JP2019131420A - 窒化ホウ素粉末の製造方法 - Google Patents

窒化ホウ素粉末の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ホウ素源としてホウ酸を使用する還元窒化法において、樹脂に充填した際の厚さ方向への配向が少ない、アスペクト比の小さい窒化ホウ素を製造する新規な方法を提供する。【解決手段】 ホウ酸、カーボン源及び含酸素カルシウム化合物を含む原料混合物を、従来と比べて小さく、且つ高密度を有する多孔質であって顆粒状の固化物とすることにより、該固化物は、その内部まで窒素ガスを供給することができ、且つ窒素ガスの供給を制限することができ、それにより、副成物の生成を抑制しつつ、還元窒化反応の速度を該固化物全体にわたって確実に低下させることができる。【選択図】 なし

Description

本発明は、窒化ホウ素粉末の新規な製造方法に関するものである。
窒化ホウ素粉末は、一般に黒鉛と同様の六方晶系の層状構造を有する白色粉末であり、熱伝導性、電気絶縁性、潤滑性、耐食生、離型性、高温安定性、化学的安定性等の多くの優れた特性を有することから、各種樹脂への充填剤として使用されている。
窒化ホウ素粉末の製造方法としては、種々提案されているが、そのうち、酸化ホウ素とカーボン源とを高温で窒素と反応させ還元窒化させる、いわゆる「還元窒化法」による製造方法が、一般に実施されている(特許文献1参照)。上記還元窒化法としては、予めホウ酸及びカーボン源を混合後、加熱して、ホウ酸の脱水処理を行うことで酸化ホウ素とし、これを還元窒化反応に供する方法が工業的に有利な方法として採用されている。ホウ酸を酸化ホウ素とする上記方法において、ホウ酸とカーボン源との混合物は、加熱によりホウ酸が溶融し、その際発生する水蒸気が細孔を形成しながら固化することで多孔質の固化物となる傾向があり、数百cmの大きさを有するバルク体とすることが一般的である。そして、上記細孔内に窒素ガスが供給されて、酸化ホウ素の還元窒化反応が行われる。また、ホウ酸を酸化ホウ素とする上記方法において、得られる窒化ホウ素の結晶性を向上させるために、通常、ホウ酸とカーボン源との混合物に結晶化触媒として含酸素カルシウム化合物が添加される。
しかしながら、上記特許文献1に記載のバルク体を還元窒化反応に供する方法により得られる窒化ホウ素単粒子の形状は、厚みの薄い鱗片状、即ちアスペクト比が大きいものであり、これを樹脂に充填すると、得られる樹脂成形体中において、厚みの薄い上記窒化ホウ素単粒子がその厚さ方向にそろって配向し易い。しかも、一般に、窒化ホウ素単粒子は結晶構造に由来して、面方向に比べて厚さ方向には低い熱伝導性しか示さないという熱的異方性を有する。それゆえ、上記窒化ホウ素単粒子を含む窒化ホウ素粉末を充填材として用いた熱伝導性絶縁シートの場合、該熱伝導性絶縁シートの厚さ方向の熱伝導率が低いという問題を有する。
特開平10−203806号公報
従って、本発明の目的は、ホウ素源としてホウ酸を使用する前記還元窒化法において、樹脂に充填した際の厚さ方向への配向が少ない、アスペクト比の小さい窒化ホウ素単粒子を含む窒化ホウ素粉末を製造する方法を提供することにある。
本発明者等は、上記目的を解決するために、鋭意研究を重ねた。
その結果、前記還元窒化法において、酸化ホウ素の還元窒化反応の速度を低下させることにより、アスペクト比が小さい窒化ホウ素単粒子が多く得られるという知見を得た。しかし、前記特許文献1に記載のバルク体を還元窒化反応に供する方法において、酸化ホウ素の還元窒化反応の速度を低下させるために、例えば、窒素ガスに非還元性ガスを混入する、窒素ガス供給流量を絞る等の操作によりバルク体への窒素ガスの供給を制限すると、バルク体内部まで窒素ガスが行き届き難くなり、酸化ホウ素が還元窒化される主反応よりも、中間体と副成物とが反応する副反応が助長されることにより、後工程の洗浄等による除去が困難な難溶性カルシウム化合物が生成しやすいという問題があった。
