.0g(261.1mmol)を加え、同温下撹拌した。系内に、前工程で得られた式(5)のビスベンジルチオエーテルの粗精製物物(20.0g、63.2mmolと仮定)とジエチルエーテル(20mL)の混合溶液を滴下し、同温下撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させた後、室温下終夜撹拌を行い、アンモニアを蒸発除去した。得られた反応物に対してジエチルエーテルおよび水を加えて有機層を分離後、水、飽和食塩水にて順次洗浄を行った。得られた有機層のエバポレーターによる濃縮を行い、濃縮物を得た。得られた濃縮物を蒸留に供し、式(1)の3−メチルブタン−1,3−ジチオールを収率19.1%(3工程)、純度98.3%で得た。
以上の方法で得られた化合物の物性データは以下の通りであった。
H−NMR(400MHz、CDCl):δppm
2.63−2.69(m,2H)、1.87−1.91(m,2H)、1.38(s,6H)
13C−NMR(100MHz、CDCl):δppm
51.3、44.38、32.61、20.61
MS(EI,7eV) m/z 27(4)、41(43)、47(27)、55(12)、57(14)、59(9)、61(27)、69(90)、75(31)、87(20)、89(3)、102(55)、103(15)、136(100)、137(8)、138(9).
以上のようにして合成した3−メチルブタン−1,3−ジチオールを、本発明の風味改善剤として以下の実施例に使用した。
[実施例2] 各種果物風味飲食品への添加効果
下記表に記載の一般的な処方に従って、オレンジ様基本調合香料組成物およびパイナップル様基本調合香料組成物を調製した。
Figure 2019187345
Figure 2019187345
得られた各基本調合香料組成物に、本発明の風味改善剤(3−メチルブタン−1,3−ジチオール)を0.1%含有するエタノール溶液を適当量配合して、本発明の風味改善剤を、それぞれ1ppt、10ppt、1ppb、1ppm、10ppmの濃度で含有する香料組成物を調製して、本発明品とした。そして、よく訓練されたパネラー15名に、各基本調合香料組成物を比較品として(オレンジ様基本調合香料組成物を比較品1、パイナップル様基本調合香料組成物を比較品2とした)、香気のボリューム感について非常に強くなった=4点、明らかに強くなった=3点、わずかに強くなった=2点、変化なし=1点、異味が感じられる=0点として点数付けさせるとともに、香気に関してコメントさせた。パネラー15名の平均した結果を表3に示す。
Figure 2019187345
次いで、本発明の香料組成物として本発明品2、3、4、5、6の香料組成物を使用して、市販のオレンジジュースに、3−メチルブタン−1,3−ジチオールのジュース中の質量濃度が0.001ppt、0.01ppt、1ppt、1ppb、10ppbとなるように配合して、本発明のフルーツ風味飲料を得た。同様にして、本発明品7、8、9、10、11の香料組成物を、市販のパイナップルジュースにオレンジジュースの場合と同じ各種濃度にて配合して、本発明の飲料を得た。
各果汁飲料について、よく訓練されたパネラー15名による官能評価を行った。官能評価では、前記パネラーに、「コク」、「余韻」および「好ましさ」について、無添加のジュースを比較品として、比較品と比べた風味について、非常に強くなった=4点、明らかに強くなった=3点、わずかに強くなった=2点、変化なし=1点、異味が感じられる=0点として点数付けさせるとともに、風味に関してコメントさせた。ここで、ボリューム感とは、全体的な厚み、コク、食べ応えなどが豊富であり、満足感を伴って好ましい感覚を意味する。パネラー15名の平均した結果を表4に示す。
Figure 2019187345
表4に示すように、本発明によって、果実風味飲食品のコクおよび余韻が増強され、ボリューム感が良好に増強され、バランスのよい香味が得られて、その結果、各種果物飲料の嗜好性を顕著に向上できることが確認された。
[実施例3] 各種乳風味飲食品への添加効果
市販のミルク入りコーヒー飲料または市販のヨーグルト風味飲料に、各飲料全体の質量に対して3−メチルブタン−1,3−ジチオールが下記表に記載の濃度となるように配合して、本発明の乳風味飲料を得た。これら本発明の飲料に対して、よく訓練されたパネラー15名による官能評価を行った。官能評価では、前記香料組成物無添加の市販品と比較したときの、「コク」、「余韻」、「好ましさ」について、非常に強くなった=4点、明らかに強くなった=3点、わずかに強くなった=2点、変化なし=1点、異味が感じられる=0点として点数付けさせるとともに、風味に関してコメントさせた。パネラー15名の平均した結果を表5に示す。
Figure 2019187345
表5に示すように、本発明品の乳風味飲料は、比較品と比べてコク、余韻が顕著に増強し、また、ボリューム感、ボディ感、良好な乳脂感、まろやかさなどが増強されたように感じられるとの評価であり、非常に嗜好性の高い飲料であることが確認された。
