JP2019140998A - 焙煎穀物茶飲料、焙煎穀物茶飲料の製造方法、及び、焙煎穀物茶飲料の風香味向上方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この焙煎穀物茶飲料に関し、例えば、以下のような技術が提案されている。
そこで、本発明者は、焙煎穀物茶飲料について、焙煎穀物由来の風香味を奏しつつ(大きく損ねることなく)、さらに、茶葉由来の風香味(詳細には、緑茶らしいグリーンで爽やかな風香味)を増強させることができれば、お茶を飲んでいるという感覚を消費者に強く感じさせることができ、焙煎穀物茶飲料に大きな付加価値を持たせることができるのではないかと考えた。
(1)ゲラニオール、サリチル酸メチル、リモネン、リナロールオキシド、及び、cis−ジャスモンからなる第1成分群と、2−メチルピラジン、2−エチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピリジン−4−アミン、2,5−ジメチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、及び、2−ビニルピラジンからなる第2成分群と、を含有し、前記第2成分群の総含有量に対する前記第1成分群の総含有量の比率(前記第1成分群の総含有量/前記第2成分群の総含有量×100)が2.0〜4.0%である焙煎穀物茶飲料。
(2)ベンズアルデヒド、2−エチル−1−ヘキサノール、β−イオノン、2,4−へプタジエナール、及び、リナロールからなる第3成分群を含有し、前記第2成分群の総含有量に対する前記第3成分群の総含有量の比率(前記第3成分群の総含有量/前記第2成分群の総含有量×100)が20.0〜45.0%である前記1に記載の焙煎穀物茶飲料。
(3)前記第2成分群の総含有量に対する前記第1成分群の総含有量及び前記第3成分群の総含有量の和の比率(前記第1成分群の総含有量及び前記第3成分群の総含有量の和/前記第2成分群の総含有量×100)が20.0〜45.0%である前記2に記載の焙煎穀物茶飲料。
(4)ピロール、フルフラール、及び、フルフリルアルコールからなる第4成分群を含有し、前記第2成分群の総含有量及び前記第4成分群の総含有量の和に対する前記第1成分群の総含有量及び前記第3成分群の総含有量の和の比率(前記第1成分群の総含有量及び前記第3成分群の総含有量の和/前記第2成分群の総含有量及び前記第4成分群の総含有量の和×100)が15.1〜30.0%である前記3に記載の焙煎穀物茶飲料。
(5)米茶飲料である前記1から前記4のいずれか1つに記載の焙煎穀物茶飲料。
(6)焙煎穀物茶飲料の製造方法であって、ゲラニオール、サリチル酸メチル、リモネン、リナロールオキシド、及び、cis−ジャスモンからなる第1成分群と、2−メチルピラジン、2−エチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピリジン−4−アミン、2,5−ジメチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、及び、2−ビニルピラジンからなる第2成分群と、を含有させ、前記第2成分群の総含有量に対する前記第1成分群の総含有量の比率(前記第1成分群の総含有量/前記第2成分群の総含有量×100)を2.0〜4.0%とする工程を含む焙煎穀物茶飲料の製造方法。
(7)前記焙煎穀物茶飲料に用いられる穀物を膨潤させることなく、前記穀物を焙煎する工程を含む前記6に記載の焙煎穀物茶飲料の製造方法。
(8)焙煎穀物茶飲料の焙煎穀物由来の風香味を発揮させつつ茶葉由来の風香味を増強させる風香味向上方法であって、ゲラニオール、サリチル酸メチル、リモネン、リナロールオキシド、及び、cis−ジャスモンからなる第1成分群と、2−メチルピラジン、2−エチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピリジン−4−アミン、2,5−ジメチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、及び、2−ビニルピラジンからなる第2成分群と、を含有させ、前記第2成分群の総含有量に対する前記第1成分群の総含有量の比率(前記第1成分群の総含有量/前記第2成分群の総含有量×100)を2.0〜4.0%とする焙煎穀物茶飲料の風香味向上方法。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料は、第1成分群と、第2成分群とを含有し、第2成分群の総含有量に対する第1成分群の総含有量の比率が所定範囲である。また、本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料は、第3成分群、第4成分群を含有し、成分群の様々な比率が所定範囲となっているのが好ましく、アミノ酸の総量や糖類の総量が所定値以下となっているのがより好ましい。
