JP2023137114A - 電池用積層体の製造方法、電池用積層体の製造装置 - Google Patents

電池用積層体の製造方法、電池用積層体の製造装置 Download PDF

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【課題】電極製造過程における電池用積層体の破損の発生を抑制すること。【解決手段】本電池用積層体の製造方法は、第1の電極上に液体組成物を付与して絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記絶縁層が形成された前記第1の電極上に第2の電極を設置する電極設置工程と、を有し、前記絶縁層形成工程と前記電極設置工程とを一連の搬送によって実施する。【選択図】図1

Description

本発明は、電池用積層体の製造方法及び電池用積層体の製造装置に関する。
近年、電池等の蓄電素子及び燃料電池等の発電素子は、高出力化、高容量化、及び高寿命化の要請が急速に高まっている。しかし、その実現に向けては、未だに素子の安全性に関わる様々な課題が存在し、例えば電極間に設けられた絶縁層のズレや破損等によって生じる電極間の短絡は電池の破裂発火事故へと繋がるため、一層の改善が求められている。その様な中で、特許文献1に示すように電極一体型の絶縁層が提案されている。
しかしながら、電極と一体化した絶縁層は、基材となる電極の強度が低い場合には、折り曲げ等の衝撃を与えた際に基材である電極の変形に由来し、電極製造過程において絶縁層にクラック等の破損が生じやすいといった点で改善の余地があった。
本電池用積層体の製造方法は、第1の電極上に液体組成物を付与して絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記絶縁層が形成された前記第1の電極上に第2の電極を設置する電極設置工程と、を有し、前記絶縁層形成工程と前記電極設置工程とを一連の搬送によって実施する。
開示の技術によれば、電極製造過程における電池用積層体の破損の発生を抑制することができる。
本実施形態に係る電池用積層体の製造装置を例示する図(その1)である。 本実施形態に係る電池用積層体の製造装置を例示する図(その2)である。 本実施形態に係る電池用積層体の製造装置を例示する図(その3)である。 本実施形態に係る電池用積層体の製造装置を例示する図(その4)である。 本実施形態に係る電池用積層体の製造装置を例示する図(その5)である。 本実施形態に係る電池用積層体の製造装置を例示する図(その6)である。 本実施形態に係る電池用積層体の製造装置を例示する図(その7)である。 制御部の主要なハードウェアブロック図の一例である。 制御部の主要な機能ブロック図の一例である。 絶縁層が形成された第1の電極を例示する平面図及び断面図である。 絶縁層が形成された第1の電極を例示する平面図である。 絶縁層が形成された第1の電極上に第2の電極が設置された様子を例示する平面図(その1)である。 絶縁層が形成された第1の電極上に第2の電極が設置された様子を例示する平面図(その2)である。 電池用積層体を例示する断面図である。 実施例及び比較例についてまとめた図である。
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
本実施形態を適用できる電池に関しては特に制限はなく、一般に蓄電素子である二次電池、キャパシター、中でもリチウムイオン二次電池に好適に適用することができる。また、本実施形態に係る電池用積層体は、負極と正極とが絶縁層を挟んで積層され、負極と正極が絶縁層により互いに絶縁された構造を含む。電池用積層体、電池用積層体に注入された電解液、電池用積層体及び電解液を封止する外装等により電池が形成される。
<電極(第1の電極、第2の電極)>
電極は、下記で示す負極と正極との総称であり、一方を第1の電極、他方を第2の電極と称する場合がある。つまり、第1の電極が負極に用いられる部材であった場合は第2の電極は正極を指し、第1の電極が正極に用いられる部材であった場合は第2の電極は負極を指す。また、負極用電極基体と正極用電極基体とを総称して電極基体、負極合材層と正極合材層とを総称して電極合材層と称する。
<<電極基体>>
負極用電極基体及び正極用電極基体は、導電性を有する基体であれば、特に制限はなく、一般に蓄電素子である二次電池、キャパシター、中でもリチウムイオン二次電池に好適に用いることができる、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔及び、それらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔や、リチウムイオンキャパシターに用いられる穴あき電極基体等を用いることができる。
又、燃料電池のような発電素子で用いられるカーボンペーパー、繊維状の電極を不織又は織状で平面にしたものや、上記穴あき電極基体のうち微細な穴を有するものも使用できる。更に、太陽光素子の場合、上記に加えてガラスやプラスチックス等の平面基体上に、インジウム・チタン系の酸化物や亜鉛酸化物のような、透明な半導体薄膜を形成したものや、導電性電極膜を薄く蒸着したものを用いることができる。
<<電極合材層>>
負極合材層及び正極合材層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活物質(負極活物質又は正極活物質)を少なくとも含み、必要に応じてバインダ(結着剤)、増粘剤、導電剤、分散剤、非水電解液、固体電解質、ゲル電解質、又は重合プロセスを経てゲル電解質となるモノマーの1つ以上等を含んでもよい。負極合剤層は負極活物質を含み、正極合剤層は正極活物質を含む。
負極合材層及び正極合材層は、粉体状の活物質や触媒組成物を液体中に分散し、かかる液を電極基体上に塗布、固定、及び乾燥することによって形成することが可能であり、通常はスプレー、ディスペンサー、ダイコーターや引き上げ塗工を用いた印刷が用いられ、塗布後に乾燥して形成することができる。
負極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を負極活物質として使用できる。そのような炭素材料として、天然黒鉛、球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。炭素材料以外の材料としては、チタン酸リチウムが挙げられる。又、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める観点から、シリコン、錫、シリコン合金、錫合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化錫等の高容量材料も負極活物質として好適に使用できる。
ニッケル水素電池における上記活物質としては水素吸蔵合金としては、Zr-Ti-Mn-Fe-Ag-V-Al-WやTi15Zr2115Ni29r5CoFeMn等で代表されるAB系或いはAB系の水素吸蔵合金が例示される。
正極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、アルカリ金属含有遷移金属化合物を正極活物質として使用できる。例えば、リチウム含有遷移金属化合物として、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄、及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素とリチウムとを含む複合酸化物が挙げられる。
複合酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム含有遷移金属酸化物、LiFePO等のオリビン型リチウム塩、二硫化チタン、二硫化モリブデン等のカルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。
リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物又は該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。異種元素としては、例えばNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられ、中でもMn、Al、Co、Ni及びMgが好ましい。異種元素は1種でもよく又は2種以上でもよい。これらの正極活物質は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ニッケル水素電池における上記活物質としては水酸化ニッケル等が挙げられる。
負極又は正極のバインダには、例えば、PVDF、PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等が使用可能である。
又、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。又、これらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
電極合材層に含ませる導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の有機導電性材料等が用いられる。
燃料電池での活物質は一般に、カソード電極やアノード電極の触媒として、白金、ルテニウム或いは白金合金等の金属微粒子をカーボン等の触媒担体に担持させたものを用いる。触媒担体の表面に触媒粒子を担持させるには、例えば触媒担体を水中に懸濁させ、触媒__粒子の前駆体(例えば、塩化白金酸、ジニトロジアミノ白金、塩化第二白金、塩化第一白金、ビスアセチルアセトナート白金、ジクロロジアンミン白金、ジクロロテトラミン白金、硫酸第二白金塩化ルテニウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化クロム、塩化金、硝酸銀、硝酸ロジウム、塩化パラジウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化銅等の合金成分を含むもの等)を添加し、懸濁液中に溶解させアルカリを加え金属の水酸化物を生成させると共に、触媒担体表面に担持させた触媒担体を得る。かかる触媒担体を電極基体上に塗布し、水素雰囲気下等で還元させることで、表面に触媒粒子(活物質)が塗布された電極合材層を得る。
太陽電池等の場合、活物質は、酸化タングステン粉末や酸化チタン粉末のほかSnO、ZnO、ZrO、Nb、CeO、SiO、Alといった酸化物半導体層が挙げられ、半導体層には、色素が担持させられており、例えば、ルテニウム・トリス型の遷移金属錯体、ルテニウム-ビス型の遷移金属錯体、オスミウム-トリス型の遷移金属錯体、オスミウム-ビス型の遷移金属錯体、ルテニウム-シス-ジアクア-ビピリジル錯体、フタロシアニン及びポルフィリン、有機-無機のペロブスカイト結晶等の化合物を挙げることができる。
