JP2019156935A - インク及び被印字体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】無機顔料を色材とするインクジェット用インクであって、焼成時においても変色、消色することなく発色性に優れており、ガラスに直接インク吐出の際に任意のデザインにて装飾することができる。吐出後、インクの乾燥性が早く、ヘッドでの乾燥性を抑制した連続吐出性に優れたインクジェット用インクを提供する。【解決手段】無機顔料とガラスフリットと樹脂および有機溶剤を含むインクであって、2種以上の有機溶剤を含むインクジェット用インクとする。ここで、無機顔料を5〜25重量%、ガラスフリットを10〜30重量%の範囲で含有する。また、粘度調整用の樹脂を0〜2重量%の範囲で含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、ガラスやセラミックに印刷することのできるインクであって、スクリーン印刷、インクジェット印刷等様々な用途に好適に使用できるインク及びその使用に関する。
近年、ガラス、セラミック等への装飾のために、ガラスフリットを配合したインクを、対象物に印字し、そのあとに加熱してガラスフリットを溶融させることによりガラス成分を含有する印字面を形成することが提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
特開2001-81363号公報
特開2001-39008号公報
しかし、これらのインクを用いた場合、ガラスフリットが含有されているため、インクも沈殿が生じやすく再撹拌性が悪く連続して使用し難いという問題が生じることが分かった。また、例えば120dpiのインクジェットプリンタで対象面に描画しようとすると、ノズル口がすぐに目詰まりを起こして使用不能となる問題があることもわかった。
そこで本発明者らは、これらの課題を解決するために研究を重ねた結果、特定の溶剤の組み合わせを用いることにより解決できることを発見した。
すなわち、本発明は、
(1) 少なくとも、無機顔料、ガラスフリット、樹脂及び有機溶剤を含有するインクであって、有機溶剤を少なくとも2種以上含有するインク、
(2) 有機溶剤として、25℃、1atmの条件下においてASTM-D3539に準拠して測定される相対蒸発速度の値が、酢酸ブチルの値を100としたときに以下の範囲である有機溶剤A及び有機溶剤Bを含有する請求項1に記載のインク、
有機溶剤A:10〜1000
有機溶剤B:0.1〜9
(3) ガラスフリットを10〜30重量%の範囲で含有する上記(1)又は(2)に記載のインク、
(4) 無機顔料を5〜25重量%の範囲で含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のインク、
(5) 樹脂の含有量が2重量%以下である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のインク、
(6) スクリーン印刷用である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のインク、
(7) インクジェット用インクである上記(1)〜(5)のいずれかに記載のインク、
(8) 上記(1)〜(7)のいずれかに記載のインクを、被印字体に付着させ、600〜1000℃に加熱することを特徴とする被印字体の製造方法、
(9) 被印字体がガラス又はセラミックである上記(8)記載の被印字体の製造方法、
にある。
本発明のインクは、ガラスフリットを含有するにもかかわらず、沈降等の問題がなく、高密度で高品質の模様や絵を描くことができる。また、ガラス層を有しない対象面に対しても描画できる。さらには、対象面において適切な乾燥性を有するため、インクジェットプリンタ用カラーとして用いた場合でも、ノズルでの乾燥性が制御できるため、以上の特性を発揮でき、目詰まりがなく、連続描写性に優れている。
<無機顔料>
本発明における無機顔料は特に限定されず、従来より知られている各種の無機材料が使用できる。好ましくは焼成の際に消色や変色が生じにくい観点から複合酸化物系無機顔料であることが好ましい。
なお、これらインクに用いられる色としては、黒、黄、青、赤、緑、白、ピンク、紫、金、銀など様々な色相のものを使用することが出来るが、好ましくは黒、黄、青、赤、緑、白を原色として組み合わせることで多彩な色相とすることが出来る。以下に各色成分の詳細を記載する。
本発明における無機顔料として、黒色成分としても特に限定されないが、複合酸化物系無機顔料である鉄系顔料やクロム系顔料が好ましい。鉄系顔料は、鮮やかな黒色表現が可能であり、焼成による変色、消色が発生しにくい顔料であるためである。具体的には、酸化鉄、コバルトフェライトブラック、マンガンフェライトブラックなどが挙げられる。中でもコバルトフェライトブラックは黒色度が高くより好ましい。より具体的には、ピグメントブラック27、ピグメントブラック28、ピグメントブラック29が挙げられる。特にピグメントブラック27および28が特に好ましい。
