JP2019152360A - 親水性塗膜を備えたアルミニウムフィンと熱交換器 - Google Patents

親水性塗膜を備えたアルミニウムフィンと熱交換器 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、塗布後に優れた親水性を有し、ろう付け後であっても優れた親水性が得られ、変色を生じることがない親水性皮膜を得ることができ、外観の美しいアルミニウムフィンを提供できる。【解決手段】本発明のアルミニウムフィンは、アルミニウムまたはアルミニウム合金製のチューブに対しろう付けされるアルミニウムフィンであって、表面と裏面の少なくとも一方に親水性塗膜を有し、ろう付熱処理後の親水性塗膜表面に長軸径50〜1200nmの大きさの粒子が面積1mm2あたり、1.0×106個〜1.5×109個存在することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、親水性塗膜を備えた親水性に優れるアルミニウムフィンと熱交換器に関する。
エアーコンディショナー等の空調用熱交換器には銅製のチューブとアルミニウム製のフィンを機械的に接合した熱交換器が広く使用されている。
しかし、近年の銅地金価格の高騰により、チューブを含めた全ての部材を安価なアルミニウムに置き換える要求が高くなってきている。アルミニウムは軽量性と加工性と熱伝導性に優れた上にリサイクル利用が可能であり、安価な特徴がある。
この種の空調用熱交換器の一例として、以下の特許文献1に記載のように、左右に配置した第1のヘッダ集合管と第2のヘッダ集合管の間に、互いに一定の間隔をおいて上下に並んで配置した複数のアルミニウム合金製偏平管を設け、上下の偏平管の間に上下に蛇行する形状のコルゲートフィンを設けた構成の熱交換器が知られている。
特許文献1に記載の熱交換器は、上下に配列された偏平管の間にフィンの伝熱部を配置し、偏平管の間に通風路を区画し、この通風路を流れる空気と偏平管の内部を流れる流体との間で熱交換がなされる。
また、アルミニウム合金製の押出多孔偏平管に対し結露水の滞留を抑制するためにメタクリル酸エステルの重合体または共重合体を主成分とする合成樹脂とろう付け用フラックスと有機溶剤からなるフラックス組成物を表面に被覆した熱交換器用偏平管が以下の特許文献2に記載されている。
特開2012−163317号公報 特開平11−239867号公報
上述した従来の銅とアルミニウムを組み合わせた熱交換器ではアルミニウム製フィンの親水性向上のため、有機系塗料を予めフィンに塗装したプレコートフィンが用いられている。ところが、アルミニウム製熱交換器では部材接合のため、約600℃の炉中でろう付け熱処理を行う必要があり、有機系塗料がろう付け熱処理中に分解してしまうことで、フィンに対し充分な親水性を確保できないという問題があった。
また、プレコートフィンに水ガラス系の無機塗料を用いるとろう付け熱処理後の親水性をある程度確保できるが、フィン表面の無機塗料に変色が生じ、熱交換器に外観上の不具合を生じる問題がある。
更に、熱交換器がエバポレーター側として使用される場合、空気中の水蒸気が凝縮され、その結露水がフィンに水滴として付着するので、通風抵抗が増大し、圧力損失が大きくなり、熱交換器の能力低下が生じるという問題があった。
本願発明は、これらの事情に鑑み、ろう付け前に親水性皮膜を予め形成しておくプレコートタイプのフィンであっても、ろう付け加熱後にフィンが必要な親水性を示し、かつ、外観上の変色等の問題も生じないフィンを提供するために鋭意検討した結果なされたものである。
また、本願発明は、ろう付け加熱の有無とは別に、優れた親水性を発揮し、変色等の問題を生じないフィンを提供するために鋭意検討した結果なされたものである。
本発明ではアルミニウムフィンに対し特定の大きさの粒子を特定数含む塗膜を形成し、必要に応じて、湯洗または水洗して得た塗膜を付与することによって、ろう付け熱処理後であってもフィンに優れた親水性を付与できることを見出した。また、この湯水洗親水性塗膜であればろう付け後であっても、変色を生じ難いことを見出した。更に、この親水性塗膜であれば湯水洗の有無に拘わらず、優れた親水性を発揮することも知見した。
(1)本発明の一形態に係るアルミニウムフィンは、アルミニウムまたはアルミニウム合金製のチューブに対しろう付けされるアルミニウムフィンであって、表面と裏面の少なくとも一方に親水性塗膜を有し、ろう付熱処理後の親水性塗膜表面に長軸径50〜1200nmの大きさの粒子が面積1mmあたり、1.0×106個〜1.5×109個存在することを特徴とする。
(2)本発明の一形態に係るアルミニウムフィンにおいて、ろう付熱処理後の水接触角が40°以下であることが好ましい。
(3)本発明の一形態に係るアルミニウムフィンにおいて、前記ろう付け熱処理後に前記親水性塗膜表面に形成される粒子が、XPS分析によるナロースキャン分析結果に基づくピークシフト解析結果としてアルミニウムの酸化物もしくはアルミニウムの水和物を含む構成を採用できる。
(4)本発明の一形態に係るアルミニウムフィンにおいて、前記親水性皮膜がアルミン酸塩を主成分とする親水性塗膜であることが好ましい。
(5)本発明の一形態に係るアルミニウムフィンにおいて、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材の表面と裏面の少なくとも一方にアルミン酸塩を主成分とする親水性塗膜の湯水洗親水性塗膜を備えた構成を採用できる。
(6)本発明の一形態に係るアルミニウムフィンにおいて、前記アルミン酸塩がアルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸カルシウムの1種または2種以上からなる構成を採用できる。
(7)本発明の一形態に係るアルミニウムフィンにおいて、前記ろう付け熱処理後のフィン表面の色彩値がL:70〜100、a:−3〜+5、b:−3〜+10である構成を採用できる。
(8)本発明の一形態に係る熱交換器は、先の(1)〜(7)のいずれかに記載のアルミニウムフィンがアルミニウムまたはアルミニウム合金製のチューブに対しろう付けされた構成を採用できる。
(9)本発明の一形態に係る熱交換器は、(1)〜(7)のいずれかに記載のアルミニウムフィンが複数相互に所定の間隔をあけて配列され、前記複数のアルミニウムフィンを貫通させたアルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数のチューブが前記アルミニウムフィンにろう付けされ、前記複数のチューブが個々にヘッダ管にろう付けされた構成を採用できる。
(10)本発明の一形態に係る熱交換器は、(1)〜(7)のいずれかに記載のアルミニウムフィンがコルゲートフィンであり、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数のチューブが並列配置され、これらチューブ間に前記コルゲートフィンがろう付けされ、前記複数のチューブが個々にヘッダパイプにろう付けされた構成を採用できる。
(11)本発明の一形態に係る熱交換器は、(1)〜(7)のいずれかに記載のアルミニウムフィンが複数相互に所定の間隔をあけて配列され、前記複数のアルミニウムフィンを貫通させたアルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数のチューブが前記アルミニウムフィンに拡管接合された構成を採用できる。
本発明に係るアルミニウムフィンであるならば、ろう付熱処理後の表面に長軸径50〜1200nmの大きさの粒子が面積1mmあたり、1.0×106個〜1.5×109個存在する親水性塗膜を備えることにより、ろう付け前は勿論、ろう付け後であってもアルミニウムフィンに優れた親水性を付与できる。
