JP2019177510A - インクジェット記録用前処理液、インクジェット記録液セット、インクジェット記録用前処理液の製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法 - Google Patents

インクジェット記録用前処理液、インクジェット記録液セット、インクジェット記録用前処理液の製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、非吸収性基材への画像定着性、保存安定性及びラミネート強度に優れ、かつ、高画質な印字を可能とするインクジェット記録用前処理液を提供することである。【解決手段】本発明のインクジェット記録用前処理液は、水不溶性樹脂微粒子、凝集剤、架橋剤及び水を含有し、水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子を含有することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用前処理液、インクジェット記録液セット、インクジェット記録用前処理液の製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法に関し、より詳しくは、非吸収性基材への画像定着性、保存安定性及びラミネート強度に優れ、かつ、高画質な印字を可能とするインクジェット記録用前処理液、インクジェット記録液セット、インクジェット記録用前処理液の製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方式は簡便かつ安価に画像作製できるため、近年、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。
軟包装分野でも、小ロット多品種化の流れがあり、インクジェット記録方法などのデジタル印刷が注目されている。
インクジェット記録方式において、画像定着性を持たせるために、極性の高い樹脂と架橋剤との混合受像層を形成する方法(特許文献1参照。)、インクの固定化と画像耐久性とを持たせるために、極性の高い樹脂、架橋剤及び凝集剤を含有する前処理液を基材に付与する方法(特許文献2参照。)が知られている。しかし、このような方法では、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)などの低極性な非吸収性基材への画像定着性を得ることはできない。
一般的に、低極性の非吸収性基材への画像密着性を高める手段として、低極性のオレフィン部位を持つ定着樹脂を含む処理液を付与した後にインクで印字する方法が知られている(特許文献3参照。)。しかし、オレフィン樹脂は、高速印刷時にインクを固定化するために必要な凝集剤及び耐水性付与やラミネート適性向上に必要な架橋剤と混合し処理液とすると、オレフィン樹脂と凝集剤・架橋剤との相溶性が悪いことから、処理液の保存安定性が悪くなってしまう。また、耐水性の観点から、オレフィン樹脂を含む処理液にインク中の成分と架橋反応できる架橋剤を添加しても(特許文献4参照。)、包装材に求められる程の画像の定着性、耐水性及びラミネート強度が得られないといった問題がある。
特許第5997621号公報 特表2015−535314号公報 特開2017−125158号公報 国際公開第2014/087670号
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、非吸収性基材への画像定着性、保存安定性及びラミネート強度に優れ、かつ、高画質な印字を可能とするインクジェット記録用前処理液、インクジェット記録液セット、インクジェット記録用前処理液の製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、水不溶性樹脂微粒子、凝集剤、架橋剤及び水を含有し、水不溶性樹脂微粒子がポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子を含有することにより、非吸収性基材への画像定着性、保存安定性及びラミネート強度に優れ、かつ、高画質な印字を可能とするインクジェット記録用前処理液、インクジェット記録液セット、インクジェット記録用前処理液の製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法を提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.水不溶性樹脂微粒子、凝集剤、架橋剤及び水を含有するインクジェット記録用前処理液であって、
前記水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録用前処理液。
2.前記水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に乳化されて形成された複合樹脂粒子を含有することを特徴とする第1項に記載のインクジェット記録用前処理液。
3.前記水不溶性樹脂微粒子におけるポリウレタン系樹脂(U)及びポリオレフィン系樹脂(O)の質量比率(U/O)の値が、40/60〜95/5の範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のインクジェット記録用前処理液。
4.前記架橋剤が、カルボジイミド基又はオキサゾリン基を有する化合物を含有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液。
5.前記凝集剤が、多価金属塩又は有機酸を含有することを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液。
6.前記ポリウレタン系樹脂におけるポリオール成分が、カーボネート基又はエーテル基を有することを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液。
7.前記架橋剤の含有量が、前記水不溶性樹脂微粒子の含有量(100質量部)に対し、3〜100質量部の範囲内であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液。
8.インクジェット記録用前処理液と、顔料、有機溶剤及び水を少なくとも含有するインクジェット記録インクとを組み合わせたインクジェット記録液セットであって、
前記インクジェット記録用前処理液が、第1項から第7項までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液であり、
前記インクジェット記録用前処理液が、凝集剤を含有し、
前記凝集剤が、前記インクジェット記録インクが含有する顔料を凝集させる凝集剤であることを特徴とするインクジェット記録液セット。
9.第1項から第7項までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液を製造するインクジェット記録用前処理液の製造方法であって、
ポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂とを乳化分散して複合樹脂粒子を形成する工程と、
前記複合樹脂粒子、前記凝集剤、前記架橋剤及び前記水を混合する工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録用前処理液の製造方法。
10.基材と、
前記基材上に、第1項から第7項までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液を用いて形成された前処理層と、
前記前処理層上に、インクジェット記録インクを用いて形成された印刷層と、
を有することを特徴とする印刷物。
11.前記基材が、非吸収性のフィルム基材であることを特徴とする第10項に記載の印刷物。
12.第1項から第7項までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液、又は第8項に記載のインクジェット記録液セットを用いて、基材に画像の記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
13.前記基材が、非吸収性のフィルム基材であることを特徴とする第12項に記載のインクジェット記録方法。
本発明の上記手段により、非吸収性基材への画像定着性、保存安定性及びラミネート強度に優れ、かつ、高画質な印字を可能とするインクジェット記録用前処理液、インクジェット記録液セット、インクジェット記録用前処理液の製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
ポリウレタン系樹脂微粒子とポリオレフィン系樹脂微粒子とは、その極性が異なることから、混合樹脂液の安定性が低い。さらに、この混合樹脂液に架橋剤を混合すると、ポリオレフィン系樹脂微粒子と架橋剤との相溶性が低いため、前処理液の保存安定性を保つことができない。しかし、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子とすると、前処理液中で架橋剤と接するのは、架橋剤と相溶性が高いポリウレタン系樹脂となるため、前処理液の安定性が向上する。
また、ポリウレタン系樹脂と架橋剤との相溶性は高く、ポリオレフィン系樹脂と架橋剤との相溶性は低い。そのため、ポリオレフィン系樹脂微粒子とポリウレタン系樹脂微粒子と架橋剤とが含有される前処理液から得られる前処理層では、架橋剤とインク中の顔料分散体や樹脂が架橋し共有結合を形成できたとしても、架橋剤とポリオレフィン樹脂微粒子との相溶性が低く相互作用が小さいことから、インクがはがれやすくなるため、画像定着性やラミネート強度が落ちてしまう。
これに対し、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子と架橋剤を含有する前処理液から得られる前処理層では、架橋剤とインク中の顔料分散体や樹脂とが架橋し共有結合を形成できれば、「複合樹脂粒子のポリウレタン系樹脂−架橋剤−インク中の顔料分散体や樹脂」の間で、強固な結合が形成されるため、画像定着性やラミネート強度が向上する。
本発明に好ましい前処理/インクジェット記録装置の一例を示す模式図 本発明の印刷物の概略構成を示す断面図
本発明のインクジェット記録用前処理液は、水不溶性樹脂微粒子、凝集剤、架橋剤及び水を含有し、水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子を含有することを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に乳化されて形成された複合樹脂粒子を含有することが好ましい。凝集剤との相溶性に優れるポリウレタン系樹脂が凝集剤と接することによって、当該凝集剤を安定化し、前処理液としての保存安定性を向上させることができる。
また、水不溶性樹脂微粒子におけるポリウレタン系樹脂(U)及びポリオレフィン系樹脂(O)の質量比率(U/O)の値が、40/60〜95/5の範囲内であることが好ましい。当該範囲内であれば、ポリウレタン系樹脂微粒子によるポリオレフィン系樹脂微粒子の安定化が良好になり、また、複合樹脂粒子間のポリウレタン系樹脂部位で水素結合が形成されるため、本発明の効果を得る観点から好ましい態様である。
また、樹脂と混合した後の保存安定性に優れ、安全性が高いことから、架橋剤が、カルボジイミド基又はオキサゾリン基を有する化合物を含有することが好ましい。
また、ポリウレタン系樹脂と凝集剤との相溶性を向上させる観点から、凝集剤が、多価金属塩又は有機酸を含有することが好ましい。
また、画像定着性の観点から、ポリウレタン系樹脂におけるポリオール成分がカーボネート基又はエーテル基を有することが好ましい。
また、ラミネート強度、密着性及び保存安定性の観点から、架橋剤の含有量が、水不溶性樹脂微粒子の含有量(100質量部)に対し、3〜100質量部の範囲内であることが好ましい。
本発明は、インクジェット記録用前処理液と、顔料、有機溶剤及び水を少なくとも含有するインクジェット記録インクとを組み合わせたインクジェット記録液セットであって、インクジェット記録用前処理液が、本発明のインクジェット記録用前処理液であり、インクジェット記録用前処理液が、凝集剤を含有し、凝集剤が、インクジェット記録インクが含有する顔料を凝集させる凝集剤であるインクジェット記録液セットを提供することができる。