以下、焙煎穀物茶飲料を構成する各成分等について説明する。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料は第1成分群を含有する。
第1成分群とは、ゲラニオール(Geraniol)、サリチル酸メチル(Methylsalicylate)、リモネン(Limonene)、リナロールオキシド(Linaloloxide)、及び、cis−ジャスモン(cis-Jasmone)という成分からなる。
本発明者は、焙煎穀物茶飲料の香気成分を研究した結果、数多くの香気成分の中から、焙煎穀物由来の風香味を大幅に損ねることなく、茶葉由来の風香味(詳細には、緑茶らしいグリーンで爽やかな風香味)を増強できる成分を特定し、第1成分群として規定した。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料は第2成分群を含有する。
第2成分群とは、2−メチルピラジン(2-Methylpyrazine)、2−エチルピラジン(EthylPyrazine)、2−エチル−6−メチルピラジン(2-ethyl-6-methyl-Pyrazine)、2,6−ジメチルピラジン(2,6-dimethylPyrazine)、2,6−ジメチルピリジン−4−アミン(2,6-dimethyl-4-Pyridinamine)、2,5−ジメチルピラジン(2,5-dimethyl-Pyrazine)、2,3−ジメチルピラジン(2,3-dimethyl-Pyrazine)、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン(3-ethyl-2,5-dimethyl-Pyrazine)、及び、2−ビニルピラジン(Ethenyl-Pyrazine)という成分からなる。
本発明者は、数多くの香気成分の中から、前記した第1成分群と組み合わせた際に、茶葉由来の風香味を邪魔することなく、焙煎穀物由来の風香味を十分に発揮させることができる成分を特定し、第2成分群として規定した。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料は第3成分群を含有する。
第3成分群とは、ベンズアルデヒド(Benzaldehyde)、2−エチル−1−ヘキサノール(2-ethyl-1-Hexanol)、β−イオノン(beta-Ionone)、2,4−へプタジエナール((E,E)-2,4-Heptadienal)、及び、リナロール(Linalol)という成分からなる。
本発明者は、数多くの香気成分の中から、前記した第1成分群及び第2成分群と組み合わせた際に、焙煎穀物由来の風香味を大幅に損ねることなく、茶葉由来の風香味をさらに増強できる成分を特定し、第3成分群として規定した。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料は第4成分群を含有する。
第4成分群には、ピロール(Pyrrole)、フルフラール(Furfural)、及び、フルフリルアルコール(Furfuryl alcohol)という成分からなる。
本発明者は、数多くの香気成分の中から、前記した第1成分群、第2成分群、及び、第3成分群と組み合わせた際に、茶葉由来の風香味を邪魔することなく、焙煎穀物由来の風香味をより十分に発揮させることができる成分を特定し、第4成分群として規定した。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料の第2成分群の総含有量に対する第1成分群の総含有量の比率(以下、各成分群の番号を使用して、適宜「成分群の比率(第1/第2)」等の略称を用いる)が所定範囲となるように精緻に調製することによって、焙煎穀物由来の風香味を大きく損なわせることなく、茶葉由来の風香味を増強することができる。
この「成分群の比率(第1/第2)」は、詳細には「第1成分群の総含有量/第2成分群の総含有量×100」によって算出される値である。
「成分群の比率(第1/第2)」は、4.0%以下であるのが好ましく、3.8%以下であるのがより好ましい。この比率が所定値以下であることにより、茶葉由来の風香味を増強させつつも、焙煎穀物由来の風香味を大きく損なわないようにすることができる。
加えて、「成分群の比率(第1/第2)」を所定範囲内とすることにより、焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスを良くすることができる。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料の第2成分群の総含有量に対する第3成分群の総含有量の比率が所定範囲となるように精緻に調製することによって、焙煎穀物由来の風香味を大きく損なわせることなく、茶葉由来の風香味をより確実に増強することができる。
この「成分群の比率(第3/第2)」は、詳細には「第3成分群の総含有量/第2成分群の総含有量×100」によって算出される値である。
