以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用された車両用変速機10(以下、変速機10と称す)の構造を簡略的に示す骨子図である。変速機10は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路上に設けられ、エンジン12から入力される回転を所定の変速比γで減速或いは増速することで複数のギヤ段(本実施例では5速ギヤ段)を成立させる平行2軸式のトランスミッションである。
変速機10は、クラッチ16を介してエンジン12に動力伝達可能に連結される入力軸18と、入力軸12に対して平行に配置されているカウンタ軸20と、入力軸18と同じ回転軸線CL1上に配置され、差動歯車装置24等を介して駆動輪14に動力伝達可能に連結されている出力軸22とを、備えている。なお、出力軸22が、本発明のシャフトに対応している。
変速機10は、出力軸22の軸方向で、エンジン12から駆動輪14側に向かって順番に、第1ギヤ対26a、第2ギヤ対26b、第3ギヤ対26c、第4ギヤ対26d、第5ギヤ対26e、および第6ギヤ対26fを備えている。
また、変速機10は、出力軸22の軸方向で第1ギヤ対26aと第2ギヤ対26bとの間に設けられている第1切替機構28aと、出力軸22の軸方向で第3ギヤ対26cと第4ギヤ対26dとの間に設けられる第2切替機構28bと、出力軸22の軸方向で第5ギヤ対26eと第6ギヤ対26fとの間に設けられている第3切替機構28cを備えている(以下、第1切替機構28a〜第3切替機構28cを区別しない場合には、切替機構28と称す)。なお、第1切替機構28a〜第3切替機構28cが、本発明の切替機構に対応している。
第1ギヤ対26aは、入力ギヤ30aと、その入力ギヤ30aと噛み合うカウンタギヤ32aとから構成されている。入力ギヤ30aは、入力軸18に一体的に固定されており、エンジン12の回転がクラッチ16を介して伝達される。また、入力ギヤ30aは、出力軸22に相対回転可能に設けられている。カウンタギヤ32aは、カウンタ軸20に相対回転不能に固定されている。従って、入力ギヤ30aが回転すると、カウンタギヤ32aに回転が伝達されることでカウンタ軸20が回転させられる。第1切替機構28aによって入力ギヤ30aと出力軸22とが接続されると、入力軸18と出力軸22とが直結されることで4速ギヤ段4thが成立する。切替機構28の構造および作動については後述する。また、入力ギヤ30aには、出力軸22の軸方向で第1切替機構28a側に向かって突き出す複数個のギヤ側ドグ歯36aが形成されている。
第2ギヤ対26bは、出力軸22に相対回転可能に設けられている1速ギヤ30bと、1速ギヤ30bと噛み合う1速カウンタギヤ32bとから構成されている。1速ギヤ30bは、出力軸22に相対回転可能に嵌め付けられている。1速カウンタギヤ32bは、カウンタ軸20に相対回転不能に固定されている。第1切替機構28aによって1速ギヤ30bと出力軸22とが接続されると、カウンタ軸20と出力軸22とが第2ギヤ対26bを介して動力伝達可能に接続される。このとき変速機10において、変速比γが最大となる1速ギヤ段1stが成立する。また、1速ギヤ30bには、出力軸22の軸方向で第1切替機構28a側に向かって突き出す複数個のギヤ側ドグ歯36bが形成されている。
第3ギヤ対26cは、後進ギヤ30cと、後進カウンタギヤ32c、後進ギヤ30cおよび後進カウンタギヤ32cと噛み合うアイドラギヤ33とから構成されている。後進ギヤ30cは、出力軸22に相対回転可能に嵌め付けられている。後進カウンタギヤ32cは、カウンタ軸20に相対回転不能に固定されている。第2切替機構28bによって後進ギヤ30cと出力軸22とが接続されると、カウンタ軸20と出力軸22とが第3ギヤ対26cを介して動力伝達可能に接続される。このとき、変速機10において、後進ギヤ段Revが成立する。また、後進ギヤ30cには、出力軸22の軸方向で第2切替機構28b側に向かって突き出す複数個のギヤ側ドグ歯36cが形成されている。
第4ギヤ対26dは、3速ギヤ30dと、3速ギヤ30dと噛み合う3速カウンタギヤ32dとから構成されている。3速ギヤ30dは、出力軸22に相対回転可能に嵌め付けられている。3速カウンタギヤ32dは、カウンタ軸20に相対回転不能に固定されている。第2切替機構28bによって3速ギヤ30dと出力軸22とが接続されると、カウンタ軸20と出力軸22とが第4ギヤ対26dを介して動力伝達可能に接続される。このとき、変速機10では、3速ギヤ段3rdが成立する。また、3速ギヤ30dには、出力軸22の軸方向で第2切替機構28b側に向かって突き出す複数個のギヤ側ドグ歯36dが形成されている。
第5ギヤ対26eは、5速ギヤ30eと、5速ギヤ30eと噛み合う5速カウンタギヤ32eとから構成されている。5速ギヤ30eは、出力軸22に相対回転可能に嵌め付けられている。5速カウンタギヤ32eは、カウンタ軸20に相対回転不能に固定されている。第3切替機構28cによって5速ギヤ30eと出力軸22とが接続されると、カウンタ軸20と出力軸22とが第5ギヤ対26eを介して動力伝達可能に接続される。このとき、変速機10では、5速ギヤ段5thが成立する。また、5速ギヤ30eには、出力軸22の軸方向で第3切替機構28c側に向かって突き出す複数個のギヤ側ドグ歯36eが形成されている。
第6ギヤ対26fは、2速ギヤ30fと、2速ギヤ30fと噛み合う2速カウンタギヤ32fとから構成されている。2速ギヤ30fは、出力軸22に相対回転可能に嵌め付けられている。2速カウンタギヤ32fは、カウンタ軸20に相対回転不能に固定されている。第3切替機構28cによって2速ギヤ30fと出力軸22とが接続されると、カウンタ軸20と出力軸22とが第2ギヤ対26fを介して動力伝達可能に接続される。このとき、変速機10では、2速ギヤ段2ndが成立する。また、2速ギヤ30fには、出力軸22の軸方向で第3切替機構28c側に向かって突き出す複数個のギヤ側ドグ歯36fが形成されている。なお、入力ギヤ30a、1速ギヤ30b、後進ギヤ30c、3速ギヤ30d、5速ギヤ30e、および2速ギヤ30fが、本発明の変速ギヤに対応している(これらのギヤ30a〜30fを区別しない場合には変速ギヤ30と称す)。
第1切替機構28aは、出力軸22の軸方向で入力ギヤ30aと1速ギヤ30bとの間、すなわち出力軸22の軸方向で入力ギヤ30aおよび1速ギヤ30bと隣り合う位置に設けられ、入力ギヤ30aまたは1速ギヤ30bと出力軸22の間を選択的に断接するクラッチ(断接機構)である。第1切替機構28aは、入力ギヤ30aまたは1速ギヤ30bと出力軸22とが接続される接続状態と、入力ギヤ30aおよび1速ギヤ30bと出力軸22との接続が遮断されて互いに相対回転する遮断状態とに切替可能に構成されている。
例えば、第1切替機構28aが、出力軸22の軸方向で入力ギヤ30a側に移動した場合には、入力ギヤ30aと出力軸22とが接続される。このとき、入力軸18と出力軸22とが直結されることで、変速比γが1.0となる4速ギヤ段4thが成立する。また、第1切替機構28aが、出力軸22の軸方向で1速ギヤ30b側に移動した場合には、1速ギヤ30bと出力軸22とが接続される。このとき、変速機10において1速ギヤ段1stが成立する。
第2切替機構28bは、出力軸22の軸方向で後進ギヤ30cと3速ギヤ30dとの間、すなわち出力軸22の軸方向で後進ギヤ30cおよび3速ギヤ30dと隣り合う位置に設けられ、後進ギヤ30cまたは3速ギヤ30dと出力軸22とを選択的に断接するクラッチ(断接機構)である。第2切替機構28bは、後進ギヤ30cまたは3速ギヤ30dと出力軸22とが接続される接続状態と、後進ギヤ30cおよび3速ギヤ30dと出力軸22との接続が遮断されて互いに相対回転する遮断状態とに切替可能に構成されている。
例えば、第2切替機構28bが、出力軸22の軸方向で後進ギヤ30c側に移動した場合には、後進ギヤ30cと出力軸22とが接続される。このとき、変速機10において後進ギヤ段Revが成立する。また、第2切替機構28bが、出力軸22の軸方向で3速ギヤ30d側に移動した場合には、3速ギヤ30dと出力軸22とが接続される。このとき、変速機10において3速ギヤ段3rdが成立する。
第3切替機構28cは、出力軸22の軸方向で5速ギヤ30eと2速ギヤ30fとの間、すなわち出力軸22の軸方向で5速ギヤ30eおよび2速ギヤ30fと隣り合う位置に設けられ、出力軸22と5速ギヤ30eまたは2速ギヤ30fとを選択的に断接するクラッチ(断接機構)である。第3切替機構28cは、5速ギヤ30eまたは2速ギヤ30fと出力軸22とが接続される接続状態と、5速ギヤ30eおよび2速ギヤ30fと出力軸22との接続が遮断されて互いに相対回転する遮断状態とに切替可能に構成されている。
例えば、第3切替機構28cが、出力軸22の軸方向において5速ギヤ30e側に移動した場合には、5速ギヤ30eと出力軸22とが接続される。このとき、変速機10において5速ギヤ段5thが成立する。また、第3切替機構28cが、出力軸22の軸方向において2速ギヤ30f側に移動した場合には、2速ギヤ30fと出力軸22とが接続される。このとき、変速機10において2速ギヤ段2ndが成立する。
次に切替機構28の構造について説明する。図2は、第1切替機構28aの構造を説明するための分解図である。なお、第2切替機構28bおよび第3切替機構28cは、図2に示す第1切替機構28aと同じ構造であるため、その説明を省略する。
第1切替機構28aは、出力軸22に固定されているハブスリーブ42aの外周に、相対回転不能、且つ、軸方向への相対移動可能に設けられている第1ドグリング44aおよび第2ドグリング46aと、第1ドグリング44aと第2ドグリング46aとの間に介挿され、これら第1ドグリング44aと第2ドグリング46aとを連結する複数個のスプリング48aとを、含んで構成されている。このように、本実施例の切替機構28aは、一対の第1ドグリング44aおよび第2ドグリング46aと、これら第1ドグリング44aおよび第2ドグリング46aを連結するスプリング48aと、から構成されるダブルドグリング形式の切替機構が使用されている。なお、第1ドグリング44aは、入力ギヤ30aを本発明の変速ギヤとした場合、本発明の第1リングに対応し、1速ギヤ30bを本発明の変速ギヤとした場合、本発明の第2リングに対応する。また、第2ドグリング46aは、入力ギヤ30aを本発明の変速ギヤとした場合、本発明の第2リングに対応し、1速ギヤ30bを本発明の変速ギヤとした場合、本発明の第1リングに対応する。
ハブスリーブ42aは、円筒状に形成され、出力軸22に相対回転不能、且つ、軸方向への相対移動不能に固定されることで、出力軸22の一部として機能する。ハブスリーブ42aの外周面には、出力軸22の軸方向に平行な複数本の嵌合溝50が形成されている。
第1ドグリング44aおよび第2ドグリング46aは、出力軸22の軸方向(以下、特に言及しない限り、軸方向は出力軸22の軸方向を意味するものとする)で、入力ギヤ30aと1速ギヤ30bとの間に挟まれており、第1ドグリング44aが軸方向で入力ギヤ30aと隣り合う位置に配置され、第2ドグリング46aが軸方向で1速ギヤ30bと隣り合う位置に配置されている。言い換えれば、第1ドグリング44aは、軸方向で、第2ドグリング46aに対して1速ギヤ30bと反対側に配置され、第2ドグリング46aは、軸方向で第1ドグリング44aに対して入力ギヤ30aと反対側に配置されている。
