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Abstract

【課題】短いプロセス時間で形成可能であり、かつ膨潤剤に応答して発色変化を誘起させることが可能な表示体の提供。【解決手段】基材と、基材上の高分子膜とを含み、高分子膜は、異なる種類の第1層および第2層が膜厚方向に交互に積層した構造を有し、第1層および第2層の少なくとも一方が、膨潤剤の吸収により膨潤し、膨潤剤の脱離により収縮する性質を有し、高分子膜は、ブロック共重合体を含み、ブロック共重合体の1つまたは複数のブロックが第1層を構成し、ブロック共重合体のその他のブロックが第2層を構成し、第1層を構成するブロックの少なくとも1つは、一般式(1)−X−(R1−Y)m−R2(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含むことを特徴とする表示体。【選択図】 図1

Description

本発明は、多層膜干渉に由来する反射特性により呈色する多層構造を有する表示体に関し、膨潤剤に応答する機能を付与させた多層構造の光学特性の変化を利用した、偽造防止のための表示体に関する。
偽造を防止するために、金券、有価証券、証明印紙、クレジットカード、会員証、高価物品などには、偽造防止表示体、発光インキ、潜像模様などの様々な偽造防止技術が施されている。
中でも、微細な周期構造により特定波長域の光を反射して発色する構造発色という現象が注目されている。構造発色は、色素などに見られる経時的な退色がおこりにくく、高い彩度を有し、鮮やかな色を示す特徴がある。
このような構造発色を発現する表示部材として、マトリックス中にマトリックスとは異なる屈折率を有する球状体を規則的に配列させた表示層と、表示層を封入するセル枠とを有する表示部材が提案されている(特許文献1参照)。この提案においては、外部からの刺激によりセル枠が変形することで、表示層による構造色が変化する。この提案における外部刺激は、圧力、引張応力などの変形を誘起する刺激であり、湿気に対する暴露を含むものではない。また、表示層中のマトリックスとしてイオン液体を用いているため、表示層の密封状態を維持する必要がある。外部刺激により表示部材が破損した場合、構造発色を発現する機能そのものが失われる可能性がある。
また、異なる屈折率を有する層が交互に積層された多層ポリマー膜を有し、水またはアルコールを含む液体に多層ポリマー膜を浸漬させることにより、一部の層が膨潤して発色変化を生じさせる表示部材が提案されている(非特許文献1参照)。ここで、多層ポリマー膜をブロック共重合体で形成する例が記載されている。この提案において、湿気に対する暴露によって、可視光領域における発色変化を生じさせることはできない。
さらに、湿気に対する暴露により、可視光領域において発色変化する表示体が提案されている(特許文献2参照)。この提案においては、高分子の自己組織化現象を利用して形成する2種の層が交互に配列された高分子膜において、一方の層に水分の吸着および脱着により体積変化する物質を導入することで、湿気に対する暴露により構造発色の色相を変化させる。この提案の変形例として、高分子膜の表面に凹凸を設けることにより、回折、干渉、または散乱による光学効果を発現する表示体(特許文献3参照)、伸縮性の基材を用いることにより、引張応力などの変形に対する応答性を有する表示体(特許文献4参照)、および湿度インジケータとしての使用(特許文献5参照)が提案されている。しかしながら、これらの提案に利用する自己組織化現象には、長い熱処理時間または有機溶媒蒸気への暴露を必要とする。そのため、これらの表示体の生産性が非常に低いことが課題となっている。
特開2009−216964号公報 特開2016−163955号公報 特開2016−078254号公報 特開2016−117185号公報 特開2017−9551号公報
YOUNGJONG KANG, JOSEPH J. WALISH, TARAS GORISHNYY, EDWIN L. THOMAS、「Broad-wavelength-range chemically tunable block-copolymer photonic gels」、Nature Materials, Vol. 6, 957-960 (2007) Leibler, L.、「Theory of Microphase Separation in Block Copolymers」、Macromolecules, Vol. 13, 1602-1617 (1980)
本発明は、これらの課題に鑑みてなされたもので、多層膜干渉に由来する反射特性により呈色する多層構造を有する表示体において、短いプロセス時間で形成可能であり、かつ膨潤剤に応答して発色変化を誘起させることが可能な表示体を提供することにある。
本発明の第1の実施形態の表示体は、基材と、基材上の高分子膜とを含み、前記高分子膜は、異なる種類の第1層および第2層が膜厚方向に交互に積層した構造を有し、第1層および第2層の少なくとも一方が、膨潤剤の吸収により膨潤し、膨潤剤の脱離により収縮する性質を有し、前記高分子膜は、ブロック共重合体を含み、前記ブロック共重合体の1つまたは複数のブロックが第1層を構成し、前記ブロック共重合体のその他のブロックが第2層を構成し、前記ブロック共重合体を構成するブロックの少なくとも1つは、下記一般式(1):
−X−(R−Y)−R (1)
(式中、
XおよびYは、各出現毎に、置換基を有していてもよい2価の炭化水素環式基、および置換基を有していてもよい2価の複素環式基からなる群から選択され、
