(A)第1の実施形態
以下、本発明による取引装置を、自動取引装置(ATM)に適用した第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係る自動取引装置1の外観を示す斜視図である。図1は、後述する出没自在な暗証番号入力部8が突出状態にある場合を示している。
第1の実施形態の自動取引装置1は、表示・入力部2、紙幣入出金口3、硬貨入出金口4、カード出入口5、通帳出入口6、生体読取部7、暗証番号入力部8などを有する。
顧客に対向する自動取引装置1の前面は概ね階段状になっている。中間の水平面(操作面)には、表示・入力部2、紙幣入出金口3、硬貨入出金口4及び生体読取部7が設けられており、水平面の奥側より上方に立ちあがっている上方前面にはカード出入口5及び通帳出入口6が設けられており、水平面の手前側より下方に向かっている下方前面9には暗証番号入力部8が設けられている。
表示・入力部2は、表示部とタッチパネル式の入力部とを備え、顧客の操作により各種の入力を行なうと共に、操作ガイダンス等が表示されるものである。なお、第1の実施形態の場合、暗証番号の入力には表示・入力部2は用いられない。
紙幣入出金口3は、紙幣が投入されると共に、紙幣が排出される開口部である。紙幣入出金口3にはシャッタが設けられ、シャッタが駆動されることにより紙幣入出金口3が開閉される。
硬貨入出金口4は、硬貨が投入されると共に、硬貨が排出される開口部である。硬貨入出金口4にもシャッタが設けられ、シャッタが駆動されることにより硬貨入出金口4が開閉される。
カード出入口5は、取引で使用されるカード(磁気カード、ICカードなど記録方式は問われない;キャッシュカード、クレジットカードなど発行元は問われない)がここから挿入され、取引が終了するとカードが排出される出入り口である。なお、カード出入口5から、取引内容が記載された明細票が排出されることもあり得る。
通帳出入口6は、取引で使用される通帳がここから挿入され、取引が終了すると通帳が排出される出入り口である。
生体読取部7は、認証方式として生体認証方式を適用する顧客の生体情報を読取るものである。生体認証の種類は、問われないものである。
暗証番号入力部8は、認証方式として、暗証番号の照合による方式を適用する顧客に暗証番号を入力させるためのものである。この第1の実施形態の場合、暗証番号入力部8は、下方前面9に出没自在に設けられている。暗証番号入力部8は、下方前面9から突出した突出状態、若しくは、当該自動取引装置1の筐体内に収容されて下方前面9と同一面となる収容状態のいずれかの状態をとるものである。下方前面9は、暗証番号入力部8の出没を許容するための窓部9aを有している。ここで、下方前面9は固定されていて可動しないものであっても良く、また、保守時に中を確認できるようにするために右端若しくは左端を回動中心として回動し得る扉になっていても良い。
暗証番号入力部8は、例えば、下方前面9の左右方向には中央であって、下方前面9の上下方向には最上部に設けられている。左右方向については中央に設けると、顧客(操作者)の身体によって暗証番号入力部8が隠れて入力中の暗証番号を第3者が盗み見できなくなり、また、右利き、左利きの顧客共に容易に暗証番号を入力することができる。上下方向について最上部に設けると、操作面に設けられている表示・入力部2と、暗証番号入力部8の後述する操作部11との高さが同様となり、暗証番号を入力している顧客が無理な姿勢を取らなくても済むようにできる。
暗証番号入力部8は、回動体10と、操作部11とを有する。回動体10は、その外郭が概ね4角柱形状をしている。第1側面10aが収容状態において下方前面9と同一面となる面であり、第3側面10cが操作部11が設けられた面であり、第2側面10bが第1側面10aと第3側面10cとを連結する円柱の側面の一部と同様な面であり、図1では図示を省略している第4側面(後述する図2及び図3の10d参照)が第1側面10aと第3側面10cとを連結する、第2側面10bと対向側の面である。
図2及び図3はそれぞれ、暗証番号入力部8を出没させる駆動機構を示す説明図である。図2及び図3はそれぞれ、図1のA−A線の方向から暗証番号入力部8及びその周辺を見た図面(側面図)であり、図2は暗証番号入力部8が収容状態の図面であり、図3は暗証番号入力部8が突出状態の図面である。
