以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1は、実施の形態における車両としてのハイブリッド車両10の制御装置で、全体の構成を示す模式的な平面図である。
ハイブリッド車両10は、エンジン100と、第1モータジェネレータ110と、第2モータジェネレータ120と、動力分割機構130と、減速機140と、蓄電装置150とを含む。
ECU(Electronic Control Unit)170を備える駆動システムは、第2モータジェネレータ120により、モータ走行が行なわれる場合の駆動力を制御する。ECU170は、主に車両情報および報知内容を読み書き可能なメモリ部171、エンジン100を制御するECU−E172、蓄電装置150を監視または制御するECU−B173、カウンタ部174、タイマ部175などを含み、さらに複数のECUに分割するようにしてもよい。
ハイブリッド車両10は、エンジン100および第2モータジェネレータ120のうちの少なくともいずれか一方からの駆動力により走行する。すなわち、エンジン100および第2モータジェネレータ120のうちのいずれか一方もしくは両方が、運転状態に応じて駆動源として自動的に選択される。
たとえばアクセル開度が小さい場合および車速が低い場合などには、第2モータジェネレータ120のみを駆動源としてハイブリッド車両10が走行する。この場合、エンジン100が停止される。
また、アクセル開度が大きい場合、車速が高い場合、蓄電装置150の電圧センサ151による検出値から求められた残存容量(SOC:State Of Charge)が低下した場合などには、エンジン100が駆動される。
この場合、エンジン100のみを駆動源として、このハイブリッド車両10を走行させる場合と、エンジン100および第2モータジェネレータ120の両方を駆動源として、このハイブリッド車両10を走行させる場合とがある。
また、このハイブリッド車両10では、エンジン100の回転駆動力を用いて、第1モータジェネレータ110を回転させて、発電機として用いる。そして発電された電力を、第2モータジェネレータ120に供給することにより、第2モータジェネレータ120を回転駆動させて、ハイブリッド車両10を走行させる場合がある。
さらに、このハイブリッド車両10は、通常走行中、HV走行モードとEV走行モードとをたとえば自動で切換えて走行する。なお、HV走行モードとEV走行モードとを手動で切換えるようにしてもよい。
HV走行モードでは、ECU170が、蓄電装置150の残存容量を所定の目標値に維持しつつ、ハイブリッド車両10を走行させる。
EV走行モードでは、ECU170が、走行用として蓄電装置150の残存容量を所定の目標値に維持することなく、主に第2モータジェネレータ120の駆動力のみでハイブリッド車両10を走行させる。ただし、EV走行モードでは、アクセル開度が高い場合および車速が高い場合などには、駆動力を補うためにエンジン100が駆動される。
HV走行モードは、HVモードと記載される場合もある。同様に、EV走行モードは、EVモードと記載される場合もある。
エンジン100は、内燃機関である。エンジン100には、燃料を供給する燃料パイプ190を介して、燃料タンク180が接続されている。この燃料タンク180内の燃料は、燃料ポンプ182によって吐出されて燃料パイプ190内をエンジン100へ向けて供給される。燃料ポンプ182は、ECU170からの駆動信号fsに応じて吐出量を変更可能としている。
ECU170からは、ユーザ出力要求Pusに基づいて演算されるエンジン出力要求Peが出力される。エンジン100にエンジン出力要求Peが入力されると、エンジン100は、エンジン出力要求Peに応じて走行駆動力を出力する。エンジン100の走行駆動力は、クランク軸から回転駆動軸を介して連結された動力分割機構130に伝達されて、ハイブリッド車両10のHV走行状態での走行駆動力の一部として用いられる。
エンジン100に導入された空気と、燃料タンク180から送られてくる燃料との混合気は、エンジン100の筒内の燃焼室で燃焼されて、出力軸であるクランクシャフトの回転駆動力となる。
また、ECU170のECU−E173では、ユーザ出力要求Pusに基づいてエンジン出力要求Peと共に、モータ駆動信号PWI1,PWI2を演算する。ECU170からは、このモータ駆動信号PWI1,PWI2が、駆動システムの要部を構成する駆動制御回路(Power Control Unit:以下PCUとも記す。)230に出力される。
このPCU230は、システムメインリレー250(以下、SMR250とも記す。)および昇圧コンバータ回路240を介在させて、蓄電装置150に接続されている。
この蓄電装置150には、電圧センサ151,電流センサ152によって検出された検出値をECU−B172に出力して演算処理を行なわせる電力監視ユニット301が設けられている。
ECU−B172では、残存容量SOC、出力許可放電電力上限値Wout(単位はワット)が求められて、ECU−E173に送られる。
ECU−E173で求められたモータ駆動信号PWI1,PWI2は、PCU230の第1インバータ回路231,第2インバータ回路232で、回転駆動力を出力させる電力の調整に用いられて、第1モータジェネレータ110、第2モータジェネレータ120を回転駆動させる際、各退避走行モードでの走行駆動力を制限する。
第1モータジェネレータ110、第2モータジェネレータ120は交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
これらの第1モータジェネレータ110、第2モータジェネレータ120は、それぞれの第1インバータ回路231,第2インバータ回路232によって調整された電力を用いて、回転駆動力を発生させて、主にモータ走行を行なう際、およびHV走行を行なう際に間欠または連続走行駆動力とする。
また、エンジン100、第1モータジェネレータ110および第2モータジェネレータ120は、動力分割機構130を介して接続されている。エンジン100が発生する回転駆動力は、動力分割機構130により、2経路に分割される。一方は減速機140を介して車軸に支持された前輪160を駆動する経路である。もう一方は、第1モータジェネレータ110に伝達されて回転駆動により発電を行なう経路である。
動力分割機構130で分割されたエンジン100の回転駆動力は、第1モータジェネレータ110を回転駆動させて発電を行なわせる。このとき、ハイブリッド車両10が停車中である場合には、第2モータジェネレータ120の反トルクにより、車軸は回転しない。
また、第1モータジェネレータ110の回転駆動軸は、エンジン100のクランク軸に連結されていて、第1モータジェネレータ110の回転駆動力が、エンジン100を起動させる際に、クランキングを行なう回転駆動力として用いられる。
さらに、第1モータジェネレータ110は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを備える、三相交流回転電機である。第1モータジェネレータ110により発電された電力は、ハイブリッド車両10の走行状態や、蓄電装置150の残存容量SOCの状態に応じて使い分けられる。
たとえば、通常走行モードでは、第1モータジェネレータ110により発電された電力は、そのまま第2モータジェネレータ120を駆動させる電力となる。一方、蓄電装置150の残存容量SOCが予め定められた値よりも低い場合、第1モータジェネレータ110により発電された電力は、PCU230のインバータにより交流から直流に変換され、その後、昇圧コンバータ回路240などにより電圧変換され、蓄電装置150に蓄えられる。
