JP6520498B2 - 表示体、表示体封入セルおよび表示体付き物品 - Google Patents

表示体、表示体封入セルおよび表示体付き物品 Download PDF

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Description

本発明は、多相積層構造に由来する光学特性を含む表示体に関し、温度変化による固体―液体間での相転移に応答した光学特性の変化を利用した、偽造防止、画像表示およびセンサーのための表示体、表示体を封入したセル、および表示体付きの物品に関する。
偽造を防止するために、金券、有価証券、証明印紙、クレジットカード、会員証、高価物品などには、偽造防止媒体の貼付、潜像模様、発光インキを使用する等の、様々な偽造防止技術が施されている。
中でも、微細な周期構造により光を反射して発色し、光沢を有する構造発色という現象が注目されており、その構造発色は、色素等に見られる経時的な退色がおこりにくく、高い彩度を有し、鮮やかな色を示す特徴がある。
このような構造発色を利用した表示部材としては、異なる屈折率を有するポリマーが交互に積層された多層膜構造体を有し、水溶液にその多層膜構造体を浸漬させることにより、ポリマー層が膨潤し発色変化を生じさせる表示部材が知られている(非特許文献1)。
しかしながら、多層膜構造を利用した表示体では、可視光領域で反射波長を変化させるためには、多層膜構造への水溶液あるいはアルコール溶液の浸漬と液状物質の乾燥を繰り返す必要があり、液状物質の温度変化に対して可視光領域における発色変化を誘起させることはできない。
また、ブロック共重合体と特定溶媒を用いたミクロ相分離構造体として、温度に応答した構造周期の変化により、構造色を変化させるミクロ相分離構造体が提案されている(特許文献1)。
しかし、ミクロ相分離構造体では、ミクロ相分離構造を壊すことなく、構造周期の均一な変化を起こすためには、液状物質をゆっくり均一に温度変化させる必要があり、加熱器具を必要とする。
WO08/047514号
Youngjong,K.、「Broad−wavelength−range chemically tunable block−copolymerphotonic gels」、Nature materials, 2007、Vol.6、pp.957−960
本発明は、これらの課題に鑑みてなされたものであり、多層膜構造を利用した表示体において、液状物質の温度変化に対して可視光領域における発色変化を誘起させることができる表示体、表示体封入セルおよび表示体付き物品を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材の一方の面に、異なる種類の第1相と第2相が膜厚方向に交互に積層した構造を有する高分子膜を積層した表示体であって、
前記第1相および前記第2相の少なくとも一方の相が液状物質を含み、前記液状物質の湿潤により膨潤しており、かつ、湿潤した前記高分子膜を前記液状物質の凝固点以下に冷却すると、液体から固体への相転移に伴う体積変化により、前記高分子膜が可逆的に膨潤、または収縮することを特徴とする表示体である。
また、請求項2に記載の発明は、前記液状物質の凝固点が−10℃〜50℃の範囲内であり、前記高分子膜が前記液状物質により湿潤した際に、前記表示体が可視領域の光を反射することを特徴とする請求項1に記載の表示体である。
また、請求項3に記載の発明は、前記液状物質が水であり、液体から固体への相転移に伴う体積変化により、前記高分子膜が可逆的に膨潤することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示体である。
また、請求項4に記載の発明は、前記液状物質が水以外の物質であり、液体から固体への相転移に伴う体積変化により、前記高分子膜が可逆的に収縮することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示体である。
また、請求項5に記載の発明は、前記高分子膜はブロック共重合体を含み、前記ブロック共重合体の1つまたは複数のブロックが前記第1相を構成し、前記ブロック共重合体のその他のブロックが前記第2相を構成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示体である。
また、請求項6に記載の発明は、前記ブロック共重合体はジブロック共重合体であり、前記ジブロック共重合体の一方のブロックが前記第1相を構成し、前記ジブロック共重合体の他方のブロックが前記第2相を構成することを特徴とする請求項5に記載の表示体である。
また、請求項7に記載の発明は、前記ブロック共重合体が、60000以上の重量平均分子量を有し、前記第1相の体積分率が0.35〜0.65の範囲内であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の表示体である。
また、請求項8に記載の発明は、前記高分子膜は、ラメラ状のミクロ相分離構造を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の表示体である。
また、請求項9に記載の発明は、前記高分子膜が400nm以上の膜厚を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示体である。
