以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる負極を例示する図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿う断面図、図1(c)は図1(b)の部分拡大断面図である。図1を参照すると、負極10は、負極用電極基体11と、負極用電極基体11上に形成された負極合材層12と、負極合材層12上に形成された絶縁層13とを有する構造である。負極10の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状等が挙げられる。なお、絶縁層13は必須の構成要素ではなく、必要に応じて設ければよい。
負極10において、負極合材層12は、第1の粒子である負極活物質121と、第2の粒子122とを有している。負極活物質121は互いに接しており、第2の粒子122は互いに接する負極活物質121同士が形成する空隙部に充填されている。
第2の粒子122の充填重量比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、負極活物質121の重量に対する第2の粒子122の重量の比率は0.005以上0.5以下とすることが好ましく、0.02以上0.5以下とすることが更に好ましい。負極活物質121の重量に対する第2の粒子122の重量の比率が0.005以上0.5以下であれば負極活物質121同士が形成する空隙部にのみ充填される効果を得ることができ(空隙部以外に第2の粒子122が存在しない)、0.02以上0.5以下であれば更に第2の粒子122が高密度に充填されるため電極を高密度化する効果を得ることができる。
レーザ回折法で測定した負極活物質121の平均粒子径に対する、レーザ回折法で測定した第2の粒子122の平均粒子径の比率は、0.0005以上0.25以下であることが好ましい。負極活物質121の平均粒子径に対する第2の粒子122の平均粒子径の比率がこの範囲であれば、負極活物質121同士が形成する空隙部へ第2の粒子122が充填される効果を得ることができる(これよりも第2の粒子122が大きい場合は、負極活物質121同士が形成する空隙部へ第2の粒子が充填されにくくなる)。
絶縁層13は、負極合材層12の上面及び側面を被覆するように形成された多孔質体である。絶縁層13は、内部に互いに連通する多数の空孔を有してもよい。絶縁層13は、負極合材層12の上面及び側面を直接被覆する平坦部13aと、平坦部13aの上面から部分的に突起する突起部13bとを有している。平坦部13aと突起部13bとは同一材料により一体に形成されており、平坦部13aと突起部13bにより、負極合材層12上に膜厚に薄い部分と厚い部分がある凹凸構造が形成されている。
絶縁層13において、平坦部13aの厚さ(負極合材層12の上面から平坦部13aの上面までの厚さ)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.5〜5μm程度とすることができる。又、突起部13bの厚さ(負極合材層12の上面から突起部13bの上面までの厚さ)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2〜10μm程度とすることができる。
突起部13bは、平坦部13aの上面に規則的なパターンとして形成されていることが好ましい。突起部13bは、例えば、ドット状のパターンに形成することができる。この場合、突起部13bの平面形状(負極用電極基体11の上面の法線方向から視た形状)は、例えば円形とすることができるが、楕円形、矩形、多角形等の任意の形状として構わない。
突起部13bの平面形状が円形である場合、突起部13bの径(1つのドットの径)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、20〜100μm程度とすることができる。
なお、図1では、絶縁層13が負極合材層12の上面及び側面を被覆するように形成されているが、絶縁層13は負極合材層12の上面を被覆し側面を露出するように形成されてもよい。
又、絶縁層13は、膜厚に薄い部分と厚い部分がある凹凸構造を有していれば、突起部13bは任意のパターンとして構わない。すなわち、突起部13bはドット状のパターンに代えて格子状のパターンとしてもよいし、その他の任意のパターンとしてもよい。
又、絶縁層13の少なくとも一部が負極合材層12の内部に存在し、負極合材層12を構成する活物質の表面に一体化されてもよい。特に、負極合材層12の表面が粗い場合に、このような状態になる場合がある。ここで、一体化とは、下層上に上層として単にフィルム形状等の部材を積層した状態ではなく、上層の一部が下層に入り込み、界面が明確でない状態で上層を構成する物質の表面と下層を構成する物質の表面とが結着している状態である。
図2は、第1の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる正極を例示する図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のB−B線に沿う断面図、図2(c)は図2(b)の部分拡大断面図である。図2を参照すると、正極20は、正極用電極基体21と、正極用電極基体21上に形成された正極合材層22とを有する構造である。正極20は、正極合材層22上に絶縁層を有していないが、絶縁層13と同様の構造の絶縁層を有してもよい。正極20の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状等が挙げられる。
正極20において、正極合材層22は、第1の粒子である正極活物質221と、第2の粒子222とを有している。正極活物質221は互いに接しており、第2の粒子222は互いに接する正極活物質221同士が形成する空隙部に充填されている。
第2の粒子222の充填重量比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、正極活物質221の重量に対する第2の粒子222の重量の比率は0.005以上0.5以下とすることが好ましく、0.02以上0.5以下とすることが更に好ましい。正極活物質221の重量に対する第2の粒子222の重量の比率が0.005以上0.5以下であれば正極活物質221同士が形成する空隙部にのみ充填される効果を得ることができ(空隙部以外に第2の粒子222が存在しない)、0.02以上0.5以下であれば更に第2の粒子222が高密度に充填されるため電極を高密度化する効果を得ることができる。
レーザ回折法で測定した正極活物質221の平均粒子径に対する、レーザ回折法で測定した第2の粒子222の平均粒子径の比率は、0.0005以上0.25以下であることが好ましい。正極活物質221の平均粒子径に対する第2の粒子222の平均粒子径の比率がこの範囲であれば、正極活物質221同士が形成する空隙部へ第2の粒子222が充填される効果を得ることができる(これよりも第2の粒子222が大きい場合は、正極活物質221同士が形成する空隙部へ第2の粒子が充填されにくくなる)。
図3は、第1の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる電極素子を例示する断面図である。図3を参照すると、電極素子40は、負極15の両側にセパレータ30を介して正極25が積層された構造である。又、両側の正極25の更に外側に、非水電解液蓄電素子を形成したときに外装52と絶縁するためのセパレータ30が設けられている。負極用電極基体11には負極引き出し線41が接続されている。正極用電極基体21には正極引き出し線42が接続されている。
負極15は、負極用電極基体11の両側に負極合材層12と絶縁層13が形成された点が負極10(図1参照)と相違し、その他の点は負極10と同様である。正極25は、正極用電極基体21の両側に正極合材層22が形成された点が正極20(図2参照)と相違し、その他の点は正極20と同様である。
なお、電極素子40において、負極15と正極25の積層数は任意に決定することができる。すなわち、図3では、1つの負極15と2つの正極25の合計3層を図示しているが、これには限定されず、更に多くの負極15及び正極25を積層することができる。その際、負極15の個数と正極25の個数が同一であってもよい。
図4は、第1の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子を例示する断面図である。図4を参照すると、非水電解液蓄電素子1は、電極素子40に非水電解液を注入して電解質層51を形成し、外装52で封止した構造である。非水電解液蓄電素子1において、負極引き出し線41及び正極引き出し線42は、外装52の外部に引き出されている。非水電解液蓄電素子1は、必要に応じてその他の部材を有してもよい。非水電解液蓄電素子1としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非水電解液二次電池、非水電解液キャパシタ等が挙げられる。
非水電解液蓄電素子1の形状については、特に制限はなく、一般的に採用されている各種形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができる。例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。
以下、非水電解液蓄電素子1について詳説する。なお、負極と正極とを総称して電極、負極用電極基体と正極用電極基体とを総称して電極基体、負極合材層と正極合材層とを総称して電極合材層と称する場合がある。
<電極>
<<電極基体>>
負極用電極基体11の材質としては、導電性材料で形成されたものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅等が挙げられる。これらの中でも、ステンレススチール、銅が特に好ましい。
