JP4357804B2 - 成形加飾用シート及び射出成形同時加飾方法 - Google Patents

成形加飾用シート及び射出成形同時加飾方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加飾成形に使用される成形加飾用シートに関する。特に、真空成形後、更には射出成形後に於いても、エンボス加工による凹凸模様が残り、立体的な意匠表現が可能となる成形加飾用シートと射出成形同時加飾方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂成形物の表面に成形加飾用シートを積層一体化することで加飾した加飾成形品が各種用途で使用されている。この様な加飾成形品を得る代表的な方法として、樹脂成形物の成形と同時に成形加飾用シートを積層一体化する方法として射出成形同時加飾方法(特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等参照)がある。
【0003】
また、射出成形同時加飾方法において、加飾成形品の表面に例えば木目導管溝等の立体感を有する凹凸模様を設ける場合には、例えば、次の(1)〜(4)の様にしていた。
(1)射出成形型のキャビティ面に賦形用の凹凸模様を設けておいて、射出成形後の加飾成形品の表面(成形加飾用シート表面)に凹凸模様を賦形する。
(2)成形加飾用シートの基材シートにアクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂の樹脂シートを用いて、該基材シートに熱圧を加えるエンボス加工を施して凹凸模様を賦形しておいた成形加飾用シートを使用する。
(3)スクリーン印刷等による印刷で凹凸感を表現する。
【0004】
(4)紫外線硬化性樹脂等の硬化性樹脂のインキによる盛上げ印刷によって、成形加飾用シートに凹凸模様を付与しておく。例えば、電離放射線硬化性樹脂インキを、ロール凹版(賦形版、成形版胴等とも呼ぶ)の少なくとも凹部に充填させると共に該インキに樹脂シートを接触させ、該インキが樹脂シートとロール凹版との間に保持されている状態で電離放射線を照射して該インキを硬化させた後、樹脂シートをロール凹版から剥離する事で、樹脂シート上に該インキの硬化物からなる凹凸模様を付与する(特開昭57−87318号公報、特公昭57−22755号公報、特公昭63−50066号公報、特開平7−32476号公報等参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)〜(4)の如き方法では、次の様な欠点があった。すなわち、(1)の成形品の射出成形時にエンボスを施す方法では、エンボス面が成形品表面に限定されてしまう。従って、内部に凹凸模様を付与できない。しかも、射出成形型のキャビティ面を賦形型として凹凸面にしておく必要があることから、凹凸模様の意匠を変更するときは、成形品の形状が同じであっても、高価な射出成形型ごと交換しなければならず、凹凸模様を自由に変えることが出来なかった。
次に、(2)の基材シートに熱可塑性樹脂シートを用いる場合では、成形品の立体面を加飾する為に、射出成形工程に先立ち真空成形工程にて成形加飾用シートを予備成形する時の熱によって、エンボスされた凹凸模様の凹凸形状が戻ってしまうという問題があった。
次に、(3)のスクリーン印刷等の印刷手法によって凹凸模様を賦形する場合では、インキの転移量に限度があり且つそれが少ない為に、エンボスによる凹凸模様ほど立体感が得られない。
【0006】
そして、(4)のロール凹版等を使用した紫外線硬化性樹脂等による盛上げ印刷による場合では、上記(3)の印刷手法に比べて、より立体感に優れた凹凸模様を賦形できる。しかし、一般的に樹脂シート側から紫外線を照射して凹凸模様を硬化形成する関係上、樹脂シートに透明シートを使用しないと凹凸模様を付与できない。また、成形加飾用シートに通常の印刷による装飾層を形成する場合、印刷よりも前に凹凸模様を付与すると、その凹凸模様によって印刷時に印刷抜けという印刷不良が発生し易かった。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、成形加飾用シートを用いる射出成形同時加飾方法に於いて、真空成形による予備成形、更には射出成形後に於いても、シート表面や内面に設けたエンボス加工による凹凸模様が消失しない様にして、立体的な意匠表現を可能にすることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の成形加飾用シートでは、真空成形工程と射出成形工程を経て、樹脂成形物の成形と同時にその表面に一体化して該樹脂成形品を加飾成形品とする為の成形加飾用シートにおいて、該成形加飾用シートは少なくとも第一層及び第二層の2層からなり、加飾成形品の状態で外側に位置させる第一層はフッ素系樹脂による結晶性樹脂からなり、他方の第二層は熱可塑性樹脂からなり、第一層の表側面、裏側面、或いはこれら両面にエンボス加工による凹凸模様が形成されてなり、第二層の裏側面に装飾層が設けられている構成とした。
【0009】
