JP2019137480A - 糸巻取機及び糸巻取方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】パッケージ径に応じて糸の巻取りに関する制御を行う糸巻取機において、当該制御内容が急激に変化することを抑制可能な構成を提供する。【解決手段】自動ワインダ(糸巻取機)は、巻取部と、検出部と、制御部と、を備える。巻取部は、糸を巻き取ってパッケージを形成する。検出部は、パッケージ径の演算に用いられる値を検出する。制御部は、検出部が検出した値に基づくパッケージ径である演算パッケージ径を演算する。制御部は、糸の巻取りの制御で用いるパッケージ径である制御用パッケージ径を、演算パッケージ径の増大に基づいて更新する。制御部は、糸太さ及びパッケージ径の少なくとも何れかに基づいて値が変化する増加閾値を算出する。制御部は、演算パッケージ径から制御用パッケージ径を減算した値が増加閾値を超えた場合は、当該増加閾値に相当する分だけ制御用パッケージ径を大きくする。【選択図】図4
Description
本発明は、主として、制御用パッケージ径に応じて糸の巻取りの制御を行う糸巻取機に関する。
従来から、パッケージ径を演算で求め、この演算で求めたパッケージ径を用いて、糸の巻取りの制御を行う糸巻取機が知られている。特許文献1の糸巻取機は、パッケージ周速度とパッケージ回転数とをセンサにより検出し、これらに基づいてパッケージの平均外形を算出する。特許文献1では、このように算出したパッケージの平均外形であるパッケージ基準値を利用して、パッケージの駆動点を算出することが記載されている。
しかし、特許文献1では、パッケージ基準値をどのように更新するかについて記載されていない。例えば、演算で求めたパッケージ径をそのままパッケージ基準値として更新する場合、センサの検出誤差及びノイズの影響によりパッケージの平均外形が大幅に変化したときは、それに応じてパッケージの駆動点が算出されるため、制御内容が不適切になることがある。なお、パッケージの駆動点の算出だけでなく、糸の巻取りに関する他の制御においても、同様の課題が存在する。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、パッケージ径に応じて糸の巻取りに関する制御を行う糸巻取機において、当該制御内容が急激に変化することを抑制可能な構成を提供することにある。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、巻取部と、検出部と、制御部と、を備える。前記巻取部は、糸を巻き取ってパッケージを形成する。前記検出部は、パッケージ径の演算に用いられる値を検出する。前記制御部は、前記検出部が検出した値に基づく前記パッケージ径である演算パッケージ径を演算する。前記制御部は、糸の巻取りの制御で用いる前記パッケージ径である制御用パッケージ径を、前記演算パッケージ径の増大に基づいて更新する。前記制御部は、糸太さ及び前記パッケージ径の少なくとも何れかに基づいて値が変化する増加閾値を算出する。前記制御部は、前記演算パッケージ径から前記制御用パッケージ径を減算した値が前記増加閾値を超えた場合は、当該増加閾値に相当する分だけ前記制御用パッケージ径を大きくする。
これにより、制御用パッケージ径の更新に増加閾値を設けることで、糸の巻取りの制御内容が急激に変化することを防止できる。特に、制御用パッケージ径の更新の影響は、糸太さ又はパッケージ径に応じて異なる。従って、これらに基づいた増加閾値を設定することで、制御用パッケージ径を適切に更新できる。
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記制御部が算出する前記増加閾値には、最小増加閾値と最大増加閾値とが定められている。前記制御部は、前記最小増加閾値以上となるように、かつ、前記最大増加閾値以下となるように、前記増加閾値を算出する。
これにより、過小又は過大な増加閾値が算出及び適用されることを防止できるので、制御用パッケージ径をより適切に更新できる。
前記の糸巻取機においては、前記制御部は、糸太さ及び前記パッケージ径の両方に基づいて値が変化する前記増加閾値を算出することが好ましい。
これにより、制御用パッケージ径の更新の影響の大きさに関係する2つの値の両方に基づいて閾値が変化するため、制御用パッケージ径をより適切に更新できる。
前記の糸巻取機においては、前記制御部は、前記パッケージ径が最小のときに適用する前記増加閾値である初期増加閾値を、糸太さに基づいて算出することが好ましい。
これにより、簡単な処理で初期増加閾値を算出できる。
前記の糸巻取機においては、前記制御部は、前記増加閾値が前記最小増加閾値に一致するときの前記パッケージ径を、糸太さに基づいて算出することが好ましい。