また、請求項10に記載の発明は、前記第1相および前記第2相の少なくとも一方が、光架橋性または熱架橋性を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の表示体である。
また、請求項11に記載の発明は、前記第1相および前記第2相の少なくとも一部または全体が架橋されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の表示体である。
また、請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の表示体を、
上部基材と下部基材で被覆したことを特徴とする表示体封入セルである。
また、請求項13に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の表示体、または請求項12に記載の表示体封入セルを、接着層を介して、物品に貼付したことを特徴とする表示体付き物品である。
本発明における表示体、表示体封入セルおよび表示体付き物品は、液状物質の湿潤により色が変化し、かつ、温度刺激による固体−液体間の相転移(凝固と融解)に伴う体積変化に応答し、可視光領域で色を変化させる機能を有し、さらに液状物質の凝固点を−10℃以上50℃以下とすることで、たとえば人の体温を熱源として用いることができるため、加熱器具を使用せずに液体−固体間の状態変化を観察することができる。
本発明の第1の実施形態に係る表示体の要部拡大断面概念図である。 本発明の第1の実施形態に係る表示体において、高分子膜の一部が部分的に架橋された表示体の要部拡大断面概念図である。 本発明の第1の実施形態に係る表示体において、高分子膜の一部が部分的に架橋され、液状物質の湿潤により膨潤した前後の状態を示す要部拡大断面概念図である。 本発明の第1の実施形態に係る表示体において、高分子膜の一部が部分的に架橋され、液状物質の凝固により収縮した前後の状態を示す要部拡大断面概念図である。 本発明の第1の実施形態に係る表示体において、高分子膜の一部が部分的に架橋され、高分子膜が液状物質の凝固により膨潤した前後の状態を示す要部拡大断面概念図である。 本発明の第2の実施形態に係る表示体封入セルの断面概念図である。 本発明の第3の実施形態に係る表示体付き物品の上面概念図である。
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の表示体の要部拡大側断面図であり、表示体1は、任意選択的に設けてもよい基材4と、基材4上の高分子膜5とを含み、高分子膜5は、異なる種類の第1相2および第2相3が、膜厚方向に交互に複数、積層した構造を有する。
高分子膜5が自立性である場合には、基材4を省略することができる。基材4の材料は、表示体1の使用目的にあわせて適宜選択することができる。基材4の材料の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ガラス、およびシリコンなどを含み、さらに、インジウム−スズ酸化物(ITO)やケイ素酸化物(SiO)による表面修飾を施してもよい。ただし本発明はこれらに限られるものではない。
基材4は、透明、不透明または反射性であってもよい。また、基材4は、表示体1の使用目的に合わせて、黒色、白色などの任意の色を有することができる。さらに、基材4は、光沢を有してもよいし、光沢を持たなくてもよい。
第1相2および第2相3からなる高分子膜5は、好適には、ブロック共重合体を用いて形成することができる。ブロック共重合体は、互いに相溶性の低い2つ以上の異なるポリマーブロックがそれらの末端で結合している高分子である。
本発明における「互いに相溶性が低い」とは、文献(leibler、L.、「Theory of Microphase Separation in Block Co
polymers」、Macromolecules、1980、Vol.13、pp.1602−1、617)に示されるχ×N>10.5の式を満たすことを意味する。
ここで、χは、異種のポリマーブロック間で定められるフローリー・ハギンズの相互作用パラメータを表し、Nはブロック共重合体の重合度を表す。
このようなブロック共重合体は、この共重合体を相転移温度以上に加熱するアニール処理により、周期的なミクロ相分離構造を自己組織的に形成する。このミクロ相分離構造において、相溶性の低いポリマーブロックは、互いに交じり合わないようにミクロ領域を形成する。
そのミクロ領域の寸法は、各ポリマーブロックのポリマー鎖長に依存する。また、どのようなミクロ相分離構造が形成されるかは、ブロック共重合体を形成する各ポリマーブロックの体積分率によって決定される。
本実施形態においては、前述の自己組織化現象を用いて、2つの異なる有機相(第1相2および第2相3)が交互に積層した高分子膜5を形成することができる。自己組織化現象を用いる方法以外に、異種の樹脂を同時にフィルム上に押出して積層膜を形成する、多層共押出法を用いて高分子膜5を形成することもできる。
しかしながら、多層共押出法においては、一度に形成できる層の数が制限される。したがって、1回の塗布およびアニール処理のみで20層以上の相が交互に積層された高分子膜5を形成することができる、自己組織化現象を用いる方法が好ましい。
ブロック共重合体には、各ポリマーブロックがそれらの末端において直列に結合した線状ブロック共重合体、各ポリマーブロックが一点で結合したスター型ブロック共重合体などが含まれる。