この様な構成とすることで、外側の第一層の樹脂が結晶性樹脂である為に、これを用いた射出成形同時加飾では、第一層の樹脂の融点に着目して、凹凸模様のエンボス加工は該融点以上の温度で行い、シートの真空成形は該融点以下の温度で行う様な成形加飾用シートの使用方法を採用することができる。この為、成形加飾用シート作製の際のエンボス加工時は、第一層の結晶性樹脂はその結晶構造が溶けて凹凸模様が賦形されるが、エンボス加工後、温度が低下すると該樹脂は再結晶化して凹凸模様の形状が固定され、しかも射出成形同時加飾にて真空成形時にシートを再度加熱するときは前記融点以下の温度とすれば、結晶構造は維持されるので凹凸模様の形状は保ち易くなる。従って、エンボス加工による凹凸模様がシートの真空成形工程後、更には射出成形工程後であっても、その凹凸模様の形状が消失しない様にして、立体的な意匠表現ができる成形加飾用シートとなる。
【0010】
さらに、上記加飾成形用シートは、第二層の裏側面に装飾層を有する構成とした。この様な構成とすることにより、その装飾層によってより高意匠にできる。
【0011】
また、本発明の加飾成形用シートは、上記構成に於いて更に、第一層が少なくともフッ化ビニリデン樹脂を含み、第二層が少なくともアクリル系樹脂を含む構成とした。この様な構成とすることにより、上記した本発明による効果を確実に得ることが出来る。
また、本発明の加飾成形用シートは、上記いずれかの構成に於いて更に、第一層及び第二層の両樹脂が、2層共押出しによる溶融積層或いは第一層又は第二層のいずれか一方の層に他方の層の樹脂を溶融押出塗工することにより得られた第一層及び第二層である構成とした。
【0012】
また、本発明の加飾成形用シートは、上記いずれかの構成に於いて更に、第二層の裏側に熱可塑性樹脂シートからなる第三層が積層されてなる構成とした。
この様な構成とすることにより、用途、成形性、意匠性等の点で、第一層及び第二層のみでは加飾成形用シート全体としてのシート総厚が不十分である場合に、この第三層で該シート総厚を賄うことができる。また、第二層自体が、加飾成形用シートの被着体である樹脂成形物との密着性が不十分である場合に、該樹脂成形物との密着性の良い樹脂で第三層を構成して、密着性の向上もできる。
【0013】
本発明の射出成形同時加飾方法は、成形加飾用シートの真空成形工程と、射出成形工程とを経て、樹脂成形物の成形と同時にその表面に成形加飾用シートを一体化して樹脂成形品を加飾成形品とする射出成形同時加飾方法において、(A)成形加飾用シートとして、少なくとも第一層及び第二層の2層からなり、且つ加飾成形品の状態で外側に位置させる第一層はフッ素系樹脂による結晶性樹脂からなり、他方の第二層は熱可塑性樹脂からなる積層シートに対して、該積層シートの前記第二層側の面に装飾層を形成して、而して第一層の樹脂の融点以上の温度でエンボス加工を施して、第一層の表側面、裏側面、或いはこれら両面に凹凸模様を形成して、成形加飾用シートを用意するシート作製工程、(B)上記成形加飾用シートを上記第一層の樹脂の融点以下の温度で真空成形する真空成形工程、(C)真空成形された上記成形加飾用シートが射出成形型内に装填された状態で射出成形型内に樹脂を射出して、樹脂成形物の表面に成形加飾用シートを積層一体化する射出成形工程、の少なくとも各工程をこの順に行う射出成形同時加飾方法とした。
また、本発明の射出成形同時加飾方法は、成形加飾用シートの真空成形工程と、射出成形工程とを経て、樹脂成形物の成形と同時にその表面に成形加飾用シートを一体化して樹脂成形品を加飾成形品とする射出成形同時加飾方法において、(A)成形加飾用シートとして、少なくとも第一層及び第二層の2層からなり、且つ加飾成形品の状態で外側に位置させる第一層はフッ素系樹脂による結晶性樹脂からなり、他方の第二層は熱可塑性樹脂からなる積層シートに対して、該積層シートの前記第二層側の面に装飾層を形成して、而して第一層の樹脂の融点以上の温度でエンボス加工を施して、第一層の表側面、裏側面、或いはこれら両面に凹凸模様を形成して、成形加飾用シートを用意するシート作製工程、(B)上記成形加飾用シートを上記第一層の樹脂の融点以下の温度、且つ第二層の樹脂のガラス転移温度以上の温度で真空成形する真空成形工程、(C)真空成形された上記成形加飾用シートが射出成形型内に装填された状態で射出成形型内に樹脂を射出して、樹脂成形物の表面に成形加飾用シートを積層一体化する射出成形工程、の少なくとも各工程をこの順に行う射出成形同時加飾方法とした。
【0014】
この様な構成の射出成形同時加飾方法とすることで、凹凸模様のエンボス加工時は第一層の結晶性樹脂はその結晶構造が溶けて凹凸模様が賦形されるが、エンボス加工後、温度が低下すると該樹脂は再結晶化して凹凸模様の形状が固定され、しかも真空成形時のシート加熱は該融点以下の温度であるので、再結晶化した結晶構造は維持される、従って、凹凸模様の形状は保ち易くなる。この為、エンボス加工による凹凸模様がシートの真空成形工程後、更には射出成形工程後であっても、その凹凸模様の形状が消失しない様にして、立体的な意匠表現ができる射出成形同時加飾方法となる。
【0015】
また、本発明の射出成形同時加飾方法は、上記加飾方法の構成に於いて、更に第一層が少なくともフッ化ビニリデン樹脂を含み、第二層が少なくともアクリル系樹脂を含む構成とした。
この様な構成とすることにより、上記した本発明による効果を確実に得ることが出来る。
また、本発明の射出成形同時加飾方法は、上記いずれかの加飾方法に於いて、更に第一層及び第二層の両樹脂が、2層共押出しによる溶融積層或いは第一層又は第二層のいずれか一方の層に他方の層の樹脂を溶融押出塗工することにより得られた第一層及び第二層である構成とした。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
概要