第1ドグリング44aは、円盤状に形成され、内周部には、ハブスリーブ42aの嵌合溝50と嵌合する複数個の内向突起52aが形成されている。内向突起52aと嵌合溝50とが互いに嵌合することで、第1ドグリング44aは、ハブスリーブ42aおよび出力軸22に対して、相対回転不能、且つ、軸方向への相対移動可能となる。
第1ドグリング44aには、軸方向で入力ギヤ30aと向かい合う側の面からその入力ギヤ30a側に向かって突き出す複数個の第1噛合歯54aが形成されている。第1噛合歯54aは、第1ドグリング44aが軸方向で入力ギヤ30a側に移動したとき、入力ギヤ30aのギヤ側ドグ歯36aと噛合可能となる位置および形状に形成されている。なお、第1噛合歯54aが、本発明の第1噛合歯に対応している。
第1ドグリング44aには、軸方向で1速ギヤ30bと向かい合う側の面からその1速ギヤ30b側に向かって突き出す複数個の第2噛合歯56aが形成されている。第2噛合歯56aは、第1ドグリング44aと第2ドグリング46aとが連結された状態において、第2ドグリング46aの後述する貫通穴64aを貫通する。また、第2噛合歯56aは、第1ドグリング44aが軸方向で1速ギヤ30b側に移動したとき、1速ギヤ30bのギヤ側ドグ歯36bと噛合可能となる位置および形状に形成されている。なお、第2噛合歯56aが、本発明の第2噛合歯に対応している。
第1ドグリング44aには、軸方向に貫通する複数個の貫通穴58aが形成されている。貫通穴58aは、第1ドグリング44aと第2ドグリング46aとが連結された状態において、第2ドグリング46aの後述する第4噛合歯62aが貫通する位置および形状に形成されている。
第2ドグリング46aは、円盤状に形成され、内周部には、ハブスリーブ42aの嵌合溝50と嵌合する複数個の内向突起53aが形成されている。内向突起53aと嵌合溝50とが互いに嵌合することで、第2ドグリング46aは、ハブスリーブ42aおよび出力軸22に対して、相対回転不能、且つ、軸方向への相対移動可能となる。
第2ドグリング46aには、軸方向で1速ギヤ30bと向かい合う側の面からその1速ギヤ30b側に向かって突き出す複数個の第3噛合歯60aが形成されている。第3噛合歯60aは、第2ドグリング46aが軸方向で1速ギヤ30b側に移動した場合において、1速ギヤ30bのギヤ側ドグ歯36bと噛合可能な位置および形状に形成されている。なお、第3噛合歯60aが、本発明の第1噛合歯に対応している。
第2ドグリング46aには、軸方向で入力ギヤ30aと向かい合う側の面からその入力ギヤ30a側に向かって突き出す複数個の第4噛合歯62aが形成されている。第4噛合歯62aは、第1ドグリング44aと第2ドグリング46aとが連結された状態において、第1ドグリング44aの貫通穴58aを貫通する。また、第4噛合歯62aは、第2ドグリング46aが軸方向で入力ギヤ30a側に移動した場合において、入力ギヤ30aのギヤ側ドグ歯36aと噛合可能になる位置および形状に形成されている。なお、第4噛合歯62aが、本発明の第2噛合歯に対応している。
第2ドグリング46aには、軸方向に貫通する複数個の貫通穴64aが形成されている。貫通穴64aは、第1ドグリング44aと第2ドグリング46aとが連結された状態において、第1ドグリング44aの第2噛合歯56aが貫通する位置および形状に形成されている。
第1ドグリング44aと第2ドグリング46aとは、弾性部材であるスプリング48aを介して互いに連結される。第1ドグリング44aと第2ドグリング46aとが互いに連結されると、第1ドグリング44aおよび第2ドグリング46aの軸方向で互いに向かい合う面が接触した状態となる。また、軸方向で入力ギヤ30a側から第1ドグリング44aおよび第2ドグリング46aを見たとき、第1ドグリング44aの第1噛合歯54aおよび第2ドグリング46aの第4噛合歯62aが、出力軸22の回転方向で連続して並んで配置されている。また、軸方向で1速ギヤ30b側から第1ドグリング44aおよび第2ドグリング46aを見たとき、第1ドグリング44aの第2噛合歯56aおよび第2ドグリング46aの第3噛合歯60aが、出力軸22の回転方向で連続して並んで配置されている。
上記のように構成される第1切替機構28aにおいて、第1切替機構28aが接続状態にある場合、第1切替機構28aが軸方向で入力ギヤ30a側に移動させられることで、第1噛合歯54aまたは第4噛合歯62aがギヤ側ドグ歯36aと噛み合わされ、入力ギヤ30aと出力軸22とが接続される。或いは、第1切替機構28aが接続状態にある場合、第1切替機構28aが軸方向で1速ギヤ30b側に移動させられることで、第3噛合歯60aまたは第2噛合歯56aがギヤ側ドグ歯36bと噛み合わされ、1速ギヤ30bと出力軸22とが接続される。
一方、第1切替機構28aが遮断状態にある場合、第1切替機構28aが、入力ギヤ30aおよび1速ギヤ30bから離れた位置に移動させられることで、第1噛合歯54aまたは第4噛合歯62aとギヤ側ドグ歯36aとの噛合が解除されるとともに、第3噛合歯60aまたは第2噛合歯56aとギヤ側ドグ歯36bとの噛合が解除され、入力ギヤ30aおよび1速ギヤ30bと出力軸22とが相対回転する。なお、第1切替機構28aは、後述する第1シフトフォーク68aによって、出力軸22の軸方向に移動させられる。
第1噛合歯54aまたは第4噛合歯62aがギヤ側ドグ歯36aと噛み合った状態では、周方向で隣合うギヤ側ドグ歯36aの間の隙間に、第1噛合歯54aおよび第4噛合歯62aが収容された状態になる。このように、周方向で隣り合うギヤ側ドグ歯36aの間の隙間に、第1噛合歯54aおよび第4噛合歯62aが収容されることで、第1噛合歯54aおよび第4噛合歯62aとギヤ側ドグ歯36aとの間に形成されるガタが小さくなる。
一方、ギヤ側ドグ歯36aと第1噛合歯54aおよび第4噛合歯62aとの間のガタが小さくなると、第1噛合歯54aまたは第4噛合歯62aとギヤ側ドグ歯36aとが噛み合う過渡期において、ギヤ側ドグ歯36aと第1噛合歯54aまたは第4噛合歯62aとが衝突する歯当たりが問題となる。これに対して、第4噛合歯62aがギヤ側ドグ歯36aと衝突した場合には、第1ドグリング44aと第2ドグリング46aとを連結するスプリング48aが弾性変形することで、歯当たりによるショックが緩和される。よって、歯当たりが問題となるのは、第1噛合歯54aとギヤ側ドグ歯36aとの衝突のみとなるため、歯当たりが発生しにくくなる。
また、第3噛合歯60aまたは第2噛合歯56aがギヤ側ドグ歯36bと噛み合った状態では、周方向で隣合うギヤ側ドグ歯36bの間の隙間に、第3噛合歯60aおよび第2噛合歯56aが収容された状態になる。このように、周方向で隣合うギヤ側ドグ歯36bの間の隙間に、第3噛合歯60aおよび第2噛合歯56aが収容されることで、第3噛合歯60aおよび第2噛合歯56aとギヤ側ドグ歯36bとの間に形成されるガタが小さくなる。
一方、ギヤ側ドグ歯36bと第3噛合歯60aおよび第2噛合歯56aとの間のガタが小さくなると、第3噛合歯60aまたは第2噛合歯56aとギヤ側ドグ歯36bとが噛み合う過渡期において、第3噛合歯60aまたは第2噛合歯56aとギヤ側ドグ歯36bとが衝突する歯当たりが問題となる。これに対して、第2噛合歯56aがギヤ側ドグ歯36bと衝突した場合には、第1ドグリング44aと第2ドグリング46aとを連結するスプリング48aが弾性変形することで、歯当たりによるショックが緩和される。よって、歯当たりが問題となるのは、第3噛合歯60aとギヤ側ドグ歯36bとの衝突のみとなるため、歯当たりが発生しにくくなる。
次に、変速機10の作動について説明する。図3は、変速機10が1速ギヤ段1stで走行中における、第1切替機構28aおよび第3切替機構28cの状態を模式的に示している。なお、第2切替機構28bについては省略されている。
図3において、紙面左右方向が、出力軸22の軸方向に対応し、紙面上下方向が、回転方向に対応している。また、図3において左側が第1切替機構28aに対応し、右側が第3切替機構28cに対応している。図3にあっては、周方向に連続する第1切替機構28aおよび第3切替機構28cの一部が、平面に展開して簡略化した状態で示されている。
第1切替機構28aの両側には、入力ギヤ30aのギヤ側ドグ歯36aの一部および1速ギヤ30bのギヤ側ドグ歯36bの一部が、平面に展開されて示されている。第3切替機構28cの両側には、5速ギヤ30eのギヤ側ドグ歯36eの一部および2速ギア30fのギヤ側ドグ歯36fの一部が、平面に展開されて示されている。
図3の第1切替機構28aについて説明すると、軸方向において入力ギヤ30aと隣り合う部材が、第1ドグリング44aに対応し、軸方向において1速ギヤ30bと隣り合う部材が、第2ドグリング46aに対応している。これら第1ドグリング44aおよび第2ドグリング46aは、スプリング48aによって互いに接触する方向に付勢されている。
第1ドグリング44aには、軸方向で入力ギヤ30a側に向かって突き出す第1噛合歯54a、および、第2ドグリング46aの貫通穴64aを貫通し、軸方向で1速ギヤ30b側に向かって突き出す第2噛合歯56aが形成されている。第2ドグリング46aには、軸方向で1速ギヤ30b側に向かって突き出す第3噛合歯60a、および、第1ドグリング44aの貫通穴58aを貫通し、軸方向で入力ギヤ30a側に向かって突き出す第4噛合歯62aが形成されている。
第3切替機構28cは、上述した第1切替機構28aの構造と基本的に変わらない。図3に示すように、第1切替機構28aを構成する各部材の符号の後に付されている添え字「a」が、第3切替機構28cにあっては、添え字「c」に変更されている。なお、図3では省略されているが、第2切替機構28bでは、第2切替機構28bを構成する各部材の後に付されている添え字が「b」とされている(図5参照)。
図3の第3切替機構28cについて説明すると、軸方向において5速ギヤ30eと隣り合う部材が、第1ドグリング44cに対応し、軸方向において2速ギヤ30fと隣り合う部材が、第2ドグリング46cに対応している。これら第1ドグリング44cおよび第2ドグリング46cは、スプリング48cによって互いに接触する方向に付勢されている。
第1ドグリング44cには、軸方向で5速ギヤ30e側に向かって突き出す第1噛合歯54c、および、第2ドグリング46cの貫通穴64cを貫通し、軸方向で2速ギヤ30f側に向かって突き出す第2噛合歯56cが形成されている。第2ドグリング46cには、軸方向で2速ギヤ30f側に向かって突き出す第3噛合歯60c、および、第1ドグリング44cの貫通穴58cを貫通し、軸方向で5速ギヤ30e側に向かって突き出す第4噛合歯62cが形成されている。
第1切替機構28aの第1ドグリング44aおよび第2ドグリング46aが連結された状態では、第1切替機構28aの外周面に環状の凹溝66aが形成され、その凹溝66aに第1シフトフォーク68aが嵌合している。従って、第1シフトフォーク68aが軸方向に移動することで、第1切替機構28aについても軸方向に移動させられる。第1シフトフォーク68aには、係合部70aが設けられており、この係合部70aが、後述するシフトバレル82(図5参照)の外周面に形成されている第1シフト溝72aに係合している。