「成分群の比率(第3/第2)」は、45.0%以下であるのが好ましく、40.0%以下であるのがより好ましく、35.0%以下であることがさらに好ましい。この比率が所定値以下であることにより、茶葉由来の風香味をより確実に増強させつつも、焙煎穀物由来の風香味を大きく損なわないようにすることができる。
加えて、「成分群の比率(第3/第2)」を所定範囲内とすることにより、焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスを良くすることができる。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料の第2成分群の総含有量に対する第1成分群の総含有量及び第3成分群の総含有量の和の比率が所定範囲となるように精緻に調製することによって、焙煎穀物由来の風香味を大きく損なわせることなく、茶葉由来の風香味をより確実に増強することができる。
この「成分群の比率(第1+3/第2)」は、詳細には「(第1成分群の総含有量+第3成分群の総含有量)/第2成分群の総含有量×100」によって算出される値である。
「成分群の比率(第1+3/第2)」は、45.0%以下であるのが好ましく、40.0%以下であるのがより好ましい。この比率が所定値以下であることにより、茶葉由来の風香味をより確実に増強させつつも、焙煎穀物由来の風香味を大きく損なわないようにすることができる。
加えて、「成分群の比率(第1+3/第2)」を所定範囲内とすることにより、焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスを良くすることができる。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料の第2成分群の総含有量及び第4成分群の総含有量の和に対する第1成分群の総含有量及び第3成分群の総含有量の和の比率が所定範囲となるように精緻に調製することによって、焙煎穀物由来の風香味を大きく損なわせることなく、茶葉由来の風香味をより確実に増強することができる。
この「成分群の比率(第1+3/第2+4)」は、詳細には「(第1成分群の総含有量+第3成分群の総含有量)/(第2成分群の総含有量+第4成分群の総含有量)×100」によって算出される値である。
「成分群の比率(第1+3/第2+4)」は、30.0%以下であるのが好ましく、25.0%以下であるのがより好ましい。この比率が所定値以下であることにより、茶葉由来の風香味をより確実に増強させつつも、焙煎穀物由来の風香味を大きく損なわないようにすることができる。
加えて、「成分群の比率(第1+3/第2+4)」を所定範囲内とすることにより、焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスを良くすることができる。
そして、焙煎穀物茶飲料における成分群の比率は、例えば、マイクロ固相抽出(SPME)−GC−MS法によって得られたTICクロマトグラムから算出することができる。なお、具体的な算出方法は、後記の実施例において詳述する。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料はアミノ酸を含有する。
このアミノ酸とは、分子内にカルボキシル基とアミノ基とを有する化合物の総称であり、アミノ酸には、アスパラギン酸、トリオレニン、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、ヒスチジン、リシン、トリプトファン、アルギニン、プロリン、含硫アミノ酸としてシスチン、及び、メチオニン、並びに、芳香族アミノ酸としてチロシン、及び、フェニルアラニンからなる群から選択される少なくとも一種が含まれる。
なお、ここでいうアミノ酸総含有量は、焙煎穀物茶飲料中のアスパラギン酸、トリオレニン、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、ヒスチジン、リシン、トリプトファン、アルギニン、プロリン、シスチン、メチオニン、チロシン、及び、フェニルアラニンのそれぞれの含有量の和のことをいう。
そして、焙煎穀物茶飲料中のアミノ酸総含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて測定することができる。なお、具体的な測定方法は、後記の実施例において詳述する。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料は糖類を含有する。
この糖類とは、単糖類と二糖類と三糖類の総称であり、例えば、単糖類としては、フルクトース、グルコース等が挙げられ、二糖類としては、スクロース、セロビオース等が挙げられ、三糖類としては、ラフィノース等が挙げられる。なお、焙煎穀物茶飲料に含まれる糖類は、特に上述に限定されるものではないが、焙煎穀物由来の風香味が強調されるのを抑える観点から、フルクトース、グルコース、及び、スクロースであることが好ましい。