は、各出現毎に、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CH−CHCH−、−CHCH−CH=CH−、−N=N−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−CO−、および−CO−CH=CH−からなる群から選択され、
は、水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、メルカプト基、ニトロ基、およびアミノ基からなる群から選択され、および
mは、1〜4の整数である)
で表される部分構造を有する繰り返し単位を含むことを特徴とする。ここで、第1層および第2層の一部は、架橋されていてもよい。
本発明の第1の実施形態の変形例は、高分子膜が、水溶性高分子および高分子ゲルからなる群から選択される追加材料をさらに含むことを特徴とする。ここで、ブロック共重合体がジブロック共重合体であり、ジブロック共重合体の一方のブロックが第1層を構成し、ジブロック共重合体の他方のブロックが第2層を構成してもよい。また、高分子膜が、ラメラ状のミクロ相分離構造を有してもよい。好ましくは、ブロック共重合体が60000以上の重量平均分子量を有し、第1層を構成する1つまたは複数のブロックの体積分率が0.35〜0.65の範囲内であってもよい。さらに、高分子膜が400nm以上の膜厚を有してもよい。また、第1層および第2層の少なくとも一方が、光架橋性または熱架橋性を有してもよい。
前述の構成を採用することにより、本発明は、短いプロセス時間で形成することができ、液体および気体の膨潤剤に対する暴露のみで、可視光領域全域を含む紫外線領域から赤外線領域に至る広範囲に色相変化が可能であり、かつ、圧力などの外部刺激による破損のおそれがない表示体を提供することができる。
本発明の表示体の1つの態様を示す概略断面図である。 部分的に架橋された高分子膜を有する本発明の表示体の別の態様を示す概略断面図である。
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の表示体の1つの態様を示す概略断面図である。表示体1は、基材4と、基材4上の高分子膜5とを含む。高分子膜5は、互いに異なる物性を有する第1層2および第2層3が膜厚方向に交互に積層した構造を有する。第1層2および第2層3の少なくとも一方は、膨潤剤の吸収により膨潤し、膨潤剤の脱離により収縮する性質を有する。言い換えると、第1層2および第2層3は、互いに異なる膨潤性を有する。本発明において、「膨潤剤」は、第1層2および第2層3の少なくとも一方を形成するポリマーブロックに吸収される分子を意味する。その結果、膨潤剤は、第1層2および第2層3の少なくとも一方を膨潤させる。本発明の膨潤剤は、水、アルコール、および有機溶媒を含む。膨潤剤は、好ましくは水またはアルコールであり、より好ましくは水である。膨潤剤は、液体であってもよいし、気体であってもよい。
基材4の材料は、表示体1の使用目的にあわせて適宜選択することができる。基材4の材料の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ガラス、シリコン、およびインジウム−スズ酸化物(ITO)などを含む。基材4は、透明、不透明または反射性であってもよい。また、基材4は、表示体1の使用目的に合わせて、黒色、白色などの任意の色を有することができる。さらに、基材4は、光沢を有してもよいし、光沢を持たなくてもよい。あるいはまた、基材4の高分子膜5側の面あるいは高分子膜5とは反対側の面の上に、光沢を有する反射層、または黒色層を有してもよい。反射層および黒色層は、構造発色の目視観察時の視認性の向上、および表示体1の意匠性の向上に有効である。
第1層2および第2層3が交互に積層した構造を有する高分子膜5は、好適には、ブロック共重合体の自己組織化に基づくミクロ相分離を利用して形成することができる。この目的のために、ブロック共重合体は、好ましくは、互いに相溶性の低い2つ以上の異なるポリマーブロックからなる高分子である。ブロック共重合体の1つまたは複数のブロックが第1層2を構成し、ブロック共重合体のその他のブロックが第2層3を構成する。ブロック共重合体は、各ポリマーブロックがそれらの末端において直列に結合した線状ブロック共重合体であってもよい。あるいはまた、ブロック共重合体は、各ポリマーブロックが一点で結合したスター型ブロック共重合体であってもよい。本発明においては、いずれのブロック共重合体も使用することができる。ブロック共重合体は、好ましくは、2つの異種のポリマーブロックが、それらの末端において結合したジブロック共重合体である。
本発明における「互いに相溶性が低い」とは、χ×N>10.5の式を満たすことを意味する(非特許文献2参照)。式中、χは、異種のポリマーブロック間で定められるフローリー・ハギンズの相互作用パラメータを表し、Nはブロック共重合体の重合度を表す。このようなブロック共重合体を相転移温度以上に加熱するアニール処理により、周期的なミクロ相分離構造が自己組織的に形成される。このミクロ相分離構造において、相溶性の低い2つ以上のポリマーブロックは、互いに交じり合わないようにミクロ領域を形成する。