また、第3切替機構28cの第1ドグリング44cおよび第2ドグリング46cが連結された状態では、第3切替機構28cの外周面に環状の凹溝66cが形成され、その凹溝66cに第3シフトフォーク68cが嵌合している。従って、第3シフトフォーク68cが軸方向に移動することで、第3切替機構28cについても軸方向に移動させられる。第3シフトフォーク60cには、係合部70cが設けられており、この係合部70cが、シフトバレル82の外周面に形成されている第3シフト溝72cに係合している。
第1シフト溝72aは、第1シフトフォーク68aの軸方向の位置を規定するものである。シフトバレル82が回転すると、シフトバレル82の回転角に応じて係合部70aと係合する第1シフト溝72aの形状が変化するため、第1シフトフォーク68aが、第1シフト溝72aに沿って軸方向に移動する。具体的には、第1シフトフォーク68aは、第1シフト溝72aに案内されることで、軸方向において、4速ギヤ段4thを成立させる4速ギヤ段位置P4、動力伝達が遮断されるニュートラル位置PNa、および1速ギヤ段1stを成立させる1速ギヤ段位置P1に移動可能となっている。
第3シフト溝72cは、第3シフトフォーク68cの軸方向の位置を規定するものである。シフトバレル82が回転すると、シフトバレル82の回転角に応じて係合部70cと係合する第3シフト溝72cの形状が変化するため、第3シフトフォーク68cが、第3シフト溝72cに沿って軸方向に移動する。具体的には、第3シフトフォーク68cは、第3シフト溝72cに案内されることで、軸方向において、5速ギヤ段5thを成立させる5速ギヤ段位置P5、動力伝達が遮断されるニュートラル位置PNc、および2速ギヤ段2ndを成立させる2速ギヤ段位置P2に移動可能となっている。
図3において、紙面上方向が、前進走行時の回転方向を示している。従って、前進走行中は、入力ギヤ30a、1速ギヤ30b、5速ギヤ30e、および2速ギヤ30fが、図3の紙面上方に移動する。また、これら各変速ギヤ30a、30b、30e、30fは、エンジン12の回転速度、および、各ギヤ段毎に機械的に設定されている変速比γに基づいた回転速度で回転することから、各変速ギヤ30a、30b、30e、30f毎に回転速度が異なる。例えば、エンジン12の回転速度が同じ場合、1速ギヤ段1stに対応する1速ギヤ30bの回転速度が、これら各変速ギヤ30a、30b、30e、30fの中で最も低くなる。
1速ギヤ段1stで走行中における、第1切替機構18aおよび第3切替機構28cの状態(噛合状態)について説明する。1速ギヤ段1stで走行中にあっては、図3に示すように、第3切替機構28cは、第3切替機構28cの凹溝66cに嵌合する第3シフトフォーク68cが、第3シフト溝72cに案内されてニュートラル位置PNcに移動させられている。このとき、第3切替機構28cの各噛合歯54c〜62cは、ギヤ側ドグ歯36e、36fの何れにも噛み合わないことから、第3切替機構28cは、5速ギヤ30eおよび2速ギヤ30fと出力軸22との接続が遮断される遮断状態となる。なお、図示しないが、第2切替機構28bについても、後進ギヤ30cおよび3速ギヤ30dと出力軸22との接続が遮断される遮断状態となっている。
一方、第1切替機構28aの凹溝66aに嵌合する第1シフトフォーク68aは、第1シフト溝72aに案内されて1速ギヤ段位置P1に移動させられている。このとき、図3に示すように、第3噛合歯60aとギヤ側ドグ歯36bとが互いに噛み合うことで、第1切替機構28aが接続状態となり、1速ギヤ30bと出力軸22とが第1切替機構28aを介して動力伝達可能に接続されることで1速ギヤ段1stが成立する。
図4は、1速ギヤ段1stから2速ギヤ段2ndへの変速過渡期の第1切替機構28aおよび第3切替機構28cの作動状態を時系列で示したものである。1速ギヤ段1stから2速ギヤ段2ndへの変速過渡期は、図4に示す(a)〜(f)を順次経て2速ギヤ段2ndに変速される。なお、図4では第2切替機構28bが省略されているが、第2切替機構28bについては、1速ギヤ段1stから2速ギヤ段2ndへの変速過渡期において遮断状態で維持されている。
図4(a)は、1速ギヤ段1stで走行中すなわち変速前の第1切替機構28aおよび第3切替機構28cの状態を示している。図4(a)は、前述した図3と全く同じであるため、その説明を省略する。
図4(b)は、2速ギヤ段2ndへのアップシフトが開始されたときの状態であって、第1切替機構28aの遮断状態への切替が開始された状態を示している。図4(b)に示すように、シフトバレル82が回転することで、第1シフトフォーク68aの係合部70aと係合する第1シフト溝72aの形状が変化し、第1シフトフォーク68aが、軸方向で入力ギヤ30a側に移動している。このとき、第1シフトフォーク68aに押されて第1ドグリング44aが1速ギヤ30bから離れる方向に移動する。
一方、第2ドグリング46aの第3噛合歯60aと1速ギヤ30bのギヤ側ドグ歯36bとの間で動力が伝達されているため、第3噛合歯60aとギヤ側ドグ歯36bとの間に摩擦による抵抗力が発生することで、第3噛合歯60aとギヤ側ドグ歯36bとの間の噛合が維持されている。従って、図4(b)に示すように、第1ドグリング44aと第2ドグリング46aとが軸方向で乖離した状態となるため、スプリング48aが弾性変形させられる。よって、第1ドグリング44aと第2ドグリング46aとの間に、互いを引き付ける方向の付勢力(弾性復帰力)が発生する。
図4(c)は、第2ギヤ段2ndを形成するため、第3切替機構28cが、軸方向で2速ギヤ30f側に移動した状態を示している。シフトバレル82が回転することで、第3シフトフォーク68cの係合部70cと係合する第3シフト溝72cの形状が変化し、図4(c)に示すように、第3シフトフォーク68cが、軸方向で2速ギヤ30f側に移動する。このとき、第1ドグリング44cの第3噛合歯60cと2速ギヤ30fのギヤ側ドグ歯36fとが噛合可能な状態となる。なお、図4(c)は、第3噛合歯60cとギヤ側ドグ歯36fとが噛み合う前の状態を示している。
図4(d)は、第3切替機構28cにおいて、第1ドグリング44cの第3噛合歯60cと2速ギヤ30fのギヤ側ドグ歯36fとが噛み合った直後の状態を示している。2速ギヤ段2ndに対応する2速ギヤ30fの回転速度が、1速ギヤ段1stに対応する1速ギヤ30bの回転速度よりも速いことから、図4(c)の状態になると、即座に第3噛合歯60cとギヤ側ドグ歯36fとが噛み合わされる。このとき、図4(d)に示すように、第1切替機構28aの第3噛合歯60aと1速ギヤ30bのギヤ側ドグ歯36bとが噛み合うとともに、第3切替機構28cの第3噛合歯30cと2速ギヤ30fのギヤ側ドグ歯36fとが噛み合う、同時噛合状態となる。この同時噛合状態となるのは、非常に僅かな時間である。
図4(e)は、第1切替機構28aにおいて、第1切替機構28aの第3噛合歯60aと1速ギヤ30bのギヤ側ドグ歯36bとの噛合が解除された状態を示している。図4(d)において、第3切替機構28cの第3噛合歯60cと2速ギヤ30fのギヤ側ドグ歯36fとが噛み合うと、2速ギヤ30fの回転速度が1速ギヤ30bの回転速度よりも高いため、出力軸22が、2速ギヤ30fと一体的に回転する。このとき、第1切替機構28aでは、出力軸22と一体的に回転する第1ドグリング44aおよび第2ドグリング46aの回転速度が、1速ギヤ30bの回転速度よりも速くなる。従って、第1ドグリング44aおよび第2ドグリング46aと1速ギヤ30bとが相対回転することとなり、第2ドグリング46aの第3噛合歯60aと1速ギヤ30bのギヤ側ドグ歯36bとの噛合が解除される。
図4(f)は、第1切替機構28aの第2ドグリング46aが、スプリング44aの弾性復帰力によって第1ドグリング44a側に引き寄せられた状態を示している。図4(e)において、第1切替機構28aの第3噛合歯60aと1速ギヤ30bのギヤ側ドグ歯36bとの噛合が解除されると、これら第3噛合歯60aとギヤ側ドグ歯36bとの間の摩擦による抵抗力がなくなるため、スプリング48aの付勢力によって、第2ドグリング46aが第1ドグリング44a側に引き寄せられる。このとき、第1切替機構28aにおいて、各噛合歯54a〜62aが何れのギヤ側ドグ歯36a、36bとも噛み合わない遮断状態に切り替わることで変速が完了する。このように、変速機10の変速過渡期において、第1切替機構28aの第3噛合歯60aおよびギヤ側ドグ歯36bの噛合状態と、第3切替機構28cの第3噛合歯60cおよびギヤ側ドグ歯36fの噛合状態とが、適切なタイミングで切り替わることで、トルク切れのないスムーズな変速が可能となる。
第1切替機構28a〜第3切替機構28c(これらを区別しない場合には各切替機構28と称す)は、図5および図6に示すシフト機構76によって出力軸22の軸方向に移動させられる。図5は、各切替機構28、各切替機構28を軸方向に移動させるシフト機構76、および、後述する第1インターロック機構74a〜第3インターロック機構74cの外観を示す斜視図である。また、図6は、第1切替機構28a〜第3切替機構28c、シフト機構76、および第1インターロック機構74a〜第3インターロック機構74cの構造を説明するための断面図である。なお、第1インターロック機構74a〜第3インターロック機構74cが、本発明のインターロック機構に対応している。
図5、図6に示すように、各切替機構28に形成されている凹溝66a〜66cには、それぞれ第1シフトフォーク68a〜第3シフトフォーク68c(これらを区別しない場合には各シフトフォーク68と称す)が嵌合している。
シフト機構76は、各切替機構28を軸方向に移動させるための各シフトフォーク68と、各シフトフォークを支持するフォークシャフト80と、シフトバレル82とを、備えて構成されている。各シフトフォーク68は、フォークシャフト80によって支持されている。各シフトフォーク68は、フォークシャフト80の外周に軸方向への相対移動可能に嵌め付けられている円筒部69と、フォークシャフト80の軸方向から見たとき、円弧状に形成されている一対の腕部71と、から構成されている。
各シフトフォーク68の円筒部69は、フォークシャフト80の外周に軸方向への相対移動可能に嵌合することで、フォークシャフト80に対する軸方向への相対移動が許容されている。一対の腕部71は、先端部が各切替機構28の各凹溝66a〜66cに嵌合している
フォークシャフト80は、1本の円柱状の部材であり、出力軸22と平行に配置されている。シフトバレル82は、出力軸22と平行に配置され、図5に示す回転軸線CL2を中心にして回転可能とされている。なお、シフトバレル82は、例えば図示しない電動モータ、または、油圧アクチュエータによって回転駆動させられる。
シフトバレル82の外周面には、第1シフト溝72a〜第3シフト溝72c(これらを区別しない場合にはシフト溝72と称す)が形成されている。第1シフト溝72aには、第1シフトフォーク68aの係合部70aが係合し、第2シフト溝72bには、第2シフトフォーク68bの係合部70bが係合し、第3シフト溝72cには、第3シフトフォーク68cの係合部70cが係合している。これより、第1シフトフォーク68aは、第1シフト溝72aの溝の形状に沿って軸方向に移動させられ、第2シフトフォーク68bは、第2シフト溝72bの溝の形状に沿って軸方向に移動させられ、第3シフトフォーク68cは、第3シフト溝72cの溝の形状に沿って軸方向に移動させられる。なお、第1シフトフォーク68a〜第3シフトフォーク68cが、本発明のシフトフォークに対応し、第1シフト溝72a〜第3シフト溝72cが、本発明のシフト溝に対応している。