図1の断面図で、本発明による成形加飾用シートの形態例として2形態を例示する。図1(A)の成形加飾用シートSは、表側から順に、フッ素系樹脂による結晶性樹脂からなる第一層1、熱可塑性樹脂からなる第二層2、印刷等によって絵柄表現等をした装飾層5が積層され、第一層1の表側面に熱圧によるエンボス加工によって凹凸模様4が、シート表面に賦形された構成のシートである。具体的には、例えば、上記第一層1の結晶性樹脂はフッ化ビニリデン樹脂であり、上記第二層の熱可塑性樹脂はアクリル系樹脂である。上記凹凸模様4を賦形する為のエンボス加工は、第一層の結晶性樹脂の融点以上の温度で行うのが、凹凸模様の形状維持の点から好ましい。
【0018】
一方、図1(B)に示す成形加飾用シートSの方は、図1(A)で例示した成形加飾用シートSに対して、更に装飾層5の裏側に、熱可塑性樹脂シートからなる第三層3が積層された構成である。第三層3は、成形加飾用シートとしての総厚確保等の為に設ける。また、被着体である樹脂成形物との密着性向上の為に、必要に応じ適宜、図2で例示する成形加飾用シートSの如く、最裏面層として熱可塑性樹脂等からなる裏面接着剤層6を設けても良い。なお、図2に例示する成形加飾用シートSは、図1(A)の構成に対して裏面接着剤層6を追加した構成例である。
【0019】
そして、上記の様な成形加飾用シートを用いて射出成形同時加飾する際は、成形加飾用シートの予備成形としての真空成形は、シートの加熱温度を第一層の結晶性樹脂の融点以下の温度で行う。なお、更に好ましくは、該シート加熱温度は、第二層の熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上の温度で行う。これによって、シート予備成形の為の真空成形時の成形性を確保すると共に、真空成形後の凹凸模様の形状維持もできる。
後は、通常の射出成形同時加飾同様に、真空成形によって予備成形された成形加飾用シートが、射出成形型内に装填された状態で、型締め後の射出成形型内に樹脂を射出して、樹脂成形物の表面に成形加飾用シートを積層一体化する射出成形工程を経れば、図3の断面図で例示する様に、樹脂成形物7の表面に成形加飾用シートSが積層され、該シートが有する凹凸模様4による立体的意匠を有する所望の加飾成形品Pが得られることになる。
【0020】
成形加飾用シート:
以下、成形加飾用シートの各層から順に説明する。
【0021】
〔第一層〕
第一層1は、成形加飾用シートが樹脂成形物に積層された後の加飾成形品の状態において、外側に位置させる層であり、且つ凹凸模様の賦形対象層である。本発明ではこの第一層にフッ素系樹脂による結晶性樹脂を用いる。第一層に結晶性樹脂を用いることによって、その融点以上の温度で該凹凸模様のエンボス加工を行い、該融点以下の温度で成形加飾用シートの真空成形を行えば、真空成形後も凹凸模様の形状を維持できる様になる。これに対して、凹凸模様賦形層としての第一層に非結晶性樹脂を用いた場合には、その融点以下の温度でシートの真空成形を行った場合でも、樹脂が軟化し易いので、凹凸模様の形状維持性能が悪い。
【0022】
ところで、一般的に射出成形同時加飾では、成形加飾用シートを予備成形する為の真空成形(本発明の説明ではこれに真空圧空成形も包含する)において、シートの加熱温度は、真空成形型を射出成形型と兼用して射出成形型上で行うインライン予備成形の場合には、100〜120℃程度であり、真空成形を射出成形型とは別型で、つまり射出成形機の外で予め行うオフライン予備成形の場合には140〜170℃である。
従って、これらの観点から第一層の樹脂を選定するならば、第一層の結晶性樹脂としては、その融点がシート加熱温度以上となる温度のものを選定すれば良い。よって、第一層の結晶性樹脂の融点が、インライン予備成形に限定するならば120℃以上、好ましくは130℃以上、オフライン予備成形も含めて考えるならば150℃以上、乃至は170℃以上となる樹脂を選定することが好ましい。
【0023】
上記の様な結晶性樹脂は、基本的には、用途、それに応じたシート成形形態(例えばインライン予備成形とオフライン予備成形)等に応じて、適宜選択すれば良い。この様な結晶性樹脂としては、例えばフッ素系樹脂等は好適な樹脂である。フッ素系樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン樹脂が挙げられ、フッ化ビニリデン樹脂では融点160℃以上の樹脂として利用できる。また、フッ化ビニリデン樹脂以外の結晶性樹脂となるフッ素系樹脂としては、ポリ4フッ化エチレン等が挙げられる。フッ化ビニリデン樹脂は、フッ素系樹脂のなかでもコスト面、高すぎ且つ低すぎず適度な融点等の観点から優れている。また、フッ素系樹脂以外の結晶性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
【0024】
なお、第一層の厚みは、目的とする凹凸模様の深さに応じたものとすれば良い。なお、成形加飾用シート全体としての真空成形性は、第二層等の他層で主体的に担う事が可能である。従って、通常は、第一層の厚みは第二層の厚みよりも薄くする。第一層の厚みの具体例を挙げれば10〜50μm程度である。
【0025】
〔第二層〕
第二層2には、真空成形性が良い樹脂として熱可塑性樹脂を用いる。第一層の融点以下の温度で成形加飾用シートが真空成形できる事が必要であり、この為には、第二層に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂等を用いれば良い。なかでも、アクリル系樹脂は、シート加熱時の成形適性温度範囲を広くできる傾向があり好ましい。また、アクリル系樹脂は耐候性や透明性に優れている点でも好ましい。なお、第二層に使用する熱可塑性樹脂をそのガラス転移温度で捉えれば、真空成形性の点で、該ガラス転移温度は真空成形時のシート加熱温度以下となる樹脂が好ましい。一例を挙げれば、アクリル系樹脂では、ガラス転移温度100℃前後を呈する樹脂等が利用できる。
