いくつかの態様において、本明細書にて開示する本発明は、個体に治療上有効な量の抗CGRPアンタゴニスト抗体を投与することによって、個体における血管運動神経症状(例えば、顔面潮紅)を治療し、及び/または予防するための方法を提供する。
いくつかの態様において、本明細書にて開示する本発明は、個体に治療上有効な量の抗CGRPアンタゴニスト抗体を投与することによって、個体における頭痛(例えば、片頭痛、群発頭痛、慢性頭痛及び緊張性頭痛)を治療し、及び/または予防するための方法を提供する。いくつかの場合において、頭痛は、片頭痛である。
いくつかの態様において、本明細書にて開示する本発明はまた、抗CGRPアンタゴニスト抗体及びG1または表6に示すそのバリアントに由来するポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、本発明はまた、これらの抗体及びポリペプチドを作製する方法及び使用する方法を提供する。
本出願全体を通して、種々の公開物(特許及び特許出願を含む)を参照する。これらの公開物の開示については、その全体を参照により本明細書に援用する。
一般的技術
本発明の各種態様の実施には、特に指定のない限り、当該技術分野の技術範囲内である、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技術が採用される。このような技術については、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993−1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988−1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995)などの文献にて詳細に説明されている。
定義
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用するとき、この用語は、インタクトポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけではなく、それらの断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、一本鎖(ScFv)、それらの変異体、抗体部分(ドメイン抗体など)を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む他の任意の修飾構造の免疫グロブリン分子も包含する。抗体は、IgG、IgAまたはIgM(またはそれらのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、いずれかの特定のクラスである必要はない。免疫グロブリンは、抗体重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り振ることができる。免疫グロブリンには、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかは、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2のサブクラス(アイソタイプ)に更に分類することができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖の定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構造は、よく知られている。
本明細書で使用するとき、「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、この集団に含まれる個々の抗体は、微量に存在する可能性が想定される自然に発生する変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、極めて特異性が高く、単一の抗原部位に向けられる。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられる。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示すものであり、いずれかの特定の方法による抗体の産生が求められるものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,1975,Nature,256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって作製してもよいし、米国特許第4,816,567号に記載の方法などの組み換えDNA法によって作製してもよい。モノクローナル抗体はまた、例えば、McCafferty et al.,1990,Nature,348:552−554に記載された技術を用いて作製されたファージライブラリーから単離してもよい。
本明細書で使用するとき、「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む、特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらの断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合部分配列など)である非ヒト(例えば、ネズミ)抗体の形態を指す。主に、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望の特異性、親和性及び生物活性を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基で置き換えられているものである。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。更に、ヒト化抗体には、レシピエント抗体中にも、移入したCDRまたはフレームワーク配列中にも認められないが、抗体性能を更に改良及び最適化するために包含される残基を含めてもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、全てまたは実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、全てまたは実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部を含む。抗体は、WO99/58572に記載するように修飾されたFc領域を有してよい。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体の1つまたは複数のCDRに「由来する」1つまたは複数のCDRとも呼ばれる、元の抗体に対して改変を加えた1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)を有する。
本明細書で使用するとき、「ヒト抗体」は、ヒトによって産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味し、かつ/または当該技術分野にて知られている若しくは本明細書にて開示するヒト抗体の作製技術のいずれかを用いて作製されている。このヒト抗体の定義は、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。このような例の1つは、ネズミ軽鎖とヒト重鎖のポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られている各種技術を使用して作製することができる。一実施形態において、ヒト抗体は、ファージライブラリーから選択され、このファージライブラリーがヒト抗体を発現する(Vaughan et al.,1996,Nature Biotechnology,14:309−314;Sheets et al.,1998,PNAS,(USA)95:6157−6162;Hoogenboom and Winter,1991,J.Mol.Biol.,227:381;Marks et al.,1991,J.Mol.Biol.,222:581)。ヒト抗体はまた、トランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活性化されているマウスに、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによっても作製することができる。この手法は、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号及び同第5,661,016号に記載されている。あるいは、標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化させることによってヒト抗体を作製してもよい(このようなBリンパ球は、個体から回収してもよいし、インビトロで免疫化してもよい)。例えば、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,1991,J.Immunol.,147(1):86−95及び米国特許第5,750,373号を参照されたい。
本明細書で使用するとき、「カルシトニン遺伝子関連ペプチド」及び「CGRP」という用語は、任意の形態のカルシトニン遺伝子関連ペプチド及びCGRPの活性の少なくとも一部を保持するそのバリアントを指す。例えば、CGRPは、α−CGRPまたはβ−CGRPであり得る。本明細書で使用するとき、CGRPは、全ての哺乳動物種、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ及びウシの天然配列CGRPを含む。
本明細書で使用するとき、「抗CGRPアンタゴニスト抗体」(同義的に「抗CGRP抗体」と呼ぶ)は、CGRPに結合し、CGRP生物活性及び/またはCGRPシグナル伝達によって媒介される下流経路(複数可)を阻害することができる抗体を指す。抗CGRPアンタゴニスト抗体は、CGRP生物活性を調節、遮断、拮抗、抑制または低減する(有意にを含む)か、あるいはさもなければ受容体結合及び/またはCGRPに対する細胞応答の誘発などのCGRPシグナル伝達によって媒介される下流経路を含むCGRP経路を拮抗する抗体を包含する。本発明の目的上、「抗CGRPアンタゴニスト抗体」という用語は、CGRP自体、CGRP生物活性(頭痛の任意の側面をもたらす能力を含むが、これに限定されない)またはその生物活性の帰結が、任意の意味のある程度で実質的に無効にされ、低下し、または中和する、先に特定された用語、名称ならびに機能的状態及び特徴を全て包含することを明確に理解されたい。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、CGRPと結合し、CGRPがCGRP受容体に結合するのを妨げる。他の実施形態において、抗CGRP抗体は、CGRPと結合し、CGRP受容体の活性化を妨げる。抗CGRPアンタゴニスト抗体の例については、本明細書中に記載する。
本明細書で使用するとき、「G1」及び「抗体G1」という用語は、同じ意味で用いられ、ATCC PTA−6867及びATCC PTA−6866の受託番号を有する発現ベクターによって産生される抗体を指す。重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を図5に示す。抗体G1のCDR部分(Chothia及びKabatのCDRを含む)を図5に図式的に示す。重鎖及び軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドを配列番号9及び配列番号10に示す。G1の特性評価については、実施例にて記載する。
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書にて同じ意味で用いられ、任意の長さのアミノ酸の高分子を指す。高分子は、直鎖でも分岐鎖でもよく、修飾アミノ酸を含み得、非アミノ酸によって遮られていてもよい。これらの用語はまた、自然にまたは介入により、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作若しくは修飾(標識要素との結合など)により修飾されたアミノ酸高分子も包含する。また、この定義内には、例えば、アミノ酸の1つまたは複数の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)及び当該技術分野において知られている他の修飾を含有するポリペプチドも含まれる。本発明のポリペプチドは、抗体に基づくものであることから、これらのポリペプチドは、単鎖または会合した鎖として存在し得ることを理解されたい。
本明細書にて同じ意味で使用する「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドの高分子を指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド若しくは塩基及び/またはそれらの類似体、またはDNA若しくはRNAポリメラーゼによって高分子に取り込まれ得る任意の基質であってよい。ポリヌクレオチドは、メチル化されたヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、高分子の組み立ての前または後に加えることができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素によって遮られていてもよい。ポリヌクレオチドは、標識要素との結合などによって、重合後に更に修飾されてもよい。他の種類の修飾には、例えば、「キャップ」、類似体での天然ヌクレオチドの1つまたは複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)による修飾及び荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)による修飾、ペンダント部分、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply−L−リシンなど)を含有する修飾、インターカレータ(例えば、アクリジン、ソラレンなど)による修飾、キレート化剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有する修飾、アルキル化剤を含有する修飾、修飾結合(例えば、αアノマー核酸など)による修飾、ならびにポリヌクレオチド(複数可)の非修飾形態が挙げられる。更に、糖中に通常存在するヒドロキシル基のうちのいずれかを、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基によって置換してもよいし、標準的な保護基によって保護してもよいし、活性化して更なるヌクレオチドの更なる結合をもたらしてもよいし、固体支持体に結合させてもよい。5’及び3’末端のOHを、リン酸化することもできるし、アミン若しくは1〜20個の炭素原子の有機キャッピング基部分で置換することもできる。他のヒドロキシルも同様に標準的な保護基に誘導化されてもよい。ポリヌクレオチドはまた、当該技術分野において一般に知られているリボースまたはデオキシリボースの糖の類似形態も含み得、例えば、2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−または2’−アジド−リボース、炭素環糖類似体、α−アノマー糖、アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体及びメチルリボシドなどの脱塩基ヌクレオシド類似体が挙げられる。1つまたは複数のホスホジエステル結合は、他の結合基によって置換されてよい。これらの他の結合基には、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)で置換され、式中、各RまたはR’は、独立して、Hであるか、または置換若しくは非置換である、エーテル(−O−)結合を任意に含有するアルキル(1〜20個のC)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル若しくはアラルジル(araldyl)である実施形態が挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記載は、RNA及びDNAを含む、本明細書にて言及する全てのポリヌクレオチドに適用される。
抗体の「可変領域」は、単独または組み合わせのいずかである、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域はそれぞれ、超可変領域としても知られている3つの相補性決定領域(CDR)によって連結された4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖中のCDRは、FRによって極めて近接してまとめられ、他の鎖のCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを特定するには、(1)異種間の配列多様性に基づくアプローチ(すなわち、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda MD))、及び(2)抗原−抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al−lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927−948))の少なくとも2つの技術がある。本明細書で使用するとき、CDRは、いずれか一方または両方のアプローチの組み合わせによって定義されるCDRを指し得る。
抗体の「定常領域」は、単独または組み合わせのいずれかである、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を指す。
抗体またはポリペプチドに「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書にて同じ意味で用いる)エピトープは、当該技術分野において十分に理解されている用語であり、このような特異的または優先的結合を特定する方法も同様に当該技術分野において十分知られている。ある分子が、他の細胞または物質よりも、より頻繁に、より迅速に、より長い期間及び/またはより高い親和性で特定の細胞または物質と反応し、または会合する場合に、その分子は、「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言う。ある抗体は、他の物質への結合よりも、より高い親和性、アビディティで、より容易に、及び/またはより長い期間、結合する場合、その抗体は、標的に「特異的に結合」または「優先的に結合」する。例えば、CGRPエピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、他のCGRPエピトープまたは非CGRPエピトープへの結合よりも、より高い親和性、アビディティで、より容易に、及び/またはより長い期間このエピトープに結合する抗体である。この定義を読むことにより、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分若しくはエピトープ)が第2の標的に特異的または優先的に結合してもしなくてもよいこともまた理解される。したがって、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的な結合を必ずしも必要とするものではない(ただし、含む場合もある)。一般に、必ずしも必須ではないが、結合への言及は、優先的結合を意味する。
本明細書で使用するとき、「実質的に純粋」は、少なくとも50%純粋(すなわち、汚染物質を含まない)、より好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、より好ましくは少なくとも98%純粋、より好ましくは少なくとも99%純粋である物質を指す。
「宿主細胞」は、ポリヌクレオチド挿入物を組み込むためのベクター(複数可)のレシピエントになり得る、またはレシピエントになっている個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含み、その子孫は、自然発生的、偶発的または意図的な変異により、元の親細胞と必ずしも(形態学的にまたはゲノムDNA相補鎖において)完全に同一でなくてもよい。宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチド(複数可)をインビボでトランスフェクションした細胞を含む。
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。「Fc領域」は、天然配列のFc領域またはバリアントFc領域であってよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変わり得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、アミノ酸残基の位置Cys226またはPro230からそのカルボキシル末端までに及ぶものと定義される。Fc領域の残基のナンバリングは、Kabatと同様のEUインデックスのナンバリングである。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Imunological Interest、5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメインであるCH2及びCH3を含む。
本明細書で使用するとき、「Fc受容体」及び「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述する。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子バリアント及び選択的スプライシングによる形態を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性型受容体」)及びFcγRIIB(「抑制型受容体」)を含み、これらは、その細胞質ドメインが主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。FcRは、Ravetch and Kinet,1991,Ann.Rev.Immunol.,9:457−92;Capel et al.,1994,Immunomethods,4:25−34;ならびにde Haas et al.,1995,J.Lab.Clin.Med.,126:330−41にて概説されている。「FcR」はまた、母親由来IgGの胎児への輸送を担う、胎児性受容体FcRnを含む(Guyer et al.,1976,J.Immunol.,117:587;及びKim et al.,1994,J.Immunol.,24:249)。
「補体依存性細胞傷害」及び「CDC」は、補体の存在下における標的の溶解を指す。補体活性化経路は、同種抗原と複合体を形成した分子(例えば、抗体)に補体系の第1成分(C1q)が結合することによって開始される。補体活性化を評価するには、例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods,202:163(1996)の記載の通りに、CDCアッセイを実施することができる。
「機能性Fc領域」は、天然配列のFc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御などが挙げられる。このようなエフェクター機能は、一般に、Fc領域と結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)を組み合わせる必要があり、このような抗体エフェクター機能を評価するためには、当該技術分野において知られている各種アッセイを用いて評価することができる。
「天然配列のFc領域」は、天然に見られるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾により天然配列のFc領域のアミノ酸配列とは異なるが、天然配列のFc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を保持する、アミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、天然配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して、天然配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域中に少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、約1〜約10個のアミノ酸置換、好ましくは約1〜約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書におけるバリアントFc領域は、天然配列のFc領域及び/または親ポリペプチドのFc領域と、好ましくは少なくとも約80%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する。
本明細書で使用するとき、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」及び「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)が標的細胞上に結合した抗体を認識し、その後、標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性反応を指す。目的分子のADCC活性は、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているものなどのインビトロADCCアッセイを用いて評価することができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びNK細胞が挙げられる。代替的にまたは追加的に、目的分子のADCC活性は、インビボで評価でき、例えば、Clynes et al.,1998,PNAS(USA),95:652−656に記載されているものなどの動物モデルにて評価され得る。
本明細書で使用するとき、「治療」は、有益なまたは望ましい臨床結果を得るための手法である。本発明の目的上、有益なまたは望ましい臨床結果には、重症度の軽減を含めた頭痛のあらゆる側面の改善、疼痛強度及び他の随伴症状の緩和、発生頻度の減少、頭痛罹患者の生活の質の向上、ならびに頭痛を治療するのに必要な他の薬の用量の低減のうちの1つまたは複数が挙げられるが、これらに限定されない。片頭痛の他の関連症状には、悪心、嘔吐、光過敏、音過敏及び/または動作過敏が挙げられるが、これらに限定されない。群発頭痛の他の関連症状には、眼の下または周辺の腫脹、過剰な涙、赤目、鼻漏または鼻詰まり及び赤く紅潮した顔が挙げられるが、これらに限定されない。
頭痛の「発生を減少させる」とは、重症度の軽減(例えば、片頭痛用エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミンまたはトリプタンを含む、当該状態のために一般に使用される他の薬剤及び/または治療薬の必要性及び/または量(例えば、曝露量)の低減を含み得る)、継続期間の短縮、及び/または頻度の低減(例えば、個体における次の反復性発作までの時間を遅延させ、または延長させることを含む)のいずれかを意味する。当業者であれば理解するように、治療に対する応答に関しては、個体で異なる場合があることから、例えば、「個体における頭痛の発生を減少させる方法」は、抗CGRPアンタゴニスト抗体の投与により、この特定の個体における発生のこうした減少が生じる可能性があるという合理的な見込みに基づいた、抗CGRPアンタゴニスト抗体の投与を表す。
頭痛または頭痛の1つ若しくは複数の症状を「改善する」とは、抗CGRPアンタゴニスト抗体を投与しない場合と比較して、頭痛の1つ若しくは複数の症状が軽減することまたは良くなることを意味する。「改善する」にはまた、症状の継続期間が短くなることまたは減少することも含まれる。
本明細書で使用するとき、「頭痛を制御する」とは、個体における頭痛の1つ若しくは複数の症状の重症度若しくは継続期間または頭痛発作の頻度が維持されることまたは低減することを指す(治療前のレベルと比較して)。例えば、個体において、頭痛の継続期間若しくは重症度または発作頻度が、治療前のレベルと比較して、少なくともおよそ10%、20%、30%、40%、50%、60%または70%のいずれか低減する。
本明細書で使用するとき、「頭痛時間」とは、対象が頭痛を経験している間の時間を指す。頭痛時間は、整数時間(例えば、1時間、2時間、3時間などの頭痛時間)または整数と端数の時間(例えば、0.5時間、1.2時間、2.67時間などの頭痛時間)で表すことができる。1時間またはそれ以上の頭痛時間は、特定の時間期間に関して記載され得る。例えば、「1日の頭痛時間」は、1日の期間(例えば、24時間)内に対象が経験する頭痛時間数を指し得る。別の例において、「1週間の頭痛時間」は、1週間の期間(例えば、7日間)内に対象が経験する頭痛時間数を指し得る。理解され得るように、1週間の期間は、暦週に対応していても、対応していなくてもよい。別の例において、「1ヶ月の頭痛時間」は、1ヶ月の期間内に対象が経験する頭痛時間数を指し得る。理解され得るように、1ヶ月の期間(例えば、28〜31日の期間)は、特定の月に応じて日数が変動し得、暦月に対応していても、対応していなくてもよい。更に別の例として、「1年の頭痛時間」は、1年の期間内に対象が経験する頭痛時間数を指し得る。理解され得るように、1年の期間(例えば、365日または366日の期間)は、特定の年に応じて日数が変動し得、暦年に対応していても、対応していなくてもよい。いくつかの実施形態において、頭痛時間は、特定の種類の頭痛(例えば、片頭痛、群発頭痛、慢性頭痛及び緊張性頭痛)に関するものであってよい。例えば、「片頭痛時間」は、対象が片頭痛を経験する時間を指し得る。
本明細書で使用するとき、「頭痛日」は、対象が頭痛を経験する日を指し得る。頭痛日は、整数日(例えば、1日、2日、3日などの頭痛日)または整数と端数の日(例えば、0.5日、1.2日、2.67日などの頭痛日)で表すことができる。1日またはそれ以上の頭痛日は、特定の時間期間に関して記載され得る。例えば、「1週間の頭痛日」は、1週間の期間(例えば、7日間)内に対象が経験する頭痛日数を指し得る。理解され得るように、1週間の期間は、暦週に対応していても、対応していなくてもよい。別の例において、「1ヶ月の頭痛日」は、1ヶ月の期間内に対象が経験する頭痛日数を指し得る。理解され得るように、1ヶ月の期間(例えば、28〜31日の期間)は、特定の月に応じて日数が変動し得、暦月に対応していても、対応していなくてもよい。更に別の例において、「1年の頭痛日」は、1年の期間内に対象が経験する頭痛日数を指し得る。理解され得るように、1年の期間(例えば、365日または366日の期間)は、特定の年に応じて日数が変動し得、暦年に対応していても、対応していなくてもよい。いくつかの実施形態において、頭痛日は、特定の種類の頭痛(例えば、片頭痛、群発頭痛、慢性頭痛及び緊張性頭痛)に関するものであってよい。例えば、「片頭痛日」は、対象が片頭痛を経験する日を指し得る。
本明細書で使用するとき、頭痛の発症を「遅らせる」とは、当該疾患の進行を延期し、阻害し、減速させ、遅延し、安定化させ、及び/または先延ばしすることを意味する。この遅延は、疾患歴及び/または治療対象の個体に応じて、様々な時間の長さであり得る。当業者には明らかであるように、十分なまたは有意な遅延は、事実上、個体が頭痛(例えば、片頭痛)を発症しないという点において、予防を包含し得る。症状の発症を「遅らせる」方法は、当該方法を使用しない場合と比較して、所定の時間枠における症状の発症の確率を下げ、及び/または所定の時間枠における症状の程度を低減させる方法である。このような比較は、通常、統計的に有意な数の対象者を用いた臨床試験に基づく。
頭痛の「発症」または「進行」とは、疾患の初期症状及び/または後続の進行を意味する。頭痛の発症は、当該技術分野においてよく知られている標準的な臨床技術を用いて、検出可能であり、評価することができる。しかしながら、発症はまた、検出し得ない進行も指す。本開示の目的上、発症または進行は、症状の生物学的過程を指す。「発症」は、発現、再発及び開始を含む。本明細書で使用するとき、頭痛の「開始」または「発現」は、初期発症及び/または再発を含む。
本明細書で使用するとき、薬物、化合物または医薬組成物の「有効な用量」または「有効量」は、有益なまたは望ましい結果を達成するのに十分な量である。予防的使用に関して、有益なまたは望ましい結果には、疾患のリスクの排除若しくは低下、重症度の軽減、または疾患の生化学的、組織学的及び/または行動学的症状、その合併症及び疾患の発症中に呈示される中間的な病理学的表現型を含む、疾患の開始の遅延などの結果が挙げられる。治療的使用に関して、有益なまたは望ましい結果には、頭痛発作の疼痛強度、継続期間若しくは頻度の低減、ならびにその合併症及び疾患の発症中に呈示される中間的な病理学的表現型を含めた頭痛に起因する1つまたは複数の症状(生化学的、組織学的及び/または行動学的症状)の低減、疾患を患う人の生活の質の向上、疾患を治療するのに必要な他の薬の用量の低減、別の薬の効果の増大、及び/または患者の疾患進行の遅延などの臨床結果が挙げられる。有効な用量は、1回または複数回の投与で投与することができる。本開示の目的上、薬物、化合物または医薬組成物の有効な用量は、直接的または間接的に、予防的処置または治療的処置を実施するのに十分な量である。臨床的状況において理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効な用量は、別の薬物、化合物または医薬組成物と併せて達成されてもよいし、そうでなくてもよい。したがって、「有効な用量」は、1つまたは複数の治療用物質を投与する状況にて考慮され得、単一の作用物質は、1つまたは複数の他の作用物質と併せて望ましい結果を達成し得るか、または達成するのであれば、有効量で投与されたとみなされ得る。
「個体」または「対象」は、哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳類はまた、家畜、競技用動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス及びラットが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用するとき、「ベクター」は、宿主細胞において、1つ若しくは複数の目的の遺伝子または配列を送達し、かつ好ましくはそれらを発現させることができる構築物を意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、ネイキッドDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファジーベクター、カチオン性縮合剤と結合したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム内に封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、及び産生細胞などのある特定の真核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用するとき、「発現制御配列」は、核酸の転写を誘導する核酸配列を意味する。発現制御配列は、構成性若しくは誘導性プロモーターなどのプロモーターまたはエンハンサーであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に機能的に連結している。
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容可能な担体」または「薬学的に許容可能な賦形剤」は、活性成分と組み合わせたときに、その活性成分が生物活性を維持することができ、対象の免疫系と反応性でない、あらゆる物質を含む。例には、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、及び各種の湿潤剤などの標準的な薬学的担体のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。エアロゾルまたは非経口的投与に好ましい希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水または通常(0.9%)生理食塩水である。このような担体を含む組成物は、よく知られている従来方法によって配合される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1990;及びRemington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing,2000を参照)。
「kon」という用語は、本明細書で使用するとき、抗原に対する抗体の結合に関する速度定数を指すものとする。
「koff」という用語は、本明細書で使用するとき、抗体/抗原複合体からの抗体の解離に関する速度定数を指すものとする。
「KD」という用語は、本明細書で使用するとき、抗体−抗原相互作用の平衡解離定数を指すものとする。
本明細書で使用するとき、「血管運動神経症状」という用語は、血管拡張に関連する状態を指すものとする。かかる血管拡張は、頭痛(前兆のあるまたは前兆のない片頭痛、片麻痺性片頭痛、慢性片頭痛、反復性片頭痛、高頻度反復性片頭痛、群発頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、緊張性頭痛、他の医学的状態(感染症または腫瘍に起因する頭蓋内圧亢進など)から生じる頭痛、慢性発作性片側頭痛;器質的病変を伴わない各種頭痛;非血管性頭蓋内疾患に伴う頭痛;原因物質の投与またはその離脱に伴う頭痛;頭部以外の感染症に伴う頭痛;代謝障害に伴う頭痛;頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口または他の顔面・頭蓋組織に起因する頭痛;脳神経痛;ならびに神経幹痛及び求心路遮断性疼痛)、とりわけ体温調節障害によって引き起こされる、顔面潮紅(またはホットフラッシュ)、コールドフラッシュ、不眠、睡眠障害、気分障害、過敏性、多汗、寝汗、日中の汗、疲労などに関連し得る、または関連する可能性がある。
本明細書で使用するとき、「潮紅」、「顔面潮紅」及び「ホットフラッシュ」という用語は、当該技術分野で認識されている用語であり、対象における、通常は発汗を伴う突発性の皮膚潮紅から典型的になる、体温の断続的な乱れを指す。
A.血管運動神経症状及び/または頭痛を予防または治療するための方法
一態様において、本発明は、対象における少なくとも1つの血管運動神経症状を治療し、またはその発生を減少させる方法を提供する。別の態様において、本発明は、対象における頭痛(例えば、片頭痛)を治療し、またはその発生を減少させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、CGRP経路を調節する、有効量の抗体(例えば、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)または当該抗体に由来するポリペプチドを個体に投与することを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの血管運動神経症状は、頭痛(例えば、片頭痛)及び/または顔面潮紅に関連し得る。
別の態様において、本発明は、個体における少なくとも1つの血管運動神経症状を改善し、制御し、その発生を減少させ、またはその発症若しくは進行を遅らせるための方法を提供し、この方法は、その個体に有効量の抗CGRPアンタゴニスト抗体を投与することを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの血管運動神経症状は、頭痛(例えば、片頭痛)及び/または顔面潮紅に関連し得る。
別の態様において、本発明は、個体における頭痛(例えば、片頭痛)または頭痛に関連する症状(例えば、下痢または光過敏)を改善し、制御し、その発生を減少させ、またはその発症若しくは進行を遅らせるための方法を提供し、この方法は、その個体に有効量のCGRP経路を調節する抗体または抗CGRPアンタゴニスト抗体を、頭痛の治療に有用な少なくとも1つの追加の作用物質と組み合わせて投与することを含む。
かかる追加の作用物質には、5−HTアゴニスト及びNSAIDが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、抗体と少なくとも1つの追加の作用物質を同時に投与することができ、すなわち、その個々の治療的効果が重なり合うように時間的に十分近接して投与することができる。例えば、抗CGRP抗体と組み合わせて投与される5−HTアゴニストまたはNSAIDの量は、患者における頭痛の再発頻度を減少させ、またはこれらの作用物質の一方を投与せずにいずれか1つを投与した場合と比較してより長い持続効果をもたらすのに十分なものである必要がある。この手順は、頭痛を治療するために用いることができ、頭痛は、前兆のあるまたは前兆のない片頭痛、片麻痺性片頭痛、慢性片頭痛、反復性片頭痛、高頻度反復性片頭痛、群発頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、緊張性頭痛、他の医学的状態(感染症または腫瘍に起因する頭蓋内圧亢進など)から生じる頭痛、慢性発作性片側頭痛;器質的病変を伴わない各種頭痛;非血管性頭蓋内疾患に伴う頭痛;原因物質の投与またはその離脱に伴う頭痛;頭部以外の感染症に伴う頭痛;代謝障害に伴う頭痛;頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口または他の顔面・頭蓋組織に起因する頭痛;脳神経痛;ならびに神経幹痛及び求心路遮断性疼痛を含む、多様な種類のいずれかに該当するものである。
