JP7344103B2 - 親水性皮膜およびプレコートフィン - Google Patents
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Description
熱交換器がエバポレーター側として使用される場合、空気中の水蒸気を凝縮し、その結露水がフィンに水滴として付着すると、通風抵抗が増加することで圧力損失が大きくなり、熱交換器の能力低下を生じることが問題となっている。
また、近年ではアルミニウム製のチューブとフィンを組み合わせ、ろう付け熱処理によって接合を行なうタイプの熱交換器の検討が進められており、このような熱交換器においても結露水の排水性向上が求められている。
また、以下の特許文献2には、アルミニウム製の複数の扁平管と複数のフィンをろう付け接合した熱交換器であって、複数のフィン間に空気の通過方向に沿って風上側膨出部と風下側膨出部を設け、膨出部と扁平管との間に形成される平坦部の高さについて風上側を風下側より大きくした構成が開示されている。
特許文献2に記載の技術は、除霜時に生じたドレン水の排水をスムーズに行うために膨出部下面に平坦部を設け、この平坦部を傾斜させてドレン水の排出を円滑とした構造であるが、フィンの表裏面に生じた結露水自体の排水性向上の面で特に考慮された構造ではないと考えられる。
本発明の親水性皮膜において、前記粒子の塗布量が0 .05g/m2以上2.3g/m2以下であることが好ましい。
ナ3 水和物であることが好ましい。
前記アルミナ水和物が、ベーマイト、ダイアスポア、トーダイト、ジブサイト、バイヤライト、ノルトストランダイトのいずれか1種または2種以上であることが好ましい。
本発明のプレコートフィンは、先のいずれかに記載の親水性皮膜が少なくとも一方の面に形成されたアルミニウムまたはアルミニウム合金のクラッド材であることを特徴とする。
また、適用するフィンとして、ろう付け熱処理を経るタイプの熱交換器用のフィンに適用した場合であっても、ろう付け熱処理後に優れた親水性を発現することができ、フィン
に優れた排水性を付与できる。
また、ろう付け熱処理を経ても優れた親水性を発現でき、ろう付け熱処理前に予め塗布しておくことでも排水性を確保できるので、優れた表面排水性を備えたプレコートフィンを提供できる。
図1は、本発明に係る親水性皮膜を備えたフィン材を用いて構成された熱交換器の一例を示す斜視図である。
この例の熱交換器11は、ルームエアコンディショナーの室内・室外機用の熱交換器、あるいは、HVAC(Heating Ventilating Air Conditioning)用の室外機、自動車用の熱交換器などの用途に使用されるオールアルミニウム熱交換器である。
左右一対のヘッダー管14のうち一方の上端部には、ヘッダー管14を介しチューブ22に冷媒を供給する供給管15が接続されている。また、他方のヘッダー管14の下端部には、チューブ22を経由した冷媒を回収する回収管16が接続されている。チューブ22、フィン13、ヘッダー管14、供給管15、回収管16は、いずれもアルミニウム又はアルミニウム合金から構成されている。
チューブ12は一例として平坦な表面(上面)12A及び裏面(下面)12Bと、これら表面12A及び裏面12Bに隣接する第1の短側面12C及び第2の短側面12Dからなる横断面扁平型の多穴管状に形成されている。
フィン13は、図2に示すように縦長の長方形板状であり、チューブ22の長さ方向に沿って複数枚、並列されるとともに、切欠部19にチューブ22が挿通されている。複数のフィン13は、一定の間隔をおいて相互に平行に並列配置されている。
フィン13には、図3、図4に示すように切欠部19の周縁部にチューブ22の外面12bに沿ってフィン13の厚さ方向一側に屈曲した屈曲部20が形成されている。これらの屈曲部20は、例えば、バーリング加工により形成することができる。
図3に示すろう付け熱処理前の状態において、フィン13の切欠部19に形成された屈曲部20とチューブ22の上面または下面との隙間を10μm以下に調整することが好ましい。
この例のフィン13は、切欠部19に対しチューブ22を挿通させているが、切欠部19に代えてフィン13にスリット状の貫通孔を設け、貫通孔にチューブ22を挿通させた構成としても良い。
<フィン>
フィン13は、図4に示すようにアルミニウム又はアルミニウム合金からなる板状の基材3と、基材3の第1の面3a及び第2の面3bに設けられたろう付け熱処理後の親水性皮膜1aを有している。即ち、基材3の表裏両面に加熱処理後の親水性皮膜1aが設けられている。
