JP6315695B2 - レッグ衣料 - Google Patents
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また、最近では着用動作時の編地伸縮時に発熱するという、これまでと全く違った発熱機能を持つ編地が提案されている(例えば、以下の特許文献2と3参照)。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、弾性糸を含有するレッグ衣料において、伸縮時瞬間的に温度が上昇し、編地の伸縮を繰り返せば持続的に伸縮時発熱し、かつ、薄地であるレッグ衣料を提供することである。
[1]弾性糸と非弾性糸とからなる筒状の編地からなるレッグ衣料であって、該編地において弾性糸が又は非弾性糸で被覆された被覆弾性糸がレッグ部全コースに編成されており、該弾性糸の含有量は50〜80g/m2であり、レッグ長における中間部における、非弾性糸で被覆された被覆弾性糸における又は非弾性糸と弾性糸とのプレーティングにおける、該非弾性糸の編地100ウェール当たりの編込長は290〜450mmであり、該編地を経方向に80%まで伸長後、元の長さに戻し、伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力を測定するとき、下記式(1):
応力比=(50%時点の復路応力(N))/(50%時点の往路応力(N))
で求められる応力比が0.40〜0.80であり、そして、経方向の伸縮時瞬間発熱温度が1.0℃以上であることを特徴とするレッグ衣料。
本実施形態のレッグ衣料は、釜径4〜5インチ程度で、26〜34ゲージの筒状の小口径のシングル丸編機(パンスト編機とも称される)により製造される非弾性糸と弾性糸とからなるレッグ部が筒状の編地であって、該編地(以下の各数値は、以下に説明するレッグ長の中間部の編地での数値であり、また、測定するレッグ衣料は染色〜仕上げセットを経た製品で測定する)における弾性糸又は被覆弾性糸がレッグ部全コースに編成されており、該弾性糸の含有量が50〜80g/m2であり、レッグ長中間部における被覆弾性糸における又は非弾性糸と弾性糸とのプレーティングにおける非弾性糸の100ウェール当たりの編込長が290〜450mmであり、該編地を経方向に80%まで伸長後元の長さに戻し、伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力を測定したときの、下記式:
応力比=(50%時点の復路応力(N))/(50%時点の往路応力(N))
により求める応力比が0.40〜0.80であり、かつ、経方向の伸縮時の瞬間発熱温度が1.0℃以上であることを特徴とする。
500回の100%伸縮中又は伸縮完了直後に、編地温度が試験開始前編地温度より高くなれば、瞬間発熱していることを示す。本実施形態のレッグ衣料の編地は、この方法により測定した瞬間発熱温度が1.0℃以上あることを特徴とする。1.0℃未満の瞬間発熱温度では、ほとんど発熱を感じられない。瞬間発熱温度は、好ましくは1.5℃以上、より好ましくは2.0℃以上である。瞬間発熱温度が高いほど好適であり、人体に悪影響を与えない範囲であれば上限は特に限定されないが、瞬間発熱温度を高くするために弾性繊維の含有量が多くなりすぎると編地がハイパワーとなって衣服として動き難くなるため、瞬間発熱温度は10℃以下であることが好ましい。
例えば、弾性糸は伸長される際発熱し、伸長緩和時吸熱され、完全な弾性体、すなわち、伸長時の伸度―応力曲線(S−Sカーブ)が全く重なっているような弾性体は伸長時の発熱と伸長緩和時の吸熱温度はほぼ同じとなり、つまり、伸長時と伸長緩和時のサイクル全体で発熱量はほぼ0となる。本発明では、編地の伸長時の発熱温度に対して、伸長緩和時の吸熱を最小限に抑えるための編地応力比の規定、及び規定した応力比の範囲を達成するための手段を見出したものである。
応力比=(50%時点の復路応力(N))/(50%時点の往路応力(N))
により、少数点以下3桁目を四捨五入して求める。
なお、応力比を伸長、及び、回復50%時点での応力により求めるのは、編地伸長時に発熱した温度を伸長回復時に吸熱する程度を捉えやすいことを見出したためである。