また、アルミン酸塩を主成分とする親水性塗膜、あるいは、その湯水洗親水性塗膜であるならば、ろう付けに伴う加熱を経ても親水性皮膜に変色を生じることがなく、外観の美しいアルミニウムフィンを提供できる。
本発明に係る熱交換器であるならば、プレコートフィンに対応する親水性塗膜を予め設けておくタイプのアルミニウムフィンを用い、ろう付けによりチューブと接合した構成であるため、プレコートフィンを用いた製造工程と同等の工程で製造可能であり、ろう付け後であっても良好な親水性を付与したアルミニウムフィンを備えた熱交換器を提供できる。また、ろう付け前に親水性塗膜をプレコートしておくことにより、ろう付けした後であってもフィン外観に変色のない、優れた美観のアルミニウムフィンを備えた熱交換器を提供できる。勿論、フィンをろう付けしない拡管タイプの熱交換器に上述の親水性塗膜を適用することができ、優れた親水性を有するフィンを備えた熱交換器を提供できる。
第1実施形態の熱交換器の正面図である。 第1実施形態の熱交換器において、チューブの長さ方向に沿って縦断面をとった部分断面図である。 第1実施形態の熱交換器をろう付けする前の熱交換器組立体を示す部分断面図である。 第2実施形態の熱交換器を示す斜視図である。 図4に示す熱交換器において、チューブの長さ方向に直交する面に沿って横断面をとった断面図である。 図4に示す熱交換器において、チューブの長さ方向に沿って縦断面をとった断面図であり、ろう付け工程前の状態を示す図である。 図4に示す熱交換器において、チューブの長さ方向に沿って縦断面をとった断面図であり、ろう付け工程後の状態を示す図である。 実施例試料のXPS分析におけるスパッタ時間と原子濃度の関係を示すグラフである。 同試料のナロースキャンスペクトルを示すグラフである。 分析結果の解析に用いた資料を示すもので、(A)はAlとその化合物における2p結合エネルギーの値を示すグラフ、(B)はAl酸化物のピークの一例を示すグラフである。 実施例で得られた親水性皮膜の一例についてその表面をFE−SEMにより拡大して撮影した画像を示す写真。 実施例で得られた親水性皮膜の他の例についてその表面をFE−SEMにより拡大して撮影した画像を示す写真。
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際の熱交換器と同じであるとは限らない。
「第1実施形態」
図1〜図4は本発明に係る第1実施形態の熱交換器を示すもので、この第1実施形態の熱交換器11は、図1に示すように左右に離間し平行に配置された一対のヘッダ管14と、一対のヘッダ管14の間に上下に相互に間隔を保って平行に、かつ、ヘッダ管14に対してほぼ直角に接合された複数本の偏平型のチューブ22と、これらチューブ22を構成する管体12の外面(上面又は下面)12bにろう付けされ、外気に熱を放散する複数枚のフィン(アルミニウムフィン)13と、を備えている。
左右一対のヘッダ管14のうち一方の上端部には、ヘッダ管14を介しチューブ22に冷媒を供給する供給管15が接続されている。また、他方のヘッダ管14の下端部には、チューブ22を経由した冷媒を回収する回収管16が接続されている。チューブ22、フィン13、ヘッダ管14、供給管15、回収管16は、いずれもアルミニウム又はアルミニウム合金から構成されている。
第1実施形態の熱交換器11は、ルームエアコンディショナーの室内・室外機用の熱交換器、あるいは、HVAC(Heating Ventilating Air Conditioning)用の室外機、などの用途に使用されるオールアルミニウム熱交換器である。
図2は、チューブ22の長さ方向に直交する面に沿って横断面をとった熱交換器11の部分断面図である。図2に示すように、チューブ22を構成する管体12の内部には幅方向に沿って並ぶ複数(本実施形態では6つ)の冷媒流路12aが形成されている。
また、図2に示すようにフィン13には、チューブ22の断面形状に対応する形状の切り欠き部19が、上下に所定の間隔をあけて複数形成されている。これらの切り欠き部19には、それぞれチューブ22が嵌合され、個々のチューブ22がろう付けによりフィン13に固定されている。
図3、図4は、熱交換器11においてチューブ22の長さ方向に沿って縦断面をとった部分断面図であり、図3はろう付け工程前の状態を示し、図4はろう付け工程後の状態を示す。フィン13は、チューブ22の長さ方向に沿って複数枚、並列配置されるとともに、個々の切り欠き部19にチューブ22が挿通されている。複数のフィン13は、一定の間隔をおいて相互に平行に並列配置されている。フィン13は、切り欠き部19の周縁部にチューブ22の外面12bに沿ってフィン13の厚さ方向一側に屈曲した屈曲部20を有している。屈曲部20は、例えば、バーリング加工により形成されている。
チューブ22とフィン13は、一定間隔に並べた複数のフィン13をチューブ22が串刺し貫通するように配置され、フィン13の切り欠き部19内にチューブ22が嵌合され、フィン13とチューブ22が個々にろう付けにより固定されている。
図3に示すろう付け前の状態において、フィン13の切り欠き部19に形成された屈曲部20とチューブ22の上面または下面との隙間は10μm以下程度とすることが好ましい。この隙間が大きすぎる場合は、後述するろう付け工程において溶融したろうの回り込み量が不足し、ろう付け不良を引き起こすおそれがある。
本実施形態のフィン13は、切り欠き部19に対しチューブ22を挿通させているが、切り欠き部19に代えてフィン13にスリット状の貫通孔を設け、貫通孔にチューブ22を挿通させた構成としても良い。
以下、熱交換器11の主な構成要素についてより詳細に説明する。
<<フィン>>
フィン13は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる板状の基材3と、基材3の第1の面3a及び第2の面3bのほぼ全面に設けられた親水性皮膜1とを有している。
<フィンの基材>
基材3は、JIS1050系などの純アルミニウム系あるいはJIS3003系のアルミニウム合金を主体とした合金からなる。また、基材3は、JIS3003系のアルミニウム合金に質量%で2%程度のZnを添加したアルミニウム合金からなるものであっても良い。また、フィン13には基材3の片面または両面に皮材として4000系のアルミニウム合金からなるろう材を貼り合わせたクラッドフィンを用いても良い。
基材3は、チューブ22を構成する管体12の孔食電位よりも卑の孔食電位となる材質を用いることが好ましい。管体12の腐食に伴う孔食は冷媒の漏れ出しにつながるおそれがある。基材3の孔食電位を管体12の孔食電位より卑とすることで、フィン13が優先的に腐食し管体12に孔食が生じることを遅延させることができる。
基材3は、前記アルミニウムまたはアルミニウム合金を常法により溶製し、熱間圧延工程、冷間圧延工程、プレス工程などを経て加工される。なお、基材3の製造方法は、本発明において特に限定されるものではなく、フィンを形成するための既知の製法を適宜採用することができる。
<親水性皮膜>
フィン13は、基材3の第1の面3a及び第2の面3bのほぼ全面に、親水性皮膜1aを有している。親水性皮膜1aは、アルミン酸塩またはアルミン酸塩を主成分とする塗膜を湯洗または水洗した図6に示す湯水洗親水性塗膜1に対し、ろう付けに伴う熱処理を経て得られる。
この親水性皮膜1aは、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム(AlKO)、アルミン酸カルシウム(Ca(AlO)などのアルミン酸塩と、これらアルミン酸塩にアクリル樹脂、無機コロイド液などの添加剤を必要に応じて添加し、更に、界面活性剤を少量添加した親水性塗膜形成用塗料を用いて製造する。
