以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<電動車両の全体構成>
図1は、本開示の実施の形態に従う電動車両の構成を概略的に示した図である。なお、以下では、電動車両がエンジンを搭載しない電気自動車である場合について代表的に説明されるが、本開示に従う電動車両は、蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行する電動車両全般(ハイブリッド車両や燃料電池車等も含まれ得る。)に適用可能である。
図1を参照して、電動車両1は、組電池10と、センサユニット20と、パワーコントロールユニット(以下「PCU(Power Control Unit)」と称する。)30と、モータジェネレータ(以下「MG(Motor Generator)」と称する。)40と、駆動軸50と、駆動輪60と、電子制御装置(以下「ECU(Electronic Control Unit)」と称する。)100とを備える。
蓄電装置である組電池10は、直列及び/又は並列に適宜接続された多数の二次電池(各二次電池は「セル」や「単電池」等とも称され、以下では、各二次電池を「セル」と称する場合がある。)を含んで構成される。各セルは、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等によって構成される。なお、リチウムイオン二次電池は、リチウムを電荷担体とする二次電池であり、電解質が液体の一般的なリチウムイオン二次電池のほか、固体の電解質を用いた所謂全固体電池も含み得る。なお、この実施の形態では、蓄電装置は組電池10としているが、蓄電装置として電気二重層キャパシタ等の大容量キャパシタを採用してもよい。
組電池10は、MG40を駆動するための電力を蓄えており、PCU30を通じてMG40へ電力を供給することができる。また、組電池10は、車両制動時等のMG40の回生発電時にPCU30を通じてMG40の発電電力を受けて充電される。なお、特に図示していないが、組電池10は、車両外部の電源から組電池10の充電するための充電装置を用いて、上記電源により充電可能である。
センサユニット20は、電圧センサ21と、電流センサ22と、温度センサ23とを含んで構成される。電圧センサ21は、組電池10の各セルの電圧VBiを検出可能に構成される。電流センサ22は、組電池10に流れる電流IBを検出する。温度センサ23は、セル毎の温度TBiを検出する。なお、温度センサ23は、隣接する複数(たとえば数個)のセルを監視単位として温度を検出してもよい。そして、各センサの検出値は、ECU100へ送信される。
PCU30は、ECU100からの制御信号に従って、組電池10とMG40との間で双方向の電力変換を実行する。PCU30は、たとえば、MG40を駆動するインバータと、インバータに供給される直流電圧を組電池10の出力電圧以上に昇圧するコンバータとを含んで構成される。
MG40は、代表的には交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。MG40は、PCU30により駆動されて回転駆動力を発生し、MG40が発生した駆動力は、駆動軸50を通じて駆動輪60に伝達される。一方、車両の制動時や下り斜面での加速度低減時には、MG40は、発電機として動作し、回生発電を行なう。MG40が発電した電力は、PCU30を通じて組電池10に供給される。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリ(ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory))と、各種信号を入出力するための入出力ポートとを含んで構成される(いずれも図示せず)。ECU100は、各センサから受ける信号並びにメモリに記憶されたプログラム及びマップに基づいてPCU30を制御することにより、MG40の駆動や組電池10の充放電を制御する。
<FSモードの説明>
本実施の形態では、所定のFS走行条件が成立すると、電動車両1の走行モードをFSモードに移行させる。たとえば、FS走行条件は、組電池10の状態を検出するセンサユニット20の故障が検出されると成立する。また、たとえば、組電池10の異常(抵抗値の異常上昇や自己放電量の異常増加等)が検知されたり、センサユニット20とECU100との間の通信異常が発生したりした場合にも、FS走行条件が成立する。そして、FSモードでは、通常走行モード(FSモードでないとき)よりも組電池10の入出力電力が抑制される。たとえば、通常走行モードよりもMG40の出力やトルクの制限を厳しくすることにより、FSモード中の組電池10の入出力電力が抑制される。
