JP2019116083A - スクライブ装置およびホルダユニット - Google Patents

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Abstract

【課題】スクライビングホイールを円滑に回転させながら、スクライブラインの形成位置を安定させる。【解決手段】ホルダユニット30は、保持溝63と、ピン孔64a、64bと、スクライビングホイール40と、ピン軸50と、を備える。スクライビングホイール40が基板表面に押し付けられると、スクライビングホイール40の両側面が保持溝63の互いに対向する内側面に押し付けられるように、貫通孔41とピン軸50との間と、保持溝63の内側面とスクライビングホイール40の側面と間の各クリアランスと、保持溝63の内側面に対するピン軸50の傾斜角が設定されている。スクライビングホイール41の貫通孔を形成する内周面41Cは、スクライビングホイールの厚さ方向における貫通孔の中央部を形成する曲面を含み、前記曲面は厚さ方向における貫通孔41の中央部の径が貫通孔の端部の径よりも小さくなる。【選択図】図4

Description

本発明は、基板にスクライブラインを形成するためのスクライブ装置およびホルダユニットに関する。
従来、ガラス基板等の脆性材料基板の分断は、基板表面にスクライブラインを形成するスクライブ工程と、形成されたスクライブラインに沿って基板表面に所定の力を付加するブレイク工程とによって行われる。スクライブ工程では、スクライビングホイールの刃先が、基板表面に押し付けられながら、所定のラインに沿って移動される。スクライブラインの形成には、スクライブヘッドを備えたスクライブ装置が用いられる。
以下の特許文献1には、スクライビングホイールが基板表面を回転しながら進むことにより、基板表面にスクライブラインを形成するスクライブ装置が開示されている。このスクライブ装置では、ホルダに形成された保持溝にスクライビングホイールを挿入した状態で、ホルダに形成された孔とスクライビングホイールに形成された孔の両方にピン軸を差し込むことにより、スクライビングホイールがホルダに回転可能に保持される。
WO2007/063979号公報
ホルダに取り付けられたスクライビングホイールは、スクライブラインを形成するために保持溝内で回転する必要がある。このため、保持溝の幅はスクライビングホイールの厚みより若干広くなっており、スクライビングホイールと保持部との間にはクリアランスが確保されている。このクリアランスにより、スクライビングホイールは、ホルダ溝内でピン軸に沿って移動可能な状態にある。ところが、スクライブラインを形成する際に、スクライビングホイールがピン軸方向に移動すると、スクライブラインの形成位置が安定しなくなる。このため、従来のスクライブ装置では、スクライブラインが所望の位置からずれるということが問題となっていた。
かかる課題に鑑み、本発明は、スクライビングホイールの回転を阻害することなく、スクライブラインの形成位置を安定させることが可能なスクライブ装置およびホルダユニットを提供することを目的とする。
本発明の第1の態様は、基板表面にスクライブラインを形成するスクライブ装置に関する。この態様に係るスクライブ装置は、スクライビングホイールを保持するホルダユニットと、前記基板表面に垂直な軸の周りに回転可能に前記ホルダユニットを保持するスクライブヘッドと、を備える。前記ホルダユニットは、前記スクライビングホイールが挿入される保持溝と、前記保持溝を跨ぐように形成されたピン孔と、前記保持溝に挿入された前記スクライビングホイールの貫通孔と前記ピン孔とに挿入されるピン軸と、を備える。前記スクライビングホイールが前記基板表面に押し付けられると、前記スクライビングホイールの両側面がそれぞれ前記保持溝の互いに対向する内側面に押し付けられるように、前記貫通孔と前記ピン軸との間のクリアランスと、前記保持溝の内側面と前記スクライビングホイールの側面と間のクリアランスと、前記保持溝の内側面に対する前記ピン軸の傾斜角が設定されており、前記スクライビングホイールの前記貫通孔を形成する内周面は、少なくとも前記スクライビングホイールの厚さ方向における前記貫通孔の中央部を形成する曲面を含み、前記曲面は、前記厚さ方向における前記貫通孔の中央部の径が前記厚さ方向における前記貫通孔の端部の径よりも小さくなるように形成されている、
いる。