抗CGRPアンタゴニスト抗体と組み合わせて投与され得る追加の作用物質の追加の非限定的な例には、以下のうちの1つまたは複数が挙げられる。
(i)オピオイド鎮痛薬、例えば、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、レボルファノール、レバロルファン、メタドン、メペリジン、フェンタニル、コカイン、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィンまたはペンタゾシン;
(ii)非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサール、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン若しくはゾメピラク、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害薬、セレコキシブ;ロフェコキシブ;メロキシカム;JTE−522;L−745,337;NS398またはこれらの薬学的に許容可能な塩;
(iii)バルビツール酸系鎮静薬、例えば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタビタール(butabital)、メホバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルチタール(phenobartital)、セコバルビタール、タルブタール、テアミラール(theamylal)またはチオペンタールまたはこれらの薬学的に許容可能な塩;
(iv)バルビツール酸系鎮痛薬、例えば、ブタルビタール若しくはこれらの薬学的に許容可能な塩またはブタルビタールを含む組成物;
(v)鎮静作用を有するベンゾジアゼピン、例えば、クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム若しくはトリアゾラムまたはこれらの薬学的に許容可能な塩;
(vi)鎮静作用を有するH1アンタゴニスト、例えば、ジフェンヒドラミン、ピリラミン、プロメタジン、クロルフェニラミン若しくはクロルシクリジンまたはこれらの薬学的に許容可能な塩;
(vii)グルテチミド、メプロバメート、メタカロン若しくはジクロラールフェナゾンまたはこれらの薬学的に許容可能な塩などの鎮静薬;
(viii)骨格筋弛緩薬、例えば、バクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモール若しくはオルフェナドリンまたはこれらの薬学的に許容可能な塩;
(ix)NMDA受容体アンタゴニスト、例えば、デキストロメトルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)またはその代謝産物のデキストロルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)、ケタミン、メマンチン、ピロロキノリンキノン若しくはcis−4−(ホスホノメチル)−2−ピペリジンカルボン酸またはこれらの薬学的に許容可能な塩;
(x)アルファ−アドレナリン作動薬、例えば、ドキサゾシン、タムスロシン、クロニジンまたは4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン;
(xi)三環系抗うつ薬、例えば、デシプラミン、イミプラミン、アミトリプチリンまたはノルトリプチリン;
(xii)抗痙攣薬、例えば、カルバマゼピンまたはバルプロ酸;
(xiii)タキキニン(NK)アンタゴニスト、特にNK−3、NK−2またはNK−1アンタゴニスト、例えば、(αR,9R)−7−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]−8,9,10,11−テトラヒドロ−9−メチル−5−(4−メチルフェニル)−7H−[1,4]ジアゾチノ[2,1−g][1,7]ナフチリジン−6−13−ジオン(TAK−637)、5−[[(2R,3S)−2−[(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ−3−(4−フルオロフェニル)−4−モルホリニル]メチル]−1,2−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オン(MK−869)、ラネピタント、ダピタントまたは3−[[2−メトキシ−5−(トリフルオロメトキシ)フェニル]メチルアミノ]−2−フェニル−ピペリジン(2S,3S);
(xiv)ムスカリンアンタゴニスト、例えば、オキシブチン(oxybutin)、トルテロジン、プロピベリン、トロプシウム(tropsium)塩化物またはダリフェナシン;
(xv)COX−2阻害薬、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブまたはバルデコキシブ;
(xvi)非選択的COX阻害薬(好ましくはGI保護を有するもの)、例えば、ニトロフルルビプロフェン(HCT−1026);
(xvii)コールタール鎮痛薬、特にパラセタモール;
(xviii)ドロペリドールなどの神経弛緩薬;
(xix)バニロイド受容体アゴニスト(例えば、レシンフェラトキシン(resinferatoxin))またはアンタゴニスト(例えば、カプサゼピン);
(xix)プロプラノロールなどのベータアドレナリン作動性薬;
(xx)メキシレチンなどの局所麻酔薬;
(xxi)デキサメタゾンなどのコルチコステロイド;
(xxii)セロトニン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト;
(xxiii)コリン作動性(ニコチン)鎮痛薬;
(xxiv)トラマドール(商標);
(xxv)シルデナフィル、バルデナフィルまたはタラダフィル(taladafil)などのPDEV阻害薬;
(xxvi)ガバペンチンまたはプレガバリンなどのアルファ−2−デルタリガンド;
(xxvii)カナビノイド(canabinoid);及び
(xxviii)アミトリプチリン(Elavil)、トラゾドン(Desyrel)及びイミプラミン(Tofranil)などの抗うつ薬またはフェニトイン(Dilantin)若しくはカルバマゼピン(Tegretol)などの抗痙攣薬。
当業者であれば、抗CGRP抗体と組み合わせて使用される特定の作用物質の適切な用量を決定することができるであろう。例えば、スマトリプタンは、約0.01〜約300mgの用量で投与され得る。場合によって、スマトリプタンは、2mg〜300mgの用量で投与され得る。スマトリプタンの典型的な用量は、非経口以外で投与される場合、約25〜約100mgであり、通常は約50mgが好ましく、非経口的に投与される場合、好ましい用量は、約6mgである。しかしながら、これらの用量は、特定の患者または特定の併用療法にとって最適なものとなるように、当該技術分野において標準的な方法に従って変更されてよい。更に、例えば、セレコキシブを50〜500mgの量で投与してもよい。
別の態様において、本発明は、個体における顔面潮紅を改善し、制御し、その発生を減少させ、またはその発症若しくは進行を遅らせるための方法を提供し、この方法は、その個体に有効量の抗CGRPアンタゴニスト抗体を、顔面潮紅の治療に有用な少なくとも1つの追加の作用物質と組み合わせて投与することを含む。かかる追加の作用物質には、エストロゲン及び/またはいくつかのプロゲスチンを含むホルモン系治療薬が挙げられるが、これらに限定されない。
別の態様において、本開示は、対象における頭痛(例えば、片頭痛)を治療し、またはその発生を減少させる方法を提供し、この方法は、CGRP経路を調節する、ある量のモノクローナル抗体(例えば、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を対象に複数日に投与することを含む。いくつかの実施形態において、複数日の各日に投与されるモノクローナル抗体の量は、0.1mg〜5000mg、1mg〜5000mg、10mg〜5000mg、100mg〜5000mg、1000mg〜5000mg、0.1mg〜4000mg、1mg〜4000mg、10mg〜4000mg、100mg〜4000mg、1000mg〜4000mg、0.1mg〜3000mg、1mg〜3000mg、10mg〜3000mg、100mg〜3000mg、1000mg〜3000mg、0.1mg〜2000mg、1mg〜2000mg、10mg〜2000mg、100mg〜2000mg、1000mg〜2000mg、0.1mg〜1000mg、1mg〜1000mg、10mg〜1000mgまたは100mg〜1000mgであってよい。いくつかの実施形態において、当該量は、100〜2000mgである。
別の態様において、本開示は、対象における頭痛(例えば、片頭痛)を治療し、またはその発生を減少させる方法を提供し、この方法は、CGRP経路を調節する量で、単回用量のモノクローナル抗体(例えば、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、単回用量は、0.1mg〜5000mg、1mg〜5000mg、10mg〜5000mg、100mg〜5000mg、1000mg〜5000mg、0.1mg〜4000mg、1mg〜4000mg、10mg〜4000mg、100mg〜4000mg、1000mg〜4000mg、0.1mg〜3000mg、1mg〜3000mg、10mg〜3000mg、100mg〜3000mg、1000mg〜3000mg、0.1mg〜2000mg、1mg〜2000mg、10mg〜2000mg、100mg〜2000mg、1000mg〜2000mg、0.1mg〜1000mg、1mg〜1000mg、10mg〜1000mgまたは100mg〜1000mgの抗体量であってよい。いくつかの実施形態において、単回用量は、100〜2000mgの抗体量であってよい。
別の態様において、本開示は、対象における少なくとも1つの血管運動神経症状を治療し、またはその発生を減少させる方法を提供し、この方法は、CGRP経路を調節する、ある量のモノクローナル抗体(例えば、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を対象に複数日に投与することを含む。いくつかの実施形態において、複数日の各日に投与されるモノクローナル抗体の量は、0.1mg〜5000mg、1mg〜5000mg、10mg〜5000mg、100mg〜5000mg、1000mg〜5000mg、0.1mg〜4000mg、1mg〜4000mg、10mg〜4000mg、100mg〜4000mg、1000mg〜4000mg、0.1mg〜3000mg、1mg〜3000mg、10mg〜3000mg、100mg〜3000mg、1000mg〜3000mg、0.1mg〜2000mg、1mg〜2000mg、10mg〜2000mg、100mg〜2000mg、1000mg〜2000mg、0.1mg〜1000mg、1mg〜1000mg、10mg〜1000mgまたは100mg〜1000mgであってよい。いくつかの実施形態において、当該量は、100〜2000mgである。
別の態様において、本開示は、対象が経験する1ヶ月の頭痛時間数を減らす方法を提供し、この方法は、CGRP経路を調節する、ある量のモノクローナル抗体(例えば、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、単回投与後、1ヶ月の頭痛時間数を少なくとも0.1、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100時間またはそれ以上の頭痛時間分減少させるのに有効な量であり得る。いくつかの実施形態において、モノクローナルは、単回投与後、1ヶ月の頭痛時間数を少なくとも20時間の頭痛時間分減少させるのに有効な量であり得る。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、1ヶ月の頭痛時間数を少なくとも40時間の頭痛時間分減少させるのに有効な量であり得る。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、単回投与後、1ヶ月の頭痛時間数を少なくとも0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上減少させるのに有効な量であり得る。いくつかの実施形態において、モノクローナルは、単回投与後、1ヶ月の頭痛時間数を少なくとも15%減少させるのに有効な量であり得る。
別の態様において、本開示は、対象が経験する1ヶ月の頭痛日数を減らす方法を提供し、この方法は、CGRP経路を調節する、ある量のモノクローナル抗体(例えば、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、単回投与後、1ヶ月の頭痛日数を少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日またはそれ以上の頭痛日分減少させるのに有効な量であり得る。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、単回投与後、1ヶ月の頭痛日数を少なくとも3日の頭痛日数分減少させるのに有効な量であり得る。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、単回投与後、1ヶ月の頭痛日間数を少なくとも0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上減少させるのに有効な量であり得る。
別の態様において、本開示は、対象における抗頭痛薬の使用を減らす方法を提供し、この方法は、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体(例えば、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、対象の抗頭痛薬の月間使用を少なくとも0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上減少させるのに有効な量であり得る。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、対象の抗頭痛薬の月間使用を少なくとも15%減少させるのに有効な量であり得る。抗頭痛薬は、本明細書に別途記載する抗頭痛薬の任意の種類であり得る。抗頭痛薬の非限定的な例としては、5−HT1アゴニスト(及び他の5−HT1部位に作用するアゴニスト)、トリプタン(例えば、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、エレトリプタン、アルモトリプタン、アフロバトリプタン(afrovatriptan))、麦角アルカロイド(例えば、エルゴタミン酒石酸塩、エルゴノビンマレイン酸塩及びエルゴロイドメシル酸塩(例えば、ジヒドロエルゴコルニン、ジヒドロエルゴクリスチン、ジヒドロエルゴクリプチン及びジヒドロエルゴタミンメシル酸塩(DHE45))、及び非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサール、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチンまたはゾメピラク、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害薬、セレコキシブ;ロフェコキシブ;メロキシカム;JTE−522;L−745,337;NS398またはこれらの薬学的に許容可能な塩)、オピエート(例えば、オキシコドン)及びβ−アドレナリン遮断薬(例えば、プロプラノロール)が挙げられる。
本明細書に記載の全ての方法に関して、抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)への言及には、これらの作用物質のうちの1つまたは複数を含む組成物も包含される。したがって、このような組成物を、本明細書に記載の抗体に関する方法に従って用いることができる。これらの組成物は、本明細書に別途記載する薬学的に許容可能な賦形剤などの好適な賦形剤を更に含み得る。本発明は、単独で用いてもよいし、従来の他の治療法と組み合わせて用いてもよい。
本明細書に記載の抗体(例えば、モノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)は、任意の治療用量で、任意の好適な経路により、任意の好適な配合で個体または対象に投与することができる。当業者であれば、本明細書に記載する例が限定ではなく、利用可能な技術の例示を意図することは明らかであろう。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、既知の方法に従って、例えば、静脈内投与(例えば、ボーラスまたは一定期間にわたる連続注入)、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、舌下、動脈内、滑液嚢内、吹送、髄腔内、経口、吸入、経鼻(例えば、吸入ありまたは吸入なし)、頬側、経直腸、経皮、心臓内、骨内、皮内、経粘膜、経膣、硝子体内、関節周囲内、局部、皮膚上または局所経路を介して、個体に投与することができる。投与は、例えば、静脈内投与の全身投与であっても、局所投与であってもよい。液剤には、ジェットネブライザー及び超音波ネブライザーを含む、市販のネブライザーが投与に有用である。液剤は、直接霧化することもできるし、凍結乾燥粉末を再構成後に霧化することもできる。あるいは、本明細書に記載の抗体は、フルオロカーボン配合物及び定量吸入器を用いてエアロゾル化することもできるし、凍結乾燥して粉砕した粉末として吸入されてもよい。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、部位特異的または標的化局所送達技術によって投与することができる。部位特異的または標的化局所送達技術には、種々の埋め込み可能な抗体の貯蔵源、注入カテーテル、留置カテーテル若しくはニードルカテーテルなどの局所送達カテーテル、人工血管、外膜ラップ、シャント及びステント若しくは他の埋め込み可能な装置、部位特異的な担体、直接注射または直接適用が挙げられる。例えば、PCT国際公開番号WO00/53211及び米国特許第5,981,568号を参照されたい。
本明細書に記載する抗体の種々の製剤を投与に用いることができる。いくつかの実施形態において、抗体は、そのまま投与されてよい。いくつかの実施形態において、抗体及び薬学的に許容可能な賦形剤は、種々の製剤であってよい。薬学的に許容可能な賦形剤は、当該技術分野において知られており、薬理学的に有効な物質の投与を促進する、比較的不活性な物質である。例えば、賦形剤は、形態または粘稠性を与えることができ、または希釈剤として作用することができる。好適な賦形剤には、安定化剤、湿潤乳化剤、浸透圧モル濃度を変更するための塩、カプセル化剤、緩衝剤及び皮膚浸透助剤が挙げられるが、これらに限定されない。非経口及び非経口以外の薬物送達のための賦形剤及び製剤化については、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000)に記載されている。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体を含む、これらの作用物質は、注入(例えば、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内など)による投与用に製剤化されてよい。したがって、これらの作用物質は、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液などの薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わせることができる。具体的な投与レジメン、すなわち、用量、タイミング及び反復は、特定の個体及びその個体の病歴によって異なる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体を含む、これらの作用物質は、末梢投与用に製剤化されてよい。かかる製剤は、静脈内及び皮下を含む、任意の好適な末梢経路を介して末梢から投与することができる。末梢投与用に調製される作用物質には、中枢的、脊髄的、鞘内またはCNSに直接的に送達されない物質、薬剤及び/または抗体を含むことができる。末梢投与経路の非限定的な例としては、経口、舌下、頬側、局所、経直腸、吸入、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、骨内、皮内、腹腔内、経粘膜、経膣、硝子体内、関節内、関節周囲内、局部または皮膚上である経路が挙げられる。
本開示に従って使用される抗体の治療用製剤は、保存及び/または使用のために、所望の純度を有する抗体を、任意選択の薬学的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤と混合することによって、調製することができ(Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000))、場合によって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態であってよい。許容可能な担体、賦形剤または安定剤は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である。抗体の治療用製剤は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤を含み得、これらの種類の非限定的な例には、リン酸、クエン酸及び他の有機酸などの緩衝剤;塩化ナトリウムなどの塩;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、メチオニン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリシンなどのアミノ酸(例えば、0.1mM〜100mM、0.1mM〜1mM、0.01mM〜50mM、1mM〜50mM、1mM〜30mM、1mM〜20mM、10mM〜25mMの濃度);グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む単糖、二糖及び他の炭水化物;EDTA(例えば、EDTA二ナトリウム二水和物)などのキレート剤(例えば、0.001mg/mL〜1mg/mL、0.001mg/mL〜1mg/mL、0.001mg/mL〜0.1mg/mL、0.001mg/mL〜0.01mg/mL、0.01mg/mL〜0.1mg/mLの濃度);スクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトールなどの糖(例えば、1mg/mL〜500mg/mL、10mg/mL〜200mg/mL、10mg/mL〜100mg/mL、50mg/mL〜150mg/mLの濃度);ナトリウムなどの塩生成対イオン;金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);及び/またはTWEEN(商標)(例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80))、PLURONICS(商標)若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤(例えば、0.01mg/mL〜10mg/mL、0.01mg/mL〜1mg/mL、0.1mg/mL〜1mg/mL、0.01mg/mL〜0.5mg/mLの濃度)が挙げられる。
抗体製剤は、様々な物理的性質のいずれかの点から特性評価され得る。例えば、液体の抗体製剤は、治療的有効性、安全性及び保存に好適な任意のpHを有し得る。例えば、液体の抗体製剤のpHは、pH4〜pH約9、pH5〜pH8、pH5〜pH7またはpH6〜pH8であってよい。いくつかの実施形態において、液体の抗体製剤は、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5若しくは10以上または以下のpHを有し得る。
別の例として、液体の抗体製剤は、治療的有効性、安全性及び保存に好適な任意の粘度を有し得る。例えば、液体の抗体製剤の粘度は、25℃で、0.5cP(センチポアズ)〜100cP、1cP〜50cP、1cP〜20cP、1cP〜15cPまたは5cP〜15cPであってよい。いくつかの実施形態において、液体の抗体製剤は、25℃で、0.5cP、1cP、1.2cP、1.4cP、1.6cP、1.8cP、2.0cP、2.2cP、2.4cP、2.6cP、2.8cP、3.0cP、3.2cP、3.4cP、3.6cP、3.8cP、4.0cP、4.2cP、4.4cP、4.6cP、4.8cP、5.0cP、5.2cP、5.4cP、5.6cP、5.8cP、6.0cP、6.2cP、6.4cP、6.6cP、6.8cP、7.0cP、7.2cP、7.4cP、7.6cP、7.8cP、8.0cP、8.2cP、8.4cP、8.6cP、8.8cP、9.0cP、9.2cP、9.4cP、9.6cP、9.8cP、10.0cP、10.2cP、10.4cP、10.6cP、10.8cP、11.0cP、11.2cP、11.4cP、11.6cP、11.8cP、12.0cP、12.2cP、12.4cP、12.6cP、12.8cP、13.0cP、13.2cP、13.4cP、13.6cP、13.8cP、14.0cP、14.2cP、14.4cP、14.6cP、14.8cPまたは15.0cPの粘度を有し得、粘度はこれ以上でもこれ以下であってもよい。
別の例において、液体の抗体製剤は、治療的有効性、安全性及び保存に好適な任意の導電率を有し得る。例えば、液体の抗体製剤の導電率は、0.1mS/cm(ミリジーメンス毎センチメートル)〜15mS/cm、0.1mS/cm〜10mS/cm、0.1mS/cm〜5mS/cm、0.1mS/cm〜2mS/cmまたは0.1mS/cm〜1.5mS/cmであってよい。いくつかの実施形態において、液体の抗体製剤は、0.19mS/cm、0.59mS/cm、1.09mS/cm、1.19mS/cm、1.29mS/cm、1.39mS/cm、1.49mS/cm、1.59mS/cm、1.69mS/cm、1.79mS/cm、1.89mS/cm、1.99mS/cm、2.09mS/cm、2.19mS/cm、2.29mS/cm、2.39mS/cm、2.49mS/cm、2.59mS/cm、2.69mS/cm、2.79mS/cm、2.89mS/cm、2.99mS/cm、3.09mS/cm、3.19mS/cm、3.29mS/cm、3.39mS/cm、3.49mS/cm、3.59mS/cm、3.69mS/cm、3.79mS/cm、3.89mS/cm、3.99mS/cm、4.09mS/cm、4.19mS/cm、4.29mS/cm、4.39mS/cm、4.49mS/cm、4.59mS/cm、4.69mS/cm、4.79mS/cm、4.89mS/cm、4.99mS/cm、5.09mS/cm、6.09mS/cm、6.59mS/cm、7.09mS/cm、7.59mS/cm、8.09mS/cm、8.59mS/cm、9.09mS/cm、9.59mS/cm、10.09mS/cm、10.59mS/cm、11.09mS/cm、11.59mS/cm、12.09mS/cm、12.59mS/cm、13.09mS/cm、13.59mS/cm、14.09mS/cm、14.59mS/cmまたは15.09mS/cmの導電率を有し得、導電率はこれ以上でもこれ以下であってもよい。
別の例において、液体の抗体製剤は、治療的有効性、安全性及び保存に好適な任意のモル浸透圧濃度を有し得る。例えば、液体の抗体製剤のモル浸透圧濃度は、50mOsm/kg(ミリオスモル毎キログラム)〜5000mOsm/kg、50mOsm/kg〜2000mOsm/kg、50mOsm/kg〜1000mOsm/kg、50mOsm/kg〜750mOsm/kgまたは50mOsm/kg〜500mOsm/kgであってよい。いくつかの実施形態において、液体の抗体製剤は、50mOsm/kg、60mOsm/kg、70mOsm/kg、80mOsm/kg、90mOsm/kg、100mOsm/kg、120mOsm/kg、140mOsm/kg、160mOsm/kg、180mOsm/kg、200mOsm/kg、220mOsm/kg、240mOsm/kg、260mOsm/kg、280mOsm/kg、300mOsm/kg、320mOsm/kg、340mOsm/kg、360mOsm/kg、380mOsm/kg、400mOsm/kg、420mOsm/kg、440mOsm/kg、460mOsm/kg、480mOsm/kg、500mOsm/kg、520mOsm/kg、540mOsm/kg、560mOsm/kg、580mOsm/kg、600mOsm/kg、620mOsm/kg、640mOsm/kg、660mOsm/kg、680mOsm/kg、700mOsm/kg、720mOsm/kg、740mOsm/kg、760mOsm/kg、780mOsm/kg、800mOsm/kg、820mOsm/kg、840mOsm/kg、860mOsm/kg、880mOsm/kg、900mOsm/kg、920mOsm/kg、940mOsm/kg、960mOsm/kg、980mOsm/kg、1000mOsm/kg、1050mOsm/kg、1100mOsm/kg、1150mOsm/kg、1200mOsm/kg、1250mOsm/kg、1300mOsm/kg、1350mOsm/kg、1400mOsm/kg、1450mOsm/kg、1500mOsm/kgのモル浸透圧濃度を有し得、モル浸透圧濃度はこれ以上でもこれ以下であってもよい。
抗体を含有するリポソームは、当該技術分野において知られている方法、例えば、Epstein,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688(1985);Hwang,et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA 77:4030(1980);ならびに米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号に記載されている方法によって調製することができる。循環時間を向上させたリポソームについては、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いて、逆相蒸発法によって作製することができる。定めた孔径のフィルターを通してリポソームを押し出すことで、所望の直径を有するリポソームが得られる。
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術若しくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンのマイクロカプセル及びポリ(メチルメタシレート(methylmethacylate))マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、またはマクロエマルション中に閉じ込めてもよい。こうした技術は、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000)に開示されている。
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスが挙げられ、このマトリクスは、成形物品の形態、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルである。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とL−グルタミン酸7−エチルのコポリマー、非分解性エチレン−ビニルアセテート、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸リュープロリドからなる注入可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、スクロース酢酸イソブチル及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
インビボ投与に使用する製剤は、一般に、滅菌したものである必要がある。これは、例えば、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に行うことができる。治療用抗体組成物は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアル中に入れられる。
本発明による組成物は、経口、非経口若しくは経直腸投与または吸入若しくは吹送による投与のための錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、粒剤、液剤若しくは懸濁剤または坐剤などの単位剤形であってよい。場合によって、単位剤形は、その単位用量を対象に投与するのに有用なプレフィルド容器(例えば、プレフィルドシリンジ)で提供してもよい。
錠剤などの固形組成物を調製するために、主要な活性成分と、薬学的担体(例えば、コーンスターチ、ラクトース、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸ニカルシウムまたはガムなどの従来の錠剤化成分)及び他の薬学的希釈剤(例えば、水)とを混合して、本発明の化合物または非毒性の薬学的に許容可能なその塩の均一混合物を含有する固形製剤前組成物を形成することができる。これらの製剤前組成物を均一であると称する場合、これは、活性成分が当該組成物全体に均一に分散されており、そのため、組成物を錠剤、丸剤及びカプセル剤などの等しく有効な単位剤形に容易に分割することができることを意味する。次いで、この固形製剤前組成物を、0.1〜約500mgの本発明の活性成分を含有する、上述した種類の単位剤形に分割する。新規組成物の錠剤または丸剤をコーティングし、または別の方法で調合して、持続性作用の利点をもたらす剤形を提供することができる。例えば、錠剤または丸剤は、内側投与成分及び外側投与成分を含み、外側投与成分が内側投与成分を包む形態にすることができる。この2つの成分は、胃内での分解に抵抗するように働き、内側成分を完全なまま十二指腸に到達させるか、または内側成分の放出を遅延させられる腸溶性の層により隔てることができる。このような腸溶性層またはコーティングには、様々な材料を使用することができ、このような材料には、多数のポリマー酸ならびにポリマー酸とセラック、セチルアルコール及び酢酸セルロースなどの材料との混合物が挙げられる。
好適な界面活性剤には、特に、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、Tween(商標)20、40、60、80または85)及び他のソルビタン(例えば、Span(商標)20、40、60、80または85)などの非イオン性剤が挙げられる。界面活性剤を含む組成物は、好都合には、0.05〜5%の界面活性剤を含み、0.1〜2.5%であり得る。必要であれば、他の成分、例えば、マンニトールまたは他の薬学的に許容可能なビヒクルを加えてもよいことが理解されよう。
好適な乳剤は、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)及びLipiphysan(商標)などの市販の脂肪乳剤を用いて調製することができる。活性成分は、予め混合した乳剤組成物中に溶解させてもよいし、あるいは、油(例えば、ダイズ油、サフラワー油、綿実油、ゴマ油、コーン油またはアーモンド油)中に溶解させてもよく、これをリン脂質(例えば、卵のリン脂質、大豆のリン脂質または大豆レシチン)及び水と混合すると乳剤が形成される。他の成分、例えば、グリセロールまたはグルコースを加えて、乳剤の張度を調整してもよいことが理解されよう。好適な乳剤は、通常、最大20%、例えば、5〜20%の油を含む。脂肪乳剤は、0.1〜1.0lm、特に0.1〜0.5lmの脂肪滴を含み得、5.5〜8.0の範囲のpHを有し得る。
乳剤組成物は、抗体と、Intralipid(商標)またはその成分(ダイズ油、卵のリン脂質、グリセロール及び水)とを混合することによって調製されたものであってよい。
吸入または吹送のための組成物には、薬学的に許容可能な水性溶媒若しくは有機溶媒またはその混合物中の液剤及び懸濁剤、ならびに散剤が挙げられる。液体または固形組成物は、上記の好適な薬学的に許容可能な賦形剤を含有し得る。いくつかの実施形態において、組成物は、局所的または全身的な効果を得るために、経口または経鼻の呼吸経路によって投与される。好ましくは滅菌した薬学的に許容可能な溶媒中の組成物を、ガスを用いて霧化することができる。霧化した液剤を霧化装置から直接吸い込んでもよいし、霧化装置にフェイスマスク、テントまたは間欠的陽圧呼吸器を取り付けてもよい。液剤、懸濁剤または散剤組成物は、当該製剤を適切な方法で送達する装置から、好ましくは経口または経鼻により投与してもよい。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を含む製剤は、0.1mg〜3000mg、1mg〜1000mg、100〜1000mgまたは100〜500mgの範囲の抗体量で、任意の好適な投与経路用に調製することができる。いくつかの場合、本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を含む製剤は、多くともまたは少なくとも0.1mg、1mg、100mg、1mg、10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mgまたは3000mgの抗体量を含み得る。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を含む液剤は、0.1〜500mg/mL、0.1〜375mg/mL、0.1〜250mg/mL、0.1〜175mg/mL、0.1〜100mg/mL、1mg/mL〜500mg/mL、1mg/mL〜375mg/mL、1mg/mL〜300mg/mL、1mg/mL〜250mg/mL、1mg/mL〜200mg/mL、1mg/mL〜150mg/mL、1mg/mL〜100mg/mL、10mg/mL〜500mg/mL、10mg/mL〜375mg/mL、10mg/mL〜250mg/mL、10mg/mL〜150mg/mL、10mg/mL〜100mg/mL、100mg/mL〜500mg/mL、100mg/mL〜450mg/mL、100mg/mL〜400mg/mL、100mg/mL〜350mg/mL、100mg/mL〜300mg/mL、100mg/mL〜250mg/mL、100mg/mL〜200mg/mLまたは100mg/mL〜150mg/mLの範囲の抗体濃度で、任意の好適な投与経路用に調製することができる。いくつかの実施形態において、液剤は、本明細書に記載の抗体を、0.1、0.5、1、5、10、15 20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105 110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490若しくは500mg/mLの濃度、多くともこれらの濃度、または少なくともこれらの濃度で含み得る。
抗体製剤は、抗体及び本明細書に別途記載する他の種類を含む、1つまたは複数の構成成分を含み得る。抗体及び別の構成成分は、抗体の治療的有効性、安全性及び保存に好適な任意の量及び/または好適な任意の濃度であってよい。一例として、抗体製剤は、51.4mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、20mMのヒスチジン、0.1mg/mLのメチオニン、84mg/mLのトレハロース二水和物、0.05mg/mLのEDTA二ナトリウム二水和物及び0.2mg/mLのポリソルベート80を含む溶液であってよい。