本発明は、本発明のインクジェット記録用前処理液を製造するインクジェット記録用前処理液の製造方法であって、ポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂とを乳化分散して複合樹脂粒子を形成する工程と、複合樹脂粒子、凝集剤、架橋剤及び水を混合する工程と、を有するインクジェット記録用前処理液の製造方法を提供することができる。
本発明は、基材と、基材上に、本発明のインクジェット記録用前処理液を用いて形成された前処理層と、前処理層上に、インクジェット記録インクを用いて形成された印刷層と、を有する印刷物を提供することができる。
本発明のインクジェット記録用前処理液を用いて作製された印刷物は、基材として非吸収性のフィルム基材を適用することができる。
本発明は、本発明のインクジェット記録用前処理液、又は本発明のインクジェット記録液セットを用いて、基材に画像の記録を行うインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクジェット記録方法は、基材として非吸収性のフィルム基材を適用することができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
《インクジェット記録用前処理液》
本発明のインクジェット記録用前処理液(以下、単に前処理液ともいう。)は、水不溶性樹脂微粒子、凝集剤、架橋剤及び水を含有し、水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子を含有することを特徴とする。
〈水不溶性樹脂微粒子〉
本発明に係る水不溶性樹脂微粒子は、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子を含有することを特徴とする。
なお、本発明において、「水不溶性樹脂」とは、樹脂を105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下、好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である樹脂をいう。ただし、樹脂が塩生成基を有する場合、溶解量は、その種類に応じて、樹脂の塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和したときの溶解量である。
ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された状態は、種々の態様を取り得るが、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂中に複数の粒子として分散されていてもよく、また、ポリオレフィン系樹脂がコアを形成し、ポリウレタン系樹脂をシェルとするコア・シェル構造を形成してもよい。なお、ポリオレフィン系樹脂が一部表面に表出するように含有されていてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、他種の樹脂を含有してもよい。
水不溶性樹脂微粒子は、前処理液の全質量(100質量%)に対して、1〜30質量%の範囲内で含有されていることが好ましく、2〜20質量%の範囲内で含有されていることが、前処理液としての保存安定性やブルーミング(画像表面に樹脂や凝集剤が析出・結晶化する現象))を抑制する観点から好ましい。
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂としては、不飽和カルボン酸及び/又は酸無水物で変性されたポリオレフィン等の変性ポリオレフィンが挙げられる。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体の他、エチレン及び/又はプロピレンと、他のコモノマー、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンなどの炭素数2以上、好ましくは2〜6のα−オレフィンコモノマーとのランダム共重合体又はブロック共重合体(例えば、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体など)が挙げられる。また、これらの他のコモノマーを2種類以上共重合したものでもよい。
また、これらのポリマーを2種以上混合して用いることもできる。
変性ポリオレフィンとしては、不飽和カルボン酸及び/又は酸無水物及び/又は1分子あたり1個以上の二重結合を有する化合物で変性されたポリオレフィンが好ましく用いられる。
不飽和カルボン酸及び酸無水物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸などの、α,β−不飽和カルボン酸及びその無水物が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよく、2種以上併用した場合、塗膜物性が良好になることが多い。
上記1分子あたり1個以上の二重結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸系モノマーとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、ジ(メタ)アクリル酸(ジ)エチレングリコ−ル、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロ−ルプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、アクリルアミド等が挙げられる。また、スチレン系モノマーとして、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。さらに、この他に併用し得るモノマーとしては、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、バーサチック酸のビニルエステル等のビニル系モノマーが挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸を示す。
ポリオレフィンの変性は、ポリオレフィンを一旦トルエン又はキシレンのような有機溶剤に溶解させ、ラジカル発生剤の存在下にα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物及び/又は1分子あたり1個以上の二重結合を有する化合物で行うか、又は、ポリオレフィンの軟化温度又は融点以上まで昇温できる溶融状態で反応させることができるオートクレーブ、又は1軸又は2軸以上の多軸エクストルーダー中で、ラジカル発生剤の存在下又は不存在下にα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物及び/又は1分子あたり1個以上の二重結合を有する化合物を用いて行う。
該変性反応に用いられるラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーフタレート、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシエチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドのようなパーオキサイド類や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらの過酸化物を使用してグラフト共重合させる場合、その過酸化物量はポリオレフィン100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲内が好ましく、特に好ましくは0.5〜30質量部の範囲内である。
以上の乳化原料としてのポリオレフィン系樹脂は、公知の方法で製造されたものでよく、それぞれの製造方法や変性度合については特に限定されない。
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂は、重量平均分子量が20000〜100000の範囲内であることが好ましい。20000以上であると、塗膜の凝集力が強くなり、密着性や耐溶剤性(耐ガソホール性)のような塗膜物性が向上する。100000以下であると、有機溶剤に対する溶解性がよく、乳化分散体の粒子径の微小化が促進される。
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される値であり、例えば、株式会社島津製作所製「RID−6A」(カラム:東ソー株式会社製「TSK−GEL」、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、カラム温度:40℃)を用いて、ポリスチレン標準試料で作成した検量線から求めることができる。
また、本発明では市販のポリオレフィン系樹脂を用いることもでき、ポリオレフィン構造を有する樹脂からなる樹脂微粒子として、日本製紙社製「アウローレン150A」(ポリオレフィン樹脂微粒子)、「スーパークロンE−415」(ポリプロピレン樹脂微粒子)、「アウローレンAE−301」(ポリオレフィン樹脂微粒子)、東洋化成社製「ハードレンNa−1001」等の市販品を用いることができる。
(ポリウレタン系樹脂)
ポリウレタン系樹脂としては、親水基を有するものが用いられる。親水基を導入することで、ポリオレフィン系樹脂に対する乳化剤としての機能を、ポリウレタン系樹脂に付与することができ、ポリオレフィン系樹脂の乳化分散体である複合樹脂粒子を得ることができる。
このような親水基としては、カルボキシ基(−COOH)及びその塩、スルホン酸基(−SOH)及びその塩などが挙げられる。
上記塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アミン塩などが挙げられる。これらの中でも、親水基としては、カルボキシ基又はその塩が好ましい。
複合樹脂粒子に使用し得るポリウレタン系樹脂は、分子内に水溶性官能基を有する自己乳化型ポリウレタンを分散させた水分散体、又は界面活性剤を併用して強力な機械剪断力の下で乳化した強制乳化型ポリウレタンの水分散体であることが好ましい。上記水分散体におけるポリウレタン系樹脂は、ポリオールと有機ポリイソシアネート及び親水基含有化合物との反応により得られるものである。
ポリウレタン系樹脂水分散体の調製に使用し得るポリオールとして、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオールのいずれも使用することができる。中でも、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールを用いて、ウレタン系樹脂中に、カーボネート基又はエーテル基を有する構造とすることが、凝集剤との相溶性に優れるため好ましい。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−及び1,4−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール等の低分子ポリオールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフラン酸、エンドメチンテトラヒドロフラン酸、ヘキサヒドロフタル酸などの多価カルボン酸との縮合物を挙げることができる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンポリテトレメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのような各種のポリエーテルポリオールを挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールは、例えば、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート又はホスゲン等の炭酸誘導体と、ジオールとの反応により得ることができる。そのようなジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−及び1,4−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノールを挙げることができる。これらのうちで、1,6−ヘキサンジオールを用いたポリカーボネートポリオールが、耐候性及び耐溶剤性の観点から好ましい。