本態様に係るスクライブ装置によれば、前記スクライビングホイールが前記基板表面に押し付けられると、前記スクライビングホイールの両側面がそれぞれ前記保持溝の互いに対向する内側面に押し付けられる。このため、スクライブラインを形成する際に、スクライビングホイールがピン軸方向に移動することが抑制される。一方で、スクライビングホイールの貫通孔の内周面が厚さ方向における貫通孔の中央部の径が厚さ方向における貫通孔の端部の径よりも小さくなるように形成された曲面を有することにより、貫通孔を構成する内周面とピン軸の外周面とが線接触する。これにより、ピン軸に対して貫通孔の内周面41Cが摺動しやすくなるため、スクライビングホイール40を円滑に回転させることができる。加えて、貫通孔41の内周面41Cとピン軸50の外周面との接触面積が小さいため、基板15にスクライブラインを形成するときに発生するガラスカレットや異物が貫通孔41の内周面41Cとピン軸50の外周面との間に入り込んだとしても、スクライビングホイール40の回転性に対する影響を受けにくくなる。これにより、ピン軸50に対するスクライビングホイール40の回転が阻害されることを抑制できる。よって、スクライブラインの回転を阻害することなく、スクライブラインの形成位置を安定させることができる。
本態様に係るスクライブ装置において、前記ピン孔は、前記保持溝の内側面に垂直な方向に対して、少なくとも前記基板表面に平行な方向に傾くように形成され、前記ピン孔および前記貫通孔に挿入された前記ピン軸は、前記保持溝の内側面に垂直な方向に対して、少なくとも前記基板表面に平行な方向に傾いている構成とされ得る。この構成によれば、以下の実施形態で説明するように、スクライブラインの形成位置を安定させることができる。
本態様に係るスクライブ装置において、前記ピン孔は、前記保持溝の内側面に垂直な方向に対して、前記基板表面に垂直な方向にも傾くように形成され、前記ピン孔および前記貫通孔に挿入された前記ピン軸は、前記保持溝の内側面に垂直な方向に対して、前記基板表面に垂直な方向にも傾いている構成とされ得る。この構成によれば、より一層スクライブラインの形成位置を安定させることができる。
本発明の第2の態様は、スクライブラインを形成するためのスクライビングホイールを保持するホルダユニットに関する。この態様に係るホルダユニットは、前記スクライビングホイールが挿入される保持溝と、前記保持溝を跨ぐように形成されたピン孔と、前記保持溝に挿入された前記スクライビングホイールの貫通孔と前記ピン孔とに挿入されるピン軸と、を備える。前記スクライビングホイールが前記基板表面に押し付けられると、前記スクライビングホイールの両側面がそれぞれ前記保持溝の互いに対向する内側面に押し付けられるように、前記貫通孔と前記ピン軸との間のクリアランスと、前記保持溝の内側面と前記スクライビングホイールの側面と間のクリアランスと、前記保持溝の内側面に対する前記ピン軸の傾斜角が設定されており、前記スクライビングホイールの前記貫通孔を形成する内周面は、少なくとも前記スクライビングホイールの厚さ方向における前記貫通孔の中央部を形成する曲面を含み、前記曲面は、前記厚さ方向における前記貫通孔の中央部の径が前記厚さ方向における前記貫通孔の端部の径よりも小さくなるように形成されている。
本態様に係るホルダユニットが、基板表面に垂直な軸の周りに回転可能にスクライブヘッドに保持されることにより、上記第1の態様と同様の効果が奏され得る。
以上のとおり、本発明によれば、スクライビングホイールの回転を阻害することなく、スクライブラインの形成位置を安定させることが可能なスクライブ装置およびホルダユニットを提供することができる。
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の1つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
図1は、実施の形態に係るスクライブ装置の構成を模式的に示す図である。 図2(a)、(b)は、それぞれ、実施の形態に係るホルダユニットの正面図および側面図である。 図3は、実施の形態に係るホルダユニットの一部の縦断面図である。 図4(a)〜(d)は、それぞれ、実施の形態に係るホルダの動作を模式的に示す断面図である。 図5(a)、(b)は、それぞれ、実施の形態に係るピン軸を鉛直方向に傾斜させた場合の作用を説明する図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図には、便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が付記されている。X−Y平面は水平面に平行で、Z軸方向は鉛直方向である。