ここで、センサユニット20に故障が生じると(たとえば電圧センサ21や電流センサ22の故障)、センサユニット20によって組電池10の状態を検知することができなくなる。そのため、FSモード中に組電池10に異常が生じている場合、組電池10の入出力電力は通常走行モードに比べて抑制されているけれども、センサユニット20により組電池10の状態を検知できないまま組電池10の異常が進行してしまう可能性がある。
組電池10の異常は、電解液の液枯れや、製造時の混入異物による内部短絡、材料の異常劣化等の種々の要因により生じ得るところ、組電池10の異常の多くは、徐々に進行するものであり、異常のレベルが所定の異常検知レベルを超えると組電池10の異常として検知される。すなわち、組電池10の異常については、異常のレベルが異常検知レベルに達する前に異常の予兆が発生している。
そこで、本実施の形態に従う電動車両1では、組電池10の状態を検出するセンサユニット20の正常時に、組電池10の異常予兆が検知される。そして、組電池10の異常の予兆が検知された後にセンサユニット20の故障が検知されたときは、異常の予兆が検知されていない場合のFSモードである第1のFSモードと異なる第2のFSモードとされる。この実施の形態では、第1のFSモードでは、通常走行モードよりも組電池10の入出力電力を抑制して走行する制限走行が可能であるのに対し、第2のFSモードでは、車両システムが停止される「Ready−OFF」とされる。この第2のFSモードは、第1のFSモードよりも組電池10の使用が制限されるFSモードであり、このような第1のFSモードと異なる第2のFSモードを設けることによって、組電池10の状態が検出できないままFSモード中に組電池10の異常が進行するのを抑制することができる。
なお、センサユニット20の故障検知は、FSモードへの移行タイミングであってもよいし(すなわち、センサユニット20の故障検知によってFSモードに移行)、別の要因によるFSモードへの移行後に(すなわちFSモード中に)センサユニット20の故障が検知されたものであってもよい。
図2は、本実施の形態におけるFSモードの設定を説明するための図である。図2を参照して、線L1は、正常なセル(以下「セルA」と称する場合がある。)の電圧の推移の一例を示し、線L2は、時刻t1において異常が発生したセル(以下「セルB」と称する場合がある。)の電圧の推移の一例を示す。線L3は、組電池10のセル間におけるSOCばらつきの大きさの推移の一例を示す。このセル間のSOCばらつきの大きさは、組電池10の異常の進行度合いを示すパラメータ(電池異常検知パラメータ)の一例である。
時刻t1以前は、組電池10の異常は生じておらず、セルA,Bの電圧の推移は同等であり、セル間のSOCばらつきも生じていない。時刻t1において、セルBにてたとえば混入異物による内部短絡が発生したものとする。そのため、時刻t1以降は、セルBの電圧がセルAの電圧よりも低く推移し、セル間のSOCばらつきの大きさが上昇し始める。
なお、セル間のSOCばらつきの大きさは、たとえば、図3に示されるように、組電池10を構成する複数のセルの平均SOCとのSOC差(絶対値)が最も大きいセルのSOC差によって表すことができる。なお、SOCは温度の影響を受けるため、平均SOCは、温度ばらつきが小さいある纏まったセル群(たとえばモジュールや隣接するいくつかのセル等)の平均SOCを採用するのが好ましい。なお、図3中の値B2は、図2のしきい値B2である(後述)。
再び図2を参照して、時刻t2において、セル間のSOCばらつきの大きさが所定のしきい値B2に達すると、ECU100は、組電池10に異常の予兆が発生しているものと判定する。しきい値B2は、組電池10に異常が生じたと判定されるセル間SOCばらつきのしきい値B1よりも小さい値に設定される。このしきい値B2は、セル間SOCばらつきの大きさがこのレベルを超えると、その後に制限走行(第1のFSモード)が行なわれたとしてもSOCばらつきの大きさが異常検知レベルのしきい値B1に達する可能性があるレベルに設定され、オフライン試験や実験等により予め求められる。
そして、上述のように、この実施の形態では、時刻t2において、セル間のSOCばらつきの大きさが異常予兆検知レベルのしきい値B2に達すると、FSモードに移行した場合のFSモードを第2のFSモード(Ready−OFF)とする。すなわち、まだこの段階ではFSモードに移行していないけれども、何らかの異常が検知されてFSモードに移行した場合には、第1のFSモード(制限走行)よりも制限が厳しい第2のFSモード(この例では「Ready−OFF」によるシステム停止)に移行することが予定される。
