本説明は、添付の図面に照らして、以下の詳細な説明からよりよく理解されるであろう。
図1は、3S, 3'Sアスタキサンチン(一番上のパネル)、3R, 3'Rアスタキサンチン(中央のパネル)、及び3R, 3'Sアスタキサンチン(一番下のパネル)の化学構造をそれぞれ示す図面である。
図2a及び2bは、カロテノイド生合成経路を示す模式図である。
図3a及び3bは、3S, 3'Sアスタキサンチンのデザイナー生合成経路を示す模式図である。
図4aは、本開示の一例にしたがう、HMG−CoAレダクターゼの保存領域を示す配列アライメントデータであり、触媒ドメイン1〜6が下線でマークされており、7208はKluveromyces marxianusに由来するHMG−CoAレダクターゼを表し、P12683はSaccharomyces cerevisiaeに由来するHMG−CoAレダクターゼを表し、ACN40476はPicea sitchensisに由来するHMG−CoAレダクターゼを表し、XP_001211323はAspergillus terreusに由来するHMG−CoAレダクターゼを表し、ABY84848はGanoderma lucidumに由来するHMG−CoAレダクターゼを表す。
図4bは、本開示の一例にしたがう、HMG−CoAレダクターゼの触媒ドメイン1〜6内の保存残基を示す模式図であり、保存残基が下線でハイライトされている。
図5aは、本開示の別の例にしたがう、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)シンターゼの保存領域を示す配列アライメントデータであり、触媒ドメイン1〜2が下線でマークされており、AAY33921はXanthophyllomyces dendrorhousに由来するGGPPシンターゼを表し、NP_624521はStreptomyces coelicolorに由来するGGPPシンターゼを表し、BAB99565はCorynebacterium glutamicumに由来するGGPPシンターゼを表し、ZP_00056752はThermobifida fuscaに由来するGGPPシンターゼを表し、NP_696587はBifidobacterium longumに由来するGGPPシンターゼを表す。
図5bは、本開示の別の例にしたがう、GGPPシンターゼの触媒ドメイン1〜2内の保存残基を示す模式図であり、保存残基が下線でハイライトされている。
図6は、本開示の一例にしたがう、3つの遺伝子カセットを含む組換えポリヌクレオチド配列(crtE−Kan−tHMG1と略する)を含む遺伝子改変株Xd3.0を示す模式図である。
図7aは、本開示の一例にしたがう、リコペンシクラーゼドメインの保存領域を示す配列アライメントデータであり、触媒ドメイン1〜2が下線でマークされており、CAB51949はXanthophyllomyces dendrorhousに由来するリコペンシクラーゼを表し、XP_762434はUstilago maydis 521に由来するリコペンシクラーゼを表し、NP_344223はSulfolobus solfataricus P2に由来するリコペンシクラーゼを表し、YP_024312はPicrophilus torridus DSM 9790に由来するリコペンシクラーゼを表す。
図7bは、本開示の一例にしたがう、リコペンシクラーゼドメインの触媒ドメイン1〜2内の保存残基を示す模式図であり、保存残基が下線でハイライトされている。
図7cは、本開示の一例にしたがう、トランス−イソプレニル二リン酸シンターゼの保存領域を示す配列アライメントデータであり、触媒ドメイン1〜2が下線でマークされており、CAB51949はXanthophyllomyces dendrorhousに由来するトランス−イソプレニル二リン酸シンターゼを表し、NP_279693はHalobacterium sp. NRC−1に由来するトランス−イソプレニル二リン酸シンターゼを表し、NP_681887はThermosynechococcus elongatus BP−1に由来するトランス−イソプレニル二リン酸シンターゼを表し、ZP_00089878はAzotobacter vinelandiiに由来するトランス−イソプレニル二リン酸シンターゼを表す。
図7dは、本開示の一例にしたがう、トランス−イソプレニル二リン酸シンターゼの触媒ドメイン1〜2内の保存残基を示す模式図であり、保存残基が下線でハイライトされている。
図8aは、本開示の別の例にしたがう、フィトエンデサチュラーゼの保存領域を示す配列アライメントデータであり、NAD(P)結合ロスマン様ドメインが下線でマークされており、AAO53257はXanthophyllomycesene desaturaに由来するフィトエンデサチュラーゼを表し、CAE07416はSynechococcus sp. WH 8102に由来するフィトエンデサチュラーゼを表し、BAA10798はSynechocystis sp. PCC 6803に由来するフィトエンデサチュラーゼを表し、BAB73763はNostoc sp. PCC 7120に由来するフィトエンデサチュラーゼを表し、AAL91366はSolanum lycopersicumに由来するフィトエンデサチュラーゼを表す。
図8bは、本開示の別の例にしたがう、フィトエンデサチュラーゼのNAD(P)結合ロスマン様ドメイン内の保存残基を示す模式図であり、保存残基が下線でハイライトされている。
図9は、本開示の一例にしたがう、5つの遺伝子カセットを含む組換えポリヌクレオチド配列(crtI−crtE−Kan−crtYB−tHMG1と略する)を含む遺伝子改変株Xd5.0を示す模式図である。
図10a及び10bは、本開示の別の例にしたがう、β−カロチンオキシゲナーゼの保存領域を示す配列アライメントデータであり、触媒ドメイン1〜3が下線でマークされており、AAY33921はXanthophyllomyces dendrorhousに由来するβ−カロチンオキシゲナーゼを表し、Q08477はHomo sapiensに由来するβ−カロチンオキシゲナーゼを表し、P33274はRattus norvegicusに由来するβ−カロチンオキシゲナーゼを表し、P11707はOryctolagus cuniculusに由来するβ−カロチンオキシゲナーゼを表し、P33270はDrosophila melanogasterに由来するβ−カロチンオキシゲナーゼを表す。
図10a及び10bは、本開示の別の例にしたがう、β−カロチンオキシゲナーゼの保存領域を示す配列アライメントデータであり、触媒ドメイン1〜3が下線でマークされており、AAY33921はXanthophyllomyces dendrorhousに由来するβ−カロチンオキシゲナーゼを表し、Q08477はHomo sapiensに由来するβ−カロチンオキシゲナーゼを表し、P33274はRattus norvegicusに由来するβ−カロチンオキシゲナーゼを表し、P11707はOryctolagus cuniculusに由来するβ−カロチンオキシゲナーゼを表し、P33270はDrosophila melanogasterに由来するβ−カロチンオキシゲナーゼを表す。
図10cは、本開示の別の例にしたがう、β−カロチンオキシゲナーゼの触媒ドメイン1〜3内の保存残基を示す模式図であり、保存残基が下線でハイライトされている。
図11a及び11bは、本開示の一例にしたがう、P450レダクターゼの保存領域を示す配列アライメントデータであり、フラボドキシンドメインとNADPHチトクロームp450レダクターゼドメインが下線でそれぞれマークされており、ACI43097はXanthophyllomyces dendrorhousに由来するP450レダクターゼを表し、Q00141はAspergillus nigerに由来するP450レダクターゼを表し、NP_596046はSchizosaccharomyces pombeに由来するP450レダクターゼを表し、XP_001731494はMalassezia globosa CBS 7966に由来するP450レダクターゼを表し、XP_762420はUstilago maydis 521に由来するP450レダクターゼを表す。
図11a及び11bは、本開示の一例にしたがう、P450レダクターゼの保存領域を示す配列アライメントデータであり、フラボドキシンドメインとNADPHチトクロームp450レダクターゼドメインが下線でそれぞれマークされており、ACI43097はXanthophyllomyces dendrorhousに由来するP450レダクターゼを表し、Q00141はAspergillus nigerに由来するP450レダクターゼを表し、NP_596046はSchizosaccharomyces pombeに由来するP450レダクターゼを表し、XP_001731494はMalassezia globosa CBS 7966に由来するP450レダクターゼを表し、XP_762420はUstilago maydis 521に由来するP450レダクターゼを表す。
図11cは、本開示の一例にしたがう、P450レダクターゼのフラボドキシンドメイン1〜4内の保存残基を示す模式図であり、保存残基が下線でハイライトされている。
図11dは、本開示の一例にしたがう、NADPHチトクロームp450レダクターゼドメイン1〜5内の保存残基を示す模式図であり、保存残基が下線でハイライトされている。
図12は、本開示の一例にしたがう、7つの遺伝子カセットを含む組換えポリヌクレオチド配列(crtI−crtR−crtE−Kan−crtS−crtYB−tHMG1と略する)を含む遺伝子改変株Xd7−3を示す模式図である。
図13aは、本開示の別の例にしたがう、特定の株の寒天プレート培養の表現型をそれぞれ示す写真であり、全ての株が10世代継代で選択された。
図13bは、本開示の別の例にしたがう、組換えポリヌクレオチド配列を構築するのに用いられるスキームを示す模式図である。
図13cは、本開示の一例にしたがう、特定の株から抽出され、続いてコロニーPCRアッセイにより増幅されたDNA断片をそれぞれ示す、ゲル電気泳動の写真である。
図14aは、本開示の別の例にしたがう、β−カロチンケトラーゼの保存領域を示す配列アライメントデータであり、触媒ドメイン1〜4が下線でマークされており、XP_001698699はChlamydomonas reinhardtiiに由来するβ−カロチンケトラーゼを表し、BAB74888はNostoc sp. PCC 7120に由来するβ−カロチンケトラーゼを表し、NP_924674はGloeobacter violaceus PCC 7421に由来するβ−カロチンケトラーゼを表し、ABB25938はSynechococcus sp. CC9902に由来するβ−カロチンケトラーゼを表し、CAE07883はSynechococcus sp. WH 8102に由来するβ−カロチンケトラーゼを表す。
図14bは、本開示の別の例にしたがう、β−カロチンケトラーゼの触媒ドメイン1〜4内の保存残基を示す模式図であり、保存残基が下線でハイライトされている。
図15aは、本開示の一例にしたがう、β−カロチンヒドロキシラーゼの保存領域を示す配列アライメントデータであり、触媒ドメイン1〜2が赤い長方形の境界によりアウトライン化されており、XP_001698698はChlamydomonas reinhardtiiに由来するβ−カロチンヒドロキシラーゼを表し、ABS50237はChromochloris zofingiensisに由来するβ−カロチンヒドロキシラーゼを表し、Q9SPK6はHaematococcus pluvialisに由来するβ−カロチンヒドロキシラーゼを表す。
図15bは、本開示の一例にしたがう、β−カロチンヒドロキシラーゼの触媒ドメイン1〜2内の保存残基を示す模式図であり、保存残基が赤色でハイライトされている。
図16aは、本開示の一例にしたがう、7つの遺伝子カセットを含む組換えポリヌクレオチド配列(すなわち、crtI−crtE−CrChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1)を含む遺伝子改変株Cr1を示す模式図である。
図16bは、本開示の別の例にしたがう、7つの遺伝子カセットを含む組換えポリヌクレオチド配列(すなわち、crtI−crtE−HpChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1)を含む遺伝子改変株Hp9を示す模式図である。
図16cは、本開示のさらに別の例にしたがう、7つの遺伝子カセットを含む組換えポリヌクレオチド配列(すなわち、crtI−crtE−CzChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1)を含む遺伝子改変株Cz5を示す模式図である。
図17aは、本開示の一例にしたがう、特定の株を含有するブロスをそれぞれ示す写真である。
図17bは、本開示の別の例にしたがう、特定の株を含有するブロスをそれぞれ示す写真である。
図17cは、本開示の一例にしたがう、特定の株の増殖曲線を示す折れ線グラフである。
図17dは、本開示の一例にしたがう、分光光度法アッセイにより測定される全カロテノイドのフルスペクトルUV/Vを示す折れ線グラフである。
図18a及び18bは、本開示の別の例にしたがう、HPLC分光測定アッセイによりUV450nm下で測定される特定の株の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)結果を示し、1は遊離形態のカンタキサンチンを示し、6は遊離形態のβ−カロチンを示し、2、3、4、5、7、及び8は未知のピークを示す。
図19aは、本開示の一例にしたがう、特定の株のコロニーをそれぞれ示す写真である。
図19bは、本開示の一例にしたがう、様々な温度下の、特定の株を含有するブロスをそれぞれ示す写真である。
図19cは、本開示の一例にしたがう、遺伝子発現を示すヒストグラムである。
図20a及び20bは、本開示の一例にしたがう、HPLC分光測定アッセイによりUV450nm下で測定される特定の株のHPLC結果を示す。
図21aは、本開示の別の例にしたがう、特定の株及び成分を含有するブロスを示す写真である。
図21bは、本開示の別の例にしたがう、CA6−ITS株及び特定の成分を含有するブロスを示す写真である。
図22は、本開示の一例にしたがう、ケン化処理を伴うUV460nm下での液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC/MS)分析を示す。
図23aは、本開示の一例にしたがう、特定の株のフリーラジカル消去率を示すヒストグラムであり、この比率はABTS基質を用いる抗酸化能力アッセイにより測定される。
図23bは、本開示の一例にしたがう、Trolox等価抗酸化能力(TEAC)アッセイの結果を示すヒストグラムである。
図24aは、本開示の一例にしたがう、8つの遺伝子カセットを含む組換えポリヌクレオチド配列を示す模式図である。
図24bは、本開示の一例にしたがう、7つの遺伝子カセットを含むCA6−ITS株の内部転写スペーサー(ITS)領域を示す模式図である。
図24cは、本開示の例にしたがう、特定の株からそれぞれ抽出され、続いて逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により分析される、特定の遺伝子の相対的遺伝子発現を示すヒストグラムである。
図24dは、本開示の別の例にしたがう、本組換えポリヌクレオチド配列を含むハイコピー数プラスミドRS426を示す模式図である。
図24eは、本開示の一例にしたがう、電気泳動の結果を示す写真である。
図24fは、本開示の一例にしたがう、CA6−ITS株により生産されたアスタキサンチンのHPLCデータを示す。
図25a及び25bは、本開示の別の例にしたがう、特定の株及び成分を含有するブロスを示す写真である。
図26aは、本開示の一例にしたがう、LC MS/MS分析によりUV460nm下で測定された超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)の結果を示す。
図26bは、本開示の別の例にしたがう、LC MS/MS分析によりUV460nmで分析されたMS/MSの結果を示す。