各シフト溝72は、シフトバレル82が一方向に回転するに従って、変速機10が1速ギヤ段1stから5速ギヤ段5th側に順次アップシフトし、シフトバレル82が逆方向に回転するに従って、変速機が5速ギヤ段5thから1速ギヤ段1st側に順次ダウンシフトするように、溝の形状が形成されている。また、各シフト溝72は、変速機10の変速の過渡期において、図4で説明したように、各切替機構28が変速の進行状態に応じて適切なタイミングで軸方向に移動することで、トルク切れのないスムーズな変速が実行されるように溝の形状が形成されている。
ところで、例えば各シフトフォーク68に摩耗が生じた場合、または、各シフト溝72に摩耗が生じた場合には、第1ドグリング44a〜44c(これらを区別しない場合には第1ドグリング44と称す)、第2ドグリング46a〜46c(これらを区別しない場合には第2ドグリング46と称す)の軸方向の位置が定まらなくなる場合がある。このとき、変速機10が例えばニュートラルに切り替えられた状態であっても、第1ドグリング44または第2ドグリング46が軸方向に移動し、第1ドグリング44または第2ドグリング46の各噛合歯54a〜62cの何れかが、ギヤ側ドグ歯36a〜36fと噛み合う可能性がある。また、変速機10が所定のギヤ段で走行中において、他のギヤ段を成立させる第1ドグリング44または第2ドグリング46の各噛合歯54a〜62cがギヤ側ドグ歯36a〜36fと噛み合う可能性もある。さらに、例えば変速機10の変速過渡期において、スプリング48a〜48c(これらを区別しない場合にはスプリング48と称す)が破損または脱落している場合、スプリング48の弾性復帰力が生じないために、第1ドグリング44または第2ドグリング46の噛合歯が、適切なタイミングでギヤ側ドグ歯36a〜36fから抜けなくなる可能性がある。このような場合には、変速機10において複数個の変速ギヤ30a〜30fのギヤ側ドグ歯36a〜36fが、同時に第1ドグリング44または第2ドグリング46の噛合歯と噛み合う二重噛合が発生する虞がある。
これに対して、各切替機構28には、それぞれ前記二重噛合を防止するための第1インターロック機構74a〜第3インターロック機構74c(これらを区別しない場合にはインターロック機構74と称す)が設けられている。第1インターロック機構74a〜第3インターロック機構74cの構造は基本的に変わらない。以下、第2インターロック機構74bの構造について説明する。
第2インターロック機構74bは、第2切替機構28bの第1ドグリング44bおよび第2ドグリング46bの軸方向への移動を規制することで、変速機10の二重噛合を防止するものである。第2インターロック機構74bは、第2ロックプレート84bと、シフトバレル82の外周面に形成されている第2インターロック溝85bとを、備えている。
第2ロックプレート84bは、フォークシャフト80の軸方向に沿って配置されている長手状の連結プレート86bと、その連結プレート86bの長手方向の両側に連結されている一対のサイドプレート88b、90bと、サイドプレート88b、90bにそれぞれ連結されている一対の第1ストッパプレート98bおよび第2ストッパプレート99bとを、備えている。
連結プレート86bは、フォークシャフト80の軸方向に沿って配置され、長手方向の中間には、連結プレート86bを貫通する貫通穴96bが形成されている。この貫通穴96bを通って、第2シフトフォーク68bの係合部70bがシフトバレル82の第2シフト溝72bに係合している。
連結プレート86bの長手方向の両側には、、一対のサイドプレート88b、90bが連結されている。一対のサイドプレート88b、90bは、フォークシャフト80の軸方向において、第2シフトフォーク68bの円筒部69の両端を挟むようにして配置されている。サイドプレート88b、90bには、それぞれ貫通穴92b、94bが形成されており、フォークシャフト80は、これら貫通穴92b、94b内を貫通している。また、フォークシャフト80の外周面と貫通穴92b、94bとの間が摺動可能とされることで、第2ロックプレート84bは、フォークシャフト80に対して軸方向への相対移動が可能となる。なお、サイドプレート88bおよびサイドプレート90bと円筒部69との間に隙間が形成されることで、第2ロックプレート84bは、第2シフトフォーク68bに対して、フォークシャフト80の軸方向への相対移動が許容されている。
第1ストッパプレート98bは、サイドプレート88bに連結され、フォークシャフト80の軸方向で第2シフトフォーク68b側に向かって伸びるとともに、その先端部102bが、フォークシャフト80の径方向外側に向かって突き出している。また、第2ストッパプレート99bは、サイドプレート90bに連結され、フォークシャフト80の軸方向で第2シフトフォーク68b側に向かって伸びるとともに、その先端部104bが、フォークシャフト80の径方向外側に向かって突き出している。
第1ストッパプレート98bの先端部102bおよび第2ストッパプレート99bの先端部104bは、第1ドグリング44bおよび第2ドグリング46bの外周の一部を、軸方向で挟むようにして形成されている。また、第1ストッパプレート98bの先端部102bは、軸方向で第1ドグリング44bと後進ギヤ30cとの間に位置し、第1ストッパプレート98bを軸方向から見たとき、その先端部102bが、第1ドグリング44bの外周の一部と重なっている。また、第2ストッパプレート99bの先端部104bは、軸方向で第2ドグリング46bと3速ギヤ30dとの間に位置し、第2ストッパプレート99bを軸方向から見たとき、その先端部104bが、第2ドグリング46bの外周の一部と重なっている。よって、第1ストッパプレート98bの先端部102bは、第1ドグリング44bが後進ギヤ30c側に移動した場合において、第1ドグリング44bと当接する位置に形成され、第2ストッパプレート99bの先端部104bは、第2ドグリング46bが3速ギヤ30d側に移動した場合において、第2ドグリング46bと当接する位置に形成されている。
これより、第1ドグリング44bは、軸方向において第1ストッパプレート98bの先端部102bと当接する位置までしか移動できなくなるため、第1ドグリング44bの軸方向への移動が、第1ストッパプレート98bによって規制される。また、第2ドグリング46bは、軸方向において第1ストッパプレート99bの先端部104bと当接する位置までしか移動できなくなるため、第2ドグリング46bの軸方向への移動が、第2ストッパプレート99bによって規制される。
連結プレート86bには、フォークシャフト80に対して径方向外側に突き出す係合突起100b(図6参照)が形成されている。係合突起100bは、シフトバレル82の外周面に形成されている第2インターロック溝85bと係合している。従って、第2ロックプレート84bは、第2インターロック溝85bの溝の形状に沿ってフォークシャフト80の軸方向に移動することから、第2ロックプレート84bは、第2シフトフォーク68bに対して独立して軸方向に移動する。ここで、第2インターロック溝85bの溝の形状は、第2シフト溝72bの溝の形状と異なっており、第1ストッパプレート98bの先端部102bと第1ドグリング44bの外周との間の軸方向の間隔、および、第2ストッパプレート99bの先端部104bと第2ドグリング46bの外周との間の軸方向の間隔が、変速機10の変速状態に応じて適宜変更される。
また、第1インターロック機構74aおよび第3インターロック機構74cについても、第2インターロック機構74bと同様に構成されている。従って、第1インターロック機構74aを構成する第1ストッパプレート98aの先端部102aと第1ドグリング44aの外周との間の軸方向の間隔、および、第1インターロック機構74aを構成する第2ストッパプレート99aの先端部104aと第2ドグリング46aの外周との間の軸方向の間隔が、変速機10の変速状態に応じて適宜変更される。さらに、第3インターロック機構74cを構成する第1ストッパプレート98cの先端部102cと第1ドグリング44cの外周との間の軸方向の間隔、および、第3インターロック機構74cを構成する第2ストッパプレート99cの先端部104cと第2ドグリング46cの外周との間の軸方向の間隔が、変速機10の変速状態に応じて適宜変更される。
第1インターロック機構74aおよび第3インターロック機構74cに関する詳細な説明は、第2インターロック機構74bと同じであるためその説明を省略する。なお、図5および図6に示す、第1インターロック機構74aおよび第3インターロック機構74cを構成する各部材にそれぞ付されている各符号は、第2インターロック機構74bを構成する各部材の符号の後に付されている添え字「b」に対して、第1インターロック機構74aでは添え字「a」、第3インターロック機構74cでは添え字「c」にそれぞれ変更されている。
次いで、インターロック機構74の作動について説明する。図7〜図12は、第2切替機構28bに設けられている第2インターロック機構74b、および、第3切替機構28cに設けられている第3インターロック機構74cの作動状態を簡略的に示す図である。図7〜図12は、主に2速ギヤ段2ndから3速ギヤ段3rdへの変速過渡期の作動状態を示している。2速ギヤ段2ndから3速ギヤ段3rdへの変速過渡期にあっては、第2切替機構28bが、遮断状態から接続状態に切り替えられるとともに、第3切替機構28cが、接続状態から遮断状態に切り替えられる。なお、図7〜図12では、第1切替機構28aおよび第1切替機構28aに設けられている第1インターロック機構74aが省略されているが、基本的な作動については、以下から説明する第2インターロック機構74bおよび第3インターロック機構74cと基本的に変わらない。なお、図7〜図12についても、軸方向とは出力軸22の軸方向を指すものとする。
図7〜図12に示す第2インターロック機構74bについて簡単に説明すると、斜線の施されている第2ロックプレート84bが、フォークシャフト80によって軸方向へ移動可能に支持されている。第2ロックプレート84bの第1ストッパプレート98bの先端部102bが、第1ドグリング44bと軸方向で隣合う位置であって、軸方向から見た場合において第1ドグリング44bの外周と重なる位置まで伸びている。また、第2ロックプレート84bの第2ストッパプレート99bの先端部104bが、第2ドグリング46bと軸方向で隣合う位置であって、軸方向から見た場合において第2ドグリング46bの外周と重なる位置まで伸びている。また、第2ロックプレート84bの係合突起100bが、シフトバレル82の第2インターロック溝85bに係合している。なお、第2ロックプレート84bが、本発明のプレート部材に対応し、第2インターロック溝85bが、本発明のインターロック溝に対応している。
また、図7〜図12に示す第3インターロック機構74cについて簡単に説明すると、斜線の施されている第3ロックプレート84cが、フォークシャフト80によって軸方向への移動可能に支持されている。第3ロックプレート84cの第1ストッパプレート98cの先端部102cが、第1ドグリング44cと軸方向で隣合う位置であって、軸方向から見た場合において第1ドグリング44cの外周と重なる位置まで伸びている。また、第2ロックプレート84cの第2ストッパプレート99cの先端部104cが、第2ドグリング46cと軸方向で隣り合う位置であって、軸方向から見た場合において第2ドグリング46cの外周と重なる位置まで伸びている。また、第3ロックプレート84cの係合突起100cが、シフトバレル82の第3インターロック溝85cに係合している。なお、第3ロックプレート84cが、本発明のプレート部材に対応し、第3インターロック溝85cが、本発明のインターロック溝に対応している。