図1は、スクライブ装置1の構成を模式的に示す図である。
スクライブ装置1は、移動台10を備えている。移動台10は、ボールネジ11と螺合されている。移動台10は、一対の案内レール12によってY軸方向に移動可能に支持されている。モータの駆動によりボールネジ11が回転することで、移動台10が、一対の案内レール12に沿ってY軸方向に移動する。
移動台10の上面には、モータ13が設置されている。モータ13は、上部に位置するテーブル14をXY平面で回転させて所定角度に位置決めする。モータ13により水平回転可能なテーブル14は、図示しない真空吸着手段を備えている。テーブル14上に載置された基板15は、この真空吸着手段によって、テーブル14上に保持される。
基板15は、ガラス基板、低温焼成セラミックスや高温焼成セラミックスからなるセラミック基板、シリコン基板、化合物半導体基板、サファイア基板、石英基板等である。また、基板15は、基板の表面または内部に薄膜あるいは半導体材料を付着させたり、含ませたりしたものであってもよい。また、基板15は、その表面に脆性材料に該当しない薄膜等が付着されていてもよい。
スクライブ装置1は、テーブル14に載置された基板15の上方に、この基板15の表面に形成されたアライメントマークを撮像する二台のカメラ16を備えている。また、移動台10とその上部のテーブル14とを跨ぐように、ブリッジ17が支柱18a、18bに架設されている。
ブリッジ17には、ガイド19が取り付けられている。スクライブヘッド20は、このガイド19に案内されてX軸方向に移動するように設置されている。スクライブヘッド20は、下端にホルダジョイント21を備えている。ホルダ60にスクライビングホイール40が保持されているホルダユニット30が、ホルダジョイント21を介してスクライブヘッド20に取り付けられている。
スクライブ装置1を用いて基板15にスクライブラインを形成する場合、まず、スクライビングホイール40が取り付けられたホルダ60がスクライブヘッド20に取り付けられる。次に、スクライブ装置1は、一対のカメラ16によって基板15の位置決めを行う。そして、スクライブ装置1は、スクライブヘッド20を所定の位置に移動させ、スクライビングホイール40に対して所定の荷重を印加して、基板15へ接触させる。その後、スクライブ装置1は、スクライブヘッド20をX軸方向に移動させることにより、基板15の表面に所定のスクライブラインを形成する。なお、スクライブ装置1は、必要に応じてテーブル14を回動ないしY軸方向に移動し、上記の場合と同様にしてスクライブラインを形成する。
上記の実施の形態においては、スクライブヘッドがX軸方向に移動し、テーブル14がY軸方向に移動すると共に、回転するスクライブ装置について示したが、スクライブ装置はスクライブヘッドとテーブルとが相対的に移動するものであればよい。たとえば、スクライブヘッドが固定され、テーブルがX軸、Y軸方向に移動し、かつ回転するスクライブ装置であってもよい。また、この場合、カメラ16はスクライブヘッド20に固定されていてもよい。
次に、ホルダユニット30の構成について、図2(a)、(b)を参照して説明する。図2(a)は、ホルダユニット30をX軸正側から見た正面図、図2(b)は、ホルダユニット30をY軸正側から見た側面図である。なお、図2(a)、(b)には、ホルダユニット30が直接取り付けられるホルダジョイント21が併せて図示されている。
ホルダユニット30は、スクライビングホイール40と、ピン軸50と、ホルダ60と、が一体となったものである。ホルダユニット30は、図2(b)に示すようにホルダジョイント21に取付ネジ31によって取り付けられている。ホルダジョイント21は、取付部22と、回転軸23と、2つのベアリング24a、24bと、で構成されている。取付部22は、断面形状が逆L字状となっている。取付部22は、鉛直方向に延びる壁22aと、水平方向に延びる壁22bからなっている。回転軸23は、取付部22の壁22bの天面側から鉛直方向に延びている。ベアリング24a、24bには、回転軸23が挿通されている。
ホルダユニット30がホルダジョイント21に取り付けられると、ホルダユニット30の側面が取付部22の壁22aと接触し、ホルダユニット30の上面が壁22bと接触する。また、壁22aには、図2(a)に示すように取付ネジ31が挿入されるネジ孔25が形成されている。
