JP2019157156A - 複合被膜および複合被膜の形成方法 - Google Patents

複合被膜および複合被膜の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐破壊性、耐剥離性に優れ、摺動時、大きな接触応力が繰り返し発生する用途に用いた場合でも、優れた密着性を発揮することができ、十分な耐久性を有する被膜とその形成方法を提供する。【解決手段】基材上に被覆される複合被膜であって、下層に水素含有量が5at%未満、膜厚が200〜1000nmの硬質炭素膜Aが形成され、上層に水素含有量が5〜30at%、膜厚が210〜5000nm、ヤング率が200GPaより大きい硬質炭素膜Bが形成されており、硬質炭素膜Aと硬質炭素膜Bとが、直接、積層されている複合被膜。【選択図】図1

Description

本発明は、複合被膜および複合被膜の形成方法に関し、より詳しくは耐久性に優れ、優れた密着性を発揮する硬質炭素被膜を備える複合被膜とその形成方法に関する。
硬質炭素(DLC:ダイヤモンドライクカーボン)膜は、低摩擦性・高耐摩耗性・低凝集性(耐焼き付き性)など、優れた摺動特性を有しているため、例えば、機械・装置、金型、切削工具および自動車部品などの摺動部材として広く用いられている。
そして、硬質炭素膜のこれらの摺動特性をさらに向上させるための技術が種々開発されている。例えば、基材(母材)との密着性を良くし、かつ摩擦係数を低減させるため、図7に示すように、硬質炭素製の被膜2を、無水素硬質炭素(a−C)膜の下層22と、含水素硬質炭素(a−C:H)膜の上層23の2層構造とする技術が開発されている(例えば特許文献1)。また、厚み0.5〜200nmの無水素硬質炭素膜の上に、膜厚が無水素硬質炭素膜の2〜10倍で、水素含有率が5〜25at%の含水素硬質炭素膜を形成した被膜が開発されている(例えば特許文献2)。そして、特許文献2には基材の表面にW、Ti、Nbなどの中間層21を形成することによって基材と硬質炭素膜との密着性を向上させることが記載されている。
また、硬質炭素膜自身および相手材の摩耗を低減するため、ヤング率が200GPaより高く、sp比率が50〜90%、水素含有量が20at%以下、膜厚が1μmよりも厚い水素化四面体炭素(ta−C:H)層の上に、ヤング率が200GPaより低く、sp比率が40%以下、水素含有量が20〜30at%でSiおよびOを含有するa−C:H層を形成する技術が開発されている(例えば特許文献3)。
そして、硬質炭素膜のこれらの優れた摺動特性を生かして、より厳しい摺動条件下で使用される部材、例えば軸受、ギア、またはローラ等の被膜へ適用することが期待されている。
特開2000−128516号公報 特開2003−026414号公報 特許第5503145号公報
しかしながら、上記した軸受、ギア、ローラ等では、摺動に際して大きな接触応力が繰り返し発生するため、従来技術を用いて形成された硬質炭素膜では、耐破壊性、耐剥離性が十分とは言えず、密着性が不十分で十分な耐久性が得られないことが知られている。
そこで本発明は、耐破壊性、耐剥離性に優れ、摺動時、大きな接触応力が繰り返し発生する用途に用いた場合でも、優れた密着性を発揮することができ、十分な耐久性を有する被膜とその形成方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下に記載する発明により上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
請求項1に記載の発明は、
基材上に被覆される複合被膜であって、
下層に、水素含有量が5at%未満、膜厚が200〜1000nmの硬質炭素膜Aが形成され、
上層に、水素含有量が5〜30at%、膜厚が210〜5000nm、ヤング率が200GPaより大きい硬質炭素膜Bが形成されており、
前記硬質炭素膜Aと前記硬質炭素膜Bとが、直接、積層されていることを特徴とする複合被膜である。
軸受、ギア、ローラ等に従来の技術で硬質炭素膜を形成した場合、破壊や剥離が生じる要因については、以下のように考えられる。
