JP2019160795A - レドックスフロー電池用双極板及びその製造方法 - Google Patents

レドックスフロー電池用双極板及びその製造方法 Download PDF

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昭紘 小泉
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Abstract

【課題】高導電性を得ることができ、しかも、薄型化、柔軟性、硫酸バナジウム水溶液等に対しても劣化しない特性等を実現できるレドックスフロー電池用双極板及びその製造方法を提供する。【解決手段】バナジウム等のイオンの酸化還元反応を利用して充放電するレドックスフロー電池用双極板1であり、繊維樹脂15〜40質量部と、この繊維樹脂2よりも導電性に優れる導電材85〜60質量部とを含み、繊維樹脂2が少なくとも平均繊維長1〜80mmのポリプロピレン繊維系3を含有し、導電材5が粒子状導電材6と繊維状導電材7の少なくともいずれか一方を含有する。導電材5の粒子状導電材6間に形成された三次元ネットワークの隙間に繊維樹脂2と繊維状導電材7が流入して閉塞し、繊維樹脂2、粒子状導電材6、及び繊維状導電材7が複雑に絡み合って一体化するので、多数の粒子状導電材6を強固に接続し、導電性を向上させることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、バナジウム等のイオンの酸化還元反応を利用して充放電するレドックスフロー電池のレドックスフロー電池用双極板及びその製造方法に関するものである。
レドックスフロー電池は、正極液、負極液と種別される電解液中のバナジウム等のイオンの価数の変化(酸化還元反応)を利用した電力貯蔵用の二次電池であり、安全性が高く、しかも、長寿命であるという特徴を有している(特許文献1参照)。このレドックスフロー電池は、一般的に、複数のセルを備え、各セルには、隔膜の両側に多孔質電極(正電極、負電極)と双極板とを備えたフレームが存在しており、正極室には正電液を、負極室には負電液をそれぞれ充分に循環させることにより、電池を反応させる。
これらを隔てる双極板には、レドックスフロー電池の内部抵抗を小さくするための高い導電性の他、電流は流すが電解液を通さない、酸性の電解液に対して劣化しない等の高い機械的強度を有することが要求される。双極板の高い導電性を実現するために使用される導電性のフィラーとしては、電解液によりイオン化し、電池特性を損なうおそれがあり、酸化されやすく、耐食性に乏しい金属フィラーよりも、化学的に安定な炭素材料からなるフィラー、具体的には、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンブラック等が好適であり、これらと樹脂とを複合した材料が鋭意検討されている。
しかしながら、炭素材料は、炭素繊維やカーボンナノチューブの場合、これらの形状により、繊維方向(面方向)の導電性が発現されやすいものの、繊維に対して垂直方向(厚み方向)の導電性が発現されにくくなる。双極板は、厚み方向に積層して使用されるので、炭素材料が炭素繊維やカーボンナノチューブの場合には、厚み方向の抵抗値が増大するという問題が生じる。また、双極板は、酸性の電解液(例えば、硫酸バナジウム水溶液)に対し、表面剥離、電解液の漏れ、強度・導電性の低下を招くおそれのない板である必要がある。
上記を踏まえ、特許文献1には、優れた機械的強度、変形性、遮液性、導電性を得るため、熱可塑性樹脂、黒鉛及びケッチェンブラックから選ばれる炭素質材料、並びにカーボンナノチューブを含有し、これらを複合した複合導電材料からなる双極板であり、熱可塑性樹脂100質量部に対し、炭素質材料の含有量を20〜150質量部、カーボンナノチューブの含有量を1〜10質量部としたレドックスフロー電池用双極板が開示されている。
特開2011‐228059号公報
しかしながら、特許文献1のレドックスフロー電池用双極板は、所定の効果が得られるものの、熱可塑性樹脂中に黒鉛やカーボンナノチューブが単に分散するに止まるので、黒鉛間のつながりに乏しく、導電性の向上を図ることができない。これでは、さらなる高導電性を求める近年の市場の要求に応えることは非常に困難である。また、近年のレドックスフロー電池用双極板には、高い導電性の他、薄型化、曲げても割れない柔軟性、硫酸バナジウム水溶液に対しても劣化しない特性等も要求されているが、これらの実現は容易ではない。
本発明は上記に鑑みなされたもので、高導電性を得ることができ、しかも、薄型化、柔軟性、硫酸バナジウム水溶液等に対しても劣化しない特性等を実現することのできるレドックスフロー電池用双極板及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明においては上記課題を解決するため、繊維樹脂15〜40質量部と、この繊維樹脂よりも導電性に優れる導電材85〜60質量部とを含み、
繊維樹脂が少なくとも平均繊維長1〜80mmポリプロピレン繊維系を含み、導電材が粒子状導電材と繊維状導電材の少なくともいずれか一方を含むことを特徴としている。
なお、繊維樹脂がアラミド繊維を含むと良い。
また、繊維樹脂のポリプロピレン繊維系がポリプロピレン繊維であることが好ましい。
また、導電材の粒子状導電材が平均粒子径3〜500μmの黒鉛粒子であり、導電材の繊維状導電材が炭素繊維であると良い。
また、導電材の粒子状導電材が、平均粒子径3〜500μmの膨張黒鉛粒子であると良い。
また、導電材の粒子状導電材が、平均粒子径3〜500μmの人造黒鉛粒子であると良い。
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1ないし6のいずれかに記載のレドックスフロー電池用双極板の製造方法であり、
繊維樹脂に導電材の一部を分散して複合シートを形成し、減圧具内に複合シートをセットしてその露出部には導電材の残部を充填し、減圧具を閉鎖して減圧することにより、導電成形体を成形し、その後、成形した導電成形体の露出部に複合シートを積層して加熱圧縮することにより、レドックスフロー電池用の双極板を形成することを特徴としている。
