JP2019111821A - 加飾シート - Google Patents

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Abstract

【課題】成形後にも、凹凸形状による凹凸感、立体感、奥行き感などの高い質感と、優れた表面平滑性を有する加飾シートを提供する。【解決手段】少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有する加飾シートであって、前記透明樹脂フィルム層を含む層は、一方の面に前記透明樹脂フィルム層に至る凹部を有する凹凸形状を有し、前記凹凸形状の凹部の深さdと、前記透明樹脂フィルム層を含む層の、前記深さdの始点から前記凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足する領域を含んでおり、前記凹凸形状を有する面側を成形樹脂と積層して加飾樹脂成形品とするために用いられる、加飾シート。【選択図】なし

Description

本発明は、成形後にも、凹凸形状による高い質感と、優れた表面平滑性を有する加飾シート、及びこれを利用した加飾樹脂成形品に関する。
従来、車両内外装部品、建材内装材、家電筐体等には、樹脂成形品の表面に加飾シートを積層させた加飾樹脂成形品が使用されている。このような加飾樹脂成形品の製造においては、予め意匠が付与された加飾シートを、射出成形によって樹脂と一体化させる成形法などが用いられている。かかる成形法の代表的な例としては、加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形しておき、当該加飾シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を型内に射出することにより樹脂と加飾シートとを一体化するインサート成形法や、射出成形の際に金型内に挿入された加飾シートを、キャビティ内に射出注入された溶融樹脂と一体化させる射出成形同時加飾法が挙げられる。
近年、消費者の高級志向に伴って、加飾樹脂成形品には、質感が高く高級感のある意匠の表出が求められている。従来、加飾シートの表面または内部に凹凸形状を設け、当該凹凸形状が形成された面側に成形樹脂層を形成して加飾樹脂成形品とすることにより、内側に形成された凹凸形状に基づく高い立体感、奥行き感が感じられ、表面は平滑とする技術が報告されている。加飾シートに凹凸形状を設ける方法としては、透明樹脂フィルムの上に形成した意匠層の上から、透明樹脂フィルム側に向かってエンボス加工を施し、意匠層が透明樹脂フィルム側に突出した凹凸形状を形成する方法が知られている。
しかしながら、このような加飾シートでは、インサート成形法などにおける射出成形時、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)時の熱と圧力によって、加飾シートに形成されていた凹凸形状が、なだらかとなったり、小さくなったりすることにより、凹凸形状による高い質感が劣化するという問題がある。また、このような成形時の熱と圧力によって、エンボス加工によって形成された凹凸形状が表面に浮きだし、平滑性が損なわれる場合がある。
例えば、特許文献1に開示された加飾シートでは、意匠層に形成された凹部に樹脂を充填することにより、成形による質感の低下が抑制されている。
特開2010−82912号公報
特許文献1に開示された技術は、成形後にも凹凸形状による高い質感が保持されるという優れた利点を有する一方、樹脂層を設ける必要があるため、さらなる改善が望まれている。このような状況下、本発明は、成形後にも、凹凸形状による凹凸感、立体感、奥行き感などの高い質感と、優れた表面平滑性を有する加飾シートを提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品を提供することも目的とする。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有する加飾シートであって、前記透明樹脂フィルム層を含む層は、一方の面に前記透明樹脂フィルム層に至る凹部を有する凹凸形状を有し、前記凹凸形状の凹部の深さdと、前記透明樹脂フィルム層を含む層の、前記深さdの始点から前記凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足する領域を含んでいることによって、当該加飾シートが、凹凸形状を有する面側を成形樹脂と積層して加飾樹脂成形品とするために用いられた場合、成形後にも、凹凸形状による凹凸感、立体感、奥行き感などの高い質感と、優れた表面平滑性を奏することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有する加飾シートであって、
前記透明樹脂フィルム層を含む層は、一方の面に前記透明樹脂フィルム層に至る凹部を有する凹凸形状を有し、
前記凹凸形状の凹部の深さdと、前記透明樹脂フィルム層を含む層の、前記深さdの始点から前記凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足する領域を含んでおり、
前記凹凸形状を有する面側を成形樹脂と積層して加飾樹脂成形品とするために用いられる、加飾シート。
項2. 前記透明樹脂フィルム層を含む層の前記凹凸形状を有する面側に、支持フィルム層をさらに有する、項1に記載の加飾シート。
項3. 前記支持フィルム層が、前記凹凸形状の凹部を埋めるように積層されている、項2に記載の加飾シート。
項4. 前記透明樹脂フィルム層を含む層が、前記透明樹脂フィルム層及び意匠層を有しており、
前記凹凸形状の凹部は、前記意匠層側から前記透明樹脂フィルム層に至るように形成されている、項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
項5. 前記透明樹脂フィルム層が、アクリル系樹脂により形成されている、項1〜4のいずれかに記載の加飾シート。
項6. 少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有し、前記透明樹脂フィルム層を含む層が、一方の面に前記透明樹脂フィルム層に至る凹部を有する凹凸形状を有する加飾シートの製造方法であって、
少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有するシートを用意する工程と、
