JP2019108638A - 経編地 - Google Patents

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裕司 吉田
理子 坂田
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理子 坂田
晴香 大伴
Haruka Otomo
晴香 大伴
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Abstract

【課題】真夏等の暑熱環境下で着用し、歩行等の運動を行った際にも、特殊な糸使いや特殊な加工ではないにもかかわらず、持続的に涼しく感じる編地の提供。【解決手段】弾性繊維と非弾性繊維を含む経編地であって、該経編地を緯方向に20%伸長した時の隣り合うニードルループとニードルループとの間隔が0.15〜0.50mmであり、かつ、ニードルループとシンカーループとの高低差が0.15〜0.40mmであることを特徴とする経編地。【選択図】なし

Description

本発明は、経編地に関する。より詳しくは、本発明は、暑熱環境下での着用動作時、涼しく感じる経編地、及びこれを用いたボトム製品に関する。
従来、弾性糸を使用して身体に密着する暑熱環境下で冷感を謳った衣服として、吸水性や接触冷感に優れるセルロース繊維を交編した編地(以下の特許文献1参照)、異形断面のポリエステルやナイロンを使用した編地、あるいは、単繊維径が異なる繊維を使用して多層構造とすることにより接触冷感に優れ、発汗時にもべとつかない編地(以下の特許文献2参照)等が提案されている。
しかしながら、これら接触冷感に優れる編地からなる衣服は、着用直後は涼しいが、着用していて持続的に涼しい衣服とはならず、初夏等の少し暑い季節では着用した瞬間のみ涼しく感じるが、長時間の着用や歩行等の運動により汗ばむような環境となる暑熱環境時の着用では、発汗して蒸し暑く極めて不快であり、真夏等の暑熱環境には向いていないという問題がある。
特開2011−140733号公報 特開2009−24272号公報
前記した従来技術の問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、真夏等の暑熱環境下で着用し、歩行等の運動を行った際にも、特殊な糸使いや特殊な加工ではないにもかかわらず、持続的に涼しく感じる編地を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、経編地所望の編地構造とすることによって、暑熱環境下で衣服を着用して運動等の動作を行っても涼しく感じることができることを発見し、かかる発見に基づき本発明を完成するに至ったものである。本発明に係る衣服は、キシリトール加工等の特殊な冷感付与加工を施すことなく、暑熱環境下の着用動作時、涼しく感じることができる。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]弾性繊維と非弾性繊維を含む経編地であって、該経編地を緯方向に20%伸長した時の隣り合うニードルループとニードルループとの間隔が0.15〜0.50mmであり、かつ、ニードルループとシンカーループとの高低差が0.15〜0.40mmであることを特徴とする経編地。
[2]前記弾性繊維の繊度が15〜35dtexであり、かつ、前記非弾性繊維の繊度が20〜60dtexである、前記[1]に記載の経編地。
[3]下記式(1):
伸長比=A/B ...式(1)
{式中、Aは、幅2.5cm、長さ10cm(把持部除く)に裁断した編地の14.7N荷重下での伸度であり、そしてBは、幅2.5cm、長さ10cm(把持部除く)に裁断した編地の9.8N荷重下での伸度である。}で求められる経方向、及び緯方向の少なくともいずれか1方向の伸長比が1.00〜1.20である、前記[1]又は[2]に記載の経編地。
[4]前記非弾性繊維が合成繊維である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の経編地。
[5]前記非弾性繊維をフロント筬に、前記弾性繊維をバック筬に配置され、かつ、前記非弾性繊維と前記弾性繊維は同方向振りである2枚筬の組織を有する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の経編地。
