図1は、実施の形態に係る車両システム1の構成を示すブロック図である。車両システム1は、車載装置10と、サーバ装置12とを備える。車両システム1は、複数の車載装置10を含むことができる。
車載装置10は、自動車である車両に搭載されている。車載装置10は、通信部20と、表示制御装置22と、地図データ記憶部24と、センサ26と、GPS受信部28と、投影装置30とを備える。表示制御装置22は、取得部40と、決定部42と、制御部44とを備える。
地図データ記憶部24は、地図データと地物の情報を記憶している。地物は、例えば、壁、建物、看板などを含む。地物の情報は、地物の位置、地物の幅、地物の高さなどの情報を含む。地物の位置は、緯度と経度を含む。
センサ26は、自車両の前方の壁、建物、看板、駐車車両などの地物を検出する。センサ26は、検出した地物の情報を表示制御装置22に出力する。この情報は、例えば、自車両から地物までの距離、地物の幅、地物の高さなどの情報を含む。センサ26は、ミリ波レーダ、レーザレーダ、単眼カメラ、ステレオカメラなどを含む。
GPS受信部28は、GPS衛星から信号を受信し、自車両の現在位置を導出する。現在位置は、緯度と経度を含む。GPS受信部28は、自車両の現在位置情報を表示制御装置22に出力する。表示制御装置22は、自車両の現在位置情報を通信部20に出力する。
通信部20は、サーバ装置12と無線通信を行う。無線通信の規格は特に限定されないが、例えば、3G(第3世代移動通信システム)、4G(第4世代移動通信システム)または5G(第5世代移動通信システム)を含む。通信部20は、図示しない基地局を介してサーバ装置12と無線通信を行ってもよい。通信部20は、表示制御装置22から出力された自車両の現在位置情報を、サーバ装置12に送信する。現在位置情報には、送信元になる車両を識別するための情報が添付される。
サーバ装置12は、例えばデータセンターに設置され、見通しの悪い複数の交差点などに設置された複数のカメラから送信された画像情報を定期的に受信する。このカメラは、後述するように、見通しの悪い交差点などに向かう車両の運転者から視認できない地物の奥側の画像を撮像する。サーバ装置12は、カメラの画像情報に基づいて、見通しの悪い交差点などにおける注意喚起すべき対象物の情報を定期的に導出する。対象物の情報は、対象物の位置情報と、対象物の種類の情報とを含む。対象物の種類は、歩行者、自転車、自動二輪車、車両などを含む。対象物の位置は、緯度と経度を含む。
サーバ装置12は、画像情報に加えて、または、画像情報に代えて、歩行者や自転車の運転者などが所持するスマートフォンなどの携帯端末の位置情報を受信してもよい。この場合にも、サーバ装置12は、受信した携帯端末の位置情報に基づいて対象物の情報を定期的に導出する。カメラの画像情報や携帯端末の位置情報に基づく対象物の情報の導出には、周知の技術を用いることができる。
サーバ装置12は、車載装置10から受信した現在位置情報にもとづいて、自車両の周辺の注意喚起すべき対象物の情報を、定期的に車載装置10に送信する。この対象物の情報には、送信先の車両を特定するための情報が添付される。
通信部20は、サーバ装置12から、自車両の現在位置の周辺の注意喚起すべき対象物の情報を定期的に受信する。通信部20は、受信した対象物の情報を表示制御装置22に出力する。
表示制御装置22は、自車両の周辺の地物の情報と、自車両の位置情報と、自車両の周辺の注意喚起すべき対象物の情報とにもとづいて、投影装置30に制御信号を出力し、投影装置30を制御する。表示制御装置22の処理の詳細は後述する。
投影装置30は、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)装置である。投影装置30は、自車両の車室内に搭載され、表示制御装置22から出力された制御信号にもとづいて、自車両のフロントガラスに各種情報の画像を投影する。この画像は、虚像である。フロントガラスに投影された虚像は、フロントガラスでは結像せず、運転者には車外に表示されているように認識される。よって、虚像は、車両前方の実像に重なるように表示される。そのため、運転者は、車両の走行中に視線をほとんど動かすことなく虚像の情報を得ることができる。投影装置30には、周知の構成を採用することができる。
