以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なる数字を付して区別する。また、異なる実施形態の類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素等の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
(0.自動取引装置の概要)
まず、本発明の実施形態に係る自動取引装置10の概要について説明する。なお、自動取引装置10の典型的な例としては、ATM(Automated teller machine)が挙げられるが、本発明の実施形態に係る自動取引装置10は、かかる例に限定されない。本発明の実施形態に係る自動取引装置10は、操作者からの入力情報を受け付ける操作部を有する装置であればよい。また、自動取引装置10が設置される場所も限定されず、コンビニエンスストアであってもよいし、銀行の店舗であってもよい。
図1は、本発明の実施形態に係る自動取引装置10の外観例を示す図である。図1に示すように、自動取引装置10は、フロントパネル20と、背面ミラー30と、操作パネル40と、媒体挿入口50と、レシート排出口60と、操作部70と、紙幣投入口80とを備える。また、図1に示すように、自動取引装置10は、認証部91と、バーコードリーダ92と、非接触ICカードリーダ100と、前面扉110と、金庫部120とを備える。
フロントパネル20は、自動取引装置10のフロント面に存在するパネルである。フロントパネル20の左右に形成されている壁によって他人に操作部70が見られるのを防止することが可能である。背面ミラー30は、操作者の背後に立つ他人の状況を操作者が確認するためのミラーである。背面ミラー30には、操作者の背後に立つ他人の状況を撮像して記録する監視カメラが設けられていてもよい。操作パネル40は、タッチパネルおよび表示部を有している。表示部は、LCD(Liquid Crystal Display)であってよい。
媒体挿入口50には、操作者から媒体が挿入される。また、媒体挿入口50からは、操作者に媒体が排出される。ここで、媒体の種類は特に限定されない。例えば、媒体は、カードであってもよいし、通帳であってもよい。また、媒体には、媒体読取装置240によって読み取り可能なデータ(例えば、磁気データなど)が記録されている。媒体に記録されているデータは、操作者に関する情報(例えば、銀行コード、店舗コード、口座番号など)を含んでよい。
レシート排出口60からは、取引明細票としてのレシートが排出される。操作部70は、取引に関する情報の入力を操作者から受け付ける機能を有する。例えば、操作部70は、暗証情報の入力を操作者から受け付けるピンパッドであってよい。紙幣投入口80には、操作者から紙幣が投入される。また、紙幣投入口80からは、操作者に紙幣が排出される。認証部91は、操作者の生体情報に対する認証を行う機能を有する。操作者の生体情報は、指の静脈であってもよいし、掌の静脈であってもよい。
バーコードリーダ92は、バーコードを読み取る機能を有する。非接触ICカードリーダ100は、非接触ICカードに記録されたデータを読み取る機能を有する。前面扉110は、自動取引装置10のフロント面に存在する扉である。前面扉110が開いている状態においては、自動取引装置10の外部から金庫部120へのアクセスが可能である。一方、前面扉110が閉まっている状態においては、自動取引装置10の外部から金庫部120へのアクセスが不可能である。金庫部120は、紙幣を格納する機能を有する。
図2は、本発明の実施形態に係る自動取引装置10の筐体内部の概略構成図である。図2に示すように、自動取引装置10は、制御部210と、UPS(Uninterruptible Power Supply)220と、電源部230と、媒体読取装置240と、レシートプリンタ250と、ジャーナルプリンタ260とを筐体内部に備える。また、図2に示すように、自動取引装置10は、紙幣処理部270と金庫部120(カセット収納部280、カセット290および金庫扉300)とを備える。