第2モータジェネレータ120は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを備える、三相交流回転電機である。第2モータジェネレータ120は、蓄電装置150に蓄えられた電力および第1モータジェネレータ110により発電された電力のうちの少なくともいずれかの電力により回転駆動力を発生させる。第2モータジェネレータ120の回転駆動力は、減速機140を介して前輪160に伝えられる。
これにより、第2モータジェネレータ120はエンジン100と共に、または、第2モータジェネレータ120が単独で発生させる回転駆動力によりハイブリッド車両10を走行させることができる。すなわち、ハイブリッド車両10は、蓄電装置150に蓄えられた電力を用いて走行可能である。なお、前輪160の代わりにもしくは加えて後輪を駆動するようにしてもよい。
動力分割機構130は、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤとを含む遊星歯車から構成される。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤと係合する。キャリアは、自転可能であるようにピニオンギヤを支持する。サンギヤは第1モータジェネレータ110の回転軸に連結される。キャリアはエンジン100のクランクシャフト101に連結される。リングギヤは第2モータジェネレータ120の回転軸および減速機140に連結される。
蓄電装置150は、複数のバッテリセルを一体化したバッテリモジュールを、さらに複数直列に接続して構成された組電池である。蓄電装置150の電圧は、たとえば200V程度である。蓄電装置150には、システムメインリレー250、昇圧コンバータ回路240および駆動システムとしてのPCU230を介在させて、第1モータジェネレータ110および第2モータジェネレータ120が接続されている。
このPCU230は、第1モータジェネレータ110と接続されて駆動電力を出力する第1インバータ回路231および第2モータジェネレータ120と接続されて駆動電力を出力する第2インバータ回路232を備える。第1モータジェネレータ110、および第2モータジェネレータ120への出力は、ECU170から入力されるモータ駆動信号PWI1,PWI2によって調整されている。
そして、この実施の形態のハイブリッド車両10では、通常のHV走行モードおよび、EV走行モードによる通常走行モードの他に、複数の退避走行モードがECU170のECU−E173によって選択可能となるように構成されている。
この退避走行モードは、ECU170が実行するフェールセーフ制御の一つである。このフェールセーフ制御では、故障部位に応じて駆動源で消費される燃料または電力が制限されて走行駆動力が抑制される。これにより、走行可能な航続距離が延ばされる。
たとえば、故障部位が、燃料ポンプ182などの燃料供給関係の部品、エンジン100関係の部品または発電機関係の部品である場合は、退避走行モードとしてモータ走行モードが選択される。モータ走行モードでは、エンジン100が停止された状態で、第1モータジェネレータ110,第2モータジェネレータ120の回転駆動力によってハイブリッド車両10を走行させる。
また、故障部位が、第2モータジェネレータ120などのモータ関係の部品である場合は、退避走行モードとしてエンジン直行モードが選択される。エンジン直行モードでは、第2モータジェネレータ120が故障などによって停止されている状態で、主にエンジン100の回転駆動力によってハイブリッド車両10を走行させる。
さらに、故障部位が、蓄電装置150関係の部品である場合は、退避走行モードとしてバッテリレス走行モードが選択される。バッテリレス走行モードでは、蓄電装置150が、SMR250によって電気システムから遮断された状態で、エンジン100の回転駆動力または、第1モータジェネレータ110の起電力で直接、第2モータジェネレータ120を回転駆動させて、ハイブリッド車両10を走行させる。
なお、図1においては、第1モータジェネレータ110および第1インバータ回路231と、第2モータジェネレータ120および第2インバータ回路232とが2組、設けられる構成が例として示される。
これに限らず本発明は、少なくとも1組のモータジェネレータおよびインバータが備えられる車両であれば適用可能であり、モータジェネレータが1つの場合、あるいは2つより多くのモータジェネレータが設けられる構成であってもよい。
また、図1ではエンジン100と第1モータジェネレータ110,第2モータジェネレータ120とを備えるハイブリッド車両を例として説明するが、エンジン100のみの車両でもよく、また、他の構成ではエンジン100は必須ではなく、エンジン100を有さない電気自動車および燃料電池車などにも本発明は適用可能である。
第1モータジェネレータ110,第2モータジェネレータ120には、内部のコイルの温度を検出するための温度センサ141,142がそれぞれ設けられる。温度センサ141,142は、検出した温度TM1,TM2をECU170へそれぞれ出力する。なお、温度センサ141,142についても必須な構成ではなく、第1モータジェネレータ110,第2モータジェネレータ120への通電電流の積算値等から第1モータジェネレータ110,第2モータジェネレータ120の温度を算出するようにしてもよい。
報知部200は、ユーザに対してさまざまな情報を通知するための装置である。報知部200は、マルチディスプレイ装置210および警報出力部290を含む。マルチディスプレイ装置210は、ユーザへ視覚的に情報を提供するための装置である。
たとえば、マルチディスプレイ装置210は、運転席のフロントパネルに設けられた表示部211や、ナビゲーション装置のナビ表示パネル212などに対応する。
マルチディスプレイ装置210は、ECU170から出力された報知信号AV,AV1を受信し、その報知信号AV,AV1にしたがって表示を行なう。
また、警報出力部290は、ユーザへ聴覚的に情報を提供するための装置であり、たとえば、ブザー、チャイムまたはボイスアラームなどを採用することができる。警報出力部290は、ECU170から報知信号ALMを受信し、その報知信号ALMに従った警報を出力する。
ECU170は、いずれも図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号および報知信号の出力を行なうとともに、ハイブリッド車両10および各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
ECU170は、電力監視ユニット301に設けられたECU−B172に接続されている。ECU−B172では、蓄電装置150に備えられる電圧センサ151,電流センサ152からの電圧Vbおよび電流Ibの検出値を受け、蓄電装置150の残存容量SOCを演算する。
また、ECU170には、ECU−E173が設けられている。ECU−E173は、温度センサ141,142からの第1モータジェネレータ110の温度TM1,TM2、蓄電装置150の電力量や検出されている温度の異常信号、第1インバータ回路231,第2インバータ回路232についての故障信号FLT1,FLT2などの車両情報が、送られてくる。
また、ECU−E173には、ECU−B172から送られてくる電圧Vbおよび電流Ibの検出値、蓄電装置150の残存容量SOC、Woutなどの車両情報が入力される。
