JP2019170215A - 食材への物質含浸方法及び物質含浸加工食品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便に食材内部に物質を含浸することができる新規な方法の提供。【解決手段】本発明による食材への物質含浸方法は、含浸する物質を保持した物質保持基材と食材とを同時に減圧処理することにより、物質保持基材には内部構造変化による物質排出駆動力を、食材には食材内部の気体体積変化による物質含浸駆動力を発生させて、前記物質保持基材から前記食材内部へ物質を供給することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、物質保持基材を含浸物質の供給源とし、減圧処理により、外観で認識可能な形状を保持した食材内に効率的に物質を含浸する方法、及びその方法で得られた物質含浸食材を用いて物質含浸加工食品を製造する方法に関する。
超高齢社会を背景に、高齢者・要介護者用の食品開発が進んでいる。中でも、これまで主流であったキザミ食やペースト食とは違う、食材の見た目が良く食欲が湧く形状保持軟化食品が注目されている。従来、食材を軟らかく加工する方法として、常圧下で長時間加熱して軟らかく煮込む方法や、高温高圧で加熱するレトルト処理する方法が用いられてきた。しかし、近年、従来法ではなし得なかった軟らかさを形状保持したまま実現する方法として、酵素を食材に含浸させて加工する、新しい製造方法が考案され実用化されている。
これまでに、本発明者らは、食材を凍結解凍した後、減圧処理を用いて食材内に酵素を急速に含浸する凍結含浸法を考案した(特許文献1参照)。凍結含浸法は、食材を凍結解凍して細胞間隙を緩和する前処理と、食材内の細胞間隙の空気及び水分と食材外の酵素とを急速置換する減圧処理からなる。減圧処理で酵素を浸み込ませた食材は、食材内部で酵素反応が進み、果物が熟するように見た目そのままに軟らかくなる。その軟らかさの程度は歯ぐきでつぶせる、舌でつぶせる、噛まなくてもよいなど、酵素反応の制御で任意の軟らかさに調節することができる。
本発明者らは、凍結含浸法を発展させ、さらに短時間に効率よく食材内に酵素を急速含浸する方法も考案した(特許文献2参照)。これは、食材を加温状態で減圧処理する方法で、食材内で気化して発生する水蒸気及び水と食材外の酵素とを急速置換する減圧処理を特徴とする。
凍結含浸法は、物質を食材内に浸み込ませる、いわゆる「物質含浸技術」の一つである。これまでに、物質含浸技術は、塩漬け、味噌漬け、粕漬けなどの調味漬けに代表される浸漬法が古くから用いられてきた。食材を調味材に漬けるだけでよく、調味成分等の物質は拡散浸透により浸み込む。食材に調味成分が浸み込み、美味しく加工できる。しかし、浸漬法は食材内部に物質が浸み込むまでに時間がかかるという課題がある。そこで食材を浸漬した状態で煮込む加熱法や、加圧状態で加熱するレトルト加熱など、加熱エネルギーを用いて物質の浸透速度を促進する加熱含浸法、加圧加熱含浸法が考えられ普及している。さらに近年では、浸漬や加圧加熱とは異なる物質含浸方法として、上記の凍結含浸法のように減圧含浸法も用いられている。減圧含浸法は加熱を必須としないため、酵素のように加熱変性しやすい物質を含浸する場合に有用である。
以上のように、食材への物質含浸方法は、浸漬法、加熱法、加圧加熱法、減圧含浸法など様々な方法が用いられている。いずれの方法も、含浸物質の食材への供給方法は、食材を物質含有溶液に浸漬して行う方法が一般的であり、その他には含浸物質を食材に直接振りかけて処理する方法も用いられる。
特殊な方法として、調味体を含浸又は塗布した不織布等の吸水シートに食品を乗せる、あるいは食品を該吸水シートで包んだ後、数時間又は数日間そのまま放置し、シートから食品に調味料を拡散浸透させる食品の調味漬け方法が提案されている(特許文献3参照)。
また、プロテアーゼ活性を有する天然発酵調味料粉末等を保持するシートが開発され、食肉に被覆することにより、調味と軟化とを行う食肉の調味・軟化用シートが提案されている(特許文献4参照)。これらは食材と含浸物質を保持したシートを直接接触させることにより、食材表面にムラなく含浸物質を塗布できる利点がある。また物質を浸透させたあと、シートを取り除くだけで良く、例えば味噌漬けのように、漬け込んだ際に付着する過剰な味噌を食材から取り除く、洗うなどの手間を省ける利点がある。
食材への物質含浸方法では、味付けのための調味料含浸に始まり、現在では、酵素、栄養成分、機能性成分、香気成分など様々な成分が含浸物質として選択され、機能性豊富な加工食品が製造されている。
特開2003−284522号公報 WO2016/199766 特開平3−259037号公報 特開平2−42951号公報
食材への物質含浸処理では、通常、食材を含浸物質溶液に浸漬した状態で処理する。食材にムラなく物質を含浸するには、食材が十分に浸かる量の含浸物質溶液が必要とされる。例えば、凍結含浸法での酵素含浸では、調製した酵素溶液に食材を完全に浸漬して減圧処理を行うが、完全に浸漬した状態で処理するには、使用する容器形状に左右されるとしても、食材重量に対して少なくとも等倍量以上の酵素溶液が必要とされる。食材の形状が乱切りなどの野菜類においては、食材間の隙間が大きく、酵素溶液の必要量はさらに増加する。
一方で、実際に食材内に含浸する酵素溶液量は、食材重量の1/5〜1/10倍量程度であり、調製した酵素溶液の多くは使用後に廃棄される。そのため、酵素溶液の使用量コストが製造コストに影響を与えるという課題がある。すなわち、食材への酵素含浸では、酵素溶液使用量を抑えながら、十分量の酵素を食材内部にまで均一かつ確実に、如何に急速含浸できるかが、低価格製品製造上の課題となっている。
また、現在普及拡大している病院や介護施設の厨房及び一般家庭での凍結含浸調理において、上記の酵素使用量に起因する酵素使用量コストに加え、酵素利用そのもの、すなわち酵素の取扱いの難しさも課題となっている。酵素利用には、酵素の取扱い知識を持つ技術者が必要であり、食品工場での食品加工作業者はもとより、特に介護施設の調理員や一般家庭の調理者の酵素利用は、ハードルが高い。
すなわち、今後の超高齢社会で需要が増す高齢者・要介護者用の食品加工・調理において、酵素含浸を利用する形状保持軟化食品の製造及び調理では、
(1)酵素コストを低減化しつつ、均一かつ急速に酵素を食材内部に含浸する方法の提供
(2)酵素利用の知識を必要とせず、誰でも簡単に実施できる酵素処理手段の提供
が喫緊の課題となっている。
なお、含浸物質使用量に係わる含浸物質コストの課題は、新規食品開発で利用されている機能性成分、栄養成分、香気成分などの食材への含浸においても同様に課題となっており、高価な物質を食材に含浸する場合の共通の課題と言える。
本発明者らは、上記の課題解決に向けて鋭意検討した結果、食材内に含浸する物質を保持した「物質保持基材」を用いた含浸処理が有用であるとの知見を得た。物質保持基材と食材とを同時に減圧下に置くことにより、物質保持基材から食材内に均一かつ急速に物質を供給できる。その際、使用する含浸物質量は、従来の浸漬法よりも低減化できるとの知見を得た。さらに、物質保持基材が予め用意されていれば、物質の取扱い方法を知らない者でも、簡便に食材に物質を含浸することができる、との知見を得て本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 含浸する物質を保持した物質保持基材と食材とを同時に減圧処理することにより、物質保持基材には内部構造変化による物質排出駆動力を、食材には食材内部の気体体積変化による物質含浸駆動力を発生させて、前記物質保持基材から前記食材内部へ物質を供給することを特徴とする、食材への物質含浸方法。
[2] 前記物質保持基材が、気体又は気体を発生する液体を含有し、かつ、多孔質構造である、[1]に記載の食材への物質含浸方法。
[3] 前記物質保持基材が、基材の重量1g当たり、5g以上の最大吸収性能及び0.01g以上の最大排出性能を有する、[1]又は[2]に記載の食材への物質含浸方法。
[4] 前記物質保持基材が、天然繊維素材、合成繊維素材、天然樹脂素材、合成樹脂素材、生分解性プラスチック、又はそれら複数の素材を組み合わせた複合素材で作製された基材である、[1]〜[3]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[5] 前記物質保持基材への物質付着方法が、抄紙法、浸漬法、含浸法、塗布法、点滴法、グラビア印刷法、化学修飾法、又はそれらから選ばれる一つ以上を組み合わせた方法である、[1]〜[4]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[6] 前記物質保持基材への物質付着方法において、バインダーとして増粘剤、糖類、タンパク質、油脂又は乳化剤を用いる、[5]に記載の食材への物質含浸方法。
[7] 前記物質保持基材が、乾燥状態又は湿潤状態である、[1]〜[6]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[8] 前記物質保持基材が、複数の材質からなる積層構造である、[1]〜[7]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[9] 前記減圧処理が、50kPa以下の圧力で実施される、[1]〜[8]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[10] 減圧状態にある前記物質保持基材と前記食材とを押圧処理することにより、前記物質排出駆動力と前記物質含浸駆動力とをさらに高める、[1]〜[9]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[11] 前記食材に、冷凍、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、加圧加熱、焼成加熱、ジュール加熱、テンダライズ(筋切り)、タンブリング、圧延、脱水、乾燥、酸処理、アルカリ処理、及び酵素処理からなる群から選択される少なくとも一種の前処理を実施する、[1]〜[10]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[12] 前記食材が加温された状態で、前記減圧処理を実施する、[1]〜[11]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[13] 前記基材に保持される物質が、タンパク質、油脂、酵素、多糖類、増粘剤、乳化剤、澱粉、及び微生物からなる群から選択される少なくとも一種の高分子物質である、[1]〜[12]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[14] 前記基材に保持される物質が、栄養成分、機能性成分、抗菌成分、香気成分、調味料成分、酸化防止剤、着色料、酸味料、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、及び医療用造影剤からなる群から選択される少なくとも一種の食品素材である、[1]〜[12]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[15] 前記物質保持基材と前記食材とを軟質容器に入れた状態で前記減圧処理を実施する、[1]〜[14]のいずれかに記載の食材への物質含浸方法。
[16] [1]〜[15]のいずれかに記載の方法により得られた物質含浸食材を用いて、チルド食品、冷凍食品、乾燥食品、及び常温流通食品からなる群から選択される物質含浸加工食品を製造することを特徴とする、物質含浸加工食品の製造方法。
また、本発明は、食材への物質含浸方法に用いる物質保持基材を提供することができる。物質保持基材は、高分子物質及び食品素材から選択される物質を保持しており、外観で認識可能な形状を保持した食材内にこのような物質を効率的に供給できるものである。このような物質保持基材は、減圧処理によって内部構造変化による物質排出駆動力を発生させるために、気体又は気体を発生する液体を含有し、かつ、多孔質構造であり、さらには特定の最大吸収性能及び最大排出性能を有することができる。
本発明の物質保持基材を用いる食材への物質含浸方法によれば、従来の食材を含浸物質溶液に完全に浸漬した状態で減圧処理して物質含浸する方法と比較して、含浸物質使用量を低減化しつつ、十分な含浸物質量を食材内部にまで確実かつ急速に含浸することができる。また、基材に保持させる含浸物質量を予め調整しておくことにより、食材内に含浸する物質量を任意に調整することもできる。また、予め含浸物質が基材に保持されているから、含浸物質と水などの溶媒を正確に計量して一定の濃度に溶解するなどの含浸物質溶液の調製が不要で、使用者の事前準備の手間を省くことができ、簡便に食材に物質を含浸することができる。
例えば、食材を酵素液に完全に浸漬して減圧処理する凍結含浸法を用いて、食材内部に酵素を含浸し、形状保持軟化食品・調理品を製造・調理する工程において、減圧工程で使用する酵素量を低減化しつつ、十分な酵素量を食材内部にまで確実かつ急速に含浸することができる。この時、酵素保持基材から酵素が食材に供給されるから、予め酵素保持基材を入手するだけで良く、酵素粉末と水などの溶媒を計量して一定の濃度になるよう酵素液を調製する作業は不要である。使用者は軟らかくしたい食材と酵素保持基材とを準備するだけでよく、使用者に特別な酵素利用に関する知識も要求しない。
また、酵素保持基材の酵素保持量を調整した基材を提供すれば、求める食材の軟らかさに応じて、酵素保持基材の酵素保持量を基準に使用する酵素保持基材を適宜選択し、確実に容易にかめる、歯ぐきでつぶせる、舌でつぶせるなどの軟らかさに調整することができる。基材への酵素保持量の調整は、異なる濃度の酵素液を調製し、一定量ずつ基材に吸収させれば、異なる酵素量を保持した基材が作製できる。あるいは、一定濃度の酵素液を用いて、基材に保持させる酵素液量の調整でも可能である。従来の凍結含浸法では、一定濃度の酵素液を用いて含浸する場合、食材に含浸する酵素量を調整することは難しく、含浸後の酵素反応工程で、酵素反応時間を調整して軟化度を制御するしか方法がなく煩雑であった。
また、酵素保持基材が乾燥状態の基材として提供される場合、水などの溶媒を基材に吸収させて用いることができ、基材に保持された酵素量は一定であるから、その加水量を調節するだけで、食材に含浸する酵素量を調整することができる。その結果、食材の軟らかさを適宜調整することもできる。従来、求める軟らかさに応じて、使用する酵素液の酵素濃度を使用者は調整する必要があったが、含浸処理に用いる酵素量を調整する必要はなく、そもそも酵素を計量する必要もない。水などの溶媒を必要量加えるだけの簡単な作業で済む。
また、従来の酵素液に浸漬して減圧処理する方法では、減圧処理後に酵素液に浸漬した状態のまま放置すると、減圧処理後も酵素が食材内部に拡散浸透し、過剰量の酵素が浸み込むため、過度に軟化し過ぎたり、過剰な酵素分解により苦味や酸味が生成したり、食材内の栄養成分が溶出したりするなどの課題があった。しかし、吸収性能に優れる本発明の酵素保持基材は、減圧下でこそ物質排出駆動力の発生により基材に保持される酵素液が基材外に排出されるが、減圧処理後には再び吸収性能を発揮して食材に含浸しなかった余分な酵素液は基材に再吸収され酵素液が回収される。そのため、その後に食材に過剰に酵素が浸透することを最小限にとどめ、製造・調理後の軟化度や呈味性の品質安定性が高い。すなわち、食材と酵素保持基材を減圧処理した後、そのまま放置して酵素反応させてもよく、使用者が必ず酵素液を廃棄するなどの作業と手間を必要としない。さらに、減圧処理後に酵素液は基材に回収されるから、使用者の手に酵素液が触れる機会も少なく衛生的であり、繰り返し酵素保持基材として再利用することから、コスト面でも優れる。
