JP2018053279A - アルミニウム合金クラッド材およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金クラッド材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】薄肉化した場合であっても、高耐食性を維持できるアルミニウム合金クラッド材を提供する。
【解決手段】心材Sと、心材Sの一方の面にクラッドされた第1皮材Gと、第1皮材Gの表面に形成された皮膜Fと、を有するアルミニウム合金クラッド材1であって、心材Sは、Si:0.30〜1.50質量%、Mn:0.60〜2.00質量%、Cu:0.10〜3.00質量%、Ti:0.05〜0.50質量%、Fe:0.01〜0.50質量%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物であるアルミニウム合金からなり、第1皮材Gは、2.0〜20.0質量%のZnを含有するAl−Zn系合金からなるとともに、厚さが4μm以上であり、且つ、皮膜Fは、厚さが0.1〜10μmであり、ベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車用の熱交換器等に使用されるブレージングシートとするアルミニウム合金クラッド材およびその製造方法に関する。
自動車に搭載されるラジエータ、コンデンサ、エバポレータ等の熱交換器は、軽量で熱伝導性に優れるアルミニウム合金の板材(以下「アルミニウム合金板」という。)を成形、組み立て、ろう付けして製造されることが多い。このようなアルミニウム合金板を、例えば、ラジエータ等のチューブ材として用いる場合、外面は大気に曝され、内面は冷却水に曝される。これらの腐食環境に曝されると、局所的に腐食(孔食)が進行して、貫通孔形成に至る虞がある。
チューブ外面の防食対策としては、チューブを形成するアルミニウム合金よりも電位の卑なAl−Zn合金板等で形成したフィン材を接触させる、いわゆる陰極防食法(電気防食法)が一般的であり、効果的であることが知られている。
チューブ内面の防食対策としても陰極防食法が適用される場合が多い。具体的には、基材(心材)のアルミニウム合金板に対して電位の卑なAl−Zn合金板等を犠牲陽極材として内面側(冷却水に曝される腐食環境側)に積層したアルミニウム合金クラッド材でチューブを形成することが一般的である。なお、この場合、冷却水に腐食抑制剤(インヒビター:inhibitor)を添加することも併用されている。
熱交換器に使用されるアルミニウム合金クラッド材(以下「熱交換器用アルミニウム合金クラッド材」という。)はさらに、前記したろう付けのため、片面または両面にAl−Si合金からなるろう材がクラッドされたアルミニウム合金クラッド材(ブレージングシート)とされることも多い。
近年、熱交換器の軽量化と小型化の観点から、熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の薄肉化が要求されている。当該要求に応えるため、熱交換器用アルミニウム合金クラッド材としては、例えば板厚0.2mm程度の薄肉材が使用されている。
このような薄肉材とした場合であっても熱交換器に必要な強度および耐食性を備えるようにするため、例えば、特許文献1などには、アルミニウム合金の心材にMn、Si、Cu、Fe、Mgなどの合金元素を適量添加し、所定条件で最終焼鈍して強度を向上させ、さらに犠牲防食効果を有する皮材には適量のZnを添加して耐食性を向上させたアルミニウム合金を用いる技術が開示されている。
具体的に説明すると、特許文献1には、アルミニウム合金からなる心材と、前記心材の少なくとも一方の面にクラッドされたAl−Si系合金からなるろう材とを備えるアルミニウム合金ブレージングシートが記載されている。また、特許文献1には、前記心材は、Mn:0.6〜1.8mass%、Si:0.01〜1.2mass%、Fe:0.3mass%以下、Cu:0.05〜1.2mass%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金であると記載されている。特許文献1には、前記ろう材は、Si:2.5〜13.0mass%、Fe:0.05〜1.0mass%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金であると記載されている。さらに、特許文献1には、前記心材は、ろう付前の任意断面において、Feを含有する金属間化合物であって円相当径が1〜100μmであるものの占める面積率が3%以下であると記載されている。
また、近年の自動車軽量化のニーズに対応するためには、自動車用熱交換器も軽量化することが求められており、自動車用熱交換器に用いる材料の薄肉高強度化の要望が高揚している。材料を薄肉化しようとした場合、犠牲防食効果を有する皮材の厚さを減少させることが効果的であるが、皮材の厚さの減少による犠牲防食効果の低下の懸念があり、さらに腐食代も減少する。そのため、熱交換器用アルミニウム合金クラッド材にはさらなる高耐食化が求められている。
熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の高耐食化のための技術として、例えば、特許文献2に、犠牲防食層のAl−Zn系合金に耐食性を向上させる合金元素を添加し、金属間化合物の形態や数密度を制御する技術が開示されている。
具体的に説明すると、特許文献2には、芯材と、この芯材の一面側に形成された犠牲材と、この芯材の他面側に形成されたAl−Si系合金からなるろう材とを備えた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材が記載されている。また、特許文献2には、前記芯材は、Si:0.15〜1.6質量%、Mn:0.3〜2.0質量%、Cu:0.1〜1.0質量%、Ti:0.02〜0.30質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなると記載されている。特許文献2には、前記犠牲材は、Zn:4.0〜10.0質量%、Cr:0.01〜0.5質量%、Si:1.0質量%以下(0質量%を含まない)、Mn:2.0質量%以下(0質量%を含まない)を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなると記載されている。特許文献2には、595℃×3分間のろう付加熱後に前記犠牲材に析出したAl−Mn系、Al−Mn−Si系およびAl−Cu系金属間化合物は、前記犠牲材の圧延方向と直交する方向における垂直な断面における、犠牲材の厚さの1/2の位置を視野の中心とした電子顕微鏡観察像による最大サイズが円相当径で10nm以上1μm以下であると記載されている。また、特許文献2には、前記円相当径で10nm以上1μm以下のAl−Mn系、Al−Mn−Si系およびAl−Cu系金属間化合物の数密度が1×105個/mm2以上、且つ、前記円相当径で10nm以上1μm以下のAl−Mn系、Al−Mn−Si系およびAl−Cu系金属間化合物の面積率が4%以下であると記載されている。
特開2013−234376号公報 特開2014−31588号公報
特許文献1、2に記載の高耐食化技術は、ある程度の薄肉化に対応し得るものではあるが、最近、薄肉化および高強度化のニーズがさらに高まり、熱交換器用アルミニウム合金クラッド材にはさらなる高耐食化が求められるようになった。特に、熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の板厚が0.2mmを下回る薄肉材を実現しようとした場合には、犠牲防食効果の低下や犠牲防食材の早期消耗などで穴あきが起こる懸念があり、従来の高耐食化技術では耐食性が十分ではないことが予想される。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、薄肉化した場合であっても、高耐食性を維持できるアルミニウム合金クラッド材およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、アルミニウム合金クラッド材の心材および皮材の化学成分を調整し、さらに犠牲防食性を担保する皮材にベーマイトやダイアスポアを主体的に含有する皮膜を形成することにより、薄肉化した場合であっても優れた耐食効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