図27は、本開示の一例にしたがう、(a)UV暴露、(b)フルフラール、(c)エタノール、及び(d)イソブタノールでそれぞれ処理された野生型及びCz30株のコロニーを呈する写真である。
図28aは、本開示の別の例にしたがう、様々なエタノール濃度でそれぞれ処理された野生型及びCz30株の細胞密度を示すヒストグラムである。
図28bは、本開示の別の例にしたがう、20%ガラクトースを含有するYPG培地中で培養された野生型及びCz30株の細胞密度及びエタノール生産を示すデータであり、左のy軸は細胞密度を表し、右のy軸はエタノール生産を表し、x軸は時間次元を表す。
図29aは、本開示の一例にしたがう、特定の濃度のエタノール中に溶解した特定の濃度の10デアセチルバッカチンIII(10DB)でそれぞれ処理した、野生型及びCz30株のコロニーを呈する写真である。
図29bは、本開示の一例にしたがう、特定の濃度の10DBでそれぞれ処理した野生型及びCz30株の細胞密度を示すヒストグラムである。
図30は、(a)4%エタノール中に溶解した0.8mM 10DB、及び(b)6%エタノール中に溶解した1.2mM 10DBでそれぞれ処理した、野生型及びCz30株の増殖曲線を示す折れ線グラフである。
図31は、特定の株における10DBの生物変換を示す写真である。
一般的な慣行にしたがい、記載された様々な特徴/要素は原寸に比例して描かれておらず、代わりに本発明に関連する特定の特徴/要素を最良に示すように描かれている。
発明の詳細な説明
添付の図面に関連する以下の詳細な説明は、本例の説明として意図されており、本例を構築又は利用できる唯一の形態を表すことを意図するものではない。この説明は、本例の機能及び本例を構築し作動させるための一連のステップを示す。しかしながら、同一又は同等の機能及び一連のステップは、様々な例により達成され得る。
便宜上、明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲において用いられるいくつかの用語をここに集める。本明細書において他に定義されない限り、本開示で用いられる科学技術用語は、当業者により一般的に理解され用いられる意味を有するものとする。
文脈によって他に必要とされない限り、単数形の用語は、その複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。具体的には、本明細書中及び請求項において用いられるように、単数形「a」及び「an」は、文脈が他に明確に示さない限り、複数の参照を含む。
本発明の広い範囲を説明する数値範囲及びパラメータが近似値であることにもかかわらず、特定の実施例に示される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、あらゆる数値は、それぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる、ある一定の誤差を本質的に含む。また、本明細書で使用する「約」という用語は、一般的に、所与の値又は範囲の10%、5%、1%、又は0.5%以内を意味する。代わりに、用語「約」は、当業者によって考慮される場合、許容可能な平均の標準誤差内であることを意味する。作動例/実施例以外において、又は他に明確に指定しない限り、本明細書中に開示される、材料の量、継続時間、温度、作動条件、量の比などについての、数値範囲、量、値及びパーセンテージの全ては、全ての場合において、用語「約」により修飾されているものとして理解されるものとする。したがって、特に断りのない限り、本開示及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、必要に応じて変化し得る近似値である。最低限でも、各数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、通常の丸め技術を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
本明細書で用いられる、用語「制御配列」は、それらが動作可能に連結されたコード配列の発現に影響を及ぼすのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。このような制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なる。原核生物において、制御配列は一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、及びターミネーターを含む。真核生物において、制御配列は一般に、プロモーター、ターミネーター及びエンハンサー又はサイレンサーを含む。用語「制御配列」は、最低限、コード配列の発現にその存在が必要な全ての成分を含むことが意図され、追加の有利な成分を含むこともでき、特定の遺伝子が、いつ、どれくらい、どこで発現するかを決定する。ある実施形態において、用語「制御配列」は、特定のプロモーター以外の調節成分を含む。
本明細書における「プロモーター」への言及は、細胞、組織又は器官における核酸配列の発現を、付与、活性化、又は増強する、合成又は融合の分子又は誘導体を説明する。
「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、互換的に用いることができ、本開示にしたがい、二本鎖DNA、一本鎖DNA又は前記DNAの転写産物(例えば、RNA分子)のいずれかを意味するものと理解される。本開示が、天然環境又は天然状態のゲノムポリ核酸配列に関するものではないこともまた、理解されるべきである。本発明の核酸、ポリヌクレオチド、又は核酸配列は、イオン交換クロマトグラフィー、分子サイズ排除クロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない分離方法によって、又は増幅、サブストラクティブハイブリダイゼーション、クローニング、サブクローニング又は化学合成、又はこれらの遺伝子工学的方法の組み合わせなどの遺伝子工学的方法によって、単離、精製(又は部分的に精製)することができる。
本明細書で用いられる用語「配列相同性」は、特定の比較ウインドウにわたり最大一致のためにアライメントさせたときの、2以上の核酸又はアミノ酸配列の間の配列関係を指す。「相同性」のパーセンテージは、比較ウインドウにわたる2つの最適にアライメントされた配列を比較することにより決定される。2つの配列の「最適なアライメント」のために、比較ウインドウ中の配列の一部は、付加又は欠失を含まない参照配列と比較したときに、ギャップ(例えば、欠失又は付加)を含んでよいことが理解されるだろう。アライメントの後、一致した位置(すなわち、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列に出現する位置)の数を決定し、次いで比較ウインドウ中の位置の総数で除される。次いで、この結果を100で乗じ、配列又はアミノ酸相同性のパーセンテージを計算する。いくつかの実施形態において、2つの配列は、ヌクレオチド又はアミノ酸の総数が同じである。アライメントされた配列は、熟練した職人が精通しているGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、及びTFASTAを含む任意の方法によって分析することができる。
上で議論したように、アスタキサンチン生合成のための現在の技術は、多くの制限を有し、化学合成と経済的に競合することができない。他方、多くのアスタキサンチンが化学合成により安く生産されているが、この生産プロセスは高い環境汚染を引き起こす。そしてその産物は人体に容易に貯蔵されることも容易に吸収されることもできず、食品及び医薬市場によく受け入れられていない。上記に鑑み、本発明は、アスタキサンチン又はその前駆体又は誘導体を宿主細胞で効率よく大量に生産するためのアプローチ(図3a及び3b)を提供することを目的とする。従来の方法(例えば、改変微生物による生産)及び化学合成と比較すると、本アプローチは4つの利点により特徴づけられる。4つの利点とは、(1)より高い前駆体の合成、(2)より短い代謝経路、(3)最終産物の正確な構造、及び(4)エステル形態の保護である。
具体的には、本開示は、アスタキサンチンの生合成を調節するいくつかのポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチド配列;本組換えポリヌクレオチド配列を含むベクター;本組換えポリヌクレオチド配列及び/又はベクターを含む宿主細胞;及びその結果、前記宿主細胞を用いて、アスタキサンチン、その前駆体又は誘導体を生合成する方法を提供する。このように生産されたアスタキサンチン及び/又はその前駆体又は誘導体の抗酸化能に基づき、本開示はまた、ストレスに対する宿主細胞の耐性を向上させる方法、及びエタノール又はバッカチンIIIなどの薬物前駆体の生産における宿主細胞の生産性を向上させる方法を提供する。
このように生産されたアスタキサンチンは、3S, 3S'−アスタキサンチン又は3R, 3R'−アスタキサンチンであり得る。アスタキサンチンの前駆体は、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)、フェニコキサンチン、リコペン、エキネノン、カンタキサンチン、フィトエン、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチン、又はβ−カロチンであり得る。アスタキサンチンの誘導体は、アスタキサンチンモノエステル又はアスタキサンチンジエステルであり得る。
1. 組換えポリヌクレオチド配列
本開示の第1の態様は、プロモーターに基づく遺伝子アセンブリ及び同時過剰発現(Promoter−based Gene Assembly and Simultaneous Overexpression:PGASO)技術(Changら.、2012)によって構築される、組換えポリヌクレオチド配列に関する。PGASO技術は、個々のプロモーターを有する遺伝子カセットの組換えアセンブリについて、重複するポリヌクレオチドを用いるクローニング戦略であり、その結果、複数の遺伝子カセットを細胞のゲノムに予め指定された順序で挿入することができる。簡潔には、各遺伝子カセットは、2つの部分:(1)5'末端でプロモーター配列に連結された遺伝子配列、及び(2)隣接するカセットの5'末端と同一の、遺伝子カセットの3'末端の配列、を含む。第1の遺伝子カセットについてのプロモーター配列の5'末端の部分及び第2の遺伝子カセットの3'末端の部分は、部位特異的挿入を容易にするために、宿主ゲノム中の所定の位置に相同である。好ましくは、各遺伝子カセット中のプロモーター配列は互いに異なる。しかしながら、遺伝子カセットの3'末端の配列は、隣接する下流の遺伝子カセット中のプロモーター配列の一部に相同であるべきである。遺伝子カセットが細胞に導入されると、それらは予め指定された順序で、重複するプロモーター配列のペアの間での相同組換えを介して結合し、それにより、最初のプロモーター配列及び最後の遺伝子カセットの3'末端での相同組換えを介して、ゲノム中に挿入される。
以下の組換えポリヌクレオチド配列は全て、PGASO技術の概念に基づいて構築される。
1.1 2つの遺伝子カセットを含む組換えポリヌクレオチド配列
本開示の一実施形態によれば、本組換えポリヌクレオチド配列は2つの遺伝子カセットを含む。第1の遺伝子カセットは第1のプロモーターにより駆動される第1の核酸配列を含み、ここで第1の核酸配列は、ゲラニルピロリン酸(FPP)からのGGPPの形成を触媒する酵素である、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)シンターゼをコードする。第2の遺伝子カセットは、第2のプロモーターにより駆動される第2の核酸配列を含み、ここで、第2の核酸配列は、アセチル−CoAからのメバロン酸の形成を触媒する、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A(HMG−CoA)レダクターゼをコードする。PGASO技術の戦略に基づき、1つの遺伝子カセットの3'末端は、その下流の別の遺伝子カセットの5'末端に相同である。それ故に、2つの遺伝子カセットが宿主細胞に導入されると、それらは組み立てられて組換えポリヌクレオチド配列を構築する。
例えば、本開示の一つの実施形態において、第1の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第2のプロモーターの一部に相同である。構築された組換えポリヌクレオチド配列は、構造的に、2つの遺伝子カセット、すなわち、第1の及び第2の遺伝子カセットを、5'末端から3'末端の方向の順で含む。
任意選択的に、組換えポリヌクレオチド配列は、マーカープロモーターと、マーカープロモーターに作動可能に連結されたマーカー遺伝子とを含む、マーカーカセットをさらに含んでよい。別の実施形態によれば、第1の遺伝子カセットの3'末端の配列は、マーカープロモーターの一部に相同であるが、マーカーカセットの3'末端の配列は、第2のプロモーターの一部に相同である。それ故に、相同組換えの後、マーカーカセットは第1の遺伝子カセットと第2の遺伝子カセットとの間に位置する。
GGPPシンターゼを生産するために、第1の核酸配列は、crtE遺伝子又はその断片であり、これはXanthophyllomyces dendrorhous、Streptomyces coelicolor、Corynebacterium glutamicum、Thermobifida fusca、又はBifidobacterium longumのcrtE遺伝子に由来することができる。一つの具体的な実施形態において、第1の核酸配列は、Xanthophyllomyces dendrorhousのcrtE遺伝子の触媒ドメインに由来し、配列番号1の配列を含む。
HMG−CoAレダクターゼを生産するために、第2の核酸配列は、HMG1遺伝子又はその断片であり、これは、Kluveromyces marxianus、Saccharomyces cerevisiae、Picea sitchensis、Aspergillus terreus、又はGanoderma lucidumのHMG1遺伝子に由来することができる。一つの実施形態において、第2の核酸配列は、Kluveromyces marxianusのHMG1遺伝子の触媒ドメインに由来する。酵母において、トランケート型HMG−CoAレダクターゼ(tHMG1)が、フィードバック阻害を減少させ、それ故に下流のGGPPの蓄積を向上させることが知られている。したがって、一つの具体的な例において、第2の核酸配列はtHMG1であり、配列番号2の配列を含む。
マーカー遺伝子としては、スクリーニングマーカー遺伝子(例えば、蛍光遺伝子、β−グルクロニダーゼ遺伝子、及びLacZ遺伝子)又は選択マーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子)が可能である。本開示の一実施形態によれば、マーカー遺伝子は、宿主にカナマイシン/ジェネティシン(G418)/ネオマイシン耐性を付与するKanMXマーカー遺伝子、又はオーレオバシジンA(AbA)耐性を付与するAUR1−C遺伝子などの抗生物質耐性遺伝子である。
第1の核酸配列/遺伝子、第2の核酸配列/遺伝子、及びマーカー核酸配列/遺伝子の発現をそれぞれ駆動するのに用いることのできる適切なプロモーターの例としては、ScGapDHプロモーター、KlGapDHプロモーター、ScPGKプロモーター、KlPGKプロモーター、KlADHIプロモーター、ScADHIプロモーター、KlADH4プロモーター、ScADH4プロモーター、KlLac4プロモーター及びICLプロモーターがあるが、これらに限定されない。好ましくは、組換えポリヌクレオチド配列中のそれぞれの核酸配列又は遺伝子カセットは、互いに異なるプロモーターによって駆動される。一つの実施形態において、第1のプロモーターはKlLac4プロモーター、第2のプロモーターはScADHIプロモーター、マーカープロモーターはKlGapDHプロモーターである。
1.2 4つの遺伝子カセットを含む組換えポリヌクレオチド配列