この親水性塗膜形成用塗料を基材3の外面に塗布して乾燥させ、親水性塗膜を形成し、この親水性塗膜を湯洗または水洗して湯水洗親水性塗膜1とした後、ろう付け熱処理を経ることで図4に示す親水性皮膜1aを得ることができる。
アルミン酸ナトリウムとして、例えば二酸化ナトリウムアルミニウム(NaAlO)、テトラヒドロキシドアルミン酸ナトリウム(Na[Al(OH)])などを用いることができる。
このろう付け熱処理後の親水性皮膜1aには、長軸径50〜1200nmの大きさの微細粒子が面積1mmあたり、1.0×106個〜1.5×109個分散されていることが好ましい。これらの微細粒子は、アルミニウムの酸化物もしくはアルミニウムの水和物を含んでいる。
図3に示すようにろう付け前にフィン13の外面に塗布する湯洗または水洗前の親水性塗膜の塗布量として、ろう付け後に優れた水接触角を示し、良好なろう付け性を得るためには30〜3000mg/mの範囲を選択することができる。また、湯水洗前の塗布量が上述の範囲内であっても特に優れた水接触角とろう付け性を両立するためには50〜2000mg/mの範囲の塗布量とすることがより好ましい。
なお、アルミン酸塩を主成分とするとは、塗膜の50質量%以上がアルミン酸塩からなることを意味する。この範囲であっても、塗膜質量の80質量%以上、より好ましくは85質量%以上がアルミン酸塩であることが望ましい。勿論、後述する添加剤を含有させない場合であって、0.01質量%〜1質量%の界面活性剤を除く場合、塗膜の99%以上がアルミン酸塩であっても良い。また、本明細書において数値範囲について「〜」を用いて表記した場合、特に指定しない限り、上限値と下限値を含む範囲を意味する。よって、30〜3000mg/mは、30mg/m以上3000mg/m以下の範囲を意味する。
アルミン酸塩またはアルミン酸塩を主成分とする塗膜を湯洗または水洗した湯水洗親水性塗膜1であるならば、後述するろう付け工程において600℃前後の加熱を受けたとしても、ろう付け後に必要な親水性を発揮する親水性皮膜1aを得ることができる。
湯洗は、加温した水(湯)、例えば30〜90℃程度の湯を用いることができる。湯水洗とは加温しているか加温していない液体状のHOを使用した洗浄を意味し、例えば、常温またはそれより高い如何なる温度のHOも用いることができる。また、洗浄に用いる湯水は、不純物や少量(例えば、1重量%以下)の界面活性剤が含まれていても良く、pH10以下のアルカリ性水溶液であってもよい。
湯洗または水洗の方法としては、高圧水を用いてスプレーで洗浄する方法、水洗槽(水槽)の中を潜らせること(浸漬)により洗浄する方法など、種々の方法を用いることができる。なお、湯水または水に浸漬することにより洗浄を行う場合、湯洗槽中または水槽中に洗浄により塗布膜から除去された物質が多量に溶解した状態になると、湯洗中または水洗中のフィンに塗布膜の成分が再付着してしまうおそれがある。このため、洗浄中は、必要に応じて新水を湯洗槽または水洗槽に補給するなどの措置を行い、水質を保つことが望ましい。
湯水洗親水性塗膜1において、アルミン酸塩の他に添加物を配合する場合、アクリル樹脂、無機コロイド粒子などを5質量%〜40質量%程度添加することができる。
アルミン酸塩またはアルミン酸塩を主成分とする塗膜から得られた湯水洗親水性塗膜1であるならば、ろう付け工程において600℃前後に加熱される熱処理を経た後であっても親水性皮膜1aの変色が少なく、アルミニウムまたはアルミニウム合金本来の金属光沢を備えた外観の美しいフィン13を提供できる。湯水洗親水性塗膜1においてろう付け熱処理後の変色が少ないとは、ろう付け後に色差計にて測定される色彩値が、L:70〜100、a:−3〜+5、b:−3〜+10の範囲を満たすことを意味する。湯水洗親水性皮膜35aの色彩値がこの範囲内であれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金本来の金属光沢を備えたフィン34の外観を損なうことがない。
<<チューブ>>
図3に示すように、ろう付け前のチューブ22は、管体12と、管体12の外面(上面または下面)12bに形成されたろう材層5を有している。管体12は、図2に示すようにその内部に複数の冷媒流路12aが形成されたアルミニウムまたはアルミニウム合金製の偏平多穴管である。また、チューブとしてはアルミニウム合金ブレージングシートを折り曲げて成形することで作製した管も使用することができる。
管体12は、例えば、JIS1050系などの純アルミニウム系あるいはJIS3003系のアルミニウム合金を主体とした合金からなる。一例として、Si:0.10〜0.60%、Fe:0.1〜0.6質量%、Mn:0.1〜0.6質量%、Ti:0.005〜0.2質量%、Cu:0.1質量%未満、残部がアルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を押出しすることにより作製されたものである。
管体12は、図4に示すようにろう付け工程を経て形成されたフィレット5A、並びにフィン13の基材3の孔食電位よりも貴の孔食電位となる材質を用いることが好ましい。これにより、管体12の腐食が開始される前にフィレット5A及びフィン13の基材3の腐食が開始され、管体12の腐食を遅延させることができる。
ヘッダ管14を構成するアルミニウム合金は、Al−Mn系をベースとしたアルミニウム合金が好ましい。例えば、Mn:0.05〜1.50%を含有することが好ましく、他の元素として、Cu:0.05〜0.8%、Zr:0.05〜0.15%を含有することができる。
図3に示すろう付け前のチューブ22の管体12には、フィン13が接合される外面12bの一部に、ろう付用塗膜からなるろう材層5が塗布されている。
図3に示すろう付け前の熱交換器11において、チューブ22のろう材層5は、フィン13の屈曲部20のチューブ22と対向する部分(対向面20a)とチューブ22との間に位置する。ろう材層5は、600℃前後の加熱(ろう付け工程)後に冷却されることで、対向面20aとチューブ22との間に満たされた状態で固化し、図4に示すようにフィレット5A(ろう材層)となり、フィン13とチューブ22をろう付け接合する。
図2に示すように、管体12の外面12bは、平坦な表面(上面)6A及び裏面(下面)6Bと、これら表面6A及び裏面6Bに隣接する第1の側面6C及び第2の側面6Dとからなる。第1の側面6Cは、フィン13の切り欠き部19の開口側に位置し外部に開放されている。第2の側面6Dは、第1の側面6Cの反対側に位置し切り欠き部19に囲まれて配置されている。
ろう付け後の管体12の表面6A、裏面6Bに、ろう材層5に含まれていたSiとZnがろう付け温度で拡散し、管体12の表層部と裏面部にSiとZnを含む犠牲陽極層が形成される。
図3に示すろう付け前のチューブ22に形成されているろう付用塗膜は、少なくともフィン13がろう付け接合される部分に対応して塗布された塗膜である。ろう付用塗膜の組成は、Si粉末:1.0〜5.0g/mと、Zn含有フッ化物系フラックス(KZnF):3.0〜20.0g/mと、バインダ(例えば、アクリル系樹脂):0.5〜8.5g/mからなる配合組成のろう付用塗膜であることが好ましい。
以下、ろう付用塗膜を構成する組成物について説明する。
<Si粉末>
Si粉末は、チューブ22を構成するAlと反応し、フィン13とチューブ22を接合するろうを形成するが、ろう付け時にZn含有フラックスとSi粉末が溶融してろう液となる。
