JP6243176B2 - 編み地及び衣服 - Google Patents
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[1]弾性糸と非弾性糸とからなる編み地であって、該弾性糸の含有量が15〜20g/m 2 未満、経緯少なくとも一方向の伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であり、下記式(1):
充填率(%)=(M/L)÷(H1×K1+H2×K2+・・・+Hn×Kn)×100 (1)
{式中、LはKES圧縮試験機で測定した荷重6g/cm2時の編み地厚み(cm)であり、Mは編み地の単位面積当たりの重量(g/cm2)であり、H1、H2…Hnは編み地が含有する繊維1、2…n各々の比重であり、そしてK1、K2…Knは編み地が含有する繊維1、2…n各々の混率である。}で求められる編み地充填率が20〜30%であり、かつ、下記式(2):
応力比=50%時点の復路応力(N)/50%時点の往路応力(N) (2)
{式中、50%時点の復路応力(N)と50%時点の往路応力(N)は、それぞれ、該編み地を80%まで伸長後元の長さに戻した際の伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力である。}で求められる応力比が0.40〜0.80であることを特徴とする編み地。
[2]編み地が緯編み地であって、タックループ又はウェルトループが編み地中の全ループの20〜60%であり、かつ、下記(a)及び/又は(b)の条件:
(a)タックループ又はウェルトループが弾性糸で構成されること;
(b)タックループ又はウェルトループが編成されるコースにおいて、該タックループ又はウェルトループの前後の少なくともいずれかのニットループが弾性糸により構成されること;
を満足する、前記[1]に記載の編み地。
[3]編み地が経編み地であって、少なくとも弾性糸が開き目により編成されている、前記[1]に記載の編み地。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の編み地を含み、身体に密着し、かつ、少なくとも関節部を覆うことを特徴とする衣服。
[5]ボトム類、トップス類、レッグ類、サポーター類及び手袋からなる群から選ばれる、前記[4]に記載の衣服。
本発明は、上述したように、編み地を伸長時発熱させるには、弾性糸の伸長による発熱を利用するのみでは弾性糸の含有量が多くなり、重たく動き難い衣服となるため、弾性糸の含有量を少なくし、衣服、つまり編み地の軽量化を行いつつ編み地の伸長による発熱を低下させない方法について鋭意検討の結果、編み地を伸長発熱させるためには、弾性糸の伸長による発熱と、編み地を伸長することによる糸と糸との摩擦による発熱を利用すればよい事を見出したものである。非弾性糸からなる編み地を大きく伸長させるほど発熱する事は知られているが、伸長量が大きくなると糸と糸との摩擦による発熱以外に、繊維の延伸による発熱が大きくなり、弾性糸は大きな伸長でも伸長回復して元の長さに復帰するが、非弾性糸を大きく伸長すると繊維そのものが延伸され、ひずみが生じて元の長さに復帰しなくなる。そこで、本発明では、衣服の着用伸長程度、すなわち、非弾性糸が延伸されることなく、繊維のひずみも生じない伸長領域でも十分発熱させるために、弾性糸の伸長発熱の利用と、弾性糸の伸長発熱では十分発熱しない場合には、発熱を補完するために糸と糸との摩擦熱を利用することを考案したもので、これにより、弾性糸の含有量が少なく、弾性糸のみの伸長発熱では発熱が不十分な場合でも、暖かい衣服とすることが可能となった。糸と糸との摩擦による発熱は、弾性糸の発熱を補完するものであって、弾性糸の伸長発熱が重要であることには変わりなく、また、弾性糸のみでの伸長発熱が十分である場合でも、さらに高い発熱温度が得られ、より暖かい衣服とすることが出来、その為の編み地の構成要件について以下に詳細に示す。
また、糸と糸の摩擦熱を大きくするためには、仮撚り等の加工糸の使用、紡績糸の使用、撚糸の使用、2種以上の繊維の混繊糸の使用、被覆弾性糸の使用等、繊維表面の摩擦が大きい糸の使用により、糸と糸との摩擦熱が高くなり、編み地充填率が低い場合は、これらの繊維の使用を考慮すればよい。
充填率(%)=(M/L)÷(H1×K1+H2×K2+・・+Hn×Kn)×100