本発明者等は、前記知見に基づき、上記難溶性カルシウム化合物の生成を抑制しつつ、酸化ホウ素の還元窒化反応の速度を低下させる方法について更に検討を行った。その結果、前記固化物をバルク体と比べて小さく、且つ高密度を有する多孔質であって顆粒状の固化物とすることにより、該固化物は、その内部まで窒素ガスを供給することができ、且つ窒素ガスの供給を制限することができ、それにより、上記難溶性カルシウム化合物の生成を抑制しつつ、酸化ホウ素の還元窒化反応の速度を該固化物全体にわたって確実に低下させることができることを見い出した。更に、該固化物の長短度を小さくすることにより、該固化物を窒化反応炉に供した際に該固化物間に適度な隙間が生じ、該隙間に窒素ガスを良好に流すことができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ホウ酸、カーボン源及び含酸素カルシウム化合物を含む混合物を顆粒状に成形後、加熱することにより、体積が0.01〜1.0cm、長短度が1〜3、及び密度が0.7〜0.9g/cmである顆粒状の固化物を調製し、該固化物を窒素雰囲気下にて加熱することを特徴とする窒化ホウ素粉末の製造方法である。
本発明の製造方法によれば、前記固化物をバルク体と比べて小さく、且つ高密度を有する多孔質であって顆粒状の固化物とすることにより、バルク体を還元窒化反応に供する従来の製造方法に比べて、アスペクト比の小さい窒化ホウ素単粒子を多く含む窒化ホウ素粉末を得ることができる。更に、該固化物の長短度を小さくすることにより、前記難溶性カルシウム化合物の含有量が少ない窒化ホウ素粉末を得ることができる。
なお、本発明の製造方法によれば、前記顆粒状の固化物が120N以上と高い圧壊強度を有するときは、例えば、竪型炉のように、窒化反応炉内において該固化物が圧壊されやすい反応条件下であっても、該固化物は崩壊や粉化をし難いという効果があり、そのため、該反応炉内の閉塞や窒素ガスの流動性を損なうことがない。こうしたことから、該固化物を用いることにより、長時間安定的に窒化ホウ素粉末を製造することが可能になり、その結果、生産性を著しく高めることができる。
従って、本発明の製造方法は、各種樹脂への充填剤として適した窒化ホウ素粉末を得ることができる方法として、産業上極めて有用である。
本発明の窒化ホウ素粉末の製造方法は、原料混合工程、成形工程、脱水工程、及び還元窒化工程からなる。
以下に各工程について詳述する。
(出発原料)
<ホウ酸>
本発明において、ホウ酸は、加熱されて水を失い、窒化ホウ素の原料である酸化ホウ素を生成するものであり、その平均粒子径は特に限定されないが、取扱いが容易となり、且つ加熱脱水反応が進行し易くなることから、1〜1000μmが好ましく、10〜900μmがより好ましく、20〜800μmが更に好ましい。
<カーボン源>
本発明において、カーボン源は、前記酸化ホウ素とともに前記顆粒状の固化物を構成し、窒化反応において還元剤として作用するものであれば、特に制限されない。かかるカーボン源としては、例えば、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー等の非晶質炭素の他、ダイヤモンド、グラファイト、ナノカーボン等の結晶性炭素、モノマーやポリマーを熱分解して得られる熱分解炭素等が特に制限無く使用される。そのうち、反応性の高い非晶質炭素が好ましく、更に、工業的に品質制御されている点で、カーボンブラックが特に好適に使用される。また、該カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用することができる。また、上記カーボン源の平均粒子径は、特に限定されないが、操作性及び反応性に優れている点から、10〜500nmが好ましく、30〜200nmが特に好ましい。さらに、DBP吸油量が、5〜100ml/100g、好ましくは10〜50ml/100gのものが好適である。
<含酸素カルシウム化合物>
本発明において、結晶化触媒として使用される含酸素カルシウム化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム等を使用することが出来、これら2種類以上を混合して使用することも可能である。その中でも、窒化反応後の該酸素カルシウム化合物及び該酸素カルシウム化合物由来の副成物の除去難易性を考えた場合、酸化カルシウム、炭酸カルシウムを使用するのが好ましく、取扱が容易な炭酸カルシウムが特に好ましい。また、該炭酸カルシウムの平均粒子径は、平均粒子径0.01〜500μmが好ましく、0.05〜400μmがより好ましく、0.1〜300μmが特に好ましい。
(原料混合工程)