制御部210は、自動取引装置10が有する各部の動作を制御する機能を有する。例えば、制御部210は、演算装置を含んでおり、記憶装置によって記憶されているプログラムが演算装置によって実行されることによってその機能が実現され得る。演算装置は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。また、制御部210は、専用のハードウェアによって構成されていてもよい。
UPS220は、電力を蓄積する機能を有し、電源部230から自動取引装置10が有する各部への電力供給が途絶えた場合に、自動取引装置10が有する各部に電力を供給することが可能である。電源部230は、自動取引装置10が有する各部に電力を供給する機能を有する。媒体読取装置240は、媒体挿入口50から挿入された媒体に記録されているデータを読み取る機能を有する。
レシートプリンタ250は、取引明細票としてのレシートを発行する機能を有する。レシートには、自動取引装置10によって実行された取引種別(例えば、現金の引き出し、現金の預け入れ、振り込みなど)が印刷される。また、例えば、レシートには、操作者の口座番号、取引金額などが印刷される。ジャーナルプリンタ260は、レシートプリンタ250によって印刷される内容とほぼ同内容を紙に印刷する機能を有し、取引の事実を証拠として記録する機能を有している。
紙幣処理部270は、操作者から投入された紙幣およびカセット290から取り出された紙幣を処理する機能を有する。カセット収納部280は、カセットを収納する機能を有する。カセット290は、紙幣を収納する機能を有する。金庫扉300は、金庫部120のフロント面に存在する扉である。金庫扉300が開いている状態においては、カセット収納部280およびカセット290へのアクセスが可能である。一方、金庫扉300が閉まっている状態においては、カセット収納部280およびカセット290へのアクセスが不可能である。
図2に示すように、フロントパネル20は、開方向D1に回動し得る。フロントパネル20が開方向D1に回動すると、自動取引装置10の外部から、制御部210、UPS220、電源部230、媒体読取装置240、レシートプリンタ250およびジャーナルプリンタ260にアクセス可能となる。また、媒体読取装置240のトレイは、引き出し方向D2に引き出され得る。紙幣処理部270のトレイは、引き出し方向D3に引き出され得る。
前面扉110は、開方向D4に回動し得る。前面扉110が開方向D4に回動すると、自動取引装置10の外部から、紙幣処理部270および金庫部120にアクセス可能となる。金庫扉300は、開方向D5に回動し得る。金庫扉300が開方向D5に回動すると、自動取引装置10の外部から、カセット収納部280およびカセット290にアクセス可能となる。カセット収納部280およびカセット290は、引き出し方向D6に引き出され得る。
ここで、操作者からの入力情報が他人によって不正に読み取られてしまう被害が発生し得る。入力情報の不正な読み取りの例について説明する。
図3は、入力情報の不正な読み取りの第1の例を示す図である。図3を参照すると、操作部70が示されている。そして、他人によって、操作部70を模倣した偽装デバイスFaが操作部70に対して重ねるようにして配置されている。偽装デバイスFaは、操作部70を模倣した形状を有している。そこで、操作者は、操作部70に対して入力すべき入力情報を誤って偽装デバイスFaに対して入力してしまう。偽装デバイスFaへの入力情報は、有線または無線によってリアルタイムまたは後日に外部装置によって読み取られる。このように、偽装デバイスFaによって入力情報を巧みに読み取る犯罪が存在する。
図4は、入力情報の不正な読み取りの第2の例を示す図である。図4を参照すると、操作部70が示されている。操作部70の周囲は、入力情報を入力する場面が他人から見えにくくするために、内壁で覆われている。図4に示された例では、操作部70を覆う内壁の例として上面W1が示されている。そして、他人によってカメラCaが上面W1に取り付けられている。カメラCaは、操作者によって入力情報(例えば、暗証情報など)が入力される場面を盗撮し得る。このように、カメラCaによって入力情報を巧みに読み取る犯罪も存在する。なお、カメラCaは、操作部70を覆う内壁のうち、背面、側面などに取り付けられる場合もあり得る。