ホルダジョイント21は、取付部22に取り付けられたホルダユニット30がスクライブヘッド20の下端から露出するように、スクライブヘッド20の内部へと固定される。このとき、ホルダユニット30は、ホルダジョイント21の回転軸23を中心として回転自在となっている。なお、一点鎖線は、回転軸23の軸中心Sを示しており、破線は、基板15の表面Hを示している。表面Hは、水平面に平行で、回転軸23に対して垂直である。
スクライブ装置1を用いて基板15の表面Hにスクライブラインを形成する場合、スクライビングホイール40は、図2(b)に示す矢印Rの方向(X軸方向)に進むように回転する。なお、スクライブ装置1は、ホルダジョイント21を用いないで、ホルダユニット30自身が回転軸23やベアリング24a、24bを備える構成であってもよい。
図3は図2のホルダ60の一部の縦断面図である。便宜上、図3では、ホルダ60の一部の構成の図示が省略されている。スクライビングホイール40は、たとえば、焼結ダイヤモンドや超硬合金等で形成された、円板状の部材である。スクライビングホイール40には、ピン軸50が挿入される貫通孔41が形成されている。貫通孔41は、スクライビングホイール40の両側面の中心を貫通するように形成されている。貫通孔41の形状の詳細については後述する。
また、スクライビングホイール40には、稜線を形成するV字状の刃先部44が外周部に形成されている。スクライビングホイール40は、たとえば、厚さが0.4〜1.1mm程度、外径が1.0〜5.0mm程度である。また、貫通孔41の最小内径は、たとえば、0.4〜1.5mm程度、刃の刃先角は、90〜150°程度である。
ピン軸50は、たとえば、焼結ダイヤモンドや超硬合金等で形成された、円柱状の部材であり、一端または両端が尖頭形状の尖頭部51になっている(図2(a)参照)。ピン軸50の径は、スクライビングホイール40の貫通孔41の最小内径よりもやや小さい。ピン軸50の径は、たとえば、貫通孔41の最小内径が0.82mmのとき0.77mm程度である。ピン軸50が貫通孔41に挿入された状態では、ピン軸50と貫通孔41との間に隙間(クリアランス)が生じる。
図3に示されるとおり、刃先部44の先端、および、貫通孔41を形成する内周面41Cの径が最も小さい最小径部41Xは、厚さ方向DTにおけるスクライビングホイール40の中心上に形成されている。すなわち、厚さ方向DTにおいて、スクライビングホイール40の厚さ方向DTの中心位置と、刃先部44の先端位置と、貫通孔41の最小径部41Xの位置が互いに等しい。
貫通孔41は、鼓形状を有する。詳述すると、貫通孔41は、厚さ方向DTにおいて第1側面42aおよび第2側面42bから本体部41の中央に向けて内径が徐々に小さくなる曲面形状に形成されている。図3に示されるとおり、厚さ方向DTと直交する平面で切ったスクライビングホイール40の断面において、スクライビングホイール40における貫通孔41の内周面41Cは、少なくとも厚さ方向DTにおける貫通孔41の中央部を形成する曲面を含む。この曲面は、厚さ方向DTにおける貫通孔41の中央部の径が厚さ方向DTにおける貫通孔41の端部の径よりも小さくなるように形成されている。
より詳細には、貫通孔41の内周面41Cは貫通孔41の中心軸を中心として軸対称形状であるが、説明のため、厚さ方向DTに沿う断面において上方の内周面を上方内周面41CUとし、下方の内周面を下方内周面41CLとする。上方内周面41CUは、貫通孔41の厚さ方向DTの第1側面42a側の端部から中央に向かうにつれて下方内周面41CLに向けて湾曲状に延び、貫通孔41の厚さ方向DTの中央から貫通孔41の厚さ方向DTの第2側面42b側の端部に向かうにつれて下方内周面41CLから離れるように湾曲状に延びている。上方内周面41CUにおける厚さ方向DTの第1側面42a側の端部から中央までの形状と、貫通孔41における厚さ方向DTの中央から厚さ方向DTの第2側面42b側の端部までの形状とは、線分CLを中心とした線対称形状となる。下方内周面41CLは、貫通孔41の厚さ方向DTの第1側面42a側の端部から中央に向かうにつれて上方内周面41CUに向けて湾曲状に延び、貫通孔41の厚さ方向DTの中央から貫通孔41の厚さ方向DTの第2側面42b側の端部に向かうにつれて上方内周面41CUから離れるように湾曲状に延びている。下方内周面41CLにおける厚さ方向DTの第1側面42a側の端部から中央までの形状と、貫通孔41における厚さ方向DTの中央から厚さ方向DTの第2側面42b側の端部までの形状とは、線分CLを中心とした線対称形状となる。本実施形態の貫通孔41の上方内周面41CUおよび下方内周面41CLを含む全ての内周面41Cはそれぞれ、単一または複数の曲率半径で形成されている。