また、酵素液は基材に保持された状態で使用されるから、基材表面が防水性素材などで被覆したシート積層構造の場合や、基材が軟質容器内に保持された形態であれば、酵素液が基材から漏れ出ることが少なく、従来の酵素液を直接扱う場合と比較して、格段に使用者の手に酵素液が付着する機会を最小限にとどめることができる。例えば、タンパク質分解酵素などによる手荒れや、酵素調味料飛散による汚れなどを防止でき、安心して酵素を利用することができる。
本発明の食材への物質含浸方法によって得た物質含浸食材を用いることで、簡便に物質含浸加工食品を製造することもできる。
本発明の食材への物質含浸方法は、物質保持基材から食材に物質を供給する方法で、少量の物質量で確実かつ急速に食材内部に含浸できるから、含浸物質が高価な成分であればあるほど、従来法との含浸コストの低減化が顕著となる。高価な機能性成分や香気成分などであっても、低コストで食材に含浸でき、それらを用いた物質含浸加工食品も簡便に、安価に製造することもできる。
本発明の方法を実施する際の物質保持基材と食材との実施形態を示す模式断面図である。 本発明の方法を実施する際の物質保持基材と食材との実施形態を示す模式断面図である。 本発明の方法を実施する際の物質保持基材と食材との実施形態を示す模式断面図である。 本発明の方法を実施する際の物質保持基材と食材との実施形態を示す模式断面図である。 本発明の方法を実施する際の物質保持基材と食材との実施形態を示す模式断面図である。 本発明の方法を実施する際の物質保持基材と食材との実施形態を示す斜視図である。 本発明の方法を実施する際の物質保持基材と食材との実施形態を示す斜視図である。 試験例14で作製した調味ダイコンの調味液浸透度を比較する食材表面の写真である。 試験例14で作製した調味ダイコンの調味液浸透度を比較する食材断面の写真である。
(食材への物質含浸方法)
本発明は、物質保持基材を含浸物質の供給源とし、減圧処理により、外観で認識可能な形状を保持した食材内に効率的に物質を含浸する方法を提供するものである。
(基材)
基材としては、食材内に含浸する物質を保持できるものであって、減圧処理によって内部構造変化による物質排出駆動力を発生するものであれば特に限定されない。このような特性を発揮するためには、基材は、気体又は気体を発生する液体を含有し、かつ、多孔質構造であることが好ましい。基材は、多孔質構造を有することにより、常圧下では吸収性能に優れ、減圧下や押圧下では排出性能に優れ、柔軟性を併せ持つ構造とすることができ、含浸物質を十分に保持することができる。
基材は、気体又は気体を発生する液体を含有することにより、減圧処理によって内部構造変化を起こし、物質排出駆動力を生じる。すなわち、減圧状態に置かれた基材は、基材内部に包含されている気体の膨張により、基材の内部構造変化が起こる。内部構造が変化した基材は保水性能に変化が生じ、また基材内部で膨張する気体からの直接の圧力により、基材に保持されている物質が容易に基材外部へと排出される。
基材は、基材の重量1g当たり、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上、さらに好ましくは15g以上の最大吸収性能を有し、かつ好ましくは0.01g以上、より好ましくは0.1g以上、さらに好ましくは0.5g以上の最大排出性能を有するものである。ここで、最大吸収性能及び最大排出性能とは下記の方法で測定することができる。
・最大吸収量:常圧下、20±2℃において基材1gを30秒間水中に完全に浸漬したあと、取り出して5mmメッシュの網上に静置し、吸収した水が網の下に自然落下しなくなるまで静置して、基材の重量増加量を、基材の最大吸収性能とした。
・最大排出量:常圧下、20±2℃において最大吸収させた基材を、5mmメッシュの網に載せた状態で、真空容器に入れて2kPaまで減圧した後、そのまま密閉状態で5分間減圧保持し、吸収した水を排出させ、そのあと大気圧まで復圧し、減圧前後の重量減少量を基材の最大排出性能とした。
このような吸収・排出性能を有する基材としては、例えば、パルプやコットン、セルロースなどの天然繊維素材、又はポリプロピレンやポリエチレン、レーヨン、ナイロンなどの合成繊維素材、又は海綿などの天然樹脂素材、メラミンやポリウレタンなどの合成樹脂素材、ポリ乳酸を原料とした生分解性プラスチック、あるいはそれら複数の素材を組み合わせた複合素材で作製された基材を用いることができる。一形態として、吸水紙や綿状パルプなどの紙、繊維を接着や絡み合わせた不織布、繊維を織った織物、樹脂を発砲させたスポンジなどを、基材として挙げることができる。
基材の形状は、特に限定されないが、シート状であってもよく、袋状であってもよい。シートはロール状に巻かれ、必要に応じて自由にカットしたり、切り取り線上で容易にシートを分割できるようになっていたりしても良い。袋は袋口が熱シールできるようになっていても良く、チャック付きでも良い。このような形状の基材と食材との実施形態を、図面を参照して詳述する。例えば、図1に示す実施形態の模式断面図のように、食材11を2枚のシート状の物質保持基材12で挟むようにして用いることができる。食材の上下にある基材を、テープ等の接着剤で綴じて袋状とすることで、食材の隙間を最小限に抑制してもよい。また、図2に示す実施形態の模式断面図のように、食材21を1枚の袋状の物質保持基材22で包むようにしてもよい。この場合も開放部をテープ等の接着剤で綴じて袋状としてもよい。一実施形態では、冷凍した食材を物質保持基材に入れ、次いで物質保持基材を綴じて袋状とした後に解凍し、そのままの状態で減圧処理を行い、食材に物質を含浸することができる。酵素を含浸するための酵素保持基材を用いた場合には、続いて酵素反応処理及び酵素失活処理等を行うこともできる。このように袋状の物質保持基材を用いることは、物質保持基材内で一連の処理を行うことができるため、大変簡便である。
また、図3に示す実施形態の模式断面図のように、包装容器30に載せた食材31の上にシート状の物質保持基材32を被せ、基材と容器で食材を挟んで用いることもできる。
基材は、積層構造であってもよく、少なくとも1層が上記吸収・排出性能を有するか、あるいは積層構造全体で上記吸収・排出性能を実現してもよい。また、基材は、複数の材質からなる積層構造であってもよい。その場合、基材には、上記吸収・排出性能を有する吸収材と、速乾性シート等の吸収性能を有さない材質とを組み合わせた積層構造としてもよい。例えば、外面材として、水透過性・吸収性能を有しないポリエチレン製フィルムなどの材質を用いれば、使用者が扱う際に液ダレや液漏れ等を発生せず、取り扱いに優れる。また、表面材として、食材の吸収材への付着を防止するような材質(穴あきでもよい)を用いれば、食材の取り出しが容易となる。このような積層構造の基材と食材との実施形態を、図面を参照して詳述する。例えば、図4に示す実施形態の模式断面図のように、食材41を2枚のシート状の物質保持基材42で挟むようにしてもよく、物質保持基材42は、吸収材43と外面材44の積層構造とすることができる。また、図5に示す実施形態の模式断面図のように、食材51を2枚のシート状の物質保持基材52で挟むようにしてもよく、物質保持基材52は、表面材55と吸収材53と外面材54の積層構造とすることができる。さらに、異なる吸収材を用いて積層構造として吸収性能を調整したり、それぞれの吸収材に異なる含浸物質を保持させて積層構造としたりしても良い。
基材は、硬質容器や軟質容器等の包装容器に入れた状態で用いてもよい。その場合、基材は、包装容器中に接着されていてもよいし、取り出し可能な状態で入れられていてもよい。このような基材と食材との実施形態を、図面を参照して詳述する。図6に示す実施形態の斜視図のように、食材61は、包装容器(パウチ)60中に入れたシート状の物質保持基材62上に置かれている。また、図7に示す実施形態の斜視図のように、食材71は、包装容器(パウチ)70中に入れた包装容器(食品トレイ)76上のシート状の物質保持基材72上に置かれている。シール式真空包装機を使用した減圧処理の場合には、最終的には食材71は物質保持基材72と包装容器76とともに、包装容器70により密着包装されて食材は押圧された脱気包装や真空包装となる。減圧処理前あるいは減圧処理後の食材が変形しやすい場合には、図7のように食品トレイ上で減圧処理を実施することで、型崩れを防止することができる。
なお、図6及び図7では、物質保持基材として1枚のシート状の物質保持基材62及び72のみが図示されているが、食材61及び71は、それぞれ、2枚のシート状の物質保持基材62及び72で挟まれていてもよいし、1枚の袋状の物質保持基材62及び72で包まれていてもよい。さらに、物質保持基材62及び72は、図4や図5のような2層や3層などの積層構造であってもよい。
以上の基材の実施形態において、減圧処理時に基材と食材、基材及び容器と食材との隙間が少なくなるよう、必要に応じてそれらの接触を固定する重しや留め金などの治具、あるいは接着・シール機構が具備されても良い。また、減圧方法や食材の種類によっては、食材から勢いよく空気や水蒸気が噴出したり、食材から灰汁やドリップなどが溶出したりする場合もあるため、物質保持基材や食材と接する表面材に微細な穴や切れ目などを設けても良い。それは、物質保持基材からの含浸物質溶液等の排出性能や、減圧後の再吸収性能を増加させる機能としても好適である。
基材に下記の含浸物質を付着させる方法は、特に限定されないが、例えば、抄紙法、浸漬法、含浸法、塗布法、点滴法、グラビア印刷法、又は化学修飾法等を用いることができる。例えば、浸漬法の場合、含浸したい物質と必要に応じてバインダーとを溶解させた溶液中に、含浸物質が基材に十分量保持されるまで、十分な時間にわたって基材を浸漬させる。基材は多孔質構造を持つため、含浸物質溶液に浸漬すると毛管現象によって吸収される。その際に、さらに基材中に物質が含浸しやすいように減圧や加圧の圧力操作を加えてもよい。いずれの方法で得られた物質保持基材においても、減圧下においては基材から保持された含浸物質が基材に含まれた溶媒とともに容易に排出されるように、含浸物質は基材に穏やかに保持されていることが好ましい。作製された物質保持基材は湿潤状態で保管されてもよく、さらに含浸物質が変性することがない範囲で、乾燥や冷蔵、冷凍処理して保管されても良い。
基材には、バインダーを用いて物質を付着させてもよい。バインダーとしては、食品用途で利用できるものであればよく、付着性ないし粘着性を持つ物質や、ゲル化剤等の固化により基材上でコーティング状になる物質も含まれる。バインダーとしては、例えば、米、小麦やトウモロコシ等のデンプン類、キサンタンガムやメチルセルロース等の増粘多糖類、単糖、二糖や糖アルコール等の糖類、カゼインやコラーゲン等のタンパク質、及び油脂や乳化油脂等の脂質等が挙げられる。これらを一種あるいは複数混ぜてバインダーとして用いることで、含浸物質は親水性あるいは疎水性などの基材に容易に保持させることができる。さらには、基材に加えられた水等の溶媒に、含浸物質を含むバインダーが容易に溶解・分散し、あるいは基材に保持されたバインダーから容易に含浸物質が遊離して溶解・分散し、含浸物質は減圧下で容易に基材から排出される。
物質保持基材は、本発明の方法に用いる際には、湿潤状態であってもよいし、乾燥状態であってもよい。物質保持基材が湿潤状態であれば、そのまま食材に接触させて用いることができるため、食材の水分量等には左右されずに本発明の方法を実施することができる。また、物質保持基材が乾燥状態であれば、物質保持基材に水等の溶媒を吸収させて湿潤状態として用いることもできるし、あるいは基材に水等の溶媒を添加せず、食材がもつ水分を基材に吸収させて含浸物質の基材からの排出を容易にし、本発明の方法を実施することもできる。例えば、乾燥状態の物質保持基材を冷凍食材と接触させ、解凍により食材から溶出したドリップを乾燥状態の基材に吸い取らせることで、本発明の方法を実施することができる。また、これら基材は、減圧処理での物質排出駆動力を高めるために、基材に保持された含浸物質の品質が変化しない範囲で加温して用いることもできる。
基材の厚みは、上記の吸収性能を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、好ましくは0.05〜30mmであり、より好ましくは0.1〜20mmである。基材が積層構造である場合、全体で上記厚みを実現してもよい。
(含浸物質)
食材内に含浸する物質は、高分子物質及び食品素材のいずれからも選択が可能で、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、高分子物質としては、一般的に食品の調理や加工に使用されるタンパク質、油脂、酵素、多糖類、増粘剤、乳化剤、澱粉、及び微生物等が挙げられる。また、食品素材としては、栄養成分、機能性成分、抗菌成分、香気成分、調味料成分、酸化防止剤、着色料、酸味料、ビタミン類、ミネラル類(鉄、カルシウム、亜鉛、ヨウ素など)、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸など)、医療用検査食に使用されるヨード造影剤(イオパミドールなど)、及びバリウム造影剤(硫酸バリウムなど)等の医療用造影剤等が挙げられる。これら含浸物質は基材に保持された物質保持基材として利用される。
例えば、形状保持軟化食品の製造目的には酵素保持基材を用いて酵素を含浸し、さらに離水抑制機能を付与する場合は、酵素及び増粘剤、あるいは酵素及び加工澱粉を保持した基材等を用いて目的の物質を食材に含浸する。また、ミネラルやビタミン類などの栄養強化食品とする場合には、それら物質を基材から供給して含浸する。また食材の調味も同時に行う場合には、調味料やアミノ酸等を保持した基材から供給して含浸する。新食感食品、機能性食品、造影検査用食品の製造においても同様に、適宜、含浸物質を選択して単独又は組み合わせてそれらを保持する基材を用いて食品を作製することができる。
酵素としては、例えば、プロテアーゼ、ペプチダーゼなどタンパク質をアミノ酸及びペプタイドに分解する酵素、アミラーゼ、グルカナーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ、ヘミセルラーゼ、β−グルコシダーゼ、マンナーゼ、キシラナーゼ、アルギン酸リアーゼ、キトサナーゼ、イヌリナーゼ、キチナーゼなどデンプン、セルロース、イヌリン、グルコマンナン、キシラン、アルギン酸、フコイダンなどの多糖類をオリゴ糖に分解する酵素、リパーゼなど脂肪を分解する酵素、パンクレアチン、ペプシンなど食材の消化・分解作用のある酵素、タンパク質を結着させるトランスグルタミナーゼなどを例示することができる。これらは1種又は相互に作用を阻害しない範囲で2種以上を組み合わせて使用することもできる。
油脂としてはサラダ油、コーン油、大豆油、ゴマ油、菜種油、米油、綿実油、パーム油、豚油、牛脂、乳脂など一般的に食品として用いられる油脂を例示することができる。油脂は単独で使用しても良いし、乳化油脂として用いることもできる。あるいは乳化剤のみを含浸しても良い。乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルや、レシチン、カゼインナトリウムなど、食品加工に用いられる乳化剤を利用できる。
増粘剤及び澱粉としては、例えば、小麦デンプン、米デンプン、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、サツマイモデンプン、カードラン、寒天、ゼラチン、ペクチン、CMC、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、カラギーナン、ローカストビーンガムなどを例示することができる。澱粉は例えば、アセチル化やエステル化、エーテル化やリン酸架橋した加工デンプンなどを利用することもできる。澱粉は未糊化状態あるいは糊化状態のいずれでも使用することができる。
香気成分としては、例えば、アセト酢酸エチルやアセトフェノンなどの合成香料や、植物や動物原料から抽出された天然香料などを例示することができる。これら香気成分は、食材のマスキング成分として利用することもできる。