これにより、閾値が最小閾値に一致するときのパッケージ径を簡単な処理で算出できる。
前記の糸巻取機においては、前記制御部は、前記初期増加閾値と、前記初期増加閾値のときの前記パッケージ径と、前記最小増加閾値と、前記最小増加閾値のときの前記パッケージ径と、に基づいて、前記増加閾値と前記パッケージ径の対応関係を算出し、当該対応関係は、前記パッケージ径の増大に応じて前記増加閾値が線形に変化する部分を含むことが好ましい。
これにより、座標軸上の2点を求めてそれらを通る直線を求める処理を行うという簡単な処理で、増加閾値とパッケージ径の対応関係を算出できる。
前記の糸巻取機においては、前記制御部は、少なくとも糸太さに基づいて前記増加閾値を算出する。前記最小増加閾値は、糸太さに関係なく一定であることが好ましい。
これにより、糸太さに応じた最小増加閾値の算出処理が不要となるので処理が簡単になる。
前記の糸巻取機においては、前記制御部は、入力された糸番手に基づいて糸太さを算出し、当該算出された糸太さに基づいて前記増加閾値を算出することが好ましい。
これにより、糸太さをオペレータが直接入力する必要がないため、オペレータの手間を低減できる。
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、複数の巻取ユニットと、制御装置と、を備える。前記制御装置は、複数の前記巻取ユニットに一括して設定を行う。前記制御装置は、入力された糸番手に基づいて糸太さを算出し、当該算出された糸太さを、複数の前記巻取ユニットのそれぞれの前記制御部へ送信する。
これにより、制御装置側で糸番手が入力されるだけで、複数の巻取ユニットに糸太さを設定できるので、オペレータの作業の手間を軽減することができる。
前記の糸巻取機においては、前記制御部は、前記制御用パッケージ径よりも前記演算パッケージ径が小さい場合であっても、当該制御用パッケージ径を減少させる処理を行わず、当該制御用パッケージ径を変化させないことが好ましい。
これにより、制御用パッケージ径が減少することに伴って巻取りの制御が不適切になることを防止できる。
本発明の第2の観点によれば、以下の糸巻取方法が提供される。即ち、この糸巻取方法は、演算工程と、更新工程と、算出工程と、を含む。前記演算工程では、検出した値に基づくパッケージ径である演算パッケージ径を演算する。前記更新工程では、糸の巻取りの制御で用いる前記パッケージ径である制御用パッケージ径を、前記演算パッケージ径の増大に基づいて更新する。前記算出工程では、糸太さ及び前記パッケージ径の少なくとも何れかに基づいて値が変化する増加閾値を算出する。前記更新工程では、前記演算パッケージ径から前記制御用パッケージ径を減算した値が前記増加閾値を超えた場合は、当該増加閾値に相当する分だけ前記制御用パッケージ径を大きくする。
これにより、制御用パッケージ径の更新に増加閾値を設けることで、糸の巻取りの制御が急激に変化することを防止できる。特に、糸太さ又はパッケージ径によって、制御用パッケージ径の更新の影響の大きさが異なる。従って、これらに基づいた増加閾値を設定することで、制御用パッケージ径を適切に更新できる。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、糸巻取時の糸の走行方向における上流及び下流を意味する。
図1に示すように、自動ワインダ(糸巻取機)1は、並べて配置された複数の糸巻取ユニット10と、玉揚装置60と、機台制御装置(制御装置)90と、を備えている。
それぞれの糸巻取ユニット10は、給糸ボビン21から解舒された糸20を綾振りしながら、クレードル(巻取管支持部)23に支持されたコーン形状の巻取管22に巻き取り、コーン形状のパッケージ30を形成する。なお、クレードル23は、巻取管22の小径側端部を回転可能に支持する小径側支持部と、巻取管22の大径側端部を回転可能に支持する大径側支持部と、を有している。糸巻取ユニット10は、円筒状の巻取管22に糸20を巻き取ってチーズ形状のパッケージ30を形成する構成であってもよい。
玉揚装置60は、各糸巻取ユニット10においてパッケージ30が満巻となった際に、当該糸巻取ユニット10の位置まで走行する。玉揚装置60は、当該糸巻取ユニット10において、満巻のパッケージ30をクレードル23から外すとともに糸20が巻かれていない巻取管22を供給する。
機台制御装置90は、機台入力部91と、機台表示部92と、を備えている。機台入力部91は、オペレータが所定の設定値を入力したり適宜の制御方法を選択したりすることで、各糸巻取ユニット10に対する設定を行うことができる。機台表示部92は、設定値の入力画面、各糸巻取ユニット10の糸20の巻取状況、及び、発生したトラブルの内容等を表示可能である。
