JP2019173057A - めっき被覆金属材 - Google Patents

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Abstract

【課題】めっき被覆金属材と樹脂との密着性を向上させることにより、樹脂がめっき被覆金属材からはがれるのを抑制することが可能なめっき被覆金属材を提供する。【解決手段】このめっき被覆金属材1は、樹脂2が表面1a上に接合されるめっき被覆金属材1であって、金属から構成される基材層3と、基材層3の表面31上に形成され、樹脂2が表面41上に接合されるめっき層4と、を備える。めっき層4は、内部および表面41に、気孔42aの分布による多孔質領域42を有する。【選択図】図1

Description

この発明は、めっき被覆金属材に関し、特に、樹脂が表面上に接合されるめっき被覆金属材に関する。
従来、樹脂が表面上に接合されるめっき被覆金属材が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
上記特許文献1には、熱可塑性樹脂部材が接合されるNiめっき化鉄鋼部材であって、鉄鋼材料の表面を覆うようにNiめっき層が形成されたNiめっき化鉄鋼部材が開示されている。このNiめっき化鉄鋼部材では、鉄鋼材料の表面に微細凹凸形状を形成し、その微細凹凸形状に沿ってNiめっき層を形成することにより、そのNiめっき層の表面(熱可塑性樹脂部材との接合部表面)が、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)の平均値が好ましくは2μmを超えて40μm以下となるような粗化面に形成されている。これにより、Niめっき化鉄鋼部材の粗化面に形成された粗化形状の中に熱可塑性樹脂部材が進入し、熱可塑性樹脂部材とNiめっき化鉄鋼部材とを強固に接合することが可能になるとされている。なお、特許文献1が示すRz(十点平均粗さ)は、JIS B0601:2001において、RZJISに対応する。
特開2017−136839号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載のNiめっき化鉄鋼部材のように、樹脂が接合される表面を十点平均粗さの平均値が2μmを超えて40μm以下となるような粗化面に形成するだけでは、金属材と樹脂との密着が不十分であると考えられる。金属材と樹脂との密着が不十分であると、樹脂が金属材からはがれるという問題点があると考えられる。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、めっき被覆金属材と樹脂との密着性を向上させることにより、樹脂がめっき被覆金属材からはがれるのを抑制することが可能なめっき被覆金属材を提供することである。
この発明の一の局面によるめっき被覆金属材は、樹脂が表面上に接合されるめっき被覆金属材であって、金属から構成される基材層と、基材層の表面上に形成され、樹脂が表面上に接合されるめっき層と、を備え、めっき層は、内部および表面に、気孔の分布による多孔質領域を有する。なお、「めっき層」とは、めっきにより作製された層を意味し、めっき方法は特に限定されない。
この発明の一の局面によるめっき被覆金属材では、めっき層の内部および表面に形成された多孔質領域に分布する気孔内に樹脂が入り込むことによって、金属材の表面の微細凹凸形状に沿って形成されためっき層の表面の十点平均粗さの平均値が2μmを超えて40μm以下となるだけの単純な粗化形状の中に樹脂が進入する場合と比べて、樹脂とめっき層との間のアンカー効果を確実に大きくすることができる。これにより、めっき被覆金属材と樹脂との密着性を向上させることができるので、樹脂がめっき被覆金属材からはがれるのを抑制することができる。
上記一の局面によるめっき被覆金属材において、好ましくは、多孔質領域に分布する気孔の積算体積は、50mm/g以上である。このように構成すれば、多孔質領域に分布する気孔の量が十分になり、気孔の分布形態も好ましいものになるので、めっき被覆金属材と樹脂との密着性を確実に向上させることができる。なお、「気孔の積算体積」とは、試料(めっき被覆金属材)に存在する気孔のうち、後述する水銀圧入法を用いて測定可能な気孔の合計の体積を、測定前の試料の質量で除して求めた値である。
上記一の局面によるめっき被覆金属材において、好ましくは、多孔質領域に分布する気孔のメジアン径(D50)は、25μm以上である。このように構成すれば、樹脂が入り込むことが容易ではない過度に小さな気孔の存在割合が大きくなるのを抑制することができるので、めっき被覆金属材と樹脂との密着性が過度に小さな気孔に樹脂が入り込めないことに起因して低下するのを抑制することができる。
上記一の局面によるめっき被覆金属材において、好ましくは、多孔質領域における表面積/平面積は、1.5以上である。また、好ましくは、多孔質領域における算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に準拠)は、0.5μm以上である。これらのように構成すれば、多孔質領域の表面がある程度の凹凸を有するので、多孔質領域の内部に分布する気孔内に樹脂が入り込むことによる樹脂とめっき層との間のアンカー効果に加えて、多孔質領域の表面に分布する気孔によって形成された凹凸に樹脂が進入することによる樹脂とめっき層との間のアンカー効果も生じさせることができる。これにより、めっき被覆金属材と樹脂との密着性をより効果的に向上させることができる。
上記一の局面によるめっき被覆金属材において、好ましくは、めっき層は、Niめっきから構成されている。なお、「Niめっき」は、少なくともNi(ニッケル)を主成分として50質量%以上含むNi合金または純Niから構成されためっきを意味する。このように構成すれば、Niめっきから構成されるめっき層が比較的硬質であることにより、内部および表面に多孔質領域のあるめっき層が相応の機械的強度を有するため、めっき層の多孔質領域が外力などに起因して破損するのを抑制することができる。
