JP2019121634A - 薄膜トランジスタおよびその製造方法 - Google Patents

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博史 辻
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達哉 武井
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【課題】酸窒化亜鉛を半導体層に用いた薄膜トランジスタにおいて、高い移動度を保ちつつ、電気的特性の安定性を向上させ得る薄膜トランジスタおよびその製造方法を提供する。【解決手段】基板1上に、少なくとも、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、半導体層4、およびソース電極5とドレイン電極6を積層した構成とされ、半導体層4は、少なくともZn、O、N、およびZrを含む半導体を材料として用いる。半導体層4に含まれるZrの割合が0.7atomic%以上、かつ1.5atomic%以下とすることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、ディスプレイ駆動素子などに用いられる薄膜トランジスタに関し、詳しくは半導体として酸窒化亜鉛を含む薄膜トランジスタおよびその製造方法に関するものである。
近年、ディスプレイ駆動素子等に活用することを目的とした薄膜トランジスタ(以下、TFT(Thin-Film Transistor)と称することもある)として、インジウム、ガリウム
および亜鉛を含む酸化物半導体(酸化インジウムガリウム亜鉛)(In-Ga-Zn-O)等の酸化物半導体をチャネル(活性層)に用いたものが注目されている。In-Ga-Zn-Oを用いたTFT(以下、IGZO−TFT)(下記非特許文献1を参照)は、アモルファスシリコンTFTに比べて10倍以上も高い移動度(〜10 cm2/Vs)を示す。
今日では、大面積・高精細のディスプレイに適用するため、IGZO−TFTよりもさらに高い移動度を有するTFTの検討がなされている。例えば、酸窒化亜鉛(Zn-O-N)を用いたTFT(以下、ZnON−TFT)は、IGZO−TFTよりも高い移動度を示すことが知られている(下記非特許文献2を参照)。
K.Nomura et al., Nature vol.432,p.488(2004) M.Ryu et al., IEDM Tech.Dig. vol.432,p.5.6.1(2012)
しかしながら、上述したように高い移動度を示すZnON−TFTは、電気的な特性が不安定であり、その経時的な変化が生じやすく、高い移動度を保ちつつ、電気的特性の経時的変化が小さい、ZnON−TFTの出現が望まれていた。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、主成分として酸窒化亜鉛を半導体層に用いた薄膜トランジスタにおいて、高い移動度を保ちつつ、電気的特性の安定性を向上させうる薄膜トランジスタおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記のような目的を達成するために、
本発明の薄膜トランジスタは、
活性層としての半導体層として、少なくともZn、O、N、およびZrを含む半導体を材料として用いることを特徴とするものである。
前記半導体層に含まれるZrの割合は、0.7atomic%以上、かつ1.5atomic%以下であることが好ましい。
また、基板の一方の面上に、少なくとも、ゲート電極、ゲート絶縁膜、前記半導体層、およびソース・ドレイン電極を有する構成とされていることが好ましい。
また、本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、基板の一方の面上に、少なくとも、ゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層、およびソース・ドレイン電極を形成し、
前記半導体層はスパッタリングを用いて、Zn、O、N、およびZrを含む半導体を材料とすることにより形成し、
前記スパッタリングは、Zrのスパッタターゲットに第1の電力を印加するとともにZnのスパッタターゲットに第2の電力を印加し、
前記Zrのスパッタターゲットに印加する該第1の電力は、前記半導体層に含まれるZrの該半導体層全体に対する割合が、0.7atomic%以上、かつ1.5atomic%以下となる値に調整することを特徴とするものである。
ここで、「第1の電力」および「第2の電力」とは、DCパワーあるいはRF電力等の電力の種類を称し、第1の電力および第2の電力が異種であっても同種であっても良い。例えば、第1の電力をDC電力、第2の電力をRF電力とすることができる。
酸窒化亜鉛を半導体層に用いた薄膜トランジスタにおいて、本願発明者等の測定、考察によれば、ジルコニウム(Zr)の添加量が所定値を超えると移動度が減少する。