図3に示すように、操作部11が設けられている回動体10の第3側面10cは、突出状態において、手前側の方が奥側より高くなっている。これによっても、第3者から操作部11が見難いものとなっている。
回動体10の第1側面10aと第4側面10dとの連結部近傍であって、下方前面9の内側には、回動体10の回動中心となっている回転軸部材20が設けられている。回動体10は回転軸部材20に固定されている。回転軸部材20は、図示しない軸受け部材により、正逆自在に回転し得るものである。図2及び図3において、2つの1点鎖線の交点が回動体10の回動中心を表している。また、2点鎖線が、回動中心から最も遠い、回動体10の第2側面10bの回動軌跡を含む円を表している。第2側面10bは、この円と同じ径の外周を有する円筒体の側面の一部を切り出した曲面を有している。これにより、回動体10の時計回り方向の回動も反時計回り方向の回動も、外部と接触することなく、滑らかに実行させることができる。
回転軸部材20は、例えば、円筒体でなり、その外周の一部には図示しない開口が設けられており、操作部11に繋がっていて回転体10の中を通過している信号線が回転軸部材20の円筒体の中に入るようになっている。回転軸部材20の両端若しくは一端は開放されており、その開放端から円筒体内部を延びている信号線が外部に出るようになされており、これにより、信号線が後述する主制御部40(図6参照)に接続できるようになっている。上述した軸受け部材としては、開放端から信号線が外部に出ることを邪魔することがない構成のものが適用される。回転軸部材20は、回動体10(従って、暗証番号入力部8)の突出状態から収容状態への変化、若しくは、収容状態から突出状態への変化を作り出すだけ、時計回り方向又は反時計回り方向に回動するものであって、回動角が小さく、しかも、時計回り方向の回動と反時計回り方向の回動とが交互に生じるので、信号線を回転軸部材20の円筒体の中を通すようにしても、信号線が断線するようなことを防止できている。
なお、操作部11と主制御部40(図6参照)との信号授受に無線(光通信を含む)を利用するようにしても良い。
回転軸部材20には、A−A線の方向から見た形状が扇形のギヤ21が固定されており、ギヤ21の回動によって回転軸部材20が回動し、回転軸部材20の回動によって回動体10が回動するようになっている。ギヤ21は、円形のものであっても良いが、回動角が小さいので、上述したように扇形で十分である。回転軸部材20の回動によって、回動体10は回動するが、これに加え、ギヤ21における扇形の一方の径方向の辺を回動体20の第4側面10dに固着させ、ギヤ21から直接、回動体10へ回動力を付与するようにしても良い。
回動体10を回動させる原動力を、自動取引装置1の筐体内に固定されたモータ22が生じる。モータ22は、正逆回転可能なものであり、後述する主制御部40(図6参照)が回転量を制御し易い、例えば、ステッピングモータを適用し得る。モータ22の回転軸には、ギヤ23が設けられている。また、モータ22として、回転していないときに内蔵するブレーキが働いて回転軸の回転を阻止するものを適用することは好ましい。
第1の実施形態の場合、ギヤ23はギヤ21に直接、噛合しておらず、これらギヤ23及び21間に減速のための構成が設けられている。減速は、回動体10(従って、暗証番号入力部8)の突出状態から収容状態への変化や、収容状態から突出状態への変化をゆっくりさせ、顧客を驚かせたり回動体10の位置変化で顧客に怪我を負わしたりすることをなくすための手法である。ギヤ23及びギヤ21を直接噛合させた場合であっても、ギヤ23の径をギヤ21の径より小さくすることで減速できるが、第1の実施形態の場合、より減速させるために、減速のための構成を設けている。
ギヤ21には、ギヤ21より小径のギヤ24が噛合している。ギヤ23には、ギヤ23より大径のギヤ25が噛合している。ギヤ24及びギヤ25は、回転軸が共通になっている。この回転軸は、図示しない軸受け部材によって回転自由になっている。モータ22の回転軸に設けられているギヤ23の回転は、ギヤ25に伝達され、ギヤ25はギヤ23より遅い回転速度で回転する。ギヤ24及びギヤ25は、回転軸が共通になっているので、ギヤ24はギヤ25と同じ回転速度で回転する。ギヤ24の回転は、ギヤ21に伝達され、ギヤ21はギヤ24より遅い回転速度で回転する。以上のように、ギヤ23及びギヤ25間のギヤ比による減速と、ギヤ24及びギヤ21間のギヤ比による減速との2段の減速によって、モータ22の回転速度が大きく減速されて回動体10の回動速度になる。
