以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明は例示である。
(貨幣処理システムの全体構成)
図1は、実施形態に係る貨幣処理システムMの全体構成を示す図である。貨幣処理システムMは、例えば銀行等の金融機関(本実施形態では金融機関の支店)に構築される。尚、貨幣処理システムMは、金融機関に構築されることには限定されない。
図1に示す構成では、貨幣処理システムMは、相互に接続された複数台の機器1〜8を備えて構成されている。詳しくは、貨幣処理システムMは、店内の後方スペース(いわゆる後方事務を行うスペース)Sbに設置された機器(具体的には、出納機1、貨幣保管装置2、オートキャッシャー3、及び、複数台の監視カメラ4)と、ATMコーナーSaに設置された機器(具体的には、両替機5、及び、監視カメラ6)と、店内の各所に設置された照明器具7と、管理コンピュータ8とを備えており、それらの機器1〜8は、店内のネットワーク9に接続されている。また、管理コンピュータ8はネットワーク鍵データベースKにも接続されている。
尚、出納機1、貨幣保管装置2及びオートキャッシャー3は、それぞれ「貨幣処理装置」の例示である。また、管理コンピュータ8は、「監視手段」の例示である。
まず、後方スペースSbに設置される機器1〜4の構成について順番に説明する。
出納機1は、いわゆるオープン出納機であって、貨幣に関する複数の機能を有しており、各機能に対応した処理を実行する装置である。例えば、出納機1は、出金処理及び回収処理といった所謂“出金系処理”を実行することにより、貨幣の払出しを伴う機能を実現する。また、出納機1は、入金処理及び装填処理といった所謂“入金系処理”を実行することにより、貨幣の払出しを伴わない機能を実現する。尚、以下の記載において、入金系処理及び出金系処理を“入出金処理”と総称する場合がある。出納機1はさらに、入出金処理以外の処理(例えば、各種の設定等を行う処理)も実行する。
具体的に、出納機1は、紙幣を処理する紙幣処理機11と、硬貨を処理する硬貨処理機12とを備えている。紙幣処理機11は、バラ紙幣の入出金処理を実行可能であり、また、帯封紙幣の作成や帯封紙幣の出金系処理を実行したり、外部から帯封紙幣を装填したりすることができる。帯封紙幣は、所定枚数(例えば100枚)のバラ紙幣を帯封して作成される。
一方、硬貨処理機12は、バラ硬貨の入出金処理を実行可能であり、また、包装硬貨の作成や包装硬貨の出金系処理を実行したり、外部から包装硬貨を装填したりすることができる。包装硬貨は、所定枚数(例えば50枚)のバラ硬貨に紙やフィルム等の包装媒体を巻くことによって作成される。
尚、紙幣処理機11及び硬貨処理機12は、双方とも「処理部」を例示している。
硬貨処理機12の筐体上部には、操作表示部14と印字部15とが設けられている。操作表示部14は、例えばタッチパネル等から構成されており、出納機1における紙幣や硬貨の処理状況や、出納機1に収納されている紙幣や硬貨の在高等の情報を表示する。また、操作者は操作表示部14を介して、出納機1に対して様々な処理を指示することができる。一方、印字部15は、例えばプリンタ等から構成されており、出納機1における紙幣や硬貨の処理結果や、出納機1に収納されている紙幣や硬貨の在高等の情報をレシート等に印刷する。
図2は、出納機1の機能構成の概略を示すブロック図である。図2に示すように、出納機1には、各構成要素の制御を行う制御部100が設けられている。制御部100は、紙幣処理機11及び硬貨処理機12に指令信号を送ることにより、それらの動作を制御する。また、制御部100には、操作表示部14、印字部15、認証部16、記憶部17、及び通信インターフェース部18がそれぞれ接続されている。尚、操作表示部14は、前述の如くタッチパネル等によって構成されているが、出納機1の操作を行うための操作部と、画面等を有する表示部とが分離して構成されていてもよい。認証部16は、操作者を特定する操作者情報を受けるものであり、ここではIDカードから操作者IDを読み取るためのカードリーダである。尚、認証部16は、カードリーダ以外に、例えば操作者の指紋や顔画像を取得して個人認証を行う手段であってもよい。記憶部17は、出納機1に収納されている紙幣や硬貨の在高等の情報を記憶する。また、制御部100は、通信インターフェース部18を介して店内のネットワーク9に接続されており、管理コンピュータ8等の機器との間で様々な信号の送受信を行うことができる。尚、通信インターフェース部18は、「報知手段」及び「通信部」の例示である。また、詳しくは後述するが、制御部100には、ネットワーク鍵に関する制御を行うネットワーク鍵制御部101が設けられている。
制御部100の機能の一部または全部は、ハードウェアまたはソフトウェアによって実現される。例えば、出納機1内に設けられた制御基板上に構成された回路や、記録されたプログラムを実行するマイクロコンピュータ等によって、制御部100を実現することができる。また、制御部100は、出納機1内の他の制御部と別個に構成されてもよいし、一体に構成されてもかまわない。