貫通孔41の内周面41Cの曲率半径は、貫通孔41の最小径部41Xの位置と刃先部44の先端縁との間の距離DXよりも大きいことが好ましい。厚さ方向DTにおける貫通孔41の両端部にはテーパ部41a,41bが形成されている。テーパ部41aは第1側面42aに向けて拡径し、テーパ部41bは第2側面42bに向けて拡径している。貫通孔41の内周面41Cにおける最小内径(最小径部41Xの径)は、ピン軸50の外径よりも大きい。
本実施形態の貫通孔41の最小内径(最小径部41Xの径)は、φ0.82mmである。貫通孔41において、厚さ方向DTにおいてテーパ部41a,41bに挟まれた鼓形状の部分の厚さ方向DTの長さLHは、0.44mm以上かつ0.6mm以下の範囲であることが好ましい。長さLHは、長くなるにつれてスクライビングホイール40のピン軸50に対する傾きが小さくなる。貫通孔41における鼓形状の部分の厚さ方向DTの両端部と刃先部44の先端縁との間の距離DWと、貫通孔41の最小径部41Xの位置と刃先部44の先端縁との間の距離DXとの差である高低差DY(DY=DX−DW)は、0.1μm以上かつ0.5μm以下であることが好ましい。高低差DYは、小さくなるにつれてスクライビングホイール40のピン軸50に対する傾きが小さくなる。
ホルダ60は、ステンレスや炭素工具鋼からなっている。ホルダ60は、図2(b)に示すように、下部が側面視において下端に向かって幅が狭くなる台形形状となっている。また、ホルダ60の台形形状部分には、それぞれ保持部62a、62bが形成され、保持部62a、62bとの間に保持溝63が形成されている。保持溝63の互いに対向する内側面65a、65bは、水平面(XY平面)に垂直である。
なお、図2(a)、(b)の構成では、ホルダ60が、1つの基材で構成されているが、たとえば、保持部62a、62bをそれぞれ有する2つの基材を固定することでホルダ60が形成されてもよい。
保持部62a、62bには、ピン軸50が挿入されるピン孔64a、64bが、保持溝63を跨ぐように形成されている。ピン孔64a、64bの径は、ピン軸50の径よりも僅かに大きい。ピン孔64a、64bは、保持溝63の内側面65a、65bに垂直な方向に対して、少なくとも基板15の表面Hに平行な方向(XY平面に平行な方向)に傾くように形成されている。ピン孔64a、64bが、保持溝63の内側面に垂直な方向に対して、さらに基板15の表面Hに垂直な方向(YZ平面に平行な方向)にも傾くように形成されてもよい。
スクライビングホイール40が保持溝63に挿入された状態で、スクライビングホイール40の貫通孔41とピン孔64a、64bとにピン軸50が挿入される。上記のように、ピン孔64a、64bは、保持溝63の内側面65a、65bに垂直な方向に対して傾くように形成されているため、ピン孔64a、64bおよび貫通孔41に挿入されたピン軸50は、保持溝63の内側面65a、65bに垂直な方向に対して、少なくとも基板15の表面Hに平行な方向(XY平面に平行な方向)に傾いている。
ホルダ60の上部には、取付ネジ31が挿入されるネジ孔66が形成されている。また、保持部62aのY軸正側の側面には、止め金67aがネジ68aで取り付けられ、保持部62bのY軸負側の側面には、止め金67bがネジ68bで取り付けられている。止め金67a、67bは、ピン孔64a、64bを閉塞するためのものである。
以上の構成を備えたスクライブ装置1では、スクライブラインの形成動作においてスクライビングホイール40が基板15の表面Hに押し付けられると、スクライビングホイール40の両側面が、それぞれ、保持溝63の互いに対向する内側面65a、65bに押し付けられる。このため、スクライブラインの形成動作において、スクライビングホイール40がピン軸50に沿って移動することが抑制され、これにより、スクライブラインの形成位置を安定させることができる。
以下、スクライビングホイール40の両側面が、それぞれ、保持溝63の互いに対向する内側面65a、65bに押し付けられる動作について、図4(a)〜(d)を参照して説明する。
図4(a)〜(d)は、それぞれ、ホルダ60の動作を模式的に示す断面図である。図4(a)〜(d)は、それぞれ、図2(a)、(b)に示すホルダ60を、ピン軸50のZ軸方向中央位置において、XY平面に平行な平面で切断した断面をZ軸正側から見た断面図である。便宜上、図4(a)〜(d)では、ホルダ60の一部の構成の図示が省略されている。一点鎖線は、スクライビングホイール40の刃の稜線を示している。