そこで、本明細書においては、操作部70への入力情報が他人に不正に読み取られてしまう可能性を低減する技術について主に提案する。以上、本発明の実施形態に係る自動取引装置10の概要について説明した。
(1.実施形態の詳細説明)
続いて、図5〜図8を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の実施形態に係る自動取引装置10は、既に説明した操作部70の他に、図5〜図8に示すように、カバー部73および検出部78を備える。図5は、本発明の実施形態において操作体H(例えば、操作者の手など)によって操作部70への操作を開始する例を示す図である。図5に示すように、操作開始時に、カバー部73の位置が操作部70を開放する開放位置となるように操作体Hが(または操作部70による入力情報の受け付け開始時に自動的に)カバー部73を回動させてから、操作部70への操作が開始される。
より具体的には、カバー部73は、回動軸とは反対側の端部(以下、「カバー部73の下端」とも言う。)と操作部70との距離が可変となるように(操作部70に対するカバー部73の傾きが可変となるように)回動可能となっている。図5を参照すると、カバー部73の位置が開放位置である場合におけるカバー部73の下端と操作部70との距離d1が示されている。そして、操作体Hがカバー部73に押圧を与えて(または操作部70による入力情報の受け付け開始時に自動的に)カバー部73を奥側に回動させることによってカバー部73の位置が操作部70に対して開放位置となってよい。なお、カバー部73の操作部70に対する傾きは、操作部70の上面に対するカバー部73の傾きであってよい。
また、図6は、本発明の実施形態において操作体Hによる操作部70の操作が正常に終了した例を示す図である。上記のようにして操作部70への操作が開始された後、図6に示したように、操作部70への操作が終了し、カバー部73の位置が操作部70の一部または全部を閉鎖する閉鎖位置となるように操作体Hが(または操作部70による入力情報の受け付け終了時に自動的に)カバー部73を回動させる。図6に示したように、閉鎖位置は、カバー部73の下端が操作部70に接触する位置を含んでいる。より具体的には、操作体Hがカバー部73に与えていた押圧を解除して(または操作部70による入力情報の受け付け終了時に自動的に)カバー部73を回動させることによってカバー部73の位置が操作部70に対して閉鎖位置となってよい。
一方、図7は、本発明の実施形態において操作体Hによる操作部70の操作が異常に終了した例を示す図である。図7に示すように、操作部70を模倣した偽装デバイスFaが操作部70に対して重ねられるようにして配置されることがある。より具体的には、操作体Hが偽装デバイスFaを操作部70に対して重ねてから、操作体Hがカバー部71に与えていた押圧を解除して(または操作部70による入力情報の受け付け終了時に自動的に)カバー部73を回動させる。しかし、カバー部73と操作部70との間に存在する偽装デバイスFaが、カバー部73が操作部70を閉鎖することを妨げるため、カバー部73の位置が開放位置のままとなる。なお、操作部70を覆う内壁の側面にカメラが取り付けられた場合も、カバー部73が操作部70を閉鎖することをカメラが妨げるため、カバー部73の位置が開放位置のままとなる。
以上のようにして、カバー部73は、操作部70の一部または全部を閉鎖する閉鎖位置と操作部70を開放する開放位置との間で回動可能である。なお、図6には、カバー部73が操作部70の一部を閉鎖する例が示されている。カバー部73が操作部の一部を閉鎖する例については、図8を参照しながら、後に詳細に説明する。しかし、カバー部71は操作部70の全体を閉鎖してもよい。そして、検出部78は、カバー部71の位置が閉鎖位置および開放位置のいずれの位置であるかを検出する。
かかる構成によれば、偽装デバイスFaを操作部70に対して重ねるようにして配置し、偽装デバイスFaに対して操作者に入力情報を入力させることによって、入力情報を巧みに読み取る犯罪を抑制することが期待される。したがって、かかる構成によれば、入力情報が他人に不正に読み取られてしまう可能性を低減することが期待される。