図7は、2速ギヤ段2ndで走行中の状態を示している。2速ギヤ段2ndで走行中は、第2シフトフォーク68bが、シフトバレル82の第2シフト溝72bに案内されて、軸方向で後進ギヤ30cおよび3速ギヤ30dから離れる位置位置、すなわち第2シフトフォーク68bのニュートラル位置に位置させられている。これより、第2切替機構28cが遮断状態に切り替えられている。また、第2ロックプレート84bは、シフトバレル82の第2インターロック溝85bに案内されて、第2ロックプレート84bが、軸方向で後進ギヤ30cと3速ギヤ30dとの中間となる位置に位置させられている。
このとき、図7に示すように、第2インターロック機構74bを構成する第1ストッパプレート98bの先端部102bが、第1ドグリング44bの第1噛合歯54bとギヤ側ドグ歯36cとが噛み合うときの第1ドグリング44bの軸方向の位置よりも、軸方向で後進ギヤ30cから離れる側に位置している。従って、2速ギヤ段2ndで走行中において、第1ドグリング44bの第1噛合歯54bがギヤ側ドグ歯36cと噛み合うことが、第1ストッパプレート98bによって阻止されている。すなわち、第1ドグリング44bが軸方向で後進ギヤ30c側に移動した場合であっても、第1ドグリング44bが第1ストッパプレート98bに当接することで第1ドグリング44bの軸方向への移動が規制されるため、第1噛合歯54bとギヤ側ドグ歯36cとの噛合が阻止される。
また、第2インターロック機構74bを構成する第2ストッパプレート99bの先端部104bが、第2ドグリング46bの第3噛合歯60bとギヤ側ドグ歯36dとが噛み合うときの第2ドグリング46bの軸方向の位置よりも、軸方向で3速ギヤ30dから離れる側に位置している。従って、2速ギヤ段2ndで走行中において、第2ドグリング46bの第3噛合歯60bがギヤ側ドグ歯36dと噛み合うことが、第2ストッパプレート99bによって阻止される。このように、2速ギヤ段2ndで走行中は第2切替機構28bが遮断状態になるが、このとき第1ストッパプレート98bによって第1噛合歯54bがギヤ側ドグ歯36cと噛み合うことが阻止されるとともに、第2ストッパプレート99bによって第3噛合歯60bがギヤ側ドグ歯36dと噛み合うことが阻止される。
また、2速ギヤ段2ndで走行中は、第3シフトフォーク68cが、シフトバレル82の第3シフト溝72cに案内されて、軸方向で2速ギヤ30f側に位置させられている。このとき、第3切替機構28cが、2速ギヤ30fと出力軸22を接続する接続状態に切り替えられている。また、第3ロックプレート84cについても、シフトバレル82の第3インターロック溝85cの溝に案内されて、軸方向で2速ギヤ30f側に移動させられている。
このとき、第3インターロック機構74cを構成する第1ストッパプレート98cの先端部102cが、第1ドグリング44cの第1噛合歯54cとギヤ側ドグ歯363とが噛み合うときの第1ドグリング44cの軸方向の位置よりも、軸方向で5速ギヤ30eから離れる側に位置している。従って、2速ギヤ段2ndで走行中において、第1ドグリング44cの第1噛合歯54cがギヤ側ドグ歯36eと噛み合うことが、第1ストッパプレート98cによって阻止される。
また、第3インターロック機構74cを構成する第2ストッパプレート99cの先端部104cは、第2ドグリング46cの第3噛合歯60cとギヤ側ドグ歯36fとが噛み合うときの第2ドグリング46cの軸方向の位置よりも、軸方向で2速ギヤ30f側に位置している。従って、第2ドグリング46cの第3噛合歯60cがギヤ側ドグ歯36fと噛み合うことが許容され、2速ギヤ段2ndでの走行が可能となる。
図8は、2速ギヤ段2ndから3速ギヤ段3rdへの変速過渡期であって、第3切替機構28cの第1ドグリング44cが、第3シフトフォーク68cによって2速ギヤ段30fから離れる側に移動させられた状態を示している。なお、図8〜図11は、2速ギヤ段2ndから3速ギヤ段3rdへの変速中に、第3切替機構28cが接続状態から遮断状態に切り替わる過渡期に対応している。
図8に示すように、2速ギヤ段2ndから3速ギヤ段3rdへの変速過渡期であって、第3切替機構28cの第1ドグリング44cが、2速ギヤ30fから離れる側に移動させられた直後は、第2シフトフォーク68bは、図7と同じ位置で維持されている。また、第2ロックプレート84bについても、図7と同じ位置で維持されている。従って、図7で説明したように、第1ドグリング44bの第1噛合歯54bがギヤ側ドグ歯36cと噛み合うことが、第1ストッパプレート98bによって阻止されるとともに、第2ドグリング46bの第3噛合歯60bがギヤ側ドグ歯36dと噛み合うことが、第2ストッパプレート99bによって阻止されている。
また、図8に示す第3シフトフォーク68cは、図7に示す第3シフトフォーク68cの位置よりも、軸方向で2速ギヤ30fから離れる側に移動させられている。これに関連して、第3切替機構28cの第1ドグリング44cが、第3シフトフォーク68cによって、軸方向で2速ギヤ30fから離れる側に移動させられ、第1ドグリング44cと第2ドグリング46cとが軸方向で乖離することで、スプリング48cが弾性変形させられている。
一方、図8で示す第3ロックプレート84cは、図7と同じ位置で維持されている。従って、図7で説明したように、第1ドグリング44cの第1噛合歯54cがギヤ側ドグ歯36eと噛み合うことが、第1ストッパプレート98cによって阻止されている。
図9は、2速ギヤ段2ndから3速ギヤ段3rdへの変速過渡期であって、図8の状態から、第2切替機構28bの第2ドグリング46bが、第2シフトフォーク68bによって、軸方向で3速ギヤ30d側に移動させられた状態を示している。なお、図9にあっては、第2ドグリング46bの移動中に、第1ドグリング44bの第2噛合歯56bとギヤ側ドグ歯36dとが接触した場合が示されている。この場合には、第1ドグリング44bが軸方向に移動できないため、第1ドグリング44bと第2ドグリング46bとが軸方向で乖離し、スプリング48bが弾性変形させられている。
図9に示すように、第2シフトフォーク68bが、軸方向で3速ギヤ30d側に移動させられている。また、第2ロックプレート84bについても、軸方向で3速ギヤ30d側に移動させられている。
このとき、第2インターロック機構74bを構成する第1ストッパプレート98bの先端部102bは、第1ドグリング44bの第1噛合歯54bとギヤ側ドグ歯36cとが噛み合うときの第1ドグリング44bの軸方向の位置よりも、軸方向で後進ギヤ30cから離れる側に位置している。従って、変速過渡期において、第1ドグリング44bの第1噛合歯54bがギヤ側ドグ歯36cと噛み合うことが、第1ストッパプレート98bによって阻止される。
また、第2インターロック機構74bを構成する第2ストッパプレート99bの先端部104bは、第2ドグリング46bの第3噛合歯60bとギヤ側ドグ歯36dとが噛み合うときの第2ドグリング46bの軸方向の位置よりも、軸方向で3速ギヤ30d側に移動させられている。従って、変速過渡期において第2切替機構28bが軸方向で3速ギヤ30d側に移動したときには、第2ドグリング46bの第3噛合歯60bとギヤ側ドグ歯36dとの噛合が許容される。
図9に示す第3シフトフォーク68cの軸方向の位置、および、第3ロックプレート84bの軸方向の位置は、図8の状態で維持されている。従って、変速過渡期において、第1ドグリング44cの第1噛合歯54cがギヤ側ドグ歯36eと噛み合うことが、第1ストッパプレート98cによって阻止される。
図10は、2速ギヤ段2ndから3速ギヤ段3rdへの変速過渡期であって、第2切替機構28bの第3噛合歯60bとギヤ側ドグ歯36dとが噛み合う一方で、第3切替機構28cの第3噛合歯60cとギヤ側ドグ歯36fとの噛合が解除されたときの状態を示している。図10に示すように、第2切替機構28bの第3噛合歯60bとギヤ側ドグ歯36dとが噛み合うことで3速ギヤ30dに動力が伝達される。一方、2速ギヤ30fには動力が伝達されなくなることから、第3切替機構28cの第2ドグリング46cが、スプリング48cの付勢力によって第1ドグリング44c側に移動させられている。
図10に示す第2シフトフォーク68bおよび第2ロックプレート84bの軸方向の位置は、図9の状態で維持されている。従って、第1ドグリング44bの第1噛合歯54bがギヤ側ドグ歯36cと噛み合うことが、第1ストッパプレート98bによって阻止されている。
また、図10に示す第3シフトフォーク68cは、図9で示す第3シフトフォーク68cの位置よりも、軸方向で5速ギヤ30e側、具体的には、第3シフトフォーク68cのニュートラル位置に移動させられている。また、第3ロックプレート84cについても、図9で示す第3ロックプレート84cの位置よりも、軸方向で5速ギヤ30e側に移動させられている。
このとき、第3インターロック機構74cを構成する第1ストッパプレート98cの先端部102cは、第1ドグリング44cの第1噛合歯54cとギヤ側ドグ歯36eとが噛み合うときの第1ドグリング44cの軸方向の位置よりも、軸方向で5速ギヤ30eから離れる側に位置している。従って、図10に示すように、例えばスプリング48cの反動によって、変速過渡期に第1ドグリング44cが5速ギヤ30e側に移動した場合であっても、第1ドグリング44cが第1ストッパプレート98cに当接するため、第1噛合歯54cとギヤ側ドグ歯36eとの噛合が、第1ストッパプレート98cによって阻止される。
また、第3インターロック機構74cを構成する第2ストッパプレート99cの先端部104cは、第2ドグリング46cの第3噛合歯60cとギヤ側ドグ歯36fとが噛み合うときの第2ドグリング46cの軸方向の位置よりも、2速ギヤ36fから離れる側に移動させられている。具体的には、第2切替機構28bの第2ドグリング46bの第3噛合歯60bとギヤ側ドグ歯36dとが噛み合うと、第2ストッパプレート99cの先端部104cが、図9に示す第3噛合歯60cとギヤ側ドグ歯36fとの噛合を許容する位置から、図10に示す第3噛合歯60cとギヤ側ドグ歯36との噛合を阻止する位置に向かって軸方向に移動する。
従って、例えばスプリング48cが破損または脱落するなどして、変速過渡期において、第2ドグリング46cがスプリング48cの付勢力によって第1ドグリング44c側に移動できない場合であっても、第2ドグリング46cが第2ストッパプレート99cの先端部104cと当接し、第2ドグリング46cが第2ストッパプレート99cによって2速ギヤ36fから離れる側に押し出されるため、第2ドグリング46cの第3噛合歯60cとギヤ側ドグ歯36fとの噛合が強制的に解除される。よって、第3切替機構28cが接続状態から遮断状態に切り替えられる過渡期において、第2ストッパプレート99cの先端部が、第2ドグリング46cの第3噛合歯60cとギヤ側ドグ歯36fとが噛み合う第2ドグリング46cの軸方向の位置よりも2速ギヤ36fから離れる側に移動させられることで、第3噛合歯60cとギヤ側ドグ歯36fとの噛合が解除される。
図11は、3速ギヤ段3rdへの変速が完了した状態を示している。このとき、第2シフトフォーク68bおよび第2ロックプレート84bは、図10の状態で維持されている。また、第3シフトフォーク68cおよび第3ロックプレート84cについても、図10の状態で維持されている。
