JP2019116549A - 熱応答性液晶性ポリマー、及び熱応答性液晶性ポリマーの製造方法 - Google Patents
熱応答性液晶性ポリマー、及び熱応答性液晶性ポリマーの製造方法 Download PDFInfo
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活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、光増感作用を有する触媒と、光重合性基含有化合物と、光硬化開始剤との反応物を含む熱応答性液晶性ポリマーであって、
前記触媒は、トリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体であることにある。
本構成の熱応答性液晶性ポリマーは、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、光増感作用を有する触媒と、光重合性基含有化合物と、光硬化開始剤とを反応させるものであるため、適用範囲が広い液晶性ポリウレタンとして得られ、常温を含む低温領域でも成形が容易なものとなり、ポリマー全体が均等に硬化したものとなる。しかも、成形後の温度が十分に低下した状態(すなわち、液晶相が発現した状態)で原材料を硬化させることが可能なため、モノドメイン化が容易なものとなり、生成した熱応答性液晶性ポリマーの液晶相の発現温度領域は常温を含む比較的低い温度領域となる。さらに、触媒として用いるトリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体は、立体障害が少ない分子構造を有しているためメソゲン基含有化合物とイソシアネート化合物とのウレタン化反応を迅速に進行させることができ、さらに原材料中の溶存酸素を補足して光架橋反応(硬化)を促進する光増感剤として機能するため、反応時間(製造日数)を短縮することができる。このようにして得られた低温液晶発現性を有する熱応答性液晶性ポリマーは、例えば、液晶相と等方相との間での相転移を利用した熱応答性材料として好適に利用することができる。
前記活性水素基を有するメソゲン基含有化合物は、下記一般式(1):
で表される化合物であることが好ましい。
前記光重合性基含有化合物は、アクリロイル基含有化合物、メタクリロイル基含有化合物、及びアリル基含有化合物からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
前記触媒を0.001〜10重量%含有することが好ましい。
前記光重合性基含有化合物を0.1〜10重量%含有することが好ましい。
前記光硬化開始剤を0.001〜10重量%含有することが好ましい。
トリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体の存在下で光架橋によって硬化された熱応答性液晶性ポリマーであって、
単位重量の試料において、当該試料中のゲルが占める割合であるゲル分率が80%以上であることにある。
トリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体の存在下で光架橋によって硬化された熱応答性液晶性ポリマーであって、
単位体積の試料において、当該試料を、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物、イソシアネート化合物、及び光重合性基含有化合物が溶解する溶媒で飽和させたときの前記試料の体積増加率である膨潤度が500%以下であることにある。
活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、光増感作用を有する触媒であるトリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体と、光重合性基含有化合物と、光硬化開始剤とを混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物に、波長200〜600nmの光を照射する照射工程と、
を包含することにある。
前記照射工程の前に、前記混合工程で得られた混合物を延伸する延伸工程を包含することが好ましい。
本発明の熱応答性液晶性ポリマーは、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物(以下、単に「メソゲン基含有化合物」と称する。)、イソシアネート化合物、光増感作用を有する触媒、光重合性基含有化合物、及び光硬化開始剤を原材料とし、これらの原材料を反応させることによって得られる液晶性ポリウレタンエラストマーである。本発明では、特に触媒としてトリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体を用いる。トリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体は、立体障害が少ない分子構造を有しているためメソゲン基含有化合物とイソシアネート化合物とのウレタン化反応を迅速に進行させることができ、さらに原材料中の溶存酸素を補足して光架橋反応(硬化)を促進する光増感剤として機能するため、反応時間(製造日数)を短縮することができる。本発明の熱応答性液晶性ポリマー(液晶性ポリウレタンエラストマー)は、メソゲン基含有化合物から生じる液晶性と、メソゲン基含有化合物とイソシアネート化合物及び光重合性基含有化合物との反応に起因して生じる弾性とを兼ね備えており、液晶の相転移によって物性が変化し、液晶相の発現温度領域は常温を含む比較的低い温度領域となる。このような低温液晶発現性を有する液晶性ポリマーは、液晶の相転移によって物性が変化する特異的な挙動を示すものとなり、例えば、液晶相と等方相との間での相転移を利用した熱応答性材料として好適に利用することができる。
メソゲン基含有化合物は、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物が使用される。