上記一の局面によるめっき被覆金属材において、好ましくは、めっき層の厚みは、理論膜厚で5μm以下である。この場合、めっき被覆金属材と樹脂との密着性に寄与するめっき層の最低限の厚み(樹脂の種類、めっき層の組織形態および材質などにより異なると考えられる)を確保可能な範囲で、めっき層の厚みを理論膜厚で5μm以下とする。なお、「理論膜厚」とは、めっき層の内部および表面に気孔の分布による多孔質領域が形成されていないと仮定した場合のめっき層の厚み、言い換えれば、めっき層の気孔以外の部分(実部)を材料としてめっき層を形成したと仮定した場合のめっき層の厚みである。この理論膜厚は、めっき処理前の金属材の質量および平面積、めっき層を構成する金属の密度、およびめっき処理後のめっき被覆金属材の質量に基づいて求めることが可能である。めっき層の厚みを理論膜厚で5μm以下に構成すれば、樹脂が入り込みにくくなるめっき層の深部(めっき層側の基材層の表面に近い部分)の存在割合が大きくなるのを抑制することができるので、めっき被覆金属材と樹脂との密着性に寄与しないめっき層の存在割合の増加を抑制することができる。また、めっき被覆金属材と樹脂との密着性に寄与しないめっき層の存在割合を低減することにより、めっき層を形成するために要する時間やめっき層を構成する材料消費などの適正化の観点で、めっき被覆金属材の量産性(製造効率)を向上させることができる。
上記一の局面によるめっき被覆金属材において、好ましくは、基材層は、100μm以下の厚みを有する。厚みの小さな基材層(金属材部分)は、めっき層の表面に樹脂が進入する粗化面(十点平均粗さの平均値が2μmを超えて40μm以下となるような凹凸形状)を形成するための微細凹凸形状を表面に形成した場合、基材層(金属材部分)の機械的強度が低下する虞がある。しかし、このように100μm以下の小さな厚みの基材層に対して、多孔質領域を有するめっき層を形成することによって、厚みの小さな基材層(金属材部分)の機械的強度を低下させることなく、めっき被覆金属材と樹脂との密着性を向上させることができる。
本発明によれば、上記のように、めっき被覆金属材と樹脂との密着性を向上させることにより、樹脂がめっき被覆金属材からはがれるのを抑制することが可能なめっき被覆金属材を提供することができる。
本発明の一実施形態によるめっき被覆金属材を示した模式的な断面図である。 本発明の一実施形態によるめっき被覆金属材の樹脂とめっき層との界面近傍を示した拡大断面図である。 実施例における試験材1〜9の顕微鏡写真である。 実施例における試験材1〜9の表面積/平面積を示したグラフである。 実施例における試験材1〜9の算術平均粗さRaを示したグラフである。 実施例における試験材1〜9の十点平均粗さRZJISを示したグラフである。 実施例におけるシェア強度の測定方法を説明するための模式図である。 実施例における試験材1、2、6、7および9の積算体積とシェア強度との関係を示したグラフである。 実施例における試験材1、2、6、7および9のメジアン径(D50)とシェア強度との関係を示したグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態によるめっき被覆金属材1の構成について説明する。
(めっき被覆金属材)
めっき被覆金属材1は、図1に示すように、表面1a上に樹脂2が接合される金属材である。このような樹脂2が接合されためっき被覆金属材1は、接合された樹脂により絶縁を確保しつつ、金属材として良好な放熱性(熱伝導性)および加工性(曲げ加工等)などを有する材料である。この樹脂2が接合されためっき被覆金属材1は、ラミネートフィルムのような電池の外装材または集電体、携帯機器の筐体、放熱部材等に好適に用いることが可能である。
めっき被覆金属材1は、金属から構成される基材層3と、基材層3の表面31上に形成され、樹脂2が表面41(1a)上に接合されるめっき層4と、を備えている。
めっき層4は、基材層3の少なくとも厚み方向(Z方向)の一方側(Z1側)の表面31aに形成されている。なお、めっき層4は、基材層3の厚み方向の表面31aに加えて、基材層3の厚み方向の他方側の表面31bに形成されていてもよいし、基材層3の厚み方向と直交する側面31cに形成されていてもよい。さらに、図1に示すように、めっき層4は、基材層3の表面31の略全体を覆うように形成されていてもよい。また、めっき層4の厚み(実際の厚み)t2は、樹脂2との密着性を確保するために必要な最低限の厚み以上とし、めっき被覆金属材1の厚み(図1においてはt1+2×t2)を必要を超えて過度に大きくしないためにも、基材層3の厚みt1よりも小さい方が好ましい。この点は、後述する式(2)により求めることが可能な厚みt2についても同様であるが、たとえば、基材層3の厚みt1が8μm以上20μm以下である場合は、めっき層4の厚み(実際の厚み)t2は、樹脂2との密着性を確保するために必要な最低限の厚み以上必要3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。
ここで、本実施形態では、図1および図2に示すように、めっき層4の内部および表面41(1a)には、気孔42aの分布による多孔質領域42が形成されている。多孔質領域42では、めっき層4の表面41において、複数の気孔42aの一部が直接開口するように形成されているとともに、めっき層4の内部において、隣接する複数の気孔42a同士が互いに接続(連結)するように形成されている。これにより、多孔質領域42に形成された略全ての気孔42aは、直接的、または、他の気孔42aを介して間接的に、外部(表面41)と連通している。
なお、多孔質領域42は、めっき層4の厚みt2が小さい場合には、めっき層4の全体に渡って形成されている方が好ましい。なお、多孔質領域42は、図1に示すように、めっき層4の表面41および表面41近傍の内部にのみ形成されていてもよい。
また、多孔質領域42において、気孔42aの量(積算体積)が大きい場合には、めっきを構成する金属部分42b(図2参照)が三次元の網目状の形状に近づく一方、気孔42aの量が小さい場合には、金属部分42bが気孔を取り囲むような形状に近づく。つまり、図2は、多孔質領域42のあくまで一例である。