【0026】
なお、アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等の樹脂〔但し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味〕を単体又は2種以上の混合物で用いる。
【0027】
本発明による成形加飾用シートは、凹凸模様を有する他、層的には前記第一層とこの第二層との積層シートのみでも良いが、通常は更に装飾層等を設けて、より高意匠とする。第一層と第二層との積層は、これら各層を樹脂シートとして用意し、両樹脂シートを接着剤を介して積層しても良いが、生産性、コスト等の点で、より好ましくは、両樹脂の2層共押出しによる溶融積層、或いは一方は樹脂シートとして用意し、これに溶融押出塗工するのが良い。2層共押出し或いは溶融押出塗工では、樹脂シートとしては不可能な薄い樹脂層でも形成できる利点がある。なかでも、2層共押出しは積層シートの層間密着性の点でより好ましい。
【0028】
前記した第一層が主として凹凸模様の凹凸形状確保を図る層であるのに対して、こちらの第二層の方は、成形加飾用シートとしての真空成形性を確保する為の層である。また、通常は、第一層よりも主体的に成形加飾用シートとしての総厚担う層とする。従って、第二層には第一層よりも真空成形性が良い樹脂を用いる事になる。
これらの点で、第二層の厚みは、通常は、第一層の厚みよりも厚くする。例えば、第二層の厚みの具体例を挙げれば50〜200μm程度である。なお、第一層の厚み及び第二層との厚み関係は、これに限定されるものでは無い。
【0029】
〔凹凸模様〕
なお、第一層に形成する凹凸模様4は、要求される意匠表現に応じたものとすれば良く、特に限定されるものではない。例えば、木目導管溝、木目年輪模様、砂目、梨地、ヘアライン、万線状溝、花崗岩の劈開面の凹凸模様、布目の表面テクスチュア、皮絞、文字、幾何学模様等である。
なお、凹凸模様4は、本発明では熱圧を利用するいわゆるエンボス加工によって行う。エンボス加工は、従来公知の熱プレス方式の枚葉又は輪転式エンボス機を用いて、加熱軟化させた樹脂シートの表面にエンボス版を押圧して形成すれば良い。
【0030】
また、凹凸模様を賦形する為のエンボス加工の対象とする樹脂シートとしては、第一層単体としてその樹脂シートを用意できるならば、該樹脂シートに対して行う事も可能である。しかし、その後、第二層との積層時の熱等の影響を考えれば、賦形対象の樹脂シートとしては、第一層と第二層とを積層した後の積層シートの方がより好ましい。具体的には、多層(2層)共押出し法で第一層と第二層とを積層した樹脂シートである。
【0031】
ところで、凹凸模様の賦形対象面は、第一層の表側面、裏側面、或いはこれら両面、いずれでも良い。賦形対称面は、表現する立体意匠による。但し、凹凸模様の賦形対象面は、一般的には第一層の表側面が多い。従って、この場合、通常エンボス加工は、上記積層シートに対して第一層側から行う。一方、賦形対象面が第一層の裏側面の場合には、上記積層シートでは第二層側から行うと良い。第二層側からエンボス加工を施しても、第二層及び第一層の各層の厚みと、エンボス加工の深さに関係するが、第一層の裏側(つまり第一層と第二層との境界面)に凹凸模様を賦形することが出来る。なお、この場合、第二層の裏側面にも凹凸模様ができる。また、第一層の表側面と裏側面の両方に凹凸模様を設けるには、表裏両側からそれぞれエンボス加工を施せば良い。
第一層表側面の凹凸模様では、成形品表面に立体的凹凸感を有する加飾成形品が得られ、第一層裏側面の凹凸模様では、成形加飾用シートのシート層内での内部の立体的凹凸感を有する成形品が得られる。これら両方の凹凸模様を有する場合では、表面及び内部の両方の立体感が得られる。
【0032】
凹凸模様を賦形する為のエンボス加工の温度、つまり賦形対象とする樹脂シートの加熱温度は、好ましくは、第一層の結晶性樹脂の融点以上の温度とすると良い。それは、前述した如く、該融点以上の温度でエンボス加工することで、第一層の結晶性樹脂はその結晶構造が溶けて凹凸模様が確実に賦形され、且つ、エンボス加工後に於いては、加熱された第一層の温度が低下するにつれて第一層の該樹脂は再結晶化して凹凸模様の形状が固定されるからである。なお、この様なエンボス加工の温度は、樹脂にもよるが通常160〜190℃程度である。
【0033】
〔装飾層〕
次に、装飾層5は絵柄表現等の為に設ける層であり、装飾層が無くても凹凸模様により相応の意匠性等は付与できるが、より意匠性等を向上させる為に通常は設けられる。また、装飾層は耐久性や塗装感等の点で第二層の裏側面に設けるのが好ましい。この様な装飾層は、生産性等の点で第一層と第二層とを多層共押出で形成する場合でも、第一層と第二層とを積層した積層シートに対してその裏側面に形成すれば良い。
装飾層の形成は、グラビア印刷、活版印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷法で形成すれば良い。また、全面ベタ柄の場合は、ロールコート等の公知の塗工法でも良い。なお、使用するインキ(或いは塗液)も、第一層の樹脂に応じたものを適宜選択すれば良い。
【0034】