そして、焙煎穀物茶飲料中の糖類総含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて測定することができる。なお、具体的な測定方法は、後記の実施例において詳述する。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料に使用する穀物としては、米、玄米、大麦、小麦、はと麦、豆、そば、とうもろこし等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、使用する穀物としては、焙煎後に独特な香ばしい風香味を奏する米や玄米が好ましい。
そして、これらの穀物は後記する焙煎処理を施し焙煎穀物として使用する。焙煎穀物の表面のL値(明度)は、茶葉由来の風香味をより十分に増強させる観点から、15以上が好ましく、18以上がより好ましく、また、焙煎穀物由来の風香味が大きく損なわれるのをより確実に防止する観点から、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、23以下がさらに好ましい。
また、粉砕状態の焙煎穀物のL値は、茶葉由来の風香味をより十分に増強させる観点から、35以上が好ましく、38以上がより好ましく、また、焙煎穀物由来の風香味が大きく損なわれるのをより確実に防止する観点から、53以下が好ましく、50以下がより好ましく、47以下がさらに好ましい。また、焙煎穀物由来の風香味が大きく損なわれるのをより確実に防止しつつ、茶葉由来の風香味をより十分に増強させる観点から、粉砕状態の焙煎穀物のL値と焙煎穀物の表面のL値との差(粉砕状態の焙煎穀物のL値−焙煎穀物の表面のL値)は、18以上であることが好ましく、25以下であることが好ましく、24以下であることがより好ましい。
なお、穀物として米や玄米(詳細には、焙煎米や焙煎玄米)を使用する場合、焙煎穀物茶飲料は、米茶飲料となる。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料に使用する茶葉としては、煎茶、玉露、かぶせ茶、抹茶、てん茶、玉緑茶、番茶、焙茶等の緑茶や、緑茶以外にも、烏龍茶、紅茶、青茶、黒茶(プーアル茶)等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、使用する茶葉としては、グリーンで爽やかな風香味を奏する緑茶が好ましい。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維、着色料など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。着色料としては、例えば、カラメル色素、アントシアニン、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素などを用いることができる。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
また、本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料は、「成分群の比率(第1/第2)」が所定範囲に特定されていることから、焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスが非常にとれている。
また、本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料は、成分群の比率(第3/第2、第1+3/第2、第1+3/第2+4)が所定範囲に特定されていることから、焙煎穀物由来の風香味を奏しつつ、茶葉由来の風香味がより確実に増強されている。
また、本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料は、アミノ酸総含有量、糖類総含有量が所定値以下に特定されていることから、焙煎穀物由来の風香味を奏しつつ、茶葉由来の風香味がさらに確実に増強されている。
次に、別実施形態に係る焙煎穀物茶飲料を説明する。
本発明者は、数多くの香気成分の中、第2成分群に属する「2−メチルピラジン(2-Methylpyrazine)」と第4成分群に属する「ピロール(Pyrrole)」にも着目し、両者の含有量の比を特定することによっても、同様の効果(焙煎穀物由来の風香味を奏しつつ、茶葉由来の風香味を増強する)を発揮できることも見出した。
また、2−メチルピラジンの含有量に対するピロールの含有量の比(ピロールの含有量/2−メチルピラジンの含有量)を、1.70以下(好ましくは、1.65以下)とすることにより、茶葉由来の風香味を増強させつつも、焙煎穀物由来の風香味を大きく損なわないようにすることができる。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器に焙煎穀物茶飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。