負極用電極基体11の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。負極用電極基体11の大きさとしては、非水電解液蓄電素子1に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
正極用電極基体21の材質としては、導電性材料で形成されたものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン、タンタル等が挙げられる。これらの中でも、ステンレススチール、アルミニウムが特に好ましい。
正極用電極基体21の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。正極用電極基体21の大きさとしては、非水電解液蓄電素子1に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<<電極合材層>>
負極合材層12及び正極合材層22は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活物質(負極活物質121又は正極活物質221)を少なくとも含み、必要に応じて高分子(結着剤)、増粘剤、導電剤等を含んでもよい。
負極合材層12の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、負極合材層12の平均厚みは10μm以上450μm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましい。負極合材層12の平均厚みが10μm未満であると、エネルギー密度が低下することがあり、450μmを超えるとサイクル特性が悪化してしまうことがある。
負極合材層12に含まれる負極活物質121としては、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。負極合材層12に含まれる負極活物質121としては、例えば、炭素質材料を用いることができる。炭素質材料としては、例えば、コークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物、非晶質カーボン等が挙げられる。これらの中でも、人造グラファイト、天然グラファイト、非晶質カーボンが特に好ましい。
負極合材層12に含まれる第2の粒子122としては、活物質、導電助剤、無機粒子、高分子、増粘剤から目的に応じて1種類以上適宜選択することができる。
第2の粒子122に活物質を用いる場合は、単位体積あたりの活物質重量を増加させることができるので、高エネルギー密度の電極が形成できる。第2の粒子122が活物質である場合、例えば、負極活物質121として例示した物質と同様の物質を用いることができる。
第2の粒子122に導電助剤を用いる場合は、活物質と活物質の導電パスが向上するため、非水電解液蓄電素子1の入出力特性(レート特性)が向上する。第2の粒子122が導電助剤である場合、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、黒鉛、グラフェン等を用いることができる。
第2の粒子122に無機粒子を用いる場合は、負極合材層12におけるリチウム拡散性を向上させることができる。第2の粒子122が無機粒子である場合、例えば、ケイ素元素、アルミニウム元素及びジルコニウム元素から選ばれる少なくとも一種の元素等を用いることができる。
第2の粒子122に高分子を用いる場合は、電極の結着力を向上させ、電極の物理強度を向上させる効果を得ることができる。第2の粒子122が高分子である場合、例えば、負極又は正極の高分子として後述する物質と同様の物質を用いることができる。
第2の粒子122に増粘剤を用いる場合は、電極の結着力と柔軟性を向上させ、電極の物理強度を向上させる効果を得ることができる。第2の粒子122が増粘剤である場合、例えば、CMC等を用いることができる。
第2の粒子222が活物質、導電助剤、無機粒子、高分子、増粘剤の混合物の場合は、単独で使用する場合と同様の効果が同時に得られる。
正極合材層22の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、正極合材層22の平均厚みで10μm以上300μm以下が好ましく、40μm以上150μm以下がより好ましい。正極合材層22の平均厚みが20μm未満であると、エネルギー密度が低下することがあり、300μmを超えると負荷特性が悪化してしまうことがある。
正極合材層22に含まれる正極活物質221としては、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。正極合材層22に含まれる正極活物質221としては、例えば、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、LiNiXCoYMnZO2(x+y+z=1)であるリチウムNi複合酸化物、LiXMeY(PO4)Z(0.5≦x≦4、Me=遷移金属、0.5≦y≦2.5、0.5≦x≦3.5)を基本骨格とするリチウムリン酸系材料等を用いることができる。
LiNiXCoYMnZO2(x+y+z=1)であるリチウムNi複合酸化物としては、例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.2Mn0O2等が挙げられる。
LiXMeY(PO4)Z(0.5≦x≦4、Me=遷移金属、0.5≦y≦2.5、0.5≦x≦3.5)を基本骨格とするリチウムリン酸系材料としては、例えば、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)、オリビン鉄(LiFePO4)、オリビンマンガン(LiMnPO4)、オリビンコバルト(LiCoPO4)、オリビンニッケル(LiNiPO4)、オリビンバナジウム(LiVOPO4)、及びこれらを基本骨格とし、異種元素をドープした類似化合物等が挙げられる。
正極合材層22に含まれる第2の粒子222としては、活物質、導電助剤、無機粒子、高分子、増粘剤から目的に応じて1種類以上適宜選択することができる。
第2の粒子222に活物質を用いる場合は、単位体積あたりの活物質重量を増加させることができるので、高エネルギー密度の電極が形成できる。第2の粒子222が活物質である場合、例えば、正極活物質221として例示した物質と同様の物質を用いることができる。
第2の粒子222に導電助剤を用いる場合は、活物質と活物質の導電パスが向上するため、非水電解液蓄電素子1の入出力特性(レート特性)が向上する。第2の粒子222が導電助剤である場合、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、黒鉛、グラフェン等を用いることができる。
第2の粒子222に無機粒子を用いる場合は正極合材層22中のリチウム拡散性を向上させることができる。第2の粒子222が無機粒子である場合、例えば、ケイ素元素、アルミニウム元素及びジルコニウム元素から選ばれる少なくとも一種の元素等を用いることができる。
第2の粒子222に高分子を用いる場合は、電極の結着力を向上させ、電極の物理強度を向上させる効果を得ることができる。第2の粒子122が高分子である場合、例えば、負極又は正極の高分子として後述する物質と同様の物質を用いることができる。
第2の粒子222が活物質、導電助剤、無機粒子、高分子、増粘剤の混合物の場合は、単独で使用する場合と同様の効果が同時に得られる。
負極又は正極の高分子(結着剤)には、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース等が使用可能である。
又、メガファック(DIC株式会社製)、マリアリム(日油株式会社製)、エスリーム(日油株式会社製)、ソルスパース(Lubrizol社製)、ポリフロー(共栄社化学株式会社製)等が使用可能である。
又、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。又、これらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
電極合材層に含ませる導電剤及び第2粒子の導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の有機導電性材料等が用いられる。
燃料電池での活物質は一般に、カソード電極やアノード電極の触媒として、白金、ルテニウム或いは白金合金等の金属微粒子をカーボン等の触媒担体に担持させたものを用いる。触媒担体の表面に触媒粒子を担持させるには、例えば触媒担体を水中に懸濁させ、触媒粒子の前駆体(例えば、塩化白金酸、ジニトロジアミノ白金、塩化第二白金、塩化第一白金、ビスアセチルアセトナート白金、ジクロロジアンミン白金、ジクロロテトラミン白金、硫酸第二白金塩化ルテニウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化クロム、塩化金、硝酸銀、硝酸ロジウム、塩化パラジウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化銅等の合金成分を含むもの等)を添加し、懸濁液中に溶解させアルカリを加え金属の水酸化物を生成させると共に、触媒担体表面に担持させた触媒担体を得る。かかる触媒担体を電極基体上に塗布し、水素雰囲気下等で還元させることで、表面に触媒粒子(活物質)が塗布された電極合材層を得る。
太陽電池等の場合、活物質は、酸化タングステン粉末や酸化チタン粉末のほかSnO2、ZnO、ZrO2、Nb2O5、CeO2、SiO2、Al2O3といった酸化物半導体層が挙げられ、半導体層には、色素が担持させられており、例えば、ルテニウム・トリス型の遷移金属錯体、ルテニウム−ビス型の遷移金属錯体、オスミウム−トリス型の遷移金属錯体、オスミウム−ビス型の遷移金属錯体、ルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体、フタロシアニン及びポルフィリン、有機−無機のペロブスカイト結晶等の化合物を挙げることができる。