また、抗菌性物質としては、例えば、フマル酸、グリシン、フィチン酸、カテキン、リゾチーム、ローズマリー抽出物、ワサビ抽出物、グレープフルーツ種子抽出物などの日持ち向上剤を例示することができる。微生物としては、例えば乳酸菌、枯草菌(納豆菌)、酢酸菌、カビ(コウジカビ、アオカビなど)、酵母(ビール酵母、清酒酵母、パン酵母など)などの発酵食品等で利用されている微生物を例示することができる。
含浸物質を2種以上組み合わせて使用する場合には、複数の物質が相互に阻害しない範囲で使用する。さらに、酵素を含浸する場合には、食材内のpHを2〜10の範囲で調整するクエン酸、リンゴ酸、酢酸などの有機酸や、ナトリウム塩、リン酸塩などの塩類を、酵素とともに基材に保持させておくこともできる。
これら上記の含浸物質は、基材に保持した後、減圧処理により基材から食材に供給される形で含浸される。含浸物質は減圧下で溶媒に溶解又は分散した状態で存在し、基材内で物質排出駆動力を受け、基材外に排出され、食材に含浸される。
(食材)
本発明に用いられる外観で認識可能な形状を保持した食材とは、外観から食材そのものが何の食材であるかを十分認識できる形状を保持した食材とすることができる。食材の元の組織構造をもった形状保持食材とすることができ、ミキサーなどですり潰し、食材組織が崩壊した流動食やペースト食等は対象としない。通常の食事で食する形状ある食材を利用でき、食材をそのまま利用することもできるし、切断して利用することもできる。切断して調製する場合は、例えば、銀杏切り、輪切り、半月切り、短冊切り、スライス切り、乱切りなどで調製された食材とすることができる。
このような食材の種類としては動植物性食材のいずれであってもよく、生の状態の食材や、煮る、焼く、蒸す、揚げるなどの加熱や調理した食材も用いることかができる。具体的には、ダイコン、ニンジン、牛蒡、筍、生姜、キャベツ、白菜、アスパラガス、葱、玉葱、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、カリフラワー、胡瓜、茄子、隠元、オクラ、トマトなどの野菜類、ジャガイモ、さつまいも、里芋、カボチャなどの芋類、大豆、小豆、金時豆、黒豆、エンドウ豆、ひよこ豆などの豆類、米、小麦、粟などの穀類、みかん、りんご、もも、サクランボ、梨、パイナップル、バナナ、梅、苺、栗などの果実類、椎茸、シメジ、エノキ、ナメコ、松茸、エリンギなどのきのこ類、鯛、鮪、鯵、鯖、鰯、鱈、鰤、鮭、赤魚、ホッケ、イカ、タコ、ホタテ、アサリ、ハマグリなどの魚介類、鶏肉、豚肉、牛肉、馬肉、羊肉、猪肉などの肉類、コンブ、海苔、ヒジキなどの藻類などの食材を例示することができる。更に上記食材を加工した加工食品であってもよい。加工食品としては、肉団子、ハンバーグ、焼売などの畜肉練製品、卵焼き、オムレツ、ゆで卵などの卵製品、蒲鉾、竹輪などの水産練製品、漬物、惣菜、麺類、各種菓子など、いずれの加工食品であってもよい。また、肉じゃが、筑前煮などの惣菜でもよい。これら加工食品は、再成型によって本発明の組織構造を持った外観で認識可能な形状保持食材とすることができる。
このような食材に下記で詳述する減圧処理を施すことにより、食材内部の気体体積変化による物質含浸駆動力を発生させることができる。より詳細には、減圧処理により食材内の空気膨張が起こり、食材の組織間隙が膨張空気で満たされた後、復圧することにより、膨張空気の収縮により物質が含浸される。さらに、食材を加温した状態で減圧処理し、食材内の水分の沸騰及び膨張、水蒸気の収縮及び凝縮による含浸駆動力を発生させることで、含浸効果をより高めることもできる。食材内の空気の膨張及び収縮による含浸駆動力と、水蒸気の収縮及び凝縮による含浸駆動力とは併用してもよく、含浸効果をさらに高めることもできる。食材内の空気の膨張及び収縮による含浸駆動力を発生させる工程と、食材内の水分の沸騰及び膨張、水蒸気の収縮及び凝縮による含浸駆動力を発生させる工程とは、それぞれ複数回行ってもよく、適宜設定することができる。
ここで、組織間隙とは、例えば、植物性食材であれば細胞と細胞が接着している細胞間隙、動物性食材であれば筋繊維タンパク質や筋原繊維タンパク質、結合繊維タンパク質などのタンパク質繊維間隙や、脂肪細胞間隙などとすることができる。
(食材の前処理)
食材には、物質の含浸処理に先立って組織を緩和する前処理を施すことができる。組織を緩和することにより、食材内により強力な物質含浸駆動力を発生させて、食材の中心部まで物質を効率的に含浸することができる。組織緩和の前処理方法としては、冷凍、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、加圧加熱、焼成加熱、ジュール加熱、テンダライズ(筋切り)、タンブリング、圧延、脱水、乾燥、酸処理、アルカリ処理、酵素処理などが挙げられ、これらの群から選ばれる1又は2以上を組み合わせて処理することができる。
冷凍や解凍処理は食材内の水分の氷結晶生成及び融解現象により組織を緩和できる。冷凍には、一般的な冷凍装置が使用でき、−18℃などの緩慢冷凍温度帯から、−40℃などの急速冷凍温度帯も利用できる。急速冷凍では氷結晶が成長しにくく、食材によっては十分な組織緩和効果が得られない場合もあるが、加熱などの他の組織緩和方法と組み合わせることにより利用することができる。
解凍方法は、自然解凍、流水中解凍、冷蔵庫解凍や、加熱解凍、誘電加熱解凍などを用いることができる。ただし、食材からのドリップを最小限にとどめる方法が品質の面から好ましく、食材に応じて適宜選択する。一方で、食材からのドリップを利用して物質保持基材からの物質含浸を行う場合には、ドリップが多くなるよう解凍方法を選択・調整することもできる
加熱処理を利用した組織緩和方法は、加熱分解による軟化によって、組織を緩和できる。とりわけ誘電加熱と過熱水蒸気加熱では、加熱による軟化とともに、食材表面の乾燥により空隙が生成されることから、相乗的に組織緩和に効果的である。肉類のように動物性食材の場合には、タンパク質を例えば65℃以上に加熱して熱変性させて収縮させることにより、組織間に空隙を設けて緩和させることができる。また一方では、例えば65℃以下の低温で加熱することにより、組織の柔軟性を残すことで組織をより緩和させることもできる。
テンダライズ、タンブリング、圧延処理は、食材の物理的破壊により組織を緩和できる。特に肉類や魚介類などの食材に用いられ、テンダライズによる筋切りにより組織の柔軟性を高めることによって組織緩和できる。テンダライザーとして、突き刺し型、ロール回転型のいずれも利用することができ、刃の密度やピッチ幅は、形状が崩壊しないように食材の大きさや厚みによって適宜選択することができる。タンブリング処理では、食材の形状が崩壊しないように回転数を設定して処理することができる。タンブリング処理では食材への味付けなどを同時に行うこともでき、真空タンブリングを利用することもできる。圧延処理では、ミートハンマーなどを利用して食材を処理することにより組織を一部破壊して柔軟化し、組織を緩和させることができる。
脱水は、食材内の一部水分を取り除くことにより、組織内に空隙ができることから組織緩和できる。脱水方法として、遠心分離機のような装置を用いてもよく、吸水紙などの吸水作用をもつ素材に接触させて脱水しても良い。また食塩などの塩類を利用して浸透圧効果で脱水してもよい。
乾燥は食材の水分減少により空隙を生成させることで組織を緩和することができる。乾燥方法は熱風や冷風などの送風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、マイクロ波乾燥などが利用できる。本発明では食材内の水の相転移を利用するため、過度に乾燥させることなく、食材内の一部水分を乾燥させたのち、保管して食材内の水分分布を均質化させると食材内に空隙が増えて組織が緩和される。
酸、アルカリ処理は食材組織を変性させることにより組織緩和できる。酸処理としてはクエン酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸などの食品添加物が使用でき、アルカリ処理としては、炭酸塩、リン酸塩、クエン酸塩などの食品添加物が使用できる。酵素処理は食材表面の組織を分解することにより、食材組織を緩和する。肉類や魚類などの動物性食材では予めプロテアーゼ酵素液に浸漬し、野菜や果実類の植物性食材では予めペクチナーゼやセルラーゼ酵素液に浸漬し、食材表面を分解することにより組織が緩和される。
食材の組織を緩和させる前処理を行った後、さらに加温処理を施してもよい。加温温度としては、食材温度を50℃以上に加温することが好ましく、さらに60℃以上に加温するとより好ましい。食材の加温方法としては、煮る、焼く、蒸す、揚げるなど、食材の調理、加工に用いられる方法であればいずれの方法も用いることができる。また加熱方法として、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、焼成加熱、ジュール加熱が例示でき、伝導、輻射、対流によるいずれの加熱原理を用いても良い。
(減圧処理)
本発明の方法においては、上記の物質保持基材と食材とを同時に減圧処理することにより、物質保持基材の内部構造変化による物質排出駆動力と、食材内部の気体体積変化による物質含浸駆動力とを同時に発生させる。上述の物質排出駆動力により物質保持基材から物質が排出され、排出された物質が食材に接触し、上述の物質含浸駆動力により内部へと速やかに供給される。
減圧処理時には、物質保持基材と食材とは接触した状態であることが好ましいが、両者の間に隙間が生じていてもよく、物質保持基材から排出された含浸物質溶液が食材表面に塗布された状態、あるいは食材の周りを覆う状態にあればよい。
減圧処理は、十分な物質排出駆動力と物質含浸駆動力とを生じる圧力であればよいが、例えば、好ましくは50kPa以下の圧力、より好ましくは40kPa以下の圧力、さらに好ましくは30kPa以下の圧力、さらにより好ましくは20kPa以下の圧力で実施することができる。また、減圧処理の時間は、物質が食材内に十分に含浸できれば特に限定されないが、例えば、好ましくは10秒以上60分以下、より好ましくは20秒以上40分以下、さらに好ましくは30秒以上30分以下である。
本発明の方法においては、食材に物質含浸駆動力を発生させる減圧方法として、(1)食材内の空気の膨張及び収縮により物質含浸駆動力を発生させる減圧処理、(2)食材内の水分の沸騰及び膨張、水蒸気の収縮及び凝縮により物質含浸駆動力を発生させる減圧処理、のいずれでも実施することができる。後者の食材内の水分の圧力変化を利用した含浸駆動力は、前者の減圧含浸法である食材内の空気の圧力変化を利用した物質含浸駆動力よりも著しく大きく、より急速に基材から供給される含浸物質を食材中心部まで導入することができる。食材の種類や大きさ、減圧装置の種類等で適宜選択して利用することができる。以下、本発明における圧力処理及び物質の含浸原理について詳述する。
(1)食材内の空気の膨張及び収縮により物質含浸駆動力を発生させる減圧処理
食材を減圧処理することにより、食材内の空気は圧力低下に反比例して膨張する。膨張空気は食材内の組織構造の強度以上の膨張力に到達すると、細胞間隙等の組織間を押し広げつつ膨張する。食材内の組織間隙空間体積よりも増加した膨張空気は、食材外に排出される。食材内の組織間隙が膨張空気で満たされた後、減圧状態が保持されている場合は、一定時間経過後に、食材内にとどまった膨張空気の膨張力よりも、食材表面に存在する物質保持基材から排出されて供給されている含浸物質溶液の浸透圧が優り、食材への物質浸透が始まる。最後に、減圧から常圧状態に圧力を復帰すると、圧力の上昇に伴って膨張空気は収縮するため、食材内外の圧力差が生じ、食材表面に供給されている含浸物質溶液が更に食材内へと浸透し、物質含浸が終了する。
この減圧処理時には、物質保持基材内では、同様に基材内に含まれる空気の基材内膨張が起こり、空気膨張圧力により、基材に保持されている含浸物質溶液が基材外に排出される。したがって、基材外への含浸物質溶液の排出量は、基材が包含している空気量や基材の水親和性等の影響を受けるため、基材ごとに物質排出性能は異なる。一方、食材においても、食材の組織構造の硬さや組織繊維方向、食材を構成する成分等によって食材内空気の膨張力は異なるため、食材内で発生する含浸駆動力も食材によって異なる。しかしながら、本発明においては、物質含浸駆動力及び物質排出駆動力の大小にかかわらず、減圧下で食材及び基材にそれぞれ含浸駆動力と排出駆動力が同時に発生すれば、減圧下での物質保持基材からの食材内部への物質含浸が急速に行われる。この減圧処理による物質含浸では、単に食材を含浸物質溶液に浸漬して物質の拡散移動により浸透する場合と比較して、含浸時間は短く、その効果は食材形状が大きいほど高い。また単に物質を浸み込ませた物質保持シートを食材に接触させる場合との比較においても、減圧処理により発生する含浸駆動力と排出駆動力の有無の差は大きく、その含浸時間は短時間化される。
また、従来の含浸物質溶液中に完全に浸漬して減圧処理する場合(凍結含浸法)と比較すると、減圧処理での食材内での含浸駆動力の発生は変わりない。凍結含浸法は食材表面に含浸物質溶液が十分量存在するから、食材に物質が速やかに含浸される。本発明では、減圧処理前は従来法と異なり食材表面には含浸物質溶液がほとんど存在しない。しかし減圧処理により食材に含浸駆動力が生じると同時に、物質保持基材からは含浸物質溶液が排出され食材周囲に含浸物質溶液が万遍なく速やかに満たされる。排出された含浸物質溶液は、食材と基材で挟まれた空間内に満たされるが、物質保持基材は柔軟性を持つから、基材と食材に挟まれた少量の空間を満たすだけの含浸物質溶液が基材から排出されていれば、食材への均一かつ急速な物質含浸は達成でき、含浸物質溶液中で減圧処理する従来法よりも、必要とする含浸物質溶液量は格段に少なくすむ。
(2)食材内の水分の沸騰及び膨張、水蒸気の収縮及び凝縮により物質含浸駆動力を発生させる減圧処理
食材を減圧処理する点は(1)の方法と同様であるが、加温した食材を用いる点で(1)と異なる。大気圧下では水は100℃で沸騰するが、減圧下では100℃以下で沸騰し水蒸気となる。物質が液体から気体となる相転移が起こる温度と圧力の関係は一意に決まっており、水においては例えば下記数式(I)(アントワン式)により求めることができる。
加温した食材を減圧下に置くと、理論値では食材温度(食材の中心温度)60℃(333K)の食材では約20kPa、70℃(343K)では約31kPa、80℃(353K)では約47kPa下で沸騰する。食材内の水の体積は、沸騰して気化することにより著しく増加する。沸騰温度によって体積増加量は異なるものの、理論上1,000倍以上に体積を増加させることができる。(1)の食材内空気の膨張による空気体積増加量よりも、格段に(2)の水蒸気体積増加量の方が大きい。そのため、組織緩和した食材において、組織間隙の水分は体積が著しく増加しながら、組織緩和した食材内の組織間隙を速やかに水蒸気で満たすことができ、(1)と比較して食材内に発生する含浸駆動力は大きく、物質含浸にかかる時間も短い。
この食材内の水の沸騰は、組織間隙全体が水蒸気で満たされるまでの間、継続して発生させることが好ましい。食材内の水は、その食材温度の水蒸気圧に達すると急激に沸騰するものの、食材の温度は気化熱により低下する。そのため、食材温度の水蒸気圧に到達後、その圧力で定圧維持する、あるいはさらに減圧してもその圧力低下速度が遅い場合には、食材内で水の沸騰は継続して起こらず、結果、食材内の一部の水のみの沸騰にとどまる。食材内の組織間隙にある水を沸騰させ食材組織間隙全体に渡って水蒸気で満たすためには、気化熱による食材温度の低下に合わせて、食材にかかる圧力を更に減じ、食材内の水分が継続して沸騰するよう、圧力を制御することが求められる。あるいは減圧下の食材を外部から伝熱ヒーターや電子レンジなどにより加温し、食材温度の低下を抑制して、継続して食材内の水分を沸騰させてもよい。