なお、モータ22の定格の回転速度が低速のものであれば、減速のための構成を省略することができる。また、モータ22が外部からの制御信号によって回転速度を変化できるものであれば、モータ22の回転速度の設定によって、減速のための構成を省略することができる。
図2及び図3では、モータ22による原動力を回動体10に、ギヤ同士の噛合を通じて伝達するものを示したが、他の動力伝達機構を適用するようにしても良い。例えば、プーリとベルトとによって動力を伝達するようにしても良く、また、スプロケットとチェーンとによって動力を伝達するようにしても良い。例えば、モータ22の回転軸にプーリを取り付けると共に、ギヤ25が設けられる回転軸に、ギヤ25に代えてプーリを設け、これらプーリ間にベルトを巻回して動力を伝達させるようにしても良い。同様に、モータ22の回転軸にスプロケットを取り付けると共に、ギヤ25が設けられる回転軸に、ギヤ25に代えてスプロケットを設け、これらスプロケット間にチェーンを巻回して動力を伝達させるようにしても良い。
この第1の実施形態の場合、回動体10の収容状態において、顧客等が回動体10を引き出そうとしてもそれを阻止するロック構成が設けられている。このロック構成は、回動体10の収容状態から突出状態の変化や、回動体10の突出状態から収容状態の変化には影響を与えることなく、回動体10の引き出しを阻止できる。
図4及び図5はそれぞれ、このようなロック機構を示す説明図である。図4及び図5はそれぞれ、図1のA−A線の方向から暗証番号入力部8及びその周辺を見た図面(側面図)であり、図4は暗証番号入力部8が収容状態の図面であり、図5は暗証番号入力部8が突出状態の図面である。
ここで、図4及び図5も、図2及び図3も、図1のA−A線の方向から見た図面であり、回転軸の軸方向に並設された構成要素は、実際上、一方が他方を隠すことがあるものである。しかし、説明の便宜上、図4及び図5も、図2及び図3も、その軸方向に沿った前後関係の図示は省略し、図4及び図5は、暗証番号入力部8をロックさせる駆動機構に焦点を当てて記載し、図2及び図3は、上述したように暗証番号入力部8を出没させる駆動機構に焦点を当てて記載している。
図4又は図5において、回動体10の第3側面10cと第4側面10dとの境界近傍には、第3側面10cより突出する突起(又は突条)30が設けられている。回動体10の収容状態において、回動体10を引き出そうとしても、この突起30に、後述するロックブラケット32の爪部32cが引っ掛かることで回動体10の突出を阻止し得るようになされている。
ギヤ24及びギヤ25が設けられている回転軸には偏芯カム31も設けられており、また、偏芯カム31の回転運動を直動運動に変換するためのロックブラケット32が設けられている。ロックブラケット32は、固定的に設けられている環状のガイド33によって、上下方向にのみ移動し得るものである。ロックブラケット32は、偏芯カム31の外周面に接するカム接触部32aと、カム接触部32aから上方に延びていてガイド33によって周囲が囲繞されて上下方向に移動する移動部32bと、移動部32bの上部に設けられていて上記突起30の移動を阻止する爪を有する爪部32cと、バネ部材34の一端を取り付けているバネ取付部32dとを有する。バネ部材34の他端は固定されている。バネ部材34は、例えば、スプリングコイルでなり、偏芯カム31の外周面とカム接触部32aとの接触を保証、確定させるための引張り力を付与しているものである。バネ部材34に代えて、他の弾性部材(例えば、ゴム)を適用するようにしても良い。また、ロックブラケット32の自重によって、偏芯カム31の外周面とカム接触部32aとの接触を保証、確定できるならば、バネ部材34を省略するようにしても良い。
偏芯カム31は回転軸に対して以下のように取り付けられている。偏芯カム31の回転によって、偏芯カム31の中心とカム接触部32aとの距離は変化するが、回転軸が回転する角度範囲の中で、回動体10が収容状態にあるときに、偏芯カム31の中心とカム接触部32aとの距離が最も短く、回動体10が突出状態にあるときに、偏芯カム31の中心とカム接触部32aとの距離が最も長くなるように、偏芯カム31が回転軸に取り付けられている。