本発明の無機顔料における黄色成分も特に限定されないが、複合酸化物系無機顔料であるアンチモン系顔料もしくはジルコン系顔料が好ましい。アンチモン系顔料は、鮮やかな黄色表現が可能であり、焼成による変色、消色が発生しにくい顔料であるためである。また、ジルコン系顔料は、アンチモン系顔料よりも発色性は若干落ちるもののより高い温度条件でも変色、消色が発生しにくい顔料である。ジルコンプラセオジウムイエローなどが挙げられる。具体的には、ピグメントブラウン24、ピグメントイエロー53、ピグメントイエロー42などが挙げられる。ピグメントブラウン24やピグメントイエロー53が特に好ましい。
本発明における青色成分も特に限定されないが、複合酸化物系無機顔料であるコバルト系顔料が好ましい。コバルト系顔料は、鮮やかな青色表現が可能であり、焼成による変色、消色が発生しにくい顔料であるためである。紺青、コバルトブルー、コバルトアルミニウムブルーなどが挙げられる。具体的には、ピグメントブルー28、ピグメントブルー36が挙げられる。ピグメントブルー28が特に好ましい。
本発明の無機顔料における赤色成分も特に限定されないが、複合酸化物系無機顔料である鉄系顔料やスズークロム系顔料が好ましい。これら顔料は、鮮やかな赤色および褐色表現が可能であり、焼成による変色、消色が発生しにくい顔料であるためである。具体的にはピグメントレッド101である弁柄が挙げられる。
本発明の無機顔料における緑色成分も特に限定されないが、複合酸化物系無機顔料であるエメラルド緑や酸化クロム緑顔料が好ましい。これら顔料は鮮やかな緑色表現化が可能であり、焼成による変色、消色が発生しにくい顔料であるためである。具体的には、ピグメントグリーン26、ピグメントグリーン50が挙げられる。ピグメントグリーン50が特に好ましい。
本発明の無機顔料における白色成分も特に限定されないが、二酸化チタン顔料が好ましい。二酸化チタン顔料は、鮮やかな白色表現が可能であり、焼成による変色、消色が発生しにくい顔料であるためである。
本発明では、無機顔料はインクに対して5〜25重量%含まれていることが好ましい。一般には、5重量%よりも少ないと、発色性に劣りる傾向があるため、インクの付与量を増やして濃度を稼ぐ必要があるが、無機質基材のインク受容能力によってはインクがあふれ画像が形成できない可能性があるためである。25重量%よりも多いとインク自身を安定的に保つことが困難となることがあるためである。
より好ましくは、10〜20重量%である。
<ガラスフリット>
本発明のインクでは、ガラスフリットを含有することにより、対象物に印字した際に接着性を持たせることができる。ガラスフリットは主に二酸化ケイ素を主成分とするもので、使用目的に応じて補助剤を添加して使用することができる。補助剤としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化鉛、酸化ビスマス、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、さらには天然物の長石、珪石、硼砂、カオリンなどの混合物の添加することができる。これら材料は単独または混合した形で用いることができる。
ガラスフリットの含有量は特に限定されないが、通常、インク中に10〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%である。この範囲でガラスフリットが含まれることにより基材への密着および画素の固着を適切に行うことができる。この際、10重量%より少ないと基材への密着や画素の固着が不十分になる。また、30重量%より多いとインク中に含まれる顔料などの着色剤が少なくならざるを得ないためインクの着色力が不足する恐れがある。
<分散剤>
更にインク中へ無機顔料及びガラスフリットを分散させるために分散剤を使用してもよい。分散剤として知られている様々な化合物を使用できる。分散剤とは固体微粒子を液媒体中に均一に分散させる機能を有する各種の物質であり、界面活性剤や高分子分散剤が挙げられるが、本発明では無機顔料を安定に分散させるために高分子分散剤の使用が好ましく、高分子分散剤を単独または混合した形で任意に使用することが可能である。