本発明において、前記ホウ酸と前記カーボン源との混合割合は、特に制限されないが、好適には上記ホウ酸の重量100重量部に対し、カーボン源を15〜28重量部、更に好ましくは20〜25重量部の割合で混合させることが好ましい。該カーボン源の混合割合が15重量部未満では、前記還元窒化反応において還元されずに揮散するホウ酸の割合が増加し、窒化ホウ素の収率が低下するばかりでなく、上記揮散成分により、製造ラインに悪影響を及ぼす傾向にある。また、28重量部を超えると、還元窒化反応後に残留する未反応のカーボン源の存在割合が増加する。
前記含酸素カルシウム化合物の添加量としては、前記ホウ酸の重量100重量部に対して、酸化カルシウム換算で7〜20重量部とすることが好ましく、12〜18重量部とすることが更に好ましい。該含酸素カルシウム化合物の使用量が7重量部未満では結晶性の高い窒化ホウ素粉末が得られない。また、該含酸素カルシウム化合物の使用量が20重量部を超える場合、得られる窒化ホウ素粉末の不純物濃度を上昇させる傾向がある。
本発明において、ホウ酸、カーボン源及び含酸素カルシウム化合物を含む原料を混合する方法としては、これらを均一な組成に混合することが可能な方法であれば特に制限されない(以下、混合後の上記原料を、原料混合物ともいう)。振動ミル、ビーズミル、ボールミル、ヘンシェルミキサー、ドラムミキサー、振動攪拌機、V字混合機等の一般的な混合機が使用可能である。
上記原料混合物は、後述する成形をし易くする目的で、バインダーを配合することができる。更に、該バインダーを上記原料混合物中に均一に分散し易くする目的で、希釈剤を用いてもよい。該希釈剤は、後述する脱水工程においてホウ酸が失う水とともに除去が可能である点から、水が最も好ましい。従って、該バインダーは、後述する成形工程においてつなぎとして作用しうるもので、且つ水溶性であれば、公知のものを何等制限なく用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、フェノール樹脂、デンプン、糖蜜などが使用される。また、必要に応じて公知の界面活性剤を添加することもある。中でも、入手の容易性および濃度の調節のし易さなどの観点から、ポリビニルアルコールを使用することが好適である。
本発明において、バインダーの量は、前記原料混合物の重量100重量部に対して0〜3重量部の割合とすることが適当である。該バインダーの量が3重量部より多い場合、該原料混合物表面へのバインダーの浸み出しが多く、以下の問題が起こる傾向にある。即ち、後述の顆粒状に成形した原料混合物が不規則に集まり塊状を形成し易く、それを加熱して得られる固化物を窒化反応炉に供すると、還元窒化反応炉内に生じる隙間の大きさにばらつきが生じ、その結果、該隙間に窒素ガスを良好に流すことが困難である。また、後述の還元窒化工程に竪型炉を使用する場合、該固化物が該竪型炉内壁に癒着し易く、そのため、該固化物が該竪型炉内を滑らかに流動することが困難である。
バインダーを添加する方法は特に限定されないが、原料混合物中に均一に分散し易くするため、噴霧することが好ましい。バインダーを噴霧する際、局所的に噴霧させないよう、あらかじめホウ酸、カーボン源、及び含酸素カルシウム化合物を混合する乾式混合を行った後、バインダーを噴霧しながら混合する湿式混合を行うことが好ましい。
(成形工程)
本発明において、成形工程は、原料混合物を特定の体積、形状に成形する方法からなる工程であれば、何等制限なく採用して実施できる。上記方法として、例えば、転動造粒法、流動層造粒法、噴流層造粒法、攪拌造粒法、解砕造粒法、圧縮造粒法、押出造粒法、液滴固化造粒法が挙げられる。これら方法の中でも、押出造粒法は、同一の形状で且つ圧縮された顆粒状の原料混合物を連続的に製造することができ、好ましい。押出造粒法によれば、顆粒状の原料混合物は、顆粒状に成形する前の原料混合物を金型(ダイス)から押し出し、押し出された紐状の原料混合物をダイスに対し水平に設置された内装カッターにより切断され得られる。そのため、顆粒状の原料混合物の体積は、上記ダイスの口径と上記内装カッターの切断長さによって決まり、ホウ酸の脱水に伴う該原料混合物の収縮を勘案して、後述する顆粒状の固化物の好ましい体積になるように適宜選択される。
(脱水工程)