本開示の別の実施形態によれば、本組換えポリヌクレオチド配列は4つの遺伝子カセットを含む。具体的には、セクション1.1で上述の、GGPPシンターゼ及びHMG−CoAレダクターゼをそれぞれ発現する第1の及び第2の遺伝子カセットに加えて、組換えポリヌクレオチド配列は第3の及び第4の遺伝子カセットをさらに含んでよい。第3の遺伝子カセットは、第3のプロモーターにより駆動される第3の核酸配列を含み、ここで第3の核酸配列は、cis−フィトエンからのリコペンの形成を触媒する酵素である、フィトエンデサチュラーゼをコードする。第4の遺伝子カセットは、第4のプロモーターにより駆動される第4の核酸配列を含み、ここで第4の核酸配列は、フィトエンシンターゼ及びリコペンシクラーゼの各機能を保持する二機能性酵素(以下、フィトエンシンターゼ/リコペンシクラーゼ)をコードし、これらフィトエンシンターゼ及びリコペンシクラーゼの両方の酵素はリコペンからβ−カロチンへの変換の触媒において役割を果たす。
本明細書に記載の4つの遺伝子カセットは、PGASO技術の戦略にしたがって組み立てられる。すなわち、各遺伝子カセットの3'末端は、その下流の隣接遺伝子カセットの5'末端に相同である。例えば、本開示の一つの実施形態において、第3の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第1のプロモーターの一部に相同であり;第1の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第4のプロモーターの一部に相同であり;第4の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第2のプロモーターの一部に相同である。4つの遺伝子カセットはインビボで自然発生的に組み立てられ、第3の遺伝子カセット、第1の遺伝子カセット、第4の遺伝子カセット、及び第2の遺伝子カセットを、5'末端から3'末端の方向の順で含む、組換えポリヌクレオチド配列を生じるだろう。
任意選択的に、組換えポリヌクレオチド配列は、マーカープロモーターと、マーカープロモーターに作動可能に連結されたマーカー遺伝子とを含む、マーカーカセットをさらに含んでよい。マーカーカセットを含む組換えポリヌクレオチド配列は、PGASO方法を用いることにより同様のやり方で構築される。したがって、その詳細な説明は、簡潔のために省略している。本開示の一実施形態によれば、マーカーカセットは、第1の遺伝子カセットと第4の遺伝子カセットとの間に位置する。
フィトエンデサチュラーゼを生産するために、第3の核酸配列はcrtI遺伝子又はその断片であり、これはXanthophyllomyces dendrorhous、Xanthophyllomycesene desatura、Synechococcus sp. WH 8102、Synechocystis sp. PCC 6803、Nostoc sp. PCC 7120、又はSolanum lycopersicumに由来することができる。一つの具体的な実施形態において、第3の核酸配列は、Xanthophyllomyces dendrorhousのcrtI遺伝子の触媒ドメインに由来し、配列番号3の配列を含む。
フィトエンシンターゼ及びリコペンシクラーゼの各機能を有する二機能性酵素を構築するために、第4の核酸配列は、crtYB遺伝子又はその断片を含むように構築され、この配列は、Xanthophyllomyces dendrorhous、Ustilago maydis 521、Sulfolobus solfataricus又はPicrophilus torridusに由来することができる。一つの具体的な実施形態において、第4の核酸配列は、Xanthophyllomyces dendrorhousのcrtYB遺伝子の触媒ドメインに由来し、配列番号4の配列を含む。
マーカー遺伝子は、スクリーニングマーカー遺伝子又は選択マーカー遺伝子が可能である。本開示の一実施形態によれば、マーカー遺伝子は抗生物質耐性遺伝子KanMXである。
第1の核酸配列/遺伝子、第2の核酸配列/遺伝子、第3の核酸配列/遺伝子、第4の核酸配列/遺伝子、及びマーカー核酸配列/遺伝子の発現をそれぞれ駆動するのに用いることのできる適切なプロモーターの例としては、ScGapDHプロモーター、KlGapDHプロモーター、ScPGKプロモーター、KlPGKプロモーター、KlADHIプロモーター、ScADHIプロモーター、KlADH4プロモーター、ScADH4プロモーター、KlLac4プロモーター及びICLプロモーターがあるが、これらに限定されない。好ましくは、組換えポリヌクレオチド配列中のそれぞれの核酸配列は、異なるプロモーターにより駆動される。一つの実施形態において、第1のプロモーターはScPGKプロモーター、第2のプロモーターはScADHIプロモーター、第3のプロモーターはKlLac4プロモーター、第4のプロモーターはKlADHIプロモーター、マーカープロモーターはKlGapDHプロモーターである。
1.3 3S, 3S'−アスタキサンチンを発現するための6つの遺伝子カセットを含む組換えポリヌクレオチド配列
本開示の別の実施形態によれば、3S, 3S'−アスタキサンチンを生産する目的で、組換えポリヌクレオチド配列は6つの遺伝子カセットを含む。具体的には、セクション1.2で上述のように、GGPPシンターゼ、HMG−CoAレダクターゼ、フィトエンデサチュラーゼ、及びフィトエンシンターゼ/リコペンシクラーゼをそれぞれ発現する、第1の〜第4の遺伝子カセットに加えて、組換えポリヌクレオチド配列は、β−カロチンヒドロキシラーゼ及びβ−カロチンケトラーゼをそれぞれ発現する追加の2つの遺伝子カセットをさらに含んでよい。β−カロチンヒドロキシラーゼとβ−カロチンケトラーゼの両方が、3S, 3S'−アスタキサンチンへのβ−カロチンの変換に必要である。より具体的には、第5の遺伝子カセットは第5のプロモーターにより駆動される第5の核酸配列を含み、ここで第5の核酸配列はβ−カロチンヒドロキシラーゼをコードする。第6の遺伝子カセットは第6のプロモーターにより駆動する第6の核酸配列を含み、ここで第6の核酸配列はβ−カロチンケトラーゼをコードする。
同様に、6つの遺伝子カセットを含む組換えポリヌクレオチド配列もまた、PGASO技術の戦略に基づき構築され、ここで各遺伝子カセットの3'末端は、その下流の隣接遺伝子カセットの5'末端に相同である。例えば、一つの具体的な例において、第3の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第1のプロモーターの一部に相同であり;第1の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第5のプロモーターの一部に相同であり;第5の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第6のプロモーターの一部に相同であり;第6の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第4のプロモーターの一部に相同であり;第4の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第2のプロモーターの一部に相同である。宿主細胞に一旦導入されると、6つの遺伝子カセットは自然発生的に組み立てられ、第3の遺伝子カセット、第1の遺伝子カセット、第5の遺伝子カセット、第6の遺伝子カセット、第4の遺伝子カセット、及び第2の遺伝子カセットを、5'末端から3'末端の方向の順で含む、組換えポリヌクレオチド配列を生じるだろう。
さらに任意選択的に、組換えポリヌクレオチド配列は、マーカープロモーターにより駆動されるマーカー遺伝子を含む、マーカー遺伝子カセットをさらに含んでよい。本実施形態において、構築されたマーカーカセットは、第5の遺伝子カセットと第6の遺伝子カセットとの間に位置する。
β−カロチンヒドロキシラーゼを生産するために、第5の核酸配列は、chYb遺伝子又はその断片を含むように構築され、この配列は、Chlamydomonas reinhardtii、Chlorella zofingiensis、又はHaematococcus pluvialisに由来することができる。一つの実施形態において、第5の核酸配列はChlamydomonas reinhardtiiのchYb遺伝子の触媒ドメインに由来し、配列番号5の配列を含む。別の実施形態において、第5の核酸配列はChlorella zofingiensisのchYb遺伝子の触媒ドメインに由来し、配列番号6の配列を含む。さらに別の実施形態において、第5の核酸配列はHaematococcus pluvialisのchYb遺伝子の触媒ドメインに由来し、配列番号7の配列を含む。
β−カロチンケトラーゼを生産するために、第6の核酸配列は、bkt遺伝子又はその断片を含むように構築され、この配列は、Chlamydomonas reinhardtii、Nostoc sp. PCC 7120、Gloeobacter violaceus PCC 7421、Synechococcus sp. CC9902、又はSynechococcus sp. WH 8102に由来することができる。一つの具体的な実施形態において、第6の核酸配列はChlamydomonas reinhardtiiのbkt遺伝子の触媒ドメインに由来し、配列番号8の配列を含む。
マーカー遺伝子は、上述のスクリーニングマーカー遺伝子又は選択マーカー遺伝子が可能である。本開示の一実施形態によれば、マーカー遺伝子は抗生物質耐性遺伝子KanMXである。
第1〜第6の核酸配列及びマーカー遺伝子の発現をそれぞれ駆動するのに用いることのできる適切なプロモーターの例としては、ScGapDHプロモーター、KlGapDHプロモーター、ScPGKプロモーター、KlPGKプロモーター、KlADHIプロモーター、ScADHIプロモーター、KlADH4プロモーター、ScADH4プロモーター、KlLac4プロモーター及びICLプロモーターがあるが、これらに限定されない。好ましくは、組換えポリヌクレオチド配列中のそれぞれの核酸配列は、互いに異なるプロモーターによって駆動される。一つの実施形態において、第1のプロモーターはScGapDHプロモーター、第2のプロモーターはScADHIプロモーター、第3のプロモーターはKlLac4プロモーター、第4のプロモーターはKlADHIプロモーター、第5のプロモーターはScPGKプロモーター、第6のプロモーターはKlPGKプロモーター、及びマーカープロモーターはKlGapDHプロモーターである。
1.4 3R, 3R'−アスタキサンチンを発現するための6つの遺伝子カセットを含む組換えポリヌクレオチド配列
本発明はまた、3R, 3R'−アスタキサンチンを宿主細胞で大量に生産するように設計された組換えポリヌクレオチド配列を提供する。本開示のいくつかの実施形態によれば、3R, 3R'−アスタキサンチンの生産のための組換えポリヌクレオチド配列は、6つの遺伝子カセットを含み、ここで、最初の4つの遺伝子カセットは、セクション1.2で上述のように、GGPPシンターゼ、HMG−CoAレダクターゼ、フィトエンデサチュラーゼ、及びフィトエンシンターゼ/リコペンシクラーゼをそれぞれ発現し、一方で最後の2つの遺伝子カセット(以下、第7の遺伝子カセット及び第8の遺伝子カセット)は、β−カロチンからの3R, 3R'−アスタキサンチンの形成の触媒において役割を果たすことが知られている、P450レダクターゼ及びβ−カロチンオキシゲナーゼをそれぞれ発現する。具体的には、第7の遺伝子カセットは第7のプロモーターにより駆動される第7の核酸配列を含み、ここで第7の核酸配列はP450レダクターゼをコードする。第8の遺伝子カセットは第8のプロモーターにより駆動される第8の核酸配列を含み、ここで第8の核酸配列はβ−カロチンオキシゲナーゼをコードする。
同様に、3R, 3R'−アスタキサンチンを生産するための組換えポリヌクレオチド配列は、PGASO戦略の概念にしたがって構築され、ここで、各遺伝子カセットの3'末端は、その下流の隣接遺伝子カセットの5'末端に相同である。例えば、一実施形態によれば、第3の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第7のプロモーターの一部に相同であり;第7の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第1のプロモーターの一部に相同であり;第1の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第8のプロモーターの一部に相同であり;第8の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第4のプロモーターの一部に相同であり;第4の遺伝子カセットの3'末端の配列は、第2のプロモーターの一部に相同である。遺伝子カセットの間の相同な配列がインビボでの相同組換えをもたらすため、7つの遺伝子カセットは組み立てられ、第3の遺伝子カセット、第7の遺伝子カセット、第1の遺伝子カセット、第8の遺伝子カセット、第4の遺伝子カセット、及び第2の遺伝子カセットを、5'末端から3'末端の方向の順で含む、組換えポリヌクレオチド配列を生じるだろう。
任意選択的に、3R, 3R'−アスタキサンチンの生産のための組換えポリヌクレオチド配列は、マーカープロモーターにより駆動されるマーカー遺伝子を含む、マーカー遺伝子カセットをさらに含んでよい。一つの好ましい実施形態において、マーカーカセットは、第1の遺伝子カセットと第8の遺伝子カセットとの間に位置する。
P450レダクターゼを生産するために、第7の核酸配列はcrtR遺伝子又はその断片を含むように構築され、この配列はXanthophyllomyces dendrorhous、Aspergillus niger、Schizosaccharomyces pombe、Malasseziaglobosa CBS7966、又はUstilago maydis 521に由来することができる。一つの具体的な実施形態において、第7の核酸配列はXanthophyllomyces dendrorhousに由来し、配列番号9の配列を含む。
β−カロチンオキシゲナーゼを生産するために、第8の核酸配列はcrtS遺伝子又はその断片を含むように構築され、この配列はXanthophyllomyces dendrorhous、Homo sapiens、Rattus norvegicus、Oryctolagus cuniculus、又はDrosophila melanogasterに由来することができる。一つの実施形態において、第8の核酸配列はXanthophyllomyces dendrorhousに由来し、配列番号10の配列を含む。
マーカー遺伝子は、スクリーニングマーカー遺伝子又は選択マーカー遺伝子が可能である。本開示の一実施形態によれば、マーカー遺伝子は抗生物質耐性遺伝子KanMXである。
第1の核酸配列/遺伝子、第2の核酸配列/遺伝子、第3の核酸配列/遺伝子、第4の核酸配列/遺伝子、第7の核酸配列/遺伝子、第8の核酸配列/遺伝子、及びマーカー核酸配列/遺伝子の発現をそれぞれ駆動するのに用いることのできる、適切なプロモーターの例としては、ScGapDHプロモーター、KlGapDHプロモーター、ScPGKプロモーター、KlPGKプロモーター、KlADHIプロモーター、ScADHIプロモーター、KlADH4プロモーター、ScADH4プロモーター、KlLac4プロモーター及びICLプロモーターがあるが、これらに限定されない。好ましくは、組換えポリヌクレオチド配列中のそれぞれの核酸配列は、互いに異なるプロモーターによって駆動される。一つの実施形態において、第1のプロモーターはScPGKプロモーター、第2のプロモーターはScADHIプロモーター、第3のプロモーターはKlLac4プロモーター、第4のプロモーターはKlADHIプロモーター、第7のプロモーターはScGapDHプロモーター、第8のプロモーターはKlPGKプロモーター、マーカープロモーターはKlGapDHプロモーターである。上に列挙した全てのプロモーターは、全ての環境において活性のある構成的酵母プロモーターであり、酵母細胞における遺伝子発現を効率よく駆動することができる。