即ち、軸受、ギアまたはローラ等では、摺動時、被覆された硬質炭素膜に大きな面圧(負荷)が繰り返し掛かり、その度に被膜に大きな接触応力が発生する。そして、これに合わせて基材が変形と復元を繰り返すため、被膜に大きな疲労が生じて、基材と被膜の間や被膜同士で破壊や剥離が発生して、密着性が低下する。
具体的には、上記した特許文献2の場合には、無水素硬質炭素(a−C)層の膜厚が200nm以下と薄いため、無水素硬質炭素(a−C)層自体の強度が足らず、大きな接触応力の繰り返しによって変形しやすく、破壊されやすい。そして、この破壊によって、基材や上層である含水素硬質炭素(a−C:H)層との間で剥離が生じて、密着性が低下する。
また、特許文献3の場合には、下層のta−C:H層は水素化されているため上層との密着力が弱い。そして、このta−C:H層はsp比率が大きく高硬度であるが、膜厚が1μmよりも厚い。通常、硬質炭素膜の残留応力は、硬度が高いほど、膜厚が厚いほど大きくなるため、1μmよりも厚い膜厚の硬質炭素膜は残留応力が非常に大きく破壊しやすい。このため、衝撃的な応力が負荷されたときに下層が破壊されやすく、被膜が基材から剥離して、密着性が低下する。
本請求項における水素含有量が5at%未満の硬質炭素膜は水素含有量が少ないため、基材や他の硬質炭素膜に対する密着性は十分である一方で、高い硬度を有している。このため、膜厚が薄すぎると接触応力の繰り返しに耐えられず変形して破壊されやすく、厚すぎると衝撃的な応力の負荷に耐えられず破壊されて、密着性が低下しやすい。本発明者は、種々の実験と検討の結果、下層の硬質炭素膜(硬質炭素膜A)における膜厚を200〜1000nmと好ましく設定することにより、これらの問題が解決されて、優れた密着性が発揮できることを見出した。
そして、本発明者は、さらに、硬質炭素膜Aの上に、直接、水素含有量が5〜30at%、膜厚が210〜5000nm、ヤング率が200GPaより大きい硬質炭素膜(硬質炭素膜B)を積層することにより、摺動時に繰り返し掛かる大きな負荷(応力)を十分に緩和させることができ、これらの複合被膜とすることにより、十分な耐破壊性、耐剥離性を発揮することができ、優れた密着性が発揮できることを見出した。なお、硬質炭素膜Bのヤング率としては、耐チッピング性の低下を防ぐ観点から、500GPa以下であることが好ましい。
請求項2に記載の発明は、
前記硬質炭素膜Aは、π/σ強度比が異なる複数の硬質炭素層を積層して構成されており、
最上層に位置する前記硬質炭素層のπ/σ強度比が、前記最上層に位置する硬質炭素層よりも下層に位置する硬質炭素層全体におけるπ/σ強度比よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の複合被膜である。
硬質炭素膜Aを単層の膜で厚膜に形成した場合、膜の残留応力が高くなる傾向があり、破壊や剥離を生じやすい。一方、硬質炭素膜Aを、π/σ強度比が異なる複数の薄膜の積層体とし、最上層に位置する硬質炭素層のπ/σ強度比が、それより下層に位置する硬質炭素層全体におけるπ/σ強度比よりも小さくなるように配置した場合、残留応力を低く抑えて、破壊や剥離の発生を抑制して、優れた密着性を発揮させることができる。なお、硬質炭素層全体におけるπ/σ強度比とは、下層が複数の層で構成されている場合には、各層の膜厚を考慮した上での平均値を意味している。
π/σ強度比は、硬質炭素膜中におけるsp結合とsp結合の比率(sp/sp比)と関係する指標であり、sp結合が少なくsp結合が多い場合にはπ/σ強度比が小さくなり、sp結合が多くsp結合が少ない場合にはπ/σ強度比が大きくなる。
本請求項においては、硬質炭素膜Aを、π/σ強度比が異なる複数の硬質炭素層を積層して構成しているため、全体に亘ってπ/σ強度比が同じ単層の硬質炭素膜と異なり、各層の硬質炭素層間でも接触応力を緩和させて残留応力を低減させることができる。そして、最上層に位置する硬質炭素層のπ/σ強度比を、それより下層に位置する硬質炭素層全体におけるπ/σ強度比よりも小さくした場合、最上層の硬質炭素層は、sp結合が多く水素含有量が低いため、結合手がフリーな四面体炭素が十分に形成されて、上層に形成される硬質炭素膜Bとの間に優れた密着性を確保することができる。
請求項3に記載の発明は、