図11に示すように、3速ギヤ段3rdへの変速後において、スプリング48cの反動によって第3切替機構28cの第1ドグリング44cが軸方向で5速ギヤ30e側に移動した場合であっても、第1ドグリング44cが第1ストッパプレート98cに当接することで、第1ドグリング44cの第1噛合歯54cとギヤ側ドグ歯36eとの噛合が阻止される。また、第2ドグリング46cが軸方向で2速ギヤ30f側に移動した場合であっても、第2ドグリング46cが第2ストッパプレート99cに当接することで、第2ドグリング46cの第3噛合歯60cとギヤ側ドグ歯36fとの噛合が阻止される。
図12は、3速ギヤ段3rdで走行中であって、第3切替機構28cのスプリング48cが破損または脱落したときの状態を示している。このとき、第3切替機構28cの第1ドグリング44cおよび第2ドグリング46cが、互いに軸方向に相対移動可能となる。これに対して、図12に示すように、第1ストッパプレート98cの先端部102cが、第1ドグリング44cの第1噛合歯54cがギヤ側ドグ歯36eと噛み合うときの第1ドグリング44cの軸方向の位置よりも、軸方向で5速ギヤ30eから離れる側に位置するため、第1噛合歯54cとギヤ側ドグ歯36eとの噛合が阻止される。また、第2ストッパプレート99cの先端部104cが、第2ドグリング46cの第3噛合歯60cがギヤ側ドグ歯36fと噛み合うときの第2ドグリング46cの軸方向の位置よりも、軸方向で2速ギヤ30fから離れる側に位置するため、第3噛合歯60cとギヤ側ドグ歯36fとの噛合が阻止される。
また、第1インターロック機構74aの作動の説明については省略されているが、2速ギヤ段から3速ギヤ段3rdへの変速過渡期、2速ギヤ段2ndおよび3速ギヤ段3rdで走行中は、第1インターロック機構74aの第1ロックプレート84aが、第1切替機構28aの噛合歯54a〜62aとギヤ側ドグ歯36a、36bとの噛合が阻止される位置に移動させられる。
上記のように、例えば2速ギヤ段2ndから3速ギヤ段3rdへの変速過渡期において、3速ギヤ段3rdを成立させる噛合歯60bおよびギヤ側ドグ歯36d以外の噛合歯およびギヤ側ドグ歯の噛合が、第1インターロック機構74a〜第3インターロック機構74cによって阻止されるとともに、2速ギヤ段2ndを成立させる第3噛合歯60cおよびギヤ側ドグ歯36fの噛合が、第3インターロック機構74cによって確実に解除される。また、例えば3速ギヤ段3rdで走行中においては、遮断状態にある第1切替機構28aおよび第3切替機構28cの噛合歯の噛合が、第1インターロック機構74aおよび第3インターロック機構74cによって阻止される。よって、変速機10の二重噛合が、第1インターロック機構74a〜第3インターロック機構74cによって防止される。
また、2速ギヤ段2ndから3速ギヤ段3rdへの変速過渡期、2速ギヤ段2ndおよび3速ギヤ段3rdで走行中における、第1インターロック機構74a〜第3インターロック機構74cの作動について説明したが、第1インターロック機構74a〜第3インターロック機構74cは、2速ギヤ段2ndから3速ギヤ段3rdへの変速以外の変速過渡期、2速ギヤ段2ndおよび3速ギヤ段3rd以外のギヤ段で走行中においても作動し、車両走行中において変速機10の二重噛合を防止する。なお、2速ギヤ段2ndから3速ギヤ段3rd以外の変速過渡期、2速ギヤ段2ndおよび3速ギヤ段3rd以外のギヤ段で走行中における第1インターロック機構74a〜第3インターロック機構74cの作動については、上述した2速ギヤ段2ndから3速ギヤ段3rdへの変速過渡期、2速ギヤ段2ndおよび3速ギヤ段3rdで走行中の作動と基本的に変わらないため、その説明を省略する。
なお、変速機10がニュートラルに切り替えられた場合には、全ての各シフトフォーク68が、例えば図11の第3シフトフォーク68cのようにニュートラル位置に移動させられ、各切替機構28が遮断状態に切り替えられている。このとき、第1インターロック機構74a〜第3インターロック機構74cを構成する各ロックプレート84a〜84cは、例えば図11の第3ロックプレート84cのように、第1ドグリング44の第1噛合歯54とギヤ側ドグ歯36との噛合が阻止されるとともに、第2ドグリング46の第3噛合歯60とギヤ側ドグ歯36との噛合が阻止される位置に移動させられる。従って、変速機10がニュートラルに切り替えられた場合にも、第1ドグリング44および第2ドグリング46の噛合歯がギヤ側ドグ歯36と噛み合うことが、第1インターロック機構74a〜第3インターロック機構74cによって阻止される。
また、本実施例では、各シフトフォーク68と各ロックプレート84a〜84cがそれぞれ独立に作動するため、変速機10の二重噛合が防止される範囲において、各ロックプレート84a〜84cの移動量を、各シフトフォーク68の移動量に比べて小さくすることもできる。これより、インターロック機構74a〜74cを設けたことによる変速機10の軸方向の寸法増加を低減することができる。
上述のように、本実施例によれば、切替機構28が遮断状態に切り替えられているとき、第1ドグリング44の第1噛合歯および第2ドグリング46の第3噛合歯が、変速ギヤ30のギヤ側ドグ歯36と噛み合うことが阻止されるインターロック機構74a〜74cが設けられている。また、インターロック機構74a〜74cにより、切替機構28が接続状態から遮断状態に切り替わる過渡期においても、第1ドグリング44の第1噛合歯または第2ドグリング46の第3噛合歯とギヤ側ドグ歯36との噛合が解除される。これにより、切替機構28がダブルドグリング形式を有する変速機10の二重噛合を機械的に防止することができる。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施例では、車両用変速機150(以下、変速機150)の二重噛合を防止する第1、第2インターロック機構184a、184bが、第1シフトフォーク178a、第2シフトフォーク178bにそれぞれ一体的に形成されている。以下、本実施例の第1、第2インターロック機構184a、184bの構造および作動を中心に説明する。図13〜図17は、本発明の他の実施例である変速機150の一部、および変速機150の変速を実行するシフト機構152の構造を簡略的に示す図である。なお、本実施例の変速機150は、1速ギヤ段1st〜4速ギヤ段4thに変速可能に構成されているものとする。
図13〜図17に示すように、変速機150の出力軸154には、4速ギヤ段4thを成立させるための4速ギヤ156a、2速ギヤ段2ndを成立させるための2速ギヤ156b、3速ギヤ段3thを成立させるための3速ギヤ156c、および1速ギヤ段1stを成立させるための1速ギヤ156dが、出力軸154の軸方向に並んで配置されている。なお、出力軸154が、本発明のシャフトに対応し、4速ギヤ156a、2速ギヤ156b、3速ギヤ156c、および1速ギヤ156dが、本発明の変速ギヤに対応している。
各変速ギヤ156a〜156dは、それぞれ出力軸154に相対回転可能に設けられている。また、4速ギヤ156aにはギヤ側ドグ歯158aが形成され、1速ギヤ156bには、ギヤ側ドグ歯158bが形成され、3速ギヤ156cにはギヤ側ドグ歯158cが形成され、1速ギヤ156dにはギヤ側ドグ歯158dが形成されている。
出力軸154の外周側であって、出力軸154の軸方向において4速ギヤ156aと2速ギヤ156bとの間には、第1切替機構159aが設けられている。第1切替機構159aは、4速ギヤ156aまたは2速ギヤ156bが出力軸154に接続される接続状態と、4速ギヤ156aおよび2速ギヤ156bが出力軸154に対して相対回転する遮断状態とに切替可能に構成されている。例えば、4速ギヤ156aと出力軸154とが第1切替機構159aを介して接続されると、変速機150において4速ギヤ段4thが成立し、2速ギヤ156bと出力軸154とが第1切替機構159aを介して接続されると、変速機150において2速ギヤ段2ndが成立する。
出力軸154の外周側であって、出力軸154の軸方向において3速ギヤ156cと1速ギヤ156dとの間には、第2切替機構159bが設けられている。第2切替機構159bは、3速ギヤ156cまたは1速ギヤ156dが出力軸154に接続される接続状態と、3速ギヤ156cおよび1速ギヤ156dが出力軸154に対して相対回転する遮断状態とに切替可能に構成されている。例えば、3速ギヤ156cと出力軸154とが第2切替機構159bを介して接続されると、変速機150において3速ギヤ段3rdが成立し、1速ギヤ156dと出力軸154とが第2切替機構159bを介して接続されると、変速機150において1速ギヤ段1stが成立する。
第1切替機構159aおよび第2切替機構159bは、前述した実施例の切替機構28の構造と基本的に同じである。第1切替機構159aについて説明すると、第1切替機構159aは、円盤状の第1ドグリング160aと、円盤状の第2ドグリング162aと、第1ドグリング160aと第2ドグリング162aの間に介挿され、これら第1ドグリング160aと第2ドグリング162aとを連結するスプリング(図13〜図17では図示されず)とを、含んで構成されている。第1ドグリング160aおよび第2ドグリング162aは、出力軸154に対して、相対回転不能、且つ、出力軸154の軸方向に相対移動可能に設けられている。なお、第1切替機構159aおよび第2切替機構159bが、本発明の切替機構に対応する。また、第1ドグリング160aは、4速ギヤ156aを本発明の変速ギヤとした場合、本発明の第1リングに対応し、2速ギヤ156bを本発明の変速ギヤとした場合、本発明の第2リングに対応する。また、第2ドグリング162aは、2速ギヤ156bを本発明の変速ギヤとした場合、本発明の第1リングに対応し、4速ギヤ156aを本発明の変速ギヤとした場合、本発明の第2リングに対応する。
第1ドグリング160aには、出力軸154の軸方向(以下、出力軸154の軸方向を、単に軸方向と称す)で4速ギヤ156a側に向かって突き出す第1噛合歯166a、および、第2ドグリング162aを軸方向に貫通することで、軸方向で2速ギヤ156b側に向かって突き出す第2噛合歯168aが形成されている。
第2ドグリング162aには、軸方向で2速ギヤ156b側に向かって突き出す第3噛合歯170a、および、第1ドグリング160aを軸方向に貫通することで、軸方向で4速ギヤ156a側に向かって突き出す第4噛合歯172aが形成されている。なお、第3噛合歯170aが、本発明の第1噛合歯に対応し、第4噛合歯172aが、本発明の第2噛合歯に対応する。
第1ドグリング160aおよび第2ドグリング162aを、軸方向の4速ギヤ156a側から見たとき、第1噛合歯166aおよび第4噛合歯172aが、出力軸154の回転方向で連続的に並んで配置されている。また、第1噛合歯166aおよび第4噛合歯172aは、第1切替機構159aが軸方向で4速ギヤ156a側に移動したとき、4速ギヤ156aのギヤ側ドグ歯158aと噛合可能な位置に形成されている。
第1ドグリング160aおよび第2ドグリング162aを、軸方向の2速ギヤ156b側から見たとき、第2噛合歯168aおよび第3噛合歯170aが、出力軸154の回転方向で連続的に並んで配置されている。また、第2噛合歯168aおよび第3噛合歯170aは、第1切替機構159aが軸方向で2速ギヤ156b側に移動したとき、2速ギヤ156bのギヤ側ドグ歯158bと噛合可能な位置に形成されている。