本開示のいくつかの実施形態によれば、セクション1.1〜1.4において言及したプロモーターのそれぞれ(すなわち、第1のプロモーター、第2のプロモーター、第3のプロモーター、第4のプロモーター、第5のプロモーター、第6のプロモーター、第7のプロモーター、第8のプロモーター、及びマーカープロモーター)は、特定のヌクレオチド配列を含む。一つの具体的な例において、KlLac4プロモーターは配列番号63のヌクレオチド配列を含み;ScGapDHプロモーターは配列番号64のヌクレオチド配列を含み;ScPGKプロモーターは配列番号65のヌクレオチド配列を含み;KlGapDHプロモーターは配列番号66のヌクレオチド配列を含み;KlPGKプロモーターは配列番号67のヌクレオチド配列を含み;KlADHIプロモーターは配列番号68のヌクレオチド配列を含み;ScADHIプロモーターは配列番号69のヌクレオチド配列を含む。
理解されるように、セクション1.1〜1.4に記載される各遺伝子カセット(すなわち、第1の遺伝子カセット、第2の遺伝子カセット、第3の遺伝子カセット、第4の遺伝子カセット、第5の遺伝子カセット、第6の遺伝子カセット、第7の遺伝子カセット、第8の遺伝子カセット、及びマーカー遺伝子カセット)の発現を駆動させるのに用いられるプロモーターのそれぞれは、遺伝子カセットが原核宿主細胞(例えば、細菌宿主細胞)又は他の真核宿主細胞(例えば、哺乳類細胞)において効率よく発現できるように、酵母とは異なる種において遺伝子発現を駆動させる他の構成的プロモーターにより置き換えることができる。原核宿主細胞において遺伝子発現を駆動させるのに用いることのできる適切なプロモーターとしては、T3プロモーター、T5プロモーター、T7プロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター(trp及びlacプロモーターのハイブリッド)、lac由来プロモーター、araBADプロモーター、recAプロモーター、proUプロモーター、cst−1プロモーター、tatAプロモーター、cadAプロモーター、narプロモーター、cspAプロモーター、SP6プロモーター、ラムノースプロモーター、及びphoAプロモーターがあるが、これらに限定されない。哺乳類細胞において遺伝子発現を駆動させるのに適切なプロモーターは、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)プロモーター、ウイルスの内部プロモーター、ユビキチンC(UbC)プロモーター、伸長因子−1アルファ(EF−1アルファ)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、及びCMV初期エンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーターからなる群より選択してよい。
PGASO技術に加えて、セクション1.1〜1.4に記載される遺伝子カセット(すなわち、第1の遺伝子カセット、第2の遺伝子カセット、第3の遺伝子カセット、第4の遺伝子カセット、第5の遺伝子カセット、第6の遺伝子カセット、第7の遺伝子カセット、第8の遺伝子カセット、及びマーカー遺伝子カセット)は、好ましい産物(すなわち、3S, 3S'−アスタキサンチン又は3R, 3R'−アスタキサンチン)が生産される限り、適切な制限酵素、及びGateway(登録商標)クローニングシステムなどの、熟練した職人に知られる他の適切な方法により組み立てることができる。
もし異なる構築戦略が用いられた場合、セクション1.1〜1.4に記載される遺伝子カセット(すなわち、第1の遺伝子カセット、第2の遺伝子カセット、第3の遺伝子カセット、第4の遺伝子カセット、第5の遺伝子カセット、第6の遺伝子カセット、第7の遺伝子カセット、第8の遺伝子カセット、及びマーカー遺伝子カセット)は、異なる配列及び/又は順序で組み立てることができる。したがって、組み立てられた産物は、組換えアセンブリに異なる重複する/相同なポリヌクレオチドを用いることにより、その中に含まれる遺伝子カセットの配列について本組換えポリヌクレオチド配列と異なっていてよい。代わりに、異なる制限酵素を用いて所望の遺伝子カセットを生成させてもよい。それ故に、本遺伝子カセットを含む異なるアセンブリ配列のポリヌクレオチド配列もまた、本開示の範囲内である。
組み立てられた組換えポリヌクレオチド配列の順序は、実験又は臨床研究で一般的に用いられる任意の方法により確認及び分析することができる。例えば、順序は、遺伝子配列決定、制限酵素消化、又はロングPCRアッセイにより分析することができる。本開示の一実施形態によれば、組換えポリヌクレオチド配列の順序は、ロングPCRアッセイにより分析される。一般に、ロングPCRアッセイは、極めて長いPCR産物(最大40kb DNA)を増幅するために用いられる技術であり、これは取扱説明書にしたがって市販のキットにより実施することができる。
2. 本組換えポリヌクレオチド配列を含むベクター
本開示の第2の態様は、本開示の上述の態様/実施形態に係る組換えポリヌクレオチド配列と、前記組換えポリヌクレオチド配列に動作可能に連結された制御配列とを含む、ベクターに関する。
制御配列は、様々なタイプの宿主細胞での組換えポリヌクレオチド配列の発現を容易にする目的で存在する。したがって、制御配列は、様々な要素(例えば、プロモーター、リボソーム結合部位/RBS、エンハンサー/サイレンサー、及びターミネーター)をその中に含んでよい。例えば、酵母細胞において発現させるために、制御配列は、酵母ゲノムにおける複製の起点を含む自律複製配列(ARS)を含むだろう。ここで、ARSは、プラスミド安定性に対するそれらの影響の順に名付けられた、4つの領域(A、B1、B2、及びB3)を含む。A−ドメインは高度に保存されており、任意の突然変異は複製の起点の機能を無効にする。B1、B2、及びB3領域における突然変異は、複製の起点の機能を弱めるが、妨げないだろう。一般に、酵母細胞におけるベクター複製の開始のための、制御配列の複製起点は、複製タンパク質を採用する必須のDNA配列(すなわち、ARSコンセンサス配列、ACS)から成る。
原核宿主細胞において発現させるために、制御配列は、複製起点(ori)、及びオペロンを含んでよい。典型的には、複製起点としては、Escherichia coli(E. coli)のゲノムに由来するoriC、又はpBR322(E. coliのプラスミド)に由来し2つの突然変異を含むpUCが可能である。オペロンは、プロモーターの発現を調節するのに用いられ、適切なオペロンの例としてはlacオペロン、trpオペロン、及びTn10由来テトラサイクリン耐性(Tet)オペロンがあるが、これらに限定されない。
哺乳類細胞において発現させるために、制御配列は、複製起点、及びエンハンサー/サイレンサーを含んでよい。ベクターの複製を哺乳類細胞において開始させるための複製起点としては、SV40ウイルスのゲノムに由来するSV40起点、又は哺乳類細胞のゲノムに由来するoriCが可能である。エンハンサーは、一般にシス作用性の、それが調節する遺伝子の上流又は下流に位置する、DNAの短い(50〜1500bp)領域であり、遺伝子の転写を活性化するタンパク質(アクチベーター)に結合できる。一方、サイレンサーは、それが調節する遺伝子の上流又は下流に位置するDNA配列であり、遺伝子の転写を抑制する転写因子(リプレッサー)に結合することができる。
本組換えポリヌクレオチド配列は、熟練した職人に知られる任意の方法により制御配列に動作可能に連結することができる。例えば、連結は、適切な制限酵素、Gateway(登録商標)クローニングシステム、又は相同組換えにより実施することができる。本開示の一実施形態によれば、本組換えポリヌクレオチド配列は、相同組換えにより制御配列に動作可能に連結される。具体的には、本組換えポリヌクレオチド配列は、酵母細胞内へ制御配列と共に同時形質転換され、ここで組換えポリヌクレオチド配列の5'末端及び3'末端は、制御配列内のマーカー遺伝子の3'末端及び5'末端にそれぞれに相同である。それ故に、組換えポリヌクレオチド配列に含まれる遺伝子カセットは、制御配列内にインビボで自然発生的に組み立てることができる。一つの具体的な実施形態において、制御配列はプラスミドpRS426であり、マーカー遺伝子はURA3遺伝子である。
本開示の一実施形態によれば、制御配列はハイコピー数プラスミドベクターである。それ故に、相同組換えの後、本組換えポリヌクレオチド配列は酵母細胞で高度に発現できる。
3. 本組換えポリヌクレオチド配列を発現するための宿主細胞
本開示の第3の態様は、組換えポリヌクレオチド配列を発現するために用いられ、それによりアスタキサンチン、その前駆体及び/又は誘導体を生産する宿主細胞に関する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、セクション1.1、1.2、1.3、又は1.4の組換えポリヌクレオチド配列を含む、セクション2のベクターで遺伝子導入される。
このように生産されたアスタキサンチンは、3S, 3S'−アスタキサンチン又は3R, 3R'−アスタキサンチンであってよい。アスタキサンチンの前駆体は、ゲラニルゲラニルピロリン酸、フェニコキサンチン、リコペン、エキネノン、カンタキサンチン、フィトエン、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチン、又はβ−カロチンであってよい。アスタキサンチンの誘導体は、アスタキサンチンモノエステル又はアスタキサンチンジエステルであってよい。
本組換えポリヌクレオチド配列及び/又はベクターは、熟練した職人に知られる方法により宿主細胞へ導入することができる。具体的には、関連分野で一般的に用いられる、外来性DNA及び/又はベクターを原核宿主細胞(例えば、細菌宿主細胞)へ導入するための方法としては、化学的処理(二価カチオンを含有する溶液中で宿主細胞をインキュベートし、次いで熱処理を行うなど)、及びエレクトロポレーション(細胞膜に穴を開ける電場で宿主細胞を短く処理するなど)がある。
外来性DNA及び/又はベクターを酵母細胞に導入するために、以下の処理のいずれかを用いてよい。この処理としては、酵素処理(宿主細胞を酵素で処理して細胞壁を分解する)、化学的処理(宿主細胞をアルカリカチオンに暴露する)、エレクトロポレーション、及びガラスビーズ撹拌があるが、これらに限定されない。本開示の一実施形態によれば、本組換えポリヌクレオチド配列及び/又はベクターは、エレクトロポレーションを介して酵母細胞に導入される。
外来性DNA及び/又はベクターを真核宿主細胞(例えば、哺乳類細胞)へ導入することに関しては、化学物質(リン酸カルシウム、高度に分岐した有機化合物/デンドリマー、リポソーム、及びカチオン性ポリマーなど)、エレクトロポレーション、細胞スクイージング(細胞膜を穏やかに絞る)、ソノポレーション(高強度超音波により細胞膜の細孔形成を誘導する)、光学的遺伝子導入(高度に集束したレーザーにより細胞膜に微小孔を作製する)、インパルフェクション(impalefection)(ナノ繊維の表面に結合したDNAが細胞に挿入される)、遺伝子銃(不活性固体のナノ粒子にDNAが結合し、次いで標的細胞の核に直接「ショット」される)、マグネトフェクション/磁石補助下遺伝子導入(標的細胞にDNAを送達するために磁力を用いる)、及び/又はウイルス法/ウイルス形質導入(標的細胞にDNAを送達するキャリアとしてウイルスを用いる)により、宿主細胞を処理してよい。
したがって、アスタキサンチン、その前駆体及び/又は誘導体を発現するのに適切な宿主細胞としては、原核(例えば、細菌細胞)、又は真核(例えば、酵母細胞及び哺乳類細胞)が可能である。本開示の好ましい一実施形態によれば、宿主細胞は酵母細胞である。
いくつかの実施形態によれば、宿主細胞は、Kluveromyces marxianus、Candida boidinii、Aspergillus terreus、Pichia pastoris、Hansenula polymorpha、Klyveromyces lactis、Arxula adeninivorans、Yarrowia lipolytica、Schizosaccharomyces pombe、Saccharomyces cerevisiae、Kluyveromyces marxianus、Lecanicillium、Galactomyces、Geotrichum、Scopulariopsis、Fusarium、Cyberlindnera、Debaryomyces、Dekkera、Hanseniaspora、Kazachstania、Lachancea、Metschnikowia、Pichia、Torulopsis、Schwanniomyces、Starmerella、Trigonopsis、Wickerhamomyces、Zygosaccharomyces、Zygotorulaspora、Lachancea、Torulaspora、Neurospora、Aspergillus、Penicillium、Sporendonema、Cystofilobasidium、Guehomyces、Mucor、Rhizopus、Escherichia coli、Bifidobacterium、Brevibacterium、Corynebacterium、BrachYbacterium、Microbacterium、Arthrobacter、Kocuria、Micrococcus、Propionibacterium、Streptomyces、Bacillus、Carnobacterium、Enterococcus、Tetragenococcus、Lactobacillus、Pediococcus、Leuconostoc、Oenococcus、Weissella、Macrococcus、Staphylococcus、Lactococcus、Streptococcus、Acetobacter、Gluconacetobacter、Hafnia、Halomonas、及びZymomonas細胞からなる群より選択される酵母細胞である。一つの具体的な実施形態において、宿主細胞はKluyveromyces marxianusである。
本開示の一実施形態によれば、アスタキサンチン、その前駆体及び/又は誘導体を効率よく生産するために、宿主細胞は、セクション1及び2において上述の本遺伝子カセット/組換えポリヌクレオチド配列/ベクターの1以上のコピーを含んでよい。
培養宿主細胞からのタンパク質の大量生産に一般的に用いられる発酵プロセスの間に毒性中間体産物が生じるため、本組換えポリヌクレオチド配列/ベクターにより生産されたアスタキサンチン/アスタキサンチン前駆体/アスタキサンチン誘導体は、発酵プロセスの間、毒性中間体による損傷から宿主細胞を保護してよい。
本開示の実施形態によれば、このように生産されたアスタキサンチン、その前駆体、及び/又は誘導体は、宿主細胞をストレス耐性にする抗酸化活性を呈する。ストレスは、エタノール、ブタノール、UV暴露、フルフラール、及び/又は抗がん剤の前駆体に宿主細胞を暴露することにより引き起こすことができる。一つの具体的な例において、宿主細胞は、抗がん剤パクリタキセルを生じる、抗がん剤の前駆体、10−デアセチルバッカチンIII(10DB)に耐性である。異なるストレスに対する宿主細胞の耐性は、実験の目的に応じ、様々な方法で評価することができる。例えば、耐性は、コロニー数、細胞増殖、細胞密度、又は遺伝子発現の測定により評価することができる。
4. アスタキサンチン、その前駆体、又は誘導体を生産する方法
本開示の第4の態様は、アスタキサンチン、その前駆体及び/又は誘導体を生産する方法に関する。この方法は、セクション3に記載の宿主細胞を、グルコース、ガラクトース、グリセロール、脂肪酸、及び/又はそれらの組み合わせからなる群より選択される材料を含む培地(例えば、酵母エキス−ペプトン−グリセロール(YPG)培地)中で培養することを含む。一つの実施形態において、培地はグリセロールを含む。別の実施形態において、培地はグルコースを含む。さらに別の実施形態において、培地はガラクトースを含む。またさらに別の実施形態において、培地はオクタン酸などの脂肪酸を含む。