基材層3は、100μm以下の厚みt1を有する金属板(金属箔)から構成されているのが好ましい。また、基材層3は、取扱いの観点から、6μm以上の厚みt1を有するのが好ましい。また、基材層3を構成する金属としては、Ni(ニッケル)、Ni合金、Cu(銅)、Cu合金、Fe(鉄)、SUS(ステンレス鋼)などのFe合金、これらの金属などから構成される複数の金属層を有するクラッド材のいずれかであるのが好ましい。たとえば、基材層3をNiから構成することによって、比較的軽量なめっき被覆金属材1を得ることが可能である。また、基材層3をCuから構成することによって、熱伝導性に優れためっき被覆金属材1を得ることが可能である。なお、「Ni合金」、「Cu合金」および「Fe合金」は、それぞれ、Ni、CuおよびFeを主成分として50質量%以上含む合金を意味する。
めっき被覆金属材1に接合される樹脂としては、特に限定されない。また、めっき被覆金属材1に接合される樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。特に、めっき被覆金属材1に接合される樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)またはアクリル樹脂(PMMAなど)を用いるのが好ましい。また、めっき被覆金属材1に接合される樹脂に、ガラス繊維または炭素繊維などを添加してもよい。
これにより、図2に示すように、多孔質領域42では、溶融した樹脂2(熱可塑性樹脂)が表面41上に配置された際、または、樹脂2を接合するための溶液が表面41上に塗布等された際に、気孔42aに樹脂または溶液の一部が入り込む。この結果、樹脂2または溶液が固化されることによって、気孔42a内の樹脂2または樹脂2を接合するための溶液と、気孔42a外(表面41上)の樹脂2とが物理的に接続される。この結果、めっき被覆金属材1と樹脂2との界面(接合面)が形成されるとともに、めっき被覆金属材1と樹脂2との密着性が向上される。なお、微細凹凸形状に形成された基材層(金属材)の表面に沿ってめっき層を形成し、樹脂が接合されるめっき被覆金属材の表面を凹凸形状にするような方法により粗化する場合と比べて、樹脂2または溶液がめっき層4の表面に存在する気孔42aに進入するだけでなく、樹脂2または溶液がめっき層4の内部に存在する気孔42aに入り込む分、アンカー効果を大きくすることが可能である。以下、めっき層の内部および表面の気孔に樹脂または溶液が入り込むことについて、樹脂と溶液とを特に区別せず、たとえば、気孔内に樹脂が入り込む、などと記載することがある。
また、本実施形態では、多孔質領域42に分布する気孔42aの積算体積は、50mm/g以上であるのが好ましい。また、気孔42aの積算体積は、150mm/g以上であるのがより好ましく、170mm/g以上であるのがさらに好ましい。なお、気孔42aの積算体積は、一般的な水銀圧入法により測定することが可能である。なお、水銀圧入法とは、加える圧力を大きくすることに伴い、水銀が入り込むことができる気孔42aの直径が小さくなることを利用して、多孔質領域42における気孔42aの分布形態を直径毎に測定する方法である。本発明では、水銀圧入法により取得された、加えた圧力に応じて気孔42aに圧入された水銀の体積に基づく水銀の積算体積を、多孔質領域42に存在する気孔42aの体積が合計された気孔42aの積算体積とする。
また、多孔質領域42に分布する気孔42aの積算体積は、めっき層4における多孔質領域42が、めっき被覆金属材1の表面1a上に樹脂2が接合されて各種の用途に供される際に必要な機械的強度の許容範囲を満たす範囲において、可能な限り大きくしてもよい。ここで、多孔質領域42においては、気孔42aの量(積算体積)が増加することに伴い、多孔質領域42を構成する骨格部分であるめっき層4の金属部分42b(図2参照)の占める体積が減少して、多孔質領域42の機械的強度が低下する。そして、多孔質領域42の機械的強度が許容範囲を下回ると、樹脂2が多孔質領域42に入り込んで固化される際に生じる力、または、めっき層4の表面上に接合された樹脂2に対して作用する剥離力などの外力に起因して、多孔質領域42を構成するめっき層4の金属部分42b(骨格部分)が破損すると考えられる。このため、多孔質領域42に分布する気孔42aの積算体積は、多孔質領域42におけるめっき層4の機械的強度が各種の用途に応じて必要になる許容範囲を満たす範囲内に限定するのがよい。一例として、多孔質領域42に分布する気孔42aの積算体積は、300mm/g以下であるのが好ましい。
また、多孔質領域42に分布する気孔42aのメジアン径(いわゆるD50)は、25μm以上であるのが好ましい。なお、気孔42aのメジアン径は、上記水銀圧入法により取得される、気孔42aの直径毎の分布形態から求めることが可能である。なお、気孔42aのメジアン径は、50μm以上であるのがより好ましく、54μm以上であるのがさらに好ましい。
また、多孔質領域42では、めっき層4の表面41に気孔42aが開口していることにより、めっき層4の表面41が凹凸形状に形成されている。めっき層4の表面41の凹凸形状は、主に表面41からめっき層4の内部に向かう凹部(谷)である。ここで、多孔質領域42における表面積/平面積は、1.5以上であるのが好ましい。なお、表面積/平面積は、一般的なレーザ顕微鏡を用いて取得することが可能である。具体的には、多孔質領域42の表面41の所定範囲を、レーザ光を用いて走査することによって、所定範囲における凹凸の影響も含む実際の面積(表面積)を測定する。そして、測定した表面積を、凹凸の影響を考慮しない所定範囲(レーザ光の走査範囲)の面積である平面積で除することによって、表面積/平面積を取得することが可能である。たとえば、レーザ光を走査する所定範囲の形状が長さL(μm)の正方形である場合には、平面積はL(μm)となる。また、多孔質領域42における表面積/平面積は、2以上であるのがより好ましく、3.5以上であるのがさらに好ましい。