ECU170には走行モード判定部が設けられていて、これらの情報に基づいて走行モードがこの走行モード判定部で選択される。そして、選択されたモードに基づき、ハイブリッド車両10の走行制御が行なわれる。
なお、図1においては、ECU170として1つの制御装置を設ける構成としているが、機能ごとまたは制御対象機器ごとに個別の制御装置を設ける構成としてもよい。
図2は、第1モータジェネレータ110,第2モータジェネレータ120の駆動回路の詳細を説明するための図である。
図1および図2を参照して、蓄電装置150は電力線PL1,NLによって昇圧コンバータ回路240に接続される。
SMR250は、蓄電装置150の正極端と電力線PL1とに接続されるリレー、および蓄電装置150の負極端と電力線NL1とに接続されるリレーを含む。そして、SMR250は、ECU170からの制御信号SE1に基づいて、蓄電装置150と昇圧コンバータ回路240との間での電力の供給と遮断とを切換える。
昇圧コンバータ回路240は、リアクトルL1と、スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2とを含む。スイッチング素子Q1,Q2は、電力線PL2と電力線NL1との間に直列に接続される。スイッチング素子Q1,Q2は、ECU170からのスイッチング制御信号PWCによって制御される。
本実施の形態においては、スイッチング素子として、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子Q1,Q2に対しては、逆並列接続されるダイオードD1,D2が配置される。リアクトルL1は、スイッチング素子Q1,Q2の接続ノードと電力線PL1との間に接続される。すなわち、昇圧コンバータ回路240は、いわゆるチョッパ回路を形成する。
昇圧コンバータ回路240は、基本的には、各スイッチング周期内でスイッチング素子Q1,Q2が相補的かつ交互にオン・オフするように制御される。昇圧コンバータ回路240は、昇圧動作時には、蓄電装置150から供給された直流電圧VLを直流電圧VH(第1インバータ回路231,第2インバータ回路232への入力電圧に相当するこの直流電圧を、以下「システム電圧」とも称する)に昇圧する。この昇圧動作は、スイッチング素子Q2のオン期間にリアクトルL1に蓄積された電磁エネルギを、スイッチング素子Q1および逆並列接続されるダイオードD1を介して、電力線PL2へ供給することにより行なわれる。
また、昇圧コンバータ回路240は、降圧動作時には、直流電圧VHを直流電圧VLに降圧する。この降圧動作は、スイッチング素子Q1のオン期間にリアクトルL1に蓄積された電磁エネルギを、スイッチング素子Q2および逆並列接続されるダイオードD2を介して、電力線NL1へ供給することにより行なわれる。これらの昇圧動作および降圧動作における電圧変換比(VHおよびVLの比)は、上記スイッチング周期におけるスイッチング素子Q1,Q2のオン期間比(デューティ比)により制御される。なお、スイッチング素子Q1をオンに、スイッチング素子Q2をオフにそれぞれ固定すれば、VH=VL(電圧変換比=1.0)とすることもできる。
コンデンサC1は、電力線PL1,NL1の間に設けられ、電力線PL1,NL1間の電圧変動を減少させる。コンデンサC2は、電力線PL2,NL1の間に設けられ、電力線PL2,NL1間の電圧変動を減少させる。
第1インバータ回路231は、電力線PL2,NL1との間に並列に設けられる、U相上下アーム132と、V相上下アーム133と、W相上下アーム134とを含んで構成される。各相上下アームは、電力線PL2およびNL1との間に直列接続されたスイッチング素子を含む。
たとえば、U相上下アーム132はスイッチング素子Q3,Q4を含み、V相上下アーム133はスイッチング素子Q5,Q6を含み、W相上下アーム134はスイッチング素子Q7,Q8を含む。また、スイッチング素子Q3〜Q8に対して、逆並列接続されるダイオードD3〜D8がそれぞれ接続される。スイッチング素子Q3〜Q8は、ECU170からの制御信号PWI1によって制御される。
第1モータジェネレータ110は、上述のように代表的には3相の永久磁石型同期電動機であり、U,V,W相における3つのコイルの一方端が中性点に共通に接続される。さらに、各相コイルの他方端は、各相上下アーム132〜134における2つのスイッチング素子の接続ノードに接続される。
第2モータジェネレータ120を駆動するための第2インバータ回路232は、第1インバータ回路231と並列に、電力線PL2,NL1に接続される。
第2インバータ回路232の詳細構成は、第1インバータ回路231の構成を同様であるので、図2には詳細な構成は記載されておらず、またその説明は繰返さない。
ハイブリッド車両10において、エンジン100などの駆動システムに異常が生じて直ちに停車させると、再起動が不能となることがある。
このような駆動システムの異常で道路上で立ち往生してしまうと、他の車両の走行を妨害してしまい、交通渋滞を引き起こすなどの交通環境への影響を生じる可能性がある。
よって駆動システムに故障が生じた場合にシステムに追加的な異常を発生させない範囲で、走行性能を制限しつつ走行を継続させるようなフェールセーフモードによる走行(以下、フェールセーフ走行モードともいう)が実施される。
このフェールセーフ走行モードでは、異常が生じた際には走行不能となる前に、ハイブリッド車両10を安全な場所に退避走行させることができる。さらに、ハイブリッド車両10の走行可能距離範囲内であれば、ディーラや修理工場まで自力走行させることができる。
しかしながら、このフェールセーフ走行モードにおいて、ユーザが制限された走行性能の程度や走行可能距離などを適切に把握できないと、ユーザは正しい判断を行なえない。このため、不適切な運転操作により、退避走行途中で車両が停止してしまうおそれがある。
そこで、本実施の形態においては、ハイブリッド車両10等の車両において、駆動システムの異常に対応して退避走行がなされる場合に、退避走行により制限されるハイブリッド車両10の状態をユーザに適切に報知する報知制御を行なう。
そしてこの報知制御により、駆動源を含む駆動システムが再起動できなくなるような操作をユーザが誤って行なわないように、走行モードごとに異なる禁止されている操作をユーザに報知して、駆動源が再起動禁止に陥ることがないように予防しようというものである。
以下、車両の状態で異常がない場合、正常な走行制御である正常走行モードに対して、異常がある場合に行なわれるフェールセーフモードとして複数種類の退避走行モードについて説明する。
この退避走行モードは、通常走行中に異常の報知を行なう通常走行モードと、各退避走行モードとに大別されている。これらの各走行モードでは、検出されたハイブリッド車両10の状態の異常に応じて報知が行なわれる。
退避走行モードとしてのモータ走行モード、エンジン直行モード、バッテリレス走行モードについては、退避走行モードあるいは退避走行状態とも記して詳述する。
これらの各退避走行モードにおいては、ユーザの対処もそれぞれ異なる。ユーザが、制限された走行性能の程度や走行可能距離などを適切に把握できないと、ユーザによる正しい判断ができずに、不適切な運転操作が行なわれたり、退避走行途中でハイブリッド車両10が停止してしまう可能性がある。
図3〜図5を用いて、異常部位に対応した各退避走行モードの例について個別に説明する。