なお、複合シートは、繊維樹脂と導電材の一部とを混合分散してスラリーを作成し、このスラリーをシートに形成し、このシートを加圧して乾燥させた後、この乾燥したシートを加熱加圧することで形成されると良い。
ここで、特許請求の範囲における導電材には、少なくとも各種の炭素系材料と、導電性に優れる金属粒子や金属繊維等からなる金属フィラーとが含まれる。この導電材の一部は、粒子状導電材、繊維状導電材、粒子状導電材及び繊維状導電材を特に問うものではない。導電材の残部も、粒子状導電材、繊維状導電材、粒子状導電材及び繊維状導電材を特に問うものではない。また、膨張黒鉛粒子には、膨張黒鉛粒子と、膨張化処理された膨張化黒鉛粒子のいずれもが含まれる。レドックスフロー電池用双極板は、表裏両面が平坦な板、表裏両面に液体用の複数の流路を並べ備えた板、連続した断面略波形の屈曲板等とすることができる。
本発明によれば、繊維樹脂15〜40質量部と、この繊維樹脂よりも導電性に優れる導電材85〜60質量部とを含有するので、レドックスフロー電池用双極板に高導電性、薄型化、可撓性、柔軟性、硫酸バナジウム水溶液等に対する耐久性等を付与することができる。また、繊維樹脂の平均繊維長が1〜80mmの範囲内なので、分散性が向上してレドックスフロー電池用双極板の組成が均一化し、レドックスフロー電池用双極板の部分的な物性や導電性の相違を減少させることができる。
本発明によれば、従来よりも高い導電性のレドックスフロー電池用双極板を得ることができるという効果がある。また、レドックスフロー電池用双極板に薄型化、柔軟性、硫酸バナジウム水溶液等に対しても劣化しない特性等を付与することができる。
請求項2記載の発明によれば、繊維樹脂としてアラミド繊維を含むので、繊維樹脂同士等を適切に絡め、繊維樹脂を補強することができる。また、繊維樹脂に耐熱性、強度、耐薬品性等を付与し、レドックスフロー電池用双極板の品質を向上させたり、レドックスフロー電池用双極板の材料組成を略均一化することができる。
請求項3記載の発明によれば、ポリプロピレン繊維系がポリプロピレン繊維なので、導電材の接着性が向上し、機械的特性の向上を図ることが可能になる。特に、ポリプロピレン繊維系が酸変性ポリプロピレン繊維の場合、導電材の接着性が著しく向上し、機械的特性の大幅な向上を図ることも可能になる。また、接着性の向上により、例え硫酸バナジウム水溶液中にレドックスフロー電池用双極板が長時間漬されても、レドックスフロー電池用双極板からの導電材の脱落が減少する。
請求項4記載の発明によれば、導電材の粒子状導電材が黒鉛粒子なので、導電材の組成や形状の制御が可能になる。また、導電材の繊維状導電材が炭素繊維なので、レドックスフロー電池用双極板の耐久性の低下のおそれが減少する。加えて、優れた耐熱性や機械的強度を得ることができ、軽量化を図ることが可能になる。
請求項5記載の発明によれば、黒鉛粒子が加熱と共に膨張する膨張黒鉛粒子なので、優れた導電性を得ることができ、しかも、膨張黒鉛粒子間の隙間を塞いで所定の液体の液漏れを防ぐことができる。
請求項6記載の発明によれば、黒鉛粒子が天然黒鉛粒子ではなく、人造黒鉛粒子なので、金属等の不純物が少なく、結晶性も均一であり、レドックスフロー電池用双極板の製造に適する。
本発明に係るレドックスフロー電池用双極板の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。 本発明に係るレドックスフロー電池用双極板の実施形態における繊維樹脂、粒子状導電材、及び繊維状導電材が複雑に絡み合って一体化した状態を模式的に示す拡大説明図である。 本発明に係るレドックスフロー電池用双極板の製造方法の実施形態を模式的に示す断面図で、(a)図は吸引治具の内底面に複合シートをセットした状態を示す説明図、(b)図は複合シートの表面上に導電材の粒子状導電材を供給した状態を示す説明図、(c)図は吸引治具上の粒子状導電材にスクレーパを接触させ、このスクレーパを水平に移動させた状態を示す説明図、(d)図は上下逆の吸引治具の粒子状導電材を圧縮して導電成形体を成形する状態を示す説明図である。 本発明に係るレドックスフロー電池用双極板の製造方法の実施形態を模式的に示す断面説明図で、(a)図は金型の下型に導電成形体をインサートしてその露出した表面に別の複合シートを積層した状態を誇張して示す説明図、(b)図は別の複合シートに金型の上型を接触させた状態を誇張して示す説明図、(c)図は金型を型締めして加圧加熱し、レドックスフロー電池用双極板を圧縮成形した状態を誇張して示す説明図、(d)図は金型から脱型したレドックスフロー電池用双極板を誇張して示す説明図である。 本発明に係るレドックスフロー電池用双極板の第2の実施形態を模式的に示す平面説明図である。 図5のVI‐VI線断面説明図である。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるレドックスフロー電池用双極板1は、図1ないし図4に示すように、繊維樹脂2と、この繊維樹脂2よりも導電性に優れる粒子形態の導電材5とを含み、繊維樹脂2が少なくともポリプロピレン繊維系3と芳香族骨格のみを有するアラミド繊維4のうち、ポリプロピレン繊維系3を含み、導電材5が粒子状導電材6と繊維状導電材7の少なくともいずれか一方を含有する双極板である。
このレドックスフロー電池用双極板1は、特に限定されるものではないが、図3や図4に示すように、繊維樹脂2に導電材5の一部を分散して複合シート11を成形し、吸引治具12内に複合シート11をセットしてその露出面に導電材5の残部を充填し、吸引治具12を閉鎖して減圧することで導電成形体14を成形し、その後、成形した導電成形体14の露出面に複合シート11を積層して加熱圧縮することで平面矩形の薄板に製造されるのが好ましい。
繊維樹脂2と導電材5とは、繊維樹脂2よりも導電材5が質量比で多く含有される。すなわち、繊維樹脂2と導電材5の質量比率は、レドックスフロー電池用双極板1の導電性、薄型化、可撓性、柔軟性、硫酸バナジウム水溶液等に対する耐久性等を向上させるため、15〜40:85〜60の範囲とされる。