その後、時刻t3において、たとえばセンサユニット20の故障が検出されることによりFSモードに移行するものとする。上述のように、この例では、セル間のSOCばらつきの大きさにより組電池10に異常の予兆が発生していると判定されているので、第2のFSモードへ移行され、車両システムが停止(Ready−OFF)される。これにより、時刻t3でFSモードによる走行(第1のモードによる制限走行)が開始されてセル間のSOCばらつきが異常レベルに達してしまう(時刻t4)のを防止することができる。
なお、セル間のSOCばらつきの大きさがしきい値B2に達していない状態(組電池10に異常の予兆は発生していないと判定されるレベル)においてFSモードに移行した場合には、第1のFSモードによる制限走行が行なわれたとしても制限走行中にセル間SOCばらつきの大きさが異常検知レベルのしきい値B1に達する可能性は小さいものと判断され、FSモードは第1のFSモード(制限走行)とされる。
なお、上記では、組電池10の異常及びその予兆の検知は、セル間のSOCばらつきの大きさにより判定するものとしたが、その他のパラメータを用いてもよい。たとえば、セル間の抵抗値のばらつきや容量値のばらつき等の大きさを、組電池10の異常検知パラメータとして用いてもよい。或いは、組電池10の抵抗の増加率や、組電池10の容量(満充電容量)の低下率、組電池10の自己放電量の大きさ等を、組電池10の異常検知パラメータとして用いてもよい。なお、これらの各パラメータも、組電池10の異常の進行度合いを示すパラメータである。
図4は、そのような異常検知パラメータと異常検知しきい値及び異常予兆検知しきい値との関係を示した図である。図4を参照して、異常検知しきい値は、異常検知パラメータに応じて決定され、異常検知パラメータがこのレベルにまで達すると組電池10の異常と判定されるレベルである。
異常予兆検知しきい値は、図2のセル間SOCしきい値の例でも説明したように、異常検知しきい値よりも小さい値であり、異常検知パラメータがこのレベルにまで達すると組電池10に異常の予兆が発生しているものと判定されるレベルである。
なお、異常検知しきい値は、センサユニット20のセンサ検出誤差も含めて、異常検知パラメータがこのレベルに達すると組電池10を異常と判定するレベルである。したがって、センサ検出誤差が大きい場合、組電池10の異常レベルが、組電池10に異常の予兆が発生していると判定されるレベルにはないにも拘わらず、異常検知パラメータが異常予兆検知しきい値を超え、その結果、FSモードを厳しい第2のFSモードとしてしまう可能性がある。しかしながら、この場合は、FSモード中にさらに別の異常(FSモード移行の要因となった異常とは別の異常)が発生して二重故障の状態で走行することを防止できるので、異常予兆検知しきい値を異常検知しきい値よりも小さい値に設定することは安全側であることが理解される。
図5は、ECU100により実行される組電池10の異常予兆判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示される一連の処理は、FSモード中であるか通常走行モード中であるかに拘わらず、車両システムの起動中に所定時間毎に繰り返し実行される。
図5を参照して、概略的には、ECU100は、組電池10の異常検知(異常の予兆検知も含む)に使用しているセンサ(以下「対象センサ」と称する。)が正常である場合に、所定期間毎に、対象センサの検出値を用いて組電池10の異常予兆の検知を実行する。ここで、異常予兆の検知結果が、対象センサが正常であるときの検出値を用いた結果であることを確実にするために、この実施の形態では、異常予兆の検知が実行される上記所定期間が、対象センサに故障が発生してからその故障が確定するまでの時間(故障確定時間)よりも長く設定される。そして、異常予兆の検知が実行される前に、前回(所定期間前)の検知結果を前回値として保存してから異常予兆の検知が実行され、FSモードの選定(第1のFSモードか第2のFSモードか)には、前回値として保存された検知結果が用いられる。
詳しくは、この実施の形態では、対象センサに故障が発生した場合、それが確定するまでに所定の時間(たとえば10秒程度)を要する(故障確定時間)。このような故障確定時間は、ノイズ等による故障の誤判定を回避するために設けられる。したがって、組電池10の異常予兆の検知が実行される上記所定期間を対象センサの故障確定時間よりも長くするとともに、FSモードの選定に異常予兆の検知結果の前回値を用いることによって、異常予兆の検知の実行時に対象センサの故障が発生していたとしても(故障としてまだ検知されていない状態)、異常予兆の検知結果の前回値は、確実に対象センサが正常であるときの検出値を用いた検知結果となる。