次に、本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料の製造方法は、焙煎工程と、混合工程と、抽出工程と、後処理工程と、を含む。
なお、従来の米茶飲料の製造方法では、米を水等に浸漬させ膨潤させてから焙煎するが、この方法では、茶葉由来の風香味に関する成分(第1、3成分群、特に、第1成分群)に対して焙煎穀物由来の風香味に関する成分(第2、4成分群、特に、第2成分群)が多くなり過ぎることによって、茶葉由来の風香味がほとんど感じられ難くなってしまうことがわかった。
よって、前記のとおり、穀物を膨潤させる工程を経ることなく、あえて、膨潤させていない穀物に対して焙煎処理を施すのが好ましい。すなわち、本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料の製造方法は、当該焙煎穀物茶飲料に用いられる穀物を膨潤させることなく、前記穀物を焙煎する工程を含むことが好ましい。
この後処理工程において、焙煎穀物茶飲料の成分群の比率が所定範囲となっていない場合は、適宜、第1〜4成分群の各成分を添加して調製すればよい。
また、本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料の製造方法は、成分群の比率を所定範囲とする工程を含むことから、焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスのとれた焙煎穀物茶飲料を製造することができる。
次に、本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料の風香味向上方法を説明する。
本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料の風香味向上方法は、焙煎穀物茶飲料の両成分群の比率を所定範囲とすることによって、焙煎穀物由来の風香味を発揮させつつ茶葉由来の風香味を増強させる方法である。
なお、成分群の比率等については、前記した「焙煎穀物茶飲料」において説明した内容と同じである。
また、本実施形態に係る焙煎穀物茶飲料の風香味向上方法は、成分群の比率を所定範囲とすることから、焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスを良くすることができる。
(サンプル1)
水に浸漬させ膨潤させた米に焙煎処理を施した後、緑茶と混合して製造された茶原料(市販品、焙煎米:10g/L、緑茶:3.5g/L)を準備した。そして、この茶原料を55℃のお湯(よく比:20倍)で12分間抽出することによって焙煎穀物茶飲料を製造し、サンプル1とした。
米を膨潤させることなく焙煎処理を施し、焙煎米とした。そして、焙煎米と緑茶とを混合して茶原料(焙煎米:10g/L、緑茶:3.5g/L)を準備した。そして、この茶原料を55℃のお湯(よく比:20倍)で12分間抽出することによって焙煎穀物茶飲料を製造し、サンプル2〜5とした。
なお、サンプル2の焙煎米は、焙煎時間が16〜17分であり、最終品温が180℃となるように焙煎処理の条件を設定し、サンプル3の焙煎米は、焙煎時間が14〜15分であり、最終品温が176℃となるように焙煎処理の条件を設定し、サンプル4の焙煎米は、焙煎時間が14〜15分であり、最終品温が171℃となるように焙煎処理の条件を設定し、サンプル5の焙煎米は、焙煎時間が14〜15分であり、最終品温が170℃となるように焙煎処理の条件を設定することによって、それぞれ表1に示すL値となり、最終的に得られた焙煎穀物茶飲料は各成分の含有割合が表1に示す値となった。
(成分群の比率)
サンプルの成分群の比率は、以下の方法によって求めた。
まず、8mLのサンプルをバイアルに入れ、2.4gのNaClとよく混合し、60℃恒温槽にて5分間の予備過熱を行い、20分間SPMEに吸着させ、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)によって分析を行った。このGC/MS法による分析は、GC−MS(Agilent 7890B−5977A)、カラム;DB−WAX(60m×0.25mm×0.5μm)を使用し、使用ガス;ヘリウム 1mL/min、Oven;40℃→(6℃/min)→200℃→(15℃/min)→240℃(10min)という条件で行った。そして、得られたTICクロマトグラムから、区分間の差異分析を行った。