図4に示す回動体10の収容状態においては、突起30と爪部32cとは回動方向に多少の遊び(遊び角度)を持って近接している。回動体10を収容状態から突出状態に変化させるべくモータ22が回転すると、偏芯カム31も回転を始めてロックブラケット32が徐々に上動し、やがて、爪部32cが突起30と接触しない位置まで移動していく。モータ22の回転によって回動体10も徐々に突出していくが、上述した遊びのために、突起30が爪部32cの所に行く頃には、爪部32cが突起30と接触しない位置まで移動しており、突起30と爪部32cとが突出方向の回動を邪魔することはない。
突出状態から収容状態への変化のための回動時においても、同様に、偏芯カム31が同様な回転角のときには、爪部32cが突起30の上方を通過する。さらに、偏芯カム31が回動すると、爪部32cが一段と下降し、突起30と接触しえる位置になる。
収容状態において、回動体10を突出させる外力が加わってギヤ21が回動したとしても、ギヤ21とギヤ24とのバックラッシュにより、ギヤ24、従って、偏芯カム31は直ちには回転を始めない。そのため、ロックブラケット32が上動せず、突起30が爪部32cに引っ掛かり、回動体10の突出を阻止できる。
以上のように、顧客等が回動体10を引き出そうとしてもそれを阻止するロック構成が、収容状態及び突出状態間の本来の変化では邪魔することがないように変化させるための駆動力も、モータ22の原動力を利用しており、別途、原動力を生じる構成を不要としている。
下方前面9が回動し得る扉になっている場合において、暗証番号入力部8や、暗証番号入力部8を駆動させたりロックさせたりする機構を全て、扉以外の部分に設けるようにしても良く、また、一部を扉側に設けるようにしても良い。例えば、扉の開閉でも、ギヤ21及びギヤ24の噛合を確保できるならば、暗証番号入力部8、回転軸部材20、ギヤ21を扉側に設けるようにしても良い。
図6は、第1の実施形態の自動取引装置1における制御系の構成を示すブロック図である。
図6において、自動取引装置1は、各部の制御を司る主制御部40、上述した表示・入力部2、上述した生体読取部7、上述した暗証番号入力部8の操作部11、キャッシュカード等のカードに記録された情報のリードライトを行うカード処理部41、操作ガイダンス等を音声出力する音声案内部42、通帳の磁気ストライプのリードライトや通帳への印字制御を行う通帳処理部43、取引明細を明細票に印字して排出する明細票処理部44、紙幣の取込みや排出を制御する上述した紙幣処理部45、硬貨の取込みや排出を制御する硬貨処理部46、暗証番号入力部8の状態変化を実行させる回動制御部47を有する。また、自動取引装置1は、各部に電源を供給する電源部48、主制御部20の記憶部としてのメモリ部49、図示しない当該金融機関のホストコンピュータとのインタフェースを制御するインタフェース部50を有する。
主制御部40は、例えば、主にマイクロコンピュータなどで構成されており、当該自動取引装置1の動作全体を制御するものである。メモリ部49は、例えば、プログラムメモリやワーキングメモリや設定データメモリでなる。主制御部40は、プログラムメモリに格納されているプログラム(後述する図7参照)や設定データメモリに設定されているデータに従い、ワーキングメモリを、情報を一時的に記憶するメモリとして用いながら、各部を制御する。
回動制御部47は、主制御部40の制御下で、モータ22の回転(回転方向、回転速度、回転量)を制御するものである。
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態に係る自動取引装置1の動作を説明する。以下では、顧客を認証する処理を伴う取引が選択された場合の動作を説明する。以下では、その取引が出金取引であるとして説明を行う。
図7は、第1の実施形態の自動取引装置1における特徴処理を強調した出金取引の流れを示すフローチャートである。
主制御部40は、取引を選択させる待機画面を表示・入力部2に表示させていた状態で出金取引が選択されると、図7に示す処理を開始する。なお、待機時においては、暗証番号入力部8は収容状態にある。図7に示す処理を開始するとまず、主制御部40は、通帳及び又はキャッシュカードの挿入を促す表示を行い、顧客が挿入した通帳やキャッシュカードからの情報を取り込む(ステップS100)。生体認証を行う顧客か暗証番号入力による認証を行う顧客かを判別し、それに応じた認証を行うが、図7では、そのような判別ステップや生体認証を行う場合の流れの図示を省略している。