次に、図2を参照して、糸巻取ユニット10の構成を具体的に説明する。図2に示すように、それぞれの糸巻取ユニット10は、巻取ユニット本体17と、ユニット制御部(制御部)51と、を備えている。
ユニット制御部51は、例えば、CPU等の演算装置と、RAMと、ROMと、I/Oポートと、通信ポートと、を備えている。このROMには、巻取ユニット本体17の各部を制御するプログラムが記録されている。I/Oポートと通信ポートには、巻取ユニット本体17が備える各部及び機台制御装置90が接続されており、制御情報等の通信ができる。これにより、ユニット制御部51は、巻取ユニット本体17が備える各部の動作を制御することができる。
巻取ユニット本体17には、給糸ボビン21と接触ローラ29との間の糸走行経路中に、給糸ボビン21側から順に、糸解舒補助装置12と、テンション付与装置13と、糸継装置14と、糸長検出センサ(検出部)15と、クリアラ16と、巻取部18と、が配置されている。
糸解舒補助装置12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸20の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸20の解舒を補助する。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸20の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに接触し、当該バルーンを適切な大きさに制御することによって糸20の解舒を補助する。規制部材40の近傍には給糸ボビン21の糸層の上部を検出する図略のセンサが備えられている。このセンサが糸層の上部の下降を検出すると、それに応じて規制部材40が下降するように構成されている。
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与する。テンション付与装置13としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式を用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛合せ状態又は解放状態になるように、ロータリ式のソレノイドにより回動することができる。なお、テンション付与装置13には、上記ゲート式以外にも、例えば、ディスク式を採用することができる。
糸継装置14は、クリアラ16が糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎする。糸継装置14としては、機械式、又は、圧縮空気等の流体を用いる構成を採用することができる。
糸長検出センサ15は、パッケージ30に巻き取られた糸20の糸長さを非接触で検出する。糸長検出センサ15は、糸20の毛羽量を検出して糸20の移動量を算出して、糸長さを検出する。具体的には、この糸長検出センサ15は、受光素子と光源とを備えた光学式の毛羽検出部を、糸走行方向に沿って複数備えている。糸長検出センサ15は、糸走行方向で異なる位置にある複数の毛羽検出部の出力信号の変化に基づいて、糸20の走行長さを検出する。
ユニット制御部51は、糸長検出センサ15が検出した糸20の走行長さを利用して、パッケージ径を求めることができる。具体的には、ユニット制御部51は、糸長検出センサ15が検出した糸走行長さに基づき算出される糸走行速度と、綾振り速度と、から綾角を算出することができる。なお、綾振り速度は、ユニット制御部51が行う制御に基づいて取得できる。そして、ユニット制御部51は、綾角と、パッケージ30の周速と、パッケージ30の回転数と、に基づいてパッケージ径を算出する。
クリアラ16は、糸20の太さを検出するための図略のセンサが配置されたクリアラヘッド49と、このセンサからの糸太さ信号を処理するアナライザ55と、を備えている。クリアラ16は、前記センサからの糸太さ信号を監視することにより、スラブ等の糸欠陥を検出する。前記クリアラヘッド49の近傍には、前記クリアラ16が糸欠陥を検出したときに直ちに糸20を切断する図略のカッタが設けられている。
糸継装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸の糸端を捕捉して糸継装置14に案内する下糸捕捉部材25と、パッケージ30側の上糸の糸端を捕捉して糸継装置14に案内する上糸捕捉部材(案内部材)26と、がそれぞれ設けられている。下糸捕捉部材25は、下糸パイプアーム33と、この下糸パイプアーム33の先端に形成された下糸吸引口32と、を備えている。上糸捕捉部材26は、上糸パイプアーム36と、この上糸パイプアーム36の先端に形成された上糸吸引口35と、を備えている。