繊維樹脂2が15〜40質量部なのは、繊維樹脂2が15質量部未満の場合には、導電材5との融着が不十分となり、レドックスフロー電池用双極板1から導電材5が脱落したり、レドックスフロー電池用双極板1の破損を招きやすくなるからである。これに対し、繊維樹脂2が40質量部を越える場合には、導電材5の配合量が低下し、レドックスフロー電池用双極板1の導電性が低下するからである。
繊維樹脂2は、比較的低温(160〜170℃)での成形が容易であり、しかも、安価で入手しやすいポリプロピレン繊維(PP)等のポリプロピレン繊維系3を含有するが、他の繊維性の樹脂を必要に応じて含有しても良く、他の繊維性の樹脂を含有する場合には、アラミド繊維4が最適である。この繊維樹脂2の平均繊維長は、1〜80mm、好ましくは2〜40mm、より好ましくは2〜10mmが良い。
これは、繊維樹脂2の平均繊維長が1〜80mmの範囲内であれば、分散性が向上し、レドックスフロー電池用双極板1の製造時に導電成形体14全体の組成が均一化し、部分的な物性や導電性の相違を減少させることができるからである。また、レドックスフロー電池用双極板1の製造時に導電成形体14から繊維樹脂2が脱落するのを防止することができるからである。
ポリプロピレン繊維系3としては、平均繊維長が1〜80mmの未変性ポリプロピレン繊維、あるいは酸変性ポリプロピレン繊維があげられるが、特に平均繊維長が1〜80mmの酸変性ポリプロピレン繊維が最適である。これは、ポリプロピレン繊維、特に未変性ではない酸変性ポリプロピレン繊維であれば、導電材5の接着性が著しく向上し、機械的特性(例えば、曲げ強度や引張強度)も大幅に向上するからである。また、接着性の向上により、硫酸バナジウム水溶液中に長時間晒されても、導電材5のレドックスフロー電池用双極板1からの脱落が減少し、レドックスフロー電池用双極板1の形態維持に実に有効だからである。
酸変性ポリプロピレンは、特に限定されるものではないが、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、アクリル酸、クロトン酸等のようなカルボキシル基を有するモノマーと共重合したポリプロピレンである。また、酸変性ポリプロピレンは、単独で用いても良いが、二種以上を組み合わせて用いても良い。さらに、未変性のポリプロピレンと酸変性ポリプロピレンとを組み合わせることも可能である。
アラミド繊維4は、パラ系、メタ系の各単独、あるいはこれらを任意の組成比で混合した平均繊維長1〜10mm、好ましくは平均繊維長2〜5mmの繊維からなり、レドックスフロー電池用双極板1の製造時に繊維樹脂2と導電材5、繊維樹脂2同士を適切に縺れさせ、繊維樹脂2を補強するよう機能する。このアラミド繊維4は、パルプ状やカットファイバー状等、いかなる形状でも良いが、繊維樹脂2と導電材5とを適切に絡める観点からすると、表面が毛羽立ったパルプ状が好ましい。
アラミド繊維4は、他の繊維樹脂2を補強するが、補強機能に止まらず、繊維樹脂2に耐熱性、強度、耐薬品性等を付与することにより、レドックスフロー電池用双極板1の製造や品質に資するよう機能する。このアラミド繊維4は、導電性の向上に特に寄与するものではないので、添加する場合には、1〜5質量部程度添加されるのが好ましい。アラミド繊維4としては、長さ3mmのケブラーカットファイバー[東レ・デュポン(株)製:Kevlar(登録商標)]等を使用することができる。
導電材5は、図2に示すように、粒子状導電材6と繊維状導電材7のいずれをも含有することが最適ではあるが、これら粒子状導電材6と繊維状導電材7以外の他種類の導電材料を含有しても良いし、粒子状導電材6のみでも良く、繊維状導電材7のみでも良い。導電材5が粒子状導電材6と繊維状導電材7を共に含有する場合、繊維状導電材7が面方向に沿って配向しやすいので、レドックスフロー電池用双極板1の面方向の導電性を向上させることができる。
これに対し、粒子状導電材6は、面方向や厚み方向を問わずに配向するので、繊維状導電材7だけでは不十分なレドックスフロー電池用双極板1の厚み方向の導電性向上が期待できる。また、粒子状導電材6を仮成形して導電経路の三次元ネットワークを形成すると、繊維状導電材7だけでは低抵抗が実現困難なレドックスフロー電池用双極板1の厚み方向の抵抗値を低くすることができる。
このように導電材5は、粒子状導電材6と繊維状導電材7とを共に含有する場合には、レドックスフロー電池用双極板1の厚み方向と面方向の両方向の導電性をそれぞれ向上させることができる。これら粒子状導電材6と繊維状導電材7とは、導電性向上の観点から、粒子状導電材6が繊維状導電材7よりも多く含まれることが好ましい。具体的な質量比率としては、40〜82:20〜3程度の範囲とされる。
粒子状導電材6としては、導電性に優れる金属粒子でも良いが、硫酸バナジウム水溶液中に金属が溶出し、レドックスフロー電池用双極板1の耐久性低下を招くおそれがあるので、組成や形状の制御が可能な黒鉛粒子6aが良い。黒鉛粒子6aを選択すれば、電気抵抗値が1〜3×10−3Ω・cmなので、優れた導電性が期待できる。この黒鉛粒子6aは、図2に示すように、導電経路である三次元ネットワークを形成するが、この三次元ネットワークの隙間に少なくとも繊維樹脂2と繊維状導電材7とが充填される。
黒鉛粒子6aの形状には、薄片状、球状、鱗片状等があるが、特に制約されるものではない。また、黒鉛粒子6aの平均粒子径は、レーザ回析/散乱式粒子径分布測定法による測定で3〜500μm、好ましくは3〜400μm、より好ましくは3〜300μmが良い。これは、平均粒子径が3〜500μmの範囲内であれば、レドックスフロー電池用双極板1の製造時に複合シート11の形成が容易になるからである。
黒鉛粒子6aには、膨張黒鉛粒子6b、膨張化黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、天然黒鉛粒子等の種類があるが、好ましくは加熱により膨張する膨張黒鉛粒子6b、膨張化黒鉛粒子、あるいは人造黒鉛粒子が好適である。膨張黒鉛とは、グラファイトの正六角形平面を重ねた構造の特定の一面に他の物質層が入り込む(インターカレーション)ことにより、黒鉛層間を拡張させた黒鉛又は黒鉛層間化合物をいう。膨張黒鉛粒子6bが好適なのは、優れた導電性を得ることができ、膨張黒鉛粒子6b間の隙間を塞いで液漏れを防ぐことができるという理由に基づく。
