JP2018154873A - 積層被覆膜とその製造方法およびピストンリング - Google Patents

積層被覆膜とその製造方法およびピストンリング Download PDF

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Abstract

【課題】CrN層の上に硬質炭素層を被覆させる際、同じ成膜装置内で一連の連続した工程で行うことができ、しかも、従来よりもCrN層に対する硬質炭素層の密着性を確保して、CrN層の有する耐摩耗性及び耐剥離性に加えて、硬質炭素層の有する低摩擦性を発揮させて、優れた摺動特性を安定的に確保することができる成膜技術を提供する。【解決手段】基材の上にCrN層が下地層として形成され、CrN層の上に硬質炭素層が積層された積層被覆膜であって、CrN層が、(111)面の(200)面に対するX線回折の強度比(111)/(200)が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、ANSI B46.1に規定される最大高さRzで0.5〜2.5μmの表面粗さ、または、JIS B 0671−2に規定される負荷長さ率Mr1で16〜35%の表面を有している積層被覆膜。【選択図】図1

Description

本発明は、積層被覆膜とその製造方法およびピストンリングに関し、より詳しくは、基材上に成膜されたCrN層と硬質炭素層とによる積層被覆膜とその製造方法、および前記積層被覆膜が設けられたピストンリングに関する。
近年、自動車エンジンの高出力化や排気ガス規制の対応に伴って、ピストンリングの使用環境は益々過酷になっており、ピストンリングの摺動特性(低摩擦性、耐摩耗性、耐剥離性など)を向上させる技術が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、ピストンリングの表面にCrN被膜を形成させ、このCrN被膜の結晶に(200)面又は(111)面の優先方位を持たせることにより、耐摩耗性及び耐剥離性に優れたピストンリングを提供できることが提案されている。
また、特許文献2には、ピストンリングの表面にCrN被膜を形成させ、このCrN被膜の結晶構造を、表面に対して平行な(200)面に対する(111)面のX線回折の強度比:0.40〜0.70の柱状結晶構造となるように構成させることにより、耐摩耗性及び耐剥離性に優れたピストンリングを提供できることが提案されている。
しかしながら、これらの技術では、ピストンリングにおける耐摩耗性及び耐剥離性は確保できるものの、低摩擦性が十分ではないため、特許文献3に、図4に示すような積層被覆膜、即ち、基材3上に形成されたCrN層2の上に硬質炭素層3を積層して被覆させた積層被覆膜により、CrN層の有する耐摩耗性及び耐剥離性に加えて、硬質炭素層の有する低摩擦性を発揮させて、優れた摺動特性を備えたピストンリングを提供できることが提案されている。
この硬質炭素膜は、一般的にダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、無定形炭素膜、i−カーボン膜、ダイヤモンド状炭素膜等、様々な名称で呼ばれており、構造的には結晶ではなく非晶質に分類される。
そして、この硬質炭素膜は、ダイヤモンド結晶に見られるような単結合(C−C)とグラファイト結晶に見られるような二重結合(C=C)とが混在していると考えられており、ダイヤモンド結晶のような、高硬度、高耐摩耗性、優れた化学的安定性等といった特徴に加えて、グラファイト結晶のような低硬度、高潤滑性、優れた相手なじみ性等といった特徴を併せ備えている。また、非晶質であるために、平坦性に優れ、相手材料との直接接触における低摩擦性、即ち、小さな摩擦係数や優れた相手なじみ性も備えている。
特許第4382209号公報 特許第5065293号公報 特開2015−86967号公報
しかしながら、特許文献3に示された技術の場合、CrN層の上に硬質炭素層を被覆させる際、予め、CrN層に研磨加工を施してCrN層の表面にあるパーティクルを除去してCrN層に対する硬質炭素層の密着性を確保する必要があるため、CrN層の成膜と硬質炭素層の成膜とを同じ成膜装置内で一連の連続した工程で行うことができず、効率的とは言えなかった。また、CrN層に対する硬質炭素層の密着性も未だ十分に確保できているとは言えず、CrN層から硬質炭素層が剥がれて、硬質炭素層の有する低摩擦性を安定的に発揮させることができず、優れた摺動特性を十分に確保できない場合があった。
そこで、本発明は、CrN層の上に硬質炭素層を被覆させる際、同じ成膜装置内で一連の連続した工程で行うことができ、しかも、従来よりもCrN層に対する硬質炭素層の密着性を確保して、CrN層の有する耐摩耗性及び耐剥離性に加えて、硬質炭素層の有する低摩擦性を安定的に発揮させて、優れた摺動特性を確保することができる成膜技術を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題の解決について種々の実験と検討を重ねた結果、検討するにあたって、硬質炭素層の成膜に先立って行われるCrN層の成膜時、CrN層の成膜を適切に制御すれば、従来のようなCrN層に対する研磨加工を施さなくても、優れた密着性で硬質炭素層が成膜でき、同じ成膜装置内で一連の連続した成膜が可能となり、CrN層の有する耐摩耗性及び耐剥離性に加えて、硬質炭素層の有する低摩擦性を安定的に発揮させることができ、長寿命で優れた摺動特性の積層被覆膜が提供できることを見出した。
具体的には、下地被覆膜であるCrN層の成膜にあたって、(111)面の(200)面に対するX線回折の強度比[(111)/(200)回折強度比]が0.50〜3.0であり、かつ、柱状結晶構造となるように成膜を制御し、さらに、CrN層の表面粗さがANSI B46.1(対応国際規格ISO4287)に規定される最大高さRz(以下、単に「表面粗さRz」ともいう)で0.5〜2.5μmとなるように成膜を制御した場合、形成されたCrN層は適度のアンカー効果を有し、その直上に連続して硬質炭素層を成膜した場合、CrN層と硬質炭素層との間の密着性が非常に良好なものとなることが分かった。1.0〜1.6μmであるとより好ましい。