以下、異常予兆判定処理の手順について、フローチャートに沿って詳細に説明する。電池異常予兆フラグ(後述)が既にONである場合(ステップS5においてYES)、ECU100は、以降の一連の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。
電池異常予兆フラグがOFFである場合(ステップS5においてNO)、ECU100は、組電池10の異常予兆検知に使用しているセンサ(対象センサ)が正常であるか否かを判定する(ステップS10)。たとえば、セル間のSOCばらつきの大きさを異常検知パラメータとして組電池10の異常予兆検知が行なわれる場合においては、SOCの算出に電圧センサ21や電流センサ22の検出値が用いられるので、これらのセンサが対象センサとなる。
なお、対象センサが「正常」であるとは、対象センサの故障が検知されていないことを意味する。対象センサに故障が発生していても、故障が発生してから故障が確定するまでの故障確定時間は、故障として検知されず、ECU100は、対象センサを正常であると判定する。
ステップS10において、対象センサは正常であると判定されると(ステップS10においてYES)、ECU100は、前回の異常予兆検知の実行から所定期間経過したか否かを判定する(ステップS20)。上述のように、この所定期間は、対象センサの故障確定時間よりも長く設定される。なお、図示しないが、図5のフローチャートに示される一連の処理がこの所定期間毎に繰り返し実行されるようにして、ステップS20の処理を省略することも可能である。
ステップS20において、前回の異常予兆検知の実行から所定期間経過したものと判定されると(ステップS20においてYES)、ECU100は、組電池10の異常予兆の検知結果を示す電池異常予兆フラグを電池異常予兆フラグ(前回値)に格納してメモリに記憶する(ステップS30)。後述のように、この電池異常予兆フラグ(前回値)を用いて、FSモードを第1のFSモードとするか第2のFSモードとするかが決定される。
電池異常予兆フラグが電池異常予兆フラグ(前回値)に格納されると、ECU100は、組電池10の異常の進行度合いを示す電池異常検知パラメータを算出する(ステップS40)。具体的には、たとえば、対象センサである電圧センサ21や電流センサ22の検出値を用いて各セルのSOCが算出され、異常検知パラメータとしてセル間のSOCばらつきの大きさが算出される。なお、SOCの算出方法については、OCV(Open Circuit Voltage)とSOCとの関係を示すOCV−SOCカーブ(マップ等)を用いた手法や、電流Iの積算値を用いた手法等、公知の各種手法を用いることができる。
或いは、センサユニット20の各センサの検出値を用いて、各セルの抵抗値や容量値を算出し、異常検知パラメータとして、セル間の抵抗値や容量値のばらつきの大きさを算出してもよい。若しくは、センサユニット20の各センサの検出値を用いて、組電池10の初期状態からの抵抗増加率や満充電容量低下率、自己放電量の増加等を異常検知パラメータとして算出してもよい。上記のような各種パラメータが用いられる場合、セル或いは組電池10の抵抗値や容量値、自己放電量等の算出方法についても、公知の各種手法を採用することができる。
次いで、ECU100は、ステップS40の処理の実行結果に基づいて、組電池10に異常の予兆が生じているか否かを判定する(ステップS50)。すなわち、ECU100は、ステップS40において算出された異常検知パラメータが異常予兆検知しきい値(図4)に達したか否かを判定する。具体的には、異常検知パラメータとしてセル間のSOCばらつきの大きさが用いられる場合には、ECU100は、セル間のSOCばらつきの大きさがしきい値B2(図2)に達しているか否かを判定する。
そして、ステップS50において、組電池10の異常予兆があるものと判定されると(ステップS50においてYES)、ECU100は、電池異常予兆フラグをONにする(ステップS60)。なお、このステップS60において電池異常予兆フラグがONにされるまでは、電池異常予兆フラグはOFFの状態である。そして、ステップS60における電池異常予兆フラグの状態は、所定期間後の次回におけるステップS30の処理の実行時に、電池異常予兆フラグ(前回値)に格納される。
なお、ステップS10において、対象センサは正常でないと判定された場合、すなわち、対象センサの故障が検知されていると判定された場合は(ステップS10においてNO)、ECU100は、ステップS20以降の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。したがって、対象センサの故障が検知された以降は、組電池10の異常予兆の検知、及び電池異常予兆フラグの更新は行なわれず、電池異常予兆フラグ及びその前回値には、対象センサの故障が検知される直前の値が保持される。