<<絶縁層>>
絶縁層13は、下地層上にインクジェット法等により絶縁層作製用のインクを塗布し、塗布したインクを乾燥させることで形成できる。
多孔質体である絶縁層13は、絶縁性を有する粒子と、絶縁性を有する粒子同士を結着させる高分子とを含むことができる。絶縁性を有する粒子としては、例えば、無機材料(無機物)や有機材料(有機物)が挙げられる。以下、具体的な例について説明する。
第1の例として、絶縁層13は、絶縁性を有する無機材料が分散している液体からなる絶縁層作製用のインクを用いて形成することができる。絶縁性を有する無機材料としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、その他の金属微粒子が挙げられる。金属酸化物として、Al2O3(アルミナ)、TiO2、BaTiO3、ZrO2等が好ましい。
金属窒化物として、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が好ましい。その他の金属微粒子として、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶微粒子、或いはベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト等の鉱物資源由来物質又はそれらの人造物等が好ましい。
又、絶縁性を有する無機材料として、ガラスセラミック粉末が挙げられる。ガラスセラミック粉末は、ZnO−MgO−Al2O3−SiO2系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラスセラミック、BaO−Al2O3−SiO2系セラミック粉末やAl2O3−CaO−SiO2−MgO−B2O3系セラミック粉末等を用いた非ガラス系セラミックが好ましい。
イオン伝導性がある元素を用いることが更に好ましい。具体的には、無機粒子として、例えば、イオン伝導性があるケイ素元素、アルミニウム元素、及びジルコニウム元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む材料を用いることができる。
より好ましくはAl2O3(アルミナ)を用いることができる。アルミナを用いれば、高絶縁性、高耐熱性の無機粒子層を安価に形成することができる。これらの無機粒子を用いることで、非水電解液蓄電素子1の内部短絡を抑制し、非水電解液蓄電素子1の安全性を向上させることができる。また、無機粒子表面においてイオン伝導するため、無機粒子層中のイオン伝導性を向上させることができる。これにより、非水電解液蓄電素子1の入出力特性を向上させることができる。
これらの無機材料の粒径は、10μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。無機粒子の平均粒子径が小さい方が、無機粒子の表面積が増大し、無機粒子の使用量が少ない場合でもリチウムイオンの伝導効果を得られる。なお、無機粒子の平均粒子径は、レーザ回折法により測定することができる。
以上の無機材料を溶媒に分散させ、絶縁層作製用のインクとする。溶媒は、分散させる無機材料に適した溶媒を選定する。具体的には、水、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒を用いることができる。
無機材料を溶液に分散させる際に、高分子を添加する。高分子は、無機材料を絶縁層として構造を保持させるため、無機材料の微粒子間を固着する機能を有する。
高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース等が使用可能である。
又、メガファック(DIC株式会社製)、マリアリム(日油株式会社製)、エスリーム(日油株式会社製)、ソルスパース(Lubrizol社製)、ポリフロー(共栄社化学株式会社製)等が使用可能である。
又、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。又、これらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
絶縁層作製用のインクを調合するときに、ホモジナイザーを用いて分散させても良い。ホモジナイザーは、高速回転せん断攪拌方式、高圧噴射分散方式、超音波分散方式、媒体攪拌ミル方式等を用いることができる。
絶縁層作製用のインクを調合するときに、必要に応じて粘度を調整する増粘材を用いても良い。増粘材としては、例えば、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、エチレングリコール等を用いることができる。
第2の例として、絶縁層13は、絶縁性を有する有機材料が分散している液体からなる絶縁層作製用のインクを用いて形成することができる。
絶縁性を有する有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の絶縁性を有する樹脂の微粒子が好ましい。アクリル樹脂としてPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等、フッ素樹脂としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等が好ましい。これらの有機材料の粒径は、10μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
以上の有機材料を溶媒に分散させ、絶縁層作製用のインクとする。溶媒は、分散させる有機材料に適した溶媒を選定する。具体的には、水、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒を用いることができる。
有機材料を溶液に分散させる際に、高分子を添加する。高分子は、有機材料が絶縁層として構造を保持させるため、有機材料の微粒子間を固着する機能を有する。
高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース等が使用可能である。
又、メガファック(DIC株式会社製)、マリアリム(日油株式会社製)、エスリーム(日油株式会社製)、ソルスパース(Lubrizol社製)、ポリフロー(共栄社化学株式会社製)等が使用可能である。
又、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。又、これらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
絶縁層作製用のインクを調合するときに、ホモジナイザーを用いて分散させても良い。ホモジナイザーは、高速回転せん断攪拌方式、高圧噴射分散方式、超音波分散方式、媒体攪拌ミル方式等を用いることができる。
絶縁層作製用のインクを調合するときに、必要に応じて粘度を調整する増粘材を用いても良い。増粘材としては、例えば、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、エチレングリコール等を用いることができる。
第3の例として、絶縁層13は、電離放射線又は赤外線による重合開始剤と、重合性化合物とを含有する前駆体と、を液体に溶解した絶縁層作製用のインクを用いて形成することができる。
重合性化合物は多孔質構造体を形成するための樹脂の前駆体に該当し、光の照射や熱によって架橋性の構造体形成が可能である樹脂であれば何でもよいが、例えば、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル、エン-チオール反応を活用した樹脂、中でも特に、反応性の高さからラジカル重合を利用して構造体を形成が容易なアクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂が生産性の観点から好ましい。
上記樹脂は、光又は熱によって硬化できる機能として、重合性モノマーと、光又は熱によってラジカル又は酸を発生する化合物を混合した混合物を調液することで得ることができる。又、重合誘起相分離により絶縁層13を形成するためには、上記混合物に、予めポロジェンを混合させたインクを作製すればよい。
重合性化合物は少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有する。その例としては、1官能、2官能、又は3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー、ラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が特に好ましい。
前記1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマー等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤としては、光ラジカル発生剤を用いることができる。例えば、商品名イルガキュアーやダロキュアで知られるミヒラーケトンやベンゾフェノンのような光ラジカル重合開始剤、より具体的な化合物としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体、例えばα−ヒドロキシ−もしくは、α−アミノセトフェノン、4−アロイル−1,3−ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp'−ジクロロベンゾフェン、pp'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメート、ゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインn−プロピル等のベンゾインアルキルエ−テルやエステル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンモノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド又はチタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントン又はキサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物又はジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物、等が好適に使用される。