Zrの添加量が所定値を超えると移動度が減少するのは、半導体層の全体の原子数に対するZrの原子数の割合に応じてキャリアの散乱も増加し、所定値からは、キャリアの散乱による影響の方が大きくなってしまうことが考えられる。
また、ドレイン電圧が所定の電圧値のときに、ドレイン電流が所定の電流値となるときのゲート電圧で定義されるしきい値電圧の変化(ΔVth)は、Zrを添加することでその値を小さくすることが可能となる。しかし、このしきい値電圧の変化(ΔVth)もZrを添加し過ぎると、逆に増大する。なお、上記所定の電圧値としては、例えば1V、上記所定の電流値としては、例えば10-7Aとする。
本発明者等の測定の結果、Zrの添加量に対して、0.7atomic%以上、かつ1.5atomic%以下とすることにより、高い移動度を維持しつつ経年的な電気的安定性を得られることが見出されたので、本発明の薄膜トランジスタにおいては、半導体層全体原子数に対するZrの原子数を0.7atomic%以上、かつ1.5atomic%以下に設定している。
したがって、本発明の薄膜トランジスタおよびその製造方法によれば、高い移動度を維持しつつ、経年的な電気的特性の安定化を図ることができる。
本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタの断面構造を示すものである。 本発明の実施例1に係る薄膜トランジスタのゲート電圧―ドレイン電流特性(DCスパッタターゲット電力20W)を示すグラフである。 本発明の実施例2に係る薄膜トランジスタのゲート電圧―ドレイン電流特性(DCスパッタターゲット電力40W)を示すグラフである。 本発明の実施例3に係る薄膜トランジスタのゲート電圧―ドレイン電流特性(DCスパッタターゲット電力50W)を示すグラフである。 本発明の実施例4に係る薄膜トランジスタのゲート電圧―ドレイン電流特性(DCスパッタターゲット電力60W)を示すグラフである。 本発明の実施例5に係る薄膜トランジスタのゲート電圧―ドレイン電流特性(DCスパッタターゲット電力70W)を示すグラフである。 本発明の実施例6に係る薄膜トランジスタのゲート電圧―ドレイン電流特性(DCスパッタターゲット電力80W)を示すグラフである。 本発明の実施例7に係る薄膜トランジスタのゲート電圧―ドレイン電流特性(DCスパッタターゲット電力90W)を示すグラフである。 本発明の実施例8に係る薄膜トランジスタのゲート電圧―ドレイン電流特性(DCスパッタターゲット電力100W)を示すグラフである。 比較例に係る薄膜トランジスタのゲート電圧―ドレイン電流特性(DCスパッタターゲット電力0W)を示すグラフである。 半導体層中のZr量の、Zrスパッタターゲットに加えたDCパワーに対する依存性を示すグラフである。 薄膜トランジスタのしきい値電圧変化(ΔVth)の、Zrスパッタターゲットに印加しDCパワーに対する依存性を示すグラフである。 薄膜トランジスタの移動度の、Zrスパッタターゲットに印加しDCパワーに対する依存性を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタを図面を用いて説明する。
図1は本実施形態に係る薄膜トランジスタの構造を示すものである。
本発明の薄膜トランジスタ(以下、TFTと称する)は、まず、基板1の上にゲート電極2およびゲート絶縁膜3を順次形成し、次に、半導体層(ジルコニウムを添加した酸窒化亜鉛層)(活性層)4を形成し、その上にソース電極5およびドレイン電極6を形成してなる。
本実施形態に係るTFTは、薄膜トランジスタの基板1について、種々の材質のものを用いることができ、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等、用途に応じて選択することができる。
本実施形態に係る薄膜トランジスタは、図1に示すようにボトムゲート型であり、かつトップコンタクト型であるが、本発明を適用し得るTFTのタイプとしては、この構造に限られるものではない。例えばゲート電極の下側にゲート絶縁膜と半導体層を順に備えたトップゲート型のTFT、あるいは、ソース電極とドレイン電極が半導体層の下側に配されるボトムコンタクト型のTFTでもよい。
上記基板1としては、種々の材質のものを用いることができ、シリコン、ガラスあるいはプラスチック樹脂等から構成されるが、フレキシブルなプラスチックフィルムで構成することにより、フレキシブルなディスプレイ(例えば有機ELディスプレイ)を形成することが可能である。
プラスチックフィルムとしては、たとえばPET、PEN、ポリイミド等を用いたものが挙げられる。
上記ゲート電極2およびゲート絶縁膜3の構成材料として種々の周知の材料を用いることができる。
ゲート電極2としては、例えば、電気抵抗率の低いAlやCuの金属、耐熱性の高いMo、Cr、Ti等の高融点金属、さらには、これら金属の合金を用いることができる。なお、ゲート電極2は、フォトリソグラフィー法(紫外線露光による微細加工技術)等を用いて、必要な大きさ、形状に、パターニングされている。