この実施の形態のハイブリッド車両10は、蓄電装置150の電力を電力線PL1,NL1によって送受するPCU230をさらに備えている。このPCU230は、昇圧コンバータ回路240と、第1モータジェネレータ110に接続されて、回転駆動させる第1インバータ回路231と、第2モータジェネレータ120に接続されて、回転駆動させる第2インバータ回路232とを有している。
そして、ECU170のECU−E173から、このPCU230へモータ駆動信号PWI1,PWI2が入力されると、第1モータジェネレータ110および第2モータジェネレータ120の回転駆動力が調整されて、各退避走行モードに切換えられることにより、走行駆動を継続させる。
また、ユーザ出力要求Pusに基づいてエンジン出力要求Peが調整される。さらに、第2モータジェネレータ120の回転駆動力と共にエンジン100から出力される回転駆動力は、各退避走行モードで異常の種類に応じた出力となるように動力分割機構130から前輪160へ伝達される回転駆動力が調整される。
図3は第2モータジェネレータ120からの駆動力のみで走行する「モータ走行モード」を示し、図4はエンジン100からの駆動力のみで走行する「エンジン直行走行モード」を示し、図5は蓄電装置150の電力を用いずに第1モータジェネレータ110で発電された電力のみで第2モータジェネレータ120を駆動する「バッテリレス走行モード」を示す。
図3を参照して、「モータ走行モード」は、エンジン100、第1モータジェネレータ110および第1インバータ回路231のような、発電機システムに関連する機器の異常が生じた場合に採用される退避走行モードである。このような異常においては、第1モータジェネレータ110またはエンジン100のいずれか一方の駆動ができなくなると、動力分割機構130における力の釣り合いから、一般的に他方の駆動ができなくなる。そうすると、エンジン100からの回転駆動力を走行駆動力として利用することができず、さらに、第1モータジェネレータ110における発電もできなくなる。
この場合には、図3の矢印AR1で示されるように、蓄電装置150に蓄えられた電力のみを用いて、第2モータジェネレータ120から出力される駆動力のみで走行する。また、下り坂走行時や減速時など、回生制動が実行される場合には、第2モータジェネレータ120で発電された電力が蓄電装置150に蓄えられる。
この「モータ走行モード」では、エンジン100および第1モータジェネレータ110が使用できないため、エンジン100による駆動力のアシストができず、さらに第1モータジェネレータ110の発電電力を第2モータジェネレータ120の駆動力として使用することができない。そのため、加速時や高出力時におけるトルクが十分に確保できなくなる場合が生じる。
また、蓄電装置150の充電は第2モータジェネレータ120の回生動作時のみ可能となる。このため、蓄電装置150の残存容量SOCが低下した場合であっても十分な充電が行なえない状態となる可能性がある。よって、走行可能距離は蓄電装置150に蓄えられている電気量により制限される。
図4はエンジン100からの駆動力のみで走行する「エンジン直行走行モード」を示す図である。
図4を参照して、「エンジン直行走行モード」は、第2モータジェネレータ120およびそれを駆動する第2インバータ回路232に関連した異常が発生した場合に採用される退避走行モードである。この「エンジン直行走行モード」では、第2モータジェネレータ120からの駆動力が出力できなくなるので、ハイブリッド車両10は、エンジン100からの駆動力のみを用いて走行する(図4中の矢印AR2−1)。
このため、エンジン100の反力を受けるために第1モータジェネレータ110により負のトルクが加えられ、これによって、ハイブリッド車両10の走行状態によっては第1モータジェネレータ110により発電が行なわれる(図4中の矢印AR2−2)。
「エンジン直行走行モード」においては、上述のように、第2モータジェネレータ120による駆動力が得られずエンジン100からの駆動力のみを用いて走行が行なわれるため、出力可能なトルクはエンジン100の出力可能トルクに制限される。また、蓄電装置150が満充電状態となった場合には、過充電を防止するために第1モータジェネレータ110による発電ができなくなる。そのため、走行可能距離は、蓄電装置150の残余の充電可能容量に制限される。
図5は蓄電装置150の電力を用いずに第1モータジェネレータ110で発電された電力のみで第2モータジェネレータ120を駆動する「バッテリレス走行モード」を示す図である。
図5を参照して、「バッテリレス走行モード」は、蓄電装置150に関連した異常が発生した場合に採用される退避走行モードである。この「バッテリレス走行モード」では、蓄電装置150からの電力を用いて第2モータジェネレータ120を駆動することができず、さらに第1モータジェネレータ110で発電した電力を蓄電装置150に蓄えることができない。
このため、ハイブリッド車両10は、第1モータジェネレータ110で発電した電力を用いて第2モータジェネレータ120で発生される駆動力(図5中の矢印AR3−1)と、エンジン100により発生される駆動力(図5中の矢印AR3−2)とを用いて走行する。
「バッテリレス走行モード」においては、第1モータジェネレータ110により発電される電力と第2モータジェネレータ120で消費される電力の収支をバランスさせることが必要である。
すなわち、第2モータジェネレータ120では、第1モータジェネレータ110の発電電力を超えた電力を使用することができず、出力可能な駆動力が制限される。一方で、第1モータジェネレータ110は十分な電力を発電可能であっても、蓄電装置150への充電ができない。このため、第2モータジェネレータ120の消費電力を超える電力を発電できない。さらに、回生動作時の電力を蓄電装置150に蓄えることができないので、回生制動力が十分に得られない場合が生じる。
「バッテリレス走行モード」では、エンジン100が駆動可能であれば走行を継続することが可能であるので、走行可能距離は燃料残量に制限される。
なお、駆動システムにおける上記以外の他の機器に異常が生じた場合には、上記のいずれかの退避走行モードあるいは上記以外の退避走行モードを採用することも可能である。
たとえば、駆動システムにおける昇圧コンバータ回路240が異常となった場合には、昇圧コンバータ回路240の異常の状態に応じて選択する退避走行モードが異なる。
具体的には、図2におけるスイッチング素子Q1に逆並列接続されるダイオードD1が正しく機能している状態では、昇圧コンバータ回路240のスイッチング動作を停止しても蓄電装置150からの電力をインバータへ供給することが可能である。したがって、この場合には、昇圧コンバータ回路240による昇圧動作ができないことによる出力制限、および蓄電装置への充電の禁止を伴うものの、蓄電装置150からの電力およびエンジン100の駆動力を用いて走行することができる。
一方、ダイオードD1が非導通状態となる異常となった場合には、結果的に蓄電装置150からの電力が遮断されるので、上記の「バッテリレス走行モード」が採用される。
また、SMR250に異常が生じた場合には、「バッテリレス走行モード」とするか、あるいは安全を重視してシステム停止とされる場合がある。
上記の説明においては、各機器の機能が完全に失われた状態を例として説明したが、異常の状態が、機能が完全に失われる状態ではないが機能低下を伴う故障の場合には、出力制限を行ないつつ通常と同様の走行モードとしてもよいし、走行状態において上記の退避走行モードを切換えながら走行してもよい。
このように、各退避走行モードにおいては、異常が生じた場合でも一定期間は車両の走行を継続することが可能であるが、上記のように走行性能が制限される場合がある。