この点について説明すると、膨張黒鉛粒子6bを採用すれば、加熱により膨張するので、レドックスフロー電池用双極板1内の空隙を黒鉛粒子6aで満たすことができ、レドックスフロー電池用双極板1の導電経路の欠落を減少させ、電気抵抗値を下げることができるからである。また、レドックスフロー電池用双極板1内の空隙に硫酸バナジウム水溶液が浸み込むことによる膨潤を抑制することが可能になるからである。
これに対し、人造黒鉛は、原料のコークスにピッチ等の結合剤を加え成形し、1300℃付近まで加熱することで一次焼成し、次に一次焼成品をピッチ樹脂に含浸させ、さらに3000℃近い高温で二次焼成することで生成される黒鉛である。この人造黒鉛は、一般的に灰分0.5%、揮発分0.5%、固定炭素99%、全硫黄0.02%程度で品位が高く、品質が実に安定しているという特徴を有する。人造黒鉛が好適なのは、金属等の不純物が少なく、結晶性も均一であるため、工業製品に適するという理由に基づく。
膨張黒鉛粒子6bとしては、平均粒子径が300μmのEXP‐50SS[富士黒鉛工業(株)製:製品名]、平均粒子径が200μmのEXP‐80S[富士黒鉛工業(株)製:製品名]等があげられる。また、膨張化黒鉛粒子としては、平均粒子径が60μmのBSP‐60A[富士黒鉛工業(株)製:製品名]等があげられる。人造黒鉛粒子としては、平均粒子径が45μmのJSG‐75S[富士黒鉛工業(株)製:製品名]や平均粒子径が52μmのAT‐No.5S[オリエンタル産業(株)製:製品名]等があげられる。天然黒鉛粒子としては、平均粒子径が80μmの鱗状黒鉛粉末CB‐100[日本黒鉛工業(株)製:製品名]等が該当する。
繊維状導電材7としては、低い電気抵抗値が期待できる金属繊維でも良いが、硫酸バナジウム水溶液中に金属が溶出し、レドックスフロー電池用双極板1の耐久性が低下するおそれがあるので、耐熱性に優れ、軽くて強い炭素繊維8等が好適である。この炭素繊維8の中では、導電性、耐熱性、耐薬品性等に優れる軽いグラファイト(黒鉛)繊維が最適である。グラファイト繊維を選択すれば、電気抵抗値が1〜3×10−3Ω・cmであり、繊維樹脂2よりも電気抵抗値が低いので、高い導電性が期待できる。
炭素繊維8の平均繊維長は、1〜60mm、好ましくは2〜20mm、より好ましくは2〜5mmが良い。これは、平均繊維長が1〜60mmの範囲であれば、複合シート11の厚みよりも大きく長い繊維を用いることで、レドックスフロー電池用双極板1の可撓性に寄与する面方向に炭素繊維8が並びやすくなり、曲げても折れない柔軟性に優れるレドックスフロー電池用双極板1を得ることができるという理由に基づく。
炭素繊維8は、PAN系の繊維、ピッチ系の繊維をそれぞれ単独、あるいは混合して用いることができる。PAN系の炭素繊維8としては、炭素繊維トレカ[東レ(株)製:登録商標]のカットファイバーT008‐003(繊維径φ7μm、カット長3mm)等が該当する。これに対し、ピッチ系の炭素繊維8としては、YSH‐60A‐30S[東レ(株)製:製品名](繊維径φ7μm、カット長3mm)等が該当する。
上記において、レドックスフロー電池用双極板1を製造する場合には、先ず、必要枚数(本実施形態では2枚)の複合シート11を得るため、アラミド繊維4含有の繊維樹脂2、導電材5の炭素繊維8等からなる繊維状導電材7を水中で混合分散して固形分0.5〜10wt%のスラリーを作成し、このスラリーに凝集剤を添加し、これらの混合物を紙抄きと類似の要領でシート化することにより、シートを形成する。こうしてシートを形成したら、シートを加圧して乾燥させて水分を除去し、この乾燥したシートをプレス機の専用金型等にセットして加熱加圧することにより、繊維樹脂2に導電材5の繊維状導電材7が略均一に分散して絡んだフェルト状の複合シート11を必要枚数成形する。
この複合シート11を成形する際、導電材5の炭素繊維8の代わりに炭素粒子を用い、上記作業と同様の作業により、繊維樹脂2に導電材5の炭素粒子が略均一に分散したフェルト状の複合シート11を成形することができる。また、導電材5として、炭素繊維8と炭素粒子とを共に用い、上記作業と同様の作業により、繊維樹脂2に炭素繊維8と炭素粒子が略均一に分散したフェルト状の複合シート11を成形することもできる。また、厚み1mm未満のレドックスフロー電池用双極板1を製造する場合には、複合シート11を厚み1〜7mm未満、好ましくは1〜5mm未満に成形すると良い。
次いで、図3に示す雌型の吸引治具12を用意し、この吸引治具12の内底面に成形した一枚の複合シート11をセット(図3(a)参照)してその露出した表面上に導電材5の膨張黒鉛粒子6bからなる粒子状導電材6を多目に充填(図3(b)参照)し、吸引治具12の内部と複合シート11の表面との間を多目の粒子状導電材6で埋める。
この際の粒子状導電材6の充填量は、複合シート11の単位面積当たりで0.5〜1.8g、好ましくは0.8〜1.2gが良い。複合シート11の表面上に粒子状導電材6を多目に充填したら、吸引治具12上の粒子状導電材6にスクレーパ13等を接触させ、このスクレーパ13等を水平に移動(図3(c)参照)させることにより、吸引治具12上の余分な粒子状導電材6を除去して平らにならし、吸引治具12の開口上面と粒子状導電材6とを揃えて略面一に整合させる。
次いで、吸引治具12の開口上部を閉鎖して上下逆にし、この上下逆の吸引治具12の底部を真空ポンプ等に接続して吸引・減圧し、粒子状導電材6を圧縮して導電成形体14を成形(図3(d)参照)した後、吸引治具12から成形した導電成形体14を脱型する。導電成形体14を成形する際、アラミド繊維4は、レドックスフロー電池用双極板1の材料組成を均一化するよう機能する。
この均一化の機能について説明すると、導電成形体14を成形する場合、繊維樹脂2のポリプロピレン繊維系3が溶融して導電成形体14内を流動するが、導電材5の一部分がポリプロピレン繊維系3と共に流動し、導電成形体14の組成に部分的なバラツキが生じることがある。しかし、アラミド繊維4が配合された場合、アラミド繊維4の毛羽立った表面が導電材5の一部分の抵抗となり、この結果、レドックスフロー電池用双極板1の材料組成の均一化を図ることができる。