装飾層の形成に使用するインキ(或いは塗液)としては、接着性等を考慮して公知のものの中から適宜選択使用すれば良い。例えば、インキ(或いは塗液)のバインダーの樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等を用いる。また、インキ(或いは塗液)に含有させる着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、カドミウムレッド、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、イソインドリノンイエロー、キナクリドンレッド、ペリレンレッド等の有機顔料、アルミニウム、真鍮等の金属の粉末又は鱗片等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母の粉末又は鱗片等の真珠光沢(パール)顔料、或いは染料等が用いられる。
【0035】
なお、装飾層の絵柄は、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、布目模様、皮絞模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、幾何学図形、文字、記号、或いは全面ベタ等である。
【0036】
なお、装飾層5としては、例えばアルミニウム、クロム等を蒸着して全面或いは部分的に形成した金属薄膜層等でも良い。
また、装飾層としては、木目等の柄意匠の表現以外に、磁性体層、導電性層等の機能性層等でも良い。つまり加飾乃至は装飾とは、この様な機能性付与も包含する。
【0037】
〔第三層〕
第三層3は、主とし成形加飾用シートとしての総厚の調整(確保)等の為に適宜設ける。また、第三層3は、被着体との密着性向上を図る為に設けることもできる。この様な第三層3は、第二層の裏側に熱可塑性樹脂シートを積層することで形成できる。なお、第二層の裏側面に装飾層を設けておく場合には、通常は、該装飾層を裏面側からも保護できる点でも、第三層は装飾層の裏側に設ける。ただ、総厚の確保の点では、第二層の裏側に第三層を設け、第三層の裏側に装飾層を設ける構成でも目的は達成できる。
【0038】
上記の如き第三層3に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン等の各種ポリオレフィン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、或いは例えばポリオレフィン系樹脂とABS樹脂との混合樹脂等と異種樹脂同士の混合樹脂を、被着体の材料等に応じて適宜採用すれば良い。
【0039】
第三層を積層するには、予め熱可塑性樹脂シートとして用意した樹脂シートを、ウレタン樹脂等による公知の接着剤で、ドライラミネーション法等の公知の積層法で貼り合せれば良い。具体的には、例えば、第一層と第二層との積層シートの裏面に装飾層を印刷した印刷シートの該印刷面に対して、接着剤で熱可塑性樹脂シートを貼り合せる。なお、第三層の熱可塑性樹脂シートは、該熱可塑性樹脂の溶融押出塗工によって成膜と同時に第二層の裏側に積層しても良い。
【0040】
なお、第三層の厚みは、総厚確保や被着体との密着性向上等、その目的にもよるが、総厚確保を図る点では通常は20〜500μm程度である。
【0041】
〔裏面接着剤層〕
なお、成形加飾用シートの裏面側は、必要に応じ適宜、被着体である樹脂成形物との接着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー塗工等の易接着処理の他、これら易接着処理を処理後或いは処理せずに、裏面接着剤層6を設けても良い。
裏面接着剤層6としては、例えば感熱型の接着剤として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の公知の樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂では、例えば、アクリル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等の1種又は2種以上の混合物が用いられる。また、熱硬化性樹脂では、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が用いられる。
裏面接着剤層は、これら樹脂による接着剤を、グラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工法により形成する。また、裏面接着剤層の厚さは特に制限は無いが、通常は1〜20μm程度である。
【0042】
射出成形同時加飾方法
本発明による射出成形同時加飾方法では、いわゆる射出成形同時加飾方法に対して、それに用いる成形加飾用シートのシート作製工程(シート材料及び方法)を特定の工程とし、且つ、該シートの予備成形としての真空形成工程も特定の工程とした加飾方法である。以下、本射出成形同時加飾方法について、シート作製工程、真空成形工程、射出成形工程の順に説明する。
【0043】
〔シート作製工程〕
シート作製工程は、前述した如き成形加飾用シートを作製して用意する工程である。従って、本発明によるシート作製工程では、成形加飾用シートの層及びその樹脂組成と融点、また凹凸模様のエンボス加工温度等を特定したシート作製工程となる。つまり、シート作製工程では、成形加飾用シートとして、少なくとも第一層及び第二層の2層からなり、且つ加飾成形品の状態で外側に位置させる第一層はフッ素系樹脂による結晶性樹脂からなり、他方の第二層は熱可塑性樹脂からなる積層シートに対して、第一層の樹脂の融点以上の温度でエンボス加工を施して、第一層の表側面、裏側面、或いはこれら両面に凹凸模様を形成して、成形加飾用シートを用意する。なお、該成形加飾用シートの好適な具体例を挙げれば、前述した如く、第一層が少なくともフッ化ビニリデン樹脂を含み、第二層が少なくともアクリル系樹脂を含む構成である。