前記シートにエンボス加工を施して、前記凹凸形状の凹部の深さdと、前記透明樹脂フィルム層を含む層の、前記深さdの始点から前記凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足する凹凸形状を形成するエンボス工程と、
を備える、前記凹凸形状を有する面側を成形樹脂と積層して加飾樹脂成形品とするために用いられる加飾シートの製造方法。
項7. 少なくとも意匠層及び透明樹脂フィルム層を含む層を有し、前記透明樹脂フィルム層を含む層が、一方の面に前記透明樹脂フィルム層に至る凹部を有する凹凸形状を有する加飾シートの製造方法であって、
少なくとも意匠層及び透明樹脂フィルム層を含む層を有するシートを用意する工程と、
前記シートの前記意匠層の上から、エンボス加工を施して、前記凹凸形状の凹部の深さdと、前記意匠層及び前記透明樹脂フィルム層を含む層の、前記深さdの始点から前記凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足する凹凸形状を形成するエンボス工程と、
を備える、前記凹凸形状を有する面側を成形樹脂と積層して加飾樹脂成形品とするために用いられる加飾シートの製造方法。
項8. 少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有し、前記透明樹脂フィルム層を含む層が、一方の面に前記透明樹脂フィルム層に至る凹部を有する凹凸形状を有する加飾シートの製造方法であって、
少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有するシートを用意する工程と、
前記シートにエンボス加工を施して、凹凸形状を形成するエンボス工程と、
前記エンボス工程の後、前記透明樹脂フィルム層の前記凹凸形状が形成された側とは反対側の表面に鏡面加工を施して、前記エンボス工程で形成された前記凹凸形状の凹部の深さdと、前記透明樹脂フィルム層を含む層の、前記深さdの始点から前記凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足するように調整する工程と、
を備える、前記凹凸形状を有する面側を成形樹脂と積層して加飾樹脂成形品とするために用いられる加飾シートの製造方法。
項9. 少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有し、前記透明樹脂フィルム層を含む層が、一方の面に前記透明樹脂フィルム層に至る凹部を有する凹凸形状を有する加飾シートの製造方法であって、
少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有するシートを用意する工程と、
前記シートにエンボス加工を施して、凹凸形状を形成するエンボス工程と、
前記エンボス工程の後、前記シートの凹凸形状の凹部を埋めるようにして、支持体フィルムを積層して、前記エンボス工程で形成された前記凹凸形状の凹部の深さdと、前記透明樹脂フィルム層を含む層の、前記深さdの始点から前記凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足するように調整する工程と、
を備える、前記凹凸形状を有する面側を成形樹脂と積層して加飾樹脂成形品とするために用いられる加飾シートの製造方法。
項10. 少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有し、前記透明樹脂フィルム層を含む層が、一方の面に前記透明樹脂フィルム層に至る凹部を有する凹凸形状を有する加飾シートの製造方法であって、
少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有するシートを用意する工程と、
前記シートにエンボス加工を施して、凹凸形状を形成するエンボス工程と、
前記エンボス工程の後、前記シートの凹凸形状の凹部を埋めるようにして、支持体フィルムを積層する工程、及び前記透明樹脂フィルム層の前記凹凸形状が形成された側とは反対側の表面に鏡面加工を施す工程を行い、前記エンボス工程で形成された前記凹凸形状の凹部の深さdと、前記透明樹脂フィルム層を含む層の、前記深さdの始点から前記凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足するように調整する工程と、
を備える、前記凹凸形状を有する面側を成形樹脂と積層して加飾樹脂成形品とするために用いられる加飾シートの製造方法。
項11. 項1〜5のいずれかに記載の加飾シートを成形樹脂に積層してなる、加飾樹脂成形品。
本発明によれば、成形後にも、凹凸形状による凹凸感、立体感、奥行き感などの高い質感と、優れた表面平滑性を有する加飾シートを提供することができる。また、本発明によれば、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品を提供することもできる。
本発明の加飾シートの一形態の断面構造の模式図である。 本発明の加飾シートの一形態の断面構造の模式図である。 本発明の加飾樹脂成形品の一形態の断面構造の模式図である。
1.加飾シート
本発明の加飾シートは、少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有する加飾シートであって、透明樹脂フィルム層を含む層は、一方の面に透明樹脂フィルム層に至る凹部を有する凹凸形状を有し、凹凸形状の凹部の深さdと、透明樹脂フィルム層を含む層の、深さdの始点から凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足する領域を含んでおり、凹凸形状を有する面側を成形樹脂と積層して加飾樹脂成形品とするために用いられるものであることを特徴とする。本発明の加飾シートは、このような構成を有することにより、成形後にも、凹凸形状による凹凸感、立体感、奥行き感などの高い質感と、優れた表面平滑性を有する加飾シートを提供することができる。以下、本発明の加飾シートについて詳述する。
加飾シートの積層構造