また、ゲート絶縁膜3としては、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、さらにはシリコン酸窒化膜等が代表的に例示される。
その他に、Al23やY23等の酸化物や、これらを積層したものを用いることもできる。
上記半導体層(活性層)4は、少なくともZn、O、N、およびZrを含んで構成される、Zrを添加した酸窒化物からなり、上記Zn、O、N、およびZrの原子数の合計に対する各金属元素の原子数の比が下記式(1)を満足する。なお、下記式(1)において、Zn、O、N、およびZrは、各々、Zn、O、N、およびZrの原子数を表す。
0.7atomic% ≦ Zr/(Zn+O+N+Zr)≦ 1.5atomic%・・・(1)
上記式(1)に示すZrの原子数比が小さ過ぎると、経年的な電気的特性が安定化しない。したがって、上記Zrの原子数比は0.7atomic%以上とする必要がある。
しかしながら、Zrの原子数比が大き過ぎると、移動度の低下を招くとともに、経年的な電気的特性の安定化等に問題が生じるため、1.5atomic%以下とする必要がある。
また、上述したソース電極5およびドレイン電極6は、例えば、モリブデンやアルミニウムなどの金属により構成される。
次に、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法を図1を参照して説明する。
本実施形態の製造方法においては、まず、ガラスや樹脂等からなる基板1を洗浄し、基板1の表面にバリア層や平坦化層(無機薄膜や有機薄膜)を形成し(図示せず)、その後、ゲート電極2を積層し、必要な形状にパターニングする。なお、微細形状をパターニングするには、フォトリソグラフィー法(紫外線露光による微細加工技術)を用いる。
次に、ゲート電極2上および基板1(ゲート電極2が形成されていない領域)上にゲート絶縁膜3を形成する。ゲート絶縁膜3としては、シリコン酸化膜(SiO2)を例えば100nmの厚みに形成したものを用いる。成膜は化学気相成長法やスパッタリング法を用いる。勿論、有機材料を用いて成膜することもできる。
続いて、Zrを添加した酸窒化亜鉛からなる半導体層4をスパッタリングを用いて形成する。
次に、ソース電極5およびドレイン電極6を、スパッタリング等を用いて形成する。なお、半導体層4上にエッチングストップ層を導入すれば半導体特性の劣化を抑制することができるので好ましい。電極の材料としては、ITO、IZOなどの透明電極や、Al、Ag、Cr、Mo、Ti等の金属電極やこれらの合金を用いることができる。
なお、積層された積層体(基板1、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、半導体層4、ソース電極5およびドレイン電極6)の上表面に保護膜を形成することも可能である。
以下、本発明の実施例に係るTFTについて、比較例との比較を行うことにより説明する。
<サンプルの作成>
まず、実施例に係るTFTは、ゲート電極を兼ねた高ドープシリコン基板上にSiO2熱酸化膜からなるゲート絶縁膜をシリコンの熱酸化により100nmの厚さに形成した。
そのゲート絶縁膜の上に、スパッタ装置により、ZnスパッタターゲットおよびZrスパッタターゲットを用い、共スパッタリングにより半導体層(活性層)を10nmの厚さに成膜した。
半導体層(活性層)の上に、ソース電極およびドレイン電極を積層し、さらにその上表面に保護膜を形成した。
なお、上記ZrスパッタターゲットにはDCパワーが印加されるようにし、DCパワーの値を、20〜100Wの範囲で変化させるようにした(DCパワーの値を大きくするほど、半導体に添加されるZrの量が多くなる(図11を参照))。
DCパワーの値を変化させる毎にTFTの中間サンプルを作製した。
DCパワーが20Wのときを実施例1の中間サンプル、DCパワーが40Wのときを実施例2の中間サンプル、DCパワーが50Wのときを実施例3の中間サンプル、DCパワーが60Wのときを実施例4の中間サンプル、DCパワーが70Wのときを実施例5の中間サンプル、DCパワーが80Wのときを実施例6の中間サンプル、DCパワーが90Wのときを実施例7の中間サンプル、DCパワーが100Wのときを実施例8の中間サンプル、さらに共スパッタリングを行わず、Zrが添加されていない状態のものを比較例の中間サンプルとした。
上記実施例1〜8の中間サンプルおよび比較例の中間サンプルについて、RBS分析を行った。
RBS分析法(ラザフォード後方散乱分析法)を行った結果、実施例2(DCパワーが40W)の中間サンプルは、半導体中のZrの組成比が0.7atomic%であり、実施例4(DCパワーが60W)の中間サンプルは、半導体中のZrの組成比が1.2atomic%であり、実施例6(DCパワーが80W)の中間サンプルは、半導体中のZrの組成比が1.7atomic%との測定結果が得られた。
