JP2019156974A - 樹脂組成物、フィルム及び複合材料 - Google Patents
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Abstract
Description
[1] 下記構造式(1)で表される繰り返し単位(a−1)及び下記構造式(2)で表される繰り返し単位(a−2)を有するポリエーテルケトンケトン樹脂(A)並びに下記構造式(3)で表される繰り返し単位(b−1)を有するポリエーテルイミド樹脂(B)を含むことを特徴とする、樹脂組成物。
本発明の樹脂組成物は、ポリエーテルケトンケトン樹脂(A)及びポリエーテルイミド樹脂(B)を含むものである。これらを併用することにより、それぞれの単体では実現しえなかった高いレベルの剛性(引張弾性率)を発現すると共に、ポリエーテルケトンケトン樹脂(A)のみでは不十分な耐熱性やポリエーテルイミド樹脂(B)のみでは不十分な二次加工時等の熱融着性を向上させることができる。
本発明で用いられるポリエーテルケトンケトン樹脂(A)は、下記構造式(1)で表される繰り返し単位(a−1)及び下記構造式(2)で表される繰り返し単位(a−2)の2種の繰り返し単位を少なくとも有するものである。繰り返し単位(a−1)及び(a−2)は、いずれも、1つのエーテル基及び2つのケトン基を有している。
本発明で用いられるポリエーテルイミド樹脂(B)は、下記構造式(3)で表される繰り返し単位(b−1)を有するものである。
本発明の樹脂組成物は、前記構造式(1)で表される繰り返し単位(a−1)及び前記構造式(2)で表される繰り返し単位(a−2)を有するポリエーテルケトンケトン樹脂(A)、及び、前記構造式(3)で表される繰り返し単位(b−1)を有するポリエーテルイミド樹脂(B)を含む。
本発明の樹脂組成物を構成するポリエーテルケトンケトン樹脂(A)及びポリエーテルイミド樹脂(B)は完全相溶系と考えられる。これは、JIS K7121:2012に準じて、ガラス転移温度(Tg)の値を読むことで評価できる。一般的にポリマーブレンド組成物のTgが単一であれば、混合する樹脂が分子レベルで相溶した状態にあることを意味し、相溶している系と認めることができる。逆に、ブレンド後もTgが二つ存在する場合、非相溶系あるいは部分相溶系と考えられる。一般的に非相溶系の場合、引張や曲げ等の外力を加えた際に界面で剥離が生じ、機械物性の低下や白化を招きやすい。また、Tgが低い方の樹脂のTgが有意に発現するため、ブレンドによる耐熱性向上効果が十分ではなく、得られる樹脂組成物の耐熱性が不十分となりやすい。本発明の樹脂組成物を構成するポリエーテルケトンケトン樹脂(A)及びポリエーテルイミド樹脂(B)が完全相溶系と考えられることにより、得られる樹脂組成物及び該組成物を用いて得られるフィルムや成形品において、優れた機械特性や耐熱性を得ることができる。
なお、前記樹脂組成物は、ポリエーテルケトンケトン樹脂(A)及びポリエーテルイミド樹脂(B)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエーテルケトンケトン樹脂(A)、ポリエーテルイミド樹脂(B)以外の樹脂成分を含んでいてもよい。他の樹脂成分を含む場合は、全樹脂成分中の30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、炭素繊維等の強化繊維、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の各種添加剤が含まれていてもよい。中でも、強化繊維を含んでいてもよく、強化繊維を含む場合の含有割合は、樹脂組成物中の10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
本発明の樹脂組成物は、JIS K7124−2:1999準じて測定される、23℃と−20℃における衝撃強度がいずれも1J以上であることが好ましく、1.1J/g以上であることがより好ましく、1.2J/g以上であることがさらに好ましい。一般に、ポリエーテルイミド樹脂(B)はポリエーテルケトンケトン樹脂(A)と比較して衝撃強度に劣るため、これらをブレンドすると、ポリエーテルケトンケトン樹脂(A)の耐衝撃性は低下する傾向にある。特に、低温においてこの傾向は顕著である。しかしながら、本発明の樹脂組成物は、構造式(3)で表される繰り返し単位(b−1)を有するポリエーテルイミド樹脂(B)を使用するため、測定温度に関わらず、高い衝撃強度を発揮することができる。衝撃強度は、材料の耐衝撃性を示す指標であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。衝撃強度が上記範囲内であれば、耐衝撃性により優れ、幅広い分野の物品に適用しやすくなる。
本発明の樹脂組成物は、JIS K7122:2012に準じて測定される結晶融解熱量(ΔHm)が25J/g以下であることが好ましく、20J/g以下であることがより好ましく、15J/g以下であることがさらに好ましい。ΔHmは、結晶化の程度を示す指標であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。ΔHmが上記範囲内であれば、二次加工時等、例えば、炭素繊維等の強化繊維シート等と複合化させる際に、熱融着性に優れやすい。