そして、成分群の比率の算出については、具体的には、まず、サンプルに含まれる各成分が示すピークの面積値を検出し、表1に列挙する全成分における各成分の含有割合(各成分の面積値/列挙する全成分の総面積値×100)を算出した。そして、「第1成分群の含有割合の合計(第1成分群の合計)」と「第2成分群の含有割合の合計(第2成分群の合計)」とを計算し、これらの値に基づいて表1に示す「第1成分群の総含有量/第2成分群の総含有量×100」(=第1成分群の合計/第2成分群の合計×100)を算出した。
なお、他の成分群の比率の算出も同様の方法で行った。
表1に示す「L値(表面)」は、焙煎米を粉砕することなく、色差計(日本電色工業社製、Color Meter ZE6000)を用いて焙煎米の表面を測定したL値である。
表1に示す「L値(粉砕)」は、焙煎米に粉砕処理を施した後、上記の色差計を用いて粉末状の焙煎米を測定したL値である。なお、焙煎米の粉砕処理は、イワタニミルサー800DG(IFM−800DG)を用いて5〜10秒間粉砕するというものであった。
サンプルのアミノ酸総含有量は、以下の方法によって求めた。
まず、サンプルを0.02N塩酸で2倍に希釈後、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過した。そして、このろ液について、アミノ酸専用高速液体クロマトグラフ(日本電子株式会社製、JLC−500/V2 Amino Acid Analyzer)を用いて、アミノ酸(アスパラギン酸、トリオレニン、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、ヒスチジン、リシン、トリプトファン、アルギニン、プロリン、シスチン、メチオニン、チロシン、及び、フェニルアラニン)の含有量を測定し、アミノ酸総含有量を算出した。
サンプルの糖類総含有量は、以下の方法によって求めた。
まず、サンプルを親水性混合セルロースエステルでろ過した。そして、このろ液について、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて以下の条件で分析し、外部標準法で定量し、糖類(フルクトース、グルコース、及び、スクロース)の含有量を算出した。
HPLC :Agilent1100(Agilent technologies)
カラム :Asahipak NH2P-50 4E(Shodex)
移動相A :超純水
移動相B :アセトニトリル
グラジエントB (%):75 %(0 min)-75 %(20 min)-10 %(35 min)-10 %(45 min)
カラムオーブン :40℃
注入量 :5μL
流速 :1 mL/min
検出器:コロナ荷電粒子検出器(DIONEX)
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル5名が下記評価基準に則って「焙煎穀物由来の風香味」、「茶葉由来の風香味」、「総合評価」について、1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲む前の風香味とサンプルを飲んで感じる風香味とで評価した。また、評価の際のサンプルの温度は常温(約20℃)とした。
5点:サンプル3と比べて焙煎穀物由来の風香味が強い。
4点:サンプル3と比べて焙煎穀物由来の風香味がやや強い。
3点:サンプル3の焙煎穀物由来の風香味と同程度である。
2点:サンプル3と比べて焙煎穀物由来の風香味がやや弱い。
1点:サンプル3と比べて焙煎穀物由来の風香味が弱い。
なお、「焙煎穀物由来の風香味」とは、焙煎穀物の香ばしい風香味であり、より詳細には、こげ臭や煙臭とは異なる心地よいロースト様の風香味である。
5点:サンプル3と比べて茶葉由来の風香味が強い。
4点:サンプル3と比べて茶葉由来の風香味がやや強い。
3点:サンプル3の茶葉由来の風香味と同程度である。
2点:サンプル3と比べて茶葉由来の風香味がやや弱い。
1点:サンプル3と比べて茶葉由来の風香味が弱い。
なお、「茶葉由来の風香味」とは、緑茶様の風香味であり、より詳細には、緑茶らしいグリーンで華やかな風香味である。
5点:焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスが非常に良い。
4点:焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスが良い。
3点:焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスは良くも悪くもない。
2点:焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスが悪い。
1点:焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスが非常に悪い。
なお、表1の「p値」は、サンプル1に対する有意差を検定したものであり、サンプル2〜5のp値が0.10以下となっていることから、有意差がある、又は、有意差の傾向があることが確認できた。