このろう液にフラックス中のZnが均一に拡散し、チューブ22の表面と裏面に均一に広がる。液相であるろう液内でのZnの拡散速度は固相内の拡散速度より著しく大きいので、これによりチューブ表面と裏面に均一なZn拡散がなされ、チューブ表面と裏面の面方向のZn濃度がほぼ均一となる。また、チューブ22の表面から深さ方向への拡散について見ると、SiはAlと共晶となって融点を下げるので、チューブ22の表面では共晶組成となった状態にZnが拡散しチューブ22の表面に所定厚さのZn溶融拡散層が生成する。このZn溶融拡散層の生成によりチューブ22の耐食性を向上できる。
<Si粉末塗布量:1.0〜5.0g/m
Si粉末の塗布量が1.0g/m未満であると、ろう形成が不十分となるおそれがあり、塗布量が5.0g/mを超えると、チューブの溶融量が増加してチューブの肉厚が減少して、好ましくない。このため、ろう付用塗膜におけるSi粉末の含有量は1.0〜5.0g/mとすることが好ましい。
<Si粉末粒度:最大粒径:D(99):30μm以下>
Si粉末の粒度がD(99)において30μm以下であれば、均一なZn溶融拡散層を形成することが可能である反面、30μmを超えると、局部的に深いエロージョンが生成し、均一なZn溶融拡散層を形成できなくなるおそれがある。このため、Si粉末の粒度は、最大粒径D(99)において30μm以下が好ましい。なお、D(99)とは、体積割合で小さい粒から累積し、全体の99%となる粒の粒径のことである。これらの値は、いずれもレーザ光散乱法で測定することができる。
<Zn含有フラックス、非Zn含有フラックス>
Zn含有フラックスは、ろう付けに際し、チューブ22の表面にZn溶融拡散層を形成し、耐孔食性を向上させる効果がある。また、ろう付け時にチューブ22の外面の酸化膜を破壊し、ろうの広がり、ぬれを促進してろう付け性を向上させる作用を奏する。このZn含有フラックスは、Znを含まないフラックスに比べ活性度が高いので、比較的微細なSi粉末を用いても良好なろう付け性が得られる。Zn含有フラックスは、KZnF、ZnF、ZnClのうち、1種または2種以上を用いることができる。Zn含有フラックスに対し、非Zn含有フラックスを添加しても良い。
非Zn含有フラックスとしてフッ化物系フラックスあるいはフルオロアルミン酸カリウム系のフラックスはKAlFを主成分とするフラックスであり、添加物を加えた種々の組成が知られている。KAlF+KAlFなる組成のもの、Cs(x)(y)(z)などを例示できる。他に、LiF、KF、CaF、AlF、KSiF等のフッ化物を添加したフッ化物系フラックス(例えば、フルオロアルミン酸カリウム系のフラックス)を用いることもできる。Znフラックスに加えてフッ化物系フラックス(例えばフルオロアルミン酸カリウム系のフラックス)を添加することでろう付け性向上に寄与する。
<フラックス塗布量:3.0〜20g/m
Zn含有フッ化物系フラックスの塗布量が3.0g/m未満であると、熱交換器11とした場合の電位差が低くなり、犠牲効果が発揮されないおそれがある。また、チューブ22(被ろう付け材)の表面酸化皮膜の破壊除去が不十分なためにろう付け不良を招くおそれがある。一方、塗布量が20mを超えると、電位差が過大となり、腐食速度が増加し、Zn溶融拡散層の存在による防食効果が短時間になるおそれがある。このため、Zn含有フッ化物系フラックスの塗布量を3.0〜20g/mとすることが好ましい。Zn含有フッ化物系フラックスは、一例としてKZnFを用いることができる。前述の非Zn含有フラックスは、Zn含有フラックスに加えて添加することができる。
<バインダ塗布量:0.5〜8.5g/m
ろう付用塗膜には、Si粉末、Zn含有フッ化物系フラックスに加えてバインダを含むことができる。バインダの一例として、アクリル系樹脂を挙げることができる。
バインダはZn溶融拡散層の形成に必要なSi粉末とZn含有フラックスをチューブ22の表面と裏面に固着する作用があるが、バインダの塗布量が0.5g/cm未満であると、ろう付け時にSi粉末やZnフラックスがチューブ22から脱落し、均一なZn溶融拡散層が形成されないおそれがある。一方、バインダの塗布量が8.5g/cmを超えると、バインダ残渣によりろう付け性が低下し、均一なZn溶融拡散層42が形成されないおそれがある。このため、バインダの塗布量は、0.5〜8.5g/mとすることが好ましい。なお、バインダは、通常、ろう付けの際の加熱により蒸散する。
Si粉末、フラックス及びバインダからなるろう付用塗膜の形成方法は、本実施形態において特に限定されるものではなく、スプレー法、シャワー法、フローコータ法、ロールコータ法、刷毛塗り法、浸漬法、静電塗布法などの適宜の方法によって行うことができる。
<<製造方法>>
上述したフィン13及びチューブ22を備えた熱交換器11の製造方法の一例について以下に説明する。
まず、チューブ22、及びフィン13を用意する。フィン13は、基材3の第1の面3a及び第2の面3bを含めて全面に塗布法や浸漬法などにより親水性塗膜形成用塗料の塗膜を形成し、これを湯洗または水洗して湯水洗親水性塗膜1を形成しておく。
この湯水洗親水性塗膜1は、XPS分析(X線光電子分光分析)によると、アルミン酸ナトリウムなどのアルミン酸塩を構成する金属成分、例えば、アルミン酸ナトリウムにおいてはナトリウムがほぼ消失し、アクリル樹脂を添加剤とした場合はアクリル樹脂の炭素がほぼ消失し、SiO換算で50nm程度の膜厚の残留した塗膜となる。この残留分の塗膜にはアルミニウムの水和物または酸化物と酸素が存在していることがXPS分析から判明している。このため、湯水洗親水性塗膜1はアルミニウム水和物またはアルミニウム酸化物と酸素からなる極めて薄い塗膜であると推定できる。
フィン13には、切り欠き部19とその周縁の屈曲部20とが形成されている。また、チューブ22として、管体12の外面12bの一部に予めろう材層5が形成されたものを用意する。ろう材層5の形成範囲は、管体12の少なくとも上面と下面においてフィン13と接合する領域全域をカバーする範囲が望ましい。
次に、図3に示すように、複数枚のフィン13を並列に配置し、切り欠き部19にチューブ22を挿通する。
次に、ろう材層5の融点以上の温度、例えば580〜620℃に加熱炉において数10秒〜数分間程度加熱するろう付け工程を行う。加熱によって、管体12の外面12bに形成されたろう材層5が溶融し、ろう液となる。このろう液は、毛管力によりフィン13の屈曲部20の対向面20aと管体12の外面12bの間の隙間に流れ、隙間を満たす。続いて、冷却することで、図4に示すように、ろう液が固化しフィレット5A(ろう材層)を形成する。このフィレット5Aにより、チューブ22とフィン13とが接合される。
ろう付けの際の熱処理条件は特に限定されない。一例として、加熱炉内を窒素雰囲気とし、熱交換器組立体41を昇温速度5℃/分以上でろう付温度(実体到達温度)580〜620℃に加熱し、ろう付け温度で30秒以上保持し、ろう付け温度から400℃までの冷却速度を10℃/分以上として冷却してもよい。
ろう付けに際し、不活性雰囲気などの適切な雰囲気で適温に加熱して、ろう材層5を溶融させる。この場合、フラックスの活性度が上がって、フラックス中のZnが被ろう付け材(フィン13の基材3)の肉厚方面に拡散するのに加え、ろう材及び被ろう付け材の双方の表面の酸化皮膜を破壊してろう材と被ろう付け材との間の濡れを促進する。
ろう付けに際し、チューブ22の管体12を構成するアルミニウム合金のマトリックスの一部がろう材層5の組成物と反応してろうとなって、チューブ22の管体12とフィン13がろう付けされる。管体12の上面表層部と下面表層部ではろう付けによってフラックス中のZnが拡散して管体12内側よりも卑になった犠牲陽極層が形成される。