更に、ビスアジド化合物のような光架橋型ラジカル発生剤を同時に含有させても構わない。又、熱のみで重合させる場合は通常の光ラジカル発生剤であるA(AIBN)等の通常の熱重合開始剤を使用することができる。
一方、光照射により酸を発生する光酸発生剤と、酸の存在下で重合する少なくとも1種のモノマーとで混合物を調整しても同様の機能を達成することができる。このような液体インクに光を照射すると、光酸発生剤が酸を発生し、この酸は重合性化合物の架橋反応の触媒として機能する。
又、発生した酸はインク層内で拡散する。しかも、酸の拡散及び酸を触媒とした架橋反応は、加熱することにより加速可能であり、この架橋反応はラジカル重合とは異なって、酸素の存在によって阻害されることがない。得られる樹脂層は、ラジカル重合系の場合と比較して密着性にも優れる。
酸の存在下で架橋する重合性化合物は、エポキシ基、オキセタン基、オキソラン基等のような環状エーテル基を有する化合物、上述した置換基を側鎖に有するアクリル又はビニル化合物、カーボネート系化合物、低分子量のメラミン化合物、ビニルエーテル類やビニルカルバゾール類、スチレン誘導体、アルファ−メチルスチレン誘導体、ビニルアルコールとアクリル、メタクリル等のエステル化合物をはじめとするビニルアルコールエステル類等、カチオン重合可能なビニル結合を有するモノマー類を併せて使用することが挙げられる。
光照射により酸を発生する光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ジアゾニウム塩、キノンジアジド化合物、有機ハロゲン化物、芳香族スルフォネート化合物、バイスルフォン化合物、スルフォニル化合物、スルフォネート化合物、スルフォニウム化合物、スルファミド化合物、ヨードニウム化合物、スルフォニルジアゾメタン化合物、及びそれらの混合物等を使用することができる。
中でも光酸発生剤としては、オニウム塩を使用することが望ましい。使用可能なオニウム塩としては、例えば、フルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロヒ素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、パラトルエンスルホネートアニオン、及びパラニトロトルエンスルホネートアニオンを対イオンとするジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、及びスルホニウム塩を挙げることができる。又、光酸発生剤は、ハロゲン化トリアジン化合物でも使用できる。
光酸発生剤は、場合によって、増感色素を更に含んでいてもよい。増感色素としては、例えば、アクリジン化合物、ベンゾフラビン類、ペリレン、アントラセン、及びレーザ色素類等が挙げられる。
ポロジェンは、硬化後の多孔質絶縁層中に空孔を形成するために混合される。ポロジェンとしては、前記重合性モノマー及び光又は熱によってラジカル又は酸を発生する化合物を溶解可能であり、かつ、前記重合性モノマー及び光又は熱によってラジカル又は酸を発生する化合物が重合していく過程で、相分離を生じさせることが可能な液状物質ならば任意に選択可能である。
ポロジェンとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール類、γブチロラクトン、炭酸プロピレン等エステル類、NNジメチルアセトアミド等のアミド類等を挙げることができる。
又、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル、テトラデカン等の比較的分子量の大きな液状物質もポロジェンとして機能する傾向がある。中でも特に、エチレングリコール類は高沸点のものも多く存在する。相分離機構は形成される構造体が、ポロジェンの濃度に大きく依存する。そのため、上記液状物質を使用すれば、安定した多孔質絶縁層の形成が可能となる。又、ポロジェンは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<セパレータ>
セパレータ30は、負極と正極との短絡を防ぐために負極と正極との間に設けられている。セパレータ30は、イオン透過性を有し、かつ電子伝導性を持たない絶縁層である。セパレータ30の材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて 適宜選択することができる。
セパレータ30の材質としては、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトフロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、ポリエチレン系微多孔膜、ポリプロピレン系微多孔膜等が挙げられる。これらの中でも、非水電解液を保持する観点から、気孔率が50%以上のものが好ましい。
セパレータ30の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましい。セパレータ30の平均厚みが3μm以上であれば、負極と正極とを確実に短絡防止できる。又、セパレータ30の平均厚みが50μm以下であれば、負極と正極とが離れ過ぎることによる負極と正極との間の電気抵抗の増加を防止できる。
セパレータ30の平均厚みが5μm以上であれば、負極と正極とをより確実に短絡防止できる。又、セパレータ30の平均厚みが30μm以下であれば、負極と正極とが離れ過ぎることによる負極と正極との間の電気抵抗の増加をいっそう防止できる。
セパレータ30の形状としては、例えば、シート状等が挙げられる。セパレータ30の大きさとしては、蓄電素子に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。セパレータ30の構造は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
<電解質層>
電解質層51を構成する非水電解液は、非水溶媒及び電解質塩を含有する電解液である。非水溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非プロトン性有機溶媒が好適である。非プロトン性有機溶媒としては、鎖状カーボネート、環状カーボネート等のカーボネート系有機溶媒が用いられる。鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、メチルプロピオネート(MP)等が挙げられる。
環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等が挙げられる。環状カーボネートとしてエチレンカーボネート(EC)と、鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネート(DMC)とを組み合わせた混合溶媒を用いる場合には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、非水溶媒としては、必要に応じて、環状エステル、鎖状エステル等のエステル系有機溶媒、環状エーテル、鎖状エーテル等のエーテル系有機溶媒等を用いることができる。
環状エステルとしては、例えば、γ−ブチロラクトン(γBL)、2−メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。
鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル(酢酸メチル(MA)、酢酸エチル等)、ギ酸アルキルエステル(ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル等)等が挙げられる。
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン等が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、例えば、1,2−ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
電解質塩としては、リチウム塩を用いることができる。リチウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、塩化リチウム(LiCl)、ホウ弗化リチウム(LiBF4)、六弗化砒素リチウム (LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチムビストリフルオロメチルスルホニルイミド(LiN(C2F5SO2)2)、リチウムビスファーフルオロエチルスルホニルイミド(LiN(CF2F5SO2)2)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素電極中へのアニオンの吸蔵量の大きさの観点から、LiPF6が特に好ましい。
電解質塩の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非水溶媒中に、0.7mol/L以上4mol/L以下が好ましく、1.0mol/L以上3mol/L以下がより好ましく、蓄電素子の容量と出力の両立の点から、1.0mol/L以上2.5mol/L以下がより好ましい。
<非水電解液蓄電素子の製造方法>
図5は、塗布装置について説明する図である。塗布装置100は、送り出しローラ110と、搬送ローラ150及び160と、巻き取りローラ210とを有しており、ロール状の電極基体上に活物質層を形成し、続いて、第2の粒子を活物質と活物質の空隙部に充填して、負極合材層及び正極合材層を形成することができる。又、塗布装置100は、電極基体上に多孔質の絶縁層を形成することができる。