表示制御装置22について説明する。取得部40は、地図データ記憶部24とセンサ26から自車両の周辺の地物の情報を定期的に取得する。取得部40は、GPS受信部28から自車両の現在位置情報を定期的に取得する。取得部40は、通信部20から、自車両の周辺の注意喚起すべき対象物の情報を定期的に取得する。取得部40は、取得した情報を決定部42に出力する。
決定部42は、自車両の運転者から、運転者に注意喚起すべき対象物までの距離感を提供するために用いる、対象物以外の地物である目標地物を決定する。決定部42は、地物の情報と、自車両の現在位置情報と、対象物の情報と、予め定められた運転者のアイポイントとにもとづいて、目標地物を決定する。具体的には、決定部42は、自車両の運転者から目視可能な地物であり、自車両の運転者から見て、自車両の走行路側に移動している対象物と重なるように位置する地物を目標地物として決定する。目標地物は、対象物の手前側または奥側において対象物と重なる。決定部42は、自車両の運転者から目視可能な地物であり、自車両の走行路側に移動している対象物を通る運転者の視線方向に存在する地物を目標地物として決定するということもできる。運転者のアイポイントは、例えば、自車両の車室内の予め設定された位置に決められている。運転者のアイポイントは、運転者の顔を撮影する図示しない車室内カメラの撮影画像に基づいて検出されてもよい。
図2は、図1の車載装置10を搭載した車両14が交差点100に向かう状況を示す図である。交差点100では、第1の道路R1と第2の道路R2とが交差している。車両14は、第1の道路R1を交差点100に向かって走行している。車両14の運転者から見て、交差点100の左側には壁110が存在する。歩行者120は、壁110に沿って、第2の道路R2を交差点100に向かって移動している。壁110は歩行者120の身長より高いため、車両14の運転者は、歩行者120を視認できない。つまり、交差点100は見通しが悪い。
図示は省略するが、第2の道路R2の壁110に隠れる範囲を撮影可能な位置にカメラが設置されていることを想定する。このカメラは、歩行者120の画像情報をサーバ装置12に送信する。前述のように、サーバ装置12は、カメラの画像情報に基づいて、対象物である歩行者120の位置情報と、対象物の種類の情報とを導出し、これらの情報を車載装置10に送信する。
図2の例では、決定部42は、車両14の運転者から目視可能な壁110であり、車両14の運転者から見て、車両14の走行路側に移動している歩行者120の手前側において歩行者120に重なる壁110を目標地物として決定する。
制御部44は、決定部42により目標地物が決定された場合に、対象物の存在を対象物までの距離感を運転者に認識できる態様にて示すための画像を、運転者から見て目標地物と、その一部が重なり、他の部分が重ならないように車両のフロントガラスに投影装置30を用いて投影する。つまり、制御部44は、対象物の存在を示す画像を、運転者から見て地物からはみ出すように投影装置30に投影させる。対象物の存在を示す画像のうちどの程度の割合の部分を地物に重ならないようにするかは、実験やシミュレーションなどにより適宜定めることができる。
制御部44は、決定部42により目標地物が決定されていない場合に、対象物の存在を示す画像を投影装置30に投影させない。
制御部44は、対象物の存在を示す画像を、車両と対象物との間の距離に応じた大きさで投影装置30に投影させる。制御部44は、車両と対象物との間の距離が小さいほど、対象物の存在を示す画像を大きく投影装置30に投影させる。制御部44は、運転者から見て対象物が目標地物の奥側において目標地物に重なっている場合に、対象物の存在を示す画像を、目標地物の奥側に位置するように認識される大きさで投影装置30に投影させる。制御部44は、運転者から見て対象物が目標地物の手前側において目標地物に重なっている場合に、対象物の存在を示す画像を、目標地物の手前側に位置するように認識される大きさで投影装置30に投影させる。