図6および図7は、各退避走行モードにおける走行制限を説明するための図である。
図6は、各退避走行モードについての車速と駆動輪に伝達される駆動トルクとの関係を示したものである。
図6のグラフを参照すると、異常の発生していない場合がラインW10で示され、退避走行モードである「モータ走行モード」、「エンジン直行走行モード」および「バッテリレス走行モード」がそれぞれラインW11,W12,W13で示される。
「モータ走行モード」においては、低車速域では、第2モータジェネレータ120のみの駆動力で比較的に大きな駆動トルクを出力できる。しかしながら、この「モータ走行モード」では、車速が高くなると、第1モータジェネレータ110から供給される電力が得られないため、駆動トルクは急激に低下する。
本実施の形態のハイブリッド車両10では、走行用の駆動力は主に第2モータジェネレータ120からの駆動力が利用され、エンジン100からの駆動力は主に第1モータジェネレータ110の発電のために利用される構成としている。そのため、「エンジン直行走行モード」においては、前輪160の駆動に直接用いる駆動力は全体的に小さくなる。
逆に、主にエンジン100からの駆動力を走行駆動力として利用し、第2モータジェネレータ120からの駆動力を補助的に利用するようなハイブリッド車両10の場合には、「エンジン直行走行モード」においては比較的大きな駆動力が出力でき、「モータ走行モード」においては全体的に出力可能な駆動力が小さくなる。
「バッテリレス走行モード」においては、基本的には、駆動力を生成するエンジン100および第1モータジェネレータ110は正常に動作する。このため、発電電力と消費電力との収支のバランスによる出力制限はあるものの、車速全域を通して比較的安定した駆動力を出力することができる。
図7は、上述した、各退避走行モードについての異常部位および走行制限内容の例をまとめて記載したものである。図7において、走行制限として、加速性能、最高車速、走行可能距離が示される。たとえば、出力可能パワーとして「少し出力制限中」、「大幅に出力制限中」など、大,中,小などの程度表示でもよい。
なお、図7の各項目の説明は行なわないが、図7中の走行制限を表わす数値はほんの一例であって、この数値はエンジンやモータジェネレータなどの機器の仕様、設計条件、および蓄電装置150の残存容量SOCや、出力許可放電電力上限値Woutなどの状態の変化等に応じて異なる数値となる。
図1に戻って、ECU170は、報知部200の一部としてのマルチディスプレイ装置210と接続されている。ECU170は、報知情報を含む各種車両情報を、車両状態表示部としての表示部211に報知信号AV1として出力する。
この表示部211には、ECU170から送られてきた車両の情報を含むデータが、報知信号AV1として入力される。また、このマルチディスプレイ装置210には、車室内のユーザから視認可能となる位置に報知部としての表示部211が設けられている。
この表示部211は、平板パネル状を呈して、報知信号AV1の入力により所望の文字、図形を表示可能な液晶パネル表示装置を含む。
そして、ECU170から出力された車両情報のデータは、報知信号AV1からユーザに視認可能な文字情報に変換されて、表示部211から出力される。
さらに、この報知部200のメータクラスタと近接配置されるセンタコンソール付近には、ナビゲーションシステムのナビ表示パネル212が設けられている。
このナビ表示パネル212は、車室内のユーザから視認しやすいセンタコンソール上部で、マルチディスプレイ装置210の下側縁近傍に装着されている。
そして、マルチディスプレイ装置210へ報知信号AV2が入力すると、表示部211と同様に所望の文字、図形を表示可能とする。また表示部211では、文字数制限などにより表示しきれない所望の文字、図形などを、このナビ表示パネル212によって表示可能としている。
そして、ECU170から出力された車両情報のデータは、報知信号AV2からユーザに視認可能な文字情報に変換されて、マルチディスプレイ装置210の表示部211またはナビ表示パネル212から出力される。
この実施の形態の報知部200のメータクラスタ内では、マルチディスプレイ装置210に、スピードメータ213、燃料残量計214などが組合わせられていて各種車両情報を報知可能としている。
ECU170は、車速センサで検出された車速信号に基づいて、スピードメータ213に車速情報を含む報知信号AVを出力する。スピードメータ213は、報知信号AVに応じてハイブリッド車両10の走行速度をユーザに視認可能な形式で表示させる。
また、ECU170は、燃料タンク180内に設けられた燃料ゲージ181により検出された残存燃料検出信号feに基づいて、報知部200に報知信号AVを送信する。マルチディスプレイ装置210に入力した報知信号AVに応じて、検出された燃料タンク180内の燃料量が燃料残量計214に表示される。これによりユーザは燃料タンク180内の燃料残量を知ることができる。
さらに、マルチディスプレイ装置210の表示部211には、報知情報として退避走行情報を表示可能である。すなわち、ECU170によって、ハイブリッド車両10の走行駆動を制御する駆動システムの状態が検出されると共に、エンジン100または電気システムの再起動可否が判定される。
たとえば、通常走行モードから退避走行モードに移行する場合に、ECU170からの出力で、いずれかの退避走行モードを実行中であることを表示部211に表示してもよい。さらに、いずれの退避走行モードを実行中であるかの表示と共に、または単独でユーザにエンジン100を停止させた場合には、再起動不能となる旨が報知されるようにしてもよい。
また、このマルチディスプレイ装置210が設けられている近傍には、起動操作部としてのIG操作部215が備えられている。このIG操作部215は、ECU170に接続されていて、エンジン100を起動する操作および停止する操作が行なわれると、起動信号IG−ONまたは停止信号IG−OFFが、ECU170へ出力される。
すなわち、このIG操作部215によるエンジン100を起動する操作が行なわれると、起動信号IG−ONがECU170に入力して、駆動システムをReady−OFF状態からReady−ON状態とすることができる。
また、ECU170からは、エンジン出力要求Peがエンジン100に出力されてエンジン100が起動される。エンジン100の起動により、第1モータジェネレータ110が回転駆動されて発電が行なわれる。そして第1モータジェネレータ110で発電された電力は、動力として駆動システムに供給される。
そして「モータ走行モード」では、起動時の電力消費によって、蓄電装置150内の電力が消耗する。このため、この「モータ走行モード」では、IG操作部215によるエンジン100を起動する操作(起動信号IG−ON)が数回(ここでは、たとえば5回、もしくは約1回〜10回などの所定の回数)に制限されて、最低限の備蓄電力を温存するようにしている。
さらに、ECU170には、図2に示すように、カウンタ部174と、タイマ部175とが設けられている。
カウンタ部174は、IG操作部215によるエンジン100を起動する操作(起動信号IG−ON)があと数回可能であるか、カウントするように構成されている。
タイマ部175は、通常走行中に異常が検出された場合にいずれの場所のどのような故障か特定しきれないと、SMR250がON動作後、所定時間(ここでは、約10秒)経過したかを計測する。