別の例において、抗体製剤は、200mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、15mMのアルギニン、78mg/mLのスクロース、0.3mg/mLのEDTA及び0.1mg/mLのポリソルベート80を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、175mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、20mMのグリシン、88mg/mLのトレハロース二水和物、0.015mg/mLのEDTA及び0.25mg/mLのポリソルベート80を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、225mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、23mMのアスパラギン、84mg/mLのソルビトール、0.1mg/mLのEDTA及び0.15mg/mLのポリソルベート60を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、150mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、17mMのアスパラギン、74mg/mLのマンニトール、0.025mg/mLのEDTA及び0.2mg/mLのポリソルベート80を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、100mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、16mMのアルギニン、87mg/mLのマンニトール、0.025mg/mLのEDTA及び0.15mg/mLのポリソルベート20を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、250mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、25mMのヒスチジン、74mg/mLのマンニトール、0.025mg/mLのEDTA及び0.25mg/mLのポリソルベート20を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、50mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、19mMのアルギニン、84mg/mLのスクロース、0.05mg/mLのEDTA及び0.3mg/mLのポリソルベート80を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、125mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、22mMのグリシン、79mg/mLのトレハロース二水和物、0.15mg/mLのEDTA及び0.15mg/mLのポリソルベート80を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、175mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、20mMのヒスチジン、0.1mg/mLのメチオニン、84mg/mLのトレハロース二水和物、0.05mg/mLのEDTA二ナトリウム二水和物及び0.2mg/mLのポリソルベート80を含む溶液であってよい。
別の例において、抗体製剤は、200mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、30mMのアルギニン、78mg/mLのスクロース、0.3mg/mLのEDTA及び0.1mg/mLのポリソルベート80を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、175mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、20mMのグリシン、88mg/mLのトレハロース二水和物、0.015mg/mLのEDTA及び0.15mg/mLのポリソルベート80を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、150mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、20mMのヒスチジン、84mg/mLのスクロース、0.05mg/mLのEDTA及び0.2mg/mLのポリソルベート80を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、225mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、23mMのヒスチジン、84mg/mLのソルビトール、0.1mg/mLのEDTA及び0.15mg/mLのポリソルベート60を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、150mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、17mMのアスパラギン、74mg/mLのマンニトール、0.3mg/mLのEDTA及び0.2mg/mLのポリソルベート80を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、100mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、16mMのアルギニン、87mg/mLのマンニトール、0.025mg/mLのEDTA及び0.25mg/mLのポリソルベート20を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、250mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、25mMのヒスチジン、89mg/mLのマンニトール、0.025mg/mLのEDTA及び0.25mg/mLのポリソルベート20を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、125mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、29mMのアルギニン、84mg/mLのスクロース、0.05mg/mLのEDTA及び0.3mg/mLのポリソルベート80を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、150mg/mLの抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、25mMのアスパラギン、84mg/mLのマンニトール、0.05mg/mLのEDTA及び0.2mg/mLのポリソルベート80を含み得る。
別の例において、抗体製剤は、145のmg/mL抗体(例えば、抗体G1、別の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)、22mMのヒスチジン、72mg/mLのトレハロース二水和物、0.05mg/mLのEDTA及び0.1mg/mLのポリソルベート80を含み得る。
本明細書に記載の抗体は、注入(例えば、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内など)を含む、任意の好適な方法を用いて投与することができる。抗体はまた、本明細書に記載するように、吸入を介して投与することができる。いくつかの場合、抗体は、吸入ありまたは吸入なしで経鼻投与されてもよい。一般に、本明細書に記載する抗体の投与に関して、初回候補用量は、約2mg/kgであってよい。本発明の目的上、典型的な1日用量は、前述の要因に応じて、約3μg/kgから30μg/kg、300μg/kg、3mg/kg、30mg/kg、100mg/kgまたはそれ以上までの範囲で変動し得る。例えば、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg及び約25mg/kgの用量を用いることができる。数日またはそれ以上にわたる反復投与については、状態に応じて、症状の所望の抑制が生じるまでまたは十分な治療レベル、例えば、疼痛の減少が達成されるまで、治療を継続する。例示的な投薬レジメンは、約8.5mg/kgの初回投与量に続き、毎週約2.8mg/kgの抗体の維持投与量または隔週約2.8mg/kgの維持投与量を投与することを含む。別の例示的な投薬レジメンは、100mg、125mg、150mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、675mgまたは900mgの用量を月1回、対象に皮下投与することを含む。別の例示的な投薬レジメンは、675mgの初回投与量を皮下投与し、続いて、225mgの抗体の月間投与量を皮下投与することを含む。しかしながら、医師が達成しようとする薬物動態減衰のパターンに応じて、他の投与レジメンが有用である場合もある。例えば、いくつかの実施形態において、週1〜4回の投薬が企図される。この治療の経過は、従来の技術及びアッセイによって容易に観察される。投薬レジメン(使用されるCGRPアンタゴニスト(複数可)を含む)は、時間の経過とともに変化し得る。
いくつかの実施形態において、対象に投与される本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)の用量または量は、0.1μg〜3000mg、1mg〜1000mg、100〜1000mg、100〜500mg、0.1mg〜5000mg、1mg〜4000mg、250mg〜1000mg、500mg〜1000mg、100mg〜900mg、400mg〜900mg、10mg〜3000mg、10mg〜2000mg、100mg〜2000mg、150mg〜2000mg、200mg〜2000mg、250mg〜2000mg、300mg〜2000mg、350mg〜2000mg、400mg〜2000mg、450mg〜2000mg、500mg〜2000mg、550mg〜2000mg、600mg〜2000mg、650mg〜2000mg、700mg〜2000mg、750mg〜2000mg、800mg〜2000mg、850mg〜2000mg、900mg〜2000mg、950mg〜2000mgまたは1000mg〜2000mgの範囲であってよい。いくつかの実施形態において、対象に投与される本明細書に記載の抗体の用量または量は、0.1μg、1μg、100μg、1mg、10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg若しくは3000mgであってもよいし、多くともこれらの量、これらの量未満または少なくともこれらの量であってもよい。いくつかの実施形態において、当該量は、100〜2000mgである。
いくつかの実施形態において、対象に投与される本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)の用量または量は、0.1〜500、0.1〜100、0.1〜50、0.1〜20、0.1〜10、1〜10、1〜7、1〜5または0.1〜3mg/kg体重の範囲であってよい。いくつかの実施形態において、対象に投与される本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)の用量または量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475若しくは500mg/kg体重であってもよいし、多くともこれらの量、これらの量未満または少なくともこれらの量であってもよい。
いくつかの実施形態において、ある用量または量の本明細書に記載する抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)が対象に投与される頻度は、変わり得る。いくつかの実施形態において、単回投与の抗体が治療全体で対象に投与され得る。いくつかの実施形態において、ある用量または量の抗体が対象に投与される頻度は、一定である(例えば、月1回の投与)。いくつかの実施形態において、ある用量または量の本明細書に記載する抗体が対象に投与される頻度は、変動し得る(例えば、初回投与後1ヶ月に投与を1回、その後、3ヶ月及び7ヶ月に追加投与)。いくつかの実施形態において、対象に投与される抗体の頻度は、1日あたり1、2、3、4、5若しくは6回であるか、少なくともこれらの回数、これらの回数未満または多くともこれらの回数である。いくつかの実施形態において、抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)が対象に投与される頻度は、1日あたり1、2、3、4、5若しくは6回の投与であるか、少なくともこれらの回数、これらの回数未満または多くともこれらの回数である。
いくつかの実施形態において、ある用量または量の本明細書に記載する抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)が対象に投与される頻度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、180若しくは200日ごとにつき1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20回であるか、少なくともこれらの回数、これらの回数未満または多くともこれらの回数である。
いくつかの実施形態において、ある用量または量の本明細書に記載する抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)が対象に投与される頻度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95若しくは100週ごとにつき1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20回であるか、少なくともこれらの回数、これらの回数未満または多くともこれらの回数である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)が対象に投与される頻度は、1週あたり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15回用量未満である。
いくつかの実施形態において、ある用量または量の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)が対象に投与される頻度は、1ヶ月ごと、2ヶ月ごと、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、5ヶ月ごと、6ヶ月ごと、7ヶ月ごと、8ヶ月ごと、9ヶ月ごと、10ヶ月ごと、11ヶ月ごと、12ヶ月ごと、13ヶ月ごと、14ヶ月ごと、15ヶ月ごと、16ヶ月ごと、17ヶ月ごと若しくは18ヶ月ごとにつき1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20回であるか、少なくともこれらの回数、これらの回数未満または多くともこれらの回数である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)が対象に投与される頻度は、1ヶ月あたり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15回用量未満である。いくつかの実施形態において、ある用量または量の抗体は、1ヶ月あたり1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれ以上、対象に投与され得る(例えば、皮下または静脈内)。
いくつかの実施形態において、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、1500mg、1550mg、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、1950mg、2000mg、2050mg、2100mg、2150mg、2200mg、2250mg、2300mg、2350mg、2400mg、2450mg、2500mg、2550mg、2600mg、2650mg、2700mg、2750mg、2800mg、2850mg、2900mg、2950mg、3000mgまたはそれ以上の用量または量の抗体が、対象に月1回投与され得る(例えば、皮下または静脈内)。いくつかの実施形態において、0.1mg〜5000mg、1mg〜4000mg、10mg〜3000mg、10mg〜2000mg、100mg〜2000mg、150mg〜2000mg、200mg〜2000mg、250mg〜2000mg、300mg〜2000mg、350mg〜2000mg、400mg〜2000mg、450mg〜2000mg、500mg〜2000mg、550mg〜2000mg、600mg〜2000mg、650mg〜2000mg、700mg〜2000mg、750mg〜2000mg、800mg〜2000mg、850mg〜2000mg、900mg〜2000mg、950mg〜2000mgまたは1000mg〜2000mgの用量または量の抗体が、対象に月1回投与され得る(例えば、皮下または静脈内)。いくつかの実施形態において、100〜2000mgの抗体が月1回投与される。
いくつかの実施形態において、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、1500mg、1550mg、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、1950mg、2000mg、2050mg、2100mg、2150mg、2200mg、2250mg、2300mg、2350mg、2400mg、2450mg、2500mg、2550mg、2600mg、2650mg、2700mg、2750mg、2800mg、2850mg、2900mg、2950mg、3000mgまたはそれ以上の用量または量の抗体が、対象に3ヶ月ごとに投与され得る(例えば、皮下または静脈内)。いくつかの実施形態において、0.1mg〜5000mg、1mg〜4000mg、10mg〜3000mg、10mg〜2000mg、100mg〜2000mg、150mg〜2000mg、200mg〜2000mg、250mg〜2000mg、300mg〜2000mg、350mg〜2000mg、400mg〜2000mg、450mg〜2000mg、500mg〜2000mg、550mg〜2000mg、600mg〜2000mg、650mg〜2000mg、700mg〜2000mg、750mg〜2000mg、800mg〜2000mg、850mg〜2000mg、900mg〜2000mg、950mg〜2000mgまたは1000mg〜2000mgの用量または量の抗体が、対象に3ヶ月ごとに投与され得る(例えば、皮下または静脈内)。いくつかの実施形態において、450mg〜2000mgが3ヶ月以下ごとに1回投与される。
いくつかの実施形態において、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、1500mg、1550mg、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、1950mg、2000mg、2050mg、2100mg、2150mg、2200mg、2250mg、2300mg、2350mg、2400mg、2450mg、2500mg、2550mg、2600mg、2650mg、2700mg、2750mg、2800mg、2850mg、2900mg、2950mg、3000mgまたはそれ以上の用量または量の抗体が、対象に6ヶ月ごとに投与され得る(例えば、皮下または静脈内)。いくつかの実施形態において、0.1mg〜5000mg、1mg〜4000mg、10mg〜3000mg、10mg〜2000mg、100mg〜2000mg、150mg〜2000mg、200mg〜2000mg、250mg〜2000mg、300mg〜2000mg、350mg〜2000mg、400mg〜2000mg、450mg〜2000mg、500mg〜2000mg、550mg〜2000mg、600mg〜2000mg、650mg〜2000mg、700mg〜2000mg、750mg〜2000mg、800mg〜2000mg、850mg〜2000mg、900mg〜2000mg、950mg〜2000mgまたは1000mg〜2000mgの用量または量の抗体が、対象に6ヶ月ごとに投与され得る(例えば、皮下または静脈内)。いくつかの実施形態において、450mg〜2000mgが6ヶ月以下ごとに1回投与される。
いくつかの実施形態において、ある用量または量の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)が対象に投与(例えば、皮下または静脈内投与)される頻度は、四半期ごとにつき1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20回であるか、少なくともこれらの回数、これらの回数未満または多くともこれらの回数である。理解されるように、「四半期」とは、1年の4分の1の期間を指すものであり、1月1日〜3月31日、4月1日〜6月30日、7月1日〜9月30日または10月1日〜12月31日の期間などの暦四半期を指す場合もある。いくつかの場合、「四半期」とは、およそ3ヶ月の期間を指すことがある。
いくつかの実施形態において、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、1500mg、1550mg、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、1950mg、2000mg、2050mg、2100mg、2150mg、2200mg、2250mg、2300mg、2350mg、2400mg、2450mg、2500mg、2550mg、2600mg、2650mg、2700mg、2750mg、2800mg、2850mg、2900mg、2950mg、3000mgまたはそれ以上の用量または量の抗体が、対象に四半期ごとに投与され得る(例えば、皮下または静脈内)。いくつかの実施形態において、0.1mg〜5000mg、1mg〜4000mg、10mg〜3000mg、10mg〜2000mg、100mg〜2000mg、150mg〜2000mg、200mg〜2000mg、250mg〜2000mg、300mg〜2000mg、350mg〜2000mg、400mg〜2000mg、450mg〜2000mg、500mg〜2000mg、550mg〜2000mg、600mg〜2000mg、650mg〜2000mg、700mg〜2000mg、750mg〜2000mg、800mg〜2000mg、850mg〜2000mg、900mg〜2000mg、950mg〜2000mgまたは1000mg〜2000mgの用量または量の抗体が、対象に四半期ごとに投与され得る(例えば、皮下または静脈内)。
いくつかの実施形態において、ある用量または量の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)が投与される頻度は、1年ごと、2年ごと、3年ごと、4年ごとまたは5年ごとにつき1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20回であるか、少なくともこれらの回数、これらの回数未満または多くともこれらの回数である。いくつかの実施形態において、抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)が対象に投与される頻度は、1年ごとに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25回用量未満である。
いくつかの実施形態において、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、1500mg、1550mg、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、1950mg、2000mg、2050mg、2100mg、2150mg、2200mg、2250mg、2300mg、2350mg、2400mg、2450mg、2500mg、2550mg、2600mg、2650mg、2700mg、2750mg、2800mg、2850mg、2900mg、2950mg、3000mgまたはそれ以上の用量または量の抗体が、対象に毎年1回投与され得る。いくつかの実施形態において、0.1mg〜5000mg、1mg〜4000mg、10mg〜3000mg、10mg〜2000mg、100mg〜2000mg、150mg〜2000mg、200mg〜2000mg、250mg〜2000mg、300mg〜2000mg、350mg〜2000mg、400mg〜2000mg、450mg〜2000mg、500mg〜2000mg、550mg〜2000mg、600mg〜2000mg、650mg〜2000mg、700mg〜2000mg、750mg〜2000mg、800mg〜2000mg、850mg〜2000mg、900mg〜2000mg、950mg〜2000mgまたは1000mg〜2000mgの用量または量の抗体が、対象に毎年1回投与され得る。いくつかの実施形態において、450mg〜2000mgが1年以下ごとに1回投与される。
いくつかの実施形態において、方法は、本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を対象に複数日に投与することを含み得る。2、3、4、5、6、7、8日またはそれ以上の複数日には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75日またはそれ以上の間隔があってよい。いくつかの実施形態において、複数日の2つには、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30日またはそれ以上の間隔がある。更に、いくつかの実施形態において、複数日の第1の日に投与される抗体の量は、第2の日に投与される抗体の量と異なってもよい(例えば、より多いまたはより少ない)。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)の初回投与量(例えば、負荷投与量)を対象に投与し、続いて、所望の間隔で1または複数の追加投与量を投与してもよい。いくつかの実施形態において、初回投与量及び追加投与量の1または複数は、同用量である。いくつかの実施形態において、1または複数の追加投与量は、初回投与量と異なる用量である。いくつかの実施形態において、1または複数の追加投与量が投与される頻度は、一定である(例えば、毎月)。いくつかの実施形態において、1または複数の追加投与量が投与される頻度は、変動する(例えば、初回投与1ヶ月後に追加投与を1回、続いて、初回投与3ヶ月後にもう1回の追加投与)。任意の望ましい及び/または治療レジメンの初回負荷投与量、追加投与量及び追加投与量の頻度(例えば、本明細書に記載のものを含む)を用いることができる。例示的なレジメンには、初回負荷投与量である675mgの抗CGRPアンタゴニスト抗体を皮下投与し、その後、後続の維持投与量である225mgの抗体を1ヶ月間隔で皮下投与することが挙げられる。
いくつかの実施形態において、0.1μg、1μg、100μg、1mg、10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1500mg、2000mgまたは3000mgの初回投与量の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を対象に投与し、続いて、0.1μg、1μg、100μg、1mg、10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1500mg、2000mgまたは3000mgの1または複数の追加投与量の抗体を投与し得る。
いくつかの実施形態において、ある用量または量の本明細書に記載する抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)は、例えば、投与経路及び/または投与する特定の製剤に応じて、分割用量に分け、複数の分割用量として投与してもよい。例えば、ある用量が皮下投与される場合、その皮下投与量を複数の分割用量に分け、各分割用量を、例えば、単一部位におけるより多量の単回皮下注射を避けるために、異なる部位に投与してもよい。例えば、900mgの皮下用量をそれぞれ225mgの4つの分割用量に分けて、225mgの各用量を異なる部位に投与することができ、これにより、各部位での注入量を最小限にする助けとすることができる。分割用量の分割は、同量であっても(例えば、同量の4つの分割用量)、異なる量であってもよい(例えば、4つの分割用量であって、その分割用量のうちの2つが他の分割用量の2倍である用量)。
いくつかの実施形態において、治療期間中に対象に投与される抗体の投薬回数は、例えば、対象における血管運動神経症状及び/または頭痛の発生減少の達成に応じて変動し得る。いくつかの実施形態において、血管運動神経症状は、頭痛の形態(例えば、片頭痛、慢性片頭痛、反復性片頭痛、他の種類の頭痛など)に関係する。例えば、治療期間中に投与される投薬回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49若しくは50回であってもよいし、少なくともこれらの回数または多くともこれらの回数であってもよい。いくつかの場合(例えば、対象が慢性片頭痛である場合)、治療は、無期限に施されてよい。いくつかの場合、治療は、処置のために、多くとも1、2、3、4、5または6回の用量を対象に投与するような急性のものであり得る。
いくつかの実施形態において、ある用量(または分割用量)または量の本明細書に記載する抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)は、液剤に製剤化され、対象に投与され得る(例えば、皮下注射、静脈内注射を介して)。かかる場合、抗体を含む液剤の量は、例えば、液剤中の抗体の濃度、抗体の所望の用量、及び/または使用する投与経路に応じて、異なってよい。例えば、対象に投与される(例えば、注入を介して、例えば、皮下注射または静脈内注射などにより投与される)本明細書に記載の抗体を含む液剤の量は、0.001mL〜10.0mL、0.01mL〜5.0mL、0.1mL〜5mL、0.1mL〜3mL、0.5mL〜2.5mLまたは1mL〜2.5mLであってよい。例えば、対象に投与される(例えば、注入を介して、例えば、皮下注射または静脈内注射などにより投与される)本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を含む液剤の量は、0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5若しくは10.0mLであってもよいし、少なくともこれらの量、これらの量未満または多くともこれらの量であってもよい。
いくつかの実施形態において、ある用量(または分割用量)または量の本明細書に記載する抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)は、抗体を対象に投与するのに有用なプレフィルド容器で供給してもよい。このようなプレフィルド容器は、自己投与用または他者による投与用に設計され得る。例えば、ある用量(または分割用量)または量の本明細書に記載する抗体は、プレフィルドシリンジ中の液剤として供給され得る。かかる例において、プレフィルドシリンジは、自己投与用または他者による投与用に設計され得る。場合により、プレフィルドシリンジは、皮下投与用及び/または静脈内投与用に設計され得る。
本発明の目的上、抗体の適切な用量は、用いられる抗体(またはその組成物)、血管運動神経症状の種類及び重症度、頭痛(例えば、片頭痛)または他の治療すべき状態の種類及び重症度、予防目的または治療目的で作用物質を投与するのか、治療歴、患者の臨床歴及び当該作用物質に対する応答、ならびに主治医の判断に応じて決定され得る。通常、臨床医は、望ましい結果が得られる用量に達するまで、抗体を投与する。用量及び/または頻度は、治療期間を通じて変動し得る。
一般に、半減期などの経験的考察も用量の決定に寄与する。例えば、ヒト免疫系に適合するヒト化抗体または完全ヒト抗体などの抗体を用いて、抗体の半減期を延ばし、抗体が宿主の免疫系から攻撃を受けないようにすることができる。投与頻度は、療法期間を通じて決定し、調整することができ、通常は、必ずしも必須ではないが、頭痛(例えば、片頭痛)または他の状態の治療及び/または抑制及び/または改善及び/または遅延に基づく。あるいは、抗体の持続性連続放出製剤が適切な場合もある。持続放出性を達成するための各種製剤及び装置は、当該技術分野において知られている。
一実施形態において、本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)の用量は、当該抗体の1回または複数回の投与が行われた個体において、経験的に決定されてよい。漸増用量の抗体が個体に投与される。抗体の有効性を評価するために、疾患の指標を追跡することができる。
本発明の方法に従った抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与目的が治療目的であるか予防目的であるか、及び当該分野の医師に知られている他の要因に応じて、連続的であっても、断続的であってもよい。抗体の投与は、本質的に、予め設定した期間にわたって連続的であってもよいし、一連の間隔の投与、例えば、頭痛(例えば、片頭痛)の発症前、発症時または発症後のいずれか、頭痛の発症前、発症時、発症前及び発症後、発症時及び発症後、発症前及び発症時、または発症前、発症時及び発症後であってもよい。投与は、頭痛を誘発する可能性のある任意の事象の前、その間及び/またはその後であってよい。
いくつかの実施形態において、1種を超える抗体が存在してよい。少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種以上の異なる抗体が存在し得る。一般に、これらの抗体は、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有し得る。本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)はまた、他のCGRPアンタゴニストまたはCGRP受容体アンタゴニストとともに使用することができる。例えば、次のCGRPアンタゴニスト:CGRPに対するアンチセンス分子(CGRPをコードする核酸に対するアンチセンス分子を含む)、CGRP阻害化合物、CGRP構造類似体、CGRPと結合するCGRP受容体の優性阻害変異、及び抗CGRP受容体抗体のうちの1つまたは複数を用いることができる。抗体はまた、他の作用物質と併用することができ、作用物質の有効性を増大させ、及び/または補完するように機能する。
頭痛の診断または評価は、当該技術分野において十分確立されている。評価は、患者による症状の特徴付けなどの主観的基準に基づいて実施されてもよい。例えば、片頭痛は、次の基準:1)4〜72時間継続する頭痛の反復発作;2)次の症状:片側性疼痛、拍動性、動作時における増悪及び中等度〜重度の疼痛のうちの2つを伴うもの;ならびに3)次の症状:悪心または嘔吐及び光過敏または音過敏のうちの1つを伴うものに基づいて診断され得る。Goadsby et al.,N.Engl.J.Med.346:257−270,2002。いくつかの実施形態において、頭痛(例えば、片頭痛)の評価は、本明細書に別途記載するように、頭痛時間によるものでもよい。例えば、頭痛(例えば、片頭痛)の評価は、1日の頭痛時間、1週間の頭痛時間、1ヶ月の頭痛時間及び/または1年間の頭痛時間を基準にしてもよい。いくつかの場合、対象が頭痛時間を報告してもよい。
治療の有効性は、当該技術分野において知られている方法によって評価することができる。例えば、疼痛緩和について評価してもよい。したがって、いくつかの実施形態において、抗CGRP抗体の投与から1、2または数時間後に、疼痛緩和を主観的に観察する。いくつかの実施形態において、抗CGRP抗体の投与後に、頭痛の発作頻度を主観的に観察する。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する、対象における頭痛を治療し、またはその発生を減少させる方法により、本明細書に記載の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)の単回投与後、頭痛の発生が長期間にわたって減少し得る。例えば、頭痛の発生は、単回投与後、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50日またはそれ以上減少し得る。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する、対象における頭痛を治療し、またはその発生を減少させる方法により、本明細書に記載する1または複数の用量の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を対象に投与した後に対象が経験する頭痛時間数が投与前のレベルから減少し得る。例えば、1または複数の用量の抗体を対象に投与した後に対象が経験する1日の頭痛時間は、対象における投与前のレベルから0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24時間の頭痛時間分減少し得る。いくつかの場合、1または複数の用量の抗体を対象に投与した後に対象が経験する1日の頭痛時間は、対象における投与前のレベルを基準にして、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上減少し得る。別の例において、1または複数の用量の抗体を対象に投与した後に対象が経験する1週間の頭痛時間は、対象における投与前のレベルから0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75時間またはそれ以上の頭痛時間分減少し得る。いくつかの場合、1または複数の用量の抗体を対象に投与した後に対象が経験する1週間の頭痛時間は、対象における投与前のレベルを基準にして、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上減少し得る。別の例において、1または複数の用量の抗体を対象に投与した後に対象が経験する1ヶ月の頭痛時間は、投与前レベルから0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125時間またはそれ以上の頭痛時間分減少し得る。いくつかの場合、1または複数の用量の抗体を対象に投与した後に対象が経験する1週間の頭痛時間は、対象における投与前のレベルを基準にして、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上減少し得る。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する、対象における頭痛を治療し、またはその発生を減少させる方法により、本明細書に記載する1または複数の用量の抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)を対象に投与した後に対象が経験する頭痛日数が投与前のレベルから減少し得る。例えば、1または複数の用量の抗体を対象に投与した後に対象が経験する1週間の頭痛日は、対象における投与前のレベルから0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5または7日の頭痛日分減少し得る。いくつかの場合、1または複数の用量の抗体を対象に投与した後に対象が経験する1週間の頭痛日は、対象における投与前のレベルを基準にして、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上減少し得る。別の例において、1または複数の用量の抗体を対象に投与した後に対象が経験する1ヶ月の頭痛日は、投与前レベルから0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20日またはそれ以上の頭痛日分減少し得る。
いくつかの実施形態において、方法は、抗体(例えば、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体、抗CGRPアンタゴニスト抗体、モノクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)と同時にまたは連続的に、1つまたは複数の追加の作用物質を対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、追加の作用物質は、本明細書に別途記載する例示的な抗頭痛薬(例えば、5−HT1アゴニスト、トリプタン、麦角アルカロイド、オピエート、β−アドレナリン遮断薬、NSAID)などの抗頭痛薬であってよい。いくつかの実施形態において、治療的効果は、抗体または1つ若しくは複数の追加の作用物質の単独使用と比較して、より大きいものであり得る。したがって、抗体と1つまたは複数の追加の作用物質との相乗効果が達成され得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の追加の作用物質を予防的に対象に投与してもよい。
B.抗CGRPアンタゴニスト抗体