前記硬質炭素膜Aの水素含有量が、1at%未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合被膜である。
基材や他の硬質炭素膜に対する密着性は、硬質炭素膜Aの水素含有量が低いほど、向上する。本請求項においては、1at%未満と非常に低い水素含有量としているため、他の硬質炭素膜に対する密着性をより十分に確保することができる。
請求項4に記載の発明は、
前記基材と前記硬質炭素膜Aとの間にCr、WもしくはTiの金属中間層を備え、
前記金属中間層の膜厚が、30〜500nmであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の複合被膜である。
Cr、WおよびTiは、一般的に基材に使用される鉄系の金属や合金などと比較して特に硬質炭素層との密着力が高い。このため、基材上にこれらの金属中間層を設けた場合、硬質炭素膜Aの基材からの剥離が効果的に抑制される。そして、この金属中間層の膜厚としては、薄すぎると十分な密着性を確保できず、厚すぎると十分な耐破壊性を確保できないことを考慮して、30〜500nmであることが好ましい。
請求項5に記載の発明は、
前記硬質炭素膜Bは、
断面を明視野TEM像により観察したとき、相対的に白い白色硬質炭素層と相対的に黒い黒色硬質炭素層とを有しており、
前記白色硬質炭素層と前記黒色硬質炭素層とが、ナノレベルで交互に積層していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の複合被膜である。
明視野TEM像による観察において、相対的に白い白色硬質炭素層は低密度であり、sp/sp比が大きく、低硬度である。一方、相対的に黒い黒色硬質炭素層は、高密度であり、sp/sp比が小さく、高硬度である。本請求項においては、このように硬度が異なる白色硬質炭素層と黒色硬質炭素層とをナノレベルで交互に積層して硬質炭素膜Bを構成させているため、より大きな応力緩和を得ることができ、より高い耐破壊性、耐剥離性を発揮して、優れた密着性を確保することができる。
また、sp/sp比が大きい白色硬質炭素層は、上記のように低硬度のため耐摩耗性が不十分であるものの耐チッピング性に優れており、sp/sp比が小さい黒色硬質炭素層は高硬度のため耐摩耗性に優れている。このため、白色硬質炭素層と黒色硬質炭素層が交互に積層した硬質炭素膜は、耐チッピング性と耐摩耗性の両立が図られて、優れた摺動特性を発揮することができる。
請求項6に記載の発明は、
前記白色硬質炭素層および前記黒色硬質炭素層の1層あたりの厚みが、0.1〜10nmであることを特徴とする請求項5に記載の複合被膜である。
上記したナノレベルとしては、0.1〜10nmであることが好ましく、このような厚みで白色硬質炭素層と黒色硬質炭素層とを積層することにより、上記した各効果を得ることができる。
請求項7に記載の発明は、
直接または金属中間層を介して基材上に、水素含有量が5at%未満、膜厚が200〜1000nmの硬質炭素膜Aを形成する硬質炭素膜A形成工程と、
前記硬質炭素膜A上に、水素含有量が5〜30at%、膜厚が210〜5000nm、ヤング率が200GPaより大きい硬質炭素膜Bを、直接、形成する硬質炭素膜B形成工程とを備えており、
前記硬質炭素膜A形成工程が、アーク蒸着法により形成する工程であり、
前記硬質炭素膜B形成工程が、炭化水素系ガスまたは水素ガスを導入しながらアーク蒸着法により形成する工程であることを特徴とする複合被膜の形成方法である。
アーク蒸着法は、グラファイトを成膜源とする成膜法であるため、容易に、水素含有量が5at%未満の硬質炭素膜Aを形成することができる。
そして、このアーク蒸着法を炭化水素系ガスや水素ガスを導入しながら行うと、炭素と水素が結合して、容易に、水素含有量が5〜30at%の硬質炭素膜Bを形成することができる。
請求項8に記載の発明は、
前記硬質炭素膜B形成工程において、前記硬質炭素膜Aが形成された前記基材を回転させながら、前記硬質炭素膜Bを形成することを特徴とする請求項7に記載の複合被膜の形成方法である。