具体的には上記高分子分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。上記市販品としては、例えば、ソルスパース(SOLSPERSE)11200、ソルスパース13940、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース36000、ソルスパース39000、ソルスパース56000、ソルスパース71000(日本ルーブリゾール(株)製;ディスパービック(DISPERBYK)142;ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190、ディスパービック2150、ディスパービック2155(ビックケミー・ジャパン(株)製);アジスパーPB711、アジスパーPA111、アジスパーPB811、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPW911(味の素社製);フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンTG−730W、フローレンG−700、フローレンTG−720W(共栄社化学工業(株)製)等を挙げることができる。
高分子分散剤は、これらのなかでも、前記が、ソルスパース17000、ソルスパース24000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース39000、ソルスパース56000、ディスパービック2150またはディスパービック2155であることが、残渣および分散安定性の観点から好ましい。
無機顔料とガラスフリットを各々液媒体中に分散剤と共に配合して分散してからこれらを混合してインクを調製しても良いし、無機顔料とガラスフリットを分散剤とともに液媒体中に配合して混合してインクを調製してもよい。
分散剤の使用量は、一般には顔料やガラスフリットに対して1~50重量%である。より好ましくは1~30重量%である。
本発明ではさらに、インク中に樹脂を含有させる。樹脂により擬塑性を発現させ、ノズルからの吐出安定性を良好にさせる効果が得られる。また、樹脂による増粘性の発現により、対象面に印字した際の画素の流出を防ぎ、適切な印字を行うことができる。
本発明のインクに使用される樹脂の種類は、特に制限されない。特に好ましくは、多糖類、増粘樹脂(いわゆる増粘剤として知られているもの)、およびそれらの変性体が挙げられる。
多糖類としては、キサンタンガム(ケルザン)、ウェランガム、ラムザンガム、サクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム、プルラン、デキストラン、デキストリン、トラガンシガム、タラガム、ガディガム、アラビノガラクタンガム、アラビアガム、クイスシードガム及びその誘導体、並びに、ペクチン、デンプン、カラギーナン、寒天、アルギン酸、ゼラチン、カゼイン、グルコマンナン、カラゲニン、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール、レオザン、ダイユータンガム等が挙げられる。
増粘樹脂としては、カルボキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ビスコースのようなセルロース系化合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンのような水溶性ポリマーからなるビニル系化合物、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸系化合物、ポリエーテル変性ウレタン化合物、疎水性変性ポリオキシエチレンポリウレタン共重合物などのポリウレタン系化合物、ポリアマイドワックスアミン塩のようなポリアマイド系化合物、ウレタン−ウレア系化合物のようなウレア系化合物などである。アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステル等のエステル系化合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリアクリルアミド、ポリN−ビニルアセトアミド、N−ビニルアセトアミド樹脂及びこれらの誘導体等を挙げることができる。好ましくは、セルロース系化合物、ビニル系化合物、アクリル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系化合物が挙げられる。さらに好ましくは、セルロース系化合物やアクリル樹脂が挙げられる。
インク組成物に対する樹脂の配合量は、樹脂の増粘性や擬塑性付与効果をみながら適宜設定することができるが、特にインクジェット用インクとして用いる場合には、インクの20℃での粘度としては、吐出性の観点から、2.0以上30mPa・s以下が好ましい。更に5.0mPa・s以上25mPa・s以下、10.0mPa・s以上25mPa・s未満、更に好ましくは10mPa・s以上20mPa・s未満に調整することがより好ましい。これら粘度は東機産業社製回転粘度計TVE-35を用いて測定した値である。同等の値が求められるものであれば、他の各種の機器を用いて測定してもよい。