暗証番号の入力による認証を行う顧客であれば、主制御部40は、暗証番号入力部8を突出移動させる旨を顧客に通知し(ステップS101)、その後、暗証番号入力部8を突出状態に移動させる(ステップS102)。この通知は、例えば、表示・入力部2に対する、暗証番号入力部8が開く案内イラストの表示による通知であっても良く、また、これに加え、音声ガイダンスによる通知であっても良い。暗証番号入力部8の突出状態への変化では、主制御部40は、上述のように、モータ22を所定量だけ突出方向に回転させることになる。
暗証番号入力部8が突出状態になると、主制御部40は、暗証番号入力部8に対して暗証番号を入力することを顧客に求める旨を表示させ、それに応じて、顧客が入力した暗証番号を取り込む(ステップS103)。そして、主制御部40は、入力された暗証番号がその顧客について登録されている正規の暗証番号か否か、言い換えると、認証OKか認証NGかを判別する(ステップS104)。
認証NGの場合には、主制御部40は、認証NGの連続回数が所定回数に達したか否かを判別し(ステップS105)、達していなければ、上述したステップS103に戻って暗証番号を再入力させる。これに対して、認証NGの連続回数が所定回数に達すると、主制御部40は、出金取引を強制終了する旨と、暗証番号入力部8を収容移動させる旨を顧客に通知し(ステップS106)、その後、暗証番号入力部8を収容状態に移動させる(ステップS107)。そして、主制御部40は、表示を待機画面の表示に復帰させ(ステップS108)、今回の一連の出金取引の処理を終了する。この際の収容移動させる旨の通知は、例えば、表示・入力部2に対する、暗証番号入力部8が閉じる案内イラストの表示による通知であっても良く、また、これに加え、音声ガイダンスによる通知であっても良い。暗証番号入力部8の収容状態への変化では、主制御部40は、上述のように、モータ22を所定量だけ収容方向へ回転させることになる。
入力された暗証番号による認証がOKのときには、主制御部40は、暗証番号入力部8を収容移動させる旨を顧客に通知し(ステップS109)、その後、暗証番号入力部8を収容状態に移動させる(ステップS110)。さらに、主制御部40は、出金金額を指定する旨とテンキーとを表示・入力部2に表示させ、それに応じて、顧客が入力した出金金額を取り込む(ステップS111)。なお、暗証番号入力部8を出金金額の入力部として用いるようにしても良く、この場合であれば、暗証番号入力部8の収容状態への移動は、出金金額の入力後になる。
出金金額が入力されると、主制御部40は、顧客の残高より出金金額が小さいことを確認し、該当金額分の貨幣の搬送や、通帳や明細票などへの印字を行い(ステップS112)、その後、シャッタを開けて貨幣を顧客に引き渡したり、通帳若しくは明細票やキャッシュカードを顧客に引き渡したりする(ステップS113)。そして、主制御部40は、表示を待機画面の表示に復帰させ(ステップS108)、今回の一連の出金取引の処理を終了する。なお、上記とは異なり、ステップS113の処理後のような出金取引が終了したタイミングで、突出状態にあった暗証番号入力部8を収容状態へ変化させるようにしても良い。
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、暗証番号入力部8を、下方前面9の左右方向の中央、かつ、上下方向の上部に、出没自在に設けたため、自動取引装置1の外郭を大型化させずに、暗証番号入力部8を、防犯面や設置面など、複数の機能面から見て適切な位置に実装することができている。
暗証番号入力部8を、下方前面9の左右方向の中央、かつ、上下方向の上部に出没自在に設けたため、顧客が突出状態の暗証番号入力部8を用いて暗証番号を入力する際には、顧客の身体が暗証番号入力部8を覆い隠し、第3者が入力中の暗証番号を見ることができず、防犯面において優れた効果を期待することができる。また、突出状態の暗証番号入力部8は、手前側が高くなっているので、この点でも、第3者が入力中の暗証番号を見ることができない。
第1の実施形態の場合、暗証番号入力部8は認証が必要なタイミング以外では、自動取引装置1に収容されているため、暗証番号入力部8が自動取引装置1の設置空間の制約を与えるようなことはない。以下、比較例との関係で、かかる効果を詳述する。