また、多孔質領域42における算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に準拠)は、0.5μm以上であるのが好ましい。なお、基準長さにおける算術平均粗さRaは、一般的なレーザ顕微鏡を用いて取得することが可能である。なお、多孔質領域42における算術平均粗さRaは、1μm以上であるのがより好ましく、1.4μm以上であるのがさらに好ましい。
また、多孔質領域42における十点平均粗さRZJIS(JIS B0601:2001に準拠)は、15μm以上であるのが好ましい。なお、基準長さにおける十点平均粗さRZJISは、上記Raと同様、一般的なレーザ顕微鏡を用いて取得することが可能である。なお、多孔質領域42における十点平均粗さRZJISは、30μmを超えるのがより好ましく、40μmを超えるのがさらに好ましい。
めっき層4の形成方法は、電解めっき処理または無電解めっき処理など、特に限定されない。また、めっき層4の組成も特に限定されない。なお、めっき層4は、NiまたはNi合金から構成されるNiめっき層が好ましい。この場合、めっき層4は、電解Niめっきによって構成されるNiめっき層がより好ましい。この際、Niめっき層は、大部分(好ましくは、99質量%以上)が純Niから構成される。また、めっき層4は、CuまたはCu合金から構成されるCuめっき層であってもよい。この場合、めっき層4は、電解Cuめっきによって構成されるCuめっき層がより好ましい。
また、めっき層4の厚みは、理論膜厚t0で5μm以下であるのが好ましく、理論膜厚t0で2μm以下であるのがより好ましい。なお、理論膜厚t0は、めっき処理前後のめっき被覆金属材1の質量差を、めっき層4を構成する金属の密度とめっき層4を形成する基材層3の平面積とで除することによって、算出することが可能である。つまり、理論膜厚t0は、めっき処理前の基材層3の質量をW0、めっき処理後のめっき被覆金属材1の質量をW1、めっき層4を構成する金属の密度をρ、および、めっき層4を形成する基材層3の平面積をSとした場合に、下記の式(1)で算出することが可能である。
t0=(W1−W0)/(ρ×S)・・・(1)
また、めっき層4の実際の厚みt2(図1参照)は、気孔42aの分布による多孔質領域42の形成によって、理論膜厚t0よりも大きくなる。なお、実際の厚みt2は、断面研磨などの加工を伴う断面観察などにより測定しようとすると、多孔質領域42の骨格部分(図2に示すめっき層4を構成する金属部分42b)の機械的強度が比較的小さいことに起因して、多孔質領域42が破壊される虞がある。そのため、断面観察などにより実際の厚みt2を正確に測定するのは困難である。一方で、実際の厚みt2は、上述したように、気孔42aの積算体積と、上記めっき処理前後のめっき被覆金属材1の質量差、めっき層4を構成する金属の密度、および、めっき層4を形成する基材層3の平面積に基づいて、理論的に取得することが可能である。つまり、実際の厚みt2は、気孔42aの積算体積をV、理論膜厚をt0、めっき層4を形成する基材層3の平面積をSとした場合に、下記の式(2)で算出することが可能である。
t2=t0+(V/S)・・・(2)
(めっき被覆金属材の製造方法)
次に、本発明の一実施形態によるめっき被覆金属材1の製造方法について簡単に説明する。
まず、金属製の基材層3を準備する。そして、所定の表面処理(洗浄等)を行った後に、基材層3の表面31上にめっき層4を形成する。たとえば、めっき層4の形成方法の一例として、基材層3に対して電解Niめっき処理を行う。この際、ワット浴用またはスルファミン酸浴用のめっき溶液に、めっき処理後の洗浄乾燥工程などにおいて除去することが可能な添加剤(たとえば、奥野製薬工業製のトップポーラスニッケルRSNまたはポーラスカッパーCPPなど)を添加する。そして、めっき溶液内に配置された、Niイオン供給用のNi板材を正極に接続するとともに、めっき溶液内に配置された基材層3を負極に接続して、所定量の電流を印加する。
なお、この電解Niめっき処理は、タクトタイムの短縮のため、いわゆるフープめっき処理により連続的に行われるのが好ましい。この場合、製造設備が大型化するのを抑制するために、印加する電流を増やし、電流密度を大きくすることによって、短時間で電解Niめっき処理を終了させるのが好ましい。電解Niめっき処理の後、めっき層4の表面41を洗浄乾燥するのが一般的である。
これにより、基材層3の表面31に、電解Niめっきから構成され、その内部および表面に、気孔42aの分布による多孔質領域42を有するめっき層4が形成される。この結果、金属から構成される基材層3と、基材層3の表面31上に形成されためっき層4とを備える、めっき被覆金属材1が作製される。
<本実施形態の効果>
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、上記のように、めっき層4の内部および表面41に、気孔42aの分布による多孔質領域42を有する。これにより、めっき層4の内部および表面に形成された多孔質領域42における気孔42a内に樹脂2が入り込むことによって、微細凹凸形状に形成された基材層(金属材)の表面に沿ってめっき層を形成し、めっき被覆金属材の表面を凹凸形状にするような方法によりめっき層の表面を粗化する場合と比べて、樹脂2とめっき層4との間のアンカー効果を確実に大きくすることができる。この結果、めっき被覆金属材1と樹脂2との密着性を向上させることができるので、樹脂2がめっき被覆金属材1からはがれるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、好ましくは、多孔質領域42に分布する気孔42aの積算体積を50mm/g以上にする。このように構成すれば、多孔質領域42に分布する気孔42aの量が十分になり、気孔42aの分布形態も好ましいものになるので、めっき被覆金属材1と樹脂2との密着性を確実に向上させることができる。