本発明で用いることができるブロック共重合体の基本構造の例は、ポリ(スチレン−b−乳酸)、ポリ(スチレン−b−2−ビニルピリジン)、ポリ(スチレン−b−4−ビニルピリジン)、ポリ(スチレン−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(スチレン−b−N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(ブタジエン−b−4−ビニルピリジン)、ポリ(スチレン−b−フェロセニルジメチルシラン)、ポリ(ブタジエン−b−メチルメタクリレート)、ポリ(ブタジエン−b−t−ブチルメタクリレート)、ポリ(ブタジエン−b−t−ブチルアクリレート)、ポリ(ブタジエン−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(t−ブチルメタクリレート−b−4−ビニルピリジン)、ポリ(エチレン−b−メチルメタクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート−b−2−ビニルピリジン)、ポリ(エチレン−b−2−ビニルピリジン)、ポリ(エチレン−b−4−ビニルピリジン)、ポリ(イソプレン−b−2−ビニルピリジン)、ポリ(メチルメタクリレート−b−スチレン)、ポリ(t−ブチルメタクリレート−b−スチレン)、ポリ(メチルアクリレート−b−スチレン)、ポリ(ブタジエン−b−スチレン)、ポリ(イソプレン−b−スチレン)、ポリ(ブタジエン−b−アクリル酸ナトリウム)、ポリ(ブタジエン−b−エチレンオキシド)、ポリ(t−ブチルメタクリレート−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−ポリアクリル酸)、およびポリ(スチレン−b−メタクリル酸)を含むが、これらに限定されるものではない。なお、「−b−」の表記は、その前後に記載されたポリマーブロックが、それらの末端同士で結合していることを示す。たとえば、ポリ(スチレン−b−乳酸)は、ポリスチレンブロックの1つの末端と、ポリ乳酸ブロックの1つの末端とが結合していることを表す。
本発明のブロック共重合体において、少なくとも1つのブロックが、下記一般式(1))で示される部分構造を有する繰り返し単位を含む。好ましくは、少なくとも1つのブロックは、一般式(1)の部分構造を有する繰り返し単位から構成される。一般式(1)の部分構造は、液晶メソゲン鎖の機能を有する。
−X−(R−Y)−R (1)
一般式(1)中、XおよびYは、各出現毎に、置換基を有していてもよい2価の炭化水素環式基、および置換基を有していてもよい2価の複素環式基からなる群から選択される。炭化水素環式基は、脂肪族炭化水素環式基であってもよいし、芳香族炭化水素環式基であってもよい。脂肪族炭化水素環式基は、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。脂肪族炭化水素基の非制限的な例は、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基を含む。芳香族炭化水素環式基の非制限的な例は、1,4−フェニレン基、および1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を含む。
複素環式基は、好ましくは、環骨格に酸素原子または窒素原子を有する。複素環式基は、芳香族性を有していてもよい。複素環式基の非制限的な例は、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、およびピリミジン−2,5−ジイル基を含む。
炭化水素環式基および複素環式基の置換基の非制限的な例は、アルキル基およびハロゲン原子を含む。用いることができるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
一般式(1)中のRは、各出現毎に、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CH−CHCH−、−CHCH−CH=CH−、−N=N−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−CO−、および−CO−CH=CH−からなる群から選択される。一般式(1)の部分構造に反応性を付与するために、Rは、炭素−炭素二重結合または窒素−窒素二重結合を含むことが好ましい。より好ましいRの非制限的な例は、−CH=CH−、−N=N−、−CH=CH−CO−および−COCH=CH−を含む。これらの基を用いた場合、炭素−炭素二重結合または窒素−窒素二重結合の二量化反応などによる、ブロック共重合体の架橋を行うことが可能となる。ブロック共重合体の架橋は、紫外線照射、電子線照射などによって実施することができる。
一般式(1)中のRは、水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、メルカプト基、ニトロ基、およびアミノ基からなる群から選択される。好ましくは、Rは、水素原子、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択される。より好ましくは、Rは、水素原子、1〜10炭素原子を有するアルキル基、および1〜10炭素原子を有するアルコキシ基からなる群から選択される。アルキル基およびアルコキシ基は、線状(直鎖状)であってもよいし、分枝状であってもよい。
一般式(1)中のmは、1〜4の整数である。より好ましくは、mは1である。
本発明のブロック共重合体は、当該技術に知られている任意の手段を用いて調製することができる。また、一般式(1)の部分構造を有する繰り返し単位を含むブロックは、当該技術に知られている任意の手段を用いて調製することができる。たとえば、一般式(1)の部分構造を有するモノマーを用いる重合プロセスを用いてもよい。あるいはまた、予め形成されたブロック共重合体の少なくとも1つのブロックに対して、一般式(1)の部分構造を導入してもよい。