測定部位は、股下から爪先までのレッグ長の中間部で測定し、レッグ衣料がレギンス等で膝下や足首から爪先までがない場合でも、股下からレッグ部最下部までの中間部で測定する。測定では、非弾性糸に弾性糸がプレーティングで編成されている場合は、非弾性糸の100ウェール当たりの編込長を、初荷重0.05N(ニュートン)により測定する。また、被覆弾性糸の場合は、被覆弾性糸の弾性糸と非弾性糸を分離して非弾性糸の編込長を前記法により測定する。なお、この場合、弾性糸と非弾性糸の分離が困難な場合は、被覆弾性糸中の弾性糸のみを数cm毎に切断し、前記法により測定する。これらにより100ウェール当たりの編込長を10本測定し、その平均値を編込長とする。
編地を経、緯両方向に30%伸長した時の、編組織一単位中の弾性糸、又は、被覆弾性糸のシンカーループの長さとニードルループの長さとを加えた長さをLaとする。さらに、編地経方向に編地を50%伸長させた場合の編組織一単位中の弾性糸、又は、被覆弾性糸のシンカーループの長さと非弾性糸のニードルループの長さとを加えた長さをLbとによりループ比Lb/Laを求める。これらの測定により求めたループ比について、伸縮時高い発熱の編地とするためには、1.35≦Lb/La≦1.60を満足することが好ましく、弾性糸、又は、被覆弾性糸の編込長や染色加工工程条件を調整することより、Lb/Laをこの範囲にすることができる。Lb/Laがこの範囲内であれば着用感を損なうことなく編地は伸縮時に発熱する。なお、Lb/Laが1.35未満であれば、編地中の弾性糸の伸長率が低く、その結果、伸縮時の発熱温度も実感できないほど低い。さらに、弾性糸の伸長及び伸長回復が悪く、伸長した編地が元に戻らず膝抜け等の型崩れが生じ易い。また、1.60より大きいと、レッグ衣料のパワーが高くなりすぎるため着用し難かったり、動き難い衣服となるばかりでなく、編地の変形が大きく、弾性糸と共に非弾性糸の変形も大きくなりすぎる結果、伸長回復性が不足し、伸長緩和時に編地が波打ったり、洗濯による寸法変化が生じたりして、型崩れの原因となる。従って、LaとLbは、1.35≦Lb/La≦1.60を満足することが好ましく、より好ましくは1.40≦Lb/La≦1.55である。その結果、伸縮により発熱するとともに、着用時及び洗濯時に型崩れのない衣服とすることが可能となる。
非弾性糸と弾性糸とのプレーティングの場合も同様に、ニードルループは非弾性糸に隠れて弾性糸は見えないため非弾性糸のニードルループの長さを測定し、シンカーループは表面から観察できるので弾性糸の長さをシンカーループの長さとする。この場合、ニードルループ下部の弾性糸は観察できないが、弾性糸の場所を推定して測定すればよい。
La及びLbの測定において、各ループの長さをミクロン(μm)単位で測定し、少なくとも小数点3桁目までの長さを求め、任意に10カ所測定した平均長さを求める。この平均長さに基づいてLb/Laを計算し、小数点3桁目を四捨五入する。
弾性糸と非弾性糸とが分離できない場合は、編地を伸長していない状態で編地を構成する組織中の非弾性糸と弾性糸の断面を観察して断面積を求め、それぞれの断面積についてマルチフィラメントの場合はフィラメント数分の和を、非弾性糸と弾性糸別々に求めた数値を繊度とする。この際、糸の断面は円形、楕円形、W型、三角形、L型等種々の形があり、電子顕微鏡等での観察のみでは断面積を測定できない場合が多く、そのため、断面積を容易に求めるには、糸の断面観察時、面積と重量の判っているほぼ均一な用紙に断面を拡大して印刷し、印刷後に断面通りに裁断して裁断後の用紙の重量を測定し裁断前の用紙の重さと拡大率の比で断面積を求めることが可能である。この場合、弾性糸と非弾性糸とを同じ倍率で観察して用紙に印刷して断面を裁断し、弾性糸と非弾性糸の断面積を比較すれば繊度比が容易に求めやすくなる。また、紡績糸の場合も同様に、断面を印刷後に、1本1本の繊維の断面を裁断し、裁断面での繊維数(単糸数)の和を断面積とする。断面積を測定する部位は、ニードルループ部分とシンカーループ部分とで行い、測定はループを変えて、ニードルループ、シンカーループそれぞれ10ヶ所の断面で求めた平均の断面積、及び、これより繊度比を求める。ニードルループ部分、シンカーループ部分とも、同じループでありながら伸ばされていたり、変形等により形状が異なるループが存在している場合、この場合は、編地中最も多い形状の部位で測定し、下記式:
繊度比=(非弾性糸の断面積)/(弾性糸の断面積)
により求める。
また、用紙に断面を印刷し、断面を切り取って繊度比を求める場合は下記式:
繊度比=(非弾性糸の断面を切り取った用紙の重量)/(弾性糸の断面を切り取った用紙の重量)
により求める。
なお、繊度比の計算は、少数点以下3桁目を四捨五入して繊度比を求める。
また、被覆弾性糸は、弾性糸に非弾性糸を巻きつけたSCYやDCYのカバーリング糸や、撚糸、噴射加工糸等でも可能で、さらに、紡績糸により被覆したCSYによる被覆弾性糸でも構わない。さらに、弾性糸はレッグ部全コースに含有していることが必要で、非弾性糸との交編では高い伸縮時発熱温度が得にくい。