この結果、従来のCrN層の成膜から硬質炭素層の被覆までに必要であった以下の各工程が不要となることが分かった。即ち、CrN層の成膜後に冷却を行い、炉を大気開放して、一旦、炉外に取り出す工程、研磨装置にセットし、研磨を行って、CrN層を平滑にしてから、洗浄を行う工程、再度、治具にリング材を装填し、真空引き、昇温、表面のボンバード処理を行った後に、硬質炭素層を被覆する工程の全てを不要とすることができる。
そして、このようなCrN層は基材に対して十分な密着性を有しているため、CrN層の上にそのまま同じ成膜装置内で一連の連続して硬質炭素層を成膜させて、積層被覆膜とすることができることが分かった。
そして、CrN層と硬質炭素層との間に十分な密着性が確保された積層被覆膜は、CrN層の有する耐摩耗性及び耐剥離性に加えて、硬質炭素層の有する低摩擦性を安定的に発揮させることができるため、長寿命で優れた摺動特性を有する製品、例えば、ピストンリングを提供することができる。
CrN層が柱状結晶構造でない場合、硬質炭素層との間に十分な密着性を確保することができず、硬質炭素層が剥離しやすくなり、また、CrN層自身の耐摩耗性が著しく低下する。
そして、CrN層が柱状結晶構造であっても、(111)/(200)回折強度比が0.50未満の場合、硬質炭素層との間に十分な密着性を確保することができず、硬質炭素層が剥離しやすくなる。また、3.0を超えた場合には、CrN層の靭性が損なわれ、耐摩耗性が低下する。0.65〜2.60であるとより好ましい。
また、CrN層における表面粗さRzが0.5μm未満の場合、硬質炭素層との間に十分な密着性を確保することができず、硬質炭素層が剥離しやすくなる。一方、2.5μmを超えた場合には、CrN層の上に形成する硬質炭素層の表面が粗くなるため、硬質炭素層の表面に研磨加工を施す必要がある。
そして、さらに検討を行ったところ、粗さ曲線において、深くなればなるほど実体部分が増えることを表す負荷曲線[アボット(Abbott)の負荷曲線ともいう。]の線形表現を用いてパラメータを決定する方法について規定する「JIS B 0671−2:製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式;プラトー構造表面の特性評価−第2部:線形表現の負荷曲線による高さの特性評価」における負荷長さ率Mr1が、上記した表面粗さRzと相関関係があり、表面粗さRzに替えて負荷長さ率Mr1の数値範囲を規定することによっても、適切な積層被覆膜を提供できることが分かった。なお、JIS B 0671−2の対応国際規格はISO13565−2である。
これにより、単に粗さだけでなく、プラトー構造表面としての評価パラメータが可能となり、好ましい負荷長さ率Mr1は16〜35%であり、17〜20%であるとより好ましいことが分かった。
請求項1、2に記載の発明は上記の知見に基づくものであり、請求項1に記載の発明は、
基材の上にCrN層が下地層として形成され、前記CrN層の上に硬質炭素層が積層された積層被覆膜であって、
前記CrN層が、(111)面の(200)面に対するX線回折の強度比(111)/(200)が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、
ANSI B46.1に規定される最大高さRzで0.5〜2.5μmの表面粗さを有していることを特徴とする積層被覆膜である。
そして、請求項2に記載の発明は、
基材の上にCrN層が下地層として形成され、前記CrN層の上に硬質炭素層が積層された積層被覆膜であって、
前記CrN層が、(111)面の(200)面に対するX線回折の強度比(111)/(200)が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、
JIS B 0671−2に規定される負荷長さ率Mr1で16〜35%の表面を有していることを特徴とする積層被覆膜である。
本発明者は、次に、基材上に形成される上記積層被覆膜の好ましい厚みについて、実験と検討を行った。その結果、CrN層としては3〜50μmの厚みが好ましく、硬質炭素層としては0.5〜30μmの厚みが実用上好ましいことが分かった。
CrN層の厚みが3μm未満の場合、十分な耐摩耗性が確保できず、また、硬質炭素層に対する十分な密着性を確保できない。一方、50μmを超えた場合にも、硬質炭素層に対する十分な密着性を確保できない。5〜40μmであるとより好ましい。
このように、CrN層の表面粗さと厚みを最適化することにより、硬質炭素層に対する十分な密着性を確保して、従来のような研磨処理工程を設けることなく、同じ成膜装置内で一連の連続した成膜が可能となる。
また、硬質炭素層の厚みが0.5μm未満の場合、硬質炭素層がCrN層から剥がれやすく、十分な低摩擦性を確保できない。一方、30μmを超えた場合には、十分な摺動特性を確保できない。1〜25μmであるとより好ましい。
請求項3、4に記載の発明は、上記の知見に基づくものであり、請求項3に記載の発明は、
前記CrN層の厚みが3〜50μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層被覆膜である。
そして、請求項4に記載の発明は、
前記硬質炭素層の厚みが0.5〜30μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の積層被覆膜である。
本発明者は、さらに、CrN層と硬質炭素層との間の密着性を簡便に確認する手法について検討した、その結果、ロックウェルCスケール圧痕試験において剥離しない積層被覆膜は、実用上必要な密着性が十分に確保されていることが分かった。
具体的には、ロックウェル硬度計を用いて積層被覆膜の表面から基材に向けてダイヤモンド圧子(Cスケール)を押し込んだ際に圧痕周辺部に発生する積層被覆膜の損傷状態を観察したとき、積層被覆膜に剥離が生じていなければ、実用上必要な密着性が十分に確保されていると判断することができる。このように、ダイヤモンド圧子を押し込んで積層被覆膜における密着の程度を判断するだけで、優れた摺動特性を有する積層被覆膜であることを簡便に確認することができる。
即ち、請求項5に記載の発明は、
ロックウェルCスケール圧痕試験において、剥離が生じない積層被覆膜であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の積層被覆膜である。