半導体層の成膜後、ホットプレートを用いて、大気中で200℃、1時間の熱処理を実施した。その後、ソース電極とドレイン電極を形成し、TFTの本サンプルを作製した。作製したTFTはボトムゲート−トップコンタクト構造であり、チャネル長は80μm、チャネル幅は520μmとなるように、上述した実施例1〜8の本サンプルおよび比較例の本サンプルを作製した。
<サンプルの測定>
これらの各サンプルにおける、TFTのゲート電圧−ドレイン電流特性の測定は、半導体パラメータアナライザを用い、TFTを作製した日、およびその日から1ヶ月後に相当する日において、互いに同様の測定を実施した。
[実施例1]
・半導体膜のスパッタ製膜条件
成膜時のガス流量:Ar/O2/N2=5/0.5/10 sccm
成膜時の圧力:0.6 Pa
半導体層(活性層)の厚さ:10nm
印加電力:RF100W(Znスパッタターゲット),
:DC20W(Zrスパッタターゲット)
上記実施例1の条件で作製したTFTのゲート電圧−ドレイン電流特性を図2に示す。
[実施例2]
Zrスパッタターゲットの印加電力をDC40Wとしたこと以外は、実施例1の場合と同様
の条件で作製した。
上記実施例2の条件で作製したTFTのゲート電圧−ドレイン電流特性を図3に示す。
[実施例3]
Zrスパッタターゲットの印加電力をDC50Wとしたこと以外は、実施例1の場合と同様
の条件で作製した。
上記実施例3の条件で作製したTFTのゲート電圧−ドレイン電流特性を図4に示す。
[実施例4]
Zrスパッタターゲットの印加電力をDC60Wとしたこと以外は、実施例1の場合と同様
の条件で作製した。
上記実施例4の条件で作製したTFTのゲート電圧−ドレイン電流特性を図5に示す。[実施例5]
Zrスパッタターゲットの印加電力をDC70Wとしたこと以外は、実施例1の場合と同様
の条件で作製した。
上記実施例5の条件で作製したTFTのゲート電圧−ドレイン電流特性を図6に示す。
[実施例6]
Zrスパッタターゲットの印加電力をDC80Wとしたこと以外は、実施例1の場合と同様
の条件で作製した。
上記実施例6の条件で作製したTFTのゲート電圧−ドレイン電流特性を図7に示す。[実施例7]
Zrスパッタターゲットの印加電力をDC90Wとしたこと以外は、実施例1の場合と同様
の条件で作製した。
上記実施例7の条件で作製したTFTのゲート電圧−ドレイン電流特性を図8に示す。
[実施例8]
Zrスパッタターゲットの印加電力をDC100Wとしたこと以外は、実施例1の場合と同様の条件で作製した。
上記実施例8の条件で作製したTFTのゲート電圧−ドレイン電流特性を図9に示す。[比較例]
Zrスパッタターゲットに電力を印加しなかったこと以外は、実施例1の場合と同様の条件で作製した。
上記比較例の条件で作製したTFTのゲート電圧−ドレイン電流特性を図10に示す。
図10によれば、比較例のTFTのゲート電圧−ドレイン電流特性は、サンプル作製日にはドレイン電流が立ち上がるゲート電圧値は約−6V程度であるが、サンプル作製日から1ヶ月経過後には、ドレイン電流が立ち上がるゲート電圧値が約−9V程度まで低下し、経時変化が大きいことが明らかである。
図12に、実施例1〜8および比較例に係るTFTに関し、しきい値電圧変化(ΔVth)の、Zrスパッタターゲットに加えたDC電力に対する依存性を示す(横軸はDCパワー(DC電力(W))の値であり、縦軸はしきい値電圧変化(ΔVth(V))の値である)。
ここで、しきい値電圧は、ドレイン電圧が1Vのときに、ドレイン電流が10-7 Aとな
るときのゲート電圧で定義し、しきい値電圧変化(ΔVth(V))は、TFTサンプルの作製日に測定したしきい値電圧と、TFTサンプルの作製日から1ヶ月経過後に測定したしきい値電圧の差の絶対値により定義した。
図12に示すように、しきい値電圧変化(ΔVth)の大きさは、Zrの添加がない場合(DCパワーが0Wの場合)に比べて、実施例2乃至5のようにZrを適量だけ添加す
ることで、その値を小さくすることができ、DCパワーが70Wの場合に、しきい値電圧変化が最小となっている。
この図12から明らかなように、DCパワーが0Wの場合よりもしきい値電圧変化(ΔVth)の値が小さくなるのは、スパッタターゲットに印加するDCパワーが40W以上、かつ70W以下の場合である。
なお、実施例1の場合(図2参照)のように、Zrスパッタターゲットに印加する直流電力が20Wと低い場合と、実施例6の場合(図7参照)のように、Zrスパッタターゲットに印加する直流電力が80Wと高い場合には、上記範囲を外れ、比較例よりも、サンプル作製日から1ヶ月後の経時変化が大きくなり、良好なサンプルを得ることができなかった。
また、実施例7、8の場合(図8、9を参照)のように、Zrスパッタターゲットに印加する直流電力が90W、100Wとさらに高い場合には、そもそもドレイン電流が低下し(10−10A程度以下)、良好なサンプルは得られなかった。