前記課題を解決した本発明に係るアルミニウム合金クラッド材は、心材と、当該心材の一方の面にクラッドされた第1皮材と、当該第1皮材の表面に形成された皮膜と、を有するアルミニウム合金クラッド材であって、前記心材は、Si:0.30〜1.50質量%、Mn:0.60〜2.00質量%、Cu:0.10〜3.00質量%、Ti:0.05〜0.50質量%、Fe:0.01〜0.50質量%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物であるアルミニウム合金からなり、前記第1皮材は、2.0〜20.0質量%のZnを含有するAl−Zn系合金からなるとともに、厚さが4μm以上であり、且つ、前記皮膜は、厚さが0.1〜10μmであり、ベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有することとした。
本発明に係るアルミニウム合金クラッド材の製造方法は、前記したアルミニウム合金からなる心材と、前記したAl−Zn系合金からなる第1皮材と、を重ね合わせてクラッド圧延を行い、前記第1皮材の厚さが4μm以上となるクラッド材を作製するクラッド圧延工程と、前記クラッド材を用いて熱交換器または熱交換器用構造材を作製した後に、熱湯中への浸漬、水蒸気中での暴露、陽極酸化した後の水和処理、およびベーマイトとダイアスポアを含有する粉末を含む溶媒を塗布して乾燥する処理のうちの少なくとも1つの処理を行い、前記第1皮材の表面に厚さが0.1〜10μmであり、ベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有する皮膜を形成するか、または、前記クラッド材に対し、熱湯中への浸漬、水蒸気中での暴露、陽極酸化した後の水和処理、およびベーマイトとダイアスポアを含有する粉末を含む溶媒を塗布して乾燥する処理のうちの少なくとも1つの処理を行い、前記第1皮材の表面に厚さが0.1〜10μmであり、ベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有する皮膜を形成した後に、熱交換器または熱交換器用構造材を作製する後処理工程と、を含んでいることとした。
本発明に係るアルミニウム合金クラッド材は、薄肉化した場合であっても、高耐食性を維持できる。
本発明に係るアルミニウム合金クラッド材の製造方法は、薄肉化した場合であっても、高耐食性を維持できるアルミニウム合金クラッド材を製造することができる。
本発明の第1実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材の構成を説明する概略断面図である。 本発明の第2実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材の構成を説明する概略断面図である。 本発明の第3実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材の構成を説明する概略断面図である。
以下、適宜図面を参照して本発明に係るアルミニウム合金クラッド材を実施するための形態(実施形態)について詳細に説明する。
<アルミニウム合金クラッド材>
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材1(以下単に「クラッド材1」という。)は、心材Sと、心材Sの一方の面にクラッドされた第1皮材Gと、第1皮材Gの表面に形成された皮膜Fと、を有する。クラッド材1の板厚は、例えば、0.3mm以下や0.2mm以下などとすることができるがこれらに限定されず、任意に設定することができる。
はじめに、クラッド材1を構成する心材Sおよび第1皮材Gの成分組成と第1皮材Gの表面に形成された皮膜Fなどの各要素について説明する。
(心材)
心材Sは、Si:0.30〜1.50質量%、Mn:0.60〜2.00質量%、Cu:0.10〜3.00質量%、Ti:0.05〜0.50質量%、Fe:0.01〜0.50質量%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物であるアルミニウム合金からなる。このような構成とすると、耐食性向上効果を大きくすることができ、また、強度を向上させることができる。
なお、心材Sは、Mg:0.01〜1.00質量%、Cr:0.01〜0.30質量%、Ni:0.01〜0.30質量%、Zr:0.01〜0.30質量%のうちの少なくとも1つの成分を含有しているのが好ましい。このような構成とすると、耐食性向上効果をより大きくすることができ、また、さらに強度を向上させることができる。
心材Sの板厚は、例えば、0.25〜0.3mmなどとすることができるがこれに限定されるものではなく、任意に設定することができる。
(心材のSi)
Siは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。Siは、特にMnと共存することでAl−Mn−Si系金属間化合物を形成し、これによりさらにアルミニウム合金の強度を高めることができる。また、心材SのSiは腐食電位を貴化して、第1皮材Gによる犠牲防食性を高める効果もある。
クラッド材1の強度および犠牲防食効果を十分なものとするため、心材SにおけるSi含有量は0.30質量%以上とする。このような効果をより十分なものとするため、心材SにおけるSi含有量は0.35質量%以上とするのが好ましく、0.40質量%以上とするのがさらに好ましい。
一方、Siはアルミニウム合金の融点を降下させるため、過剰に添加するとろう付け時に心材Sの溶融が生じる。従って、心材SにおけるSi含有量は1.50質量%以下とする。このような弊害や影響を減じつつ、前記した効果を得るため、心材SにおけるSi含有量は1.40質量%以下とするのが好ましく、1.30質量%以下とするのがさらに好ましい。
(心材のMn)
Mnは、Siと同様にアルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。Mnは、特にSiと共存することでAl−Mn−Si系金属間化合物を形成し、これによりさらにアルミニウム合金の強度を高めることができる。また、心材SのMnは腐食電位を貴化して、第1皮材Gによる犠牲防食性を高める効果もある。さらに、心材SのMnは融点を上昇させる効果もあるため、ろう付け時の部分溶融を防止するのに効果がある。
クラッド材1の強度、犠牲防食効果および融点低下抑制を十分なものとするため、心材SにおけるMn含有量は0.60質量%以上とする。これらの効果をさらに十分なものとするため、心材SにおけるMn含有量は0.65質量%以上とするのが好ましく、0.70質量%以上とするのがさらに好ましい。
一方、Mnが過剰に添加されると粗大な晶出物が析出して、クラッド材1の加工性が低下する。従って、心材SにおけるMn含有量は2.00質量%以下とする。このような弊害や影響を減じつつ、前記した効果を得るため、心材SにおけるMn含有量は1.90質量%以下とするのが好ましく、1.80質量%以下とするのがさらに好ましい。
(心材のCu)
Cuは、SiやMnと同様にアルミニウム合金の強度を向上させる効果があり、クラッド材1の高強度化に必要である。また、Cuは、アルミニウム合金の電位を貴にする作用があるため、犠牲陽極材(第1皮材G)に対する電位を貴にして第1皮材Gの犠牲防食効果を高める。
これらの効果を十分なものとするため、心材SにおけるCu含有量は0.10質量%以上とする。これらの効果をさらに十分なものとするため、心材SにおけるCu含有量は0.15質量%以上とするのが好ましく、0.20質量%以上とするのがさらに好ましい。
一方、Cuが過剰に添加されると、粒界にCu化合物が多く析出して、粒界腐食が生じ易くなったり、融点が低下してろう付け時に心材Sの溶融を招いたりする。従って、心材SにおけるCu含有量は3.00質量%以下とする。これらの弊害や影響を減じつつ、前記した効果を得るため、心材SにおけるCu含有量は2.90質量%以下とするのが好ましく、2.80質量%以下とするのがさらに好ましい。
(心材のTi)
Tiは、心材Sに層状に分布して孔食の進展を抑止する作用を有しており、耐孔食性の向上に必要である。また、Tiは、アルミニウムの強度を向上させるためにも必要である。
これらの効果を十分なものとするため、心材SにおけるTi含有量は0.05質量%以上とする。これらの効果をさらに十分なものとするため、心材SにおけるTi含有量は0.06質量%以上とするのが好ましく、0.07質量%以上とするのがさらに好ましい。