イソシアネート化合物は、例えば、ジイソシアネート化合物、又は3官能以上のイソシアネート化合物を使用することができる。ジイソシアネート化合物を例示すると、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、及びm−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、並びに1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。上掲のジイソシアネート化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。3官能以上のイソシアネート化合物を例示すると、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、ビシクロヘプタントリイソシアネート等のトリイソシアネート、及びテトライソシアネートシラン等のテトライソシアネートが挙げられる。上掲の3官能以上のイソシアネート化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。イソシアネート化合物は、上掲のジイソシアネート化合物と、上掲の3官能以上のイソシアネート化合物とを混合したものを使用することも可能である。イソシアネート化合物の配合量は、熱応答性液晶性ポリマーの原材料全体の中で、10〜40重量%、好ましくは15〜30重量%となるように調整される。イソシアネート化合物の配合量が10重量%未満の場合、ウレタン反応による高分子化が不十分となるため、液晶性ポリマー(液晶性ポリウレタン)を連続成形することが困難となる。イソシアネート化合物の配合量が40重量%を超える場合、熱応答性液晶性ポリマーの原材料全体に占めるメソゲン基含有化合物の配合量が相対的に少なくなるため、液晶性ポリマー(液晶性ポリウレタン)の液晶性が低下する。
触媒は、トリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体が使用される。トリエチレンジアミンは、下記の一般式(2)で表されるものである。
光重合性基含有化合物は、例えば、アクリロイル基含有化合物、メタクリロイル基含有化合物、アリル基含有化合物を使用することができる。アクリロイル基含有化合物を例示すると、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、エチレングリコールジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ビスフェノールA PO2mol付加物ジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、β−カルボキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。メタクリロイル基含有化合物を例示すると、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、グリセリンジメタクリレート、ビスフェノールA PO2mol付加物ジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート等が挙げられる。アリル基含有化合物を例示すると、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられる。光重合性基含有化合物の配合量は、熱応答性液晶性ポリマーの原材料全体の中で、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜7重量%となるように調整される。光重合性基含有化合物の配合量が0.1重量%未満の場合、原材料に光照射を行っても十分に硬化しないため、生成したポリマーは熱応答性を発現し難くなる。光重合性基含有化合物の配合量が10重量%を超える場合、光照射後のポリマー中の架橋密度が高くなり過ぎるため、この場合も生成したポリマーは熱応答性を発現し難くなる。
光硬化開始剤は、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフォンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン/ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル/オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、ヨードニウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)/プロピレンカーボネート、トリアリールスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリアリールスルフォニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート、オキシムスルホネート系光酸発生剤を使用することができる。光硬化開始剤の配合量は、熱応答性液晶性ポリマーの原材料全体の中で、0.001〜10重量%、好ましくは0.001〜8重量%となるように調整される。光硬化開始剤の配合量が0.001重量%未満の場合、光照射時に均一に重合反応が進行しないため、あるいは硬化が不十分となるため、生成したポリマーは熱応答性を発現し難くなる。光硬化開始剤の配合量が10重量%を超える場合、生成したポリマー中のメソゲン基の含有量が減少するため、液晶性が発現し難くなる。光硬化開始剤は、200〜600nmに吸収波長を有するものが好ましい。光硬化開始剤が上記範囲の吸収波長を有していれば、熱応答性液晶性ポリマー又はその原材料の透明度(可視光の透過率)が低いものであっても、光硬化開始剤が光を吸収し、確実に光架橋反応を進行させることができる。
本発明の熱応答性液晶性ポリマーの原材料として、上記の原材料の他に、活性水素基含有化合物を使用することも可能である。活性水素基含有化合物は、例えば、ポリオール化合物、アミン化合物が挙げられる。ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、meso−エリトリトール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。アミン化合物としては、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、及びモノプロパノールアミン等が挙げられる。上掲の各活性水素基含有化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。