次いで、レドックスフロー電池用双極板1を成形する専用の金型20を用意して加熱し、この金型20の型開きした下型21に導電成形体14をインサートしてその露出した表面に成形しておいた別の一枚の複合シート11を積層(図4(a)参照)し、この複合シート11に金型20の上型22を接触させる(図4(b)参照)。導電成形体14のインサートの際、導電成形体14の露出した表面は、複合シート11との間に粒子状導電材6を挟んで強度を向上させる観点から、複合シート11側ではなく、粒子状導電材6側であることが好ましい。
複合シート11に金型20の上型22を接触させたら、金型20を強く型締めして加圧加熱することにより、導電成形体14と別の複合シート11とを平坦な薄板のレドックスフロー電池用双極板1に圧縮成形する(図4(c)参照)。この際の金型20の型締め圧力は、約400〜900kg/cm(約40〜90MPa)、好ましくは約50〜70MPa、より好ましくは約55〜65MPaが最適である。また、加熱の温度は、繊維樹脂2のポリプロピレン繊維系3の融点が165℃程度であり、熱分解温度が約300℃であることから、170〜300℃、好ましくは175〜220℃が良い。
レドックスフロー電池用双極板1が加熱圧縮により成形される際、多数の粒子状導電材6の間に三次元ネットワークが形成され、この三次元ネットワークの隙間に複合シート11の繊維樹脂2、アラミド繊維4、繊維状導電材7がそれぞれ複雑に流入して閉塞する。また、繊維樹脂2のポリプロピレン繊維系3が溶融して粒子状導電材6と繊維状導電材7とを固定するバインダー樹脂となり、ポリプロピレン繊維系3の繊維形状が消失する。
レドックスフロー電池用双極板1を圧縮成形したら、金型20を冷却後、型開きしてレドックスフロー電池用双極板1を脱型すれば、完全なレドックスフロー電池用双極板1を製造することができる(図4(d)参照)。このレドックスフロー電池用双極板1の代表的なサンプルは、面/厚み方向の抵抗値が20mΩ・cm/20mΩ、又はそれ以下である。
上記によれば、多数の粒子状導電材6の間に形成された三次元ネットワークの隙間に繊維樹脂2、アラミド繊維4、繊維状導電材7がそれぞれ複雑に流入して閉塞し、繊維樹脂2、アラミド繊維4、粒子状導電材6、繊維状導電材7が複雑に縺れて一体化するので、多数の粒子状導電材6を強固に接続し、導電性を著しく向上させることができる。また、繊維樹脂2と導電材5とを単に配合するのではなく、繊維樹脂15〜40質量部と導電材85〜60質量部とを配合するので、レドックスフロー電池用双極板1に高導電性、薄型化、可撓性、柔軟性、硫酸バナジウム水溶液等に対する耐久性等を付与することができる。
次に、図5と図6は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、レドックスフロー電池用双極板1の両面に、硫酸バナジウム水溶液等の所定の液体を流通させる流路9をそれぞれ複数配設し、レドックスフロー電池用双極板1の周縁部には、レドックスフロー電池の他の構成部材と接続する接続口10を複数穿孔するようにしている。
複数の流路9は、流路構造の複合化に資する観点から、レドックスフロー電池用双極板1の略中央部にサーペンタイン形に屈曲して横一列に配列され、各流路9が連続した断面略U字形に凹み成形される。複数の流路9は、例えば金型20の下型21と上型22とに凹凸部をそれぞれ形成することで成形される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、レドックスフロー電池用双極板1の表裏両面にサーペンタイン形の複数の流路9をそれぞれ凹み成するので、同一条件下でのレドックスフロー電池の性能を向上させることができるのは明らかである。
なお、上記実施形態におけるアラミド繊維4は、繊維樹脂2を特に補強する必要が無ければ、省略しても良い。また、上記実施形態では導電材5が黒鉛粒子6aと炭素繊維8の例を主に示したが、何らこれに限定されるものではなく、例えば炭素繊維8の代わりの炭素粒子(例えば、カーボンブラックやカーボンナノチューブ等)と黒鉛粒子6aとを含有しても良い。
この場合、炭素粒子は、黒鉛粒子6aよりも質量比で少なく含有されることが好ましい。具体的には、40〜82質量部の黒鉛粒子6aに対し、炭素粒子は、20〜3質量部以下の範囲で黒鉛粒子6aと混合されるのが好ましい。さらに、複数の流路9は、サーペンタイン形の他、ストレート形等に形成することができる。
以下、本発明に係るレドックスフロー電池用双極板及びその製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、レドックスフロー電池用双極板の複合シートを得るため、表1に示すように、繊維樹脂であるポリプロピレン繊維25質量部、導電材の膨張化黒鉛粒子60質量部、及び炭素繊維10質量部、並びにアラミド繊維5質量部を水中で混合分散してスラリーを作成した。
ポリプロピレン繊維としては、酸変性ポリプロピレン繊維[ダイワボウポリテック(株)製:製品名PZ‐AD]を3mmの長さにカットした短繊維を使用した。また、導電材の膨張化黒鉛粒子としては、平均粒子径が60μmのBSP‐60A[富士黒鉛工業(株)製:製品名]を使用した。炭素繊維としては、炭素繊維トレカ[東レ(株)製:登録商標]のカットファイバーT008‐003(繊維径φ7μm、カット長3mm)を用いた。また、アラミド繊維としては、長さ3mmのケブラーカットファイバー[東レ・デュポン(株)製:Kevlar(登録商標)]を用いた。
スラリーを作成したら、このスラリーに凝集剤を添加した。この凝集剤としては、カチオン系ポリアクリル酸ソーダ0.001質量部、アニオン系ポリアクリル酸ソーダ0.00001質量部からなる添加物とした。スラリーに凝集剤を添加したら、これらスラリーと凝集剤とが混合した混合物をメッシュ構造を有する25cm角のシート機により抄紙シートに形成し、この抄紙シートを110℃に加熱したプレス機にセットして約200kg/cmの圧力で約5分間加熱加圧し、抄紙シートを乾燥させて水分を除去し、ポリプロピレン繊維に膨張化黒鉛粒子と炭素繊維が均一に分散して絡んだ厚さ1.7mmの複合シートを成形した。