そして、シフトレンジが、パーキングレンジ(以下、Pレンジとも記す)に放置されている場合に、駆動システムの電源を、Ready−OFFする制御が行なわれる。
また、この実施の形態のハイブリッド車両10では、通常走行モードで漏電が検出されている場合は、Ready−ON制御が行なわれてから、タイマ部175で計測を開始して一定時間が経過した場合、ECU170が駆動システムの電源をReady−OFF制御する。
この実施の形態では、たとえば一定時間として10時間後に、Ready−OFF制御が行なえるように、残り時間X(ここでは、たとえば、初期値X0=10時間)が、予めメモリ部171に登録されている。
この実施の形態では、ECU170のECU−E173から、出力される報知信号ALMにより、報知部200の警報出力部290から発生する警報音を変更する。
すなわち、カウンタ部174によるカウントダウンで残り回数が減少するのにしたがって、警報音を変更する。
この実施の形態では、警報出力部290から発生させる報知信号ALMにより、警報音を連続音から断続音へ変更する。また、断続音の発音間隔を短くまたは長くなるように周期を変更する。この警報音の変更で、ユーザへの異常の認識性をさらに向上させることができる。
また、タイマ部175で残り時間Xが減少するのにしたがって、警報出力部290から発生させる報知信号ALMの断続音の発音間隔を、短くまたは長く変更することにより、ユーザへの異常の認識性を向上させる。
メモリ部171には、カウンタ部174によるカウントダウンで、駆動システムのReady−ON制御を行なう度に残り回数を減少させる残り起動回数P(ここでは、たとえば、初期値P0=5回)が登録されている。
図8は、この実施の形態のハイブリッド車両10で、通常走行モード、モータ走行モード、バッテリレス走行モードなどのフェールセーフ走行制御について、制限事項、表示、警報音をまとめた図である。
図9は、走行制御中、正常走行制御またはフェールセーフ走行制御など、いずれの走行モードで異常に応じた報知を行なうかメインルーチンの処理を説明するフローチャートである。
これに対して、図10は、表示Aの出力処理を行なうサブルーチンを説明するフローチャートである。また、図11は、後述する表示Bの出力処理を行なうサブルーチンを説明するフローチャートである。更に、図12は、表示Cの出力処理を行なうサブルーチンを説明するフローチャートである。
図9中、ステップS1で、車両の状態をユーザに報知する制御がスタートすると、ステップS2では、ハイブリッド車両10が退避走行制御中か、退避走行制御中でないかが判定される。
ステップS2で、ハイブリッド車両10が退避走行制御中であるとECU−E173が判定すると、次のステップS4にECU−E173は処理を進める。また、ECU−E173が退避走行制御中でないと判定すると、ステップS3に処理を進めて正常走行制御を継続して、ステップS14でECU−E173により、制御フローはリターンされる。
ステップS4では、通常走行モードで走行中であるか否かが判定される。
ステップS4で、走行駆動力の制限を行なわない通常走行モードであると判定されると、ECU−E173はステップS5に処理を進める。また、通常走行モードではないと判定されると、ECU−E173はステップS8に処理を進める。
ステップS5では、通常走行可能な範囲の漏電が発生しているか否かが検出される。すなわち、電気システムのいずれかの部分で漏電が発生し、この漏電を検出したか否かがECU−E173によって判定される。
ステップS5で、漏電が検出された場合は、ECU−E173がステップS6に処理を進めて、図10に示す表示Aの出力処理を開始する。
図10は、図13に示す表示Aを出力処理するフローチャートである。
ステップS21で表示Aの出力処理が開始されると、ステップS22でECU−E173によって、メモリ部171に登録されている残り時間Xの初期値X0=10が読込まれる。
ECU−E173は、漏電検出時、駆動システムがReady−ONされてからReady−OFF処理されるまでの残り所定時間として、初期値X0=10時間を設定する。
ステップS23の処理に進むと、ECU170のタイマ部175により、経過時間Yのカウントが開始される。次のステップS24の処理では、ECU−E173により残り時間Xの演算がECU−E173により行なわれる。
この残り時間Xは、前回の残り時間X−経過時間Yで演算処理されて、演算結果はメモリ部171に登録される。
ステップS25に処理が進むと、ECU−E173によって、表示Aとしてこの残り時間Xのメモリ部171に登録されている値を、文字列データに合成して、表示Aとして出力する文章が作成される。
次のステップS26の処理では、この作成された残り時間Xを含む文章がECU−E173から、報知部200に向けて、報知信号AL1として出力される。
報知部200のマルチディスプレイ装置210では、報知信号AL1が入力されると、表示部211で、報知情報として表示Aが文章「ハイブリッドシステム故障X時間後に電源OFF」として合成表示されて、ハイブリッド車両10に異常があることがユーザに知らされる。
図13は、表示部211で行なわれる表示Aの一例を示す図である。
ここでは、車両の状態を報知する「ハイブリッドシステム故障」と、残り時間Xとして、10時間が記載された「10時間後に電源OFF」といった内容の文章が組み合わされて、二列併記で同時に表示される。
この残り時間Xは、タイマ部175で計測されている経過時間が長くなれば、減少する。たとえば、「10時間後に〜」→「9時間後に〜」→「8時間後に〜」というように報知信号AL1の時間条件の更新に伴って、表示Aが変更される。
次のステップS27に処理が進むと、ECU−E173は、連続警報音を出力させる報知信号ALMを報知部200の警報出力部290に出力する。
報知信号ALMが入力すると、警報出力部290からは、連続警報音が出力される。また、ECU−E173では、予めメモリ部171に登録されていた連続警報音を断続警報音に変更する設定時間Zが読込まれる。
この実施の形態では、設定時間Zの設定をZ=3時間としている。
ステップS28では、読込まれた設定時間Zが、残り時間Xと比較される演算が、ECU−E173によって行なわれる。この演算では、設定時間Zを残り時間Xが切った場合は、ECU−E173は、ステップS29へ処理を進め、まだ到達していない場合は、ステップS23へ戻り、処理ルーチンを繰返す。
ステップS29では、ECU−E173の処理で、報知信号ALMの連続警報音出力が断続警報音出力に切換えられて、報知部200の警報出力部290に出力される。警報出力部290からは、今までの連続警報音と異なる所定の間隔の周期を有する断続警報音が出力される。この断続警報音への切換えで、駆動システムのReady−OFFまでの時間が迫っていることをユーザは認識できる。
また、表示部211で出力されている残り時間Xの報知情報の表示と共に、警報出力部290から、警報音が出力されて報知が行なわれる。
さらに残り時間Xの切換えと、警報音の切換えとを同時に行なうことにより、効果的にユーザに、Ready−OFF制御が行なわれる時刻が近づいてきていることを知らせることができる。
特に警報音の変更だけでは伝わりにくい残り時間Xの減少が、表示部211に残り時間Xの文字情報更新で表現されている。このため、このまま長時間運転操作を続ければ起動不能となる状況であり、起動不能となる前に運転走行を終えなければならないことが注意喚起される。