一般式(1)の部分構造は、ブロック共重合体の塗膜に対する熱処理を行うことにより、基材4の表面に対して垂直方向に配向し、液晶相を形成する。この配向する力によって、ブロック共重合体の自己組織化現象が加速され、第1層2および第2層3が交互に積層された多層構造を有する高分子膜5の形成が促進される。したがって、一般式(1)の部分構造を有するブロックを含むブロック共重合体を用いることによって、多層構造を有する高分子膜5の形成のための所要時間を短縮することができる。
ブロック共重合体が形成するミクロ相分離構造は、スフィア(球状)構造、シリンダ(柱状)構造、ジャイロイド構造、ラメラ(板状)構造などを含む。本発明においては、ラメラ構造を採るブロック共重合体を用いることが好ましい。なぜなら、図1に示すように、第1層2および第2層3のそれぞれが基材4の面内方向(基材4の表面に平行な方向)に配向した板状構造を有し、第1層2および第2層3が基材4の垂直方向(すなわち、高分子膜5の膜厚方向)に交互に積層した構造が実現できるからである。ブロック共重合体が形成するミクロ相分離構造の種類は、フローリー・ハギンズの相互作用パラメータχ、ポリマーの重合度N、およびポリマーブロックの体積分率によって表される相図によって決定される。本発明のブロック共重合体においては、第1層2を構成するポリマーブロックの体積分率が0.35〜0.65の範囲内であることが望ましい。言い換えると、本発明のブロック共重合体においては、望ましくは、第2層3を構成するポリマーブロックの体積分率は0.65〜0.35の範囲内である。前述の範囲内の体積分率を有することによって、スフィア構造またはシリンダ構造の形成を抑制して、望ましいラメラ状のミクロ相分離構造を形成することが可能となる。
また、ミクロ領域の寸法は、各領域を構成するポリマーブロックのポリマー鎖長に依存する。ラメラ構造を形成するために前述の体積分率を有するブロック共重合体の場合、ミクロ領域の寸法は、ブロック共重合体の分子量によって決定することができる。したがって、ブロック共重合体の分子量を適宜に選択することにより、ラメラ状のミクロ領域(第1層2および第2層3)の寸法、すなわちミクロ相分離構造のラメラパターンの周期を、目標とする大きさに調整することができる。
異なる種類の材料からなる第1層2および第2層3が交互に積層された高分子膜5は、スネルの法則およびブラッグの法則より導かれる式(2)によって決定される特定の波長λの光を反射する特性を有する。
λ=2d(n −cos2θ)1/2 (2)
(式中、nは第1層2と第2層3との屈折率の比(以下、「相対屈折率」と称する)を表し、dは第1層2または第2層3の厚さを表し、θは反射光の出射角を表す。)
本発明では、高分子膜5を膨潤剤に暴露した際に、第1層2および第2層3の少なくとも一方に膨潤剤が浸入してそれらを膨潤させ、層の膜厚d、ならびに相対屈折率nが変化することによって反射光の波長λが変化する。特に、膨潤した層の膜厚dおよび相対屈性率nを制御することにより、膨潤した層から可視光領域の反射光(以下、「構造発色」と称する)を得ることができる。相対屈折率nは、膨潤剤が浸入する前の第1層2および第2層3の絶対屈折率、ならびに、第1層2および第2層3に対する膨潤剤の屈折率、浸入量などによって決定される。したがって、ラメラパターン周期、すなわち高分子膜5を形成する有機ポリマー(ブロック共重合体)の周期的なミクロ相分離構造の周期は、非膨潤時において、可視光領域の反射光が得られる20〜400nmとすることが望ましい。特に、本発明では、高分子膜5の膨潤現象を利用することから、非膨潤時において、20〜50nmのラメラパターン周期を実現できる分子量を有するブロック共重合体を使用することがより望ましい。20nm以上のラメラパターン周期を得るためには、ブロック共重合体が、60000以上の重量平均分子量を有する必要がある。60000未満の重量平均分子量を用いるブロック共重合体を用いた場合、ラメラパターン周期が20nm以下となり、膨潤時の反射光の波長λが紫外領域内となり、目視確認することができない。
また、高分子膜5からの反射光が目視で観察可能な強度を有するために、高分子膜5が10層以上の第1層2および10層以上の第2層3を有するように、高分子膜5の膜厚を設定することが望ましい。特に、反射光が鮮明に観察されること、および自己組織化が進行し易いことの観点から、第1層2および第2層3の層数の合計は、20から50の範囲内であることが好ましい。この層数を実現するために、高分子膜5の膜厚は、400nm〜2000nmの範囲内であることが好ましい。第1層2および第2層3の層数の合計が20未満(すなわち、高分子膜5の膜厚が400nm未満)である場合、反射光の強度が小さくなり、目視で観察することが困難となる。
本発明においては、ブロック共重合体の自己組織化を用いて、異なる2つの層(第1層2および第2層3)が交互に積層した高分子膜5を形成する。交互積層構造を有する高分子膜を製造する方法として、異種の樹脂を同時にフィルム上に押出して積層膜を形成する、多層共押出法が知られている。しかしながら、多層共押出法においては、一度に形成できる層の数が制限される。この点に鑑みて、自己組織化による高分子膜5の形成が望ましい。
ブロック共重合体の自己組織化は、相転移温度以上への加熱(アニール)によって誘起される。しかしながら、ブロック共重合体の分子量が大きくなるにしたがって、ブロック共重合体の流動性が低下する。そのため、相分離挙動は鈍くなり、ミクロ相分離構造が形成されにくくなる。そのため、大きな分子量を有するブロック共重合体の自己組織化には、非常に長時間のアニール処理が必要となる。本発明においては、ブロック共重合体の少なくとも1つのブロックに導入した一般式(1)を有する液晶メソゲン鎖の配向力により、アニール処理の所要時間が著しく短縮される。