本発明において、脱水工程は、前記顆粒状の原料混合物を加熱し、該原料混合物に含まれるホウ酸の脱水処理を行うことにより実施される。この時、ホウ酸が溶融し、水蒸気を発生しながら固化し、該原料混合物の形状を維持したまま多孔質であって顆粒状の固化物となる。該脱水処理は300〜450℃の脱水温度で行うことが好ましく、300℃未満の脱水温度では、ホウ酸の脱水が不十分になる虞がある。脱水が不十分であると、前記細孔の形成が不十分になり、該固化物の内部まで窒素ガスを供給することが困難となる傾向がある。加えて、ホウ酸を脱水して得られる、ガラス質の酸化ホウ素が該固化物の内部に十分に生成できず、その結果、該固化物が後述する圧壊強度を得ることが困難である。また、450℃を超える脱水温度は、脱水効果が頭打ちとなり、経済的に不利である。
本発明の最大の特徴は、原料混合物を、以下の密度及び体積を有する多孔質であって顆粒状の固化物とした点にある。すなわち、上記密度としては、0.7〜0.9g/cmが好適である。該密度が0.7g/cmより小さい場合、該固化物の内部への窒素ガスの供給を制限することが困難となり、一方、0.9g/cmより大きい場合、該固化物の内部まで窒素ガスを供給することが困難となる。また、上記体積としては、0.01〜1.0cm、好ましくは0.1〜0.9cm、最も好ましくは0.2〜0.7cmが好適である。該体積が上記0.01〜1.0cmの範囲を満足しない場合、原料混合物を該固化物とする効果が発揮され難い傾向がある。該固化物がこのような密度及び体積を有することで、該固化物の内部への窒素ガスの供給を制限することができる理由として、本発明者等は、以下の通り推測している。すなわち、上記脱水工程後に得られる固化物が上記密度及び体積を有するように原料混合物を成形することで、脱水時に形成される細孔が細く小さくなるからであると考えている。該細孔がこのようになる理由を、本発明者等は、脱水時に生じる水蒸気が前記顆粒状の原料混合物の内部で集まらずに、生じるとすぐに該原料混合物の外部へ揮散するためであると考えている。
前記顆粒状の固化物の形状は、特に制限されない。例えば、球状、フットボール状、円柱状などが好適である。特に、竪型炉のように、還元窒化反応炉内において該固化物が圧壊されやすい反応条件下においては、該固化物が該反応炉内を滑らかに流動するように、球状がより好ましい。押出造粒法のように球状の原料混合物を得ることが難しい方法を採用する場合は、回転型整粒機等を用いて原料混合物の形状を球状に近づけることも可能である。
また、前記顆粒状の固化物の形状を示す指標として、長短度が用いられる。長短度は、該固化物の長径を短径で除した値を言い、1〜3のものが好適である。該固化物のアスペクト比が3を超えると、該固化物を窒化反応炉に供した際に該固化物間に生じる隙間の大きさがばらつき、該隙間に窒素ガスを良好に流すことができない虞がある。また、該固化物のアスペクト比が3を超えると、該固化物が後述する圧壊強度を有しても、曲げに対する強度が弱くなり、折れやすい。そのため、該固化物を窒化反応炉に供した際に、該固化物が崩壊や粉化して、それが該反応炉内の閉塞や窒素ガスの流動性を損なう原因になりやすい。
本発明の顆粒状の固化物は、120N以上の圧壊強度を有するものが好ましい。該固化物が、このような圧壊強度を有することにより、該固化物を窒化反応炉に供した際に、該固化物が積み重なっても崩壊や粉化し難く、そのため、一度に処理できる固化物の量を増やすことができ、運転費用、時間短縮という面からも効率的であり、工業的に有益である。但し、成形工程の際、原料混合物を過度に圧縮すると、脱水時に形成される前記細孔が更に小さくなり、該固化物内部まで窒素ガスを供給することが困難となる虞がある。そのため、本発明の効果を損なわない圧壊強度の範囲に止めることが好ましい。
(還元窒化工程)
本発明において、還元窒化工程は、前記顆粒状の固化物を窒素ガス雰囲気下で加熱することで実施可能である。この場合、窒化温度、処理時間は、一般に窒化ホウ素粉末が得られる条件とすることができ、例えば、1500〜2000℃の温度範囲で1秒〜10時間程度保持すれば良い。該窒化温度が1500℃以上であれば結晶性の高い窒化ホウ素粉末が得られ、2000℃以下であれば熱量を高効率で窒化反応に利用できる。
本発明の還元窒化工程は、反応雰囲気制御の可能な公知の装置を使用して行うことができる。例えば、高周波誘導加熱やヒーター加熱により加熱処理を行う雰囲気制御型高温炉が挙げられ、バッチ炉の他、プッシャー式トンネル炉、竪型炉等の連続窒化反応炉も使用可能である。