第2切替機構159bについて説明すると、第2切替機構159bは、円盤状の第1ドグリング160bと、円盤状の第2ドグリング162bと、第1ドグリング160bと第2ドグリング162bとを連結するスプリング164とを、含んで構成されている。第1ドグリング160bおよび第2ドグリング162bは、出力軸154に対して、相対回転不能、且つ、軸方向に相対移動可能に設けられている。なお、第1ドグリング160bは、3速ギヤ156cを本発明の変速ギヤとした場合、本発明の第1リングに対応し、1速ギヤ156dを本発明の変速ギヤとした場合、本発明の第2リングに対応する。また、第2ドグリング162bは、1速ギヤ156dを本発明の変速ギヤとした場合、本発明の第1リングに対応し、3速ギヤ156cを本発明の変速ギヤとした場合、本発明の第2リングに対応する。
第1ドグリング160bには、軸方向で3速ギヤ156c側に向かって突き出す第1噛合歯166b、および、第2ドグリング162bを軸方向に貫通することで、軸方向で1速ギヤ156d側に向かって突き出す第2噛合歯168bが形成されている。
第2ドグリング162bには、軸方向で1速ギヤ156d側に向かって突き出す第3噛合歯170b、および、第1ドグリング160bを軸方向に貫通することで軸方向で3速ギヤ156c側に向かって突き出す第4噛合歯172bが形成されている。なお、第3噛合歯170bが、本発明の第1噛合歯に対応し、第4噛合歯172bが、本発明の第2噛合歯に対応している。
第1ドグリング160bおよび第2ドグリング162bを、軸方向の3速ギヤ156c側から見たとき、第1噛合歯166bおよび第4噛合歯172bが、出力軸154の回転方向で連続的に並んで配置されている。また、第1噛合歯166bおよび第4噛合歯172bは、第2切替機構159bが軸方向で3速ギヤ156c側に移動したとき、3速ギヤ156cのギヤ側ドグ歯158cと噛合可能な位置に形成されている。
第1ドグリング160bおよび第2ドグリング162bを、軸方向の1速ギヤ156d側から見たとき、第2噛合歯168bおよび第3噛合歯170bが、出力軸154の回転方向で連続的に並んで配置されている。また、第2噛合歯168bおよび第3噛合歯170bは、第2切替機構159bが軸方向で1速ギヤ156d側に移動したとき、1速ギヤ156dのギヤ側ドグ歯158dと噛合可能な位置に形成されている。
上記第1切替機構159aおよび第2切替機構159bの作動については、前述した実施例の切替機構28と同じであるため、その説明を省略する。
次いで、第1切替機構159aおよび第2切替機構159bを軸方向に移動させるためのシフト機構152について説明する。
シフト機構152は、外周面に後述する第1、第2シフト溝180a、180bが形成されているシフトバレル176と、第1切替機構159aに嵌合する第1シフトフォーク178aと、第2切替機構159bに嵌合する第2シフトフォーク178bと、第1シフトフォーク178aおよび第2シフトフォーク178bを支持するフォークシャフト179とを、備えている。フォークシャフト179は、出力軸154と平行に配置され、第1シフトフォーク178aおよび第2シフトフォーク178bを軸方向に貫通している。従って、第1シフトフォーク178aおよび第2シフトフォーク178bは、フォークシャフト179によって軸方向への移動可能に支持されている。なお、第1シフトフォーク178aおよび第2シフトフォーク178bが、本発明のシフトフォークに対応している。
シフトバレル176は、回転軸線CL2を中心にして回転可能に配置されている。シフトバレル176の外周面には、第1シフトフォーク178aの係合部181aと係合する第1シフト溝180a、および、第2シフトフォーク178bの係合部181bと係合する第2シフト溝180bが形成されている。第1シフト溝180aおよび第2シフト溝180bは、シフトバレル176が一方向に回転するに従って、変速機10が1速ギヤ段1st〜4速ギヤ段4thに順次アップシフトし、逆方向に回転するに従って、変速機10が4速ギヤ段から1速ギヤ段1stに順次ダウンシフトするように、それぞれの溝の形状が設定されている。
第1切替機構159aの外周面には、第1ドグリング160aおよび第2ドグリング162aによって形成される環状の凹溝182aが形成されている。この凹溝182aに第1シフトフォーク178aが嵌合するで、第1シフトフォーク178aによって第1切替機構159aが軸方向に移動させられるようになっている。第2切替機構159bの外周面には、第1ドグリング160bおよび第2ドグリング162bによって形成される環状の凹溝182bが形成されている。この凹溝182bに第2シフトフォーク178bが嵌合するで、第2シフトフォーク178bによって第2切替機構159bが軸方向に移動させられるようになっている。
次に、第1、第2インターロック機構184a、184bについて説明する。本実施例の第1インターロック機構184aは、第1シフトフォーク178aに一体的に形成され、第2インターロック機構184bは、第2シフトフォーク178bに一体的に形成されている。
第1シフトフォーク178aは、第1切替機構159aの凹溝182aと嵌合する部位が、図13〜図17の断面で示すように、三叉状に形成されている。第1シフトフォーク178aの断面において、軸方向の中心に位置する突起186aが、凹溝182aに嵌合している。また、突起186aの軸方向の両側には、第1インターロック機構184aとして機能する第1ストッパ0188aおよび第2ストッパ190aが形成されている。第1ストッパ188aは、第1ドグリング160aの軸方向への移動を規制するものであり、第2ストッパ190aは、第2ドグリング162aの軸方向の移動を規制するものである。なお、第1ストッパ188aおよび第2ストッパ190aが、本発明のストッパに対応している。
第1ストッパ188aは、第1シフトフォーク178aから軸方向で4速ギヤ156a側に向かって伸びるとともに、その軸方向の端部から出力軸154の中心に向かって第1ドグリング160aと当接可能な位置まで伸びる、断面がL字状の部材である。また、第2ストッパ190aは、突起186aから軸方向で2速ギヤ156b側に向かって伸びるとともに、その軸方向の端部から出力軸154の中心に向かって第2ドグリング162aと当接可能な位置まで伸びる、断面がL字状の部材である。第1インターロック機構184aは、これら第1ストッパ188aおよび第2ストッパ190aによって構成され、第1シフトフォーク178aとともに一体的に軸方向に移動する。
第1ドグリング160aは、軸方向において第1ストッパ188aと突起186aとの間に挟まれており、第1ストッパ188aを出力軸154の軸方向から見たとき、第1ストッパ188aの端部が、第1ドグリング160aの外周部と重なる位置まで伸びている。従って、第1ドグリング160aの軸方向の移動が、第1ストッパ188aと突起186aとの間の範囲に規制される。
第2ドグリング162aは、軸方向において第2ストッパ190aと突起186aとの間に挟まれており、第2ストッパ190aを出力軸154の軸方向から見たとき、第2ストッパ190aの端部が、第2ドグリング162aの外周部と重なる位置まで伸びている。従って、第2ドグリング160aの軸方向の移動が、第2ストッパ190aと突起186aとの間の範囲に規制される。
また、第2シフトフォーク178bには、第2インターロック機構184bを構成する第1ストッパ188bおよび第2ストッパ190bが形成されている。なお、第1ストッパ188bおよび第2ストッパ190bの構造は、前述した第1インターロック機構184aの第1ストッパ188aおよび第2ストッパ190bと同じであるため、詳細な説明を省略する。なお、第1ストッパ188bおよび第2ストッパ190bが、本発明のストッパに対応している。
第1ストッパ188aの端部と突起186aとの間の間隔、および、第2ストッパ190aの端部と突起186aとの間の間隔は、予め設計的に求められており、変速機150において二重噛合が防止される寸法とされている。同様に、第2ストッパ188bの端部と突起186bとの間の間隔、および、第2ストッパ190bの端部と突起186bとの間の間隔は、予め設計的に求められており、変速機150において二重噛合が防止される寸法とされている。
図13は、変速機150がニュートラルに切り替えられた状態を示している。変速機150がニュートラルに切り替えられると、第1シフトフォーク178aが、軸方向において4速ギヤ156aと2速ギヤ156bとの中間であるニュートラル位置に移動させられる。このとき、第1切替機構159aは、第1シフトフォーク178aに連動して軸方向に移動させられ、第1切替機構159aが、図13に示すような遮断状態となる。具体的には、第1ドグリング160aの第1噛合歯166aおよび第2ドグリング162aの第4噛合歯172aと4速ギヤ156aのギヤ側ドグ歯158aとの噛合が解除されるとともに、第2ドグリング162aの第3噛合歯170aおよび第1ドグリング160aの第2噛合歯168aと2速ギヤ156bのギヤ側ドグ歯185bとの噛合が解除される。
また、第2シフトフォーク178bは、軸方向において3速ギヤ156cと1速ギヤ156dとの中間であるニュートラル位置に移動させられる。このとき、第2切替機構159bは、第2シフトフォーク178bに連動して軸方向に移動させられ、第2切替機構159bが、図13に示すような遮断状態となる。具体的には、第1ドグリング160bの第1噛合歯166bおよび第2ドグリング162bの第4噛合歯172bとの噛合が解除されるとともに、第2ドグリング162bの第3噛合歯170bと第1ドグリング160bの第2噛合歯168bとの噛合が解除される。
第1ストッパ188aは、第1シフトフォーク178aがニュートラル位置に移動した状態、すなわち第1切替機構159aの遮断状態では、第1ドグリング160aが軸方向で4速ギヤ156a側に移動したとき、第1ドグリング160aが第1ストッパ188aと当接することで、第1ドグリング160aの第1噛合歯166aと4速ギヤ156aのギヤ側ドグ歯158aとの噛合が阻止される位置に設定されている。具体的には、図13に示すように、第1ストッパ188aは、第1シフトフォーク178aがニュートラル位置に移動した状態(第1切替機構159aの遮断状態)において、第1ドグリング160aの第1噛合歯166aが4速ギヤ156aのギヤ側ドグ歯158aと噛み合う第1ドグリング160aの位置よりも、軸方向で4速ギヤ156aから離れる側に位置している。
また、第2ストッパ190aは、第1シフトフォーク178aがニュートラル位置に移動した状態では、第2ドグリング162aが軸方向で2速ギヤ156b側に移動したとき、第2ドグリング162aが第2ストッパ190aと当接することで、第2ドグリング162aの第3噛合歯170aと2速ギヤ156bのギヤ側ドグ歯158bとの噛合が阻止される位置に設定されている。具体的には、図13に示すように、第2ストッパ190aは、第1シフトフォーク178aがニュートラル位置に移動した状態において、第2ドグリング162aの第3噛合歯170aが2速ギヤ156bのギヤ側ドグ歯156bと噛み合う第2ドグリング162aの軸方向の位置よりも、軸方向で2速ギヤ156bから離れる側に位置している。
これより、第1シフトフォーク178aがニュートラル位置に移動した状態(第1切替機構159aの遮断状態)では、第1ドグリング160aの軸方向への移動が第1ストッパ188aによって規制されるとともに、第2ドグリング162aの軸方向への移動が第2ストッパ190aによって規制され、第1ドグリング160aおよび第2ドグリング162aの各噛合歯と各ギヤ側ドグ歯158a、158bとの噛合が阻止される。