下糸パイプアーム33と上糸パイプアーム36は、それぞれ軸34と37を中心にして回動可能である。下糸パイプアーム33及び上糸パイプアーム36には適宜の負圧源(図略)がそれぞれ接続されている。これにより、下糸吸引口32及び上糸吸引口35に吸引流を発生させて、下糸パイプアーム33と上糸パイプアーム36により上糸及び下糸の糸端をそれぞれ吸引捕捉できる。
巻取部18は、巻取管22を着脱可能に支持するクレードル23と、巻取管22の外周面又はパッケージ30の外周面に接触して回転可能な接触ローラ29と、綾振りアーム(綾振部)71と、綾振駆動モータ72と、を備えている。
クレードル23は、回動軸48を中心に回動可能である。巻取管22への糸20の巻取りに伴って糸層が増大することで、それに応じてクレードル23が回動する。これにより、糸層の増大に伴う形状変化の影響をなくすことができる。
クレードル23には、パッケージ駆動モータ41が取り付けられている。パッケージ駆動モータ41によって巻取管22を回転駆動して、糸20を巻取管22に巻き取る。パッケージ駆動モータ41のモータ軸は、巻取管22をクレードル23に支持させたときに、当該巻取管22と相対回転不能に連結される(いわゆるダイレクトドライブ方式)。パッケージ駆動モータ41の動作は、パッケージ駆動制御部42により制御される。パッケージ駆動制御部42は、ユニット制御部51からの指示を受けてパッケージ駆動モータ41の回転速度(又はその加速度)を調整する。
また、クレードル23の反対側の先端部には、パッケージ回転センサ(検出部)47が取り付けられている。パッケージ回転センサ47は、クレードル23に取り付けられた巻取管22(パッケージ30)の回転量を検出する。パッケージ回転センサ47は、パッケージ30が所定角度回転するごとにパルス信号をユニット制御部51へ出力する。ユニット制御部51は、時間あたりのパルス数を計測することで、パッケージ30の回転速度を算出することができる。
綾振りアーム71は、糸20と係合して糸20を綾振りする。綾振りアーム71は、綾振駆動モータ72によって駆動される。具体的には、綾振りアーム71は、綾振駆動モータ72のロータの正逆回転と連動して、パッケージ幅方向(巻取管22及びパッケージ30の軸方向)に連続的に往復運動するように設けられている。綾振駆動モータ72の動作は、綾振駆動制御部73を介してユニット制御部51により制御される。綾振りアーム71の先端部には例えばフック状の糸ガイド部が形成されている。糸ガイド部によって糸20を保持した状態で、綾振りアーム71が往復旋回運動を行うことにより、糸20を綾振りさせることができる。なお、綾振り箇所のやや上流にはガイドプレート28が設けられている。ガイドプレート28は、上流側の糸20を綾振り箇所へと案内している。以上の構成により、給糸ボビン21から解舒された糸20を巻き取ってパッケージ30を形成することができる。
次に、パッケージ径を用いて、糸20の巻取りを制御することについて、図3を参照して説明する。図3は、制御用パッケージ径に基づいて綾振り幅を制御する処理を説明するグラフである。
上述したように、ユニット制御部51は、各種センサの検出値に基づいて演算を行うことでパッケージ径を算出することができる。また、自動ワインダ1では、パッケージ径に基づいて、様々な制御値を算出している。以下では、このような制御を行うためのパッケージ径を「制御用パッケージ径」と称する。これに対し、各種センサの検出値から演算されるパッケージ径を「演算パッケージ径」と称する。なお、演算したパッケージ径に対してノイズ除去又は統計処理(例えば移動平均)を行った値も演算パッケージ径と称する。また、単に「パッケージ径」と記載した場合は、制御用パッケージ径又は演算パッケージ径等を含むあらゆるパッケージ径を指すものとする。
また、演算パッケージ径はノイズ等によって不適切な値となることがある。従って、本実施形態では、演算パッケージ径を直接用いて制御値を算出するのではなく、演算パッケージ径に基づいて制御用パッケージ径を算出し、当該制御用パッケージ径に基づいて制御値を算出している。また、制御用パッケージ径は、演算パッケージ径に基づいて随時更新される。
本実施形態では、制御用パッケージ径に基づいて綾振り幅を変化させる制御を行う。具体的には、図3に示すように、制御用パッケージ径が大きくなるにつれて、綾振り幅を小さくすることで、端面がテーパ状のパッケージ30を作成する制御を行う。例えばこの制御において、演算パッケージ径を用いた場合、ノイズ等の影響で演算パッケージ径が減少し、その後再び増加することが考えられる。この場合、綾振り幅が一時的に大きくなって再び小さくなるため、糸層が存在しない部分に糸20が案内されることで綾落ちが発生する可能性がある。