カバー部73の操作部70に対する位置が、どのような位置である場合に閉鎖位置として検出され、どのような位置である場合に開放位置として検出されるかは限定されない。
一例として、検出部78は、操作部70とカバー部73の下端との距離が所定の幅より小さい位置(すなわち、操作部70に対するカバー部73の傾きが所定の角度より大きい位置を閉鎖位置として検出し、操作部70とカバー部73の下端との距離が所定の幅より大きい位置(すなわち、操作部70に対するカバー部73の傾きが所定の角度より小さい位置を開放位置として検出してよい。操作部70とカバー部73の下端との距離が所定の幅と等しい位置(すなわち、操作部70に対するカバー部71の傾きが所定の角度と等しい位置)は、閉鎖位置および開放位置のいずれとして検出されてもよい。
かかる機能を実現するため、検出部78は、どのようなハードウェアによって実現されてもよいが、マイクロスイッチおよび光学センサの少なくともいずれか一つを含んでもよい。例えば、操作部70とカバー部73の下端との距離が所定の幅より小さい場合に(すなわち、操作部70に対するカバー部73の傾きが所定の角度より大きい場合に)、カバー部73によって押下されるようにマイクロスイッチが設けられていてもよいし、操作部70とカバー部73の下端との距離が所定の幅より大きい場合に(すなわち、操作部70に対するカバー部73の傾きが所定の角度より小さい場合に)、カバー部73によって押下されるようにマイクロスイッチが設けられていてもよい。
また、例えば、操作部70とカバー部73の下端との距離が所定の幅より小さい場合に(すなわち、操作部70に対するカバー部73の傾きが所定の角度より大きい場合に)、図示しない発光部から光学センサに向けて発せられた光に対する遮光がカバー部73によって解除されてもよいし、操作部70とカバー部73の下端との距離が所定の幅より大きい場合に(すなわち、操作部70に対するカバー部73の傾きが所定の角度より小さい場合に)、図示しない発光部から光学センサに向けて発せられた光に対する遮光がカバー部73によって解除されてもよい。
以上に説明したような機能を検出部78が有することによって、カバー部73と操作部70との間に物体が存在しない場合には、カバー部73の操作部70に対する位置が閉鎖位置として検出され得る。一方、カバー部73と操作部70との間に物体が存在する場合には、カバー部73の操作部70に対する位置が開放位置として検出され得る。上記した例では、操作体H、偽装デバイスFaなどが、カバー部73と操作部70との間に存在する物体となり得る。
ここで、所定のタイミングにおいて、カバー部73の操作部70に対する位置が開放位置であることが検出された場合には、所定の動作がなされてもよい。すなわち、制御部210は、所定のタイミングにおいてカバー部73が操作部70に対して開放位置にあることが検出された場合には、所定の動作を実行してもよい。所定のタイミングは特に限定されないが、少なくとも取引開始時、取引終了時、操作部70による入力情報の受け付け開始時および操作部70による入力情報の受け付け終了時のいずれか一つを含んでもよい。
所定の動作も特に限定されないが、自動取引装置10の動作停止、自動取引装置10による取引停止、所定の障害発生情報の通知動作の少なくともいずれか一つを含んでもよい。所定の障害発生情報の通知動作も特に限定されないが、操作パネル40に所定の障害発生情報(例えば、操作部70の確認を促すメッセージなど)を表示させる動作、図示しない音声出力部に所定の障害発生情報(例えば、操作部70の確認を促す音声ガイダンスなど)を出力させる動作および他の装置(例えば、サーバなど)に所定の障害発生情報(例えば、障害発生を報告する旨を示すデータなど)を送信する動作の少なくともいずれか一つを含んでもよい。
一方、所定のタイミングにおいて、カバー部73が操作部70に対して閉鎖位置にあることが検出された場合には、所定の動作はなされなくてよい。すなわち、制御部210は、所定のタイミングにおいてカバー部73が操作部70に対して閉鎖位置にあることが検出された場合には、取引を開始または継続してよい。これによって、操作者は、正常に操作部70に対して操作を行った場合、自動取引装置10に対して、引き続き取引を実行させることが可能となる。