そして、さらに検討を進めたところ、硬質炭素層の表面粗さRzは、1.0μm以下であることが好ましいことが分かった。表面粗さRzが1.0μmを超えていると、摺動相手材との間に高摩擦が生じて硬質炭素層自身の破壊や剪断による剥離を招く恐れがある。1.0μm以下とすることにより、相手材への低い攻撃性、摩擦係数の低減、硬質炭素層自身の破壊や剪断による剥離の防止を図ることができる。
なお、このような表面粗さRzは、例えば、硬質炭素層の表面を研磨加工することにより得ることができる。そして、この研磨加工は、積層被覆膜を形成させた後の工程であるため、効率的な積層被覆膜の形成を阻害することがない。
即ち、請求項6に記載の発明は、
前記硬質炭素層の表面粗さが、ANSI B46.1に規定される最大高さRzで1.0μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の積層被覆膜である。
本発明においては、さらに、CrN層と硬質炭素層との間、即ち、硬質炭素層の最下層にsp/sp比が大きな第2の硬質炭素層が設けられていることが好ましい。具体的には、sp/sp比が0.5〜0.85の第2の硬質炭素層が硬質炭素層の最下層に設けられていると、この第2の硬質炭素層を介して、下地層であるCrN層と上層の硬質炭素層とをより強く密着させることができる。
第2の硬質炭素層におけるsp/sp比が0.5未満の場合、高負荷時において密着性が低下し、CrN層との間で剥離する場合がある。一方、0.85を超えた場合、硬質炭素層自身の耐摩耗性が著しく低下し、CrN層との間で剥離しやすくなる。0.55〜0.78であるとより好ましい。
即ち、請求項7に記載の発明は、
前記CrN層と前記硬質炭素層との間に第2の硬質炭素層が設けられており、
前記第2の硬質炭素層が、sp/sp比0.5〜0.85の硬質炭素層であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の積層被覆膜である。
そして、上記した第2の硬質炭素層と下地層であるCrN層との間に、Cr層、Ti層、W層などの金属中間層が設けられていると、さらに、密着性を向上させることができ好ましい。
即ち、請求項8に記載の発明は、
前記第2の硬質炭素層と前記CrN層との間に、金属中間層が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の積層被覆膜である。
また、請求項9に記載の発明は、
前記金属中間層が、Cr層、Ti層、W層から選ばれた少なくとも一層であることを特徴とする請求項8に記載の積層被覆膜である。
本発明における積層被覆膜は、以下の方法により製造することができる。
即ち、請求項10に記載の発明は、
基材の上に、(111)面の(200)面に対するX線回折の強度比(111)/(200)が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、ANSI B46.1に規定される最大高さRzで0.5〜2.5μmの表面粗さを有するCrN層を下地層として形成するCrN層形成工程と、
前記CrN層の上に、硬質炭素層を形成する硬質炭素層形成工程とを備えており、
前記CrN層形成工程および前記硬質炭素層形成工程を、同じ成膜装置内で一連の連続した工程として行うことにより、前記CrN層と前記硬質炭素層とを積層させることを特徴とする積層被覆膜の製造方法である。
また、請求項11に記載の発明は、
基材の上に、(111)面の(200)面に対するX線回折の強度比(111)/(200)が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、JIS B 0671−2に規定される負荷長さ率Mr1で16〜35%の表面を有するCrN層を下地層として形成するCrN層形成工程と、
前記CrN層の上に、硬質炭素層を形成する硬質炭素層形成工程とを備えており、
前記CrN層形成工程および前記硬質炭素層形成工程を、同じ成膜装置内で一連の連続した工程として行うことにより、前記CrN層と前記硬質炭素層とを積層させることを特徴とする積層被覆膜の製造方法である。
上記した製造方法は、CrN層形成工程と硬質炭素層形成工程との間に研磨工程を設けて積層被覆膜を製造するため2バッチを必要としていた従来の積層被覆膜の製造方法と異なり、同一処理装置間で大気に晒されることなく一連の連続した工程で積層被覆膜を製造することができるため、これまではCrN成膜後に行っていた真空引き・昇温・冷却・大気開放・CrN層の研磨・CrN層研磨済み基材のコーティング治具へのセット、炉への装填、真空引き・昇温の各工程を省いて1バッチで処理することができる。この結果、低コストで高速な成膜が可能となる。また、得られた積層被覆膜は密着性が向上しているため、優れた摺動特性を長期間安定して維持することができる。
そして、請求項12に記載の発明は、
前記CrN層の厚みが3〜50μmであることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の積層被覆膜の製造方法である。
前記した通り、CrN層の表面粗さと厚みを最適化することにより、硬質炭素層に対する十分な密着性を確保して、同じ成膜装置内で一連の連続した成膜が可能となる。
また、請求項13に記載の発明は、
前記硬質炭素層の厚みが0.5〜30μmであることを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の積層被覆膜の製造方法である。
前記した通り、硬質炭素層の厚みを0.5〜30μmとすることにより、実用上、問題のない摺動特性を有する積層被覆膜とすることができる。
また、請求項14に記載の発明は、
前記CrN層形成工程と前記硬質炭素層形成工程との間に、sp/sp比0.5〜0.85の第2の硬質炭素層を形成させる第2の硬質炭素層形成工程を設け、
前記第2の硬質炭素層形成工程を、同じ成膜装置内で一連の連続した工程として行うことを特徴とする請求項10ないし請求項13のいずれか1項に記載の積層被覆膜の製造方法である。
前記した通り、このような第2の硬質炭素層をCrN層と硬質炭素層との間に設けることにより、下地層であるCrN層と上層の硬質炭素層とをより強く密着させることができる。
そして、上記した積層被覆膜がピストンリング基材の上に設けられていると、十分な低摩擦性、耐摩耗性、耐剥離性などの摺動特性を顕著に向上させることができるため、摺動特性に優れたピストンリングを提供することができる。
即ち、請求項15に記載の発明は、