[6]少なくともフロント筬の振りが開き目である、前記[5]に記載の経編地。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の経編地を用いた衣服。
[8]ボトム製品である、前記[7]に記載の衣服。
[9]下記式(2):
サイズ比=(大腿部の製品周径)/(膝部の製品周径) ...式(2)
{式中、(膝部の製品周径)は、爪先までのボトム製品の場合、爪先と股下との中間部の、足首近傍までのボトム製品の場合、裾と股下との中間部の、そして膝近傍までのボトム製品の場合、裾部の製品周径であり、そして(大腿部の製品周径)は、ボトム製品の股下と前記膝部の部位の中間部の製品周径である。}で求められるサイズ比が1.15〜1.40である、前記[8]に記載のボトム製品。
本発明による経編地を使用した衣服は着用時に涼しく、さらに、暑熱環境下で衣服を着用して運動等の動作を行っても、例えば、歩行等の運動時にも涼しく、真夏の暑熱環境下の着用に適する衣服である。
本実施形態の経編地の、隣り合うニードルループとニードルループとの間隔を測定する部分の説明図である。 本実施形態の経編地の、ニードルループとシンカーループとの高低差を測定する部分の説明図である。 本実施形態のサイズ比を測定する部位の説明図である。爪先までのボトム製品の場合。 本実施形態のサイズ比を測定する部位の説明図である。足首近傍までのボトム製品の場合。 本実施形態のサイズ比を測定する部位の説明図である。膝近傍までのボトム製品の場合。
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という。)を詳細に説明する。
本実施形態の経編地は、弾性繊維と非弾性繊維を含む経編地であって、該経編地を緯方向に20%伸長した時の隣り合うニードルループとニードルループとの間隔が0.15〜0.50mmであり、かつ、ニードルループとシンカーループとの高低差が0.15〜0.40mmであることを特徴とする。
本実施形態の経編地において、冷感を得るための要因は以下の通りである。
(i)経編地からの放熱(繊維から外環境への熱伝達)量を多くする。
(ii)経編地からなる製品着用動作時に突っ張ることがなく、筋肉の発熱を最小限にする。
これらの要因に加え、特にボトム製品においては次の要因を加えれば、より涼しい製品となる。
(iii)経編地によるボトム製品を縫製して着用時、突っ張ることがないので筋肉の発熱を最小限にする。
以下、これらについて説明する。
(i)経編地からの放熱量を多くする。
本実施形態において、着用時に涼しく感じるためには、衣服着用時には人体に密着した衣服が肌を覆うため、人体からの外環境への放熱量が低下することは避けられないが、放熱量の低下を最小限となる、すなわち、編地からの放熱量が最大限となるような編地構造とし、また、最も熱伝導率の低い空気による断熱効果を最小限となる編地構造すれば、衣服を着用しても着用直後から放熱が進んで涼しさが持続する衣服となる。
本実施形態の経編地において、着用時涼しく感じるためには人体からの放熱量を増やせばよく、つまり、編地による断熱効果を少なくして編地からの放熱を最大にする必要がある。そのため、編地を可能な限り薄くすればよいが、これでは編地の破裂強度が低く、衣服として着用時の動作等で破裂してしまうことがある。そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、破裂強度等の強度面は問題ないにもかかわらず、放熱効果の高い経編地の完成に至った。すなわち、編地を可能な限り薄くするため、例えば、15〜35dtex(デシテックス:以下同じ記号とする。)の弾性繊維と20〜60dtexの非弾性繊維とを使用した経編地で、編地の隣り合うニードルループとニードルループとの間隔が0.15〜0.50mm、かつ、ニードルループとシンカーループとの高低差が0.15〜0.40mmとなるように、糸使い、編組織、及び、仕上げ密度を設定することができ、例えば、繊度の大きい糸使いとすれば、ニードルループとシンカーループとの高低差は大きくなる。さらに、仕上げ時の幅出し率を大きくすればニードルループとニードルループとの間隔は大きくなる一方、ニードルループとシンカーループとの高低差は小さくなる。この仕上げについての目安としては、1日以上放縮した生機とほぼ同じ密度に仕上げれば、各種糸使い、組織における最適な密度となりやすい。