食材にかかる圧力が、食材温度の水蒸気圧に到達後にさらに圧力を制御して食材内の水を継続して沸騰させる方法においては、具体的には、水の気化熱に伴う食材の温度低下に合わせて、蒸気圧曲線のアントワン式で計算した水蒸気圧(食材内の水が沸騰する圧力)以下になるように、食材にかかる圧力(例えば減圧槽の庫内圧力)を制御すればよい。すなわち、減圧下で食材が沸騰する圧力に達した後、食材にかかる圧力P(kPa)を、気化熱に伴い低下する食材温度T’(K)において上記アントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)に対してP<P’となるように制御して、食材内の水の沸騰状態を維持すればよい。
この圧力制御においては、減圧処理開始時のP>P’状態から、減圧処理時間tにおいてP=P’となり、食材内の水の沸騰が始まる。その後はP<P’となり食材内の水の沸騰状態が継続する。品温が下がるか、あるいは食材にかかる圧力を上昇させることにより、tにおいてP=P’となり、食材内での水の沸騰は終了してP>P’となる。この沸騰開始時間tから沸騰終了時間tまでのP<P’となる圧力区間において、PとP’との圧力差の総和が大きいほど食材内の水は全体にわたって確実に沸騰し、後述する(iii)において強力な物質含浸駆動力が得られる。P’とPの圧力差の総和は、時間tからtまでの各圧力値の積分値の差から求めることができる。
すなわち、x軸を減圧処理時間t、y軸を圧力pとした時間と圧力のグラフにおいて、食材にかかる圧力P及び食材温度T’でのアントワン式で計算した水蒸気圧P’の減圧処理時間tに対する圧力変化の関数としてそれぞれp=P(t)、p=P’(t)とすると、t=tからt=tまでのPとP’の圧力変化曲線で囲まれた面積が圧力差の総和であり、下記数式(II)で計算することができる。
(式中、S:圧力差総和値(kPa・s )、t:減圧処理時間(s)、
P(t):減圧処理時間tにおける、食材にかかる圧力P(kPa)、
P’(t):減圧処理時間tにおける、食材温度T’でのアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)、
:P=P’となり、食材内の水の沸騰が開始するまでの減圧開始からの時間(s)、
:P=P’となり、食材内の水の沸騰が終了するまでの減圧開始からの時間(s))
圧力差総和値Sが、好ましくは115kPa・s以上、より好ましくは120kPa・s以上5000kPa・s以下、さらに好ましくは130kPa・s以上3000kPa・s以下、さらにより好ましくは150kPa・s以上1000kPa・s以下、最も好ましくは170kPa・s以上850kPa・s以下となるように設計するとよい。この圧力差総和値Sは、食材中心温度の変化から食材中心部の水の水蒸気圧を計算し、食材にかかる圧力との差から求めている。そのため、圧力差総和値Sが上記条件を満足すれば、食材中心部で本願の物質含浸処理が十分に実施されており、しかるに、食材の大きさにかかわらず、その食材に物質が十分に含浸される。
圧力差総和値Sの上記の条件を満足させる一つの方法として、減圧過程での沸騰開始圧力を10kPa以上となるよう設定し、続いて圧力をP<P’になるように制御する方法が挙げられる。10kPa以上で沸騰させ、引き続き減圧処理することにより、P<P’の沸騰状態を継続でき、更に生じた水蒸気を膨張させて組織間隙を速やかに水蒸気で満たすことができる。この水蒸気膨張は、ボイル・シャルルの法則により、圧力の低下に反比例して起こる。沸騰圧力から圧力を減ずれば減ずるほど膨張率は高まるため、沸騰開始圧力が高いほど好ましい。
例えば、食材を予め50℃以上、より好ましくは60℃以上に加温した食材を用いて急速に減圧処理することにより、沸騰開始圧力を10kPa以上に設定することができる。ここで急速な減圧処理の平均減圧速度(大気圧から設定した圧力まで到達するのにかかる時間から、「(設定圧力−大気圧)/時間」、で求められる平均減圧速度)は、絶対値で、例えば、0.7kPa/s以上、好ましくは1.0〜101kPa/s、より好ましくは1.5〜101kPa/sとすることができる。80℃に加温した食材を急速に減圧すると、食材内の水は約40kPaで沸騰し、相転移により急激に体積が増加して(理論値で約1,500倍)組織間隙に満たされ、食材内部からの水蒸気排出が見られる。さらに1kPaまで連続して減圧すると、ボイル・シャルルの法則により、気化した水蒸気が急激に体積膨張し(理論値で約40倍)、組織間隙がより速やかに水蒸気で満たされる。実際の食材内では食材組織構造により理論値(約60,000倍)どおりの体積増加や膨張は得られないものの、水体積の沸騰に伴う増加と水蒸気の膨張、及びその収縮と凝縮により発生する物質含浸駆動力は、これまでの食材内空気の膨張及び収縮を含浸駆動力よりも著しく大きい。従来の減圧含浸処理では、大気圧から1kPaへの減圧により、組織間隙の空気が約100倍に膨張して組織間隙を空気で満たす。食材内の空気の膨張よりも水の相転移に伴う体積増加率の方が著しく大きく、速やかに組織間隙を気体で満たすことができる。
次に、組織間隙を水蒸気で満たしたあと、食材に含浸物質が接触した状態で常圧まで復帰する昇圧処理を行い、水蒸気を収縮、あるいは凝縮を行うことで、食材内への物質含浸駆動力を得て食材に接触させた物質を速やかに含浸することができる。同時に減圧処理された物質保持基材からは、基材内部の空気の膨張により含浸物質溶液が排出され食材表面に供給されるから、速やかに食材内に物質が含浸される。なお、予め実施する組織緩和処理の状態によっては、組織間隙のみならず食材組織内(細胞内、繊維内)にも物質が含浸される。
食材内への物質含浸は、組織間隙に満たされた水蒸気の状態変化によって行われる。組織間隙を水蒸気で満たしたあと、復圧工程に移行し、圧力を昇圧することによって組織間隙の水蒸気を収縮させ、また水蒸気を相転移(凝縮)させて体積減少させることにより、食材組織間隙の内圧と外圧の著しい圧力差を生じさせ、組織間隙に物質を含浸させる。
食材の復圧は、食材の組織間隙を水蒸気で満たしたあと昇圧することにより行う。昇圧を開始し、食材にかかる圧力P(kPa)が、食材温度T’(K)を用いてアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)に対して上回る(P>P’)までの圧力区間においては、1kPa/s以下で緩慢に昇圧させ、食材内の水蒸気の体積収縮と凝縮による体積減少を行うことで、強力な物質の含浸駆動力を発生させ含浸することができる。
水分の圧力変化を利用した物質含浸駆動力は大きく、常圧まで完全に復圧せずとも、わずかな昇圧により食材内部まで物質を含浸できる。このことは、急激に昇圧すると物質が含浸される以前に組織間隙が潰れ、十分に食材中心部まで物質が含浸できない場合があり、また、食材の縮みや形状崩壊にもつながる。そのためP>P’となるまでの圧力区間においては、昇圧速度を緩慢に設定して昇圧することが望ましい。この緩慢な昇圧区間以降の大気圧までの復圧工程は、その昇圧速度を必ずしも設定する必要はないが、例えば、1.0〜101kPa/s、あるいは10〜101kPa/sで急速に昇圧させることができる。また、物質量をより大量に含浸したり、含浸物質に粘性があり、復圧工程で食材の形状変化が見られる場合には、緩慢昇圧区間のあとに、さらに昇圧速度を設定した圧力区間を一つあるいは複数設定して大気圧まで段階的に復圧しても良い。例えばP=P’となる圧力が5kPaであった場合に、さらに10kPaまで、あるいは20kPaまでを第2緩慢昇圧区間と設定することもでき、第2緩慢昇圧区間として、その平均昇圧速度を20kPa/s以下、好ましくは0.01〜15kPa/sと設定することもできる。また、食材によっては、緩慢昇圧区間終了後、再減圧及び再昇圧して、従来の食材内空気の膨張と収縮現象を利用した圧力操作を短時間に繰り返して、より含浸効果を高めることもできる。すなわち、(1)の食材内の空気の膨張及び収縮による含浸駆動力と、(2)の食材内の水分の沸騰及び膨張、水蒸気の収縮及び凝縮による含浸駆動力とを併用することで、より含浸効果を高めることもできる。食材内の空気の膨張及び収縮による含浸駆動力を発生させる工程と、食材内の水分の沸騰及び膨張、水蒸気の収縮及び凝縮による含浸駆動力を発生させる工程とは、それぞれ複数回行ってもよく、適宜設定することができる。
なお、設定した圧力まで減圧したあと、気化熱や含浸物質、器材等の外部接触物により食材温度が低下して、食材温度における水蒸気圧が設定圧力と等しくなるまで復圧工程を実施せず圧力保持する方法も可能である。その場合、5分や10分などの一定時間を圧力保持区間とするのではなく、食材温度における水蒸気圧と保持圧力とが等しくなる時点までを圧力保持区間とし、その後は急速に常圧まで復圧する復圧工程を実施することができ、物質含浸にかかる減圧処理時間を効率的に設計することもできる。しかしながら、含浸工程全体をより短時間に効率的に実施するには、P>P’とするために減圧後に直ちに1kPa/s以下の緩慢昇圧を実施する方が好適である。
以上、本発明の減圧処理では(1)でも(2)でも用いることができる。なお、(1)及び(2)において、減圧処理時に、物質保持基材と食材とを押圧処理することにより、物質排出駆動力と物質含浸駆動力とをさらに高めることができる。押圧処理は、外部から機械的な操作によって圧力を加えてもよいし、大気圧による圧力であってもよい。
(圧力装置)
本発明の方法における減圧処理には、減圧装置として、例えば、真空ポンプを備えた真空缶、真空包装機、真空冷却機などの汎用の減圧装置が利用できる。家庭用でも業務用でも良い。減圧装置は、好ましくは減圧・復圧速度を任意に設定できる装置を具備するものであり、減圧下で物質保持基材や食材を加温等、温度制御できてもよい。食材の減圧処理は、容器に入れた状態で密閉可能な減圧庫内に設置して実施でき、また食材を入れた硬質容器や軟質容器等の容器内で減圧処理して実施することもできる。硬質容器としては、例えば、缶、瓶、陶器、磁器、及び樹脂成形容器等を用いることができる。軟質容器としては、例えば、フレキシブルパウチ及びフィルム成形容器等を用いることができる。それら容器に物質保持基材が積層され、容器と基材が一体成形されているものを用いてもよい。
(物質含浸食材)
本発明の方法によれば、外観で認識可能な形状を保持した状態で物質が含浸された食材を得ることができる。含浸された物質が軟化酵素であれば、酵素反応により食材を軟化させて、形状保持軟化食材を得ることができる。形状保持軟化食材の硬さは、咀嚼・嚥下困難者用の食品に適した硬さとして、クリープメーター(山電製)やテンシプレッサー(タケトモ電機製)などの物性測定装置を用いて、品温20℃±2℃に調整した形状保持軟化食材を、直径3mmのプランジャーを用いて10mm/sで食材の厚みの70%を圧縮して得られる破断強度(最大応力)が、好ましくは1.0×103N/m以上2.0×10N/m以下、より好ましくは3.0×10N/m以上1.0×10N/m以下、さらに好ましくは5.0×10N/m以上5.0×10N/m以下に調整することが好ましい。
(物質含浸加工食品)
本発明の方法によれば、物質含浸食材に更なる加工処理を施して加工食品とすることができる。加工処理として、例えば、加熱、冷凍、乾燥などを物質含浸食材に施し、日持ちのよい加工食品を製造することもできるし、含浸食品を加工原料として、新たな加工食品を製造することもできる。物質含浸加工食品としては、チルド食品、冷凍食品、乾燥食品、及び常温流通食品等が挙げられる。
本発明の物質含浸方法について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[試験例1]
(実施例1)
<基材準備>
・基材の種類:パルプ製不織布
・基材のサイズ:縦9cm、横9.5cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは1.4mm、重量は0.655gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能20.94g/1g基材であり、最大排出性能3.57g/1g基材であった。
<食材調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.市販の鶏ムネ肉を−20℃で一晩以上冷凍した。
2.解凍した鶏ムネ肉を1cm厚にスライスした。
3.スライスした鶏ムネ肉を縦5cm、横2.5cm、高さ1cmの直方体にカットした。カットした鶏ムネ肉の重量は、約17〜20gであった。
4.カットした鶏ムネ肉を筋切機(JACCARD製)でテンダライズして、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。
・1%食塩水に溶解して0.05%(w/v)に調製した。
<物質保持基材の作製>
以下の手順で物質保持基材を作製した。
1.含浸物質溶液(酵素液)に、上記で準備した基材を30秒間浸漬した。
2.5mmメッシュの網の上に取り出して過剰に浸み込んだ酵素液を自然落下させた。
3.酵素液を最大吸収させた基材を、物質保持基材として用いた。基材重量0.655gに対して、吸収した酵素液量は約13gであった。
<減圧装置>
減圧装置として真空盤((株)アズワン製、VZ型)に真空ポンプ(アルバック機工(株)製、GLD-050)を接続した真空含浸装置を用いた。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.上記で作製した物質保持基材を二つ折りにして、縦9cm、横4.25cmとした。
2.上記で調製した食材を物質保持基材の間に挟んで試料とした。
3.底面のサイズが基材のサイズと同等のアルミバットに試料を移した。
4.真空ポンプを接続した真空含浸装置内に試料を入れたアルミバットをセットして減圧処理を行った。
5.真空含浸装置内の圧力が2kPaに到達後、減圧弁を閉じて密閉状態として、5分間保持した。
6.減圧弁を開放して大気圧まで戻して、含浸処理を終了して、物質含浸食材を得た。
<酵素反応及び酵素失活処理>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で30分静置して酵素反応を行った。
2.80℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
(比較例1−1)
酵素保持基材を使用せずに、実施例1と等量の13gの酵素液に食材を5分間浸漬した。その後、減圧処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、軟化食材を得た。なお、酵素液13g中に物質含浸用食材を漬けると、食材が3mm程度浸漬した状態となった。
(比較例1−2)
酵素保持基材を使用せずに、実施例1と等量の13gの酵素液に食材を5分間浸漬した。その後、酵素液に食材を浸漬した状態で、実施例1と同様に減圧処理、酵素反応及び酵素失活処理を施して、軟化食材を得た。
(比較例1−3)
減圧処理を行わずに常圧下で食材と酵素保持基材とを5分間接触させて、物質保持基材から食材に酵素を浸透させた以外は実施例1と同様にして、軟化食材を得た。
(比較例1−4)
・実施例1で調製した筋切りした食材を、酵素処理せず、80℃で20分加熱処理した。得られた食材をコントロールとした。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、テンシプレッサー((有)タケトモ電機製)を用いて測定した。硬さは、直径5mmの中空型プランジャーを速度10mm/sで70%貫入して得られる最大応力(N/m)の値とした。なお、1試料の5カ所を測定した平均値で求めた。結果を表1に示した。
(結果)
実施例1及び比較例1−1〜1−3を比較例1−4と比べた結果、実施例1が最も軟らかく食べやすい鶏ムネ肉であった。硬いものが噛みにくい高齢者でも食べやすい容易にかめる硬さに調整することができた。