図1に示されるように、本発明の加飾シートは、少なくとも透明樹脂フィルム層1を有する層(以下、「少なくとも透明樹脂フィルム層1を有する層」を「層A」ということがある)を有する。層Aは、一方の面に、前記透明樹脂フィルム層に至る凹部を有する凹凸形状を有している。本発明の加飾シートは、保形性を高めることなどを目的として、層Aの当該凹凸形状を有する面側に、必要に応じて支持フィルム3が積層されていてもよい。支持フィルム3は、当該凹凸形状の凹部を埋めるように積層されていてもよい。なお、後述の通り、当該凹部の全てが支持フィルム3によって埋められていてもよいし、凹部の一部が埋められており、支持フィルム3と層Aとの間に空隙が存在していてもよい。また、図2に示されるように、層Aは、加飾シートの意匠性を高めること等を目的として、当該凹凸形状を有する面側に意匠層2を有していてもよい。意匠層2を有する場合、層Aの凹凸形状の凹部は、意匠層2側から透明樹脂フィルム層1に至るように形成されている。また、意匠層2を有する場合、本発明の加飾シートは、透明樹脂フィルム層1、意匠層2、支持フィルム3の順に積層されていることが好ましい。なお、この構成では、透明樹脂フィルム層1及び意匠層2が、層Aに含まれている。
また、本発明の加飾シートにおいて、透明樹脂フィルム層1、支持フィルム3、または意匠層2と成形樹脂層4との密着性や、透明樹脂フィルム層1または意匠層2と支持フィルム3との密着性を高めることなどを目的として、透明樹脂フィルム層1、支持フィルム3、または意匠層2の裏面や、透明樹脂フィルム層1または意匠層2と支持フィルム3との間には、必要に応じて、接着層(図示しない)を設けてもよい。なお、本発明において、接着層が透明樹脂フィルム層1または意匠層2と支持フィルム3との間に設けられる場合には、層Aの凹凸形状が形成された後に、当該凹凸形状の上から接着層が形成される。このような場合には、接着層は、層Aに含まれない。
本発明の加飾シートは、上記の凹凸形状を有する層Aのみによって形成されていてもよいし、支持フィルム3、接着層の少なくとも1層をさらに有する積層体であってもよい。また、層Aは、透明樹脂フィルム層1の単層により形成されていてもよいし、前述の意匠層2、接着層の少なくとも1層をさらに有する積層体であってもよい。本発明の加飾シートの積層構造として、透明樹脂フィルム層/意匠層がこの順に積層された積層構造;透明樹脂フィルム層/支持フィルムがこの順に積層された積層構造;透明樹脂フィルム層/意匠層/支持フィルムがこの順に積層された積層構造;透明樹脂フィルム層/接着層がこの順に積層された積層構造;透明樹脂フィルム層/意匠層/接着層がこの順に積層された積層構造;透明樹脂フィルム層/支持フィルム/接着層がこの順に積層された積層構造;透明樹脂フィルム層/意匠層/支持フィルム/接着層がこの順に積層された積層構造;透明樹脂フィルム層/意匠層/接着層/支持フィルムがこの順に積層された積層構造などが挙げられる。図1に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、透明樹脂フィルム層/支持フィルムがこの順に積層された加飾シートの一形態の断面構造の模式図を示す。図2に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、透明樹脂フィルム層/意匠層/支持フィルムがこの順に積層された加飾シートの一形態の断面構造の模式図を示す。
加飾シートの凹凸形状
本発明の加飾シートは、上記の層Aを有している。当該層Aは、一方の面に透明樹脂フィルム層1に至る凹部を有する凹凸形状を有しており、当該凹凸形状の凹部の深さdと、透明樹脂フィルム層1を含む層Aの、当該深さdの始点から凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足する領域を含んでことを特徴としている。本発明の加飾シートにおいては、このような特定の関係を充足する凹凸形状が形成されていることにより、成形後にも、凹凸形状による凹凸感、立体感、奥行き感などの高い質感と、優れた表面平滑性を有する加飾シートを提供することができる。d/T×100の関係としては、より好ましくは5〜8%が挙げられる。なお、本発明において、厚みT及び凹部の深さdは、それぞれ、加飾シートの断面を光学顕微鏡で観察して測定した値である。また、凹部の深さdは、連続する10個の凹部の深さの平均値である。
また、本発明の加飾シートでは、深さdと厚みTとが上記の関係を充足していることにより、荷重や折り曲げによる割れの発生が抑制されるという効果も期待できる。透明樹脂フィルム層に凹凸形状が設けられた加飾シートでは、凹部において厚みが薄くなった透明樹脂フィルム層の柔軟性が損なわれることによって、凹部をきっかけに割れが生じやすくなる。より凹凸感を高めるために、凹部を深くした場合、このような傾向は顕著となる。その点、本発明の加飾シートでは、深さdと厚みTとが上記の関係を充足していることで、透明樹脂フィルム層が柔軟性を維持しており、加飾シートの割れの発生が抑制されつつも、優れた凹凸感を有しているものと考えられる。
少なくとも透明樹脂フィルム層1を含む層Aが、透明樹脂フィルム層1の単層により形成されている場合には、当該凹凸形状は、図1に示されるように、透明樹脂フィルム層1の一方側の面から他方側の面に向かって形成されている。また、厚みTは、透明樹脂フィルム層1の厚みに対応し、深さdは、透明樹脂フィルム層1に形成された凹部の深さdに対応する。なお、図1は、本発明の加飾シートが、層Aと支持フィルム3によって形成されている態様を示している。
また、少なくとも透明樹脂フィルム層1を含む層Aが、意匠層2を有する場合、図2に示されるように、層Aには透明樹脂フィルム層1と意匠層2とが積層されており、凹凸形状の凹部は、意匠層2側から透明樹脂フィルム層1に至るように形成されている。この場合、厚みTは、透明樹脂フィルム層1及び意匠層2の合計厚みに対応し、深さdは、意匠層2の凹凸形状が形成された面から透明樹脂フィルム層1に至るように形成された凹部の深さdに対応する。なお、図2は、本発明の加飾シートが、層Aと支持フィルム3によって形成されている態様を示している。
本発明の加飾シートにおいて、厚みTとしては、好ましくは30〜300μm程度、より好ましくは100〜200μm程度が挙げられる。また、深さdとしては、好ましくは5〜100μm程度、より好ましくは8〜60μm程度が挙げられる。