なお、添加する樹脂は添加する量があまりにも多いと残渣が多くなる。また、樹脂が多すぎることにより吐出不良が発生する。0.05重量%〜2.0重量%の樹脂添加量で粘度が10mPa・s〜20mPa・sの範囲になることが好ましい。例えば、具体的にはインク中にエチルセルロースを0.5重量%添加し15mPa・sになるなど上記範囲になればどのような樹脂でも構わない。
本発明のインク中で使用する樹脂は、450℃環境下での分解残渣が5%未満であることが好ましい。5%以上であると焼成後に灰分が残りやすく、対象面に焦げが残り、所望の意匠が得られない。特にはセルロース系樹脂やアクリル樹脂を添加する樹脂として使用することが好ましい。
樹脂の分子量はも特に限定されないが、一般には1000〜20000、特に好ましくは10000〜15000である。これは液体クロマトグラフィー法で測定した平均分子量である。
樹脂の配合量は、一般には0.1〜10重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%である。
<有機溶媒>
本発明では、少なくとも2種の有機溶媒を使用する。その2種の有機溶媒は、特定の蒸発速度を有する。
有機溶媒は、溶媒の種類ごとに所定の蒸発速度を有している。所定の蒸発速度を有する有機溶媒を組み合わせることによって、優れたインク特性が得られることが本発明者の検討により判明した。特に優れた特性として連続吐出安定性やパターン形成性を示すインクが得られる。
特に、溶媒の蒸発速度が、25℃、1atmの条件下においてASTM−D3539に準拠して測定される相対蒸発速度の値が酢酸ブチルの値を100としたときの値が10〜1000となる有機溶媒Aと、この値が0.1〜9となる有機溶媒Bとを併用することが本発明のインクの特徴である。この有機溶媒Aと有機溶媒Bとの組み合わせによりその効果が顕著となる。その理由は完全には明らかではないが、おそらく、相対蒸発速度の比較的早い溶媒と比較的遅い溶媒とを組み合わせることにより、相対蒸発速度の遅い溶媒を含有することによって、ノズルの目詰まりが抑制され、相対蒸発速度の速い溶媒を含有することによって対象面にインクが着弾する際に、該溶媒の大部分が揮発してインク粘度が上昇するため、結果としてインクの広がりなどが抑制され、優れたパターン性能が得られるものと推測される。
また、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの配合量は、質量基準で有機溶媒Aが有機溶媒Bよりも多く含有されることが好ましい。
特に、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの配合比が質量基準で60:40〜90:10、より好ましくは60:40〜80:20、さらに好ましくは60:40〜70:30である。
有機溶媒A(25℃、1atmの条件下においてASTM−D3539に準拠して測定される相対蒸発速度の値が酢酸ブチルの値を100としたとき10〜1000の範囲内にある有機溶媒)の具体的な例としてはメタノール(190)、エタノール(150)、イソプロパノール(150)、3-メトキシブタノール(10)などのアルコール類やアセトン(560)、メチルエチルケトン(370)、メチルイソブチルケトン(110)などのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン(800)などのエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル(70)、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル(20)などのグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル(610)、酢酸イソブチル(150)などのエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(30)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(30)、3−メトキシブチルアセテート(30)などのグリコールアセテート系溶剤が好適である。これらのうち、グリコールエーテル系溶剤やグリコールアセテート系溶剤が特に好ましく用いられる。
溶媒B(25℃、1atmの条件下においてASTM−D3539に準拠して測定される相対蒸発速度の値が酢酸ブチルの値を1としたとき0.1〜9の範囲内にある有機溶剤)の具体的な例としては、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール類、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル(7)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(3)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル(2)、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル(1)などのグリコールエーテル系溶剤、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(1)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールアセテート系溶剤、トリアセチンなどが好適である。これらのうち、グリコールエーテル系溶剤やグリコールアセテート系の溶剤が特に好ましく用いられる。