宿主細胞内での遺伝子カセットの発現を誘導するのに十分な、グルコース、ガラクトース、又はグリセロールの濃度は、約0.5〜40%(質量濃度、w/w)である。すなわち、この濃度は、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%、15質量%、16質量%、17質量%、18質量%、19質量%、20質量%、21質量%、22質量%、23質量%、24質量%、25質量%、26質量%、27質量%、28質量%、29質量%、30質量%、30質量%、31質量%、32質量%、33質量%、34質量%、35質量%、36質量%、37質量%、38質量%、39質量%、又は40質量%が可能である。一方、宿主細胞内での遺伝子カセットの発現を誘導するのに十分な、脂肪酸の濃度は、約0.001%〜5%(質量濃度、w/w)である。すなわち、この濃度は、0.001質量%、0.002質量%、0.003質量%、0.004質量%、0.005質量%、0.006質量%、0.007質量%、0.008質量%、0.009質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、0.06質量%、0.07質量%、0.08質量%、0.09質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、又は5質量%が可能である。
好ましくは、宿主細胞内での遺伝子カセットの発現を誘導するのに用いられるグルコース、ガラクトース、又はグリセロールの濃度は、約5〜30%である。一方、宿主細胞内での遺伝子カセットの発現を誘導するのに用いられる脂肪酸の濃度は、約0.005〜0.5%である。
本開示のいくつかの実施形態によれば、培地は、グルコース、ガラクトース、グリセロール、及び脂肪酸からなる群より選択される1つの成分を含む。一つの実施形態において、培地は20%グルコースを含む。別の実施形態において、培地は20%ガラクトースを含む。さらに別の実施形態において、培地は0.01〜0.1%脂肪酸を含む。一つの好ましい実施形態において、培地は10〜20%グリセロールを含む。
理解されるように、宿主細胞内での遺伝子カセットの発現を効率よく誘導するために、培地は、グルコース、ガラクトース、グリセロール、及び脂肪酸からなる群より選択される少なくとも2つの成分を含んでよい。
本開示の実施形態によれば、宿主細胞がアスタキサンチンを生産するのに適切な温度は、約18℃〜42℃の範囲である。例えば、この温度は、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、又は42℃が可能である。一つの実施形態において、温度は30℃である。別の実施形態において、温度は37℃である。一つの好ましい例によれば、温度は25℃である。
宿主での本組換えポリヌクレオチド配列/ベクターの発現は、本技術分野において知られる様々な方法により評価することができる。例えば、発現は、本宿主を含むコロニー及び/又はブロスの色の直接可視化及び/又は写真撮影により、検出することができる。又は、発現は、細胞増殖の測定、細胞密度の測定、遺伝子発現の測定、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析、又は液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC/MS)分析により分析することができる。
本開示のいくつかの実施形態によれば、本方法は、このように生産されたアスタキサンチン、その前駆体及び/又は誘導体を、直接宿主細胞又は培地から単離するステップをさらに含む。一つの実施形態において、アスタキサンチンは、自己溶解(酵母細胞をトルエン/水酸化アンモニウムと混合し、続いて混合物を室温で24〜48時間インキュベートする)、ホモジナイゼーション(ホモジナイザー、フレンチプレス、又はManton−Gaulinホモジナイザーの使用による)、ガラスビーズボルテックス(ガラスビーズでの撹拌によって、酵母細胞を破壊する)、酵素的溶解(ザイモラーゼ又はリチカーゼによる細胞壁の消化)、凍結及び粉砕(液体窒素中で細胞を直接凍結し、乳鉢と乳棒で凍結細胞を粉末に粉砕する)、及び化学的処理(宿主細胞をSDS、及び/又はアセトンで処理することによるものなど)などによって、酵母細胞から発現タンパク質を抽出することにより、宿主細胞から直接単離される。本開示の一実施形態によれば、アスタキサンチンは、宿主細胞をアセトンで処理することにより、酵母細胞から抽出される。別の実施形態によれば、アスタキサンチンは、凍結乾燥し、続いてメタノール処理することにより、宿主細胞から抽出される。
本開示のいくつかの実施形態によれば、このように生産されたアスタキサンチンは、3S, 3S'−アスタキサンチン又は3R, 3R'−アスタキサンチンである。
一実施形態によれば、本方法の産物はアスタキサンチンの前駆体であり、これはGGPP、フェニコキサンチン、リコペン、エキネノン、カンタキサンチン、β−クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、フィトエン、又はβ−カロチンであってよい。
他の実施形態によれば、本方法の産物はアスタキサンチンの誘導体であり、これはアスタキサンチンモノエステル又はアスタキサンチンジエステルであってよい。
本開示の実施形態によれば、このように生産されたアスタキサンチン及び/又はその前駆体又は誘導体は抗酸化活性を有し、抗酸化物質として用いることができる。抗酸化活性は、当業者に知られる任意のインビトロ及び/又はインビボ法により評価することができる。例えば、インビトロ抗酸化活性を評価するのに適切な方法としては、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(α,α−ジフェニル−β−ピクリルヒドラジル;DPPH)消去活性、過酸化水素消去(H2O2)アッセイ、一酸化窒素消去活性、ペルオキシナイトライトラジカル消去活性、Trolox等価抗酸化能力(TEAC)法/ABTSラジカルカチオン脱色アッセイ、全ラジカル補足抗酸化パラメーター(TRAP)法、第二鉄還元−抗酸化力(FRAP)アッセイ、スーパーオキシドラジカル消去活性(SOD)、ヒドロキシルラジカル消去活性、ヒドロキシルラジカル回避能(HORAC)法、酸素ラジカル吸収能(ORAC)法、還元力法(RP)、ホスホモリブデン法、チオシアン酸第二鉄(FTC)法、チオバルビツール酸(TBA)法、DMPD(N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩)法、β−カロチンリノール酸法/共役ジエンアッセイ、キサンチンオキシダーゼ法、第二銅イオン還元抗酸化能力(CUPRAC)法、又は金属キレート化活性が可能である。インビボ抗酸化活性を決定する方法としては、血漿の第二鉄還元能力、還元型グルタチオン(GSH)推定、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSHPx)推定、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)法、カタラーゼ(CAT)、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ活性(GGT)アッセイ、グルタチオンレダクターゼ(GR)アッセイ、脂質過酸化(LPO)アッセイ、及びLDLアッセイがあるが、これらに限定されない。本開示の一実施形態によれば、生産されたアスタキサンチン、又はその前駆体又は誘導体の抗酸化活性を測定するために、Trolox等価抗酸化能力(TEAC)法/ABTSラジカルカチオン脱色アッセイが用いられる。
以下の実施例は、本発明の特定の態様を解明し、本発明を実施する上で当業者を助けるために提供される。これらの実施例は決して本発明の範囲をなんら限定するものではない。さらなる詳述なしに、当業者は本明細書の記載に基づいて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。本明細書に引用される全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
材料及び方法
遺伝子合成
Chlamydomonas reinhardtiiのbkt遺伝子、Chlamydomonas reinhardtiiのchYb遺伝子(すなわち、CrChYb遺伝子)、Chromochloris zofingiensisのchYb遺伝子(すなわち、CzChYb遺伝子)、及びHaematococcus pluvialisのchYb遺伝子(すなわち、HpChYb遺伝子)を、GeneArt(登録商標)遺伝子合成(GENEART、Germany)によりそれぞれ合成した。全ての合成遺伝子配列を、宿主であるXanthophyllomyces dendrorhousのコドン使用頻度に基いて、GeneOptimizer(登録商標)プロセスによる多重パラメーター遺伝子最適化に供した。
したがって、合成bkt遺伝子は配列番号8のアミノ酸配列を有し、合成CrChYb遺伝子は配列番号5のアミノ酸配列を有し、合成CzChYb遺伝子は配列番号6のアミノ酸配列を有し、合成HpChYb遺伝子は配列番号7のアミノ酸配列を有した。
遺伝子クローニング
crtE遺伝子、トランケート型HMG1遺伝子(tHMG1遺伝子)、crtI遺伝子、crtYB遺伝子、crtR遺伝子、及びcrtS遺伝子を、Xanthophyllomyces dendrorhous及びKluyveromyces marxianusからPCRによりそれぞれ増幅した。各遺伝子をクローニングするのに用いられるプライマー及び各クローニング遺伝子の配列識別番号(配列番号)を表2に列挙した。
KlLac4プロモーターを、配列番号70、71、72、及び73のプライマーによりPCRで増幅した。増幅したKlLac4プロモーターは、配列番号63のヌクレオチド配列を有した。ScGapDHプロモーターを、配列番号74、75、76、及び77のプライマーによりPCRで増幅した。増幅したScGapDHプロモーターは、配列番号64のヌクレオチド配列を有した。ScPGKプロモーターを、配列番号82、83、84、及び85のプライマーによりPCRで増幅した。増幅したScPGKプロモーターは、配列番号65のヌクレオチド配列を有した。KlGapDHプロモーターを、配列番号86、87、88、及び89のプライマーによりPCRで増幅した。増幅したKlGapDHプロモーターは、配列番号66のヌクレオチド配列を有した。KlPGKプロモーターを、配列番号90、91、92、及び93のプライマーによりPCRで増幅した。増幅したKlPGKプロモーターは、配列番号67のヌクレオチド配列を有した。KlADHIプロモーターを、配列番号94、95、96、及び97のプライマーによりPCRで増幅した。増幅したKlADHIプロモーターは、配列番号68のヌクレオチド配列を有した。ScADHIプロモーターを、配列番号78、79、80、及び81のプライマーによりPCRで増幅した。増幅したScADHIプロモーターは、配列番号69のヌクレオチド配列を有した。
組換えポリヌクレオチド配列の以下の構築を容易にするために、増幅したプロモーターを、制限酵素SalI及びEcoRIにより、プラスミドpUC18プラスミドへそれぞれクローニングした。
遺伝子カセットアセンブリ
境界上に重複する55bpの領域を含む連続遺伝子カセットを組換え遺伝子アセンブリに用いた。遺伝子カセットを、TaKaRa Ex Taqシステムの使用による融合PCRにより組み立てた。反応混合物は、0.2mMの各プライマー(それぞれ以下に記載)、0.25mMの各デオキシヌクレオシド三リン酸、2mM MgCl2を含む1xPCRバッファー、2μLのDNA及び2.5UのEx Taq DNAポリメラーゼを含んだ。PCR反応は、94℃で1分間、続いて58℃〜53℃のアニーリング温度で1分間、及び72℃で最適化された時間、10サイクル行った。
最適な条件のための酵母培養
カロテノイド生産に最適な条件を見つけるために、改変酵母を、YPG培地(1%BactoDifco−酵母エキス、2%BactoDifco−ペプトン、2%Merck−D(+)−ガラクトース)中で、それぞれ25℃、30℃、及び37℃で3日間培養した。細胞増殖のための炭素源の利用を試験するために、改変酵母を、20%グルコース、20%ガラクトース、又は20%グリセロールを添加したYPG培地中で培養した。
酵母の形質転換及びクローンスクリーニング
酵母細胞を、5mlのYPG培地(1%BactoDifco−酵母エキス、2%BactoDifco−ペプトン、2%Merck−D(+)−グルコース)中で、200rpmで振盪しながら30℃で16時間インキュベートした。外来性遺伝子である遺伝子カセットを酵母細胞で発現させるために、遺伝子カセットを、Klyveromyces lactis(K. lactisタンパク質発現キット、New England Biolabs)へ同時形質転換した。遺伝子カセットをHiFi−PCR(高忠実度酵素であるPrimeSTAR MAX DNAポリメラーゼ、TaKaRaを用いたポリメラーゼ連鎖反応)により増幅し、1ステップで細胞に導入すると、それらは、予め指定された順序で、重複するプロモーター配列のペアの間での相同組換えにより結合した。次いでそれらを、最初の遺伝子カセットのプロモーター配列及び最後の遺伝子カセットの3'末端での相同組換えによりゲノムへ挿入した。G418耐性(KanMX)に必須のネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を、クローンスクリーニングのマーカー遺伝子として用いた。各断片を等モル比で含む10μl容積の標的DNA断片を、40μlのコンピテント細胞と混合した。アルミニウムキュベット(2mm)を備えるBioRadシステム(GenePluserXcell TM、Bio−Rad、Hercules、CA)を用いて、エレクトロポレーションを実施した(1.0kV、400Ω、及び25μFキャパシタンス)。G418(200μg/ml)を含むYPGプレート(1%BactoDifco−酵母エキス、2%BactoDifco−ペプトン、及び2%Merck−ガラクトース)上に細胞を広げた。
各断片の存在を確認するために、単離した各コロニーをQucikExtract(商標)DNA抽出溶液(EPICENTRE、Madison、Wisconsin)中で消化し、酵母細胞壁を取り除いた。遺伝子特異的チェックプライマー(配列番号23〜36)を有するこれらの遺伝子カセットの順序をチェックするのに、ロングPCR法(EmeraldAmp MAX PCR Master Mix、TaKaRa)を用いた。そして、ハイスループットコロニースクリーニングを、自動電気泳動分析システム(Fragment AnalyzerTM Automated CE System、Advanced Analytical Technologies)により達成した。
逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)アッセイ
ゲノムDNAを、DNA単離キットIII(DNA Isolation Kit III、Roche)を用いて酵母細胞から精製した。鋳型mRNAを、RNeasy mini kits (Qiagen、Chatsworth、CA)を用いて酵母細胞から精製した。cDNA合成を、逆転写キット(SuperScript(商標) II kit、Invitrogen)を用いて実施した。リアルタイムqPCR分析を、同じ株におけるこれらのプロモーターの駆動力をチェックするために用いることができ、これらのプロモーター間の相対的転写プロファイルは、様々な培養温度下で確立される。各遺伝子の相対的定量は、Universal Probe Library Set(UPLS、LightCyclerW 480 Probes Master、Roche)により、特異的プライマー対(アンプリコンサイズは100〜150bp)を用い、LightCycler(LightCycler 480、Roche)で、製造業者のプロトコルにしたがい、実施した。RT−PCTアッセイで遺伝子発現を分析するのに用いたプライマーを表3に列挙した。