一方、Ti含有量が0.50質量%を超えると、Al−Ti系の粗大な金属間化合物を生じて、成形加工時の割れの要因となる。よって、心材SにおけるTi含有量は0.50質量%以下とする。このような弊害や影響を減じつつ、前記した効果を得るため、心材SにおけるTi含有量は0.45質量%以下とするのが好ましく、0.40質量%以下とするのがさらに好ましい。
(心材のFe)
Feは、金属間化合物として晶出したり、析出したりしてアルミニウム合金の強度を向上させる効果を有しており、クラッド材1の高強度化に必要である。また、心材SのFeは結晶粒を微細化して、局部腐食の進展を抑制する効果を有する。
これらの効果を得るため、心材SにおけるFe含有量は0.01質量%以上とする。また、これらの効果をさらに十分なものとするため、心材SにおけるFe含有量は0.02質量%以上とするのが好ましく、0.03質量%以上とするのがさらに好ましい。
一方、Fe含有量が0.50質量%を超えて過剰になると、成形加工性が低下することに加えて、AlとFeとの化合物が晶出し、それが腐食起点となって耐食性を低下させる場合がある。よって、心材SにおけるFe含有量は0.50質量%以下とする。このような弊害や影響を減じつつ、前記した効果を得るため、心材SにおけるFe含有量は0.45質量%以下とするのが好ましく、0.40質量%以下とするのがさらに好ましい。
(心材のMg、Cr、Ni、Zr)
本発明で用いる心材SにおけるMg、Cr、Ni、Zrは任意成分である。心材SにおけるMg、Cr、Ni、Zrは、いずれもクラッド材1の耐局部腐食性および強度を向上させる効果を有する。特に、Mgは、Siとの共存によりろう付けの加熱時などにMg2Si化合物を形成し、強度を向上させる作用を有する。これらの効果は、心材SにおけるMg含有量を0.01質量%以上、Cr含有量を0.01質量%以上、Ni含有量を0.01質量%以上、Zr含有量を0.01質量%以上のうちの少なくとも1つの成分を含有することにより得ることができる。前記した効果をさらに十分なものとするため、心材SにMg、Cr、Ni、Zrを含有させる場合は、これらの成分の含有量をそれぞれ0.02質量%以上とするのがより好ましく、0.03質量%以上とするのがさらに好ましい。なお、心材SにおけるMg、Cr、Ni、Zrは任意成分であるので、前記した効果を得ることを意図しない場合は、それぞれ0.01質量%未満で含有していてもよい。
一方、心材SにMgを過剰に添加した場合、ろう付け性を低下させる。このような弊害や影響を減じつつ、前記した効果を得るため、心材SにMgを含有させる場合は、Mg含有量を1.00質量%以下とするのが好ましい。このような弊害や影響をより減じつつ、前記した効果を得るため、心材SにMgを含有させる場合は0.90質量%以下とすることがより好ましく、0.80質量%以下とすることがさらに好ましい。また、Cr、Ni、Zrを過剰に含有させるとクラッド材1の加工性が低下する。従って、心材SにCr、Ni、Zrを含有量させる場合は、前記した弊害や影響を減じつつ、前記した効果を得るため、これらの成分の含有量をそれぞれ0.30質量%以下とすることが好ましく、0.29質量%以下とするのがより好ましく、0.28質量%以下とするのがさらに好ましい。
(心材の残部)
心材Sにおける前記した組成成分以外の残部は、Alおよび不可避不純物からなる。心材Sにおける不可避不純物としては、例えば、Na、Ca、Sr、V、Zn、B、Ga、Inなどを挙げることができる。これらの不可避不純物は、本発明の効果を妨げない範囲内であれば含有していてもよく、含有量の合計で概ね1.0質量%未満であれば許容される。
(第1皮材)
第1皮材Gは、2.0〜20.0質量%のZnを含有するAl−Zn系合金からなる。また、第1皮材Gは、厚さが4μm以上である。第1皮材Gは、腐食電位が心材Sよりも100mV以上卑であるのが好ましい。
第1皮材Gは、クラッド材1における犠牲防食性を担保するものである。そのため、第1皮材Gは、Si:0.10〜1.00質量%、Mn:0.10〜1.00質量%のうちの少なくとも1つの成分を含有していることが好ましい。このような構成とすると、耐食性向上効果を大きくすることができ、また、クラッド材1の強度を向上させることができる。
また、第1皮材Gはさらに、Fe:0.01〜0.30質量%、Cr:0.01〜0.30質量%、Ni:0.01〜0.30質量%、Zr:0.01〜0.30質量%のうちの少なくとも1つの成分を含有していることが好ましい。このような構成とすると、皮膜Fを強化して耐食性を向上させることができ、また、クラッド材1の強度を向上させることができる。
第1皮材Gの成分組成、厚さ、腐食電位などの限定理由は下記の通りである。
(第1皮材のZn)
第1皮材GのZnは、腐食電位を卑化させる作用があり、心材Sとの間に電位差を付与して、犠牲防食性を発現させるために必要不可欠な元素である。このようなZnの犠牲防食効果を得るため、第1皮材GにおけるZn含有量は2.0質量%以上とすることが必要である。
一方、第1皮材GにおけるZn含有量が20.0質量%を超えて過剰になると、第1皮材Gの自己腐食性が増大して早期に消耗し、犠牲防食寿命を低下させる。以上のような理由から、第1皮材GにおけるZn含有量は2.0〜20.0質量%とする。前記した効果をさらに十分なものとするため、第1皮材GにおけるZn含有量は、2.2質量%以上とするのが好ましく、2.4質量%以上とするのがさらに好ましく、4.0質量%以上とするのがさらにより好ましい。前記した弊害や影響を減じつつ、前記した効果を得るため、第1皮材GにおけるZn含有量は、19.0質量%以下とするのがより好ましく、18.0質量%以下とするのがさらに好ましい。
(第1皮材のSi、Mn)
第1皮材GにおけるSi、Mnは、心材Sへの作用と同様に強度を向上させる効果を有するため、クラッド材1のさらなる高強度化に有効な元素である。さらに、第1皮材GにおけるSi、Mnはいずれも表面に形成する皮膜Fの緻密性を向上させて第1皮材Gの自己消耗をさらに抑制し、耐食性をより一層向上させる効果がある。
しかし、Siはアルミニウム合金の融点を降下させるため、過剰に添加されるとろう付け時に第1皮材Gの溶融を招く。また、Mnは過剰に添加されると粗大な晶出物が析出して、クラッド材1の加工性を低下させる。さらに、SiとMnは双方とも第1皮材Gの腐食電位を貴にするため、SiやMnを第1皮材Gに添加すると、心材Sと第1皮材Gとの電位差が小さくなって、十分な犠牲防食効果が得られない場合が生じる。
これらの悪影響がない範囲であれば、第1皮材GはSiおよびMnを含有させることができる。例えば、第1皮材Gは、さらに、Si含有量を0.10〜1.00質量%、Mn含有量を0.10〜1.00質量%のうちの少なくとも1つの成分を含有させることができる。このようにすると、上述の悪影響を防止しつつ、耐食性向上効果および強度向上効果を得ることができる。
第1皮材GにSi、Mnを含有させる場合は、前記した効果をさらに十分なものとするため、これらの成分の含有量をそれぞれ0.11質量%以上とするのがより好ましく、0.12質量%以上とするのがさらに好ましい。また、第1皮材GにSi、Mnを含有させる場合は、前記した悪影響を減じつつ、前記した効果を得るため、これらの成分の含有量をそれぞれ0.98質量%以下とするのが好ましく、0.95質量%以下とするのがより好ましい。
なお、第1皮材GにおけるSi、Mnは任意成分であるので、前記した効果を得ることを意図しない場合は、それぞれ0.10質量%未満で含有していてもよい。
(第1皮材のFe、Cr、Ni、Zr)
第1皮材GにおけるFe、Cr、Ni、Zrは、いずれも表面に形成するベーマイトとダイアスポアを主体的に含有する皮膜Fを強化して、耐食性を向上させる効果を有する。また、第1皮材GにおけるFe、Cr、Ni、Zrは、いずれもクラッド材1の強度を向上させる効果を有する。これらの効果は、第1皮材Gが、Fe含有量を0.01〜0.30質量%、Cr含有量を0.01〜0.30質量%、Ni含有量を0.01〜0.30質量%、Zr含有量を0.01〜0.30質量%のうちの少なくとも1つの成分を含有していることによって得ることができる。
第1皮材GにFe、Cr、Ni、Zrを含有させる場合は、前記した効果をさらに十分なものとするため、これらの成分の含有量をそれぞれ0.02質量%以上とするのがより好ましく、0.03質量%以上とするのがさらに好ましい。