<絶縁層>
絶縁層は、正極と負極を物理的に隔離し、かつ正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材であり、集電体上または電極合材層上またはその双方上に設けられる。絶縁層としては、特に限定されないが体積固有抵抗率が1×1012(Ω・cm)以上を示す層であることが好ましく、体積固有抵抗率が1×1012(Ω・cm)以上であると、正負極の電気的な短絡が生じなくなる。絶縁層の膜厚は、正極と負極間の絶縁性が保持される限りは特に限定はされないが、1μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることが特に好ましい。上記よりも膜厚が薄い場合は正極と負極間の良好な絶縁性を維持することが難しい。また、上記よりも膜厚が厚い場合は良好なイオン導電性を確保することが難しい。
また、絶縁層は空孔を有する多孔質絶縁層であり、空孔の大きさはイオン導電性を有する限り特に限定はされないが、電解液の浸透性の観点から0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。また、絶縁層の空隙率としては、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
また、後の説明で用いる図10に示すように、絶縁層において、電極の周辺に厚膜領域を形成しても良い。なお、図10において、9は第1の電極の集電体、10は第1の電極の活物質、11aは絶縁層の薄膜領域、11bは絶縁層の厚膜領域を示している。ここで、電極の周辺とは、第1の電極における電極合材層が設けられた面においての外周であることが好ましく、第1の電極とは異なる極性を有する第2の電極を積層させ電極積層体を形成したときに、第1の電極の電極合材層上の面において、第2の電極が対向しない領域内であることがより好ましい。厚膜領域を形成することによって、第1の電極と第2の電極を積層した際に端部の電極の歪みを防ぎ、積層時のズレを抑制することができる。厚膜領域は、融点やガラス転移温度(Tg)を有する材料により形成されることで、積層後に、積層上下に位置する第1の電極の厚膜領域を加熱接着することができる。
<絶縁層形成用液体組成物>
絶縁層形成用液体組成物は絶縁層を形成するために塗布される液体であり、有機及び/又は無機化合物、及び、溶媒又は分散液等を含む。上記の有機及び/又は無機化合物、及び、溶媒又は分散液は、最終的に形成される有機層及び/又は無機層が絶縁性を有している限り、必要に応じて適宜選択可能である。
例えば、絶縁性を有する無機材料としては、金属酸化物、金属窒化物、その他の金属微粒子が挙げられる。金属酸化物としては、Al(アルミナ)、TiO、BaTiO、ZrOなどが好ましい。金属窒化物としは、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などが好ましい。その他の金属微粒子としては、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子、或いはベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイトなどの鉱物資源由来物質、又はそれらの人造物などが好ましい。また、絶縁性を有する無機材料として、ガラスセラミック粉末が挙げられる。ガラスセラミック粉末は、ZnO-MgO-Al-SiO系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラスセラミック、BaO-Al-SiO系セラミック粉末やAl-CaO-SiO-MgO-B系セラミック粉末等を用いた非ガラス系セラミックが好ましい。
これらの中でも、絶縁性、耐熱性の点で、酸化アルミニウム、シリカが好ましく、α-アルミナがより好ましい。α-アルミナは、「ジャンク」化学種、即ち、リチウムイオン二次電池内で容量フェードを引き起こし得る化学種に対するスカベンジャとして機能することができる。
更に、固体電解質として酸化物や又は硫化物などのセラミックスの固体電解質が利用できる。酸化物としては、LISICON型酸化物であるγ-LiPO、LiBO、0.75LiGeO-0.25LiZnGeO固溶体、LiSiO-ZnSiO固溶体、LiGeO-LiVO固溶体、NASICON型酸化物であるLi1.3Al0.3Ti1.7(PO若しくはLi1.6Al0.6Ge0.8Ti0.6(PO、ペロブスカイト型構造である(Li、La)TiO、ガーネット型酸化物であるLaLiNb12、LiLaTaO12、又はLiLaZr12が挙げられる。
硫化物としては、LiGeS-LiPS固溶体、LiSiS-LiPS固溶体、LiPS-LiS固溶体、LiS-P固溶体、LiS-SiS、Li10GeP12、Argyrodite型LiPSX(X=Cl、Br、I)、又はL11結晶が挙げられる。
(ナトリウムイオン二次電池向けセラミックス固体電解質)
酸化物としては、NASICON型のNa1+xZrSixP3-x12(0≦x≦1)、又はβアルミナ型のNaO-11Al2が挙げられる。硫化物としては、NaS-P、NaPS、NaSbS、NaS-SiS、又はNaS-GeS等が挙げられる。セレン化物としては、NaPSe等が挙げられる。これらはポリマーとの複合電解質として使用しても良い。
これらの無機材料の粒径は、10μm以下、より好ましくは3μm以下であることが好ましい。上記粒子径とすることで、緻密な多孔質構造を形成するとすることができ、多孔質内部において局所的にムラのない良好なイオン透過性を有する多孔質構造を得ることができる。以上の無機材料を液体に分散させ、無機層作製用液体組成物とする。液体は、分散させる無機材料に適した液体を選定する。
前記無機材料を液体に分散させる際に、結着材料を添加する。結着材料は、無機材料が絶縁層として保持させるため、無機材料の微粒子間を固着する機能を有する。結着材料として、アクリル系樹脂、スチレンブタジエン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂などを用いることができる。
前記無機層作製用インクを調合するときに、ホモジナイザーを用いて分散させてもよい。ホモジナイザーは、高速回転せん断攪拌方式、高圧噴射分散方式、超音波分散方式、媒体攪拌ミル方式などを用いることができる。
前記無機層作製用インクを調合するときに、必要に応じて分散材、界面活性剤などの添加剤を用いてもよい。分散材、界面活性剤として、メガファック(DIC株式会社)、マリアリム(日油株式会社)、エスリーム(日油株式会社)、ソルスパース(Lubrizol)、ポリフロー(共栄社化学株式会社)などを用いることができる。その他の添加剤として、粘度を調整するための増粘材であるプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースなどを用いることができる。
更に、絶縁性を有する有機及び/又は無機材料としては、樹脂を使用することができる。樹脂を形成するために、樹脂及び該樹脂の前駆体の少なくとも何れか一方(樹脂及び/又は該樹脂の前駆体)を液体に溶解又は分散してなる樹脂層作製用液体組成物を用いる。液体は、溶解又は分散させる樹脂に適した液体を選定する。具体的には、水、炭化水素系液体、アルコール系液体、ケトン系液体、エステル系液体、エーテル系液体を用いることができる。
かかる樹脂及び該樹脂の前駆体としては、分子内に電離放射線や赤外線(熱)によって架橋性の構造を保有する樹脂類やオリゴマー類を液体に溶解せしめたものが好ましい。かかる樹脂及び該樹脂の前駆体としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂のうち低分子量のオリゴマー前駆体や、その一部に例えば脂肪族不飽和結合を有する炭化水素基で修飾したものが好ましく、例えばアクリル系共重合体の一部の側鎖にアリル基、アリルオキシ基、アクリロイル基、ブテニル基、シンナミル基、シンナモイル基、クロトメイル基、シクロヘキサジェニル基、インプロペニル基、メタクリロイル基、ペンテニル基、プロペニル基、スチリル基、ビニル基、ブタジェニル基などの不飽和結合を有するものなどが好ましい。
更にポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、及びセルロース等についても分子量1万以下の比較的低分子量の分散前駆体やセルロースナノファイバーを用い、それらを電離放射線や赤外線によって加熱することにより定着後の不溶性及び架橋性を高めることができる。
更にこれらの前駆体は、架橋性を高めるために最大30重量部程度のアジド化合物を含有させても構わない。例えば、3.3′-ジクロロ-4.4′-ジアジドジフェニルメタン、4.4′-ジアジドジフェニルエーテル、4.4′-ジアジドジフェニルジスルフィド、4.4′-ジアジドジフェニルスルフィド、4.4′-ジアジドジフェニルスルホン、4-アジドカルコン、4-アジド-4′-ヒドロキシカルコン、4-アジド-4′-メトキシカルコン、4-アジド-4′-モルホリノカルコン、4-ジメチルアミノ-4′-アジドカルコン、2.6-ビス(4′-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、2.6-ビス(4′-アジドベンザル)-シクロヘキサノン、シンナミリデン-4-アジドアセトフェノン、4-アジドシンナミリデンアセトフェノン、4-アジド-4′-ジメチルアミノシンナミリデンアセトフェノン、シンナミリデン-4-アジドシンナミリデンアセトン、2.6-ビス(4′-アジドシンナミリデン)-4-メチルシクロヘキサノン、2.6-ビス(4′-アジドシンナミリデン)-シクロヘキサノン、1.4′-アジドベンジリデンインデン、1.4′-アジドベンジリデンインデン、1.4′-アジドベンジリデン-3-α-ヒドロキシ-4″-アジドベンジルインデン、9.4′-アジドベンジリデンフルオレン、9.4′-アジドシンナミリデンフルオレン、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-メトキシフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-ヒドロキシエチルフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-ヒドロキシフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニルアミド、4.4′-ジアジドベンゾフェノン、4.4′-ジアジドスチルベン、4.4′-ジアジドカルコン、4.4′-ジアジドベンザルアセトン、6-アジド-2-(4'-アジドスチリル)ベンゾイミダゾール、3-アジドベンジリデンアニリン-N-オキシp~(4-アジドベンジリデンアミド)安息香酸、1.4-ビス(3′-アジ1ζスチリル)ベンゼン、3.3′-ジアジドジフェニルスルホン、4.4′-ジアジドジフェニルメタンなどが挙げられる。