貨幣保管装置2は、いわゆる現金バスであって、その内部に、バラ紙幣、帯封紙幣、及び包装硬貨等の貨幣や、有価証券等を収納して保管するよう構成されている。具体的に、貨幣保管装置2は、引き出し型の複数の収納部21を備えている。収納部21の一部または全部にはロック機構が設けられており、貨幣保管装置2内の制御部(不図示)がロック機構のロック/解除を制御する。また、収納部21の一部又は全部には、内容物の重量を測定する機構あるいは内容物の画像を取得する機構等が設けられており、この重量あるいは画像に基づいて内容物(の種類や重量)のチェックが行われる。
貨幣保管装置2の筐体上部には、操作表示部25が設けられている。操作表示部25は、例えばタッチパネル等から構成されており、貨幣保管装置2における帯封紙幣等の収納状況等が表示される。また、操作者は操作表示部25を介して、貨幣保管装置2に対し、帯封紙幣の収納や取り出しといった貨幣の入出金処理を指示することができる。貨幣保管装置2の利用に際し、操作者の権限認証が要求される。
オートキャッシャー3は、窓口の近傍に設置される装置であって、金融機関の窓口業務において、貨幣の入出金系処理を実行するよう構成されている。
オートキャッシャー3は、操作端末35に接続されている。操作端末35は、例えばPC等から構成されており、操作端末35を操作することにより、オートキャッシャー3に対して様々な処理を指示することができる。図1に示すように、オートキャッシャー3は、操作端末35を介してネットワーク9に接続されている。オートキャッシャー3の利用に際し、操作者の権限認証が要求される。
複数台の監視カメラ4は、それぞれ、出納機1、貨幣保管装置2、及び、オートキャッシャー3の周辺に配置されている。各監視カメラ4は、対応する機器の周辺を撮像することにより、その機器を監視するようになっている。各監視カメラ4により撮像された画像データは、ネットワーク9を介して管理コンピュータ8へ送信される。管理コンピュータ8は、送信された画像データを適宜、保存することができる。
次に、店内のATMコーナーSaに設置される機器5〜6について説明する。
両替機5は、両替される貨幣が入金されると共に、それと同額で且つ、操作者によって指定された金種の貨幣を出金するよう構成されている。詳細な図示は省略するが、両替機5は、紙幣を処理する紙幣処理部と、硬貨を処理する硬貨処理部とを備えており、両替機5の制御部が紙幣処理部と硬貨処理部との動作を制御するようになっている。
両替機5の筐体上部には、操作表示部55が設けられている。操作表示部55は、例えばタッチパネル等から構成されており、両替に際して入金された貨幣の金額等が表示される。また、操作者は操作表示部55を介して、両替機5に対し、出金する貨幣の金種を指定するといった各種の処理を指示することができる。
監視カメラ6は、両替機5の周辺に配置されている。監視カメラ6は、両替機5の周辺を撮像することにより、その両替機5を監視するようになっている。監視カメラ6により撮像された画像データは、ネットワーク9を介して管理コンピュータ8へ送信される。管理コンピュータ8は、その画像データを適宜、保存することができる。
また、監視カメラ6の稼働状態つまり、その電源ON/OFFを示す情報が、ネットワーク9を介して管理コンピュータ8へ送信されるようになっている。
次に、その他の機器7〜8について説明する。
照明器具7は、店内の各所に多数、配置されている。多数の照明器具7の中には、出納機1、貨幣保管装置2、オートキャッシャー3、両替機5を照らす照明器具7も含まれる。
管理コンピュータ8は、支店のシステム全体を管理している。また、管理コンピュータ8は、例えば管理責任者が有するタブレット10Aやスマートフォン10B等の携帯端末と通信可能になっている。
また、管理コンピュータ8は、ネットワーク9を介して複数台の機器1〜7と接続されており、各機器1〜7との間で情報を送受するようになっている。特に、本実施形態に係る管理コンピュータ8は、各機器1〜7の稼働状態(つまり、電源のON/OFF)を監視するよう構成されている。例えば、出納機1の稼働状態が切り替わる度に、あるいは予め設定された一定時間毎に、現在の稼働状態を示す情報が、ネットワーク9を介して管理コンピュータ8へ送信されるようになっている。
(ネットワーク鍵の設定)
管理コンピュータ8は、各機器1〜7の稼働状態を示す情報を受信すると、その情報に基づいてネットワーク鍵データベースKを更新する。詳細は後述するが、ネットワーク鍵データベースKは、図5に示すように、複数台の機器1〜7のうち、予め指定された所定機器の稼働状態と、所定機器の稼働状態に基づいて決定されるネットワーク鍵情報と、から構成されている。管理コンピュータ8は、ネットワーク鍵データベースKからネットワーク鍵情報を読み込むと共に、そのネットワーク鍵情報を必要とする機器へ送信する。