また、ステップS20において、前回の異常予兆検知の実行から所定期間経過していないと判定された場合も(ステップS20においてNO)、ECU100は、ステップS30以降の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。さらに、ステップS50において、組電池10の異常予兆はないと判定された場合も(ステップS50においてNO)、ECU100は、ステップS60の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。
このような一連の処理により、異常予兆の検知の実行時に対象センサが故障していたとしても(故障としてまだ検知されていない状態)、電池異常予兆フラグ(前回値)には、対象センサが正常であるときのセンサ検出値を用いた検知結果が格納されていることとなる。したがって、組電池10の異常予兆の有無に応じてFSモードを選定する際に、この電池異常予兆フラグ(前回値)を用いることによって、確実に正常な対象センサの検出値に基づく異常予兆の検知結果を用いることができる。
図6は、ECU100により実行される走行モード判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示される一連の処理は、車両システムの起動中に所定時間毎に繰り返し実行される。
図6を参照して、ECU100は、FS走行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS110)。FS走行条件は、センサユニット20の故障が検出されると成立するものとするが、組電池10の異常が検知されたり、センサユニット20とECU100との間の通信異常が発生した場合にも成立する。
FS走行条件が成立していない場合には(ステップS110においてNO)、ECU100は、走行モードを通常走行モードとする(ステップS120)。この通常走行モードは、FSモードでない場合の走行モードであり、特別な走行モードを示すものではない。
ステップS110においてFS走行条件が成立していると判定されると(ステップS110においてYES)、ECU100は、図5で説明した電池異常予兆フラグ(前回値)がONであるか否かを判定する(ステップS130)。電池異常予兆フラグ(前回値)がOFFであるときは(ステップS130においてNO)、組電池10に異常の予兆はないので、ECU100は、走行モードをFSモードとするとともに、FSモードを第1のFSモードである制限走行モードとする(ステップS140)。すなわち、この場合は、通常走行モードよりも組電池10の入出力電力を抑制して走行する制限走行が可能である。
一方、ステップS130において、電池異常予兆フラグ(前回値)がONであると判定されると(ステップS130においてYES)、組電池10に異常の予兆がみられるため、ECU100は、FSモードを第2のFSモード(Ready−OFF)とする(ステップS150)。すなわち、この場合は、制限走行可能な第1のFSモードよりもさらに組電池10の使用を制限するために、車両システムが停止される。
なお、この実施の形態では、ステップS150における第2のFSモードでは、Ready−OFF(車両システムの停止)とするものとしたが、第2のFSモードはこれに限られるものではない。たとえば、第2のFSモードとして、第1のFSモードよりもさらに組電池10の入出力電力を抑制しつつ制限走行可能としてもよい。
或いは、本開示の電動車両がハイブリッド車両である場合には、第1のFSモードでは、通常走行モードよりも組電池10の入出力電力を抑制して走行するものとし、第2のFSモードでは、組電池10の入出力を禁止してEV走行(MGのみによる走行)を不可としてもよい。また、本開示の電動車両が燃料電池車である場合には、第1のFSモードでは、通常走行モードよりも組電池10の入出力電力を抑制して走行するものとし、第2のFSモードでは、組電池10の入出力を禁止して燃料電池による発電電力のみを用いて走行するものとしてもよい。
なお、図6のフローチャートからも理解できるように、FS走行条件の成立タイミングと、電池異常予兆フラグ(前回値)に基づく組電池10の異常予兆の検知タイミングとの前後は問わない。組電池10の異常予兆が検知されて電池異常予兆フラグ(前回値)がONとなった後にFS走行条件が成立した場合であっても、或いは、FS走行条件の成立後に組電池10の異常予兆が検知されて電池異常予兆フラグ(前回値)がONとなった場合であっても、ステップS150においてFSモードが第2のFSモードとされる。