具体的には、第1ドグリング160aが軸方向で4速ギヤ156a側に移動した場合であっても、第1ドグリング160aが第1ストッパ188aと当接することで、第1ドグリング160aの第1噛合歯166aが4速ギヤ156aのギヤ側ドグ歯158aと噛み合うことが阻止される。また、第2ドグリング162aが軸方向で2速ギヤ156b側に移動した場合であっても、第2ドグリング162aが第2ストッパ190aに当接することで、第2ドグリング162aの第3噛合歯170aが2速ギヤ156bのギヤ側ドグ歯158bと噛み合うことが阻止される。
また、第2シフトフォーク178bに一体的に形成されている第1ストッパ188bは、第2シフトフォーク178bがニュートラル位置に移動した状態(第2切替機構159bの遮断状態)では、第1ドグリング160bが軸方向で3速ギヤ156c側に移動したとき、第1ドグリング160bが第1ストッパ188bと当接することで、第1ドグリング160bの第1噛合歯166bと3速ギヤ156cのギヤ側ドグ歯158cとの噛合が阻止される位置に設定されている。具体的には、図13に示すように、第1ストッパ188bは、第2シフトフォーク178bがニュートラル位置に移動した状態において、第1ドグリング160bの第1噛合歯166bが3速ギヤ156cのギヤ側ドグ歯158cと噛み合う第1ドグリング160bの軸方向の位置よりも、軸方向で3速ギヤ156cから離れる側に位置している。
また、第2シフトフォーク178bに一体的に形成されている第2ストッパ190bは、第2シフトフォーク178bがニュートラル位置に移動した状態では、第2ドグリング162bが軸方向で1速ギヤ156d側に移動したとき、第2ドグリング162bが第2ストッパ190bと当接することで、第2ドグリング162bの第3噛合歯170bと1速ギヤ156dのギヤ側ドグ歯158dとの噛合が阻止される位置に設定されている。具体的には、第2ストッパ190bは、図13に示すように、第2シフトフォーク178bがニュートラル位置に移動した状態において、第2ドグリング162bの第3噛合歯170bが1速ギヤ156dのギヤ側ドグ歯158dと噛み合う位置よりも1速ギヤ156dから離れる側に位置している。
これより、第2シフトフォーク178bがニュートラル位置に移動した状態(第2切替機構159bの遮断状態)では、第1ドグリング160bの軸方向への移動が第1ストッパ188bによって規制されるとともに、第2ドグリング162bの軸方向への移動が第2ストッパ190bによって規制され、第1ドグリング160bおよび第2ドグリング162bの各噛合歯と各ギヤ側ドグ歯158c、158dとの噛合が阻止される。
次に、インターロック機構184a、184bとして機能する第1ストッパ188a、188bおよび第2ストッパ190a、190bの変速過渡期の作動について、1速ギヤ段1stから2速ギヤ段2ndへの変速を一例にして説明する。なお、1速ギヤ段1stから2速ギヤ段2ndに切り替わる過渡期では、第1切替機構159aが遮断状態から接続状態に切り替わるとともに、第2切替機構159bが接続状態から遮断状態に切り替わる。
図14は、変速機150において、1速ギヤ段1stで走行中の状態を示している。このとき、第1シフトフォーク178aは、ニュートラル位置に位置させられることで、第1切替機構159aが遮断状態とされている。このとき、図13と同様に、第1ストッパ188aおよび第2ストッパ190aによって、第1ドグリング160aおよび第2ドグリング162aの軸方向への移動が規制されることで、第1ドグリング160aおよび第2ドグリング162aの各噛合歯と各ギヤ側ドグ歯158a、158bとの噛合が阻止される。
また、第2シフトフォーク178bは、軸方向において1速ギヤ156d側に移動させられ、第2切替機構159bについても、軸方向において1速ギヤ156d側に移動させられることで、1速ギヤ156dと出力軸154とが接続される接続状態とされている。これより、第2ドグリング162bの第3噛合歯170bが1速ギヤ156dのギヤ側ドグ歯158dと噛み合うことで、1速ギヤ段1stが成立している。
このとき、第1ストッパ188bは、第1ドグリング160bの第1噛合歯166bが3速ギヤ156cのギヤ側ドグ歯158cと噛み合うことを阻止する位置に移動している。すなわち、第1ストッパ188bは、第1ドグリング160bの第1噛合歯166bが3速ギヤ156cのギヤ側ドグ歯158cと噛み合う第1ドグリング160bの軸方向の位置よりも、軸方向で3速ギヤ156cから離れる側に位置している。これより、1速ギヤ段1stで走行中に、第1ドグリング160bが軸方向で3速ギヤ156c側に移動した場合であっても、第1ドグリング160bが第1ストッパ188bと当接することで第1ドグリング160bの移動が規制され、1速ギヤ段1stで走行中に、第1ドグリング160bの第1噛合歯166bがギヤ側ドグ歯158cと噛み合うことが阻止される。
図15は、1速ギヤ段1stから2速ギヤ段2ndへの変速過渡期において、第2切替機構159bを接続状態から遮断状態に切り替えるため、第2切替機構159bの第1ドグリング160bが、軸方向で1速ギヤ156dから離れる側に移動した状態を示している。第2シフトフォーク178bが、軸方向で1速ギヤ156dから離れる側に移動することで、第1ドグリング160bについても、第2シフトフォーク178bに押し付けられて、1速ギヤ156dから離れる側に移動させられる。一方、第2ドグリング162bの第3噛合歯170bと1速ギヤ156dのギヤ側ドグ歯158dとの噛合が維持されることで、第2ドグリング162bについては、変速前の位置で維持されている。
このとき、第1ストッパ188bは、第1ドグリング160bの第1噛合歯166bと3速ギヤ156cのギヤ側ドグ歯158cとの噛合を阻止する位置となる。具体的には、第1ストッパ188bは、第1ドグリング160bの第1噛合歯166bと3速ギヤ156cのギヤ側ドグ歯158cとが噛み合う第1ドグリング160bの軸方向の位置よりも、軸方向で3速ギヤ156cから離れる側に位置している。これより、第2シフトフォーク178bの押し付けによる反動で、第1ドグリング160bが、軸方向で3速ギヤ156c側に移動した場合であっても、第1ドグリング160bが第1ストッパ188bと当接することで、第1ドグリング160bの噛合歯166bと3速ギヤ156cのギヤ側ドグ歯158cとの噛合が阻止される。
図16は、1速ギヤ段1stから2速ギヤ段2ndへの変速過渡期において、第1切替機構159aが、第1シフトフォーク178aによって、軸方向で2速ギヤ156b側に移動させられた状態を示している。図16に示す状態になると、第1切替機構159aの第3噛合歯170aと2速ギヤ156bのギヤ側ドグ歯158bとが噛み合うことで、動力が2速ギヤ156b側で伝達されることとなる。一方、1速ギヤ156dには動力が伝達されなくなることから、図16の状態になると、即座に第2切替機構159bのスプリング164の付勢力によって、第2ドグリング162bが第1ドグリング160b側に向かって移動する。
図17は、第2切替機構159bのスプリング164の付勢力によって、第2ドグリング162bが、軸方向で第1ドグリング160b側に移動した状態を示している。ここで、スプリング164が破損または脱落することでスプリング164の付勢力が発生しない場合、第2ドグリング162bの第3噛合歯170bと1速ギヤ156dのギヤ側ドグ歯158dとが噛み合った状態が維持され、変速機150の変速過渡期において二重噛合が発生する虞がある。
これに対して、第2ドグリング162bがスプリング164の付勢力によって軸方向に移動するタイミングで、第2シフトフォーク178の軸方向への移動に連動して、第2ストッパ190bが軸方向で1速ギヤ156dから離れる側に移動する。具体的には、第2ストッパ190bが、第2ドグリング162bの第3噛合歯170bとギヤ側ドグ歯158dとの噛合が解除される位置まで軸方向に移動する。これより、スプリング164が破損または脱落するなどして、第2ドグリング162bの第3噛合歯170bとギヤ側ドグ歯158dとの噛合が解除できない場合であっても、第2切替機構159bが接続状態から遮断状態に切り替わる過渡期において、第2ストッパ190bが1速ギヤ156dから離れる側に移動することで、第2ドグリング162が第2ストッパ190bに押し付けられて1速ギヤ156dから離れる側に移動させられる。従って、第2ドグリング162bの第3噛合歯170bと1速ギヤ156dのギヤ側ドグ歯158dとの噛合が強制的に解除され、変速機150の変速過渡期の二重噛合が防止される。
また、図17に示すように、スプリング164の付勢力によって、第2ドグリング162bが第1ドグリング160b側に移動するとともに、スプリング164の反動によって、第1ドグリング160bが軸方向で3速ギヤ156c側に移動する可能性がある。このような場合であっても、図17に示すように、第1ストッパ188aが第1ドグリング160bに当接することで、第1ドグリング160bの軸方向への移動が規制され、第1ドグリング160bの第1噛合歯166bが3速ギヤ156cのギヤ側ドグ歯158cと噛み合うことが阻止される。
上記のように、第1シフトフォーク178aに第1インターロック機構184aとして機能する第1ストッパ188aおよび第2ストッパ190aが一体的に形成され、第2シフトフォーク178bに第2インターロック機構184bとして機能する第1ストッパ188bおよび第2ストッパ190bが一体的に形成される場合であっても、これら第1インターロック機構184aおよび第2インターロック機構184bによって、変速機150の二重噛合が防止される。また、第1、第2シフトフォーク178a、178bにインターロック機構184a、184bが一体的に形成されるため、構造が簡素となる。
上述のように本実施例によっても本実施例と同様の効果を得ることができる。また、インターロック機構184a、184bが、第1、第2シフトフォーク178a、178bに一体的に形成されるため、インターロック機構184a、184bを簡素に構成することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、変速機10は前進5速の変速機、変速機150は、前進4段の変速機であったが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、前進6速あるいは前進7速の変速機などであっても適宜変更することができる。
また、前述の実施例では、切替機構28、159は、何れも軸方向の両側に噛合歯が形成されていたが、軸方向の一方に噛合歯が形成されるものであっても構わない。
また、前述の実施例では、第1ロックプレート84a〜第3ロックプレート84cは、シフトバレル82の第1インターロック溝85a〜第3インターロック溝85cに案内されて軸方向に移動するものであったが、第1ロックプレート84a〜第3ロックプレート84c専用のシフトバレルが別個に設けられ、第1ロックプレート84a〜第3ロックプレート84cは、このシフトバレルに形成されているインターロック溝に案内されて軸方向に移動するものであっても構わない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。