本実施形態のレッグ衣料の染色仕上げ方法としては、通常の染色仕上げ工程を使用でき、使用する繊維素材に応じた染色条件とし、使用する染色機もパドル染色機、ドラム染色機など任意であり、吸水性や柔軟性を向上させる加工剤や、保温性を高める加工剤の使用も可能である。
本実施形態のレッグ衣料は、特にパンティストッキング、薄手のタイツに有効であるが、スパッツ、スポーツタイツ、コンプレッションタイツ等のスポーツ、インナー用等ボトム類としても使用可能で、さらに、サポーター類の、着用動作時に編地が伸縮される関節部を覆う衣料に縫製すれば、日常の動作、運動により暖かい衣服となる。
(1)サンプリング
以下の測定を行う場所は、未伸長状態で編地に凹凸や変形等、歪のない状態で平置きしたレッグ衣料の股下から爪先までのレッグ長の中間部、レッグ衣料がレギンス、膝下タイツ等で爪先までない場合は、股下からレッグ最下部までのレッグ長の中間部でサンプリングする。
瞬間発熱温度の測定は、下記の繰り返し伸縮試験機を使用し、伸長及び緩和(戻し)を規定速度で規定回数繰り返す間の最も高い試料表面温度を測定して求め、編地経方向の瞬間発熱温度を測定する。
繰り返し伸縮機:デマッチャー試験機((株)大栄科学精器製作所製)
試料の大きさ:長さ100mm(把持部除く)、幅60mm
測定環境:温度20℃、湿度65%RHの恒温恒湿条件。伸縮以外に外部からのエネルギー供給を受けない状態で測定する。
伸長量:初期長に対して100%
繰り返し伸縮サイクル:2回/秒
発熱温度測定:繰り返し伸長500回中、及び伸長終了後の試料表面温度を連続的にサーモグラフィで測定する。サーモグラフィの放射率は1.0に設定する。
発熱温度評価:測定する試料表面が最高温となったときの温度を読み取り、伸縮前の温度と比べ上昇した温度を瞬間発熱温度とする。
編地中の弾性糸含有量(g/m2)を、次の方法により求め、小数点一桁を四捨五入する。
編地中の非弾性糸を解撚、分離により除去し、弾性糸のみの重量を測定して単位面積当りの重量に換算する。非弾性糸を解撚、分離により除去することが困難であれば、重量測定後の編地から、弾性糸又は非弾性糸を溶解等により除去して除去しなかった糸の重量を測定して、弾性糸の重量を求める。
応力比を次の方法により測定する。
試料の大きさ:長さ100mm(把持部除く)、幅25mm
引張り試験機:テンシロン引張り試験機((株)オリエンテック製 RTC−1210A)
初荷重:0.1N
引張り速度、及び回復速度:300mm/分
引張り長、及び測定:80%伸長まで伸長し、同じ速度で伸長後元の長さに戻し(回復させ)、この条件で伸長、回復を3回繰り返し、3回目の伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力を求め、下記式より小数点以下3桁目を四捨五入して求める。
応力比=(50%時点の復路応力(N))/(50%時点の往路応力(N))
弾性糸44dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)にナイロン原糸13dtex/7フィラメントを、弾性糸のドラフト率3.0、撚り数1900T/mでカバーリングして被覆弾性糸とした。この被覆弾性糸を使用して、釜径4インチ、針数400本(32ゲージ)のシングル丸編機(パンティストッキング丸編機)により天竺組織のパンティストッキングを製造することにし、レッグ部の股下から爪先までの中間部の編込長を320mm/100ウェールとし、足首部から大腿にかけて徐々に着圧が低くなる(度目が大きくなる)、段階着圧のパンティストッキングとなるよう製造した。
得られた2本のレッグ部からパンティ部に至る筒状の生機を合わせて縫製し、パンティストッキングとした。次いで、生機のパンティストッキングを折りたたんで100℃で30分スチームセットし、パドル染色機にて精練後、100℃60分ナイロンの染色を行った。染色後、堅牢度向上のためナイロンのフィックス処理後、ポリエステル系の仕上げ剤4%水溶液にて40℃10分で処理してパドル染色機から取り出し、脱水後乾燥した。乾燥後、脚型の型枠スチームセット機に入れ、120℃40秒乾熱処理して仕上げた。なお、この型枠スチームセットでは、レッグ長が生機の長さより10%以内の収縮となるように伸ばしてスチームセットした。
得られたレッグ衣料の性能を評価した結果を以下の表1に示す。実施例1の編地では、伸縮時瞬間発熱温度が1.0℃以上であり、薄くて動き易いのに暖かいレッグ衣料とすることができた。