一方、第1皮材GにおけるFe、Cr、Ni、Zrを過剰に含有させるとクラッド材1の加工性が低下する。このような弊害や影響を減じつつ、前記した効果を得るため、第1皮材GにFe、Cr、Ni、Zrを含有量させる場合は、前記しているようにこれらの成分の含有量をそれぞれ0.30質量%以下とすることが好ましい。第1皮材GにFe、Cr、Ni、Zrを含有させる場合は、前記した弊害や影響をさらに減じつつ、前記した効果を得るため、これらの含有量をそれぞれ0.29質量%以下とするのがより好ましく、0.28質量%以下とするのがさらに好ましい。
なお、第1皮材GにおけるFe、Cr、Ni、Zrは任意成分であるので、前記した効果を得ることを意図しない場合は、それぞれ0.01質量%未満で含有していてもよい。
(第1皮材の残部)
第1皮材Gにおける前記した組成成分以外の残部は、Alおよび不可避的不純物からなる。第1皮材Gにおける不可避不純物としては、例えば、Na、Mg、Ca、Sr、V、B、Ga、In、Cuなどを挙げることができる。これらの不可避不純物は、本発明の効果を妨げない範囲内であれば含有していてもよく、含有量の合計で概ね1.0質量%未満であれば許容される。
(第1皮材の厚さ)
また、クラッド材1では、良好な耐食性、犠牲防食性を確保するため、第1皮材Gの厚さを4μm以上としている。
第1皮材Gの成分は、ろう付け時の加熱で心材Sの合金元素が拡散してくるため、ろう付け後の第1皮材Gの表面には心材Sの合金元素の濃度が高まることになる。このとき、第1皮材Gの厚さが薄くなると、ろう付け後の第1皮材Gの表面で心材Sの合金元素であるCuやSiなどのアルミニウムの電位を貴化させる合金元素の濃度が高くなる。そのため、心材Sと第1皮材Gとの電位差が小さくなり、犠牲防食効果が低下する。従って、クラッド材1における犠牲防食性を確保するため、前記したように、第1皮材Gの厚さを4μm以上としている。第1皮材Gの厚さは5μmとするのがより好ましく、6μmとするのがさらに好ましく、7μm以上とするのがさらにより好ましい。これらのようにすると、犠牲防食性をより十分に確保することができる。
一方、クラッド材1が同じ板厚であれば、第1皮材Gの厚さをより小さくし、心材Sの厚さをより大きくした方が、より高い強度が得られる。よって、クラッド材1の強度向上の観点から、第1皮材Gの厚さは可能な限り小さくすることが好ましい。第1皮材Gの厚さは30μm以下とするのが好ましく、25μm以下とするのがより好ましく、20μm以下とするのがさらに好ましく、18μm以下とするのがさらにより好ましい。
(第1皮材の腐食電位)
第1皮材Gは犠牲防食作用により心材Sの腐食を抑制するものであるため、その腐食電位は心材Sよりも十分に卑であることが好ましい。そのため、本実施形態では前記したように、第1皮材Gは、心材Sよりも腐食電位が100mV以上卑であることが好ましい。つまり、第1皮材Gは、2.0〜20.0質量%のZnを含有するAl−Zn系合金において、心材Sよりも腐食電位が100mV以上卑であるAl合金を用いることが好ましい。このような電位差は、心材Sの合金組成と、第1皮材Gの合金組成とをそれぞれ前記した範囲とすることで得ることができる。第1皮材Gに用いるAl−Zn系合金の腐食電位が心材Sよりも100mV以上卑でない場合には、心材Sに対する犠牲防食効果が不十分となることがあり、孔食発生時に腐食貫通を生じることがある。なお、本明細書における腐食電位とは、酢酸を添加してpHを3.0に調整した室温の5%NaCl水溶液中に浸漬して測定した電位をいう。浸漬時間は、好ましくは10分間である。
(第1皮材の表面に形成されている皮膜)
第1皮材Gの表面に形成されている皮膜Fは、厚さが0.1〜10μmであり、ベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有する。
ベーマイト(α−AlOOH)およびダイアスポア(β−AlOOH)は、両者ともアルミニウムのオキシ水酸化物である。ここで、従来技術により犠牲防食層である第1皮材Gの薄肉化を行った場合、自己消耗によって第1皮材Gが早期に消失し、所望の防食寿命を得ることができない。自己消耗を抑制するためには表面に保護性を有する皮膜(保護性皮膜)を形成することが有効である。しかしながら、保護性皮膜は一般的には腐食電位を貴化するため、第1皮材Gの表面に保護性皮膜を形成した場合には心材Sとの電位差が小さくなって、犠牲防食効果を低下させる。
そこで、本発明者らが鋭意研究した結果、第1皮材Gの表面にベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有する皮膜Fを形成させると、アルミニウム合金基材(第1皮材G)の自己消耗を抑制するが、その腐食電位に及ぼす影響が非常に小さいことが分かった。すなわち、このような態様とすれば、第1皮材Gの表面と心材Sとの電位差は変化しないため、犠牲防食効果を低下させずに、第1皮材Gの早期消耗を抑制できることが分かった。当該知見に基づき、本実施形態に係るクラッド材1では、第1皮材Gの表面にベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有する皮膜Fを形成させることによって、優れた耐食性を得ることができるようにした。ここで、皮膜Fは、ベーマイトとダイアスポアのいずれか一方を含有するものであってもよいし、両方を含有するものであってもよいが、後記する製造方法で製造した場合、ベーマイトの含有比率が高い傾向にある(最大100%)。
なお、第1皮材Gの表面に形成される皮膜Fの厚さが薄すぎると自己消耗抑制効果が不十分となり、所望の防食寿命延長効果を得ることができない。また、当該皮膜Fの厚さが厚すぎると皮膜Fの環境遮断作用が大きくなって、腐食のアノード反応を抑制するためアルミニウム合金基材(第1皮材G)の腐食電位を貴化させてしまう。そのため、第1皮材Gと心材Sとの電位差が小さくなり、犠牲防食効果が不十分となる。このような理由から、第1皮材Gの表面に形成されている皮膜Fの厚さは0.1〜10μmとする。なお、当該皮膜Fの厚さは0.2μm以上とするのが好ましく、0.3μm以上とするのがより好ましい。また、当該皮膜Fの厚さは9μm以下とするのが好ましく、8μm以下とするのがさらに好ましい。
さらに、第1皮材Gの表面に形成される皮膜Fのベーマイトとダイアスポアの含有量の合計が70%を下回り少なくなりすぎると、自己消耗抑制効果が不十分となって、所望の防食寿命延長効果を得ることができない。また、当該皮膜Fにアルミナ(無水のAl23)などが含有されると、皮膜Fの環境遮断作用が大きくなって、腐食のアノード反応を抑制するためアルミニウム合金基材(第1皮材G)の腐食電位を貴化させてしまう。そのため、第1皮材Gと心材Sとの電位差が小さくなり、犠牲防食効果が不十分となる。よって、ベーマイトとダイアスポアの持つ前記した耐食効果を得るためには、当該皮膜Fはオキシ水酸化物をベースとしたもの(主体的に含有するもの)とする。具体的には、皮膜Fはベーマイトとダイアスポアの合計の含有量を70%以上とする必要がある。ベーマイトとダイアスポアの合計の含有量は75%以上とするのが好ましく、80%以上とするのがさらに好ましい。なお、環境遮断性の高いAl23などの酸化物の含有量は10%以下、より好ましくは9%以下、さらに好ましくは8%以下に抑制することが推奨される。
なお、この皮膜Fの残部は、水酸化物、オキシ水酸化物、酸化物のうちの少なくとも1つからなるのが好ましい。つまり、皮膜Fにおけるベーマイトとダイアスポア以外の構成物質は特に制約されないが、例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)(またはアルミニウムの三水和酸化物(Al23・H2O))であるバイヤライト(α−Al(OH)3)やギブサイト(γ−Al(OH)3)が挙げられる。また、第1皮材Gへ合金元素として添加するSiやMnなどの酸化物や水酸化物などが含有されてもよい。また、皮膜Fの残部にZrO2、La23、Al23、Nb25、TiO2、SiO2などが含有されていてもよい。
(皮膜の形成方法)
第1皮材Gの表面の皮膜Fを形成する方法は特に限定されるものではないが、熱湯中への浸漬、水蒸気中での暴露、陽極酸化した後の水和処理、およびベーマイトとダイアスポアを含有する粉末を含む溶媒を塗布して乾燥する処理のうちの少なくとも1つの処理(下記(F1)〜(F4)のうちの少なくとも1つの処理)を行うことで得ることができる。