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、抗体を使用し、この抗体は、抗CGRPアンタゴニスト抗体であり得る。抗CGRPアンタゴニスト抗体は、受容体への結合及び/またはCGRPに対する細胞応答の誘発などのCGRPシグナル伝達によって媒介される下流経路を含むCGRP生物活性を遮断、抑制または低減する(有意にを含む)あらゆる抗体分子を指し得る。
抗CGRPアンタゴニスト抗体は、次の特徴:(a)CGRPへの結合、(b)CGRPのその受容体(複数可)への結合の阻止、(c)CGRP受容体の活性化(cAMP活性化を含む)の遮断または減少、(d)CGRP生物活性またはCGRPシグナル伝達機能によって媒介される下流経路の阻害、(e)頭痛(例えば、片頭痛)のいずれかの側面の予防、改善または治療、(f)CGRPクリアランスの増大、及び(g)CGRP合成、産生または放出の阻害(減少)のいずれか1つまたは複数を呈し得る。抗CGRPアンタゴニスト抗体は、当該技術分野において知られている。例えば、Tan et al.,Clin.Sci.(Lond).89:565−73,1995;Sigma(Missouri,US)、製品番号C7113(クローン#4901);Plourdeet al.,Peptides 14:1225−1229,1993を参照されたい。
いくつかの実施形態において、抗体は、CGRP及び/またはCGRP経路(CGRPシグナル伝達機能によって媒介される下流経路を含む)を阻害するようにCGRPと反応する。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ヒトCGRPを認識する。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ヒトα−CGRPとβ−CGRPの両方に結合する。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ヒト及びラットCGRPと結合する。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、CGRPのアミノ酸25〜37を有するC末端断片と結合する。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、CGRPのアミノ酸25〜37内のC末端エピトープと結合する。
本発明に有用な抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロ複合抗体、一本鎖(ScFv)、それらの変異体、抗体部分(例えば、ドメイン抗体)を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、ならびに所望の特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変形態(抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント及び共有結合的に修飾した抗体を含む)を包含し得る。抗体は、ネズミ、ラット、ヒトまたは任意の他の起源であってよい(キメラまたはヒト化抗体を含む)。
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ヒト化されている。いくつかの実施形態において、抗体はヒト抗体である。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、抗体G1である(本明細書に記載のもの)。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、抗体G1または表6に記載のG1のバリアントの1つまたは複数のCDR(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはいくつかの実施形態では6つ全てのCDR)を含む。更に他の実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、図5に示す重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)及び図5に示す軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号2)を含む。
いくつかの実施形態において、抗体は、(a)LCVR17(配列番号58)とHCVR22(配列番号59);(b)LCVR18(配列番号60)とHCVR23(配列番号61);(c)LCVR19(配列番号62)とHCVR24(配列番号63);(d)LCVR20(配列番号64)とHCVR25(配列番号65);(e)LCVR21(配列番号66)とHCVR26(配列番号67);(f)LCVR27(配列番号68)とHCVR28(配列番号69);(g)LCVR29(配列番号70)とHCVR30(配列番号71);(h)LCVR31(配列番号72)とHCVR32(配列番号73);(i)LCVR33(配列番号74)とHCVR34(配列番号75);(j)LCVR35(配列番号76)とHCVR36(配列番号77);及び(k)LCVR37(配列番号78)とHCVR38(配列番号79)からなる群から選択される軽鎖可変領域(LCVR)と重鎖可変領域(HCVR)を含む。これらの領域の配列については、本明細書中に記載する。抗体の他の例については、US20110305711、US20120294802、US20120294797及びUS20100172895に記載されており、これらを参照により本明細書に援用する。
いくつかの実施形態において、抗体は、本明細書に記載する、免疫学的に不活性である定常領域などの改変された定常領域を含む。いくつかの実施形態において、定常領域は、Eur.J.Immunol.(1999)29:2613−2624、PCT出願第PCT/GB99/01441号及び/または英国特許出願第9809951.8号に記載の通りに改変される。他の実施形態において、抗体は、A330P331からS330S331への変異を含むヒト重鎖IgG2定常領域を含む(アミノ酸ナンバリングは野生型IgG2配列を基準とする)。Eur.J.Immunol.(1999)29:2613−2624。いくつかの実施形態において、抗体は、次の変異:E233F234L235からP233V234A235への変異を含むIgG4の定常領域を含む。更に他の実施形態において、定常領域は、N−結合グリコシル化が脱グリコシル化される。いくつかの実施形態において、定常領域は、定常領域内のオリゴ糖結合残基(Asn297など)及び/またはN−グリコシル化認識配列の一部である隣接残基を変異させることによって、N−結合グリコシル化が脱グリコシル化される。いくつかの実施形態において、定常領域は、N−結合グリコシル化が脱グリコシル化される。定常領域のN−結合グリコシル化は、酵素的にまたはグリコシル化欠損宿主細胞での発現によって脱グリコシル化され得る。
抗CGRPアンタゴニスト抗体のCGRP(ヒトα−CGRPなど)への結合親和性(KD)は、約0.02〜約200nMであり得る。いくつかの実施形態において、結合親和性は、約200nM、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、約60pM、約50pM、約20pM、約15pM、約10pM、約5pMまたは約2pMのいずれかである。いくつかの実施形態において、結合親和性は、約250nM、約200nM、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pMまたは約50pMのいずれか未満である。
CGRPに対する抗体の結合親和性を決定する1つの方法は、抗体の単機能Fab断片の結合親和性を測定することによるものである。単機能Fab断片を得るには、抗体(例えば、IgG)をパパインで切断してもよいし、組み換え的に発現させてもよい。抗体の抗CGRP Fab断片の親和性は、予め固定化されたストレプトアビジンセンサーチップ(SA)を備える表面プラズモン共鳴(Biacore3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム、Biacore,INC、Piscataway NJ)により、HBS−EPランニング緩衝液(0.01M HEPES、pH7.4、0.15 NaCl、3mM EDTA、0.005%v/v界面活性剤P20)を用いて、特定することができる。ビオチン化されたヒトCGRP(または任意の他のCGRP)を0.5ug/mL未満の濃度にHBS−EP緩衝液中に希釈し、様々な接触時間を用いて個々のチップチャネルへ注入して、詳細な反応速度論的試験に関する50〜200RU(レスポンスユニット)またはスクリーニングアッセイに関する800〜1,000RUのいずれかの2つの範囲の抗原密度を達成することができる。再生試験については、25%v/vエタノール中の25mM NaOHが、200回を超える注入に対して、チップ上のCGRPの活性を保持したまま、結合したFabを効果的に除去することが示された。典型的には、精製したFab試料の連続希釈物(予想されるKDの0.1〜10倍の濃度域)を100μL/分で1分間注入し、最大2時間の解離時間をとる。Fabタンパク質の濃度は、既知の濃度のFab(アミノ酸分析によって決定)を標準として使用するELISA及び/またはSDS−PAGE電気泳動によって決定される。反応速度論的結合速度(kon)及び解離速度(koff)は、BIAevaluationプログラムを用いて、1:1ラングミュア結合モデル(Karlsson,R.Roos,H.Fagerstam,L.Petersson,B.(1994).Methods Enzymology 6.99−110)にデータを全体的にフィッティングさせることにより、同時に得られる。平衡解離定数(KD)の値は、koff/konとして算出される。このプロトコルは、ヒトCGRP、別の哺乳動物のCGRP(マウスCGRP、ラットCGRP、霊長類CGRPなど)、及び異なる型のCGRP(α型及びβ型など)を含めたあらゆるCGRPに対する、抗体の結合親和性の特定における使用に適している。抗体の結合親和性は、一般に、25℃で測定されるが、37℃で測定してもよい。
抗体は、抗CGRPアンタゴニスト抗体を含め、当該技術分野において知られている任意の方法によって作製することができる。宿主動物の免疫化の経路及びスケジュールは、本明細書にて詳述する通り、抗体刺激及び抗体産生に関して確立されている従来技術に概して沿うものである。ヒト及びマウス抗体の産生のための一般的技術は、当該技術分野において知られており、本明細書に記載されている。
ヒトを含むあらゆる哺乳動物対象または抗体産生細胞を操作して、ヒトを含む哺乳動物、ハイブリドーマ細胞株の作製の基礎とすることができることが企図される。典型的には、宿主動物に対して、本明細書に記載のものを含めたある量の免疫原を、腹腔内、筋肉内、経口、皮下、足底内及び/または皮内に接種する。
ハイブリドーマは、Kohler,B. and Milstein,C.(1975)Nature 256:495−497の一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技術またはBuck,D.W.,et al.,In Vitro,18:377−381(1982)による改変を用いて、リンパ球及び不死化骨髄腫細胞から作製することができる。ハイブリダイゼーションには、限定するものではないが、X63−Ag8.653及びSalk Institute,Cell Distribution Center,San Diego,Calif.,USAから得られるものを含む、入手可能な骨髄腫系を使用することができる。一般に、この技術は、ポリエチレングリコールなどの融合物質を用いて、または当業者によく知られた電気的手段によって、骨髄腫細胞とリンパ系細胞を融合させることを伴う。融合後、融合培地から細胞を分離し、ハイブリダイズしていない親細胞を取り除くために、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地などの選択増殖培地中で増殖させる。モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するために、本明細書に記載の培地のいずれかを、血清を添加してまたは血清を添加せずに用いることができる。細胞融合技術の別の代替法として、EBV不死化B細胞を用いて本発明のモノクローナル抗体(例えば、モノクローナル抗CGRP抗体)を産生することができる。ハイブリドーマを増殖させ、サブクローニングし、所望により、従来のイムノアッセイ手順(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイまたは蛍光イムノアッセイ)によって抗免疫原活性に関して上清を分析する。
抗体の供給源として使用され得るハイブリドーマは、全ての誘導体、CGRPに特異的なモノクローナル抗体またはその部分を産生する親ハイブリドーマの子孫細胞を包含する。
かかる抗体を産生するハイブリドーマは、周知の手順を用いて、インビトロまたはインビボで増殖することができる。モノクローナル抗体は、所望により、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー及び限外濾過などの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培養培地または体液から単離され得る。好ましくない活性が存在する場合には、例えば、固相に付着させた免疫原からなる吸着剤に調製物を通し、免疫原から所望の抗体を溶出または放出させることによって、除去することができる。ヒトCGRPにより、または二官能性若しくは誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介した結合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタアデヒド(glutaradehyde)、無水コハク酸、SOCl2若しくはR1N=C=NR(式中、R及びR1は、異なるアルキル基である)を用いて、免疫化対象の種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン若しくはダイズトリプシン阻害物質に結合させた標的アミノ酸配列を含有する断片により、宿主動物を免疫化すると、抗体(例えば、モノクローナル抗体)集団を得ることができる。
所望により、目的の抗体(例えば、モノクローナルまたはポリクローナル抗CGRPアンタゴニスト抗体)の配列を決定することができ、次いで、発現または増殖のために、ポリヌクレオチド配列をベクターにクローニングすることができる。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞中のベクターに維持され得、次いで、宿主細胞を増殖させ、その後の使用のために凍結することができる。別の代替法には、抗体を「ヒト化」するか、またはその親和性若しくは抗体の他の特徴を改善する遺伝子操作のために、ポリヌクレオチド配列を用いることができる。例えば、抗体がヒトにおける臨床試験及び治療にて用いられる場合、免疫応答を回避するために、ヒト定常領域に更に類似するように、定常領域を遺伝子操作することができる。CGRPへのより高い親和性、及びCGRP阻害のより高い有効性を得るために、抗体配列を遺伝子的に操作することが望ましい場合がある。CGRPに対する結合能力を保持したまま、抗CGRPアンタゴニスト抗体に1つまたは複数のポリヌクレオチドの変化を加えることができることは、当業者には明白であるだろう。
モノクローナル抗体のヒト化は、4つの一般的工程を含み得、(1)出発抗体の軽鎖及び重鎖可変ドメインのヌクレオチド及び予想されるアミノ酸配列の決定、(2)ヒト化抗体の設計、すなわち、ヒト化プロセスにて使用する抗体フレームワーク領域の決定、(3)実際のヒト化方法/技術、ならびに(4)ヒト化抗体のトランスフェクション及び発現である。例えば、米国特許第4,816,567号、同第5,807,715号、同第5,866,692号、同第6,331,415号、同第5,530,101号、同第5,693,761号、同第5,693,762号、同第5,585,089号及び同第6,180,370号を参照されたい。
非ヒト免疫グロブリンに由来する抗原結合部位を含む「ヒト化」抗体分子については、げっ歯類または改変げっ歯類V領域及びその関連相補性決定領域(CDR)をヒト定常ドメインに融合させたキメラ抗体を含め、多数記載されている。例えば、Winter et al.Nature 349:293−299(1991)、Lobuglio et al.Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220−4224(1989)、Shaw et al.J Immunol.138:4534−4538(1987)及びBrown et al.Cancer Res.47:3577−3583(1987)を参照されたい。他の参考文献には、適切なヒト抗体定常ドメインとの融合前に、ヒト支持フレームワーク領域(FR)にグラフトされたげっ歯類CDRについて記載されている。例えば、Riechmann et al.Nature 332:323−327(1988)、Verhoeyen et al.Science 239:1534−1536(1988)及びJoneset al.Nature 321:522−525(1986)を参照されたい。別の参考文献は、組み換え的に張り合わされた(veneered)げっ歯類フレームワーク領域によって支持されたげっ歯類CDRについて記載している。例えば、欧州特許公開第0519596号を参照されたい。これらの「ヒト化」分子は、ヒトレシピエントにおいて、当該部分の治療適用の持続期間及び有効性を制限する、げっ歯類抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫学的応答を最小限に抑えるように設計される。例えば、免疫学的に不活性である(例えば、補体溶解を誘発しない)ように抗体定常領域を操作することができる。例えば、PCT公開第PCT/GB99/01441号;英国特許出願第9809951.8号を参照されたい。用いることができる、抗体をヒト化する他の方法はまた、Daugherty et al.,Nucl.Acids Res.19:2471−2476(1991)ならびに米国特許第6,180,377号、同第6,054,297号、同第5,997,867号、同第5,866,692号、同第6,210,671号及び同第6,350,861号ならびにPCT公開第WO01/27160号に開示されている。
更に別の代替法では、特異的なヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された市販のマウスを用いることによって、完全ヒト抗体を得てもよい。より好ましい(例えば、完全ヒト抗体)またはより強い免疫応答をもたらすように設計されたトランスジェニック動物も同様に、ヒト化またはヒト抗体の作製に用いることができる。このような技術の例は、Abgenix,Inc.(Fremont、CA)のXenomouse(商標)ならびにMedarex,Inc.(Princeton、NJ)のHuMAb−Mouse(登録商標)及びTC Mouse(商標)である。
一代替法では、当該技術分野において知られている任意の方法を使用して、抗体を組み換え的に作製し、発現させてもよい。別の代替法では、ファージディスプレイ技術によって、抗体を組み換え的に作製してもよい。例えば、米国特許第5,565,332号、同第5,580,717号、同第5,733,743号及び同第6,265,150、ならびにWinter et al.,Annu.Rev.Immunol.12:433−455(1994)を参照されたい。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al.,Nature 348:552−553(1990))を用いて、免疫化していないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体及び抗体断片をインビトロで作製することができる。この技術に従って、抗体Vドメイン遺伝子を、M13またはfdなどの繊維状バクテリオファージのメジャーまたはマイナーのいずれかのコートタンパク質遺伝子にインフレームでクローニングし、機能性抗体断片としてファージ粒子の表面上に提示させる。繊維状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAのコピーを含有しているので、抗体の機能性に基づく選択により、当該特性を呈する抗体をコードする遺伝子も選択される。したがって、ファージは、B細胞の性質の一部を再現するものである。ファージディスプレイは、種々の形式で実施することができ、概説については、例えば、Johnson,Kevin S. and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3:564−571(1993)を参照されたい。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源をファージディスプレイに使用することができる。Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)は、免疫化したマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小ランダムコンビナトリアルライブラリーから多種多様な抗オキサゾロン抗体を単離した。免疫化していないヒトドナー由来のV遺伝子レパートリーを構築することができ、Mark et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1991)またはGriffith et al.,EMBO J.12:725−734(1993)に記載の技術に従って、多種多様な抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を本質的に単離することができる。自然な免疫応答において、抗体遺伝子は、高い割合で突然変異を蓄積する(体細胞高頻度突然変異)。導入された変化の一部は、より高い親和性を付与し、その後の抗原刺激において、高親和性表面免疫グロブリンを提示するB細胞が優先的に複製され、分化する。この自然の過程は、「鎖シャフリング」として知られる技術を用いることによって再現することができる。Marks et al.,Bio/Technol.10:779−783(1992))。この方法において、ファージディスプレイによって得られた「一次」ヒト抗体の親和性について、その重鎖及び軽鎖V領域遺伝子を、非免疫化ドナーから取得したVドメイン遺伝子の天然バリアント(レパートリー)のレパートリーで順次置き換えることによって、向上することができる。この技術により、pM〜nM範囲の親和性を有する抗体及び抗体断片の作製が可能となる。非常に大きいファージ抗体レパートリー(「最大ライブラリー(the mother−of−all libraries)」としても知られる)を作製するための手順は、Waterhouse et al.,Nucl.Acids Res.21:2265−2266(1993)に記載されている。遺伝子シャフリングを用いてげっ歯類抗体からヒト抗体を得ることも可能であり、この場合、ヒト抗体は、出発げっ歯類抗体と類似の親和性及び特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法に従って、ファージディスプレイ技術によって得られたげっ歯類抗体の重鎖または軽鎖Vドメイン遺伝子を、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置き換えることで、げっ歯類−ヒトキメラが作製される。抗原の選択により、機能性抗原結合部位を復元することができるヒト可変領域が単離される。すなわち、エピトープがパートナーの選択を支配する(刷り込む)。残りのげっ歯類Vドメインを置き換えるために、このプロセスを繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日公開のPCT公開第WO93/06213号参照)。CDRグラフティングによるげっ歯類抗体の従来のヒト化とは異なり、この技術は、げっ歯類起源のフレームワークまたはCDR残基を有さない、完全なヒト抗体を提供する。
上記の議論はヒト化抗体に関するものであるが、論じた一般原則については、イヌ、ネコ、霊長類、ウマ及びウシでの使用のために抗体をカスタマイズすることにも適用できることは明らかである。本明細書に記載の抗体をヒト化する1つまたは複数の態様、例えば、CDRグラフティング、フレームワーク変異及びCDR変異を組み合わせてもよい。
抗体は、宿主動物から抗体及び抗体産生細胞をまず分離し、遺伝子配列を得、その遺伝子配列を用いて宿主細胞(例えば、CHO細胞)中で抗体を組み換え的に発現させることによって、組み換え的に作製してもよい。用いることができる別の方法は、植物(例えば、タバコ)またはトランスジェニックミルクにおいて抗体配列を発現させることである。植物またはミルクにおいて組み換え的に抗体を発現させる方法は、開示されている。例えば、Peeters et al.Vaccine 19:2756(2001);Lonberg,N. and D.Huszar Int.Rev.Immunol 13:65(1995);ならびにPollock,et al.,J Immunol Methods 231:147(1999)を参照されたい。抗体の誘導体、例えば、ヒト化、一本鎖などを作製するための方法は、当該技術分野において知られている。
イムノアッセイ及び蛍光標識細胞分取(FACS)などのフローサイトメトリー分取技術を用いて、CGRPに特異的である抗体を単離することもできる。
抗体は、多くの異なる担体に結合させてもよい。担体は、活性及び/または不活性であってよい。よく知られた担体の例には、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、ガラス、天然及び修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースならびにマグネタイトが挙げられる。担体の性質は、可溶性または不溶性のいずれであってもよい。当業者であれば、抗体に結合させる他の好適な担体を認識しており、または慣用的な実験を用いてそれを確認することができるであろう。いくつかの実施形態において、担体は、心筋を標的にする部分を含む。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に、従来の手順を用いて、単離し、配列決定される(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)。ハイブリドーマ細胞は、こうしたDNAの好ましい供給源として機能する。DNAを単離したら、そのDNAを発現ベクター内(PCT公開第WO87/04462号に開示の発現ベクターなど)に配置し、次いで、これを、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または他の免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクションして、組み換え宿主細胞中にてモノクローナル抗体の合成を行う。例えば、PCT公開第WO87/04462号を参照されたい。DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインをコードする配列を相同的ネズミ配列に代えて用いるか(Morrison et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.81:6851(1984))、または免疫グロブリンをコードする配列に免疫グロブリンではないポリペプチドをコードする配列の全て若しくは一部を共有結合させることによって、改変してもよい。このようにして、本明細書の抗CGRPモノクローナル抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体を作製する。
抗体(例えば、抗CGRPアンタゴニスト抗体)及び抗体に由来するポリペプチドは、当該技術分野において知られている方法を使用して特定または特性評価を行うことができ、これにより、CGRP生物活性の低減、改善または中和が検出及び/または測定される。例えば、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、候補作用物質をCGRPとインキュベートし、次の特徴:(a)CGRPへの結合、(b)CGRPのその受容体への結合の阻止、(c)CGRP受容体の活性化(cAMP活性化を含む)の遮断または減少、(d)CGRP生物活性またはCGRPシグナル伝達機能によって媒介される下流経路の阻害、(e)頭痛(例えば、片頭痛)のいずれかの側面の予防、改善または治療、(f)CGRPクリアランスの増大、及び(g)CGRP合成、産生または放出の阻害(減少)のいずれか1つまたは複数を観察することによって、特定することもできる。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体またはポリペプチドは、候補作用物質をCGRPとインキュベートし、結合及び/またはそれに付随するCGRP生物活性の低減若しくは中和を観察することによって特定される。結合試験は、精製したCGRPポリペプチド(複数可)を用いるか、またはCGRPポリペプチド(複数可)を自然に発現する細胞若しくはCGRPポリペプチドを発現するように形質転換した細胞を用いて行うことができる。一実施形態において、結合アッセイは、競合結合試験であり、この場合、CGRP結合に関して、既知の抗CGRPアンタゴニストと競合する候補抗体の能力が評価される。アッセイは、ELISA形式を含む各種形態で実施され得る。他の実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、候補作用物質をCGRPとインキュベートし、結合及びそれに付随する細胞表面上に発現しているCGRP受容体の活性化阻害を観察することによって特定される。
最初の特定の後、候補抗体(例えば、抗CGRPアンタゴニスト抗体)の活性について、標的とする生物活性を試験するのに知られているバイオアッセイによって更に確認し、精製することができる。あるいは、バイオアッセイを用いて、候補を直接スクリーニングすることができる。例えば、CGRPは、応答性細胞において、多数の測定可能な変化を促進する。これらには、細胞(例えば、SK−N−MC細胞)中におけるcAMPの刺激が挙げられるが、これらに限定されない。アンタゴニスト活性はまた、動物モデルを用いて、例えば、ラット伏在神経の刺激によって誘発される皮膚血管拡張を測定することによって、測定してもよい。Escott et al.,Br.J.Pharmacol.110:772−776,1993。アンタゴニスト抗体またはポリペプチドの有効性を試験するために、頭痛(片頭痛など)の動物モデルを更に用いることができる。Reuter,et al.,Functional Neurology(15)Suppl.3,2000。抗CGRPアンタゴニスト抗体またはポリペプチドを同定し、特性評価するための方法のいくつかについては、実施例にて詳細に記載する。
抗体は、抗CGRPアンタゴニスト抗体を含め、当該技術分野においてよく知られている方法を用いて、特性を評価することができる。例えば、1つの方法は、結合するエピトープを同定する方法、すなわち「エピトープマッピング」である。タンパク質上のエピトープ位置のマッピング及び特徴付けに関しては、抗体−抗原複合体の結晶構造の解明、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ及び合成ペプチド系アッセイを含め、当該技術分野において知られている多くの方法があり、例えば、Harlow and Lane,Using Antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1999の第11章に記載されている通りである。更なる例として、エピトープマッピングを用いて、抗CGRPアンタゴニスト抗体が結合する配列を決定することができる。エピトープマッピングは、様々な供給源、例えば、Pepscan Systems(Edelhertweg 15,8219 PH Lelystad、The Netherlands)から商業的に利用可能である。エピトープは、直線状エピトープ、すなわち、一続きのアミノ酸中に含有されているエピトープであっても、一続きのアミノ酸中に必ずしも含有されていない場合もあるアミノ酸の三次元相互作用によって形成された高次構造エピトープであってもよい。様々な長さのペプチド(例えば、少なくとも4〜6のアミノ酸長)を単離または合成することができ(例えば、組み換え的に)、抗CGRPアンタゴニスト抗体との結合試験に用いることができる。別の例において、抗CGRPアンタゴニスト抗体が結合するエピトープは、CGRP配列に由来する重複ペプチドを使用し、抗CGRPアンタゴニスト抗体による結合を決定することにより、体系的スクリーニングにて決定することができる。遺伝子断片発現アッセイでは、CGRPをコードするオープンリーディングフレームをランダムにまたは特定の遺伝子構造で断片化し、CGRPの発現断片と試験対象抗体との反応性を決定する。遺伝子断片は、例えば、PCRによって作製し、次いで、放射性アミノ酸存在下で、インビトロで転写させ、タンパク質に翻訳することができる。次いで、抗体と放射性標識したCGRP断片との結合について、免疫沈降及びゲル電気泳動によって決定する。ファージ粒子の表面上に提示されたランダムペプチド配列の大型ライブラリー(ファージライブラリー)を用いることによって、ある特定のエピトープを同定することもできる。あるいは、単純な結合試験にて、試験抗体への結合について、重複ペプチド断片の確定ライブラリーを試験することができる。更なる例において、抗原結合ドメインの変異導入、ドメイン交換実験及びアラニンスキャニング変異導入を実施して、エピトープ結合に必須である、足りる及び/または必要である残基を同定することができる。例えば、ドメイン交換実験は、CGRPポリペプチドの様々な断片が、密接に関係しているが抗原的には異なるタンパク質(ニューロトロフィンタンパク質ファミリーの別のメンバーなど)に由来する配列に置き換えられた(交換された)変異CGRPを用いて行うことができる。抗体と変異CGRPの結合を評価することにより、抗体結合に対する特定のCGRP断片の重要性を評価することができる。
抗CGRPアンタゴニスト抗体を含む、抗体の特性評価に使用することができる更に別の方法は、同じ抗原(すなわち、CGRP上の各種断片)に結合することが知られている他の抗体との競合アッセイを用いて、抗CGRPアンタゴニスト抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを特定することである。競合アッセイについては、当業者によく知られている。
発現ベクターを用いて、抗CGRPアンタゴニスト抗体を含む、抗体の発現を誘導することができる。当業者は、発現ベクターを投与して外因性タンパク質の発現をインビボで得ることについて精通している。例えば、米国特許第6,436,908号、同第6,413,942号及び同第6,376,471号を参照されたい。発現ベクターの投与には、注入、経口投与、パーティクルガンまたはカテーテル投与及び局所投与を含む、局所または全身投与が挙げられる。別の実施形態において、発現ベクターは、交感神経幹若しくは神経節、または冠状動脈、心房、心室若しくは心膜に直接投与される。
発現ベクターまたはサブゲノムポリヌクレオチドを含有する治療用組成物の標的送達を用いることもできる。受容体媒介性DNA送達技術については、例えば、Findeis et al.,Trends Biotechnol.(1993)11:202;Chiou et al.,Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer(J.A.Wolff,ed.)(1994);Wu et al.,J.Biol.Chem.(1988)263:621;Wu et al.,J.Biol.Chem.(1994)269:542;Zenke et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87:3655;Wu et al.,J.Biol.Chem.(1991)266:338に記載されている。ポリヌクレオチドを含有する治療用組成物は、遺伝子治療プロトコルにおいて、局所投与の場合、約100ng〜約200mgの範囲のDNAで投与する。遺伝子治療プロトコル中、約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μg及び約20μg〜約100μgの濃度範囲のDNAを使用することもできる。遺伝子送達ビヒクルを用いて、治療用ポリヌクレオチド及びポリペプチドを送達することができる。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス起源でも非ウイルス起源でもよい(Jolly,Cancer Gene Therapy(1994)1:51;Kimura,Human Gene Therapy(1994)5:845;Connelly,Human Gene Therapy(1995)1:185;及びKaplitt,Nature Genetics(1994)6:148を概ね参照されたい)。かかるコード配列の発現は、内因性哺乳動物プロモーターまたは異種プロモーターを用いて誘導することができる。コード配列の発現は、構成的または制御的のいずれであってもよい。
所望のポリヌクレオチドを送達し、所望の細胞中において発現させるためのウイルス性ベクターは、当該技術分野においてよく知られている。例示的なウイルス系ビヒクルは、組み換えレトロウイルス(例えば、PCT公開第WO90/07936号;同第WO94/03622号;同第WO93/25698号;同第WO93/25234号;同第WO93/11230号;同第WO93/10218号;同第WO91/02805号;米国特許第5、219,740号及び同第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;ならびに欧州特許第0345242号を参照)、アルファウイルス系ベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)及びベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR1249;ATCC VR−532))及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、PCT公開第WO94/12649号、同第WO93/03769号;同第WO93/19191号;同第WO94/28938号;同第WO95/11984号及び同第WO95/00655号を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。Curiel,Hum.Gene Ther.(1992)3:147に記載されている不活化アデノウイルスに連結したDNAの投与も用いることができる。
非ウイルス性の送達ビヒクル及び方法もまた用いることができ、不活化アデノウイルスにのみ連結したまたは連結していないポリカチオン性濃縮DNA(例えば、Curiel,Hum.Gene Ther.(1992)3:147参照);リガンド連結DNA(例えば、Wu,J.Biol.Chem.(1989)264:16985参照);真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば、米国特許第5,814,482号;PCT公開第WO95/07994号;同第WO96/17072号;同第WO95/30763号及び同第WO97/42338号参照)及び核電荷中和または細胞膜との融合が挙げられるがこれらに限定されない。ネイキッドDNAもまた用いることができる。例示的なネイキッドDNA導入法については、PCT公開第WO90/11092号及び米国特許第5,580,859号に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして作用するリポソームについては、米国特許第5,422,120号;PCT公開第WO95/13796号;同第WO94/23697号;同第WO91/14445号及びEP0524968に記載されている。更なる手法は、Philip,Mol.Cell Biol.(1994)14:2411及びWoffendin,Proc.Natl.Acad.Sci.(1994)91:1581に記載されている。
C.抗体G1ならびに関連する抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞
本発明は、抗体G1及び表6に示す抗体G1のバリアントまたは抗体G1及び表6に示す抗体G1のバリアントに由来するポリペプチド、ならびにG1及びG1のバリアント若しくは当該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含む、医薬組成物を含めた組成物を包含する。いくつかの実施形態において、組成物は、CGRPに結合する1つ若しくは複数の抗体若しくはポリペプチド(抗体であってもなくてもよい)及び/またはCGRPに結合する1つ若しくは複数の抗体若しくはポリペプチドをコードする配列を含む1つ若しくは複数のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物は、緩衝液を含む薬学的に許容可能な賦形剤などの好適な賦形剤を更に含み得、これらは、当該技術分野においてよく知られている。