本実施形態においては、いずれのブロック共重合体も使用することができる。本発明においては、2つの異種のポリマーブロックが、それらの末端において結合したジブロック共重合体を用いることが好ましい。
本実施形態で用いることができるジブロック共重合体の例は、ポリ(スチレン−b−ポリ乳酸)、ポリ(スチレン−b−2−ビニルピリジン)、ポリ(スチレン−b−4−ビニルピリジン)、ポリ(スチレン−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(スチレン−b−N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(ブタジエン−b−4−ビニルピリジン)、ポリ(スチレン−b−フェロセニルジメチルシラン)、ポリ(ブタジエン−b−メチルメタクリレート)、ポリ(ブタジエン−b−t−ブチルメタクリレート)、ポリ(ブタジエン−b−t−ブチルアクリレート)、ポリ(ブタジエン−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(t−ブチルメタクリレート−b−4−ビニルピリジン)、ポリ(エチレン−b−メチルメタクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート−b−2−ビニルピリジン)、ポリ(エチレン−b−2−ビニルピリジン)、ポリ(エチレン−b−4−ビニルピリジン)、ポリ(イソプレン−b−2−ビニルピリジン)、ポリ(メチルメタクリレート−b−スチレン)、ポリ(t−ブチルメタクリレート−b−スチレン)、ポリ(メチルアクリレート−b−スチレン)、ポリ(ブタジエン−b−スチレン)、ポリ(イソプレン−b−スチレン)、ポリ(ブタジエン−b−アクリル酸ナトリウム)、ポリ(ブタジエン−b−エチレンオキシド)、ポリ(t−ブチルメタクリレート−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−ポリアクリル酸)、およびポリ(スチレン−b−メタクリル酸)を含むが、これらに限定されるものではない。
前述のジブロック共重合体では、ポリマーブロックの一方が第1相2を形成し、他方が第2相3を形成する。ジブロック共重合体のミクロ相分離によって形成される微細構造(ミクロ相分離構造)は、2つのポリマーブロックの体積分率にも依存する。
得られるミクロ相分離構造は、スフィア(球状)構造、シリンダ(柱状)構造、ジャイロイド構造、ラメラ(板状)構造などを含む。ジブロック共重合体がどのようなミクロ相分離構造を呈するかは、フローリー・ハギンズの相互作用パラメータχ、ポリマーの重合度N、およびポリマーブロックの体積分率によって表される相図によって決定される。
本実施形態においては、ラメラ構造を有するジブロック共重合体を用いる。なぜなら、図1に示すように、第1相2および第2相3のそれぞれが基材4の面内方向(基材4の表面に平行な方向)に配向した板状構造を有し、さらに第1相2および第2相3が基材4の垂直方向(すなわち、高分子膜5の膜厚方向)に交互に複数、積層した構造が実現できるからである。
ジブロック共重合体がラメラ構造を有するために、2つのポリマーブロックの体積分率は、0.35〜0.65の範囲内とすることが望ましい。ポリマーブロックの体積分率が0.35未満である場合または0.65以上である場合、スフィア構造またはシリンダ構造が得られ、ラメラ構造を得ることが困難となる。
図1に示す例では、高分子膜5はラメラ構造を有する。ジブロック共重合体を用いる場合、ラメラ構造の繰り返しのパターンサイズ(周期的なパターンのサイズ)は、ジブロック共重合体の分子量に依存する。したがって、ジブロック共重合体の分子量を適宜に選択することにより、周期的なパターンのサイズ、すなわち周期的な相分離構造のサイズを、目標とするサイズに調整することができる。
異なる種類の材料からなる第1相2および第2相3が交互に積層された高分子膜5は、スネルの法則およびブラックの法則より導かれる式(λ1=2d(n1−cos2θ)1/2)によって決定される特定の波長λ1の光を反射する特性を有する。式中、n1は第1相2と第2相3との屈折率の比(以下、「相対屈折率」と称する)を表し、dは第1相2または第2相3の厚さを表し、θは反射光の出射角を表す。
本実施形態では、高分子膜5を液状物質で湿潤させた際に、第1相2および第2相3の少なくとも一方に液状物質が浸入してそれらを膨潤させ、層厚d、ならびに相対屈折率n1が変化することによって反射光の波長λ1が変化し、高分子膜5から可視光領域の反射光(構造発色)が出射するようになる。
相対屈折率n1は、湿潤させる液状物質の絶対屈折率、液状物質が浸入する前の第1相2および第2相3の絶対屈折率、ならびに、第1相2および第2相3に対する液状物質の浸入量などによって決定される。
したがって、ラメラパターン周期、すなわち高分子膜5を形成する有機ポリマー(ブロック共重合体)の周期的な相分離構造の周期は、可視光領域の反射光が得られる20〜400nmとすることが望ましい。
特に、本実施形態では、高分子膜6の膨潤現象を利用することから、20〜50nmのラメラパターン周期を実現できる分子量を有する有機ポリマー(ブロック共重合体)を使用することがより望ましい。20nm以上のラメラパターン周期を得るためには、ブロック共重合体が、60000以上の重量平均分子量を有する必要がある。
60000未満の重量平均分子量を用いるブロック共重合体を用いた場合、ラメラパタ