基材上に、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の積層被覆膜が設けられていることを特徴とするピストンリングである。
本発明によれば、CrN層の上に硬質炭素層を被覆させる際、同じ成膜装置内で一連の連続した工程で行うことができ、しかも、従来よりもCrN層に対する硬質炭素層の密着性を確保して、CrN層の有する耐摩耗性及び耐剥離性に加えて、硬質炭素層の有する低摩擦性を安定的に発揮させて、優れた摺動特性を確保することができる成膜技術を提供することができる成膜技術を提供することができる。
本発明の一実施の形態に係る積層被覆膜を説明する模式断面図である。 本発明の一実施の形態に係る積層被覆膜の変形例を説明する模式断面図である。 本発明の一実施の形態に係る積層被覆膜の製造に用いられるアーク式PVD装置の成膜用の炉の要部を説明する模式図である。 従来の積層被覆膜を説明する模式断面図である。 ロックウェルCスケール圧痕試験における密着力の判定基準を説明する図である。 摩擦摩耗試験を説明する図である。 実施例において得られた負荷曲線および粗さ曲線の一例を示す図である。
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を用いて説明する。
[1]積層被覆膜
本実施の形態に係る積層被覆膜は、
基材の上にCrN層が下地層として形成され、前記CrN層の上に硬質炭素層が積層された積層被覆膜であって、
前記CrN層が、(111)面の(200)面に対するX線回折の強度比(111)/(200)が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、
ANSI B46.1に規定される最大高さRzで0.5〜2.5μmの表面粗さを有していることを特徴とする。
図1は本実施の形態に係る積層被覆膜を説明する模式断面図であり、1は硬質炭素層、2は下地層、3は基材である。
図1に示すように、本実施の形態に係る積層被覆膜においては、基材3上に下地層2としてCrN層が形成され、さらに、下地層2上に硬質炭素層1が積層されている。
1.基材
本実施の形態において、被覆膜を形成させる基材としては特に限定されず、鉄系の他、非鉄系の金属あるいはセラミックス、硬質複合材料等、従来より使用されているものを使用することができる。
具体的には、炭素鋼、合金鋼、軸受け鋼、焼入れ鋼、高速度工具鋼、鋳鉄、アルミ合金、Mg合金や超硬合金等を挙げることができるが、硬質炭素層1や下地層2の成膜温度を考慮すると、250℃以上の温度で特性が大きく劣化しない基材を使用することが好ましい。
2.下地層
基材3上には下地層2としてCrN層が設けられている。この下地層2は、上記したように、(111)/(200)回折強度比が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、0.5〜2.5μmの表面粗さRzを有している。
この0.5〜2.5μmの表面粗さRzは、適度のアンカー効果を有しながらも、従来のような後工程での研磨加工を必要としないレベルの平滑性であるため、同じ成膜装置内で一連の連続した成膜で下地層2の上に硬質炭素層1を成膜しても、基材3と硬質炭素層1との間に従来よりも強い密着性を確保して硬質炭素層1を積層することができる。
そして、上記したように、CrN層と硬質炭素層との間に十分な密着性が確保された積層被覆膜は、CrN層の有する耐摩耗性及び耐剥離性に加えて、硬質炭素層の有する低摩擦性を安定的に発揮させることができるため、長寿命で優れた摺動特性を有する製品、例えば、ピストンリングを提供することができる。
なお、上記したように、下地層2の成膜に際して、成膜されたCrN層が柱状結晶構造でない場合、CrN層と硬質炭素層との間の密着性が著しく損なわれ、さらにCrN層自身の耐摩耗性が低下する。この結果、積層被覆膜としての耐摩耗性および耐剥離性、さらには摺動特性を得ることができなくなる。
CrN層が柱状結晶構造であっても、(111)/(200)回折強度比が0.50未満の場合、硬質炭素層との間に十分な密着性を確保することができず、硬質炭素層が剥離しやすくなる。また、3.0を超えた場合には、CrN層の靭性が損なわれ、耐摩耗性が低下する。0.65〜2.60であるとより好ましい。
また、CrN層における表面粗さRzが0.5μm未満の場合には、硬質炭素層との間に十分な密着性を確保することができず、硬質炭素層が剥離しやすくなる。一方、2.5μmを超えた場合には、CrN層の上に形成する硬質炭素層の表面が粗くなるため、積層被覆膜の製造後、硬質炭素層の表面に研磨加工を施す必要があり、効率的に積層被覆膜を製造することができない。1.0〜1.6μmであるとより好ましい。
本実施の形態において、下地層2の厚みとしては、3〜50μmの厚みが好ましい。3μm未満の場合、十分な耐摩耗性が確保できず、また、硬質炭素層1に対する十分な密着性を確保できない。一方、50μmの厚みは、実用上、工業的に必要十分な厚さであるため、50μmを超える厚膜化は、徒に、製造コストの負担増を招くことになる。20〜50μmであるとより好ましい。
なお、上記おいては、CrN層の表面について、表面粗さRzを用いて説明したが、前記したように、負荷長さ率Mr1によって規定することもでき、16〜35%であると好ましく、17〜20%であるとより好ましい。
3.硬質炭素層
本実施の形態において、硬質炭素層1は、図1に示すように、下地層2の上に形成される。このとき、上記したように、下地層2のCrN層が適切な表面粗さRz等を有しているため、同じ成膜装置内で一連の連続した成膜で下地層2の上に硬質炭素層1を成膜しても、十分な密着性を確保して積層することができ、CrN層の有する耐摩耗性及び耐剥離性に加えて、硬質炭素層の有する低摩擦性を安定的に発揮させて、優れた摺動特性を有する積層被覆膜を提供することができる。
本実施の形態において、硬質炭素層1の厚みは、実用上、0.5〜30μmであることが好ましい。即ち、上記したように、厚みが0.5μm未満の場合、硬質炭素層1が下地層2(CrN層)から剥がれやすく、十分な低摩擦性を確保できない。一方、30μmを超える場合には、十分な摺動特性を確保できない。
そして、本実施の形態において、硬質炭素層1の表面粗さRzは、1.0μm以下であることが好ましい。1.0μmを超えていると、摺動相手材との間に高摩擦が生じて硬質炭素層自身の破壊や剪断による剥離を招く恐れがある。