そのため、本実施形態では、ユニット制御部51は、演算パッケージ径に基づいて制御用パッケージ径を更新するとともに、制御用パッケージ径の減少は行わない。即ち、制御用パッケージ径よりも演算パッケージ径が小さい場合、ユニット制御部51は、制御用パッケージ径を変化させない。更に、制御用パッケージ径の急激な増加を防ぐため、更新時における制御用パッケージ径の増加量にも上限(以下、増加閾値)が設けられている。なお、制御用パッケージ径が急激に増加した場合は、その後に制御用パッケージ径が変化しない状態がしばらく続くため、パッケージ30の端面が歪んだような形状となる。また、糸太さ又はパッケージ径に応じて、制御用パッケージ径の増加の影響が異なるため、増加閾値は一定値ではなく変動値である。具体的には、糸太さが細くなるほど、パッケージ径の増加速度が小さくなるため、制御用パッケージ径の増加の影響は相対的に大きくなる。同様に、パッケージ径が大きくなるほど、パッケージ径の増加速度が小さくなるため(パッケージ径の増加割合も小さくなるため)、制御用パッケージ径の増加の影響は相対的に大きくなる。従って、本実施形態では、糸太さが細くなるほど、又は、パッケージ径が大きくなるほど、増加閾値を小さくする。
以下、図4及び図5を参照して、増加閾値の算出及び、増加閾値を用いて制御用パッケージ径を更新する処理について説明する。図4は、制御用パッケージ径を増加閾値に基づいて更新する処理を示すフローチャートである。図5は、糸太さ及びパッケージ径と増加閾値との対応関係を示すグラフである。
初めに、ユニット制御部51は、設定された糸番手に基づいて糸太さを算出する(S101)。糸20の巻取り時には、例えばオペレータが機台入力部91等を操作すること等により、機台制御装置90が糸番手を記憶していることが一般的である。ユニット制御部51は、その糸番手に基づいて糸太さを算出する。糸番手から糸太さを算出する方法としては、例えば関数等を用いてもよいし、代表的な糸番手と糸太さとの関係を予め登録したテーブルを用いてもよい。また、ユニット制御部51が、設定された糸番手に基づいて糸太さを算出する構成に代えて、機台制御装置90が設定された糸番手に基づいて糸太さを算出し、算出した値をユニット制御部51に送信する構成とすることもできる。
次に、ユニット制御部51は、ステップS101で算出した糸太さに基づいて、最小パッケージ径のときの増加閾値である初期増加閾値を算出する(S102)。最小パッケージ径とは、パッケージ径に基づく増加閾値を変更する処理において、最も小さいパッケージ径である。例えば、最小パッケージ径は、糸20の巻取りの開始時におけるパッケージ径(即ち巻取管22の径)である。最小パッケージ径は予め設定されている固定値であり、糸番手が異なっても同じ値が用いられる。なお、巻取条件の変更に応じて最小パッケージ径を異ならせることもできる。初期増加閾値は、糸太さを変数とした関数又はテーブル等によって算出される。図4に示すように、初期増加閾値の傾向としては、糸太さが太くなるにつれて大きい値が算出される。
次に、ユニット制御部51は、糸太さに基づいて、増加閾値が最小増加閾値となるときのパッケージ径である最大パッケージ径を算出する(S103)。本実施形態では、図5に示すように、最小増加閾値と最大増加閾値とが予め設定されている。本実施形態では、最小増加閾値及び最大増加閾値は糸太さ又はパッケージ径に関係なく適用される。従って、ユニット制御部51は、最小増加閾値以上であって最大増加閾値以下の増加閾値を算出する。増加閾値はパッケージ径(演算パッケージ径又は制御用パッケージ径)が増加するにつれて減少し、あるパッケージ径以降は最小増加閾値と一致する。この一致時のパッケージ径が最大パッケージ径である。最大パッケージ径は、糸太さを変数とした関数又はテーブル等によって算出される。図5に示すように、最大パッケージ径の傾向としては、糸太さが太くなるにつれて大きい値が算出される。
次に、ユニット制御部51は、ステップS103で算出した最大パッケージ径が、上記の最小パッケージ径より大きいか否かを判断する(S104)。最大パッケージ径が最小パッケージ径以下である場合、ユニット制御部51は、増加閾値が最大増加閾値となるように設定する(S105)。なお、ステップS101からS103の処理は、現在パッケージ径に依存しない値に基づいて算出される。従って、同条件で巻取りを継続する限り、パッケージ径に関係なく常に増加閾値が最大増加閾値となるように設定されることとなる。
最大パッケージ径が上記の最小パッケージ径より大きい場合、ユニット制御部51は、上記の2つの点を通る直線に基づいて、現在パッケージ径での増加閾値を算出する(S106)。上記の2つの点とは、ステップS102で算出した点(最小パッケージ径、初期増加閾値)と、ステップS103で算出した点(最大パッケージ径、最小増加閾値)である。これにより、図5(特に最小パッケージ径から最大パッケージ径までの間の部分)に示すように、パッケージ径と増加閾値の対応関係(直線の方程式)が算出される。従って、ユニット制御部51は、この直線の方程式に現在パッケージ径を入力することで増加閾値を算出する。なお、この直線の傾きは、糸太さに応じて異なっていてもよいし、同じであってもよい。