一方、酵素液への浸漬のみ(比較例1−1)、物質保持基材への接触のみ(比較例1−3)で、減圧処理を行わなかった場合では食材が軟化せず、比較例1−4のコントロールと官能評価でも違いは感じられなかった。
酵素液に浸漬した状態で減圧処理して酵素含浸させた比較例1−2では、酵素液に浸っていた下部は軟らかく感じられたが、上部は硬かった。そのため、食材の上下で硬さが異なり、不均一な食感で食べにくかった。
以上のとおり、物質保持基材を使用して減圧処理を行う本発明の方法により、鶏ムネ肉全体が軟らかい軟化鶏ムネ肉を作製することができた。すなわち、減圧下で、物質保持基材から物質排出駆動力が生じて酵素液が排出され、食材には物質含浸駆動力が生じて酵素液が含浸された。従来、食材全体が酵素液に浸漬して酵素含浸処理が行われているが、本発明の方法を用いれば、食材全体を完全に浸漬できない酵素液量であっても、短時間に食材内部にまで酵素を浸透できることが分かった。そのため、酵素液量の削減にも繋がり、コストを低減することができる。
なお、2群間の検定では、実施例1と比較例1−4との間において、有意な差が見られた。
[試験例2]
(実施例2−1)
<基材準備>
・基材の種類:パルプ製
・基材のサイズ:縦6cm、横3cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは1.4mm、重量は0.11gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能20.94g/1g基材であり、最大排出性能3.57g/1g基材であった。
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.市販の鶏ムネ肉を−20℃で一晩以上冷凍した。
2.解凍した鶏ムネ肉を1cm厚にスライスした。
3.スライスした鶏ムネ肉を縦5cm、横2.5cm、高さ1cmの直方体にカットした。カットした鶏ムネ肉の重量は、約17〜20gであった。
4.カットした鶏ムネ肉を筋切機(JACCARD製)でテンダライズして、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。
・1%食塩水に溶解して0.05%(w/v)に調製した。
<物質保持基材の作製>
以下の手順で物質保持基材を作製した。
1.含浸物質溶液(酵素液)に、上記で準備した基材を30秒間浸漬した。
2.5mmメッシュの網の上に取り出して過剰に浸み込んだ酵素液を自然落下させた。
3.酵素液を最大量吸収させた基材を、物質保持基材として用いた。基材重量0.11gに対して、吸収した酵素液量は約2.2gであった。
<減圧装置>
減圧装置として真空盤((株)アズワン製、VZ型)に真空ポンプ(アルバック機工(株)製、GLD-050)を接続した真空含浸装置を用いた。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.上記で調製した食材を物質保持基材の上に載せて、さらにもう1枚の物質保持基材を食材の上面に載せて、2枚の物質保持基材で食材を挟んで試料とした。
2.底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットに試料を移した。
3.真空ポンプを接続した真空含浸装置内に試料を入れたアルミバットをセットして減圧処理を行った。
4.真空含浸装置内の圧力が2kPaに到達後、減圧弁を閉じて密閉状態として、5分間保持した。
5.減圧弁を開放して大気圧まで戻して、含浸処理を終了して、物質含浸食材を得た。
<酵素反応及び酵素失活>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で30分静置して酵素反応を行った。
2.80℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
(実施例2−2)
食材の上面のみに物質保持基材を載せた以外は、実施例2−1と同様にして、軟化食材を得た。
(実施例2−3)
食材を物質保持基材の上に載せて、食材の上面には物質保持基材を載せなかった以外は、実施例2−1と同様にして、軟化食材を得た。
(比較例2−1)
実施例2−1で調製した食材を酵素処理せず80℃で20分加熱処理した。得られた食材をコントロールとした。
(比較例2−2)
物質保持基材を使用せずに、実施例2−1と等量の4.4gの酵素液に物質含浸用食材を5分間浸漬した。その後、酵素液に物質含浸用食材を浸漬した状態で、実施例1と同様に減圧処理、酵素反応及び酵素失活処理を施して、軟化食材を得た。なお、酵素液4.4g中に物質含浸用食材を漬けると、食材が1mm程度浸漬した状態となった。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、試験例1と同様にして測定した。結果を表2に示した。
(結果)
実施例2−1は、歯ぐきでつぶせるほど軟らかくなり、介護用食品としての十分な品質であった。
実施例2−2は、実施例2−1よりも硬い結果となったが、不均一感はなく、均一に軟らかさが増して容易に噛みやすかった。
実施例2−3は、実施例2−2よりもさらに硬めの結果となったが、比較例2−1より有意に軟らかく、噛みやすく、食べやすさが向上した。
実施例2−2と実施例2−3では基材と食材の接触面が上下で異なるが、食材の上面に被せて、食材が容器と基材で密閉される方がより好ましいことが分かった。
比較例2−2は、比較例2−1に比べて軟らかくはなったが、実施例2−1と等量の酵素量を使用したにもかかわらず、実施例2−1と同等の軟らかさには達しなかった。比較例2−2は、実施例2−2や実施例2−3に近い物性値を示したが、官能評価では、酵素液に触れていない上面は硬さが残り、不均一感が感じられた。
物性値が同等であっても、基材を用いた方が食感に優れ、かつ少量の酵素液量で軟らかくすることができた。
[試験例3]
(実施例3−1)
<基材準備>
・基材の種類:パルプ製
・基材のサイズ:縦10cm、横7cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは1.4mm、重量は0.5gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能20.94g/1g基材であり、最大排出性能3.57g/1g基材であった。
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.市販の鶏ムネ肉を−20℃で一晩以上冷凍した。
2.解凍した鶏ムネ肉を1cm厚にスライスした。
3.スライスした鶏ムネ肉を縦5cm、横3.5cm、高さ1cmの直方体にカットした。カットした鶏ムネ肉の重量は、約23〜25gであった。
4.カットした鶏ムネ肉を筋切機(JACCARD製)でテンダライズして、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。
・1%食塩水に溶解して0.00625%(w/v)に調製した。
<物質保持基材の作製>
以下の手順で物質保持基材を作製した。
1.含浸物質溶液(酵素液)に、上記で準備した基材を30秒間浸漬した。
2.5mmメッシュの網の上に取り出して過剰に浸み込んだ酵素液を自然落下させた。
3.酵素液を最大量吸収させた基材を、物質保持基材として用いた。基材重量0.5gに対して、吸収した酵素液量は約10gであった。
<減圧装置>
減圧装置として真空盤((株)アズワン製、VZ型)に真空ポンプ(アルバック機工(株)製、GLD-050)を接続した真空含浸装置を用いた。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.上記で調製した食材を物質保持基材の上に載せて、さらにもう1枚の物質保持基材を食材の上面に載せて、2枚の物質保持基材で食材を挟んで試料とした。
2.底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットに試料を移した。
3.真空ポンプを接続した真空含浸装置内に試料を入れたアルミバットをセットして減圧処理を行った。
4.真空含浸装置内の圧力が2kPaに到達後、減圧弁を閉じて密閉状態として、5分間保持した。
5.減圧弁を開放して大気圧まで戻して、含浸処理を終了して、物質含浸食材を得た。
<酵素反応及び酵素失活>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で30分静置して酵素反応を行った。
2.80℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
(実施例3−2)
含浸物質溶液中のタンパク質分解酵素の濃度を0.0125%(w/v)に変更した以外は、実施例3−1と同様にして、軟化食材を得た。
(実施例3−3)
含浸物質溶液中のタンパク質分解酵素の濃度を0.025%(w/v)に変更した以外は、実施例3−1と同様にして、軟化食材を得た。
(実施例3−4)
含浸物質溶液中のタンパク質分解酵素の濃度を0.05%(w/v)に変更した以外は、実施例3−1と同様にして、軟化食材を得た。
(比較例3)
実施例3−1で調製した食材を酵素処理せず80℃で20分加熱処理した。得られた食材をコントロールとした。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、試験例1と同様にして測定した。結果を表3に示した。
(結果)
物質保持基材中の酵素濃度が高い程食材が軟らかくなった。実施例3−1は噛みやすい、実施例3−2は容易にかめる、実施例3−3は容易にかめる、実施例3−4は歯ぐきでつぶせる軟らかさとなった。したがって、基材に保持させる含浸物質溶液量は一定として、物質保持基材中の酵素濃度を変更することにより食材内への酵素含浸量を調節し、健常者向けの食べやすい軟らかさから、要介護者向けのやわらか食まで作製することができた。いずれの実施例においても、食材内に酵素が均一に含浸されていた。
[試験例4]
(実施例4−1)
<基材準備>
・基材の種類:パルプ製
・基材のサイズ:縦10cm、横7cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは1.4mm、重量は0.5gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能20.94g/1g基材であり、最大排出性能3.57g/1g基材であった。
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.市販の鶏ムネ肉を−20℃で一晩以上冷凍した。
2.解凍した鶏ムネ肉を1cm厚にスライスした。
3.スライスした鶏ムネ肉を縦5cm、横3.5cm、高さ1cmの直方体にカットした。カットした鶏ムネ肉の重量は、約23〜25gであった。
4.カットした鶏ムネ肉を筋切機(JACCARD製)でテンダライズして、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。
・1%食塩水に溶解して0.05%(w/v)に調製した。
<物質保持基材の作製>
以下の手順で物質保持基材を作製した。
1.含浸物質溶液(酵素液)に、上記で準備した基材2枚を30秒間浸漬させた。
2.5mmメッシュの網の上に取り出して過剰に浸み込んだ酵素液を自然落下させた。
3.酵素液を吸収させた基材を物質保持基材として用いた。基材重量0.5g(1枚)に対して吸収した酵素液量はそれぞれ10.47gであった。
<酵素液排出量の測定>
1.上記で作製した酵素液保持量が同一の物質保持基材2枚(使用基材1g分)を5mmメッシュの網に載せたまま、小型真空容器に入れて2kPaまで減圧した。
2.密閉状態で5分間減圧保持して大気圧まで開放した。基材重量の減少量を酵素液排出量とした。結果を表4に示した。
なお、基材1gに含ませたのと同量の酵素液をアルミバットに入れて、同様に減圧処理した際の重量変化をブランクとした。減圧下排出量は、測定値からブランク値を差し引いた値とした。
<減圧装置>
減圧装置として真空盤((株)アズワン製、VZ型)に真空ポンプ(アルバック機工(株)製、GLD-050)を接続した真空含浸装置を用いた。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.上記で調製した食材を物質保持基材の上に載せて、さらにもう1枚の物質保持基材を食材の上面に載せて、2枚の物質保持基材で食材を挟んで試料とした。
2.底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットに試料を移した。
3.真空ポンプを接続した真空含浸装置内に試料を入れたアルミバットをセットして減圧処理を行った。
4.真空含浸装置内の圧力が2kPaに到達後、減圧弁を閉じて密閉状態として、5分間保持した。
5.減圧弁を開放して大気圧まで戻して、含浸処理を終了して、物質含浸食材を得た。
<酵素反応及び酵素失活>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で30分静置して酵素反応を行った。
2.80℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
(実施例4−2)
物質保持基材に含まれる酵素液量を実施例4−1の87.5%量に変更した以外は、実施例4−1と同様にして、軟化食材を得た。
なお、物質保持基材は以下の方法で作製した。実施例4−1と同様に準備した重量0.5gの基材を2枚準備し、それぞれに準備した含浸物質溶液(酵素液)を滴下して9.165gを吸収させる点滴法により作製して用いた。
(実施例4−3)
物質保持基材に含まれる酵素液量を実施例4−1の75%量に変更した以外は、実施例4−1と同様にして、軟化食材を得た。なお、物質保持基材の作製は、滴下して吸収させる物質液量を7.855gとした以外は実施例4−2と同様にして作製した。
(実施例4−4)
物質保持基材に含まれる酵素液量を実施例4−1の50%量に変更した以外は、実施例4−1と同様にして、軟化食材を得た。なお、物質保持基材の作製は、滴下して吸収させる物質液量を5.235gとした以外は実施例4−2と同様にして作製した。
(実施例4−5)
物質保持基材に含まれる酵素液量を実施例4−1の40%量に変更した以外は、実施例4−1と同様にして、軟化食材を得た。なお、物質保持基材の作製は、滴下して吸収させる物質液量を4.19gとした以外は実施例4−2と同様にして作製した。
(比較例4)
実施例4−1で調製した食材を酵素処理せず80℃で20分加熱処理した。得られた食材をコントロールとした。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、試験例1と同様にして測定した。結果を表4に示した。
(結果)
実施例4−1〜4−5では、酵素液保持量の減少に伴って、減圧下での酵素液排出量も減少した。また、酵素液排出量の増加に伴って、鶏ムネ肉は軟化した。実施例4−4及び実施例4−5の鶏ムネ肉の硬さは、検定では有意差がなかったが、官能では比較例4と比較して噛みやすかった。
物性測定値及び官能評価から、減圧下において少なくとも0.01g以上/1g基材、好ましくは0.1g以上/1g基材、より好ましくは0.5g以上/1g基材の酵素液排出量を有する物質保持基材を用いることが望ましい。
本発明の方法においては、1種類の酵素濃度溶液を調製すれば、基材の酵素保持量を調節するだけで食材内への物質含浸量を調節でき、食材の軟化度を任意に調節できる。
[試験例5]
(実施例5−1)
<基材準備>
・基材の種類:パルプ製
・基材のサイズ:縦10cm、横11cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは0.8mm、重量は0.5gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能10.52g/1g基材であり、最大排出性能0.65g/1g基材であった。