なお、本実施の形態においては、図2に示すように、CrN層と硬質炭素層との間にsp/sp比が0.5〜0.83の第2の硬質炭素層4が設けられていることが好ましい。さらに、第2の硬質炭素層4と下地層2との間にCr層、Ti層、W層などの金属中間層5が設けられていていることがより好ましい。なお、図2は、このような積層被覆膜の変形例を説明する模式断面図である。
第2の硬質炭素層4は、軟質の硬質炭素層であるため、下地層2であるCrN層と上層の硬質炭素層1とをより密着させることができる。また、金属中間層5を設けることにより、下地層2であるCrN層と上層の硬質炭素層1との間の密着性をさらに向上させることができる。なお、第2の硬質炭素層4の厚みとしては10〜200nmであることが好ましく、金属中間層5の厚みとしては20〜500nmであることが好ましい。
なお、上記において、sp/sp比は、EELS分析(Electron Energy−Loss Spectroscopy:電子エネルギー損失分光法)により、1s→π*強度と1s→σ*強度を測定し、1s→π*強度をsp強度、1s→σ*強度をsp強度と見立てて、その比である1s→π*強度と1s→σ*強度の比をsp/sp比として算出した。従って、本願発明でいうsp/sp比とは、正確には、π/σ強度比のことを指している。
具体的には、STEM(走査型TEM)モードでのスペクトルイメージング法を適用し、加速電圧200kV、試料吸収電流10−9A、ビームスポットサイズφ1nmの条件で、1nmのピッチで得たEELSを積算し、約10nm領域からの平均情報としてC−K吸収スペクトルを抽出し、sp/sp比を算出する。
4.積層被覆膜
本実施の形態に係る積層被覆膜は、上記のような構成とすることにより、従来よりもCrN層に対する硬質炭素層の密着性を確保して、CrN層の有する耐摩耗性及び耐剥離性に加えて、硬質炭素層の有する低摩擦性を安定的に発揮させて、優れた摺動特性を確保することができる。
また、CrN層の上に硬質炭素層を被覆させる際、同じ成膜装置内で一連の連続した工程で積層被覆膜を作製することができる。
本実施の形態に係る積層被覆膜の特に好適な用途としては、ピストンリングが挙げられるが、他には、ピストンピン、ギヤ、ベアリング、バルブリフターなどの自動車用部品、ベーン、ベアリングなどの一般機械部品を挙げることができる。
5.密着性評価について
なお、製造された積層被覆膜における基材、CrN層、硬質炭素層間の密着性を評価する際、ロックウェルCスケール圧痕試験が簡便な密着性確認試験として好ましく採用できる。
具体的には、ロックウェル硬度計を用いて積層被覆膜の表面から基材に向けてダイヤモンド圧子(Cスケール)を押し込んだ際に圧痕周辺部に発生する積層被覆膜の損傷状態を観察したとき、積層被覆膜に剥離が生じていなければ、実用上必要な密着性が十分に確保されていると判断することができる。このように、ダイヤモンド圧子を押し込んで積層被覆膜における密着の程度を判断するだけで、優れた摺動特性を有する積層被覆膜であることを簡便に確認することができる。
[2]積層被覆膜の製造方法
次に、本実施の形態に係る積層被覆膜の製造方法について説明する。
本実施の形態に係る積層被覆膜の製造方法は、
基材の上に、(111)面の(200)面に対するX線回折の強度比(111)/(200)が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、ANSI B46.1に規定される最大高さRzで0.5〜2.5μmの表面粗さを有するCrN層を下地層として形成するCrN層形成工程と、
前記CrN層の上に、硬質炭素層を形成する硬質炭素層形成工程とを備えており、
前記CrN層形成工程および前記硬質炭素層形成工程を、同じ成膜装置内で原料種および成膜条件を異ならせて、一連の連続した工程として行うことにより、前記CrN層と前記硬質炭素層とを積層させることを特徴とする。
本実施の形態に係る積層被覆膜はPVD法を用いて製造されるが、特に好ましいのはアーク式PVD法である。
1.アーク式PVD装置
最初に、アーク式PVD装置について具体的に説明する。図3は本実施の形態のアーク式PVD装置の成膜用の炉の要部を模式的に示す図である。このようなアーク式PVD装置としては、例えば、日本アイ・ティ・エフ社製アーク式PVD装置M720を挙げることができる。
図3に示すように、アーク式PVD装置は、成膜用の炉11と制御装置(図示省略)とを備えている。炉11には、真空チャンバ6、プラズマ発生装置(図示省略)、ヒーター7、基材支持装置としての公転治具9及び自転治具10、温度計側装置としての熱電対(T.C.10mm角バー)8およびバイアス電源(図示省略)および炉内の圧力を調整する圧力調整装置(図示省略)が設けられている。
また、基材支持装置もしくは炉内中央部に冷却水および/または温水や蒸気を供給する冷却加熱装置が設けられていることが好ましい。なお、T1はクロムターゲット、T2はカーボンターゲットである。
プラズマ発生装置は、アーク電源、カソードおよびアノ−ドを備え、カソードとアノード間の真空アーク放電により、カソード材料であるクロムターゲットT1またはカーボンターゲットT2からクロムまたはカーボンを蒸発させると共に、イオン化したカソード材料(クロムイオンまたはカーボンイオン)を含むプラズマを発生させる。バイアス電源は、基材3に所定のバイアス電圧を印加してイオン化したカソード材料を適切な運動エネルギーで基材3へ飛翔させる。
公転治具9及び自転治具10は、中空の12面体角柱状で、炉体の中心を回転の中心として矢印の方向に回転自在であり、前記炉体の中心を中心とする同心円上に、等間隔で、公転治具9及び自転治具10の上面に対して垂直な回転軸を複数備えている。複数の基材3は、それぞれ前記回転軸に保持され、矢印の方向に回転自在である。これにより基材3は、公転治具9及び自転治具10に自転および公転自在に保持される。また、公転治具9及び自転治具10には、基材3と公転治具9及び自転治具10との間で速やかに熱が伝導し、基材3と公転治具9及び自転治具10の温度が略等しくなるようにステンレスなど熱伝導性が高い金属材料が用いられている。