図4(a)は、スクライビングホイール40が基板15の表面Hに押し付けられる前の状態を示している。この状態において、スクライビングホイール40は、稜線がXZ平面に略平行となっており、スクライビングホイール40の第一、第二側面42a、42bと、保持溝63の内側面65a、65bとの間には、隙間(クリアランス)が生じている。ピン軸50は、保持溝63の内側面65a、65bに垂直な方向に対してXY平面に平行な方向に傾いている。
この状態から、スクライビングホイール40が基板15の表面Hに押し付けられると、スクライビングホイール40の貫通孔41の中心軸がピン軸50に対して平行となるように、スクライビングホイール40にトルクが生じる。上記のように、貫通孔41の径はピン軸50の径よりも大きいため、スクライビングホイール40は、貫通孔41とピン軸50との間のクリアランスで許容される範囲において、XY平面に平行な方向に回転可能である。したがって、上記のようにスクライビングホイール40にトルクが生じると、図4(b)に示すように、このトルクによって、スクライビングホイール40が時計方向に回転し、スクライビングホイール40の側面42a、42bが、それぞれ、保持溝63の内側面65a、65bに押し付けられる。
その後、スクライブヘッド20の移動に伴って、ホルダ60がX軸方向(矢印R方向)に移動されると、スクライビングホイール40の稜線をスクライブ方向(矢印R方向)に平行にするトルクが生じる。図2(a)、(b)に示すように、ホルダ60は回転軸23の周りに回転可能であるため、このトルクによって、図4(c)に示すように、スクライビングホイール40の稜線がスクライブ方向(矢印R方向)に平行となるように、ホルダ60が反時計方向に回転する。
その後は、図4(d)に示すように、回転軸23(図2(a)、(b)参照)の周りにホルダ60がやや回転した状態で、スクライブ動作が行われる。この場合も、スクライビングホイール40は、基板15の表面Hに対する荷重によって、第一、第二側面42a、42bが保持溝63の内側面65a、65bに押し付けられた状態にある。この状態で、スクライビングホイール40は、ピン軸50の周りを回転する。
ここで、スクライビングホイール40の第一、第二側面42a、42bが保持溝63の内側面65a、65bに押し付けられ、スクライビングホイール40がピン軸50に対して傾いても、貫通孔41の内周面41Cとピン軸50とが接触する位置がスクライビングホイール40の厚さ方向DTの中央位置寄りとなるため、スクライビングホイール40が保持溝63を押し付けるモーメントが小さくなる。したがって、スクライビングホイール40が傾いて保持溝63の内側面65a、65bに接触した状態でスクライビングホイール40が回転しても、スクライビングホイール40と保持溝63との摩擦力が小さい。
このように、本実施の形態では、スクライブラインの形成動作において、スクライビングホイール40の両側面が、それぞれ、保持溝63の互いに対向する内側面65a、65bに押し付けられるため、スクライブラインの形成動作において、スクライビングホイール40がピン軸50に沿って移動することが抑制される。また、スクライビングホイールの内周面が厚さ方向DTにおいて側面から本体部41の中央に向けて内径が徐々に小さくなる曲面形状に形成されている。このためスクライビングホイール40が傾いて保持溝63に接触した状態でスクライビングホイール40が回転しても、貫通孔41の内周面41Cとピン軸50とが接触する位置がスクライビングホイール40の厚さ方向DTの中央位置寄りとなり、スクライビングホイール40と保持溝63との摩擦力を小さくすることができる。これにより、スクライビングホイールを円滑に回転させながら、スクライブラインの形成位置を安定させることができる。
<変形例>
次に、上記の実施の形態の変形例について説明する。本変形例では、保持溝63の内側面に垂直な方向に対する水平方向のピン軸50の傾斜角を変化させることに加え、保持溝63の内側面に垂直な方向に対する鉛直方向のピン軸50の傾斜角を変化させることとした。
保持溝63の内側面に垂直な方向に対してピン軸50を鉛直方向に傾けると、スクライブ動作時に付与される荷重により、スクライビングホイール40の貫通孔41がピン軸50に沿うように、スクライビングホイール40が鉛直方向に回転する。すなわち、図5(a)の状態において荷重によりスクライビングホイール40が基板15の表面Hに押しつけられると、図5(b)に示すようにスクライビングホイール40が傾く。この傾きによって、スクライビングホイール40の側面42a、42bが保持溝63の内側面65a、65bに押し付けられて、スクライビングホイール40の移動が規制される。