(F1) 熱湯中に浸漬する方法としては、例えば、処理液として70℃以上(好ましくは80℃以上)100℃程度以下の純水を用いて、心材Sに第1皮材Gをクラッドしてなるクラッド材を数分から60分程度浸漬することが挙げられる。このとき、処理時間が長いほど厚い皮膜Fが形成されるため、処理時間を調整することによって、所望の厚さの皮膜Fを得ることができる。処理液には、濃度0.1〜1.0%のアンモニウム水溶液やトリエタノールアミン水溶液などのアルカリ水溶液を用いることも可能である。
(F2) 水蒸気中に暴露する方法としては、例えば、心材Sに第1皮材Gをクラッドしてなるクラッド材を雰囲気温度100℃程度の飽和水蒸気雰囲気に数分から1日程度曝すことが挙げられる。水蒸気中に暴露する時間が長いほど厚い皮膜Fを形成することができる。従って、処理時間を調整することによって、所望の厚さの皮膜Fを得ることができる。
(F3) 陽極酸化した後の水和処理としては、例えば、心材Sに第1皮材Gをクラッドしてなるクラッド材の第1皮材Gの表面を陽極酸化し、その後、水和処理を施すことによって得ることができる。
(F4) ベーマイトとダイアスポアを含有する粉末を含む溶媒を塗布して乾燥する処理としては、例えば、ベーマイトとダイアスポアを含有する粉末を適当な溶媒に混合し、当該溶媒を、心材Sに第1皮材Gをクラッドしてなるクラッド材の第1皮材Gの表面に塗布して乾燥させることでも得ることができる。乾燥の方法は特に規定されるものではないが、例えば、ドライヤーなどで熱風を吹き付けて乾燥させてもよいし、例えば、温度100〜200℃、好ましくは150℃に保持した熱処理炉に当該溶液を塗布したクラッド材1もしくは熱交換器(図示せず)を挿入して、適当な時間保持して乾燥させることによって、所望の厚さの皮膜Fを得ることができる。なお、皮膜Fの厚さは、ベーマイトとダイアスポアを含有する粉末を含む前記溶媒の塗布量を調整することによって調節することができる。また、皮膜Fのベーマイトとダイアスポアの含有量の調整は、溶媒に添加するこれらの粉末の添加量を調整することによって調節することができる。前記溶媒としては、例えば、アルキルシリケートを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
なお、前記(F1)および(F2)の場合、前記した皮膜Fにおけるベーマイトとダイアスポアの含有量については、例えば、前記した各処理を行う際の処理温度で調整することが可能である。処理温度が低いとベーマイトとダイアスポアが形成され難くなり、バイヤライトが形成される。よって、処理温度はある程度高い方がよい。
形成した皮膜Fにおけるベーマイトとダイアスポアの含有量は、X線回折測定(X-ray Diffraction;XRD)によって確認することが可能である。
皮膜Fの厚さは、皮膜Fを形成した試験片(クラッド材1を切り出した試験片)を樹脂に埋め込み、当該試験片の厚さ方向に対して平行な断面を作製する断面出し加工を行い、当該断面を顕微鏡観察して測定する方法によって測定が可能である。なお、皮膜Fの厚さは、オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy;AES)やグロー放電発光分析法(Glow Discharge Optical Emission Spectroscopy;GDOES)などを用いて、皮膜Fの表面から深さ方向に化学成分を分析し、酸素(O)のプロファイルから計測することも可能である。
(第2実施形態)
図2に示すように、本発明の第2実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材2(以下単に「クラッド材2」という。)は、第1実施形態に係るクラッド材1と同様、心材Sと、心材Sの一方の面にクラッドされた第1皮材Gと、第1皮材Gの表面に形成された皮膜Fと、を有している。そして、クラッド材2はさらに、心材Sの他方の面に第2皮材Rがクラッドされている。
つまり、第2実施形態に係るクラッド材2と、第1実施形態に係るクラッド材1とは、クラッド材2が心材Sの他方の面に第2皮材Rがクラッドされている点で、クラッド材1と相違している。クラッド材2は、このような構成とすることにより、ろう付けを可能としている。
クラッド材2における以下の説明では、クラッド材1と同じ構成については同じ符号を付して表すと共に重複する説明を省略し、相違する構成について述べる。
(第2皮材)
第2皮材Rは、Al−Si系合金からなることにより、クラッド材2におけるろう付け性を担保している。第2皮材Rを構成するAl−Si系合金としては、例えば、4.0〜12.0質量%のSiを含有するAl−Si系合金を用いることができる。第2皮材Rを構成するAl−Si系合金としてより具体的には、JIS Z 3263:2002に規定の4045合金や4343合金などを用いることができる。また、第2皮材Rには、ろう付け後の犠牲防食効果を得るために、例えば、Znを1.0質量%から6.0質量%添加することも可能である。なお、第2皮材Rの厚さは、第1皮材Gと同程度とすることができる。
(第2皮材の残部)
第2皮材Rにおける前記した組成成分以外の残部は、Alおよび不可避不純物からなる。第2皮材Rにおける不可避不純物としては、例えば、Na、Mg、Ca、Sr、V、B、Ga、In、Mn、Fe、Cu、Ni、Cr、Zrなどを挙げることができる。これらの不可避不純物は、本発明の効果を妨げない範囲内であれば含有していてもよく、含有量の合計で概ね1.0質量%未満であれば許容される。
(第2皮材のクラッド率と厚さ)
また、クラッド材2では、耐食性に加えて良好なろう付け性や強度特性を得るため、第2皮材Rのクラッド率が5%以上および当該第2皮材Rの厚さが10μm以上のうちの少なくとも一方を満たすこととしている。第2皮材Rのクラッド率および厚さの両方が前記した数値よりも小さくなると、ろう付け時のろうの溶融量が不足してろう付け不良が発生しやすくなるなどするため、ろう付け性が低下する。なお、第2皮材Rのクラッド率は7%以上とするのが好ましく、9%以上とするのがより好ましい。または、第2皮材Rの厚さは、12μm以上とするのが好ましく、15μm以上とするのがより好ましい。これらのようにすると、ろう付け性をより十分に確保することができる。
一方、クラッド材2の板厚が同じであれば第2皮材Rのクラッド率が低いほど、また厚さが薄いほど、心材Sの厚さを厚くすることができるため、高い強度が得られる。よって、第2皮材Rのクラッド率および厚さは、クラッド材2の強度向上の観点から、可能な限り小さくすることが好ましい。そのような観点から、第2皮材Rのクラッド率は20%以下とするのが好ましく、15%以下とするのがより好ましい。または、第2皮材Rの厚さは40μm以下とするのが好ましく、30μm以下とするのがより好ましい。
なお、第2皮材Rの表面に前記した皮膜Fが形成されていてもよい。
(中間材)
クラッド材2において心材SにMgを含有させた場合、ろう付け時に当該Mgがろう材である第2皮材Rへ拡散し、ろう付け性を低下させることがある。このようなろう付け性の低下を抑制するため、心材Sと第2皮材Rとの間に中間材(図示せず)をクラッドしてもよい。中間材の成分組成としては、例えば、Si:0.3〜2.0質量%、Mn:0.6〜2.0質量%、Cu:0.1〜3.0質量%、Ti:0.05〜0.5質量%、Fe:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金材を例示することができる。中間材における不可避不純物としては、例えば、Na、Ca、Sr、V、Zn、B、Ga、Inなどを挙げることができる。
(第3実施形態)
図3に示すように、本発明の第3実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材3(以下単に「クラッド材3」という。)は、第1実施形態に係るクラッド材1と同様、心材Sと、心材Sの一方の面にクラッドされた第1皮材Gと、第1皮材Gの表面に形成された皮膜Fと、を有している。クラッド材3はさらに、心材Sの他方の面にも前記した第1皮材Gがクラッドされ、さらに、この第1皮材G(心材Sの他方の面にクラッドされた第1皮材G)の表面に前記した皮膜Fが形成されている。
つまり、第3実施形態に係るクラッド材3と、第1実施形態に係るクラッド材1とは、クラッド材3が心材Sの他方の面に第1皮材Gと皮膜Fとを有している点で、クラッド材1と相違している。クラッド材3は、このような構成とすることにより、両面に耐食効果が得られるようにしている。クラッド材3におけるその他の構成は、クラッド材1と同じであるため、その説明を省略する。