ーン周期が20nm以下となり、反射光の波長λ1が紫外領域内となり、目視確認することができない。
また、高分子膜5からの反射光が目視で観察可能な強度を有するために、高分子膜5が10層以上の第1相2および10層以上の第2相3を有するように、高分子膜5の膜厚を設定することが望ましい。
特に、反射光が鮮明に観察されること、および自己組織化が進行し易いことの観点から、第1相2および第2相3
第1相2および第2相3の層数の合計が20未満(すなわち、高分子膜5の膜厚が400nm未満)である場合、反射光の強度が小さくなり、目視で観察することが困難となる。
前述のように、ブロック共重合体の自己組織化は、相転移温度以上でアニール(加熱)されることで誘起される。しかしながら、ブロック共重合体の分子量が大きくなるに従って、ブロック共重合体の流動性が低下する。そのため、相分離挙動は鈍くなり、ミクロ相分離構造が形成されにくくなる。
そのため、大きな分子量を有するブロック共重合体の自己組織化には、非常に長時間のアニール処理が必要となる。自己組織化現象を促進させるために、ブロック共重合体に親和性のある溶媒蒸気下でアニール処理を行うことができる。
溶媒蒸気の存在により、ブロック共重合体の流動性が向上し、自己組織化が促進されることが知られており、アニール時間の短縮および加熱温度の低減が可能となる。
溶媒蒸気下のアニール処理で使用する溶媒は、ブロック共重合体に親和性のある溶媒であれば特に限定されない。用いることができる溶媒の例は、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)などを含む。
また、溶媒蒸気下のアニール処理は、好適には、使用する溶媒の沸点未満の温度で実施される。沸点以上の温度で処理を行った場合、高分子膜5周辺で溶媒が揮発し、溶媒蒸気が十分に高分子膜5内に浸透せず、有機ポリマーの流動性を向上させることができない。
次に、高分子膜5の湿潤に用いる液状物質について説明する。
高分子膜5を湿潤させる液状物質は、高分子膜5を形成する有機ポリマーに親和性を有し、液状物質の固体−液体間の相転移に伴う体積変化が進行する限り、任意に選択することができるが、液状物質が示す凝固点は−10℃以上50℃以下であることが望ましい。
特に、使用環境の気温(人の体温以下)と人の体温の間の温度に凝固点を有する液状物質を用いた場合、通常時液状物質は固体となり、人の体温を熱源として用いることで、加熱器具を使用せずに液体−固体間の状態変化が可能であり、好適に用いられる。
また、使用環境の気温(人の体温以上)と人の体温の間の温度に凝固点を有する液状物質を用いた場合、通常時液状物質は液体となり、人の体温を冷源として用いることで、冷却器具を使用せずに液体−固体間の状態変化が可能であり、好適に用いられる。
なお、液状物質の凝固点が−10℃未満である場合、液状物質を相転移させるには、表示体1の温度が−10℃を下回る必要がある。しかし、表示体1の温度が−10℃を下回
ると、基材4および/または高分子膜5の割れが生じ、繰り返しの使用が困難となる。また、液状物質の凝固点が50℃より大きい場合、液状物質を相転移させるには、表示体1の温度が50℃を上回る必要がある。
しかし、表示体1の温度が50℃を上回ると、高分子膜5が基材4から剥がれ、周期的なミクロ相分離構造が崩壊するため、構造発色は喪失される。また、高分子膜5のミクロ相分離構造が崩壊すると構造発色は喪失されるため、高分子膜5を構成する有機ポリマーを溶解させる有機溶媒は使用できない。
図3は、その一部が部分的に架橋された高分子膜が、液状物質の湿潤により膨潤した前後の状態を示す要部拡大側断面図であり、第2相3が液状物質の湿潤により膨潤している例を示す。
また、構造発色の波長λは、液状物質の種類を変えることで、制御することが可能となる。高分子膜5の膨潤の状態は、高分子膜5(具体的には、第1相2および/または第2相3)と液状物質との親和性によって変化する。
その結果、異なる種類の液状物質を用いることによって、膨潤時の層厚dが変化する。さらに、液状物質は、それぞれ固有の屈折率を有する。また、膨潤時に第1相2および/または第2相3に含有される液状物質の量も変化する。
したがって、異なる種類の液状物質を用いることによって、第1相2および第2相3の相対屈折率n1も変化する。したがって、層厚dおよび相対屈折率n1の両方が変化することから、式(λ1=2d(n1−cos2θ)1/2)によって求められる反射光の波長λ1も変化する。したがって、目的とする構造発色の波長λに合わせて、湿潤に用いる液状物質を選択することができる。
本実施形態で用いることのできる液状物質の例は、アニリン(mp:−6℃)、水(mp:0℃)、ホルムアミド(mp:3℃)、ギ酸(mp:8℃)、エチレンジアミン(mp:9℃)、1,4ジオキサン(mp:12℃)、N,Nジイソプロピルホルムアミド(mp:12℃)、アクリル酸(mp:14℃)、メタクリル酸(mp:16℃)、酢酸(mp:17℃)、(±)−乳酸(mp:17℃)、L−乳酸(mp:26℃)、グリセリン(mp:18℃)、プロピオル酸(mp:18℃)、アセトフェノン(mp:20℃)、t−ブチルアルコール(mp:26℃)、ジエタノールアミン(mp:28℃)、2−オキソ酪酸(mp:32℃)、フェノール(mp:42℃)、ホルムアニリド(mp:48℃)、ベンゾフェノン(mp:49℃)を含むが、これらに限られるものではない。また、これらの液状物質を単独で用いる必要はなく、二つ以上の成分を含有する液状物質を用いることも可能である。