送り出しローラ110と搬送ローラ150及び160との間には、インクジェットヘッド120、UVランプ130、及び加熱ヒータ140が配置されている。又、搬送ローラ150及び160と巻き取りローラ210との間には、インクジェットヘッド220、UVランプ230、及び加熱ヒータ240が配置されている。
塗布装置100は、活物質の位置を検出し、検出した活物質の位置に合わせて絶縁層を形成する機構を有していても良い。
以下、図5及び他の図を参照しながら、非水電解液蓄電素子1の製造方法について説明する。
−負極及び正極の作製−
まず、図6(a)から図6(c)に示す工程では、図4に示す負極15を作製する。具体的には、まず、図6(a)に示すように、負極用電極基体11を準備する。負極用電極基体11の材料等については前述の通りである。
次に、図6(b)に示すように、負極用電極基体11上に負極活物質121を形成する。具体的には、例えば、グラファイト粒子等の負極活物質と、セルロース等の増粘剤と、アクリル樹脂等を高分子として水中に均一に分散して負極活物質分散体を作製する。そして、作製した負極活物質分散体を負極用電極基体11上に塗布し、得られた塗膜を乾燥させ、負極活物質121の層(塗布膜)を作製することができる。負極活物質121の層において、負極活物質121同士は互いに接する。なお、図6(b)において矢印下側の図は、矢印上側の図の部分拡大図である。
次に、図6(c)に示すように、互いに接する負極活物質121同士が形成する空隙部に第2の粒子122を充填し、負極合材層12を作製する。第2の粒子122を充填する工程に使用するインクの粘度は、5〜20mPa・sの範囲が好ましく、10〜12mPa・sの範囲がより好ましい。上記の粘度になるように、インクに更に粘度を調整するための増粘材を添加しても良い。増粘材としては、カルボキシメチルセルロース等を用いることができる。なお、図6(c)において矢印下側の図は、矢印上側の図の部分拡大図である。
負極合材層12を形成する工程は、負極活物質121の前駆体溶液(負極活物質分散体)をインクジェットで塗布する工程を含むことができる。負極活物質121をインクジェットで形成する場合、まず、負極用電極基体11をロール状にし、図5に示す塗布装置100(インクジェット装置)の送り出しローラ110と巻き取りローラ210との間にセットする。そして、インクジェットヘッド120に負極活物質121の前駆体溶液であるインクを供給する。そして、負極用電極基体11を搬送ローラ150及び160で搬送しながら、インクジェットヘッド120でヘッドを加熱しないで負極用電極基体11の上面にインクを塗布して負極活物質121を形成する。
次に、インクジェットヘッド220に第2の粒子122の前駆体溶液であるインクを供給する。そして、負極活物質121が形成された負極用電極基体11を搬送ローラ150及び160で搬送しながら、インクジェットヘッド220でヘッドを加熱しないで負極活物質121の上面にインクを塗布して第2の粒子122を形成する。そして、紫外線硬化性インクの場合にはUVランプ230でインクの硬化を行い、熱硬化性インクの場合には加熱ヒータ240でインクの乾燥を行う。これにより、互いに接する負極活物質121同士が形成する空隙部に第2の粒子122を充填した負極合材層12が作製される。
図6(c)の工程において、インクの表面張力は、20〜50mN/mの範囲が好ましく、28〜35mN/mの範囲がより好ましい。上記の表面張力になるように、インクに更に界面活性剤を添加しても良い。界面活性剤として、メガファック(DIC株式会社製)等を用いることができる。インクは低粘度であるため、負極活物質121がつくる空隙部に浸透するため、空隙部にのみ第2の粒子を形成することができる。そして、作製した負極10は、目的の体積密度までプレスを行うことができる。例えば約100kNの力でプレスする。
次に、図6(d)に示すように、負極合材層12上に絶縁層13を形成する。絶縁層13は、負極合材層12上にインクを供給し、乾燥等させることで形成できる。絶縁層13の形成に使用するインクの粘度は、5〜20mPa・sの範囲が好ましく、10〜12mPa・sの範囲がより好ましい。上記の粘度になるように、インクに更に粘度を調整するための増粘材を添加しても良い。増粘材としては、カルボキシメチルセルロース等を用いることができる。
図6(d)の工程において、インクの表面張力は、20〜50mN/mの範囲が好ましく、28〜35mN/mの範囲がより好ましい。上記の表面張力になるように、インクに更に界面活性剤を添加しても良い。界面活性剤として、メガファック(DIC株式会社製)等を用いることができる。
絶縁層13を形成する工程は、絶縁層13の前駆体溶液をインクジェットで塗布する工程を含むことができる。絶縁層13をインクジェットで形成する場合、まず、負極合材層12が形成された負極用電極基体11をロール状にし、負極合材層12を上側に向けて、図5に示す塗布装置100(インクジェット装置)の送り出しローラ110と巻き取りローラ210との間にセットする。そして、インクジェットヘッド120と220に、例えば同じインクを供給する。
次に、負極合材層12が形成された負極用電極基体11を搬送ローラ150及び160で搬送しながら、インクジェットヘッド120でヘッドを加熱しないで負極合材層12の上面全面にインクを塗布して平坦部13aを形成する。次に、インクジェットヘッド220でヘッドを加熱しないで平坦部13aの上面に例えばドット状のパターンにインクを塗布して突起部13bを形成する。そして、紫外線硬化性インクの場合にはUVランプ230でインクの硬化を行い、熱硬化性インクの場合には加熱ヒータ240でインクの乾燥を行う。これにより、平坦部13aと、平坦部13aの上面から部分的に突起する突起部13bとを有する絶縁層13が作製される。なお、平坦部13aは、負極合材層12の上面のみを被覆するように形成してもよいし、負極合材層12の上面及び側面を被覆するように形成してもよい。
次に、図6(b)及び図6(c)と同様にして負極用電極基体11の反対側にも負極合材層12及び絶縁層13を形成することで、負極15が完成する。なお、図6(b)の工程で負極用電極基体11の両側に負極合材層12を形成し、図6(c)の工程で負極合材層12の両側に絶縁層13を積層形成してもよい。
なお、負極活物質121、第2の粒子122、及び絶縁層13は、インクジェットの他にダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、スプレー等を用いて形成してもよい。ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーターの方式は負極活物質121に接触或いは近接して塗布するため、第2の粒子122を均一に塗布するためには負極活物質121の塗布膜の平面性が求められる。又、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーターの方式は負極合材層12に接触或いは近接して塗布するため、絶縁層13を均一に塗布するためには負極合材層12の平面性が求められる。
スプレー、インクジェットは非接触で塗布することができるが、液滴サイズや液滴個数を制御することにより塗布量を緻密に制御できることからインクジェット以外の方式は適していない。インクジェットは、負極合材層12に対し非接触でインクを塗布するため、負極合材層12の平面性の影響を受けない。又、液滴サイズや液滴個数を制御することにより、薄い絶縁層13を形成するのに適している。
次に、図7(a)から図7(c)に示す工程では、図4に示す正極25を作製する。具体的には、まず、図7(a)に示すように、正極用電極基体21を準備する。正極用電極基体21の材料等については前述の通りである。
次に、図7(b)に示すように、正極用電極基体21上に正極活物質221を形成する。具体的には、例えば、ニッケル、コバルト、アルミの混合粒子等の正極活物質と、ケッチェンブラック等の導電助剤と、ポリフッ化ビニリデン等の高分子を、N−メチルピロリドン(NMP)等の溶媒中に均一に分散して、正極活物質分散体を作製する。そして、作製した正極活物質分散体を正極用電極基体21上に塗布し、得られた塗膜を乾燥させ、正極活物質221の層(塗布膜)を作製することができる。正極活物質221の層において、正極活物質221同士は互いに接する。なお、図7(b)において矢印下側の図は、矢印上側の図の部分拡大図である。
次に、図7(c)に示すように、互いに接する正極活物質221同士が形成する空隙部に第2の粒子222を充填し、正極合材層22を作製する。第2の粒子222を充填する工程は、正極活物質221上にインクを塗布することで作製することができる。第2の粒子222を充填する工程に使用するインクの粘度は、5〜20mPa・sの範囲が好ましく、10〜12mPa・sの範囲がより好ましい。上記の粘度になるように、インクに更に粘度を調整するための増粘材を添加しても良い。増粘材としては、カルボキシメチルセルロース等を用いることができる。なお、図7(c)において矢印下側の図は、矢印上側の図の部分拡大図である。
正極合材層22を形成する工程は、負極合材層12を形成する工程と同様に、インクジェットを用いることができる。図7(c)の工程において、インクの表面張力は、20〜50mN/mの範囲が好ましく、28〜35mN/mの範囲がより好ましい。上記の表面張力になるように、インクに更に界面活性剤を添加しても良い。界面活性剤として、メガファック(DIC株式会社製)等を用いることができる。インクは低粘度であるため、正極活物質221がつくる空隙部に浸透するため、空隙部にのみ第2の粒子を形成することができる。そして、作製した正極20は、目的の体積密度までプレスを行うことができる。例えば約100kNの力でプレスする。