そして、貨幣処理装置としての出納機1、貨幣保管装置2、及びオートキャッシャー3は、それぞれ、操作者によって貨幣を処理するよう指示されたときに、所定機器の稼働状態を示す情報(ネットワーク鍵情報)を管理コンピュータ8から受信すると共に、全ての所定機器が稼働していること(ネットワーク鍵情報が“OK”であること)を条件に、操作者による指示に従って貨幣を処理するよう構成されている。
その一方で、貨幣処理装置としての出納機1、貨幣保管装置2、及びオートキャッシャー3は、それぞれ、操作者によって貨幣を処理するよう指示されたときに、全ての所定機器が稼働していることを確認できなかった場合には、指示された処理を禁止するよう構成されている。
図3は、ネットワーク鍵の設定を示している。具体的に、図3には、ネットワーク鍵となる機器と、操作者によって貨幣を処理するよう指示されたときに、ネットワーク鍵を必要とする機器との対応関係を例示している。
ネットワーク鍵となる機器とは、前述の所定機器を指す。全ての所定機器が稼働しているとき、ネットワーク鍵情報が“OK”となる。ネットワーク鍵となる機器としては、電源ON/OFFが切り替わる頻度が相対的に低い機器(例えば、始業時から退社時にかけて電源ONのままにされる機器)であること、及び、貨幣処理システムMを構築する上で必須の機器であることが望ましい。
また、ネットワーク鍵を必要とする機器とは、ネットワーク鍵情報が“OK”であること、つまり、全ての所定機器が稼働していることを条件に、所定の処理を行う機器をいう。ネットワーク鍵を必要とする機器としては、出納機1のように貨幣を収納する機器であること(つまり、セキュリティの要求が相対的に高い機器であること)、及び、ネットワーク鍵となる機器と稼働期間が重複していることが望ましい。
図3の上段において「○」で示す項目は、ネットワーク鍵となる機器であることを示している。一方、「×」で示す項目は、ネットワーク鍵から除外された機器であることを示している。ここに示す例では、複数台の機器1〜8のうちの幾つかがネットワーク鍵を構成している。
また、図3の下段において「○」で示す項目は、所定の処理を行うときに、ネットワーク鍵を必要とする機器であることを示している。一方、「×」で示す項目は、貨幣を処理するときに、ネットワーク鍵が不要な機器であることを示している。ここに示す例では、前述の如く、複数台の機器1〜8のうち、貨幣処理装置としての出納機1、貨幣保管装置2、及びオートキャッシャー3がネットワーク鍵を必要とする。
例えば、管理コンピュータ8は、電源ON/OFFが切り替わる頻度が低く、貨幣処理システムMを構築する上で必須の機器であることから、ネットワーク鍵となる機器に設定されている。また、管理コンピュータ8は、貨幣を収容しない機器であることから、貨幣の処理を行う機器と比較して、セキュリティの要求が相対的に低い。そのため、管理コンピュータ8は、ネットワーク鍵が不要な機器に設定されている。
出納機1は、貨幣処理システムMを構築する上で必須の機器であることから、ネットワーク鍵となる機器に設定されている。また、出納機1は、貨幣を収容する機器であり、収容された貨幣に関する複数の機能を有している。それらの機能には、貨幣の払出しを伴う機能(例えば、出金系処理に関する機能)のように、セキュリティの要求が相対的に高い機能と、貨幣の払出しを伴わない機能(例えば、入金系処理に関する機能や、各種の設定等に関する機能)のように、セキュリティの要求が相対的に低い処理とが含まれている。そこで、出納機1は、そうした複数の機能の各々に対して、ネットワーク鍵を必要とするかしないかを個別に設定するよう構成されている。
具体的に、出納機1は、貨幣の払出しを伴う機能についてはネットワーク鍵を必要とする一方、貨幣の払出しを伴わない機能についてはネットワーク鍵を不要としている。尚、貨幣の払出しを伴わない機能のうち、出納機1の設定に関する機能についてはネットワーク鍵を必要とする、と変更することもできる。
貨幣保管装置2は、必須の機器ではないのでネットワーク鍵から除外されているものの、貨幣を収容する機器であることから、ネットワーク鍵を必要とする機器に設定されている。
オートキャッシャー3は、貨幣保管装置2と同様の理由によりネットワーク鍵から除外されているものの、貨幣を収容する機器であることから、ネットワーク鍵を必要とする機器に設定されている。
後方スペースSbに設置される監視カメラ4は、通常、稼働したままに保たれる機器であり、電源ON/OFFが切り替わる頻度が低いことから、ネットワーク鍵となる機器に設定されている。また、監視カメラ4は、貨幣を収容しない機器であることから、ネットワーク鍵が不要な機器に設定されている。