本発明において、上述の還元窒化処理を施した直後は、窒化ホウ素を主成分とする固化物として得られるが、酸に可溶なCa等の化合物も含まれているため、該固化物を解砕し、必要に応じて酸洗浄、水洗、および乾燥を行うことで、高純度の窒化ホウ素粉末を得ることが可能である。
以下、本発明を更に詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例、比較例における各種物性の測定は、以下の方法によって行った。
1)窒化ホウ素粉末中のCa濃度
得られた窒化ホウ素粉末を蛍光X線分析装置(Rigaku社製、商品名:ZSX Primus2)により解析し、窒化ホウ素粉末に含まれるCa濃度(%)を測定した。
2)アスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が、窒化ホウ素粉末に占める割合
得られた窒化ホウ素粉末を、倍率2000倍で観察した60μm×40μm四方の複数のSEM観察像を画像解析装置(A像くん:旭化成エンジニアリング株式会社製)により解析し、長軸の長さを測定し、また同時に厚み方向の長さを測定し、長軸の長さ/厚み方向の長さをアスペクト比とした。該アスペクト比が3〜10の窒化ホウ素単粒子とそうでないものに選別し、画像解析により、アスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が窒化ホウ素粉末に占める割合(重量%)を算出した。
(実施例1)
平均粒子径800μmのホウ酸100重量部、平均粒子径22nm、DBP吸収量28ml/100gのカーボンブラック24重量部、及び平均粒子径5μmの炭酸カルシウム16重量部をスパルタンミキサーに投入し、均一になるまで混合しながら、該スパルタンミキサー内にポリビニルアルコールが0.8重量部になる分量の8重量%ポリビニルアルコール水溶液を噴霧添加し、該ポリビニルアルコール水溶液が均一に分散されるまで混合した。
得られた原料混合物を、直径8mmの円形の孔を有するダイスを設置したディスクペレッターを用いて長さ1cmになるように切り出し、円柱状の原料混合物を得た。
この円柱状の原料混合物を、大気雰囲気において、350℃、8時間の条件で加熱し、円柱状の固化物を得た。得られた固化物について、体積は0.5cm、長短度が1.2、密度が0.85g/cmであった。圧壊強度は株式会社藤原製作所製デジタル硬度計KHT−40Nを用いて測定したところ、160Nであった。
前記円柱状の固化物を、黒鉛性タンマン炉を用い、窒素ガス雰囲気下で1800℃、2時間還元窒化処理し、次いで解砕、酸洗浄、水洗、乾燥を行い、窒化ホウ素粉末を得た。
得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度は0.007%と低濃度であった。また、アスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が、窒化ホウ素粉末中に65重量%と高い割合で存在した。
(実施例2)
表1に示す組成となるように原料組成を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、円柱状の固化物を得た。得られた固化物について、体積、長短度、密度、及び圧壊強度の値を測定した結果を表1に示す。
続いて、得られた固化物を実施例1と同様の条件で還元窒化処理し、得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度およびアスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が窒化ホウ素粉末に占める割合を測定した結果を表1に示す。
(実施例3)
表1に示す組成となるように原料組成を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、円柱状の固化物を得た。得られた固化物について、体積、長短度、密度、及び圧壊強度の値を測定した結果を表1に示す。