次に、ユニット制御部51は、ステップS106で算出した増加閾値が最小増加閾値より小さいか否かを判断する(S107)。この増加閾値が最小増加閾値より小さい場合、ユニット制御部51は、現時点で用いる増加閾値として最小増加閾値を設定する(S108)。これは、図5において、最大パッケージ径より大きい部分では、増加閾値が常に最小増加閾値である部分に表れている。なお、ステップS106で算出した増加閾値が最小増加閾値より大きい場合、この算出した増加閾値が、現時点で用いる増加閾値として設定される。
次に、ユニット制御部51は、演算パッケージ径から制御用パッケージ径を減算して増加径を算出する(S109)。増加径とは、糸20の巻取りによって増加した分のパッケージ径であり、制御用パッケージ径に加えることが好ましいが、上述のように急激な増加を防止することが好ましい。また、ノイズ等により演算パッケージ径よりも制御用パッケージ径の方が大きい場合は、算出結果が負となるため増加径が算出できない。この場合、現時点での制御用パッケージ径の更新を中止する。
次に、ユニット制御部51は、ステップS109で算出した増加径が、現時点で用いると設定した増加閾値より大きいか否かを判断する(S110)。増加径が増加閾値以下である場合は急激な増加に該当しないので、ユニット制御部51は、制御用パッケージ径を演算パッケージ径に一致させることで、制御用パッケージ径を更新する(S111)。増加径が増加閾値より大きい場合、ユニット制御部51は、現在の制御用パッケージ径に増加閾値を加算することで、制御用パッケージ径を更新する(S112)。
また、ユニット制御部51は、制御用パッケージ径を更新した後において、所定時間後に、再びステップS104以降の処理を行う。これにより、演算パッケージ径に略追従するように制御用パッケージ径が更新されていく。また、この更新された制御用パッケージ径に基づいて、糸20の巻取りに関する制御が行われる。以上により、制御用パッケージ径の急激な増加を防止しつつ、制御用パッケージ径が大きくなるように更新できる。
以上に説明したように、上記実施形態の自動ワインダ1は、巻取部18と、検出部(糸長検出センサ15及びパッケージ回転センサ47)と、ユニット制御部51と、を備え、以下の糸巻取方法を行う。巻取部18は、糸20を巻き取ってパッケージ30を形成する。検出部は、パッケージ径の演算に用いられる値(糸走行速度、パッケージ30の回転速度)を検出する。ユニット制御部51は、検出部が検出した値に基づくパッケージ径である演算パッケージ径を演算する(演算工程)。ユニット制御部51は、糸20の巻取りの制御で用いるパッケージ径である制御用パッケージ径を、演算パッケージ径の増大に基づいて更新する(更新工程)。ユニット制御部51は、糸太さ及びパッケージ径の少なくとも何れかに基づいて値が変化する増加閾値を算出する(算出工程)。ユニット制御部51は、演算パッケージ径から制御用パッケージ径を減算した値が増加閾値を超えた場合は、当該増加閾値に相当する分だけ制御用パッケージ径を大きくする。
これにより、制御用パッケージ径の更新に増加閾値を設けることで、糸20の巻取りの制御内容が急激に変化することを防止できる。特に、制御用パッケージ径の更新の影響は、糸太さ又はパッケージ径に応じて異なる。従って、これらに基づいた増加閾値を設定することで、制御用パッケージ径を適切に更新できる。
また、上記実施形態の自動ワインダ1においては、ユニット制御部51が算出する増加閾値には、最小増加閾値と最大増加閾値とが定められている。ユニット制御部51は、最小増加閾値以上となるように、かつ、最大増加閾値以下となるように、増加閾値を算出する。
これにより、過小又は過大な増加閾値が算出及び適用されることを防止できるので、制御用パッケージ径をより適切に更新できる。
また、上記実施形態の自動ワインダ1においては、ユニット制御部51は、糸太さ及びパッケージ径の両方に基づいて値が変化する増加閾値を算出する。
これにより、制御用パッケージ径の更新の影響の大きさに関係する2つの値の両方に基づいて閾値が変化するため、制御用パッケージ径をより適切に更新できる。
また、上記実施形態の自動ワインダ1においては、ユニット制御部51は、パッケージ径が最小のときに適用する増加閾値である初期増加閾値を、糸太さに基づいて算出する。
これにより、簡単な処理で初期増加閾値を算出できる。
また、上記実施形態の自動ワインダ1においては、ユニット制御部51は、増加閾値が最小増加閾値に一致するときのパッケージ径(最大パッケージ径)を、糸太さに基づいて算出する。
これにより、閾値が最小閾値に一致するときのパッケージ径を簡単な処理で算出できる。