有機ポリイソシアネートとしては、ウレタン工業の分野において公知のものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)などの脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI、H12MDI)などの脂環族イソシアネートなどを挙げることができる。これらのうち、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートを用いることが好ましい。また、無黄変性を要求される場合には、脂肪族イソシアネートではHMDI、脂環族イソシアネートではIPDI、H12MDI、芳香族イソシアネートではXDI、TMXDIを使用することが好ましい。
これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
親水基含有化合物としては、分子内に1個以上の活性水素原子と上記親水基とを有する化合物が挙げられる。例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、グリシンなどのカルボン酸含有化合物、及び、そのナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩などの誘導体、タウリン(すなわち、アミノエチルスルホン酸)、エトキシポリエチレングリコールスルホン酸などのスルホン酸含有化合物、及び、そのナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩などの誘導体などを挙げることができる。
本発明に係るポリウレタン系樹脂は、ポリオールと有機ポリイソシアネート及び親水基含有化合物とを混合し、公知の方法により、30〜130℃で30分〜50時間反応させることにより、まずウレタンプレポリマーが得られる。
得られたウレタンプレポリマーは、鎖伸長剤により伸長してポリマー化することで、親水基を有するポリウレタン系樹脂が得られる。
鎖伸長剤としては、水及び/又はアミン化合物が好ましく用いられる。鎖伸張剤として水やアミンを用いることにより、遊離イソシアネートと短時間で反応して、イソシアネート末端プレポリマーを効率よく伸長させることができる。
鎖伸長剤としてのアミンとしては、ポリアミン、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、メタキシレンジアミン、トルイレンジアミンなどの芳香族ポリアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジドのようなポリヒドラジノ化合物などが用いられる。アミンには、上記ポリアミンとともに、ポリマー化を大きく阻害しない程度で、ジブチルアミンなどの1価のアミンやメチルエチルケトオキシム等を反応停止剤として含んでいてもよい。
なお、ウレタンプレポリマーの合成においては、イソシアネートと不活性で、かつ、ウレタンプレポリマーを溶解しうる溶剤を用いてもよい。これらの溶剤として、ジオキサン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。反応段階で使用されるこれらの親水性有機溶剤は、最終的に除去されるのが好ましい。
また、ウレタンプレポリマーの合成においては、反応を促進させるために、アミン触媒(例えば、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチルジアミン等)、スズ系触媒(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、オクチル酸スズ等)、チタン系触媒(例えば、テトラブチルチタネート等)などの触媒を添加してもよい。
ポリウレタン系樹脂の分子量は、分岐構造や内部架橋構造を導入して可能な限り大きくすることが好ましく、分子量50000〜10000000であることが好ましい。分子量を大きくして溶剤に不溶とした方が、耐候性、耐水性に優れた塗膜が得られるからである。
また、本発明では、市販のポリウレタン系樹脂を用いることもでき、例えば、カチオン性又はノニオン性のポリウレタン樹脂微粒子を好ましく用いることができる。
カチオン性のポリウレタン樹脂微粒子としては、例えば、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス620」及び「スーパーフレックス650」(「スーパーフレックス」は同社の登録商標)、三洋化成工業株式会社製の「パーマリンUC−20」(「パーマリン」は同社の登録商標)、大原パラヂウム化学株式会社製の「パラサーフUP−22」などを挙げることができる。
ノニオン性のポリウレタン樹脂微粒子としては、例えば、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス500M」及び「スーパーフレックスE−2000」などを挙げることができる。
(複合樹脂粒子)
本発明に係る複合樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子であり、ポリオレフィン系樹脂が、上記親水基を有するポリウレタン系樹脂により乳化されて複合樹脂化したものである。すなわち、複合樹脂粒子において、ポリウレタン系樹脂は、水不溶性樹脂としてのポリオレフィン系樹脂と連続相である水との界面に存在して、水不溶性樹脂を保護する樹脂と異なる水不溶性樹脂層として機能している。このようにポリオレフィン系樹脂をポリウレタン系樹脂により乳化させてなる複合樹脂粒子とすることで、ポリオレフィン系樹脂単独の場合におけるポリウレタン系樹脂や凝集剤、架橋剤との相溶性の低下を抑制することができ、又、ポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂をそれぞれ乳化させて単に混合する場合に比べて、塗膜物性を向上することができ、また、本発明に係る前処理液の安定性を改善することができる。
複合樹脂粒子におけるポリウレタン系樹脂(U)とポリオレフィン系樹脂(O)との質量比率の値(U/O)は、40/60〜95/5の範囲内であることが好ましく、40/60〜80/20の範囲内であることが更に好ましい。ポリウレタン系樹脂の存在割合が上記範囲内であると、分散剤との相溶性が向上する傾向が見られ、また、耐溶剤性についても優れている。また、ポリオレフィン系樹脂の存在割合が上記範囲内であると、ポリオレフィン系フィルム基材に対する密着性に優れる。
複合樹脂粒子中におけるポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂とを合わせた合計の樹脂濃度は、特に限定されないが、通常5質量%以上、好ましくは10〜70質量%の範囲内である。
乳化に際しては、上記ポリウレタン系樹脂とともに、乳化剤として界面活性剤を用いることもできる。すなわち、本発明に係る複合樹脂粒子においては、更に界面活性剤を乳化剤として含有してもよい。界面活性剤を添加することにより、複合樹脂粒子の貯蔵安定性を更に向上することができる。
このような界面活性剤としては、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤のいずれか一方、又は両方を用いることが好ましい。これらのアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とは、全樹脂質量100質量部に対して、両活性剤の合計で1〜20質量部配合することが好ましい。配合量が20質量部以下であれば、耐水性や耐溶剤性が優れる傾向となる。
また、アニオン界面活性剤(X)とノニオン界面活性剤(Y)の配合質量比(X/Y)の値は、100/0〜50/50の範囲内であることが好ましい。アニオン界面活性剤の配合量を上記範囲内とすることにより、乳化性や貯蔵安定性をより向上することができる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、N−アシルアミノ酸塩、カルボン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらの中でもスルホコハク酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩が良好である。また、塩の種類としては、特に限定されるものではないが、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、トリエタノールアミン塩などが好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類等が好ましい。
本発明に係る複合樹脂粒子には、他に酸化防止剤、耐光剤、可塑剤、発泡剤、増粘剤、着色剤、難燃剤、他の水性樹脂、各種フィラーを本発明の効果を阻害しない範囲において添加することができる。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系又はセミカルバジド系などの酸化防止剤の溶液又はエマルションが挙げられる。
耐光剤としては、ヒンダードアミン(HALS)系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの耐光剤の溶液又はエマルションが挙げられる。
次いで、複合樹脂粒子の製造方法について説明する。
上述した複合樹脂粒子は、下記(I)又は(II)の製造方法により調製することができる。
(I)ポリオレフィン系樹脂を親水基を有するウレタンプレポリマーにより水に乳化させ、次いで、鎖伸長剤としてのアミン又はその水溶液を添加してウレタンプレポリマーを鎖伸長(高分子量化)する方法
(II)親水基を有するウレタンプレポリマーを水に乳化し、更に鎖伸長剤としてのアミン又はその水溶液を添加してウレタンプレポリマーを鎖伸長させてポリウレタン系樹脂の水分散体を調製し、次いで、ポリオレフィン系樹脂をポリウレタン系樹脂の水分散体で乳化する方法
まず、上記(I)の製造方法に係る実施形態について説明する。
この方法では、まず、ポリオレフィン系樹脂を溶剤に溶解して得られた樹脂溶液と、親水基を有するウレタンプレポリマーの溶液とを混合し、混合物に水を添加して撹拌することにより乳化させる。
上記溶剤としては、ヘキサン、イソヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、ベンゼンなどの有機溶剤、及び、超臨界状態にある二酸化炭素などの水以外の溶剤が挙げられる。
これらは、いずれか単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
また、乳化方法は、公知の強制乳化法、転相乳化法、D相乳化法、ゲル乳化法等のいずれの方法でも構わず、使用機器は、例えば、撹拌羽、ディスパー、ホモジナイザー等による単独撹拌、及びこれらを組み合わせた複合撹拌、サンドミル、多軸押出機の使用が可能である。また、該乳化に際して、ウレタンプレポリマーとともに、上記界面活性剤を混合してもよい。
次いで、上記乳化液を水で希釈した後に、鎖伸長剤としてのアミンを添加して、ウレタンプレポリマーの残存イソシアネート基を該鎖伸長剤により架橋させ、ポリウレタン系樹脂を高分子量化する。その後、有機溶剤を留去することで、ポリウレタン系樹脂の内部にポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂粒子分散体(すなわち、水不溶性樹脂粒子が分散された分散体)が得られる。