また、本実施形態では、好ましくは、多孔質領域42に分布する気孔42aのメジアン径を25μm以上にする。このように構成すれば、樹脂2が入り込むことが容易ではない過度に小さな気孔42aの存在割合が大きくなるのを抑制することができるので、めっき被覆金属材1と樹脂2との密着性が過度に小さな気孔42aに樹脂2が入り込めないことに起因して低下するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、好ましくは、多孔質領域42における表面積/平面積を1.5以上にする。また、好ましくは、多孔質領域42における算術平均粗さRaを0.5μm以上にする。これらのように構成すれば、多孔質領域42の表面41(1a)がある程度の凹凸を有するので、多孔質領域42の内部に分布する気孔42a内に樹脂2が入り込むことによる樹脂2とめっき層4との間のアンカー効果に加えて、多孔質領域42の表面41(1a)に分布する気孔42aによって形成された凹凸形状に樹脂2が進入することによる樹脂2とめっき層4との間のアンカー効果も生じさせることができる。これにより、めっき被覆金属材1と樹脂2との密着性をより効果的に向上させることができる。
また、本実施形態では、好ましくは、めっき層4をNiめっきから構成する。このように構成すれば、Niめっきから構成されるめっき層4が比較的硬質であることにより、内部および表面41に多孔質領域42のあるめっき層4が相応の機械的強度を有するため、めっき層4の多孔質領域42が外力などに起因して破損するのを抑制することができる。また、耐腐食性の良好なNiめっきから構成されるめっき層4により、基材層3の腐食を抑制することができるので、基材層3として耐食性に劣る金属を用いたとしても、基材層3の腐食を抑制することができる。
また、本実施形態では、好ましくは、めっき層4の厚みを理論膜厚で5μm以下にする。このように構成すれば、樹脂2が入り込みにくくなるめっき層4の深部(めっき層4側の基材層3の表面に近い部分)の存在割合が大きくなるのを抑制することができるので、めっき被覆金属材1と樹脂2との密着性に寄与しないめっき層4の存在割合の増加を抑制することができる。また、めっき被覆金属材1と樹脂2との密着性に寄与しないめっき層4の存在割合を低減することにより、めっき層4を形成するために要する時間やめっき層4を構成する材料消費などの適正化の観点で、めっき被覆金属材1の量産性(製造効率)を向上させることができる。
また、本実施形態では、好ましくは、基材層3が100μm以下の厚みt1を有する。このように100μm以下の小さな厚みt1の基材層3に対して、多孔質領域42を有するめっき層4を形成することによって、たとえば、基材層と樹脂との密着性を向上させるために行う基材層に対する粗化加工のような、厚みの小さな基材層の表面に微細凹凸形状を形成する加工を行う必要がなくなるため、厚みt1の小さな基材層3の機械的強度を低下させることなく、めっき被覆金属材1と樹脂2との密着性を向上させることができる。
[実施例]
次に、本発明の効果を確認するために行った実験(実施例)について説明する。
[実施例1]
実施例1では、製造条件を異ならせた複数のめっき被覆金属材1を作製し、複数のめっき被覆金属材1毎に、表面状態としての、表面粗さ(表面積/平面積、算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRZJIS)を測定した。
(試験材の作製)
試験材1として、上記実施形態に記載のめっき被覆金属材1を作製した。具体的には、一辺が100mmの正方形で、10μmの厚みを有するFe材(いわゆるSPCC)からなる金属材(基材層3)に対して、ワット浴による電解Niめっき処理を行った。この際、所定濃度の硫酸ニッケルなどからなる一般的なワット浴用に配合されためっき溶液に、添加剤としてのトップポーラスニッケルRSN(奥野製薬工業製)を5mL/Lの濃度になるように添加した。そして、めっき溶液(4.2程度のpH)の温度を約50℃とし、電流密度を1A/dmに設定して、めっき層4の理論膜厚が2μmになるまで電解Niめっき処理を行った。その後、洗浄および乾燥工程を行うことによって、試験材1のめっき被覆金属材1を作製した。なお、電流密度は、印加する電流量を、通電に際して陰極となる正方形の金属材(基材層3)の面積(平面積)で除して求まる値である。
また、試験材2のめっき被覆金属材1を、添加剤を10mL/Lの濃度になるように添加した点を除いて、上記試験材1と同様の製造方法にて作製した。
また、試験材3のめっき被覆金属材1を、添加剤を15mL/Lの濃度になるように添加した点を除いて、上記試験材1と同様の製造方法にて作製した。
また、試験材4のめっき被覆金属材1を、電流密度を3A/dmに設定した点を除いて、上記試験材1と同様の製造方法にて作製した。
また、試験材5のめっき被覆金属材1を、添加剤を10mL/Lの濃度になるように添加した点を除いて、上記試験材4と同様の製造方法にて作製した。
また、試験材6のめっき被覆金属材1を、添加剤を15mL/Lの濃度になるように添加した点を除いて、上記試験材4と同様の製造方法にて作製した。
また、試験材7のめっき被覆金属材1を、電流密度を5A/dmに設定した点を除いて、上記試験材1と同様の製造方法にて作製した。
また、試験材8のめっき被覆金属材1を、添加剤を10mL/Lの濃度になるように添加した点を除いて、上記試験材7と同様の製造方法にて作製した。
また、試験材9のめっき被覆金属材1を、添加剤を15mL/Lの濃度になるように添加した点を除いて、上記試験材7と同様の製造方法にて作製した。
そして、試験材1〜9のめっき被覆金属材1の多孔質領域42の表面41を、日立ハイテクノロジーズ製SEM(走査型電子顕微鏡)S−3400を用いて撮影した。図3に試験材1〜9の顕微鏡写真を示す。なお、図3の顕微鏡写真において、黒色部分が気孔42a(図2参照)であり、灰色部分がめっき層4を構成する金属部分42b(図2参照)であり、白色部分が表面に開口する気孔42aの縁部分である。
(表面状態測定)