管体12の表面側または下面側でZnの拡散を受けている領域が管体12の肉厚方向の内部側(Znの拡散を受けていない領域)よりも卑になる。ここで、管体12の肉厚方向の内部側とは犠牲陽極層が形成されている管体12の表面層領域あるいは裏面層領域より管体12の肉厚方向に深い領域を示す。
フィン13の全面に塗布されているアルミン酸塩またはアルミン酸塩を主成分とする塗膜から湯水洗により得られた湯水洗親水性塗膜1は、ろう付け熱処理時の加熱によって親水性皮膜1aとなる。
このため、ろう付け熱処理後の親水性皮膜1aに対し、XPS分析によるナロースキャン分析に基づくピークシフト解析結果をとると、アルミニウムの酸化物もしくはアルミニウムの水和物を含む塗膜であることがわかる。
ろう付け熱処理後の親水性皮膜1aには、長軸径50〜1200nmの大きさの細長い種々形状の微細粒子が面積1mmあたり、1.0×106個〜1.5×109個分散されていることが好ましい。これらの微細粒子は、アルミニウムの酸化物もしくはアルミニウムの水和物を含んでいる。
これら微細粒子の存在個数は、親水性皮膜1aの表面を例えば、FE−SEM(Field Emission-Scanning Electron Microscope)にて22000倍で50視野観察し、観察により得られた画像を解析することで求めることができる。図11、図12に後述する実施例で得られた親水性皮膜表面のFE−SEM画像と親水性皮膜表面に析出している微細粒子の外形の一例を示す。図11、図12に示すように親水性皮膜表面には大小種々の大きさの細長い細片状の微細な粒子がランダムに分散されていて、表面に微細な凹凸が形成されている。これら微細粒子の長軸径とは、これら微細粒子の長さ方向に沿ってその両端を結ぶ直線の長さで規定される。
これら微細粒子の長軸径が50nm未満、あるいは、1200nmを超える長軸径では、親水性が低下するおそれがある。微細粒子の数密度において面積1mmあたり、1.0×106個を下回る数密度の場合、親水性が低下し、1.5×109個を超える数密度ではろう付け性が低下するおそれがある。
なお、微細粒子の分散について面積1mmあたり、1.0×106個〜1.5×109個分散されていることは、換言すると、面積1μmあたり、1〜1500個分散されていることに相当する。また、微細粒子の数密度において面積1mmあたり、1.0×10個〜1.5×10個である事がより好ましい。
<<効果>>
本実施形態の構造によれば、良好なろう付けがなされ、管体12とフィン13との間に十分なサイズのフィレット5A(ろう材層)が形成される。
このフィレット5Aは、管体12よりも孔食電位が卑となっている。したがって、管体12と比較して優先的に腐食し、管体12の孔食を遅延させることができる。また、これらの腐食の次にZn拡散層が面状に腐食するので管体12に孔食が生じることを抑制できる。
なお、チューブ22のろう材層5を溶融、固化させてフィン13とチューブ22を接合する工程において、同時に、チューブ22にヘッダ管14をろう付け接合することが好ましい。
親水性皮膜1aは、熱交換器11の組み立て前にフィン13の基材3に予め形成するプレコート工程により形成できる。ろう付け後にポストコートで親水性皮膜を別途形成する工程は不要となるために、製造工程を簡素化した熱交換器11を提供できる。
上述のアルミン酸塩またはアルミン酸塩を主成分とする塗膜を湯洗または水洗した湯水洗親水性塗膜1は、ろう付け工程を経て600℃前後に加熱された後であっても変色が少ない。このため、金属光沢を有するアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるフィン13の美観を損なうことがない。
上述した実施形態においては、ろう付けするためのろう材層5をチューブ22の表面または裏面などの外面に設けた構造を採用したが、ろう材層5を略し、チューブ22とフィン13のろう付け接合予定部分の周囲に置きろうを配し、置きろうを用いてろう付けした構造を採用しても良い。
ろう付け時の加熱により置きろうを溶融させてチューブ22とフィン13との境界部分に溶融状態のろうを行き渡らせることでチューブ22とフィン13をろう付け接合しても良い。
また、フィン13を芯材層とろう材層からなる2層構造のブレージングシートで構成し、チューブ22にろう材層を設けない構造を採用してもよい。
この場合、芯材層の片面または両面に上述の親水性皮膜1aを設けることができる。あるいは、芯材層の両面にろう材層を有する3層構造のブレージングシートからなるフィン13を構成することもできる。
「第2実施形態」
図5は、コルゲートフィンを備えた第2実施形態の熱交換器30を示す正面図である。
第2実施形態の熱交換器30は、自動車用の熱交換器、ルームエアコンディショナーの室内・室外機用の熱交換器、あるいは、HVAC(Heating Ventilating Air Conditioning)用の室外機、などの用途に使用されるオールアルミニウム熱交換器である。
この第2実施形態の熱交換器30は、左右に離間して平行に立設配置されたヘッダーパイプ31、32と、これらのヘッダーパイプ31、32の間に相互に間隔を保って平行に、かつ、ヘッダーパイプ31、32に対して直角に接合された複数の扁平状のチューブ33と、各チューブ33に付設された波形のフィン(コルゲートフィン)34を主体として構成されている。ヘッダーパイプ31、32、チューブ33及びフィン34は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されている。
ヘッダーパイプ31、32の相対向する側面に複数のスリット36が各パイプの長さ方向に定間隔で形成され、これらヘッダーパイプ31、32の相対向するスリット36にチューブ33の端部を挿通してヘッダーパイプ31、32間にチューブ33が架設されている。また、ヘッダーパイプ31、32間に所定間隔で架設された複数のチューブ33、33の間にフィン34が配置され、これらのフィン34がチューブ33の表面側あるいは裏面側にろう付けされている。
図6に示す如く、ヘッダーパイプ31、32のスリット36に対してチューブ33の端部を挿通した部分においてろう材により第1のフィレット部38が形成され、ヘッダーパイプ31、32に対しチューブ33がろう付けされている。また、波形のフィン34において波の頂点の部分を隣接するチューブ33の表面または裏面に対向させてそれらの間の部分に生成されたろう材により第2のフィレット部39が形成され、チューブ33の表面側と裏面側に波形のフィン34がろう付けされている。
フィン34は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる板状の基材34aと、基材34aの全面(表面と裏面及び両側面)に付着された親水性皮膜35aを有している。
本実施形態の熱交換器30は、ヘッダーパイプ31、32とそれらの間に架設された複数のチューブ33と複数のフィン34とを組み付けて図7に示す如く熱交換器組立体41を形成し、これを加熱してろう付けすることにより製造されたものである。なお、ろう付け時の加熱によってチューブ33の表面側と裏面側にはZn拡散層(犠牲陽極層)42が形成されている。
熱交換器30の主な構成要素において、フィン34の基材34aは先に説明した熱交換器11におけるフィン13の基材3と同等の材料からなり、親水性皮膜35aは先に説明した熱交換器11における親水性皮膜1aと同等の材料からなる。この親水性皮膜35aは先の実施形態の場合と同様に湯水洗親水性塗膜35を形成後、ろう付けにより生成された親水性皮膜である。
<<チューブ>>