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.市販の鶏ムネ肉を−20℃で一晩以上冷凍した。
2.解凍した鶏ムネ肉を1cm厚にスライスした。
3.スライスした鶏ムネ肉を縦5cm、横3.5cm、高さ1cmの直方体にカットした。カットした鶏ムネ肉の重量は、約23〜25gであった。
4.カットした鶏ムネ肉を筋切機(JACCARD製)でテンダライズして、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。
・1%食塩水に溶解して0.05%(w/v)に調製した。
<物質保持基材の作製>
上記で準備した基材2枚に、それぞれ含浸物質溶液(酵素液)5.26gを滴下して吸収させ、物質保持基材を作製した。
<酵素液排出量の測定>
1.上記で作製した物質保持基材2枚(使用基材1g分)を5mmメッシュの網に載せたまま、小型真空容器に入れて2kPaまで減圧した。
2.密閉状態で5分間減圧保持して大気圧まで開放した。基材重量の減少量を酵素液排出量とした。結果を表5に示した。参考までに、酵素液排出量の値が同等の実施例4−3の結果を併記した。
なお、基材1gに含ませたのと同量の酵素液をアルミバットに入れて、同様に減圧処理した際の重量変化をブランクとした。減圧下排出量は、測定値からブランク値を差し引いた値とした。
<減圧装置>
減圧装置として真空盤((株)アズワン製、VZ型)に真空ポンプ(アルバック機工(株)製、GLD-050)を接続した真空含浸装置を用いた。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.上記で調製した食材を物質保持基材の上に載せて、さらにもう1枚の物質保持基材を食材の上面に載せて、2枚の物質保持基材で食材を挟んで試料とした。
2.底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットに試料を移した。
3.真空ポンプを接続した真空含浸装置内に試料を入れたアルミバットをセットして減圧処理を行った。
4.真空含浸装置内の圧力が2kPaに到達後、減圧弁を閉じて密閉状態として、5分間保持した。
5.減圧弁を開放して大気圧まで戻して、含浸処理を終了して、物質含浸食材を得た。
<酵素反応及び酵素失活>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で30分静置して酵素反応を行った。
2.80℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
(比較例5)
実施例5−1で調製した食材を80℃で20分加熱処理した。得られた食材をコントロールとした。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、試験例1と同様にして測定した。結果を表5に示した。
(結果)
基材の性能が異なっても、減圧下での酵素液排出量が同等であれば、食材内への物質含浸量は同等となり、食材の軟化度も同等となった。
[試験例6]
(実施例6−1)
<基材準備>
・基材の種類:パルプ製
・基材のサイズ:縦10cm、横7cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは1.4mm、重量は0.5gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能20.94g/1g基材であり、最大排出性能3.57g/1g基材であった。
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.市販の鶏ムネ肉を−20℃で一晩以上冷凍した。
2.解凍した鶏ムネ肉を1cm厚にスライスした。
3.スライスした鶏ムネ肉を縦4cm、横3cm、高さ1cmの直方体にカットした。カットした鶏ムネ肉の重量は、約11〜15gであった。
4.カットした鶏ムネ肉を筋切機(JACCARD製)でテンダライズして、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。
・1%食塩水に溶解して0.05%(w/v)に調製した。
<物質保持基材の作製>
上記で準備した基材に含浸物質溶液(酵素液)10gを滴下して吸収させ、物質保持基材を作製した。
<減圧装置>
・減圧装置として家庭用真空包装機((株)ワイドシステム、真空パックんPLUS、キャニスター付き)を用いた。
・本機の真空ポンプ能力はカタログ値で脱気圧663mmHgであり、実測値で最大到達減圧圧力は約14kPaであった。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.上記で調製した食材を物質保持基材の上に載せて、基材を折りたたんで食材の上下を基材で包んで試料とした。
2.家庭用真空包装機に付属のキャニスター容器(700mL容量)に試料を移した。
3.家庭用真空包装機本体とキャニスター容器を付属のホースで接続した。
なお、キャニスター内の圧力を測定できるよう、接続ホースに圧力計を設置した。
4.キャニスター減圧スイッチを入れて減圧処理した。ポンプを4回(約5秒×4回)稼働させた(バッチ式減圧処理)。
5.キャニスター内の圧力が15kPaに到達後、キャニスター蓋の開閉スイッチを閉じた。
6.5分間保持した後に開閉スイッチを開けて常圧に復帰し、含浸処理を終了して、物質含浸食材を得た。
<酵素反応及び酵素失活>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で30分静置して酵素反応を行った。
2.80℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
(実施例6−2)
減圧処理においてキャニスター内の圧力を20kPaに変更した以外は実施例6−1と同様にして、軟化食材を得た。
(実施例6−3)
減圧処理においてキャニスター内の圧力を30kPaに変更した以外は実施例6−1と同様にして、軟化食材を得た。
(実施例6−4)
減圧処理においてキャニスター内の圧力を40kPaに変更した以外は実施例6−1と同様にして、軟化食材を得た。
(実施例6−5)
減圧処理においてキャニスター内の圧力を50kPaに変更した以外は実施例6−1と同様にして、軟化食材を得た。
(比較例6)
実施例6−1で調製した食材を酵素処理せずに80℃で20分加熱処理した。得られた食材をコントロールとした。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、試験例1と同様にして測定した。結果を表6に示した。
(結果)
実施例6−1〜6−5においてキャニスター内の圧力を15kPa〜50kPaの範囲で変化させて減圧処理を行ったところ、いずれも比較例6のコントロールに比べて食材が軟化した。
また、官能評価においても、鶏ムネ肉内部がムラなく軟らかく噛みやすくなっており、食材中心部への酵素の含浸が確認できた。
なお、実施例6−5(減圧処理圧力:50kPa)では他の実施例に比べて最大応力が低くなっているが、これは食材のバラツキによる影響と考えられ、実施例6−1〜6−5では官能評価で同等の噛みやすさであった。
[試験例7]
(実施例7−1)
<基材準備>
・基材の種類:パルプ製
・基材のサイズ:縦12cm、横9.5cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは1.4mm、重量は0.8gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能20.94g/1g基材であり、最大排出性能3.57g/1g基材であった。
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.市販の豚ヒレ肉を−20℃で一晩以上冷凍した。
2.解凍した豚ヒレ肉を1cm厚にスライスした。
3.スライスした豚ヒレ肉を縦4.5cm、横3.5cm、高さ1cmの直方体にカットした。カットした豚ヒレ肉の重量は、約20〜25gであった。
4.カットした豚ヒレ肉を筋切機(JACCARD製)でテンダライズして、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。
・1%食塩水に溶解して0.2%(w/v)に調製した。
<物質保持基材の作製>
以下の手順で物質保持基材を作製した。
1.上記で準備した基材に含浸物質溶液(酵素液)20gを滴下して、最大吸収量(約16g)を吸収させた。
2.50℃の定温乾燥機内に2時間静置して基材を乾燥させて、乾燥状態の物質保持基材を得た。
<減圧装置>
減圧装置として業務用真空包装機((株)TOSEI V−380G)を用いた。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.乾燥状態の物質保持基材に20gの水を添加して湿潤状態に戻した。
2.上記で調製した食材を物質保持基材の上に載せて、基材を折りたたんで食材の上下を基材で包んで試料とした。
3.底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットに試料を移した。
4.業務用真空包装機内に試料を入れたアルミバットをセットして減圧処理を行った。
5.真空度98%に到達後、5分間保持した。
6.減圧を解除して大気圧まで戻して、含浸処理を終了して、物質含浸食材を得た。
<酵素反応及び酵素失活>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で30分静置して酵素反応を行った。
2.80℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
(実施例7−2)
乾燥後の物質保持基材を6か月間室温保存して用いた以外は実施例7−1と同様にして、軟化食材を得た。
(比較例7)
実施例7−1で調製した食材を80℃で20分加熱処理した。得られた食材をコントロールとした。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、テンシプレッサー((有)タケトモ電機製)を用いて測定した。硬さは、直径3mmの円柱型プランジャーを速度10mm/sで70%貫入して得られる最大応力(N/m)の値とした。なお、硬さは、1試料の10カ所を測定した平均値で求めた。結果を表7に示した。
(結果)
乾燥状態の物質保持基材を使用直前に湿潤状態に戻して用いても、食材内に物質を含浸することができ、軟化食材を得ることができた。乾燥状態の物質保持基材を長期間保存後に使用しても、食材内に物質を含浸することができた。
実施例7−1及び7−2はいずれも、比較例7のコントロールと比較して十分に軟らかく、容易にかめる、歯ぐきでつぶせる軟らかさまで軟化した。
[試験例8]
(実施例8)
<基材準備>
・基材の種類:パルプ製
・基材のサイズ:縦11.5cm、横9.5cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは1.4mm、重量は0.75gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能20.94g/1g基材であり、最大排出性能3.57g/1g基材であった。
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.生の1cm厚のニンジン(半月切り)と1cm厚のダイコン(半月切り)を準備した。
2.98℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)でニンジンは30分、ダイコンは40分加熱した。
3.室温まで放冷したあと、−20℃で一晩以上冷凍して、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質として植物組織崩壊酵素(カビ由来、ヤクルト薬品工業(株)製)を使用した。
・1.0%(w/v)のクエン酸緩衝溶液に溶解して0.5%(w/v)に調製した。
<物質保持基材の作製>
以下の手順で物質保持基材を作製した。
1.含浸物質溶液(酵素液)に、上記で準備した基材を30秒間浸漬した。
2.5mmメッシュの網の上に取り出して過剰に浸み込んだ酵素液を自然落下させた。
3.酵素液を最大量吸収させた基材を、物質保持基材として用いた。基材重量0.75gに対して、吸収した酵素液量は約15.5gであった。
<減圧装置>
減圧装置として真空盤((株)アズワン製、VZ型)に真空ポンプ(アルバック機工(株)製、GLD-050)を接続した真空含浸装置を用いた。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.ニンジン及びダイコンを流水中で解凍した。
2.解凍したニンジン2個(合計24.3g)とダイコン2個(合計36.6g)を物質保持基材の上に載せて、さらにもう1枚の物質保持基材を食材の上面に被せて2枚の物質保持基材で挟んだ。物質保持基材の4辺をホッチキスで止めて袋状にして、試料とした。
3.底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットに試料を移した。
4.真空ポンプを接続した真空含浸装置内に試料を入れたアルミバットをセットして減圧処理を行った。
5.真空含浸装置内の圧力が2kPaに到達後、減圧弁を閉じて密閉状態として、5分間保持した。
6.減圧弁を開放して大気圧まで戻して、含浸処理を終了して、物質含浸食材を得た。
<酵素反応及び酵素失活>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で16時間静置して酵素反応を行った。
2.95℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を10分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
(比較例8−1)
冷凍したニンジン及びダイコンを流水中で解凍した後、物質含浸処理せずに、95℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で10分加熱処理した。得られた食材をコントロールとした。
(比較例8−2)
物質保持基材を用いずに、食材が完全に浸る十分量の酵素液に常圧下で5分間浸漬した。食材の浸漬に用いた容器は、底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットとし、十分に浸かる酵素液量として75gを必要とした。
浸漬処理後の食材を減圧処理しなかった以外は実施例8と同様にして、軟化食材を得た。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、試験例7と同様にして測定した。結果を表8に示した。
(結果)
実施例8のニンジン及びダイコンはいずれも、比較例8−1のコントロールに比べて軟らかく、硬さが5.0×10N/m以下であり、UDF「歯ぐきでつぶせる」の区分に合致し、高齢者用食品として利用できる軟らかさであった。
一方、比較例8−2のように酵素液に浸漬するだけでは、食材中心部まで酵素が浸透せず、コントロールと同じ食べやすい軟らかさから変化なく、酵素利用の効果がほとんど得られなかった。
肉類の動物性食材のみならず、野菜類でも酵素保持基材を用いて酵素を中心部まで含浸できた。
物質保持基材を用いることで、食材重量(ニンジン及びダイコンの合計約61g)の約半量の31gの酵素液量で食材内に効率的に酵素を含浸することができた。
[試験例9]
(実施例9−1)
<基材準備>
・基材の種類:表面材(ポリオレフィン製フィルム)と吸収材(パルプ製不織布)との2層構造。
・基材のサイズ:縦16cm、横8cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは0.9mm、重量は1.0gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能14g/1g基材であり、最大排出性能1.29g/1g基材であった。