(効果などについて)
以上に説明したクラッド材1〜3によれば、心材SのSi、Mn、Cu、Ti、Feを特定の範囲に制御し、第1皮材Gのアルミニウム合金を特定し、さらに犠牲防食性を担保する当該第1皮材Gの表面にベーマイトとダイアスポアの合計を70%以上含有する皮膜Fを形成しているので、薄肉化した場合であっても優れた耐食効果を得ることができる。
クラッド材1〜3によれば、犠牲陽極材である第1皮材Gが薄肉化しても、全面腐食と局部腐食との両方を抑制することができる。そのため、クラッド材1〜3を薄肉化することができ、熱交換器の軽量化、小型化、さらに長寿命化に有効である。また、クラッド材1〜3によれば、優れた耐食性を有する自動車の熱交換器を得ることができる。さらに、クラッド材1〜3をラジエータチューブ材に適用すると、冷却水による内面腐食の問題を解決することができる。
なお、前記した自動車の熱交換器としては、例えば、クラッド材1(2、3)を成形ロールなどにより幅方向に曲折して管内面側に第1皮材Gが配置されるように偏平管状に形成したチューブ材と、チューブ材にろう付けされたフィン材と、チューブ材の両端の開口部に設けられた一対のヘッダパイプと、を有したものを挙げることができる。
また、前記したラジエータチューブ材としては、例えば、クラッド材1(2、3)を成形ロールなどにより幅方向に曲折して管内面側に第1皮材Gが配置されるように偏平管状に形成されたものを挙げることができる。
<アルミニウム合金クラッド材の製造方法>
本実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材の製造方法としては、例えば、クラッド圧延工程と、後処理工程と、を含み、少なくともこれらの工程についてはこの順で行う。本実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材の製造方法は、アルミニウム合金クラッド材を製造する一般的な設備・条件で実施することができる。
(クラッド圧延工程)
クラッド圧延工程は、例えば、前記したアルミニウム合金からなる心材Sと第1皮材Gとを重ね合わせてクラッド圧延を行い、第1皮材Gの厚さが4μm以上となるクラッド材を作製する。
なお、クラッド圧延工程においては、必要に応じて前記したように中間材、第2皮材Rおよび第1皮材Gをクラッドさせることもできる。このようにすると、アルミニウム合金クラッド材2、3などを作製することができる。
心材S、第1皮材G、そして必要に応じて用いる中間材、第2皮材Rは、それぞれの成分組成のアルミニウム合金を溶解、鋳造し、さらに必要に応じて均質化熱処理して、それぞれの鋳塊を得た後、圧延(熱間圧延、冷間圧延)または切断により、それぞれ所定厚さの板材とすることによって得ることができる。
クラッド圧延は、それぞれの板材を、例えば、
第1皮材G/心材S(図1のクラッド材1参照)、
第1皮材G/心材S/第2皮材R(図2のクラッド材2参照)、
第1皮材G/心材S/中間材/第2皮材R(図示せず)、または、
第1皮材G/心材S/第1皮材G(図3のクラッド材3参照)
の順に、且つ、所定のクラッド率になるように重ね合わせるとよい。
次いで、熱間圧延により圧着して一体の板材とし、さらに所定の最終板厚となるまで冷間圧延を行う。ここで、前記した冷間圧延において、必要に応じて中間焼鈍を行ってもよい。なお、ここまでのクラッド材を製造する方法は前記した例に限定されず、公知のクラッド材の製造方法によって製造することができる。
(後処理工程)
後処理工程における処理は、下記(1)と(2)のどちらを採用してもよい。
(1) 後処理工程における処理としては、例えば、クラッド圧延工程で作製したクラッド材を用いて熱交換器または熱交換器用構造材(例えば、ラジエータチューブ材)を作製する。そして、この後に、前記した(F1)〜(F4)のうちの少なくとも1つの処理を行う。つまり、熱湯中への浸漬、水蒸気中での暴露、陽極酸化した後の水和処理、およびベーマイトとダイアスポアを含有する粉末を含む溶媒を塗布して乾燥する処理のうちの少なくとも1つの処理を行う。これにより、第1皮材Gの表面に厚さが0.1〜10μmであり、ベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有する皮膜Fを形成することができる。
(2) または、後処理工程における処理としては、例えば、クラッド圧延工程で作製したクラッド材に対し、前記した(F1)〜(F4)の少なくとも1つの処理を行う。つまり、熱湯中への浸漬、水蒸気中での暴露、陽極酸化した後の水和処理、およびベーマイトとダイアスポアを含有する粉末を含む溶媒を塗布して乾燥する処理のうちの少なくとも1つの処理を行う。これによっても、第1皮材Gの表面に厚さが0.1〜10μmであり、ベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有する皮膜Fを形成することができる。そして、この後に、熱交換器または熱交換器用構造材(例えば、ラジエータチューブ材)を作製することが挙げられる。
このような後処理工程を行うことによって、第1皮材Gの表面に皮膜Fが形成されたクラッド材1を製造することができる。そして、このような後処理工程を行って形成される皮膜Fは略全てがオキシ水酸化物皮膜(ベーマイトとダイアスポアを合計で70質量%以上含有する皮膜)となる。従って、このような表面処理を行ったクラッド材1〜3は、薄肉化した場合であっても、高耐食性を維持することができる。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と比較して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(供試材の作製)
表1、表2および表3はそれぞれ心材S、第1皮材Gおよび第2皮材Rに用いたアルミニウム合金の成分組成を示す。ここで、表1〜3中の数値は含有量(質量%)を示している。なお、表1〜3の各成分組成には、表中に示す成分以外にも残部としてAlおよび不可避不純物を含んでいるが、これらは表中に表していない。また、表1〜3における「−」は該当する元素を添加していないことを示している。表1、2中の下線は、本発明の要件を満たさないことを示している。
表1から表3に示す各アルミニウム合金を溶解、鋳造し、常法によりそれぞれの合金を熱間、冷間にて所定の厚さに圧延し、心材S、第1皮材Gおよび第2皮材Rの各アルミニウム合金板を得た。
そして、これらを表4に示す組合せで重ね合せ、熱間圧延、焼鈍、冷間圧延を施し、板厚0.3mm(300μm)のNo.1〜55に係るアルミニウム合金クラッド材(クラッド材)を作製した。なお、表4の第2皮材Rに関する「−」は、該当する第2皮材Rを形成していないことを示しており、皮膜Fの残部に関する「−」は、残部の成分を含有していないことを示している。また、表4中の下線は、本発明の要件を満たさないことを示している。
なお、No.43、44に係るクラッド材は、心材Sの他方の面に第2皮材Rを設けなかった例であり、No.45、46に係るクラッド材は、心材Sの他方の面に第2皮材Rを設ける替わりに、心材Sの両方の面に第1皮材Gを設けた例である。
得られたNo.1〜55に係るクラッド材に、ろう付け条件に相当する600℃で3分間の加熱処理を施し、供試材とした。
加熱処理後のクラッド材(供試材)から、大きさ60mm×50mmの試験片を切り出してアセトンで洗浄し、乾燥させた後、試験片の質量を測定してこれを初期質量とした。
その後、次のようにして試験片の第1皮材Gの表面に皮膜Fを形成させた。まず、ベーマイト、ダイアスポア、およびその他の酸化物もしくは水酸化物の粉末を表4の配合で混合し、アルキルシリケートを溶媒として混合したものを処理液として用いて、スプレー塗布により試験片の第1皮材Gの表面に塗布した。その後、温度150℃に保持した大気加熱炉にて10分間加熱し、乾燥させて皮膜Fを得た。皮膜Fのベーマイトとダイアスポアの含有量(%)の調整は、処理液中に添加する粉末の添加量により調整した。なお、皮膜Fのベーマイトとダイアスポアの含有量は、皮膜Fにおける平均組成で表している。皮膜Fの厚さ(μm)は処理液の塗布量により調整した。なお、形成した皮膜Fにおけるベーマイトとダイアスポアの含有量をX線回折測定(XRD)で確認したところ、表4に示す含有量と同様の結果が得られた。