サンプル1は、「第1成分群の総含有量/第2成分群の総含有量×100」が所定値未満であったため、茶葉由来の風香味がやや弱く、焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスも良くはないという結果となった。
また、サンプル5は、「第1成分群の総含有量/第2成分群の総含有量×100」が所定値を超えていたため、焙煎穀物由来の風香味が弱く、焙煎穀物由来の風香味と茶葉由来の風香味とのバランスも悪いという結果となった。
なお、水を膨潤させていない米を焙煎して得られた焙煎穀物(サンプル2〜5)の「L値(粉砕)」−「L値(表面)」は、水を膨潤させた米を焙煎して得られた焙煎穀物(サンプル1)の「L値(粉砕)」−「L値(表面)」よりも大きい値を示していた。この結果から、サンプル2〜5の焙煎穀物は、表面がしっかりと焙煎されているものの、サンプル1の焙煎穀物と比較し、内部はあまり焙煎されない状態(米本来の状態)を維持できていることがわかった。
Claims (7)
- ゲラニオール、サリチル酸メチル、リモネン、リナロールオキシド、及び、cis−ジャスモンからなる第1成分群と、
2−メチルピラジン、2−エチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピリジン−4−アミン、2,5−ジメチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、及び、2−ビニルピラジンからなる第2成分群と、を含有し、
前記第2成分群の総含有量に対する前記第1成分群の総含有量の比率(前記第1成分群の総含有量/前記第2成分群の総含有量×100)が2.0〜4.0%である焙煎穀物茶飲料。 - ベンズアルデヒド、2−エチル−1−ヘキサノール、β−イオノン、2,4−へプタジエナール、及び、リナロールからなる第3成分群を含有し、
前記第2成分群の総含有量に対する前記第3成分群の総含有量の比率(前記第3成分群の総含有量/前記第2成分群の総含有量×100)が20.0〜45.0%である請求項1に記載の焙煎穀物茶飲料。 - 前記第2成分群の総含有量に対する前記第1成分群の総含有量及び前記第3成分群の総含有量の和の比率(前記第1成分群の総含有量及び前記第3成分群の総含有量の和/前記第2成分群の総含有量×100)が20.0〜45.0%である請求項2に記載の焙煎穀物茶飲料。
- ピロール、フルフラール、及び、フルフリルアルコールからなる第4成分群を含有し、
前記第2成分群の総含有量及び前記第4成分群の総含有量の和に対する前記第1成分群の総含有量及び前記第3成分群の総含有量の和の比率(前記第1成分群の総含有量及び前記第3成分群の総含有量の和/前記第2成分群の総含有量及び前記第4成分群の総含有量の和×100)が15.1〜30.0%である請求項3に記載の焙煎穀物茶飲料。 - 米茶飲料である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の焙煎穀物茶飲料。
- 焙煎穀物茶飲料の製造方法であって、
ゲラニオール、サリチル酸メチル、リモネン、リナロールオキシド、及び、cis−ジャスモンからなる第1成分群と、
2−メチルピラジン、2−エチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピリジン−4−アミン、2,5−ジメチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、及び、2−ビニルピラジンからなる第2成分群と、を含有させ、
前記第2成分群の総含有量に対する前記第1成分群の総含有量の比率(前記第1成分群の総含有量/前記第2成分群の総含有量×100)を2.0〜4.0%とする工程を含む焙煎穀物茶飲料の製造方法。 - 焙煎穀物茶飲料の焙煎穀物由来の風香味を発揮させつつ茶葉由来の風香味を増強させる風香味向上方法であって、
ゲラニオール、サリチル酸メチル、リモネン、リナロールオキシド、及び、cis−ジャスモンからなる第1成分群と、
2−メチルピラジン、2−エチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピリジン−4−アミン、2,5−ジメチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、及び、2−ビニルピラジンからなる第2成分群と、を含有させ、
前記第2成分群の総含有量に対する前記第1成分群の総含有量の比率(前記第1成分群の総含有量/前記第2成分群の総含有量×100)を2.0〜4.0%とする焙煎穀物茶飲料の風香味向上方法。
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- 2018-02-22 JP JP2018029960A patent/JP7037248B2/ja active Active
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