硬質炭素膜Bの形成に際して、硬質炭素膜Aが形成された基材を回転させることにより、グラファイトから蒸発したカーボンイオンが基材に照射されない時間を周期的に設けることができるため、カーボンイオンが基材に照射されているときには、高密度で高硬度の黒色硬質炭素層(ta−C:Hやa−C:H)を形成させ、一方、照射されていないときには、低密度で低硬度の白色硬質炭素層(a−C:H)を形成させることができ、白色硬質炭素層と黒色硬質炭素層とを交互に積層させた硬質炭素膜Bを、効率的に形成して、優れた密着性を確保することができる。
本発明によれば、耐破壊性、耐剥離性に優れ、摺動時、大きな接触応力が繰り返し発生する用途に用いた場合でも、優れた密着性を発揮することができ、十分な耐久性を有する被膜とその形成方法を提供することができる。
本発明の一実施の形態に係る複合被膜の構成を示す模式的断面図である。 本発明の一実施の形態に係る複合被膜において複数の硬質炭素層を積層して硬質炭素膜Aが構成されている様子を説明する模式的断面図である。 本発明の一実施の形態に係る複合被膜において複数の硬質炭素層を積層して硬質炭素膜Bが形成されている様子を説明する模式的断面図である。 硬質炭素膜Bの一例の断面の写真である。 硬質炭素膜Bの一例の断面の写真である。 本発明の一実施の形態において複合被膜の形成に用いられるアーク式PVD装置の要部を示す模式図である。 従来の被膜の断面の模式図である。 スラスト試験機の一例を示す模式図である。
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を用いて説明する。なお、以下においては、アーク蒸着法として真空アーク蒸着法を例に挙げているが、本発明はこれに限定されるものではない。
[1]複合被膜の構成
1.複合被膜の概要
はじめに、複合被膜の構成を説明する。図1は本実施の形態に係る複合被膜の構成を示す模式的断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係る複合被膜1は、基材B上に、金属中間層11、下層の硬質炭素膜(硬質炭素膜A)12、上層の硬質炭素膜(硬質炭素膜B)13の順に積層されて構成されている。
2.硬質炭素膜A
下層の硬質炭素膜(硬質炭素膜A)は、水素含有量が5at%未満の硬質炭素膜である。
水素含有量を5at%未満とすることにより、基材や他の硬質炭素膜に対する密着性を十分に確保することができる。なお、水素含有量は低いほど基材や他の硬質炭素膜に対する密着性を向上させることができるため、1at%未満であるとより好ましい。
一方、水素含有量を5at%未満の硬質炭素膜は硬度が高いため、膜厚が薄すぎると接触応力の繰り返しに耐えられず変形して破壊されやすく、厚すぎると衝撃的な応力の負荷に耐えられず破壊されやすい。このため、本実施の形態においては、200〜1000nmに設定する。
なお、このような硬質炭素膜としては、具体的には、無水素四面体炭素(ta−C)膜を挙げることができる。
そして、本実施の形態において、この下層の硬質炭素膜(硬質炭素膜A)は、π/σ強度比が異なる複数の硬質炭素層を積層して構成されていることが好ましい。
図2は、複合被膜1において、複数の硬質炭素層を積層して硬質炭素膜Aが構成されている様子を説明する模式的断面図である。図2に示すように、下層の硬質炭素膜(硬質炭素膜A)は、最上層12Tの下に複数の層が配置されて構成されている。
このとき、最上層12Tにおけるπ/σ強度比を、それより下方にある下層に位置する硬質炭素層全体におけるπ/σ強度比よりも小さくすることが好ましい。最上層12Tのπ/σ強度比を小さくすることにより、最上層12Tで残留応力を低減させることができる。この結果、基板との優れた密着性を確保することができる。なお、ここで「下層に位置する硬質炭素層全体におけるπ/σ強度比」とは、下層に位置する硬質炭素層が複数の層で構成されている場合には、各層の厚みを考慮して算出された平均値を意味している。
そして、π/σ強度比が小さいことは、sp結合が多く水素含有量が低いことを示しており、この結果、硬質炭素層の表面に結合手がフリーな四面体炭素が十分に形成されて、上層の硬質炭素膜(硬質炭素膜B)13との間に優れた密着性を確保することができる。
3.硬質炭素膜B