なかでも特に2.6-ビス-(4′アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン等を好適に用いることができる。これらの材料が溶解される溶媒は特に規定されるものではないが、上記化合物が溶解できて沸点や表面張力が後の塗布や乾燥工程に対して好適なものを単独又は混合して調整し用いることができる。樹脂で形成された樹脂層が内部に空隙を有する場合、実質的に電解質などのイオンの通過が可能となり、セパレータとしての機能や、熱的な暴走防止機能を付与することができるため好ましいものとなる。
電解液の浸透性や保液性の観点で、イオン透過性のみならず微細な開口を有するものが望ましく、樹脂中に、発泡剤のような材料を含んで塗布後に加熱したり、電解質などの溶解性塩を含み、塗布後、電解液に浸すことによって左記塩が溶解することにより開口や細孔が形成されることによってイオン透過性が発現されうる場合などが、より望ましいものとなる。或いは、ブロック状の分子骨格により、塗布後、特定の相分離やミクロ相分離を形成し、微細開口を形成することによって、同様にイオン透過性が発現されたり、或いはインク組成中に揮発性の溶剤を含むことによって、印刷にひき続いた重合などで固―液相分離を引き起こし、その後、溶剤を除去(乾燥)することによって微細な網目状開口を得ることができる。特に重合によって固-液相分離(以下「重合誘起相分離」とも称する)を引き起こす液体組成物は、短時間でイオン透過性の高い多孔質樹脂構造体が得られるため好ましい。
多孔質絶縁層の形状としては、液体や気体の良好な浸透性を確保する観点から、樹脂の硬化物又は無機固体物の三次元分岐網目構造を骨格として有し、多孔質絶縁層の複数の孔が連続して連結している構造であることが好ましい。すなわち、多孔質絶縁層は多数の孔を有しており、一つの孔がその周囲の他の孔と連結した連通性を有して三次元的に広がっていることが好ましい。孔同士が連通することで、液体や気体の浸み込みを生じやすくすることができる。
空孔が連通していることを確認する方法としては、例えば、多孔質構造体の断面を走査電子顕微鏡(SEM)等により画像観察し、空孔同士の繋がりが連続していることを確認する方法が挙げられる。また、空孔が連通していることで得られる物性の一つとして透気度が挙げられる。多孔質構造体の透気度は、例えば、JIS P8117に準拠して測定され、1000秒/100mL以下である場合が好ましく、500秒/100mL以下である場合がより好ましく、300秒/100mL以下である場合が更に好ましい。このとき、透気度は、例えば、ガーレー式デンソメーター(東洋精機製作所製)等を用いて測定される。従って、一例として、透気度が1000秒/100mL以下であることをもって空孔が連通していると判断してもよい。
空孔の断面形状は、特に制限されず、略円形状、略楕円形状、略多角形状等の様々な形状が挙げられる。また、空孔の大きさも特に制限されない。ここで、空孔の大きさとは、断面形状において引ける最も長い直線の長さを指すものとする。空孔の大きさは、走査電子顕微鏡(SEM)等で撮影した断面写真から求めることができる。多孔質構造体の有する空孔の大きさは、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1μm以下であることがより好ましい。空孔の大きさが0.1μm以上10μm以下であることで、多孔質構造体において液体や気体の浸み込みが十分に起き、物質分離や反応場といった機能を効率的に発現させることができる。
また、後述するように、多孔質構造体を蓄電素子の絶縁層として用いる場合、空孔の大きさが10μm以下であることで、蓄電素子の内部で発生するリチウムデンドライドによる正極と負極の間の短絡を防止することができ、安全性が向上する。多孔質構造体の空隙率としては、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
また、多孔質構造体の空隙率は、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。空隙率が30%以上であることで、多孔質構造体において液体や気体の浸み込みが十分に起き、物質分離や反応場といった機能を効率的に発現させることができる。また、多孔質構造体を蓄電素子における絶縁層として用いた場合、電解液の浸透性やイオンの透過性が向上し、蓄電素子内部の反応が効率的に進行する。
また、空隙率が90%以下であることで、多孔質構造体の強度が向上する。なお、多孔質構造体の空隙率を測定する方法としては特に限定されないが、例えば、多孔質構造体に不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填し、オスミウム染色を施した後で、FIBで内部の断面構造を切り出し、SEMを用いて空隙率を測定する方法が挙げられる。
樹脂により形成される多孔質絶縁層は、樹脂により形成された骨格部と、当該骨格部が形成されていない部分を孔部とする多孔質な樹脂構造体である。また樹脂構造体は、樹脂部分及び孔部分のそれぞれが連続することにより構成される共連続構造又はモノリス構造であることが好ましい。
樹脂部分が連続するとは、樹脂部分中に界面が存在しない構成のことを表す。すなわち、複数の樹脂粒子などが当該樹脂粒子とは異なる樹脂であるバインダ等により結着し連結するような構成とは区別される。このような構造は例えば、前述及び後述の重合誘起相分離法により形成することができる。
前記樹脂は、ゲル電解質として樹脂と非水電解液、イオン液体、グライム、又は電解質塩とを含んでいても良い。
--重合性化合物--
重合性化合物は、重合することにより樹脂を形成し、重合誘起相分離を起こす液体組成物中において重合した場合に多孔質樹脂を形成する。重合性化合物により形成される樹脂は、活性エネルギー線の付与等(例えば、光の照射や熱を加えること等)で形成される網目状の構造体を有する樹脂であることが好ましく、例えば、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂、及びエン-チオール反応により形成される樹脂が好ましい。また、反応性の高いラジカル重合を利用して構造体を形成することが容易な点から、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物により形成される樹脂であるアクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂や、ビニル基を有する重合性化合物により形成される樹脂であるビニルエステル樹脂が生産性の観点からより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、重合性化合の組み合わせとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、柔軟性付与のため、ウレタンアクリレート樹脂を主成分として他の樹脂を混合することが好ましい。なお、本開示ではアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する重合性化合物を、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物と称する。
重合性化合物は、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有することが好ましい。その例としては、1官能、2官能、3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー、及びラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が好ましい。
1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5-テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
重合誘起相分離を起こす液体組成物中における重合性化合物の含有量は、液体組成物全量に対して、5.0質量%以上70.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上50.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以上40.0質量%以下が更に好ましい。重合性化合物の含有量が70.0質量%以下である場合、得られる多孔質樹脂の空孔の大きさが数nm以下と小さくなりすぎず、多孔質樹脂が適切な空隙率を有し、液体や気体の浸透が起きにくくなる傾向を抑制することができるので好ましい。また、重合性化合物の含有量が5.0質量%以上である場合、樹脂の三次元的な網目構造が十分に形成されて多孔質構造が十分に得られ、得られる多孔質構造の強度も向上する傾向が見られるため好ましい。
--ポロジェン--
重合誘起相分離を起こすために用いられる溶媒(以降の記載において「ポロジェン」とも称する)は、重合性化合物と相溶する液体である。また、ポロジェンは、液体組成物中において重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。液体組成物中に溶媒が含まれることで、重合性化合物は、液体組成物中において重合した場合に、言い換えると、液体組成物中において第一の活性エネルギー線及び第二の活性エネルギー線を順次照射された場合に、多孔質樹脂を形成する。また、光または熱によってラジカル又は酸を発生する化合物(後述する重合開始剤)を溶解可能であることが好ましい。溶媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、ポロジェンは重合性を有さない。
ポロジェンの1種単独としての沸点または2種以上を併用した場合の沸点は、常圧において、50℃以上250℃以下であることが好ましく、70℃以上200℃以下であることがより好ましい。沸点が50℃以上であることにより、室温付近におけるポロジェンの気化が抑制されて液体組成物の取扱が容易になり、液体組成物中におけるポロジェンの含有量の制御が容易になる。また、沸点が250℃以下であることにより、重合後のポロジェンを乾燥させる工程における時間が短縮されて、多孔質樹脂の生産性が向上する。また、多孔質樹脂の内部に残存するポロジェンの量を抑制することができるので、多孔質樹脂を物質間の分離を行う物質分離層や反応場としての反応層などの機能層として利用する場合に品質が向上する。
また、ポロジェンの1種単独としての沸点または2種以上を併用した場合の沸点は、常圧において、120℃以上であることが好ましい。
ポロジェンとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール類、γブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類、NNジメチルアセトアミド等のアミド類等を挙げることができる。また、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル、テトラデカン等の比較的分子量の大きな液体も挙げることができる。また、アセトン、2-エチルヘキサノール、1-ブロモナフタレン等の液体も挙げることができる。
なお、上記の例示された液体であれば常にポロジェンに該当するわけではない。ポロジェンとは、上記の通り、重合性化合物と相溶する液体であって、且つ液体組成物中において重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。言い換えると、ある液体がポロジェンに該当するか否かは、重合性化合物および重合物(重合性化合物が重合することにより形成される樹脂)との関係で決まる。
また、液体組成物は、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有するポロジェンを少なくとも1種類含有していればよいため、液体組成物作製時の材料選択の幅が広がり、液体組成物の設計が容易になる。液体組成物作製時の材料選択の幅が広がることで、多孔質構造の形成以外の観点で液体組成物に求められる特性がある場合に、対応の幅が広がる。例えば、液体組成物をインクジェット方式で吐出する場合、多孔質形成以外の観点として、吐出安定性等を有する液体組成物であることが求められるが、材料選択の幅が広いため、液体組成物の設計が容易になる。
なお、液体組成物は、上記の通り、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有するポロジェンを少なくとも1種類含有していればよいため、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さない液体(ポロジェンではない液体)を追加的に含有していてもよい。但し、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さない液体(ポロジェンではない液体)の含有量は、液体組成物全量に対して10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましく、含まれないことが特に好ましい。
液体組成物中におけるポロジェンの含有量は、液体組成物全量に対して、30.0質量%以上95.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下がより好ましく、60.0質量%以上80.0質量%以下が更に好ましい。ポロジェンの含有量が30.0質量%以上である場合、得られる多孔質体の空孔の大きさが数nm以下と小さくなりすぎず、多孔質体が適切な空隙率を有し、液体や気体の浸透が起きにくくなる傾向を抑制することができるので好ましい。また、ポロジェンの含有量が95.0質量%以下である場合、樹脂の三次元的な網目構造が十分に形成されて多孔質構造が十分に得られ、得られる多孔質構造の強度も向上する傾向が見られるため好ましい。
液体組成物中における重合性化合物の含有量とポロジェンの含有量の質量比(重合性化合物:ポロジェン)は、1.0:0.4~1.0:19.0が好ましく、1.0:1.0~1.0:9.0がより好ましく、1.0:1.5~1.0:4.0が更に好ましい。
---重合誘起相分離---
重合誘起相分離によって多孔質樹脂の形成が可能である。重合誘起相分離において、重合性化合物とポロジェンは相溶するが、重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物(樹脂)とポロジェンは相溶しない(相分離を生じる)状態を表す。相分離により多孔質樹脂を得る方法は他にも存在するが、重合誘起相分離の方法を用いることで、網目構造を有する多孔質体を形成できるために、薬品や熱に対する耐性の高い多孔質体が期待できる。また、他の方法と比較して、プロセス時間が短く、表面修飾が容易といったメリットも挙げられる。
次に、重合誘起相分離を用いた多孔質樹脂の形成プロセスについて説明する。重合性化合物は、光照射等により重合反応を生じて樹脂を形成する。このプロセスの間、成長中の樹脂におけるポロジェンに対する溶解度が減少し、樹脂とポロジェンの間における相分離が生じる。最終的に、樹脂は、ポロジェン等が孔を満たしている多孔質構造を形成する。これを乾燥すると、ポロジェン等は除去され、多孔質樹脂が残る。そのため、適切な空隙率を有する多孔質樹脂を形成するため、ポロジェンと重合性化合物との相溶性、及びポロジェンと重合性化合物が重合することにより形成される樹脂との相溶性が検討される。
ポロジェンと重合性化合物との相溶性については次のようにして判断する。
まず、液体組成物を石英セルに注入し、攪拌子を用いて300rpmで攪拌させながら、液体組成物の波長550nmにおける光(可視光)の透過率を測定する。本開示では、光の透過率が30%以上である場合を重合性化合物とポロジェンとが相溶の状態、30%未満である場合を重合性化合物とポロジェンとが非相溶の状態であると判断する。なお、光の透過率の測定に関する諸条件を以下に示す。
・石英セル:スクリューキャップ付き特殊ミクロセル(商品名:M25-UV-2)
・透過率測定装置:Ocean Optics社製USB4000
・撹拌速度:300rpm
・測定波長:550nm
・リファレンス:石英セル内が空気の状態で、波長550nmにおける光の透過率を測定して取得する(透過率:100%)。
ポロジェンと重合性化合物が重合することにより形成される樹脂との相溶性については次のようにして判断する。
まず、無アルカリガラス基板上に、スピンコートにより樹脂微粒子を基板上に均一分散させ、ギャップ剤とする。続いて、ギャップ剤を塗布した基板を、ギャップ剤を塗布していない無アルカリガラス基板と、ギャップ剤を塗布した面を挟むようにして互いに貼り合わせる。次に液体組成物を、貼り合わせた基板間に毛細管現象を利用して充填し、「UV照射前ヘイズ測定用素子」を作製する。続いて、UV照射前ヘイズ測定用素子にUV照射して液体組成物を硬化させる。最後に基板の周囲を封止剤で封止することで「ヘイズ測定用素子」を作製する。作製時の諸条件を以下に示す。
・無アルカリガラス基板:日本電気硝子製、40mm、t=0.7mm、OA-10G
・ギャップ剤:積水化学製、樹脂微粒子ミクロパールGS-L100、平均粒子径100μm
・スピンコート条件:分散液滴下量150μL、回転数1000rpm、回転時間30s
・充填した液体組成物量:160μL
・UV照射条件:光源としてUV-LEDを使用、光源波長365nm、照射強度30mW/cm、照射時間20s
・封止剤:TB3035B(Three Bond社製)
次に、作製したUV照射前ヘイズ測定用素子とヘイズ測定用素子を用いてヘイズ値(曇り度)を測定する。UV照射前ヘイズ測定用素子における測定値をリファレンス(ヘイズ値0)とし、ヘイズ測定用素子における測定値(ヘイズ値)のUV照射前ヘイズ測定用素子における測定値に対する上昇率を算出する。ヘイズ測定用素子におけるヘイズ値は、重合性化合物が重合することにより形成される樹脂とポロジェンとの相溶性が低いほど高くなり、相溶性が高いほど低くなる。また、ヘイズ値が高いほど重合性化合物が重合することにより形成される樹脂が多孔質構造を形成しやすくなることを示す。本開示では、ヘイズ値の上昇率が1.0%以上である場合を樹脂とポロジェンとが非相溶の状態、1.0%未満である場合を樹脂とポロジェンとが相溶の状態であると判断する。なお、測定に用いた装置を以下に示す。
・ヘイズ測定装置:Haze meter NDH5000 日本電色工業製
--重合開始剤--
重合開始剤は、光や熱等のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物の重合を開始させることが可能な材料である。重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル発生剤を用いることができる。例えば、商品名イルガキュアーやダロキュアで知られるミヒラーケトンやベンゾフェノンのような光ラジカル重合開始剤、より具体的な化合物としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体、例えばα-ヒドロキシ-もしくは、α-アミノセトフェノン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、pp'-ジクロロベンゾフェン、pp'-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインn-プロピル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンモノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド又はチタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントン又はキサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物又はジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物、等が好適に使用される。
更に、ビスアジド化合物のような光架橋型ラジカル発生剤を同時に含有させても構わない。また、熱のみで重合させる場合は通常のラジカル発生剤であるazobisisobutyronitrile(AIBN)等の熱重合開始剤を使用することができる。
重合開始剤の含有量は、十分な硬化速度を得るために、重合性化合物の総質量を100.0質量%とした場合に、0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
-液体組成物の物性-
液体組成物の粘度は、液体組成物を付与する際の作業性の観点から25℃において、1.0mPa・s以上150.0mPa・s以下が好ましく、1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下がより好ましく、1.0mPa・s以上25.0mPa・s以下が特に好ましい。液体組成物の粘度が1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であることにより、液体組成物をインクジェット方式に適用する場合においても、良好な吐出性が得られる。ここで、粘度は、例えば、粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)などを使用して測定することができる。
<<電池用積層体の製造方法>>
本実施形態に係る電池用積層体の製造方法では、第1の電極上に液体組成物を付与して絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、絶縁層が形成された第1の電極上に第2の電極を設置する電極設置工程と、を有し、絶縁層形成工程と電極設置工程とを一連の搬送によって実施する。