<基材>
基材3は、JIS1050系などの純アルミニウム系あるいはJIS3003系のアルミニウム合金を主体とした合金からなる。なお、基材3は、他の組成系のアルミニウム合金から形成されていても良い。
基材3は、前述のアルミニウム合金を常法により溶製し、熱間圧延工程、冷間圧延工程、プレス工程などを経て加工される。なお、基材3の製造方法は、本発明において特に限定されるものではなく、既知の製法を適宜採用することができる。
図3に示すろう付け熱処理前の熱交換器組立体11aにおいて、フィン13の外面(表裏両面)に本実施形態に係る親水性皮膜1が形成されている。
熱交換器組立体11aはろう付けする前の熱交換器に相当し、図1に示す概形になるように左右のヘッダー管14とチューブ22とフィン13aを組み付けたものである。この熱交換器組立体11aを後述するようにろう付け熱処理温度に加熱することで熱交換器11を得ることができる。
熱交換器組立体11aのフィン13aに形成されている親水性皮膜1は、γ-アルミナやアルミナゾルと呼称されるアルミナ1水和物、アルミナ3水和物などの結晶性アルミナ水和物のコロイド溶液と界面活性剤を溶媒にそれぞれ溶解した塗料を塗布し、乾燥させた皮膜である。
親水性皮膜1を形成する塗料に使用するアルミナゾル中には、安定化剤として硝酸や酢酸が含まれていても良い。本実施形態の塗料は、例えば、アルミナ1水和物やアルミナ3水和物などの結晶性アルミナ水和物のコロイド溶液3~6g程度を溶媒としての水30gに対し添加した溶液である。
結晶性アルミナ水和物として、ジブサイト、バイヤライト、ノルストランダイトなどのアルミナ1水和物、ベーマイト、ダイスポアなどのアルミナ3水和物、その他、トーダイトなどを適用できる。
γ-アルミナは、粉末状の市販のγ-アルミナを分散媒として水と混合して用いた。
コロイド溶液は、一例として、安定化剤を配合した分散媒としての水を70質量%~90質量%程度含有し、アルミナ1水和物やアルミナ3水和物を構成する主体としてのAl2O3を10~30質量%程度含有する組成を採用できる。
前記塗料をフィン13aの表面に塗布して親水性皮膜1を構成する場合、γ-アルミナやアルミナ1水和物、アルミナ3水和物の付着量を0.05g/m2以上2.3g/m2以下の範囲(0.05~2.3g/m2)とすることが好ましい。
前記塗料をフィン13aの表面に塗布して親水性皮膜1を構成する場合、界面活性剤の付着量を0.05g/m2以上1.0g/m2以下の範囲(0.05~1.0g/m2)とすることが好ましい。
また、特に優れた水接触角を得るためには、これらの範囲内であっても、γ-アルミナやアルミナ1水和物、アルミナ3水和物の付着量として0.2g/m2以上1.2g/m2以下の範囲がより望ましい。界面活性剤の付着量は0.1g/m2以上0.5g/m2以下の範囲がより望ましい。
親水性皮膜1の厚さが2000nmを超える場合、親水性皮膜1が厚すぎてろう付け性が低下する。
親水性皮膜1においてγ-アルミナやアルミナ1水和物、アルミナ3水和物の付着量が2.3g/m2を超えると、親水性皮膜1が厚すぎてろう付け性が低下する。
親水性皮膜1において界面活性剤の付着量が0.05g/m2未満になると、親水性皮膜1に変色を生じ易くなる。
親水性皮膜1において界面活性剤の付着量が1.0g/m2を超えると、フィン13aの表面に存在する界面活性剤が多すぎることにより、ろう付け性が悪化する懸念がある。
アルミナ1水和物やアルミナ3水和物に加え、界面活性剤を含むことにより、塗装後の経時変化を抑制でき、変色を防止できる親水性皮膜を提供できる。
この長軸は、ろう付け前の塗膜の中に存在するアルミナ1水和物粒子やアルミナ3水和物粒子の長軸を示している。長軸の長さが5nmを下回る場合、接触角が増加してしまい、逆に2000nmを上回る場合、接触角が増加するとともに、ろう付性が低下する。
これら粒子の測定は、試料のTEM像を元に、視野内に存在する50個の粒子の平均値とする。なお、これら粒子の形状は、粒状、棒状、針状、羽毛状など種々の形状をとることがあり、いずれの形状でも良いが、いずれの形状としても長軸が存在する形状となる。