図8は、本発明の実施形態においてカバー部73が操作部の一部を閉鎖する例を示す図である。図8を参照すると、操作部70とカバー部73とが示されている。カバー部73は、操作部70の一部を閉鎖している。このように、カバー部73の閉鎖位置は、操作部70が有する複数のキーの一部よりも奥側の位置を含んでよい。より具体的に、閉鎖位置は、複数のキーのうち少なくとも最も手前にあるキー(図8に示した例では、キー「0」を含んだ左右方向の列)よりも奥側の位置を含んでよい。
なお、図8に示した例では、カバー部73の閉鎖位置は、キー「0」を含んだ左右方向の列、キー「2」を含んだ左右方向の列、および、キー「5」を含んだ左右方向の列よりも奥側の位置、かつ、キー「8」を含んだ左右方向の列よりも手前側の位置を含んでいる。特に、カバー部73が閉鎖位置にある場合においても、キー「5」が操作者から視認可能であることが(例えば、規格などによって)要求される場合がある。しかし、図8に示したように、カバー部73の閉鎖位置がキー「5」を含んだ左右方向の列よりも奥側の位置であれば、そのような要求が満たされることとなる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明した。
(2.比較例の説明)
続いて、比較例について説明する。比較例に係る自動取引装置は、図9〜図11に示すように、第1のカバー部71と第1の検出部78の他、第2のカバー部72と第2の検出部79とをさらに備える。
まず、図9は、比較例において操作体Hによって操作部70への操作を開始する例を示す図である。図9に示すように、操作開始時に、第2のカバー部72が操作部70を開放する第2の開放位置に配置されるように操作体Hが(または操作部70による入力情報の受け付け開始時に自動的に)第2のカバー部72を回動させてから、操作部70への操作が開始される。このとき、第1のカバー部71が操作部70に対して第1の開放位置となるように第1のカバー部71が回動される。
より具体的には、第2のカバー部72は、操作部70に対する第2の傾きが可変となるように回動可能となっている。そして、操作体Hが第2のカバー部72に(例えば、第2のカバー部72を押し込むように)押圧を与えて(または操作部70による入力情報の受け付け開始時に自動的に)第2のカバー部72を回動させることによって第2のカバー部72が操作部70を開放する第2の開放位置に配置されるように第2のカバー部72が回動される。
また、図10は、比較例において操作体Hによる操作部70の操作が正常に終了した例を示す図である。上記のようにして操作部70への操作が開始された後、図10に示したように、操作部70への操作が終了し、第2のカバー部72が操作部70を閉鎖する第2の閉鎖位置に配置されるように操作体Hが(または操作部70による入力情報の受け付け終了時に自動的に)第2のカバー部72を回動させる。このとき、第1のカバー部71が操作部70に対して第1の閉鎖位置に配置されるように第1のカバー部71が回動される。
より具体的には、操作体Hが第2のカバー部72に与えていた押圧を解除して(または操作部70による入力情報の受け付け終了時に自動的に)第2のカバー部72を回動させることによって第2のカバー部72が操作部70を閉鎖する第2の閉鎖位置に配置されるように第2のカバー部72が回動される。
一方、図11は、比較例において操作体Hによる操作部70の操作が異常に終了した例を示す図である。図11に示すように、操作部70を模倣した偽装デバイスFaが操作部70に対して重ねられるようにして配置されることがある。より具体的には、操作体Hが偽装デバイスFaを操作部70に対して重ねてから、操作体Hが第2のカバー部72に与えていた押圧を解除して(または操作部70による入力情報の受け付け終了時に自動的に)第2のカバー部72を回動させる。
その結果、第2のカバー部72が第2の閉鎖位置に配置されるように操作体Hが(または操作部70による入力情報の受け付け終了時に自動的に)第2のカバー部72を回動させる。このとき、第1のカバー部71が回動される。しかし、第1のカバー部71と操作部70との間に存在する偽装デバイスFaが第1のカバー部71が操作部70に対する第1の閉鎖位置に配置されることを妨げるため、第1のカバー部71の位置は操作部70に対して第1の開放位置のままとなる。