ここで、第1の電極上とは、集電体上または電極合材層上、またはその双方上を含む。例えば、第1の電極が集電体のみから形成されている場合は、集電体上に絶縁層を形成する。また、第1の電極が集電体と集電体上に形成された電極合材層から形成されている場合は、電極合材層上のみに絶縁層を形成してもよいし、電極合材層から露出する集電体上及び電極合材層上に絶縁層を形成してもよい。
このように、絶縁層形成工程と電極設置工程とを一連の搬送によって実施することにより、電極製造過程における電池用積層体の破損の発生を抑制することができる。すなわち、絶縁層はクラック等の破損が生じやすい部材であるため、絶縁層を形成後の早い段階で絶縁層上に第2の電極を設置することが好ましい。絶縁層形成工程と電極設置工程とを一連の搬送によって実施することにより、絶縁層を形成後の早い段階で絶縁層上に第2の電極を設置できるため、第2の電極が絶縁層を保護する保護部材として機能し、電池用積層体の破損の発生を抑制することができる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、一連の搬送とは、一の搬送によって実施される工程であることを表し、例えば第1の電極がロール搬送されている場合は、一の搬送工程中で絶縁層形成工程と設置工程とが実施されることをいう。また、上記に記した電池用積層体の破損の発生を抑制する観点では、その効果が示され得る絶縁層形成工程を含んだ搬送直後に設置工程が実施される場合をその対象としてもよい。更に、ここでいうロール搬送とは、搬送開始点と搬送終了点との間でテンションを張りながら送る方式であり、必要に応じてガイドロールなどの支持部材を用いて搬送対象部材を支えてもよい。ロール搬送は、ロールツーロール方式による搬送を含むが、これには限定されない。ロール搬送は、例えば、搬送開始点では搬送対象部材がロール状に巻かれており、搬送終了点では搬送対象部材をロール状に巻き取らない場合も含む。
なお、第1の電極がベルトを用いて搬送される場合は、ベルトが1つであるか複数に分かれているかは、一連の搬送か否かの判断材料とはならない。例えば、ベルトが複数であっても、第1の電極が一のベルトから他のベルトに連続的に移動する場合は一連の搬送に含まれる。
本実施形態に係る電池用積層体の製造方法は、必要に応じて、集電体上に電極合材層を形成する電極合材層形成工程や、液体組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程、液体組成物に含まれる溶媒を除去する除去工程、第2の電極の設置後に電極をセル化に向けて加工する電極加工工程などを有してもよい。このとき、例えば照射工程は、絶縁層形成工程と設置工程とが一連の工程となる限りであれば、絶縁層形成用工程と電極設置工程との間で行われてもよい。
なお、第1の電極は負極であり、前記第2の電極は正極であることが好ましい。負極上に正極を設置すると、各電極に無駄な領域ができずに生産性を高くできる点で好適であり、また電池の安全性を高くできる点でも好適である。
<絶縁層形成工程>
絶縁層形成工程は、第1の電極である被付与物に対して有機層及び/又は無機層からなる絶縁層を形成する工程である。絶縁層形成工程は、第1の電極である被付与物に対して液体組成物を付与し、絶縁層形成用液体組成物層を形成する絶縁層形成用液体付与工程を有し、必要に応じて液体組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程や、液体組成物に含まれる溶媒を除去する除去工程などを有してもよい。絶縁層としては、軽量性や温度変化による機能付与の点からは有機層であることが好ましく、堅牢性および耐熱性の点からは無機層であることが好ましい。
絶縁層形成工程では、絶縁層は、図10に示すような凹部と凸部を含む凹凸パターンを有する形状に形成されてもよい。このとき、凸部は、第2の電極を設置する領域の外側に形成されることが好ましい。図10の例では、絶縁層の厚膜領域11bが凸部、厚膜領域11bの内側に露出する絶縁層の薄膜領域11aが凹部である。
<絶縁層形成用液体付与工程>
絶縁層形成用液体付与工程は、第1の電極である被付与物に対して有機及び/又は無機化合物、及び、溶媒又は分散液等を含む絶縁層形成用液体組成物を付与する工程である。付与された液体組成物は、被付与物上に液体組成物の液膜である液体組成物層を形成することが好ましい。液体組成物を付与する方法としては、特に制限されず、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法が挙げられる。これらの中でも、液体組成物を付与する位置の制御が可能である観点から、インクジェット印刷法などの液体吐出方法が好ましい。
<照射工程>
照射工程は、液体付与工程において付与された液体組成物に対して活性エネルギー線を照射する工程である。特に、重合誘起相分離を起こす液体組成物の場合は、第一の照射工程は、最終的に製造される多孔質樹脂である絶縁層の空隙率を向上させ、これにより、例えば、多孔質樹脂における液体又は気体などの流体の取込性を向上させる。具体的には、液体組成物に対して活性エネルギー線を照射することにより、空隙率の高い多孔質樹脂を形作る上で基礎となる多孔質構造を有する多孔質前駆体を形成する。
なお、活性エネルギー線としては、重合性化合物の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中でも紫外線であることが好ましい。なお、特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。
以下は、液体組成物が重合誘起相分離を起こす場合に限定して、照射工程により、多孔質前駆体を形成する理由について説明する。
上記の通り、重合誘起相分離により多孔質樹脂を形成する場合、重合条件に基づいて多孔質樹脂の構造及び性質等が変化する。例えば、液体組成物に対して照射強度の強い活性エネルギー線を照射して重合性化合物の重合が促進される条件下で多孔質樹脂の形成を行った場合、相分離が十分に生じる前に重合が進行してしまい、空隙率の高い多孔質樹脂を製造することが困難になる傾向がある。
そのため、空隙率の高い多孔質樹脂を形作るために、照射される活性エネルギー線の照射強度は高すぎないように設定される。具体的には、活性エネルギー線の照射強度は、1W/cm以下が好ましく、300mW/cm以下がより好ましく、100mW/cm以下が更に好ましい。但し、活性エネルギー線の照射強度が低すぎると、相分離が過度に進行することで多孔質構造のばらつきや粗大化が生じやすくなり、更に、照射時間も長くなって生産性が低下することから、10mW/cm以上であることが好ましく、30mW/cm以上であることがより好ましい。
<除去工程>
除去工程は、液体組成物から溶媒又は分散液を除去する工程である。溶媒又は分散液を除去する方法としては特に限定されず、例えば、加熱することにより多孔質樹脂から溶媒又は分散液を除去する方法が挙げられる。このとき、減圧下で加熱することで溶媒又は分散液の除去がより促進され、形成される絶縁層における溶媒又は分散液の残存を抑制できるので好ましい。
<電極設置工程>
電極設置工程は、絶縁層を形成した第1の電極上に、例えば図12に示すように第2の電極を設置する工程である。なお、図12において、9は第1の電極の集電体、11bは絶縁層の厚膜領域、12は第2の電極の集電体、13は第2の電極の活物質を示している。第2の電極を設置する方法としては特に限定されないが、設置領域が適正な場所でない場合は、第1の電極と第2の電極間で短絡が生じてしまう。そこで、電極設置工程は、第1の電極上に絶縁層を形成した後に、第2の電極の設置位置を調整するアライメント工程を有することが好ましい。また、第2の電極を設置後にズレが生じない様に、第2の電極の設置前に第1の電極上及び/又は第2の電極上に接着剤又は粘着剤を塗布しておいても良い。
<電極合材層形成工程>
電極合材層形成工程は、第1の電極である被付与物に対して電極合材層を形成する工程である。電極合材層形成工程は、第1の電極である被付与物に対して電極合材層形成用液体組成物層を形成する電極合材層形成用液体付与工程を有し、液体組成物に含まれる溶媒を除去する除去工程を有する。
<電極合材層形成用液体付与工程>
電極合材層形成用液体付与工程は、第1の電極である被付与物に対して粉体状の活物質や触媒組成物、分散液等を含む電極合材層形成用液体組成物を付与する工程である。付与された液体組成物は、被付与物上に液体組成物の液膜である液体組成物層を形成することが好ましい。液体組成物を付与する方法としては、特に制限されず、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法が挙げられる。これらの中でも、液体組成物を付与する位置の制御が可能である観点から、インクジェット印刷法などの液体吐出方法が好ましい。
<搬送工程>
搬送工程は、第1の電極を搬送する工程である。搬送工程としては、搬送工程中に第1の電極や絶縁層と搬送装置との接触領域を少なくすることで第1の電極や絶縁層と搬送措置間の擦れ等によって生じる第1の電極や絶縁層へのダメージを抑制できる観点から、搬送用のベルトを用いないロール搬送であることが好ましい。
<電極加工工程>
電極加工工程は、絶縁層形成工程よりも後に、第1の電極を加工する工程である。電極加工工程では、例えば、第2の電極が設置された第1の電極において、第1の電極を裁断し、絶縁層が形成された第1の電極上に第2の電極が設置された電極積層体を作製することができる。電極加工工程では、第1の電極の面積が前第2の電極の面積よりも大きくなるように裁断することが好ましい。これにより、裁断した第1の電極の端部が第2の電極の端部と短絡することを防止できる。
絶縁層が融点またはガラス転移点を有する材料を含む場合、電極加工工程では、例えば、絶縁層が形成された第1の電極上に第2の電極が設置された電極積層体を複数個作製し、一の電極積層体と他の電極積層体は、加熱により少なくとも一部が接着される。例えば、電極積層体が図10に示すような絶縁層の厚膜領域11bを有する場合は、上下に位置する電極積層体を対向するように配置し、対向する電極積層体の厚膜領域同士が加熱接着されてもよい。
電極加工工程では、例えば、第2の電極が設置された第1の電極を積層または巻回し、積層体又は巻回体を作製することができる。第2の電極が設置された第1の電極を積層または巻回する場合、第1の電極を適切なタイミングで裁断してもよい。
積層する方法としては、第2の電極を設置した第1の電極を複数のシートに裁断して複数の電極積層体を作製し、複数の電極積層体を積層する方法が挙げられる。また、図13に示すように、第2の電極が間隔を設けて設置された第1の電極を折り返すよう様につづら折り構造として積層する方法が挙げられる。なお、図13において、9は第1の電極の集電体、11bは絶縁層の厚膜領域、12は第2の電極の集電体、13は第2の電極の活物質を示している。