図7に示すように、ろう付け前のチューブ33は、その上面33Aと下面33Bに形成されたろう付用塗膜37を有している。チューブ33は、例えば、その内部に複数の冷媒通路33Cが形成された偏平多穴管である。また、チューブとしてはアルミニウム合金ブレージングシートを折り曲げて成形する事で作製した管も使用する事ができる。
チューブ33は、例えば、先の実施形態で用いられたチューブ22と同等の材料からなる。
チューブ33は、ろう付け工程を経て図2に示すように形成されたフィレット部38、39、並びにフィン34の基材34aの孔食電位よりも貴の孔食電位となる材質を用いることが好ましい。これにより、チューブ33の腐食が開始される前にフィレット部38、39、基材34aの腐食が開始され、チューブ33の腐食を遅延させることができる。
<<ヘッダーパイプ>>
ヘッダーパイプ31、32を構成するアルミニウム合金は、Al−Mn系をベースとしたアルミニウム合金が好ましい。
例えば、Mn:0.05〜1.50%を含有することが好ましく、他の元素として、Cu:0.05〜0.8%、Zr:0.05〜0.15%を含有することができる。
<<製造方法>>
上述したフィン34及びチューブ33を備えた熱交換器30の製造方法の一例について以下に説明する。
まず、チューブ33とフィン34を用意する。フィン34については、基材34aの少なくとも表面と裏面に塗布法で親水性塗膜形成用塗料による塗膜を形成し、湯洗または水洗することにより湯水洗親水性塗膜35を形成しておく。
ここで、親水性塗膜を塗布する場合、親水性塗膜形成用塗料はアルミン酸塩に加えて界面活性剤を含んでいるので塗料はじきを起こすことがなく、密着不良を引き起こすこともない。
上述のアルミン酸塩あるいはアルミン酸塩を主成分として含む塗膜は、湯洗または水洗することによりその膜厚の大部分が除去され、厚さ10nm〜500nm程度の極薄い湯水洗親水性塗膜35が残留する。
図7に示すように、フィン34との接合面にろう付用塗膜37を塗布したチューブ33を使用して、ヘッダーパイプ31、32、チューブ33及びフィン34を組み立てて熱交換器組立体41を構成する。チューブ33の両端を左右のヘッダーパイプ31、32に設けたスリット36に挿入し、チューブ33の上下にコルゲート型のフィン34が位置するように組み付ける。コルゲート型のフィン34はその波形の頂点部分をチューブ33の上面あるいは下面に接するように配置される。
次に、ろう付用塗膜35の融点以上の温度、例えば580〜620℃に加熱炉において数分間程度加熱するろう付け工程を行う。加熱によって、チューブ33に形成されたろう付用塗膜37が溶融し、ろう液となる。このろう液は、毛管力によりフィン34の頂点部分とチューブ33の上面あるいは下面の間の隙間に流れ、これらの隙間を満たす。続いて、冷却することで、図6に示すように、ろう液が固化し第1のフィレット部38と第2のフレット部39が形成される。これらのフィレット部38、39により、ヘッダーパイプ31、32とチューブ33とフィン34とが接合される。
ろう付けに際し、不活性雰囲気などの適切な雰囲気で適温に加熱して、ろう付用塗膜37を溶融させる。この場合、フラックスの活性度が上がって、フラックス中のZnがチューブ33の肉厚方面に拡散するのに加え、ろう材及びチューブの双方の表面の酸化皮膜を破壊してろう材とチューブの間の濡れを促進する。
ろう付けに際し、チューブ33を構成するアルミニウム合金のマトリックスの一部がろう付用塗膜37の組成物と反応してろうとなって、チューブ33とフィン34がろう付けされる。チューブ34の上面表層部と下面表層部ではろう付けによってフラックス中のZnが拡散してチューブのZn非拡散部分よりも卑になったZn拡散層(犠牲陽極層)42が形成される。
チューブ表面側または下面側でZnの拡散を受けている領域がチューブ33の肉厚方向の内部側(Znの拡散を受けていない領域)よりも卑になる。ここで、チューブ33の肉厚方向の内部側とは犠牲陽極層42が形成されているチューブ33の表面層領域あるいは裏面層領域よりチューブ33の肉厚方向に深い領域を示す。
<<効果>>
本実施形態の構造によれば、良好なろう付けがなされ、チューブ33とフィン34との間に十分なサイズのフィレット部38、39が形成される。
これらのフィレット部38、39は、チューブ33のZn非拡散部分よりも孔食電位が卑となっている。したがって、チューブ33のZn非拡散部分と比較して優先的に腐食し、チューブ33の孔食を遅延させることができる。また、これらの腐食の次にZn拡散層42が面食の状態で腐食するのでチューブ33に孔食が生じることを抑制できる。
図6に示すろう付け後のフィン34には、ろう付け時の熱処理工程を経た親水性皮膜35aが形成されている。この親水性皮膜35aは優れた親水性を発揮する。このため、フィン34の親水性を高くすることができる。
親水性皮膜35aは、熱交換器30の組み立て前にフィン34の基材34aに予め形成するプレコート工程により形成できる。ろう付け後にポストコートで親水性皮膜を別途形成する工程は不要となるために、製造工程を簡素化した熱交換器30を提供できる。
上述のアルミン酸塩またはアルミン酸塩を主成分とする塗膜を湯洗または水洗した湯水洗親水性塗膜35は、ろう付け工程を経て600℃前後に加熱された後であっても変色が少ない。このため、金属光沢を有するアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるフィン34の美観を損なうことがない。
ところで、これまで説明した実施形態では、上述のフィン13、34の基材3、34aに塗布した親水性塗膜1、35を湯洗または水洗して湯水洗親水性塗膜とした後、ろう付け熱処理した親水性皮膜1a、35aを用いた構成について説明した。しかし、湯洗または水洗していない親水性塗膜をそのまま親水性皮膜として用いても良いは勿論である。また、ろう付け熱処理を経ないタイプの熱交換器のフィンに湯洗または水洗していない親水性塗膜を適用しても良いのは勿論である。
即ち、上述のアルミン酸塩を主成分とする組成の親水性塗膜35は湯洗または水洗しなくとも優れた親水性を有しているので、親水性塗膜35をそのまま最終的な親水性塗膜としてフィンに形成しても良い。
熱交換器において、フィンとチューブを接合する場合、拡管プラグにより拡管することでフィンとチューブを機械的に接合し、熱交換器を構成するタイプが知られている。このタイプの熱交換器の場合、フィンを複数枚間隔をあけて配置し、複数のフィンに形成した透孔を串刺しするようにストレートパイプ状のチューブを挿通し、チューブに拡管プラグを挿入して拡管し、フィンとチューブを接合する。拡管後にU字管で隣接するチューブの端部同士を連結して管路を構成することで熱交換器を構成できる。
このタイプの熱交換器では、ろう付け熱処理がなされないので、ろう付熱処理後の親水性塗膜表面に長軸径50〜1200nmの大きさの粒子が面積1mmあたり、1.0×106個〜1.5×109個存在する親水性皮膜であって、ろう付けしていない親水性塗膜をそのまま親水性皮膜として用いることができる。勿論、これを更に湯洗または水洗して湯水洗親水性塗膜としたものを親水性皮膜として用いても良い。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<<サンプルの作製>>
Si:0.9質量%、Mn:1.2質量%、Zn:1.5質量%を含み、残部Alと不可避不純物からなる波板状の基材の表裏面に対し、以下の表1に示す主成分の塗料を0.6mg/mの塗布量で塗布して塗布膜を形成し、これらを60℃の湯で10秒間洗浄して以下の表1に示すNo.1〜No.15のコルゲート型のアルミニウムフィンを作成した。表1のNo.16のコルゲート型フィンは塗膜を形成していないフィンである。