本実施形態の経編地の糸使いについては、弾性繊維、非弾性繊維とも細い方が薄い編地となるが、破裂強度が弱くなり、弾性繊維、非弾性繊維とも太いと破裂強度は問題ないが、放熱性が低くなり、涼しい衣服とはならない。従って、弾性繊維が低繊度の場合には非弾性繊維を高繊度とするなど、糸使いは破裂強度と放熱性(厚み)との兼ね合いで選定すればよいが、弾性繊維は20〜35dtexとし、非弾性繊維は20〜50dtexとの組み合わせが好ましい。
経編地の組織についても厚みの調整が可能で、特に、弾性繊維と非弾性繊維とのシンカーループの重なりの有無により編地の厚みが変わり、シンカーループが重ならない方が編地は薄くなり、放熱性が高くなる。すなわち、弾性繊維と非弾性繊維とも同方向振りとするのが好ましく、例えば、フロント筬に非弾性繊維、バック筬に弾性繊維とした同方向振りのダブルデンビーや、同方向振りのハーフとするのがよい。フロント筬とバック筬の振りを同方向にすることにより、編地が薄くなるのと同時に、編地内に空気を含むことが少なくなり、空気による断熱効果が最小限に抑えられる。
さらに、これらの糸使い、編組織に加え、仕上げ時にウェール間のニードルループとニードルループとの間隔を適正な範囲とすることにより、さらに放熱性を高くすることが可能である。つまり、弾性繊維、非弾性繊維で肌からの放熱を遮るが、肌からの熱は各繊維に伝達され、弾性繊維と非弾性繊維から外環境へ放熱は行われているのであり、この放熱を効率よく生じる編地構造とすればよい。すなわち、編地を構成するループはニードルループとシンカーループとがあり、このうち、ニードルループは表面に凹凸を形成していることにより、ニードルループの表面からの放熱のみでなく、側面からの放熱もなされるような構造が好ましく、つまり、経編地のウェール間の隣り合うニードルループとニードルループとの間隔が狭いと放熱効率が落ち、広すぎても放熱効率が落ちることになり、従って、ウェール間の隣り合うニードルループとニードルループとの間隔は、肌に密着する衣服の着用状態を想定して編地を緯方向に20%伸長(例えば10mmの編地を12mmまで伸長する)した状態で0.15〜0.50mm、好ましくは0.20〜0.45mmとすることにより、ニードルループからの放熱量が最大となる。
さらに、ニードルループの高さについては、シンカーループとの高低差も重要である。本実施形態では、ニードルループとシンカーループを構成する非弾性繊維と弾性繊維からの放熱を考慮しており、特に、ニードルループからの放熱を最大限に活かすためには、ニードルループとシンカーループの高低差を最適な高さに設定する必要があり、高低差が大きい方が放熱量は多くなる。しかしながら、高低差が大きすぎるとニードルループの内部に含まれる空気層により放熱が阻害されて放熱量が低下し、逆に高低差が小さすぎてもニードルループからの放熱量が低下して好ましくない。従って、ニードルループからの放熱量を最大限に活かすためニードルループとシンカーループの高低差は、0.15〜0.40mmであり、好ましくは0.17〜0.30mmである。該ニードルループとシンカーループの高低差は、経編地を構成する繊度、仕上げ密度によっても調整可能であるが、編地のループ構造によっても調整可能であり、ループ構造としては、開き目よりも閉じ目の方がニードルループとシンカーループとの高低差は大きく、ランナー長が多い方がニードルループとシンカーループの高低差は大きくなる。
ここで、ウェール間の隣り合うニードルループとニードルループの間隔の測定は、図1に示すように編地を20%伸長後、マイクロスコープ等の拡大鏡でニードルループ面から表面観察を行い、隣り合うニードルループとニードルループの間隔「a」を測定し、ランダムに10か所の平均間隔を求める。
また、ニードルループとシンカーループの高低差は、経編地を緯方向に20%伸長後、ニードルループ側を表面として、ニードルループの最大高さとニードルループとニードルループとの間から垣間見えるシンカーループとの高さの差を測定する。具体的には編地の断面観察により測定する方法もあるが、立体的な高低差を測定できる顕微観察装置を使用してニードルループの最大高さとシンカーループの高さとの差を測定する方法が簡単で精度高く測定可能で、例えば、ハイロックス社製 デジタルマイクロスコープKH8700を使用して測定する場合、図2に示すように、数ウェールを横断する横断線に係るニードルループの最大高さとシンカーループのシンカーが高さとが左下に表示されるので、この高低差を読み取り、2〜4カ所のニードルループの平均高さ、及びシンカーループの平均高さを求める。次いで、数ウェールを横断する横断線を図2では右上又は左下に移動してニードルループとシンカーループの高低差を2〜4カ所読み取ってそれぞれの平均高さを求め、この測定を数ウェール横断する横断線の場所を少なくとも5か所において行い、測定したすべてのニードルループの高さとシンカーループの高さとの平均高さから、ニードルループとシンカーループの平均高低差を求める。