上式において、LはKES圧縮試験機で測定した荷重6g/cm2での厚み(cm)であり、Mは単位面積当たりの重量(g/cm2)であり、H1、H2・・Hnは編み地が含有する繊維1、2・・n各々の比重であり、K1、K2・・Knは編み地が含有する繊維1、2・・n各々の混率である。なお、繊維の比重については、繊維便覧第3版(丸善)による繊維の比重を使用し、比重に幅がある繊維については中間値を使用し、編地の混率の数値は例えば混率80%の場合は数値0.80を使用する。また、充填率は、得られた数値の小数点以下一桁目を四捨五入し整数で示す。
例えば、弾性糸は伸長される際発熱し、伸長緩和時吸熱され、完全な弾性体、すなわち、伸長時と伸長緩和時の伸度―応力曲線(S−Sカーブ)が全く重なっているような弾性体は伸長時の発熱と伸長緩和時の吸熱温度はほぼ同じとなり、つまり、伸長時と伸長緩和時のサイクル全体で発熱量はほぼ0となる。本発明では、編み地の伸長時の発熱温度に対して、伸長緩和時の吸熱を最小限に抑えるための編み地応力比の規定、及び規定した応力比の範囲を達成するための手段を見出したものである。
応力比=(50%時点の復路応力(N))/(50%時点の往路応力(N))
尚、編み地を80%まで伸長して伸縮途中の応力で応力比を求めるが、編み地伸度が低くて80%まで伸長困難な場合は、60%まで伸長して伸長後元の長さに戻し、伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力から応力比を求める。
なお、応力比を伸長、及び、回復50%時点での応力により求めるのは、50%時点の応力比が編み地伸長時に発熱した温度と、伸長回復時に吸熱する温度との差を捉えやすいことを見出したからである。すなわち、応力比が小さいほど弾性糸の伸長緩和時の吸熱温度が低く、高い伸長発熱温度が得られ、編み地の伸長時の発熱に対して、伸長緩和時の吸熱を最小限に抑える指標とすることが可能となる。
(1)サンプリング
以下の測定を行う場所は基本的にランダムで数箇所行なうが、編組織、糸使い、樹脂プリントの有無等によって布帛性能が部分的に異なる編み地においては、本発明の性能を満たす部分が確認できない場合、本発明の性能が発現する可能性が高い箇所を優先して測定することができ、経方向と緯方向それぞれの測定を行えるようサンプリングすればよい。
編組織、糸使い、樹脂プリントの有無等が均一である編み地においては、サンプリング箇所はランダムでよく、経方向と緯方向それぞれの測定を行えるようサンプリングすればよい。
瞬間発熱温度の測定は、下記の繰り返し伸縮試験機を使用し、伸長及び緩和(戻し)を規定速度で規定回数繰り返す間の最も高い試料表面温度を測定して求め、編み地経方向、及び、緯方向の瞬間発熱温度を測定し、高い方向を瞬間発熱温度とする。
繰り返し伸縮機:デマッチャー試験機((株)大栄科学精器製作所製)
試料の大きさ:長さ100mm(把持部除く)、幅60mm
測定環境:温度20℃、湿度65%RHの恒温恒湿条件。伸縮以外に外部からのエネルギー供給を受けない状態で測定する。
伸長量:2.5cm幅の編地の9.8N荷重下での編み地伸度により設定し、編み地伸度が100%以上の場合の伸長量は、100%、編み地伸度が60%以上100%未満の場合の伸長量は、9.8N荷重下の伸度と同じとする。
繰り返し伸縮サイクル:2回/秒
発熱温度測定:繰り返し伸長100回中、及び伸長終了後の試料表面温度を連続的にサーモグラフィで測定する。サーモグラフィの放射率は1.0に設定する。
発熱温度評価:測定する試料表面が最高温となったときの温度を読み取り、伸縮前の温度と比べ上昇した温度を瞬間発熱温度とする。
編地伸度:長さ100mm(把持部除く)、幅25mmでテンシロン引張り試験機((株)オリエンテック製 RTC−1210A)を使用し、下記条件で伸長し、9.8N荷重下での伸度を測定する。
初荷重:0.1N
引張り速度及び回復速度:300mm/分
引張り長:9.8N荷重まで伸長
測定:上記条件で伸長し、9.8N荷重での経方向および緯方向それぞれの伸度を求める。
なお、編み地の伸度が60%未満の場合は、伸長発熱しないため、実施例における伸長発熱評価では×印で示す。
編み地中の弾性糸含有量(g/m2)を、次の方法により求め、小数点一桁を四捨五入する。