巻回は、例えば、図2示す電池用積層体の製造装置(後述)を用いて行うことができる。すなわち、搬送中の第1の電極6上に、第2の電極搬送装置4bによりロール状の第2の電極を供給して第1の電極6上に第2の電極を連続的に積層し、電極設置部400の後段に位置する電極加工部500により巻回することができる。
なお、つづら折り構造として積層した積層数や巻回構造として巻回した巻回数が目的の回数に達した際は、裁断することによって目的の積層体又は巻回体を得ることができる。
なお、絶縁層形成工程と設置工程との間に電極加工工程を実施してもよい。すなわち、電極加工工程の直後に電極設置工程を実施してもよい。例えば、電極加工工程で、第2の電極が設置される前の第1の電極を裁断し、裁断した直後に電極設置工程を実施することができる。ここで、直後とは、電極加工工程と電極設置工程とが一連の流れの中にあり、電極加工工程と電極設置工程との間で、裁断された第1の電極が一時的に他の場所に移動されたりしないことを意味する。つまり、絶縁層形成工程と設置工程との間に電極加工工程を設け、電極加工工程の直後に電極設置工程を実施することは、本発明に係る一連の搬送に含まれる。ここで説明した工程の流れは、例えば図3に示す電池用積層体の製造装置(後述)により実現できる。
また、絶縁層形成工程と設置工程との間に電極加工工程を実施し、設置工程後に第2の電極加工工程を実施してもよい。例えば、裁断した第1の電極の絶縁層上に第2の電極を設置した電極積層体を、第2の電極加工工程で積層してもよい。あるいは、裁断した第1の電極の絶縁層上に複数の第2の電極を設置した電極積層体を、第2の電極加工工程で巻回してもよい。
電極加工工程の直後に電極設置工程を実施することにより、絶縁層を形成後の早い段階で絶縁層上に第2の電極を設置できるため、第2の電極が絶縁層を保護する保護部材として機能し、電池用積層体の破損の発生を抑制することができる。
<<電池用積層体の製造装置>>
本実施形態に係る電池用積層体の製造装置は、第1の電極上に液体組成物を付与して絶縁層を形成する絶縁層形成部と、絶縁層が形成された第1の電極上に第2の電極を設置する電極設置部とを有し、絶縁層形成部及び電極設置部は、第1の電極が搬送される一連の搬送領域に配置されている。また、本実施形態に係る電池用積層体の製造装置は、必要に応じて液体組成物に活性エネルギー線を照射する照射部、液体組成物に含まれる溶媒を除去する除去部、第2の電極の設置後に電極をセル化に向けて加工する電極加工部などを有してもよい。
電池用積層体の製造装置の詳細について、図1~9を参照しながら説明する。図1は、電池用積層体の製造装置の一例を示す模式図である。
電池用積層体の製造装置の一例である電池用積層体製造装置1は、上記の液体組成物を用いて電極を製造する装置である。電池用積層体製造装置1は、第1の電極6上に、液体組成物7を付与して絶縁層を形成する液体付与部100からなる絶縁層形成部600と、形成された絶縁層上に第2の電極の設置を一連の搬送によって実施する電極設置部400と、絶縁層形成部600及び電極設置部400を制御する制御部800とを含む。電池用積層体製造装置1は、さらにロール部8を備える。電池用積層体製造装置1が複数のロール部8を備える場合、一部又は全部のロール部8は、制御部800の制御により回転し、第1の電極6を所定の速度で搬送する搬送部として機能してもよい。また、ロール部8の一部は、支持部材であるガイドロールとして機能してもよい。
さらに、電池用積層体の製造装置の一例を示す模式図である図2~7に示すように、電池用積層体製造装置1に示す構成に加えて、液体組成物内の重合開始剤を活性化させて重合性化合物の重合により絶縁層を得る工程を実行する照射部200及び液体組成物を加熱して溶媒を除去する工程を実行する除去部300、第2の電極の設置後に電極をセル化に向けて加工する電極加工部500などを有してもよい。照射部200、除去部300、及び電極加工部500は、制御部800により制御される。なお、図6及び図7に示す電池用積層体の製造装置は、第1の電極6の両面に液体組成物を付与することができる。
<絶縁層形成部>
絶縁層形成部600は、液体付与部100を少なくとも有し、必要に応じて照射部200及び/又は除去部300を含んでもよい。絶縁層形成部600は、絶縁層を、図10に示すような凹部と凸部を含む凹凸パターンを有する形状に形成してもよい。このとき、凸部は、第2の電極を設置する領域の外側に形成されることが好ましい。
<液体付与部>
液体付与部100は、第1の電極6上に液体組成物を付与する付与工程を実現する印刷装置1aと、液体組成物を収容している収容容器1bと、収容容器1bに貯留された液体組成物を印刷装置1aに供給する供給チューブ1cとを備える。
収容容器1bは液体組成物7を収容しており、液体付与部100は、印刷装置1aから液体組成物7を吐出して、第1の電極6上に液体組成物7を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器1bは、電池用積層体製造装置1と一体化した構成であってもよいが、電池用積層体製造装置1から取り外し可能な構成であってもよい。また、電池用積層体製造装置1と一体化した収容容器や電池用積層体製造装置1から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
印刷装置1aは、液体組成物7を付与できるものであれば、特に制限はなく、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法に応じた任意の印刷装置を用いることができる。
収容容器1bや供給チューブ1cは、液体組成物7を安定して貯蔵および供給できるのであれば任意に選択可能である。収容容器1bや供給チューブ1cを構成する材料は、紫外光および可視光の比較的短波長領域において遮光性を有することが好ましい。これにより、液体組成物7が重合性化合物を有していた場合に外光により重合開始されることが防止される。
<照射部>
照射部200は、例えば図5に示すように、液体組成物に対して熱、光などの活性エネルギー線を照射することにより重合性化合物を重合させる光照射装置2aと、重合不活性気体を循環させる重合不活性気体循環装置2bとを有する。光照射装置2aは、液体付与部100により形成された液体組成物に重合性化合物が含まれる場合、重合不活性気体存在下において光を照射し絶縁層を形成させる。
光照射装置2aは、液体組成物層に含まれる光重合開始剤の吸収波長に応じて適宜選択され、液体組成物層中の化合物の重合を開始および進行させられるものならば特に限定はなく、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、LED等の紫外線光源が挙げられる。ただし、短波長の光ほど一般に深部に到達しやすい傾向を持つため、形成する多孔質膜の厚みに応じて光源を選択することが好ましい。
次に、重合不活性気体循環装置2bは、大気中に含まれる重合活性な酸素濃度を低下させ、液体組成物層の表面近傍の重合性化合物の重合反応を阻害されることなく進行させる役割を担う。そのため、用いられる重合不活性気体は上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えば窒素や二酸化炭素やアルゴンなどが挙げられる。
また、重合不活性気体の流量としては阻害低減効果が効果的に得られる事を考慮して、O濃度が20%未満(大気よりも酸素濃度が低い環境)であることが好ましく、0%以上15%以下であることがより好ましく、0%以上5%以下であることが更に好ましい。また、重合不活性気体循環装置2bは安定した重合進行条件を実現させるために、温度を調節できる温調手段が設けられていることが好ましい。
<除去部>
除去部300は、例えば図4に示すように、加熱装置3aを有し、形成した絶縁層に残存する溶媒を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する。除去部300は、溶媒除去工程を減圧下で実施しても良い。
なお、除去部300は、絶縁層に残存する光重合開始剤を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去してもよい。
加熱装置3aは、上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えばIRヒーターや温風ヒーターなどが挙げられる。
また、加熱温度や加熱時間に関しては、絶縁層に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
<電極設置部>
電極設置部400は、図1~7に示すように、第2の電極容器4aを有し、第2の電極搬送装置4bにより第2の電極を第1の電極上に形成された絶縁層へと設置する。第2の電極容器4aは巻回状の電極であってもシート状の電極であっても良い。又、第2の電極搬送装置4bは、電極を搬送可能であれば特に制限はないが、例えば吸着機構によって搬送を実施する装置等が挙げられる。電極設置部400は、必要があれば、カメラ等を搭載して第2の電極の設置位置を調整するアライメント機構を有してもよい。
<電極加工部>
電極加工部500は、絶縁層が形成された第1の電極を加工する。電極加工部500は、例えば、図2に示すように、電極加工装置5を有する。電極加工部500は、例えば、第2の電極が設置された第1の電極を巻回または積層する。また、電極加工部500は、第2の電極が設置された第1の電極において、第1の電極を裁断する。このとき、電極加工部500は、第1の電極の面積が第2の電極の面積よりも大きくなるように裁断することが好ましい。これにより、裁断した第1の電極の端部が第2の電極の端部と短絡することを防止できる。電極加工部500は、第2の電極が設置された第1の電極を巻回または積層する場合、第1の電極を適切なタイミングで裁断してもよい。
絶縁層が融点またはガラス転移点を有する材料を含む場合、電極加工部500は、例えば、絶縁層が形成された第1の電極上に第2の電極が設置された電極積層体を複数個作製し、一の電極積層体と他の電極積層体を加熱し、少なくとも一部を接着する。電極加工部は、第2の電極が設置される前の第1の電極を裁断してもよい。この場合、第2の電極を設置した後に、第2の電極加工部を設けて積層や巻回を行ってもよい。
このように、電極加工部500は、電極の裁断や第1の電極のつづら折り、積層や巻回、積層や巻回後の第1の電極間の熱接着等を目的の電池形態に応じて実施することができる。
<制御部>
図8は、制御部の主要なハードウェアブロック図の一例である。図8に示すように、制御部800は、例えば、CPU801と、ROM802と、RAM803と、NVRAM804と、ASIC805と、I/O806と、操作パネル807とを有している。