本発明の加飾シートにおいて、層Aの凹凸形状が形成された面における凹部の幅wとしては、特に制限されないが、成形後にも、凹凸形状による凹凸感、立体感、奥行き感などの高い質感と、優れた表面平滑性を奏する観点からは、好ましくは10〜100μm程度、より好ましくは20〜40μm程度が挙げられる。また、同様の観点から、当該凹凸形状の周期幅(ピッチ)としては、好ましくは10〜100μm程度、より好ましくは20〜40μm程度が挙げられる。凹凸形状の周期幅(ピッチ)が上記範囲内であることにより、優れた賦型性や意匠性が得られる。なお、本発明において、凹部の幅w及び凹凸形状の周期幅は、それぞれ、加飾シートの断面を光学顕微鏡で観察して測定した値である。また、これらの値は、それぞれ、連続する10個の凹部及び凹凸形状についての平均値である。
本発明の加飾シートにおいて、上記の凹凸形状は、加飾シートを表面(凹凸形状が形成された面とは反対側の面)から観察した際に、凹凸形状による高い質感を付与する少なくとも一部の領域に形成すればよい。すなわち、本発明の加飾シートにおいては、上記の関係を充足する凹凸形状が一部の領域に形成されていてもよいし、全領域に形成されていてもよい。
加飾シートを形成する各層の組成
[透明樹脂フィルム層1]
本発明の加飾シートにおいて、透明樹脂フィルム層1は、層Aに含まれており、通常、加飾樹脂成形品の最表面に位置するように設けられる層である。本発明の加飾シートの成形性を高める観点からは、透明樹脂フィルム層1の素材としては、好ましくは熱可塑性樹脂が挙げられる。また、本発明の加飾シートを用いた加飾樹脂成形品は、透明樹脂フィルム層1側から観察されることから、後述する凹凸形状による高い質感を表出させるために、透明樹脂フィルム層1は、透明性を有することが必要である。なお、ここでいう透明には、透明樹脂フィルム層1を透して当該凹凸形状が視認される程度の半透明も含む。
透明樹脂フィルム層1は、一方の面に凹凸形状を有している。後述の通り、当該凹凸形状は、エンボス加工により形成されている。本発明の加飾シートにおいて、層Aが、透明樹脂フィルム層1の単層により形成されている場合、層Aの凹凸形状が、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状に対応する。
透明樹脂フィルム層1に使用される熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体)、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はポリエチレンテレフタレート、成形性ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂、又はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂等が好ましい。これらの中でも、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂がより好ましく、アクリル系樹脂が特に好ましい。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル系樹脂を単体で又は2種以上混合して用いる。なお、本発明において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
また、ポリエステル樹脂としては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、非晶性ポリエステル等が使用できる。上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントに高結晶で高融点の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントにはガラス転移温度が−70℃以下の非晶性ポリエーテル等を使用したブロックポリマー等があり、該高結晶性で高融点の芳香族ポリエステルには、例えばポリブチレンテレフタレートが使用され、該非晶性ポリエーテルには、ポリテトラメチレングリコール等が使用される。また、前記非晶質ポリエステルとしては、代表的には、エチレングリコール−1,4−シクロヘキサンジメタノール−テレフタル酸共重合体がある。
透明樹脂フィルム層1としては、例えば上記のような樹脂からなる単層又は多層構成の樹脂フィルムが使用できる。また、透明樹脂フィルム層1中には、必要に応じて適宜、安定剤、可塑剤、着色剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、体質顔料等の各種添加剤を、物性調整のために添加してもよい。これらの添加剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、透明樹脂フィルム層1は、透明性が損なわれない範囲で着色されていてもよい。透明樹脂フィルム層1の着色には、例えば、後述する意匠層2で例示した公知の着色剤を使用することができる。
透明樹脂フィルム層1の厚み(多層の場合は総厚)としては、特に制限されないが、コスト面、加飾樹脂成形品に求められる性能、加飾シートの成形性等の観点から、好ましくは30〜300μm程度、より好ましくは100〜200μm程度が好ましい。なお、透明樹脂フィルム層1の厚みとは、凹凸形状の凹部が形成されていない部分における厚みをいう。
透明樹脂フィルム層1の表面、裏面、又は表裏両面には、透明樹脂フィルム層1に接する他層との密着性向上のために、必要に応じ適宜、コロナ放電処理、プラズマ処理、ウレタン樹脂等によるプライマー層形成等の公知の易接着処理を施してもよい。
[意匠層2]
本発明の加飾シートにおいて、意匠層2は、加飾シートに上記の凹凸形状による高い質感を付与するために、層Aに必要に応じて設けられる層である。層Aが意匠層2を有する場合、層Aにおいては、凹凸形状の凹部が意匠層2側から透明樹脂フィルム層1に至るように形成されている。すなわち、意匠層2は、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状に沿って積層される層である。前述の通り、加飾シートが意匠層2を有する場合、層Aの凹凸形状は、例えば、透明樹脂フィルム層1と意匠層2とを積層したシートの意匠層2の上からエンボス加工を施し、意匠層2の一方側の面から透明樹脂フィルム層1に凹部が至るように凹凸形状が形成される。例えば図2に示されるように、意匠層2は透明樹脂フィルム層1の凹凸形状に沿って積層されており、意匠層2は、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状の凹部の一部を埋めている。また、意匠層2の透明樹脂フィルム層1とは反対側の面は、凹部を有している。