ウェール間の隣り合うニードルループとニードルループとの間隔の調整は、編機のゲージ、及び染色加工時のウェール密度の調整により行え、ニードルループとシンカーループの高低差の調整は、染色加工時のコース数調整やウェール数調整でも可能であるが、編地編成時の糸使い、ランナー調整、機上コース調整等による生機密度調整により可能である。
さらに、前記したように、ニードルループとシンカーループの高低差の調整は、少なくともフロント筬の非弾性繊維のループ構造を開き目とすることにより、弾性繊維を非弾性繊維との位置関係がはっきりして締まったループとなりやすく、ニードルループの高さ調整が容易に行えて好ましい。無論、フロント筬、バック筬とも開き目とすることも可能であり、この場合、より締まったニードルループとなって、ニードルループの高さを最小限にすることが可能である。
(ii)経編地からなる製品着用動作時に突っ張ることがなく、筋肉の発熱を最小限にする。
本実施形態の経編地は、人体に密着する衣服用経編地であることができる。本実施形態の経編地により人体に密着する衣服を製造し、着用して運動などの動作を行う場合、人体に密着する衣服であると、例えば、関節の曲げ伸ばしなどで衣服の突っ張り感が生じ、この突っ張り感が運動時に余計な力が必要となるため筋肉の発熱により涼しさが持続しない。このため、鋭意検討した結果、突っ張り感を感じないためには、編地の14.7N(ニュートン:以下同じ記号とする)荷重下での伸度を、9.8N荷重下での伸度で除した伸長比が、1.00〜1.20となる経編地であれば、着用動作時も着用時とほぼ同じ締め付け感であるために突っ張り感は小さく、着用動作時に余計な力を使うことが少なくて筋肉の発熱も最小限となり、運動等を行っても涼しい衣服となることを見出した。尚、伸長比は編地の経方向、緯方向とも本発明による規定の範囲であることが好ましく、この場合、経編地に衣服のパターンをマーキングする際に、経、緯どちらの方向でもマーキング可能となる。しかしながら、製造しようとする衣服によっては、着用動作で突っ張りやすい方向があり、この場合、着用動作で突っ張る方向のみ上記規定の範囲であっても構わない。
本実施形態の経編地において、伸長比が1.20より大きい場合は、着用動作時に突っ張り感があり筋肉の発熱により暑くなることがあり、他方、1.00未満では、伸長後に編地の回復力が弱くて、伸長ひずみが残りやすく型崩れが生じやすい。
(i)と(ii)に加え、特に、ボトム製品においては次の要因を加えれば、より涼しい製品となる。
すなわち、(iii)経編地によるボトム製品を縫製して着用時、突っ張ることがないので筋肉の発熱を最小限にする。
本実施形態の経編地において、経編地を使用した身体に密着する衣服、例えば、タイツ、レギンス、スパッツなどのボトム製品を縫製する場合、涼しくなる衣服の設計について検討した。着用動作時に膝を曲げた際に突っ張るこれらのボトム製品では、膝を曲げるのに大きな力が必要となり、このため、筋肉が発熱して身体が暑くなってくる。そこで、本発明者らは、膝の曲げ伸ばしによる筋肉の発熱を最小限にするボトム製品の設計を検討した結果、最適な大腿部と膝部とのサイズバランスを見出した。
すなわち、通常、人体の(大腿部の周径)/(膝部の周径)で求めるサイズ比は、大凡1.50〜1.70であり、人体のサイズとは異なるが、ボトム製品の大腿部と膝部に相当する部分のサイズを製品縫製時のパターン設計により周径を変化させ、人体のサイズより着用動作時の筋肉の発熱を最小限にするため、膝の部分を若干大きくしてサイズ比を1.15〜1.40の範囲とすることで、着用動作時も涼しく感じることができる。サイズ比が1.40より大きいと、突っ張り感が強く、膝の曲げ伸ばしに強い力が必要で筋肉が発熱しやすく、他方、サイズ比が1.15未満の場合、大腿部は人体に密着していても膝部はたるみが生じることがあり、見映えがよくない。
