JP2019186213A - 触媒層、膜電極接合体、固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の課題は、物質輸送性に優れた触媒層、つまり、固体高分子形燃料電池の膜電極接合体を構成した場合に、長期的に高い発電性能を発揮することが可能な触媒層を提供することである。
(1)触媒物質、触媒物質を担持する導電性担体、高分子電解質、および繊維状物質を含む層形成物質と、層形成物質が存在しない部分である複数の細孔と、を有する。
(2)複数の細孔が連続的に繋がって形成された三次元ネットワークからなる通路を有する。
(3)高分子電解質膜に対する接合面と直交する断面の面積に対する細孔の合計面積の割合である細孔面積率が、この断面の走査型電子顕微鏡による画像において、25.0%以上35.0%以下である。
なお、本発明は、以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識を基に設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も、本発明の範囲に含まれるものである。また、各図面は、理解を容易にするため適宜誇張して表現している。
図2に示すように、本実施形態の触媒層10は、高分子電解質膜11との接合面を有し、層構成物質として、触媒物質12、導電性担体13、高分子電解質14、繊維状物質15を含み、層形成物質が存在しない部分が細孔である。
次に、例えば、トリミング、フィルタリング、2値化等の画像処理を行うことにより、細孔を可視化する。図1に示すように、この2値化された画像において、細孔を構成する画素は黒画素として表される。そして、ひと続きとなっている黒画素の数を計測し、この黒画素数と一画素の面積との積を算出することにより、一つの細孔の面積を得る。また、断面SEM画像内の全ての細孔の面積を算出して合計した面積Spの、2値化画像全体の面積S0に対する割合を、細孔面積率(Sp/S0)として得る。
触媒層10は、断面SEMにおいて、膜側の面積率(高分子電解質膜11との接合面から0.5μm以上5.5μm以下の範囲に存在する細孔の面積率)よりも、反膜側の面積率(接合面とは反対面から0.5μm以上5.5μm以下の範囲に存在する細孔の面積率)の方が大きい。このような構成を有することにより、触媒層10には、より十分なガス拡散性及び排水性を備えた隙間が形成される。膜側の面積率が25.0%以上30.0%以下であり、反膜側の面積率が30.0%以上35.0%以下であることがより好ましい。
また、炭化水素系高分子電解質としては、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等を用いることができる。
また、繊維状物質15の繊維長は1〜50μmが好ましく、1〜20μmがより好ましい。繊維長をこの範囲にすることにより、触媒層10の強度を高めることができ、形成時にクラックが生じることを抑制できる。また、触媒層内の空隙を増加させることができ、高出力化が可能になる。
図3に示すように、本実施形態の膜電極接合体1は、高分子電解質膜11と、高分子電解質膜11のそれぞれの面に接合された触媒層10C、10Aとを備えている。本実施形態では、高分子電解質膜11の上面に形成される触媒層10Cは、酸素極を構成するカソード側の触媒層であり、高分子電解質膜11の下面に形成される触媒層10Aは、燃料極を構成するアノード側の触媒層である。以下、一対の触媒層10C、10Aは、区別する必要がない場合には、「触媒層10」と略記する場合がある。なお、触媒層10の外周部は、ガスケット等(図示せず)によりシールされていてもよい。
先ず、少なくとも上述した触媒物質12と導電性担体13と高分子電解質14と、必要に応じて繊維状物質15とを溶媒に混合し、分散処理を加えることで触媒インクを作製する。
分散処理には、例えば、遊星型ボールミル、ビーズミル、超音波ホモジナイザー等の様々な手法を用いることが可能である。
触媒インク中には、揮発性の液体有機溶剤が少なくとも含まれることが望ましいが、溶媒として低級アルコールを用いたものは発火の危険性が高いため、このような溶媒を用いる際は水との混合溶媒にするのが好ましい。水の添加量は、高分子電解質14が分離して白濁を生じたり、ゲル化したりしない程度であれば特に制限はない。