次いで、レドックスフロー電池用双極板と同じ外形寸法を有する雌型の吸引治具を用意し、この吸引治具の内底面にカットした複合シートをセットしてその露出した表面上に導電材の膨張化黒鉛粒子10質量部を充填し、吸引治具の内部と複合シートの表面との間を膨張化黒鉛粒子で完全に埋めた。膨張化黒鉛粒子としては、上記BSP‐60A[富士黒鉛工業(株)製:製品名]を選択した。
複合シートの表面上に膨張化黒鉛粒子を多目に充填したら、吸引治具上の膨張化黒鉛粒子にスクレーパを接触させ、このスクレーパを水平に移動させることにより、吸引治具上の余分な膨張化黒鉛粒子を除去して平らにならし、吸引治具の開口上面と膨張化黒鉛粒子の表面とを揃えて整合させた。
次いで、吸引治具の開口上部を閉鎖して上下逆にし、この上下逆の吸引治具の底部を真空ポンプに接続して吸引・減圧し、膨張化黒鉛粒子を圧縮して導電成形体を成形した後、吸引治具から成形した導電成形体を脱型した。
次いで、レドックスフロー電池用双極板を成形する専用の金型を用意し、この金型のキャビティ面に離型剤を均一に塗布し、金型の型開きした下型に導電成形体をインサートしてその露出した表面に別の複合シートを積層し、この複合シートに金型の上型を接触させた。離型剤としては、ダイフリーGA7500[ダイキン工業(株)製:製品名]を選択した。また、金型は、予め200℃に加熱しておいた。
複合シートに金型の上型を接触させたら、金型を60MPaで強く型締めして加圧加熱し、上下の熱板の温度が30℃の冷却用の圧縮成形機に直ちに移載し、金型の温度が80℃以下になるまで加圧冷却してレドックスフロー電池用双極板を圧縮成形した。レドックスフロー電池用双極板を圧縮成形したら、金型を型開きしてレドックスフロー電池用双極板を脱型し、25cm×25cm、厚さ0.6mmのレドックスフロー電池用双極板を製造した。
レドックスフロー電池用双極板を製造したら、このレドックスフロー電池用双極板の機械的強度である初期の引張強度、及びpH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中にレドックスフロー電池用双極板を100時間浸漬した後の引張強度をそれぞれ測定して表2にまとめた。また、レドックスフロー電池用双極板の導電性として、面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値とをそれぞれ測定して表2にまとめた。レドックスフロー電池用双極板の柔軟性や強度についても、試験を実施して結果を表2にまとめた。
レドックスフロー電池用双極板の初期の引張強度はJIS K6251に基づき、レドックスフロー電池用双極板を1号ダンベル試験片に打ち抜き、RTC‐1310A[(株)オリエンテック製:製品名]を使用し、引張速度10mm/minの条件で引張試験を実施してその測定値を初期の引張強度とした。
また、100時間浸漬した後の引張強度については、JIS K6251に基づき、レドックスフロー電池用双極板を1号ダンベル試験片に打ち抜き、ポリエチレン製の容器にpH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液を充填するとともに、このpH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中に1号ダンベル試験片を100時間浸漬した後、RTC‐1310A[(株)オリエンテック製:製品名]を使用し、引張速度10mm/minの条件で引張試験を実施することにより、測定値を100時間浸漬した後の引張強度とした。
pHの測定ではpH計[(株)堀場製作所製:製品名F22‐II]を使用し、測定電極は9610‐10D[(株)堀場製作所製:製品名]を選択した。上記引張試験は、それぞれ室温中で3回実施し、測定した値の平均値を引張強度の測定値とした。
面方向の体積抵抗値については、四端子四探針法により測定した。具体的には、25cm×25cmの大きさのレドックスフロー電池用双極板から5cm×5cmの大きさの試験片を25枚切り出し、各試験片の体積抵抗値を測定機である低抵抗率計[三菱化学(株)製:製品名ロレスタGP MCP‐T610]により測定し、測定した測定値の平均値を面方向の体積抵抗値とした。
厚み方向の抵抗値については、先ず、25cm×25cmの大きさのレドックスフロー電池用双極板から5cm×2.5cmの大きさの試験片を切り出し、この試験片をガラス管の間に挟んだ。ガラス管は、φ10mmのガラスU字管の屈曲した底部が切断され、この切断された底部に螺子穴付きのホルダが接着されたタイプとした。
試験片をガラス管の間に挟んだら、試験片とガラス管の両側部との間から水銀が漏れないよう螺子で固定し、ガラス管の両側部に水銀を一定量注入するとともに、水銀と用意した抵抗計[日置電機(株)製]とをリード線で接続し、導通するよう抵抗値を測定した。厚み方向の抵抗値は、面方向の体積抵抗値を測定した5cm×5cmの試験片を半分に切断して5cm×2.5cmの大きさの試験片を複数枚形成し、25枚の試験片の厚み方向の体積抵抗値をそれぞれ測定し、測定した測定値の平均値とした。
レドックスフロー電池用双極板の柔軟性については、pH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中に浸漬する前のレドックスフロー電池用双極板、及び浸漬した後のレドックスフロー電池用双極板を対角線上の両端部でそれぞれ折り曲げ、両端部が接触するまでにレドックスフロー電池用双極板に割れが発生するか否かを目視で評価した。
〔実施例2〕
繊維樹脂であるポリプロピレン繊維を30質量部、導電材の膨張化黒鉛粒子を55質量部に変更し、その他の部分については、実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用双極板を製造した。
レドックスフロー電池用双極板を製造したら、このレドックスフロー電池用双極板の初期の引張強度、及びpH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中にレドックスフロー電池用双極板を100時間浸漬した後の引張強度をそれぞれ測定して表1、表2にまとめた。また、レドックスフロー電池用双極板の導電性として、面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値とをそれぞれ測定して表2にまとめた。レドックスフロー電池用双極板の柔軟性や強度についても、試験を実施して結果を表2にまとめた。