実施例1より編込長を変化させた編地(実施例2〜3、比較例1〜2)、仕上げのスチームセット条件を変更して応力比を変更した編地(実施例4)、弾性糸の繊度を56dtexとした編地(実施例5)、弾性糸の繊度を33dtexとした編地(実施例6)、弾性糸の繊度を22dtexとした編地(比較例3)、弾性糸の繊度を78dtexとした編地(比較例4)および、型枠の大きさとスチームセットの時間を変えてループ比を変化させた編地(実施例7)以外は、実施例1と同条件でレッグ衣料を製造し、得られたレッグ衣料の結果を以下の表1に示す。
特開平7−316922号公報の実施例4で用いられたポリウレタン重合体(A剤)、及び、特開2001−140127号公報の実施例1で用いられたウレタンウレア化合物(B剤)を準備し、弾性糸44dtex(商品名ロイカCR:旭化成せんい(株)製)製造時の紡糸浴に、A剤を7wt%及びB剤を3wt%添加して製造し、これを使用したことを除いて、実施例1と同様に編地を作製し、評価を行なった。結果を以下の表1に示す。
弾性糸44dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)とナイロン仮撚り加工糸22dtex/17フィラメントを、弾性糸のドラフト率2.9のプレーティングにより、釜径4インチ、針数368本(30ゲージ)のシングル丸編機(パンティストッキング丸編機)でパンティストッキングを製造することにし、レッグ部の股下から爪先までの中間部の編込長を350mm/100ウェールとし、足首部から大腿にかけて徐々に着圧が低くなる(度目が大きくなる)、段階着圧のパンティストッキングとなるよう製造した。
得られた2本のレッグ部からパンティ部に至る筒状の生機を合わせて縫製し、パンティストッキングとした。次いで、生機のパンティストッキングを折りたたんで100℃で30分スチームセットし、パドル染色機にて精練後、100℃60分ナイロンの染色を行った。染色後、堅牢度向上のためナイロンのフィックス処理後、ポリエステル系の仕上げ剤4%水溶液にて40℃10分で処理してパドル染色機から取り出し、脱水後乾燥した。乾燥後、脚型の型枠スチームセット機に入れ、120℃40秒乾熱処理して仕上げた。なお、この型枠スチームセットでは、レッグ長が生機の長さより10%以内の収縮となるように伸ばしてスチームセットした。
得られたレッグ衣料の性能を評価した結果を以下の表1に示す。実施例9の本発明の編地では、伸縮時瞬間発熱温度が1.0℃以上であり、薄くて動き易いのに暖かいレッグ衣料とすることができた。
2 シンカーループ
a ニードルループの始点
b ニードルループの終点、及び、シンカーループの始点
c シンカーループの終点
Claims (4)
- 弾性糸と非弾性糸とからなる筒状の編地からなるレッグ衣料であって、該編地において弾性糸が又は非弾性糸で被覆された被覆弾性糸がレッグ部全コースに編成されており、該弾性糸の含有量は50〜80g/m2であり、レッグ長における中間部における、非弾性糸で被覆された被覆弾性糸における又は非弾性糸と弾性糸とのプレーティングにおける、該非弾性糸の編地100ウェール当たりの編込長は290〜450mmであり、該編地を経方向に80%まで伸長後、元の長さに戻し、伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力を測定するとき、下記式(1):
応力比=(50%時点の復路応力(N))/(50%時点の往路応力(N))
で求められる応力比が0.40〜0.80であり、そして、経方向の伸縮時瞬間発熱温度が1.0℃以上であることを特徴とするレッグ衣料。 - 前記編地を経緯両方向に30%伸長させたときの、編組織一単位中のシンカーループとニードルループとを加えた長さLaと、さらに、筒状の編地を経方向に50%伸長させたときの、編組織一単位中のシンカーループとニードルループとを加えた長さLbにより求めるループ比が、1.35≦Lb/La≦1.60である、請求項1に記載のレッグ衣料。
- 前記編地を構成する組織中の弾性糸と非弾性糸との繊度比=(非弾性糸の繊度/弾性糸の繊度)が0.25〜0.55である、請求項1又は2に記載のレッグ衣料。
- 前記筒状の編地が、身体に密着し、かつ、少なくとも関節部を覆う、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレッグ衣料。
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