上層の硬質炭素膜(硬質炭素膜B)13は、水素含有量が5〜30at%、膜厚が210〜5000nm、ヤング率が200GPaより大きい硬質炭素膜である。これにより、摺動時に繰り返し掛かる大きな負荷(応力)を十分に緩和させることができるため、このような硬質炭素膜を上層の硬質炭素膜(硬質炭素膜B)13として、下層の硬質炭素膜(硬質炭素膜A)12上に直接積層することにより、十分な耐破壊性、耐剥離性を発揮して、優れた密着性を確保することができる。
そして、本実施の形態において、この上層の硬質炭素膜(硬質炭素膜B)13は、複数の層が積層して形成されていることが好ましい。具体的には、上層の硬質炭素膜(硬質炭素膜B)13の断面を明視野TEM像により観察したとき、相対的に白い白色硬質炭素層と相対的に黒い黒色硬質炭素層とが交互に積層されていることが好ましい。
図3は、複合被膜1において、複数の硬質炭素層を積層して硬質炭素膜Bが形成されている様子を説明する模式的断面図である。図3の場合、上層の硬質炭素膜(硬質炭素膜B)は、白色硬質炭素層13Wと黒色硬質炭素層13Bとが交互に積層して形成されている。
黒色硬質炭素層13Bは、高密度で、sp/sp比が小さいため、高硬度である。一方、白色硬質炭素層13Wは低密度で、sp/sp比が大きいため、低硬度である。このように硬度が異なる白色硬質炭素層13Wと黒色硬質炭素層13Bとを交互に積層することにより、より大きな応力緩和を得ることができ、より高い耐破壊性、耐剥離性を発揮して、優れた密着性を確保することができる。
具体的な白色硬質炭素層13Wとしては水素化非晶質炭素(a−C:H)層を挙げることができ、黒色硬質炭素層13Bとしては、水素化四面体炭素(ta−C:H)層や白色硬質炭素層13Wよりも高硬度の水素化非晶質炭素(a−C:H)層を挙げることができる。
このとき、白色硬質炭素層13Wと黒色硬質炭素層13Bとは、それぞれが、0.1〜10nmの厚みというナノレベルで積層されていることが好ましい。
4.中間層
硬質炭素膜は、基材上に直接形成してもよいが、基材の種類によっては十分な密着力が確保できない場合がある。例えば、基材として一般的に用いられる鉄系の他、非鉄系の金属あるいはセラミックス、硬質複合材料等の基材、具体的には、炭素鋼、合金鋼、焼入れ鋼、高速度工具鋼、鋳鉄、アルミ合金、Mg合金や超硬合金等の基材は、硬質炭素膜との密着力が十分とは言えない。
このため、基材Bの種類に応じて、図1に示すように、適宜、基材B上に金属中間層11を設けることが好ましく、これにより、金属中間層11を介して、基材Bと複合被膜1とを十分に密着させることができる。そして、設けられた金属中間層11は、耐摩耗性の向上にも寄与するため好ましい。
このような金属中間層として使用できる金属元素としては、Cr、Ti、Si、W、B等を挙げることができ、これらの内でも、Cr、Ti、Wが好ましい。
また、金属中間層11の厚みは、30〜500nmが好ましく、40〜400nmがより好ましく、50〜300nmが特に好ましい。
5.基材
本発明において、複合被膜を形成させる基材としては特に限定されず、鉄系の他、非鉄系の金属あるいはセラミックス、硬質複合材料等の基材を使用することができる。例えば、クロムモリブテン鋼(SCM)、炭素鋼、合金鋼、焼入れ鋼、高速度工具鋼、鋳鉄、アルミ合金、Mg合金や超硬合金等を挙げることができるが、複合被膜の成膜温度を考慮すると、200℃を超える温度で特性が大きく劣化しない基材が好ましい。
[2]複合被膜の形成方法
上記した本実施の形態に係る複合被膜は、以下に示す各工程に従って製造することができる。
1.基材の準備
まず、硬質炭素膜を形成する対象となる基材Bを準備し、成膜槽内へセットする。このとき、成膜槽内へArガスなどの希ガス、または水素ガスを導入してプラズマを生成させ、基材Bにバイアス電圧を印加することで、基材Bの硬質炭素膜が形成される面(硬質炭素膜形成面)の汚れや酸化層を除去することが好ましい。
2.金属中間層の形成
そして、汚れや酸化層が除去された硬質炭素膜形成面に、必要に応じて、金属中間層11を形成する。この金属中間層11は、Cr、WもしくはTiなどの金属原料をアーク蒸発源とするアーク蒸着法(アークイオンプレーティング法)により形成することが好ましい。
3.硬質炭素膜Aの形成