以上のようにして、第1のカバー部71は、操作部70に対する第1の閉鎖位置と操作部70に対する第1の開放位置との間で回動可能である。そして、第1の検出部78は、第1のカバー部71の位置が操作部70に対して第1の閉鎖位置および第1の開放位置のいずれの位置であるかを検出する。
さらに、第2のカバー部72は、操作部70を開放する第2の開放位置と操作部70を閉鎖する第2の閉鎖位置との間で回動可能である。そして、第2の検出部79は、第2のカバー部72が第2の開放位置および第2の閉鎖位置のいずれの位置に存在するかを検出する。
第2の検出部79は、操作部70に対する第2のカバー部72の第2の傾きが所定の範囲内である場合に第2のカバー部72が第2の閉鎖位置に存在することを検出し、操作部70に対する第2のカバー部72の第2の傾きが所定の範囲外である場合に第2のカバー部72が第2の開放位置に存在することを検出する。
かかる機能を実現するため、第2の検出部79は、マイクロスイッチおよび光学センサの少なくともいずれか一つを含み得る。
ここで、所定のタイミングにおいて、第2のカバー部72が第2の閉鎖位置に存在することが検出された場合には、所定の動作がなされ得る。すなわち、制御部210は、所定のタイミングにおいて第2のカバー部72が第2の閉鎖位置に存在することが検出された場合には、所定の動作を実行する。あるいは、制御部210は、所定のタイミングにおいて第2のカバー部72が第2の閉鎖位置に存在しない時間が一定時間を超えたことが検出された場合に、所定の動作を実行する(例えば、カメラが取り付けられていると判断する)。所定のタイミングは、少なくとも取引実行中および入力情報の受け付け中のいずれか一つを含み得る。
一方、所定のタイミングにおいて、第2のカバー部72が第2の閉鎖位置に存在することが検出された場合には、所定の動作はなされない。すなわち、制御部210は、所定のタイミングにおいて第2のカバー部72が第2の閉鎖位置に存在することが検出された場合には、取引を開始または継続し得る。これによって、操作者は、正常に操作部70に対して操作を行った場合、自動取引装置に対して、引き続き取引を実行させることが可能となる。
以上、比較例について説明した。
(3.本発明の実施形態と比較例との対比説明)
続いて、本発明の実施形態と比較例との対比説明を行う。本発明の実施形態については、適宜図5〜図8を参照し、比較例については、適宜図9〜図11を参照する。
まず、比較例においては、2つのカバー部(第1のカバー部71および第2のカバー部72)と2つのカバー部に対応して設けられる2つのセンサ(第1の検出部78および第2の検出部79)が必要となってしまう。そのため、比較例においては、自動取引装置の製造コストが大きくなってしまうという第1の課題がある。一方、本発明の実施形態においては、1つのカバー部73と1つのセンサ(検出部78)が設けられればよいため、製造コストを抑えることが可能となる。
また、比較例においては、2つのカバー部(第1のカバー部71および第2のカバー部72)を連動させるために複雑な構造が必要となってしまう。そのため、2つのカバー部が壊れてしまうリスクや2つのカバー部が動作不良を起こしてしまうリスクがあり、自動取引装置の品質が劣化しやすいという第2の課題がある。一方、本発明の実施形態においては、1つのカバー部73と1つのセンサ(検出部78)が設けられればよいため、構造が単純となり、自動取引装置の品質劣化を抑えることが可能となる。
さらに、比較例においては、2つのカバー部を連動させるために2つのカバー部それぞれを設定可能な位置の自由度が小さいという第3の課題がある。例えば、図9に示したように、第2のカバー部72の上端を回動軸として第2のカバー部72の下端を奥側に回動させるときに第2のカバー部72の下端によって第1のカバー部71の手前側が上方に持ち上げられる構成が採用される場合が想定される。かかる場合、第2のカバー部72の下端が第1のカバー部71よりも手前側に存在する必要があり、第2のカバー部72の回動軸も第1のカバー部71よりも手前側に存在する必要がある。