図4は、その一部が部分的に架橋された高分子膜が、液状物質の凝固により収縮した前後の状態を示す要部拡大側断面図であり、図5は、その一部が部分的に架橋された高分子膜が、液状物質の凝固により膨潤した前後の状態を示す要部拡大側断面図である。図4は、前述の液状物質の例において、水以外の液状物質を用いた例を示す。
前述の水以外の液状物質が凝固すると、液体から固体への状態変化に伴い体積は減少する。そのため、高分子膜5を構成する第1相2および第2相3の少なくとも一方を湿潤させている液状物質が凝固すると、状態変化に伴う体積の減少により、層厚dが減少する。
前述のように、構造発色の波長λ1は、式(λ1=2d(n1−cos2θ)1/2)における層厚dの減少に比例して、減少する。つまり、水の凝固により層厚dが減少し
、構造発色が短波長シフトする。
図5は、前述の液状物質の例において、水を用いた例を示す。水が凝固すると、液体から固体への状態変化に伴い体積が増加する。そのため、高分子膜5を構成する第1相2および第2相3の少なくとも一方を湿潤させている液状物質が凝固すると、状態変化に伴う体積の増加により、層厚dが増加する。前述のように、構造発色の波長λ1は、式(λ1=2d(n1−cos2θ)1/2)における層厚dの増加に比例して、増加する。
つまり、水の凝固により層厚dが増加し、構造発色が長波長シフトする。以上のことから、液体−固体間の相転移による体積変化に応答し、構造発色の色を変化させることが可能となる。
液状物質による湿潤は、当該技術において知られている任意の手段を用いて実施することができる。用いることができる手段の例は、表示体1の液状物質への浸漬、表示体1に対する液状物質の滴下、ならびに、表示体1に対する液状物質の噴霧を含むが、これらに限定されるものではない。
次に、高分子膜5を湿潤させた際に発現する構造発色のパターニングについて説明する。
図2は、高分子膜5の一部を部分的に架橋させた表示体1の要部拡大断面図である。図2に示す例では、架橋領域6において高分子膜5の部分的架橋が行われている。架橋領域6において、高分子膜5の第1相2および第2相3の少なくとも一方、あるいは両方が、部分的に架橋されていてもよい。
本実施形態においては、高分子膜5を液状物質で膨潤させることにより式(λ1=2d(n1−cos2θ)1/2)中の層厚dおよび相対屈折率n1を変化させて、構造発色を発現させる現象を利用している。したがって、図3〜図5に示すように、架橋領域6における第1相2および/または第2相3の液状物質による膨潤を抑制すると、層厚dの変化が抑制され、構造発色の発現を抑制することができる。
言い換えると、架橋領域6をパターニングすることによって、可視光領域の構造発色を発現する領域と、構造発色が抑制される領域とを画定することができる。この効果は、目視観察における構造発色の色コントラストを向上させる点において有効である。
高分子膜5中のブロック共重合体は、熱または光によって架橋させることができる。例えば、下記文献、Harnish、B.,et.al、「UV-cross-Linked
poly(vinylpyridine) Thin Films as Reversibly Responsive Surface」、Chem.Mater.2005,Vol.17,pp.4092-4096に示されるように、ピリジン環またはピロリジン環を含むポリマーブロックを含むブロック共重合体は、光照射により、ピリジン環またはピロリジン環のα位の炭素において架橋することが知られている。
また、ブタジエンから誘導されるポリマーブロックを含むブロック共重合体は、熱重合開始剤または光重合開始剤を混合することにより、熱架橋性または光架橋性を付与することができる。
あるいはまた、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基などの反応性置換基を有するポリマーブロックを含むブロック共重合体に対して、反応性置換基に適合する架橋剤、任意選択的に光酸発生剤または光塩基発生剤などを混合することにより、光架橋性を付与することができる。
簡便なプロセスを用い、短時間で誘起ポリマーの架橋パターニングが可能である点において、紫外線照射などによる光架橋が特に好ましく、より具体的には、紫外線照射などによる光架橋は、画像状にパターニングした紫外線遮蔽フォトマスクを通した照射により、高分子膜5の微細なパターニングを一括して実施することを可能にする。
本実施形態において、高分子膜5の第1相2および第2相3の少なくとも一方のみを架橋させてもよいし、両方を架橋させてもよい。少なくとも、液状物質の湿潤による膨潤現象を示す相を架橋させる。
また、光照射による架橋の場合、光照射は、高分子膜5の表面に対して垂直方向から行ってもよいし、斜め方向から行ってもよい。垂直方向から光照射を行った場合、照射区域(すなわち、架橋区域6)と非照射区域との境界が明確となり、高いコントラスト(はっきりとした輪郭)を有するイメージが得られる。
一方、斜め方向から光照射を行った場合、照射区域と非照射区域との境界において、高分子膜5の深さ方向で架橋率のグラデーションが発生する。その結果として、液状物質を湿潤させた後のイメージは、ソフトな輪郭を有するイメージとなる。
次に、高分子膜5における構造発色の波長λの制御方法について説明する。
構造発色の波長λを制御する第1の方法は、高分子膜5中の有機ポリマーの架橋率を制御することにより、発色の波長を制御することである。ポリマーの架橋率が増大するほど、高分子膜5が膨潤する際の膨潤率は低下する。