保持溝63の内側面に垂直な方向に対してピン軸50を水平方向のみならず垂直方向にも傾けると、水平方向にピン軸50を傾けたことによってスクライビングホイール40の移動が規制される効果と、鉛直方向にピン軸50を傾けたことによってスクライビングホイール40の移動が規制される効果とが複合される。これにより、スクライブ動作時におけるスクライビングホイール40の軸方向の移動が顕著に抑制され、スクライブラインの形成精度をより一層高めることができる。
ここで、ピン軸50を鉛直方向に傾けると、図5(b)に示すように、スクライビングホイール40が基板15の表面Hに対して傾いた状態で押しつけられることになる。このときの表面Hに対するスクライビングホイール40の傾斜角は、保持溝63の内側面65a、65bに垂直な方向に対するピン軸50の鉛直方向の傾斜角が大きくなるほど大きくなる。この場合、ホルダ溝内でのスクライビングホイールの移動が抑制されることにより、スクライブ時のスクライビングホイールの回転抵抗が大きくなる虞がある。しかし、スクライビングホイール40の貫通孔41の内周面が鼓形状であるため、下方内周面41CLとピン軸50とが接触する位置がスクライビングホイール40の厚さ方向DTの中央位置寄りとなり、スクライビングホイール40が保持溝63を押し付けるモーメントが小さくなる。したがって、スクライビングホイール40が傾いて保持溝63に接触した状態でスクライビングホイール40が回転しても、スクライビングホイール40と保持溝63との摩擦力を小さくすることができる。
<実施形態の効果>
本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
図4(a)〜(d)に示すように、保持溝63の内側面65a、65bに垂直な方向に対して、ピン軸50が水平方向に傾いているため、スクライビングホイール40が基板15の表面Hに押し付けられると、スクライビングホイール40の側面42a、42bがそれぞれ保持溝63の互いに対向する内側面65a、65bに押し付けられる。このため、スクライブラインを形成する際に、スクライビングホイール40がピン軸50に平行な方向に移動することが抑制される。よって、スクライブラインの形成位置を安定させることができる。
加えて、スクライビングホイールの貫通孔41が、厚さ方向DTにおいて第1側面42aおよび第2側面42bから本体部41の中央に向けて内径が徐々に小さくなる曲面形状に形成されているため、スクライビングホイール40がピン軸50に対して傾いても、貫通孔41の内周面41Cとピン軸50とが接触する位置がスクライビングホイール40の厚さ方向DTの中央位置寄りとなる。これによりスクライビングホイール40が保持溝63を押し付けるモーメントが小さくなって、スクライビングホイール40が傾いて保持溝63に接触した状態でスクライビングホイール40が回転しても、スクライビングホイール40と保持溝63との摩擦力を小さくすることができる。
また、ピン軸50は、保持溝63の内側面65a、65bに垂直な方向に対して、基板15の表面Hに垂直な方向(鉛直方向)にも傾いていることが好ましい。こうすると、より一層スクライブラインの形成位置を安定させることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も上記以外に種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施形態1では、刃先の稜線に溝が形成されていないスクライビングホイール40が用いられたが、稜線に一定間隔で溝が形成されたスクライビングホイールが用いられてもよい。
また、上記実施形態1では、保持溝63の内側面65a、65bに垂直な方向に対して、ピン孔を水平方向または垂直方向へと傾斜させることにより、ピン軸を傾斜させているが、ピン軸と保持溝とが相対的に傾斜していればよい。具体的には、ピン孔64a、64bが基板15の表面Hに平行な方向(XY平面に平行な方向)かつスクライブ方向Rに垂直な方向(YZ平面に平行な方向)に形成されており、保持溝63の内側面65a、65bが、ピン孔64a、64bに垂直な方向に対して、少なくとも基板15の表面Hに平行な方向(XY平面に平行な方向)に傾くように形成されていてもよい。保持溝63の内側面65a、65bが、ピン孔64a、64bに垂直な方向に対して、さらに基板15の表面Hに垂直な方向(YZ平面に平行な方向)にも傾くように形成されてもよい。