熱応答性液晶性ポリマーは、メソゲン基含有化合物、イソシアネート化合物、触媒(トリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体)、光重合性基含有化合物、及び光硬化開始剤を含む原材料に光を照射して行う光重合法により製造される。具体的には、上記の原材料を混合し、この混合物を流動可能な状態に加熱しながら押出成形機を用いて延伸し、所定の形状に成形する。このとき、メソゲン基含有化合物に由来するメソゲン基が配向して混合物の液晶性が高まり、この状態で光を照射すると、光硬化開始剤が分解してラジカルが発生し、このラジカルによって混合物に含まれる光重合性基どうしが反応(光架橋)し、ポリマーの分子間に架橋構造が形成されて硬化が進行する。照射光は、波長が200〜600nmである紫外光ないし可視光が好ましい。このような光架橋による硬化法であれば、原材料を混合及び加熱し、次いで延伸して成形を行った後、冷却により温度が十分に低下した状態で硬化させることができる。すなわち、成形と光架橋(硬化)とを別々の工程として行うことができる。従って、低温領域において液晶相が確実に発現する熱応答性液晶性ポリマーを得ることができる。
配向度=(A−B)/(A+2B)
A:0°で測定したときの芳香族エーテルの逆対称伸縮振動の吸光度/0°で測定したときのメチル基の対称変角振動の吸光度
B:90°で測定したときの芳香族エーテルの逆対称伸縮振動の吸光度/90°で測定したときのメチル基の対称変角振動の吸光度
反応容器に、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物として式(1)のR1が単結合であるBH6(500g)、水酸化カリウム(19g)、及び溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(3000ml)を入れて混合し、さらに、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを2モルのBH6に対して5当量添加し、これらの混合物を、加圧条件下、120℃で2時間反応させた(付加反応)。次いで、反応容器にシュウ酸(15g)を添加して付加反応を停止させ、反応液中の不溶な塩を吸引ろ過によって除去し、さらに、反応液中のN,N−ジメチルホルムアミドを減圧蒸留法により除去することにより、メソゲンジオールAを得た。メソゲンジオールAの合成スキームを式(3)に示す。なお、式(3)中に示したメソゲンジオールAは代表的なものであり、種々の構造異性体を含み得る。
熱応答性液晶性ポリマーの原材料を調製するに際し、触媒としてトリエチレンジアミン(7.6g)(東京化成工業株式会社製)を配合した。その他の原材料及び配合量、並びに製造条件については実施例1と同様とし、実施例2の熱応答性液晶性ポリマーを得た。
反応容器に、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物として式(1)のR1が−CH=N−であるBHBA6(500g)、水酸化カリウム(19g)、及び溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(3000ml)を入れて混合し、さらに、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを2モルのBHBA6に対して5当量添加し、これらの混合物を、加圧条件下、120℃で2時間反応させた(付加反応)。次いで、反応容器にシュウ酸(15g)を添加して付加反応を停止させ、反応液中の不溶な塩を吸引ろ過によって除去し、さらに、反応液中のN,N−ジメチルホルムアミドを減圧蒸留法により除去することにより、メソゲンジオールBを得た。メソゲンジオールBの合成スキームを式(4)に示す。なお、式(4)中に示したメソゲンジオールBは代表的なものであり、種々の構造異性体を含み得る。
熱応答性液晶性ポリマーの原材料を調製するに際し、実施例3で使用したメソゲンジオールB(100g)、イソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(32g)(東京化成工業株式会社製)、光重合性基含有化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(3g)(共栄社化学株式会社製)及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.3g)(共栄社化学株式会社製)、光硬化開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(3g)(IGM resins社製)、並びに触媒としてトリエチレンジアミン(1.8g)(東京化成工業株式会社製)を混合し、熱応答性液晶性ポリマーの原材料を調製した。その後の操作及び製造条件は実施例1と同様とし、光架橋(硬化)された実施例4の熱応答性液晶性ポリマーを得た。
熱応答性液晶性ポリマーの原材料を調製するに際し、トリエチレンジアミンを配合せず、その他の原材料及び配合量、並びに製造条件については実施例1と同様とし、比較例1の液晶性ポリマーを得た。
熱応答性液晶性ポリマーの原材料を調製するに際し、触媒としてトリエチレンジアミンの代わりにトリエチレンアミン(0.26g)(東京化成工業株式会社製)を配合した。その他の原材料及び配合量、並びに製造条件については実施例1と同様とし、比較例2の液晶性ポリマーを得た。
実施例1〜4の熱応答性液晶性ポリマー、及び比較例1〜2の液晶性ポリマーについて、光照射前のポリマーの押出成形性、並びに光照射後のポリマーの硬化状態、伸縮性、及び熱応答性の評価を行った。各測定項目の測定方法及び測定条件を以下に説明する。
各ポリマー試料の押出成形性の評価を目視により行い、押出成形機から樹脂がスムーズに押し出されたものを「良好(○)」と判断した。