高分子電解質膜11を基材とする場合には、例えば、高分子電解質膜11の表面に触媒インクを直接塗布した後、触媒インクの塗膜から溶媒成分を除去して触媒層10を形成してもよい。
また、基材として転写用基材を使用する場合には、先ず、転写用基材の上に触媒インクを塗布・乾燥することで、触媒層付き転写基材を作製する。その後、触媒層付き転写基材の触媒層10の表面と高分子電解質膜11とを接触させて加熱・加圧することで、両者を接合する。その後、触媒層10から転写基材を剥離する。
このような三次元ネットワークからなる通路が形成されていることは、後述するように断面SEM像により調べることが可能である。
例えば、触媒層10中の高分子電解質14の配合率は、導電性担体13の重量に対して同程度から半分程度が好ましい。また、繊維状物質15の配合率は、導電性担体13の重量に対して同程度から半分程度が好ましい。触媒インクの固形分比率は、薄膜に塗工できる範囲で、高いほうが好ましい。
図4に示すように、本実施形態の固体高分子形燃料電池3は、膜電極接合体1と、ガス拡散層17Cと、ガス拡散層17Aとを備えている。ガス拡散層17Cは、膜電極接合体1のカソード側の触媒層10Cと対向して配置されている。また、ガス拡散層17Aは、膜電極接合体1のアノード側の触媒層10Aと対向して配置されている。そして、カソード側の触媒層10C及びガス拡散層17Cにより酸素極2Cが構成され、アノード側の触媒層10A及びガス拡散層17Aにより燃料極2Aが構成されている。また、高分子電解質膜11の触媒層が接合されていない外周部分からのガスリークを防ぐため、酸素極(カソード)側のガスケット16C及び燃料極(アノード)側のガスケット16Aが配置されている。
固体高分子形燃料電池3では、燃料極2Aにおいて下記の反応式(1)で表される反応が生じ、酸素極2Cにおいて下記の反応式(2)で表される反応が生じる。
H2→2H++2e-…(1)
1/2O2+2H++2e-→H2O…(2)
このように、本実施形態における固体高分子形燃料電池3は、酸素極2Cに対して酸素を含有するガスが供給されることによって、酸素極2Cにおいて水を生成する燃料電池である。
すなわち、本実施形態によれば、触媒層中の細孔の割合、細孔のサイズおよびその分布を規定することで、固体高分子形燃料電池の運転において十分な排水性及びガス拡散性を有し、長期的に高い発電性能を発揮することが可能な触媒層、膜電極接合体が提供できる。そして、長期的に高い発電性能を発揮することが可能な固体高分子形燃料電池が提供できる。
ここで、上記反応式(2)に示すように、酸素極2Cにおいては、酸素、プロトン、および、電子から水が生成される。そして、酸素極2Cにおいて生成された水が酸素極2C外に排出されない場合には、酸素極2Cへの酸素含有ガスの供給が水によって妨げられてしまう。このような状態になると、固体高分子形燃料電池3の発電性能が低下してしまう。
これに対し、本実施形態の触媒層10は、上述した各条件を満たすことによって高い排水性を有することから、酸素極2Cが備える触媒層10Cとして使用された場合は、固体高分子形燃料電池3の発電性能を高める効果を、より顕著に得ることができる。
なお、図4に示す固体高分子形燃料電池3は、膜電極接合体を一つ含む単セル構造の固体高分子形燃料電池であるが、一態様の触媒層は、複数の単セルが積層された構造の固体高分子形燃料電池を構成することもできる。
[膜電極接合体の作製]
以下の方法で実施例1〜5および比較例1〜5の膜電極接合体を作製した。
実施例1では、白金担持カーボン触媒(TEC10E50E,田中貴金属工業社製)と水と1−プロパノールと高分子電解質(ナフィオン(登録商標)分散液,和光純薬工業社製)とカーボンナノファイバー(VGCF−H(登録商標),昭和電工社製)とを混合した。白金担持カーボン触媒は、白金触媒がカーボン粒子に担持されたものであり、カーボン粒子と高分子電解質との配合比を質量比で1:1とした。混合物に対して遊星型ボールミルで60分間にわたって300rpmで分散処理を行い、触媒インクを調製した。その際、直径5mmのジルコニアボールをジルコニア容器の3分の1程度加えた。高分子電解質の質量は炭素粒子の質量に対して100質量%、繊維状物質の質量は炭素粒子の質量に対して100質量%、分散媒中の水の割合は50質量%、インクにおける固形分含有量は10質量%となるように調整した。