ヒーター7および冷却加熱装置(図示省略)は、公転治具9及び自転治具10をそれぞれ加熱、冷却し、これにより基材3が間接的に加熱、冷却される。ここで、ヒーター7は温度調節が可能となるように構成されている。一方、冷却加熱装置は、冷却加熱媒体の供給スピードが調整可能となるように構成されており、具体的には、冷却実施時には冷却水を治具9、10および/または回転軸もしくは炉内中央部に設置された冷却筒に供給し、冷却停止時には冷却水の供給を停止するように構成されており、加熱時には温水または蒸気を治具9、10および/または回転軸に供給し、加熱停止時には温水または蒸気の供給を停止するように構成されている。また、熱電対8が基材3の近傍に取り付けられており、基材温度を間接的に計測して、アーク電流値、バイアス電圧値、ヒーター温度の少なくとも一つを成膜中に変化させることで、狙いとする基材温度に制御するように構成されている。
制御装置は、公転治具9及び自転治具10の回転速度を、下地層および硬質炭素層が上記した各表面粗さRzで確実に形成されるように、所定の回転速度に制御する。また、熱電対8による基材3の温度の計測結果に応じて、バイアス電圧、アーク電流、ヒーター温度、炉内圧力を最適化する。これにより、成膜中の基材3の温度を、下地層の形成においては300〜400℃に、硬質炭素層の形成においては100〜350℃に制御することができる。また、必要に応じて冷却装置の作動およびバイアス電圧の印加パターンを制御する。
2.積層被覆膜の製造方法
次に、上記したアーク式PVD装置を用いた積層被覆膜の具体的な製造方法について説明する。
下地層及び硬質炭素層をアーク式PVD法により形成する場合、バイアス電圧やアーク電流を調節したり、ヒーターにより基材を加熱したり各々の成膜中の基材温度を制御できるように製造条件を調整する。
(1)下地層(CrN層)の形成工程
最初に、基材上に下地層となるCrN層を形成する。具体的には、まず、基材を基材支持装置でもある自転治具10に配置し、その後、アーク式PVD装置の炉11内にセットする。
次に、窒素ガスを500〜1000ccm流した状態で、炉内圧力および/または基材温度を熱電対8によって300〜400℃に制御すると共に、クロムターゲットT1を用いてバイアス電圧−20V、アーク電流150Aの条件で、基材を10〜200rpmの回転数で自転および/または1〜20rpmの回転数で公転させながら、基材の表面に所定の厚みにCrN層を成膜する。なお、ここでいう基材温度とは熱電対で計測された温度のことであり、実際の基材温度は基材の形状(大きさ、長さなど)、熱伝導率、治具との接触状態、治具の熱容量、熱電対からの距離などの影響を受けるため、若干のずれは伴う。
上記のように適切に成膜条件を調節することにより、基材の上に、(111)/(200)回折強度比が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、0.5〜2.5μmの表面粗さRzを有するCrN層を下地層として形成することができる。
形成されたCrN層は、前記したように、適度のアンカー効果を有しながらも、後工程での研磨加工を必要としないレベルの平滑性を有しているため、従来のように、CrN層が形成された基材を一旦アーク式PVD装置から取り出して、研磨加工を施す必要がなく、そのまま、同じアーク式PVD装置で連続して、十分な密着性で硬質炭素層の成膜を行うことができる。
このとき、形成されたCrN層は硬質炭素層に対して十分な密着性を有しているため、CrN層を形成させた同じ成膜装置内で、十分な密着性でCrN層の上に硬質炭素層を積層することができる。
(2)硬質炭素層の形成
所定の厚みのCrN層を基材上に形成した後は、そのまま、同じアーク式PVD装置内で、炉内圧力を制御および/または基材温度を熱電対8によって100〜350℃に制御すると共に、カーボンターゲットT2を用いて、バイアス電圧−165V、アーク電流40Aの条件でアーク放電を行い、CrN層が被覆された基材を10〜200rpmの回転数で自転および/または1〜20rpmの回転数で公転させながら、CrN層の表面に所定の厚みに硬質炭素層を成膜する。
所定の厚みの硬質炭素層をCrN層上に形成した後は、形成された硬質炭素層の表面を研磨加工することにより、表面粗さRzが所定の値となるようにする。
[3]本実施の形態による効果
以上述べてきたように、従来の方法では、CrN被覆(下地層)に研磨処理を施さないと硬質炭素層との密着性が得られなかったのに対して、本実施の形態においては成膜装置で下地層の表面粗さ等を最適化したことにより、硬質炭素層の形成に際して、同じ成膜装置を用いて、十分な密着性で連続した成膜を行うことができる。
そして、1バッチでCrN層と硬質炭素層との積層被覆膜を連続形成することで、従来の2バッチ製法で必要であった真空引き・昇温・冷却・CrN層の研磨の工程を省くことが可能となり、積層被覆膜の製造における低コスト化と高速化を図ることができる。
以下、実施例に基づき、本発明をより具体的に説明する。
1.実験1
以下の実験においては、CrN層の表面粗さRz及び(111)/(200)回折強度比を変えて、硬質炭素層の耐剥離性及び耐摩耗性との関係を調べた。
(1)実験条件
鋼基材を基材支持装置でもある自転治具10に配置した後、アーク式PVD装置(日本アイ・ティ・エフ社製アーク式PVD装置M720)の炉11内の公転治具9にセットし、窒素ガスを500〜1000ccm流した状態で炉内圧力および基材温度を熱電対8によって制御すると共に、クロムターゲットT1を用いてバイアス電圧−20V、アーク電流150Aの条件で、基材を自転(40rpm)および公転(4rpm)させながら、基材の表面に、表1に示す表面粗さRzおよび(111)/(200)回折強度比であるCrN層を5μm被覆した。なお、形成されたCrN層の結晶構造は、いずれも、柱状結晶構造であった。
なお、表面粗さRzは、CrN層を5μm被覆した後に、炉内より基材を取り出し、摺動面をANSI B46.1に準ずる方法により測定した。また、CrN層と硬質炭素層の積層被覆膜においては、炉内で酸素プラズマを発生させ、硬質炭素層のみを昇華させて脱膜させた後に、炉内より基材を取り出し、摺動面をANSI B46.1に準ずる方法により測定することも可能である。
また、(111)/(200)回折強度比はX線回折によって分析し、CrN被膜の結晶構造を表面に対して並行な(200)面に対する(111)面のX線回折の強度により求めた。
CrN層被覆後は、大気暴露することなく連続して、カーボンターゲットT2を用いて、バイアス電圧−165V、アーク電流40Aの条件でアーク放電を行い、基材を自転(40rpm)および公転(4rpm)させながら、1.0μmの硬質炭素層を被覆し、硬質炭素層の表面を研磨加工でRz1.0μm以下とした。