各ポリマー試料(厚み0.5mm)を10mm×10mmに切り出し、卓上型UV硬化装置(品名:アイminiグランテージ(ESC−1511U)、アイグラフィックス株式会社製)にセットして、照射エネルギーが500mJとなるように紫外光照射を行った。次いで、紫外光照射から1日経過後の試料を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50mLに2日間浸漬して非ゲル化物をDMF中に溶出し、DMFから溶出後の試料を取り出した後、温度120℃、圧力−0.1Mpaで1日間乾燥した。ここで、DMFは、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物(BH6、BHBA6)、イソシアネート化合物(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)、光重合性基含有化合物(2−ヒドロキシエチルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、2−ヒドロキシエチルメタクリレート)が溶解する溶媒である。その後、試料の硬化状態を、(a)単位重量の試料において、当該試料中のゲルが占める割合であるゲル分率、(b)単位体積の試料において、当該試料をDMFで飽和させたときの前記試料の体積増加率である膨潤度、及び(c)光照射後からゲル分率が90%に到達するまでの日数から評価した。ゲル分率、及び膨潤度は、夫々以下の式(5)、及び式(6)から求められる。なお、式(6)における数値「0.944」は、DMFの比重である。
ゲル分率(%) = G1/G2 × 100 (5)
G1:乾燥後の試料の重量(mg)
G2:DMF浸漬前の試料の重量(mg)
膨潤度(%) = {(G3−G1)/D1}/(G1/0.944) (6)
G3:膨潤時の試料の重量(mg)
D1:乾燥後の試料の密度(mg/cc)
各ポリマー試料の液晶相(Ti−20 ℃)及び等方相(Ti+20 ℃)における配向方向のサイズをスケールで測定し、伸縮率を下記の式(7)によって算出した。液晶相から等方相への相転移に伴って長さに減少(収縮)が認められたものを「熱応答性あり(○)」と判断した。
伸縮率(%) = (L1−L2)/L2 × 100 (7)
L1:液晶相における試料の配向方向の長さ(mm)
L2:等方相における試料の配向方向の長さ(mm)
Claims (10)
- 活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、光増感作用を有する触媒と、光重合性基含有化合物と、光硬化開始剤との反応物を含む熱応答性液晶性ポリマーであって、
前記触媒は、トリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体である熱応答性液晶性ポリマー。 - 前記光重合性基含有化合物は、アクリロイル基含有化合物、メタクリロイル基含有化合物、及びアリル基含有化合物からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の熱応答性液晶性ポリマー。
- 前記触媒を0.001〜10重量%含有する請求項1〜3の何れか一項に記載の熱応答性液晶性ポリマー。
- 前記光重合性基含有化合物を0.1〜10重量%含有する請求項1〜4の何れか一項に記載の熱応答性液晶性ポリマー。
- 前記光硬化開始剤を0.001〜10重量%含有する請求項1〜5の何れか一項に記載の熱応答性液晶性ポリマー。
- トリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体の存在下で光架橋によって硬化された熱応答性液晶性ポリマーであって、
単位重量の試料において、当該試料中のゲルが占める割合であるゲル分率が80%以上である熱応答性液晶性ポリマー。 - トリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体の存在下で光架橋によって硬化された熱応答性液晶性ポリマーであって、
単位体積の試料において、当該試料を、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物、イソシアネート化合物、及び光重合性基含有化合物が溶解する溶媒で飽和させたときの前記試料の体積増加率である膨潤度が500%以下である熱応答性液晶性ポリマー。 - 活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、光増感作用を有する触媒であるトリエチレンジアミン又はトリエチレンジアミン誘導体と、光重合性基含有化合物と、光硬化開始剤とを混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物に、波長200〜600nmの光を照射する照射工程と、
を包含する熱応答性液晶性ポリマーの製造方法。 - 前記照射工程の前に、前記混合工程で得られた混合物を延伸する延伸工程を包含する請求項9に記載の熱応答性液晶性ポリマーの製造方法。
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JP2000327950A (ja) * | 1999-05-17 | 2000-11-28 | Daicel Chem Ind Ltd | コーティング組成物 |
JP2005187618A (ja) * | 2003-12-25 | 2005-07-14 | Asahi Glass Co Ltd | 液晶組成物、該液晶組成物を用いた高分子液晶の製造方法 |
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2017
- 2017-12-27 JP JP2017250935A patent/JP7027160B2/ja active Active
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KR102613630B1 (ko) | 2021-03-11 | 2023-12-15 | 한국과학기술원 | 자극감응성 복합섬유와 이의 제조방법 및 이를 포함하는 광열 엑추에이터 시스템 |
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