意匠層2は、絵柄層及び/又はベタ印刷層により形成することができる。絵柄層の絵柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、皮絞模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、幾何学模様、文字、記号等が、用途に合わせて、1種又は2種以上組み合わせて使用される。
意匠層2は、意匠層形成用のインキを透明樹脂フィルム層1に塗布・印刷することにより形成することができる。意匠層形成用のインキは、バインダー樹脂、顔料や染料等の着色剤、これに適宜加える各種添加剤からなる。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。より選択される1種単独の樹脂、又は2種以上の混合樹脂が用いられる。バインダー樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、クロムバーミリオン、カドミウムレッド、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、ペリレンレッド等の有機顔料(染料も含む)、又はアルミニウム、真鍮等の鱗片状箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等が使用される。着色剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
意匠層2の具体例としては、メタリック色のベタ印刷層などが挙げられる。
意匠層2は、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の印刷法、ロールコート等の公知の塗工法等により、意匠層形成用のインキを透明樹脂フィルム層1の上に塗布することにより形成することができる。
また、意匠層2の厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは0.5〜20μm程度、より好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。
また、意匠層2は、金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。金属薄膜層の形成方法は、特に制限されず、例えば上記の金属を用いた、真空蒸着法などの蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。この場合の意匠層2(金属薄膜層)の厚みとしては、特に限定されないが、加飾シートの意匠性や成形性を高める観点からは、光学濃度(OD値)が0.6〜1.8程度、好ましくは0.8〜1.5程度が挙げられる。また、隣接する層との密着性を向上させるため、金属薄膜層の表面や裏面には公知の樹脂を用いたプライマー層を設けてもよい。なお、本発明において、意匠層2の厚みとは、凹凸形状の凹部が形成されていない部分における厚みをいう。
[支持フィルム3]
本発明の加飾シートにおいて、支持フィルム3は、支持部材としての役割を果たすために、必要に応じて、層Aの凹凸形状を有する面側に設けられる層である。支持フィルム3は、具体的には、透明樹脂フィルム層1または意匠層2の凹凸形状を有する側の面に積層される。後述のインサート成形法による加飾樹脂成形品の製造に用いる場合、本発明の加飾シートは支持フィルム3を有していることが好ましい。
支持フィルム3の素材としては、特に制限されないが、例えば、ABS樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂が好ましい。これらの樹脂の中でも、ABS樹脂及びポリプロピレン樹脂が特に好ましい。また、成形樹脂層4を構成する成形用樹脂がABS樹脂である場合はABS樹脂が好ましく、ポリプロピレン樹脂である場合はポリプロピレン樹脂が好ましい。
図1または図2に示されるように、本発明の加飾シートにおいて、支持フィルム3は、層Aの凹凸形状の凹部を埋めるように積層されていてもよい。具体的には、層Aが透明樹脂フィルム層1のみによって形成されている場合であれば、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状の凹部を埋めるように積層されていてもよい。また、加飾シートが意匠層2を有する場合には、意匠層2の凹凸形状の凹部を埋めるように積層されていてもよい。当該凹部を支持フィルム3で埋める方法としては、例えば、支持フィルム3を加熱により軟化させてから凹凸形状が形成された面の上に積層する方法が挙げられる。
支持フィルム3が、層Aの凹部を埋めている場合、当該凹部の全てが支持フィルム3によって埋められていてもよいし、凹部の一部が埋められており、支持フィルム3と層Aとの間に空隙が存在していてもよい。
支持フィルム3の厚みとしては、特に制限されず、例えば0.1〜0.5mm程度、より好ましくは0.2〜0.4mm程度が挙げられる。なお、支持フィルム3の厚みは、凹凸形状の凹部を埋めていない部分の厚みをいう。
[接着層]
本発明の加飾シートにおいては、透明樹脂フィルム層1、意匠層2、または支持フィルム3と成形樹脂層4との密着性や、透明樹脂フィルム層1または意匠層2と、支持フィルム3との密着性を高めることなどを目的として、透明樹脂フィルム層1、意匠層2、または支持フィルム3の裏面や、透明樹脂フィルム層1または意匠層2と、支持フィルム3との間に、必要に応じて、接着層を設けてもよい。
前述の通り、本発明において、接着層が透明樹脂フィルム層1または意匠層2と支持フィルム3との間に設けられる場合には、層Aの凹凸形状が形成された後に、当該凹凸形状の上から接着層が形成される。このような場合には、接着層は、層Aに含まれない。
接着層を構成する接着剤の素材としては、例えば、イソシアネートを硬化剤とする2液硬化型ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、及び(メタ)アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物などが挙げられる。接着層での(メタ)アクリル樹脂や塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、上述の意匠層2と同様なものを使用すればよい。支持フィルム3がABS樹脂又はポリオレフィン樹脂の場合は、接着層としてイソシアネートを硬化剤とする2液硬化型ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィンなどを用いることが好ましい。