本発明の樹脂組成物は、JIS K7127:1999に準じて測定される引張弾性率が3200MPa以上であることが好ましく、3250MPa以上であることがより好ましく、3300MPa以上であることがさらに好ましい。引張弾性率は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。引張弾性率が上記範囲内であれば、例えば、本発明の樹脂組成物からなるフィルムを単独で用いる場合においても、あるいは炭素繊維等の強化繊維を始めとする他材料と複合化する場合においても、十分な剛性を発現することが容易となる。特に、十分な剛性を有していると、製品を薄肉化しやすくなるため、省スペース化及び省資源化に寄与し得る。さらに、薄膜化した際のフィルム取扱い性にもより優れるという利点もある。なお、製造方法によりフィルムに配向性が生じる場合、例えば、押出成形により得られたフィルム等においては、金型からの押出方向における引張弾性率が、上記範囲内であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、JIS K7196:2012に準じて測定される軟化温度が160℃以上であることが好ましく、より好ましくは165℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。上限は、好ましくは200℃であり、より好ましくは195℃、さらに好ましくは190℃である。軟化温度は耐熱性の指標であり、また、二次加工時等、例えば炭素繊維等の強化繊維と仮接着させる際の熱融着性の指標とすることもできる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。上記範囲内の温度であれば、優れた耐熱性及び熱融着性を両立できると言える。
本発明の樹脂組成物は、JIS K7121:2012に準じて測定されるガラス転移温度(Tg)が160℃以上であることが好ましく、より好ましくは165℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。上限は、好ましくは210℃であり、より好ましくは205℃、さらに好ましくは200℃である。Tgは、前記軟化温度と同様に、フィルムの耐熱性の指標であり、また、二次加工時等、例えば炭素繊維等の強化繊維と仮接着させる際の熱融着性の指標とすることもできる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。上記範囲内の温度であれば、より優れた耐熱性及び熱融着性を両立しやすいと言える。
本発明の樹脂組成物を製造する方法に制限はなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。例えば、ポリエーテルケトンケトン樹脂(A)、ポリエーテルイミド樹脂(B)及び必要に応じて配合されるその他の添加剤等の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサー等の各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー等の混合機で溶融混練する方法が挙げられる。中でも、各成分の分散性の点から、二軸混練押出機による溶融混練法が好ましい。
また、例えば、一部の成分(例えば、必要に応じて配合される添加剤成分)を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られるマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の樹脂組成物を製造することもできる。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常320℃以上、好ましくは330℃以上であり、通常380℃以下、好ましくは360℃以下である。
なお、本発明の樹脂組成物からなるフィルムは、シートを包含するものとする。一般的にフィルムとは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JIS K6900:1994)、一般的にシートとは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでないため、本発明においては、フィルムはシートを包含するものとする。よって、「フィルム」は「シート」であってもよい。
本発明の樹脂組成物をフィルムとして使用する場合、フィルムの製造方法は特に限定されず、例えば、無延伸又は延伸フィルムとして得ることができ、二次加工性の観点から、無延伸フィルムとして得ることが好ましい。なお、無延伸フィルムとは、シートの配向を抑制する目的で、積極的に延伸しないフィルムであるが、ここでは、押出成形等において延伸ロールでの延伸倍率が2倍未満であるフィルムも含むものとする。
このようにして得られる本発明の樹脂組成物、フィルム等の成形体は、複合材料に用いることも可能であり、例えば、強化繊維との複合材料である繊維強化プラスチックのマトリックスとして用いることもできる。前記繊維強化プラスチックは、優れた耐熱性、耐衝撃性及び剛性を備えたものとして得られる。
実施例及び比較例においては、以下の原料を用い、下記表1、2に示す配合組成のフィルムを製造した。
(A)−1:KEPSTAN6002(Arkema社製、(a−1)/(a−2)=1.5、ΔHm=0J/g、Tg=153℃)
(A)−2:KEPSTAN7002(Arkema社製、(a−1)/(a−2)=2.3、ΔHm=29J/g、Tg=158℃)
(B)−1:Ultem CRS5011−1000(SABIC Innovative Plastics社製、繰り返し単位(b−1)を有するポリエーテルイミド樹脂、ΔHm=0J/g、Tg=217℃)
(B)−2:Ultem 1010−1000(SABIC Innovative Plastics社製、繰り返し単位(b−2)を有するポリエーテルイミド樹脂、ΔHm=0J/g、Tg=212℃)
(N)−1:VESTAKEEP 3300G(ダイセル・エボニック社製、ΔHm=47J/g、Tg=143℃)
(A)−1及び(B)−1を80:20の質量割合でドライブレンドした。この樹脂混合物を、直径40mmの単軸押出機にて350℃で混練した後、Tダイを用いてフィルム状に押出成形した。得られた成形品を約160℃のキャストロールにて急冷し、厚み0.1mmのフィルムを作製した。
(A)−1及び(B)−1の混合割合を60:40とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。
(A)−1及び(B)−1の混合割合を40:60とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。
(A)−1及び(B)−1の混合割合を20:80とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。