〔実施例3〕
繊維樹脂であるポリプロピレン繊維30質量部、導電材の膨張化黒鉛粒子60質量部、及び炭素繊維10質量部を水中で混合分散し、アラミド繊維を省略してスラリーを作成した。その他の部分については、実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用双極板を製造した。
レドックスフロー電池用双極板を製造したら、このレドックスフロー電池用双極板の初期の引張強度、及びpH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中にレドックスフロー電池用双極板を100時間浸漬した後の引張強度をそれぞれ測定して表1、表2にまとめた。また、レドックスフロー電池用双極板の導電性として、面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値とをそれぞれ測定して表2にまとめた。レドックスフロー電池用双極板の柔軟性や強度についても、試験を実施して結果を表2にまとめた。
〔実施例4〕
繊維樹脂であるポリプロピレン繊維を35質量部、導電材の膨張化黒鉛粒子を50質量部に変更し、その他の部分については、実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用双極板を製造した。
レドックスフロー電池用双極板を製造したら、このレドックスフロー電池用双極板の初期の引張強度、pH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中にレドックスフロー電池用双極板を100時間浸漬した後の引張強度、レドックスフロー電池用双極板の面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値、レドックスフロー電池用双極板の柔軟性や強度について、上記と同様に測定し、結果を表2にまとめた。
〔実施例5〕
繊維樹脂であるポリプロピレン繊維25質量部、導電材の膨張化黒鉛粒子60質量部、及び炭素繊維10質量部、並びにアラミド繊維5質量部を水中で混合分散してスラリーを作成した。ポリプロピレン繊維は、平均繊維径20μmの未変性ポリプロピレン繊維[プライムポリマー(株)製:製品名J105H]を溶融紡糸法により繊維化した後、平均繊維長5mmの長さにカットした短繊維とした。その他の部分については、実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用双極板を製造した。
レドックスフロー電池用双極板を製造したら、このレドックスフロー電池用双極板の初期の引張強度、pH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中にレドックスフロー電池用双極板を100時間浸漬した後の引張強度、レドックスフロー電池用双極板の面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値、レドックスフロー電池用双極板の柔軟性や強度について、上記と同様に測定し、結果を表2に記載した。
〔実施例6〕
繊維樹脂であるポリプロピレン繊維25質量部、導電材の人造黒鉛粒子60質量部、及び炭素繊維10質量部、並びにアラミド繊維5質量部を水中で混合分散してスラリーを作成した。人造黒鉛粒子としては、平均粒子径が45μmのJSG‐75S[富士黒鉛工業(株)製:製品名]を使用した。その他の部分については、実施例5と同様にしてレドックスフロー電池用双極板を製造した。
レドックスフロー電池用双極板を製造したら、このレドックスフロー電池用双極板の初期の引張強度、pH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中にレドックスフロー電池用双極板を100時間浸漬した後の引張強度、レドックスフロー電池用双極板の面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値、レドックスフロー電池用双極板の柔軟性や強度について、上記と同様に測定し、結果を表2に記載した。
〔実施例7〕
繊維樹脂であるポリプロピレン繊維20質量部、導電材の人造黒鉛粒子70質量部、及び炭素繊維5質量部、並びにアラミド繊維5質量部を水中で混合分散してスラリーを作成した。その他の部分については、実施例6と同様にしてレドックスフロー電池用双極板を製造した。
レドックスフロー電池用双極板を製造したら、このレドックスフロー電池用双極板の初期の引張強度、pH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中にレドックスフロー電池用双極板を100時間浸漬した後の引張強度、レドックスフロー電池用双極板の面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値、レドックスフロー電池用双極板の柔軟性や強度について、上記と同様に測定し、結果を表2に記載した。
〔実施例8〕
繊維樹脂であるポリプロピレン繊維20質量部、導電材の人造黒鉛粒子70質量部、及び炭素繊維5質量部、並びにアラミド繊維5質量部を水中で混合分散してスラリーを作成した。ポリプロピレン繊維としては、酸変性ポリプロピレン繊維[ダイワボウポリテック(株)製:製品名PZ‐AD]を3mmの長さにカットした短繊維を使用した。その他の部分については、実施例7と同様にしてレドックスフロー電池用双極板を製造した。
レドックスフロー電池用双極板を製造したら、このレドックスフロー電池用双極板の初期の引張強度、pH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中にレドックスフロー電池用双極板を100時間浸漬した後の引張強度、レドックスフロー電池用双極板の面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値、レドックスフロー電池用双極板の柔軟性や強度について、上記と同様に測定し、結果を表2に記載した。