本実施形態の経編地は、シングルトリコット、シングルラッセル等の経編機により製造可能で、編機のゲージについては、26〜36ゲージのファインゲージの編機の使用が好ましく、編成組織としての限定はないが、フロント筬、バック筬とも同方向振りが好ましく、例えば、同方向振りのダブルデンビー、ハーフ、ダブルアトラス等の使用が可能である。
本実施形態の経編地で使用する弾性繊維は、ポリウレタン系又はポリエーテルエステル系の弾性糸であることができ、例えば、ポリウレタン系弾性糸としては、乾式紡糸又は溶融紡糸したものが使用でき、ポリマーや紡糸方法は特に限定されない。弾性糸の破断伸度は400%〜1000%程度であり、かつ、伸縮性に優れ、染色加工時のプレセット工程の通常処理温度180℃近辺で伸縮性を損なわないことが好ましい。また、弾性糸としては、特殊ポリマーや粉体添加により、高セット性、抗菌性、吸湿、吸水性等の機能性を付与した弾性糸も使用可能である。弾性糸の繊度に関しては、15〜35dtex程度の繊維の使用が可能である。
さらに、本実施形態の経編地は、弾性糸に無機物質を含有することができ、含有する無機物質の性能を加味した編地とすることができ、例えば、酸化チタンを含有させると、熱伝導性に優れ、放熱性の良い編地とすることができ、吸湿性に優れる無機物質を含有させると吸湿性に優れる経編地となり、蒸れ感の抑制に効果がある。無機物質の含有法としては、弾性糸の紡糸原液に無機物質を含有させて紡糸する方法が簡単である。本明細書中、無機物質とは、酸化チタン等のセラミックスの無機物単体及び/又は無機化合物をいい、弾性糸の紡糸の障害とならない様、微粉末状が好ましい。これら無機物質は弾性糸に1〜10重量%含有されていることが好ましく、無機物質は少ないと冷却等の効果が小さく、多すぎると紡糸時や伸長時に糸切れすることがあるため、1〜10重量%の含有が好ましく、より好ましくは2〜5重量%の含有である。
本実施形態の非弾性繊維に特に制限はなく、例えば、天然繊維、半合成繊維、再生繊維、合成繊維を用いることができるが、発汗時に汗が早く乾く機能である速乾性の観点から、合成繊維が好ましい。
合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維の使用が可能であるが、ポリアミド系合成繊維の使用が好ましい。また、これらのブライト糸、セミダル糸、フルダル糸等を任意に使用でき、繊維の断面形状についても、丸型、楕円型、W型、繭型、中空糸等任意の断面形状の繊維が使用可能であり、繊維の形態についても特に限定されず、原糸、仮撚等の捲縮加工糸が使用できるが、冷感や吸湿性に優れる原糸使いが好ましい。合成繊維の繊度は20〜60dtexが好ましく、さらに好ましくは20〜45dtexである。
合成繊維は、酸化チタン等の無機物質や、吸湿に優れる剤を0.3〜5重量%含有させることも可能で、これらを含有することにより、放熱性や吸湿、吸汗性に優れる編地が製造できる。
本実施形態の経編地の染色仕上げ方法としては、通常の染色仕上げ工程を使用でき、使用する繊維素材に応じた染色条件とし、使用する染色機も液流染色機、ウインス染色機など任意であり、吸水性や柔軟性を向上させる加工剤や、冷感を高める加工剤の使用も可能であり、プレセット条件、仕上げセット条件についても特に限定はなく、160〜195℃程度の通常のセット条件が使用できる。
本実施形態の経編地は、好適には、スポーツ用、インナー用に使用可能で、例えば、タイツ、レギンス、スパッツ等のボトム製品、Tシャツ、ブラトップ、キャミソール等のトップス製品、さらには、アームカバー、サポーターにも使用可能であり、暑熱環境下での着用時、涼しい製品となる。なお、経編地の使用方法として、ニードルループ側(テクニカルフェース)、あるいは、シンカーループ側(テクニカルバック)のどちらを製品表として製造しても本発明の目的は達成可能であるが、ニードルループ側(テクニカルフェース)を製品表として使用する方が、よりひんやり感を感じやすく好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、実施例における用いた評価方法は、以下とおりのものであった。
(1)伸長比
編地伸度を下記条件で測定し、14.7N荷重下での伸度を、9.8N荷重下での伸度で除算し、小数点以下3桁目を四捨五入して伸長比とし、編地の経方向、緯方向とも測定する。
引張り試験機:テンシロン引張り試験機((株)オリエンテック製 RTC−1210A)
把持部の幅:25mm
把持部の間隔:100mm
初荷重:0.1N
引張り速度、及び回復速度:300mm/分
