JP2011085290A - 熱交換器、ならびに、当該熱交換器用管材及びフィン材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Al合金からなる心材と前記心材の外面にAl又はAl合金からなるクラッド層とを備える管材と、Al合金からなるフィン材とを拡管接合した熱交換器であって、前記芯材より前記クラッド層の孔食電位が卑であり、かつ、前記フィン材が管材のクラッド層よりも孔食電位が卑であることを特徴とする熱交換器、ならびに、当該熱交換器用管材及びフィン材。
【選択図】なし
Description
本発明に係る管材は、Al合金からなる芯材と、その外面に芯材よりも孔食電位の卑なAl又はAl合金のクラッド層とを備える。管材としては、押出し管が好適に用いられる。
本発明に係る管材における芯材のSi含有量は、0.2〜1.0mass%の範囲が望ましい。Siは、マトリックスに固溶したり金属間化合物を生成することによって、強度を向上させる元素である。さらに、Siの添加は芯材の電位を貴にして、芯材とクラッド層との電位差を大きくし、管材の耐久寿命を向上させる。このようなSi添加効果を得るためには、0.2mass%以上のSiの含有量とするのが望ましい。一方、過剰にSiが含有すると、単独で晶出したSiにより耐食性を低下させるおそれがある。この過剰なSiの含有による悪影響を回避するために、Si量の上限は1.0mass%とするのが望ましい。Siの含有量は0.3〜0.6mass%が更に望ましい。
本発明に用いる管材外面には、管材の芯材よりも孔食電位の卑な純Al又はAl合金をクラッドしたクラッド層が設けられる。クラッド層の純Al又はAl合金は、管材の芯材よりも孔食電位が卑であるため犠牲防食作用によって管材の芯材を防食し、管材の耐久寿命を向上させることができる。
管材は以下のようにして作製される。まず、円筒状の芯材の外面にクラッド層となる皮材スリーブを被せて、組み合わせビレットを作製する。所望のクラッド層厚さになるように、皮材スリーブの厚さを選定する。次いで、組み合わせビレットを加熱炉で350℃〜600℃に均熱する。次いで、組み合わせビレットをダイスとラムノーズ間に狭持してコンテナ内に挿入し、ダイスとラムノーズを固定した状態で芯材内径より大きな外径をもつマンドレルを圧入し、芯材の内径を拡管して芯材と皮材間の空気を追い出す。更に、マンドレルを所定の位置に固定して、ホローシステムを前進させダイスを通して組み合わせビレットを押し出し、継ぎ目無しの中空管材とするものである。最後に、抽伸工程を経て所定の外径と内径を有するクラッド管を作製する。
これに代わって、押し出し成形によって芯材管を作製し、その外面にクラッド層を溶射によって形成してもよい。
本発明に係るフィン材の孔食電位は、管材外面のクラッド層の孔食電位よりも卑とされる。フィン材は、管材外面のクラッド層よりも孔食電位が卑であるため犠牲防食作用によって管材外面のクラッド層及び芯材を防食し、管材の耐久寿命を向上させることができる。Znは孔食電位を卑にする働きがあり、管材外面のクラッド層との孔食電位差が大きくなり、犠牲防食作用を高める。この効果を得るためには、Zn量を0.3mass%以上とするのが望ましい。一方、Zn量が3.0mass%を超えると腐食速度が増大し、犠牲防食層の耐食性が劣化してしまうため、Znの上限は3.0mass%とするのが望ましい。Znの含有量は0.5〜2.0mass%が更に望ましい。
フィン材は、上記素材を用いて通常の半連続鋳造を行い、400〜600℃の温度で1〜10時間予備加熱を行い、熱間圧延を行なう。その後、冷間圧延によって所定の板厚まで圧延される。冷間圧延の途中又は冷間圧延後において、1〜2回程度の焼鈍工程を経ても良い。焼鈍工程は、通常はバッチ式の炉を用いて200〜500℃において1〜10時間の条件で行なわれるか、連続式の炉を用いて200〜500℃で行なわれる。これをプレス加工してフィン材を作製する。
本発明におけるフィン材は、プレコーティングされた有機系又は無機系の親水性皮膜を表面に有することが望ましい。ルームエアコンの冷房運転時にフィン材表面に水滴が付着しフィン材間にブリッジが形成されると、フィン材間を通過する空気等の気体の抵抗が増大し冷却効率が低下する。親水性皮膜をプレコーティングすることによって、フィン材表面の接触角を非常に小さくし、水膜として流下させ水滴形成を防ぎ冷却効率の低下を防止できる。有機系又は無機系の親水性皮膜は、例えば有機系塗料又は無機系塗料を塗布しこれを乾燥することによって形成することができる。