ステップS30では、ECU−E173による処理で、Ready−OFF制御までの残り時間Xが、X=0となったか否かが判定される。残り時間X=0となると、ECU−E173による判定で、次のステップS31に処理が進められる。また、残り時間Xが、X=0となっていないと判定された場合には、まだ、ハイブリッド車両10は走行可能であり、ECU−E173は処理をステップS23へ戻し、処理ルーチンを繰返す。
ステップS31では、すでに走行可能な残り時間Xがなくなっているので、ECU−E173が、表示部211に出力している報知信号AV1を停止することにより、表示Aを消す。
また、ECU−E173は、報知信号ALMの断続警報音出力を停止して、警報出力部290からの音声による報知を停止する。
ステップS32では、処理ルーチンを再び、図9のフローチャートに戻して処理を繰返す。
また、図9のフローチャート中、ステップS5によるECU−E173の処理で、漏電が検出されない場合は、ステップS7に処理を進め、ECU−E173は表示Bの出力処理を開始する。
図11は、図14に示す表示Bを出力処理するフローチャートである。
ステップS40で表示Bの出力処理が開始されると、次のステップS41でECU−E173によってメモリ部171から、表示Bの文字データが読込まれる。読込まれた表示Bの文字データは、ECU170から報知部200のマルチディスプレイ装置210に報知信号として出力される。
マルチディスプレイ装置210の表示部211では、この報知信号を受信して図14に示す表示Bが出力される。
図14は、表示部211で行なわれる表示Bの一例を示す図である。
ここで、表示部211には、「ハイブリッドシステム故障/10秒以上のPレンジ放置はさけてください」と文章で、表示Bが表示される。
このうち、文章の前半の「ハイブリッドシステム故障」の部分は、車両の状態をユーザに報知する内容である。
また、文章の後半の「10秒以上のPレンジ放置はさけてください」の部分は、走行可能な状況を確保するための情報を報知して、ユーザの誤操作によって起動不能となる状況を回避するために必要な情報を加えた報知内容である。
ユーザは、この報知内容を見て、Pレンジにシフトポジションを変更して放置してはいけないことを知り、このような禁止操作を行なわないように注意が喚起される。
ステップS42では、予めメモリ部171に登録されている所定の時間Z(初期値Z0=10秒)が読込まれる。そして、ステップS43では、ECU−E173の処理で、タイマカウントダウン処理によりSMR250がONに切換えられた後、Pレンジにシフトポジションが入れられた時間が、初期値Z0=10秒からカウントダウンされる。
Pレンジにシフトポジションが入れられていない場合は、ECU−E173により、処理がスキップされてステップS46でリターンされる。
ステップS44に処理を進めるとPレンジに入っている時間Zが10秒経過した場合は、Z=0となるのでECU−E173は、次のステップS45に処理を進める。また、Z=0に至っていない場合には、ステップS41に戻って、ECU−E173は処理ルーチンを繰返す。
ステップS45では、報知部200の表示部211に出力されていた報知信号が停止されることにより表示部211で表示されていた表示Bを消す。
ステップS46では、ECU−E173により処理が戻されて図9のフローチャートでの処理ルーチンが繰返される。
図9のフローチャート中、ステップS4によるECU−E173の処理で、通常走行モードではないと判定されると、ステップS8に処理を進める。
ステップS8では、ECU−E173による走行モードの判定が行なわれる。
ECU−E173は、ハイブリッド車両10の走行モードが、退避走行モードのうち、モータ走行モードであるか否かを判定する。
このステップS8で、モータ走行モードであると判定されると、ECU−E173はステップS9に処理を進め、この報知信号を受信して図15に示す表示Cが出力される。
また、ステップS8でECU−E173が、モータ走行モードではないと判定すると、次のステップS10に処理を進める。
図12は、図15に示す表示Cを出力処理するフローチャートである。
ステップS50で表示Cの出力処理が開始されると、次のステップS51でECU−E173によってメモリ部171から、表示Cの文字データが読込まれる。
読込まれた表示Cの文字データは、ECU170から報知部200のマルチディスプレイ装置210に報知信号として出力される。
ステップS51では、ECU−E173が、電源ONが可能な残り起動回数P(初期値P0=5)をメモリ部171から読込む。
次のステップS52では、表示Cの文字データに、この残り起動回数Pを合成して、ECU170が報知部200に報知情報として出力する。
ここでステップS53では、ECU170のカウンタ部174で、Ready−ON操作が一回行なわれる度に、残り起動回数PをP−1とするカウントダウン制御処理が行なわれる。
そして、図1に示す報知部200のマルチディスプレイ装置210に報知信号として出力された回数を合成された文字データは、図15に示すように表示部211で、表示Cとして出力される。
図15は、表示部211で行なわれる表示Cの一例を示す図である。
ECU170では、カウンタ部174によりカウントダウン制御処理が行なわれているので、Ready−ON操作が行なわれる度に、残り起動回数が減少する文字データに更新される、そして、報知部200では「〜残り5回です」→「〜残り4回です」→「〜残り3回です」と、残り起動回数Pを減算した文章が表示部211に表示される。
次のステップS54で、ECU−E173は、報知部200から警報音を出力させる。
ここでは、予め比較的間隔を長く設定した警報音が、警報出力部290から出力されてユーザの注意が喚起される。
ステップS55に処理が進むと、ECU−E173はメモリ部171から予め設定された断続音変更回数Qを読込む。ここでは、断続音変更回数QがQ=3回に設定されていて、設定されたQがQ=4回からQ=3回に減少するタイミングで、断続音を変更する。
ステップS56にECU−E173の処理が進むと、電源ON可能な残り起動回数Pが断続音変更回数Qとなったか否かが判定される。残り起動回数Pが、予めメモリ部171に登録されていた断続音変更回数Q=3と同じP=3となった場合には、次のステップS57に進み、予め比較的間隔を短く設定した警報音が、比較的間隔が長い警報音に代えて、警報出力部290から出力される。
これにより、残り起動回数Pの変更が表示部211で行なわれるタイミングで、音声による警報も同時に変更されて、さらなる注意喚起がおこなわれる。
ステップS58に処理が進むと、蓄電装置150の電力容量は、すでに起動不能なレベルまで低下していることを報知するため、ECU−E173は、残り起動回数Pが0となったか否かを判定する。残り起動回数Pが0回であるとECU−E173が判定すると次のステップS59に処理が進む。
また、残り起動回数Pが0回になっていないとECU−E173が判定すると、ステップS52に処理を戻す。
ステップS59では、報知部200で行なわれている表示Cの出力と、断続警報音の出力とを停止する。この停止により、蓄電装置150の電力容量は、すでに起動不能なレベルまで低下していることがユーザに報知される。
そして、ECU−E173は、処理をステップS60に進めて、図9のフローチャートの処理ルーチンに戻される。
図9のフローチャート中、ステップS8によるECU−E173の処理で、モータ走行モードではないと判定されると、ステップS10に処理を進める。
ステップS10では、ECU−E173による走行モードの判定のうち、ハイブリッド車両10の走行モードが、退避走行モードの一つであるバッテリレス走行モードであるか否かが判定される。