次に、グラファイトカソードをアーク蒸発源とするアーク蒸着法を用いて、金属中間層11上に下層の硬質炭素膜(硬質炭素膜A)12として、無水素四面体炭素(ta−C)膜を形成する。このとき、成膜槽内の温度、アーク電流などを、適切に調整することにより、膜厚を200〜1000nmに制御すると共に、形成された硬質炭素膜の水素含有量を5at%未満に制御する。
なお、水素含有量は、HFS(Hydrogen Forward Scattering)分析によって測定することができる。
前記したように、下層の硬質炭素膜(硬質炭素膜A)12の形成にあたっては、π/σ強度比の異なる硬質炭素層を積層することが好ましく、アーク蒸発源に流す電流(アーク電流)と基板に与える電圧(バイアス電圧)を、適宜、調整することにより、π/σ強度比を制御して、π/σ強度比の異なる硬質炭素層を積層することができる。
本実施の形態においては、最上層12Tのπ/σ強度比が、全ての下層全体のπ/σ強度比より小さくなるように制御して、sp結合が多くなるようにする。これにより、最上層12Tに結合手がフリーな四面体炭素が十分に形成された硬質炭素膜が形成されて、上層に形成される硬質炭素膜(硬質炭素膜B)13に対する十分な密着性を確保することができる。
なお、π/σ強度比は、EELS分析(Electron Energy−Loss Spectroscopy:電子エネルギー損失分光)により、1s→π強度と、1sσ強度を測定し、測定されたπ強度とσ強度の比として求められる値であり、硬質炭素膜中におけるspとsp結合の比率(sp/sp比)と相関関係にあることが分かっている。
具体的には、硬質炭素膜中にsp結合が少なくsp結合が多いとπ/σ強度比が小さくなり、一方、硬質炭素膜中にsp結合が多くsp結合が少ないとπ/σ強度比が大きくなるため、π/σ強度比の値に基づいてsp/sp比を把握することができる。
4.硬質炭素膜Bの形成
次に、グラファイトカソードをアーク蒸発源とするアーク蒸着法を用いながら、成膜糟内に、炭化水素系ガスや水素ガスをArガスと共に導入することによりプラズマを発生させて、下層の硬質炭素膜(硬質炭素膜A)12上に水素化非晶質炭素(a−C:H)膜を、上層の硬質炭素膜(硬質炭素膜B)13として形成する。なお、アーク蒸着法を用いて下層の硬質炭素膜(硬質炭素膜A)12を形成し、その後、炭化水素系ガスや水素ガスを導入して、下層の硬質炭素膜(硬質炭素膜A)12に比べて水素含有量が高い硬質炭素膜を形成させることにより、上層の硬質炭素膜(硬質炭素膜B)13を形成してもよい。この場合、形成される硬質炭素膜は上層、下層のいずれもが水素化四面体炭素(ta−C:H)膜となる。
硬質炭素膜Bの形成は、硬質炭素膜Aの形成に用いる成膜装置とは異なる成膜装置を用いて行ってもよいが、この場合には、先に成膜された硬質炭素膜の表面が大気や汚れに曝されて、硬質炭素膜Bの硬質炭素膜Aへの密着性が悪化する恐れがあるため、同一の装置で硬質炭素膜Aを成膜した後、連続して硬質炭素膜Bを成膜することが好ましい。
なお、この硬質炭素膜Bの形成に際しても、硬質炭素膜Aの場合と同様に、成膜槽内の温度、アーク電流などを、適切に調整することにより、膜厚を210〜5000nmに制御すると共に、形成された硬質炭素膜の水素含有量を5〜30at%に制御する。そして、併せて、硬質炭素膜のヤング率を200GPaよりも大きくなるように制御する。
なお、ヤング率の測定は、ISO14577に準拠したナノインデンテーション法により、例えば、エリオニクス製ダイナミック硬度計ENT1100aを用いて行うことができる(荷重300g)。
前記したように、上層の硬質炭素膜(硬質炭素膜B)の形成にあたっては、密度の異なる硬質炭素層を積層することが好ましい。
硬質炭素膜Bの形成に際して、硬質炭素膜Aが形成された基材を回転させることにより、グラファイトから蒸発したカーボンイオンが基材に照射されない時間を周期的に設けることができるため、カーボンイオンが基材に照射されているときには、高密度で高硬度の黒色硬質炭素層(ta−C:Hやa−C:H)を形成させ、一方、照射されていないときには、炭化水素系ガスを原料とした低密度で低硬度の白色硬質炭素層(a−C:H)を形成させることができる。これにより、低密度のa−C:Hと高密度のta−C:Hとを交互に積層することができる。