ATMコーナーの営業時間は、支店の有人窓口の営業時間よりも長い場合があり、他の機器とは稼働時間が異なることが想定される。そのため、両替機5は、ネットワーク鍵から除外されている。同様の事情から、両替機5は、ネットワーク鍵が不要な機器に設定されている。
ATMスペースに設定される監視カメラ6は、後方スペースSbに設置される監視カメラ4と同様に、ネットワーク鍵となる機器に設定されている。また、監視カメラ6は、貨幣を収容しない機器であることから、ネットワーク鍵が不要な機器に設定されている。
照明器具7は、通常の店舗の場合、営業時間中は電源ONのままにされる機器であり、電源ON/OFFが切り替わる頻度が低いため、ネットワーク鍵となる機器に設定されている。また、照明器具7は、貨幣を収容しない機器であることから、ネットワーク鍵が不要な機器に設定されている。
ネットワーク鍵の設定は、貨幣処理システムMを構築するとき、又は、その運用を変更するときに、管理コンピュータ8を操作することにより決定される。その決定は、管理コンピュータ8に限らずとも、例えば上位端末(例えば、本店や管理センターに設置された端末)を介して行ってもよいし、出納機1、貨幣保管装置2、及びオートキャッシャー3を介して行ってもよい。
また、ネットワーク鍵の設定は、図3に示すものに限られない。管理コンピュータ8や上位端末を操作することにより、下記の如くカスタマイズすることができる。
例えば、貨幣処理装置としての出納機1、貨幣保管装置2、及びオートキャッシャー3は、それぞれ、ネットワーク鍵を必要とするかしないか(所定機器が稼働していることを条件にするかしないか)を、適宜、切り替えることができる。例えば、出納機1はネットワーク鍵を必要とする一方、貨幣保管装置2とオートキャッシャー3とはネットワーク鍵を必要としない、と設定することができる。
また、貨幣処理システムMは、複数台の機器1〜8の各々について、ネットワーク鍵とするかしないか(所定機器とするかしないか)を、適宜、設定することができる。例えば、管理コンピュータ8をネットワーク鍵から除外したり、オートキャッシャー3もネットワーク鍵を構成するように変更したりすることができる。さらに、出納機1、貨幣保管装置2、及びオートキャッシャー3の各々について個別に、ネットワーク鍵の構成を変更することができる。
また、ネットワーク鍵を必要とする機器に設定した場合であっても、ネットワーク鍵情報が “OK”であるか否かをチェックするタイミング、及び、その頻度については、適宜、変更することができる。例えば、貨幣の処理を行うよう指示する度に、ネットワーク鍵情報を毎回チェックするようにしたり、一営業日における初回の処理時のみ、ネットワーク鍵情報をチェックするようにしたりすることができる。
尚、管理コンピュータ8、監視カメラ4,6、及び照明器具7を稼働させるときに、ネットワーク鍵情報とは異なるセキュリティ手段を利用してもよい。例えば、管理コンピュータ8を稼働させるときに、ID認証やパスワード入力といった権限認証を要求してもよい。
以下、ネットワーク鍵に関する処理の一例として、出納機1の電源ONに関する処理と、出納機1を利用した回収処理とについて詳細に説明する。
(出納機の電源ONに関する処理)
図4は、出納機1の電源ONに関する処理を例示するフローチャートである。
まず、ステップS101において、電源ONであるか否か、つまり、出納機1が稼働しているか否かを制御部100が判定する。この判定がNOの場合にはステップS101の判定に戻る一方、判定がYESの場合にはステップS102以降へ進む。
図5は、ネットワーク鍵データベースKを概念的に示す説明図である。図5に示すように、ネットワーク鍵データベースKには、ネットワーク鍵を構成する所定機器(この例では、管理コンピュータ8、出納機1、監視カメラ4,6、及び照明器具7)の電源ON/OFF情報と、それに基づいて決定されるネットワーク鍵情報とが記録されている。
ステップS102において、制御部100は、出納機1が稼働していることを示す情報(電源ON情報)を出力する。その情報は、ネットワーク9を介して管理コンピュータ8へ送信される。管理コンピュータ8は、受信した電源ON情報に基づいて、ネットワーク鍵情報データベースKを更新する。図5に示す例では、出納機1の電源ON情報がデータベースに反映された結果、ネットワーク鍵情報が“NG”から“OK”に切り替わるようになっている。
ステップS103において、制御部100は、出納機1のイニシャル処理を実行する。
制御部100がイニシャル処理を実行したところ、特段の異常が無いと判定された場合(ステップS104:YES)には待機状態へ移行して(ステップS105)フローを終了する一方、異常が有ると判定された場合(ステップS104:NO)には、そのことを外部へ報知する(ステップS106)。後者の場合、制御部100は、出納機1の異常に対応するための処理(異常対応処理)を実行して(ステップS107)、待機状態へ移行する(ステップS105)。