原料として(A)−1のかわりに(A)−2を用い、(A)−2及び(B)−1の混合割合を60:40とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。
原料として(A)−1のみを使用した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。
原料として(A)−2のみを使用した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。
原料として(B)−1のみを使用した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。
原料として(B)−1のかわりに(B)−2を用い、(A)−1及び(B)−2の混合割合を80:20とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。
原料として(B)−1のかわりに(B)−2を用い、(A)−1及び(B)−2の混合割合を60:40とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。
原料として(B)−1のかわりに(B)−2を用い、(A)−1及び(B)−2の混合割合を40:60とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。
原料として(B)−1のかわりに(B)−2を用い、(A)−1及び(B)−2の混合割合を20:80とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。
原料として(N)−2及び(B)−1を用い、(N)−1及び(B)−1の混合割合を60:40とし、混練温度を380℃とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。
上記実施例及び比較例で製造した各フィルムについて、以下のようにして各種項目についての評価測定を行った。ここで、フィルムの「縦」とは、Tダイからフィルム状の成形品が押し出されてくる方向を指し、また、フィルム面内でこれに直交する方向を「横」とする。
JIS K7124−2:1999に準じて、高速パンクチャー衝撃試験機ハイドロショット HITS−P10(島津製作所社製)を用いて、23℃、及び、−20℃の温度環境下で、打ち抜き径0.5インチ、試験速度3m/cの条件で測定した。
JIS K7122:2012に準じて、示差走査熱量計Pyris1 DSC(パーキンエルマー社製)を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線から結晶融解熱量(ΔHm)を求めた。
各フィルムを縦400mm×横10mmに切断して、試験片(厚み0.1mm)を作製した。JIS K7127:1999に準じて、試験片の縦方向における引張弾性率を測定した。引張試験機として引張圧縮試験機205型(インテスコ社製)を用い、測定条件は、雰囲気温度23℃、引張速度5mm/分とした。
各フィルムを縦5mm×横5mmに切断して、試験片(厚み0.1mm)を作製した。JIS K7196:2012に準じて、熱機械分析(TMA:Thermomechanical Analysis)により軟化温度を求めた。TMA装置として、TMA120C(日立ハイテクサイエンス社製)を用い、測定条件は、雰囲気温度23℃、相対湿度50%、圧子への圧力0.5N、昇温速度5℃/分とした。
JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計Pyris1 DSC(パーキンエルマー社製)を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線からガラス転移温度を求めた。
また、ポリエーテルイミド樹脂(B)として、構造式(4)で表される繰り返し単位(b−2)のみを有する樹脂を使用した場合(比較例4〜7)では、耐衝撃性が十分ではなく、特に、低温(−23℃)における衝撃強度の低下は著しい。
さらに、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(N)及びポリエーテルイミド樹脂(B)を所定の割合で含有するフィルム(比較例8)は、ΔHmが大きく、結晶性が高すぎるため、二次加工時の熱融着性が十分でない上、引張弾性率(剛性)にも劣る。また、Tgを示すピークが2つ見られることからも分かるように、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(N)とポリエーテルイミド樹脂(B)が相分離しており、結果、耐熱性に劣る。
Claims (9)
- 前記ポリエーテルケトンケトン樹脂(A)と前記ポリエーテルイミド樹脂(B)の混合割合が(A):(B)=80:20〜20:80質量%の範囲である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- JIS K7124−2:1999に準じて測定される、23℃と−20℃における衝撃強度がいずれも1J以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
- JIS K7122:2012に準じて測定される結晶融解熱量が25J/g以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- JIS K7127:1999に準じて測定される引張弾性率が3200MPa以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- JIS K7196:2012に準じて測定される軟化温度が160℃以上、200℃以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物又はフィルムを、強化繊維と複合させてなる複合材料。
- プリプレグ又はセミプレグである、請求項8に記載の複合材料。
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