次に、図7(b)及び図7(c)と同様にして正極用電極基体21の反対側にも正極合材層22を形成することで、正極25が完成する。なお、図7(b)の工程で正極用電極基体21の両側に正極合材層22を形成してもよい。
なお、正極活物質221及び第2の粒子222は、インクジェットの他にダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、スプレー等を用いて形成してもよい。ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーターの方式は正極活物質221に接触或いは近接して塗布するため、第2の粒子222を均一に塗布するためには正極活物質221の塗布膜の平面性が求められる。
スプレー、インクジェットは非接触で塗布することができるが、液滴サイズや液滴個数を制御することにより塗布量を緻密に制御できることからインクジェット以外の方式は適していない。
−電極素子、非水電解液蓄電素子の作製−
次に、電極素子及び非水電解液蓄電素子を作製する。まず、図8に示すように、負極15の一方の側の絶縁層13と正極25の正極合材層22とが、ポリプロピレン製の微多孔膜等からなるセパレータ30を介して対向するように、かつ、負極15の他方の側の絶縁層13と正極25の正極合材層22とが、ポリプロピレン製の微多孔膜等からなるセパレータ30を介して対向するように配置する。
次に、負極用電極基体11に負極引き出し線41を溶接等により接合し、正極用電極基体21に正極引き出し線42を溶接等により接合することで、図3に示す電極素子40を作製することができる。次に、電極素子40に非水電解液を注入して電解質層51を形成し、外装52で封止することで、図4に示す非水電解液蓄電素子1を作製することができる。
なお、前述のように、電極素子40において、負極15と正極25の積層数は任意に決定することができる。すなわち、図8では、1つの負極15と2つの正極25の合計3層を図示しているが、これには限定されず、更に多くの負極15及び正極25を積層することができる。
このように、本実施の形態に係る非水電解液蓄電素子1に用いる負極15及び正極25において、電極合材層を形成する工程は、電極基体上に活物質である第1の粒子の層を形成する第1工程と、第1の粒子同士が形成する空隙部に第2の粒子を充填する第2工程とを含む。この方法では、第1工程において、第1の粒子が互いに接して最密充填になるため、第1の粒子の密度を向上することができる。すなわち、正極及び負極における活物質の量を増加させることが可能となり、高エネルギー密度の電極が形成できる。その結果、高いエネルギー密度及び高容量の非水電解液蓄電素子1を実現できる。
なお、非水電解液蓄電素子1において、負極15及び正極25の何れか一方のみを用いた場合にも一定の効果を奏する。すなわち、負極及び正極の何れか一方が第2の粒子を有していない場合にも一定の効果を奏する。
又、第2工程において、第2の粒子が互いに接する第1の粒子同士が形成する空隙部に充填されるため、本実施の形態に係る非水電解液蓄電素子1に用いる負極15では、第2の粒子122は、負極活物質121と負極活物質121が形成する空隙部に存在する。そのため、以下の第1〜第3の効果を奏する。
第1に、負極15中に含まれる第2の粒子122が、負極活物質121と同じである場合は、負極合材層12の厚みを増大させることなく、空隙部に活物質を充填することが可能となり、単位体積あたりの活物質重量を更に増加させることができる。そのため、更に高エネルギー密度の電極が形成できる。その結果、更に高いエネルギー密度及び高容量の非水電解液蓄電素子1を実現できる。
第2に、第2の粒子122に導電助剤を用いる場合は、活物質と活物質の導電パスが向上する。その結果、充放電特性に優れた非水電解液蓄電素子1を実現できる。
第3に、第2の粒子122に無機粒子を用いる場合は、負極合材層12におけるリチウム拡散性を向上させることができる。その結果、充放電特性に優れた非水電解液蓄電素子1を実現できる。
又、第2工程において、第2の粒子が互いに接する第1の粒子同士が形成する空隙部に充填されるため、非水電解液蓄電素子1に用いる正極25では、第2の粒子222は、正極活物質221と正極活物質221が形成する空隙部に存在する。そのため、以下の第1及び第2の効果を奏する。
第1に、正極25中に含まれる第2の粒子222が、正極活物質221と同じである場合は、正極合材層22の厚みを増大させることなく、空隙部に活物質を充填することが可能となり、単位体積あたりの活物質重量を増加させることができる。そのため、高エネルギー密度の電極が形成できる。その結果、高いエネルギー密度及び高容量の非水電解液蓄電素子1を実現できる。
第2に、第2の粒子222に導電助剤を用いる場合は、活物質と活物質の導電パスが向上する。その結果、充放電特性に優れた非水電解液蓄電素子1を実現できる。
なお、従来のように、第1の粒子と第2の粒子とを予め混ぜてから電極基体上に塗布し乾燥させて電極合材層を形成する方法では、第1の粒子同士が必ずしも接するとは限らず、第1の粒子同士が接しない部分も多く形成される。すなわち、従来の方法では、第1の粒子が最密充填にならないため、第1の粒子の密度を向上することができない。その結果、正極及び負極における活物質の量を十分に増加させることができず、高エネルギー密度の電極を形成できなかった。
又、本実施の形態に係る非水電解液蓄電素子1に用いる負極15及び正極25において、第1の粒子の層を形成する工程と、第1の粒子同士が形成する空隙部に第2の粒子を充填する工程とは別工程である。その結果、充填する第2の粒子を適宜選択できるので、要求される非水電解液蓄電素子1の仕様に対して柔軟に対応することができる。
又、本実施の形態に係る非水電解液蓄電素子1に用いる負極15において、絶縁層13は、負極合材層12の上面全面を覆う平坦部13aと、平坦部13a上に部分的に形成された突起部13bとを有している。すなわち、絶縁層13は、膜厚に薄い部分(平坦部13aのみの部分)と厚い部分(平坦部13a及び突起部13bの部分)がある凹凸構造を有している。
負極15は、負極合材層12の上面が絶縁層13から露出する部分がなく、かつ、絶縁層13が膜厚の厚い部分を有しているため、耐絶縁性及び耐熱性に優れている。その結果、負極15を用いた非水電解液蓄電素子1では、例えば、正負極間で内部短絡が発生した場合や、釘のような鋭利な形状の突起物が突き刺さった場合等に、非水電解液蓄電素子1の発熱を抑制することが可能となり、安全性に優れた非水電解液蓄電素子1を実現できる。
又、負極15は、絶縁層13が膜厚の薄い部分を有しているため、良好なイオン透過性を確保することができる。その結果、負極15を用いることで、高容量及び高特性の非水電解液蓄電素子1を実現できる。
すなわち、イオン透過性と耐絶縁性及び耐熱性に優れた負極15を用いることで、高容量及び高特性で安全性に優れた非水電解液蓄電素子1を実現できる。
又、負極15において、絶縁層13の凹凸構造をインクジェット方式を用いて形成することにより、微細な凹凸構造を有する多孔質の絶縁層13を容易に形成することができる。
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは構造が異なる非水電解液蓄電素子の例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図9は、第2の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる負極を例示する図(その1)であり、図9(a)は平面図、図9(b)は図9(a)のC−C線に沿う断面図、図9(c)は図9(b)の部分拡大断面図である。図9を参照すると、負極10Aは、負極合材層12の膜厚方向における第2の粒子122の存在比率に勾配がある点が、負極10(図1参照)と相違する。すなわち、負極10Aでは、負極合材層12A中の第2の粒子122の存在比率が、負極合材層12Aと負極用電極基体11とが接する側と負極合材層12Aと負極用電極基体11とが接しない側とで異なる。
負極10Aにおいて、第2の粒子122は負極合材層12Aの膜厚方向において、負極用電極基体11とは離れた側に多く存在している。例えば、このような構成で第2の粒子122に活物質を用いた場合、負極合材層12表面におけるイオン拡散性が向上し、負極合材層12表面におけるリチウム析出を抑制できる。その結果、非水電解液蓄電素子1の充放電における内部短絡を抑制できる。
例えば、第2の粒子122に導電助剤を用いた場合、負極用電極基体11とは離れた側の電気導電性を向上させることができる。その結果、少ない使用量で効果的に充放電特性に優れた非水電解液蓄電素子1を実現できる。
例えば、第2の粒子122に無機粒子を用いる場合は、負極合材層12表面におけるイオン拡散性が向上し、負極合材層12表面におけるリチウム析出を抑制できる。その結果、非水電解液蓄電素子1の充放電における内部短絡を抑制できる。
図10は、第2の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる負極を例示する図(その2)であり、図10(a)は平面図、図10(b)は図10(a)のD−D線に沿う断面図、図10(c)は図10(b)の部分拡大断面図である。図10を参照すると、負極10Bは、負極合材層12Bの膜厚方向における第2の粒子122の存在比率に勾配がある点が、負極10(図1参照)と相違する。すなわち、負極10Bでは、負極合材層12B中の第2の粒子122の存在比率が、負極合材層12Bと負極用電極基体11とが接する側と負極合材層12Bと負極用電極基体11とが接しない側とで異なる。
負極10Bにおいて、第2の粒子は負極合材層12Bの膜厚方向において、負極用電極基体11に近い側に多く存在している。例えば、このような構成で第2の粒子122に活物質を用いた場合、負極合材層12表面に近い側は電極合材層内の空隙が多いため電解液を多く保持しており、イオン拡散性が高く、負極合材層12と負極用電極基体11が接触している側は電極合材層内の空隙は小さいが活物質が多く存在しており、リチウムイオンは固体内拡散で活物質へ充放電される。その結果、入出力特性を担保したまま寿命性能が向上する効果が得られる。その結果、寿命性能を向上させた非水電解液蓄電素子1ができる。