このようにして得られる複合樹脂粒子分散体において、上記ポリオレフィン系樹脂が変性ポリオレフィンである場合、塩基性物質を加えることによりポリマー中に導入された酸成分を中和してもよい。中和により同部分を電離させることで、ポリマー分子が伸長されて系全体が粘度上昇を起こすため、複合樹脂粒子分散体はより安定性を増すことができる。また、この場合、塩基性物質の添加量によって所望のpHに調整することができる。
使用される塩基性物質としては、ポリオレフィン系樹脂中の酸部分を中和できるものであれば特に限定されず、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミン−2−メチル−1−プロパノール、モルホリン等の有機の塩基物質、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム等の無機の塩基性物質を挙げることができる。これらの塩基性物質を用いる際、1種類でもよいが2種類以上の塩基性物質を併用すると、本発明の目的がより効果的に達成される場合が多い。なお、塩基性物質としてアミンを用いる場合、ウレタンプレポリマーを鎖伸張させる前に添加するものとしては、遊離イソシアネートと反応しないように3級アミンが用いられる。一方、鎖伸張後に変性ポリオレフィンを中和する場合、1級、2級、3級アミンのいずれも用いることができる。
中和するのに用いられる塩基性物質の量は、変性ポリオレフィンの変性度合いによっても異なるが、変性ポリオレフィン100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましい。塩基性物質の量が0.1質量部以上では、pHが中性になり、そのため複合樹脂粒子分散体の保存性が向上する。一方、塩基性物質の量が10質量部以下では複合樹脂粒子分散体の保存安定性が良好であり、塩基性が強くなく親水性物質が多量に塗膜中に導入されないため、同塗膜の耐水性が向上する。
次に、上記(II)の製造方法に係る実施形態について説明する。
この方法では、まず、親水基を有するウレタンプレポリマーの溶液に水を添加して乳化させ、次いで、得られた乳化液に、鎖伸長剤としてのアミンを添加して、ウレタンプレポリマーの残存イソシアネート基を該鎖伸長剤により架橋させ、高分子量化したポリウレタン系樹脂の水分散体を調製する。
その後、ポリオレフィン系樹脂を溶剤に溶解して得られた樹脂溶液と、上記で得られた親水基を有するポリウレタン系樹脂の水分散体とを混合して、該親水基を有するポリウレタン系樹脂によりポリオレフィン系樹脂を乳化させ、次いで、水で希釈した後に、有機溶剤を留去することで、ポリウレタン系樹脂の内部にポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂粒子分散体(すなわち、水不溶性樹脂粒子が分散された分散体)が得られる。
方法(II)における溶剤及び乳化方法は、方法(I)と同様である。また、方法(II)においても、ポリオレフィン系樹脂の乳化に際し、上記ポリウレタン系樹脂とともに、界面活性剤を混合してもよい。さらに、得られた複合樹脂粒子分散体において、塩基性物質により変性ポリオレフィンを中和してもよいのも、上記方法(I)と同様である。
複合樹脂粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、10〜500nmの範囲内であることが好ましく、10〜300nmの範囲内であることがより好ましく、10〜200nmの範囲内であることが更に好ましい。
平均粒子径の測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便で、かつ該粒子径領域を精度よく測定できる。
〈凝集剤〉
本発明のインクジェット記録用前処理液には、インクジェット記録インクと接触したときに凝集物を生じさせる材料、すなわち凝集剤が含有されている。これにより、インクジェット記録インクとの相互作用が大きくなり、水溶性インクのドットをより固定化することができる。
凝集剤は、カチオン性樹脂、金属キレート剤、多価金属塩及び有機酸のいずれかを含有することが好ましく、多価金属塩及び有機酸のいずれかを含有することがより好ましい。
カチオン性樹脂及び多価金属塩は、塩析によってインクジェット記録インク中のアニオン性の成分(通常は色材、又は顔料等)を凝集させることができる。上記有機酸は、pH変動によってインクジェット記録インク中のアニオン性の成分を凝集させることができる。
カチオン性樹脂としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
金属キレート剤としては、アルミニウム、亜鉛、カドミウム、ニッケル、コバルト、銅、カルシウム、バリウム、チタン、マンガン、鉄、鉛、ジルコニウム、クロム、スズ等の金属に窒素含有基を有するアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、サリチル酸メチル等が配位した金属キレート化合物などが挙げられる。
多価金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩などの水溶性の塩が挙げられる。
前処理液が含有する有機酸は、インクジェット記録インク中に含まれる顔料を凝集させるものであり、第1解離定数が3.5以下であることが好ましく、1.5〜3.5の範囲内であることが好ましい。当該範囲内であると印字率が低い低濃度部における液寄りが更に防止され、印字率が高い高濃度部におけるビーディングが更に改善される。
有機酸は、塩基により完全には中和されていないものを用いることが好ましい。塩基による中和とは、これらの酸の酸性基と、正に帯電した他の元素又は化合物(例えば、金属などの無機化合物)と、がイオン結合していることを意味する。また、完全には中和されていないとは、有機酸が有する酸性基のうち、上記イオン結合を形成していない酸性基が存在することを意味する。イオン結合を形成していない酸性基を有する有機酸を用いることで、前処理液に含まれるポリウレタン構造を有する複合樹脂粒子との相溶性が高くなり、透明な前処理層を形成することができることから、多価金属塩などを用いる場合よりも、形成された画像の色調が鮮やかになると考えられる。また、有機酸を用いることで前処理液の保存安定性を維持しやすく、前処理液を塗布、乾燥した後にブロッキングが起きにくい。
上記観点から好ましい有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、シュウ酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、安息香酸、2−ピロリドン−5−カルボン酸、乳酸、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、又は、アクリルアミド及びその誘導体などを含むカルボキシ基を有する化合物、スルホン酸誘導体、又は、リン酸及びその誘導体などが挙げられる。
前処理液における有機酸の含有量は、前処理液のpHを有機酸の第1解離定数未満に調整する量であればよい。処理液のpHが有機酸の第1解離定数未満となる量の有機酸を前処理液に含有させることにより、高速プリント時の滲みを効果的に抑制できる。
本発明の前処理液に含まれるポリウレタン構造を有する複合樹脂粒子により、インクジェット記録画像の滲み抑制と密着性を両立することが可能である。この理由について明確ではないが次のように推測している。
本発明において、前処理液により形成された前処理液層上にインクジェット記録インクをプリントすることにより、前処理液層から記録インクに有機酸が溶解・拡散して顔料を凝集、固定化することで滲みや密着不良が抑制されるものと考えている。したがって、特にプリント速度が高速なほど、有機酸のインクジェット記録インク中への溶解・拡散速度を高めることが好ましい。有機酸の溶解・拡散速度を高めるためには、前処理液層の樹脂が記録インクにより膨潤又は溶解するとよい。一方で、膨潤性又は溶解性が高すぎると均一な皮膜が形成できず密着性が得られないと推定している。ポリウレタン構造を有する複合樹脂粒子は、その構造中に有するポリオール成分が、記録インク中に含まれる有機溶剤により適度に膨潤して有機酸の拡散を促進し、イソシアネート成分のハードセグメントにより均一な皮膜状態を維持できることで密着性も確保できるものと考えている。また、ポリオール成分はポリカーボネート構造又はポリエーテル構造を有することが、前処理液の保存安定性において特に好ましい。
凝集剤は、前処理液中に0.1〜20質量%の範囲内で存在することが、インクジェット記録インク中のアニオン性の成分を効果的に凝集させることができる点で好ましい。
水溶性中の凝集剤の含有量は、公知の方法で測定することができる。例えば、凝集剤が多価金属塩であるときはICP発光分析で、凝集剤が酸であるときは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で含有量を測定することができる。
なお、有機酸を用いる場合、有機酸の付量は、インクジェット記録インクに含まれるアニオン成分の中和当量以下に前処理液のpHを調整する量であることが好ましい。また、上記アニオン成分がカルボキシ基を有する化合物である場合、画像の滲みをより生じにくくする観点からは、上記有機酸の第1解離定数は3.5以下であることが好ましい。
本発明の前処理液の付量は、特に限定されず、適宜調整することができる。例えば、凝集剤が多価金属塩である場合は、多価金属塩の付量が0.1〜20g/mの範囲内とすることが好ましい。また、凝集剤が有機酸である場合、有機酸の付量は、水溶性インク中のアニオン成分の中和当量以下とすることが好ましい。
〈架橋剤〉
本発明において、架橋剤とは架橋基を有する化合物をいい、公知のものを使用することができる。例えば、カルボジイミド基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物、N−メチロール基を有する化合物、アクリロイル基を有する化合物、ビニルスルホン基を有する化合物、活性ハロゲン基を有する化合物、エチレンイミノ基を有する化合物、グリオキザール基を有する化合物、メラミン構造を有する化合物等を挙げることができる。中でも、カルボジイミド基又はオキサゾリン基を有する化合物が好ましい。
カルボジイミド基を有する化合物の具体例としては、カルボジイミド、N,N′−ジメチルカルボジイミド、N−エチル,N′−イソプロピルカルボジイミド、N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N′−ジフェニルカルボジイミド,N,N′−ジアセチルカルボジイミド、N,N′−ビス(2−プロペン)−カルボジイミド、N,N′−ジピロリジルカルボジイミド、N,N′−ジエトキシカルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメソ−パラ−トルエンスルホン酸塩、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、カルシウムシアナミド等が挙げられ、また、日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライトV−02、SV−02、V−02−L2、V−04、V−06、E−01、E−02、E−03A、SW−12Gなども好ましく用いることができる。
オキサゾリン基を有する化合物としては、例えば、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−(n−プロピル)−2−オキサゾリン、2−(イソプロピル)−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−ピロリジル−2−オキサゾリン、2−アセチル−2−オキサゾリン、2−(2−プロペン)−2−オキサゾリン、4,5−ジメチル−2−オキサゾリン、2,4,4−トリメチル−2−オキサゾリン、5−フェニル−2−(2−プロピニルアミノ)−2−オキサゾリン−4−オン、4−エトキシメチレン−2−フェニル−2−オキサゾリン−5−オン等が挙げられ、また、株式会社日本触媒製のエポクロスシリーズK−1010E、K−2010E、K−1020E、K−2020E、K−1030E、K−2030E、WS−300、WS−500、WS−700、RPS−1005なども好ましく用いることができる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられ、また、ナガセケムテックス株式会社製のDenacol EX−321、EX−821、EX−830、EX−850、EX−851なども好ましく用いることができる。