本発明の高分子膜5は、水溶性高分子および高分子ゲルからなる群から選択される追加材料(以下、「膨潤収縮材料」と称する場合がある)をさらに含んでもよい。好ましくは、高分子膜5の第1層2および第2層3の一方が、膨潤収縮材料をさらに含む。追加材料は、膨潤剤の吸収により膨潤し、膨潤剤の脱離により収縮する性質を有する。膨潤収縮材料は、特に、気体の膨潤剤に対する表示体1の応答性を向上させることに寄与する。
本発明の水溶性高分子の非制限的な例は、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンを含む。また、本発明の高分子ゲルの非制限的な例はポリビニルアルコールヒドロゲル、ポリアクリルアミドゲル、および、各種アクリルアミド誘導体(N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド)から形成されるゲルを含む。
水溶性高分子および高分子ゲルは、それらの溶液を用いて高分子膜5に導入することができる。水溶性高分子または高分子ゲルの溶液は、高分子膜5が溶解せず、高分子膜5の第1層2あるいは第2層3の少なくとも一方が膨潤する溶媒に、水溶性高分子または高分子ゲルを溶解させることにより、形成することができる。次いで、高分子膜5を、水溶性高分子または高分子ゲルの溶液中に浸漬することにより、水溶性高分子または高分子ゲルを導入する。最後に高分子膜5を乾燥させて、溶媒を除去する。
あるいはまた、水溶性高分子または高分子ゲルを形成するモノマーを高分子膜5に導入し、次いで重合反応を行い、高分子膜5中で水溶性高分子または高分子ゲルを形成してもよい。高分子膜5の第1層2あるいは第2層3の少なくとも一方が膨潤する溶媒に、モノマー、架橋剤、および開始剤を溶解させ、モノマー溶液を形成する。次いで、高分子膜5を、モノマー溶液中に浸漬し、開始剤に適合した条件(加熱または光照射)下で重合反応を行うことにより、高分子膜5中で水溶性高分子または高分子ゲルを形成する。最後に高分子膜5を乾燥させて、溶媒を除去する。
膨潤収縮材料の導入量は、膨潤剤吸収時の膜厚変化と導入された物質の屈折率に依存する。導入量は、式(2)によって求められる膜厚により定めることができ、可視光領域での構造発色の変化を誘起することができる。
次に、高分子膜5を膨潤させた際に発現する構造発色のパターニングについて説明する。本発明においては、高分子膜5の第1層2および第2層3の少なくとも一方が、光架橋性または熱架橋性を有してもよい。図2は、高分子膜5の一部を部分的に架橋させた表示体1の概略断面図である。図2に示す例では、架橋領域6において高分子膜5の架橋が行われている。架橋領域6において、第1層2および第2層3の少なくとも一方が架橋されていてもよいし、第1層2および第2層3の両方が架橋されていてもよい。
本発明においては、膨潤剤の吸収により高分子膜5を膨潤させることにより、式(2)中の膜厚dおよび相対屈折率nを変化させて、構造発色を変化させる現象を利用している。本発明において、膨潤剤の吸収(すなわち高分子膜5の膨潤)は、高分子膜5の多層構造が破壊されない限りにおいて、任意の温度で実施してもよい。任意の温度とは、(1)膨潤剤が高分子膜5に吸収される状態(液体または気体)になる温度、あるいは、(2)高分子膜5に固体状の膨潤剤が接触または近接したときに、当該固体状の膨潤剤の少なくとも一部が液体または気体になり、高分子膜5に吸収される状態となる温度、のいずれであってもよい。たとえば、温度0℃〜200℃で膨潤剤の吸収を実施してもよい。したがって、図2に示す架橋領域6における第1層2および/または第2層3の架橋により膨潤剤の吸収による膨潤を抑制した場合、膜厚dの変化が抑制され、構造発色の変化を抑制することができる。言い換えると、パターン状の架橋領域6を形成することによって、膨潤剤に暴露した際に、構造発色が変化する領域と構造発色が変化しない領域とを画定することができる。特定の実施態様においては、膨潤剤に暴露した際に架橋領域6が可視光を反射せず、架橋領域6以外の領域で可視光領域の構造発色を発現させることができる。高分子膜5の部分的架橋によるパターニングは、表示体1の目視観察における構造発色の色コントラストを向上させる点において有効である。
高分子膜5中のブロック共重合体は、熱または光によって架橋させることができる。たとえば、ピリジン環またはピロリジン環を含むポリマーブロックを含むブロック共重合体は、光照射により、ピリジン環またはピロリジン環のα位の炭素において架橋することが知られている。
また、ブタジエンから誘導されるポリマーブロックを含むブロック共重合体に熱重合開始剤または光重合開始剤を混合することにより、熱架橋性または光架橋性を付与することができる。あるいはまた、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基などの反応性置換基を有するポリマーブロックを含むブロック共重合体に対して、反応性置換基に適合する架橋剤、任意選択的に光酸発生剤または光塩基発生剤などを混合することにより、光架橋性を付与することができる。
適当な構造を有するポリマーブロックを選択することにより、高分子膜5の第1層2および第2層3の少なくとも一方に熱架橋性または光架橋性を付与することができる。第1層2および第2層3の両方に熱架橋性または光架橋性を付与してもよい。
簡便かつ短時間の処理でブロック共重合体の架橋(すなわち、高分子膜5)のパターニングが可能である点において、紫外線照射などによる光架橋が特に好ましい。より具体的には、紫外線照射などによる光架橋は、画像状にパターニングした紫外線遮蔽フォトマスクを通した照射により、高分子膜5の微細なパターニングを一括して実施することを可能にする。本発明において、高分子膜5の第1層2および第2層3の一方のみを架橋させてもよいし、第1層2および第2層3の両方を架橋させてもよい。膨潤の抑制による構造発色の変化を利用することから、少なくとも、膨潤剤の吸収により膨潤する層を架橋させることが望ましい。