また、接着層は、上記のような接着剤を、グラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工法により形成することができる。接着層の厚さとしては、特に制限されず、通常は1〜50μm程度である。
エンボス加工
本発明の加飾シートにおいて、前述の凹凸形状は、エンボス加工により形成することができる。具体的には、少なくとも透明樹脂フィルム層1を含む層Aを有するシートを用意し、当該シートにエンボス加工を施し、透明樹脂フィルム層1に凹部が至る凹凸形状を形成する。このエンボス加工により、層Aに形成された凹凸形状の凹部の深さdと、層Aの当該深さdの始点から当該凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足する凹凸形状を形成することができる。
エンボス加工を施す方法としては、通常、加熱加圧によるエンボス加工法が用いられる。加熱加圧によるエンボス加工法は、シートの表面を加熱軟化させ、エンボス版で加圧してエンボス版の凹凸模様を賦形し、冷却して固定化する方法である。エンボス加工に使用されるエンボス版の形状が、層Aに形成される凹凸形状に対応している。エンボス加工には、例えば、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機を用いることができる。
層Aが意匠層2を有する場合、加熱加圧によるエンボス加工法では、意匠層2上にエンボス加工を行う方法と、凹凸形状が付された透明樹脂フィルム層1の凹凸形状の上から、凹凸形状に沿うようにして意匠層2を塗工する方法がある。例えば、エンボス加工によって、エンボス版が意匠層2から透明樹脂フィルム層1まで到達することにより、透明樹脂フィルム層1に至る凹部を形成することができる。具体的には、少なくとも意匠層2及び透明樹脂フィルム層1を含む層を有するシートを用意し、意匠層2の上から、エンボス加工を施して、凹部の深さdと厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足する領域を形成する。
エンボス加工により設けられる凹部の深さd(図1及び図2を参照)としては、加飾シートの成形後に凹凸形状による高い質感を保持する観点から、好ましくは5〜100μm程度、より好ましくは8〜60μm程度が挙げられる。
エンボス加工における加熱温度としては、特に制限されないが、好ましくは180℃〜220℃程度が挙げられる。
また、エンボス加工の後に、凹部の深さdと厚みTの関係を調整してもよい。例えば、エンボス工程の後、透明樹脂フィルム層1の表面に鏡面加工を施して、エンボス工程で形成された凹部の深さdと、加飾シートの凹凸形状を有する面から透明樹脂フィルム層の表面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足するように調整することができる。なお、鏡面加工によるd/Tの調整は、上記エンボス加工では凹凸形状がd/T×100=5〜10%の関係を充足しない場合に行ってもよいし、エンボス加工で当該関係を充足する場合に行ってもよい。
透明樹脂フィルム層1の表面の鏡面加工は、鏡面ローラなどを用いて行うことができる。具体的には、エンボス加工を行った後のシートを、加熱した鏡面ローラとゴムローラとの間に通して熱圧を加えることで行うことができる。透明樹脂フィルム層1の表面には鏡面ローラを押しつけ、該シートの裏側からはゴムシートで押さえる。なお、鏡面ローラは、鉄芯等の表面にクロムメッキ等により表面を鏡面とした金属製のローラ等を使用でき、ゴムローラは鉄芯等の表面をシリコーンゴム等のゴムで被覆したローラを使用できる。鏡面ローラを押しつけることにより、エンボス加工によって形成された直後における上記の厚みTと深さdとを変化させて、d/T×100=5〜10%の関係を充足するように調整することができる。なお、エンボス加工によってd/T×100=5〜10%の関係を充足している場合には、d/Tの関係を実質的に変化させないようにして、鏡面加工を行ってもよい。
鏡面加工によって、透明樹脂フィルム層1の表側には優れた鏡面性を付与できる。なお、該鏡面性としては、好ましくは、JIS B0601(1996年)の算術平均粗さRaで1μm以下、より好ましくは0.1μm以下とするのがよい。すなわち、鏡面加工された面は、その表面が上記算術平均粗さRaで好ましくは1μm以下、より好ましくは0.1μm以下となった面である。
また、本発明においては、エンボス工程の後、シートの凹凸形状の凹部を埋めるようにして、支持体フィルム3を積層することによって、エンボス工程で形成された凹部の深さdと、前記加飾シートの凹凸形状を有する面から透明樹脂フィルム層1の表面までの厚みTとを、d/T×100=5〜10%の関係を充足するように調整することもできる。凹部を支持フィルム3で埋めるようにして積層する方法としては、前述の通りである。なお、支持体フィルム3を積層することによるd/Tの調整は、上記エンボス加工では凹凸形状がd/T×100=5〜10%の関係を充足しない場合に行ってもよいし、エンボス加工で当該関係を充足する場合に行ってもよい。また、エンボス加工によってd/T×100=5〜10%の関係を充足している場合には、d/Tの関係を実質的に変化させないようにして、支持体フィルム3を積層してもよい。
さらに、本発明においては、エンボス加工の後、上記の鏡面加工及び支持体フィルム3の積層の両者を行うことによって、d/T×100=5〜10%の関係を充足するように調整することもできる。具体的には、エンボス工程の後、上記のシートの凹凸形状の凹部を埋めるようにして、支持体フィルムを積層する工程、及び透明樹脂フィルム層1の前記凹凸形状が形成された側とは反対側の表面に鏡面加工を施す工程を行い、エンボス工程で形成された凹凸形状の凹部の深さdと、透明樹脂フィルム層1を含む層Aの、前記深さdの始点から凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足するように調整することができる。鏡面加工及び支持体フィルム3の積層の両者を行う場合、その順序としては、特に制限されないが、鏡面加工によって形成された鏡面を保護する観点からは、支持体フィルム3を積層した後に、鏡面加工を施すことが好ましい。