次に、図13に、実施例1〜8および比較例に係るTFTに関し、TFTの移動度の、Zrスパッタターゲットに加えたDCパワーに対する依存性を示す(横軸はDCパワー)の値であり、縦軸は移動度(cm/Vs)の値である。
Zrスパッタターゲットに印加するDCパワーが20Wの場合、Zrが添加されていない場合(0W)以上の移動度が得られており、40WではZrが添加されていない場合(0W)とほぼ同等の移動度であった。また、印加するDCパワーが50W以上の場合には、Zrを添加していない場合(0W)よりも低い状態となったが、70Wにおいても移動度が23cm/Vsであり、IGZO−TFTの2倍以上の高い値が得られた。また80Wの場合には移動度が8cm/Vsであり、IGZO−TFTと同程度となった。
許容できる移動度の最小値を20cm/Vsとすると、DCパワーは20W以上、か
つ70W以下の範囲となる。
図12および図13に示す測定結果から、移動度が一般的なIGZOの場合の10cm/Vsを超え、かつ経年的な電気的特性の変化が、Zrを添加しない場合(0W)より
も小さい値となる範囲は、DCパワーが40W以上で70W以下とした場合となる。
図11は、半導体層中のZr量の、Zrスパッタターゲットに加えたDCパワーに対する依存性を示すグラフである。図11に示すグラフから、DCパワーが70Wの場合、半導体層中のZrは1.5atomic%であり、DCパワーが40Wの場合、半導体層中のZrは0.7atomic%であることが分かる。
なお、DCパワーが40Wのときの半導体層中のZrの組成比は、RBS分析法を用いた測定結果により0.7W(実施例2)を得ているが、DCパワーが70Wのときの半導体層中のZrの組成比は、図11のグラフを用いた補間法により1.5atomic%(実施例5)を得た。
本発明の薄膜トランジスタおよびその製造方法によれば、半導体層中のZrの組成比を、0.7atomic%以上、かつ1.5atomic%以下に設定しているから、移動度を良好に維持しつつ、経年的な電気的特性の変化を抑制することができる。
本発明の薄膜トランジスタおよびその製造方法としては、上記実施形態に記載したものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。
例えば、上記半導体層に含まれる元素としては、少なくとも、Zn、O、N、およびZrを含んでいればよく、その他の元素を微量含むことを排除するものではない。
また、本発明の薄膜トランジスタとしては、上記実施形態に限られるものではなく、実施形態において示す各層間に他の層を介在させることも可能である。
また、上記実施形態においては、半導体層を形成する際に、共スパッタリング法を用い、ZrスパッタターゲットにはDCパワーを、ZnスパッタターゲットにはRF電力を印加するようにしているが、本発明の薄膜トランジスタを形成する際には、必ずしもこの電力印加手法に限られるものではなく、何れも、他の電力印加手法を用いることが可能である。
また、上述した薄膜トランジスタを用いて表示駆動部を形成し、例えば、有機ELディス
プレイ(OLED)やLCD等の種々の表示装置を形成することができる。
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁膜
4 半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極

Claims (4)

  1. 活性層としての半導体層として、少なくともZn、O、N、およびZrを含む半導体を材料として用いることを特徴とする薄膜トランジスタ。
  2. 前記半導体層に含まれるZrの割合が0.7atomic%以上、かつ1.5atomic%以下であることを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタ。
  3. 基板の一方の面上に、少なくとも、ゲート電極、ゲート絶縁膜、前記半導体層、およびソース・ドレイン電極を有する構成とされていることを特徴とする請求項1または2記載の薄膜トランジスタ。
  4. 基板の一方の面上に、少なくとも、ゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層、およびソース・ドレイン電極を形成し、
    前記半導体層はスパッタリングを用いて、Zn、O、N、およびZrを含む半導体を材料とすることにより形成し、
    前記スパッタリングは、Zrのスパッタターゲットに第1の電力を印加するとともにZnのスパッタターゲットに第2の電力を印加し、
    前記Zrのスパッタターゲットに印加する該第1の電力は、前記半導体層に含まれるZrの該半導体層全体に対する割合が、0.7atomic%以上、かつ1.5atomic%以下となる値に調整することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
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