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.市販の豚ヒレ肉を−20℃で一晩以上冷凍した。
2.解凍した豚ヒレ肉を1cm厚にスライスした。
3.スライスした豚ヒレ肉を縦4.5cm、横3.5cm、高さ1cmの直方体にカットした。カットした豚ヒレ肉の重量は、約20〜25gであった。
4.カットした豚ヒレ肉を筋切機(JACCARD製)でテンダライズして、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。
・1%食塩水に溶解して0.1%(w/v)に調製した。
<物質保持基材の作製>
上記で準備した基材に含浸物質溶液(酵素液)14gを滴下して吸収させ、物質保持基材を得た。
<減圧装置>
・減圧装置として家庭用真空包装機((株)ワイドシステム、真空パックんPLUS、キャニスター付き)を用いた。
・本機の真空ポンプ能力はカタログ値で脱気圧663mmHgであり、実測値で最大到達減圧圧力は約14kPaであった。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.上記で調製した食材を物質保持基材の表面材の上に載せて、基材を折りたたんで食材の上下を基材で包んで試料とした。
2.家庭用真空包装機に付属のキャニスター容器(700mL容量)に試料を移した。
3.家庭用真空包装機本体とキャニスター容器を付属のホースで接続した。
なお、キャニスター内の圧力を測定できるよう、接続ホースに圧力計を設置した。
4.キャニスター減圧スイッチを入れて減圧処理した。ポンプを4回(約5秒×4回)稼働させた(バッチ式減圧処理)。
5.キャニスター内の圧力が15kPaに到達後、キャニスター蓋の開閉スイッチを閉じた。
6.5分間保持した後に開閉スイッチを開けて常圧に復帰し、含浸処理を終了して、物質含浸食材を得た。
<酵素反応及び酵素失活>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で16時間静置して酵素反応を行った。
2.80℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
(実施例9−2)
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.実施例9−1で調製した試料を真空包装袋内に入れたあと、キャニスターは用いず、真空包装袋をシーラー部にセットし、袋内を直接減圧処理して真空パックした。
2.減圧処理開始後10秒程度で食材及び基材は真空包装袋を介して大気圧がかかり、押圧された(パック式含浸処理)。
3.真空包装袋から食材を取り出して、物質含浸食材を得た。
実施例9−1と同様にして酵素反応及び酵素失活を行い、軟化食材を得た。
(比較例9)
実施例9−1で調製した食材を80℃で20分加熱処理した。得られた食材をコントロールとした。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、試験例7と同様にして測定した。なお、硬さは、1試料の5カ所を測定した平均値で求めた。結果を表9に示した。
(結果)
減圧処理方式は、バッチ式(実施例9−1)でも、真空包装袋を用いたパック式(実施例9−2)でも食材内に物質を含浸することができ、コントロールと比較した場合に、食材内部まで十分に軟らかく、容易にかめる軟らかさであった。
実施例9−2では、減圧処理開始により基材の物質排出駆動力と食材への含浸駆動力とが同時に生じるが、脱気されるにしたがって真空包装袋を介して、大気圧がかかり始める。基材には大気圧による押圧により更なる物質排出駆動力が働くが、最終的に食材にも大気圧がかかり、食材内部の空気膨張による含浸駆動力は低下していると考えられる。したがって、実施例9−2は、押圧処理のない実施例9−1と比較して食材の軟化度は劣ったと考えられる。
[試験例10]
(実施例10−1)
<基材準備>
・基材の種類:パルプ製
・基材のサイズ:縦14cm、横10cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは1.4mm、重量は1.0gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能20.94g/1g基材であり、最大排出性能3.57g/1g基材であった。
<試料調製>
1.生の1cm厚ダイコン(半月切り)を準備した。
2.98℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)でダイコンを40分加熱した。
3.室温まで放冷したあと、−20℃で冷凍した。その後、氷水中に1分間浸漬して、食材表面をグレーズ処理して、−20℃で一晩冷凍保管し、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質として植物組織崩壊酵素(カビ由来、ヤクルト薬品工業(株)製)を使用した。
・1.0%(w/v)のクエン酸緩衝溶液に溶解して0.5%(w/v)に調製した。
<物質保持基材の作製>
以下の手順で物質保持基材を作製した。
1.上記で準備した基材に含浸物質溶液(酵素液)20gを滴下して吸収させた。
2.30℃の定温乾燥機内に10時間静置して基材を乾燥させて、乾燥状態の物質保持基材を得た。
<減圧装置>
減圧装置として真空盤((株)アズワン製、VZ型)に真空ポンプ(アルバック機工(株)製、GLD-050)を接続した真空含浸装置を用いた。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.グレーズ処理したダイコン3個を物質保持基材に載せて、基材を折りたたんで食材の上下を基材で包んで試料とした。
2.試料を60℃に設定したスチームコンベクションオーブンで15分加熱して、食材を解凍した。
3.解凍によりダイコン表面のグレーズが溶けて、基材が湿潤状態となった。なお、用いたダイコン3個のグレーズ量は10gであり、ドリップ量は6gであった。
4.底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットに解凍後の試料を移した。
5.真空ポンプを接続した真空含浸装置内に試料を入れたアルミバットをセットして減圧処理を行った。
6.真空含浸装置内の圧力が2kPaに到達後、減圧弁を閉じて密閉状態として、5分間保持した。
7.減圧弁を開放して大気圧まで戻して、含浸処理を終了して、物質含浸食材を得た。
<酵素反応及び酵素失活>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で16時間静置して酵素反応を行った。
2.95℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を10分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、試験例7と同様にして測定した。なお、硬さは、3つの試料の計10カ所を測定した平均値で求めた。結果を表10に示した。
(実施例10−2)
グレーズ処理しなかった以外は実施例10−1と同様にして試料を調製し、電子レンジで300W4分加熱して(中心温度:55℃)解凍した。解凍によりダイコンから生じたドリップにより、物質保持基材が湿潤状態となった。ドリップ量は11gであった。底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットに解凍後の試料を移し、実施例10−1と同様にして減圧処理、酵素反応及び酵素失活を行って、軟化食材を得た。
(比較例10)
冷凍したダイコンを流水中で解凍した後、95℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で10分加熱した。得られた食材をコントロールとした。
(結果)
実施例10−1及び10−2のいずれも食材中心部まで十分に軟らかく、グレーズ処理の有無にかかわらず食材内に十分な量の物質を含浸することができ、ダイコンを軟化させることができた。実施例10−1は歯ぐきでつぶせる軟らかさ、実施例10−2は容易にかめる軟らかさにまで軟化し、介護食として利用できる軟らかさであった。実施例10−1及び10−2のいずれも、乾燥状態の物質保持基材には予め水を吸収させずに、食材からの水の吸収によって湿潤状態にすることで、減圧処理時に物質排出駆動力を生じさせ、含浸物質を供給することができた。
[試験例11]
(実施例11−1)
<基材準備>
・基材の種類:ナイロン製
・基材のサイズ:縦16cm、横7cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは6.5mm、重量は5.0gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能8.2g/1g基材であり、最大排出性能1.0g/1g基材であった。
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.市販の豚ヒレ肉を−20℃で一晩以上冷凍した。
2.解凍した豚ヒレ肉を1cm厚にスライスした。
3.スライスした鶏ムネ肉を縦5cm、横4cm、高さ1cmの直方体にカットした。カットした鶏ムネ肉の重量は、約11〜15gであった。
4.カットした鶏ムネ肉を筋切機(JACCARD製)でテンダライズして、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。
・1%食塩水に溶解して0.05%(w/v)に調製した。
<物質保持基材の作製>
以下の手順で物質保持基材を作製した。
1.含浸物質溶液(酵素液)に、上記で準備した基材を30秒間浸漬させた。
2.5mmメッシュの網の上に取り出して過剰に浸み込んだ酵素液を自然落下させた。
3.酵素液を吸収させた基材を物質保持基材として用いた。基材重量5.0gに対して吸収した酵素液量は40.5gであった。
<酵素液排出量の測定>
1.上記で作製した酵素液保持量が同一の物質保持基材2枚(使用基材1g分)を5mmメッシュの網に載せたまま、小型真空容器に入れて2kPaまで減圧した。
2.密閉状態で5分間減圧保持して大気圧まで開放した。基材重量の減少量を酵素液排出量とした。結果を表11に示した。
なお、基材1gに含ませたのと同量の酵素液をアルミバットに入れて、同様に減圧処理した際の重量変化をブランクとした。減圧下排出量は、測定値からブランク値を差し引いた値とした。
<減圧装置>
減圧装置として真空盤((株)アズワン製、VZ型)に真空ポンプ(アルバック機工(株)製、GLD-050)を接続した真空含浸装置を用いた。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.上記で調製した食材を物質保持基材の上に載せて、基材を2つに折りたたんで食材の上面にかぶせ、1枚の物質保持基材で食材を包んで試料とした。
2.底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットに試料を移した。
3.真空ポンプを接続した真空含浸装置内に試料を入れたアルミバットをセットして減圧処理を行った。
4.真空含浸装置内の圧力が2kPaに到達後、減圧弁を閉じて密閉状態として、5分間保持した。
5.減圧弁を開放して大気圧まで戻して、含浸処理を終了して、物質含浸食材を得た。
<酵素反応及び酵素失活>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で30分静置して酵素反応を行った。
2.80℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
(実施例11−2)
コットン製の基材を用いた以外は、実施例11−1と同様に実施した。なお、縦16cm、横7cmの長方形にカットして使用した基材の厚みは3.9mm、重量は0.79gであり、その最大吸収性能は24.7g/1g基材であり、最大排出性能は0.2g/1g基材であった。
(実施例11−3)
レーヨン・ポリプロピレン製の基材を用いた以外は、実施例11−1と同様に実施した。なお、縦16cm、横7cmの長方形にカットして使用した基材の厚みは1.2mm、重量は1.26gであり、その最大吸収性能は12.8g/1g基材であり、最大排出性能は1.4g/1g基材であった。
(実施例11−4)
レーヨン・パルプ製の基材を用いた以外は、実施例11−1と同様に実施した。なお、縦16cm、横7cmの長方形にカットして使用した基材の厚みは1.2mm、重量は0.93gであり、その最大吸収性能は20.7g/1g基材であり、最大排出性能は2.3g/1g基材であった。
(実施例11−5)
レーヨン・ポリプロピレン・ポリエチレン製の基材を用いた以外は、実施例11−1と同様に実施した。なお、縦16cm、横7cmの長方形にカットして使用した基材の厚みは0.2mm、重量は1.41gであり、その最大吸収性能は10.9g/1g基材であり、最大排出性能は0.1g/1g基材であった。
(実施例11−6)
セルロース製の基材を用いた以外は、実施例11−1と同様に実施した。なお、縦16cm、横7cmの長方形にカットして使用した基材の厚みは2.2mm、重量は0.98gであり、その最大吸収性能は11.9g/1g基材であり、最大排出性能は7.5g/1g基材であった。
(実施例11−7)
吸収材(パルプ製)と外面材(ポリエチレン製フィルム)との2層構造の基材を用いて、該基材の吸収材の面上に食材を載せた以外は、実施例11−1と同様に実施した。なお、縦16cm、横7cmの長方形にカットして使用した基材の厚みは1.3mm、重量は0.81gであり、その最大吸収性能は7.0g/1g基材であり、最大排出性能は0.1g/1g基材であった。
(実施例11−8)
パルプ製の基材を用いた以外は、実施例11−1と同様に実施した。なお、縦16cm、横7cmの長方形にカットして使用した基材の厚みは1.4mm、重量は0.82gであり、その最大吸収性能は20.9g/1g基材であり、最大排出性能は3.09g/1g基材であった。
(比較例11−1)
実施例11−1で調製した食材を5分間上記含浸物質溶液(酵素液)に浸漬したあと、実施例11−1と同様に4℃で30分酵素反応し、80℃で20分加熱処理した。得られた食材をコントロールとした。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、試験例1と同様にして測定した。結果を表11に示した。
(結果)
実施例11−1〜11−8では様々な種類の基材を用いたが、酵素液に浸漬した比較例11−1のコントロールと比較して軟化効果が得られた。
[試験例12]
(実施例12)
<基材準備>
・基材の種類:パルプ製
・基材のサイズ:縦10cm、横7cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは1.4mm、重量は0.5gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能20.94g/1g基材であり、最大排出性能3.57g/1g基材であった。
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.市販の豚ヒレ肉を−20℃で一晩以上冷凍した。
2.解凍した豚ヒレ肉を1cm厚にスライスした。
3.スライスした豚ヒレ肉を縦5cm、横4cm、高さ1cmの直方体にカットした。カットした豚ヒレ肉の重量は、約11〜15gであった。
4.カットした鶏ムネ肉を筋切機(JACCARD製)でテンダライズして、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。
・5倍希釈した市販の塩麹ダシ(ハナマルキ(株)製)に溶解して0.05%(w/v)に調製した。