例えば、従来、図8に示すように、表示・入力部(2)の手前側に暗証番号入力部(8)を固定的に設けている自動取引装置も考えられているが、このような自動取引装置をシャッタ付のブースに設置する場合、奥行方向の長さが長いため、図9に示すように、シャッタの開閉を邪魔する恐れがあり、これを避けようとすると、ブースの奥行方向の長さを徒に長くしなければならない。また、表示・入力部(2)の手前側に固定的に設けられた暗証番号入力部(8)が扉となっている下方前面(9)の上部に設けられたものである場合、図10に示すように、扉の開放により、ブースの左右の一方の壁面に暗証番号入力部(8)が衝突して破損する恐れがあり、これを避けようとすると、ブースの左右方向の長さを徒に長くしなければならない。
暗証番号入力部を防犯上好適な、下方前面の左右方向の中央、かつ、上下方向の上部に設けた装置では、そのような暗証番号入力部を備えない既存装置から設置替えする場合、設置範囲や保守範囲を変更することも要することもあり得るが、第1の実施形態の場合、収容状態をとり得るので、現状運用されている装置と同様に設置範囲や保守範囲を実現することが可能である。
また、第1の実施形態によれば、暗証番号入力部8は、必要時以外は収容されているので、表示・入力部(2)の周囲に固定的に設けられた暗証番号入力部に比較して、以下の効果を奏することができる。表示・入力部(2)の周囲に固定的に設けられた暗証番号入力部は、取引中の顧客の視覚範囲に入るため、表示・入力部2に表示されたテンキーで入力すべき情報を、顧客が誤って暗証番号入力部から入力しようとする操作を防止することができないが、第1の実施形態では、このような誤操作を防止することができる。第1の実施形態では、暗証番号の入力時以外では、暗証番号入力部8が収容されているので、操作を行う構成要素の顧客の認識が容易であり、操作性を高めることができる。
第1の実施形態では、出没自在な暗証番号入力部8は収容状態においてはロックが掛かって引き出せないようにしているので、暗証番号入力部8を引き出して、不正な行為(例えば、入力された暗証番号を無線送信するような無線装置を取り付ける行為)を行うようなことを未然に回避することができている。
(B)第2の実施形態
次に、本発明による取引装置を、自動取引装置(ATM)に適用した第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下では、第2の実施形態の自動取引装置1Aが、第1の実施形態の自動取引装置1と相違する点を中心に説明する。
図11及び図12はそれぞれ、第2の実施形態の暗証番号入力部8Aを出没させる駆動機構を示す説明図であり、第1の実施形態に係る図2及び図3に対応する図面である。
第2の実施形態の暗証番号入力部8Aは、出没する直動体10Aと、操作部11Aとを有する。直動体10Aは、その外郭が概ね箱形状をしており、その上面にテンキーなどを有する操作部11Aが取り付けられている。直動体10Aは、後述する駆動機構による進退動によって、突出状態と収容状態との間を変化するものである。図11は暗証番号入力部8Aが収容状態の図面であり、図12は暗証番号入力部8Aが突出状態の図面である。直動体10Aは、収容状態において、その前面が、自動取引装置1Aの下方前面9Aと同一面上になるようになっている。
直動体10Aの少なくとも一方の側面には、ラック60が取り付けられている。このラック60に噛合するピニオン61は、モータ22Aの回転軸に取り付けられている。なお、第1の実施形態と同様に、減速機構を介して、ピニオン61にモータ22Aの回転を伝達するようにしても良い。モータ22Aは、第1の実施形態と同様に、正逆回転可能なものであり、主制御部(図6参照)の制御下で回転する。直動体10Aの側面、下面の少なくとも1面及びその面に対向する装置本体側には、図示は省略しているが、直動体10Aの進退動を案内するガイドが設けられている。
図11及び図12では省略しているが、収容状態の直動体10Aを外力で引き出すことを阻止する、第1の実施形態と同様なロック機構を設けるようにしても良い。
モータ22Aの回転は、ラック60及びピニオン61によって直動に変換され、直動体10A、従って、暗証番号入力部8Aは、突出状態と収容状態との間を変化する。
以上の点を除けば、第2の実施形態の自動取引装置1Aは、第1の実施形態の自動取引装置1と同様なものである。