また、その他、アニオン系界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などを適用することができる。アルキルベンゼンスルホン酸塩として知られるLAS、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩として知られるMES、α-オレフィンスルホン酸塩として知られるAOSなどを用いても良い。硫酸エステル塩としては、アルキル硫酸エステル塩のAS、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩として知られるAESなどを用いても良い。
また、その他、カチオン系界面活性剤として、カルボン酸塩や第四級アンモニウム塩を提供することができる。
また、その他、非イオン系界面活性剤として、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどを用いても良い。また、両性界面活性剤として、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルアミンオキサイドなどを用いても良い。
ろう付け前のフィン13aに形成されていた親水性塗膜1はろう付け熱処理後に親水性皮膜1aとなり、フィン13の外面に残留する。
一例として、Si粉末塗布量:1.0~5.0g/m2、フラックス塗布量:3.0~20.0g/m2、バインダー塗布量:0.5~8.5g/m2の割合としたろう付け組成物塗膜を用いることができる。
この塗膜にZn含有フラックスを含有している場合、ろう付け熱処理時にチューブ22の上面と下面にZnが拡散してZn拡散層を生成し、このZn拡散層が防食効果を発揮する。
ろう材層5はその他一般的に知られるろう付け用組成物塗料、あるいは、ブレージングシートなどのクラッド材に適用される一般的なろう材層から構成されていても良い。
また、フィン13側へろう材層が形成され、チューブ22へろう材層が形成されていない構成でも使用する事ができる。この時チューブ22の表面にはZn溶射層やフラックス層が形成されていてもよい。
このため、図1に示す熱交換器11であれば、フィン13の外面に水分が付着しても薄い水膜となり、水滴を生じることがないので、隣接するフィン13間の隙間を水滴が閉塞することがない。このため、水滴が原因となってフィン間の通風抵抗が上昇することがなく、熱交換効率の低下し難い熱交換器11を提供できる。
塗布後、短時間で親水性皮膜1が変色するようであると、塗布後、短時間で熱交換器を組み付け、ろう付け熱処理などを行わなくてはならない。この点、塗布後、短時間で変色しない親水性皮膜1であれば、フィンの加工、熱交換器の組付け、ろう付け熱処理などを行うまでの時間を長くとれるので、生産計画に余裕が生じる。
しかし、フィン13の構成については、基材3の片面にろう材層を貼り合わせてブレージングシートとした構成、あるいは、基材3の両面にろう材層を貼り合わせてブレージングシートとした構成を採用する場合がある。
図5は、上述の構成の一例を示すもので、基材3の片面(図5では上面)にろう材層3Aが張り合わされ、基材3の底面側とろう材層3Aの上面側にそれぞれ親水性皮膜1を形成してフィン材25が構成されている。
図6は、上述の構成の他の例を示すもので、基材3の両面(図6では上下両面)にろう材層3Aが張り合わされ、基材底面側のろう材層3Aの外面側(底面側)と基材上面側のろう材層3Aの外面側(上面側)にそれぞれ親水性皮膜1を形成してフィン材26が構成されている。
これらのフィン材25、26において先の例と同様に親水性皮膜1を外面に備えているので、優れた親水性を得ることができる。
また、親水性皮膜1はろう付け熱処理を経た後であっても良好な親水性を発現するので、フィン材25、26からなるフィン13は良好な親水性を発揮する。このため、フィン材25、26からなるフィン13を備えた熱交換器は、先の例で説明した熱交換器11と同等の作用効果を得ることができる。
以下、親水性皮膜をコルゲートフィンタイプの熱交換器に適用した第2形態について説明する。
第2形態の熱交換器30は、図7に示すように、左右に離間して上下方向に向けられ、相互に平行に配置されたヘッダー管31、32と、これらのヘッダー管31、32の間に相互に間隔を保って平行に、かつ、ヘッダー管31、32に対して直角に接合された複数の扁平状のチューブ33と、各チューブ33に接合された波形のフィン(コルゲートフィン)34を主体として構成されている。ヘッダー管31、32チューブ33及びフィン34は、いずれもアルミニウム合金から形成されている。