本発明に係る熱交換器は、上述の管材とフィン材とを接合することによって得られる。フィン材は打ち抜き加工、バーリング加工、チューブ挿入を行い、管材とフィン材と組み合わせて、たとえば、拡管用の治具を管材内部に押し込み、液圧拡管によって管材径を広げフィンと密着させ接合する。
表1に、本発明に係る管材を用いた熱交換器の成分を示す。フィン材の成分及び親水性皮膜についても併せて示す。管材のクラッド層は純Al又はAl−Zn合金であり、表1に示す成分の他に不可避不純物を含有する。管材の芯材も、表1に示す成分を含有するAl合金である。フィン材は、表1に示す成分を含有するAl−Zn合金である。
上記のようにして作製した熱交換器ミニコアの各部位の自然電位を測定した。測定方法は、ASTM G69に準じて行った。溶液は、5%NaClに酸化剤として1M H2O2が含まれているために、この際に測定される自然電位は孔食電位とほぼ同じ値を示すと考えられる。結果を表2に示す。
作製した熱交換器ミニコアを用い、JIS H8601に準じるCASS試験を2000時間行なった。試験後、コアのフィンを除去し、チューブに付着した腐食生成物を濃硝酸とリン酸−クロム酸混液で除去した後に、フィン下の管の腐食深さを焦点深度法にて測定した。結果を表4に示す。腐食深さが0.40mm未満のものを合格とし、0.40mm以上を不合格とした。
比較例2では、管材のクラッド層よりもフィン材の自然電位の方が貴であるため腐食深さが深く、管材の耐腐食性に劣った。
比較例3では、芯材のSi含有量が少な過ぎたために、芯材とクラッド層との電位差が小さくなり過ぎた。その結果、腐食深さが深く、管材の耐腐食性に劣った。
比較例4では、芯材のSi含有量が多過ぎたために、多量のSiが晶出した。その結果、腐食深さが深く、管材の耐腐食性に劣った。
比較例5では、芯材のFe含有量が多過ぎたために、多量のFe系金属間化合物が晶出した。その結果、腐食深さが深く、管材の耐腐食性に劣った。
比較例6では、芯材のCu含有量が少な過ぎたために、芯材とクラッド層との電位差が小さ過ぎた。その結果、腐食深さが深く、管材の耐腐食性に劣った。
比較例7では、芯材のCu含有量が多過ぎたために、多量のCu系金属間化合物が析出した。その結果、腐食深さが深く、管材の耐腐食性に劣った。
比較例8では、芯材のMn含有量が少な過ぎたために、Feの耐食性阻害効果の抑制が十分でなかった。その結果、腐食深さが深く、管材の耐腐食性に劣った。
比較例9では、芯材のMn含有量が多過ぎたために、多量のMn系金属間化合物が析出した。その結果、腐食深さが深く、管材の耐腐食性に劣った。
表5に、本発明に係るフィン材を用いた熱交換器の成分を示す。管材の成分についても併せて示す。
比較例11では、管材のクラッド層よりもフィン材の自然電位の方が貴であるため腐食深さが深く、管材の耐腐食性に劣った。
比較例12では、フィン材のZn含有量が少な過ぎたために、犠牲防食効果が不十分となった。その結果、腐食深さが深く、管材の耐腐食性に劣った。
比較例13では、フィン材のZn含有量が多過ぎたために、腐食速度が増大した。その結果、腐食深さが深く、管材の耐腐食性に劣った。
Claims (7)
- Al合金からなる心材と当該心材の外面にAl又はAl合金からなるクラッド層とを備える管材と、Al合金からなるフィン材とを拡管接合した熱交換器であって、
前記芯材より前記クラッド層の孔食電位が卑であり、かつ、前記フィン材が管材のクラッド層よりも孔食電位が卑であることを特徴とする熱交換器。 - 請求項1に記載の熱交換器に用いる管材において、前記芯材がSi0.2〜1.0mass%、Cu0.05〜0.7mass%、Mn0.3〜1.5mass%、Fe0.7mass%以下及び残部不可避不純物を含むAl合金からなる熱交換器用管材。
- 前記クラッド層が純度99.0mass%以上の純Alからなる、請求項2に記載の熱交換器用管材。
- 前記クラッド層がZn0.2〜2.5mass%と残部不可避不純物を含むAl−Zn合金からなる、請求項2に記載の熱交換器用管材。
- 請求項1に記載の熱交換器に用いるフィン材において、当該フィン材がZn0.3〜3.0mass%と残部不可避不純物を含むAl−Zn合金からなる熱交換器用フィン材。
- 前記フィン材がプレコーティングされた有機系親水性皮膜を表面に有する、請求項5に記載の熱交換器用フィン材。
- 前記フィン材がプレコーティングされた無機系親水性皮膜を表面に有する、請求項5に記載の熱交換器用フィン材。
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