抗酸化能力アッセイ
2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)は、食品の抗酸化能力を測定するために、食品産業及び農業研究者により頻繁に使用されている。このアッセイにおいて、ABTSは、過硫酸ナトリウムの添加により、ラジカルカチオンに変換される。このラジカルカチオンは青色であり、734nmの光を吸収する。ABTSラジカルカチオンは、ほとんどの抗酸化物質に対して反応性である。この反応の間に、青色のABTSラジカルカチオンは、その無色の中性形態に戻る。この反応は、分光光度法でモニターすることができる。このアッセイは、しばしばTrolox等価抗酸化能力(TEAC)アッセイと呼ばれる。試験した様々な抗酸化物質の反応性を、ビタミンEの水溶性アナログであるTroloxの反応性と比較する。機能確認のために、細胞の抗酸化能力アッセイをABTS基質反応で行った。YPG培地中25℃72時間の培養の後、細胞を凍結乾燥し、分析のために、細胞中の色素をメタノールにより抽出した。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析
3日間培養した細胞を回収し、脱イオン水で洗浄した。細胞ペレットを凍結乾燥機で凍結乾燥した。逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析のために、カロテノイドを乾燥した細胞からアセトンで抽出した。分析を行うために、PU−2089クォータナリポンプ及び870−UVインテリジェントUV−VIS検出器を含む、Jasco HPLC機器を用いた。HPLC分離及び量子化を、Nomura Chemical Develosil C30−UG Column(3μm、ID4.6mmxL250mm−UG17346250W)で、メタノール/MTBE/水(81:15:4)及びメタノール/MTBE/水(7:90:3)を移動層として用いて行った。使用した流速は1ml/minであり、クロマトグラムは460nmで記録した。
エタノール生産アッセイ
エタノールの生産は、炎イオン化検出器(FID)及びステンレス鋼カラム(80/120 Carbopack B/6.6% Carbowax、2m x 2mm)を備えるガスクロマトグラフィー(Shimazdu、GC−14、Japan)によって、窒素を移動ガスとして用いて分析した。運転条件は、4℃毎分の傾斜率で80℃から150℃までのカラムの加熱、180℃の注入温度、及び250℃の検出温度を含んだ。各発酵実験及びその後の分析を3回繰り返した。
例1 組換えポリヌクレオチド配列の構築
1.1 crtE−Kan−tHMG1
ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)は、多くの生物において、カロテノイド、ジベレリン、トコフェロール、クロロフィル、テルペン及びテルペノイドなどの医薬化合物の生合成に重要な前駆体である。HMG−CoAレダクターゼ(HMG1遺伝子によりコードされる)及びGGPPシンターゼ(crtE遺伝子によりコードされる)は、HMG−CoAレダクターゼ経路における2つの重要な中間体である。トランケート型HMG−CoAレダクターゼ(tHMG1)を発現させることにより、酵母においてフィードバック阻害が減少し、それ故に下流のGGPP蓄積を向上させることができることが示されている。したがって、組換えポリヌクレオチド配列crtE−Kan−tHMG1は、crtE遺伝子及びHMG1遺伝子を含むように構築した。G418耐性(Kan)に必須のネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を、クローンスクリーニングのためのマーカー遺伝子として用いた。
異なる宿主細胞に由来するHMG−CoAレダクターゼ及びGGPPシンターゼのアミノ酸配列をBLAST分析により分析した(図4a及び5a)。機能ドメインの予測されるアミノ酸配列に基づいて(図4b及び5b)、発現宿主に最適化されたコドン使用頻度で遺伝子をクローニング又は合成し、次いで、各プロモーターを有するデザイナー遺伝子カセットとして構築した。
実際には、最初に、配列番号11及び12のプライマーによるPCRにより増幅したcrtE遺伝子を、プラスミドpUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、KlLac4プロモーターと組み立て、次いで配列番号23及び24のプライマーによるPCRにより増幅してKlLac4−crtE遺伝子カセットを作製した。配列番号94及び95のプライマーを用いるPCRにより増幅したKan遺伝子を、プラスミドpUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、KlGapDHプロモーターと組み立て、次いで配列番号25及び26のプライマーを用いるPCRにより増幅し、KlGapDH−Kan遺伝子カセットを作製した。ここで、配列番号25のヌクレオチド配列は配列番号24のヌクレオチド配列に部分的に相補的であり(すなわち、AGTATGGTAACGACCGTACAGGCAA 対 TTGCCTGTACGGTCGTTACCATACT)、それ故に、KlGapDH−Kan遺伝子カセットの5'末端はKlLac4−crtE遺伝子カセットの3'末端に相同であった。配列番号13及び14のプライマーによるPCRにより増幅したtHMG1遺伝子を、プラスミドpUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、ScADHIプロモーターと組み立て、次いで配列番号27及び28のプライマーを用いるPCRにより増幅し、ScADHI−tHMG1遺伝子カセットを作製した。ここで、配列番号27のヌクレオチド配列は配列番号26のヌクレオチド配列に部分的に相補的であり(すなわち、GTGTACAATATGGACTTCCTCTTTTC 対 GAAAAGAGGAAGTCCATATTGTACAC)、したがって、ScADHI−tHMG1遺伝子カセットの5'末端はKlGapDH−Kan遺伝子カセットの3'末端に相同であった。
KlLac4−crtE遺伝子カセットとKlGapDH−Kan遺伝子カセットとの間の相同な配列、及びKlGapDH−Kan遺伝子カセットとScADHI−tHMG1遺伝子カセットとの間の相同な配列に基いて、3つの遺伝子カセットをKluyveromyces marxianusへ同時形質転換すると、それらは自然発生的に組み立てられ、組換えポリヌクレオチド配列crtE−Kan−tHMG1を生じた(図6及び表4に要約されるように)。組換えポリヌクレオチド配列crtE−Kan−tHMG1を含む改変株をXd3.0と命名した。
1.2 crtI−crtE−Kan−crtYB−tHMG1
β−カロチンは、最もよく知られたプロビタミンAカロテノイドであり、赤血球形成性プロトポルフィリン症などの様々な疾患を治療するために使用されてきた。それはまた、閉経前の女性の乳がんのリスクと加齢性黄斑変性(AMD)のリスクを軽減するためにも使用されてきた。β−カロチンは下流のカロテノイドの生産のための重要な中流前駆体であり、crtY(フィトエンシンターゼ)遺伝子、crtI(フィトエンデサチュラーゼ)遺伝子及びcrtB(リコペンシクラーゼ)はβ−カロチン生合成経路において重要な媒介物である。したがって、crtI遺伝子、crtE遺伝子、crtYB遺伝子(フィトエンシンターゼ及びリコペンシクラーゼの二機能性酵素をコードする)、tHMG1遺伝子、及びKanマーカー遺伝子を含む、組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtE−Kan−crtYB−tHMG1を、例1.2において構築した。
リコペンシクラーゼドメイン、トランス−イソプレニル二リン酸シンターゼ、及びNAD(P)結合ロスマン様ドメインのアミノ酸配列を、BLAST分析によりそれぞれ分析した(図7a、7c及び8a)。機能ドメインの予測されたアミノ酸配列に基づいて(図7b、7d及び8b)、発現宿主に最適化されたコドン使用頻度で遺伝子をクローニング又は合成し、次いで、個々のプロモーターを有するデザイナー遺伝子カセットを構築した。
例1.1で説明したのと同様の戦略で、最初に、配列番号15及び16のプライマーを用いるPCRにより増幅したcrtI遺伝子を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、KlLac4プロモーターと組み立て、次いで配列番号23及び29のプライマーを用いるPCRにより増幅してKlLac4−crtI遺伝子カセットを作製した。配列番号11及び12のプライマーを用いるPCRにより増幅したcrtE遺伝子を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、ScPGKプロモーターと組み立て、次いで配列番号30及び24のプライマーを用いるPCRにより増幅してScPGK−crtE遺伝子カセットを作製した。配列番号94及び95のプライマーを用いるPCRにより増幅したKan遺伝子を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、KlGapDHプロモーターと組み立て、次いで配列番号25及び31のプライマーを用いるPCRにより増幅してKlGapDH−Kan遺伝子カセットを作製した。配列番号17及び18のプライマーを用いるPCRにより増幅したcrtYB遺伝子を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、KlADHIプロモーターと組み立て、次いで配列番号32及び26のプライマーを用いるPCRにより増幅し、KlADHI−crtYB遺伝子カセットを作製した。配列番号13及び14のプライマーを用いるPCRにより増幅したtHMG1遺伝子を、pUC18中に、制限酵素XhoI及びNotIにより、ScADHIプロモーターと組み立て、次いで配列番号27及び28のプライマーを用いるPCRにより増幅してScADHI−tHMG1遺伝子カセットを作製した。
それぞれの遺伝子カセットの間の相同な配列で、5つの遺伝子カセットをKluyveromyces marxianusへ同時形質転換すると、それらは自然発生的に組み立てられ、組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtE−Kan−crtYB−tHMG1を生じた(図9及び表5に要約されるように)。組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtE−Kan−crtYB−tHMG1を含む改変株をXd5.0と命名した。
1.3 crtI−crtR−crtE−Kan−crtS−crtYB−tHMG1
β−カロチン中間体をアスタキサンチンに変換するために、2つの下流のアスタキサンチンシンターゼ遺伝子、crtS(β−カロチンオキシゲナーゼ)及びcrtR(P450レダクターゼ)をKluyveromyces marxianus宿主に導入した。例1.3において、crtI遺伝子、crtR遺伝子、crtE遺伝子、crtS遺伝子、crtYB遺伝子(フィトエンシンターゼ及びリコペンシクラーゼの各機能を有する二機能性酵素をコードする)、tHMG1遺伝子、及びKanマーカー遺伝子を含む組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtR−crtE−Kan−crtS−crtYB−tHMG1を構築した。
β−カロチンオキシゲナーゼ及びP450レダクターゼの保存ドメイン領域を触媒ドメインとして決定した(図10a及び11a)。さらに、各保存ドメインの保存残基もまた分析した(図10b、11b、及び11c)。組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtR−crtE−Kan−crtS−crtYB−tHMG1を構築するのに用いたコドンは、分析結果に基づいた。同様のPGASO構築戦略で、配列番号15及び16のプライマーを用いるPCRにより増幅したcrtI遺伝子を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、KlLac4プロモーターと組み立て、次いで配列番号23及び33のプライマーを用いるPCRにより増幅してKlLac4−crtI遺伝子カセットを作製した。配列番号19及び20のプライマーを用いるPCRにより増幅したcrtR遺伝子を、pUC18中に、制限酵素SfiI及びNcoIにより、ScGapDHプロモーターと組み立て、次いで配列番号34及び29のプライマーを用いるPCRにより増幅してScGapDH−crtR遺伝子カセットを作製した。配列番号11及び12のプライマーを用いるPCRにより増幅したcrtE遺伝子を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、ScPGKプロモーターと組み立て、次いで配列番号30及び24のプライマーを用いるPCRにより増幅してScPGK−crtE遺伝子カセットを作製した。配列番号98及び99のプライマーを用いるPCRにより増幅したKan遺伝子を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、KlGapDHプロモーターと組み立て、次いで配列番号25及び35のプライマーを用いるPCRにより増幅してKlGapDH−Kan遺伝子カセットを作製した。配列番号21及び22のプライマーを用いるPCRにより増幅したcrtS遺伝子を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、KlPGKプロモーターと組み立て、次いで配列番号36及び31のプライマーを用いるタンパク質PCRにより増幅してKlPGK−crtS遺伝子カセットを作製した。配列番号17及び18のプライマーを用いるPCRにより増幅したcrtYB遺伝子を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNotIにより、KlADHIプロモーターと組み立て、次いで配列番号32及び26のプライマーを用いるPCRにより増幅してKlADHI−crtYB遺伝子カセットを作製した。配列番号13及び14のプライマーを用いるPCRにより増幅したtHMG1遺伝子を、pUC18中に、制限酵素NotI及びXhoIにより、ScADHIプロモーターと組み立て、次いで配列番号27及び28のプライマーを用いるPCRにより増幅してScADHI−tHMG1遺伝子カセットを作製した。
7つの遺伝子カセットをKluyveromyces marxianusへ同時形質転換すると、遺伝子カセット間の相同な配列に基づき、それらは自然発生的に組み立てられ、組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtR−crtE−Kan−crtS−crtYB−tHMG1を生じた(図12及び表6に要約されるように)。組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtR−crtE−Kan−crtS−crtYB−tHMG1を含む改変株をXd7−3と命名した。
この改変株Xd7−3は、赤色カロテノイド、3R, 3'Rアスタキサンチン立体異性体を生産することができるはずである。しかしながら、Xd7−3は、黄色カロテノイド(β−カロチン及びゼアキサンチン)蓄積による細胞色変化を呈した(図13a及び表7)。Xanthophyllomyces dendrorhous由来のβ−カロチンオキシゲナーゼ及びP450レダクターゼの酵素効率が十分でない、又は/及びScPGapDHのプロモーター強度が低すぎる可能性がある、と推測される。
1.4 crtI−crtE−ChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1
3S, 3'Sアスタキサンチン立体異性体を生産する目的で、2つの追加のアスタキサンチンシンターゼ遺伝子、bkt(β−カロチンケトラーゼをコードする)及びchYb(β−カロチンヒドロキシラーゼをコードする)をKluyveromyces marxianusに導入した。