図9に示すように、ろう付け前の熱交換器組立体41の状態においてチューブ33の表面33Aと裏面33Bにはろう付け用塗膜37が塗布されている。これらのろう付け用塗膜37に含まれていたZnがろう付け時の加熱により表面33Aと裏面33Bに拡散し、Zn拡散層42が形成されている。このZn拡散層42はチューブ33を構成するアルミニウム合金よりも電位的に卑となり、優先的に面状に腐食することでチューブ33に孔食が生成することを抑制し、チューブ33に対する防食機能を奏する。
基材34aを構成するアルミニウムまたはアルミニウム合金としては、特に限定されず、一般的な熱交換器用フィンの基材に適用されている組成のアルミニウム材を適宜用いることができる。
図7、図8に示す熱交換器30の場合、ろう付けにより熱交換器とする前に図8に示すようにフィン34にプレコート皮膜として親水性皮膜35を設けることができる。
この親水性皮膜35はろう付け熱処理後において親水性皮膜35aとなる。この親水性皮膜35aはろう付け熱処理後においても優れた親水性を発揮する。
ろう付け時の加熱により置きろうを溶融させてチューブ33とフィン34との境界部分に溶融状態のろうを行き渡らせることでチューブ33とフィン34をろう付け接合しても良い。
<サンプルの作製>
Si:0.4~1.0質量%、Mn:1.0~2.0質量%、Zn:0.5~3.5質量%を含み、残部Alおよび不可避不純物の組成を有する板状のアルミニウム基材を複数用意し、これらの基材に対し、脱脂処理を行った。
脱脂処理の後、各基材表裏面に対しバーコーター塗装により、以下に記載する親水性塗料を塗装した。
γ-アルミナやアルミナ1水和物またはアルミナ3水和物などの結晶性アルミナ水和物を個々に単独あるいは混合して水に溶解したコロイド溶液を用い、このコロイド溶液を水に対し溶解して得た親水性塗料を基材両面に塗布した。アルミナ1水和物は、ベーマイト、ダイスポアを用い、アルミナ3水和物は、ジブサイト、バイヤライト、ノルストランダイトを用い、その他トーダイトを用い、この塗膜を240℃雰囲気中で30秒加熱して乾燥させ、ろう付け前の親水性皮膜を得た。
γ-アルミナは、粉末状の市販γ-アルミナを用い、分散媒としての水と混合して用いた。
さらに、これらチューブの平坦な上面と下面にろう材層の塗膜を形成した。ろう材層の塗膜は、Si粉末(D(99)粒度10μm)3gと、Zn含有フラックス(KZnF3粉末:D(50)粒度2.0μm)6g、及び、アクリル系樹脂バインダー1g、溶剤としての3-メトキシ-3-メチル-1ブタノールとイソプロピルアルコールの混合物16gからなる溶液をバーコーターにより塗布し、乾燥させる(150℃雰囲気中で5分間加熱)ことで形成した。
これらのミニコア試験体を窒素雰囲気の炉内に600℃×3分保持する条件でろう付け熱処理を行った。このろう付け熱処理により、ろう付け用塗膜が形成されていたチューブの上面及び下面に、犠牲陽極層が形成されるとともに、親水性皮膜を備えたフィンとチューブがろう付け接合されたものを熱交換器試験体とした。
熱交換器試験体(ろう付け熱処理後)のフィン表面における接触角について以下の条件に基づき測定した。
ろう付け性について以下の条件に基づき評価した。
10mm×10mmに切り出したフィン材の親水性皮膜を含む表面近傍をFIB(Focused Ion Beam:収束イオンビーム)で加工し、加工断面をFE-SEM(Field Emission-Scanning Electron Microscope:電解放出型走査電子顕微鏡)にて、50000倍の倍率で撮影を行ない、ろう付け前の親水性皮膜の厚さを実測した。
親水性皮膜を塗装処理したろう付け熱処理前のサンプル、および、600℃×3分のろう付加熱処理後のサンプルについて、流水に8時間浸漬後、16時間乾燥を行なう工程を1サイクルとし、14サイクル実施した後のアルミニウムフィン表面の接触角を測定した。この時の接触角が30°以下であれば良好な親水性を有すると判断した。
ろう付け接合された各フィンを、チューブからはぎ取り、チューブ表面に残存するフィン接合跡を観察した。そして、未接合箇所(ろう付けを行なったが接合部跡が残らなかった箇所)の数をカウントした。一つのサンプルに対して100か所の観察を行ない、80か所以上(80%以上)が正常にろう付け接合されているサンプルを良好なろう付性を有するサンプルと判断した。
以上の測定結果、観測結果を以下の表1~表6にまとめて併記する。
参考例29~37は、ベーマイト粒子を単独で親水性皮膜に含有させたサンプル、参考例38~52は、ベーマイト粒子に加え、ダイスポア、トーダイト、ジブサイト、バイヤライト、ノルストランダイトのいずれか1種または2種以上の粒子を混合して添加したサンプルである。