エチレンイミノ基を有する化合物としては、例えば、株式会社日本触媒製のケミタイトPZ−33、DZ−22Eなども好ましく用いることができる。
架橋剤の含有量は、水不溶性樹脂微粒子の含有量(100質量部)に対し、3〜100質量部の範囲内であることが好ましい。架橋剤の含有量が3質量部以上であれば、架橋剤としての効果が得られ、ラミネート強度及び密着性が向上し、100質量部以下であれば、保存安定性が向上する。
〈水、その他の添加剤〉
本発明のインクジェット記録用前処理液に含まれる水については、特に限定されるものではなく、イオン交換水、蒸留水、又は純水であり得る。
また、本発明のインクジェット記録用前処理液溶媒として、水の他に有機溶媒を含有することができる。溶媒は後段の前処理液の乾燥時除去することができる。
さらに、前処理液は界面活性剤を含有することができる。これにより、各種塗布方法への適合性を高めることができる。
前処理液は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他、架橋剤、防黴剤、殺菌剤等、他の成分を適宜配合することができる。
〈インクジェット記録用前処理液の製造方法〉
本発明のインクジェット記録用前処理液の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂とを乳化分散して複合樹脂粒子を形成する工程と、複合樹脂粒子、凝集剤、架橋剤及び水を混合する工程と、を有することを特徴とする。
(複合樹脂粒子を形成する工程)
この工程では、上述した複合樹脂粒子の製造方法で説明したとおり、下記(I)又は(II)の製造方法により複合樹脂粒子を作製する。
(I)ポリオレフィン系樹脂を親水基を有するウレタンプレポリマーにより水に乳化させ、次いで、鎖伸長剤としてのアミン又はその水溶液を添加してウレタンプレポリマーを鎖伸長(高分子量化)する方法
(II)親水基を有するウレタンプレポリマーを水に乳化し、更に鎖伸長剤としてのアミン又はその水溶液を添加してウレタンプレポリマーを鎖伸長させてポリウレタン系樹脂の水分散体を調製し、次いで、ポリオレフィン系樹脂をポリウレタン系樹脂の水分散体で乳化する方法
(混合する工程)
この工程では、上記工程で得られた複合樹脂粒子、凝集剤、架橋剤及び水と、任意の各成分とを、加熱下において混合する。
得られた混合液は、所定のフィルターで濾過することが好ましい。このとき、顔料及び分散剤を含む分散体をあらかじめ調製しておき、これに残りの成分を添加して加熱しながら混合してもよい。
《インクジェット記録液セット》
本発明のインクジェット記録液セット(以下、単にインクセットともいう。)は、インクジェット記録用前処理液と、顔料、有機溶剤及び水を少なくとも含有するインクジェット記録インクとを組み合わせたインクジェット記録液セットであって、インクジェット記録用前処理液が、本発明のインクジェット記録用前処理液であり、インクジェット記録用前処理液が、凝集剤を含有し、凝集剤が、インクジェット記録インクが含有する顔料を凝集させる凝集剤であることを特徴とする。
ここで、インクジェット記録用前処理液が含有する凝集剤と、インクジェット記録インクが含有する顔料を凝集させる凝集剤とが同一であることが、凝集剤同士の相溶性の問題もなく、インク着弾後のブルーミングの抑制、インク滲み及びインク密着性を向上する観点から好ましい。
すなわち、後述する印刷物を得るのに、前処理液と、好ましくは本発明に係るインクジェット記録インクとからなるインクセットを用いて、基材表面に印刷する際に、基材表面の少なくとも印刷をする領域に湿式塗布法又はインクジェットプリント法等の印刷法によって前処理液を塗布したのち、印刷領域にインクジェットプリント法によりインクジェット記録インクを印刷することができ、好ましい。
このインクセットを用いる方法であれば、例えば、1台のインクジェットプリンタを用いて、ポリオレフィン系プラスチック等の非吸収性基材等の表面に、本発明のインクセットを構成する前処理液の塗布と、インクによる印刷とを連続して効率よく行うことができる。そして、非吸収性基材の表面に、これまでよりも定着性に優れた文字や図柄等を印刷することが可能となる。
例えば、フルカラーの文字や図柄等を、インクジェットプリント法によって印刷する場合は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の4色、又は更にライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)を加えた6色のインク等と、前処理液とを含むインクセットを1台のインクジェットプリンタのインクの供給部(インクカートリッジ等)に充填する。
そして、まず前処理液を充填した供給部からヘッドのノズルを通して、前処理液をポリオレフィン系プラスチック等の非吸収性基材の表面の、インクによって任意の文字や図柄等を印刷する領域、又は表面の略全面に塗布して前処理液層を形成する。
次いで、前処理液層を必要に応じて乾燥させた後、その表面に、通常のインクジェットプリント法と同様に、各色のインクをそれぞれの供給部からヘッドのノズルを通して、形成画像に対応させて順次、断続的に吐出させることにより、任意の文字や図柄等を基材表面に印刷することができる。
本発明の前処理液を用いることにより、前処理液を塗布後、乾燥工程を経ずに直接にインクを用いて印刷しても滲みが生じるのを防止して、トータルの印刷時間を短縮したり、印刷に要するエネルギーを少なくしたりすることが可能となる。
なお、本発明のインクセットを用いれば、上記印刷方法によらず、前処理液を、例えばローラーコート法やスプレーコート法等の、インクジェットプリント法以外の他の任意の塗布方法によってポリオレフィン系プラスチック等の非吸収性基材等の表面に塗布して前処理液層を形成した上に、インクジェットプリント法によってインクを印刷することもできる。
〈顔料〉
インクジェット記録インクに含有される顔料としては、アニオン性の分散顔料、例えば、アニオン性の自己分散性顔料や、アニオン性の高分子分散剤により顔料を分散したものが挙げられ、特に、アニオン性の高分子分散剤により顔料を分散したものが好適である。
顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料及び酸化チタン等の無機顔料を好ましく用いることができる。
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
好ましく用いることのできる具体的な有機顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
マゼンタ又はレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155等が挙げられる。特に色調と耐光性のバランスにおいて、C.I.ピグメントイエロー155が好ましい。
グリーン又はシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
顔料を分散させるために用いる分散剤は、格別限定されないがアニオン性基を有する高分子分散剤が好ましく、分子量が5000〜200000の範囲のものを好適に用いることができる。
高分子分散剤としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体に由来する構造を有するブロック共重合体、ランダム共重合体及びこれらの塩、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等を挙げられる。
高分子分散剤は、アクリロイル基を有することが好ましく、中和塩基で中和して添加することが好ましい。ここで中和塩基は特に限定されないが、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等の有機塩基であることが好ましい。特に、顔料が酸化チタンであるとき、酸化チタンは、アクリロイル基を有する高分子分散剤で分散されていることが好ましい。
高分子分散剤の添加量は、顔料に対して、10〜100質量部の範囲内であることが好ましく、10〜40質量部の範囲内であることがより好ましい。
顔料は、顔料を上記高分子分散剤で被覆した、いわゆるカプセル顔料の形態を有することが特に好ましい。顔料を高分子分散剤で被覆する方法としては、公知の種々の方法を用いることができるが、例えば、転相乳化法、酸析法、顔料を重合性界面活性剤により分散し、そこへモノマーを供給し、重合しながら被覆する方法などを好ましく例示できる。
特に好ましい方法として、水不溶性樹脂をメチルエチルケトンなどの有機溶剤に溶解し、更に塩基にて樹脂中の酸性基を部分的又は完全に中和後、顔料及びイオン交換水を添加して分散した後、有機溶剤を除去し、必要に応じて加水して調製する方法を挙げることができる。
記録インク中における顔料の分散状態の平均粒子径は、50〜200nmの範囲内であることが好ましい。これにより、顔料の分散安定性を向上でき、記録インクの保存安定性を向上できる。
顔料の粒子径測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便で、かつ該粒子径領域を精度よく測定できる。
顔料は、分散剤及びその他所望する諸目的に応じて必要な添加物とともに、分散機により分散して用いることができる。
分散機としては、従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等を使用できる。中でもサンドミルによって顔料を分散させると、粒度分布がシャープとなるため好ましい。サンドミル分散に使用するビーズの材質は、特に限定されないが、ビーズ破片の生成やイオン成分のコンタミネーションを防止する観点から、ジルコニア又はジルコンであることが好ましい。さらに、このビーズ径は、0.3〜3mmの範囲内であることが好ましい。
記録インクにおける顔料の含有量は特に限定されないが、酸化チタンについては、7〜18質量%の範囲内が好ましく、有機顔料については0.5〜7質量%の範囲内が好ましい。
〈有機溶剤〉
記録インクに含有される有機溶剤としては、水溶性の有機溶剤を好適に用いることができる。水溶性の有機溶剤としては、例えば、アルコール類、多価アルコール類、アミン類、アミド類、グリコールエーテル類、炭素数が4以上である1,2−アルカンジオール類などが挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等が挙げられる。
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレンオキサイド基の数が5以上のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロピレンオキサイド基の数が4以上のポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等が挙げられる。
アミン類としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等が挙げられる。
アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
炭素数が4以上である1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール等が挙げられる。
特に好ましく用いられる有機溶剤は多価アルコール類であり、高速プリント時の滲みを好適に抑制することができる。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールが好ましい。