なお以上の溶媒名に続くカッコ内の数値が、各々の溶媒の25℃、1atmの条件下においてASTM−D3539に準拠して測定される相対蒸発速度の値を酢酸ブチルの値を100として表した値である。
これら有機溶媒A及び有機溶媒Bから少なくとも各々1種以上の溶剤を用いることができる。特にインクジェット印刷用インクとして用いる場合は、有機溶媒としては低粘度のものが好ましく、インクが1〜20mPa・sの範囲になるよう選択することが好ましい。
なお、有機溶媒A及び有機溶媒B以外の分散媒成分として他の溶媒や水を併用することも差し支えないが、全分散媒中、有機溶媒A及び有機溶媒Bを質量基準で好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上とすることで、本発明の効果を確実に得ることができる。
また、有機溶媒A及び有機溶媒Bの割合は、質量基準でA100部に対してBが11〜67部、特に25〜67部、さらに43〜67部が連続吐出性および画像描画の点で好適である。
さらに、必要に応じて表面張力調整剤、頻度調整剤、比抵抗調整剤、熱安定剤、酸化防止剤、還元防止剤、防腐剤、消泡剤、湿潤剤などの添加剤を加えることも当然可能である。
本発明のインクは、以上説明した材料を混合し、ロールミル、ボールミル、コロイドミル、ジェットミル、ビーズミル、サンドミル等の分散機を用いて分散させることにより得ることができる。その後ろ過を行うことが好ましい。具体的には、無機顔料やガラスフリットを以上説明した有機溶剤および分散剤を用いて事前にサンドミルやビーズミルなどメディアを用いた分散機にて分散を行ない、それら分散液に粘度調整のための樹脂や表面張力の調整など適宜添加剤を添加してフィルターろ過することにより好適なインクを作製することができる。
無機顔料の分散粒径(液中での大きさとして動的光散乱法により検出される粒径の分布におけるメジアン径(D50))は通常、200〜500nm、好ましくは250〜450nm、さらに好ましくは250〜400nmである。
ガラスフリットの分散粒径は通常、300〜1000nm、好ましくは300〜900nm、さらに好ましくは300〜800nmである。
これらの分散粒径の範囲で沈降がなく各種のインクの液物性が良好である。
これらの測定は、マイクロトラック社製ナノトラックNANO-Flexを用い、分散液を規定濃度(測定機のローディングインデックス3〜5の範囲)まで希釈した後測定して得られるものであるが、同等の数値を得られるものであれば他の各種の機器による測定でも問題ない。
インク液として、インクジェットインクとして粘度が適正範囲である10mPa・s〜20mPa・sの範囲になることが好ましい。そのときのインクの表面張力は20.0mN/m〜30.0mN/mの範囲になることが好ましい。また、ノズル詰まりが発生しないよう最大の粒子径は3μm未満、好ましくは1μmである。
以上の工程により作製することのできる本発明のインクは、乾燥速度が調整されているので、インクジェット印刷、スクリーン印刷やスプレー印刷法など様々な用途に好適に使用できる。
すなわち、本発明のインクを、ガラス、セラミック等各種の被印字体にノズルから吐出、スクリーン印刷等各種の方法で付着させ、600〜1000℃に加熱して焼き付けることにより、被印字体表面に良好な印刷面を形成し、任意の装飾が施されたガラス物品、セラミック物品等を作製することができる。
より具体的には、各種の印刷方法でガラス板やセラミック板などの対象物に吐出、印字させ、印字された意匠が崩れないように溶媒を乾燥させる。次に、これらを用途に応じた温度(例えば、ガラス板であれば700℃付近、セラミック板であれば850℃付近の焼成温度が推奨される)で焼成することで、インク中に含まれた分散剤および樹脂が焼失し、またインク中に含まれたガラスフリットが溶融することにより対象面に意匠を密着させることができる。
実施例1〜4、比較例1〜8
(ブルー顔料分散体の調製)