また、光照射による架橋の場合、光照射は、高分子膜5の表面に対して垂直方向から行ってもよいし、斜め方向から行ってもよい。垂直方向から光照射を行った場合、照射領域(すなわち、架橋領域6)と非照射領域との境界が明確となり、高いコントラスト(はっきりとした輪郭)を有するイメージが得られる。一方、斜め方向から光照射を行った場合、照射区域と非照射区域との境界において、高分子膜5の深さ方向で架橋率のグラデーションが発生する。その結果として、膨潤剤吸収後のイメージは、ソフトな輪郭を有するイメージとなる。
膨潤収縮材料をさらに含む高分子膜5を使用する場合、膨潤収縮材料を導入する前の乾燥状態(すなわち非膨潤状態)の高分子膜5に対して紫外線遮蔽フォトマスクを通した光照射を行い、架橋するのが好ましい。膨潤収縮材料の導入後にパターニングを実施した場合、膨潤収縮材料の存在によってブロック共重合体間の距離が大きくなり、十分な架橋を行えない恐れがある。その結果、膨潤剤吸収時の架橋領域の膨潤率と、架橋領域以外の領域の膨潤率との差が小さくなり、構造発色の高い色コントラストが得られない。
次に、高分子膜5における構造発色の波長λの制御方法について説明する。構造発色の波長λを制御する第1の方法は、高分子膜5中のブロック共重合体の架橋率を制御する方法である。ブロック共重合体の架橋率が増大するほど、高分子膜5の膨潤率は低下し、高分子膜5の寸法変化(広がりおよび伸び)が小さくなる。膨潤剤吸収前の膜厚を特定の値に固定した場合、架橋率の増大(すなわち、膨潤率の低下)は、膨潤剤吸収時の膜厚dを短くする。式(2)から明らかなように、構造発色の波長λは、膜厚dに比例する。その結果、ブロック共重合体の架橋率を制御することにより、膨潤剤吸収時の構造発色の波長λ(すなわち、構造発色の色相)を選択することが可能となる。
紫外線による光架橋を用いる場合、高分子膜5中のブロック共重合体の架橋率は、光照射量によって制御することができる。本発明において、膨潤剤吸収時の構造発色を可視光領域に発現させるには、典型的には、5mJ/cm以上500mJ/cm以下の範囲内の紫外線照射量を用いることが望ましい。照射する紫外線は、ブロック共重合体(または添加する光重合開始剤)に依存するが、200nmから500nmの範囲内の波長を有してもよい。また、使用する光源は、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、およびLEDランプを含むが、これらに限定されるものではない。
光架橋を行う際に架橋率を制御するための別法は、グレースケールマスクを用いた光照射である。グレースケールマスクは、光遮蔽パターンを網点状に形成し、その網点の密度によってサンプルに入射される光量を制御するマスクである。グレースケールマスクを用いた一度の光照射プロセスで、表示体1の同一面内に波長λの異なる構造発色パターン(いわゆる、カラー画像)を得ることができる。その結果、表示体1の意匠性は著しく向上する。
構造発色の波長λを制御する第2の方法は、異種の膨潤剤に対する高分子膜5の暴露である。高分子膜5の膨潤状態は、高分子膜5(具体的には、第1層2および第2層3)と膨潤剤との親和性によって変化する。膨潤剤を変更することによって、膨潤時の膜厚dが変化する。さらに、膨潤剤はそれぞれ固有の屈折率を有する。また、膨潤時に第1層2および/または第2層3への吸収量も、膨潤剤の種類に依存する。これら2つの効果により、膨潤剤の種類を変更することによって、相対屈折率nを変化させることができる。膜厚dおよび相対屈折率nの両方が変化することから、式(2)によって求められる構造発色の波長λも変化する。したがって、目的とする波長λに対応して、暴露する膨潤剤を選択することができる。この目的において有機溶媒を膨潤剤として用いる場合、高分子膜5を構成するブロック共重合体を溶解させない有機溶媒を選択すべきである。なぜなら、ブロック共重合体の溶解は、高分子膜5のミクロ相分離構造の崩壊、ひいては構造発色の喪失をもたらすためである。
また、構造発色の波長λを制御する第3の方法は、高分子膜5を形成する有機ポリマーの化学的修飾である。たとえば、膨潤剤の吸収により膨潤する相を構成するポリマーブロックがピリジン環を含む場合、ピリジン環をプロトン化または4級化することによって、当該ポリマーブロックに正電荷を付与することができる。正電荷を付与されたポリマーブロックは、正電荷の静電的反発によって増大した膨潤率を示す。膨潤率の増大は、膨潤時の膜厚dの増大、ひいては、膨潤時の構造発色の波長λの増大をもたらす。
ピリジン環のプロトン化は、高分子膜5に酸性水溶液を作用させることにより実施することができる。用いる酸性水溶液は、pH1以上5以下を有することが望ましい。酸性水溶液のpHを低くすることによって、プロトン化率を増大させ、結果として膨潤時の構造発色の長波長シフトを行うことができる。
一方、ピリジン環の4級化は、高分子膜5にハロゲン化アルキルを含有する溶液を作用させることにより実施することができる。この処理により、ピリジン環の窒素原子が4級化され、ポリマーブロックに正電荷が付与される。用いることができるハロゲン化アルキルの非制限的な例は、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、ヨウ化メチルおよびヨウ化エチルを含む。4級化率の増大により、膨潤時の構造発色の長波長シフトを行うことができる。
<実施例1>