そして、膨潤率の低下は、高分子膜の寸法変化(広がりおよび伸び)の抑制をもたらす。膨潤率の低下によって、層厚dの変化が小さくなり、液状物質による膨潤時の層厚dが小さくなる。
前述のように、構造発色の波長λ1は、式(λ1=2d(n1−cos2θ)1/2)における層厚dの減少に比例して、減少する。言い換えると、膨潤時の層厚dが小さくなると、構造発色は短波長シフトする。以上のことから、ポリマーの架橋率を制御することによって、構造発色の色を選択することが可能となる。
紫外線による光架橋を用いる場合、高分子膜5中の有機ポリマーの架橋率は、光照射量によって制御することができる。本実施形態において、構造発色を可視光領域に発現させるには、紫外線照射量を典型的には5mJ/cm以上500mJ/cm以下の範囲で選択することが望ましい。
照射する紫外線の波長領域は、200nmから500nmの範囲内で選択される。また、使用する光源は、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、およびLEDランプを含むが、これらに限定されるものではない。
光架橋を行う際に架橋率を制御するための別法として、グレースケールマスクを用いた光照射を用いることができる。なお、グレースケールマスクは、光遮蔽パターンを網点状に形成し、その網点の密度によってサンプルに入射される光量を制御するマスクである。
グレースケールマスクを用いた一度の光照射プロセスで、表示体1の同一面内に波長の異なる構造発色パターン(いわゆる、カラー画像)を得ることができる。その結果、表示
体1の意匠性は著しく向上する。
また、構造発色の波長λを制御する第2の方法は、高分子膜5を形成する有機ポリマーを化学的に修飾することである。例えば、液状物質の湿潤により膨潤する相を構成するポリマーブロックがピリジン環を含む場合、ピリジン環をプロトン化または4級化することによって、当該相を構成するポリマーブロックに正電荷を付与することができる。
正電荷を付与されたポリマーブロックは、正電荷の静電的反発によって、膨潤率が増大する。プロトン化を行う場合、高分子膜にpHを制御した水溶液を作用させることができる。
水溶液のpHが低いほどプロトン化率が増大、結果として液状物質による膨潤時の構造発色は長波長シフトする。用いることができる水溶液は、1以上5以下のpHを有することが望ましい。
また、ピリジン環の4級化の手法としては、高分子膜5をハロゲン化アルキルを含む溶液で処理することを含む。この処理によって、ピリジン環の窒素原子がアルキル基によって4級化され、正電荷を帯びる。したがって、4級化率が高くなるほど正電荷による電気的反発が高くなり、構造発色は長波長シフトする。
用いることができるハロゲン化アルキルの例は、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、ヨウ化メチル、およびヨウ化エチルを含むが、これに限定されるわけではない。
また、本実施形態において、基材4は、高分子膜5との界面あるいはその反対面(基材裏面)側に、光沢のある反射層、あるいは黒色層を有してもよい。これらの層を設けることによって、構造発色の目視観察時の視認性が向上させ、表示体1の意匠性を高めることができる。
本発明における、第2の実施形態の表示体封入セルは、第1の実施形態に係る表示体を、上部基材8および下部基材9で封入したセル構造をとることを特徴とする。
図6に例示する本発明における、第2の実施形態の表示体封入セル7は、本発明の第1の実施形態に係る表示体の周辺部を、接着層10を介して上部基材8と下部基材9を貼り合わせることで、封入したものである。
図6では、接着層を介して本発明の第1の実施形態に係る表示体を封入しているが、上部基材8と下部基材9を熱で融着する方法や、溶剤で溶かして接着する方法により、直接接着してもよい。
上部基材8および下部基材9の材料の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ガラス、およびシリコンなどを含み、さらに、インジウム−スズ酸化物(ITO)やケイ素酸化物(SiO)による表面修飾を施してもよいが、これらに限られるものではない。
上部基材8および下部基材9は、透明、不透明または反射性であってもよい。また、上部基材8および下部基材9は、表示体封入セル7の使用目的に合わせて、黒色、白色などの任意の色を有することができる。
さらに、上部基材8および下部基材9は、光沢を有してもよいし、光沢を持たなくても
よい。ただし、上部基材8、もしくは下部基材9の少なくともどちらかの一部は、透明である必要がある。また、基材4は省略してもよい。
接着層10の材料の例は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂を含むが、これらに限定されるものではない。
本発明の第3の実施形態における、表示体付き物品は、第1の実施形態に係る表示体、または第2の実施形態に係る表示体封入セルを、接着層を介して、物品に貼付したことを特徴とする。図7に例示する表示体付き物品11は、物品12に、第1の実施形態の表示体1、または第2の実施形態に係る表示体封入セルを、接着層(不図示)を介して、貼付したものである。