高分子分散剤としてポリエステル系分散剤等の表1に示される分散剤5重量%、無機顔料として「ダイピロキサイド TMブルー3490E」(商品名、大日精化(株)製 Co−Al複合酸化物顔料(CoAl2O4)) 40重量%、残部に表1の溶剤Aを加えた液をプレミックスした後、媒体撹拌ミルを用いて分散し、顔料の含有量が40重量%の顔料分散液を調整した。この顔料分散体に含まれる顔料粒子の平均粒子径(分散粒径)は300nmであった。なお、平均粒子径はマイクロトラック社製ナノトラックNANO-Flexを用い、分散液を規定濃度(測定機のローディングインデックス3〜5の範囲)まで希釈した後測定した。
Figure 2019156935
(ガラスフリット分散体の調製)
顔料分散体の調整と同様、無機顔料の代わりにガラスフリットを用い微細化処理を行った。ガラスフリットの含有率が40重量%のガラスフリット分散液を調整した。使用したガラスフリットは東罐マテリアルテクノロジー製「12-3737」を使用した。
ガラスフリット分散体に含まれるガラスフリット粒子の平均粒子径は450nmであった。
(樹脂溶解品の調製)
樹脂として、表1〜6に示す樹脂5重量部を撹拌している表1〜6に示す有機溶媒A 95重量%中にゆっくりと添加し継粉にならないよう溶解させた。
(インク液の調製)
顔料分散体25重量%、ガラスフリット分散体50重量%、表1〜6に示す溶剤B20重量%ならびに表1に示す量の樹脂溶解品を添加することによって調製した。
(評価方法)
3−1.吐出性の評価
表1に示すインクを用いてガラス製品に例えば120dpiのインクジェットプリンタを用いて吐出および描画を行った。その後プリンタを停止させ12時間経過後再度ガラス製品に描画させた際の吐出状態を確認した。
○:画像欠陥(スジ故障)は全く認められず、均一な画像である
△:インクと吐出不良に起因する画像欠陥(スジ故障)の発生がわずかに認められる
×:インクの吐出不良に起因する画像欠陥(スジ故障)の発生が認められる
3−2.残渣の評価
3−3.画質評価
描画されたガラスは700〜750℃にて焼成を行い、画像の描画状態を確認した。焼成後の焦げや変色など残渣の有無について確認を行い、描画ドットの広がりやにじみの確認を行い描画状態の評価基準とした。
残渣評価
○:画像上に焦げや変色が全く認められず、均一な画像である
△:画像上に、ごくわずかに変色などの発生が認められる
×:画像上に焦げや変色が認められる
画質評価
○:画像ににじみやドットつぶれなどが全く認められず、均一な画像である
△:画像ににじみやドットつぶれの発生がわずかに認められる
×:画像のにじみやつぶれの発生が認められる

評価結果を表2に示す。
Figure 2019156935
本発明の範囲の有機溶剤A及び有機溶剤Bを用いた実施例1〜4が吐出性、残渣、画質とも良好である。このため、セラミックやガラス装飾の用途にも好適に使用できることがわかる。
これに対し、溶媒の範囲が適切でない比較例1,3,5,7は吐出性が不良であり、比較例2および6は吐出後の乾燥性が不適切なため画像が不良になるる。また樹脂量の範囲が適切でない比較例4および8は樹脂量が多くなる影響で残渣が出現するので不適である。
実施例5〜8、比較例9〜16
(ブラック顔料分散体の調製)
無機顔料として「HC99008C」(商品名、華意膠板有限公司製 Co−Mn複合酸化物顔料) を使用し、表3の配合としたほかブルー顔料分散体についての実施例1と同様の方法にてブラック顔料分散体を作成した。
Figure 2019156935
さらに、フリット分散体の作製、インク液の調製を実施例1〜4、比較例1〜8と同様に行い、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 2019156935
本発明の範囲の有機溶剤A及び有機溶剤Bを用いた吐出性、残渣、画質とも良好である。このため、セラミックやガラス装飾の用途にも好適に使用できることがわかる。
これに対し、溶媒の範囲が適切でない比較例9,12,13,15は吐出性が不良であり、比較例10および14は吐出後の乾燥性が不適切なため画像が不良になる。また樹脂量の範囲が適切でない比較例12および16は樹脂量が多くなる影響で残渣が出現するので不適である。
実施例9〜12、比較例17〜24
(レッド顔料分散体の調製)
無機顔料として「弁柄130ED」(戸田工業(株)製 赤色酸化鉄顔料) を使用し、表5の配合としたほかブルー顔料分散体についての実施例1と同様の方法にてレッド顔料分散体を作成した。
Figure 2019156935
さらに、フリット分散体の作製、インク液の調製を実施例1〜4、比較例1〜8と同様に行い、同様に評価を行った。結果を表6に示す。
Figure 2019156935
本発明の範囲の有機溶剤A及び有機溶剤Bを用いた実施例9〜12が吐出性、残渣、画質とも良好である。このため、セラミックやガラス装飾の用途にも好適に使用できることがわかる。
これに対し、溶媒の範囲が適切でない比較例17,19,21,23は吐出性が不良であり、比較例18および22は吐出後の乾燥性が不適切なため画像が不良になる。また樹脂量の範囲が適切でない比較例20および24は樹脂量が多くなる影響で残渣が出現するので不適である。