最初にポリ(スチレン−b−2−ビニルピリジン)(PS−b−P2VP)のピリジン環の5位に4−フェニルアゾフェニル基(一般式(1)において、XおよびYが1,4−フェニレン基であり、Rが−N=N−であり、Rが水素原子であり、mが1である基)を導入したブロック共重合体(PS−b−P2VP(Az))を、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)に溶解し、7%溶液を調製した。使用したPS−b−P2VP(Az)は、107000の重量平均分子量および1.05の多分散度を有した。また、PS−b−P2VP(Az)中のポリスチレン(PS)ブロックの体積分率は0.52であった。スピンコート法を用いて、ガラス製の基材4上にPS−b−P2VP(Az)溶液を塗布し、高分子前駆体膜を形成した。スピンコート時の回転数は、400rpmとした。
次に、ホットプレート上で、高分子前駆体膜を形成した基材4を10分間にわたって110℃に加熱するアニーリング処理を行った。アニーリング処理により、高分子前駆体膜の自己組織化が進行し、第1層2および第2層3が交互に積層された高分子膜5を有する表示体1が得られた。高分子膜5は、800nmの膜厚を有した。
得られた表示体1を紫外線硬化樹脂中に包埋し、ダイヤモンドカッターを備えたミクロトームを用いて表示体1を垂直方向に切断した。次いで、表示体1の断面を3時間にわたってヨウ素雰囲気に暴露し、表示体1の染色断面サンプルを得た。得られた断面サンプルを、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、高分子膜5が、垂直方向に白色層と黒色層とが交互に積層された構造を有することが観察された。白色層は、ヨウ素にて染色されたポリ−2−ビニル−5−(4−フェニルアゾフェニル)ピリジン(P2VP(Az))ブロックからなる層であり、黒色層は、PSブロックからなる層である。P2VP(Az))ブロックからなる層である白色層は、20nmの膜厚を有した。
得られた表示体1の高分子膜5に水滴を滴下すると、滴下位置で高分子膜5の膨潤に起因する光沢のある構造発色を視認することができた。
<実施例2>
実施例1と同様の手順を用いて、PS−b−P2VP(Az)の塗布およびアニーリング処理を行い、自己組織化が進行した高分子膜5を形成した。
次に、24質量%のアクリルアミド、1.9質量%のN,N’−メチレンビスアクリルアミド、1.9質量%の2,2−ジエトキシアセトフェノンを含むアクリルアミド水溶液を調製した。調製したアクリルアミド水溶液を高分子膜5に滴下し、高分子膜5に含浸させた。続いて、メタルハライドランプを用いて300mJ/cmの紫外線を照射してアクリルアミドゲルを形成し、ブロック共重合体と膨潤収縮材料との混合層である第2層3を形成し、表示体1を得た。高分子膜5は、2800nmの膜厚を有した。
実施例1と同様の手順を用いて、表示体1の染色断面サンプルを形成し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、高分子膜5が、白色層と黒色層とが交互に積層された構造を有することが観察された。白色層は、ヨウ素にて染色されたP2VP(Az)ブロックおよびポリアクリルアミドゲルからなる層であり、黒色層は、PSブロックからなる層である。P2VP(Az)ブロックおよびポリアクリルアミドゲルからなる層である白色層は、120nmの膜厚を有した。実施例1で観察された白色層が20nmの膜厚を有したこととの比較により、本実施例の高分子膜5において、ポリアクリルアミドゲルが第2層3に導入されたことが分かる。
得られた表示体1を恒温恒湿槽中に設置し、温度25℃に固定した状態で、湿度を変化させながら反射スペクトル測定を行った。その結果、湿度が高くなるにしたがって反射スペクトルの極大波長は可視光領域にて長波長側に移動した。さらに、表示体1の無色透明の高分子膜5に呼気を吹きかけると、高分子膜5が緑色に着色した。これらの結果から、表示体1において、水蒸気に応答して構造発色が得られること、および水蒸気の濃度に応じて構造発色が変化することが分かった。
さらに、表示体1の無色透明の高分子膜5にエタノール蒸気を吹きかけると、高分子膜5が青色に着色した。この結果から、表示体1において、アルコール蒸気に応答して構造発色が得られることが分かった。また、呼気およびエタノール蒸気の比較から、用いる膨潤剤の種類に応じた構造発色が得られることが分かった。
<実施例3>
実施例1と同様の手順を用いて、PS−b−P2VP(Az)の塗布およびアニーリング処理を行い、自己組織化が進行した高分子膜5を形成した。高分子膜5の上にCr薄膜からなるパターニングされた紫外線遮蔽マスクを載置し、メタルハライドランプを用いて200mJ/cmの紫外線を照射し、高分子膜5の一部を架橋させた。
続いて、実施例2と同様の手順を用いて、高分子膜5にポリアクリルアミドゲルを導入し、表示体1を得た。
得られた表示体1を、湿度20%RHにおいて観察したところ、高分子膜5全体にわたって無色透明であり、パターン状紫外線照射によるイメージは視認できなかった。
続いて、得られた表示体1を、温度25℃、湿度70%RHの雰囲気に静置して観察したところ、高分子膜5の膨潤に起因する光沢のある構造発色を視認できた。ここで、紫外線が照射された領域の構造発色は、紫外線が遮蔽された領域の構造発色とは異なる極大波長を示した。すなわち、パターン状紫外線照射によるイメージを視認することができた。
さらに、表示体1の高分子膜5にエタノール蒸気を吹きかけると、パターン状紫外線照射によるイメージに対応する青色の構造発色が観察された。この結果から、表示体1において、アルコール蒸気に応答して構造発色が得られることが分かった。