編み地中の非弾性糸を溶解等により除去し、弾性糸のみの重量を測定して単位面積当りの重量に換算する。非弾性糸を除去することが困難であれば、重量測定後の編地から、弾性糸を溶解等により除去し、非弾性糸のみの重量を測定して、重量減少した分を弾性糸重量とする。
(4)編み地充填率
下記式により算出した。
充填率(%)=(M/L)÷(H1×K1+H2×K2+・・+Hn×Kn)×100
上式において、LはKES圧縮試験機で測定した荷重6g/cm2での厚み(cm)であり、Mは単位面積当たりの重量(g/cm2)であり、H1、H2・・Hnは編み地が含有する繊維1、2・・n各々の比重であり、K1、K2・・Knは編み地が含有する繊維1、2・・n各々の混率である。なお、重量、厚みは20℃65%RH環境下での数値で、繊維の比重については、繊維便覧(丸善)による繊維の比重を使用し、比重に幅がある繊維については中間値を使用し、混率については例えば混率80%の場合は数値0.80を使用する。また、充填率は、得られた数値の小数点以下一桁目を四捨五入し整数で示す。
応力比を次の方法により測定する。
試料の大きさ:長さ100mm(把持部除く)、幅25mm
引張り試験機:テンシロン引張り試験機((株)オリエンテック製 RTC−1210A)
初荷重:0.1N
引張り速度及び回復速度:300mm/分
引張り長及び測定:80%伸長まで伸長し、同じ速度で伸長後元の長さに戻し(回復させ)、この条件で伸長、回復を3回繰り返し、3回目の伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力を求め、下記式により小数点以下3桁目を四捨五入して求める。
応力比=(50%時点の復路応力(N))/(50%時点の往路応力(N))
なお、上記(1)の瞬間発熱温度測定時に測定した伸度が60〜80%の編み地の場合は、80%伸長まで伸長せずに、60%伸長までの伸長を3回繰り返す。
32ゲージのシングル丸編機を使用し、図1(図中、1〜4は編み順を示す)に示すタック組織が部分的に入った並カノコ組織を編成するに際し、弾性糸33dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)と、非弾性糸としてポリエステル1ヒーター加工糸56dtex/36fとを使用し、タックのある組織のみに弾性糸をプレーティングして編成し、天竺部分は非弾性糸のみとして、非弾性糸と弾性糸との伸長比を3.2として編成した。
編成できた編み地を連続精練機でリラックス及び精練を行い、次いで190℃で90秒間ほぼ生機の巾でプレセットを行い、その後、液流染色機でポリエステルの染色を行った。染色後にポリエステル系の吸水柔軟仕上げ剤を付与して、染色後とほぼ同密度で170℃60秒間仕上げセットを行い編み地とした。
得られた編み地の性能を評価した結果を以下の表1に示す。本例に示した本発明の編み地では、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であり、衣服とした場合、動き易い衣服とすることができた。
参考例1より密度を粗く幅出しセットして弾性糸含有量を下げた編み地(参考例2)、弾性糸の繊度を変更した編み地(参考例3、実施例5、比較例1)、弾性糸をすべてのコースでプレーティング編成した編み地(参考例4)を作製した。得られた編み地の性能を評価した結果を以下の表1に示す。
28ゲージのシングル丸編機を使用し、図2(図中、1〜6は編み順を示す)に示す天竺組織にインレイ組織が部分的に入った組織を編成するに際し、弾性糸44dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)と、非弾性糸としてポリエステル1ヒーター加工糸56dtex/36fとを使用し、非弾性糸と弾性糸との伸長比を3.3として、弾性糸を天竺組織部のみにプレーティングして編成した。
編成できた編地を連続精練機でリラックスおよび精練を行い、次いで195℃で70秒間ほぼ生機の巾でプレセットを行い、その後、液流染色機でポリエステルの染色を行った。染色後にポリエステル系の吸水柔軟仕上げ剤を付与して、染色後とほぼ同密度で170℃60秒間仕上げセットを行い編地とした。
得られた編地の性能を評価し結果を以下の表1に示すが、本例に示した本発明の編地では、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であり、衣服とした場合、動き易い衣服とすることができた。