ステップS10で、バッテリレス走行モードであると判定されると、ECU−E173はステップS11に処理を進め、この報知信号を受信して図16に示す表示Dが出力される。
図16は、表示部211で行なわれる表示Dの一例を示す図である。この表示Dでは、シフトポジション操作でNレンジポジションをユーザが選択すると、Ready−OFFになる可能性があるため、このシフトポジション操作を控えるように報知が行なわれる。
図16に示す「バッテリ系故障Nレンジの使用は控えてください」のうち、「バッテリ系故障」は車両の状態を、また「Nレンジの使用は控えてください」は、エンジン100が再起動禁止に陥る操作について報知している。
そして、ECU−E173は、処理を図9のフローチャートの処理ルーチンに戻す。フローチャート中のステップS10によるECU−E173の処理で、バッテリレス走行モードではないと判定すると、ステップS12に処理を進める。
ステップS12では、ECU−E173による走行モードの判定が行なわれ、ハイブリッド車両10の走行モードが、退避走行モードの一つであるエンジン直行走行モードであるか否かが判定される。
ステップS12で、バッテリレス走行モードであると判定されると、ECU−E173はステップS13に処理を進め、この報知信号を受信して図17に示す表示Eが出力される。
また、ステップS12でECU−E173が、バッテリレス走行モードではないと判定すると、次のステップS14に処理を進めて、リターン処理が繰返される。
図17は、表示部211で行なわれる表示Eの一例を示す図である。この図17の表示Eでは、報知部200にECU−E173から出力された文章の文字データが多い場合を示す。
この場合、表示Eは、表示部211に出力される報知信号AV1と、ナビ表示パネル212に出力される報知信号AV2とに分けられて、同時に出力される。
このため、表示部211には、「ハイブリッドシステム故障安全な場所に停車して下さい。」と表示される。また、ナビ表示パネル212には、「販売店に連絡してください。」と禁止操作に陥る前にユーザが行なえる行動を注意喚起する表示を複数の画面から出力させることができる。
よって、表示部211のみでは、表示可能な字数の制限により、報知する情報量に不足が生じる場合に、ナビ表示パネル212を用いて、起動禁止状態に陥らないためにはどうしらたよいのか、的確な情報を提供できる。
このように、表示Eの報知情報が多くても、マルチディスプレイ装置210の表示部211およびナビゲーションシステムのナビ表示パネル212などの複数の画面を用いて、正確な車両の状態の情報の提供と、起動禁止操作を防止し、適切な操作が行なえるように注意喚起することができる。
たとえば、表示Eの文字情報量が多い場合は、表示部211だけですべての報知情報を表示しようとすると、文字の大きさが小さくなり、間隔も狭く読みづらくなるおそれがある。
これに対して、この実施の形態のハイブリッド車両10は、マルチディスプレイ装置210の表示部211と、ナビゲーションシステムのナビ表示パネル212とに分けて、文字情報を表示できる。
このため、起動禁止状態に陥らないためにはどうしらたよいのか、的確な情報を提供しても視認しやすい文字の大きさの表示とすることができ、さらに注意喚起力を向上させることができる。
よって、この実施の形態では、ユーザは、音声により異常が生じていることを知り、各表示A〜Eを見て、車両状態および再起動禁止につながる禁止操作を認識でき、誤操作などによって起動不能となる状況を回避することができる。
以上説明した実施の形態について、最後に再び図面を参照しながら総括する。
図1に示すように、ハイブリッド車両10は、走行駆動のための動力を発生するエンジン100および第2モータジェネレータ120と、エンジン100および第2モータジェネレータ120の状態に応じて、ハイブリッド車両10の状態をユーザに報知する報知部200と、エンジン100または第2モータジェネレータ120,報知部200とを制御するECU170を備えている。
ECU170は、ハイブリッド車両10の状態に異常があると、ハイブリッド車両10の走行モードを通常走行モードから異常に対応する退避走行モードに切換えて、走行駆動を継続させる退避走行制御を行なう。
ECU170は、退避走行制御で選択された走行モードに応じて、エンジン100または第2モータジェネレータ120が再起動できなくなる状態に陥る可能性のある操作について報知部200に報知させる。
さらに好ましくは、ECU170は、エンジン100または第2モータジェネレータ120が再起動できなくなる状態に陥るまでの時間を更新して、報知部200から報知させるタイマ部175を含む。
この実施の形態では、タイマ部175によって、SMR250がON動作後の経過時間が計測されている。そして一定時間が経過した場合、駆動システムの電源がReady−OFFされる制御が行なわれる。
また、タイマ部175で、計測された一定時間を経過すると、警報音が断続警報音など他の警報音へ切換える。この警報音の出力または切換えで、駆動システムのReady−OFFまでの時間が迫っていることをユーザは認識できる。
さらに好ましくは、ECU170は、エンジン100または第2モータジェネレータ120が再起動できなくなる状態に陥るまでの起動回数を、IG操作部215による起動操作毎にカウントダウンで更新して、報知部200から報知させるカウンタ部174を含む。
この実施の形態では、カウンタ部174によるカウントダウンで、駆動システムのReady−ON制御を行なう度に残り起動回数Pを減少させている。
このため、蓄電装置150の電力が枯渇する前に、駆動システムをReady−OFFさせる操作を控えさせて、繰返しReady−ON操作を行なうことが禁止操作とされていることをユーザに報知できる。
本発明によれば、ECU170は、退避走行制御により、ハイブリッド車両10の車両状態に異常があると、走行モードを通常走行モードから異常に対応する退避走行モードに切換える。退避走行モードでは、ハイブリッド車両10の走行性能を制限しつつ、走行駆動を継続させる。
退避走行制御では、ECU170が選択された走行モードの種類に応じて、エンジン100および第2モータジェネレータ120が再起動できなくなる状態に陥る可能性のある操作について、報知部200に報知させる。
このため、禁止されている再起動不能となる可能性のある操作について知ることができ、ユーザは誤操作などで自力走行不能となる状況を回避することができる。
この実施の形態では、設定時間Zの設定をZ=3時間としているが、特にこれに限らず、たとえば、1〜9時間の間等、好ましくは、2〜5時間など、警報音が出力されている残り時間X以内で、駆動システムがReady−OFFになるまでの時間であれば、何時間に設定されていてもよく、多種類の警報音に変更するタイミングとして、複数回、異なる残り時間、たとえば残り時間X1,X2,X3などに設定してもよい。
また、残り起動回数P(初期値P0=5)は、たとえば1〜10回など、Ready−ON制御が行なわれて、エンジン100が起動しなくても、蓄電装置150の容量が枯渇しない回数であれば、何回であってもよい。
さらに、断続音変更回数QがQ=3回に設定されているが、特にこれに限らず、たとえば、1〜4回など、表示Cに表示される残り回数以内であれば、何回に設定されていてもよく、多種類の警報音に変更するタイミングとして、複数回、断続音変更回数を設定してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。