制御部44は、運転者から見て対象物が目標地物の奥側において目標地物に重なっている場合に、対象物の種類を表す形状の画像を投影装置30に投影させる。
図3は、図2の車両14の運転者が視認する前方の実像と対象物の存在を示す画像200とを概略的に示す図である。図3の例では、対象物は歩行者120であり、歩行者を表す形状の画像200が投影される。画像200は、対象物の輪郭に似せた閉曲線であるが、特に限定されない。画像200は、半透明であってもよい。例えば、対象物の種類が自転車の場合、自転車を表す形状の画像が投影される。対象物の種類が車両の場合、車両を表す形状の画像が投影される。
運転者は、画像200の壁110からはみ出した部分と壁110とを比較しやすいので、画像200が示す距離を認識しやすい。そのため、運転者は、画像200が壁110の奥側に位置することを認識しやすい。よって、運転者は、歩行者120が壁110の奥側に位置することを認識しやすい。
ここで、第1および第2の比較例について説明する。図4は、第1の比較例に係る車両の運転者が視認する前方の実像と対象物の存在を示す画像200とを概略的に示す図である。画像200は、歩行者120の付近において壁110に重ねて表示される。このような表示では、歩行者120が壁110の奥側に位置していることを表すように画像200の大きさを調整しても、画像200が壁110に張り付いているように視認されることを、本発明者は独自に認識した。つまり、第1の比較例では、運転者に画像200までの距離を認識させ難く、運転者を疲れさせてしまう可能性がある。
図5は、第2の比較例に係る車両の運転者が視認する前方の実像と対象物の存在を示す画像200とを概略的に示す図である。図5では、画像200の全体が壁110に重ならないように表示される。第2の比較例では、図3の例と比較して、運転者は、画像200が示す距離を認識することが難しい。また、実際には歩行者120は道路側に飛び出していないが、運転者は、歩行者120が道路側に飛び出しているように誤認する可能性がある。図3の例では、画像200の一部は壁110に重なっているので、運転者は、歩行者120が壁110に重なっていることを認識しやすく、歩行者120が道路側に飛び出しているように誤認しにくい。
図6は、図3に続く、図2の車両14の運転者が視認する前方の実像と対象物の存在を示す画像200とを概略的に示す図である。図3の状況から時間が経過し、歩行者120は、壁110から道路側に飛び出している。
制御部44は、運転者から見て対象物が目標地物に重なる位置から重ならない位置に移動した場合に、対象物の移動に追従するように対象物の存在を示す画像200を投影装置30に投影させる。つまり、運転者から見て対象物が目標地物に重なる位置に存在する間は、対象物が移動しても画像200は移動しない。運転者から見て対象物が目標地物に重ならない位置に移動すると、対象物の移動に伴い画像200も移動する。この場合、画像200は、運転者による対象物の視認を妨げ難いように表示される。例えば、画像200は、対象物を囲うように表示されてもよいし、対象物の移動方向などにずれて対象物に重ならないように表示されてもよい。自車両が目標地物を通過した場合、制御部44は、対象物の画像200を投影装置30に消去させる。
図7は、歩行者120が壁110の手前側に存在する場合の、車両14の運転者が視認する前方の実像と対象物の存在を示す画像200とを概略的に示す図である。決定部42は、車両14の運転者から見て、車両14の走行路側に移動している歩行者120の奥側において歩行者120に重なる壁110を目標地物として決定する。制御部44は、対象物の存在を示す画像200を壁110からはみ出すように投影装置30に投影させる。
図7の例では、運転者は、画像200の壁110からはみ出した部分と壁110とを比較しやすいので、画像200が示す距離を認識しやすい。そのため、運転者は、画像200が壁110の手前側に位置することを認識しやすい。
運転者は、壁110の手前側に存在する歩行者120を視認しうるが、自車両の速度が比較的高い場合などには、歩行者120に気付き難い可能性もある。このような状況であっても、画像200により、運転者に適切に注意喚起できる。