負極合材層12A及び12Bにおける第2の粒子122の形成方法(存在比率を任意に形成する方法)について説明する。第2の粒子122を充填する工程に使用するインクにおいて、粘度、インクの表面張力、インク塗布量と塗布時の液滴サイズ、電極乾燥時の乾燥温度、乾燥速度を制御することにより、負極合材層12A及び12Bの膜厚方向における第2の粒子122の存在比率を任意に形成することができる。
すなわち、第1の粒子の層に第2の粒子が染み込みにくくなるように制御することにより、第2の粒子は第1の粒子の層に深く染み込む前に乾燥しやすくなるので、負極合材層12Aのように第2の粒子が負極用電極基体11とは離れた側に多く存在するように形成することができる。
又、第1の粒子の層に第2の粒子が染み込みやすくなるように制御することにより、第2の粒子は乾燥する前に第1の粒子の層に深く染み込みやすくなるので、負極合材層12Bのように第2の粒子が負極用電極基体11に近い側に多く存在するように形成することができる。
以上は一例であり、求める電池特性によって適宜設計可能である。
図11は、第2の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる正極を例示する図(その1)であり、図11(a)は平面図、図11(b)は図11(a)のE−E線に沿う断面図、図11(c)は図11(b)の部分拡大断面図である。図11を参照すると、正極20Aは、正極合材層22Aの膜厚方向における第2の粒子222の存在比率に勾配がある点が、正極20(図2参照)と相違する。すなわち、正極20Aでは、正極合材層22A中の第2の粒子222の存在比率が、正極合材層22Aと正極用電極基体21とが接する側と正極合材層22Aと正極用電極基体21とが接しない側とで異なる。
正極20Aにおいて、第2の粒子222は正極合材層22Aの膜厚方向において、正極用電極基体21とは離れた側に多く存在している。例えば、このような構成で第2の粒子222に活物質を用いた場合、正極合材層22表面におけるイオン拡散性が向上する。少ない使用量で効果的に充放電特性に優れた非水電解液蓄電素子1を実現できる。
例えば、第2の粒子222に導電助剤を用いた場合、正極用電極基体21とは離れた側の電気導電性を向上させることができる。その結果、少ない使用量で効果的に充放電特性に優れた非水電解液蓄電素子1を実現できる。
図12は、第2の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる正極を例示する図(その2)であり、図12(a)は平面図、図12(b)は図12(a)のF−F線に沿う断面図、図12(c)は図12(b)の部分拡大断面図である。図12を参照すると、正極20Bは、正極合材層22Bの膜厚方向における第2の粒子222の存在比率に勾配がある点が、正極20(図2参照)と相違する。すなわち、正極20Bでは、正極合材層22B中の第2の粒子222の存在比率が、正極合材層22Bと正極用電極基体21とが接する側と正極合材層22Bと正極用電極基体21とが接しない側とで異なる。
正極20Bにおいて、第2の粒子222は正極合材層22Bの膜厚方向において、正極用電極基体21に近い側に多く存在している。例えば、このような構成で第2の粒子222に活物質を用いた場合、正極合材層22表面に近い側は電極合材層内の空隙が多いため電解液を多く保持しており、イオン拡散性が高く、正極合材層22と正極用電極基体21が接触している側は電極合材層内の空隙は小さいが活物質が多く存在しており、リチウムイオンは固体内拡散で活物質へ充放電される。その結果、入出力特性を担保したまま寿命性能が向上する効果が得られる。その結果、寿命性能を向上させた非水電解液蓄電素子1ができる。
正極合材層22A及び22Bにおける第2の粒子222の形成方法(存在比率を任意に形成する方法)について説明する。第2の粒子222を充填する工程に使用するインクにおいて、粘度、インクの表面張力、インク塗布量と塗布時の液滴サイズ、電極乾燥時の乾燥温度、乾燥速度を制御することにより、正極合材層22A及び22Bの膜厚方向における第2の粒子222の存在比率を任意に形成することができる。
すなわち、第1の粒子の層に第2の粒子が染み込みにくくなるように制御することにより、第2の粒子は第1の粒子の層に深く染み込む前に乾燥しやすくなるので、正極合材層22Aのように第2の粒子が正極用電極基体21とは離れた側に多く存在するように形成することができる。
又、第1の粒子の層に第2の粒子が染み込みやすくなるように制御することにより、第2の粒子は乾燥する前に第1の粒子の層に深く染み込みやすくなるので、正極合材層22Bのように第2の粒子が正極用電極基体21に近い側に多く存在するように形成することができる。
以上は一例であり、求める電池特性によって適宜設計可能である。
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では、第1の実施の形態とは構造が異なる非水電解液蓄電素子の例を示す。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図13は、第3の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる負極を例示する図であり、図13(a)は平面図、図13(b)は図13(a)のG−G線に沿う断面図である。図13を参照すると、負極10Cは、負極合材層12Cにおいて負極活物質121同士で形成される空隙部に、第2の粒子122と第2の粒子123の2種類が充填されている点が、負極10(図1参照)と相違する。
負極10Cにおいて、第2の粒子122は負極合材層12Cの膜厚方向において、負極用電極基体11とは離れた側に多く存在させている。第2の粒子123は負極合材層12Cの膜厚方向において、負極用電極基体11に近い側に多く存在させている。
例えば、このような構成で第2の粒子122に導電助剤を用いた場合、負極用電極基体11とは離れた側の電気導電性を向上させることができ、第2の粒子123に活物質を用いた場合、空隙部に活物質を充填することができるため、単位体積あたりの活物質重量を増加させることができるので、高エネルギー密度の電極が形成できる。その結果、充放電特性及びエネルギー密度が向上した非水電解液蓄電素子1を得ることができる。
負極合材層12Cにおける第2の粒子122及び123の形成方法としては、まず、負極用電極基体11に近い側へ充填する第2の粒子123を含むインクを塗布し、電極を乾燥させる。続いて、負極用電極基体11から遠い側へ充填する第2の粒子122を含むインクを塗布し、電極を乾燥させる。
第2の粒子122お及び123を充填する工程に使用するインクにおいて、粘度、インクの表面張力、インク塗布量と塗布時の液滴サイズ、電極乾燥時の乾燥温度、乾燥速度を制御することにより、負極合材層12Cの膜厚方向における第2の粒子122及び123の存在比率を任意に形成することができる。
以上は一例であり、求める電池特性によって適宜設計可能である。
図14は、第3の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる正極を例示する図であり、図14(a)は平面図、図14(b)は図14(a)のH−H線に沿う断面図である。図14を参照すると、正極20Cは、正極合材層22Cにおいて正極活物質221同士で形成される空隙部に、第2の粒子222と第2の粒子223の2種類が充填されている点が、正極20(図2参照)と相違する。
正極20Cにおいて、第2の粒子222は正極合材層22Cの膜厚方向において、正極用電極基体21とは離れた側に多く存在させている。第2の粒子223は正極合材層22Cの膜厚方向において、正極用電極基体21に近い側に多く存在させている。例えば、このような構成で第2の粒子222に導電助剤を用いた場合、正極用電極基体21とは離れた側の電気導電性を向上させることができ、第2の粒子223に活物質を用いた場合、空隙部に活物質を充填することができるため、単位体積あたりの活物質重量を増加させることができるので、高エネルギー密度の電極が形成できる。その結果、充放電特性及びエネルギー密度が向上した非水電解液蓄電素子1を得ることができる。
正極合材層22Cにおける第2の粒子222及び223の形成方法としては、まず、正極用電極基体21に近い側へ充填する第2の粒子223を含むインクを塗布し、電極を乾燥させる。続いて、正極用電極基体21から遠い側へ充填する第2の粒子222を含むインクを塗布し、電極を乾燥させる。第2の粒子222及び223を充填する工程に使用するインクにおいて、粘度、インクの表面張力、インク塗布量と塗布時の液滴サイズ、電極乾燥時の乾燥温度、乾燥速度を制御することにより、正極合材層22Cの膜厚方向における第2の粒子222及び223の存在比率を任意に形成することができる。
上記は一例であり、求める電池特性によって適宜設計可能である。
以下、実施例及び比較例を挙げて非水電解液蓄電素子等について更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
負極合材層形成用として、グラファイト:97質量部、増粘材(カルボキシメチルセルロース):1質量部、高分子(スチレンブタジエンゴム):2質量部、溶媒として水:100質量部を加えて、電極塗料を作製した。電極塗料を銅の負極用電極基体上に塗布・乾燥させて、単位面積当たりの塗布量(面積密度)が片側9mg/cm2の負極合材層が両面に形成された電極を得た。このときの電極の厚みは216μm、電極の体積密度は0.91g/cm3であった。
次に、第2の粒子としてグラファイト:20質量部、高分子(スチレンブタジエンゴム):0.5質量部、水:49.5質量部をホモジナイザーで分散した。ホモジナイザーで分散処理後にイソプロピルグリコール:30質量部を添加した。以上により第2の粒子含有インク1を得た。