本実施形態で用いられる物品12は、ICカード、磁気カード、無線カードおよびID(IDentification)カードのようなカード類、紙幣および商品券のような有価証券、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグ、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体またはその一部、ならびに、美術品のような高級品を含むが、それらに限定されるものではない。
物品12の表示体1、または表示体封入セル7が貼付される部分は、透明フィルム、紙、プラスチック、または金属などで形成されていてもよい。
スピンコート法を用いて、ITO犠牲層を有するガラス基板の上に、ポリ(スチレン−b−2−ビニルピリジン)(PS−b−P2VP)の7%PGMEA溶液を塗布し、膜厚800nmの高分子膜を形成し転写版とした。
使用したPS−b−P2VPは、107000の重量平均分子量および1.05の多分散度を有した。また、PS−b−P2VP中のポリスチレン(PS)ブロックの体積分率は0.52であった。また、スピンコート時の回転数は、400rpmであった。
次に、高分子膜を形成した転写版を、3mLのクロロホルムを入れたガラス瓶内に配置した。ガラス瓶を12時間にわたって50℃に加熱し、溶媒蒸気存在下でのアニーリング処理を行い、高分子膜を自己組織化させた。
次に、アニーリング後の転写版を0.1Mの塩酸水溶液に浸漬し、犠牲層を溶解させて、高分子膜を浮遊させた。最後に、浮遊した高分子膜を平坦面(犠牲層との接触面とは反対側の面)がPET基材と密着するようにすくい上げ、乾燥させて、高分子膜からなる表示体を得た。
次に、アニーリング後の高分子膜にt−ブチルアルコールを滴下し、表層の第2相にt−ブチルアルコールを浸み込ませた。その後、エポキシ系接着剤を介して2枚の無色透明なPETフィルムで表示体を挟み、封入した。得られた表示体封入セルは、青色の反射光を呈した。
次に、得られた表示体封入セルを5℃の冷蔵庫に30分静置し、取り出したところ、t−ブチルアルコールは凝固し、また、高分子膜は無色透明となり、t−ブチルアルコールの凝固に応答することが判明した。さらに、室温(25℃)下で30分静置させると、t−ブチルアルコールが融解し、青色の反射光を目視で確認することができた。
実施例1と同様の手順で、自己組織化させた高分子膜がPET基材に密着した表示体を作製した。
次に、アニーリング後の高分子膜に(±)−乳酸を滴下し、表層の第2相に(±)−乳酸を浸み込ませた。その後、エポキシ系接着剤を介して2枚の無色透明なPETフィルムで表示体を挟み、封入した。得られた表示体封入セルは、青色の反射光を呈した。
次に、得られた表示体封入セルを5℃の冷蔵庫に30分静置し、取り出したところ、(±)−乳酸は凝固し、また、高分子膜は無色透明となり、(±)−乳酸の凝固に応答することが判明した。さらに、室温(25℃)下で30分静置させると、(±)−乳酸が融解し、青色の反射光を目視で確認することができた。
実施例1と同様の手順で、自己組織化させた高分子膜がPET基材に密着した表示体を作製した。
次に、アニーリング後の高分子膜に水を滴下し、表層の第2相に水を浸み込ませた。その後、エポキシ系接着剤を介して2枚の無色透明なPETフィルムで表示体を挟み、封入した。得られた表示体封入セルは、青色の反射光を呈した。
次に、得られた表示体封入セルを−5℃の冷凍庫に30分静置し、取り出したところ、水は凝固し、また、高分子膜は緑色となり、水の凝固に応答することが判明した。さらに、室温(25℃)下で30分静置させると、水が融解し、青色の反射光を目視で確認することができた。
<比較例1>
実施例1と同様の手順で、自己組織化させた高分子膜がPET基材に密着した、表示体を作製した
次に、アニーリング後の高分子膜に、45℃に加熱したフェノールを滴下し、表層の第2相にフェノールを浸み込ませた。その後、エポキシ系接着剤を介して2枚の無色透明なPETフィルムで表示体を挟み、封入した。封入したフェノールは、室温(25℃)下で凝固しており、得られた表示体封入セルは、無色透明となった。
次に、得られた表示体封入セルを45℃の恒温槽に30分静置し、取り出したところ、フェノールは融解し、また、高分子膜は青色となり、フェノールの融解に応答することが判明した。さらに、室温(25℃)下で30分静置させると、フェノールが凝固し、高分子膜は無色透明となることを目視で確認することができた。
<比較例2>
実施例1と同様の手順で、自己組織化させた高分子膜がPET基材に密着した表示体を作製した。
次に、アニーリング後の高分子膜にメタノール(mp:−97℃)を滴下し、表層の第2相にメタノールを浸み込ませ、エポキシ系接着剤を介して2枚の無色透明なPETフィルムで表示体を挟み、封入した。得られた表示体封入セルは、赤色の反射光を呈した。
次に、得られた表示体封入セルを−5℃の冷凍庫に30分静置し、取り出したところ、メタノールは凝固せず、また、高分子膜は赤色のまま変化せず、目視での色変化は観察されなかった。
<比較例3>実施例1と同様の手順で、自己組織化させた高分子膜がPET基材に密着した表示体を作製した。
次に、アニーリング後の高分子膜にエチレングリコール(mp:−13℃)を滴下し、表層の第2相にエチレングリコールを浸み込ませ、エポキシ系接着剤を介して2枚の無色透明なPETフィルムで表示体を挟み、封入した。得られた表示体封入セルは、青色の反射光を呈した。