尚、図示は省略するが、制御部100は、出納機1が電源ONから電源OFFへ切り替わったとき、そのことを示す情報(電源OFF情報)を管理コンピュータ8へ送信する。管理コンピュータ8は、受信した電源OFF情報に基づいて、鍵情報データベースKを更新する。この場合、出納機1の電源OFF情報がデータベースに反映されると、ネットワーク鍵情報は“NG”となる。
(出納機による処理)
続いて、出納機1による処理の一例として、回収処理について操作表示部14に表示される画面を参照しながら説明をする。尚、以下の説明に用いる画面は一例であり、その画面構成は、適宜、変更することができる。
図6は、回収処理に関する画面遷移の例示である。まず、制御部100は、操作受付前の初期画面として、所定の情報が配置された待機画面D1を表示する。この待機画面D1は、出納機1を起動した後、操作受付前の待機時、又は、操作者の接近を検知したときに、操作表示部14に表示される。待機画面D1には、金種毎の在高情報が棒グラフ等で表示されている。また、この待機画面D1には、操作表示部14への接触を促すメッセージが表示されている。操作者が操作表示部14に触れることで、制御部100に実行させる処理を選択するメニュー画面D3へ遷移するようになっている。ただし、操作者の認証が済んでいない場合には、メニュー画面D3に先だって、操作者のID(図例では、“担当者番号”と表示)を入力するための入力画面D2に遷移する。
入力画面D2にはテンキーが配置されており、操作者は、配置されたテンキーを介してIDを手入力する。尚、テンキーを用いた入力以外にも、IDカード等の記録媒体を読み取らせてもよい。入力したIDが認証されると、入力画面D2からメニュー画面D3へ遷移する。
メニュー画面D3には、いずれかの機能を選択するためのボタンが配置されている。具体的に、図6に示す例では、各処理に対応するボタンとして、「入金」、「出金」、「あるだけ入金」、「両替」、「入出金」、「ユーザーメニュー」、「装填」、「回収」、「管理業務」、「照合」、「取消」、及び、「メンテナンス」が配置されている。「回収」を選択すると、操作者が貨幣の回収を指示したものとして、出納機1が回収処理を実行するようになっている。
ここで、回収処理とは、出納機1内に収納された貨幣を払い出すことにより、出納機1から貨幣を回収する処理をいう。回収対象とする金種については、適宜、設定することができる。
前述の如く、回収処理を含む出金系処理は、出納機1においてネットワーク鍵を必要とする処理である。そのため、回収処理が指示されると、制御部100は、管理コンピュータ8に対してネットワーク鍵情報を問い合わせる。問い合わせの最中、操作表示部14には確認画面D4が表示されるようになっている。管理コンピュータ8は、ネットワーク鍵データベースKに記録されたネットワーク鍵情報をチェックする共に、チェック結果を制御部100に返信する。
図7は、管理コンピュータ8からOK回答を受けたとき、つまり、ネットワーク鍵情報が“OK”である旨を受信したときの画面遷移の例示である。このとき、制御部100は、操作表示部14上に回収処理の開始画面D5を表示する。
開始画面D5には、現在の在高と、回収開始ボタンとが表示されている。現在の在高は、回収対象とされた金種について、記憶部17が記憶している在高情報であって、例えば、金種毎の金額と、全金種の合計額とが表示されるようになっている。図例では、1万円札の在高と、500円硬貨の在高とが表示されている。回収開始ボタンが押下されると、制御部100が回収処理を開始する。
回収処理が開始されると、制御部100は、回収処理中の表示画面D6として、操作表示部14上に回収処理の進捗状況を表示する。詳しくは、その表示画面D6には、所定の回収処理が進行中であること(図例では、“全回収中”と表示)と、その進捗状況を示すパーセンテージとが配置されている。バラ紙幣が払い出されたり、帯封紙幣が払い出されたりすると、払い出された紙幣の抜き取りを促すべく、表示画面D6からガイド画面D7へ遷移する。
ガイド画面D7には、紙幣の抜き取りを案内する情報が配置される。紙幣が抜き取られると、今度は、払い出された硬貨の抜き取りを案内する情報が配置された画面(不図示)へ遷移する。そして、回収対象とされた紙幣と硬貨とが双方とも全て抜き取られた場合には、回収処理を完了したものとして印字画面D8へ遷移してレシートを印字する。
印字画面D8には、レシートが印字された旨が表示されている。レシートには、回収処理に関する種々の情報が印字されている。操作者がレシートを取得すると、制御部100は回収処理を完了する。
一方、図8は、管理コンピュータ8からNG回答を受けたとき、つまり、ネットワーク鍵情報が“NG”である旨を受信したときに表示される画面D9の例示である。このとき、制御部100は、不正な操作を検出したものとして貨幣の回収を禁止する。それと共に、制御部100は、貨幣の回収を禁止した旨を管理コンピュータ8へ報知する。この場合、制御部100は、ネットワーク鍵情報を再度問い合わせてもよい。尚、ネットワーク9の不具合等の事情から、管理コンピュータ8からいずれの回答も得られなかったときにも、制御部100は同様の処理を行う。