【0044】
〔真空成形工程〕
本発明では、以上の如き成形加飾用シートを用いて、シート予備成形有りの形態で射出成形同時加飾する際に、該シート予備成形の為の真空成形工程にて、シート加熱温度は、成形加飾用シートの第一層の結晶性樹脂が呈する融点以下の温度で行う。更に好ましくは、該シート加熱温度は、第一層の樹脂よりも成形性の良い樹脂としての熱可塑性樹脂(第二層)のガラス転移温度以上の温度とする。これによって、シート予備成形の為の真空成形時の成形性を確保すると共に、真空成形後の凹凸模様の形状維持もできる様になる。
【0045】
成形加飾用シートを予備成形する為の真空成形工程(真空圧空成形も包含する)は、大別して、真空成形型を射出成形型と兼用して該射出成形型上で真空成形を行うインライン予備成形の形態と、真空成形型は射出成形型とは別型で、つまり射出成形機の外で真空成形を行うオフライン予備成形の形態のどちらでも良い。なお、オフライン予備成形は、インライン予備成形に比べて、一般的に、加飾成形品サイズが大きい場合、シート厚みが厚い場合等に適している。
【0046】
そして、真空成形時のシート加熱温度は、通常は、インライン予備成形では100〜120℃程度、オフライン予備成形では140〜170℃程度である。従って、例えば、第一層の結晶性樹脂に融点170℃程度のフッ化ビニリデン樹脂を用い、また第二層の熱可塑性樹脂にガラス転移温度100℃程度のアクリル系樹脂を用いた構成等の成形加飾用シートでは、通常のインライン予備成形或いはオフライン予備形成、どちらの形態にも適用できる。なお、上記予備成形温度は、一般的な温度を示すものであり、成形加飾用シートに用いた樹脂に合わせて、上記範囲外の温度で行っても良い。
【0047】
〔射出成形工程〕
射出成形工程では、上記の如き真空成形工程によって予備成形された成形加飾用シートを、射出成形型内に装填された状態で、雌雄一対の射出成形型を型締めした後、射出成形型のキャビティ内に樹脂を射出し充填して固化させて、樹脂成形物の表面に成形加飾用シートを積層一体化する工程である。そして、樹脂固化後、型開きして、目的とする加飾成形品を取出す。該加飾成形品には、前述如き成形加飾用シートによって、立体的な凹凸模様を付与されている。
【0048】
なお、射出成形型内に射出する射出樹脂は、通常は加熱溶融させて流動状態となっており、その温度は200℃以上に及ぶことがあるが、この様な高温の射出樹脂であっても、成形加飾用シートが有する凹凸模様の凹凸形状は維持することができる。つまり、射出成形時の射出樹脂の熱は、真空成形時の熱程には影響しない。例えば、射出樹脂がABS樹脂の場合、成形加飾用シートは、射出樹脂温度は200〜240℃程度、また射出成形型の型温度は60℃程度の温度条件下に晒されるが、そのときの熱が成形加飾用シートに加わるのは一瞬であり、真空成形工程に凹凸模様が耐えられれば、基本的には加飾成形品上では凹凸模様の凹凸形状は残すことができるからである。
【0049】
〔射出樹脂〕
なお、樹脂成形物となる射出樹脂としては、基本的には特に制限はなく公知の樹脂で良い。製品の要求物性やコスト等に応じて選定すれば良い。熱可塑性樹脂であれば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂等である。また、硬化性樹脂であれば、2液硬化型の樹脂、例えば、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の未硬化樹脂液等である。熱可塑性樹脂は加熱熔融して流動状態で射出し、また硬化性樹脂は(その未硬化物を)室温又は適宜加熱して流動状態で射出する。
なお、射出樹脂は、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用しても良い。着色剤には、前述基材シートで述べた如き公知の着色剤を使用すれば良い。また、射出樹脂には、必要に応じ適宜、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機物粉末、ガラス繊維等の充填剤、安定剤、滑剤等の公知の各種添加剤を含有させる。
【0050】
〔成形品形状〕
なお、加飾成形品の形状は、シート積層面は凹凸面等の非平面、或いは平面の立体物である。また、加飾成形品の形状は、板状(平板、曲面板等)、柱状、三次元立体物等と任意である。
【0051】
〔その他〕
ここで、図4の概念図を用いて、いわゆる射出成形同時加飾方法について、概説しておく。なお、ここで説明する形態は、射出成形型上で真空成形工程を行うインライン予備成形の形態である。
【0052】