記録インクには、これら有機溶剤から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて含有することができる。また、記録インクが2種以上の有機溶剤を含有するとき、有機溶剤全体の全質量に占める多価アルコール類の質量比率を、他のいずれの種類の有機溶剤の成分の質量比率よりも高くすることで、滲み抑制効果、特に高速プリント時の滲み抑制効果をより高めることができる。好ましくは、有機溶剤全体の質量に対する多価アルコール類の質量比率は50%以上である。なお、多価アルコール類を2種以上含むときは、すべての多価アルコール類の質量比率の合計が、他のいずれの種類の有機溶剤の質量比率よりも高ければ、例えば有機溶剤全体の質量に対する多価アルコール類の質量比率が50%以上であればよい。
この理由については、上記のように前処理液に含むポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子が有するポリオール成分が多価アルコール類により適度に膨潤し、有機酸の溶解・拡散速度を高める効果が高いものと考えている。
記録インクにおける有機溶剤の含有量は、特に限定されないが、10〜60質量%の範囲内であることが好ましい。
〈凝集剤〉
記録インクは、高速印刷での画像の滲みを抑制する観点から、凝集剤を含有することが好ましい。特に、記録インクが含有する顔料を凝集させる凝集剤と、本発明の前処理液が含有する凝集剤とが同一のものを用いることが好ましい。好ましく用いられる凝集剤の種類は前述のとおりである。
〈その他の添加剤〉
また、記録インクには、樹脂微粒子を記録インクの全質量に対し2質量%以上含まないことが好ましく、0.1質量%以上含まないことがより好ましい。樹脂微粒子の濃度をこの範囲内にすることにより、記録インクの連続出射や間欠出射において安定した出射性能を確保できる。
記録インクがその全質量に対し2質量%未満の樹脂微粒子を含有する場合、かかる樹脂微粒子としては、特に限定されないが、ポリウレタン構造を有する樹脂微粒子、ポリプロピレンなどのポリオレフィン構造を有する樹脂微粒子、スチレン・アクリル構造を有する樹脂微粒子等を好ましく例示でき、特に、ポリウレタン構造を有する樹脂微粒子が好適である。
記録インクが樹脂微粒子を含有する場合は、該樹脂微粒子として、アニオン性樹脂微粒子を含有することが好ましい。
記録インクが樹脂微粒子を含有する場合、該樹脂微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、10〜200nmの範囲内であることが好ましい。平均粒子径は、光散乱方式やレーザードップラー方式を用いた市販の測定装置を使用して簡便に計測することが可能である。また、樹脂微粒子の分散物を凍結乾燥し、透過型顕微鏡で観察される粒子から平均粒子径を換算することもできる。
また、記録インクに、界面活性剤を含有させることもできる。これにより、インク出射安定性の向上や、記録媒体に着弾した液滴の広がり(ドット径)を制御することができる。
記録インクの表面張力は、35mN/m以下が好ましく、30mN/m以下に調整することがより好ましい。
本発明に用いられる記録インクで用いることができる界面活性剤は、特に制限なく用いることができるが、インクの他の構成成分にアニオン性の化合物を含有するときは、界面活性剤のイオン性はアニオン、ノニオン又はベタイン型が好ましい。
本発明において、好ましくは静的な表面張力の低下能が高いフッ素系又はシリコーン系界面活性剤や、動的な表面張力の低減能が高いジオクチルスルホサクシネートなどのアニオン界面活性剤、比較的低分子量のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アセチレングリコール類、プルロニック型界面活性剤、ソルビタン誘導体などのノニオン界面活性剤が好ましく用いられる。フッ素系又はシリコーン系界面活性剤と、動的な表面張力の低減能が高い界面活性剤を併用して用いることも好ましい。
記録インクにおける界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、0.1〜5.0質量%の範囲内であることが好ましい。
本発明に用いられる記録インクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコーンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報、同62−261476号公報等に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報、同3−13376号公報等に記載の退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報、特開平4−219266号公報等に記載の蛍光増白剤等を挙げることができる。
上記構成からなる本発明に用いられるインクは、インクの粘度としては、25℃で1〜40mPa・sであることが好ましく、より好ましくは2〜10mPa・sである。
《インクジェット記録方法》
以上説明した前処理液と記録インクからなる記録液セットを用いた本発明のインクジェット記録方法においては、前処理液により基材(記録媒体)の表面をプレコートした後、記録インクにより非吸収性のフィルム基材等の表面に記録を行う。
前処理液をプレコートする方法は特に限定されないが、良好な記録インクの密着性を得るために、前処理液に含まれる複合樹脂微粒子の付与量を、基材に対して0.3g/m以上、より好ましくは0.8g/m以上とすることが好ましい。基材上への前処理液の塗布方法は格別限定されないが、例えば、ローラー塗布法、カーテン塗布法、スプレー塗布法、インクジェット法等を好ましく挙げることができる。
本発明において使用できるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でもかまわない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等などいずれの吐出方式を用いてもかまわない。
特に、電気−機械変換方式に用いられる電気−機械変換素子として圧電素子を用いたインクジェットヘッド(ピエゾ型インクジェットヘッドともいう)が好適である。
一般的なフィルムの多くがロール形態で流通していることに鑑みて、シングルパス方式のインクジェット記録方法を用いることが好ましい。本発明の効果は、特にシングルパス方式のインクジェット記録方法において特に顕著になる。すなわち、シングルパス方式のインクジェット記録方法を用いた場合、高精細な画像を形成できる。
シングルパス方式のインクジェット記録方法とは、基材が一つのインクジェットヘッドユニットの下を通過した際に、一度の通過でドットの形成されるべき全ての画素にインク滴を付与するものである。
シングルパス方式のインクジェット記録方法を達成する手段として、ラインヘッド型のインクジェットヘッドを使用することが好ましい。
ラインヘッド型のインクジェットヘッドとは、印字範囲の幅以上の長さを持つインクジェットヘッドのことを指す。ラインヘッド型のインクジェットヘッドとしては、一つのヘッドで印字範囲の幅以上であるものを用いてもよいし、複数のヘッドを組み合わせて印字範囲の幅以上となるように構成してもよい。
また、複数のヘッドを、互いのノズルが千鳥配列となるように並設して、これらヘッド全体としての解像度を高くすることも好ましい。
基材の搬送速度は、例えば1〜120m/minの範囲内で設定することができる。搬送速度が速いほど画像形成速度が速まる。本発明によれば、シングルパスのインクジェット画像形成方法で適用可能な線速50〜120m/minの範囲内という非常に速い線速でもインク滲みの発生をより抑制し、かつ、インク密着性の高い画像を得ることができる。
前処理液又は記録インクの付与後には、基材を乾燥させてもよい。乾燥は、赤外線ランプ乾燥、熱風乾燥、バックヒート乾燥、減圧乾燥などの公知の方法で行うことができる。乾燥の効率をより高める観点からは、これらの乾燥方法のうち2種以上を組み合わせて基材を乾燥させることが好ましい。
以下、本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置について好ましい一例を下記に示す。
図1は、本発明に好ましい、前処理/インクジェット記録装置の模式図である。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図1に示す前処理/インクジェット記録装置1において、第1乾燥部14は省略することも可能である。
前処理/インクジェット記録装置1は、主に、プレコート部10、IJプリント部20から構成されている。プレコート部10において、基材F上に前処理層Cが形成され、IJプリント部20によって印刷層Rが形成される。
具体的には、送り出しローラー30から繰り出された基材F上に、ロールコーター11によってノズル12から吐出された前処理液滴13が塗布され、前処理層Cが形成される。続けて、第1乾燥部14によって前処理層Cが乾燥される。
次いで、前処理層C上に、インクジェットヘッド21からインク液滴22が吐出されて、印刷層Rが形成され、第2乾燥部23によって乾燥後、巻取りローラー40によって前処理層Cと印刷層Rとが形成された基材Fが巻き取られる。
《印刷物》
本発明の印刷物は、基材と、基材上に本発明のインクジェット記録用前処理液を用いて形成された前処理層と、前処理層上にインクジェット記録インクを用いて形成された印刷層と、を有することを特徴とする。
図2に示すとおり、印刷物Pは、基材F上に、本発明のインクジェット記録用前処理液をインクジェットヘッドから吐出して前処理層Cを形成し、当該前処理液層Cを定着した位置に、インクジェット記録インクをインクジェットヘッドから吐出、定着して印刷層Rを形成するものである。
上記構成は最小構成を示すものであり、基材と前処理液層との層間に他の機能性層を形成してもよく、また、印刷層の上層に、例えばラミネート接着層を介して非吸収性のフィルム基材等を貼合してもよい。少なくとも、前処理液層と印刷層は接する構成は必須である。
本発明でいう「インクジェット記録用前処理液」とは、基材にインクジェットプリント法によって画像を記録する際に、インクの画像形成を速め、画質を向上させる機能を有する、あらかじめ基材上に付与するインクの一種である。具体的には、インクジェット記録用前処理液は、画像を形成する色インクが基材に滲まないよう、前処理液を記録媒体に塗布した位置にインクを定着させるためのインクである。
〈基材〉
基材としては、特に限定されず、吸水性の高い紙基材でもよいし、グラビア又はオフセット印刷用のコート紙など吸水性の低い基材でもよいし、フィルム、プラスチックボード(軟質塩化ビニル、硬質塩化ビニル、アクリル板、ポリオレフィン系など)、ガラス、タイル及びゴムなどの非吸水性の基材であってもよい。
これらのうち、吸水性の低い基材及び非吸水性の基材としては、特に好ましくはフィルムである(本発明では、非吸収性のフィルム基材ともいう。)。このような基材において、本発明のインクジェット記録用前処理液を塗布することによって、水系インクを十分にピニングさせて、滲みの少ない高画質な画像を形成することができる。
フィルムの例には、公知のプラスチックフィルムが含まれる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム、高密度ポリエチレンフィルム及び低密度ポリエチレンフィルムなどを含むポリエチレンフィルム(PE)、ポリプロピレンフィルム(PP)、ナイロン(NY)などのポリアミド系フィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ポリアクリル酸(PAA)フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、及びポリ乳酸フィルムなどの生分解性フィルムなどが含まれる。
ガスバリアー性、防湿性、及び保香性などを付与するために、フィルムの片面又は両面にポリ塩化ビニリデンがコートされていてもよいし、金属酸化物が蒸着されていてもよい。また、フィルムには防曇加工が施されていてもよい。また、フィルムにはコロナ放電及びオゾン処理などが施されていてもよい。
フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよい。