2.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートと成形樹脂とを一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、成形樹脂層4と、少なくとも透明樹脂フィルム層1を含む層Aとがこの順に積層された積層体からなり(図3を参照)、当該層Aが、透明樹脂フィルム層1に至る凹部を有する凹凸形状を一方の面に有していることを特徴とする。図3に示されるように、本発明の加飾樹脂成形品では、必要に応じて、透明樹脂フィルム層1と成形樹脂層4との間に、意匠層2、支持フィルム3などがさらに設けられていてもよい。また、前述の接着層が設けられていてもよい。
本発明の加飾樹脂成形品は、例えば、本発明の加飾シートを用いて、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。これらの射出成形法の中でも、好ましくはインサート成形法及び射出成形同時加飾法が挙げられる。また、本発明の加飾樹脂成形品は、真空圧着法等の、予め用意された立体的な樹脂成形体(成形樹脂層)上に、本発明の加飾シートを貼着する加飾方法によっても作製することができる。
インサート成形法では、まず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する一体化工程。
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、通常100〜250℃程度、好ましくは130〜200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度、好ましくは220〜280℃程度とすることができる。
また、射出成形同時加飾法では、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本発明の加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、加飾シートの透明樹脂フィルム層1とは反対側の表面が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する予備成形工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂を射出、充填して固化させることにより樹脂成形体を形成し、樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる一体化工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す取出工程。
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、通常70〜130℃程度とすることができる。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度、好ましくは220〜280℃程度とすることができる。
真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本発明の加飾シート及び樹脂成形体を、加飾シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ加飾シートの透明樹脂フィルム層1とは反対側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を加飾シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、加飾シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、必要に応じて加飾シートの余分な部分をトリミングすることにより、本発明の加飾樹脂成形品を得ることができる。
真空圧着法においては、上記の成形体を加飾シートに押し当てる工程の前に、加飾シートを軟化させて成形性を高めるため、加飾シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、通常60〜200℃程度とすることができる。
また、インサート成形法、真空圧着法などの成形方法において、トリミングを行う場合、凹凸形状を有する従来の加飾シートではトリミングを行う際に割れが生じやすかったが、上述のように、d/Tが上記特定の関係にある本発明の加飾シートは、荷重や折り曲げによる割れの発生が抑制されているので、本発明の加飾シートをこれらの成形方法に用いることにより、トリミングによる加飾シートの割れを効果的に抑制することができる。
本発明の加飾樹脂成形品において、成形樹脂層は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の加飾樹脂成形品は、凹凸形状による、凹凸感、立体感、奥行き感などの高い質感を有しており、さらに高い表面平滑性を有しているので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ポリメタクリル酸メチルを主成分とする厚さ150μmの無着色透明なアクリル樹脂シートからなる透明樹脂フィルム層の裏面に、ポリブチルメタクリレート/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体からなる意匠層(厚さ1μm)を形成した。次に、意匠層上に版深が30μmのエンボス版を用いてエンボス加工を行い、凹凸形状を形成した。次に、凹凸形状を形成した面側に厚さ300μmの支持フィルム(黒色ABS樹脂)を貼付した。次に、得られた加飾シートの断面を顕微鏡で観察し、意匠層の凹凸形状を有する面から透明樹脂フィルム層の表面までの厚み(透明樹脂フィルム層と意匠層の合計厚み)T及び凹部の深さdを測定した。結果を表1に示す。なお、凹部の深さdは、顕微鏡で観察した連続する10個の凹部の深さの平均値である。また、上記で作製した加飾シートを真空成形機(布施真空社製「VPF−T1」)に配し、ヒーターにて表面温度が160℃になるまで加熱し、真空成形を行った。真空成形品を取り出し、トリミングした後、インサート成形により、支持フィルム層側と成形樹脂とを一体化して加飾樹脂成形品を得た。成形樹脂としては、ポリカーボネートとABS樹脂の混合物(商品名:サイコロイIP1000BK GEプラスチック製)を用いた。