<比較例1>
ブロック共重合体として、4−フェニルアゾフェニル基を含まないポリ(スチレン−b−2−ビニルピリジン)(PS−b−P2VP)を用いたことを除いて、実施例1と同様の手順を用いて、PS−b−P2VPの塗布およびアニーリング処理を行って表示体を得た。続いて、実施例1と同様の手順を用いて表示体の染色断面サンプルを形成し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。しかしながら、高分子膜中に白色層および黒色層が交互に積層された構造は観察されなかった。また、表示体に水滴を滴下しても高分子膜の色相は変化しなかった。すなわち、第1層および第2層の交互積層構造に基づく構造発色を視認することができなかった。
<比較例2>
ブロック共重合体として、4−フェニルアゾフェニル基を含まないPS−b−P2VPを用いたことを除いて、実施例2と同様の手順を用いて、PS−b−P2VPの塗布、アニーリング処理、およびポリアクリルアミドゲルの導入を行って表示体を得た。続いて、実施例1と同様の手順を用いて表示体の染色断面サンプルを形成し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。しかしながら、高分子膜中に白色層および黒色層が交互に積層された構造は観察されなかった。また、表示体を恒温恒湿槽中に設置し、温度25℃に固定した状態で、湿度を変化させながら反射スペクトル測定を行った、可視光領域に反射スペクトルの極大波長は見られなかった。表示体の無色透明の高分子膜に呼気を吹きかけても、高分子膜は無色透明のままであった。これらの結果から、表示体において、水蒸気に応答した構造発色が得られないことが分かった。
以上のように、ブロック共重合体に一般式(1)を有する部分構造(液晶メソゲン鎖)を導入することにより、短時間で自己組織化による多層構造を有する高分子膜5を形成できること、水、アルコールなどの膨潤剤に暴露することにより構造発色が得られる表示体1を提供することができた。また、さらに第1層2および第2層3の少なくとも一方に、膨潤剤に応答する追加材料(膨潤収縮材料)を導入することにより、気体の膨潤剤に暴露することにより構造発色が得られる表示体を提供することができた。
膨潤剤への暴露および/または膨潤剤の濃度変化に対する応答性を有する本発明の表示体1は、偽造防止表示体、玩具などの画像表示体、あるいは湿度または膨潤剤の種類に応答するセンサーデバイスなどに利用できる。
1 表示体
2 第1層
3 第2層
4 基材
5 高分子膜
6 架橋領域

Claims (8)

  1. 基材と、基材上の高分子膜とを含む表示体であって、
    前記高分子膜は、異なる種類の第1層および第2層が膜厚方向に交互に積層した構造を有し、
    前記第1層および前記第2層の少なくとも一方が、膨潤剤の吸収により膨潤し、膨潤剤の脱離により収縮する性質を有し、
    前記高分子膜は、ブロック共重合体を含み、前記ブロック共重合体の1つまたは複数のブロックが前記第1層を構成し、前記ブロック共重合体のその他のブロックが前記第2層を構成し、
    前記ブロック共重合体を構成するブロックの少なくとも1つは、下記一般式(1)
    −X−(R−Y)−R (1)
    (式中、
    XおよびYは、各出現毎に、置換基を有していてもよい2価の炭化水素環式基、および置換基を有していてもよい2価の複素環式基からなる群から選択され、
    は、各出現毎に、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CH−CHCH−、−CHCH−CH=CH−、−N=N−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−CO−、および−CO−CH=CH−からなる群から選択され、
    は、水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、メルカプト基、ニトロ基、およびアミノ基からなる群から選択され、および
    mは、1〜4の整数である]
    で表される部分構造を有する繰り返し単位を含む
    ことを特徴とする表示体。
  2. 前記高分子膜が、水溶性高分子および高分子ゲルからなる群から選択される追加材料をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の表示体。
  3. 前記ブロック共重合体がジブロック共重合体であり、前記ジブロック共重合体の一方のブロックが前記第1層を構成し、前記ジブロック共重合体の他方のブロックが前記第2層を構成することを特徴とする請求項2に記載の表示体。
  4. 前記高分子膜が、ラメラ状のミクロ相分離構造を有することを特徴とする請求項2に記載の表示体。
  5. 前記ブロック共重合体が60000以上の重量平均分子量を有し、前記第1層の体積分率が0.35〜0.65の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の表示体。
  6. 前記高分子膜が400nm以上の膜厚を有することを特徴とする請求項2に記載の表示体。
  7. 前記第1層および前記第2層の少なくとも一方が、光架橋性または熱架橋性を有することを特徴とする請求項2に記載の表示体。
  8. 前記第1層および前記第2層の一部が架橋されていることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
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