また、試験材1〜9の各々において、レーザ顕微鏡(キーエンス製レーザーマイクロスコープVK−8500)を用いて、表面粗さを取得した。具体的には、レーザ顕微鏡を用いて、レーザ光が走査する所定範囲の表面積を測定し、その表面積を所定範囲(レーザ光の走査範囲)の面積(平面積)で除することによって、表面積/平面積を取得した。また、レーザ顕微鏡を用いて、基準長さにおける算術平均粗さRaと、基準長さにおける十点平均粗さRZJISとを取得した。なお、算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRZJISの測定方法は、JIS B0601:2001に準拠する。図4〜図6に、それぞれ、表面積/平面積、算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRZJISのグラフを示す。
[実施例1の結果]
図3に示す顕微鏡写真から、試験材1〜9のいずれにおいても、表面41(図1参照)に開口を有する複数の気孔42a(図2参照)が確認できた。つまり、試験材1〜9のいずれにおいても、内部および表面41に、気孔42aの分布による多孔質領域42が形成されていると考えられる。また、試験材1と試験材3、試験材4と試験材6、および、試験材7と試験材9の比較から、添加剤の濃度を大きくすることによって、表面41において視認される気孔42aの直径(開口の大きさ)は大きくなるものの、気孔42aのメジアン径(D50)は小さくなる傾向が観察された。具体的には後述する表1に示すように、添加剤の濃度が小さい試験材7よりも添加剤の濃度が大きい試験材9のメジアン径(D50)が小さくなっている。また、試験材1と試験材4と試験材7、試験材2と試験材5と試験材8、および、試験材3と試験材6と試験材9の比較から、電流密度を大きくすることによって、表面41において視認される気孔42aの直径(開口の大きさ)が小さくなり、気孔42aのメジアン径(D50)が小さくなる傾向が観察された。具体的には後述する表1に示すように、電流密度が小さい試験材1よりも電流密度が大きい試験材7のメジアン径(D50)が小さくなっている。
また、図4に示す表面積/平面積のグラフから、試験材1〜9の表面積/平面積は、1.5以上になることが確認できた。なお、図4において、試験材1と試験材2の値を示すマーク、試験材4と試験材5の値を示すマーク、および試験材7と試験材8の値を示すマークは、それぞれ、略重なっている。
また、図5に示す算術平均粗さRaのグラフから、試験材1〜9の算術平均粗さRaは、0.5μm以上になることが確認できた。なお、図5において、試験材4と試験材5の値を示すマークは、略重なっている。
また、図6に示す十点平均粗さRZJISのグラフから、試験材1〜9の十点平均粗さRZJISは、30μm以上になることが確認できた。なお、図6において、試験材8と試験材9の値を示すマークは、略重なっている。
また、試験材1と試験材4と試験材7、試験材2と試験材5と試験材8、および、試験材3と試験材6と試験材9のそれぞれの比較から、電流密度が大きくなるにつれて、表面積/平面積、算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRZJISが共に小さくなる傾向が見られた。これらは、電流密度が大きくなることによって、めっき材料(Ni)の析出を阻害するように働くと考えられる添加剤の影響が及ぶよりも速くめっき材料(Ni)が析出したため、めっき層4が確実に形成され、気孔42aのメジアン径(D50)が比較的小さくなったことによると考えられる。表面41に開口する気孔42aのメジアン径(D50)が小さくなった結果、多孔質領域42における表面積(表面積/平面積)、算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRZJISが共に小さくなったと考えられる。
なお、図4に示すように、試験材1〜8では、表面積/平面積が2以上になり、試験材1〜6では、表面積/平面積が3以上になった。また、試験材1〜5では、表面積/平面積が3.5以上になり、試験材1および2では、表面積/平面積が6以上になった。
また、図5に示すように、試験材1〜9では、算術平均粗さRaが1μm以上になり、試験材1〜6および8では、算術平均粗さRaが1.4μm以上になった。また、試験材1〜3および6では、算術平均粗さRaが2μm以上になり、試験材2および3では、算術平均粗さRaが3μm以上になった。
また、図6に示すように、試験材1〜9では、十点平均粗さRZJISが30μm以上になり、試験材1〜6、8および9では、十点平均粗さRZJISが40μm以上になった。また、試験材1〜6では、十点平均粗さRZJISが70μm以上になり、試験材3および6では、十点平均粗さRZJISが100μm以上になった。
[実施例2]
実施例2では、上記試験材1、2、6、7および9について、気孔42aの直径の分布形態に基づくメジアン径(D50)と、気孔42aの積算体積とを測定した。
具体的には、試験材1、2、6、7および9の各々において、水銀ポロシメータ(島津製作所製マイクロメリティクスオートポア4(本来の表記はローマ数字)9505)を用いた水銀圧入法により多孔質領域42における気孔42aの直径の分布を取得することによって、気孔42aの直径と個数の関係を表す累積分布に基づいて積算体積およびメジアン径(D50)を取得した。これは、気孔を粒子と見做し、気孔の大きさを粒度(粒子径)と見做し、粒子と見做した気孔の存在比率を体積基準で取得し、粒度と見做した気孔の大きさの体積分布を積算体積分布曲線として表すことによって、一般的な粒子の積算体積分布と同様に考えることができる。
試験材1、2、6、7および9における気孔42aの積算体積およびメジアン径(D50)を表1に示す。
Figure 2019173057
[実施例2の結果]
添加剤の濃度が等しい試験材1と試験材7との比較、および、試験材6と試験材9との比較から、電流密度が大きくなるにつれて、気孔42aの積算体積およびメジアン径(D50)が小さくなることが判明した。この結果からも、電流密度の増加により、添加剤の影響が及ぶよりも速くめっき材料(Ni)が析出し、めっき層4が確実に形成されていることが確認可能である。