また、フィルムは、紙などの吸収性の基材の表面にPVAコートなどの層を設けて、記録をすべき領域を非吸収性とした、多層性の基材でもよい。
上記フィルムの厚さは、250μm未満であることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
《ウレタンポリマー溶液の調製》
以下のようにして、ウレタンポリマー溶液U1〜U3を調製した。
〈ウレタンポリマー溶液U1の調製〉
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた四つ口フラスコに、ポリエステルポリオール(商品名テスラック 2461、日立化成(株)製)を182質量部と、ポリエチレングリコール(PEG、分子量600、商品名PEG600、第一工業製薬(株))を22.0質量部と、トリメチロールプロパンを5.6質量部と、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを43.8質量部と、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを204質量部と、メチルエチルケトン(MEK)216質量部を反応容器にとり(3級アミンの添加量9.6質量%、PEGの添加量4.8質量%)、75℃に保ちながら反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。
このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を46.4質量部添加し、50〜60℃で30〜60分間反応させて、NCO含有率が2.2%であり、不揮発分約50%であるカチオン性ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液U1を得た。
〈ウレタンポリマー溶液U2の調製〉
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた四つ口フラスコに、ポリカーボネートポリオール(分子量1000、商品名ニッポラン981、日本ポリウレタン工業(株))を182質量部と、ポリエチレングリコール(PEG、分子量600、商品名PEG600、第一工業製薬(株))を22.0質量部と、トリメチロールプロパンを5.6質量部と、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを43.8質量部と、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを204質量部と、メチルエチルケトン(MEK)216質量部を反応容器にとり(3級アミンの添加量9.6質量%、PEGの添加量4.8質量%)、75℃に保ちながら反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。
このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を46.4質量部添加し、50〜60℃で30〜60分間反応させて、NCO含有率が2.2%であり、不揮発分約50%であるカチオン性ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液U2を得た。
〈ウレタンポリマー溶液U3の合成〉
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた四つ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(PolyTHF2000、BASF(株))を182質量部と、ポリエチレングリコール(PEG、分子量600、商品名PEG600、第一工業製薬(株))を22.0質量部と、トリメチロールプロパンを5.6質量部と、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを43.8質量部と、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを204質量部と、メチルエチルケトン(MEK)216質量部を反応容器にとり(3級アミンの添加量9.6質量%、PEGの添加量4.8質量%)、75℃に保ちながら反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。
このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を46.4質量部添加し、50〜60℃で30〜60分間反応させて、NCO含有率が2.2%であり、不揮発分約50%であるカチオン性ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液U3を得た。
《複合樹脂粒子分散体の調製》
以下のようにして、複合樹脂粒子分散体1〜11を調製した。
〈複合樹脂粒子分散体1の調製〉
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた四つ口フラスコに、ポリオレフィン系樹脂(商品名:アウローレン150S、日本製紙(株)製(表I及びII中、「PO1」と表記。))3.0質量部、メチルシクロヘキサン240.0質量部及びメチルエチルケトン48.0質量部を投入し、80℃に昇温して加熱溶解させた。溶解後、内温を40℃に保ち、ウレタンポリマー溶液U1(不揮発分約50%)を194質量部を添加し、混合した。この溶液に58.0質量部の水を加え、ホモジナイザーを使用して乳化した後、570質量部の水を徐々に加え希釈し、これにエチレンジアミン1.0質量部と水12質量部とを混合した水溶液を徐々に添加し、1時間撹拌してポリマー化を行った。これを50℃減圧下、脱溶剤を行い、不揮発分(粒子としての固形分)約30質量%の複合樹脂粒子分散体1を得た。
〈複合樹脂粒子分散体2〜11の調製〉
複合樹脂粒子分散体1の調製において、ウレタンポリマー溶液の種類及びウレタンポリマー溶液及びポリオレフィン系樹脂の配合比率(U/O)を表I及びIIに記載のとおりに変更した以外は同様にして、複合樹脂粒子分散体2〜11を調製した。
《インクジェット記録用前処理液の調製》
以下のようにして、インクジェット記録用前処理液1〜41を調製した。
〈インクジェット記録用前処理液1の調製〉
下記に示す各添加剤を撹拌しながら順次添加した後、5.0μmのフィルターにより濾過してインクジェット記録用前処理液1を得た。なお、濾過前後で、実質的な組成変化はなかった。
複合樹脂粒子分散体1:ウレタンポリマー溶液U1とポリオレフィン系樹脂溶液としてアウローレン150Sを用いて、ポリウレタン系樹脂(U)、ポリオレフィン系樹脂(O)の質量比率(U/O)=97/3、固形分30質量%で乳化分散させた複合樹脂粒子分散体) 14.00質量部
凝集剤:PAS−H−1L(カチオンポリマー、ニットーボーメディカル(株))
5.00質量部
架橋剤:ケミタイトDZ−22E(エチレンイミノ基を有する化合物、日本触媒社製)
0.35質量部
イオン交換水 80.65質量部
なお、実施例において、インクジェット記録用前処理液組成における樹脂、凝集剤及び架橋剤の配合量(質量部)は、固形分換算した値である。
〈インクジェット記録用前処理液2〜34の調製〉
インクジェット記録用前処理液1の調製において、複合樹脂粒子分散体の種類、凝集剤の種類並びに架橋剤の種類及び配合量(含有量)を表I及びIIに記載のとおりに変更した以外は同様にして、インクジェット記録用前処理液2〜34を調製した。
〈インクジェット記録用前処理液35の調製〉
下記に示す各添加剤を撹拌しながら順次添加して、乳化させることなく混合した後、5.0μmのフィルターにより濾過してインクジェット記録用前処理液35を得た。なお、濾過前後で、実質的な組成変化はなかった。
ポリウレタン樹脂:JK−870(明成化学工業(株)製) 0.70質量部
ポリオレフィン樹脂:アローベースCB−1010(ユニチカ(株)製)
13.30質量部
凝集剤:塩化カルシウム(多価金属塩) 5.00質量部
架橋剤:カルボジライトSV−02(カルボジイミド基を有する化合物、日清紡ケミカル株式会社製) 1.00質量部
イオン交換水 80.00質量部
〈インクジェット記録用前処理液36の調製〉
下記に示す各添加剤を撹拌しながら順次添加して、乳化させることなく混合した後、5.0μmのフィルターにより濾過してインクジェット記録用前処理液36を得た。なお、濾過前後で、実質的な組成変化はなかった。
ポリウレタン樹脂:JK−870(明成化学工業(株)製) 5.60質量部
ポリオレフィン樹脂:アローベースCB−1010(ユニチカ(株)製)
8.40質量部
凝集剤:塩化カルシウム(多価金属塩) 5.00質量部
架橋剤:エポクロスWS−700(オキサゾリン基を有する化合物、日本触媒社製)
1.00質量部
イオン交換水 80.00質量部
〈インクジェット記録用前処理液37の調製〉
下記に示す各添加剤を撹拌しながら順次添加して、乳化させることなく混合した後、5.0μmのフィルターにより濾過してインクジェット記録用前処理液37を得た。なお、濾過前後で、実質的な組成変化はなかった。
ポリウレタン樹脂:JK−870(明成化学工業(株)製) 7.00質量部
ポリオレフィン樹脂:アローベースCB−1010(ユニチカ(株)製)
7.00質量部
凝集剤:塩化カルシウム(多価金属塩) 5.00質量部
イオン交換水 81.00質量部
〈インクジェット記録用前処理液38の調製〉
下記に示す各添加剤を撹拌しながら順次添加した後、5.0μmのフィルターにより濾過してインクジェット記録用前処理液38を得た。なお、濾過前後で、実質的な組成変化はなかった。
複合樹脂粒子分散体1:ウレタンポリマー溶液U1とポリオレフィン系樹脂溶液としてアウローレン150Sを用いて、ポリウレタン系樹脂(U)、ポリオレフィン系樹脂(O)の質量比率(U/O)=97/3、固形分30質量%で乳化分散させた複合樹脂粒子分散体) 14.00質量部
架橋剤:カルボジライトSV−02(カルボジイミド基を有する化合物、日清紡ケミカル株式会社製) 1.00質量部
イオン交換水 85.00質量部
〈インクジェット記録用前処理液39の調製〉
下記に示す各添加剤を撹拌しながら順次添加した後、5.0μmのフィルターにより濾過してインクジェット記録用前処理液39を得た。なお、濾過前後で、実質的な組成変化はなかった。
複合樹脂粒子分散体1:ウレタンポリマー溶液U1とポリオレフィン系樹脂溶液としてアウローレン150Sを用いて、ポリウレタン系樹脂(U)、ポリオレフィン系樹脂(O)の質量比率(U/O)=97/3、固形分30質量%で乳化分散させた複合樹脂粒子分散体) 14.00質量部
凝集剤:塩化カルシウム(多価金属塩) 5.00質量部
イオン交換水 81.0質量部
〈インクジェット記録用前処理液40の調製〉
下記に示す各添加剤を撹拌しながら順次添加した後、5.0μmのフィルターにより濾過してインクジェット記録用前処理液40を得た。なお、濾過前後で、実質的な組成変化はなかった。
凝集剤:塩化カルシウム(多価金属塩) 5.00質量部
架橋剤:カルボジライトSV−02(カルボジイミド基を有する化合物、日清紡ケミカル株式会社製) 1.00質量部
イオン交換水 94.00質量部
〈インクジェット記録用前処理液41の調製〉
下記に示す添加剤を撹拌しながら順次添加した後、5.0μmのフィルターにより濾過してインクジェット記録用前処理液41を得た。なお、濾過前後で、実質的な組成変化はなかった。
凝集剤:マロン酸(有機酸) 5.00質量部
イオン交換水 95.00質量部
なお、表I及びII中、「架橋剤/樹脂成分(%)」とは、インクジェット記録用前処理液中の樹脂成分の配合量(質量部)に対する架橋剤の配合量(質量部)の割合である。
《インクジェット記録インクの調製》
(1)顔料分散液1の調製
顔料(ピグメントブルー15:3)を18.0質量部に、顔料分散剤(水酸化ナトリウムで中和されたカルボキシ基を有するアクリル系分散剤(BASF社製「ジョンクリル819」、酸価75mgKOH/g、固形分20質量%)を31.5質量部と、エチレングリコール20.0質量部と、イオン交換水30.5質量部を加えた混合液をプレミックスした後、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料の含有量が18.0質量%の顔料分散液1を調製した。