いくつかの実施形態において、本発明の抗CGRPアンタゴニスト抗体及びポリペプチドは、次の特徴:(a)CGRPへの結合、(b)CGRPのその受容体への結合の阻止、(c)CGRP受容体の活性化(cAMP活性化を含む)の遮断または減少、(d)CGRP生物活性またはCGRPシグナル伝達機能によって媒介される下流経路の阻害、(e)頭痛(例えば、片頭痛)のいずれかの側面の予防、改善または治療、(f)CGRPクリアランスの増大、及び(g)CGRP合成、産生または放出の阻害(減少)のいずれか(1つまたは複数)によって特徴付けられる。
いくつかの実施形態において、本発明は、以下のいずれかまたは以下のいずれかを含む組成物(医薬組成物を含む)を提供する。(a)抗体G1または表6に示すそのバリアント、(b)抗体G1または表6に示すそのバリアントの断片または領域、(c)抗体G1または表6に示すそのバリアントの軽鎖、(d)抗体G1または表6に示すそのバリアントの重鎖、(e)抗体G1または表6に示すそのバリアントの軽鎖及び/または重鎖の1つまたは複数の可変領域、(f)抗体G1または表6に示すそのバリアントの1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDR)、(g)抗体G1の重鎖のCDR H3、(h)抗体G1または表6に示すそのバリアントの軽鎖のCDR L3、(i)抗体G1または表6に示すそのバリアントの軽鎖の3つのCDR、(j)抗体G1または表6に示すそのバリアントの重鎖の3つのCDR、(k)抗体G1または表6に示すそのバリアントの軽鎖の3つのCDR及び重鎖の3つのCDR、(l)(b)〜(k)のいずれか1つを含む抗体。いくつかの実施形態において、本発明はまた、上述のいずれか1つまたは複数を含むポリペプチドを提供する。
抗体G1のCDR部分(Chothia及びKabatのCDRを含む)を図5に図式的に示す。CDR領域の決定は、十分に当該技術分野の技術範囲内である。いくつかの実施形態において、CDRがKabatとChothiaのCDRの組み合わせ(「組み合わせCDR」または「拡張CDR」とも呼ぶ)であり得ることは理解される。いくつかの実施形態において、CDRは、KabatのCDRである。他の実施形態において、CDRは、ChothiaのCDRである。換言すれば、2つ以上のCDRを用いる実施形態において、CDRは、Kabat、Chothia、組み合わせCDRまたはこれらの組み合わせのいずれかであってよい。
いくつかの実施形態において、本発明は、G1または表6に示すそのバリアントの少なくとも1つのCDR、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは6つ全てのCDRと実質的に同一である、少なくとも1つのCDR、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは6つ全てのCDRを含む、ポリペプチド(抗体であってもなくてもよい)を提供する。他の実施形態には、G1またはG1に由来する少なくとも2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDRと実質的に同一である、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDRを有する抗体が挙げられる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDRは、G1または表6に示すそのバリアントの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDRに少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。本発明の目的上、結合特異性及び/または全体的活性は概ね保持されるが、その活性の程度は、G1または表6に示すそのバリアントと比較して変わり得る(より大きいこともより小さいこともあり得る)ことが理解される。
いくつかの実施形態において、本発明はまた、G1または表6に示すそのバリアントのアミノ酸配列を含み、G1または表6に示すそのバリアントの配列の次のいずれか:少なくとも5つの連続アミノ酸、少なくとも8つの連続アミノ酸、少なくとも約10の連続アミノ酸、少なくとも約15の連続アミノ酸、少なくとも約20の連続アミノ酸、少なくとも約25の連続アミノ酸、少なくとも約30の連続アミノ酸を有し、当該アミノ酸の少なくとも3つは、G1(図5)または表6に示すそのバリアントの可変領域に由来する、ポリペプチド(抗体であってもなくてもよい)を提供する。一実施形態において、可変領域は、G1の軽鎖由来である。別の実施形態において、可変領域は、G1の重鎖由来である。例示的なポリペプチドは、G1の重鎖と軽鎖の両方の可変領域の連続アミノ酸(上述した長さ)を有する。別の実施形態において、5つ(またはそれ以上)の連続アミノ酸は、図5に示すG1の相補性決定領域(CDR)に由来する。いくつかの実施形態において、連続アミノ酸は、G1の可変領域に由来する。
抗CGRPアンタゴニスト抗体及びポリペプチドのCGRP(ヒトα−CGRPなど)への結合親和性(KD)は、約0.06〜約200nMであり得る。いくつかの実施形態において、結合親和性は、約200nM、100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、約60pM、約50pM、約20pM、約15pM、約10pM、約5pMまたは約2pMのいずれかである。いくつかの実施形態において、結合親和性は、約250nM、約200nM、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pMまたは約50pMのいずれか未満である。
いくつかの実施形態において、本発明はまた、これらの抗体またはポリペプチドのいずれを作製する方法を提供する。本発明の抗体は、当該技術分野において知られている手順によって作製することができる。ポリペプチドは、抗体のタンパク質分解若しくは他の分解、上述した組み換え法(すなわち、単一または融合ポリペプチド)または化学合成によって作製することができる。抗体のポリペプチド、特に約50のアミノ酸までの短いポリペプチドは、化学合成によって簡便に生成される。化学合成の方法は、当該技術分野において知られており、商業的に利用可能である。例えば、固相方法を使用する自動ポリペプチドシンセサイザーによって抗体を作製することができるであろう。米国特許第5,807,715号、同第4,816,567号及び同第6,331,415号も参照されたい。
別の代替法において、抗体は、当該技術分野においてよく知られている手順を用いて、組み換え的に作製することができる。一実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号9及び配列番号10に示す、抗体G1の重鎖及び/または軽鎖可変領域をコードする配列を含む。別の実施形態において、配列番号9及び配列番号10に示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを、発現または増殖のために、1つまたは複数のベクターにクローニングする。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞中のベクターに維持され得、次いで、宿主細胞を増殖させ、その後の使用のために凍結することができる。ベクター(発現ベクターを含む)及び宿主細胞については、本明細書にて詳述する。
いくつかの実施形態において、本発明はまた、G1などの本発明の抗体の一本鎖可変領域断片(「scFv」)を包含する。一本鎖可変領域断片は、短い連結ペプチドを用いて、軽鎖及び/または重鎖可変領域を連結することによって作製される。Bird et al.(1988)Science 242:423−426。連結ペプチドの一例は、(GGGGS)3(配列番号57)であり、一方の可変領域のカルボキシ末端と他方の可変領域のアミノ末端との間の約3.5nmを架橋する。他の配列のリンカーも設計され、使用されている。Birdら(1988)。次に、リンカーは、薬物の結合または固体支持体の結合などの追加の機能のために修飾することができる。単一鎖バリアントを組み換え的にまたは合成的に作製することができる。scFvの合成作製の場合、自動シンセサイザーを用いることができる。scFvの組み換え作製の場合、scFvをコードするポリヌクレオチドを含有する好適なプラスミドを、好適な宿主細胞、酵母菌、植物、昆虫若しくは哺乳動物細胞などの真核生物、または大腸菌などの原核生物のいずれかに導入することができる。目的のscFvをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのライゲーションなどの慣用的操作によって生成することができる。得られたscFvを、当該技術分野において知られている、標準的なタンパク質精製技術を用いて単離することができる。
ダイアボディなどの一本鎖抗体の他の形態もまた包含される。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現しているが、同一鎖上の2つのドメイン間で対をなすには短すぎるリンカーを用いることにより、それらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を創出する、二価の二重特異性抗体である。(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad Sci.USA 90:6444−6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1121−1123を参照)。
例えば、本明細書に開示の抗体を用いて、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有する二重特異性抗体であるモノクローナル抗体を作製することができる。二重特異性抗体の作製方法は、当該技術分野において知られている(例えば、Suresh et al.,1986,Methods in Enzymology 121:210を参照)。元来、二重特異性抗体の組み換え作製は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対と、異なる特異性を有する2つの重鎖との共発現に基づいていた(Millstein and Cuello,1983,Nature 305,537−539)。
二重特異性抗体を作製する1つの手法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)が、融合体の少なくとも1つに存在するのが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体及び所望により免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを別個の発現ベクターに挿入し、好適な宿主生物にコトランスフェクトする。これにより、構築物に用いられる3つのポリペプチド鎖の割合が異なるときに最適な収率が得られる実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互比率を調節する上で、大きな柔軟性がもたらされる。しかしながら、少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が同じ割合であるときに高収率が得られる場合、または割合に特定の重要性がない場合には、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を1つの発現ベクターに挿入することも可能である。
1つの手法において、二重特異性抗体は、第1の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性をもたらす)から構成される。免疫グロブリン軽鎖が二重特異性分子の半分である、この非対称構造により、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を容易にする。この手法については、1994年3月3日に公開されたPCT公開第WO94/04690号に記載されている。
2つの共有結合抗体を含むヘテロ複合抗体も本発明の範囲内である。かかる抗体は、免疫系細胞を不必要な細胞に対して標的化するために(米国特許第4,676,980号)、またHIV感染の治療のために(PCT出願公開第WO91/00360号及び同第WO92/200373号;EP03089)使用されている。ヘテロ複合抗体は、任意の簡便な架橋方法を用いて作製することができる。好適な架橋剤及び技術については、当該技術分野においてよく知られており、米国特許第4,676,980号に記載されている。
キメラまたはハイブリッド抗体もまた、架橋剤が関与するものを含む、タンパク質合成化学の既知の方法を用いて、インビトロで調製することができる。例えば、ジスルフィド交換反応を用いるか、またはチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素が構築され得る。本目的に好適な試薬の例としては、イミノチオレート及びメチル−4−メルカプトブチルイミダートが挙げられる。
抗体G1若しくは表6に示すそのバリアントの1つまたは複数のCDR、または抗体G1若しくは表6に示すそのバリアントに由来する1つまたは複数のCDRを含むヒト化抗体は、当該技術分野において知られている任意の方法を用いて作製することができる。例えば、4つの一般的工程を用いて、モノクローナル抗体をヒト化することができる。
いくつかの実施形態において、本発明は、抗体G1または表6に示すそのバリアントの修飾物を包含し、活性及び/または親和性が向上または低下した、その特性に有意な影響を与えない機能的に等価である抗体及びバリアントを含む。例えば、CGRPに対して所望の結合親和性を有する抗体を得るために、抗体G1または表6に示すそのバリアントのアミノ酸配列を変異させてよい。ポリペプチドの修飾は、当該技術分野において慣用的な作業であり、本明細書にて詳述する必要はない。ポリペプチドの修飾については、実施例で例示する。修飾ポリペプチドの例には、アミノ酸残基の保存的置換、機能活性に有意な有害的変化をもたらさないアミノ酸の1つまたは複数の欠失若しくは付加を有するポリペプチド、または化学的類似体の使用が挙げられる。
アミノ酸配列の挿入には、1つの残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの長さ範囲に及ぶアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに1つまたは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体またはエピトープタグに融合した抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントには、抗体N末端またはC末端に酵素、または抗体の血清中半減期を増大させるポリペプチドを融合したものが挙げられる。
置換バリアントは、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基を除去し、その位置に異なる残基を挿入したものである。置換変異導入に関して最も目的対象になる部位には、超可変領域が挙げられるが、FRの変更もまた企図される。保存的置換については、表1に「保存的置換」という見出しで示す。こうした置換により生物活性に変化がもたらされる場合、表1に「代表的置換」と称するまたはアミノ酸クラスに関して以下で詳述するようなより実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングすることができる。
抗体の生物学的特性の実質的な改変は、(a)置換領域内のポリペプチド主鎖の構造、例えば、シート若しくはヘリックス構造、(b)標的部位における分子の電荷若しくは疎水性、または(c)側鎖の嵩を維持することに対する効果が顕著に異なる置換を選択することによって達成される。天然残基は、共通する側鎖特性:
(1)無極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)極性無電荷:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性(負電荷):Asp、Glu;
(4)塩基性(正電荷):Lys、Arg;
(5)鎖配向性に影響する残基:Gly、Pro;及び
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、His
に基づいて各群に分けられる。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスに交換することによってなされる。
抗体の適切な立体構造の維持に関与しない任意のシステイン残基もまた、通常はセリンで置換することができ、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防ぐことができる。逆に、特にその抗体がFv断片などの抗体断片である場合、システイン結合(複数可)を抗体に付加してもよく、抗体の安定性が向上する。
アミノ酸修飾は、1つまたは複数のアミノ酸の変化または修飾から、可変領域などの領域の完全な再設計まで多様であり得る。可変領域における変化は、結合親和性及び/または特異性を変えることができる。いくつかの実施形態において、CDRドメイン内に1つから5つの保存的アミノ酸置換がなされる。他の実施形態において、CDRドメイン内に1つから3つを超えない保存的アミノ酸置換がなされる。更に他の実施形態において、CDRドメインは、CDR H3及び/またはCDR L3である。
修飾にはまた、グリコシル化及び非グリコシル化ポリペプチド、ならびに他の翻訳後修飾、例えば、種々の糖によるグリコシル化、アセチル化及びリン酸化反応などがなされたポリペプチドも挙げられる。抗体は、定常領域の保存的位置でグリコシル化される(Jefferis and Lund,1997,Chem.Immunol.65:111−128;Wright and Morrison,1997,TibTECH 15:26−32)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boyd et al.,1996,Mol.Immunol.32:1311−1318;Wittwe and Howard,1990,Biochem.29:4175−4180)、ならびに糖タンパク質の立体構造及び提示される三次元表面に影響し得る糖タンパク質の部分間の分子内相互作用(Hefferis and Lund,上掲;Wyss and Wagner,1996,Current Opin.Biotech.7:409−416)に影響を与える。オリゴ糖はまた、特異的認識構造に基づいて、所定の糖タンパク質をある特定の分子に標的化するのに役立ち得る。抗体のグリコシル化は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に影響することも報告されている。特に、二分岐GlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)のテトラサイクリン制御発現を示すCHO細胞は、ADCC活性が向上することが報告された(Umana et al.,1999,Mature Biotech.17:176−180)。
抗体のグリコシル化は、通常、N−結合型またはO−結合型のいずれかである。N−結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン−X−セリン、アスパラギン−X−スレオニン及びアスパラギン−X−システイン(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、これらのトリペプチド配列のいずれかがポリペプチド中に存在することで、潜在的なグリコシル化部位が創出される。O−結合型グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへのN−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースの糖のうちの1つの結合を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンも用いることができる。
抗体へのグリコシル化部位の付加は、上記のトリペプチド配列のうちの1つまたは複数を含むようにアミノ酸配列を変えることによって簡便に実施される(N−結合型グリコシル化部位に関して)。この変更はまた、元の抗体の配列に1つ若しくは複数のセリン残基若しくはスレオニン残基の付加、またはこれらの残基による置換によって行うことができる(O結合型グリコシル化部位に関して)。
抗体のグリコシル化パターンは、基本となるヌクレオチド配列を変更することなく、変えることもできる。グリコシル化は、抗体を発現させるために使用する宿主細胞に大きく依存する。候補治療薬である組み換え糖タンパク質、例えば抗体の発現に使用される細胞型は、自然細胞であることは稀であるので、抗体のグリコシル化パターンにおける多様性が見込まれ得る(例えば、Hse et al.,1997,J.Biol.Chem.272:9062−9070を参照)。
宿主細胞の選択に加えて、抗体の組み換え産生時のグリコシル化に影響を与える要因には、増殖様式、培地配合、培養密度、酸素添加、pH、精製スキームなどが挙げられる。特定の宿主生物にて達成されるグリコシル化パターンを変更するために、オリゴ糖産生に関与するある特定の酵素の導入または過剰発現を含む様々な方法が提案されている(米国特許第5,047,335号、同第5,510,261号及び同第5.278,299号)。グリコシル化またはある種のグリコシル化は、例えば、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、N−グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3を用いて、糖タンパク質から酵素的に取り除くことができる。加えて、組み換え宿主細胞を遺伝子的に組み換えて、特定の種類の多糖のプロセッシングを欠くようにすることができる。これらの技術及び類似技術については、当該技術分野においてよく知られている。
他の修飾方法には、当該技術分野において知られているカップリング技術を用いることが挙げられ、酵素的手段、酸化的置換及びキレート化を含むがこれらに限定されない。修飾は、例えば、イムノアッセイのための標識の結合に用いることができる。修飾G1ポリペプチドは、当該技術分野において確立された手順を用いて作製することができ、当該技術分野において知られている標準的なアッセイを用いてスクリーニングすることができる。これらのいくつかについては、以下及び実施例にて記載する。
本発明のいくつかの実施形態において、抗体は、改変された定常領域を含み、例えば、補体媒介性溶解を誘発しない、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を刺激しない、若しくはミクログリアを活性化しない、または補体媒介性溶解の誘発、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)に対する刺激若しくはミクログリアの活性化のうちのいずれか1つ若しくは複数の活性を低下させた(改変していない抗体と比較して)、免疫学的に不活性であるか、部分的に不活性である定常領域を含む。定常領域の種々の改変を用いて、エフェクター機能の最適レベル及び/または組み合わせを達成することができる。例えば、Morgan et al.,Immunology 86:319−324(1995);Lund et al.,J.Immunology 157:4963−9 157:4963−4969(1996);Idusogie et al.,J.Immunology 164:4178−4184(2000);Tao et al.,J.Immunology 143:2595−2601(1989);及びJefferis et al.,Immunological Reviews 163:59−76(1998)を参照されたい。いくつかの実施形態において、定常領域は、Eur.J.Immunol.(1999)29:2613−2624、PCT出願第PCT/GB99/01441号及び/または英国特許出願第9809951.8号に記載されているように改変される。他の実施形態において、抗体は、A330P331からS330S331への変異を含むヒト重鎖IgG2定常領域を含む(アミノ酸ナンバリングは野生型IgG2配列を基準とする)。Eur.J.Immunol.(1999)29:2613−2624。更に他の実施形態において、定常領域は、N−結合グリコシル化が脱グリコシル化される。いくつかの実施形態において、定常領域は、定常領域中のグリコシル化アミノ酸残基またはN−グリコシル化認識配列の一部である隣接残基を変異させることによって、N−結合グリコシル化が脱グリコシル化される。例えば、N−グリコシル化部位N297をA、Q、KまたはHに変異させることができる。Tao et al.,J.Immunology 143:2595−2601(1989);及びJefferis et al.,Immunological Reviews 163:59−76(1998)を参照されたい。いくつかの実施形態において、定常領域は、N−結合グリコシル化が脱グリコシル化される。定常領域のN−結合グリコシル化は、酵素的に(酵素PNGaseによって炭水化物を取り除くなど)またはグリコシル化欠損宿主細胞での発現によって脱グリコシル化され得る。
他の抗体改変には、1999年11月18日に公開されたPCT公開第WO99/58572号に記載の通りに改変された抗体が挙げられる。これらの抗体は、標的分子に対する結合ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常ドメインの全てまたは一部と実質的に相同であるアミノ酸配列を有するエフェクタードメインを含む。これらの抗体は、有意な補体依存性溶解または標的の細胞媒介性破壊を誘発することなく、標的分子に結合することができる。いくつかの実施形態において、エフェクタードメインは、FcRn及び/またはFcγRIIbに特異的に結合することができる。これらは、通常、2つ以上のヒト免疫グロブリン重鎖CH2ドメインに由来するキメラドメインに基づく。このように改変された抗体は、長期抗体療法での使用に特に適しており、従来の抗体療法に対する炎症性反応及び他の拒絶反応が回避される。
いくつかの実施形態において、本発明は、親和性が成熟した実施形態を含む。例えば、親和性成熟抗体は、当該技術分野において知られている手順によって作製することができる(Marks et al.,1992,Bio/Technology,10:779−783;Barbas et al.,1994,Proc Nat.Acad.Sci,USA 91:3809−3813;Schier et al.,1995,Gene,169:147−155;Yelton et al.,1995,J.Immunol.,155:1994−2004;Jackson et al.,1995,J.Immunol.,154(7):3310−9;Hawkins et al.,1992,J.Mol.Biol.,226:889−896;及びWO2004/058184)。
抗体の親和性の調節及びCDRの特徴付けには、以下の方法を用いることができる。抗体のCDRの特徴付け及び/または抗体などのポリペプチドの結合親和性の変更(改善など)を行う一方法は、「ライブラリースキャニング変異導入」と呼ばれる。一般に、ライブラリースキャニング変異導入は、以下のように行われる。当該技術分野にて認識されている方法を用いて、CDR中の1つまたは複数のアミノ酸位置を2つ以上(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20など)のアミノ酸で置換する。これにより、2つ以上の構成要素の複雑性(全ての位置で2つ以上のアミノ酸を置換する場合)をそれぞれ有する、クローンの小ライブラリー(いくつかの実施形態では、分析されるアミノ酸の位置ごとに1つ)が作られる。一般に、ライブラリーは、天然(無置換)アミノ酸を含むクローンも包含する。各ライブラリーからの少数のクローン、例えば、約20〜80のクローン(ライブラリーの複雑性に依存する)を、標的ポリペプチド(または他の結合標的)に対する結合親和性についてスクリーニングし、結合が増加した候補、同じもの、減少したものまたは全くないものを特定する。結合親和性を決定するための方法は、当該技術分野においてよく知られている。結合親和性は、約2倍以上の結合親和性の差異を検出する、Biacore表面プラズモン共鳴分析を用いて決定することができる。Biacoreは、出発抗体がすでに比較的高い親和性、例えば、約10nM以下のKDで結合する場合、特に有用である。Biacore表面プラズモン共鳴を用いるスクリーニングについては、本明細書の実施例において記載する。
結合親和性は、Kinexa Biocensorは、シンチレーション近接アッセイ、ELISA、ORIGENイムノアッセイ(IGEN)、蛍光消光、蛍光移動及び/または酵母ディスプレイを用いて特定することができる。結合親和性はまた、好適なバイオアッセイを用いて、スクリーニングしてもよい。
いくつかの実施形態において、当該技術分野にて認識されている変異導入法(そのいくつかについて本明細書に記載する)を用いて、CDR中のそれぞれのアミノ酸位置を20種全ての天然アミノ酸で置換する(いくつかの実施形態では、1回に1つずつ)。これにより、20の構成要素の複雑性(それぞれの位置で全20種のアミノ酸を置換する場合)をそれぞれ有する、クローンの小ライブラリー(いくつかの実施形態では、分析されるアミノ酸の位置ごとに1つ)が作られる。
いくつかの実施形態において、スクリーニングされるライブラリーは、2つ以上の位置に置換を含み、これらの置換は、同じCDR中であってもよいし、2つ以上のCDR中であってもよい。したがって、ライブラリーは、1つのCDR中の2つ以上の位置に置換を含み得る。ライブラリーは、2つ以上のCDR中の2つ以上の位置に置換を含み得る。ライブラリーは、3、4、5つ以上の位置に置換を含み得、当該位置は、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDR中に認められる。置換は、冗長性の低いコドンを用いて作製することができる。例えば、Balint et al.,(1993)Gene 137(1):109−18)の表2を参照されたい。
CDRは、CDRH3及び/またはCDRL3であってよい。CDRは、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2及び/またはCDRH3のうちの1つまたは複数であってよい。CDRは、KabatのCDR、ChothiaのCDRまたは拡張CDRであってよい。
結合が改善した候補の配列を決定し、これにより、親和性が改善されたCDR置換変異体(「改善した」置換とも呼ぶ)を同定することができる。また、結合する候補の配列も決定し、これにより、結合を保持するCDR置換を同定してもよい。
複数回のスクリーニングを行うことができる。例えば、結合の改善した候補(1つまたは複数のCDRの1つまたは複数の位置にアミノ酸置換をそれぞれ含む)はまた、それぞれの改善したCDR位置(すなわち、結合の改善を示した置換変異体のCDR中のアミノ酸位置)に少なくとも元のアミノ酸及び置換したアミノ酸を含む第2のライブラリーの設計に有用である。このライブラリーの作製及びスクリーニングまたは選別については、以下に詳述する。
ライブラリースキャニング変異導入はまた、結合の改善、同じ結合、結合の減少または結合のないクローン頻度から、抗体−抗原複合体の安定性に対しての各アミノ酸位置の重要性に関する情報が提供されるという点で、CDRの特性評価の手段を提供する。例えば、CDRのある位置を全20種のアミノ酸に変えたときに結合が保持される場合、その位置は、抗原結合に必要でない可能性が高い位置であると特定される。逆に、CDRのある位置がパーセンテージの低い置換でしか結合を保持しない場合、その位置は、CDR機能に重要な位置であると特定される。したがって、ライブラリースキャニング変異導入法により、多数の異なるアミノ酸(全20種のアミノ酸を含む)に変更することができるCDRの位置、及び変えることのできないまたは少数のアミノ酸にのみ変更可能なCDRの位置に関する情報がもたらされる。
親和性の改善した候補を組み合わせて、改善したアミノ酸、その位置の元のアミノ酸を含み、かつ望ましいスクリーニング法または選別法を用いて、所望されるまたは可能なライブラリーの複雑性に応じて、その位置の更なる置換を含み得る、第2のライブラリーにしてもよい。加えて、所望により、隣接するアミノ酸位置を少なくとも2つ以上のアミノ酸にランダム化することができる。隣接するアミノ酸のランダム化は、変異CDRにおける更なる高次構造の柔軟性を与え得るものであり、これにより、多数の改善変異体の導入が可能になり、または容易になり得る。ライブラリーはまた、初回のスクリーニングで親和性の改善を示さなかった位置での置換を含み得る。
第2のライブラリーは、Biacore表面プラズモン共鳴分析を用いるスクリーニング、及び当該技術分野において知られている選択のための任意の方法(ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ及びリボソームディスプレイを含む)を用いる選択を含む、当該技術分野において知られている任意の方法を使用して、結合親和性の改善した及び/または変化したライブラリーメンバーについて、スクリーニングまたは選別される。
いくつかの実施形態において、本発明はまた、本発明の抗体(G1など)またはポリペプチドに由来する1つまたは複数の断片または領域を含む融合タンパク質を包含する。一実施形態において、配列番号2(図5)に示す可変軽鎖領域の少なくとも10の連続アミノ酸及び/または配列番号1(図5)に示す可変重鎖領域の少なくとも10のアミノ酸を含む、融合ポリペプチドが提供される。他の実施形態において、配列番号2(図5)に示す可変軽鎖領域の少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25若しくは少なくとも約30の連続アミノ酸及び/または配列番号1(図5)に示す可変重鎖領域の少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25若しくは少なくとも約30の連続アミノ酸を含む、融合ポリペプチドが提供される。別の実施形態において、融合ポリペプチドは、図5の配列番号2及び配列番号1に示すG1の軽鎖可変領域及び/または重鎖可変領域を含む。別の実施形態において、融合ポリペプチドは、G1の1つまたは複数のCDRを含む。更に他の実施形態において、融合ポリペプチドは、抗体G1のCDR H3及び/またはCDR L3を含む。本発明の目的上、G1融合タンパク質は、1つまたは複数のG1抗体と、天然分子には結合していない別のアミノ酸配列、例えば、別の領域からの非相同配列または相同配列とを含有する。例示的な非相同配列には、FLAGタグまたは6Hisタグ(配列番号56)などの「タグ」が挙げられるが、これらに限定されない。タグは、当該技術分野においてよく知られている。
G1融合ポリペプチドは、当該技術分野において知られている方法によって、例えば、合成的にまたは組み換え的に作製することができる。通常、本発明のG1融合タンパク質は、本明細書に記載の組み換え法を用いて、当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドが発現するようにすることによって作製されるが、当該技術分野において知られている他の手段、例えば、化学合成などによって調製してもよい。
いくつかの態様において、本発明はまた、固体支持体(ビオチンまたはアビジンなど)への結合を容易にする試薬と複合体化した(例えば、連結した)、G1由来の抗体またはポリペプチドを含む組成物を提供する。説明を簡潔にするために、これらの方法が本明細書に記載のCGRP結合実施形態のいずれかに適用されるという理解を前提に、概して、G1または抗体に関して言及する。複合体化とは、一般に、本明細書に記載する構成要素の連結を指す。連結(少なくとも投与のために、これらの構成要素を隣接関係に概ね固定すること)は、任意数の方法で達成することができる。例えば、試薬と抗体のそれぞれが他方と反応できる置換基を持つ場合、試薬と抗体との間の直接反応が可能である。例えば、一方にあるアミノ基またはスルフヒドリル基などの求核基は、他方にある無水物若しくは酸ハロゲン化物などのカルボニル含有基または良好な脱離基(例えば、ハロゲン化物)を含有するアルキル基と反応することができる。
抗体またはポリペプチドは、蛍光分子、放射性分子または当該技術分野において知られている任意の他の標識などの標識試薬(あるいは「ラベル」とも呼ばれる)に連結することができる。一般に、シグナルを(直接的または間接的に)もたらす標識は、当該技術分野において知られている。
いくつかの実施形態において、本発明はまた、抗体G1、及び/または本明細書に記載の抗体若しくはポリペプチドのいずれか若しくは全てを含む、組成物(医薬組成物を含む)及びキットを提供する。
いくつかの実施形態において、本発明はまた、本発明の抗体及びポリペプチド(図5に示す軽鎖及び重鎖可変領域のポリペプチド配列を含む抗体を含む)をコードする単離ポリヌクレオチド、ならびに当該ポリヌクレオチドを含むベクター及び宿主細胞を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は、以下のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド(または医薬組成物を含む組成物)を提供する。(a)抗体G1または表6に示すそのバリアント、(b)抗体G1または表6に示すそのバリアントの断片または領域、(c)抗体G1または表6に示すそのバリアントの軽鎖、(d)抗体G1または表6に示すそのバリアントの重鎖、(e)抗体G1または表6に示すそのバリアントの軽鎖及び/または重鎖の1つまたは複数の可変領域、(f)抗体G1または表6に示すそのバリアントの1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDR)、(g)抗体G1の重鎖のCDR H3、(h)抗体G1または表6に示すそのバリアントの軽鎖のCDR L3、(i)抗体G1または表6に示すそのバリアントの軽鎖の3つのCDR、(j)抗体G1または表6に示すそのバリアントの重鎖の3つのCDR、(k)抗体G1または表6に示すそのバリアントの軽鎖の3つのCDR及び重鎖の3つのCDR、(l)(b)〜(k)のいずれか1つを含む抗体。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号9及び配列番号10に示すポリヌクレオチドの一方または両方を含む。
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の抗体(抗体断片を含む)及びポリペプチド、例えばエフェクター機能を欠損させた抗体及びポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、当該技術分野において知られている手順によって作製することができる。
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドのいずれかを含む組成物(医薬組成物など)を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に記載のG1抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。他の実施形態において、組成物は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。更に他の実施形態において、組成物は、配列番号9及び配列番号10に示すポリヌクレオチドの一方または両方を含む。発現ベクター、及びポリヌクレオチド組成物の投与については、本明細書にて更に説明する。
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法を提供する。
こうした配列に相補的なポリヌクレオチドもまた、本発明に包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コード化またはアンチセンス)でも、二本鎖でもよく、DNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であり得る。RNA分子には、イントロンを含有し、DNA分子に1対1で対応するHnRNA分子及びイントロンを含有しないmRNA分子が挙げられる。更なるコード配列または非コード配列が本発明のポリヌクレオチド内に存在してもよいが、必須ではなく、ポリヌクレオチドは、他の分子及び/または支持体材料に連結していてもよいが、必須ではない。