No.1〜No.15の試料に適用した塗料の成分は、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸カルシウム、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウムのいずれかである。
次に、Si:0.4質量%、Mn:0.3質量%を含み残部Alおよび不可避不純物からなるチューブ用アルミニウム合金を溶製し、このアルミニウム合金から押出加工により、横断面形状が扁平状の熱交換器用アルミニウム合金の偏平多穴管(肉厚0.26mm×幅17.0mm×全体厚1.5mm)を得た。
さらに、この偏平多穴管の表面(上面)、裏面(下面)、並びに側面にろう付用塗膜を形成した。ろう付用塗膜は、Si粉末(D(99)粒度10μm)3gと、Zn含有フラックス(KZnF粉末:D(50)粒度2.0μm)6g、及び、アクリル系樹脂バインダ1g、溶剤としての3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールとイソプロピルアルコール16gの混合物からなる溶液をロール塗布し、乾燥させることで形成した。
前記チューブ11本と、コルゲート加工により波型に成形した前記No.1〜No.16のいずれかのフィン(10枚)を用いてフィンに対しチューブを10段組み立て、仮のミニコア試験体を構成し、これらのミニコア試験体を窒素雰囲気の炉内に600℃×3分保持する条件でろう付けを行った。
このろう付けにより、ろう付用塗膜が形成されていたチューブの表面及び裏面にZnが拡散し、犠牲陽極層が形成されるとともに、表1に示す各成分からなる親水性皮膜を備えたフィンがろう付けされたので、これらをNo.1〜No.16の熱交換器試験体として評価した。
<<試験>>
これらの熱交換器試験体を用いて以下に説明する粒子個数密度測定試験(個/mm)、フィンの変色観察試験、親水性評価試験、ろう付け性評価試験、塗膜密着性試験を行った。
[親水性皮膜表面の微細粒子長軸径、粒子個数密度測定試験]
ろう付け熱処理後の供試材の表面をFE−SEM(Field Emission-Scanning Electron Microscope)にて22000倍で50視野観察し、観察により得られた画像を画像解析することで微細粒子長軸径と数密度(個/mm)を求めた。
[フィンの変色観察試験]
600℃×3分のろう付後のフィンについて、色差計にて測定される色彩値が、L:70〜100、a:−3〜+5、b:−3〜+10の範囲を満たすものについては変色なしと判断した。また、色彩値がL:70〜100、a:−3〜+5、b:−3〜+10の範囲を満たさないものは変色ありと判断した。
[親水性:乾湿繰返し試験後の水接触角]
ろう付け前と600℃×3分のろう付後の試験体について、流水に8時間浸漬後、16時間乾燥を行なう工程を1サイクルとし、14サイクル実施した後のフィン表面の水接触角を測定した。この時の水接触角が40°以下であれば良好な親水性を有すると判断した。
[ろう付性:フィン接合率評価試験]
ろう付接合された各フィンについて、チューブからフィンをはぎ取り、チューブ表面に残存するフィン接合跡を観察した。そして、未接合箇所(ろう付を行なったが接合部跡が残らなかった箇所)の数をカウントした。一つの試験体に対して100か所の観察を行ない、80か所以上(80%以上)が正常に接合されているものを良好なろう付性を有すると判断した。
[塗膜密着性試験]
塗膜形成後の各フィンの表面へフェルト製の接触端子を500gの荷重で押し当てたまま、10回摩擦を行うラビング試験を実施した。試験後のフィン表面において、著しく摩擦痕が観測され、かつ、塗膜が剥がれた状態の試料を×、摩擦痕は確認されるが塗膜が剥がれていない状態の試料を○、外観上の変化が見られず、かつ、塗膜が剥がれていない状態の試料を◎で示し、塗膜密着性を評価した。
これら親水性皮膜表面の微細粒子長軸径測定結果、粒子個数密度測定試験結果と、フィン変色試験の結果と親水性の測定結果とろう付け性の測定結果と塗膜密着性の評価結果を表1にまとめて示す。
表1に示す実施例の試験結果から明らかなように、アルミン酸塩を主成分とする塗布膜を湯洗した湯洗親水性塗膜をプレコート塗膜としてフィンに形成しておき、これらのフィンを用いて熱交換器のミニコア試験体を構成し、ろう付け塗膜を用いてろう付けすることで、50〜1200nmの微細粒子の数密度が1.0×106個〜1.5×109であり、フィン表面に変色を生じていない、親水性に優れた皮膜を有し、ろう付け性においても優秀な熱交換器を製造できることがわかった。
実施例試料の乾湿繰返し試験後の水接触角の値は10〜30゜の範囲を示した。流水8時間浸漬後、16時間乾燥するサイクルを14サイクル実施するという過酷な試験環境下であっても実施例のミニコア試験体は、フィン表面の水接触角を低い値に維持できる優れた親水性を得ることができた。従って、アルミン酸塩を主成分とする塗布膜を湯洗した湯洗親水性塗膜からなる親水性皮膜であるならば、ろう付けに伴う高温の熱処理を経た後であっても優れた親水性を発揮する塗膜を得られることがわかった。
これらに対し、No.11の比較例は50〜1200nmの微細粒子の数密度が低い試料であるが、水接触角が大きくなり、No.12の比較例は50〜1200nmの微細粒子の数密度が多すぎる試料であるが、ろう付け性が低下した。
No.13の比較例はアルミン酸塩を主成分とする塗膜から得られた湯洗親水性塗膜に代えてフィン表面にポリビニルアルコールからなる塗膜を形成した例であるが、50〜1200nmの微細粒子の数密度が低く、ろう付け後のフィンに変色を生じ、ろう付け後の水接触角が大きくなった。
No.14の比較例はアルミン酸塩を主成分とする塗膜から得られた湯水洗親水性塗膜に代えてフィン表面にカルボキシメチルセルロースからなる塗膜を用いた例であるが、50〜1200nmの微細粒子の数密度が低く、ろう付け後のフィンに変色を生じ、ろう付け後の水接触角が大きくなった。
No.15の比較例はアルミン酸塩を主成分とする塗膜から得られた湯洗親水性塗膜に代えてフィン表面にケイ酸ナトリウムからなる塗膜を用いた例であるが、ろう付け後のフィンに変色を生じた。
No.16の比較例はアルミン酸塩を主成分とする塗膜から得られた湯洗親水性塗膜に代えてフィン表面にケイ酸リチウムからなる塗膜を用いた例であるが、ろう付け後のフィンに変色を生じた。
No.17の比較例はアルミニウムフィンの表面に塗膜を形成することなくろう付けした例であるが、ろう付け性を確保できるが、親水性は得られていない。
これらの試験結果から、アルミン酸塩の塗膜から得られた湯水洗親水性塗膜であり、50〜1200nmの微細粒子の数密度が1.0×106個〜1.5×109個/mmであり、親水性塗膜をプレコート皮膜としてフィンの表面に用いた熱交換器であるならば、プレコートによる塗膜であっても、ろう付け後の親水性に優れ、外観上の変色の問題が無く、ろう付け性にも優れた熱交換器を提供できることがわかった。
図8に示すグラフは、表1に示すNo.5の試料において湯洗後に得られた親水性塗膜に対し、XPS分析により膜厚方向に元素分析した結果を示す。XPS分析装置は、アルバックファイ株式会社製商品名:PHI Quantere SXM を用いた。
分析条件は、X線源25W、パスエネルギー26eV、ステップ0.05eV、スパッタリング条件、加速電位1kV、ラスター範囲1mm×1mmである。SiOスパッタレートは5.02nm/分、Alスパッタレート2nm/分である。