参考例53~61は、ダイスポア粒子を単独で親水性皮膜に含有させたサンプル、参考例62~71は、ダイスポア粒子に加え、トーダイト、ジブサイト、バイヤライト、ノルストランダイトのいずれか1種または2種以上の粒子を混合して添加したサンプルである。
参考例87~95は、ジブサイト粒子を単独で親水性皮膜に含有させたサンプル、参考例96~98は、ジブサイト粒子に加え、バイヤライト、ノルストランダイトの1種または2種の粒子を混合して添加したサンプルである。
参考例99~107は、バイヤライト粒子を単独で親水性皮膜に含有させたサンプル、参考例108は、バイヤライト粒子に加え、ノルストランダイトの粒子を混合して添加したサンプルである。
参考例109~117は、ノルストランダイト粒子を単独で親水性皮膜に含有させたサンプルである。
表5、表6に示すように、ろう付け前の親水性皮膜の膜厚を20nmとした比較例ろう付け性が低下し、膜厚と粒子径を2500nmとした比較例は水接触角とろう付け性の両方が低下した。また、γ-アルミナ、ベーマイト、ダイスポア、トーダイト、ジブサイト、バイヤライト、ノルストランダイトのいずれかの粒子を5nm未満の3nmとした比較例はろう付け性に優れるものの、水接触角が悪くなり、親水性が低下した。
また、表6の比較例36に示すように従来のベーマイト処理皮膜は、ろう付け前とろう付け後の水接触角において実施例試料よりも劣っている。
本発明および従来の親水性皮膜が付与されたフィンについて日本分光製IRT-5000を用いて、偏光反射ユニットを使用し、入射角85度で高感度RAS測定にて50回積算の条件にて解析を行った。バックグラウンドスペクトルの採取には金蒸着ミラーを用いた。本発明の親水性皮膜は以下の表2の31の試料を用い、従来の親水性皮膜は、表6の比較例36に示す厚さ10nmのベーマイト処理皮膜(沸騰させた純水に5~10分間浸漬)を用いた。それらの測定結果を図10、図11に示す。
図10の分析結果から、実施例の親水性皮膜は、波数3300cm-1~3399cm-1の位置に吸光度(Abs)0.1以上のピークが存在し、かつ、波数1000cm-1~1099cm-1および1100cm-1~1199cm-1の位置に吸光度0.2以上のピークが存在し、かつ、波数800cm-1~900cm-1の位置に吸光度1.0以上のピークが存在することがわかった。
これに対し、図11に示す従来技術によるベーマイト皮膜の分析結果では、波数3300cm-1~3399cm-1の位置に吸光度0.1以上のピークは存在せず、かつ、波数1000cm-1~1199cm-1の位置に吸光度0.8以上のピークが1つのみ存在し、かつ、波数800cm-1~900cm-1の位置に吸光度0.6程度のピークが存在していた。
この分析結果の比較からも、本発明に係る親水性皮膜が従来のベーマイト皮膜と異なる構造であることがわかる。
Claims (6)
- アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材の外面に形成され、γ-アルミナからなる粒子またはγ‐アルミナからなる粒子にアルミナ水和物からなる粒子を混合した粒子であって、粒子径5nm以上2000nm以下の粒子で構成され、膜厚25nm以上2000nm以下であることを特徴とする親水性皮膜。
- 前記粒子の塗布量が0.05g/m2以上2.3g/m2以下であることを特徴とする請求項1に記載の親水性皮膜。
- 前記アルミナ水和物がアルミナ1水和物あるいはアルミナ3水和物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の親水性皮膜。
- 前記アルミナ水和物が、ベーマイト、ダイアスポア、トーダイト、ジブサイト、バイヤライト、ノルトストランダイトのいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の親水性皮膜。
- 請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の親水性皮膜が少なくとも一方の面に形成されたことを特徴とするプレコートフィン。
- 請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の親水性皮膜が少なくとも一方の面に形成されたアルミニウムまたはアルミニウム合金のクラッド材であることを特徴とするプレコートフィン。
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