図7は、電池異常予兆フラグの推移の一例を示した図である。この図7では、電池異常予兆フラグ(前回値)のほか、電池異常予兆フラグの今回値(前回値として記憶される前の値)、対象センサである電圧センサ21の故障を示す故障フラグ、及び異常検知パラメータとしての組電池10の抵抗値(推定値)の推移が示されている。
図7を参照して、時刻t21,t22,t24の各タイミングで、所定期間Δt1毎に組電池10の異常予兆の検知が実行されている。そして、時刻t23において、電圧センサ21に故障が発生したものとする。電圧センサ21の故障により、組電池10の抵抗値(演算による推定値)が上昇し、異常予兆検知しきい値Rthを超えている。このため、時刻t24において、組電池10に異常の予兆があるものと判定され、電池異常予兆フラグ(今回値)がONとなっている。
なお、時刻t23における抵抗値(推定値)の上昇は、電圧センサ21の故障によるものであり、実際には組電池10の異常の予兆は発生していない。電圧センサ21の故障が発生する前の時刻t22における異常予兆の検知タイミングにおいて、抵抗値は異常予兆検知しきい値Rthを下回っており、組電池10の異常の予兆はないと判定されている。したがって、時刻t22の時点で、電池異常予兆フラグは、今回値及び前回値ともにOFFである。
時刻t23において発生した電圧センサ21の故障は、故障確定時間Δt2(Δt1>Δt2)経過後の時刻t25において検知され(故障確定)、この時点で、電圧センサ21の故障フラグがONになるとともに、走行モードがFSモードに移行する。
上述のように、時刻t23における電圧センサ21の故障により、時刻t24において組電池10に異常の予兆があるものと判定されているので、走行モードがFSモードに移行する時刻t25において、電池異常予兆フラグ(今回値)はONである。しかしながら、前回の時刻t22における異常予兆の検知タイミングにおいて、組電池10の異常の予兆はないと判定されているので、走行モードがFSモードに移行する時刻t25において、電池異常予兆フラグ(前回値)はOFFである。したがって、この例では、FSモードは、第1のFSモード(制限走行モード)となる。
仮に、時刻t25におけるFSモードへの移行時に、電池異常予兆フラグ(今回値)を用いてFSモードの選定(第1のFSモードか第2のFSモードか)を行なうと、故障した電圧センサ21の検出値を用いた異常予兆の判定結果を用いることとなり、組電池10の異常予兆は発生していないにも拘わらず第2のFSモードが選択されてしまうこととなる。これに対して、この実施の形態では、電池異常予兆フラグ(前回値)を用いてFSモードが選定される。そして、異常予兆検知の実行間隔(所定期間Δt1)を対象センサ(電圧センサ21)の故障確定時間Δt2よりも長くすることによって、対象センサに故障が発生する前のセンサ検出値に基づく電池異常予兆フラグ(前回値)を用いてFSモードを選定することができる。この例では、組電池10の異常予兆は発生しておらず、FSモードに第1のFSモード(制限走行モード)を選定できている。なお、時刻t25においてセンサの故障が確定した後は、電池異常予兆フラグの更新は行なわれないので(図5のステップS10においてNO)、電池異常予兆フラグ(今回値)に基づいて電池異常予兆フラグ(前回値)がONとなることはない。
以上のように、この実施の形態においては、組電池10の状態を検出するセンサ(センサユニット20)の正常時に組電池10の異常の予兆が検知され、異常の予兆がある場合には、FSモードが、第1のFSモード(制限走行モード)と異なる第2のFSモード(「Ready−OFF」による車両システムの停止)とされる。これにより、センサ故障によって組電池10の状態が検出できないままFSモード中に組電池10の異常が進行するのを抑制することができる。したがって、この実施の形態によれば、FSモード中に組電池10を適切に保護することができる。
また、この実施の形態においては、組電池10の異常の予兆が所定期間Δt1毎に検知されるところ、所定期間Δt1をセンサの故障確定時間Δt2よりも長くするとともに、異常予兆の検知結果を示す電池異常予兆フラグの前回値を用いてFSモードが選定される。これにより、センサの故障が発生しても、センサが故障する前のセンサ正常時のセンサ検出値を用いて組電池10の異常の予兆を正確に検知することができ、その予兆検知結果に基づいてFSモードを切替えることができる。
なお、上記において、組電池10は、「蓄電装置」の一実施例に対応し、PCU30及びMG40は、「駆動装置」の一実施例に対応する。そして、ECU100は、「制御装置」の一実施例に対応する。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。