CPU801は、電池用積層体製造装置の全体の制御を司る。ROM802は、CPU801が実行するプログラム及びその他の固定データを格納する。RAM803は、電池用積層体の製造に関するデータ等を一時格納する。NVRAM804は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリである。ASIC805は、画像処理及びその他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。I/O806は、絶縁層形成部600や電極設置部400等と信号を入出力するためのインターフェイスである。操作パネル807は、制御部800に必要な情報の入力及び表示を行う。
図9は、制御部の主要な機能ブロック図の一例である。図9に示すように、制御部800は、機能ブロックとして、絶縁層形成制御部851と、電極設置制御部852と、電極加工制御部853とを有している。
絶縁層形成制御部851は、絶縁層形成部600を制御する。例えば、絶縁層形成制御部851は、液体付与部100に対して、液体組成物を付与するタイミングや量を制御するための指令を出す。例えば、インクジェット印刷で絶縁層を形成する場合は、絶縁層形成制御部851は、所定の波形データ及び吐出周波数等の吐出条件、並びに所定のタイミングと滴数で液体組成物を付与するように液体付与部100に指示を出す。
また、例えば、絶縁層形成制御部851は、照射部200に対して、液体組成物に活性エネルギー線を照射する際のタイミングや照射量等を制御するための指令を出す。また、例えば、絶縁層形成制御部851は、除去部300に対して、絶縁層に残存する溶媒を加熱して乾燥させて除去する際のタイミングや加熱量等を制御するための指令を出す。
電極設置制御部852は、例えば、電極設置部400に対して、電極を吸着するタイミングや、吸着した電極を搬送する速度等を制御するための指令を出す。電極設置部400がアライメント機構を有する場合は、電極設置制御部852は、カメラ等の画像センサーからの位置情報に基づいて、第2の電極の設置位置を調整するようにアライメント機構を制御する。
電極加工制御部853は、例えばレーザを用いて第1の電極の裁断を行う場合には、電極加工部500に対して、レーザの出射光量を制御したり、カメラ等の画像センサーからの位置情報に基づいてレーザを走査したりする指令を出す。また、例えば、電極加工制御部853は、電極加工部500に対して、第1の電極のつづら折り、積層、巻回等の開始タイミングや終了タイミング等を制御する指令を出す。また、例えば、電極加工制御部853は、電極加工部500に対して、積層や巻回後の第1の電極間の熱接着等を行う際の加熱温度や加熱時間を制御する指令を出す。
以下、実施例及び比較例を挙げて電池等について更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例]
まず、各実施例及び各比較例で用いる負極及び正極を作製した。
<負極の作製>
負極合材層形成用として、グラファイト97.0質量%、増粘剤(カルボキシメチルセルロース)1.0質量%、高分子(スチレンブタジエンゴム)2.0質量%、溶媒として水100.0質量%を加えて、負極塗料を作製した。この負極塗料を銅箔基体の両面に塗布後乾燥させて、負極合材層の目付量が片面9.0mg/cmとなる負極を得た。次に、ロールプレス機を用いて電極の堆積密度が1.6g/cmになるようプレスし、使用する負極を得た。このとき、負極の総膜厚は112.0μmであった。
<正極の作製>
正極活物質としてニッケル酸リチウム(NCA)92.0質量%、導電材としてアセチレンブラック3.0質量%、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)5.0質量%を用意し、これらをN-メチルピロリドン(NMP)中に分散させて正極塗料を作製した。この正極塗料をアルミニウム箔基体の両面に塗布後乾燥させて、正極合材層の目付量が片面15.0mg/cmとなる正極を得た。次に、ロールプレス機で電極の体積密度が2.8g/cmとなるようにプレスし、使用する正極を得た。このとき、正極の総膜厚は132.0μmであった。最後に、金型打ち抜き機(打ち抜き面積:47.0mm×27.0mm)を用いて正極を打ち抜いた。
[実施例1]
-絶縁層形成液体組成物の調整-
以下に示す割合で材料を混合し絶縁層成液体組成物を調製した。重合性化合物Aとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製)を29.0質量%、溶媒(ポロジェン)としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業株式会社製)を70.0質量%、重合開始剤としてIrgacure184(BASF社製)を1.0質量%の割合で混合し、絶縁層形成用液体組成物を得た。
<絶縁層の形成、第2の電極の設置>
図6に示した電池用積層体の製造装置を用いて絶縁層の形成及び第2の電極の設置を実施した。
-絶縁層の形成-
まず、機能層形成用の液体組成物をダイコート印刷装置に充填した。第1の電極となる負極は集電体幅60mm、合材層幅50mmのロール形状で用意され、50mm/secで搬送された負極に対し、液体組成物の吐出量を制御して、絶縁層を膜厚20.0μmになるよう負極合材層両面に形成した。その後、直ちに、N雰囲気下において、塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)し、硬化させた。次に、温風乾燥炉を用い、硬化物を120℃で1分間加熱することで溶媒を除去し、絶縁層付きの第1の電極を得た。
-第2の電極の設置-
絶縁層形成後に正極を第2の電極として、絶縁層付きの第1の電極の絶縁層(薄膜領域)上に位置する様に設置した。その後、第2の電極が設置された絶縁層付きの第1の電極を60.0mm×30.0mmのサイズになる様に裁断し、第1の電極セットを得た。
[評価1:膜衝撃耐性試験]
得られた第1の電極セットに対し、下記の評価手順1-1~1-3に従って強度試験を実施した。図15にその結果を示す。
手順1―1:荷重の印加
得られた第1の電極セットに、上部よりピンを押し当てて荷重を印加した。
なお、比較例1~8の場合は、第2の電極を設置しないため、第1の電極セットに代えて、第2の電極が設置されていない絶縁層付きの第1の電極に対して、強度試験を実施した。
手順1-2:電解液注液前の電池の作製
比較例1~8の場合のみ、まず正極を対向させて積層する。外装としてラミネート外装材を用いて封止し、図14に示す電解液中注液前の電池を作製した。
手順1-3:正負極間の短絡評価
得られた電池に関して、デジタルマルチメータで正負極間が短絡をするかを確認した。短絡の判定基準は、デジタルマルチメータに表示される抵抗値に基づいて、下記のとおりとした。
a:短絡なし(30MΩ以上)
b:短絡あり(30MΩ未満)
[評価2:電池駆動確認]
評価1で得られた電解液注液前の電池を下記評価手順2-1~2-2に従って電池駆動試験を実施した。ただし、評価1で短絡ありと判定された場合は、評価2は実施していない。図15にその結果を示す。
手順2-1:電池の作製
評価1で得られた電解液注液前の電池に対し、120℃12hで真空乾燥を行い、電解液を注液した。その際、実施例4および比較例4は電極端部において積層上下に位置する第1の電極の厚膜領域は加熱接着されていた。なお、電解液としては、炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジメチル(DMC)の混合物(質量比が「EC:DMC=1:1」の混合物)に対し、電解質であるLiPF6が濃度1.5mol/Lとなるように添加されている溶液を用いた。
手順2-2:電池初期容量測定
作製した電池の正極引き出し線と負極引き出し線とを、充放電試験装置に接続し、最大電圧4.2V、電流レート0.2C、5時間で定電流定電圧充電し、充電完了後、40℃の恒温槽で5日間静置した。その後、電流レート0.2Cで2.5Vまで定電流放電させた。その後、最大電圧4.2V、電流レート0.2C、5時間で定電流定電圧充電し、10分の休止を挟んで、電流レート0.2Cで2.5Vまで定電流放電させた。このときの放電容量を初期容量とした。
a:初期容量が理論容量±10%未満の容量を確認
b:初期容量が理論容量±10%以上の容量を確認
[比較例1]
実施例1において、第2の電極の設置を下記に示す手順に変更した以外は、実施例1と同様にして絶縁層付き第1の電極を得た。その後、実施例1と同様に評価1及び2を実施した。図15にその結果を示す。
-第2の電極の設置-
絶縁層形成後に正極を第2の電極として設置せず、第1の電極を60.0mm×30.0mmのサイズになる様に裁断し、第1の電極を得た。
[実施例2]
実施例1において、絶縁層の形成を下記に示す手順に変更した以外は、実施例1と同様にして第2の電極が設置された絶縁層付きの第1の電極セットを得た。その後、実施例1と同様に評価1及び2を実施した。図15にその結果を示す。
-絶縁層の形成-
図7に示した製造装置を用いて絶縁層の形成及び第2の電極の設置を実施した。まず、機能層形成用の液体組成物をGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填した。そして、負極に対し、液体組成物の吐出量を制御して、絶縁層(薄膜領域)および絶縁層(厚膜領域)を図11に示すパターン画像形状となる様に負極合材層両面に形成した。絶縁層(薄膜領域)の面積は47.0mm×27.0mmで膜厚は20.0μmとした、また、絶縁層(厚膜領域)の膜厚は26.0μmとした。その後、直ちに、N雰囲気下において、塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)し、硬化させた。次に、温風乾燥炉を用い、硬化物を120℃で1分間加熱することでポロジェンを除去し、絶縁層を得た。
[比較例2]
実施例2において、第2の電極の設置を下記に示す手順に変更した以外は、実施例2と同様にして絶縁層付き第1の電極を得た。その後、実施例1と同様に評価1及び2を実施した。図15にその結果を示す。
-第2の電極の設置-
絶縁層形成後に正極を第2の電極として設置せず、第1の電極を60.0mm×30.0mmのサイズになる様に裁断し、第1の電極を得た。
[実施例3]
実施例1において、絶縁層形成液体組成物の形成を下記に示す手順に変更した以外は、実施例1と同様にして第2の電極が設置された絶縁層付きの第1の電極セットを得た。その後、実施例1と同様に評価1及び2を実施した。図15にその結果を示す。
-絶縁層形成液体組成物の形成-
重合性化合物BとしてEBECRYL8402(ダイセル・オルネクス株式会社製)を39.0質量%、ポロジェンとしてジイソブチルケトン(関東化学工業株式会社製)を60.0質量%、重合開始剤としてIrgacure819(BASF社製)を1.0質量%の割合で混合し、絶縁層形成用液体組成物を得た。
[比較例3]