(2)評価
(a)耐剥離性(密着性)
非晶質硬質炭素層について、得られた試験片を、ロックウェルCスケール圧痕試験(圧子:先端半径0.2±0.2mmかつ先端角120°±30′のダイヤモンド円錐、押付荷重:1470N(150kgf))を用いて3〜5箇所で行い、圧痕周辺部の被覆膜の状態について顕微鏡を用いて倍率100倍以上で観察を行い、図5に示すH1〜H5の判定基準で密着力を測定し、耐剥離性を評価した。H1〜H5の具体的な内容は以下の通りである。
H1:剥離無し
H2:境界部で微小剥離あり
H3:全周に達しない剥離あり
H4:全周に剥離あり 但し剥離範囲はエッジから0.2mm以内
H5:全周に剥離あり 剥離範囲が0.2mmを超えている
なお、耐剥離性の評価にあたっては、密着力がH1であれば優、H2、H3であれば良、H4、H5であれば不可と判定した。優、良であれば実用上問題となる剥離は生じない。
(b)耐摩耗性
非晶質硬質炭素層について、得られた試験片を、自動車用摺動部材の評価で、一般的に行われているSRV(Schwingungs Reihungund und Verschleiss)試験機を用いて摩擦試験を行ない、以下の基準で耐摩耗性を評価した。評価が優、良であれば実用上問題ないと判断できる。
具体的には、図6に示すように、摩擦摩耗試験試料Wの摺動面を摺動対象であるSUJ2材24に当接させた状態で、潤滑油に5W−30(Mo−DTCなし)を用いて、100〜300Nの荷重をかけながら、10分間往復摺動させ、摩擦摩耗試験試料Wの摺動面を顕微鏡で観察した。そして、その観察結果から、摺動痕の剥離の有無と摩耗量を測定した。摩耗量については、触針式段差計を用いて、非摺動部と摺動部との段差量を全摩耗量として求めた。なお、図6において、21は基材、22は下地層、23は硬質炭素層である。
優:全摩耗量が総膜厚の1/4以内で、耐摩耗性に優れるもの。
良:全摩耗量が総膜厚の1/4を超え1/2以内で、耐摩耗性が良好なもの。
可:全摩耗量が総膜厚の1/2を超え総膜厚以内で、耐摩耗性が劣るとまではいえないもの。
不可:下地が露出し、全摩耗量が総膜厚を超え、耐摩耗性に劣るもの。
(c)評価結果
評価結果をまとめて表1に示す。
表1より、(111)/(200)回折強度比が0.50以上3.0以下で、CrN層の表面粗さRzが0.5〜2.5である場合(実験例12〜20、実験例24〜32、実験例36〜44、実験例48〜54)、非晶質硬質炭素層の高い耐剥離性及び耐摩耗性が得られることが確認できた。また、(111)/(200)回折強度比が0.65以上3.0以下である場合(実験例26〜32、実験例38〜44)、さらに高い耐剥離性及び耐摩耗性が得られることが確認できた。
2.実験2
以下の実験においては、CrN層の厚みを変えて、硬質炭素層の耐剥離性及び耐摩耗性との関係を調べた。
(1)実験条件
実験1と同様にして積層被覆膜を作製した。但し、CrN層の表面粗さRzは1.0μmに固定し、CrN層の(111)/(200)回折強度比は1に固定した。また、硬質炭素層の厚みは1.0μmとし、硬質炭素層の表面を研磨加工でRz1.0μm以下とした。
(2)評価
(a)耐剥離性(密着性)
実験1と同じロックェルCスケール圧痕試験を行った。また、判定基準も実験1と同一の判定基準を採用した。
(b)耐摩耗性
実験1と同じ摩擦試験を行った。また、判定基準も実験1と同一の判定基準を採用した。
(c)評価結果
評価結果をまとめて表2に示す。
表2より、全ての実験例(実験例58〜64)で十分実用的な積層被覆膜が得られていることが分かった。また、特にCrN層の厚みが3〜50μmである場合(実験例59〜63)さらに、高い剥離性及び耐摩耗性が得られることが確認できた。
3.実験3
以下の実験においては、CrN層の表面粗さRzを変えて、対応するMr1を測定すると共に、硬質炭素層の耐剥離性及び耐摩耗性との関係を調べた。
(1)実験条件
実験1と同様にして積層被覆膜を作製した。但し、CrN層の(111)/(200)回折強度比は1.0に固定した。また、CrN層の厚みは5μmとし、硬質炭素層の厚みは1.5μmとした。なお、硬質炭素層の表面を研磨加工でRz1.0μm以下とした。
(2)評価
(a)耐剥離性(密着性)
実験1と同じロックェルCスケール圧痕試験を行った。また、判定基準も実験1と同一の判定基準を採用した。
(b)耐摩耗性
実験1と同じ摩擦試験を行った。また、判定基準も実験1と同一の判定基準を採用した。
(c)評価結果
評価結果をまとめて表3に示す。
表3より、負荷長さ率Mr1が16〜35%である場合(実験例70、実験例72〜85)、十分実用的な耐剥離性及び耐摩耗性が得られることが確認できた。そして、16〜35%の負荷長さ率Mr1が、0.5〜2.5μmの表面粗さRzと相関関係にあることが表3より分かる。
なお、実験例68、実験例80において得られた負荷曲線および粗さ曲線を、図7(a)、(b)にそれぞれ示す。
4.実験4
以下の実験においては、硬質炭素層の厚みを変えて、硬質炭素層の耐剥離性及び耐摩耗性との関係を調べた。
(1)実験条件
実験1と同様にして積層被覆膜を作製した。但し、CrN層の表面粗さRzは1.0μmに固定し、CrN層の(111)/(200)回折強度比は1に固定した。また、CrN層の厚みは20μmとし、硬質炭素層の表面を研磨加工でRz1.0μm以下とした。
(2)評価
(a)耐剥離性(密着性)
実験1と同じロックェルCスケール圧痕試験を行った。また、判定基準も実験1と同一の判定基準を採用した。
(b)耐摩耗性
実験1と同じ摩擦試験を行った。また、判定基準も実験1と同一の判定基準を採用した。
(c)評価結果
評価結果をまとめて表4に示す。
表4より、全ての実験例(実験例86〜92)で十分実用的な積層被覆膜が得られていることが分かった。また、特に硬質炭素層の厚みが0.5〜30μmである場合(実験例87〜91)さらに、高い剥離性及び耐摩耗性が得られることが確認できた。
5.実験5
以下の実験においては、CrN層と硬質炭素層との間に第2の硬質炭素層を設け、第2の硬質炭素層のsp/sp比を変えて、硬質炭素層の耐剥離性及び耐摩耗性との関係を調べた。
(1)実験条件