28ゲージのシングルトリコット編機を使用し、フロント筬に非弾性糸のポリエステル56dtex/36f、バックに弾性糸44dtex(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)を使用し、次に示す開き目のハーフ組織にて編成した。
フトント 01/32
バック 21/01
編成できた編み地を連続精練機でリラックス及び精練を行い、次いで190℃で90秒間ほぼ生機の巾でプレセットを行い、その後、液流染色機でポリエステルの染色を行った。染色後にポリエステル系の吸水柔軟仕上げ剤を付与して、染色後とほぼ同密度で170℃60秒間仕上げセットを行い編み地とした。
得られた編地の性能を評価した結果を以下の表1に示す。本例に示した本発明の編み地では、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であり、衣服とした場合、動き易い衣服とすることができた。
参考例7において、弾性糸の繊度を変更して、弾性糸含有量、編み地充填率を下げた編地を作製した。得られた編み地の性能を評価した結果を以下の表1に示す。
28ゲージの3枚筬のシングルトリコット編機を使用し、フロント筬とミドル筬に非弾性糸のナイロン44dtex/24fを、バックに弾性糸22dtex(商品名ロイカCR:旭化成せんい(株)製)を使用し、次に示す組織にて編成した。
フトント 10/23
ミドル 12/10
バック 21/01
編成できた編み地を連続精練機でリラックス及び精練を行い、次いで195℃で60秒間ほぼ生機の巾でプレセットを行い、その後、液流染色機でナイロンの染色を行った。染色後にポリエステル系の吸水柔軟仕上げ剤を付与して、染色後とほぼ同密度で170℃60秒間仕上げセットを行い編み地とした。
得られた編地の性能を評価した結果を以下の表1に示す。本例に示した本発明の編地では、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であり、衣服とした場合、動き易い衣服とすることができた。
Claims (5)
- 弾性糸と非弾性糸とからなる編み地であって、該弾性糸の含有量が15〜20g/m 2 未満、経緯少なくとも一方向の伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であり、下記式(1):
充填率(%)=(M/L)÷(H1×K1+H2×K2+・・・+Hn×Kn)×100 (1)
{式中、LはKES圧縮試験機で測定した荷重6g/cm2時の編み地厚み(cm)であり、Mは編み地の単位面積当たりの重量(g/cm2)であり、H1、H2…Hnは編み地が含有する繊維1、2…n各々の比重であり、そしてK1、K2…Knは編み地が含有する繊維1、2…n各々の混率である。}で求められる編み地充填率が20〜30%であり、かつ、下記式(2):
応力比=50%時点の復路応力(N)/50%時点の往路応力(N) (2)
{式中、50%時点の復路応力(N)と50%時点の往路応力(N)は、それぞれ、該編み地を80%まで伸長後元の長さに戻した際の伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力である。}で求められる応力比が0.40〜0.80であることを特徴とする編み地。 - 編み地が緯編み地であって、タックループ又はウェルトループが編み地中の全ループの20〜60%であり、かつ、下記(a)及び/又は(b)の条件:
(a)タックループ又はウェルトループが弾性糸で構成されること;
(b)タックループ又はウェルトループが編成されるコースにおいて、該タックループ又はウェルトループの前後の少なくともいずれかのニットループが弾性糸により構成されること;
を満足する、請求項1に記載の編み地。 - 編み地が経編み地であって、少なくとも弾性糸が開き目により編成されている、請求項1に記載の編み地。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の編み地を含み、身体に密着し、かつ、少なくとも関節部を覆うことを特徴とする衣服。
- ボトム類、トップス類、レッグ類、サポーター類及び手袋からなる群から選ばれる、請求項4に記載の衣服。
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