組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtE−ChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1を構築するために、最初にβ−カロチンケトラーゼの保存領域のアミノ酸配列を分析した(図14a)。ここで、各保存領域の保存残基を図14bに図示した。分析結果に基づき、発現宿主に最適なコドン使用頻度で、遺伝子をクローニング又は合成し、次いでKlPGKプロモーターを有するデザイナー遺伝子カセットとして構築した。
さらに、アスタキサンチン生合成経路における他の重要な酵素遺伝子を選択するために、3つの異なる藻類である、C. reinhardtii(CrChYb)、Ch. zofingiensis(CZChYb)、及びH. pluvialis(HpChYb)からもchYb遺伝子をクローニングし、ScPGKプロモーターを有するデザイナー遺伝子カセットを構築するのに用いた。上述のように、保存ドメイン領域を決定した(図15)。この遺伝子を、宿主における発現のための最適なコドン使用頻度で、クローニング又は合成した。
組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtE−ChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1を、crtE−Kan−tHMG1又はcrtI−crtE−Kan−crtYB−tHMG1を構築するのと同様の方法により構築した。ここで、ChYb遺伝子としては、CrChYb遺伝子、CzChYb遺伝子、又はHpChYb遺伝子が可能である。簡潔に述べると、増幅したcrtI遺伝子断片を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、KlLac4プロモーターと組み立て、次いで配列番号23及び33のプライマーを用いるPCRにより増幅してKlLac4−crtI遺伝子カセットを作製した。増幅したcrtE遺伝子断片を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、ScGapDHプロモーターと組み立て、次いで配列番号34及び29のプライマーを用いるPCRにより増幅してScGapDH−crtE遺伝子カセットを作製した。ChYb遺伝子(すなわち、CrChYb遺伝子、CzChYb遺伝子、又はHpChYb遺伝子)を、pUC18中に、制限酵素XhoI及びNotIにより、ScPGKプロモーターと組み立て、次いで配列番号30及び24のプライマーを用いるPCRにより増幅してScPGK−ChYb遺伝子カセットを作製した。Kan遺伝子を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNcoIにより、KlGapDHプロモーターと組み立て、次いで配列番号25及び35のプライマーを用いるPCRにより増幅してKlGapDH−Kan遺伝子カセットを作製した。BKT遺伝子を、pUC18中に、制限酵素XhoI及びNotIにより、KlPGKプロモーターと組み立て、次いで配列番号36及び31のプライマーを用いるタンパク質PCRにより増幅してKlPGK−BKT遺伝子カセットを作製した。crtYB遺伝子を、pUC18中に、制限酵素AgeI及びNotIにより、KlADHIプロモーターと組み立て、次いで配列番号32及び26のプライマーを用いるPCRにより増幅してKlADHI−crtYB遺伝子カセットを作製した。tHMG1遺伝子を、pUC18中に、制限酵素XhoI及びNotI制限酵素部位により、ScADHIプロモーターと組み立て、次いで配列番号27及び28のプライマーを用いるPCRにより増幅してScADHI−tHMG1遺伝子カセットを作製した。
同様の概念で、各遺伝子カセット間の相同な配列は、組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtE−ChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1を生産するために、宿主細胞Kluyveromyces marxianusにおいて7つの遺伝子カセットの相同組換えを生じた。ここでChYbとしてはCrChYb、HpChYb、又はCzChYbが可能である(図16及び表8に要約されるように)。
生産された組換えポリヌクレオチド配列(すなわち、crtI−crtE−CrChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1、crtI−crtE−HpChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1、及びcrtI−crtE−CzChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1)をKluyveromyces marxianusゲノムにそれぞれ導入した(図16)。組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtE−HpChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1を含む改変株をHp9と命名した。組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtE−CrChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1を含む改変株をCr1と命名した。組換えポリヌクレオチド配列crtI−crtE−CzChYb−Kan−CrBKT−crtYB−tHMG1を含む改変株をCz5と命名した。
例2 例1.4の組換えポリヌクレオチド配列を含む改変株の特徴付け
例1.4において構築された改変株Cr1、Cz5、及びHp9の特徴を例2において調べた。最初に、遺伝子カセットの発現及びカロテノイドの生産性を例2.1において確認し、宿主細胞がカロテノイドを発現するのに最適な条件を例2.2において決定した。
2.1 例1.4の組換えポリヌクレオチド配列の発現
10世代の継代の後、安定なクローン、Cr1、Cz5、及びHp9を選択した。図13a及び表7のデータによれば、HpChYbはCrChYb及びCZChYbよりも強力なβ−カロチンヒドロキシラーゼ活性を有する可能性がある。各クローンにおけるこれらの遺伝子カセットの順序を確認するために、ロングPCR方法(EmeraldAmp MAX PCR Master Mix、TaKaRa)及び電気泳動分析を用いた。データは、これらの安定なクローンのそれぞれが、修正された順序で、設計された遺伝子カセットを有することを示した(図13b及び13c)。
50mlバッチの発酵培養を用い、最適な培養条件においてこれらの改変株を比較した。3日間の培養の後、増殖曲線データは、Hp9及びCz5株が、WT株、Cr1株、及びXd7−3株のいずれよりも、わずかに速く増殖したことを示した(図17c)。これらの株、特にHp9は、培養された培地の色が、コントロールのクリーム色から、赤色又は濃いオレンジ色へ、顕著に変化した(図17a及び17b)。
細胞中のカロテノイドを定量するために、アセトンを用いてこれらの色素を酵母培養物から抽出した。フルスペクトルUV/V分光光度法を用いてカロテノイドの総量を推定した。ここで、β−カロチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、及びゼアキサンチンを含む、遊離形態の純粋なカロテノイド化合物を、4つの標準として用いた。分析結果に基づくと、全てのカロテノイド化合物は400nm〜530nmの吸収スペクトルを有していた(データは示さず)。WT株以外の、これらの改変株の全て(Xd7−3、Cr1、Cz5、及びHp9)から抽出されたカロテノイドもまた、400nm〜530nmの吸収スペクトルを有していた(図17d)。
このように生産されたカロテノイドの組成を分析するためにHPLCを使用した。遊離形態のカロテノイド化合物のそれぞれは、それらの各リテンションタイムによって分離することができた。例えば、アスタキサンチンは7.8分で、ゼアキサンチンは9.7分で、カンタキサンチンは12.8分で、β−カロチンは32分で、分離することができる。標準曲線から補間することによりβ−カロチンの濃度を定量したところ、Xd7−3、Cr1、Cz5及びHp9株を含む各改変株は、それぞれ244.7、59.6、93.9及び224.4μg/gのβ−カロチンを蓄積することができると推定された。このデータはまた、Hp9株が、Cr1株よりも3.8倍速くβ−カロチンを生産することができることを示した。さらに、WT株及びXd7−3株以外の、藻類のbkt及びchyb遺伝子を有する全ての改変株が、同様にカンタキサンチンを細胞内に蓄積することができた。ここで、約18.4、12.8、及び39.8μg/gのカンタキサンチンが、Cr1、Cz5、及びHp9株にそれぞれ見出された(表7)。データはまた、Hp9株が、Cz5株よりも3.1倍速くカンタキサンチンを生産することができることを示した。
藻類β−カロチンヒドロキシラーゼ遺伝子である、Chlamydomonas reinhardtii由来のCrchyb、Chlorella zofingiensis由来のCzchyb、又はHaematococcus pluvialis由来のHpchyb、及び6つの他のカロテノイド−合成経路遺伝子を、酵母宿主Kluyveromyces marxianusのゲノムに共に組み込んだ。これらの3つの藻類遺伝子のそれぞれは、Phaffia rhodozyma由来の真菌遺伝子よりも、β−カロチンを下流のカロテノイドに変換する高い効率を示した。さらに、Hpchybを有する株は、Crchyb又はCzchybを組み込んだ株よりも高いカロテノイド生産性を示した。このことは、HpchybがCrchyb及びCzchybよりも効率的であることを示唆している。まとめると、これらの結果は、β−カロチンヒドロキシラーゼがカロテノイドの生合成に重要な役割を果たすことを示唆している。
さらに、UV450nm下でのHPLC分光測定アッセイによれば(図18a及び18b)、本例の各改変株は、遊離形態のカンタキサンチンのピーク(ピーク1)、遊離形態のβ−カロチンのピーク(ピーク6)、及びいくつかの未知のピーク(ピーク2、3、4、5、7、及び8)を示した。それ故に、これらの改変株は、ゼアキサンチン、3S, 3'Sアスタキサンチン立体異性体などのカロテノイド及びそれらの誘導体、及び/又はそれらのエステル化誘導体を生産することができるはずである。
2.2 例1.4の組換えポリヌクレオチド配列の最適な発現条件の特徴付け
本例において、カロテノイド及びそれらの誘導体を、例1.4において確立した改変株によって発現するための最適な条件を決定した。ここで、最適な温度を例2.2.1において評価し、最適な培養培地を例2.2.2において確認した。
2.2.1 最適な温度
本ベクターのカロテノイド生産性を向上させるために、ベクターのもう1つのコピーをCz5株に組み込み、生じた株をCz30株と命名した。Cz5株と比較すると、Cz30株はより強い赤色変化を生じた(図19a)。
カロテノイド生産に最適な条件を評価するために、Cz5及びCz30を、25℃、30℃、及び37℃で、YPG培地中で別々に培養した。3日間の培養の後、25℃又は30℃で培養したブロス(Cz5又はCz30を含んだ)は赤色であったが、37℃で培養したブロス(Cz5又はCz30を含んだ)は白色のままであった(図19b)。加えて、2日間培養した後、Cz30のみが25℃で顕著な色変化を呈した。データは、25℃がカロテノイド生産に最適な温度であること、及びCz30がCz5よりも高い生産性を有することを示した。
Cz5株と比べてCz30株が顕著に強い赤色変化を呈したため、Cz30の遺伝子発現プロファイルを様々な培養温度下で試験した。全てのサンプルを48時間培養した後に採取し、リアルタイムPCRアッセイのためにmRNAを各サンプルから抽出した。図19cに示されたデータのように、調査した全ての条件において、全ての形質転換された遺伝子の発現レベルは、Cz30において、Cz5よりもはるかに高かった。このデータは、Cz30がより多くのカロテノイドを生産し、より強い赤色を呈したという観察と一致した。さらに、この結果はまた、全ての形質転換された遺伝子の発現レベルが、30℃において、25℃又は37℃よりも高いことを示した。25℃が最も強い赤色を生じたため、このデータは、25℃が酵素反応に最適な条件であることを示した(図19c)。
フィトエンデサチュラーゼ(crtIによりコードされる)及びβ−カロチンケトラーゼ(BKTによりコードされる)が、3S, 3'S−アスタキサンチンの生産に極めて重要な酵素であるため、2つのより強いプロモーター、すなわち、pLac4及びpKlPGKを用いてこれらの2つの遺伝子を駆動させた。したがって、CrtI及びCrBKT遺伝子の発現レベルが、他の遺伝子のものよりも高くなるだろうということが予期された(図19c)。
HPLC分光測定アッセイは、改変Cz30株がより高い量のβ−カロチン、カンタキサンチン、及びエステル化アスタキサンチン誘導体(すなわち、モノエステルカロテノイド及びジエステルカロテノイド)を経路において蓄積することをさらに確認した(図20a及び20b)。
したがって、このデータは、Cz5株と比較して、Cz30株がより高いカロテノイドの生産性を有することを示した。さらに、このデータはまた、25℃がカロテノイド生産に最適な温度であることを示した。
2.2.2 最適な培養培地
細胞増殖のための炭素源を調べるために、野生型Kluyveromyces marxianus(WT)及び改変株Cz30を、20%グルコース、20%ガラクトース、又は20%グリセロールを添加したYPG培地中で別々に培養した。25℃2日間の培養の後、WT細胞のブロスは白色であったが、Cz30のブロスは、黄色(グルコース)、オレンジ色(ガラクトース)、又は赤色(グリセロール)を呈した(図21a)。これらのデータは、Cz30が、培養培地に添加した成分(すなわち、グルコース、ガラクトース、又はグリセロール)に応じて、異なる組み合わせのカロテノイドを細胞中に生産及び蓄積することを示した。異なる炭素源間の細胞色の違いは、細胞中に異なる濃度のカロテノイドが蓄積したことにより生じた可能性があるか、あるいは、黄色カロテノイド(β−カロチン及びゼアキサンチン)及びピンクがかった赤色カロテノイド(カンタキサンチン、アスタキサンチン、及び他のエステル化アスタキサンチン誘導体)などの、異なるタイプのカロテノイドの合成に起因する可能性がある(図21a)。しかしながら、5日間の培養の後、20%グリセロールを添加した場合を除き、宿主細胞の変色が観察された。
グリセロールと共に培養した全ての改変Cz5及びCz30サンプルを、48時間及び72時間の培養の後に採取し、リアルタイムPCRアッセイのためにそれらのmRNAを抽出した。カンタキサンチン生産のためにデザインされた遺伝子カセットから予期されるように、25℃、30℃又は37℃48時間で、CzBKT遺伝子の発現レベルは、HpCHYBの発現レベルよりも高いことが見出された(表9)。さらに、カンタキサンチンのアスタキサンチンへの変換のための、HpCHYB遺伝子の発現レベルは、72時間で、CzBKT遺伝子のものよりも高かった(表9)。
LC分光測定アッセイの結果に基づくと、20%グリセロールの存在下で培養したCz30は、20%ガラクトースの存在下で培養したものよりも高い量のβ−カロチン及びカンタキサンチンを蓄積した(表10)。ケン化処理の後、LC/MS分析を用いて、生産された化合物を同定した。このデータは、このように生産されたカロテノイドが、β−カロチン、カンタキサンチン、及びアスタキサンチンを含むことを示した(図22)。
興味深いことに、バイオディーゼル産業の副産物であるグリセロール中で培養したCz30細胞は、他の炭素源中で培養したものに比べて顕著な赤色変化を呈した。このことは、グリーン産業の発展のための、Cz30の潜在的利用を示唆している。さらに、グリセロール代謝とカロテノイドのエステル化との間の関係は今なお明らかではないが、Cz30のブロスは、20%グリセロール中での5日間の培養の後で赤色のままであった。