次に、図9に示すフローチャートを参照しながら、出納機1の処理に関する制御手順を具体的に説明する。
まず、ステップS201において、制御部100が操作者のIDを取得する。すなわち、本実施形態に係る出納機1は、操作者が貨幣の処理を指示するときに、その操作者に対して権限認証を要求するよう構成されており、その権限認証に関する処理をこのステップS201において行うようになっている。このとき、操作表示部14上には、前述の入力画面D2が表示される。
ステップS202において、制御部100は、ステップS201で取得したIDを認証する。そのIDが認証された場合(ステップS202:YES)には、ステップS204へ進む一方、IDが認証されなかった場合(ステップS202:NO)には、ステップS203へ進む。後者の場合、制御部100は、操作表示部14上に警告を表示(ステップS203)した後、ステップS201の判定に戻るようになっている。
ステップS204において、制御部100は、操作表示部14上にメニュー画面D3を表示する。操作者がメニュー画面D3を操作した結果、出納機1に実行させる処理が選択されると、制御部100はステップS205へ進む。
ステップS205において、制御部100は、ステップS204で選択された処理が、ネットワーク鍵を必要とする処理(図例ではネットワーク鍵対象処理と記載)に該当するか否かを判定する。具体的に、制御部100は、ステップS204において出金系処理が選択されたか否かを判定する。そのような判定を行った結果、ネットワーク鍵を必要とする処理に該当した場合(ステップS205:YES)には、ステップS206へ進み、ネットワーク鍵に関連する処理を実行する。その一方で、ネットワーク鍵を必要とする処理に該当しなかった場合(ステップS205:NO)には、ステップS214へ進み、ネットワーク鍵に関連する処理を実行することなく、ステップS204で選択された処理を実行してフローを終了する。ステップS214に示す処理は、ステップS204で入金系処理を選択したとき(例えば、外回り担当者が営業時間外に帰社して入金するとき)に実行される。
ステップS206において、ネットワーク鍵制御部101は、記憶部17の記憶内容に基づいて、ネットワーク鍵情報を毎回チェックするように設定されている否かを判定する。この判定がNOの場合つまり、ネットワーク鍵情報を初回の処理時のみチェックするように設定されていた場合には、ステップS207に進んでチェック済か否かを判定する一方、YESの場合つまり、貨幣を処理するよう指示するたびに、ネットワーク鍵情報をチェックするよう設定されていた場合には、ステップS207をスキップしてステップS208へ進む。
ステップS207において、ネットワーク鍵制御部101は、ネットワーク鍵情報をチェック済か否かを判定する。具体的に、ネットワーク鍵制御部101は、記憶部17に記憶されたチェックフラグを確認し、そのチェックフラグが立っているか否かを判定する。この判定がNOの場合つまり、チェックフラグが立っていなかった場合には、ネットワーク鍵制御部101は、ステップS208〜S209を順番に実行することによりネットワーク鍵情報をチェックする。その一方で、判定がYESの場合つまり、チェックフラグが既に立っていた場合には、ネットワーク鍵情報を改めてチェックする必要が無いものとして、ステップS208〜S209をスキップしてステップS210へ進み、回収処理を実行する。後者の場合、制御部100は、操作表示部14上に確認画面D4を表示することなく、メニュー画面D3から開始画面D5に遷移する。
ステップS208において、ネットワーク鍵制御部101はネットワーク鍵情報をチェックする。具体的に、ネットワーク鍵制御部101は、管理コンピュータ8に対してネットワーク鍵情報を問い合わせる。管理コンピュータ8は、ネットワーク鍵データベースKからネットワーク鍵情報を読み込むと共に、読み込んだ情報に基づいた回答(具体的には、ネットワーク鍵情報が“OK“であることを示すOK回答、又は、“NG”であることを示すNG回答)をネットワーク鍵制御部101へ返信する。
ステップS209において、ネットワーク鍵制御部101は、管理コンピュータ8からOK回答を受信したか否かを判定する。この判定がYESの場合つまり、OK回答を受けた場合、ネットワーク鍵制御部101は、ステップS210に進んで回収処理を実行する。この場合、制御部100は、操作表示部14上に開始画面D5を表示する。一方、判定がNOの場合つまり、NG回答を受けた場合、又は、ネットワーク9の不具合等の事情からいずれの回答も得られなかった場合、ネットワーク鍵制御部101は、不具合や不正等の異常を検出したものとして、ステップS212へ進んで回収処理を禁止する。