引っ張り長:15Nまで引っ張り、途中の9.8N、14.7N時点の伸度を測定する
伸長比=(14.7N荷重下伸度)/(9.8N荷重下伸度)
(2)ニードルループの間隔
隣り合うニードルループとニードルループとの間隔測定を、編地を緯方向に20%伸長後、図1に示すようにハイロックス社のデジタルマイクロスコープKH8700を使用して観察し、複数のニードルループが接する接線「a’」を引き、該接線と直角に交差する隣り合うニードルループとニードルループの間隔「a」を測定し、ランダムに10か所の平均間隔を求め、小数点以下3桁目を四捨五入してニードルループとニードルループとの間隔とする。
(3)ループの高低差
ニードルループとシンカーループとの高低差測定を、編地を緯方向に20%伸長後、図2に示すようにハイロックス社のデジタルマイクロスコープKH8700を使用して観察し、「b」〜「c」間のニードルループの高さとシンカーループの高さを測定し(本実施例では「d」「e」「f」の高さを測定)、(ニードルループの高さ)と(シンカーループの高さ)から下記式により、小数点以下3桁目を四捨五入して高低差とする。
ループの高低差=(ニードルループの高さ)−(シンカーループの高さ)
同様の測定を、3ウェール以上横断する少なくとも5か所の横断線において行い、測定したすべての高低差の平均値を求め、小数点以下3桁目を四捨五入してニードルループとシンカーループの平均高低差を求める。
(4)サイズ比
製造した経編地でボトム製品を縫製し、該ボトム製品のサイズ比を、下記式:
サイズ比=(大腿部の製品周径)/(膝部の製品周径)
により小数点以下3桁目を四捨五入して求める。
ここで、膝部とは、例えば、図3に示す爪先までのボトム製品は、爪先と股下との中間部であり、図4に示す足首近傍までのボトム製品の場合、裾と股下との中間部であり、そして図5に示す膝近傍までのボトム製品の場合、裾が膝部となり、裾部である。図3〜5中、「2」は膝部の位置を示し、「3」は大腿部(膝部と股下との中間部)の位置を示す。
(5)着用冷感
製造した経編地を使用して、ニードルループ側を製品表とした足首丈のボトム製品を縫製し、30℃50%RHの環境下で着用し、トレッドミルを使用して5km/hrで3分間歩行を行い、人体正面から歩行前と歩行後の股下部から膝部までの表面温度を放射率1.0に設定したサーモグラフィで観察し、歩行前後の平均温度を画像解析により求め、歩行前の表面温度の平均温度からどれぐらい変化したかを次式:
着用発熱温度=(歩行前の脚部温度)―(歩行後の脚部温度)
により求める。ここで、着用発熱温度が0.5℃以下の場合は、暑熱環境下でも涼しい。また、温度解析では、小数点2桁目を四捨五入して着用発熱温度とする。
[実施例1]
32ゲージのシングルトリコットを使用し、バック筬に吸湿性が高い弾性糸25dtex(商品名ロイカBZ:旭化成(株)製)、フロント筬にポリアミド繊維の原糸44dtex/34フィラメントをセットし、下記の組織にて編成した:
フロント 01/21//
バック 10/12//
編成した生機を精練後、190℃1分間のプレセットをほぼ生機の幅で行い、染色後、吸水剤に浸漬、絞った後、170℃1分間の仕上げセットを行い、経編地とした。得られた経編地の性能を評価後、足首までのレギンスを縫製した。レギンスのサイズ比を測定後、着用試験により涼しさを検証した結果、着用で涼しく、特に運動後の大腿部の温度低下が認められ、暑熱環境での着用でも涼しいことが判った。結果を以下の表1に示す。
[実施例2〜5、比較例1〜4]
実施例1において、仕上げ時の幅出し率を大きくしてニードルループとニードルループの間隔を広くし、ループの高低差を小さくした経編地(実施例2、比較例1)、仕上げ時の幅出し率を小さくしてニードルループの間隔を狭くし、ループの高低差を大きくした経編地(実施例3、比較例2)を製造し、得られた経編地の性能を評価後、足首までのレギンスを縫製した。また、実施例1で得た経編地を使用して、サイズ比の異なるレギンスを縫製(実施例4〜5、比較例3〜4)後、着用試験により涼しさを検証した結果を以下の表1に示す。
[実施例6]
36ゲージのシングルトリコットを使用し、バック筬に吸湿性が高い弾性糸19dtex(商品名ロイカBZ:旭化成(株)製)、フロント筬に吸湿性の高いポリアミド繊維の原糸22dtex/20フィラメント(商品名キュープ:東レ(株)製)をセットし、下記の組織にて編成した:
フロント 01/32//