〔比較例1〕
繊維樹脂である酸変性ポリプロピレン繊維8質量部、導電材の膨張化黒鉛粒子80質量部、及び炭素繊維10質量部、並びにアラミド繊維2質量部を水中で混合分散してスラリーを作成した。その他の部分については、実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用双極板を製造した。
レドックスフロー電池用双極板を製造したら、このレドックスフロー電池用双極板の初期の引張強度、pH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中にレドックスフロー電池用双極板を100時間浸漬した後の引張強度、レドックスフロー電池用双極板の面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値、レドックスフロー電池用双極板の柔軟性や強度について、上記と同様に測定し、結果を表2に記載した。
〔比較例2〕
繊維樹脂である未変性ポリプロピレン繊維8質量部、導電材の膨張化黒鉛粒子80質量部、及び炭素繊維10質量部、並びにアラミド繊維2質量部を水中で混合分散してスラリーを作成した。その他の部分については、実施例5と同様にしてレドックスフロー電池用双極板を製造した。
レドックスフロー電池用双極板を製造したら、このレドックスフロー電池用双極板の初期の引張強度、pH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中にレドックスフロー電池用双極板を100時間浸漬した後の引張強度、レドックスフロー電池用双極板の面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値、レドックスフロー電池用双極板の柔軟性や強度について、上記と同様に測定し、結果を表2に記載した。
〔比較例3〕
繊維樹脂である未変性ポリプロピレン繊維8質量部、導電材の人造黒鉛粒子80質量部、及び炭素繊維10質量部、並びにアラミド繊維2質量部を水中で混合分散してスラリーを作成した。その他の部分については、実施例6と同様にしてレドックスフロー電池用双極板を製造した。
レドックスフロー電池用双極板を製造したら、このレドックスフロー電池用双極板の初期の引張強度、pH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中にレドックスフロー電池用双極板を100時間浸漬した後の引張強度、レドックスフロー電池用双極板の面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値、レドックスフロー電池用双極板の柔軟性や強度について、上記と同様に測定し、結果を表2に記載した。
Figure 2019160795
Figure 2019160795
各実施例のレドックスフロー電池用双極板は、初期の引張強度、pH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中に100時間浸漬した後の引張強度、面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値について、優れた値が得られるのを確認した。また、各レドックスフロー電池用双極板を観察したが、割れがなく、柔軟性や強度に関して優れた効果が得られるのを確認した。
これに対し、各比較例のレドックスフロー電池用双極板は、ポリプロピレン繊維が少なく、しかも、導電材が必要以上に多いので、初期の引張強度、pH=−0.68の5価硫酸バナジウム水溶液中に100時間浸漬した後の引張強度、面方向の体積抵抗値と厚み方向の抵抗値について、値が低くなり、満足する効果を得ることができなかった。さらに、レドックスフロー電池用双極板を対角線上の両端部でそれぞれ折り曲げたところ、両端部が接触する前にレドックスフロー電池用双極板の一部に割れが生じ、実用性に疑義が生じた。
本発明に係るレドックスフロー電池用双極板及びその製造方法は、レドックスフロー電池の製造分野で使用される。
1 レドックスフロー電池用双極板
2 繊維樹脂
3 ポリプロピレン繊維系
4 アラミド繊維
5 導電材
6 粒子状導電材
6a 黒鉛粒子
6b 膨張黒鉛粒子
7 繊維状導電材
8 炭素繊維
9 流路
11 複合シート
12 吸引治具(減圧具)
14 導電成形体
20 金型
21 下型
22 上型

Claims (7)

  1. 繊維樹脂15〜40質量部と、この繊維樹脂よりも導電性に優れる導電材85〜60質量部とを含み、
    繊維樹脂が少なくとも平均繊維長1〜80mmポリプロピレン繊維系を含み、導電材が粒子状導電材と繊維状導電材の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とするレドックスフロー電池用双極板。
  2. 繊維樹脂がアラミド繊維を含んでなる請求項1記載のレドックスフロー電池用双極板。
  3. 繊維樹脂のポリプロピレン繊維系がポリプロピレン繊維である請求項1又は2記載のレドックスフロー電池用双極板。
  4. 導電材の粒子状導電材が平均粒子径3〜500μmの黒鉛粒子であり、導電材の繊維状導電材が炭素繊維である請求項1、2、又は3記載のレドックスフロー電池用双極板。
  5. 導電材の粒子状導電材が膨張黒鉛粒子である請求項4記載のレドックスフロー電池用双極板。
  6. 導電材の粒子状導電材が人造黒鉛粒子である請求項4記載のレドックスフロー電池用双極板。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載のレドックスフロー電池用双極板の製造方法であり、
    繊維樹脂に導電材の一部を分散して複合シートを形成し、減圧具内に複合シートをセットしてその露出部には導電材の残部を充填し、減圧具を閉鎖して減圧することにより、導電成形体を成形し、その後、成形した導電成形体の露出部に複合シートを積層して加熱圧縮することにより、レドックスフロー電池用の双極板を形成することを特徴とするレドックスフロー電池用双極板の製造方法。
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