図8に示すグラフの縦軸は、原子濃度(%)を示し、横軸はスパッタ時間(分)を示す。スパッタ時間約12分でSi2pのデータとClsのデータが交差するので、交差SiO換算5nm/分と仮定すると、約60nm厚の湯洗親水性塗膜が形成されていると推定できる。他の塗膜についても同様の分析を行った結果、各湯洗親水性塗膜の膜厚は約10nm〜500nmの範囲に分布していた。
図9はNo.5の試料の湯洗親水性塗膜について、XPS分析によりナロースキャンスペクトルを測定した結果を示す。図9に示すグラフにおいて縦軸はCounts/sを示し、横軸は結合エネルギー(eV)を示す。
図9の横軸に近い側のスペクトルはいずれもアルミニウム基材の表面部分の金属アルミニウムから得られたスペクトルであると推定でき、これらのピークは金属アルミニウム本来の73eV近傍に存在していた。
これに対し、湯洗親水性塗膜表面部分から得られている図9の上部側のスペクトルは、ケミカルシフトにより75eV付近にピークが存在している。
図10(A)はAlの種々の化合物における2p結合エネルギー(eV)の分布を示し、図10(B)は酸化アルミニウムの標準ピークの一例を示す。
これらの対比から、75eV付近にピークが存在している化合物を選定すると、No.5の試料の湯洗親水性塗膜にはアルミニウム酸化物もしくはアルミニウム水和物が存在していると推定できる。
従って、湯洗後の親水性塗膜は、アルミニウム酸化物、アルミニウム水和物を含んでいると推定できる。
なお、No.5の試料のろう付け後のフィン表面について、XPS分析によりナロースキャンスペクトルを測定した結果、図9に示すグラフと同傾向のグラフが得られた。
この結果から、湯洗親水性塗膜はろう付け後もアルミニウム酸化物もしくはアルミニウム水和物を含んでいると推定できる。
図11は、表1に示すNo.5の試料の親水性皮膜についてその表面をFE−SEM(Field Emission-Scanning Electron Microscope)にて22000倍で観察した画像の一例を示し、図12は、表1に示すNo.8の試料の親水性皮膜についてその表面をFE−SEMにて22000倍で観察した画像の一例を示す。
図11に示す親水性皮膜は、画像解析により、1μmあたりの微細粒子数90個、微細粒子の長軸径最小径84nmであると測定することができた。図12に示す親水性皮膜は、画像解析により、1μmあたりの微細粒子数33個、微細粒子の長軸最小径1042μmであると測定することができた。なお、図12の写真の右側に測定した微細粒子の外形とその長軸径について参考のために示す。図12の写真に示すように親水性皮膜の表面には大きさの異なる大小種々の微細粒子がランダムに析出されており、これらの微細粒子が表面に析出することによって親水性が発現していると推定できる。
なお、図11と図12に示す微細粒子の大きさの対比から、アルミン酸塩単独の塗膜から得られた試料の微細粒子よりもアルミン酸塩にアクリル樹脂を添加した塗膜から得られた試料の微細粒子の方が粒径が大きいことがわかる。このため、微細粒子の粒径はアルミン酸塩に対する添加物によって影響を受けることがわかった。
1…湯水洗親水性塗膜、1a…親水性皮膜、3…基材、3a…第1の面、3b…第2の面、5…ろう材層、5A…フィレット(ろう材層)、6A…表面、6B…裏面、6C…第1の側面、6D…第2の側面、11…熱交換器、12…管体、12a…冷媒流路、12b…外面、13…フィン、14…ヘッダ管、15…供給管、16…回収管、19…切り欠き部、20…屈曲部、20a…対向面、22…チューブ、30…熱交換器、31、32…ヘッダーパイプ、33…チューブ、34…フィン、34a…芯材、35…湯水洗親水性塗膜、35a…親水性皮膜、36…スリット、37…ろう付用塗膜、38…第1のフィレット部、39…第2のフィレット部、42…Zn拡散層(犠牲陽極層)。

Claims (11)

  1. アルミニウムまたはアルミニウム合金製のチューブに対しろう付けされるアルミニウムフィンであって、表面と裏面の少なくとも一方に親水性塗膜を有し、ろう付熱処理後の親水性塗膜表面に長軸径50〜1200nmの大きさの粒子が面積1mmあたり、1.0×106個〜1.5×109個存在することを特徴とするアルミニウムフィン。
  2. ろう付熱処理後の水接触角が40°以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムフィン。
  3. 前記ろう付け熱処理後に前記親水性塗膜表面に形成される粒子が、XPS分析によるナロースキャン分析結果に基づくピークシフト解析結果としてアルミニウムの酸化物もしくはアルミニウムの水和物を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミニウムフィン。
  4. 前記親水性塗膜がアルミン酸塩を主成分とする親水性塗膜であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のアルミニウムフィン。
  5. アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材の表面と裏面の少なくとも一方にアルミン酸塩を主成分とする親水性塗膜の湯水洗親水性塗膜を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のアルミニウムフィン。
  6. 前記アルミン酸塩がアルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸カルシウムの1種または2種以上からなることを特徴とする請求項5記載のアルミニウムフィン。
  7. 前記ろう付け熱処理後のフィン表面の色彩値がL:70〜100、a:−3〜+5、b:−3〜+10であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のアルミニウムフィン。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のアルミニウムフィンがアルミニウムまたはアルミニウム合金製のチューブに対しろう付けされたことを特徴とする熱交換器。
  9. 請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のアルミニウムフィンが複数相互に所定の間隔をあけて配列され、前記複数のアルミニウムフィンを貫通させたアルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数のチューブが前記アルミニウムフィンにろう付けされ、前記複数のチューブが個々にヘッダ管にろう付けされたことを特徴とする熱交換器。
  10. 請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のアルミニウムフィンがコルゲートフィンであり、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数のチューブが並列配置され、これらチューブ間に前記コルゲートフィンがろう付けされ、前記複数のチューブが個々にヘッダパイプにろう付けされたことを特徴とする熱交換器。
  11. 請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のアルミニウムフィンが複数相互に所定の間隔をあけて配列され、前記複数のアルミニウムフィンを貫通させたアルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数のチューブが前記アルミニウムフィンに拡管接合されたことを特徴とする熱交換器。
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