バック 10/12//
編成した生機を精練後、190℃1分間のプレセットをほぼ生機の幅で行い、染色後、吸水剤に浸漬、絞った後、170℃1分間の仕上げセットを行い、経編地とした。得られた経編地の性能を評価後、足首までのレギンスを縫製した。レギンスのサイズ比を測定後、着用試験により涼しさを検証した結果、着用で涼しく、特に運動後の大腿部の温度低下が認められ、暑熱環境での着用でも涼しいことが判った。結果を以下の表1に示す。
[実施例7]
28ゲージのシングルトリコットを使用し、バック筬に吸湿性が高い弾性糸25dtex(商品名ロイカBZ:旭化成(株)製)、フロント筬にポリアミド繊維の原糸44dtex/34フィラメントをセットし、下記の組織にて編成した:
フロント 01/32//
バック 10/12//
編成した生機を精練後、190℃1分間のプレセットをほぼ生機の幅で行い、染色後、吸水剤に浸漬、絞った後、170℃1分間の仕上げセットを行い、経編地とした。得られた経編地の性能を評価後、足首までのレギンスを縫製した。レギンスのサイズ比を測定後、着用試験により涼しさを検証した結果、着用で涼しく、特に運動後の大腿部の温度低下が認められ、暑熱環境での着用でも涼しいことが判った。結果を以下の表1に示す。
[実施例8]
組織を下記の組織に変更した以外は実施例1と同様に製造した。フロント筬とバック筬が異方向の組織であるだけで、着用冷感は実施例1に比べ低下した。
フロント 12/10//
バック 10/12//
本発明の経編地は、スポーツ用、インナー用の暑熱環境で着用する衣服として好適で、タイツ、レギンス、スパッツ等のボトム製品、あるいは、シャツ等のトップス製品としても使用可能である。
a ニードルループとニードルループとの間隔
a’ 複数のニードルループが接する接線
b〜c 数ウェール横断する横断線
d〜f ウェールの山部分、及び、その高さ(左下グラフ)
1 股下から裾部(爪先)までの長さ
2 膝部の位置
3 大腿部の位置
4 股下から爪先までの中間部
5 股下と膝部までの中間部

Claims (9)

  1. 弾性繊維と非弾性繊維を含む経編地であって、該経編地を緯方向に20%伸長した時の隣り合うニードルループとニードルループとの間隔が0.15〜0.50mmであり、かつ、ニードルループとシンカーループとの高低差が0.15〜0.40mmであることを特徴とする経編地。
  2. 前記弾性繊維の繊度が15〜35dtexであり、かつ、前記非弾性繊維の繊度が20〜60dtexである、請求項1に記載の経編地。
  3. 下記式(1):
    伸長比=A/B ...式(1)
    {式中、Aは、幅2.5cm、長さ10cm(把持部除く)に裁断した編地の14.7N荷重下での伸度であり、そしてBは、幅2.5cm、長さ10cm(把持部除く)に裁断した編地の9.8N荷重下での伸度である。}で求められる経方向、及び緯方向の少なくともいずれか1方向の伸長比が1.00〜1.20である、請求項1又は2に記載の経編地。
  4. 前記非弾性繊維が合成繊維である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経編地。
  5. 前記非弾性繊維をフロント筬に、前記弾性繊維をバック筬に配置され、かつ、前記非弾性繊維と前記弾性繊維は同方向振りである2枚筬の組織を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の経編地。
  6. 少なくともフロント筬の振りが開き目である、請求項5に記載の経編地。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の経編地を用いた衣服。
  8. ボトム製品である、請求項7に記載の衣服。
  9. 下記式(2):
    サイズ比=(大腿部の製品周径)/(膝部の製品周径) ...式(2)
    {式中、(膝部の製品周径)は、爪先までのボトム製品の場合、爪先と股下との中間部の、足首近傍までのボトム製品の場合、裾と股下との中間部の、そして膝近傍までのボトム製品の場合、裾部の製品周径であり、そして(大腿部の製品周径)は、ボトム製品の股下と前記膝部の部位の中間部の製品周径である。}で求められるサイズ比が1.15〜1.40である、請求項8に記載のボトム製品。
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