(心材および第1皮材の腐食電位の測定)
心材Sおよび第1皮材Gの素材について、以下に示す方法で腐食電位を測定した。まず、上記で得られたクラッドする前のそれぞれのアルミニウム合金板から大きさ20×20mmの試験片を切り出し、当該試験片の一方の面をエメリー紙で#600まで研磨し、水洗およびアセトン洗浄を施した。その後、試験片を乾燥させて、研磨した面に大きさ10×10mmの電極部を残し、それ以外をフッ素樹脂製のテープでマスキングした。この試験片を、酢酸を添加してpHを3.0に調整した室温の5%NaCl水溶液中に浸漬し、10分後の電位を腐食電位として読み取った。腐食電位の測定結果(Ecorr(mV))は表1および表2に示す通りである。また、心材Sと第1皮材Gの腐食電位の電位差(mV)を表4に示した。
(皮膜の厚さの測定)
皮膜Fを形成した供試材から切り出した任意の大きさの試験片を樹脂に埋め込み、当該試験片の厚さ方向に対して平行な断面を作製する断面出し加工を行い、当該断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)で観察し、当該皮膜Fの厚さを測定した。観察された皮膜Fの厚さ(μm)は表4に示す通りである。
(腐食試験)
自動車のラジエータ内面環境での腐食特性を評価するための腐食試験として、冷却水を模擬した試験溶液に供試材を浸漬して温度サイクルを与えた。腐食試験は、具体的には次のようにして行った。
No.1〜55に係る供試材(前記した大きさ60mm×50mmの試験片)をアセトンで洗浄し、第1皮材G側の表面の中央の50mm×40mmを試験面とするための処理を行った。すなわち、供試材における試験面以外の表面、具体的には、第1皮材G側の表面における端から5mmの領域、当該第1皮材Gの反対側の表面および端面をフッ素樹脂製のテープで被覆して、腐食試験用の試験片とした。なお、この試験片は、表4のNo.1〜55に係るクラッド材について、それぞれ5枚ずつ作製し、腐食試験を実施した。
試験溶液は、OY水(Cl-:195ppm、SO4 2-:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppm、pH:3.0)を使用した。
温度サイクルは、試験溶液を室温から1時間で88℃まで加熱し、この88℃で7時間保持した後、室温まで1時間で冷却し、この室温にて15時間保持するのを1日1サイクルとした。試験期間は3ヶ月間とした。
(耐全面腐食性(腐食減量)および耐局部腐食性(腐食深さ))
耐全面腐食性および耐局部腐食性を評価するため、次のような方法で腐食減量および最大腐食深さを求めた。腐食試験後にそれぞれの試験片を硝酸に浸漬して表面の腐食生成物および皮膜Fを除去し、水洗およびアセトン洗浄を施して乾燥させた後、質量を測定し、これを腐食試験後の質量とした。このようにして求めた腐食試験後の質量と皮膜形成前の試験片の質量(初期質量)との差異を求めて、これを腐食減量とした。腐食減量は、それぞれのクラッド材について、5枚の試験片の質量変化の平均値とした。なお、以下では、各試験片の腐食減量は、皮膜Fの厚さが最も薄い(皮膜Fの厚さ:0.04μm)No.1に係るクラッド材の腐食減量を100とした場合の相対値で示した。
また、試験片の表面からの光学顕微鏡観察を行い、焦点深度法による腐食深さ測定を実施した。最大腐食深さは、5枚の試験片の試験面(第1皮材G側の表面)における腐食深さの最大値とした。耐全面腐食性および耐局部腐食性の評価基準は下記の通りである。
(耐全面腐食性の評価基準)
A:腐食減量が50未満
B:腐食減量が50以上60未満
C:腐食減量が60以上70未満
D:腐食減量が70以上100未満
E:腐食減量が100以上
(耐局部腐食性の評価基準)
A:最大腐食深さが第1皮材Gの厚さ以下
B:最大腐食深さが第1皮材Gの厚さ+20μm以下
C:最大腐食深さが第1皮材Gの厚さ+20μmを超える(貫通腐食を含む)
(腐食試験結果の総合判定)
腐食試験で得られた腐食減量および最大腐食深さは表5に示す通りである。表5において、総合判定は、耐全面腐食性および耐局部腐食性の評価結果をもとに、(優れる)◎◎、◎、○、×(劣る)の4段階で示した。
(総合判定の評価基準)
◎◎:腐食減量が50未満、且つ、最大腐食深さが第1皮材Gの厚さ以下
◎:腐食減量が50以上60未満、且つ、最大腐食深さが第1皮材Gの厚さ+20μm以下、または、腐食減量が50以上60未満、且つ、最大腐食深さが第1皮材Gの厚さ以下
○:腐食減量が60以上70未満、且つ、最大腐食深さが第1皮材Gの厚さ+20μm以下
×:腐食減量が70以上、または、最大腐食深さが第1皮材Gの厚さ+20μmを超える
Figure 2018053279
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表1〜4に示すように、No.1〜8に係る供試材は本発明のいずれかの要件を満たさないものである。そのため、表5に示すように、No.1〜8に係る供試材は、腐食減量がいずれも70以上となり、最大腐食深さが第1皮材Gの厚さ+20μmを超えていた(貫通腐食となった)。つまり、No.1〜8に係る供試材は、耐全面腐食性が不十分であり、また、孔食による板の腐食貫通を抑止できなかった(いずれも比較例)。具体的に説明すると、No.1〜8に係る供試材は以下のようになった。
No.1に係る供試材は、第1皮材Gの表面に形成された皮膜Fの厚さが薄すぎた。そのため、No.1に係る供試材は、自己消耗抑制効果が不十分となり、所望の防食寿命延長効果が得られなかった。その結果、No.1に係る供試材は、犠牲防食作用を有する第1皮材Gの腐食消耗が顕著となり、早期に第1皮材Gの犠牲防食効果が消失して貫通腐食に至った。
No.2に係る供試材は、第1皮材Gの表面に形成された皮膜Fの厚さが厚すぎた。そのため、No.2に係る供試材は、第1皮材Gの表面の腐食電位が貴化し、心材Sに対する犠牲防食効果が不十分となって貫通腐食に至った。
No.3に係る供試材は、第1皮材Gの表面に形成された皮膜Fのベーマイトとダイアスポアとを合計した含有量が少なすぎた。そのため、No.3に係る供試材は、第1皮材Gの自己消耗抑制効果が不十分となり、所望の防食寿命延長効果が得られなかった。また、No.3に係る供試材は、第1皮材Gの表面電位が貴化し、心材Sに対する犠牲防食効果が不十分となり、貫通腐食に至った。
No.4〜6に係る供試材は、それぞれ心材SのCu、Ti、Feの含有量が要件を満たさないものである(それぞれ、表1のS1〜S3参照)。
No.4に係る供試材は、心材SのCu含有量が少なすぎた。そのため、心材SのCuによる心材Sの電位貴化作用が十分でなく、心材Sと第1皮材Gの腐食電位の電位差が100mVを下回った。そのため、No.4に係るクラッド材は、表面から孔食が発生して心材Sが露出した場合に、犠牲防食効果が不十分となって貫通腐食に至った。
また、No.5に係る供試材は、心材SのTi含有量が少なすぎたため、Tiの腐食進展に対する抑制効果が不十分であり、貫通腐食を抑止できなかった。
そして、No.6に係る供試材は、心材SのFe含有量が少なすぎたため、Feによる局部腐食の進展抑制効果が得られなかった。そのため、No.6に係る供試材は、貫通腐食に至った。
No.7に係る供試材は、第1皮材GのZn含有量が少なすぎた(表2のG1参照)。そのため、心材Sと第1皮材Gの腐食電位の電位差が100mVを下回った。その結果、第1皮材Gの表面の腐食電位が貴となって、孔食により心材Sが露出した。従って、No.7に係る供試材は、心材Sと第1皮材Gとの電位差が小さくなり、犠牲防食効果が不十分となって貫通腐食に至った。
No.8に係る供試材は、第1皮材Gの厚さが薄すぎたので、ろう付け相当加熱処理後における第1皮材Gの表面に残存するZn量が少なくなると共に、心材Sの合金元素であるCuやSiなどのアルミニウムの電位を貴化させる合金元素の濃度が高くなった。そのため、No.8に係る供試材は、第1皮材Gの表面電位が貴となって、孔食により心材Sが露出した。その結果、No.8に係る供試材は、犠牲防食効果が不十分となって貫通腐食に至った。
前記した比較例に対して、本発明の要件を満たすNo.9〜55に係る供試材はいずれも、腐食減量は70未満と十分な耐全面腐食性が得られ、且つ、孔食による板の貫通も発生せず、優れた耐局部腐食性を発揮した(いずれも実施例)。これらの効果は、第1皮材Gの表面にベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有する皮膜Fが形成されたことによって耐全面腐食性が得られ、これにより犠牲防食効果を有する第1皮材Gの消耗が抑制された結果、犠牲防食効果が継続維持されたために得られたものである。