<物質保持基材の作製>
以下の手順で物質保持基材を作製した。
1.含浸物質溶液(塩麹ダシ酵素液)に、上記で準備した基材を30秒間浸漬した。
2.5mmメッシュの網の上に取り出して過剰に浸み込んだ酵素液を自然落下させた。
3.酵素液を最大量吸収させた基材を、物質保持基材として用いた。基材重量0.5gに対して、吸収した酵素液量は約10gであった。
<減圧装置>
減圧装置として真空盤((株)アズワン製、VZ型)に真空ポンプ(アルバック機工(株)製、GLD−050)を接続した真空含浸装置を用いた。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.上記で調製した食材を物質保持基材の上に載せて、二つ折りにして物質保持基材を食材の上面に被せて、一枚の物質保持基材で食材を包んで試料とした。
2.底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットに試料を移した。
3.真空ポンプを接続した真空含浸装置内に試料を入れたアルミバットをセットして減圧処理を行った。
4.真空含浸装置内の圧力が2kPaに到達後、減圧弁を閉じて密閉状態として、5分間保持した。
5.減圧弁を開放して大気圧まで戻して、含浸処理を終了して、物質含浸食材を得た。
<酵素反応及び酵素失活>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で30分静置して酵素反応を行った。
2.80℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
(比較例12)
酵素添加なしの5倍希釈塩麹ダシを用いて基材を作製した以外は、実施例12と同様に行った。得られた食材を酵素処理なしの調味豚ヒレ肉コントロールとした。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、試験例1と同様にして測定した。結果を表12に示した。
(結果)
実施例12では物質保持基材中に酵素と共に塩麹ダシが保持された基材を用いることで、豚ヒレ肉は十分に軟化し、かつ、塩麹ダシの風味が感じられ、美味しさが向上した。含浸物質の酵素と同時に調味も同時にできることが確認された。
[試験例13]
(実施例13−1)
<基材準備>
・基材の種類:パルプ製
・基材のサイズ:縦9cm、横12cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは1.4mm、重量は0.77gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能20.94g/1g基材であり、最大排出性能3.57g/1g基材であった。
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.市販の真鱈を−20℃で一晩以上冷凍した。
2.解凍した真鱈を1.5cm厚にカットした。カットした真鱈の重量は、約30〜35gであった。そのまま物質含浸用食材とした。
<含浸物質溶液調製>
・含浸物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。
・水で7倍希釈した和風だし(割烹つゆ、(株)ミツカン製)に0.05%(w/v)に調製した。さらに、加工デンプン(松谷化学工業(株)製)を1.0%(w/v)、キサンタンガム(三菱ケミカルフーズ(株)製)0.1%(w/v)を添加して、含浸物質溶液とした。
<物質保持基材の作製>
上記で準備した基材に、含浸物質溶液(和風調味酵素液)14.6gを滴下して吸収させ、物質保持基材を作製した。
<減圧装置>
減圧装置は(株)古川製作所製の小型真空包装機「FVCII−LAB」を使用した。本真空包装機は、真空ポンプと真空ボックスとの接続途中にバルブを設けて庫内の減圧速度を任意に調整でき、また圧力開放バルブを設けて減圧から大気圧までの昇圧速度も任意に調整できる。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.上記で調製した食材を沸騰水中に5分入れて加熱し取り出した。真鱈の中心温度は85℃であった。
2.すぐに物質保持基材の上に加熱した真鱈を載せて、物質保持基材を二つに折りたたんで真鱈の上下を基材で挟んだ。底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットに試料を移し、すぐに減圧処理を行った。
3.減圧速度−9.5kPa/s(絶対値:9.5kPa/s)で2kPaまで減圧処理した。食材から激しい食材内水分の気化膨張に伴う水蒸気発生が見られた。
4.10秒間減圧庫内を密閉状態として減圧保持した。保持中に食材中からの水蒸気発生はおさまった。
5.5kPaまで緩慢開放した。緩慢開放速度は0.039kPa/秒とし、5kPa到達後は急速開放して常圧まで復帰して酵素含浸食材を得た。減圧開始から終了まで102秒であった。
<酵素反応及び酵素失活>
以下の手順で酵素反応及び酵素失活処理を行った。
1.基材から物質含浸食材を取り出して、4℃の冷蔵庫で60分静置して酵素反応を行った。
2.80℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で酵素反応後の食材を20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
3.室温(20℃)まで自然冷却して、軟化食材を得た。
(実施例13−2)
含浸物質溶液として、タンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を1%食塩水に溶解して0.05%(w/v)に調製して使用した以外は、実施例13−1と同様に処理した。
(比較例13−1)
実施例13と同様に調製した真鱈を沸騰水中で5分間加熱した。室温まで冷却した後、減圧処理による酵素含浸処理を行わず、そのまま4℃の冷蔵庫で60分静置した。実施例13と同様に80℃で20分加熱処理した。得られた食材をコントロールとした。
(比較例13−2)
実施例13と同様に調製した真鱈を沸騰水中で5分間加熱した。含浸物質溶液100gに102秒間浸漬した。溶液からとりだした後は実施例13と同様に4℃で60分間静置して酵素反応し、80℃で20分加熱処理した。
<物性測定評価>
上記で得られた軟化食材の硬さを、試験例7と同様にして測定した。結果を表13に示した。
(結果)
実施例13−1及び実施例13−2は歯ぐきでつぶせるほど軟化した。比較例13−1は魚の筋繊維質が感じられ硬く、比較例13−2も比較例13−1と同様の硬さであった。比較例13−1の含浸物質溶液にはキサンタンガム添加により粘性があり、食材を110秒浸漬しただけでは食材内部には物質が浸透しにくいと考えられた。一方、実施例13−1では、加熱した真鱈を減圧処理して急速に減圧処理しているため食材内の水分の相転移により強力な含浸駆動力が発生し、同時に物質保持基材には含浸物質排出力が発生しており、キサンタンガム添加の粘性にかかわらず食材中心部まで物質が浸透するした。また加工デンプンも含浸され、食材の酵素失活加熱により食材内で糊化したものと考えられた。実際、実施例13−2も十分に軟らかいが、実施例13−1の方がジューシーさが感じられ、また和風だしが浸み込み、より美味しさが感じられた。
[試験例14]
(実施例14)
<基材準備>
・基材の種類:パルプ製
・基材のサイズ:縦24cm、横9cmの長方形にカットして使用した。基材の厚みは1.4mm、重量は1.46gであった。
・基材の吸収・排出性能:最大吸収性能20.94g/1g基材であり、最大排出性能3.57g/1g基材であった。
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.生の1cm厚のダイコン(半月切り)を準備した。
2.98℃設定のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製)で40分加熱した。
3.室温まで放冷したあと、−20℃で一晩以上冷凍して、物質含浸用食材を調製した。
<含浸物質溶液調製>
・和風だし(割烹つゆ、(株)ミツカン製)を水で3倍希釈して調味液とした。
<物質保持基材の作製>
上記で準備した基材に、含浸物質溶液(和風調味液)25gを滴下して吸収させ、物質保持基材を作製した。
<減圧装置>
減圧装置は(株)古川製作所製の小型真空包装機「FVCII−LAB」を使用した。
<減圧処理>
以下の手順で減圧処理を行って、食材内に物質を含浸した。
1.ダイコンを流水中で解凍した。
2.解凍したダイコン3個(合計42g)を沸騰水中で5分加熱し、加温ダイコンを得た。中心温度は90℃であった。物質保持基材の上に載せて二つ折りにし、ダイコンの上下を物質保持基材で挟んだ。
3.底面サイズが縦12cm、横9.5cmのアルミバットに試料を移し、すぐに減圧処理を行った。
3.減圧速度−7.8kPa/s(絶対値:7.8kPa/s)で2kPaまで減圧処理した。食材から激しい食材内水分の気化膨張に伴う水蒸気発生が見られた。
4.10秒間減圧庫内を密閉状態として減圧保持した。保持中に食材中からの水蒸気発生はおさまった。
5.5kPaまで緩慢開放した。緩慢開放速度は0.039kPa/sとし、5kPa到達後は急速開放して常圧まで復帰して調味ダイコンを得た。減圧開始から終了まで103秒であった。
(比較例14−1)
実施例14で調製したダイコンを流水中で解凍後、沸騰水中で5分加熱したダイコンを作製した。得られた食材をダイコンをコントロールとした。
(比較例14−2)
実施例14で調製したダイコンを流水中で解凍後、沸騰水中で5分加熱したダイコンを作製した。すぐに、同じく実施例14で作製した物質保持基材にダイコン3個を載せ、二つ折りにして挟んだ。実施例14とは異なり、減圧処理せずに103秒間基材で挟んで調味ダイコンを作製した。
(比較例14−3)
実施例14で調製したダイコンを流水中で解凍後、沸騰水中で5分加熱したダイコンを、ダイコンが十分浸かる量の調味液100gに103秒浸漬して調味ダイコンを作製した。
上記で作製した調味ダイコン(調味なしのコントロール含む)の外観及び内部への調味料の浸透具合を示す食材表面及び食材断面の写真を、それぞれ図8及び図9に示した。また官能試験結果を表14に示した。
(結果)
実施例14ではダイコン中心部まで調味液が浸透し、短時間で中まで調味された美味しい調味ダイコンが作製できた。一方、基材で食材を挟んだ比較例14−2では、減圧処理がなく含浸駆動力も排出駆動力も発生しないため、ほとんど調味されなかった。比較例14−3では十分量の調味液に浸漬したためダイコン表面の一部には調味液が浸透した。しかし、官能試験では、味の浸みた部位にムラがあり、味付けが薄く、十分な美味しさを感じることができなかった。
11、21、31、41、51、61、71 食材
12、22、32、42、52、62、72 物質保持基材
30、60、70、76 包装容器
43、53 吸収材
44、54 外面材
55 表面材
<試料調製>
以下の手順で食材を調製した。
1.市販の豚ヒレ肉を−20℃で一晩以上冷凍した。
2.解凍した豚ヒレ肉を1cm厚にスライスした。
3.スライスした豚ヒレ肉を縦5cm、横4cm、高さ1cmの直方体にカットした。カットした豚ヒレ肉の重量は、約11〜15gであった。
4.カットした豚ヒレ肉を筋切機(JACCARD製)でテンダライズして、物質含浸用食材を調製した。

Claims (16)

  1. 含浸する物質を保持した物質保持基材と食材とを同時に減圧処理することにより、物質保持基材には内部構造変化による物質排出駆動力を、食材には食材内部の気体体積変化による物質含浸駆動力を発生させて、前記物質保持基材から前記食材内部へ物質を供給することを特徴とする、食材への物質含浸方法。
  2. 前記物質保持基材が、気体又は気体を発生する液体を含有し、かつ、多孔質構造である、請求項1に記載の食材への物質含浸方法。
  3. 前記物質保持基材が、基材の重量1g当たり、5g以上の最大吸収性能及び0.01g以上の最大排出性能を有する、請求項1又は2に記載の食材への物質含浸方法。
  4. 前記物質保持基材が、天然繊維素材、合成繊維素材、天然樹脂素材、合成樹脂素材、生分解性プラスチック、あるいはそれら複数の素材を組み合わせた複合素材で作製された基材である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  5. 前記物質保持基材への物質付着方法が、抄紙法、浸漬法、含浸法、塗布法、点滴法、グラビア印刷法、化学修飾法、又はそれらから選ばれる一つ以上を組み合わせた方法である、、請求項1〜4のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  6. 前記物質保持基材への物質付着方法において、バインダーとして増粘剤、糖類、タンパク質、油脂又は乳化剤を用いる、請求項5に記載の食材への物質含浸方法。
  7. 前記物質保持基材が、乾燥状態又は湿潤状態である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  8. 前記物質保持基材が、複数の材質からなる積層構造である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  9. 前記減圧処理が、50kPa以下の圧力で実施される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  10. 減圧状態にある前記物質保持基材と前記食材とを押圧処理することにより、前記物質排出駆動力と前記物質含浸駆動力とをさらに高める、請求項1〜9のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  11. 前記食材に、冷凍、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、加圧加熱、焼成加熱、ジュール加熱、テンダライズ(筋切り)、タンブリング、圧延、脱水、乾燥、酸処理、アルカリ処理、及び酵素処理からなる群から選択される少なくとも一種の前処理を実施する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  12. 前記食材が加温された状態で、前記減圧処理を実施する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  13. 前記基材に保持される物質が、タンパク質、油脂、酵素、多糖類、増粘剤、乳化剤、澱粉、及び微生物からなる群から選択される少なくとも一種の高分子物質である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  14. 前記基材に保持される物質が、栄養成分、機能性成分、抗菌成分、香気成分、調味料成分、酸化防止剤、着色料、酸味料、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、及び医療用造影剤からなる群から選択される少なくとも一種の食品素材である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  15. 前記物質保持基材と前記食材とを軟質容器に入れた状態で前記減圧処理を実施する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。
  16. 請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法により得られた物質含浸食材を用いて、チルド食品、冷凍食品、乾燥食品、及び常温流通食品からなる群から選択される物質含浸加工食品を製造することを特徴とする、物質含浸加工食品の製造方法。
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