[実施例4] 各種ビール風味飲料への添加効果
市販のビール風味飲料として、市販のノンアルコールビールおよび発泡酒を用意し、本発明の風味改善剤(本発明品1)を下記表に記載の濃度となるよう配合して、本発明のビール風味飲料を得た。一方で、比較例として、チオール化合物である3−メチル−1−ブタンチオールを下記表6に記載の濃度となるよう配合して、比較品のビール風味飲料を得た。この化合物は、ビールから同定されたことが知られているものである。
次いで、何も配合していない市販のノンアルコールビール飲料および発泡酒を対照品として、15名のよく訓練されたパネラーによる官能評価を行った。官能評価では、「コク」、「飲みごたえ」、「余韻」、「好ましさ」について、以下の基準を用いて点数付けをさせるとともに、風味に対するコメントを記入させた。パネラー15名の平均した結果を表6に示す。
(官能評価の点数基準)
0:対照品より低下した、1:同等である、2:やや増強されている、3:はっきり増強されている、4:大幅に増強されている
Figure 2019187345
表6に示すように、本発明品のビール風味飲料は、比較品と比べてコク、ボリューム感、飲み応え、余韻が顕著に増強し、また、ホップ様の良好な苦味と呈味も増強されたように感じられるとの評価であり、本物のビールと同様のコクと満足感が感じられて、非常に嗜好性の高い飲料であることが確認された。また、炭酸刺激および喉ごしも良好であった。
[実施例5]だし風味を有する食品への添加効果
市販のコーンスープおよびおでん用つゆを用意し、本発明の風味改善剤(本発明品1)を下記表7に記載の濃度となるよう配合し、本発明のだし風味食品を得た。一方で、比較例として、チオール化合物であるメタンチオールを下記表7に記載の濃度となるよう配合して、比較品のコーンスープおよびおでん用つゆを得た。この化合物は、魚節用香料組成物に使用できることが、特開2004−135522号公報に記載されている。
次いで、何も配合していない市販のコーンスープおよびおでん用つゆを対照品として、15名のよく訓練されたパネラーによる官能評価を行った。官能評価では、「コク」、「飲みごたえ」、「余韻」、「好ましさ」について、以下の基準を用いて点数付けをさせるとともに、風味に対するコメントを記入させた。パネラー15名の平均した結果を表7に示す。
(官能評価の点数基準)
0:対照品より低下した、1:同等である、2:やや増強されている、3:はっきり増強されている、4:大幅に増強されている
Figure 2019187345
表7に示すように、本発明品のだし風味食品は、比較品と比べてコク、ボリューム感、飲み応え、余韻が顕著に増強し、また、旨味の増強によってボディ感が増し、まろやかさも増強されたように感じられ、素材をふんだんに使用したような満足感があるとの評価であり、非常に嗜好性の高い食品であることが確認された。
[実施例6]コーヒー風味への添加効果
市販のブラックコーヒーを用意し、本発明の風味改善剤(本発明品1)を下記表8に記載の濃度となるよう配合し、本発明のコーヒー飲料を得た。一方で、比較例として、チオール化合物であるメタンチオールを下記表8に記載の濃度となるよう配合して、比較品のコーヒー飲料を得た。この化合物は、コーヒー用香料組成物に使用できることが、特開2006−20526号公報に記載されている。
次いで、何も配合していないブラックコーヒーを対照品として、15名のよく訓練されたパネラーによる官能評価を行った。官能評価では、「コク」、「飲みごたえ」、「余韻」、「好ましさ」について、以下の基準を用いて点数付けをさせるとともに、風味に対するコメントを記入させた。パネラー15名の平均した結果を表8に示す。
(官能評価の点数基準)
0:対照品より低下した、1:同等である、2:やや増強されている、3:はっきり増強されている、4:大幅に増強されている
Figure 2019187345
表8に示すように、本発明品のコーヒー飲料は、比較品と比べてコク、ボリューム感、飲み応え、余韻が顕著に増強し、また、旨味や香ばしさも増強され、またバランスも向上したように感じられるとの評価であり、非常に嗜好性の高い飲料であることが確認された。

Claims (5)

  1. 式(1)で表される3−メチルブタン−1,3−ジチオールを有効成分とする、飲食品の風味改善剤。
    Figure 2019187345
  2. 請求項1に記載の風味改善剤を含有する、香料組成物。
  3. 式(1)で表される化合物の濃度が1ppt〜1000ppmである、請求項2に記載の香料組成物。
  4. 請求項1に記載の風味改善剤、または請求項2もしくは3に記載の香料組成物が、式(1)で表される化合物として0.001ppt〜100ppb配合されてなる、風味の改善された飲食品。
  5. 前記風味改善剤または香料組成物を、式(1)で表される化合物として0.001ppt〜100ppbの濃度で飲食品に配合することを含む、飲食品の風味改善方法。
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