尚、ステップS209でOK回答を受けた場合(ステップS209:YES)、ネットワーク鍵制御部101は、ステップS210へ進む前に、チェックフラグを立てる。チェックフラグを示す情報は、記憶部17に記憶される。
ステップS210において、制御部100は、紙幣処理機11及び硬貨処理機12を介して回収処理を実行する。このとき、操作表示部14上には、開始画面D5と、回収処理中の表示画面D6とが表示されるようになっている。回収処理を完了すると、制御部100は、操作表示部14上にガイド画面D7を表示すると共に、ステップS211へ進んでレシートを印字する。
ステップS211において、制御部100は、印字部15を介してレシートを印字すると共に、操作表示部14上に印字画面D8を表示する。レシートが抜き取られると、制御部100はフローを終了する。
一方、ステップS212において、制御部100は、貨幣の回収を禁止すると共に、操作表示部14上に警告を表示する(図8の画面D9を参照)。
続くステップS213において、制御部100は、貨幣の回収が禁止された旨(NG情報)を、通信インターフェース部18を介して管理コンピュータ8へ送信する。管理コンピュータ8は、NG情報を受信した旨を予め登録された連絡先(タブレット10A、スマートフォン10B、及び、警備会社等)へ送信することにより、検出した異常に対応する。このとき、管理コンピュータ8は、NG情報と共に、監視カメラ4により撮像された画像データを記憶部17に保存するようになっている。尚、制御部100は、管理コンピュータ8を介することなく、タブレット10A、スマートフォン10B、及び、警備会社等の連絡先へNG情報を直接送信してもよい。また、連絡を受けた装置(タブレット10A、スマートフォン10B、及び、警備会社の端末等)から、出納機1の操作情報や監視カメラ4の画像データを確認することができる。
(まとめ)
以上説明したように、貨幣処理装置としての出納機1を用いて貨幣を処理するためには、その出納機1ばかりでなく、所定機器としての管理コンピュータ8、監視カメラ4,6、及び、照明器具7も稼働していなければならない。営業時間内であれば、それら所定機器も稼働しているため、出納機1は、貨幣を処理することができる。しかし、営業時間外で出納機1のみが稼働している状況であれば、出納機1は、貨幣の処理を行わない。したがって、出納機1の不正な使用を防止することができるから、出納機1のセキュリティを強化することができる。
また、仮に営業時間外に出納機1から貨幣を不正に入手しようとする者は、出納機1以外の所定機器も操作しなければならない。そうすると、複数の機器を操作した分だけ、その者は、より多くの痕跡を残すことになる上、操作に長い時間が必要になる。貨幣を不正に入手しようとする者からすれば、より多くの痕跡を残すことや、より長い時間を掛けることは極力避けたいものと考えられる。このように、複数の機器を操作するように求めたことで、出納機1のセキュリティを強化することができる。
また、操作者が貨幣の処理を指示するときに、その操作者に対して権限認証を要求する分、出納機1のセキュリティは高くなるが、権限認証だけでは防止できないような不正な使用を、所定機器の稼働を条件とすることによって防止することができる。
また、出納機1は、所定機器が稼働していることを確認できなかった場合(図9のステップS209:NO)、貨幣の処理が禁止されるようになっている。これにより、例えば、現金を不正に入手するべく、業務時間外に出納機1のみを稼働して操作をすると、不正な操作を検出したものとして、貨幣の払出を禁止することができる。そのことで、出納機1のセキュリティを強化する上で有利になる。
また、出納機1は、例えば不正な操作を検出した結果、貨幣の払出を禁止したときに、そのことをタブレット10Aやスマートフォン10Bへ報知する。これにより、出納機1のセキュリティを強化する上で有利になる。
また、出納機1は、所定機器が稼働していることを条件にするかしないかを、適宜、変更することができる。そのことで、例えば、営業時間内において、初回の出金時のみ、ネットワーク鍵情報を確認するように設定し、その後、営業時間の終了時までは、ネットワーク鍵情報を確認しないように構成することが可能になる。これにより、出納機1のセキュリティの強化を図りつつも、その利便性を確保することができる。
また、出納機1は、各機能を実現する処理について、所定機器が稼働していることを条件にするかしないかを個別に設定することができる。具体的に、図3に例示するように、出納機1は、貨幣の払出しを伴う機能つまり、出金系処理のように相対的に高いセキュリティが求められる処理については、所定機器が稼働していることを条件に実行する一方、貨幣の払出しを伴わない機能つまり、入金系処理のように、それほど高いセキュリティが求められない処理については、そうした稼働状態とは関係無く実行することが可能になる。これにより、出納機1の利便性を確保することができる。