実験条件は基本的には実験1と同様にして積層被覆膜を作製した。但し、CrN層を成膜した後、第2の硬質炭素層を成膜し、その後、実験1の温度と同一温度まで冷却して第2の硬質炭素層上に硬質炭素層を成膜した。なお、CrN層の表面粗さRzは1.0μmに固定し、CrN層の(111)/(200)回折強度比は1に固定した。また、CrN層の厚みは20μmとし、硬質炭素層の厚みを1μmとし、硬質炭素層の表面を研磨加工でRz1.0μm以下とし、第2の硬質炭素層の厚みを40nmとした。
(2)評価
(a)耐剥離性(密着性)
実験1と同じロックウェルCスケール圧痕試験を行った。また、判定基準も実験1と同一の判定基準を採用した。
(b)耐摩耗性
実験1と同じ摩擦試験を行った。また、判定基準も実験1と同一の判定基準を採用した。
(c)評価結果
評価結果をまとめて表5に示す。
表5より、全ての実験例(実験例93〜98)で十分実用的な積層被覆膜が得られていることが分かった。また、特に第2の硬質炭素層のsp/sp比が0.5〜0.83の場合(実験例94〜97)さらに、高い剥離性及び耐摩耗性が得られることが確認できた。
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
1、23 硬質炭素層
2、22 下地層
3、21 基材
4 第2の硬質炭素層
5 金属中間層
6 真空チャンバ
7 ヒーター
8 熱電対
9 公転治具
10 自転治具
11 炉
24 SUJ2材
T1 クロムターゲット
T2 カーボンターゲット
W 摩擦摩耗試験試料

Claims (15)

  1. 基材の上にCrN層が下地層として形成され、前記CrN層の上に硬質炭素層が積層された積層被覆膜であって、
    前記CrN層が、(111)面の(200)面に対するX線回折の強度比(111)/(200)が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、
    ANSI B46.1に規定される最大高さRzで0.5〜2.5μmの表面粗さを有していることを特徴とする積層被覆膜。
  2. 基材の上にCrN層が下地層として形成され、前記CrN層の上に硬質炭素層が積層された積層被覆膜であって、
    前記CrN層が、(111)面の(200)面に対するX線回折の強度比(111)/(200)が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、
    JIS B 0671−2に規定される負荷長さ率Mr1で16〜35%の表面を有していることを特徴とする積層被覆膜。
  3. 前記CrN層の厚みが3〜50μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層被覆膜。
  4. 前記硬質炭素層の厚みが0.5〜30μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の積層被覆膜。
  5. ロックウェルCスケール圧痕試験において、剥離が生じない積層被覆膜であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の積層被覆膜。
  6. 前記硬質炭素層の表面粗さが、ANSI B46.1に規定される最大高さRzで1.0μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の積層被覆膜。
  7. 前記CrN層と前記硬質炭素層との間に第2の硬質炭素層が設けられており、
    前記第2の硬質炭素層が、sp/sp比0.5〜0.85の硬質炭素層であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の積層被覆膜。
  8. 前記第2の硬質炭素層と前記CrN層との間に、金属中間層が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の積層被覆膜。
  9. 前記金属中間層が、Cr層、Ti層、W層から選ばれた少なくとも一層であることを特徴とする請求項8に記載の積層被覆膜。
  10. 基材の上に、(111)面の(200)面に対するX線回折の強度比(111)/(200)が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、ANSI B46.1に規定される最大高さRzで0.5〜2.5μmの表面粗さを有するCrN層を下地層として形成するCrN層形成工程と、
    前記CrN層の上に、硬質炭素層を形成する硬質炭素層形成工程とを備えており、
    前記CrN層形成工程および前記硬質炭素層形成工程を、同じ成膜装置内で一連の連続した工程として行うことにより、前記CrN層と前記硬質炭素層とを積層させることを特徴とする積層被覆膜の製造方法。
  11. 基材の上に、(111)面の(200)面に対するX線回折の強度比(111)/(200)が0.50〜3.0で、柱状結晶構造を有すると共に、JIS B 0671−2に規定される負荷長さ率Mr1で16〜35%の表面を有するCrN層を下地層として形成するCrN層形成工程と、
    前記CrN層の上に、硬質炭素層を形成する硬質炭素層形成工程とを備えており、
    前記CrN層形成工程および前記硬質炭素層形成工程を、同じ成膜装置内で一連の連続した工程として行うことにより、前記CrN層と前記硬質炭素層とを積層させることを特徴とする積層被覆膜の製造方法。
  12. 前記CrN層の厚みが3〜50μmであることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の積層被覆膜の製造方法。
  13. 前記硬質炭素層の厚みが0.5〜30μmであることを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の積層被覆膜の製造方法。
  14. 前記CrN層形成工程と前記硬質炭素層形成工程との間に、sp/sp比0.5〜0.85の第2の硬質炭素層を形成させる第2の硬質炭素層形成工程を設け、
    前記第2の硬質炭素層形成工程を、同じ成膜装置内で一連の連続した工程として行うことを特徴とする請求項10ないし請求項13のいずれか1項に記載の積層被覆膜の製造方法。
  15. 基材上に、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の積層被覆膜が設けられていることを特徴とするピストンリング。
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