ポリヌクレオチドは、天然配列(すなわち、抗体またはその一部をコードする内因性配列)を含んでもよいし、こうした配列のバリアントを含んでもよい。ポリヌクレオチドのバリアントは、コードされたポリペプチドの免疫反応性が天然の免疫反応性分子と比較して低下しないような1つまたは複数の置換、付加、欠失及び/または挿入を含む。コードされたポリペプチドの免疫反応性への影響は、一般に、本明細書に記載の通りに評価され得る。バリアントは、天然抗体またはその一部をコードするポリヌクレオチド配列に対して、好ましくは少なくとも約70%の同一性、より好ましくは少なくとも約80%の同一性、最も好ましくは少なくとも約90%の同一性を示す。
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が後述するように最大一致するように配列させたときに同じであれば、「同一」であるという。2つの配列間の比較は、通常、配列を比較領域にわたって比較し、配列が類似している局所的領域を同定し比較することによって行われる。本明細書で使用する「比較領域」とは、2つの配列を最適配列した後に、配列が同数の連続的な位置の参照配列と比較され得る、少なくとも約20の連続的な位置、通常、30〜約75、40〜約50のセグメントを指す。
比較のための配列の最適アラインメントは、バイオインフォマティクスソフトウェアのLasergeneスイートのMegalignプログラム(DNASTAR,Inc.、Madison,WI)を使用して、デフォルトパラメータを用いて行うことができる。このプログラムは、以下の参考文献に記載のいくつかのアラインメントスキームを組み込んでいる。Dayhoff,M.O.(1978)A model of evolutionary change in proteins − Matrices for detecting distant relationships.In Dayhoff,M.O.(ed.)Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,Washington DC Vol.5,Suppl.3,pp.345−358;Hein J.,1990,Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp.626−645 Methods in Enzymology vol.183,Academic Press,Inc.,San Diego,CA;Higgins,D.G. and Sharp,P.M.,1989,CABIOS 5:151−153;Myers,E.W. and Muller W.,1988,CABIOS 4:11−17;Robinson,E.D.,1971,Comb.Theor.11:105;Santou,N.,Nes,M.,1987,Mol.Biol.Evol.4:406−425;Sneath,P.H.A. and Sokal,R.R.,1973,Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy,Freeman Press,San Francisco,CA;Wilbur,W.J. and Lipman,D.J.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726−730。
好ましくは、「配列同一性のパーセンテージ」は、最適に配列された2つの配列を少なくとも20の位置の比較領域にわたって比較することによって決定され、比較領域中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、最適なアラインメントの2つの配列の参照配列(付加または欠失を含まないもの)と比較して、20%以下、通常5〜15%または10〜12%の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージを計算するには、両配列中で同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が生じている位置の数を特定して一致した位置の数を得て、一致した位置の数を参照配列中の総位置数(すなわち、領域の大きさ)で割り、その結果に100を掛けることにより、配列同一性のパーセンテージが得られる。
バリアントは、更にまたはあるいは、天然遺伝子またはその一部若しくは相補体に実質的に相同であり得る。このようなポリヌクレオチドのバリアントは、中程度にストリンジェントな条件下で、天然抗体(または相補的配列)をコードする自然に生じるDNA配列にハイブリダイズすることができる。
好適な「中程度にストリンジェントな条件」には、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中での予洗、50℃〜65℃、5×SSC、終夜でのハイブリダイズ、次いで、0.1%SDSを含有する2×、0.5×及び0.2×SSCをそれぞれ用いた65℃で20分間の2回の洗浄が含まれる。
本明細書で使用するとき、「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」とは、(1)洗浄に低イオン強度及び高温、例えば、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを50℃にて使用する、(2)ハイブリダイゼーション時に、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)とともに、ホルムアミドなどの変性剤、例えば、50%(v/v)ホルムアミドを42℃にて使用する、または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS及び10%硫酸デキストランを42℃にて使用し、42℃にて0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)及び55℃にて50%ホルムアミドで洗浄した後、55℃にてEDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を行うものである。当業者であれば、プローブ長などの要素に適合させるのに必要な温度、イオン強度などを調整する方法は認識するであろう。
遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が多数存在することは、当業者であれば理解するであろう。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小限の相同性を有する。しかしながら、コドン使用頻度の相違が原因で変動するポリヌクレオチドが、本発明によって特に企図される。更に、本明細書にて提供するポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子も本発明の範囲内である。対立遺伝子とは、ヌクレオチドの欠失、付加及び/または置換などの1つまたは複数の変異の結果として改変される内因性遺伝子である。こうして得られるmRNA及びタンパク質は、改変された構造または機能を有する場合があるが、そうである必要はない。対立遺伝子は、標準的な技術(ハイブリダイゼーション、増幅及び/またはデータベース配列比較など)を用いて同定することができる。
本発明のポリヌクレオチドは、化学的合成、組み換え法またはPCRを用いて得ることができる。化学的ポリヌクレオチド合成方法は、当該技術分野においてよく知られており、本明細書にて詳述する必要はない。当業者であれば、本明細書に記載する配列及び市販のDNA合成装置を用いて所望のDNA配列を作製することができる。
組み換え法を用いてポリヌクレオチドを作製するには、本明細書にて詳述するように、所望の配列を含むポリヌクレオチドを好適なベクターに挿入することができ、次に、そのベクターを複製及び増幅に好適な宿主細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドは、当該技術分野において知られている任意の手段によって、宿主細胞に挿入することができる。細胞は、直接取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F接合またはエレクトロポレーションにより外因性ポリヌクレオチドを導入することによって形質転換する。導入後、外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター(プラスミドなど)として細胞内に維持されるか、宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。このようにして増幅したポリヌクレオチドは、当該技術分野内でよく知られている方法によって、宿主細胞から単離することができる。例えば、Sambrookら(1989)を参照されたい。
あるいは、PCRによりDNA配列を複製させる。PCR技術は、当該技術分野においてよく知られており、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号及び同第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction,Mullis et al. eds.,Birkauswer Press,Boston(1994)に記載されている。
RNAは、単離したDNAを適切なベクター中に使用し、それを好適な宿主細胞に挿入することによって得ることができる。細胞が複製され、DNAがRNAに転写されたら、当業者によく知られている方法、例えば、Sambrookら(1989)に記載されている方法を用いて、RNAを単離することができる。
好適なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築してもよいし、当該技術分野において入手可能な多数のクローニングベクターから選択してもよい。選択されるクローニングベクターは、使用を意図する宿主細胞に応じて変わり得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製能を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼの標的を1つ有し得、かつ/またはベクターを含有するクローンの選択に用いることができるマーカーの遺伝子を保持し得る。好適な例には、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これら及び多くの他のクローニングベクターは、BioRad、Strategene及びInvitrogenなどの商業的供給業者から入手可能である。
発現ベクターは、一般に、本発明の種々の態様のいずれかによるポリヌクレオチドを含有する複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとしてまたは染色体DNAの構成部分として宿主細胞中で複製可能でなければならないことが示唆される。好適な発現ベクターには、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミド及びPCT公開第WO87/04462号に記載の発現ベクター(複数可)が挙げられるが、これらに限定されない。ベクター構成要素は、一般に、シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、好適な転写調節エレメント(プロモーター、エンハンサー及びターミネーターなど)のうちの1つまたは複数を含み得るが、これらに限定されない。発現(すなわち、翻訳)には、リボソーム結合部位、翻訳開始部位及び終止コドンなどの1つまたは複数の翻訳制御エレメントも通常必要である。
目的のポリヌクレオチドを含有するベクターは、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAEデキストランまたは他の物質を用いるトランスフェクション、微粒子銃、リポフェクション及び感染(例えば、この場合のベクターはワクシニアウイルスなどの感染因子)を含む、多数の適切な手段のいずれかによって、宿主細胞に導入することができる。導入ベクターまたはポリヌクレオチドの選択は、多くの場合、宿主細胞の特徴に依存する。
いくつかの態様において、本発明はまた、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれかを含む宿主細胞を提供する。目的の抗体、ポリペプチドまたはタンパク質をコードしている遺伝子を単離するために、異種DNAを過剰発現することができる任意の宿主細胞を用いることができる。哺乳動物の宿主細胞の非限定的な例には、COS、HeLa及びCHO細胞が挙げられるが、これらに限定されない。PCT公開第WO87/04462号も参照されたい。好適な非哺乳動物の宿主細胞には、原核生物(大腸菌または枯草菌など)及び酵母菌(出芽酵母、分裂酵母またはK.ラクチスなど)が挙げられる。好ましくは、宿主細胞は、その宿主細胞中の対応する内因性抗体または目的のタンパク質のレベルと比較して(存在する場合)、約5倍以上、より好ましくは10倍以上、更により好ましくは20倍以上のレベルでcDNAを発現する。Aθ1−40への特異的結合に関する宿主細胞のスクリーニングは、イムノアッセイまたはFACSによって行われる。目的の抗体またはタンパク質を過剰発現する細胞を特定することができる。
D.組成物
いくつかの実施形態において、本発明の方法にて使用される組成物は、本明細書に記載する、有効量の抗体(例えば、抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRP経路を調節するモノクローナル抗体)または抗体由来ポリペプチドを含む。かかる組成物の例及び製剤化方法については、先のセクション及び以下にも記載されている。一実施形態において、組成物は、CGRPアンタゴニストを更に含む。いくつかの実施形態において、組成物は、CGRP経路を調節する1つまたは複数のモノクローナル抗体を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、1つまたは複数の抗CGRPアンタゴニスト抗体を含む。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ヒトCGRPを認識する。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ヒト化されている。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、抗体媒介性溶解またはADCCなどの不必要なまたは望ましくない免疫応答を誘発しない定常領域を含む。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、抗体G1の1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはいくつかの実施形態では6つ全てのG1のCDRなど)を含む。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ヒト抗体である。
組成物が2つ以上の抗体(例えば、2つ以上の抗CGRPアンタゴニスト抗体、CGRPの異なるエピトープを認識する抗CGRPアンタゴニスト抗体の混合物)を含み得ることが理解される。他の例示的な組成物は、同じエピトープを認識する2つ以上の抗CGRPアンタゴニスト抗体またはCGRPの異なるエピトープに結合する他の種類の抗CGRPアンタゴニスト抗体を含む。
組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤を更に含むことができる(Remington:The Science and practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hoover)。許容可能な担体、賦形剤または安定剤は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である。抗体の治療用製剤は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤を含み得、これらの種類の非限定的な例には、リン酸、クエン酸及び他の有機酸などの緩衝剤;塩化ナトリウムなどの塩;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、メチオニン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリシンなどのアミノ酸(例えば、0.1mM〜100mM、0.1mM〜1mM、0.01mM〜50mM、1mM〜50mM、1mM〜30mM、1mM〜20mM、10mM〜25mMの濃度);グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む単糖、二糖及び他の炭水化物;EDTA(例えば、EDTA二ナトリウム二水和物)などのキレート剤(例えば、0.001mg/mL〜1mg/mL、0.001mg/mL〜1mg/mL、0.001mg/mL〜0.1mg/mL、0.001mg/mL〜0.01mg/mLの濃度);スクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトールなどの糖(例えば、1mg/mL〜500mg/mL、10mg/mL〜200mg/mL、10mg/mL〜100mg/mL、50mg/mL〜150mg/mLの濃度);ナトリウムなどの塩生成対イオン;金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);及び/またはTWEEN(商標)(例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80))、PLURONICS(商標)若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤(例えば、0.01mg/mL〜10mg/mL、0.01mg/mL〜1mg/mL、0.1mg/mL〜1mg/mL、0.01mg/mL〜0.5mg/mLの濃度)が挙げられる。薬学的に許容可能な賦形剤については、本明細書にて更に記載する。
抗体(例えば、抗CGRPアンタゴニスト抗体)及びその組成物はまた、他の作用物質と併用することができ、作用物質の有効性を増大させ、及び/または補完するように機能する。
E.キット
一態様において、本発明はまた、本方法にて使用するためのキットを提供する。キットは、本明細書に記載の抗体(例えば、抗CGRPアンタゴニスト抗体(ヒト化抗体など))または本明細書に記載のポリペプチドを含む1つまたは複数の容器と、本明細書に記載の方法のいずれかに従って使用するための説明書とを含み得る。一般に、これらの説明書には、本明細書に記載の方法のいずれかに従った頭痛(片頭痛など)を治療、改善または予防するための抗体の投与に関する説明が含まれる。キットは、個体が頭痛を有するのかどうか、または個体が頭痛を有するリスクがあるかどうかを確認することに基づいて、治療に適した個体を選択する説明を更に含み得る。更に他の実施形態において、説明書は、頭痛(片頭痛など)を有するリスクのある個体に抗体(例えば、抗CGRPアンタゴニスト抗体)を投与する説明を含む。
いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、抗体はヒト抗体である。他の実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体である。さらに他の実施形態において、いくつかの実施形態において、抗体は、抗体G1(1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはいくつかの実施形態では6つ全てのG1のCDRなど)のうちの1つまたは複数のCDRを含む。
抗体(例えば、抗CGRPアンタゴニスト抗体)の使用に関する説明書は、一般に、目的の治療のための用量、投薬スケジュール及び投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、大量包装(例えば、複数回用量包装)または分割単位用量でもよい。キットに提供される説明書は、通常、ラベルまたは添付文書(例えば、キットに含まれる紙)上の書面での指示であるが、機械可読な説明書(例えば、磁気または光学式記憶ディスク上に保持された説明書)も許容可能である。
ラベルまたは添付文書は、組成物が頭痛(片頭痛など)を治療、改善及び/または予防するために使用されることを示すものである。本明細書に記載の方法のいずれかを実施するための説明書が提供されてもよい。
本発明のキットは、適切に包装される。好適な包装には、バイアル、ボトル、ジャー、フレキシブル包装(例えば、密閉したMylarまたはプラスチック袋)などが挙げられるが、これらに限定されない。特定の器具、例えば、吸入器、経鼻投与器具(例えば、アトマイザー)またはミニポンプなどの注入器具と組み合わせて使用するためのパッケージも企図される。キットは、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。容器も同様に、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性物質は、抗CGRPアンタゴニスト抗体及び/またはCGRP経路を調節するモノクローナル抗体である。容器は、第2の薬学的活性物質を更に含み得る。
キットは、緩衝液などの追加の成分及び説明情報を任意に提供してもよい。通常、キットは、容器と、その容器上または容器に付属するラベルまたは添付文書(複数可)とを含む。
以下の実施例は、本発明を例示するために記載するものであり、本発明を限定するものではない。
実施例1:CGRPに対するモノクローナル抗体の作製及び特性評価
抗CGRP抗体の作製。ラット及びヒトCGRPに異種間反応性を有する抗CGRP抗体を作製するために、様々な間隔で、25〜100μgのアジュバント中のKLHに結合したヒトα−CGRPまたはβ−CGRPでマウスを免疫した(足蹠1つにつき50μl、マウス1匹あたり計100μl)。免役付与は、概ね、Geerligs HJ et al.,1989,J.Immunol.Methods 124:95−102;Kenney JS et al.,1989,J.Immunol.Methods 121:157−166及びWicher K et al.,1989,Int.Arch.Allergy Appl.Immunol.89:128−135に記載の通りに実施した。マウスは、最初に、50μgのCFA(完全フロイントアジュバント)中のKLHに結合したヒトα−CGRPまたはβ−CGRPで免疫した。21日後、次に、25μgのIFA(不完全フロイントアジュバント)中のKLHに結合したヒトβ−CGRP(最初にヒトα−CGRPで免疫したマウス)またはα−CGRP(最初にヒトβ−CGRPで免疫したマウス)でマウスを免疫した。2回目の免疫付与から23日後、25μgのIFA中のKLHに結合したラットα−CGRPを用いて、3回目の免役付与を行った。10日後、ELISAを用いて抗体力価を試験した。3回目の免役付与から34日後、25μgのIFA中のペプチド(ラットα−CGRP−KLH)を用いて、4回目の免役付与を行った。4回目の免役付与から32日後、100μgの可溶性ペプチド(ラットα−CGRP)を用いて、最後の追加免疫を行った。
免疫したマウスから脾細胞を採取し、ポリエチレングリコール1500を用いて、脾細胞とNSO骨髄腫細胞を10:1の比で融合させた。ハイブリッドを96ウェルプレート中の20%ウマ血清及び2−オキサロ酢酸/ピルビン酸/インスリン(Sigma)を含有するDMEM中に播種し、ヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン選択を開始した。8日目に、20%ウマ血清を含む100μlのDMEMを全てのウェルに加えた。抗体捕捉イムノアッセイを用いることによって、ハイブリッドの上清をスクリーニングした。抗体クラスの特定は、クラス特異的2次抗体を用いて行った。
更なる特性評価のために、モノクローナル抗体産生細胞株のパネルをヒト及びラットCGRPへの結合に基づいて選択した。これらの抗体及び特性を以下の表2及び3に示す。
精製及びFab断片の作製。更なる特性評価のために選択したモノクローナル抗体は、タンパク質A親和性クロマトグラフィーを用いて、ハイブリドーマ培養液の上清から精製した。上清をpH8に平衡化した。次いで、上清を、PBSでpH8に平衡化したタンパク質AカラムMabSelect(Amersham Biosciences #17−5199−02)に充填した。5カラム容量のPBS(pH8)でカラムを洗浄した。50mMのクエン酸リン酸緩衝液(pH3)で抗体を溶出した。溶出した抗体を1Mリン酸緩衝液(pH8)で中和した。精製した抗体をPBS(pH7.4)で透析した。SDS−PAGEによりネズミモノクローナル抗体の標準曲線を用いて抗体濃度を決定した。
Immunopure Fabキット(Pierce #44885)を用いて、完全抗体のパパインタンパク質分解によってFabを作製し、製造者の説明書に従ってタンパク質Aクロマトグラフィーに流して精製した。既知の濃度の標準的なFab(アミノ酸分析により決定)を用いたELISA及び/またはSDS−PAGE電気泳動と、1OD=0.6mg/mL(またはアミノ酸配列に基づく理論当量)を用いたA280とによって、濃度を決定した。
Fabの親和性決定。抗CGRPモノクローナル抗体の親和性は、Biacore3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム(Biacore,INC、Piscataway NJ)を使用し、製造者自身のランニング緩衝液であるHBS−EP(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005%v/vポリソルベートP20)を用いて、25℃または37℃のいずれかで決定した。親和性は、SAチップ上に予め固定化されたストレプトアビジンを介してN末端ビオチン化CGRPペプチド(GenScript Corporation、New JerseyまたはGlobal Peptide Services、Coloradoによる受注生産)を捕捉し、CGRP表面に滴定した抗体Fabの結合反応速度を測定することによって、決定した。ビオチン化CGRPをHBS−EP中に希釈し、チップに0.001mg/mL未満の濃度で注入した。個々のチップチャネルで様々なフロー時間を用い、詳細な反応速度論的試験に関する50レスポンスユニット(RU)未満ならびに濃度試験及びスクリーニングに関する約800RUの2つの抗原密度範囲を得た。通常1μM〜0.1nMにわたる濃度である、精製Fab断片の2倍または3倍の連続希釈物(予想されるKDの0.1〜10倍になるようにする)を100μL/分で1分間注入し、解離時間を10分とした。各結合サイクル後、25%v/vエタノール中の25mM NaOHで表面を再生した。この表面は、数百回を超えるサイクルに耐性を示した。反応速度論的結合速度(kon)及び解離速度(koff)については、BIAevaluationプログラムを用いて、1:1ラングミュア結合モデル(Karlsson,R.Roos,H.Fagerstam,L.Petersson,B.(1994).Methods Enzymology 6.99−110)にデータをフィッティングさせることにより、同時に得た。全体の平衡解離定数(KD)または「親和性」は、KD=koff/konの比から算出した。ネズミFab断片の親和性を表2及び3に示す。
ネズミ抗CGRP抗体のエピトープマッピング。抗CGRP抗体がヒトα−CGRPに結合するエピトープを決定するために、様々なCGRP断片に対するFab断片の結合親和性を、上述の通りに、SAセンサーチップ上のN末端ビオチン化CGRP断片のアミノ酸19〜37及びアミノ酸25〜37を捕捉することによって、測定した。図1は、25℃で測定した各結合親和性を示す。図1に示すように、抗体4901を除く全ての抗体が、完全長ヒトα−CGRP(1〜37)への結合親和性と同様の親和性で、ヒトα−CGRP断片19〜37及び25〜37に結合する。抗体4901は、主に解離速度定数の損失により、完全長ヒトα−CGRP断片への結合と比べて1/6の親和性でヒトα−CGRP断片25〜37に結合する。データは、これらの抗CGRP抗体がCGRPのC末端に概ね結合することを示している。
抗CGRP抗体の結合に関与するヒトα−CGRPのアミノ酸の特性を更に評価するために、アラニンスキャニングを実施した。1つのアラニン置換を有するヒトα−CGRPの異なるバリアントをペプチド合成により作製した。これらのアミノ酸配列について、Biacore分析に用いた全ての他のペプチドと合わせて表4に示す。これらのバリアントに対する抗CGRP抗体のFab断片の親和性を上述の通りにBiacoreを用いて決定した。図1に示すように、12の全ての抗体がC末端エピトープを標的にし、アミノ酸F37が最も重要な残基である。F37のアラニンへの変異は、親和性を著しく低下させ、あるいは当該ペプチドに対する抗CGRP抗体の結合を完全に阻害した。次に最も重要なアミノ酸残基はG33であるが、この位置のアラニン交換による影響を受けたのは、親和性の高い抗体(7E9、8B6、10A8及び7D11)のみであった。これらの4つの親和性の高い抗体では、アミノ酸残基S34もまた重要な役割を果たしているが、重要度は低い。
実施例2:インビトロアッセイを用いた抗CGRPアンタゴニスト抗体のスクリーニング
細胞ベースcAMP活性化アッセイ及び結合試験を用いて、インビトロでのアンタゴニスト活性についてネズミ抗CGRP抗体を更にスクリーニングした。
cAMPアッセイによって測定したアンタゴニスト活性。抗CGRP抗体(最終濃度1〜3000nM)の存在下若しくは不存在下の5マイクロリットルのヒト若しくはラットα−CGRP(最終濃度50nM)またはラットα−CGRP若しくはヒトα−CGRP(最終濃度0.1nM〜10μM、c−AMP活性化の陽性対照として)を384ウェルプレート(Nunc、カタログ番号264657)に分注した。刺激用緩衝液(20mM HEPES、pH7.4、146mM NaCl、5mM KCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2及び500uM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX))中の細胞10マイクロリットル(ヒトα−CGRPを用いる場合はヒトSK−N−MC、またはラットα−CGRPを用いる場合はATCCからのラットL6)をプレートの各ウェルに加えた。プレートを室温で30分間インキュベートした。
インキュベーション後、HitHunter(商標)Enzyme Fragment Complementationアッセイ(Applied Biosystems)を製造者の説明書に従って用いて、cAMP活性化を実施した。アッセイは、酵素アクセプター(EA)及び酵素ドナー(ED)と呼ばれる2つの断片からなる、遺伝子操作されたβ−ガラクトシダーゼ酵素に基づいている。2つの断片が離れているとき、酵素は不活性である。これらの断片が一緒になると、補完と呼ばれるプロセスによって自然発生的に再構成され、活性型酵素が形成される。EFCアッセイのプラットフォームは、ED−cAMPペプチド複合体を利用し、cAMPは抗cAMPに認識される。このED断片は、EAと再会合することができ、活性型酵素を形成する。試験では、抗cAMP抗体が至適に滴定され、ED−cAMP複合体に結合し、酵素形成を阻害する。細胞溶解物サンプル中のcAMP濃度は、抗cAMP抗体への結合に関してED−cAMP複合体と競合する。アッセイ中の遊離ED複合体の量は、cAMPの濃度に比例する。したがって、cAMPは、活性型酵素が形成され、それがβ−ガラクトシダーゼの蛍光基質のターンオーバーにより定量化されることによって測定される。cAMP活性化アッセイの実施につき、10μLの溶解緩衝液及び抗cAMP抗体(比率1:1)を加え、室温で60分間インキュベートした。次いで、10μLのED−cAMP試薬を各ウェルに加え、室温で60分間インキュベートした。インキュベーション後、20μLのEA試薬及びCL混合物(基質を含む)(比率1:1)を各ウェルに加え、室温で1〜3時間または終夜インキュベートした。PMT機器で1秒/ウェルまたはイメージャーで30秒/部分で、プレートを読み取った。α−CGRPによるcAMP活性化を阻害する抗体を上記表2及び3中に特定した(「あり」と示す)。表2及び3のデータは、本アッセイでアンタゴニスト活性を示した抗体が概して高親和性を有することを示している。例えば、ヒトα−CGRPに対して約80nM以下のKD(25℃で決定)を有する抗体またはラットα−CGRPに対して約47nM以下のKD(37℃で決定)を有する抗体がこのアッセイでアンタゴニスト活性を示した。
放射性リガンド結合試験。結合試験を実施して、CGRPのその受容体への結合を阻害することにおける、抗CGRP抗体のIC50を先の記載の通りに測定した。Zimmermann et al.,Peptides 16:421−4,1995;Mallee et al.,J.Biol.Chem.277:14294−8,2002。10pMの125I−ヒトα−CGRPを含む総量1mLのインキュベーション緩衝液(50mM Tris−HCL、pH7.4、5mM MgCL2、0.1%BSA)中にて、SK−N−MC細胞の細胞膜(25μg)を室温で90分間インキュベートした。阻害濃度(IC50)を求めるために、抗体または非標識CGRP(対照として)を約100倍濃度のストック溶液から様々な濃度でインキュベーション緩衝液に溶解し、細胞膜及び10pMの125I−ヒトα−CGRPとともに同時にインキュベートした。0.5%ポリエチレミミン(polyethylemimine)でブロッキングしたガラスマイクロファイバーフィルター(GF/B、1μm)を通して濾過することにより、インキュベーションを終了させた。用量反応曲線をプロットし、次の等式:Ki=IC50/(1+([リガンド]/KD)を用いてKi値を決定した(ここで、SK−N−MC細胞中に存在するCGRP1受容体へのヒトα−CGRPの平衡解離定数はKD=8pM、Bmax=0.025pmol/mgタンパク質)。出されたIC50値(IgG分子基準)を結合部位に変換し(2倍することによって)、Biacoreにより決定された親和性(KD)と比較することができるようにした(表2参照)。
表2は、ネズミ抗体7E9、8B6、6H2及び4901のIC50を示す。データは、抗体親和性がIC50と概ね相関することを示している。つまり、親和性がより高い(KD値がより低い)抗体は、放射性リガンド結合試験にてより低いIC50を示す。
実施例3:ラットの伏在神経刺激によって誘発した皮膚血管拡張に対する抗CGRPアンタゴニスト抗体の効果
抗CGRP抗体のアンタゴニスト活性を試験するために、ラットの伏在神経刺激による皮膚血管拡張に対する抗体の効果を、先に記載されたラットモデルを用いて試験した。Escott et al.,Br.J.Pharmacol.110:772−776,1993。このラットモデルでは、伏在神経を電気的に刺激すると、神経終末からCGRPの放出が誘発され、これにより皮膚血流量が増加する。伏在神経刺激後に、雄のSprague Dawleyラット(170〜300g、Charles River Hollisterより)の足の皮膚の血流量を測定した。2%イソフルランによる麻酔下にラットを維持した。実験開始時にトシル酸ブレチリウムを投与して(30mg/kg、i.v.投与)、伏在神経の交感神経線維の付随刺激に起因する血管収縮を最小限に抑えた。体温は、温度制御ヒーティングパッドにサーモスタット連結された直腸プローブを使用して、37℃に維持した。抗体、陽性対照(CGRP8−37)及びビヒクル(PBS、0.01%Tween20)の化合物を右大腿静脈から静脈内投与した。ただし、図3に示す実験の場合は、試験化合物及び対照を尾静脈から投与し、図2A及び2Bに示す実験の場合は、抗体4901及び7D11を腹腔内(IP)注入した。陽性対照化合物CGRP8−37(血管拡張アンタゴニスト)は、半減期が短いので、神経刺激の3〜5分前に400nmol/kg(200μl)を投与した。Tan et al.,Clin.Sci.89:656−73,1995。抗体は、異なる用量(1mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg、10mg/kg及び25mg/kg)で投与した。
図2A及び2Bに示す実験では、抗体4901(25mg/kg)、抗体7D11(25mg/kg)またはビヒクル対照(0.01%Tween20を含むPBS)を電気パルス刺激の72時間前に腹腔内(IP)投与した。図3に示す実験では、抗体4901(1mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kgまたは25mg/kg)またはビヒクル対照(0.01%Tween20を含むPBS)を電気パルス刺激の24時間前に静脈内投与した。抗体またはビヒクル対照の投与後、右後肢の伏在神経を外科的に露出させ、近位側を切断し、乾燥を防ぐためにプラスチックラップで覆った。伏在神経によって刺激分布される領域である、後足の皮膚の背側正中にレーザードップラープローブを置いた。血液細胞の流速として測定される皮膚血流量をレーザードップラー流量計でモニターした。安定したベースライン流速(5%未満の変動)が少なくとも5分間確立されたら、神経を白金双極電極上に置き、60パルスで電気的に刺激し(2Hz、10V、1ms、30秒間)、20分後に再度刺激した。電気パルス刺激に対する各流速応答について、流速−時間曲線下面積(AUC、流速の変化×時間の変化に等しい)により、皮膚血流量における累積変化を推定した。2回の刺激に対する血流応答の平均を得た。動物を1〜3時間の間、麻酔下に維持した。
図2A及び図2Bに示すように、伏在神経に電気パルスを印加することにより刺激される血流増加は、対照と比較して、CGRP8−37(400nmol/kg、i.v.投与)、抗体4901(25mg/kg、ip投与)または抗体7D11(25mg/kg、ip投与)の存在によって阻害された。CGRP8〜37を伏在神経刺激の3〜5分前に投与し、抗体を伏在神経刺激の72時間前に投与した。図3に示すように、伏在神経に電気パルスを印加することにより刺激される血流増加は、伏在神経刺激の24時間前に異なる用量(1mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg及び25mg/kg)で静脈内投与された抗体4901の存在によって阻害された。
図4A及び4Bに示す実験では、抗体投与の前に、伏在神経を外科的に露出させた。右後肢の伏在神経を外科的に露出させ、近位側を切断し、乾燥を防ぐためにプラスチックラップで覆った。伏在神経によって刺激分布される領域である、後足の皮膚の背側正中にレーザードップラープローブを置いた。血液細胞の流速として測定される皮膚血流量をレーザードップラー流量計でモニターした。トシル酸ブレチリウム注入の30〜45分後、安定したベースライン流速(5%未満の変動)が少なくとも5分間確立されたら、神経を白金双極電極上に置き、電気的に刺激し(2Hz、10V、1ms、30秒間)、20分後に再度刺激した。これらの2回の刺激に対する血流流速応答の平均を用いて、電気刺激に対するベースライン応答(時間0)を確立した。次いで、抗体4901(1mg/kgまたは10mg/kg)、抗体7E9(10mg/kg)、抗体8B6(10mg/kg)、またはビヒクル(0.01%Tween20を含むPBS)を静脈内(i.v.)投与した。その後、抗体またはビヒクル投与から30分、60分、90分及び120分後に神経を刺激した(2Hz、10V、1ms、30秒間)。動物をおよそ3時間の間、麻酔下に維持した。電気パルス刺激に対する各流速応答について、流速−時間曲線下面積(AUC、流速の変化×時間の変化に等しい)により、皮膚血流量における累積変化を推定した。
図4Aに示すように、伏在神経に電気パルスを印加することにより刺激される血流増加は、電気パルス刺激が抗体投与から60分、90分及び120分後に加えられたときには、i.v.投与された1mg/kgの抗体4901の存在によって有意に阻害され、伏在神経に電気パルスを印加することにより刺激される血流増加は、電気パルス刺激が抗体投与から30分、60分、90分及び120分後に加えられたときには、i.v.投与された10mg/kgの抗体4901の存在によって有意に阻害された。図4Bは、電気パルス刺激が抗体投与から30分、60分、90分及び120分後に加えられたときには、抗体7E9(10mg/kg、i.v.投与)の存在によって、電気パルス刺激が抗体投与から30分後に加えられたときには、抗体8B6(10mg/kg、i.v.投与)の存在によって、伏在神経に電気パルスを印加することにより刺激される血流増加が有意に阻害されたことを示している。
これらのデータは、ラットの伏在神経刺激によって誘導される皮膚血管拡張により測定されたように、抗体4901、7E9、7D11及び8B6がCGRP活性を阻害するのに有効であることを示している。
実施例4 抗CGRP抗体G1及びそのバリアントの特性評価