この顔料分散液1に含まれる顔料粒子の平均粒子径は、109nmであった。なお、平均粒子径の測定はマルバルーン社製「ゼータサイザー1000HS」により行った。
(2)インクジェット記録インクの調製
上記調製した顔料分散液1の29.8質量部を撹拌しながら、下記に示す各添加剤を順次添加してインク組成物を調製した後、0.8μmのフィルターによりろ過してインクジェット記録インクを得た。濾過前後で実質的な組成変化はなかった。
顔料分散液1 29.8質量部
エチレングリコール 15.0質量部
プロピレングリコール 10.0質量部
シリコン系界面活性剤(信越化学工業製、KF−351A) 0.2質量部
イオン交換水 45.0質量部
《評価》
作製した各インクジェット記録用前処理液について、下記各評価を行った。
評価結果を表IIIに示す。
〈画質(インク滲み)の評価)
(1)印画サンプルの作製
ローラー塗布法により、基材としてのOPP1:2軸延伸ポリプロピレンフィルム(FOS−AQ、フタムラ化学株式会社製)に対してインクジェット記録用前処理液1〜38を樹脂固形分付量1.5g/mとなるように湿潤膜厚9μmで塗布後、70℃の温風で5分乾燥して、前処理層を設けた基材を準備した。
コニカミノルタ社製の独立駆動インクジェットヘッド(360dpi、吐出量14pL)二つを、ノズルが互い違いになるように並設して、720dpi×720dpiの画像をシングルパス方式で印刷できるヘッドモジュールを作製した。かかるヘッドモジュールを二つ用意し、基材を搬送する搬送ステージの搬送方向に沿って並設した。各ヘッドモジュールは、搬送方向(搬送ステージの移動軸)と交差するように設置した。このようにして、基材を1回パスさせる際に、印字率200%、すなわち、2色分のインク付量(22.5cc/m)を印刷できるようにした。
搬送ステージ上に、前処理層が上になるように基材を張付け、60m/minの速度で搬送を行い、基材がヘッド下を通過する際にシングルパス方式で画像を印刷した。画像として、インク付量22.5cc/mの7cm四方のベタ中にサイズ5ポイント、7ポイントの文字を抜き文字として配置した画像を印刷した。
インクジェット法による印刷後に、基材をホットプレート上に載置し、70℃、15分間乾燥し、前処理層と印刷層とを有する積層体を得た。
(2)画質(インク滲み)の評価
上記作製した画像の抜き文字に関し、滲みによる不鮮明性がなく、30cmの距離で認識できる文字サイズから下記の評価基準に従って評価した。評価項目◎及び○を実用上合格とした。
◎:いずれの文字も、細部の潰れなく再現できている
○:5ポイントの文字で細部の潰れが見られるが、十分に判読が可能であり、7ポイントの抜き文字は潰れなく再現できている
△:5ポイントの文字で潰れが見られ、判読が難しく、7ポイントの抜き文字で細部の潰れが見られる
×:7ポイントの抜き文字で細部が潰れている
〈インク密着性の評価〉
上記作製した画像のベタ画像にて、画像に1mm間隔で5×5の碁盤目状にカッターで切れ込みを入れたクロスカット法によるテープ剥離試験を行い、下記の評価基準に従って評価した。評価項目◎〜△を実用上合格とした。
◎:テープによる剥がれなく良好
○:碁盤目状の切れ込み1マス以上3マス以下が剥がれるが、良好なレベル
△:碁盤目状の切れ込み4マス以上6マス以下が剥がれるが、実用上許容できるレベル
×:碁盤目状の切れ込み7マス以上が剥がれ、実用上許容できないレベル
〈インクジェット記録用前処理液の保存安定性〉
60℃、1週間保存前後のインクジェット記録用前処理液中の樹脂粒子の平均粒径を粒径測定器:マルバルーン社製「ゼータサイザー1000HS」を用いて測定し、下記式より粒径増加率を求め(数値が100%に近いものが、保存安定性がよい。)、下記評価基準に従って評価した。評価項目○及び△を実用上合格とした。
粒径増加率(%)=[保存後の平均粒径(60℃、1週間保存後の平均粒径)/保存前の平均粒径]×100
○:粒径増加率が130%未満
△:粒径増加率が130%以上150%未満
×:粒径増加率が150%以上
〈ラミネート強度〉
上記画質の評価における印画サンプルの作製において、基材をPET(E5102、東洋紡株式会社製)に変更した印刷物に、ドライラミネート用接着剤(タケラックA626、三井化学株式会社製)、2液硬化型イソシアネート系架橋剤(タケネートA50、三井化学株式会社製)を塗布量3.0g/mで塗工し、CPP(P1128(厚さ60μm)、東洋紡株式会社製)と貼り合わせてPET/CPPラミネート物を得た。
得られたラミネート物について幅15mmに切り出し、テンシロン引っ張り試験機を用いて、剥離速度300mm/minにて90°方向のラミネート強度を測定した。評価項目◎〜△を実用上合格とした。
◎:5.0N/15mm以上
○:3.5N/15mm以上5.0N/15mm未満
△:1.0N/15mm以上3.5N/15mm未満
×:1.0N/15mm未満
Figure 2019177510
Figure 2019177510
Figure 2019177510
〈まとめ〉
表I〜IIIから明らかなように、本発明のインクジェット記録用前処理液1〜34は、比較例のインクジェット記録用前処理液35〜41と比べて、画質、密着性、保存安定性及びラミネート強度に優れていることがわかる。
以上から、水不溶性樹脂微粒子、凝集剤、架橋剤及び水を含有し、水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子を含有することが、画像定着性、保存安定性及びラミネート強度に優れ、かつ、高画質な印字を可能とするインクジェット記録用前処理液、インクジェット記録液セット、インクジェット記録用前処理液の製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法を提供することに有用であることが確認できた。
[実施例2]
上記調製したインクジェット記録用前処理液1〜41及び記録インクを用いて、実施例1と同様にして、実施例1の非吸収性基材であるOPP1に代えて、OPP2:2軸延伸ポリプロピレンフィルム(FOS−BT、30μm厚、両面コロナ処理、フタムラ化学株式会社製、防曇加工なし)、PE:太閤FE#50−FE2001(フタムラ化学株式会社製)、PET:2軸延伸ポリエステルフィルム(E−5200、25μm厚、両面コロナ処理、東洋紡株式会社製、防曇加工なし)、ナイロン:エンブレムON(番手15、ユニチカ(株)製)、及び印刷コート紙:キャストコート紙(ミラーコート・プラチナ、坪量157g/m、王子製紙株式会社製)を用いて、本発明の前処理液を塗布した基材にインクジェットプリントを行い、画質、密着性、保存安定性及びラミネート強度の評価を行ったところ、比較例の前処理液に対して、画質、密着性、保存安定性及びラミネート強度に優れていることが確認された。
[実施例3]
実施例1で調製したインクジェット記録用前処理液1〜34で用いたポリオレフィン系樹脂:アウローレン150S、日本製紙(株)製)に代えて、ポリオレフィン系樹脂:ハードレンNa−1001(東洋化成(株)製)、及びスーパークロンE−415(日本製紙(株)製)を用いて、インクジェット記録用前処理液1〜34と同様に、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子分散体をそれぞれ調製した。
得られたインクジェット記録用前処理液1〜34に対応する各前処理液は、実施例1を再現し保存安定性に優れていた。また、得られた前処理液を塗布した非吸収性基材(OPP1)は、高速なインクジェットプリントを行っても、画質、密着性、保存安定性及びラミネート強度に優れていることが確認された。
1 前処理/インクジェット記録装置
10 プレコート部
11 ロールコーター
12 ノズル
13 前処理液滴
14 第1乾燥部
20 IJプリント部
21 インクジェットヘッド
22 インク液滴
23 第2乾燥部
30 送り出しローラー
40 巻取りローラー
C 前処理層
F 基材
P 印刷物
R 印刷層

Claims (13)

  1. 水不溶性樹脂微粒子、凝集剤、架橋剤及び水を含有するインクジェット記録用前処理液であって、
    前記水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録用前処理液。
  2. 前記水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に乳化されて形成された複合樹脂粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用前処理液。
  3. 前記水不溶性樹脂微粒子におけるポリウレタン系樹脂(U)及びポリオレフィン系樹脂(O)の質量比率(U/O)の値が、40/60〜95/5の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録用前処理液。
  4. 前記架橋剤が、カルボジイミド基又はオキサゾリン基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液。
  5. 前記凝集剤が、多価金属塩又は有機酸を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液。
  6. 前記ポリウレタン系樹脂におけるポリオール成分が、カーボネート基又はエーテル基を有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液。
  7. 前記架橋剤の含有量が、前記水不溶性樹脂微粒子の含有量(100質量部)に対し、3〜100質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液。
  8. インクジェット記録用前処理液と、顔料、有機溶剤及び水を少なくとも含有するインクジェット記録インクとを組み合わせたインクジェット記録液セットであって、
    前記インクジェット記録用前処理液が、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液であり、
    前記インクジェット記録用前処理液が、凝集剤を含有し、
    前記凝集剤が、前記インクジェット記録インクが含有する顔料を凝集させる凝集剤であることを特徴とするインクジェット記録液セット。
  9. 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液を製造するインクジェット記録用前処理液の製造方法であって、
    ポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂とを乳化分散して複合樹脂粒子を形成する工程と、
    前記複合樹脂粒子、前記凝集剤、前記架橋剤及び前記水を混合する工程と、
    を有することを特徴とするインクジェット記録用前処理液の製造方法。
  10. 基材と、
    前記基材上に、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液を用いて形成された前処理層と、
    前記前処理層上に、インクジェット記録インクを用いて形成された印刷層と、
    を有することを特徴とする印刷物。
  11. 前記基材が、非吸収性のフィルム基材であることを特徴とする請求項10に記載の印刷物。
  12. 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のインクジェット記録用前処理液、又は請求項8に記載のインクジェット記録液セットを用いて、基材に画像の記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
  13. 前記基材が、非吸収性のフィルム基材であることを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録方法。
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