実施例3では、カソード側触媒層を形成する際の触媒インクの塗布量を2倍とした以外は、実施例1と同様にして、膜電極接合体を得た。
実施例4では、カーボンナノファイバーの量を実施例1の2分の1としたとした以外は、実施例1と同様にして、膜電極接合体を得た。
比較例2では、カソード側触媒層の形成に用いる触媒インク中の水および1−プロパノールの含有率を2倍とした以外は、実施例1と同様にして、膜電極接合体を得た。
比較例3では、カソード側触媒層に用いる繊維状物質として、カーボンナノファイバーではなくカーボンナノチューブ(NC7000(商標),Nanocyl社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜電極接合体を得た。
比較例4では、カソード側触媒層のカーボンナノファイバーの量を実施例1の10分の1とした以外は、上記実施例1と同様にして、膜電極接合体を得た。
比較例5では、カソード側触媒層の形成に用いる触媒インク中にカーボンナノファイバーを含有させなかった以外は、実施例1と同様にして、膜電極接合体を得た。
実施例1〜5の膜電極接合体及び比較例1〜5の膜電極接合体を構成するカソード側触媒層について、細孔面積率(Sp/S0)と、全ての細孔の合計面積Spに対する、面積が90000nm2より大きい細孔の合計面積Sgの割合(Sg/Sp)と、カソード側触媒層の厚みTを調べた。また、実施例1〜5の膜電極接合体及び比較例1〜5の膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池の発電性能を測定した。これらについて、以下に説明する。
細孔面積率(Sp/S0)は、断面SEM像を取得し、画像処理することにより導出した。具体的には、先ず、各膜電極接合体について、約2mm角の小片を5ヶ所から切り出した。各小片を、日本電子社製クライオクロスセクションポリッシャ装置「IB−19520CCP」を用いて加工し、カソード側触媒層の高分子電解質膜との接合面と直交する断面を露出させた。次に、各カソード側触媒層の断面を、日立ハイテクノロジー社製FE-SEM装置「S-4800」を用いて15000倍で撮像して、2560×1920の解像度で断面SEM像を取得した。
取得した各断面SEM像について、オープンソースの画像処理ソフト「Image J」を用いて、図5のような画像処理を行うことで、個々の細孔の面積の一覧を得た。なお、ひと続きの黒画素が10画素より少ないものは、ノイズと見なして除外した。
また、上述の方法で得られた高分子電解質膜との界面近傍(膜側)の細孔面積率と、高分子電解質膜と接合していない表面近傍(反膜側)の細孔面積率を用いて、膜側細孔面積率と反膜側細孔面積率の大小関係を調べた。具体的には、各膜電極接合体につき15ヶ所でその大小関係を確認し、多く見られた方を採用した。
上述の断面SEM像を画像処理して得た各細孔の面積の一覧から90000nm2より大きい細孔を抜き出してその合計面積Sgを算出し、これを全ての細孔の合計面積Spで除することで、Sg/Spを導出した。
カソード側触媒層の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてカソード側触媒層の断面を観察して計測した。具体的には、上述の細孔面積率の導出に用いた断面を、日立ハイテクノロジー社製「FE-SEM S-4800」を使用して1000倍で観察し、各小片につき5カ所の観察点における触媒層の厚みを計測して、25ヶ所の平均値を各膜電極接合体のカソード側触媒層の厚みTとした。
触媒層に、複数の細孔が連続的に繋がった三次元ネットワークからなる通路が形成されているか否かを、以下の方法で計測した。