実施例13〜16、比較例25〜32
(グリーン顔料分散体の調製)
無機顔料として「HC49306」(中国華意社製 複合酸化物顔料) を使用し表7にしたがって配合したほかブルー顔料分散体についての実施例1と同様の方法にてグリーン顔料分散体を作成した。
Figure 2019156935
さらに、フリット分散体の作製、インク液の調製を実施例1〜4、比較例1〜8と同様に行い、同様に評価を行った。結果を表8に示す。
Figure 2019156935
本発明の範囲の有機溶剤A及び有機溶剤Bを用いた実施例13〜16が吐出性、残渣、画質とも良好である。このため、セラミックやガラス装飾の用途にも好適に使用できることがわかる。
これに対し、溶媒の範囲が適切でない比較例25,27,29,31は吐出性が不良であり、比較例26および30は吐出後の乾燥性が不適切なため画像が不良になる。また樹脂量の範囲が適切でない比較例28および32は樹脂量が多くなる影響で残渣が出現するので不適である。
実施例17〜20、比較例33〜40
(イエロー顔料分散体の調製)
無機顔料としてKH-70401(CHINAGLAZE社製 黄色酸化鉄顔料) を使用し表9のとおり配合したほかブルー顔料分散体についての実施例1と同様の方法にてイエロー顔料分散体を作成した。
Figure 2019156935
さらに、フリット分散体の作製、インク液の調製を実施例1〜4、比較例1〜8と同様に行い、同様に評価を行った。結果を表10に示す。
Figure 2019156935
本発明の範囲の有機溶剤A及び有機溶剤Bを用いた実施例17〜20が吐出性、残渣、画質とも良好である。このため、セラミックやガラス装飾の用途にも好適に使用できることがわかる。
これに対し、溶媒の範囲が適切でない比較例33,35,37,39は吐出性が不良であり、比較例36および40は吐出後の乾燥性が不適切なため画像が不良になる。また樹脂量の範囲が適切でない比較例34および38は樹脂量が多くなる影響で残渣が出現するので不適である。
実施例21〜24、比較例41〜48
(ホワイト顔料分散体の調製)
無機顔料としてCR-80(石原産業社製 二酸化チタン顔料) を使用し表11のとおり配合したほかブルー顔料分散体についての実施例1と同様の方法にてホワイト顔料分散体を作成した。
Figure 2019156935
さらに、フリット分散体の作製、インク液の調製を実施例1〜4、比較例1〜8と同様に行い、同様に評価を行った。結果を表12に示す。
Figure 2019156935
本発明の範囲の有機溶剤A及び有機溶剤Bを用いた実施例21〜24が吐出性、残渣、画質とも良好である。このため、セラミックやガラス装飾の用途にも好適に使用できることがわかる。
これに対し、溶媒の範囲が適切でない比較例41,43,45,47は吐出性が不良であり、比較例44および48は吐出後の乾燥性が不適切なため画像が不良になる。また樹脂量の範囲が適切でない比較例42よび46は樹脂量が多くなる影響で残渣が出現するので不適である。
実施例25〜26
ブルー顔料として実施例1の顔料に代えて、「YD-407」(商品名。中国TOMATEC社製青色顔料、ピグメントブルー28、コバルトアルミニウムブルー)、「BP712」(商品名。中国華山社製青色顔料、ピグメントブルー28、コバルトアルミニウムブルー)を用いて実施例1同様の配合で実施例1同様に顔料分散体を調製し、実施例1と同様にガラスフリット分散体、樹脂分散体、インク液を作製し、同様の方法で評価を行った。結果を表13に示す。
Figure 2019156935
顔料種が変わっても、本発明の有機溶剤Aと有機溶剤Bを使った実施例25〜26は吐出性、残渣、画質性能ともに良好であり、実施例1と同等性能を有する顔料分散体が作成できることがわかる。
実施例27〜28
ブラック顔料として実施例5の顔料に代えて、「41-333C」(商品名。中国TOMATEC社製、ピグメントブラック28、コバルトフェライトブラック)、「BP832」(商品名。中国華山社製、ピグメントブラック28、コバルトフェライトブラック)、用いて実施例5同様の配合で実施例5同様に顔料分散体を調製し、実施例1と同様にガラスフリット分散体、樹脂分散体、インク液を作製し、同様の方法で評価を行った。結果を表14に示す。
Figure 2019156935
顔料種が変わっても、本発明の有機溶剤Aと有機溶剤Bを使った実施例27〜28は吐出性、残渣、画質性能ともに良好であり、、実施例5と同等性能を有する顔料分散体が作成できることがわかる。
実施例29〜30
レッド顔料として実施例9の顔料に代えて、「BP203」(商品名。中国華山社製、ピグメントレッド101、赤色酸化鉄顔料)、「BP208」(商品名。中国華山社製、ピグメントレッド101、赤色酸化鉄顔料)、用いて実施例9同様の配合で実施例9同様に顔料分散体を調製し、実施例1と同様にガラスフリット分散体、樹脂分散体、インク液を作製し、同様の方法で評価を行った。結果を表15に示す。