[実施例3]
実施例3では、試験材1、2、6、7および9に実際に樹脂2を接合して(図2参照)、めっき被覆金属材1(試験材)と樹脂2との密着性の指標としてのシェア強度を測定した。
(シェア強度)
具体的には、まず、ホットプレート(図示せず)の上に載置された試験材1、2、6、7および9のめっき被覆金属材1の表面1a上に、0.1mmの厚みを有するシート状の樹脂2を載置した。なお、この樹脂2は、ポリプロピレン(PP)製である。そして、ホットプレートを180℃まで昇温させて、めっき被覆金属材1と樹脂2との界面に位置する樹脂2を溶融させることによって、めっき被覆金属材1と樹脂2とを接合させた。この際、樹脂2に対して略均等に50gの荷重をかけながら、めっき被覆金属材1と樹脂2とを接合させた。これにより、樹脂2が接合された試験材1、2、6、7および9のめっき被覆金属材1を作製した。
そして、シェア強度測定機(ノードソン社製万能ボンドテスターシリーズ4000)を用いて、樹脂2と試験材1、2、6、7および9のめっき被覆金属材1との間の密着性(シェア強度)を測定した。具体的には、図7に示すように、樹脂2が接合されためっき被覆金属材1をシェア強度測定機の保持基板101に固定した。そして、シェア強度測定機の1mmの幅(図の奥行き方向の長さ)の剥離治具102を、剥離治具102の下端102aとめっき被覆金属材1の表面1aとの距離(シェア高さ)が0μm(−0μm〜+0.4μmの調整代あり)になるように配置した。そして、室温環境下において、剥離治具102を樹脂2に向かって水平方向に移動させることによって、剥離治具102の下端102aを用いてめっき被覆金属材1と樹脂2とを強制的に剥離させた。この際、200μm/秒の移動速度に設定し、かつ、移動中に49N(5kgf)の最大荷重(鉛直荷重)が鉛直方向に印加されるように設定し、剥離治具102を移動させた。そして、剥離において剥離治具102が受けた水平方向の最大荷重(シェア強度(mN))を測定した。
また、比較材として、上記試験材と同じワット浴用のめっき溶液を用いて、めっき溶液に添加剤を添加しない点を除いて、上記試験材と同様に、電解メッキ処理により、2μmの厚みのNiめっきからなるめっき層が形成されたものを準備した。なお、比較材の基材層となる金属材は、10μmの厚みを有するFe材(いわゆるSPCC)である。この比較材には、めっき溶液に添加剤を含まないため、めっき層の内部および表面に気孔の分布による多孔質領域が形成されていない。そして、比較材に関しても、試験材1〜9と同様に、めっき層の表面の算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRZJISを測定し、試験材1、2、6、7および9と同様に、樹脂を接合させた後、シェア強度を測定した。
比較材では、めっき層の表面の算術平均粗さRaが約1μmになり、十点平均粗さRZJISが約20μmになっていた。
試験材1、2、6、7、9および比較材におけるシェア強度の測定結果を図8および図9に示す。
[実施例3の結果]
図8および図9の測定結果から、比較材と比べて、試験材1、2、6、7および9では、いずれも、シェア強度が大きくなった。具体的には、比較材と比べて、試験材1、2、6、7および9では、いずれも、シェア強度が1.17倍以上大きくなった。特に、試験材1のシェア強度は、比較材のシェア強度の約1.36倍であった。これにより、めっき被覆金属材1の内部および表面41に、気孔42aの分布による多孔質領域42を有することによって、樹脂と金属材(めっき被覆金属材1)との密着性を向上させることが可能であることが確認できた。
また、多孔質領域42における気孔42aの積算体積が大きくなるに伴い、シェア強度が大きくなる傾向が見られた。これは、気孔42aの積算体積が大きくなることにより、多孔質領域42に分布する気孔42aに入り込む樹脂2の総量が増加するからであると考えられる。また、多孔質領域42におけるメジアン径(D50)が大きくなるに伴い、シェア強度が大きくなる傾向が見られた。これは、メジアン径(D50)が大きくなることにより、多孔質領域42に分布する気孔42aに樹脂が入りやすくなるからであると考えられる。この結果から、めっき被覆金属材1が上記の多孔質領域42を伴うめっき層4によって被覆されていると、めっき被覆金属材1と樹脂2との密着性が高まることが確認された。
ここで、めっき被覆金属材1の量産性(製造効率)を向上させるための一策として、めっき処理時間(タクトタイム)の短縮を考えると、電流密度を大きくして、めっき層4の形成速度を大きくするのが好ましいと考えられる。樹脂に対して十分な密着性(シェア強度)を有することを優先しながらも量産性を向上させる観点からは、電流密度を3A/dmとして5000mN以上のシェア強度が得られた試験材6のグループ(試験材4〜6)が好ましいと考えられる。また、量産性を向上させることを優先しながらも樹脂に対する密着性(シェア強度)を向上させる観点からは、電流密度を5A/dmとして4800mN以上のシェア強度が得られた試験材7および9のグループ(試験材7〜9)が好ましいと考えられる。また、めっき溶液に添加する添加剤を節約するっために添加剤の総量を低減する観点からは、同じ電流密度(5A/dm)で、添加剤の量を5mL/Lとした試験材7のシェア強度が4860mNとなり、添加剤の量を15mL/Lとした試験材9のシェア強度が4820mNとなったことから、添加剤の量がより少ない試験材7が好ましいと考えられる。
また、上記シェア強度の測定では、ポリプロピレン(PP)を用いた場合を示したものの、その他の樹脂を用いた場合においても同様に、多孔質領域に分布する気孔によるアンカー効果により、めっき被覆金属材と樹脂との密着強度が向上すると考えられる。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記実施例では、Niめっきから構成されるめっき層4を備えるめっき被覆金属材1の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、Cuめっきから構成されるめっき層4を備えるめっき被覆金属材1であっても、めっき層4がNiめっきから構成される上記実施例と同様に、樹脂2とめっき被覆金属材1との間のシェア強度が大きくなることは自明であると考えられる。