即ち、グラファイトから蒸発したカーボンイオンが基材に照射されているときには衝突エネルギーが大きいため高密度・高硬度でsp/sp比の小さな黒色硬質炭素となりやすく、一方、炭化水素系ガスを原料としたカーボンイオンは、衝突エネルギーが小さいため低密度・低硬度でsp/sp比の大きな白色硬質炭素層(a−C:H)として成膜される。この結果、基材を自転や公転させながら形成された硬質炭素膜では、白色硬質炭素と黒色硬質炭素とが積層された構造を有することになる。
図6は、上記のような複数層の形成に用いられる自公転治具を備えたアーク式PVD装置の要部の模式図である。図6に示すように、このアーク式PVD装置は、真空チャンバー42、プラズマ発生装置(図示省略)、ヒーター43、基材支持装置としての自公転治具44、温度計測装置としての熱電対45およびバイアス電源(図示省略)および炉内の圧力を調整する圧力調整装置(図示省略)が設けられている。なお、Tはターゲット(カーボンターゲット)であり、41は中間層が形成された基材である。
自公転治具44の回転軸に基材41を保持して、矢印の方向に回転させることにより、白色硬質炭素と黒色硬質炭素とが積層された硬質炭素膜とすることができる。
また、このような硬質炭素膜Bの積層構造は、FIB(Focused Ion Beam)を用いて薄膜化した硬質炭素膜BをTEM(透過型電子顕微鏡:Transmission Electron Microscope)により、例えば加速電圧200kVで明視野TEM像を観察することにより確認することができる。即ち、断面を明視野TEM像により観察したとき、硬質炭素層は密度が低くなるほど電子線の透過量が増加して白色を示すようになるため、硬質炭素膜における相対的な白黒模様の積層を観察することにより、図4および図5に一例を示すように、硬質炭素膜がナノレベルで交互に積層されて形成されていることが確認できる。なお、図4では倍率を200,000倍とし、図5では倍率を500,000倍としている。
次に、実施例に基づき、本発明をより具体的に説明する。
1.試験片の作成
基材(SCM415浸炭)上に硬質炭素膜Aと硬質炭素膜Bからなる複合被膜を形成し、試験片を作成した。複合被膜は、π/σ強度比の異なる複数層を有する無水素硬質炭素膜(硬質炭素膜A)と含水素硬質炭素膜(硬質炭素膜B)とが積層された2層構造とし、硬質炭素膜Aの膜厚を0nm、100nm、200nm、500nm、1000nm、1500nmの6水準とし、一方硬質炭素膜Bの膜厚を100nm、210nm、2500nm、5000nm、7500nmの5水準として、5×6の合計30種類の複合被膜が形成された試験片を用意した。具体的には以下の手順に従って、各試験片を作成した。
(1)硬質炭素膜Aの形成
SCM415浸炭材ディスク(φ30mm×t3mm、HRC60、表面粗度Ra<0.01μm)を基材として、上記した本実施の形態に係る硬質炭素膜の製造方法に従って、アーク式PVD装置を用いて前記した各厚みの無水素四面体炭素(ta−C)膜を、バイアス電圧175V、成膜温度180℃の成膜条件で基材上に形成し、硬質炭素膜Aとした。成膜温度は最高到達温度が180℃となるよう冷却工程により制御した。形成した硬質炭素膜Aの水素含有量をHFS分析で測定したところ、水素含有量は0.1at%であった。なお、硬質炭素膜Aの形成に先立って、基材表面の汚れを除去すると共に、アークイオンプレーティング法を用いてCrの金属中間層(厚み200nm)を設けた。
(2)硬質炭素膜Bの形成
次に、同じアーク式PVD装置を用い、成膜時にCHガスを導入してプラズマを発生させることにより、硬質炭素膜A上に前記した各厚みの含水素硬質炭素膜(a−C:H)を、バイアス電圧50V、成膜温度130℃の成膜条件で形成し、硬質炭素膜Bとした。
2.密着性の評価
各試験片における複合被膜の膜部分における密着性を、ベアリングによる転動試験(スラスト試験)により評価した。
(1)試験方法
試験は図8に示すスラスト試験機を使用して行った。具体的には、複合被膜が形成された各試験片54に対して、オイル53中で一定荷重で軌道輪52に装着された鋼球51を押し付け、軌道輪52を同一軌道に沿って転動周回させ、鋼球51の周回軌道部にあらかじめ定めた回数、繰り返し荷重を与えることにより行った。試験条件の詳細を表1に示す。