また、上記実施形態の自動ワインダ1においては、ユニット制御部51は、初期増加閾値と、初期増加閾値のときのパッケージ径(最小パッケージ径)と、最小増加閾値と、最小増加閾値のときのパッケージ径(最大パッケージ径)と、に基づいて、増加閾値とパッケージ径の対応関係を算出する。当該対応関係は、パッケージ径の増大に応じて増加閾値が線形に変化する部分を含む。
これにより、座標軸上の2点を求めてそれらを通る直線を求める処理を行うという簡単な処理で、増加閾値とパッケージ径の対応関係を算出できる。
また、上記実施形態の自動ワインダ1においては、ユニット制御部51は、少なくとも糸太さに基づいて増加閾値を算出する。最小増加閾値は、糸太さに関係なく一定である。
これにより、糸太さに応じた最小増加閾値の算出処理が不要となるので処理が簡単になる。
また、上記実施形態の自動ワインダ1においては、ユニット制御部51は、入力された糸番手に基づいて糸太さを算出し、当該算出された糸太さに基づいて増加閾値を算出する。別の実施形態として機台制御装置90が設定された糸番手に基づいて糸太さを算出し、算出した値をユニット制御部51に送信する構成とすることもできる。
これにより、糸太さをオペレータが直接入力する必要がないため、オペレータの手間を低減できる。また、機台制御装置90が糸太さをユニット制御部51に送信する場合は、オペレータの作業の手間を軽減することができる。
また、上記実施形態の自動ワインダ1においては、ユニット制御部51は、制御用パッケージ径よりも演算パッケージ径が小さい場合であっても、当該制御用パッケージ径を減少させる処理を行わず、当該制御用パッケージ径を変化させない。
これにより、制御用パッケージ径が減少することに伴って巻取りの制御が不適切になることを防止できる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記実施形態では、パッケージ径と増加閾値との関係は線形である。これに代えて、図6に示すように、パッケージ径と増加閾値との関係が非線形(グラフに描画したときに曲線となるように)であってもよい。具体的には、この曲線は下方向(増加閾値の小さい側)に凸であることが好ましく、更に具体的には反比例の曲線であることが更に好ましい。
上記実施形態では、制御用パッケージ径を更新する処理をユニット制御部51が行う。これに代えて、上記の処理を、機台制御装置90又は他の制御装置が行う構成であってもよい。
演算パッケージ径を求める構成としては、クレードル23の角度(回動軸48まわりの回動角)を検知するための角度センサを用いてもよい。この角度センサは例えばロータリエンコーダからなり、クレードル23の角度に応じた角度信号をユニット制御部51に対して送信する。クレードル23はパッケージ30が巻き太るに従って角度が変化するので、当該角度を前記角度センサによって検出して、演算を行うことで演算パッケージ径を求めることができる。なお、パッケージ径を求めるための検出部としては、接触ローラ29の回転速度を検出するセンサを用いることもできる。特に巻取り軸方向で直径が等しいチーズパッケージにおいては、接触ローラ29の回転速度はパッケージの周速と近似するため、上記実施形態と同様の処理を行うことで演算パッケージ径を求めることができる。
演算パッケージ径を求めるための検出部としては、経過時間を測定可能なタイマを用いることができる。この場合、巻取条件に基づいて、糸層の厚さの時間変化を計算や経験値により予め定めておく。そして、定めた値と計測された経過時間とに基づいて糸層の厚さを求める。そして、糸層の厚さに巻取管22の径を加算することで、演算パッケージ径が算出される。なお、このタイマは、糸切断と糸切れによって巻取りが中断した時間を考慮した経過時間の測定が可能である。
上記実施形態では、設定された糸番手に基づいて糸太さを算出するが、オペレータが糸太さを入力することで、ユニット制御部51が糸太さを認識することもできる。
上記実施形態では、糸太さに基づく増加閾値の変更と、パッケージ径に基づく増加閾値の変更と、の両方を行うが、何れか一方を省略することもできる。
パッケージ30をパッケージ駆動モータ41で直接回転駆動する代わりに、接触ローラ29の回転によってパッケージ30を従動回転させてもよい。
また、本発明は、自動ワインダに限らず、巻返し機及び精紡機(例えば空気紡績機、オープンエンド紡績機)等の他の糸巻取機にも適用することができる。
1 糸巻取機
15 糸長検出センサ(検出部)
18 巻取部
30 パッケージ
47 パッケージ回転センサ(検出部)
51 ユニット制御部(制御部)
90 基台制御装置(制御装置)
15 糸長検出センサ(検出部)
18 巻取部
30 パッケージ
47 パッケージ回転センサ(検出部)
51 ユニット制御部(制御部)