続いて、得られた固化物を実施例1と同様の条件で還元窒化処理し、得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度およびアスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が窒化ホウ素粉末に占める割合を測定した結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1と同様の操作を行い得られた円柱状の原料混合物を、回転式整粒機にて3分間650rpmの条件で整粒し、球状の原料混合物を得た。その後、実施例1と同様に、脱水処理を実施し、球状の固化物を得た。得られた固化物について、体積、長短度、密度、及び圧壊強度の値を測定した結果を表2に示す。
前記球状の固化物を、竪型炉を用い、窒素ガス雰囲気下で反応塔の中央部分の温度が1950℃になるようにヒーターで加熱し、12時間還元窒化処理し、次いで解砕、酸洗浄、水洗、乾燥を行い、窒化ホウ素粉末を得た。得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度およびアスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が窒化ホウ素粉末に占める割合を測定した結果を表2に示す。
(実施例5)
実施例2と同様の操作を行い得られた円柱状の原料混合物を、実施例4と同様に、整粒し、脱水処理を実施し、球状の固化物を得た。得られた固化物について、体積、長短度、密度、及び圧壊強度の値を測定した結果を表2に示す。
前記球状の固化物を、実施例4と同様の条件で還元窒化処理し、窒化ホウ素粉末を得た。得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度およびアスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が窒化ホウ素粉末に占める割合を測定した結果を表2に示す。
(実施例6)
実施例3と同様の操作を行い得られた円柱状の原料混合物を、実施例4と同様に、整粒し、脱水処理を実施し、球状の固化物を得た。得られた固化物について、体積、長短度、密度、及び圧壊強度の値を測定した結果を表2に示す。
前記球状の固化物を、実施例4と同様の条件で還元窒化処理し、窒化ホウ素粉末を得た。得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度およびアスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が窒化ホウ素粉末に占める割合を測定した結果を表2に示す。
(比較例1)
平均粒子径800μmのホウ酸100重量部、平均粒子径22nm、DBP吸収量28ml/100gのカーボンブラック24重量部、及び平均粒子径5μmの炭酸カルシウム16重量部をスパルタンミキサーに投入し、均一になるまで混合しながら、該スパルタンミキサー内にポリビニルアルコールが0.8重量部になる分量の8重量%ポリビニルアルコール水溶液を噴霧添加し、該ポリビニルアルコール水溶液が均一に分散されるまで混合した。
得られた原料混合物を、底面90mm×40mm、高さ40mmのステンレス容器に投入し、大気雰囲気において、350℃、8時間の条件で脱水し、体積が170cmのバルク体を得た。
前記バルク体を、黒鉛性タンマン炉を用い、窒素ガス雰囲気下で1800℃、2時間還元窒化処理し、次いで解砕、酸洗浄、水洗、乾燥を行い、窒化ホウ素粉末を得た。
得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度は1.4%であった。また、アスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が窒化ホウ素粉末中に25重量%で存在した。
(比較例2)
表1に示す原料組成及び体積となるように条件を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、円柱状の固化物を得た。得られた固化物について、体積、長短度、密度、及び圧壊強度の値を測定した結果を表1に示す。
続いて、得られた固化物を実施例1と同様の条件で還元窒化処理し、得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度およびアスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が窒化ホウ素粉末に占める割合を測定した結果を表1に示す。得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度が、0.80%と高い値を示した。