次に、得られた表示体封入セルを−15℃の冷凍庫に30分静置し、取り出したところ、エチレングリコールは凝固し、また、高分子膜は無色透明となり、エチレングリコールの凝固に応答することが判明した。
しかし、室温(25℃)下で30分静置させると、表示体を封入している無色透明なPETフィルムが破れ、高分子膜に浸透していたエチレングリコールが外部に漏れ出たために、再使用することができなかった。
実施例1と同様の手順で、自己組織化させた高分子膜がPET基材に密着した表示体を作製した。
次に、アニーリング後の高分子膜に、62℃に加熱したアセトフェノンオキシム(mp:60℃)を滴下し、表層の第2相にアセトフェノンオキシムを浸み込ませ、エポキシ系接着剤を介して2枚の無色透明なPETフィルムで表示体を挟み、封入した。封入したアセトフェノンオキシムは、室温(25℃)下で凝固しており、得られた表示体封入セルは、無色透明となった。
次に、得られた表示体封入セルを62℃の恒温槽に30分静置し、取り出したところ、アセトフェノンオキシムは融解し、また、高分子膜は無色透明のまま変化せず、目視での色変化は観察されなかった。また、封入された高分子膜は、PET基材から剥がれ、ミクロ相分離構造が崩壊していた。
以上の結果を表1に示す。
自己組織化により、第1相、第2相を形成し、第1相、第2相の少なくとも一方の相に、−10℃以上50℃以下の間に凝固点を有する液状物質を導入することにより、温度変化のみで、色変化をさせることが可能な表示体を提供することができた。
温度変化に対する応答性を用いる本発明の表示体は、偽造防止表示体および玩具等の画像表示体、あるいは温度応答するセンサーデバイスなどに利用できる。本発明の表示体は、特にセキュリティー技術の分野における好適な利用が期待されるものである。
1・・・表示体
2・・・第1相
3・・・第2相
4・・・基材
5・・・高分子膜
6・・・架橋領域
7・・・表示体封入セル
8・・・上部基材
9・・・下部基材
10・・・接着層
11・・・表示体付き物品
12・・・物品

Claims (13)

  1. 基材の一方の面に、異なる種類の第1相と第2相が膜厚方向に交互に積層した構造を有する高分子膜を積層した表示体であって、
    前記第1相および前記第2相の少なくとも一方の相が液状物質を含み、前記液状物質の湿潤により膨潤しており、かつ、湿潤した前記高分子膜を前記液状物質の凝固点以下に冷却すると、液体から固体への相転移に伴う体積変化により、前記高分子膜が可逆的に膨潤、または収縮することを特徴とする表示体。
  2. 前記液状物質の凝固点が−10℃〜50℃の範囲内であり、前記高分子膜が前記液状物質により湿潤した際に、前記表示体が可視領域の光を反射することを特徴とする請求項1に記載の表示体。
  3. 前記液状物質が水であり、液体から固体への相転移に伴う体積変化により、前記高分子膜が可逆的に膨潤することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示体。
  4. 前記液状物質が水以外の物質であり、液体から固体への相転移に伴う体積変化により、前記高分子膜が可逆的に収縮することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示体。
  5. 前記高分子膜はブロック共重合体を含み、前記ブロック共重合体の1つまたは複数のブロックが前記第1相を構成し、前記ブロック共重合体のその他のブロックが前記第2相を構成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示体。
  6. 前記ブロック共重合体はジブロック共重合体であり、前記ジブロック共重合体の一方のブロックが前記第1相を構成し、前記ジブロック共重合体の他方のブロックが前記第2相を構成することを特徴とする請求項5に記載の表示体。
  7. 前記ブロック共重合体が、60000以上の重量平均分子量を有し、前記第1相の体積分率が0.35〜0.65の範囲内であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の表示体。
  8. 前記高分子膜は、ラメラ状のミクロ相分離構造を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の表示体。
  9. 前記高分子膜が400nm以上の膜厚を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示体。
  10. 前記第1相および前記第2相の少なくとも一方が、光架橋性または熱架橋性を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の表示体。
  11. 前記第1相および前記第2相の少なくとも一部または全体が架橋されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の表示体。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の表示体を、上部基材と下部基材で被覆したことを特徴とする表示体封入セル。
  13. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の表示体、または請求項12に記載の表示体封入セルを、接着層を介して、物品に貼付したことを特徴とする表示体付き物品。
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