90 基台制御装置(制御装置)
Claims (11)
- 糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、
パッケージ径の演算に用いられる値を検出する検出部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記検出部が検出した値に基づく前記パッケージ径である演算パッケージ径を演算し、
糸の巻取りの制御で用いる前記パッケージ径である制御用パッケージ径を、前記演算パッケージ径の増大に基づいて更新し、
糸太さ及び前記パッケージ径の少なくとも何れかに基づいて値が変化する増加閾値を算出し、
前記演算パッケージ径から前記制御用パッケージ径を減算した値が前記増加閾値を超えた場合は、当該増加閾値に相当する分だけ前記制御用パッケージ径を大きくすることを特徴とする糸巻取機。 - 請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記制御部が算出する前記増加閾値には、最小増加閾値と最大増加閾値とが定められており、
前記制御部は、前記最小増加閾値以上となるように、かつ、前記最大増加閾値以下となるように、前記増加閾値を算出することを特徴とする糸巻取機。 - 請求項2に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、糸太さ及び前記パッケージ径の両方に基づいて値が変化する前記増加閾値を算出することを特徴とする糸巻取機。 - 請求項3に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記パッケージ径が最小のときに適用する前記増加閾値である初期増加閾値を、糸太さに基づいて算出することを特徴とする糸巻取機。 - 請求項4に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記増加閾値が前記最小増加閾値に一致するときの前記パッケージ径を、糸太さに基づいて算出することを特徴とする糸巻取機。 - 請求項5に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記初期増加閾値と、前記初期増加閾値のときの前記パッケージ径と、前記最小増加閾値と、前記最小増加閾値のときの前記パッケージ径と、に基づいて、前記増加閾値と前記パッケージ径の対応関係を算出し、当該対応関係は、前記パッケージ径の増大に応じて前記増加閾値が線形に変化する部分を含むことを特徴とする糸巻取機。 - 請求項2から6までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、少なくとも糸太さに基づいて前記増加閾値を算出し、前記最小増加閾値は、糸太さに関係なく一定であることを特徴とする糸巻取機。 - 請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、入力された糸番手に基づいて糸太さを算出し、当該算出された糸太さに基づいて前記増加閾値を算出することを特徴とする糸巻取機。 - 請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
複数の巻取ユニットと、
複数の前記巻取ユニットに一括して設定を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、入力された糸番手に基づいて糸太さを算出し、当該算出された糸太さを複数の前記巻取ユニットが備えるそれぞれの前記制御部へ送信することを特徴とする糸巻取機。 - 請求項1から9までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記制御用パッケージ径よりも前記演算パッケージ径が小さい場合であっても、当該制御用パッケージ径を減少させる処理を行わず、当該制御用パッケージ径を変化させないことを特徴とする糸巻取機。 - 糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取方法において、
検出した値に基づくパッケージ径である演算パッケージ径を演算する演算工程と、
糸の巻取りの制御で用いる前記パッケージ径である制御用パッケージ径を、前記演算パッケージ径の増大に基づいて更新する更新工程と、
糸太さ及び前記パッケージ径の少なくとも何れかに基づいて値が変化する増加閾値を算出する算出工程と、
を含み、
前記更新工程では、前記演算パッケージ径から前記制御用パッケージ径を減算した値が前記増加閾値を超えた場合は、当該増加閾値に相当する分だけ前記制御用パッケージ径を大きくすることを特徴とする糸巻取方法。
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