抗CGRP抗体G1の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を図5に示す。抗体G1及びそのバリアントの発現及び特性評価に以下の方法を用いた。
使用した発現ベクター。抗体Fab断片の発現は、Barbas(2001)Phage display:a laboratory manual,Cold Spring Harbor,NY,Cold Spring Harbor Laboratory Press pg.2.10.Vector pComb3X)に記載のものに類似したIPTG誘導性lacZプロモーターの制御下とした。ただし、次の追加ドメイン:IgG2ヒト免疫グロブリンのヒトκ軽鎖定常ドメイン及びCH1定常ドメイン、Igγ−2鎖C領域(タンパク質受託番号P01859)、免疫グロブリンκ軽鎖(ホモサピエンス)(タンパク質受託番号CAA09181)の付加及び発現を含む変更を加えた。
小スケールFab作製。Fabライブラリーで形質転換した大腸菌(エレクトロポレーション用コンピテントセルTG1またはケミカルコンピテントセルTop10のいずれかを使用)から単一コロニーを用いて、マスタープレート(寒天LB+カルベニシリン(50ug/mL)+2%グルコース)と各ウェルに1.5mL LB+カルベニシリン(50ug/mL)+2%グルコースを入れた作業プレート(2mL/ウェル、96ウェル/プレート)の両方に接種した。ガス透過性接着シール(ABgene、Surrey、UK)をプレートに付けた。両プレートを30℃で12〜16時間インキュベートし、作業プレートは激しく振盪させた。マスタープレートを必要時まで4℃で保管した。一方、作業プレートの細胞は、ペレット化し(4000rpm、4℃、20分)、1.0mL LB+カルベニシリン(50ug/mL)+0.5mM IPTG中に再懸濁して、30℃で5時間激しく振盪することにより、Fabの発現を誘導した。誘導した細胞を4000rpm、4℃で20分間遠心分離にかけ、0.6mLのBiacore HB−SEP緩衝液(10mM Hepes pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005%v/v P20)中に再懸濁した。HB−SEPに再懸濁した細胞を凍結し(−80℃)、次いで37℃で融解することによって溶解した。細胞溶解物を4000rpm、4℃で1時間遠心分離にかけてFab含有上清と細胞片を分離し、その後、Milliporeのマルチスクリーンアッセイシステム96ウェル濾過プレート及びバキュームマニホールドを用いて濾過した(0.2um)。Biacoreを使用して、濾過した上清をセンサーチップ上のCGRPに注入することによって、上清を分析した。親和性により選択したFabを発現しているクローンをマスタープレートから取り出し、PCR、配列決定及びプラスミド作製のための鋳型DNAを得た。
ラージスケールFab作製。反応速度論的パラメータを得るために、Fabを以下の通り大規模発現させた。150mL LB+カルベニシリン(50ug/mL)+2%グルコースを入れた三角フラスコに、親和性により選択したFab発現大腸菌クローンからの1mLの「スターター」終夜培養物を接種した。スターター培養物の残り(約3mL)を用いて、配列決定及び更なる操作のためのプラスミドDNAを作製した(QIAprepミニプレップ、Qiagenキット)。1.0のOD600nmが得られるまで、大規模培養物を激しく振盪しながら30℃でインキュベートした(通常12〜16時間)。細胞を4000rpm、4℃で20分間遠心分離にかけることによってペレット化し、150mL LB+カルベニシリン(50ug/mL)+0.5mM IPTG中に再懸濁した。30℃で5時間の発現後、細胞を4000rpm、4℃で20分間遠心分離にかけることによってペレット化し、10mLのBiacore HBS−EP緩衝液中に再懸濁し、凍結(−80℃)/融解(37℃)1サイクルを用いて溶解した。細胞溶解物を4000rpm、4℃で1時間遠心分離にかけてペレット化し、上清を回収し、濾過した(0.2um)。濾過した上清を、PBS(pH8)で平衡化したNi−NTAスーパーフローセファロース(Qiagen、Valencia.CA)カラムに充填し、次いで、5カラム容量のPBS(pH8)で洗浄した。個々のFabをPBS(pH8)+300mMイミダゾールを用いて異なる画分で溶出した。Fabを含む画分をプールし、PBSで透析し、次いで、親和性評価に先立ちELISAにより定量化した。
完全抗体作製。完全抗体を発現させるために、重鎖及び軽鎖可変領域を哺乳動物発現ベクターでクローニングし、リポフェクタミンを用いてHEK293細胞に一過性発現のためにトランスフェクトした。標準的な方法を用いるタンパク質Aを使用して、抗体を精製した。
ベクターpDb.CGRP.hFcGIは、G1抗体の重鎖を含む発現ベクターであり、重鎖の一過性発現または安定発現に適している。ベクターpDb.CGRP.hFcGIは、次の領域:ネズミサイトメガロウイルスプロモータ領域(ヌクレオチド7〜612)、合成イントロン(ヌクレオチド613〜1679)、DHFRコード領域(ヌクレオチド688〜1253)、ヒト成長ホルモンシグナルペプチド(ヌクレオチド1899〜1976)、G1の重鎖可変領域(ヌクレオチド1977〜2621)、A330P331からS330S331への変異を含有するヒト重鎖IgG2定常領域(野生型IgG2配列を基準にしたアミノ酸ナンバリング;Eur.J.Immunol.(1999)29:2613−2624参照)に対応するヌクレオチド配列を有する。ベクターpDb.CGRP.hFcGIは、2005年7月15日にATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA−6867が付与された。
ベクターpEb.CGRP.hKGIは、G1抗体の軽鎖を含む発現ベクターであり、軽鎖の一過性発現に適している。ベクターpEb.CGRP.hKGIは、次の領域:ネズミサイトメガロウイルスプロモータ領域(ヌクレオチド2〜613)、ヒトEF−1イントロン(ヌクレオチド614〜1149)、ヒト成長ホルモンシグナルペプチド(ヌクレオチド1160〜1237)、抗体G1軽鎖可変領域(ヌクレオチド1238〜1558)、ヒトκ鎖定常領域(ヌクレオチド1559〜1882)に対応するヌクレオチド配列を有する。ベクターpEb.CGRP.hKGIは、2005年7月15日にATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA−6866が付与された。
親和性決定のためのBiacoreアッセイ。G1モノクローナル抗体及びそのバリアントの親和性は、Biacore3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム(Biacore,INC、Piscataway NJ)を使用して、25℃または37℃のいずれかで決定した。親和性は、予め固定化されたストレプトアビジン(SAセンサーチップ)を介してN末端ビオチン化CGRPまたは断片を捕捉し、チップ上のCGRPまたは断片に滴定した抗体G1 Fab断片またはバリアントの結合反応速度を測定することによって決定した。Biacoreアッセイは全て、HBS−EPランニング緩衝液(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005%v/vポリソルベートP20)中で実施した。N−ビオチン化CGRPを0.001mg/mL未満の濃度にHBS−EP緩衝液中に希釈し、様々な接触時間を用いて、SAセンサーチップに注入することによって、CGRP表面を調製した。50RU(レスポンスユニット)未満の捕捉レベルに対応する低能力表面を高精度反応速度論的試験に使用し、一方、高能力表面(約800RUの捕捉CGRP)を濃度試験、スクリーニング及び溶液中親和性決定のために使用した。反応速度論的データは、抗体G1 Fabを1uM〜0.1nMにわたる濃度に(予想されるKDの0.1〜10倍になるように)2倍または3倍に漸増させて連続的に希釈することによって得た。サンプルは、概して、100μL/分で1分間注入し、少なくとも10分の解離時間とした。各結合サイクル後、25%v/vエタノール中の25mM NaOHで表面を再生した。この表面は、数百回を超えるサイクルに耐性を示した。全ての漸増系列(通常二重で生成)について、BIAevaluationプログラムを用いて、1:1ラングミュア結合モデルに全体的にフィッティングさせた。これにより、各結合相互作用に関して、一組のみの結合及び解離の反応速度定数(それぞれkon及びkoff)が得られ、この比から平衡解離定数(KD=koff/kon)を得た。このようにして決定した親和性(KD値)を表6及び7に示す。
解離速度が極めて遅い場合の結合相互作用の高精度分析。解離速度が極めて遅い場合の相互作用(特に、25℃における抗体G1 Fabのチップ上のヒトα−CGRPへの結合)の親和性は、2段階の実験で得た。上記のプロトコルを以下の修正を加えて使用した。結合速度定数(kon)は、550nM〜1nMにわたる2倍漸増系列(二重)を100uL/分で30秒間注入し、30秒のみの解離段階とすることで決定した。解離速度定数(koff)は、同じ漸増系列の3濃度(高、中及び低)を二重で30秒間注入し、2時間の解離段階とすることで決定した。各相互作用の親和性(KD)は、表5に示すように、両タイプの実験で得たkonとkoffの各値を組み合わせることによって得た。
Biacoreによる溶液中親和性の決定。ラットα−CGRP及びF37A(19〜37)ヒトα−CGRPに対する抗体G1の溶液中親和性について、Biacoreにより37℃で測定した。高能力のCGRPチップ表面を使用し(高親和性ヒトα−CGRPを検出目的のために選択した)、HBS−EPランニング緩衝液を5uL/分で流した。5nMの一定濃度の抗体G1 Fab断片(溶液ベース相互作用の予想KD以下になるようにする)を、競合するペプチドであるラットα−CGRPまたはF37A(19〜37)ヒトα−CGRPのいずれか(3倍連続希釈にて1nM〜1uMにわたる最終濃度)とともに予めインキュベートした。溶液ベース競合ペプチド非含有または含有の抗体G1 Fab溶液をチップ上のCGRPに注入し、溶液競合の結果としてチップ表面で検出される結合応答の減少をモニターした。抗体G1 Fabのみ(5、2.5、1.25、0.625、0.325及び0nM)をチップ上のCGRPに滴定することによって作成した検量線を用いて、これらの結合応答を「遊離Fab濃度」に変換した。用いた競合溶液ベースペプチドの濃度に対して「遊離Fab濃度」をプロットし、各データポイントを生成し、BIAevaluationソフトウェアを用いて溶液中親和性モデルにフィッティングさせた。このようにして(間接的に)決定した溶液中親和性について、表5及び7に示す。これらの溶液中親和性を用いて、SAチップ上のN−ビオチン化CGRPにFabを直接注入したときに得た親和性の有効性を確認した。これらの2つの方法によって決定した親和性はほぼ一致しており、N−ビオチン化型CGRPをチップに固定することでその本来の溶液中結合活性が変わることはないことが確認される。
以下の表5は、SAチップ上のN−ビオチン化CGRPにFab断片を流すことによってBiacoreにより決定した、ヒトα−CGRP、ヒトβ−CGRP、ラットα−CGRP及びラットβ−CGRPに対する抗体G1の結合親和性を示す。解離速度が極めて遅い結合相互作用の親和性をより良く解するために、この試験の方向性を補完する2段階の実験でも親和性を決定した。ラットα−CGRP相互作用の溶液中親和性についても決定した(上述の通り)。両試験の方向性で測定した親和性はほぼ一致しており、溶液中の天然ラットα−CGRPの結合親和性は、それがN−ビオチン化され、SAチップに結合された場合でも変わらないことが確認される。
以下の表6は、抗体G1と比較してアミノ酸配列変異を有する抗体、ならびにラットα−CGRP及びヒトα−CGRPの両方に対する各抗体の親和性を示す。表6に示すバリアントのアミノ酸置換は、G1の配列を基準に記載されている。Fab断片の結合親和性は、BiacoreによりSAチップ上のCGRPにFab断片を流すことによって決定した。
抗体G1によって認識されるヒトα−CGRP上のエピトープを特定するために、上述のBiacore試験を使用した。ヒトα−CGRPは、SAセンサーチップを介した親和性の高い捕捉を可能にするために、N−ビオチン化型を購入した。CGRPペプチドの存在下または不存在下で、チップ上のヒトα−CGRPに対するG1 Fab断片の結合を決定した。典型的には、2000:1モルのペプチド/Fab溶液(例えば、G1 Fab50nM中ペプチド10uM)をチップ上のヒトα−CGRPに注入した。図6は、競合ペプチドによる結合阻害率を示す。図6に示すデータは、G1 Fabのヒトα−CGRPへの結合を100%阻害するペプチドがヒトα−CGRPの1〜37(WT)、8〜37、26〜37、P29A(19〜37)、K35A(19〜37)、K35E(19〜37)及びK35M(19〜37)、β−CGRP(WT)の1〜37、ラットα−CGRP(WT)の1〜37、ならびにラットβ−CGRP(WT)の1〜37であることを示している。これらのペプチドは全てC末端がアミド化されている。ヒトα−CGRPのペプチドF37A(19〜37)及び19〜37(後者のC末端は非アミド化)もまたG1 Fabのヒトα−CGRPへの結合を約80%〜90%阻害した。ヒトα−CGRPのペプチド1〜36(C末端は非アミド化)は、G1 Fabのヒトα−CGRPへの結合を約40%阻害した。ヒトα−CGRPのペプチド断片19〜36(C末端はアミド化)、ヒトα−CGRPのペプチド断片1〜13及び1〜19(C末端はいずれも非アミド化)、ならびにヒトアミリン、カルシトニン及びアドレノメデュリン(C末端は全てアミド化)は、チップ上のヒトα−CGRPに対するG1 Fabの結合と競合しなかった。これらのデータは、G1がCGRPのC末端エピトープを標的にし、最も末端にある残基(F37)の性質及びそのアミド化両方が結合に重要であることを表している。
ヒトα−CGRPのバリアントに対するG1 Fabの結合親和性についても決定した(37℃にて)。以下の表7は、チップ上のN−ビオチン化ヒトα−CGRP及びバリアントにG1 Fabを直接滴定することによって測定した場合の親和性を示す。表7中のデータは、抗体G1がC末端エピトープに結合し、F37及びG33が最も重要な残基であることを示している。G1は、余分なアミノ酸残基(アラニン)がC末端(アミド化)に追加されると、CGRPに結合しない。
上記データは、抗体G1が結合するエピトープがヒトα−CGRPのC末端上にあり、ヒトα−CGRP上のアミノ酸33及び37が抗体G1の結合に重要であることを示している。また、残基F37のアミド化も結合に重要である。
実施例5:ラットの伏在神経刺激によって誘発した皮膚血管拡張に対する抗CGRPアンタゴニスト抗体G1の効果
抗CGRP抗体G1のアンタゴニスト活性を試験するために、ラットの伏在神経刺激による皮膚血管拡張に対する抗体の効果を、実施例3に記載したラットモデルを用いて試験した。簡潔に述べれば、2%イソフルランによる麻酔下にラットを維持した。実験開始時にトシル酸ブレチリウムを投与して(30mg/kg、i.v.投与)、伏在神経の交感神経線維の付随刺激に起因する血管収縮を最小限に抑えた。体温は、温度制御ヒーティングブランケットにサーモスタット連結された直腸プローブを使用して、37℃に維持した。右後肢の伏在神経を外科的に露出させ、近位側を切断し、乾燥を防ぐためにプラスチックラップで覆った。伏在神経によって刺激分布される領域である、後足の皮膚の背側正中にレーザードップラープローブを置いた。血液細胞の流速として測定される皮膚血流量をレーザードップラー流量計でモニターした。注入2時間以内の抗体効果を評価する実験では、トシル酸ブレチリウム注入の30〜45分後、安定したベースライン流速(5%未満の変動)が少なくとも5分間確立されたら、神経を白金双極電極上に置き、電気的に刺激し(2Hz、10V、1ms、30秒間)、20分後に再度刺激した。これらの2回の刺激に対する血流流速応答の平均を用いて、電気刺激に対するベースライン応答(時間0)を確立した。次いで、抗体G1(1mg/kgまたは10mg/kg)またはビヒクル(10mg/kgのG1と等量の0.01%Tween20を含むPBS)を静脈内(i.v.)投与した。その後、抗体投与から30分、60分、90分及び120分後に神経を刺激した(2Hz、10V、1ms、30秒間)。動物をおよそ3時間の間、麻酔下に維持した。電気パルス刺激に対する各流速応答について、流速−時間曲線下面積(AUC、流速の変化×時間の変化に等しい)により、皮膚血流量における累積変化を推定した。
図7に示すように、伏在神経に電気パルスを印加することにより刺激される血流増加は、伏在神経が抗体投与から90分後に電気的に刺激されたとき、ビヒクルと比較して、1mg/kgの抗体G1の存在(i.v.投与)によって有意に阻害された。伏在神経に電気パルスを印加することにより刺激される血流増加は、伏在神経が抗体投与から90分及び120分後に電気的に刺激されたとき、ビヒクルと比較して、10mg/kgの抗体G1の存在(i.v.投与)によって有意に阻害された。
伏在神経試験にてより長い時点での抗体効果を決定する実験では、上述した伏在神経刺激のために動物を準備する24時間または7日前に、指定用量の抗体をラットに静脈内注射した。これらの実験では、投与前の電気パルス刺激に対するベースライン応答を個々のラットで確立することができなかったため、24時間または7日にビヒクル(PBS、0.01%Tween20)を投与した動物と処置群とを比較した。
図8A及び8Bに示すように、伏在神経刺激によって惹起された後足の皮膚の背側正中における血流増加は、同じ時点に投与したビヒクル群と比較して、刺激の24時間または7日前のいずれかに10mg/kgまたは3mg/kgのいずれかのG1を投与した動物群で有意に阻害された。
図8Cは、50%最大効果(EC50)に必要な用量を決定するために、図8A及び8Bに示した用量反応データに当てはめた曲線当てはめ分析を表す。24時間でのEC50は1.3mg/kgであり、7日でのEC50はわずかに低い(0.8mg/kg)。
実施例6:硬膜動脈(閉鎖頭窓)試験における抗CGRPアンタゴニスト抗体mu7E9の即時効果
閉鎖頭窓モデル:この実験の目的は、抗CGRPアンタゴニスト抗体の即時効果を決定し、CGRP受容体アンタゴニストBIBN4096BSの即時効果と比較することであった。実験は、先に記載の通りに(Williamson et al.,Cephalalgia 17(4):518−24(1997))、以下の修正を加えて行った。Sprague Dawleyラット(300〜400g)にペントバルビタール70mg/kg i.p.で麻酔をかけた。ペントバルビタール20mg/kg/時のi.v.により麻酔を維持した。全薬剤を送達するために、ラットに頸静脈を通してカニューレを挿入した。血圧は、大腿動脈から腹大動脈に通したプローブ(mikro−tipカテーテル、Millar Instruments)でモニターした。ラットの気管を切開し、呼吸速度を3.5mLの体積で1分あたり75回に維持した。定位固定装置に頭部を固定し、頭皮を取り除いた後、矢状縫合のすぐ側方の左頭頂部に、歯科用ドリルで骨を薄くすることによって、2×6mmの窓を作成した。マイクロマニピュレータを使用して、白金双極電極をその表面上に下ろし、重鉱油で覆った。電極窓の横に5×6mmの別窓を作成して重鉱油で満たし、この窓から中硬膜動脈(MMA)分枝の直径をCCDカメラ及びビデオディメンションアナライザ(Living Systems)で連続的にモニターした。準備後、ラットを45分間以上休ませた。電気刺激に対するベースライン応答を確立し(15V、10hz、0.5msパルス、30秒)、次いで、実験化合物(10mg/kgのmu7E9、300μg/kgのBIBN4096BSまたはPBS0.01%Tween20)をラットにi.v.投与した。投与から5(BIBN4096BS)、30、60、90及び120分後に更なる電気刺激を行った。チャートソフトウェア(ADInstruments)を用いて全データを記録した。
図9に示すように、10mg/kgのmu7E9は、電界刺激によって惹起されるMMAの拡張を投与後60分間以内に有意に阻害し、試験期間(120分)にわたってその効果が持続する。比較として、BIBN4096BSは、MMAの拡張を投与5分以内で阻害するが、その効果は90分までに完全に消失した。阻害の程度は、BIBN4096BSとmu7E9で同程度である。
実施例7:硬膜動脈(閉鎖頭窓)試験における抗CGRPアンタゴニスト抗体G1の長期効果
この実験の目的は、抗CGRP抗体が、電気的に刺激されたMMAの拡張を投与から7日後においても阻害できるかどうかを判断するためである。ラットの準備は、以下の点を除き、上述した即時実験(実施例6)と同様とした。閉鎖頭窓作成の準備及び刺激の7日前に、ラットへの静脈内注射を行った(10mg/kg、3mg/kgまたは1mg/kgのG1)。即時実験と同様に、投与前の電気刺激に対するベースライン拡張応答を確立することができなかったため、ビヒクル(PBS、0.01%Tween20)を投与した対照群におけるMMAの拡張と抗体群とを比較した。ラットを45分間以上休ませた後、硬膜を30分間隔で電気的に刺激した。刺激は、2.5V、5V、10V、15V及び20Vで、全て10Hz、0.5msのパルスで30秒間行った。
図10に示すように、10mg/kg及び3mg/kgのG1は、10〜20ボルトの範囲の電気刺激によって惹起されたMMA拡張を有意に阻害した。このデータは、G1が電気的に刺激されたMMA拡張を投与後最大7日阻害することができることを表している。
実施例8:モルヒネ離脱顔面潮紅モデル
モルヒネ離脱ラットモデルは、更年期の顔面潮紅機序に関して確立されたげっ歯類モデルである(Sipe et al.,Brain Res.1028(2):191−202(2004);Merchenthaler et al.,Maturitas 30:307−316(1998);Katovich et al.,Brain Res.494:85−94(1989);Simpkins et al.,Life Sciences 32:1957−1966(1983))。基本的には、モルヒネペレットを皮下に埋め込むことによって、ラットをモルヒネ中毒にする。中毒状態になったら、ナロキソン(オピオイド拮抗薬)を動物に注入し、直ちに離脱状態にする。この離脱には、皮膚温の上昇、深部体温の低下、心拍数の増加及び血清中黄体形成ホルモンの増加が伴う。これらは全て、ヒト顔面潮紅において生じる場合と類似の程度及びタイミングである(Simpkins et al.,Life Sciences 32:1957−1966(1983))。更に、離脱を誘発する前にラットをエストラジオールで処置した場合、顔面潮紅の症状が軽減する(Merchenthaler et al.,Maturitas 30:307−316(1998))。これは、モルヒネ離脱モデルが臨床上の顔面潮紅に近似すると考えられている理由である。
卵巣切除したラットをCharles River Laboratoriesに注文した。卵巣切除後7日以降に、モルヒネペレット(モルヒネベースで75mg)を皮下に埋め込むことによって、モルヒネ依存状態を引き起こした。2日後、さらに2つのペレットを埋め込んだ。翌日、ラットに10mg/kgの4901[**]またはビヒクル(PBS、0.01%Tween)のいずれかを静脈内注射した。2回目のペレット埋め込みから2日後に、ケタミン(90mg/kg)でマウスに麻酔をかけ、軽く拘束した。表面温度熱電対を尾根部にテープで貼り付け、直腸熱電対を用いて深部温度を測定する。チャートソフトウェア(ADInstruments)を用いてデータを記録した。安定したベースライン温度が15分間記録されたら、ナロキソン(1mg/kg)を皮下注射した。その後60分間の温度を連続的に記録した。結果を図11A及び11Bに示す。
実施例9:慢性片頭痛の治療
45歳のヒト男性対象が慢性片頭痛を少なくとも3ヶ月間有すると特定される。慢性片頭痛を有することの特定は、スクリーニング以前の少なくとも3ヶ月間の慢性片頭痛を示唆する頻発性頭痛歴(例えば、月15日)を認めることによって達成される。頭痛頻度の確認は、1ヶ月あたり少なくとも15日の頭痛で、少なくとも8日がi.片頭痛発作であると認められること、及び/またはii.片頭痛の前兆が先行する若しくは伴うことのいずれか1つを満たすことが示されている、前向きに収集した基本情報を介して達成される。
対象における片頭痛の発生を減少させるために、225mgの用量の抗CGRPアンタゴニスト抗体(例えば、抗体G1)が対象に投与される。抗CGRPアンタゴニスト抗体は、150mg/mLの濃度で液剤として提供される。225mgの用量は、対象の身体の上腕後側に1.5mLの皮下注射として投与される。あるいは、静脈内注射により対象に当該用量が投与される。かかる場合、5.85mLの抗CGRP抗体150mg/mLを0.9%塩化ナトリウム溶液(通常生理食塩水)と混ぜ合わせてバッグ総容量130mLの静脈注射用バッグにしてもよい。100mLの静脈注射用バッグ容量を1時間にわたって対象に静脈内注入し、総用量は225mgである。片頭痛の発生減少が認められるまで、投薬を28日ごとに繰り返す。慢性片頭痛の発生減少は、対象にて観察される頭痛日数、頭痛発生の時間数(例えば、頭痛時間)、頭痛の重症度及び片頭痛日数を含む、種々の基準を用いて検討される。
実施例10:慢性片頭痛の治療
37歳のヒト女性対象が慢性片頭痛を少なくとも3ヶ月間有すると特定される。慢性片頭痛を有することの特定は、スクリーニング以前の少なくとも3ヶ月間の慢性片頭痛を示唆する頻発性頭痛歴(例えば、月15日)を認めることによって達成される。頭痛頻度の確認は、1ヶ月あたり少なくとも15日の頭痛で、少なくとも8日がi.片頭痛発作であると認められること、及び/またはii.片頭痛の前兆が先行する若しくは伴うことのいずれか1つを満たすことが示されている、前向きに収集した基本情報を介して達成される。
対象における片頭痛の発生を減少させるために、675mgの初回負荷投与量の抗CGRPアンタゴニスト抗体(例えば、抗体G1)が対象に投与される。抗CGRPアンタゴニスト抗体は、150mg/mLの濃度で液剤として提供される。675mgの負荷投与量は、対象の身体の異なる部位(例えば、上腕後側、下腹部/腹部/腰部、大腿前部など)に1.5mLの皮下注射225mgとして3回投与される。
片頭痛の発生減少が認められるまで、投薬を225mgで28日ごとに繰り返す(例えば、対象の腕に1.5mLの皮下注射1回により)。慢性片頭痛の発生減少は、対象にて観察される頭痛日数、頭痛発生の時間数(例えば、頭痛時間)、頭痛の重症度及び片頭痛日数を含む、種々の基準を用いて検討される。
実施例11:慢性片頭痛の治療
23歳のヒト男性対象が慢性片頭痛を少なくとも3ヶ月間有すると特定される。慢性片頭痛を有することの特定は、スクリーニング以前の少なくとも3ヶ月間の慢性片頭痛を示唆する頻発性頭痛歴(例えば、月15日)を認めることによって達成される。頭痛頻度の確認は、1ヶ月あたり少なくとも15日の頭痛で、少なくとも8日がi.片頭痛発作であると認められること、及び/またはii.片頭痛の前兆が先行する若しくは伴うことのいずれか1つを満たすことが示されている、前向きに収集した基本情報を介して達成される。
対象における片頭痛の発生を減少させるために、900mgの用量の抗CGRPアンタゴニスト抗体(例えば、抗体G1)が対象に投与される。抗CGRPアンタゴニスト抗体は、150mg/mLの濃度で液剤として提供される。900mgの用量は、対象の身体の異なる部位(例えば、上腕後側、下腹部/腹部/腰部、大腿前部など)に1.5mLの皮下注射225mgとして4回投与される。片頭痛の発生減少が認められるまで、投薬を28日ごとに繰り返す。慢性片頭痛の発生減少は、対象にて観察される頭痛日数、頭痛発生の時間数(例えば、頭痛時間)、頭痛の重症度及び片頭痛日数を含む、種々の基準を用いて検討される。
実施例12:反復性片頭痛の治療
28歳のヒト男性対象が高頻度の反復性片頭痛を有すると特定される。対象は、スクリーニング以前の少なくとも3ヶ月間に月8日を超える頭痛歴を有することなどの基準を用いて高頻度の反復性片頭痛を有することが特定され、頭痛頻度の確認は、8〜14日の頭痛(あらゆる種類)で、少なくとも8日がi.片頭痛、ii.片頭痛と思われる頭痛、及び/またはiii.トリプタン若しくは麦角化合物の使用のうちの少なくとも1つの基準を満たすことが示されている、前向きに収集した基本情報を介して行われる。
対象における片頭痛の発生を減少させるために、675mgの用量の抗CGRPアンタゴニスト抗体(例えば、抗体G1)が対象に投与される。抗CGRPアンタゴニスト抗体は、150mg/mLの濃度で液剤として提供される。675mgの用量は、対象の身体の異なる部位(例えば、上腕後側、下腹部/腹部/腰部、大腿前部など)に1.5mLの皮下注射225mgとして3回投与される。片頭痛の発生減少が認められるまで、投薬を28日ごとに繰り返す。反復性片頭痛の発生減少は、対象にて観察される頭痛日数、頭痛発生の時間数(例えば、頭痛時間)、頭痛の重症度及び片頭痛日数を含む、種々の基準を用いて検討される。
実施例13:反復性片頭痛の治療
52歳のヒト女性対象が高頻度の反復性片頭痛を有すると特定される。対象は、スクリーニング以前の少なくとも3ヶ月間に月8日を超える頭痛歴を有することなどの基準を用いて高頻度の反復性片頭痛を有することが特定され、頭痛頻度の確認は、8〜14日の頭痛(あらゆる種類)で、少なくとも8日がi.片頭痛、ii.片頭痛と思われる頭痛、及び/またはiii.トリプタン若しくは麦角化合物の使用のうちの少なくとも1つの基準を満たすことが示されている、前向きに収集した基本情報を介して行われる。
対象における片頭痛の発生を減少させるために、225mgの用量の抗CGRPアンタゴニスト抗体(例えば、抗体G1)が対象に投与される。抗CGRPアンタゴニスト抗体は、150mg/mLの濃度で液剤として提供される。225mgの用量は、対象の身体の上腕後側に1.5mLの皮下注射として投与される。片頭痛の発生減少が認められるまで、投薬を28日ごとに繰り返す。反復性片頭痛の発生減少は、対象における頭痛日数、頭痛発生の時間数、頭痛の重症度及び片頭痛日数を観察することを含む、種々の観察を用いて検討される。
実施例14:非臨床毒性試験及び薬物動態
抗CGRPアンタゴニスト抗体G1は、Sprague−Dawley(SD)ラット及びカニクイザルにおける1ヶ月のIV反復投与毒性試験にて忍容性が良好であり、これらの試験のいずれにおいても標的臓器毒性は確認されなかった。ラットとサルの両試験に関して、100mg/kg/週の無毒性量(NOAEL)が確立された。この用量レベルは、ラット及びサルのそれぞれにおいて、2,570及び3,440μg/mLの最高濃度(Cmax)、ならびに194,000μg・h/mL及び299,000μg・h/mL(22日)の曲線下面積(AUC(0−168h))での全身曝露に相当する。
3ヶ月のIV/SCラット試験において、標的臓器毒性は特定されず、G1は最大試験用量300mg/kgまで忍容性が良好であった。3ヶ月のサル試験において、100mg/kg以上で、免疫複合体の蓄積の結果、毛様体動脈の血管周囲炎症が観察された。この所見は、ヒト化抗体に対するサルの免疫原性応答に起因するものであり、臨床的に関連しないと思われた。本サル試験における最大試験用量300mg/kgは、推定最大臨床用量2,000mg、またはmg/kg基準で29mg/kg(対象の平均体重を70kgと仮定)の少なくとも10倍である。
実施例15:臨床薬物動態
10〜2,000mgの用量を試験する4つの無作為化プラセボ対照二重盲検試験にて、単回IV曝露後の抗体G1のPKを調べた。1時間のIV注入の終了直後に、最高血漿中濃度(Cmax)に達した。Cmax到達時間(Tmax)の中央値は、1.0〜3.0時間の範囲であり、その後、様々な段階の減少となった。Cmax及び総曝露は、G1の用量増加に伴い、ほぼ直線的に増加した。終末相半減期(t1/2)は、36.4〜48.3日の範囲であった。肝臓でのG1代謝を示すものはなく、代謝の主体は、プロテアソーム分解によるものである。
1つの試験は、30mg及び300mgの用量を2週間の間隔を空けて2回投与する薬物動態とした。最大濃度及び濃度−時間プロファイル下面積は、用量増加に伴って増加した。2回目の投与後の見かけの終末相半減期(t1/2)は、41.2日(30mg)及び50.0日(300mg)(相加平均)であった。15日の間隔を空けて投与した2回のIV投与後のG1の血漿中蓄積率は、1.5(30mg)及び1.4(300mg)であった。
実施例16:臨床安全性及び薬物動態
6つの試験において、118名の健康な男性及び女性に抗体G1を投与し、一方、57名の男性及び女性の被験者にプラセボを投与した。試験は、0.2mg〜最大2,000mgの範囲の単回IV投与、14日ごとに1回投与する最大300mgの2回のIV投与、ならびに225及び900mgのSC投与を含んだ。6つの試験は、健康な男性における、2つのIV単回用量増加PK及び薬力(PD)試験(試験B0141001及びB0141002)、健康なボランティアにおけるカプサイシンフレア反応への抗体G1のIV投与の即時効果を調べるための2コホートプラセボ対照クロスオーバー試験(B0141006)、健康な男性及び女性のボランティアにおける抗体G1の並行群間反復投与試験(B0141007)、最大2,000mg用量までの安全性及び忍容性を健康な女性ボランティアにIV投与して評価する単回投与試験(B0141008)、IV投与とSC投与間の相対的安全性及びバイオアベイラビリティを比較する試験(G1−SC−IV)を含んだ。
この6つの試験について、以下の表11にまとめる。5つのIV試験(B0141001、B0141002、B0141006、B0141007及びB0141008)のうち、3つは、実質上同一の設計及び評価とした。試験B014100は、0.2mg、1mg及び3mgの用量を試験するものであり、1時間の単回IV注入として投与した。この試験は並行設計とした。注入後7日間、参加者をクリニックに入院させ、7日間の各日に複数の評価を行った。退院後、患者について、退院後1週間(14日目)、その後は注入後1、2及び3ヶ月後に再評価した。試験B0141002は、単回投与で10mg〜1000mgの範囲の用量を試験した。最後に、試験B0141008は、300mg、1000mg、1500mgまたは2000mgの用量を試験した。試験B0141006は、抗体G1のIV注入後の最大1週間のカプサイシンフレア阻害を測定することにより、薬力学的読み出し情報をまとめることも目的にしていたため、他の試験とは異なるものであった。
IV試験に関する有害事象(AE)プロファイルは、最初の投薬期間についてのみ報告した。試験B0141007は、並行設計を用いて、2週間の間隔を空けてIV投与する抗体G1の30または300mgのいずれかの複数回投与について試験した。処置割り当てを含むWebベースインタラクティブシステムを介して、適格である各被験者に無作為化割り付け順序を割り当てた。無作為化スキームは、統計担当主任が開発した。全試験の参加者は、概して、健康な男性及び女性(18〜65歳)であり、全参加者が同意説明文書に署名した。全試験は治験審査委員会(IRB)による承認を受けた。AEについては、試験薬との因果関係の有無に関わらない、臨床試験の参加者におけるあらゆる好ましくない医療上の出来事と定義した。試験薬剤またはプラセボの投与後に観察されたAEは、試験薬との潜在的な因果関係に関わらない「試験治療下での発現」AE(TEAE)という用語を用いた。TEAEを有する全ての被験者については、その事象が解消するまで、またはその事象が安定するか、かつ/若しくは新しいベースラインに到達するまで、適切な時間間隔で追跡した。TEAEは全て軽度、中程度または重度にランク付けした。重篤なAE(SAE)は、用量に関わらない、あらゆる好ましくない医療上の出来事であって、死に至るもの、生命を脅かすもの(すなわち、その事象時に被験者が差し迫った死の危険にさらされていた場合)、入院若しくは入院期間の延長が必要となるもの、永続的若しくは顕著な障害・機能不全に陥るもの(例えば、被験者の通常の生活機能を果たす能力の実質的な阻害)、先天異常/先天性欠損を来すもの、または他のあらゆる医学的に重要な事象とアプリオリに定義した。次の状況のうちの1つが存在するときは、治療関連AE(TRAE)とみなした。1)当該AEの発生と試験製品の投与との間に妥当な時間的関係が特定できる場合、2)当該AEについて、患者の臨床状態、併発性疾患または同時並行治療によって容易に説明することができない場合、3)被験製品の中断または用量減少で当該AEが軽減する場合。
スクリーニング時、投薬前、注入終了直後及び患者のクリニック入院中に複数回、ならびに全来診時に、血圧、脈拍数及び口腔温を測定した。検体検査には、血液生化学検査、血液分析及び尿検査を含めた。血液学、化学、凝固及び尿の安全性検体検査は、複数の試験時点で行った。スクリーニング時、投薬前である1日目、注入終了直後及び初日に更に5回、ならびに全来診時に、ECGを記録した。QTcF値は、Fridericia(QTcF)の心拍数補正式を用いることで得た。ECGパラメータであるQT間隔、心拍数、QTcF間隔、PR間隔及びQRS間隔についての絶対値及びベースラインからの変化を、コホート、処置及び投薬後時間により評価した。上述の安定性評価に加えて、プロトコルB014008には、ベースライン及び投薬後の3時点(28日目、84日目及び168日目)における完全な眼科検査を含めた。
記述表及び要約統計量を用いて、臨床データ及びバイタルサインをまとめた。検査データ及び他の安全性データについて、あらゆる変化(基準範囲外の値)及びアプリオリに定義したあらゆる臨床関連変化との相関としてまとめた。要約表を用量で層化し、試験全体でデータをプールした。加えて、全ての抗体G1曝露に関する統合データの比較をプラセボと対比させた。プラセボはまた、100mg及びそれ以上(100mg、300mg、1000mg、1500mg及び2000mg)の抗体G1用量、ならびに1000mg及びそれ以上(1000mg、1500mg及び2000mg)の抗体G1用量と対比させた。
IV/SC試験(G1−SC−IV)では、抗体G1(225または900mg)またはプラセボの単回投与を行うために、被験者36名を無作為化し、皮下(SC)ボーラス注入または1時間のIV注入のいずれかで送達した。被験者を臨床研究ユニットに投薬後7日間入院させ、試験90日目まで追加の外来患者通院のためにクリニックに定期的に戻らせた。被験者が入院している間、1日目(投薬前、1、6、12時間)、3日目、7日目及び試験終了時に1回(90日目)、ECGを広範囲に行った。投薬前、1、3、7及び90日目に体温、血圧及び心拍数を含むバイタルサインを収集した。
5つのIV試験(0.2〜2,000mg)にて評価した広範な用量のすべてで、IV抗体G1は、許容可能な忍容性を示した。表8は、全体的な有害事象(AE)の割合をIV試験の用量ごとにまとめたものである。これらの忍容性の結果に基づけば、明確な安全性に対する懸念は認められなかった。IV試験の全試験にわたって、プラセボ投与を受けた参加者は、試験治療下での有害事象(TEAE)が平均1.3であると報告された。これらは、試験責任者の試験薬との関係についての意見に関わらない、報告された全ての事象である。IVのG1の全用量全体で、TEAE/対象の比率は1.4であった。100mgまたはそれ以上のG1用量を受けた被験者のTEAEの平均は1.5であり、1,000mgまたはそれ以上の用量を受けた被験者のTEAEの平均は1.6であった。
IV試験において、治療関連有害事象(TRAEまたは主試験責任者により治療関連とされるAE)は、プラセボを受けた被験者の17.7%と比較して、IV G1を受けた被験者では21.2%と報告された。100mgまたはそれ以上のG1の用量で、参加者の22.4%にTRAEが生じた。1,000mgまたはそれ以上の用量で、参加者の21.7%にTRAEが生じた。抗体G1は、バイタルサイン(収縮期及び拡張期血圧[BP]、体温ならびに心拍数[HR])、心電図(ECG)異常(QTcB及びQTcFを含む)、注入部位反応または臨床検査結果において、臨床的に関連する変化パターンとの関係はないように思われる。肝臓機能検査(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]、アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]、総ビリルビン及びアルカリホスファターゼ)への影響は限定的であり、プラセボを受けた対象1名で総ビリルビンのグレード1の増加(試験B0141001)及びプラセボを受けた対象1名でALTのグレード1の増加(試験B0141002)があった。臨床的に有意な肝臓機能異常は、いずれの試験用量のG1を受けた被験者の間で認められなかった。腎機能、電解質を評価する血液検査または尿検査において、G1とプラセボとの間に差異を示すものはなかった。
IV/SC試験(G1−SC−IV)において、安全性及び忍容性は、SC及びIVの送達経路間で同程度であった。心拍数及び血圧(拡張期及び収縮期)の平均は、抗体G1の処置による影響を受けず、抗体G1でのSC処置後のあらゆる心臓血管パラメータにもいかなる有意性のある変化はなかった。SC試験中に観察されたTRAEの要約を以下の表12に示す。