繰り返し荷重印加後の膜部分を観察して、その状態を表2に示す膜密着性評価指標を用いて、5段階で評価した。なお、膜密着性評価指標においては、耐剥離性の低いものを1とし、耐剥離性の高いものを5として表している。
(2)結果
結果を、硬質炭素膜Aの膜厚と硬質炭素膜Bの膜厚とをマトリックスに配置した表3に示す。
表3から、硬質炭素膜Aの膜厚が200〜1000nmで且つ硬質炭素膜Bの膜厚が210〜5000nmの場合(太線で囲まれた箇所)、優れた耐剥離性が得られ、硬質炭素膜Aの膜厚が500nm、硬質炭素膜Bの膜厚が2500nmの場合に特に優れた耐剥離性が得られることが確認できた。なお、硬質炭素膜Aの膜厚が1500nmの膜では試験を行う前に既に剥離が発生していたため、表には単に「剥離」と示している。
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
1 複合被膜
2 被膜
11 金属中間層
12 硬質炭素膜A
12T 最上層
13 硬質炭素膜B
13B 黒色硬質炭素層
13W 白色硬質炭素層
21 中間層
22 下層
23 上層
41、B 基材
42 真空チャンバー
43 ヒーター
44 自公転治具(基材支持装置)
45 熱電対
51 鋼球
52 軌道輪
53 オイル
54 試験片
T ターゲット

Claims (8)

  1. 基材上に被覆される複合被膜であって、
    下層に、水素含有量が5at%未満、膜厚が200〜1000nmの硬質炭素膜Aが形成され、
    上層に、水素含有量が5〜30at%、膜厚が210〜5000nm、ヤング率が200GPaより大きい硬質炭素膜Bが形成されており、
    前記硬質炭素膜Aと前記硬質炭素膜Bとが、直接、積層されていることを特徴とする複合被膜。
  2. 前記硬質炭素膜Aは、π/σ強度比が異なる複数の硬質炭素層を積層して構成されており、
    最上層に位置する前記硬質炭素層のπ/σ強度比が、前記最上層に位置する硬質炭素層よりも下層に位置する硬質炭素層全体におけるπ/σ強度比よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の複合被膜。
  3. 前記硬質炭素膜Aの水素含有量が、1at%未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合被膜。
  4. 前記基材と前記硬質炭素膜Aとの間にCr、WもしくはTiの金属中間層を備え、
    前記金属中間層の膜厚が、30〜500nmであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の複合被膜。
  5. 前記硬質炭素膜Bは、
    断面を明視野TEM像により観察したとき、相対的に白い白色硬質炭素層と相対的に黒い黒色硬質炭素層とを有しており、
    前記白色硬質炭素層と前記黒色硬質炭素層とが、ナノレベルで交互に積層していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の複合被膜。
  6. 前記白色硬質炭素層および前記黒色硬質炭素層の1層あたりの厚みが、0.1〜10nmであることを特徴とする請求項5に記載の複合被膜。
  7. 直接または金属中間層を介して基材上に、水素含有量が5at%未満、膜厚が200〜1000nmの硬質炭素膜Aを形成する硬質炭素膜A形成工程と、
    前記硬質炭素膜A上に、水素含有量が5〜30at%、膜厚が210〜5000nm、ヤング率が200GPaより大きい硬質炭素膜Bを、直接、形成する硬質炭素膜B形成工程とを備えており、
    前記硬質炭素膜A形成工程が、アーク蒸着法により形成する工程であり、
    前記硬質炭素膜B形成工程が、炭化水素系ガスまたは水素ガスを導入しながらアーク蒸着法により形成する工程であることを特徴とする複合被膜の形成方法。
  8. 前記硬質炭素膜B形成工程において、前記硬質炭素膜Aが形成された前記基材を回転させながら、前記硬質炭素膜Bを形成することを特徴とする請求項7に記載の複合被膜の形成方法。
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