実施例3において、第2の電極の設置を下記に示す手順に変更した以外は、実施例3と同様にして絶縁層付き第1の電極を得た。その後、実施例1と同様に評価1及び2を実施した。図15にその結果を示す。
-第2の電極の設置-
絶縁層形成後に正極を第2の電極として設置せず、第1の電極を60.0mm×30.0mmのサイズになる様に裁断し、第1の電極を得た。
[実施例4]
実施例3において、絶縁層の形成を下記に示す手順に変更した以外は、実施例3と同様にして第2の電極が設置された絶縁層付きの第1の電極セットを得た。その後、実施例1と同様に評価1及び2を実施した。図15にその結果を示す。
-絶縁層の形成-
図7に示した製造装置を用いて絶縁層の形成及び第2の電極の設置を実施した。
機能層形成用の液体組成物をGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填した。負極に対し、液体組成物の吐出量を制御して、絶縁層(薄膜領域)および絶縁層(厚膜領域)を図11に示すパターン画像形状となる様に負極合材層両面に形成した。絶縁層(薄膜領域)の面積は47.0mm×27.0mmで膜厚は20.0μmとした、また、絶縁層(厚膜領域)の膜厚は26.0μmとした。その後、直ちに、N雰囲気下において、塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)し、硬化させた。次に、温風乾燥炉を用い、硬化物を120℃で1分間加熱することでポロジェンを除去し、絶縁層を得た。
[比較例4]
実施例4において、第2の電極の設置を下記に示す手順に変更した以外は、実施例4と同様にして絶縁層付き第1の電極を得た。その後、実施例1と同様に評価1及び2を実施した。図15にその結果を示す。
-第2の電極の設置-
絶縁層形成後に正極を第2の電極として設置せず、第1の電極を60.0mm×30.0mmのサイズになる様に裁断し、第1の電極を得た。
[実施例5]
実施例1において、絶縁層形成液体組成物の形成を下記に示す手順に変更した以外は、実施例1と同様にして第2の電極が設置された絶縁層付きの第1の電極セットを得た。その後、実施例1と同様に評価1及び2を実施した。図15にその結果を示す。
-絶縁層形成液体組成物の形成-
無機固体物としてα-アルミナ(一次粒子径(D50)が0.5μmで、比表面積が7.8g/m)を40.0質量%、ジメチルスルホキシドとエチレングリコールの混合溶液(DMSO-EG)を58.0質量%、分散剤としてマリアリムHKM-150A(日油社製)を2.0質量%の比率で混ぜ合わせたプレ分散液を調製した。このプレ分散液を、ジルコニアビーズ(Φ2mm)と一緒に容器に入れ、冷凍ナノ粉砕機NP-100(シンキー社製)を用いて1500rpmで3分間の分散処理を行い、分散液を得た。得られた分散液から25μmのメッシュフィルターを用いてジルコニアビーズを取り除き、絶縁層形成液体組成物を作製した。
[比較例5]
実施例5において、第2の電極の設置を下記に示す手順に変更した以外は、実施例5と同様にして絶縁層付き第1の電極を得た。その後、実施例1と同様に評価1及び2を実施した。図15にその結果を示す。
-第2の電極の設置-
絶縁層形成後に正極を第2の電極として設置せず、第1の電極を60.0mm×30.0mmのサイズになる様に裁断し、第1の電極を得た。
[実施例6]
実施例1において、絶縁層の形成を下記に示す手順に変更した以外は、実施例1と同様にして第2の電極が設置された絶縁層付きの第1の電極セットを得た。その後、実施例1と同様に評価1及び2を実施した。図15にその結果を示す。
-絶縁層の形成-
図7に示した製造装置を用いて絶縁層の形成及び第2の電極の設置を実施した。機能層形成用の液体組成物をGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填した。負極に対し、液体組成物の吐出量を制御して、絶縁層(薄膜領域)および絶縁層(厚膜領域)が下記構成になるよう図11の様にパターン画像状の塗布領域を負極両面に形成した。絶縁層(薄膜領域)の面積は47.0mm×27.0mmで膜厚は20.0μmとした、また、絶縁層(厚膜領域)の膜厚は26.0μmとした。その後、直ちに、N雰囲気下において、塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)し、硬化させた。次に、温風乾燥炉を用い、硬化物を120℃で1分間加熱することでポロジェンを除去し、絶縁層を得た。
[比較例6]
実施例6において、第2の電極の設置を下記に示す手順に変更した以外は、実施例6と同様にして絶縁層付き第1の電極を得た。その後、実施例1と同様に評価1及び2を実施した。図15にその結果を示す。
-第2の電極の設置-
絶縁層形成後に正極を第2の電極として設置せず、第1の電極を60.0mm×30.0mmのサイズになる様に裁断し、第1の電極を得た。
図15より、実施例の何れについても、評価1及び評価2の両方においてaの評価が得られていることがわかる。すなわち、図15の結果は、第2の電極を設置することにより、膜の衝撃に対する耐性が向上し、良好な電池特性が得られることを示している。また、この結果は、絶縁層を形成する材料の種類によらず、第2の電極を設置したかどうかのみに依存している。つまり、絶縁層を形成できる材料であれば絶縁層は有機材料であっても無機材料であってもよく、第2の電極を設置することで、膜の衝撃に対する耐性が向上し、良好な電池特性が得られるといえる。
さらに、ガラス転移温度(Tg)の低い重合性化合物B等を絶縁層の材料として使用した場合は、第2の電極を設置して積層した後の加温によって、電極端部において積層上下に位置する第1の電極の厚膜領域が加熱接着されることが確認され、積層後に電極ズレの生じにくい積層体が得られることも示された。
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
1a 印刷装置
1b 収容容器
1c 供給チューブ
2a 光照射装置
2b 重合不活性気体循環装置
3a 加熱装置
4a 第2の電極容器
4b 第2の電極搬送装置
5 電極加工装置
6 第1の電極
7 液体組成物
8 ロール部
9 第1の電極の集電体
10 第1の電極の活物質
11a 絶縁層の薄膜領域
11b 絶縁層の厚膜領域
12 第2の電極の集電体
13 第2の電極の活物質
100 液体付与部
200 照射部
300 除去部
400 電極設置部
500 電極加工部
600 絶縁層形成部
800 制御部
801 CPU
802 ROM
803 RAM
804 NVRAM
805 ASIC
806 I/O
807 操作パネル
851 絶縁層形成制御部
852 電極設置制御部
853 電極加工制御部
特開2013-191550号公報

Claims (20)

  1. 第1の電極上に液体組成物を付与して絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
    前記絶縁層が形成された前記第1の電極上に第2の電極を設置する電極設置工程と、を有し、
    前記絶縁層形成工程と前記電極設置工程とを一連の搬送によって実施する、電池用積層体の製造方法。
  2. 前記絶縁層形成工程よりも後に、前記第1の電極を加工する電極加工工程を有する、請求項1に記載の電池用積層体の製造方法。
  3. 前記電極加工工程では、前記第2の電極が設置された前記第1の電極を巻回または積層する、請求項2に電池用積層体の製造方法。
  4. 前記電極加工工程では、前記第2の電極が設置された前記第1の電極において、前記第1の電極を裁断する、請求項2又は3に記載の電池用積層体の製造方法。
  5. 前記絶縁層は、融点またはガラス転移点を有する材料を含み、
    前記電極加工工程では、前記絶縁層が形成された前記第1の電極上に第2の電極が設置された電極積層体を複数個作製し、一の前記電極積層体と他の前記電極積層体は、加熱により少なくとも一部が接着される、請求項4に記載の電池用積層体の製造方法。
  6. 前記電極加工工程では、前記第2の電極が設置される前の前記第1の電極を裁断し、
    前記電極加工工程の直後に前記電極設置工程を実施する、請求項2又は3に記載の電池用積層体の製造方法。
  7. 前記第1の電極は負極であり、前記第2の電極は正極である、請求項1乃至6の何れか一項に記載の電池用積層体の製造方法。
  8. 前記絶縁層形成工程では、前記絶縁層は、凹部と凸部を含む凹凸パターンを有する形状に形成される、請求項1乃至7の何れか一項に記載の電池用積層体の製造方法。
  9. 前記凸部は、前記第2の電極を設置する領域の外側に形成される、請求項8に記載の電池用積層体の製造方法。
  10. 前記電極設置工程は、前記第2の電極の設置位置を調整するアライメント工程を有する、請求項1乃至9の何れか一項に記載の電池用積層体の製造方法。
  11. 第1の電極上に液体組成物を付与して絶縁層を形成する絶縁層形成部と、
    前記絶縁層が形成された前記第1の電極上に第2の電極を設置する電極設置部と、を有し、
    前記絶縁層形成部及び前記電極設置部は、前記第1の電極が搬送される一連の搬送領域に配置されている、電池用積層体の製造装置。
  12. 前記絶縁層が形成された前記第1の電極を加工する電極加工部を有する、請求項11に記載の電池用積層体の製造装置。
  13. 前記電極加工部は、前記第2の電極が設置された前記第1の電極を巻回または積層する、請求項12に記載の電池用積層体の製造装置。
  14. 前記電極加工部は、前記第2の電極が設置された前記第1の電極において、前記第1の電極を裁断する、請求項12又は13に記載の電池用積層体の製造装置。
  15. 前記絶縁層は、融点またはガラス転移点を有する材料を含み、
    前記電極加工部は、前記絶縁層が形成された前記第1の電極上に第2の電極が設置された電極積層体を複数個作製し、一の電極積層体と他の電極積層体を加熱し、少なくとも一部を接着する、請求項14に記載の電池用積層体の製造装置。
  16. 前記電極加工部は、前記第2の電極が設置される前の前記第1の電極を裁断し、
    前記電極設置部は、裁断された前記第1の電極上に第2の電極を設置する、請求項12又は13に記載の電池用積層体の製造装置。
  17. 前記第1の電極は負極であり、前記第2の電極は正極である、請求項11乃至16の何れか一項に記載の電池用積層体の製造装置。
  18. 前記絶縁層形成部は、前記絶縁層を、凹部と凸部を含む凹凸パターンを有する形状に形成する、請求項11乃至17の何れか一項に記載の電池用積層体の製造装置。
  19. 前記絶縁層形成部は、前記第2の電極を設置する領域の外側に前記凸部を形成する、請求項18に記載の電池用積層体の製造装置。
  20. 前記電極設置部は、前記第2の電極の設置位置を調整するアライメント機構を有する、請求項11乃至19の何れか一項に記載の電池用積層体の製造装置。
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