制御部44は、運転者から見て対象物が目標地物の手前側において目標地物に重なっている場合に、対象物の種類によらず、同一形状の画像を投影装置30に投影させてもよい。この場合、運転者は、対象物を視認して、その種類を把握できるためである。
なお、歩行者などが駐車車両の奥側に存在する場合にも、車載装置10は、対象物の存在を示す画像200を駐車車両からはみ出すように表示できる。この場合、サーバ装置12は、歩行者が所持するスマートフォンなどから送信された位置情報にもとづいて、駐車車両の奥側に存在する歩行者の位置情報を導出すればよい。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
次に、以上の構成による表示制御装置22の全体的な動作を説明する。図8は、図1の表示制御装置22における対象物の存在を示す画像の表示処理を示すフローチャートである。図8の処理は、繰り返し行われる。
取得部40は、地物の情報と、自車両の位置情報と、注意喚起すべき対象物の情報とを取得する(S10)。自車両の運転者から目視可能な地物であり、自車両の運転者から見て対象物に重なる地物が存在しない場合(S12のN)、ステップS10に戻る。自車両の運転者から目視可能な地物であり、対象物に重なる地物が存在する場合(S12のY)、対象物が自車両の走行路側に移動していなければ(S14のN)、ステップS10に戻る。対象物が自車両の走行路側に移動している場合(S14のY)、決定部42は、この地物を目標地物として決定する(S16)。制御部44は、対象物の存在を示す画像を、運転者から見て目標地物と、その一部が重なり、他の部分が重ならないように投影装置30に投影させ(S18)、処理を終了する。
このように本実施の形態によれば、車両の運転者から、運転者に注意喚起すべき対象物までの距離感を提供するために用いる目標地物を決定し、対象物の存在を対象物までの距離感を運転者に認識できる態様にて示すための画像を、運転者から見て目標地物と、その一部が重なり、他の部分が重ならないように投影する。そのため、目標地物に重ならない部分の画像により、運転者に画像までの距離を把握させやすくできる。よって、運転者に地物と対象物との位置関係を把握させやすくできる。
また、画像を車両と対象物との間の距離に応じた大きさで投影させるので、運転者に画像までの距離をさらに把握させやすくできる。また、車両の運転者から見て、車両の走行路側に移動している対象物と重なるように位置する地物を目標地物として決定するので、対象物が車両側に移動している運転者に注意喚起すべき状況で画像を表示させることができる。
さらに、運転者から見て対象物が目標地物に重なる位置から重ならない位置に移動した場合に、対象物の移動に追従するように画像を投影させるので、対象物が車両側に近づいており、より注意すべきことを適切に注意喚起できる。
また、運転者から見て対象物が目標地物の奥側において地物に重なっている場合に、対象物の種類を表す形状の画像を投影させるので、運転者が対象物を視認できない状況でも、対象物の種類を運転者に把握させることができる。
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態はあくまでも例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
例えば、対象物の存在を示す画像200の目標地物からのはみ出し方を変更してもよい。図9は、変形例に係る図2の車両14の運転者が視認する前方の実像と対象物の存在を示す画像200とを概略的に示す図である。運転者から見て壁110の奥側に歩行者120が存在する。この例でも、画像200は、壁110からはみ出している。しかし、画像200は、壁110に重なっていない。つまり、画像200は、壁110の奥側にあり、その一部が壁110からはみ出しているように認識される。そのため、制御部44は、画像200を、車両と対象物との間の距離に応じた大きさで投影装置30に投影させなくてもよい。この変形例でも、実施の形態の効果を得ることができる。
また、地図データ記憶部24は、車載装置10には設けられず、サーバ装置12に設けられてもよい。この変形例では、車載装置10の構成を簡素化できる。