第2の実施形態によっても、装置の外郭を大型化させずに暗証番号入力部を適切な位置に実装することができるなど、第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
(C)他の実施形態
上記実施形態の説明においても、種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
上記各実施形態においては、出没自在な暗証番号入力部8、8Aだけを備えた自動取引装置を示したが、図13に示すように、表示・入力部2の左若しくは右隣にも、他の暗証番号入力部70を備えるようにしても良い。例えば、暗証番号入力部8、8Aを適用するか否かを、顧客が口座を開設する際の金融機関との契約の1項目とし、暗証番号入力部8、8Aを適用する顧客か否かを判別して、暗証番号入力部8、8Aの出没を制御するようにしても良い。例えば、他の暗証番号入力部70が表示・入力部2の右隣に配置されている場合において、左利きの顧客には出没自在な暗証番号入力部8、8Aを利用させることとしても良い。また例えば、顧客の口座残高に応じて、暗証番号入力部8、8Aを適用するか他の暗証番号入力部70を適用するかを制御するようにしても良い。
上記各実施形態では、暗証番号の入力を要する取引毎に、暗証番号入力部8、8Aを出没させるものを示したが、他の観点から、出没を制御するようにしても良い。例えば、ブース設置の自動取引装置1、1Aの場合において、営業時間の開始前に、暗証番号入力部8、8Aを突出状態に変化させ、営業時間中、突出状態を維持させ、営業時間の終了後に収容状態に変化させるようにしても良い。このような状態変化の時間管理を、主制御部が自動的に行っても良く、金融機関の係員が行っても良い。後者の場合であれば、係員は、例えば、内部に設けられている状態変化スイッチを操作し、そのスイッチ操作に応じて主制御部が暗証番号入力部8、8Aの状態を変化させる。また例えば、実行可能な取引を設定できる自動取引装置に対し、出金専用機として機能することを設定された場合には、その設定情報に基づいて、主制御部が暗証番号入力部8、8Aを常時突出状態にするように制御しても良い。
上記各実施形態においては、出没自在な暗証番号入力部8、8Aを1個だけ備えたものを示したが、出没自在な暗証番号入力部8、8Aを複数備えるようにしても良い。例えば、2個の出没自在な暗証番号入力部を左右方向に並設させ、挿入された通帳やキャッシュカードから得た情報が、顧客が右利きであることを示しているときには右側の暗証番号入力部を適用させ、顧客が左利きであることを示しているときには左側の暗証番号入力部を適用させるようにしても良い。この場合、通帳やキャッシュカードに記録させている情報に顧客の利き手情報を含めておく。
上記各実施形態の説明では、出没自在な暗証番号入力部8、8Aの操作部11、11Aが機構的なキースイッチ(テンキー)を備えるように説明したが、これら操作部11、11Aにタッチパネルを適用しても良く、タッチパネルを適用した場合には、テンキーの配列を取引毎に変化させるようにしても良い。
上記各実施形態の説明では、回動体10や直動体10Aの材質に言及しなかったが、突出状態で顧客に接する可能性がある部分には、スポンジやラバー等のクッション性がある材質を適用するようにしても良い。
上記各実施形態では、出没自在な認証用入力部が暗証番号入力部8、8Aであるものを示したが、これに代え、又は、これに加え、他の認証用入力部を出没自在とするようにしても良い。例えば、生体読取部やカード読取部を出没自在とするようにしても良い。暗証番号入力部及び生体読取部を出没自在とする場合において、これらを異なる回動体(若しくは直動体)に設けるようにしても良く、また、これらを同一の回動体(若しくは直動体)に設けるようにしても良い。生体読取部やカード読取部は、読取り時に防犯性を考慮する必要はないが、生体読取部やカード読取部を出没自在とすることで、装置の外郭を小さくでき、ブース等への設置が容易にできるという効果を奏する。
上記各実施形態では、貨幣を取扱う自動取引装置に本発明を適用した場合を示したが、小切手、証券、証書、チケットなどを取り扱う装置であっても良い。また、本発明に係る取引装置は、金融機関に関係する装置に限定されず、例えば、駅等に設置されている切符の自動販売機や、定期券の新規、継続発行装置等、認証処理を伴う装置であれば良い。