また、スクライブヘッド20の構成や、スクライブ装置1の構成も、適宜、変更可能である。図1には、基板15の片面のみにスクライブラインを形成するスクライブ装置が示されたが、本発明は、基板15の両面に並行してスクライブラインを形成するスクライブ装置にも適用可能である。
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
1 … スクライブ装置
15 … 基板
20 … スクライブヘッド
30 … ホルダユニット
40 … スクライビングホイール
41 … 貫通孔
42a、42b … 側面
50 … ピン軸
60 … ホルダ
63 … 保持溝
64a、64b … ピン孔
65a、65b … 内側面
H … 表面

Claims (4)

  1. 基板表面にスクライブラインを形成するスクライブ装置であって、
    スクライビングホイールを保持するホルダユニットと、
    前記基板表面に垂直な軸の周りに回転可能に前記ホルダユニットを保持するスクライブヘッドと、を備え、
    前記ホルダユニットは、
    前記スクライビングホイールが挿入される保持溝と、
    前記保持溝を跨ぐように形成されたピン孔と、
    前記保持溝に挿入された前記スクライビングホイールの貫通孔と前記ピン孔とに挿入されるピン軸と、を備え、
    前記スクライビングホイールが前記基板表面に押し付けられると、前記スクライビングホイールの両側面がそれぞれ前記保持溝の互いに対向する内側面に押し付けられるように、前記貫通孔と前記ピン軸との間のクリアランスと、前記保持溝の内側面と前記スクライビングホイールの側面と間のクリアランスと、前記保持溝の内側面に対する前記ピン軸の傾斜角が設定されており、
    前記スクライビングホイールの前記貫通孔を形成する内周面は、少なくとも前記スクライビングホイールの厚さ方向における前記貫通孔の中央部を形成する曲面を含み、
    前記曲面は、前記厚さ方向における前記貫通孔の中央部の径が前記厚さ方向における前記貫通孔の端部の径よりも小さくなるように形成されている、
    ことを特徴とするスクライブ装置。
  2. 請求項1に記載のスクライブ装置において、
    前記ピン孔は、前記保持溝の内側面に垂直な方向に対して、少なくとも前記基板表面に平行な方向に傾くように形成され、
    前記ピン孔および前記貫通孔に挿入された前記ピン軸は、前記保持溝の内側面に垂直な方向に対して、少なくとも前記基板表面に平行な方向に傾いている、
    ことを特徴とするスクライブ装置。
  3. 請求項1または2に記載のスクライブ装置において、
    前記ピン孔は、前記保持溝の内側面に垂直な方向に対して、前記基板表面に垂直な方向にも傾くように形成され、
    前記ピン孔および前記貫通孔に挿入された前記ピン軸は、前記保持溝の内側面に垂直な方向に対して、前記基板表面に垂直な方向にも傾いている、
    ことを特徴とするスクライブ装置。
  4. スクライブラインを形成するためのスクライビングホイールを保持するホルダユニットであって、
    前記スクライビングホイールが挿入される保持溝と、
    前記保持溝を跨ぐように形成されたピン孔と、
    前記保持溝に挿入された前記スクライビングホイールの貫通孔と前記ピン孔とに挿入されるピン軸と、を備え、
    前記スクライビングホイールが前記基板表面に押し付けられると、前記スクライビングホイールの両側面がそれぞれ前記保持溝の互いに対向する内側面に押し付けられるように、前記貫通孔と前記ピン軸との間のクリアランスと、前記保持溝の内側面と前記スクライビングホイールの側面と間のクリアランスと、前記保持溝の内側面に対する前記ピン軸の傾斜角が設定されており、
    前記スクライビングホイールの前記貫通孔を形成する内周面は、少なくとも前記スクライビングホイールの厚さ方向における前記貫通孔の中央部を形成する曲面を含み、
    前記曲面は、前記厚さ方向における前記貫通孔の中央部の径が前記厚さ方向における前記貫通孔の端部の径よりも小さくなるように形成されている、
    ことを特徴とするホルダユニット。
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