ここで、第2のカバー部72の下端が第1のカバー部71よりも手前側に存在する場合、第2のカバー部72の下端を奥側に大きく回動させることが可能となってしまい、第2のカバー部72と操作部70との間に手を挟みやすい。
また、第2のカバー部72の下端が第1のカバー部71よりも手前側に存在する場合、操作部70に対する第2のカバー部72の傾斜角度(図10に示した例では、角度A2)が大きくなりやすい。したがって、第2のカバー部72の上端から下端まで(図10に示した例では、長さL2)をさほど長くすることができない。なおかつ、第2のカバー部72の回動軸が第1のカバー部71よりも手前側に存在する場合、操作部70を覆う内壁の上面(図10に示した例では、上面W1)のうち操作者の手の届く領域が広くなりやすい。そのため、第2のカバー部72の下端が奥側に回動された場合であっても、内壁の上面のうち操作者の手の届く領域の一部しか第2のカバー部72で覆うことができず、当該上面にカメラが取り付けられやすい。
一方、本発明の実施形態においては、2つのカバー部を連動させる必要がないために1つのカバー部を設定可能な位置の自由度を大きくすることが可能となる。例えば、本発明の実施形態においては、図5に示したように、カバー部73の下端を(比較例のように操作部70の手前上方ではなく)操作部70の上方(すなわち、比較例よりも奥側)に維持することが可能であり、カバー部73の回動軸も(比較例のように操作部70の手前上方ではなく)操作部70の上方(比較例よりも奥側)に維持することが可能である。
ここで、カバー部73の下端が操作部70の上方(比較例よりも奥側)に存在する場合、カバー部73の下端を奥側にさほど大きく回動させることができないため(図5に示した、カバー部73の下端と操作部70との距離d1がさほど大きくならないため)、カバー部73と操作部70との間に手を挟みにくい。
また、カバー部73の下端が操作部70の上方(比較例よりも奥側)に存在する場合、操作部70に対するカバー部73の傾斜角度(図6に示した例では、角度A1)が小さくなりやすい。したがって、カバー部73の上端から下端まで(図6に示した例では、長さL1)を長くすることができる。なおかつ、カバー部73の回動軸が操作部70の上方(比較例よりも奥側)に存在する場合、操作部70を覆う内壁の上面(図5に示した例では、上面W1)のうち操作者の手の届く領域が狭くなりやすい。そのため、カバー部73の下端が奥側に回動された場合であっても、内壁の上面のうち操作者の手の届く領域の大部分をカバー部73で覆うことができ、当該上面にカメラが取り付けられにくい。
また、本発明の実施形態においては、1つのカバー部73が開放位置に移動されれば操作部70の全部が視認可能になるため、操作部70に対する視認性が良い。さらに、カバー部73が閉鎖位置にある場合にも、操作部70の一部しか閉鎖されず、残りの一部が閉鎖されない場合には、操作部70に対する視認性は一段と良好になることが期待される。
(4.まとめ)
本発明の実施形態によれば、取引に関する情報の入力を操作者から受け付ける操作部70と、操作部70の一部または全体を閉鎖する閉鎖位置と操作部70を開放する開放位置との間で回動可能なカバー部73と、カバー部73が閉鎖位置および開放位置のいずれの位置にあるかを検出する検出部78と、を備え、閉鎖位置は、カバー部73の回動軸と反対側の端部が前記操作部に接触する位置を含む、自動取引装置10が提供される。
かかる構成によれば、自動取引装置10の製造コストおよび品質悪化を抑えつつ、操作部70のカバー部73を設定可能な位置の自由度の低下を抑制するとともに、操作部70の視認性を向上させることが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記では、操作部70への入力情報が他人に不正に読み取られてしまう可能性を低減する技術を主に説明した。操作部70への入力情報が他人に不正に読み取られてしまった場合には、不正に読み取られた入力情報は、媒体から読み取られたデータと合わせて、自動取引装置10から現金を勝手に引き落とすスキミングにも利用され得る。本発明の実施形態によれば、このようなスキミングによる被害を防止することも期待される。