上述の細孔面積率の導出に用いたカソード側触媒層の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する。そして、図1に示すような触媒層の厚み方向(紙面上下方向)をY方向、厚み方向と垂直方向をX方向(紙面左右方向)とし、先ず、ある行YaにおけるX方向の黒画素数(細孔を構成する画素)を積算する。次に、積算した黒画素数を、ある行Yaを構成する全画素数で割ることで、ある行Yaにおける細孔割合を算出する。この操作をY方向における各行で行う。
その結果、すべての行において、算出された細孔割合が10%以上であれば、触媒層に複数の細孔が連続的に繋がった三次元ネットワークからなる通路が形成できていると判断できる。
各膜電極接合体の両面にガス拡散層及びガスケット、セパレーターを配置し、所定の面圧となるように締め付けることで、評価用単セルを作製した。各評価用単セルについて、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の刊行している小冊子である「セル評価解析プロトコル」に記載のI−V測定を実施した。
電圧が0.6Vのときの電流が30A以上である場合を「○」、30A未満である場合を「×」、20A未満である場合を「××」とした。
以上の結果を表1に示す。
2C…酸素極
2A…燃料極
3…固体高分子形燃料電池
10…触媒層
10A…アノード側の触媒層
10C…カソード側の触媒層
11…高分子電解質膜
12…触媒物質
13…導電性担体
14…高分子電解質
15…繊維状物質
16C,16A…ガスケット
17C,17A…ガス拡散層
18C,18A…セパレーター
19C,19A…ガス流路
20C,20A…冷却水流路
Claims (9)
- 高分子電解質膜に対する接合面を有する触媒層であって、
触媒物質、前記触媒物質を担持する導電性担体、高分子電解質、および繊維状物質を含む層形成物質と、前記層形成物質が存在しない部分である複数の細孔と、を有し、
前記複数の細孔が連続的に繋がって形成された三次元ネットワークからなる通路を有し、
前記接合面と直交する断面の面積に対する前記細孔の合計面積の割合である細孔面積率が、前記断面の走査型電子顕微鏡による画像において、25.0%以上35.0%以下である触媒層。 - 前記画像において、前記細孔の合計面積に対する、面積が90000nm2より大きい細孔の合計面積の割合が15.0%以上30.0%以下である請求項1に記載の触媒層。
- 前記画像において、前記接合面から0.5μm以上5.5μm以下の範囲での前記細孔面積率である膜側細孔面積率よりも、前記接合面とは反対面から0.5μm以上5.5μm以下の範囲での前記細孔面積率である反膜側細孔面積率の方が大きい請求項1または2に記載の触媒層。
- 前記膜側細孔面積率が25.0%以上30.0%以下であり、前記反膜側細孔面積率が30.0%以上35.0%以下である請求項3に記載の触媒層。
- 前記繊維状物質として、電子伝導性繊維およびプロトン伝導性繊維の少なくともいずれかを含む請求項1乃至4のいずれか一項に記載の触媒層。
- 前記繊維状物質として電子伝導性繊維を含み、前記電子伝導性繊維は、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、および遷移金属含有繊維から選択される少なくとも一種である請求項5に記載の触媒層。
- 厚みが5μm以上30μm以下である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の触媒層。
- 高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の両面にそれぞれ接合されたアノード側触媒層およびカソード側触媒層と、を有する膜電極接合体であって、
前記アノード側触媒層および前記カソード側触媒層の少なくともいずれかが、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の触媒層である膜電極接合体。 - 請求項8記載の膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池。
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