Figure 2019156935
顔料種が変わっても、本発明の有機溶剤Aと有機溶剤Bを使った実施例29〜30は吐出性、残渣、画質性能ともに良好であり、、実施例9と同等性能を有する顔料分散体が作成できることがわかる。
実施例31〜32
グリーン顔料として実施例13の顔料に代えて、「BP611」(商品名。中国華山社製、ピグメントグリーン50、酸化クロム緑顔料)、「HP-2692」(商品名。HEHEGLAZE社製、ピグメントグリーン50、酸化クロム緑顔料)を用いた以外は実施例13同様の配合で実施例13同様に顔料分散体を調製し、実施例13と同様にガラスフリット分散体、樹脂分散体、インク液を作製し、同様の方法で評価を行った。結果を表16に示す。
Figure 2019156935
顔料種が変わっても、本発明の有機溶剤Aと有機溶剤Bを使った実施例31〜32は吐出性、残渣、画質性能ともに良好であり、実施例13と同等性能を有する顔料分散体が作成できることがわかる。
実施例33〜34
イエロー顔料として実施例17の顔料に代えて、「HC18001D」(商品名、中国華意社製、ピグメントイエロー53、チタンイエロー)、「LL-XLO」(商品名。チタン工業株式会社製合成酸化鉄(α-FeOOH))を用いた以外は実施例17同様の配合で実施例17同様に顔料分散体を調製し、実施例17と同様にガラスフリット分散体、樹脂分散体、インク液を作製し、同様の方法で評価を行った。結果を表17に示す。
Figure 2019156935
顔料種が変わっても、本発明の有機溶剤Aと有機溶剤Bを使った実施例33〜34は吐出性、残渣、画質性能ともに良好であり、実施例17と同等性能を有する顔料分散体が作成できることがわかる。
実施例35〜38
ホワイト顔料として実施例21の顔料に代えて、「CR-50-2」(商品名。石原産業株式会社製酸化チタン)、「CR-97」(商品名。石原産業株式会社製酸化チタン)、テイカ社製「JR-600A」(商品名。テイカ株式会社製酸化チタン)、「JR-800」(商品名。テイカ株式会社製酸化チタン)を用いた以外は実施例21同様の配合で実施例21同様に顔料分散体を調製し、実施例21と同様にガラスフリット分散体、樹脂分散体、インク液を作製し、同様の方法で評価を行った。結果を表18に示す。
Figure 2019156935
顔料種が変わっても、本発明の有機溶剤Aと有機溶剤Bを使った実施例35〜38は吐出性、残渣、画質性能ともに良好であり、実施例21と同等性能を有する顔料分散体が作成できることがわかる。
実施例39〜41
実施例1における「ガラスフリット分散体の作製」において、フリットとして、「BYB-725」、「BYB-104」、「BYB-H025」(いずれも商品名。貴州BYB社(貴州佰博新材料科技有限公司)製ガラスフリット)を使用した以外は実施例1と同様にガラスフリット分散体を作製した。結果を表19に示す。
Figure 2019156935
作製されたガラスフリット分散体の粘度および粒子径は実施例1とほぼ同じ値であり、実施例1のガラスフリットと同等にインクジェットインクとして使用できることがわかる。
以上のように、本発明のインクは、吐出後、インクの乾燥性が早く、ヘッドでの乾燥性を抑制した連続吐出性に優れたインクジェット用インクであることがわかる。

Claims (9)

  1. 少なくとも、無機顔料、ガラスフリット、樹脂及び有機溶剤を含有するインクであって、有機溶剤を少なくとも2種以上含有するインク。
  2. 有機溶剤として、25℃、1atmの条件下においてASTM-D3539に準拠して測定される相対蒸発速度の値が、酢酸ブチルの値を100としたときに以下の範囲である有機溶剤A及び有機溶剤Bを含有する請求項1に記載のインク。
    有機溶剤A:10〜1000
    有機溶剤B:0.1〜9
  3. ガラスフリットを10〜30重量%の範囲で含有する請求項1又は2に記載のインク。
  4. 無機顔料を5〜25重量%の範囲で含有する請求項1〜3のいずれかに記載のインク。
  5. 樹脂の含有量が0.1〜2重量%の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載のインク。
  6. スクリーン印刷用である請求項1〜5のいずれかに記載のインク。
  7. インクジェット用インクである請求項1〜5のいずれかに記載のインク。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のインクを、被印字体に付着させ、600〜1000℃に加熱することを特徴とする被印字体の製造方法。
  9. 被印字体がガラス又はセラミックである請求項8記載の被印字体の製造方法。
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