また、上記実施例では、Fe材(いわゆるSPCC)からなる基材層3を備えるめっき被覆金属材1の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基材層3を構成する金属の種類に拘わらず、多孔質領域42が内部および表面41に形成されためっき層4を備えるめっき被覆金属材1であれば、基材層3がFe材から構成される上記実施例と同様に、樹脂2とめっき被覆金属材1との間のシェア強度が大きくなることは自明であると考えられる。
また、上記実施例では、1層のめっき層4を有するめっき被覆金属材1の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、2層以上のめっき層を有するめっき被覆金属材であってもよい。たとえば、図1に示す基材層3とめっき層4を備えるめっき被覆金属材1において、1層のめっき層4に替えて、めっき層4と同等の上地めっき層および基材層3側に形成される下地めっき層の2層のめっき層にしてもよい。こうした2層のめっき層を備えるめっき被覆金属材では、下地めっき層が、基材層3と上地めっき層(めっき層4と同等)との間の密着性(接合強度)を高めることができる場合や、あるいは、上地めっき層(めっき層4と同等)に基材層3を構成する成分(元素)が拡散するのを防止することができる場合がある。
一例を挙げると、Fe材からなる基材層3に対して、多孔質領域42を有するCuまたはCu合金からなるめっき層4(上地めっき層)を形成する場合は、基材層3とめっき層4(上地めっき層)との間にNiまたはNi合金から構成される下地めっき層を設けることにより、基材層3とめっき層4(上地めっき層)との密着性(接合強度)を高めるとともに、めっき層4(上地めっき層)に基材層3を構成するFeなどの元素が拡散するのを防止することができる。
また、上記実施例では、基材層3が1種類の金属材から構成されるめっき被覆金属材1の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基材層3が、圧延等により製造可能な2層以上の金属層から構成される圧接材(いわゆるクラッド材)から構成される基材層であってもよい。たとえば、図1に示す基材層3とめっき層4を備えるめっき被覆金属材1において、基材層3に替えて、芯材となる第1金属層に対して第2金属層が接合(圧接)されている圧接材を基材層とし、第2金属層の表面上にめっき層4を形成してもよい。こうした2層の金属層から構成される基材層を備えるめっき被覆金属材では、第2金属層が、芯材となる第1金属層とめっき層4との間の密着性(接合強度)を高めることができる場合や、あるいは、めっき層4に芯材となる第1金属層を構成する成分(元素)が拡散するのを防止することができる場合がある。
一例を挙げると、Fe材(いわゆるSPCC)などから構成される金属材の表面上に、多孔質領域42を有するCuまたはCu合金からなるめっき層4を形成する場合は、Fe材などから構成される1種類の金属材の表面上にめっき層4を直接形成することに替えて、Fe材などから構成される金属材が芯材となる第1金属層に対して、NiまたはNi合金から構成される金属材が第2金属層として接合されている、2種類の金属材から構成される圧接材を基材層にしてもよい。NiまたはNi合金から構成される第2金属層は、芯材となる第1金属層とめっき層4との密着性(接合強度)を高めることができるとともに、めっき層4に芯材となる第1金属層を構成するFeなどの元素が拡散するのを防止することができる。
また、上記実施形態のめっき被覆金属材1に加えて、めっき層4(多孔質領域42)の表面41(1a)をさらに粗化することが可能であれば、表面41(1a)をさらに粗化することによって、樹脂2との密着性をさらに向上させてもよい。この場合、気孔42aを破壊しない程度に表面41(1a)を粗化させるのがよい。
1 めっき被覆金属材
3 基材層
4 めっき層
31 (基材層の)表面
41 (めっき層の)表面
42 多孔質領域
42a 気孔

Claims (8)

  1. 樹脂が表面上に接合されるめっき被覆金属材であって、
    金属から構成される基材層と、
    前記基材層の表面上に形成され、前記樹脂が表面上に接合されるめっき層と、を備え、
    前記めっき層は、内部および表面に、気孔の分布による多孔質領域を有する、めっき被覆金属材。
  2. 前記多孔質領域に分布する気孔の積算体積は、50mm/g以上である、請求項1に記載のめっき被覆金属材。
  3. 前記多孔質領域に分布する気孔のメジアン径は、25μm以上である、請求項1または2に記載のめっき被覆金属材。
  4. 前記多孔質領域における表面積/平面積は、1.5以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のめっき被覆金属材。
  5. 前記多孔質領域における算術平均粗さは、0.5μm以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のめっき被覆金属材。
  6. 前記めっき層は、Niめっきから構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のめっき被覆金属材。
  7. 前記めっき層の厚みは、理論膜厚で5μm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のめっき被覆金属材。
  8. 前記基材層は、100μm以下の厚みを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のめっき被覆金属材。
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