(実施例2)
ポリメタクリル酸メチルを主成分とする厚さ125μmの無着色透明なアクリル樹脂シートからなる透明樹脂フィルム層を用いたこと、及び版深が20μmのエンボス版を用いてエンボス加工を行ったこと以外は、実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を製造した。得られた加飾シートの断面を顕微鏡で観察し、意匠層の凹凸形状を有する面から透明樹脂フィルム層の表面までの厚み(透明樹脂フィルム層と意匠層の合計厚み)T及び凹部の深さdを、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
ポリメタクリル酸メチルを主成分とする厚さ125μmの無着色透明なアクリル樹脂シートからなる透明樹脂フィルム層を用いたこと、及び版深が40μmのエンボス版を用いてエンボス加工を行ったこと以外は、実施例1と同様にして支持フィルム積層工程まで行い、次に、透明樹脂フィルム側の表面に鏡面加工を施して、加飾シート及び加飾樹脂成形品を製造した。得られた加飾シートの断面を顕微鏡で観察し、意匠層の凹凸形状を有する面から透明樹脂フィルム層の表面までの厚み(透明樹脂フィルム層と意匠層の合計厚み)T及び凹部の深さdを、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
ポリメタクリル酸メチルを主成分とする厚さ125μmの無着色透明なアクリル樹脂シートからなる透明樹脂フィルム層を用いたこと、及び版深が40μmのエンボス版を用いてエンボス加工を行ったこと以外は、実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を製造した。得られた加飾シートの断面を顕微鏡で観察し、意匠層の凹凸形状を有する面から透明樹脂フィルム層の表面までの厚み(透明樹脂フィルム層と意匠層の合計厚み)T及び凹部の深さdを、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
ポリメタクリル酸メチルを主成分とする厚さ125μmの無着色透明なアクリル樹脂シートからなる透明樹脂フィルム層を用いたこと、及び版深が10μmのエンボス版を用いてエンボス加工を行ったこと以外は、実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を製造した。得られた加飾シートの断面を顕微鏡で観察し、意匠層の凹凸形状を有する面から透明樹脂フィルム層の表面までの厚み(透明樹脂フィルム層と意匠層の合計厚み)T及び凹部の深さdを、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(表面平滑性の評価)
上記で得られた加飾シート及び加飾樹脂成形品それぞれを試験サンプルとし、白色光の蛍光灯下の水平面に置いた。次に、試験サンプルから約50cm離れ、水平面に対して、45°、60°、90°(真上)の方向から目視で観察し、表面の平滑性を評価した。また、表面を手で触り、表面平滑性を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:全ての角度で表面の凹凸は見られず、手で触っても表面凹凸は感じられなかった。
○:90°では表面の凹凸は見られなかったが、45°及び60°では凹凸が見られた。手で触ると表面凹凸は感じられない。
△:全ての角度で表面の凹凸が見られたが、手で触っても表面凹凸を感じなかった。
×:全ての角度で表面の凹凸が見られ、手で触っても表面凹凸を感じた。
(立体意匠効果)
上記で得られた加飾シート及び加飾樹脂成形品それぞれを試験サンプルとし、白色光の蛍光灯下の水平面に置いた。次に、試験サンプルから約50cm離れ、水平面に対して、45°、60°、90°(真上)の方向から目視で観察し、立体意匠効果を以下の評価基準に従い評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:全ての角度で立体的な意匠を感じられ、エンボス版形状のままシャープな形状となっていた。
○:全ての角度で立体的な意匠を感じられたが、エンボス版形状に比べて僅かにシャープではなかった。
△:90°では立体感は僅かに低かったが、45°及び60°では奥行きのある意匠感を得た。
×:全ての角度で平坦で立体的意匠は全く得られなかった。
(加飾シートの割れ)
上記で得られた加飾シートを30mm×30mmの大きさに切断し、試験サンプルとした。次に、5kg荷重において、R=1mmまたはR=0mm(ピン角)の形状面を透明樹脂フィルム表面に押し込み、加飾シート表面の割れを評価した。さらに、各試験サンプルについて、手で急激に折り曲げ、加飾シート表面の割れを評価した。割れの評価基準は以下の通りである。
◎:R=0で加飾シート表面にヒビ割れは観察されず、手の急激な折り曲げでも割れない。
○:R=0で加飾シート表面にヒビ割れは観察されないが、手の急激な折り曲げでは割れる。
△:R=1で加飾シート表面にヒビ割れは観察されないが、手の急激な折り曲げでは割れる。
×:R=1で加飾シート表面にヒビ割れが観察され、手の急激な折り曲げで割れる。
表1に示される結果から明らかな通り、凹部の深さdと、当該深さdの始点から凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の範囲内にある場合には、加飾シート及び加飾樹脂成形品の何れにおいても、立体意匠効果及び表面平滑性が高く、さらには、加飾シートの割れも効果的に抑制されることが分かる。
1 透明樹脂フィルム層
2 意匠層
3 支持フィルム
4 成形樹脂層
A 少なくとも透明樹脂フィルム層を有する層

Claims (1)

  1. 少なくとも透明樹脂フィルム層を含む層を有する加飾シートであって、
    前記透明樹脂フィルム層を含む層は、一方の面に前記透明樹脂フィルム層に至る凹部を有する凹凸形状を有し、
    前記凹凸形状の凹部の深さdと、前記透明樹脂フィルム層を含む層の、前記深さdの始点から前記凹凸形状を有する面とは反対側の面までの厚みTとが、d/T×100=5〜10%の関係を充足する領域を含んでおり、
    前記凹凸形状を有する面側を成形樹脂と積層して加飾樹脂成形品とするために用いられる、加飾シート。
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