先ず、図4(A)の如く、射出成形型としては、射出ノズルと連通する湯道(ランナー)及び湯口(ゲート)を有する型Maと、キャビティ面に吸引孔41を有し成形加飾用シートの真空成形工程用の予備成形型を兼用する型Mbの一対の成形型を用いる。これらの型は鉄等の金属、或いはセラミックスからなる。型開き状態に於いて両型Ma、Mb間に成形加飾用シートSを供給し、型Mbに成形加飾用シートSを平面視枠状のシートクランプ42で押圧する等して固定する。この際、成形加飾用シートの第二層側の裏側は、図面右側の射出樹脂側となる様にする事はもちろんである。次いで、図4(B)の如く、型外部(図面では型上方)の退避位置で退避させておいたヒータ43を、適宜移動させて両型間に挿入し、ヒータ43で成形加飾用シートを加熱軟化させる。加熱は例えば非接触の輻射加熱とするが、接触による伝導加熱でも良い。そして、吸引孔から吸引して真空成形して、成形加飾用シートを型Mbのキャビティ面に沿わせ予備成形する。次いで、ヒータを両型間から退避させ、図4(C)の如く両型を型締めし、両型で形成されるキャビティに加熱熔融状態等の流動状態の樹脂を充填する。そして、樹脂が冷却等によって固化した後、型開きして成形物を取り出す。
成形加飾用シートの不要部分は適宜トリミングすれば、図3の如く、樹脂成形物7に成形加飾用シートSが積層され加飾された加飾成形品Pが得られるという方法である。
そして、本発明では、この成形加飾用シートによって凹凸模様4が加飾成形品に付与され、立体的な意匠表現が可能となる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳述する。
【0054】
〔実施例1〕
図2の如き構成の成形加飾用シートSを次の様にして作製した。
先ず、結晶性樹脂のフッ素系樹脂としてフッ化ビニリデン樹脂(融点Tm160℃)と、熱可塑性樹脂としてアクリル系樹脂(ガラス転移温度Tg100℃)とを、2層共押出しして、厚さ8μmの第一層1と厚さ72μmの第二層2とが積層した透明な積層シートを作製した。
【0055】
次に、上記積層シートの第二層側の面に、アクリル系樹脂をバインダー樹脂とするインキによるグラビア印刷で装飾層5を形成し、更に、アクリル系樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合樹脂からなるインキを2回刷りして裏面接着剤層6を形成して印刷シートとした。なお、装飾層5としては、抽象柄の柄層、シルバーの全ベタ層、着色ベタ層を順次形成した。
【0056】
次に、上記印刷シートの印刷面とは反対側の面、つまりフッ化ビニリデン樹脂からなる第一層の面に対して、熱圧によるエンボス加工を施して、抽象柄を表現した凹凸模様4を形成して、図2の断面図で例示した様な成形加飾用シートSを得た。
なお、エンボス加工時のシート加熱温度は最大180℃で、エンボス版の深さは50μm、形成された凹凸模様4の深さは、40μmとなった。
【0057】
次に、上記で得た成形加飾用シートSを、射出成形型を真空成形型と兼用するインライン予備成形の形態で射出成形同時加飾をすべく、射出成形同時加飾装置に装着して、真空成形型とする射出成形型上で、シート加熱温度120℃の条件で、成形加飾用シートをヒータによる非接触加熱で加熱軟化させた後、射出成形型側から真空吸引して、成形加飾用シートを該射出成形型の型形状に真空成形した。
【0058】
真空成形後の成形加飾用シートについて、凹凸模様の状況を確認したところ、その凹凸形状は残っていた。
この後、射出成形型を型締めして、ABS樹脂を射出成形した。なお、射出成形型の型温度は60℃、射出樹脂温度は240℃の条件で行った。
【0059】
型開き後、加飾成形品を取出し、該成形品に於ける凹凸模様の残存状況を確認したところ、加飾成形品の表面には凹凸模様が残り、その立体的凹凸感により高意匠の成形品となっていた。
【0060】
〔実施例2〕
実施例1に於いて、印刷シートに対するエンボス加工を、非印刷面側からでは無く印刷面側から行い、凹凸模様を第一層の裏側面にシート内部の凹凸模様として形成した成形加飾用シートを作製した。そして、この成形加飾用シートを用いて、実施例1と同様の射出成形同時加飾を行い加飾成形品を作製した。
【0061】
その結果、真空成形後の成形加飾用シートには、凹凸模様の凹凸形状が残っていた。また、加飾成形品に於いては、成形品表面は射出樹脂の圧力と熱により射出成形型のキャビティ面を写して平坦であったが、シート内部に凹凸模様が残っている為に、表面から見ると加飾成形品内部に凹凸があり、この立体的凹凸感による高意匠の成形品が得られた。
【0062】
〔比較例1〕
実施例1に於いて、第一層と第二層とを積層した積層シートの代わりに、アクリル系樹脂(ガラス転移温度Tg105℃)からなる単層で透明な厚さ80μmの樹脂シートを用いた。この他は、実施例1と同様にして、成形加飾用シートを作製した。そして、実施例1と同様の射出成形同時加飾方法によって、加飾成形品の作製を試みた。
【0063】
その結果、真空成形後の成形加飾用シートには、凹凸模様の凹凸形状が消失していた。この為、次の射出成形工程は中止した。
【0064】
〔比較例2〕
実施例1に於いて、第一層と第二層とを積層した積層シートの代わりに、アクリル系樹脂(ガラス転移温度Tg105℃)からなる単層で透明な厚さ80μmのアクリル系樹脂シートを用いた。また、印刷シートに対するエンボス加工は、印刷面側から行い、アクリル系樹脂シートの裏側面に凹凸模様を形成した。この他は、実施例1と同様にして、成形加飾用シートを作製した。そして、実施例1と同様の射出成形同時加飾方法によって加飾成形品の作製を試みた。
【0065】
その結果、真空成形後の成形加飾用シートには、凹凸模様の凹凸形状が消失していた。この為、次の射出成形工程は中止した。
【0066】
【発明の効果】
(1) 本発明の成形加飾用シートによれば、エンボス加工による凹凸模様が真空成形工程後、更には射出成形工程後であっても、その凹凸模様の形状が消失しない様にして、立体的な意匠表現ができる加飾成形品が得られる。