特に、第1皮材Gに、Znに加えてSiおよびMnのうちの少なくとも1つの成分を添加したか、または、Fe、Cr、Ni、Zrのうちの少なくとも1つの成分を添加したNo.14〜23、34〜38、44、45に係る供試材(表2のG3〜G12参照)は、腐食減量が60未満と耐全面腐食性がより向上する結果が得られており、耐食性向上効果が大きい。この効果は、第1皮材Gに含有されているSiやMnが皮膜Fの緻密性を向上させ、当該第1皮材Gの自己消耗をより大きく抑制したために得られたものである。また、この効果は、第1皮材Gに含有されているFe、Cr、NiやZrが、皮膜Fを強化して耐食性を向上させたために得られたものである。
さらに、第1皮材Gに、Znに加えてSiおよびMnのうちの少なくとも1つの成分と、Fe、Cr、Ni、Zrのうちの少なくとも1つの成分とを併せて添加したNo.24〜29、39〜41、46〜52、54、55に係る供試材(表2のG13〜G19参照)は、腐食減量が50未満と耐全面腐食性がさらに向上する結果が得られており、耐食性向上効果がさらに大きい。この効果は、第1皮材Gに含有されているSiやMnと、Fe、Cr、NiやZrとの相乗効果が得られたことによる。
また、心材SにMg、Cr、Ni、Zrうちの少なくとも1つの成分を添加したNo.30〜41、46〜52、54、55に係る供試材(表1のS9〜S21、S23参照)は、最大腐食深さが第1皮材Gの厚さと同じか、最大腐食深さの方が深かったとしても極わずかであり、耐局部腐食性がさらに向上する結果となった。つまり、これらは耐食性向上効果が大きい結果となった。この効果は、心材Sに含有されているMg、Cr、Ni、Zrによる心材Sの腐食抑制効果が得られたことにも起因している。なお、No.34〜41、46〜52、54、55に係る供試材は、第1皮材GにSi、Mn、Fe、Cr、Ni、Zrなどが含有されていたため、より良好な結果が得られる傾向にあった。
なお、No.43、44に係る供試材は、心材Sと、心材Sの一方の面にクラッドされた第1皮材Gと、第1皮材Gの表面に形成された皮膜Fと、を有する第1実施形態(図1参照)に係るクラッド材1の実施例である。
クラッド材1に係るこれらの実施例はいずれも、本発明の要件を満たし、腐食減量は70未満と十分な耐全面腐食性が得られ、且つ、孔食による板の貫通も発生せず、優れた耐極部腐食性を発揮した。
また、No.9〜42、47〜55に係る供試材は、心材Sと、心材Sの一方の面にクラッドされた第1皮材Gと、第1皮材Gの表面に形成された皮膜Fとを有し、さらに心材2の他方の面にクラッドされた第2皮材Rを有する第2実施形態(図2参照)に係るクラッド材2の実施例である。
クラッド材2に係るこれらの実施例はいずれも、本発明の要件を満たし、腐食減量は70未満と十分な耐全面腐食性が得られ、且つ、孔食による板の貫通も発生せず、優れた耐極部腐食性を発揮した。
さらに、No.45、46に係る供試材は、心材Sと、心材Sの一方の面にクラッドされた第1皮材Gと、第1皮材Gの表面に形成された皮膜Fとを有し、さらに心材Sの他方の面にクラッドされた第1皮材Gを有し、この第1皮材Gの表面に皮膜Fが形成されている第3実施形態(図3参照)に係るクラッド材3の実施例である。
クラッド材3に係るこれらの実施例はいずれも、本発明の要件を満たし、腐食減量は70未満と十分な耐全面腐食性が得られ、且つ、孔食による板の貫通も発生せず、優れた耐極部腐食性を発揮した。
1〜3 アルミニウム合金クラッド材(クラッド材)
S 心材
G 第1皮材
F 皮膜
R 第2皮材

Claims (9)

  1. 心材と、当該心材の一方の面にクラッドされた第1皮材と、当該第1皮材の表面に形成された皮膜と、を有するアルミニウム合金クラッド材であって、
    前記心材は、
    Si:0.30〜1.50質量%、
    Mn:0.60〜2.00質量%、
    Cu:0.10〜3.00質量%、
    Ti:0.05〜0.50質量%、
    Fe:0.01〜0.50質量%を含有し、
    残部がAlおよび不可避不純物であるアルミニウム合金からなり、
    前記第1皮材は、2.0〜20.0質量%のZnを含有するAl−Zn系合金からなるとともに、厚さが4μm以上であり、且つ、
    前記皮膜は、厚さが0.1〜10μmであり、ベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有する
    ことを特徴とするアルミニウム合金クラッド材。
  2. 前記心材の他方の面に、Al−Si系合金からなるとともに、クラッド率が5%以上および厚さが10μm以上のうちの少なくとも一方を満たす第2皮材がクラッドされていることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金クラッド材。
  3. 前記心材の他方の面にも前記第1皮材がクラッドされ、さらに、当該第1皮材の表面に前記皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金クラッド材。
  4. 前記第1皮材が、Si:0.10〜1.00質量%、Mn:0.10〜1.00質量%のうちの少なくとも1つの成分を含有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金クラッド材。
  5. 前記第1皮材が、Fe:0.01〜0.30質量%、Cr:0.01〜0.30質量%、Ni:0.01〜0.30質量%、Zr:0.01〜0.30質量%のうちの少なくとも1つの成分を含有していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金クラッド材。
  6. 前記心材が、Mg:0.01〜1.00質量%、Cr:0.01〜0.30質量%、Ni:0.01〜0.30質量%、Zr:0.01〜0.30質量%のうちの少なくとも1つの成分を含有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金クラッド材。
  7. 自動車の熱交換器に使用されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金クラッド材。
  8. 自動車のろう付け型ラジエータチューブ材に使用されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金クラッド材。
  9. 請求項1に記載されているアルミニウム合金からなる心材と、請求項1に記載されているAl−Zn系合金からなる第1皮材と、を重ね合わせてクラッド圧延を行い、前記第1皮材の厚さが4μm以上となるクラッド材を作製するクラッド圧延工程と、
    前記クラッド材を用いて熱交換器または熱交換器用構造材を作製した後に、熱湯中への浸漬、水蒸気中での暴露、陽極酸化した後の水和処理、およびベーマイトとダイアスポアを含有する粉末を含む溶媒を塗布して乾燥する処理のうちの少なくとも1つの処理を行い、前記第1皮材の表面に厚さが0.1〜10μmであり、ベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有する皮膜を形成するか、または、前記クラッド材に対し、熱湯中への浸漬、水蒸気中での暴露、陽極酸化した後の水和処理、およびベーマイトとダイアスポアを含有する粉末を含む溶媒を塗布して乾燥する処理のうちの少なくとも1つの処理を行い、前記第1皮材の表面に厚さが0.1〜10μmであり、ベーマイトとダイアスポアを合計で70%以上含有する皮膜を形成した後に、熱交換器または熱交換器用構造材を作製する後処理工程と、
    を含んでいることを特徴とするアルミニウム合金クラッド材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2021085091A (ja) * 2019-11-29 2021-06-03 三菱アルミニウム株式会社 親水性皮膜およびプレコートフィン
CN114008235A (zh) * 2020-02-05 2022-02-01 学校法人芝浦工业大学 紧固构件及其制造方法

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