第2の粒子含有インク1を負極合材層に塗布・乾燥させて、負極合材層の単位面積当たりの塗布量が片面10.8mg/cm2の両面電極を得た。このときの電極の厚みは216μm、電極の体積密度は1.09g/cm3であった。得られた電極をプレスして厚みが136μm、体積密度が1.80g/cm3の電極が得られた。この電極を、所定のサイズ(塗布面30mm×50mm、未塗布面10mm×11mm)に打ち抜いて負極を作製した。
正極合材層形成用として、リチウム−ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(NCA):93質量部、導電助剤:3質量部、高分子(ポリフッ化ビニリデン):4質量部、溶媒としてN−メチルピロリドン:100質量部を加えて、電極塗料を作製した。電極塗料をアルミニウムの正極用電極基体上に塗布・乾燥させて、単位面積当たりの塗布量(面積密度)が片側15.0mg/cm2の正極合材層が両面に形成された電極を得た。このときの電極の厚みは153μm、電極の体積密度は1.91g/cm3であった。
次に、第2の粒子としてNCA:20質量部、高分子(ポリフッ化ビニリデン):0.5質量部、NWP:79.5質量部をホモジナイザーで分散し、第2の粒子含有インク2を得た。
第2の粒子含有インク2を正極合材層に塗布・乾燥させて、正極合材層の単位面積当たりの塗布量が片面18.0mg/cm2の両面電極を得た。このときの電極の厚みは153μm、電極の体積密度は2.36g/cm3であった。得られた電極をプレスして厚みが113μm、体積密度が3.06g/cm3の電極が得られた。この電極を、所定のサイズ(塗布面28mm×48mm、未塗布面10mm×13mm)に打ち抜いて正極を作製した。
上記、正極及び負極をポリプロピレンのフィルムセパレータを介して積層し、積層厚みが10mm程度まで積層した電極素子を形成し、電極の未塗布部をまとめて負極に負極引き出し線となるニッケルタブを溶接し、正極に正極引き出し線となるアルミニウムタブを溶接した。上記電極素子に1.5M LiPF6 EC:DMC:EMC=1:1:1の非水電解液を含ませ、アルミラミネートフイルムに封止して、非水電解液蓄電素子を作製した。
(充放電試験)
上述のように作製した非水電解液蓄電素子の正極引き出し線と負極引き出し線とを、充放電試験装置に接続し、最大電圧4.2V、電流レート0.7C、3時間で定電流定電圧充電し、充電完了後、電流レート1Cで2.5Vまで定電流放電させた。10分の休止を挟んで、これを1000サイクル繰り返した。 初回放電時に測定した容量からエネルギー密度(Wh/kg)を算出し、サイクル後の容量からサイクル容量維持率(1000サイクル時放電容量/初回放電容量×100)を算出した。 エネルギー密度は192.3Wh/kgであり、容量維持率は88%であった。 また、出力密度は2850W/kgであった。 出力密度は、充電深度50%状態で電流レート1C〜10Cのパルスを10秒間放電させ、パルス後電圧と電流値の相関直線から2.5Vカットオフ電圧に至る電力を計算し、セル重量の割り算にて算出した。
[実施例2]
負極合材層の第2の粒子を導電助剤とした以外は全て実施例1と同一条件にて負極及び正極を作製した。得られた負極は体積密度が1.65g/cm3であった。この負極及び正極を用いて実施例1と同様に非水電解液蓄電素子を作製し評価を行ったところ、エネルギー密度は164.1Wh/kgであり、容量維持率は83%であった。又、出力密度は3000W/kgであった。
[実施例3]
負極合材層の第2の粒子を無機材料(アルミナ)とした以外は全て実施例1と同一条件にて負極及び正極を作製した。得られた負極は体積密度が1.97g/cm3であった。この負極及び正極を用いて実施例1と同様に非水電解液蓄電素子を作製し評価を行ったところ、エネルギー密度は161.2Wh/kgであり、容量維持率は86%であった。 又、出力密度は3050W/kgであった。
[実施例4]
正極合材層の第2の粒子を導電助剤とした以外は全て実施例1と同一条件にて負極及び正極を作製した。得られた正極は体積密度が2.65g/cm3であった。この負極及び正極を用いて実施例1と同様に非水電解液蓄電素子を作製し評価を行ったところ、エネルギー密度は163.5Wh/kgであり、容量維持率は84%であった。 又、出力密度は3350W/kgであった。
[実施例5]
正極合材層の第2の粒子を導電助剤、負極合材層の第2の粒子を導電助剤とした以外は全て実施例1と同一条件にて電極を作製した。すなわち負極は実施例2の負極と同一、正極は実施例4の正極と同一である。この負極及び正極を用いて実施例1と同様に非水電解液蓄電素子を作製し評価を行ったところ、エネルギー密度は163.9Wh/kgであり、容量維持率は85%であった。 又、出力密度は4000W/kgであった。
[実施例6]
正極合材層の第2の粒子に正極活物質と導電助剤の混合物、負極合材層の第2の粒子を負極活物質と導電助剤とした以外は全て実施例1と同一条件にて電極を作製した。得られた負極は体積密度が1.76g/cm3であった。得られた正極合材層は体積密度が2.61g/cm3であった。この負極及び正極を用いて実施例1と同様に非水電解液蓄電素子を作製し評価を行ったところ、エネルギー密度は187.5Wh/kgであり、容量維持率は91%であった。 又、出力密度は3750W/kgであった。
[実施例7]
正極合材層の第2の粒子を炭素被覆リン酸バナジウムリチウムとした以外は全て実施例1と同一条件にて電極を作製した。得られた正極は体積密度が2.7g/cm3であった。この負極及び正極を用いて実施例1と同様に非水電解液蓄電素子を作製し評価を行ったところ、エネルギー密度は186Wh/kgであり、容量維持率は90 %であった。 又、出力密度は3500 W/kgであった。
[比較例1]
正極合材層及び負極合材層に第2の粒子を用いない負極及び正極を作製した。負極の体積密度は1.50g/cm3、正極の体積密度は2.55g/cm3であった。この負極及び正極を用いて実施例1と同様に非水電解液蓄電素子を作製し評価を行ったところ、エネルギー密度は162.5Wh/kgであり、容量維持率は85%であった。 又、出力密度は2650W/kgであった。
[実施例1〜7、比較例1のまとめ]
実施例1〜7、比較例1のまとめを表1に示す。
表1に示すように、正極合材層及び負極合材層に第2の粒子を含む実施例1〜7では、正極合材層及び負極合材層に第2の粒子を含まない比較例1に対して、エネルギー密度及び出力密度が向上することが確認された。又、実施例1〜7と比較例1において、容積維持率には有意差がないことが確認された。このように、正極合材層及び負極合材層に第2の粒子を含むことで、優れた効果を奏することができる。
[実施例8]
液系の電解質を使用する代わりに固体の電解質を使用する固体電池の電極形成を行い評価した。固体電池の電極は、活物質を含む合材層中に固体電解質を混合する必要がある。液系の場合には、合材層形成後、電解液を含浸させて使用するが、固体電解質の場合は、合材層形成時に固体電解質も混合する必要がある。
正極合材層形成用として、炭素被覆リン酸バナジウムリチウム(炭素被覆3wt%):93質量部、導電助剤:3質量部、高分子(ポリフッ化ビニリデン):4質量部、溶媒としてN−メチルピロリドン:100質量部を加えて、電極塗料を作製した。電極塗料をSUS444の正極用電極基体上に塗布・乾燥させて正極合材層が両面に形成された電極を得た。
次に、第2の粒子として酸化物系固体電解質であるLi−Al−Geリン酸化合物:20質量部、高分子(ポリフッ化ビニリデン):0.5質量部、N−メチルピロリドン:79.5質量部をホモジナイザーで分散し、第2の粒子含有インク2を得た。
第2の粒子含有インク2を正極合材層に塗布・乾燥させて、正極合材層の単位面積当たりの塗布量が片面18.0mg/cm2の両面電極を得た。このときの活物質と固体電解質の比率は重量比で9:1であった。これを900℃で焼成し、正極を得た。
固体電池にする場合には、負極にも合材層中に固体電解質を混合し、正極と負極の間には固体電解質層を設ける。固体電解質層はイオン電導性を有するが、電子伝導性はない固体の層であるため、通常はセパレータを用いない。
本実施例では正極の機能を調べる簡易的方法として、固体電解質層の代わりにプロピレンカーボネートに2MのLiPF6を溶解した電解液をセパレータに含浸させたものを用い、負極はLi金属を使用し、正極の比容量を計測した。プロピレンカーボネートに2MのLiPF6を溶解した電解液は粘度が高く、正極合材層に容易には浸透しない。
0.1C相当の充電レートで2.5−4.2Vでの充放電を試みたところ、正極の比容量は67mAh/gであった。リン酸バナジウムリチウムの理論容量は131mAh/gであるので、電解液が正極合材層に浸透しない状況でも、半分程度の容量が得られた。機能を示す電極が得られた。
[実施例9]
正極合材層の第2の粒子を硫化物系固体電解質であるLi7P3S11:20質量部とした以外は実施例8と同一条件で負極及び正極を作製した。このときの活物質と固体電解質の比率は重量比で9:1であった。得られた電極をプレスして正極を得た。
実施例8と同様の構成で正極の比容量を評価したところ、85mAh/gであり、本実施例の場合も正極として機能することが確認できた。
[比較例2]
実施例9と同じ正極活物質と固体電解質を用い、正極活物質と固体電解質の比率が重量比で9:1であるスラリーを作成し、塗工・乾燥して固体電池用の正極を作製した。
実施例9と同様に正極の比容量を評価したところ、28mAh/gであった。固体電解質が均一に正極活物質の周りを配置されず、イオン電導が不足してしまったためと推測される。
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、正極合材層上にも、負極合材層と同様に、平坦部と、平坦部の上面から部分的に突起する突起部とを有する絶縁層を設けてもよい。