(2)更に、表側の第一層にフッ化ビニリデン樹脂を用い、その裏側の第二層にアクリル系樹脂を用いれば、上記効果をより確実に得ることが出来る。
(3)また、第二層の裏側面に装飾層を設ければ、より高意匠にできる。
(4)また、第二層の裏側に熱可塑性樹脂シートからなる第三層も積層すれば、シート総厚確保や、被着体との密着性向上等が図れる。
【0067】
(5)本発明の射出成形同時加飾方法によれぱ、使用する成形加飾用シート上でのエンボス加工による凹凸模様の凹凸形状が、真空成形工程等で消失しない様にして、立体的な意匠表現ができる加飾成形品が得られる。
(6)更に、使用する成形加飾用シートとして、表側の第一層にフッ化ビニリデン樹脂を用い、その裏側の第二層にアクリル系樹脂を用いたシートを用いれば、上記効果をより確実に得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による成形加飾用シートをその2形態で例示する断面図。
【図2】本発明による成形加飾用シートの別の1形態を例示する断面図。
【図3】本発明による加飾成形品の一例を示す断面図。
【図4】本発明で利用する射出成形同時加飾方法をその一形態で説明する概念図。
【符号の説明】
1 第一層
2 第二層
3 第三層
4 凹凸模様
5 装飾層
6 裏面接着剤層
7 樹脂成形物
41 吸引孔
42 シートクランプ
43 ヒータ
Ma 射出成形型(雄型)
Mb 射出成形型(雌型)
P 加飾成形品
S 成形加飾用シート

Claims (8)

  1. 真空成形工程と射出成形工程を経て、樹脂成形物の成形と同時にその表面に一体化して該樹脂成形品を加飾成形品とする為の成形加飾用シートにおいて、
    該成形加飾用シートは少なくとも第一層及び第二層の2層からなり、加飾成形品の状態で外側に位置させる第一層はフッ素系樹脂による結晶性樹脂からなり、他方の第二層は熱可塑性樹脂からなり、第一層の表側面、裏側面、或いはこれら両面にエンボス加工による凹凸模様が形成されてなり、第二層の裏側面に装飾層が設けられている、成形加飾用シート。
  2. 第一層が少なくともフッ化ビニリデン樹脂を含み、第二層が少なくともアクリル系樹脂を含む、請求項1記載の成形加飾用シート。
  3. 前記第一層及び第二層の両樹脂が、2層共押出しによる溶融積層或いは前記第一層又は第二層のいずれか一方の層に他方の層の樹脂を溶融押出塗工することにより得られた第一層及び第二層である請求項1又は2記載の成形加飾用シート。
  4. 第二層の裏側に、更に熱可塑性樹脂シートからなる第三層が積層されてなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形加飾用シート。
  5. 成形加飾用シートの真空成形工程と、射出成形工程とを経て、樹脂成形物の成形と同時にその表面に成形加飾用シートを一体化して樹脂成形物を加飾成形品とする射出成形同時加飾方法において、
    (A)成形加飾用シートとして、少なくとも第一層及び第二層の2層からなり、且つ加飾成形品の状態で外側に位置させる第一層はフッ素系樹脂による結晶性樹脂からなり、他方の第二層は熱可塑性樹脂からなる積層シートに対して、該積層シートの前記第二層側の面に装飾層を形成して、而して第一層の樹脂の融点以上の温度でエンボス加工を施して、第一層の表側面、裏側面、或いはこれら両面に凹凸模様を形成して、成形加飾用シートを用意するシート作製工程、
    (B)上記成形加飾用シートを上記第一層の樹脂の融点以下の温度で真空成形する真空成形工程、
    (C)真空成形された上記成形加飾用シートが射出成形型内に装填された状態で射出成形型内に樹脂を射出して、樹脂成形物の表面に成形加飾用シートを積層一体化する射出成形工程、
    の少なくとも各工程をこの順に行う、射出成形同時加飾方法。
  6. 成形加飾用シートの真空成形工程と、射出成形工程とを経て、樹脂成形物の成形と同時にその表面に成形加飾用シートを一体化して樹脂成形物を加飾成形品とする射出成形同時加飾方法において、
    (A)成形加飾用シートとして、少なくとも第一層及び第二層の2層からなり、且つ加飾成形品の状態で外側に位置させる第一層はフッ素系樹脂による結晶性樹脂からなり、他方の第二層は熱可塑性樹脂からなる積層シートに対して、該積層シートの前記第二層側の面に装飾層を形成して、而して第一層の樹脂の融点以上の温度でエンボス加工を施して、第一層の表側面、裏側面、或いはこれら両面に凹凸模様を形成して、成形加飾用シートを用意するシート作製工程、
    (B)上記成形加飾用シートを上記第一層の樹脂の融点以下の温度、且つ第二層の樹脂のガラス転移温度以上の温度で真空成形する真空成形工程、
    (C)真空成形された上記成形加飾用シートが射出成形型内に装填された状態で射出成形型内に樹脂を射出して、樹脂成形物の表面に成形加飾用シートを積層一体化する射出成形工程、
    の少なくとも各工程をこの順に行う、射出成形同時加飾方法。
  7. 第一層が少なくともフッ化ビニリデン樹脂を含み、第二層が少なくともアクリル系樹脂を含む、請求項5又は6記載の射出成形同時加飾方法。
  8. 前記第一層及び第二層の両樹脂が、2層共押出しによる溶融積層或いは前記第一層又は第二層のいずれか一方の層に他方の層の樹脂を溶融押出塗工することにより得られた第一層及び第二層である請求項5〜7のいずれか1項に記載の射出成形同時加飾方法。
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