また、貨幣処理システムMは、複数台の機器1〜8について個別に、その稼働状態に応じて貨幣の処理を実行可能とするか否かを設定することができる。これにより、例えば、照明器具7や監視カメラ4,6のように、少なくとも営業時間内において常時稼働していることが前提とされる機器については所定機器とする一方、営業時間内においても電源が適宜ON/OFFされる可能性のある機器については所定機器から除外することが可能になる。そのことで、出納機1の利便性を確保することができる。
また、照明器具7を所定機器にすることで、例えば、照明器具7が点灯していることを条件に、出納機1によって貨幣を処理するよう構成することが可能になる。営業時間内であれば照明器具7は常時点灯している。照明器具7が点灯していることを条件に、出納機1が貨幣を処理することによって、不正な使用を防止することができる。
また、監視カメラ4,6を所定機器にすることで、例えば、出納機1が監視カメラ4によって監視されていることを条件に、出納機1によって貨幣を処理するよう構成することが可能になる。出納機1を監視すると、その分、セキュリティを強化することができる。このように、出納機1のセキュリティを強化する上で有利になる。
《他の実施形態》
前記実施形態では、金融機関の支店に構築された貨幣処理システムMを例示したが、図10に示すように、複数店舗を連携させたシステムとしてもよい。このシステムの場合、本店の管理コンピュータ8’と、支店の管理コンピュータ8とがネットワークを介して接続されることになる。
このように構成すると、例えば、休日に出勤した操作者が、メンテナンスなどの目的で支店の出納機1を操作したときに、その支店においてはネットワーク鍵情報が“NG”であったとしても、本店においてネットワーク鍵情報が“OK”であれば、貨幣の処理を行うことができる、とすることができる。このように、複数店舗を連携させることで、セキュリティを確保しつつも、利便性の向上を図ることができる。
また、ネットワーク鍵の設定については、前述のものに限られない。上位権限を有する者の承認のもと、指定された期間や機器について、ネットワーク鍵を不要とするように事前登録してもよい。例えば、店舗の閉店日であってネットワーク鍵情報が“NG”の状況であっても、VIP顧客に出金することが求められた場合には、指定した期間において、ネットワーク鍵を不要にする登録を事前に行うことによって、出納機1による出金を可能にすることができる。
また、前記実施形態では、出納機1の電源ON/OFFが切り替わったときに、ネットワーク鍵データベースKを更新するように構成されていたが、この構成には限られない。例えば、管理コンピュータ8が、各機器1〜8の稼働状態を定期的に確認し、ネットワーク鍵データベースKを随時更新するように構成してもよい。
また、前記実施形態では、出納機1に実行させる処理が選択されたときに、管理コンピュータ8に対してネットワーク鍵情報を問い合わせるよう構成されていたが、その構成には限られない。例えば、出納機1が管理コンピュータ8にネットワーク鍵情報を定期的に問い合わせて保存すると共に、操作者が出納機1を操作したときに、保存された確認結果を参照するよう構成してもよい。
また、管理コンピュータ8に対してネットワーク鍵情報を問い合わせた結果、OK回答を受けた後の処理についても、適宜、変更することができる。例えば、出納機1は、管理コンピュータ8からOK回答を受けたとき、そのことを記憶部17に記憶すると共に、記憶してから所定時間内であれば、問い合わせ無しに処理を行うよう、構成することができる。この場合、所定時間を一営業日に設定してもよい。そのように設定した場合、ネットワーク鍵情報を問い合わせる回数は、一日一回となる。
また、前記実施形態では、出納機1は、各機器1〜8の稼働状態を示すネットワーク鍵情報を管理コンピュータ8から受けるよう構成されていたが、この構成には限られない。
すなわち、出納機1は、操作者によって貨幣を処理するよう指示されたときに、ネットワーク鍵情報を管理コンピュータ8から受けるのではなく、所定機器に指定された機器から直に受ける、としてもよい。その為に、所定機器に指定される各機器は、他の機器(例えば、出納機1)から問い合わせを受けた際に、自機の稼働状態を示す情報を返信する機能を有している。この場合、ネットワーク鍵情報を受けた出納機1は、全ての所定機器が稼働していることを条件に、操作者による指示に従って貨幣を処理することになる。したがって、所定機器に指定された機器の中に稼働状態にない機器が存在する場合は、当該機器からの返信が無いため、出納機1は貨幣を処理することができない。
このように、管理コンピュータ8で一括管理する方式ではなく、各機器を利用するときに、ネットワーク鍵を構成している全ての所定機器へ直接問い合わせる方式を用いることができる。この方式を用いた場合、ネットワーク鍵を必要とする各機器には、ネットワーク鍵データベースKに対応するデータベースが個別に記憶されることになる。