単回投与試験(B0141001、B0141002、B0141006及びB0141008)において、30mg〜2,000mgの範囲の用量に関する薬物動態(PK)パラメータを算出した。群平均終末相半減期(t1/2)は、およそ40〜48日の範囲であった。Cmax及び総曝露(AUCinfにより評価)は、用量増加に伴って増加した。AUCinfの増加は、30〜1,000mgの間で用量にほぼ比例しているようであり、1,000〜2,000mgの間では用量比例を上回るようであった。分布容積は低く、6〜10Lであった。
2用量試験(B0141007)において、2回目の投与後の見かけの終末相半減期は、41〜50日であった。血漿中濃度は2回目の投薬後に蓄積され、およそ1.5の蓄積率であった。更に、IV/SC試験(G1−SC−IV)では、薬物動態評価により、G1をSCで送達したときの終末相半減期がIVと同様であることが示された。
実施例17:抗体G1の臨床試験における慢性片頭痛の予防
慢性片頭痛を有する被験者にて、抗CGRPアンタゴニスト抗体G1とプラセボを比較する多施設無作為化二重盲検ダブルダミープラセボ対照並行群間多用量試験を実施した。適格候補被験者をベースラインの28日の導入期間に参加させた。被験者は頭痛を有し、全試験期間中、電子頭痛日誌システムを用いて健康情報を毎日収集した。導入期間または試験中の片頭痛薬の変更は認めなかった。組み入れ基準は、以下の通りとした。(1)18〜65歳の男性または女性;(2)被験者があらゆる既知の潜在的リスク及び利用可能な代替治療を含む、試験に関連する全側面について説明を受けたことを示す、日付入り署名済み同意説明文書;(3)国際頭痛分類(ICHD−IIIβ版、2013)に列挙されている診断基準を満たす慢性片頭痛;(4)片頭痛(例えば、トピラマート、プロプラノロール、アミトリプチリン)または他の医学的状態(例えば、高血圧に使用されるプロプラノロール)のための最大2つの異なる連日性片頭痛予防薬を、その投薬レジメンが28日の導入期間の開始以前に少なくとも2ヶ月間安定であれば、使用し得る被験者;(5)ボディマス指数(BMI)が17.5〜34.5kg/m2及び総体重が50kg〜120kg(端点を含む);(6)方法にて定義した生殖能を有さないか、生殖能を有する場合は、計画された試験期間中に禁欲的であること若しくは許容可能な避妊法を使用すること(あるいはパートナーに使用させること)に同意する被験者;(7)導入期間中に頭痛日を記録する電子頭痛日誌の順守が最低24/28日を示すこと(順守85%)。上記(3)の慢性片頭痛の診断基準は、以下の通りとした。(a)スクリーニング以前の少なくとも3ヶ月間に慢性片頭痛を示唆する頻発性頭痛歴(月15日);(b)28日の導入段階中に前向きに収集した基本情報を介した頭痛頻度の確認であって、1ヶ月あたり少なくとも15日の頭痛で、少なくとも8日が(i)片頭痛発作であると認められること、(ii)片頭痛の前兆が先行する若しくは伴うこと、または(iii)麦角若しくはトリプタン誘導体により改善することのいずれか1つを満たすことが示されていること。
除外基準は、被験者が以下のいずれをも満たさないこととした。(1)50歳以降の慢性片頭痛の発症;(2)スクリーニング以前の6ヶ月の間に、片頭痛または任意の医療上若しくは美容上の理由のために頭、顔または首への注入を要するA型ボツリヌス毒素を受けている被験者;(3)片頭痛の治療または任意の他の理由のためにオピオイド(コデインを含む)またはバルビツール酸(Fiorinal(登録商標)、Fioracet(登録商標)またはブタルビタールを含有する任意の他の組み合わせを含む)を含有する薬を月4日を超えて使用する被験者;(4)適切な治療試験後に、反復性または慢性片頭痛の予防治療に対する有効性がないことに起因する、2つを上回る薬物分類または3つを上回る予防薬(2つの薬物分類内)の効果不全;(5)試験責任者の判断による、血液、腎臓、内分泌腺、肺、胃腸、泌尿生殖器、神経または眼の臨床的に有意な疾患;(6)大うつ病、パニック障害または全般性不安障害を含む、臨床的に有意な精神医学的問題の証拠または病歴を有する被験者(診断・統計マニュアル第5版[DSM−5]基準による);(7)スクリーニング時の収縮期血圧が160mmHg超または90mmHg未満;(8)スクリーニング時の拡張期血圧が110mmHg超または50mmHg未満;(9)臨床的に有意な心臓血管疾患または血管虚血(心筋、神経[例えば、脳虚血]、末梢性虚血または他の虚血事象など)の病歴;(10)癌の既往歴または現病歴(基底細胞癌が切除された被験者は除く);(11)妊娠または授乳中の女性;(12)モノクローナル抗体を含む、注入されるタンパク質に対する過敏症反応の病歴;(13)試験参加の30日以内における被験薬での治療;(14)標準12誘導体表面心電図における臨床的に有意な異常(2秒を超える洞停止、第2度または第3度の心ブロックを含む)または試験責任者が臨床的に有意であると判断した他の異常;(15)スクリーニング時にQTcFが男性で450msec超、女性で470msec超を示す標準12誘導心電図(QTcFがこれらの値を超える場合、ECGを繰り返し、3つのQTcF値の平均を用いて被験者候補の適格性を決定した;QTcはFridericiaの計算を用いて得た);(16)試験責任者の判断上、臨床的に有意な異常であるあらゆる所見(血液値、血液化学、凝固試験または尿分析を含む)(異常な試験は、確認のために繰り返しが認められた);(17)反復試験の確認後、正常値上限(ULN)の1.3倍を上回る肝酵素(アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]、アルカリホスファターゼ);(18)ULNの1.5倍を超える血清クレアチニン、臨床的に有意な蛋白尿(尿検査で+4)または腎臓疾患の証拠。
慢性片頭痛を有し、かつ導入期間中に毎日の頭痛日誌の順守率が高いことが確認された被験者を、来院2(1日目)に、3つの治療群の1つに無作為に割り付けた。電子インタラクティブウェブレスポンスシステムを用いて無作為化を行った。性別及びベースラインの片頭痛薬の使用に基づいて、被験者を層化した。3ヶ月の期間にわたって、月1回(28日ごと)に合計3回の治療薬を投与した。治療薬の投与は、来院2(1日目、1回目の投薬)、来院3(29日目、2回目の投薬)及び来院4(57日目、3回目の最終投薬)に行った。3回目の最終投薬のおよそ28日後の来院5(85日目)に、最終試験終了評価を行った。注入は、3ヶ月の期間にわたって(28日ごと)、以下の各群の被験者に皮下投与した。(1)28日ごとに4回の実薬注入を受ける900mg群に割り付けた被験者;(2)最初の治療に3回の実薬及び1回のプラセボ注入、ならびに2回目及び3回目の治療に1回の実薬及び3回のプラセボ注入を受ける675/225mg群に割り付けた被験者;(3)28日ごとに4回のプラセボ注入を受ける群に割り付けた被験者。実薬注入には、225mgの抗体G1が含まれた。エンドポイントは、先の24時間の期間のデータを記録したWebベースインタラクティブシステムである毎日の電子頭痛日誌から導出した。総頭痛期間を時間単位で数字で記録し、加えて、重症度の各レベルでの頭痛の時間数も記録した。頭痛の重症度は、既定の時間点で、被験者が主観的にランク付けした(痛みなし、軽度の痛み、中程度の痛み及び重度の痛み)。また、既定の時間点で、次の随伴症状:光過敏、音過敏、悪心及び嘔吐があるかないかについて記録するよう、被験者に指示した。追加のエンドポイントについては、試験期間中における被験者の急性期抗頭痛薬トリプタン(例えば、スマトリプタン)の使用のモニタリングから導出した。本試験の被験者の内訳及び集団構成を表9に示す。
1、2及び3週目の各週(それぞれW1、W2及びW3)における各群の頭痛時間数のベースラインからの平均の減少を図15にグラフで表す。結果では、その最初の週を含め、W1、W2及びW3の各週で、プラセボ群と比較して、両治療群で有意な減少が示されている。
1、2及び3ヶ月目の各月(それぞれM1、M2及びM3)における各群の頭痛時間数のベースラインからの平均の減少を図12にグラフで表す。結果では、その最初の投薬後を含め、3つの全ての時点で、プラセボ群と比較して、両治療群で有意な減少が示されている。図12のデータのプラセボ群に対する統計的有意性は、記載のp値により示されている。
ベースライン時ならびに来院2、3及び4(それぞれV2、V3及びV4)時における各群の平均頭痛時間数を図13にグラフで表す。結果では、その最初の投薬後を含め、3つの全ての時点で、プラセボ群と比較して、両治療群で有意な減少が示されている。
1、2及び3ヶ月目の各月(それぞれM1、M2及びM3)における各群の中程度または重度の頭痛日数のベースラインからの平均の減少を図14に表す。結果では、その最初の投薬後を含め、3つの全ての時点で、プラセボ群と比較して、両治療群で統計的に有意な減少が示されている。プラセボ群に対する統計的有意性は、記載のp値により示されている。
1、2及び3ヶ月目の各月(それぞれM1、M2及びM3)における各群の急性期救済薬トリプタンの使用数のベースラインからの平均の減少を図16にグラフで表す。結果では、その最初の投薬後を含め、3つの全ての時点で、プラセボ群と比較して、両治療群でトリプタン使用の有意な減少が示されている。プラセボ群に対する統計的有意性は、図16に記載のp値により示されている。
また、プラセボ群と比較した頭痛時間数の有意な減少は、予防薬(例えば、トピラマート及びアミトリプチリンまたはプロプラノロール)を用いる被験者でも観察された。
いずれの用量も良好な忍容性を示し、安全性に対する懸念は認められなかった。群ごとの試験治療下での有害事象(TEAE)を表10に記載する。関連TEAEの差異は、注入に関連する軽度事象(紅斑、ある程度の不快感)によりほぼ完全に説明される。重篤なTEAEは、薬物に関連しなかった(薬物関連でない有害事象)。
実施例18:抗体G1の臨床研究における高頻度反復性片頭痛の予防
高頻度反復性片頭痛(HFEM)を有する被験者にて、抗CGRP抗体G1とプラセボを比較する多施設無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間試験を実施した。試験設計は、実施例17の設計に従い、2点の相違を含めた。第1に、組み入れ基準(3)を、国際頭痛学会第2版(Olesen及びSteiner2004)に従った反復性片頭痛の基準を満たす、以下に示す高頻度に片頭痛を経験する被験者とした。(a)スクリーニング以前の少なくとも3ヶ月間に月8日を超える頭痛歴;(b)28日の導入段階中に前向きに収集した基本情報を介した頭痛頻度の確認であって、8〜14日の頭痛(あらゆる種類)で、少なくとも8日が(i)片頭痛、(ii)片頭痛と思われる頭痛、または(iii)トリプタン若しくは麦角化合物の使用のうちの少なくとも1つの基準を満たすことが示されていること。第2に、投薬スケジュールをG1を受ける群について変更した。具体的には、注入は、3ヶ月の期間にわたって(28日ごと)、以下の各群の被験者に皮下投与した。(1)28日ごとに675mgのG1を受ける675mg群に割り付けた被験者;(2)28日ごとに225mgのG1を受ける225mg群に割り付けた被験者、及び(3)28日ごとにプラセボ注入を受けるプラセボに割り付けた被験者。本試験の被験者の内訳及び集団構成を表13に示す。試験のエンドポイントには、片頭痛日数の減少及びあらゆる重症度の頭痛日数の減少を含めた。
1、2及び3ヶ月目の各月(それぞれM1、M2及びM3)における各群の片頭痛日数のベースラインからの平均の減少を図17に表す。結果では、その最初の投薬後を含め、3つの全ての時点で、プラセボ群と比較して、両治療群で統計的に有意な減少が示されている。プラセボ群に対する統計的有意性は、記載のp値により示されている。
1、2及び3ヶ月目の各月(それぞれM1、M2及びM3)における各群のあらゆる重症度の頭痛日数のベースラインからの平均の減少を図18に表す。結果では、その最初の投薬後を含め、3つの全ての時点で、プラセボ群と比較して、両治療群で統計的に有意な減少が示されている。プラセボ群に対する統計的有意性は、記載のp値により示されている。
いずれの用量も良好な忍容性を示し、安全性に対する懸念は認められなかった。群ごとの試験治療下での有害事象(TEAE)を表14に記載する。4件の重篤なTEAEは、腓骨骨折1件、投薬中止による震え1件及び緊急処置室(ER)での治療を要する片頭痛2件によるものであった。
実施例19:非臨床安全性
抗体G1の安全性を評価する2つの試験をカニクイザルで実施した。第1の試験では、抗体G1の単回投与の安全性を評価した。第2の試験では、抗体G1の反復投与の安全性を評価した。これらの試験及び結果のそれぞれについては、以下に更に詳述する。単回及び反復投与試験の両方に関して、抗体G1は、20mMのヒスチジン、84mg/mLのトレハロース二水和物、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのEDTA二ナトリウム二水和物及び0.1mg/mLのL−メチオニン、pH約5.5中に、51.4mg/mLの溶液として配合した。ビヒクルは、抗体G1を含めずに、同じように配合した。更に、両試験において、検証済みELISA方法を用いた抗体G1血漿中濃度の分析のために、血液サンプルを定期的に採取した。
データは、まず、GraphPad Prism(バージョン6.0)及びExcel2010(Microsoft)を用いて、要約表及び図にまとめた。単回曝露試験の場合、ANOVAを用いてテレメトリーデータを分析した。SAS Release8.2を用いて分析を行った。RR間隔の領域にわたるQT間隔を標準化するために、各RR間隔とその関連するQT間隔とを関連付けることによって、各動物の個別動物補正係数(IACF)を生成した。このQT/RR間隔の関係の直線回帰をデータセットについて求めた。全ての処置にわたって、この直線回帰の傾きを関連する動物のIACFとして用いた。このIACFを用いて、次の等式に使用して、補正したQT間隔(QTc)を算出した。
QT−I(c)=心拍数に対して補正したQT間隔=QT−I−[(RR−300)*(IACF)]
複数投与試験の場合、同様に一元配置ANOVAを用いてデータを解析した。ANOVAが有意であった場合(P<0.05)、群間比較のためにダネットの事後検定を用いた。各性別について、5%両側確率水準で、処置群を対照群(ビヒクル)と比較した。
単回投与テレメトリー試験
成雄カニクイザル(Charles River Primates)8頭にテレメーターを外科的に取り付け、少なくとも2週間回復させた。インプラント(DSI TL11M2−D70−PCT)及び受信器(RMC−1)は、Data Sciences International社製であった。
投薬前に少なくとも一晩、動物をテレメトリーデータ取得ケージに順化させた。順化中に、血行動態パラメータの試験前記録を実施し、変換器及び装置が正しく機能することを確認した。動物は、テレメーターによるデータ取得中、テレメトリー受信器を備えたケージ中に個別に収容した。収集日以外は、テレメトリー受信器のないケージに動物を収容した。動物は、12時間/12時間の明暗サイクルに維持し、水及び保証付きサル用飼料は自由摂取とした。
試験の第1段階として、動物(雄8頭)にビヒクルのみを投与し、テレメトリーデータを、投薬前約1時間から開始し、投薬後22時間にわたって収集した。ビヒクル投与から6日後、同じ動物に抗体G1の単回IV投与を行った(カニクイザルの薬理学的EC50の約10倍多い100mg/kg)。テレメーターによる心電図及び血行動態データを全ての動物から同様に連続的に記録した。加えて、抗体G1の単回投与実施後、3、7、10及び14日目にこれらの動物を約24時間観察した。テレメーターによるECG及び血圧信号は、埋め込まれたラジオテレメトリー装置を介して、各ケージに取り付けられた受信器に送信された。取得した信号をデータ変換マトリックス(DSIモデルDEM)及びPCベースデータ取得システム(DSIソフトウェアPonemah P3バージョン3.4)に通した。データ解析ソフトウェアは、Emka Technologiesバージョン2.4.0.20(Emka Technologies)であった。アナログ/デジタルサンプリングレートは、テレメーターECGデータについては1,000Hz、血圧データについては500Hzであった。データは、1分間の平均として記録した。
群平均収縮期血圧(SBP)は、投薬後の初日を通して抗体G1の処置前後及び翌日以降で同様であった(1日目と同一の時間期間で3、7、10及び14日目にテレメーターで測定した動物)。抗体G1血中濃度が最大濃度になる投薬後1〜4時間(4時間での平均濃度3,500μg/mL)で、平均SBPは、ビヒクル投与後の同じ時間期間で113mmHgであったのと比較して、111mmHgであった。更に、SBPは、抗体G1投与後、3及び7日目に110mmHg、10日目に109mmHg、14日目に110mmHgであった。他の時間期間でも同様のSBPデータが記録された。本試験はクロスオーバー設計試験であるので、処置を受けた動物は、自身の対照としての役割を果たした。ビヒクル処置と比較した抗体G1投与後の血圧の変化についてデータを分析すると、7、10及び14日目の後半の時間期間で、統計的に有意なSBPの減少はわずかであった。
抗体G1での処置後、拡張期血圧(DBP)は、ビヒクル投与後に得た平均値よりもおよそ3mmHg低いことが認められた。5〜22時間からは、ビヒクル群と抗体G1群の群平均は同様であった。他の日々においても同じ傾向が見られ、DBPのわずかな減少(2.62〜3.5mmHgの範囲)が最初の測定期間に生じ、7〜10日目には7〜22時間の期間で、同様の程度のわずかな変化が散発的に認められた。DBPに関して認められたのと同様に、ビヒクル処置と比較して、心拍数のわずかな減少が最初の評価(1〜4時間目)に見られた。中間評価では差異は検出されず、全ての日々の18〜22時間目にもう一度認められた。
更に、ECG所見に関して、QTc間隔の統計的に有意な変化は、ビヒクル処置と比較して、いかなる時間点においてもなかった。RR、PR、RS及びQTの統計的に有意な変化がビヒクルと比較して14日の期間にわたって見られたが、絶対値では全て軽微であった。
反復投与安全性試験
反復投与安全性試験には、性別を一致させた(1群あたり各性別6頭)抗体G1未投薬成カニクイザル(Charles River Primates)48頭を含めた。ビヒクルまたは抗体G1を10mg/kg、100mg/kgまたは300mg/kgの用量で週1回の静脈内注射として14週間、動物に投与した。各群にて、投薬終了後、各性別の2頭の動物を更に4ヶ月回復させた。
試験前段階に1回、試験状態が達成された後2回(85日目の投薬前及び投薬4時間後)及び投薬終了から約1週間後1回(回復段階の103日目)に、ECG及び血圧測定値を記録した。ケタミンで動物に麻酔をかけ、誘導8本を用いてECGを記録した。ECG(心拍数を含む)の測定は、標準として誘導I、II、aVF、CG4RL及びCV4LLを用いて、DSIを介してLife Science Suite Ponemah Physiology Platformソフトウェアシステムを使用して、取り込んだデータにより行った。Bazettの式を用いて、QT間隔の心拍数補正(QTc)を算出した。
最初の投薬前、投薬の12週間後(投薬13回)及び投薬終了からおよそ1週間後に、血圧を記録した。ビヒクル処置動物と比較して、動物の処置群のいずれにおいても、SBPまたはDBPに有意な変化は示されなかった。群平均心拍数は、投与群及び測定時点にわたって比較的一定であり、統計的差異は測定されなかった。投薬第1週の間及び血圧ECG評価時に抗体G1の血漿中濃度を測定すると、週1回の反復投薬による蓄積が見られた。
更に、ECG所見に関して、全ての投薬及び全ての時点にわたって、QTc間隔に有意差はなかった。更に、試験期間にわたって評価したECGパラメータのいずれにおいても、有意なまたは関連するECG変化は見られなかった。
要約すれば、抗体G1は、両試験にて極めて良好な忍容性を示し、血行動態パラメータのいずれにおいても臨床的に有意な変化は示されず、ECGパラメータのいずれにおいてもいかなる関連変化も示されなかった。カニクイザルにおいて、心臓血管及び血行動態パラメータは、抗体G1によるCGRPの長期阻害からの影響を受けないと思われる。
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、例示のみを目的にするものであり、それらに照らした種々の改良または変更が当業者に想起され、本出願の趣旨及び範囲内に含まれることが理解されるものである。本明細書にて引用する公開物、特許及び特許出願は全て、本出願において、それぞれ個々の公開物、特許または特許出願が参照により援用されることが具体的及び個別に示された場合と同様に、その全体が参照により本明細書に援用される。
生物材料の寄託
以下の材料については、American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,Virginia 20110−2209,USA(ATCC)に寄託されている。
ベクターpEb.CGRP.hKGIは、G1の軽鎖可変領域及び軽鎖κ定常領域をコードするポリヌクレオチドであり、ベクターpDb.CGRP.hFcGIは、G1の重鎖可変領域及びA330P331からS330S331への変異を含有する重鎖IgG2定常領域(野生型IgG2配列を基準にしたアミノ酸ナンバリング;Eur.J.Immunol.(1999)29:2613−2624参照)をコードするポリヌクレオチドである。
これらの寄託は、ブダペスト条約(Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purpose of Patent Procedure and the Regulations thereunder)の規定に基づいてなされた。これは、寄託日から30年間の寄託物の生存培養の維持を保証するものである。寄託物は、ブダペスト条約の条項下、かつRinat Neuroscience社とATCCとの合意に準拠して、ATCCにより一般に提供されるものであり、これは、関係する米国特許の発行または任意の米国若しくは外国特許出願の公開のいずれか早い時点から、当該寄託物の培養子孫の永続的かつ非限定的な一般入手可能性を保証し、米国特許法第122条及びそれに準じた米国特許商標庁長官規則(886 OG 638を特に参照し、米国特許法施行規則1.14を含む)に従って、米国特許商標庁長官によって決定された権利を有する者に当該子孫の入手可能性を保証するものである。
本出願の譲受人は、寄託された当該材料の培養物が、最適な条件下における培養時に死滅するか、または消失若しくは破損した場合、通知により、当該材料が同一材料の別のもので速やかに取り替えられることに同意している。寄託された材料の入手可能性は、特許法に従って政府の権限下に付与された権利に反して、本発明の実施を許諾するものとして解釈されるべきではない。
抗体配列
G1重鎖可変領域アミノ酸配列(配列番号1)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYWISWVRQAPGKGLEWVAEIRSESDASATHYAEAVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCLAYFDYGLAIQNYWGQGTLVTVSS
G1軽鎖可変領域アミノ酸配列(配列番号2)
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCKASKRVTTYVSWYQQKPGQAPRLLIYGASNRYLGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCSQSYNYPYTFGQGTKLEIK
G1 CDR H1(拡張CDR)(配列番号3)
GFTFSNYWIS
G1 CDR H2(拡張CDR)(配列番号4)
EIRSESDASATHYAEAVKG
G1 CDR H3(配列番号5)
YFDYGLAIQNY
G1 CDR L1(配列番号6)
KASKRVTTYVS
G1 CDR L2(配列番号7)
GASNRYL
G1 CDR L3(配列番号8)
SQSYNYPYT
G1重鎖可変領域ヌクレオチド配列(配列番号9)
GAAGTTCAGCTGGTTGAATCCGGTGGTGGTCTGGTTCAGCCAGGTGGTTCCCTGCGTCTGTCCTGCGCTGCTTCCGGTTTCACCTTCTCCAACTACTGGATCTCCTGGGTTCGTCAGGCTCCTGGTAAAGGTCTGGAATGGGTTGCTGAAATCCGTTCCGAATCCGACGCGTCCGCTACCCATTACGCTGAAGCTGTTAAAGGTCGTTTCACCATCTCCCGTGACAACGCTAAGAACTCCCTGTACCTGCAGATGAACTCCCTGCGTGCTGAAGACACCGCTGTTTACTACTGCCTGGCTTACTTTGACTACGGTCTGGCTATCCAGAACTACTGGGGTCAGGGTACCCTGGTTACCGTTTCCTCC
G1軽鎖可変領域ヌクレオチド配列(配列番号10)
GAAATCGTTCTGACCCAGTCCCCGGCTACCCTGTCCCTGTCCCCAGGTGAACGTGCTACCCTGTCCTGCAAAGCTTCCAAACGGGTTACCACCTACGTTTCCTGGTACCAGCAGAAACCCGGTCAGGCTCCTCGTCTGCTGATCTACGGTGCTTCCAACCGTTACCTCGGTATCCCAGCTCGTTTCTCCGGTTCCGGTTCCGGTACCGACTTCACCCTGACCATCTCCTCCCTGGAACCCGAAGACTTCGCTGTTTACTACTGCAGTCAGTCCTACAACTACCCCTACACCTTCGGTCAGGGTACCAAACTGGAAATCAAA
G1重鎖完全抗体アミノ酸配列(本明細書に記載の改変IgG2を含む)(配列番号11)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYWISWVRQAPGKGLEWVAEIRSESDASATHYAEAVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCLAYFDYGLAIQNYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
G1軽鎖完全抗体アミノ酸配列(配列番号12)
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCKASKRVTTYVSWYQQKPGQAPRLLIYGASNRYLGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCSQSYNYPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
G1重鎖完全抗体ヌクレオチド配列(本明細書に記載の改変IgG2を含む)(配列番号13)
GAAGTTCAGCTGGTTGAATCCGGTGGTGGTCTGGTTCAGCCAGGTGGTTCCCTGCGTCTGTCCTGCGCTGCTTCCGGTTTCACCTTCTCCAACTACTGGATCTCCTGGGTTCGTCAGGCTCCTGGTAAAGGTCTGGAATGGGTTGCTGAAATCCGTTCCGAATCCGACGCGTCCGCTACCCATTACGCTGAAGCTGTTAAAGGTCGTTTCACCATCTCCCGTGACAACGCTAAGAACTCCCTGTACCTGCAGATGAACTCCCTGCGTGCTGAAGACACCGCTGTTTACTACTGCCTGGCTTACTTTGACTACGGTCTGGCTATCCAGAACTACTGGGGTCAGGGTACCCTGGTTACCGTTTCCTCCGCCTCCACCAAGGGCCCATCTGTCTTCCCACTGGCCCCATGCTCCCGCAGCACCTCCGAGAGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCAGAACCTGTGACCGTGTCCTGGAACTCTGGCGCTCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCAGCTGTCCTGCAGTCCTCAGGTCTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCATCCAGCAACTTCGGCACCCAGACCTACACCTGCAACGTAGATCACAAGCCAAGCAACACCAAGGTCGACAAGACCGTGGAGAGAAAGTGTTGTGTGGAGTGTCCACCTTGTCCAGCCCCTCCAGTGGCCGGACCATCCGTGTTCCTGTTCCCTCCAAAGCCAAAGGACACCCTGATGATCTCCAGAACCCCAGAGGTGACCTGTGTGGTGGTGGACGTGTCCCACGAGGACCCAGAGGTGCAGTTCAACTGGTATGTGGACGGAGTGGAGGTGCACAACGCCAAGACCAAGCCAAGAGAGGAGCAGTTCAACTCCACCTTCAGAGTGGTGAGCGTGCTGACCGTGGTGCACCAGGACTGGCTGAACGGAAAGGAGTATAAGTGTAAGGTGTCCAACAAGGGACTGCCATCCAGCATCGAGAAGACCATCTCCAAGACCAAGGGACAGCCAAGAGAGCCACAGGTGTATACCCTGCCCCCATCCAGAGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGTCTGGTGAAGGGATTCTATCCATCCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGTCCAACGGACAGCCAGAGAACAACTATAAGACCACCCCTCCAATGCTGGACTCCGACGGATCCTTCTTCCTGTATTCCAAGCTGACCGTGGACAAGTCCAGATGGCAGCAGGGAAACGTGTTCTCTTGTTCCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAACCACTATACCCAGAAGAGCCTGTCCCTGTCTCCAGGAAAGTAA
G1軽鎖完全抗体ヌクレオチド配列(配列番号14)
GAAATCGTTCTGACCCAGTCCCCGGCTACCCTGTCCCTGTCCCCAGGTGAACGTGCTACCCTGTCCTGCAAAGCTTCCAAACGGGTTACCACCTACGTTTCCTGGTACCAGCAGAAACCCGGTCAGGCTCCTCGTCTGCTGATCTACGGTGCTTCCAACCGTTACCTCGGTATCCCAGCTCGTTTCTCCGGTTCCGGTTCCGGTACCGACTTCACCCTGACCATCTCCTCCCTGGAACCCGAAGACTTCGCTGTTTACTACTGCAGTCAGTCCTACAACTACCCCTACACCTTCGGTCAGGGTACCAAACTGGAAATCAAACGCACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCTCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCCGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCGCGCGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCCGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACCCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGTTCTCCAGTCACAAAGAGCTTCAACCGCGGTGAGTGCTAA
ヒトCGRPとラットCGRP(ヒトα−CGRP(配列番号15)、ヒトβ−CGRP(配列番号43)、ラットα−CGRP(配列番号41)及びラットβ−CGRP(配列番号44))のアミノ酸配列比較[訳者注:下記で四角で囲まれている配列箇所は、PCT/US2015/021887では、網掛け文字である]:
軽鎖可変領域LCVR17アミノ酸配列(配列番号58)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDIDNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSEYHSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQGDALPPTFGQGTKLEIK
重鎖可変領域HCVR22アミノ酸配列(配列番号59)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFGNYWMQWVRQAPGQGLEWMGAIYEGTGDTRYIQKFAGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARLSDYVSGFSYWGQGTLVTVSS
軽鎖可変領域LCVR18アミノ酸配列(配列番号60)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDIDNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSEYHSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQGDALPPTFGQGTKLEIK
重鎖可変領域HCVR23アミノ酸配列(配列番号61)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFGNYWMQWVRQAPGQGLEWMGAIYEGTGKTVYIQKFAGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARLSDYVSGFSYWGQGTLVTVSS
軽鎖可変領域LCVR19アミノ酸配列(配列番号62)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKDISKYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSGYHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGDALPPTFGGGTKVEIK
重鎖可変領域HCVR24アミノ酸配列(配列番号63)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFGNYWMQWVRQAPGQGLEWMGAIYEGTGKTVYIQKFADRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARLSDYVSGFGYWGQGTTVTVSS
軽鎖可変領域LCVR20アミノ酸配列(配列番号64)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASRPIDKYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSEYHSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQGDALPPTFGQGTKLEIK
重鎖可変領域HCVR25アミノ酸配列(配列番号65)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFGNYWMQWVRQAPGQGLEWMGAIYEGTGKTVYIQKFAGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARLSDYVSGFGYWGQGTLVTVSS
軽鎖可変領域LCVR21アミノ酸配列(配列番号66)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDIDKYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSGYHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGDALPPTFGGGTKVEIK
重鎖可変領域HCVR26アミノ酸配列(配列番号67)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFGNYWMQWVRQAPGQGLEWMGAIYEGTGKTVYIQKFAGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARLSDYVSGFGYWGQGTTVTVSS
軽鎖可変領域LCVR27アミノ酸配列(配列番号68)
QVLTQSPSSLSASVGDRVTINCQASQSVYHNTYLAWYQQKPGKVPKQLIYDASTLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCLGSYDCTNGDCFVFGGGTKVEIKR
重鎖可変領域HCVR28アミノ酸配列(配列番号69)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGIDLSGYYMNWVRQAPGKGLEWVGVIGINGATYYASWAKGRFTISRDNSKTTVYLQMNSLRAEDTAVYFCARGDIWGQGTLVTVSS
軽鎖可変領域LCVR29アミノ酸配列(配列番号70)
QVLTQSPSSLSASVGDRVTINCQASQSVYDNNYLAWYQQKPGKVPKQLIYSTSTLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCLGSYDCSSGDCFVFGGGTKVEIKR
重鎖可変領域HCVR30アミノ酸配列(配列番号71)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGLDLSSYYMQWVRQAPGKGLEWVGVIGINDNTYYASWAKGRFTISRDNSKTTVYLQMNSLRAEDTAVYFCARGDIWGQGTLVTVSS
軽鎖可変領域LCVR31アミノ酸配列(配列番号72)
QVLTQSPSSLSASVGDRVTINCQASQSVYDNNYLAWYQQKPGKVPKQLIYSTSTLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCLGSYDCSSGDCFVFGGGTKVEIKR
重鎖可変領域HCVR32アミノ酸配列(配列番号73)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGLDLSSYYMQWVRQAPGKGLEWVGVIGINDNTYYASWAKGRFTISRDNSKTTVYLQMNSLRAEDTAVYFCARGDIWGQGTLVTVSS
軽鎖可変領域LCVR33アミノ酸配列(配列番号74)
QVLTQTPSPVSAAVGSTVTINCQASQSVYHNTYLAWYQQKPGQPPKQLIYDASTLASGVPSRFSGSGSGTQFTLTISGVQCNDAAAYYCLGSYDCTNGDCFVFGGGTEVVVKR
重鎖可変領域HCVR34アミノ酸配列(配列番号75)
QSLEESGGRLVTPGTPLTLTCSVSGIDLSGYYMNWVRQAPGKGLEWIGVIGINGATYYASWAKGRFTISKTSSTTVDLKMTSLTTEDTATYFCARGDIWGPGTLVTVSS
軽鎖可変領域LCVR35アミノ酸配列(配列番号76)
QVLTQSPSSLSASVGDRVTINCQASQSVYHNTYLAWYQQKPGKVPKQLIYDASTLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCLGSYDCTNGDCFVFGGGTKVEIKR
重鎖可変領域HCVR36アミノ酸配列(配列番号77)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGIDLSGYYMNWVRQAPGKGLEWVGVIGINGATYYASWAKGRFTISRDNSKTTVYLQMNSLRAEDTAVYFCARGDIWGQGTLVTVSS
軽鎖可変領域LCVR37アミノ酸配列(配列番号78)
QSVLTQPPSVSAAPGQKVTISCSGSSSNIGNNYVSWYQQLPGTAPKLLIYDNNKRPSGIPDRFSGSKSGTSTTLGITGLQTGDEADYYCGTWDSRLSAVVFGGGTKLTVL
重鎖可変領域HCVR38アミノ酸配列(配列番号79)
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSFGMHWVRQAPGKGLEWVAVISFDGSIKYSVDSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCARDRLNYYDSSGYYHYKYYGMAVWGQGTTVTVSS