(比較例3)
表1に示す原料組成及び長短度となるように条件を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、円柱状の固化物を得た。得られた固化物について、体積、長短度、密度、及び圧壊強度の値を測定した結果を表1に示す。
続いて、得られた固化物を実施例1と同様の条件で還元窒化処理し、得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度およびアスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が窒化ホウ素粉末に占める割合を測定した結果を表1に示す。得られた窒化ホウ素粉末について、含有するアスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が、45重量%と低い割合を示した。
(比較例4)
表1に示す原料組成及び密度となるように条件を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、円柱状の固化物を得た。得られた固化物について、体積、長短度、密度、及び圧壊強度の値を測定した結果を表1に示す。
続いて、実施例1と同様の条件で還元窒化処理し、得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度およびアスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が窒化ホウ素粉末に占める割合を測定した結果を表1に示す。得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度が、1.3%と高い値を示した。
(比較例5)
表2に示す原料組成及び体積となるように条件を変更した以外は、実施例4と同様の操作を行い、球状の固化物を得た。得られた固化物について、体積、長短度、密度、及び圧壊強度の値を測定した結果を表2に示す。
続いて、得られた固化物を実施例4と同様の条件で還元窒化処理し、得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度およびアスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が、窒化ホウ素粉末に占める割合を測定した結果を表2に示す。得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度が、0.80%と高い値を示した。
(比較例6)
表2に示す原料組成及び密度になるように条件を変更した以外は、実施例4と同様の操作を行い、球状の固化物を得た。得られた固化物について、体積、長短度、密度、及び圧壊強度の値を測定した結果を表2に示す。
続いて、得られた固化物を実施例4と同様の条件で還元窒化処理し、得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度およびアスペクト比3〜10の窒化ホウ素単粒子が、窒化ホウ素粉末に占める割合を測定した結果を表2に示す。得られた窒化ホウ素粉末について、含有するCa濃度が、0.90%と高い値を示した。
Figure 2019131420
Figure 2019131420

Claims (3)

  1. ホウ酸、カーボン源及び含酸素カルシウム化合物を含む混合物を顆粒状に成形後、加熱することにより、体積が0.01〜1.0cm、長短度が1〜3、及び密度が0.7〜0.9g/cmである顆粒状の固化物を調製し、該固化物を窒素雰囲気下にて加熱することを特徴とする窒化ホウ素粉末の製造方法。
  2. 前記混合物を顆粒状に成形後、300〜450℃の温度にて加熱することを特徴とする請求項1に記載の窒化ホウ素粉末の製造方法。
  3. 前記顆粒状の固化物が、120N以上の圧壊強度を有することを特徴とする請求項1または2に記載の窒化ホウ素粉末の製造方法。
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