カロテノイドをWT及びCz30株から抽出し、このように生産されたカロテノイドの抗酸化能力を、ABTS基質反応を用いることにより決定した。YPG培地中25℃72時間の培養の後、宿主細胞を凍結乾燥し、細胞中の色素をメタノールにより抽出した。Cz30の抽出物は、WT(52.3%)よりも高いフリーラジカル消去能力(72.1%)を呈した(図23a)。このデータは、WTもまた抗酸化能力を有しはするが、Cz30により生産されたカロテノイドによって、Trolox等価抗酸化能力(TEAC)アッセイにおいて、約20%のフリーラジカル消去能力がもたらされること、及びその能力が、1グラムの細胞乾燥重量あたり1.95mgのTrolox(ビタミンEの水溶性アナログ)と等価であることを示した(図23b)。
上述のデータは、20%グリセロールを含有する培地がカロテノイドの生産に最適な環境を提供することを示した。さらに、これらの結果はまた、生産されたカロテノイドが抗酸化能を有することを示した。
例3 アスタキサンチン生産の向上
β−カロチンケトラーゼ及びβ−カロチンヒドロキシラーゼが、アスタキサンチン生産経路における2つの重要な調節された酵素であるため、アスタキサンチン合成遺伝子カセット(すなわち、crtI−crtE−HpChYb−Kan−HpChYb−CrBKT−crtYB−tHMG1)を追加のChYb遺伝子カセットと共に宿主ゲノムへ組み込み、CA6株を作製した(図24a)。培養後の形質転換体は、培養されたブロスにおいて顕著な赤色変化を生じた。
アスタキサンチン生産に重要な酵素のコピー数を増加させる目的で、アスタキサンチンシンターゼ遺伝子、bkt(β−カロチンケトラーゼをコードする)及びchYb(β−カロチンヒドロキシラーゼをコードする)をCA6株のrDNAの内部転写スペーサー(ITS)領域にさらに組み込み、このように作成された株をCA6−ITSと命名した。この遺伝子カセットはaur−HpChYb−CrBKT及びプロモーターを含んでいた(図24b)。HpChYb及びCrBKT遺伝子の発現レベルは、重要な酵素のコピー数が増加するのに比例して増加した(図24c)。
細胞増殖の炭素源を調べるために、10%グリセロールを添加した又は添加しないYPG培地中で改変株CA6−ITSを培養した。25℃2日間の培養の後、10%グリセロールを添加したYPG培地中で培養したCA6−ITS株は、グリセロールを添加しないYPG培地中で培養したものに比べてより強い赤色変化を明らかに生じた(図21b)。表11のデータは、10%グリセロールがCA6−ITS株におけるアスタキサンチン生産を誘導するのに十分であることをさらに示した。
さらに、アスタキサンチン合成遺伝子カセットをハイコピー発現プラスミドRS426と共にCA6−プラスミド株へ導入した(図24d)。遺伝子カセットは、インビボでプラスミドと自然発生的に組み立てられ、この形質転換体はオレンジ〜赤色のコロニーを生じることができた。プラスミドの高いコピー数により、宿主細胞は、高い量のタンパク質を発現し、より効率よく前駆体をアスタキサンチンへ変換する潜在力を有する。
HPLC分光測定アッセイの結果に基づくと、改変CA6−ITS株は、それぞれ7.76、9.9、12.25、及び31.40分のリテンションタイムにある、遊離形態のアスタキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、β−カロチンを生産することができる(図24e)。アスタキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、β−カロチンの収量は、それぞれ約19.48、21.7、4.40、及び501.57μg/gである(表12)。このデータは、β−カロチンヒドロキシラーゼをコードするchYbのコピー数を増加させることにより、カロテノイドの生産性を向上させることができるということを明らかにした。
このように、本例の2つの改変株、CA6及びCA6−ITSは、アスタキサンチン前駆体をアスタキサンチンに効率よく変換することができる。さらに、関連する遺伝子発現の高いコピー数は、アスタキサンチン生産に極めて重要である。
例4 新規の組み合わせの、モノエステル又はジエステルの形態を有する天然カロテノイドの生産
遊離アスタキサンチンの極性端部は、動物(例えば、ヒト)によって、非極性カロテノイドよりもよく吸収されることができるが、酸化を特に受けやすい。アスタキサンチンは、脂肪酸−エステルとして自然界、例えば緑藻類などに広く存在し、1つ又は2つの脂肪酸とモノエステル及びジエステルの形態を形成しており、これらのエステル化分子はより安定性である。コレステロールエステラーゼはエステル化アスタキサンチンを加水分解する有力な候補である。この加水分解物は続いてミセルに組み込まれ、アスタキサンチンは腸細胞により吸収されることができる。
この例において、改変株中のカロテノイドエステル及びそれらの幾何異性体を同定した。クラブトリー陰性酵母、Kluyveromyces marxianusを、その高い増殖速度及び高い細胞量産能力、並びにヒドロキシ基を様々な長さの脂肪酸とのモノエステル又はジエステル、例えばオクタン酸−エチルエステル、酢酸−2−フェニルエチルエステル、及びデカン酸−エチルエステルなど、に変換する潜在力のために、宿主細胞として選んだ。
藻類由来の天然アスタキサンチンは通常、そのヒドロキシ基の末端に結合した脂肪酸と組み合わっており、このことによりエステル化アスタキサンチンがもたらされる。このエステル化アスタキサンチンは、合成に見られる非エステル化形態のアスタキサンチン、及び「遊離」アスタキサンチンと呼ばれる細菌生産アスタキサンチンよりも、より安定性及びより生物活性であることが示されている。モノエステル又はジエステル化アスタキサンチンを生成するために、脂肪酸(0.01%又は0.1%オクタン酸)を、培養されたCA6−ITS株に、ガラクトース誘導と一緒に又は後に添加した。オクタン酸をガラクトース誘導と同時に添加すると、細胞色は赤色に変わりはじめた(図25a及び25b)。
このジエステル中の新規の組み合わせの飽和脂肪酸の可能性を、質量分析法アッセイ(LC−MS/MS)から収集したデータを用いて試験した。さらに、LC MS/MS分析を用いて、このように生産された化合物の構造を確認した。このデータは、このように生産されたカロテノイドが、フェニコキサンチン、カンタキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、エステル化アドニキサンチン、リコペン、フィトエン、β−カロチン、及びエステル化アスタキサンチンを含むことを示した(図26a及び26b)。
例5 組換えポリヌクレオチド配列を含んだ改変株の特徴づけ
カロテノイド化合物が2つの環構造を有し、この2つの環構造がカロテノイド化合物の2つの末端に又はその近くにそれぞれ位置するため、それらの環構造は細胞の内部又は外部の一重項及び三重項酸素分子を無効にすることができる。それはまた、Cz30が、UV損傷、溶媒ストレス、及び/又は反応性酸素種(ROS)の効果に対抗するのを助ける可能性がある。さらに、カロテノイド生産酵母は、増殖する細胞の脂質過酸化が低減することに起因して、環境ストレスに対しより耐性である可能性がある。したがって、本開示に記載の改変株は、他の付加価値のある代謝物質を生産し、生産性を向上するために用いることができる。
5.1 ストレスに対する宿主の耐性の程度の強化
図23のデータは、Cz30の細胞抽出物が野生型(WT)コントロールと比較して抗酸化活性を示すことを明らかにした。この例において、Cz30の抗ストレス能力を、UV、フルフラール、エタノール、又はイソブタノール処理により、さらに確認した。
WT及びCz30を別々に、UVに5、10、又は20分間暴露し、YPGプレートに一連の希釈率で接種し、48時間培養した。UV光に20分間暴露した後では、いくつかのCz30コロニーのみが、YPGプレート上で増殖できた(図27a)。この観察は、Cz30のカロテノイド産物がUV損傷を低減でき、その結果WTよりも速い細胞増殖がもたらされることを示唆した。
バイオリファイナリーの用途のために、植物バイオマスは地球上で最も豊富な再生可能資源の一つであり、持続可能な社会の発展に不可欠な構成要素であると考えられている。植物からの再生可能な生物学的資源は、バイオ燃料、バイオケミカル、バイオ潤滑剤、及び生分解性材料などのバイオ製品に変換することができる。植物バイオマスに含まれる糖を利用するために、酸加水分解、水蒸気爆発、アンモニア繊維膨張、オルガノソルブ、亜硫酸前処理、アルカリ湿式酸化、オゾン前処理、及び酵素処理を含む、多くの利用可能な処理技術が、リグノセルロースの破壊のために用いられる。リグノセルロースの酸及び水蒸気前処理の間に生じる毒素は、ヘミセルロース及びセルロースから生じるフルフラール及びヒドロキシメチルフルフラール、リグニンから生じるアルコール及びアルデヒド、及びバイオリアクターから生じる重金属など、幅広い物質にわたる。したがって、試験した第2のストレス因子はフルフラール処理であった。図27bにおいて、Cz30株は100mMフルフラールの処理に耐えることができた一方で、WT株は80mMフルフラールでの処理にしか耐えることができなかった。
エタノール及びブタノール処理について、WT及びCz30株をさらに試験した。細胞ペレットを採取し、0、4、8又は12%エタノールに24時間;又は0、0.5、1又は2%イソブタノールに24時間暴露した。次いで、YPGプレートに一連の希釈率で接種し、48時間培養した。12%エタノール(図27c)又は2%イソブタノール(図27d)で24時間処理した後では、いくつかのCz30コロニーのみがYPGプレート上で増殖できた。このように、中に組み込まれたカロテノイド経路によってもたらされたCz30株の抗酸化能力が、エタノール及びブタノールに対するCz30株の耐性を同様に向上させる。
全てのこれらのデータは、カロテノイドの抗酸化活性が、UV、フルフラール、エタノール、及びイソブタノール暴露を含む、様々な環境ストレスの損傷から宿主細胞(すなわち、Cz30)を保護することができることを示した。
5.2 発酵プロセス中の宿主のエタノール耐性及び/又は生産性の程度の強化
発酵プロセスにおいて、エタノールなどのいくつかの最終産物の蓄積は、宿主にとって非常に有毒となり、それにより生産プロセスにボトルネックを生じる可能性がある。反応性酸素種(ROS)の増加は、細胞外ストレスに対する細胞の応答であり、この細胞外ストレス下では、フリーラジカルが脂質過酸化により膜を直接攻撃する可能性がある。細胞膜は、細胞が外部ストレスに順応できるようにする重要な障壁であり、有機溶媒に非常に影響されやすい成分の一つでもある。
野生型(WT)及び改変株Cz30を、様々な濃度のエタノールを添加したYPG培地中でのエタノール耐性試験に供した(図28a)。0%エタノール試験において、細胞増殖速度はWT株とCz30株との間で同等であった。2、4、又は6%エタノール試験において、WTの細胞増殖はエタノールにより顕著に抑制されたが、Cz30の増殖は弱く影響された。すなわち、示された濃度のエタノールの存在下での24時間の培養の後、WTと比較して、Cz30はより高い細胞密度を示した(図28a)。この観察は、Cz30のカロテノイド産物が溶媒損傷を低減することができ、その結果WTよりも速い細胞増殖がもたらされることを示唆した。
エタノール生産性を試験するために、WT及びCz30株を20%ガラクトースを添加したYPG培地中で培養した。72時間後、Cz30はWT(2.5%)より多くのエタノール(3.5%)を生産した(図28b)。このように、Cz30のカロテノイド産物は抗酸化作用を明らかに付与した。
このデータは、生産性を向上させながらも、カロテノイドが、発酵プロセス中にエタノールの損傷から宿主を保護することができることを示した。
5.3 宿主の毒素耐性及び生産性の強化
二次代謝産物の収量は、本質的にその前駆体未満である。十分な量の化合物を得るためには、半合成が、中間体を最終生成物又はアナログに化学的に変換する確実な方法を提供する。しかしながら、化学的プロセスはしばしば、面倒な操作及び有機汚染を招く。二次代謝産物及びそれらの前駆体の両方が、宿主に対し非常に有毒である可能性があり、このことが、より経済的に、それらの生産のボトルネックを生じる。
バッカチンIIIは、パクリタキセル半合成のための、医療産業における非常に重要な前駆体である。さらに、バッカチンIIIの前駆体化合物である10−デアセチルバッカチンIII(10DB)は、一般的な観賞用イチイ(Taxus baccata)の針葉抽出物に多く産出され、より安価な前駆体であり、かつ環境に優しい源と考えられてきた。さらに、エタノールは、それらの前駆体及び/又は最終産物を溶解及び抽出するための非常に重要な溶媒である。
この例において、Cz30の抗毒素効力を、エタノールに溶解した10−デアセチルバッカチンIIIの処理により分析した。野生型(WT)及びCz30の細胞ペレットを別々に採取し、0、4、8又は12%エタノールに溶解した0、0.8、1.6又は3.2mMの10−デアセチルバッカチンIIIに暴露した。24時間後、細胞をYPGプレートに一連の希釈率で接種し、さらに48時間培養した。図29aは、12%エタノール中3.2mMの10−デアセチルバッカチンIIIでの前処理の後、Cz30コロニーがYPGプレート上でWTよりもよく増殖したことを示した。さらに、改変酵母を、様々な初期濃度の10−デアセチルバッカチンIII及び/又はエタノールを含むYPG培地中での10−デアセチルバッカチンIII耐性試験にも供した(図29b)。このデータは、Cz30が、0.4〜1.2mMの10−デアセチルバッカチンIIIを含有する培地において、WTよりもよく増殖することを明らかにした。4%エタノールを含む0.8mMの10−デアセチルバッカチンIII又は6%エタノールを含む1.2mMの10−デアセチルバッカチンIII中での培養の効果は、4%エタノール又は6%エタノール中での培養よりも高い程度の損傷を示した(図29b)。これらの結果は、4%エタノールを含む0.8mMの10−デアセチルバッカチンIII(図30a)及び6%エタノールを含む1.2mMの10−デアセチルバッカチンIII(図30b)下での、改変酵母の増殖曲線アッセイにより確認された。
これらのデータは、カロテノイドが、生物医学薬物の前駆体(例えば、10−デアセチルバッカチンIII)の損傷から宿主細胞を保護することができることを示した。さらに、10−デアセチルバッカチンIIIからのバッカチンIII生物変換の試験は、改変株により達成された(図31)。このデータは、より高い濃度のカロテノイドを含有するYD8株が、他の株と比較して、10−デアセチルバッカチンIIIからより多くのバッカチンIII生物変換をすることができることを示した(表13)。これらの結果は、カロテノイドを含有する株が、その生物変換の能力を向上させることができることを示した。
要するに、本開示は様々な組換えポリヌクレオチド配列を提供し、その全てはカロテノイドをインビボで生産するのに用いることができる。高い生産能力に基づいて、本開示はまた、互いに異なる組換えポリヌクレオチド配列を含むいくつかの改変株を確立した。さらに、本組換えポリヌクレオチド/改変株の発現に最適な条件を明らかにした。この条件下で、生産性を大幅に強化することができ、このことにより科学的及び産業的用途のためにアスタキサンチンを生合成する手段が提供される。本組換えポリヌクレオチド配列により発現される産物は、環境ストレス、発酵産物、又は生物医学薬物の前駆体により引き起こされる様々な損傷から改変細胞を保護するだろう。そしてこのことが改変細胞を費用対効果の高いバイオファイナリーにしている。
実施形態の上記の説明は例として与えられているに過ぎず、様々な変更が当業者によってなされ得ることが理解されるべきである。上記の明細書、実施例、及びデータは、本発明の典型的な実施形態の構造及び使用の完全な説明を提供する。本発明の様々な実施形態を、ある程度特定して、又は1以上の個別の実施形態を参照して、上に説明してきたが、当業者は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、開示の実施形態に多数の変更を行うことができるであろう。